説明

プリント配線板用基板、プリント配線板、プリント配線板の製造方法

【課題】製造に高価な真空設備を必要とせず、よってサイズ的な制限を受けることなく、また有機物接着剤を使用することなく、且つ基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いて、高密度、高性能、十分な薄肉化を可能とするプリント配線板用基板、プリント配線板及びプリント配線板の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】絶縁性の基材10と、該基材10の表面を被覆する導電層とからなるプリント配線板用基板1であって、前記基材10は、該基材10を貫通するスルーホール11を有すると共に、前記導電層は、前記スルーホール11の内孔の全表面及び前記基材10の表裏表面を被覆する金属粒子を含む導電性インク層20からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用基板、プリント配線板、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の基板、即ちプリント配線板用基板は、一般に、耐熱性高分子フィルムと銅箔とを有機物の接着剤で接合する方法や、銅箔面上に樹脂溶液をコート、乾燥等することにより耐熱高分子フィルム膜を積層する方法で作製されている。
このため、両面プリント配線板を作製する際は、貫通孔を作製後、デスミア処理をして、無電解めっき、電解めっきを行い、レジスト形成、エッチングを行っている。
また最近においては、ますますプリント配線板の高密度化、高性能化が要求されるようになってきている。
このような高密度化、高性能化の要求を満たすプリント配線板用基板として、有機物接着剤層がなく、しかも導電層(銅箔層)が十分に薄肉とされたプリント配線板用基板が求められている。
プリント配線板用基板に対する上記の要求に対して、例えば特開平9−136378号公報には、耐熱性高分子フィルムに接着剤を介することなく銅薄層を積層した銅薄膜基板が開示されている。この銅薄膜基板では、耐熱性絶縁基材の表面にスパッタリング法を用いて銅薄膜層を第一層として形成し、その上に電気めっき法を用いて銅厚膜層を第二層として形成している。
また特開平6−120640号公報には、部品を高密度に実装できるフレキシブルプリント配線板の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−136378号公報
【特許文献2】特開平6−120640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の銅薄膜基板では、有機物の接着剤を使用しない点、導電層(銅箔層)を薄くできる点等において、高密度、高性能プリント配線の要求に沿う基板であると言える。
その一方、スパッタリング法を用いて第一層を形成するようにしているため、真空設備を必要とし、設備の建設、維持、運転等、設備コストが高くなる。また使用する基材の供給、薄膜形成、基材の収納等の全てを真空中で取り扱わなければならない。また設備面において、基板のサイズを大きくすることに限界がある等の問題がある。
また上記特許文献2に記載のフレキシブルプリント配線板の製造法では、端子間隔を縮めることができる点において、高密度、高性能プリント配線の要求に沿うプリント配線板であると言える。
その一方、配線回路の厚みが元の銅張積層板の厚みとめっき層の厚みとを加算した厚みとなるため、配線回路が厚肉となり、高密度、高性能な配線回路の作製が困難であるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は上記従来技術における問題点を解消し、製造に高価な真空設備を必要とせず、よってサイズ的な制限を受けることなく、また有機物接着剤を使用することなく、且つ基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いて、高密度、高性能、十分な薄肉化を可能とするプリント配線板用基板、プリント配線板及びプリント配線板の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリント配線板用基板は、絶縁性の基材と、該基材の表面を被覆する導電層とからなるプリント配線板用基板であって、前記基材は、該基材を貫通するスルーホールを有すると共に、前記導電層は、前記スルーホールの内孔の全表面及び前記基材の表裏表面を被覆する金属粒子を含む導電性インク層からなることを第1の特徴としている。
【0007】
上記本発明の第1の特徴によれば、プリント配線板用基板は、絶縁性の基材と、該基材の表面を被覆する導電層とからなるプリント配線板用基板であって、前記基材は、該基材を貫通するスルーホールを有すると共に、前記導電層は、前記スルーホールの内孔の全表面及び前記基材の表裏表面を被覆する金属粒子を含む導電性インク層からなることから、まずスパッタリング等の物理的蒸着に必要な高価な真空設備を必要としない。よってプリント配線板用基板(主として両面プリント配線板用)の大きさが真空設備により制限されることがない。
また有機物接着剤を使用することなく導電層を基材上に形成することができる。
また導電層が金属粒子を含む層として構成されているので、基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いたプリント配線板用基板を提供することができる。
また導電層を金属粒子を含む導電性インク層で形成することで、十分に薄い導電層を有する高密度、高性能プリント配線の形成に適したプリント配線板用基板を提供することができる。
【0008】
また本発明のプリント配線板用基板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記導電層は、前記スルーホールの内孔の全表面及び前記基材の表裏表面を被覆する金属粒子を含む導電性インク層からなる第1導電層と、該第1導電層の上に積層されるめっき層からなる第2導電層とからなることを第2の特徴としている。
【0009】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記導電層は、前記スルーホールの内孔の全表面及び前記基材の表裏表面を被覆する金属粒子を含む導電性インク層からなる第1導電層と、該第1導電層の上に積層されるめっき層からなる第2導電層とからなることから、十分に薄層の第1導電層とめっきにより必要な厚みに調整された第2導電層とからなる導電層を備えた十分に薄い導電層を有する高密度、高性能プリント配線の形成に適したプリント配線板用基板を提供することができる。
【0010】
また本発明のプリント配線板用基板は、上記本発明の第2の特徴に加えて、前記めっき層は、無電解めっき又は/及び電解めっきで形成されていることを第3の特徴としている。
【0011】
上記本発明の第3の特徴によれば、上記本発明の第2の特徴による作用効果に加えて、前記めっき層は、無電解めっき又は/及び電解めっきで形成されていることから、めっき層の形成に無電解めっきのみを用いた場合には、通電を必要とせず、素材の形状や種類にかかわらず均一な厚みのめっき層を形成することができる。
