説明

プレーナ型アクチュエータ

【課題】可動部の振動特性(Q値)を簡易に調整できるプレーナ型アクチュエータを提供する。
【解決手段】可動部4に備えられる駆動コイル5への通電を行うアルミニウム配線6a,6bを、固定部2に対して可動部4を揺動可能に支持するトーションバー3a,3b上に形成する。また、トーションバー3a,3b上に、アルミニウム配線6a,6bを挟んで線対称に、可動部4の振動特性(Q値)を調整するための特性調整部11を、アルミニウム配線6a,6bと同じ材料又はアルミニウム配線6a,6bの配線保護膜と同じ材料によってアルミニウム配線6a,6b又は配線保護膜の形成工程で同時に形成する。そして、特性調整部11の形成パターンの選択によって、可動部4の振動特性(Q値)を要求特性(要求Q値)に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部と、電気要素を備えた可動部と、固定部に可動部を揺動可能に軸支するトーションバーとが半導体基板で形成されるプレーナ型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプレーナ型アクチュエータとして、例えば特許文献1に記載された電磁駆動式のプレーナ型アクチュエータがある。
このアクチュエータは、半導体基板を異方性エッチングして、枠状の固定部と、可動部と、固定部に可動部を揺動可能に軸支するトーションバーとを一体形成し、可動部に駆動コイル(電気要素)を設け、トーションバーの軸方向と平行な可動部両端縁部の駆動コイルに静磁界を作用させる静磁界発生手段(例えば永久磁石)を設けて構成される。
【0003】
そして、外部の駆動回路から可動部の駆動コイルに対して電流を供給し、駆動コイルを流れる電流と永久磁石の静磁界との相互作用により発生する駆動力(ローレンツ力)によって、可動部をトーションバーの軸回りに揺動させる。
ここで、可動部に反射ミラーを設ければ、可動部を揺動駆動することで、反射ミラーに照射した光ビームの反射光を走査できるので、前記プレーナ型アクチュエータは、光スキャナやレーザプロジェクタ等の光デバイスにおける光走査用アクチュエータとして好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−295780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、可動部の揺動駆動においては、駆動コイルに流す交流電流の周波数を、可動部の共振周波数付近に設定すれば、少ない電流で所望の揺動角に駆動