まためっき層の形成に電解めっきのみを用いた場合には、所定の積層厚まで速やかにめっき層を形成することができる。また厚みを正確に調整して積層することができると共に、得られるめっき層を欠陥のない均質な層とすることができる。
更にめっき層の形成に無電解めっき及び電解めっきを用いた場合には、金属粒子を含む導電性インク層からなる第1導電層を薄肉なものとすることができる。よってインク量を節約することができ、コスト削減が可能なプリント配線板用基板とすることができる。
【0012】
また本発明のプリント配線板用基板は、上記本発明の第1〜第3の何れか1つの特徴に加えて、前記導電性インク層は、1〜500nmの粒子径をもつ金属粒子を含む導電性インクからなることを第4の特徴としている。
【0013】
上記本発明の第4の特徴によれば、上記本発明の第1〜第3の何れか1つの特徴による作用効果に加えて、前記導電性インク層は、1〜500nmの粒子径をもつ金属粒子を含む導電性インクからなることから、絶縁性の基材上に、ムラなく緻密で均一な薄層を安定して形成することができる。よって微細なプリント配線を得るのに適した薄層で且つ欠陥のない導電層を備えたプリント配線板用基板を提供することができる。
【0014】
また本発明のプリント配線板用基板は、上記本発明の第1〜第4の特徴に加えて、前記金属粒子が錯化剤と分散剤とを含む水溶液中で、還元剤の働きにより金属イオンを還元する液相還元法によって得られた粒子であることを第5の特徴としている。
【0015】
上記本発明の第5の特徴によれば、上記本発明の第1〜第4の何れか1つの特徴による作用効果に加えて、前記金属粒子が錯化剤と分散剤とを含む水溶液中で、還元剤の働きにより金属イオンを還元する液相還元法によって得られた粒子であることから、気相法に比べて粒子を得る装置が比較的簡単となり、コスト低減につながる。また大量生産が容易で、手に入れやすい。更に水溶液中での攪拌等により粒子径を比較的均一にすることができるメリットがある。
【0016】
また本発明のプリント配線板用基板は、上記本発明の第1〜第5の特徴に加えて、前記金属粒子がチタンレドックス法によって得られた粒子であることを第6の特徴としている。
【0017】
上記本発明の第6の特徴によれば、上記本発明の第1〜第5の何れか1つの特徴による作用効果に加えて、前記金属粒子がチタンレドックス法によって得られた粒子であることから、粒径を確実、容易に1nm〜500nmにすることができると共に、形状が丸くて且つ大きさが揃った粒子として、導電性インク層を欠陥の少ない緻密で均一且つ十分に薄い層に仕上げることができる。よって微細プリント配線の形成に適した導電層を得ることができる。
【0018】
また本発明のプリント配線板用基板は、上記本発明の第1〜第6の特徴に加えて、前記絶縁性の基材と前記導電性インク層との間に、Ni、Cr、Ti、Siの何れか1又は2以上の元素からなる介在層を存在させてあることを第7の特徴としている。
【0019】
上記本発明の第7の特徴によれば、上記本発明の第1〜第6の特徴による作用効果に加えて、前記絶縁性の基材と前記導電性インク層との間に、Ni、Cr、Ti、Siの何れか1又は2以上の元素からなる介在層を存在させてあることから、介在層が絶縁性の基材の上に導電性インク層を積層する際の下地となり、密着性を向上させることができる。
【0020】
また本発明のプリント配線板は、上記本発明の第1〜第7の何れか1つに記載のプリント配線板用基板を用いて製造したことを第8の特徴としている。
【0021】
上記本発明の第8の特徴によれば、プリント配線板は、上記本発明の第1〜第7の何れか1つに記載のプリント配線板用基板を用いて製造したことから、高価な真空設備を必要とせず、導電層を薄くした高密度、高性能のプリント配線の要求を満たすことができる。
【0022】
また本発明のプリント配線板は、上記本発明の第8の特徴に加えて、前記第2導電層は、前記第1導電層を下地として、レジストを用いたセミアディティブ法によりパターン形成されていることを第9の特徴としている。
【0023】
上記本発明の第9の特徴によれば、上記本発明の第8の特徴による作用効果に加えて、前記第2導電層は、前記第1導電層を下地として、レジストを用いたセミアディティブ法によりパターン形成されていることから、より高密度のプリント配線板を提供することができる。
【0024】
また本発明のプリント配線板の製造方法は、絶縁性の基材にスルーホールを形成するスルーホール形成工程と、該スルーホール形成工程の後に、スルーホールが形成された絶縁性の基材に、溶媒に分散した金属粒子を含む導電性インクを塗布する導電性インク塗布工程と、該導電性インク塗布工程の後に、熱処理を行う熱処理工程とを少なくとも備えることを第10の特徴としている。
【0025】
上記本発明の第10の特徴によれば、プリント配線板の製造方法は、絶縁性の基材にスルーホールを形成するスルーホール形成工程と、該スルーホール形成工程の後に、スルーホールが形成された絶縁性の基材に、溶媒に分散した金属粒子を含む導電性インクを塗布する導電性インク塗布工程と、該導電性インク塗布工程の後に、熱処理を行う熱処理工程とを少なくとも備えることから、スルーホール形成工程により、絶縁性の基材にスルーホールを形成することができる。また導電性インク塗布工程により、スルーホールが形成された絶縁性の基材に金属粒子を含む導電性インクを塗布することができる。また熱処理工程により、導電性インク中の不要な有機物等を除去して金属粒子を確実に絶縁性の基材上に固着させることができ、絶縁性の基材の表面に導電性インク層を形成することができる。よってプリント配線板(主として両面プリント配線板)の厚みを薄くすることができ、高密度、高性能のプリント配線板とすることができる。
【0026】
また本発明のプリント配線板の製造方法は、上記本発明の第10の特徴に加えて、前記熱処理工程の後に、電解銅めっきを行う電解めっき工程と、該電解めっき工程の後に、レジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、該レジストパターン形成工程の後に、エッチングを行うエッチング工程とを少なくとも備えることを第11の特徴としている。
【0027】
上記本発明の第11の特徴によれば、上記本発明の第10の特徴による作用効果に加えて、前記熱処理工程の後に、電解銅めっきを行う電解めっき工程と、該電解めっき工程の後に、レジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、該レジストパターン形成工程の後に、エッチングを行うエッチング工程とを少なくとも備えることから、電解めっき工程により、銅からなるめっき層を形成することができる。またレジストパターン形成工程により、レジストパターンを形成することができる。またエッチング工程により不要な導電層を除去することができる。またプリント配線板は、導電性インクの塗布と熱処理とめっきによって製造がされるので、高価な真空設備を不要とし、また有機物接着剤を用いることなくプリント配線板を製造することができる。また基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いることができる利点がある。勿論、ナノオーダーの金属粒子を用いることにより、十分に緻密で均一な導電性インクを塗布でき、その上にめっき層を形成することができ、欠陥のない緻密で均質なプリント配線板を製造することができる。
【0028】
また本発明のプリント配線板の製造方法は、上記本発明の第11の特徴に加えて、前記電解めっき工程の前に、無電解めっき行う無電解めっき工程を備えることを第12の特徴としている。
【0029】
上記本発明の第12の特徴によれば、上記本発明の第11の特徴による作用効果に加えて、前記電解めっき工程の前に、無電解めっき行う無電解めっき工程を備えることから、導電性インク層を薄肉なものとすることができる。よってインク量を節約することができ、コスト削減を図ることができる。
【0030】
また本発明のプリント配線板の製造方法は、絶縁性の基材にスルーホールを形成するスルーホール形成工程と、該スルーホール形成工程の後に、スルーホールが形成された絶縁性の基材に、溶媒に分散した金属粒子を含む導電性インクを塗布する導電性インク塗布工程と、該導電性インク塗布工程の後に、熱処理を行う熱処理工程と、該熱処理工程の後に、レジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、該レジストパターン形成工程の後に、電解銅めっきを行う電解めっき工程と、該電解めっき工程の後に、前記レジストパターン形成工程で形成されたレジストパターンを剥離するレジストパターン剥離工程と、該レジストパターン剥離工程の後に、レジストパターン剥離工程により露出された導電性インク層を除去する導電性インク層除去工程とを少なくとも備えることを第13の特徴としている。
【0031】
上記本発明の第13の特徴によれば、プリント配線板の製造方法は、絶縁性の基材にスルーホールを形成するスルーホール形成工程と、該スルーホール形成工程の後に、スルーホールが形成された絶縁性の基材に、溶媒に分散した金属粒子を含む導電性インクを塗布する導電性インク塗布工程と、該導電性インク塗布工程の後に、熱処理を行う熱処理工程と、該熱処理工程の後に、レジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、該レジストパターン形成工程の後に、電解銅めっきを行う電解めっき工程と、該電解めっき工程の後に、前記レジストパターン形成工程で形成されたレジストパターンを剥離するレジストパターン剥離工程と、該レジストパターン剥離工程の後に、レジストパターン剥離工程により露出された導電性インク層を除去する導電性インク層除去工程とを少なくとも備えることから、スルーホール形成工程により、絶縁性の基材にスルーホールを形成することができる。また導電性インク塗布工程により、スルーホールが形成された絶縁性の基材に金属粒子を含む導電性インクを塗布することができる。また熱処理工程により、導電性インク中の不要な有機物等を除去して金属粒子を確実に絶縁性の基材上に固着させることができ、絶縁性の基材の表面に導電性インク層を形成することができる。またレジストパターン形成工程により、レジストパターンを形成することができる。また電解めっき工程により、銅からなるめっき層を形成することができる。またレジストパターン剥離工程により、レジストパターンを剥離することができる。また導電性インク層除去工程により、レジストパターン剥離工程により露出せられた導電性インク層を除去することができる。
つまりプリント配線板をいわゆるセミアディティブ法で製造することができ、一段と高密度、高性能のプリント配線板(主として両面プリント配線板)とすることができる。
またプリント配線板は、導電性インクの塗布と熱処理とめっきによって製造がされるので、高価な真空設備を不要とし、また有機物接着剤を用いることなくプリント配線板を製造することができる。また基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いることができる利点がある。勿論、ナノオーダーの金属粒子を用いることにより、十分に緻密で均一な導電性インクを塗布でき、その上にめっき層を形成することができ、欠陥のない緻密で均質なプリント配線板を製造することができる。
【0032】
また本発明のプリント配線板の製造方法は、上記本発明の第13の特徴に加えて、前記レジストパターン形成工程の前に、無電解めっきを行う無電解めっき工程を備えることを第14の特徴としている。
【0033】
上記本発明の第14の特徴によれば、上記本発明の第13の特徴による作用効果に加えて、前記レジストパターン形成工程の前に、無電解めっきを行う無電解めっき工程を備えることから、導電性インク層を薄肉なものとすることができる。よってインク量を節約することができ、コスト削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のプリント配線板用基板によれば、製造に高価な真空設備を必要とせず、よってサイズ的な制限を受けることなく、また有機物接着剤を使用することなく、且つ基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いて、高密度、高性能のプリント配線(主として両面プリント配線)を可能とすることができる。
また本発明のプリント配線板によれば、上記プリント配線板用基板の場合と同様に、製造に真空設備を必要とせず、よってサイズ的な制限を受けることなく、有機物接着剤を使用することなく、且つ基材や下層の材質に制限されることなく、高密度、高性能のプリント配線(主として両面プリント配線)を現に可能とすることができる。
また本発明のプリント配線板の製造方法によれば、高価な真空設備を不要とし、よってサイズ的な制限を受けることなく、また有機物接着剤を用いることなく、基材の材質に制限されることなく、高密度、高性能プリント配線の形成に適した、薄くて緻密で均質な導電層を有するプリント配線板(主として両面プリント配線板)を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板を説明する斜視図で、(a)は1層の導電層を表裏両面に備えるプリント配線板用基板を示す図、(b)は2層の導電層を表裏両面に備えるプリント配線板用基板を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板及びプリント配線板の製造方法を説明する断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明する断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造方法の変形例を説明する断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造方法の変形例を説明する断面図である。
【図6】従来のプリント配線板の製造方法を説明する断面図である。
【図7】従来のプリント配線板の製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の図面を参照して、本発明に係るプリント配線板用基板とその製造方法、プリント配線板とその製造方法についての実施形態を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
【0037】
まず図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板とその製造方法、プリント配線板とその製造方法について説明する。
まず図1(a)を参照して、本発明に係るプリント配線板用基板1を説明する。
プリント配線板用基板1は、1層の導電層を表裏両面に備えるプリント配線板用基板であり、フィルム若しくはシートからなる絶縁性の基材10と、該絶縁性の基材10の表裏表面を被覆する導電性インク層20とから構成される。
また図1(a)に示すように、プリント配線板用基板1には、絶縁性の基材10を貫通するスルーホール11が設けられている。
なおスルーホール11の数、形成位置等は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0038】
前記絶縁性の基材10は導電性インク層20を積層するための基台となるもので、薄いものはフィルムとして、また厚いものはシートとして使用される。
また絶縁性の基材10の材料としては、例えばポリイミド、ポリエステル等のフレキシブル材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)、ガラス基材等のリジッド材、硬質材料と軟質材用とを複合したリジッドフレキシブル材を用いることが可能である。
本実施形態では、絶縁性の基材10としてポリイミドフィルムを用いている。
【0039】
前記導電性インク層20は、絶縁性の基材10に形成されるスルーホール11の内孔の全表面及び絶縁性の基材10の表裏表面を被覆する導電層となるもので、絶縁性の基材10の表面に金属粒子を含む導電性インクを塗布することで形成される。導電性インクの塗布層とすることで、絶縁性の基材10の表裏表面を、真空設備を必要とすることなく、容易に導電性の皮膜で覆うことができる。
なお導電性インク層20は、導電性インクの塗布後に、乾燥或いは焼成等の熱処理を施したものを含むものとする。
導電性インクは、要するに、それを絶縁性の基材10に形成されるスルーホール11の内孔の全表面及び絶縁性の基材10の表裏表面に塗布することで、導電性物質を積層できるものであればよい。
本実施形態では、導電性インクとして、導電性をもたらす導電性物質としての金属粒子と、その金属粒子を分散させる分散剤と、分散媒とを含むものを用いる。このような導電性インクを用いて塗布することで、微細な金属粒子による塗布層が絶縁性の基材10の表裏表面に積層される。
【0040】
前記導電性インクを構成する金属粒子としては、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ru、Sn、Ni、Fe、Co、Ti、Inの何れか1又は2以上の元素を用いることができる。しかし導電性が良く、プリント配線処理がしやすく、コスト的に経済的なものとしてCuが好ましく用いられる。
本実施形態では、Cuを用いている。
【0041】
前記導電性インクに含まれる金属粒子の大きさは、粒子径が1〜500nmのものを用いる。この粒子径は通常の塗装用のものに比べて著しく小さく、緻密な導電薄膜を得るのに適したものとされている。粒子径が1nm未満の場合は、インク中での分散性、安定性が必ずしも良くないのと、粒子が小さすぎて積層に係る塗装に手間がかかる。また500nmを超える場合は、沈殿しやすく、また塗布した際にムラが出やすくなる。分散性、安定性、ムラ防止等を考慮して、好ましくは30〜100nmがよい。
【0042】
導電性インクに含まれる金属粒子は、チタンレドックス法で得ることができる。ここでチタンレドックス法とは、「金属元素のイオンを、3価のTiイオンが4価に酸化する際の酸化還元作用によって還元し、金属粒子を析出させる方法である」と定義する。チタンレドックス法で得られる金属粒子は、粒径が小さく、揃っており、また形状を球形又は粒状にすることができるので、導電性インク層20を、薄くて緻密な層に形成することができる。
【0043】
なお本実施形態においては、プリント配線板用基板1を、1層の導電層を表裏両面に備えるプリント配線板用基板とする構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。例えば、図1(b)に示すように、導電性インク層20を第1導電層とし、第1導電層の上に第2導電層たるめっき層30を電解めっき工程(いわゆる電気めっき法)により積層することで、2層の導電層を表裏両面に備えるプリント配線板用基板2とする構成としてもよい。
【0044】
また絶縁性の基材10と導電性インク層20との間に、両者間での密着性を上げるために、Ni、Cr、Ti、Siの何れか1又は2以上の元素からなる介在層を存在させる構成としてもよい。これらの介在層は、例えばポリイミド等の樹脂性の絶縁性の基材10をアルカリ処理することで、樹脂表面に官能基を露出させ、これに金属酸を作用させることで得ることができる。またSiについては、樹脂性の絶縁性の基材10をシランカップリング処理することで得ることが可能である。
【0045】
次に図2、図3も参照して本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板とその製造方法、プリント配線板とその製造方法について説明する。
本発明に係るプリント配線板3は、プリント配線板用基板1に形成されるスルーホール11の内孔の全表面及びプリント配線板用基板1の表裏表面にめっき層を形成することで、導電性インク層20を第1導電層とし、めっき層30を第2導電層としてなる両面プリント配線板である。
このプリント配線板3は、本発明のプリント配線板用基板1を用いて、いわゆるサブトラクティブ法により製造される。
【0046】
より具体的には、図2、図3を参照して、絶縁性の基材10にスルーホール11を形成するスルーホール形成工程100と、スルーホール形成工程100の後に、スルーホール11が形成された絶縁性の基材10に、溶媒に分散した金属粒子を含む導電性インクを塗布する導電性インク塗布工程200と、導電性インク塗布工程200の後に、熱処理を行う、図示していない熱処理工程と、熱処理工程の後に、電解銅めっきを行うめっき工程300と、めっき工程300の後に、レジストパターンを形成するレジストパターン形成工程400と、レジストパターン形成工程400の後に、配線回路を形成する配線回路形成工程500とを経て製造される。
【0047】
まず図2を参照して、前記スルーホール形成工程100により、絶縁性の基材10にドリル加工やレーザー加工等を用いてスルーホール11を形成する。
その後、導電性インク塗布工程200により、スルーホール11の内孔の全表面及び絶縁性の基材10の表裏表面に金属粒子を含む導電性インクを塗布する。
次に図示しない熱処理工程により、塗布させた導電性インク中の金属粒子を金属層として絶縁性の基材10上に固着させる。これにより絶縁性の基材10に形成されたスルーホール11の内孔の全表面及び絶縁性の基材10の表裏表面に、導電層となる金属粒子を含む導電性インク層20が形成される。
以上により、図1(a)に示す1層の導電層を表裏両面に備えるプリント配線板用基板1が製造される。
【0048】
次に図2に示すように、めっき工程300により、スルーホール11の内孔の全表面及び絶縁性の基材10の表裏表面に、銅を用いた電解めっき工程(いわゆる電気めっき法)によりめっき層30を形成する。
これにより、導電性インク層20を第1導電層とし、第1導電層の上に積層されるめっき層30を第2導電層とする導電層が形成される。つまり図1(b)に示す2層の導電層を表裏両面に備えるプリント配線板用基板2が製造される。
【0049】
その後、図2、図3に示すように、レジストパターン形成工程400により、めっき層30にレジスト40を積層した状態で、パターンマスク41を用いて露光し、現像を行うことでレジストパターン42を形成し、配線パターンとなるべき部分を被覆する。
次に図3に示すように、配線回路形成工程500のエッチング工程510により、配線パターンとなるべき部分以外の不要な導電層を除去する。
その後、図3に示すように、配線回路形成工程500のレジストパターン剥離工程520により、レジストパターン42を剥離する。
以上の工程を経ることで、本発明に係るプリント配線板用基板1を用いたプリント配線板3が製造される。
【0050】
なお本実施形態においては、めっき層30を電解めっき工程(いわゆる電気めっき法)のみで形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。
例えば、電解めっき工程の前に、無電解めっき工程を備える構成としてもよい。
このような構成とすることで、第1導電層たる導電性インク層20の厚みを薄肉なものとすることができる。よってインク量を節約することができ、コスト削減を図ることができるプリント配線板用基板1及びプリント配線板3とすることができる。
また電解めっき工程に用いる金属も銅(Cu)に限るものではなく、銀(Ag)、金(Au)等の導電性に優れた金属を用いる構成としてもよい。
また本発明のプリント配線板用基板1を用いてなるプリント配線板3の製造方法は、上記したサブトラクティブ法に限定されるものではない。他の種々のサブトラクティブ法、その他の製法によるものを含み、要するに本発明のプリント配線板用基板1を用いたものは本発明のプリント配線板3に属する。
【0051】
以下、プリント配線板用基板1及びプリント配線板3の構成、製造方法について更に詳細に説明する。
【0052】
(絶縁性の基材の構成)
絶縁性の基材10としては、一方向に連続する連続材を用いることができる。連続材を用いて、プリント配線板用基板1を連続工程で製造することができる。絶縁性の基材10は所定寸法の独立片を用いることができる。
絶縁性の基材10として用いる材料は、ポリイミドの他、絶縁性のリジッド材料、フレキシブル材料等、既に上述した通りである。
導電性インクとしては、導電性物質として微細な金属粒子を含み、またその金属粒子を分散させる分散剤、及び分散媒とを含むものを用いる。
【0053】
前記導電性インクに分散させる金属粒子の種類や大きさは、1〜500nmのCu粒子を用いる他、既に上述した通りである。
また金属粒子の製造方法は、既述したチタンレドックス法を含み、次のような製造方法が可能である。
【0054】
(金属粒子の製造方法)
金属粒子は、含浸法と呼ばれる高温処理法や、液相還元法、気相法等の従来公知の方法で製造することができる。
液相還元法によって金属粒子を製造するためには、例えば水に、金属粒子を形成する金属のイオンのもとになる水溶性の金属化合物と分散剤とを溶解すると共に、還元剤を加えて、好ましくは、攪拌下、一定時間、金属イオンを還元反応させればよい。勿論、合金からなる金属粒子を液相還元法で製造する場合は、2種以上の水溶性の金属化合物を用いることになる。
液相還元法の場合、製造される金属粒子は、形状が球状ないし粒状で揃っており、粒度分布がシャープで、しかも微細な粒子とすることができる。
前記金属イオンのもとになる水溶性の金属化合物として、例えばCuの場合は、硝酸銅(II)[Cu(NO]、硫酸銅(II)五水和物[CuSO・5HO]をあげることができる。またAgの場合は硝酸銀(I)[AgNO]、メタンスルホン酸銀[CHSOAg]、Auの場合はテトラクロロ金(III)酸四水和物[HAuCl・4HO]、Niの場合は塩化ニッケル(II)六水和物[NiCl・6HO]、硝酸ニッケル(II)六水和物[Ni(NO・6HO]をあげることができる。他の金属粒子についても、塩化物、硝酸化合物、硫酸化合物等の水溶性の化合物を用いることができる。
【0055】
(還元剤)
酸化還元法によって金属粒子を製造する場合の還元剤としては、液相(水溶液)の反応系において、金属イオンを還元、析出させることができる種々の還元剤を用いることができる。例えば水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、3価のチタンイオンや2価のコバルトイオン等の遷移金属のイオン、アスコルビン酸、グルコースやフルクトース等の還元性糖類、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールをあげることができる。このうち、3価のチタンイオンが4価に酸化する際の酸化還元作用によって金属イオンを還元し、析出させる方法が既述したチタンレドックス法である。
【0056】
(導電性インクの分散剤)
導電性インクに含まれる分散剤としては、分子量が2000〜30000で、分散媒中で析出した金属粒子を良好に分散させることができる種々の分散剤を用いることができる。分子量が2000〜30000の分散剤を用いることで、金属粒子を分散媒中に良好に分散させることができ、得られる第1導電層たる導電性インク層20の膜質を緻密で且つ欠陥のないものにすることができる。分散剤の分子量が2000未満では、金属粒子の凝集を防止して分散を維持する効果が十分に得られないおそれがあり、結果として絶縁性の基材10の上に積層される導電層を緻密で欠陥の少ないものにできないおそれがある。また分子量が30000を超える場合は、嵩が大きすぎ、導電性インクの塗布後に行う熱処理において、金属粒子同士の焼結を阻害してボイドを生じさせたり、導電性インク層20の膜質の緻密さを低下させたり、また分散剤の分解残渣が導電性を低下させるおそれがある。
なお分散剤は、硫黄、リン、ホウ素、ハロゲン、アルカリを含まないものが、部品劣化の防止から好ましい。
好ましい分散剤としては、分子量が2000〜30000の範囲にあるもので、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等のアミン系の高分子分散剤、またポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等の分子中にカルボン酸基を有する炭化水素系の高分子分散剤、ポバール(ポリビニルアルコール)、スチレン−マレイン酸共重合体、オレフィン−マレイン酸共重合体、或いは1分子中にポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体等の極性基を有する高分子分散剤、をあげることができる。
分散剤は水、又は水溶性有機溶媒に溶解した溶液の状態で、反応系に添加することもできる。
分散剤の含有割合は、金属粒子100重量部あたり1〜60重量部であるのが好ましい。分散剤の含有割合が前記範囲未満では、水を含む導電性インク中において、分散剤が金属粒子を取り囲むことで凝集を防止して良好に分散させる効果が不十分となるおそれがある。また前記範囲を超える場合には、導電性インクの塗装後の焼成熱処理時に、過剰の分散剤が金属粒子の焼結を含む焼成を阻害してボイドを生じさせたり、膜質の緻密さを低下させたりするおそれがあると共に、高分子分散剤の分解残渣が不純物として導電層中に残存して、プリント配線の導電性を低下させるおそれがある。
【0057】
(金属粒子の粒径調整)
金属粒子の粒径を調整するには、金属化合物、分散剤、還元剤の種類と配合割合を調整すると共に、金属化合物を還元反応させる際に、攪拌速度、温度、時間、pH等を調整すればよい。
例えば反応系のpHは、本発明の如き微小な粒径の粒子を得るには、pHを7〜13とするのが好ましい。
反応系のpHを7〜13に調整するためには、pH調整剤を用いることができる。このpH調整剤としては、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど、一般的な酸、アルカリが使用されるが、特に周辺部材の劣化を防止するために、アルカリ金属やアルカリ土類金属、塩素等のハロゲン元素、硫黄、リン、ホウ素等の不純物元素を含まない、硝酸やアンモニアが好ましい。
本発明の実施形態においては、金属粒子の粒子径は30〜100nmの範囲にあるものを用いるが、許容範囲として粒子径が1〜500nmの範囲にあるものを用いることが可能である。
ここで粒子径は分散液中の粒度分布の中心径D50で表され、日機装社製マイクロトラック粒度分布計(UPA−150EX)を用いて測定した。
【0058】
(導電性インクの調整)
液相の反応系において析出させた金属粒子は、ロ別、洗浄、乾燥、解砕等の工程を経て、一旦、粉末状としたものを用いて導電性インクを調整することができる。この場合は、粉末状の金属粒子と、分散媒である水と、分散剤と、必要に応じて水溶性の有機溶媒とを、所定の割合で配合して、金属粒子を含む導電性インクとすることができる。
好ましくは、金属粒子を析出させた液相(水溶液)の反応系を出発原料として、導電性インクを調整する。
即ち、析出した金属粒子を含む反応系の液相(水溶液)を、限外ろ過、遠心分離、水洗、電気透析等の処理に供して不純物を除去し、必要に応じて濃縮して水を除去するか、逆に水を加えて金属粒子の濃度を調整した後、更に必要に応じて、水溶性の有機溶媒を所定の割合で配合することによって、金属粒子を含む導電性インクを調整する。この方法では、金属粒子の乾燥時の凝集による粗大で不定形な粒子の発生を防止することができ、緻密で均一な第1導電層たる導電性インク層20を得ることが可能となる。
【0059】
(分散媒)
導電性インクにおける分散媒となる水の割合は、金属粒子100重量部あたり20〜1900重量部であるのが好ましい。水の含有割合が前記範囲未満では、水による分散剤を十分に膨潤させて、分散剤で囲まれた金属粒子を良好に分散させる効果が不十分となるおそれがある。また水の含有割合が前記範囲を超える場合は、導電性インク中の金属粒子割合が少なくなり、絶縁性の基材10の表面に必要な厚みと密度とを有する良好な塗布層を形成できないおそれがある。
【0060】
導電性インクに必要に応じて配合する有機溶媒は、水溶性である種々の有機溶媒が可能である。その具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールやその他のエステル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類をあげることができる。
水溶性の有機溶媒の含有割合は、金属粒子100重量部あたり30〜900重量部であるのが好ましい。水溶性の有機溶媒の含有割合が、前記範囲未満では、前記有機溶媒を含有させたことによる分散液の粘度や蒸気圧を調整する効果が十分に得られないおそれがある。また前記範囲を超える場合には、水により分散剤を十分に膨潤させて、分散剤により導電性インク中に金属粒子を、凝集を生じることなく良好に分散させる効果が阻害されるおそれがある。
【0061】
(導電性インクによる絶縁性の基材上への塗布)
金属粒子を分散させた導電性インクを絶縁性の基材10上に塗布する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等の従来公知の塗布法を用いることが可能である。またスクリーン印刷、ディスペンサ等により絶縁性の基材10上の一部のみに塗布するようにしてもよい。
塗布後には乾燥を行う。その後、後述する熱処理に移行する。
【0062】
(塗布層の熱処理)
絶縁性の基材10上に塗布された導電性インクを熱処理することで、焼成された塗布層として基材上に固着された導電性インク層20を得る。導電性インク層20の厚みは0.05〜2μmが好ましい。
熱処理により、塗布された導電性インクに含まれる分散剤やその他の有機物を、熱により揮発、分解させて塗布層から除去すると共に、残る金属粒子を焼結状態或いは焼結に至る前段階にあって相互に密着して固体接合したような状態として絶縁性の基材10上に強固に固着させる。
熱処理は、大気中で行ってもよい。また金属粒子の酸化を防止するために、大気中で焼成後に、還元雰囲気中で更に焼成してもよい。焼成の温度は、前記焼成によって形成される導電性インク層20の金属の結晶粒径が大きくなりすぎたり、ボイドが発生したりするのを抑制する観点から700度以下とすることができる。
勿論、前記熱処理は、絶縁性の基材10がポリイミド等の有機樹脂の場合は、絶縁性の基材10の耐熱性を考慮して500℃以下の温度で行う。熱処理温度の下限は、導電性インクに含有される金属粒子以外の有機物を塗布層から除去する目的を考慮して、150℃以上が好ましい。
また熱処理雰囲気としては、特に積層される金属粒子が極微細であることを考慮して、その酸化を良好に防止するため、例えばO濃度を1000ppm以下とするなど、O濃度を減少させた非酸化性の雰囲気とすることができる。更に、例えば水素を爆発下限濃度(3%)未満で含有させる等により還元性雰囲気とすることができる。
以上で、導電性インクによる絶縁性の基材10上への塗布と、塗布層の熱処理によって導電性インク層20を形成する工程が完了する。
【0063】
(めっき工程によるめっき層の積層)
導電性インク層20上に積層するめっき層30は、めっき工程300により積層を行う。実際には銅(Cu)を用いた電解めっき工程(いわゆる電気めっき法)により行う。本実施形態では、第1導電層たる導電性インク層20が予め下層に形成されているので、第2導電層たるめっき層30を電気めっき法で容易に形成することができる。
電解めっき工程を用いることで、所定の積層厚まで速やかに積層することができる。また厚みを正確に調整して積層することができるメリットがある。また得られるめっき層30を欠陥のない均質な層とすることができる。
めっき層30の厚みは、どのようなプリント回路を作製するかによって設定されるもので、その厚みが特に限定されるものではない。しかし高密度、高性能のプリント配線の形成を目的にする限りにおいて、そのような高密度配線の形成を可能とする厚みとして、例えば1〜数十ミクロンの導電層とすることができる。
第1導電層たる導電性インク層20と第2導電層たるめっき層30との厚みの関係は、第1導電層たる導電性インク層20は、絶縁性の基材10の表面を導電性にすることで、第2導電層たるめっき層30の形成に必要な下地形成の役割をなすもので、絶縁性の基材10の表裏表面を確実に被覆する限りにおいて、その厚みは薄くても十分である。これに対してめっき層30は、プリント配線を形成するのに必要な厚みを要する。よって実質的にはめっき層30の厚みが導電層全体としての厚みと考えることができる。
電解めっき工程(いわゆる電気めっき法)は、従来公知の電気めっき浴を用いて、且つ適切な条件を選んで、所定厚の電気めっき層が欠陥なく速やかに形成されるように行うことができる。
本実施形態では、プリント配線板用基板1の導電層として、Cuで第1導電層たる導電性インク層20を構成している。第2導電層たるめっき層30をCuで構成した場合、導電性インク層20としては、Cuとするのがよいが、それ以外のCuとの密着性のよい金属を採用することも可能である。勿論、コスト等を考慮しない場合は、導電性インク層20、めっき層30を必ずしもCuとする必要はなく、導電性インク層20は絶縁性の基材10とめっき層30とに対して密着性のよい金属を用い、めっき層30は導電性に優れた金属を用いることができる。
【0064】
既述したように、絶縁性の基材10と第1導電層たる導電性インク層20との間での密着性を上げるために、予めNi、Cr、Ti、Siの何れか1又は2以上の元素からなる介在層を存在させるようにしてもよい。この場合は、介在層を形成する工程が予備処理として入る。この予備処理は、例えばポリイミド等の樹脂性の絶縁性の基材10をアルカリ処理することで、樹脂表面に官能基を露出させ、これに前記した金属元素の金属酸を作用させることで介在層を得る。またSiの介在層については、樹脂性の絶縁性の基材10をシランカップリング処理することで得る。
【0065】
以上のように本発明に係るプリント配線板用基板1を用いてなるプリント配線板3及びその製造方法によれば、従来の両面プリント配線板及びその製造方法に比べて、製造に高価な真空設備を必要とせず、設備コストを抑えることができると共に、製造効率が良く、サイズ的な制限を受けることがない。またデスミア処理が不要で、有機物接着剤を使用することなく、且つ基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いて、高密度、高性能、導電層の十分な薄肉化を可能とすることができる。またエッチング工程時に精度良くエッチングを行うことができる。(いわゆるエッチングダレを防止できる。)また高密度、高性能な両面プリント配線板の大量生産化を実現できる。
【0066】
つまり従来の両面プリント配線板5は、図6、図7に示すように、絶縁性の基材10の表裏表面にスパッタリング法により銅の薄膜を積層することで導電層50が形成された銅張積層基板4を用いて、スルーホール形成工程100により、スルーホール11を形成した後、デスミア処理を行い、めっき工程300により、無電解めっき工程、電解めっき工程を行うことでめっき層30を形成し、レジストパターン形成工程400、配線回路形成工程500を経て製造されるものが一般的であった。
よってスパッタリング法を行うための真空設備を必要とし、設備の建設、維持、運転等、設備コストが高いものであった。また使用する絶縁性の基材10の供給、薄膜形成、絶縁性の基材10の収納等の全てを真空中で取り扱わなければならないと共に、スルーホール11の形成後にデスミア処理が必要となり、製造効率が悪く、絶縁性の基材10のサイズを大きくすることに限界があった。
また配線回路の厚みが元の銅張積層基板4の厚みとめっき層30の厚みとを加算した厚みとなるため、配線回路が厚肉となり、高密度、高性能な配線回路の作製が困難であると共に、エッチング工程時に精度良くエッチングを行うことが困難であった(いわゆるエッチングダレが生じていた)。
【0067】
次に図4、図5を参照して、本発明に係るプリント配線板の製造方法の変形例を説明する。
本変形例は、プリント配線板3をプリント配線板用基板1を用い、セミアディティブ法により製造するものである。その他の構成については、既述した本発明の実施形態と同一である。同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号を付し、以下の説明を省略する。
【0068】
まず図4を参照して、スルーホール形成工程100により、絶縁性の基材10にドリル加工やレーザー加工等を用いてスルーホール11を形成する。
次に導電性インク塗布工程200により、スルーホール11の内孔の全表面及び絶縁性の基材10の表裏表面に金属粒子を含む導電性インクを塗布する。
その後、図示しない熱処理工程により、塗布させた導電性インク中の金属粒子を金属層として絶縁性の基材10上に固着させる。これにより絶縁性の基材10の表裏表面に、導電層となる金属粒子を含む導電性インク層20が形成される。
以上により、図4に示すように、プリント配線板用基板1が製造される。
【0069】
次に図4に示すように、レジストパターン形成工程400により、プリント配線板用基板1の表裏表面にレジスト40を積層した状態で、パターンマスク41を用いて露光し、現像を行うことで、図5に示すように、レジストパターン42を形成し、配線パターンとなるべき部分以外を被覆する。
次にめっき工程300により、配線パターンとなるべき部分に、銅(Cu)を用いた電解めっき工程(いわゆる電気めっき法)によりめっき層30を形成する。
これにより、導電性インク層20を第1導電層とし、該第1導電層の上に積層されるめっき層30を第2導電層とする導電層が形成される。つまり第1導電層たる導電性インク層20を下地として、第2導電層たるめっき層30がレジスト40を用いてセミアディティブ法によりパターン形成される。
【0070】
その後、図5に示すように、配線回路形成工程500のレジストパターン剥離工程520により、レジストパターン42を剥離する。
次に図5に示すように、配線回路形成工程500のエッチング工程510により、レジストパターン剥離工程520により露出された導電性インク層20を除去する。
以上の工程を経ることで、本変形例に係るプリント配線板用基板1を用いたプリント配線板3が製造される。
なお本変形例においては、レジストパターン形成工程400の前に、スルーホール11の内孔の全表面及び絶縁性の基材10の表裏表面を無電解めっき層で被覆する無電解めっき工程を備える構成としてもよい。
このような構成とすることで、第1導電層たる導電性インク層20の厚みを薄肉なものとすることができる。よってインク量を節約することができ、コスト削減を図ることができるプリント配線板用基板1及びプリント配線板3とすることができる。
【実施例1】
【0071】
溶媒を水として、粒子径40nmの銅粒子を分散させた、銅の濃度8重量%の導電性インクを用意し、これをスルーホールを形成した絶縁性の基材であるポリイミドフィルム(カプトンEN)の内孔の全表面及び表裏表面に塗布し、60℃で、10分間、大気中にて乾燥した。更に250℃で30分間、窒素雰囲気中(酸素濃度100ppm)で熱処理を実施した。このとき得られた導電性インク層の抵抗値は、40μΩcmであった。更に導電性インク層の表裏表面に銅の電気めっきを行うことにより、12μmの厚みのプリント配線板用基板を得た。
【実施例2】
【0072】
熱処理の雰囲気を3%水素、97%窒素にした以外は実施例1と同様に行った。このとき得られた導電性インク層の抵抗値は10μΩcmであった。更に導電性インク層の上に銅を電気めっきすることにより、12μmの銅の厚みのプリント配線板用基板を得た。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、高密度、高性能のプリント配線板用基板(主として両面プリント配線板用)及びプリント配線板(主として両面プリント配線板)を、真空設備を必要とすることなく、低コストで、良好に提供することができ、プリント配線の分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0074】
1 プリント配線板用基板
2 プリント配線板用基板
3 プリント配線板
4 銅張積層基板
5 両面プリント配線板
10 基材
11 スルーホール
20 導電性インク層
30 めっき層
40 レジスト
41 パターンマスク
42 レジストパターン
50 導電層
100 スルーホール形成工程
200 導電性インク塗布工程
300 めっき工程
400 レジストパターン形成工程
500 配線回路形成工程
510 エッチング工程
520 レジストパターン剥離工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基材と、該基材の表面を被覆する導電層とからなるプリント配線板用基板であって、前記基材は、該基材を貫通するスルーホールを有すると共に、前記導電層は、前記スルーホールの内孔の全表面及び前記基材の表裏表面を被覆する金属粒子を含む導電性インク層からなることを特徴とするプリント配線板用基板。
【請求項2】
前記導電層は、前記スルーホールの内孔の全表面及び前記基材の表裏表面を被覆する金属粒子を含む導電性インク層からなる第1導電層と、該第1導電層の上に積層されるめっき層からなる第2導電層とからなることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板用基板。
【請求項3】
前記めっき層は、無電解めっき又は/及び電解めっきで形成されていることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板用基板。
【請求項4】
前記導電性インク層は、1〜500nmの粒子径をもつ金属粒子を含む導電性インクからなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項5】
前記金属粒子が錯化剤と分散剤とを含む水溶液中で、還元剤の働きにより金属イオンを還元する液相還元法によって得られた粒子であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項6】
前記金属粒子がチタンレドックス法によって得られた粒子であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項7】
前記絶縁性の基材と前記導電性インク層との間に、Ni、Cr、Ti、Siの何れか1又は2以上の元素からなる介在層を存在させてあることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のプリント配線板用基板。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載のプリント配線板用基板を用いて製造したプリント配線板。
【請求項9】
前記第2導電層は、前記第1導電層を下地として、レジストを用いたセミアディティブ法によりパターン形成されていることを特徴とする請求項8に記載のプリント配線板。
【請求項10】
絶縁性の基材にスルーホールを形成するスルーホール形成工程と、該スルーホール形成工程の後に、スルーホールが形成された絶縁性の基材に、溶媒に分散した金属粒子を含む導電性インクを塗布する導電性インク塗布工程と、該導電性インク塗布工程の後に、熱処理を行う熱処理工程とを少なくとも備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理工程の後に、電解銅めっきを行う電解めっき工程と、該電解めっき工程の後に、レジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、該レジストパターン形成工程の後に、エッチングを行うエッチング工程とを少なくとも備えることを特徴とする請求項10に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
前記電解めっき工程の前に、無電解めっき行う無電解めっき工程を備えることを特徴とする請求項11に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項13】
絶縁性の基材にスルーホールを形成するスルーホール形成工程と、該スルーホール形成工程の後に、スルーホールが形成された絶縁性の基材に、溶媒に分散した金属粒子を含む導電性インクを塗布する導電性インク塗布工程と、該導電性インク塗布工程の後に、熱処理を行う熱処理工程と、該熱処理工程の後に、レジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、該レジストパターン形成工程の後に、電解銅めっきを行う電解めっき工程と、該電解めっき工程の後に、前記レジストパターン形成工程で形成されたレジストパターンを剥離するレジストパターン剥離工程と、該レジストパターン剥離工程の後に、レジストパターン剥離工程により露出された導電性インク層を除去する導電性インク層除去工程とを少なくとも備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項14】
前記レジストパターン形成工程の前に、無電解めっきを行う無電解めっき工程を備えることを特徴とする請求項13に記載のプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−187764(P2011−187764A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52569(P2010−52569)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】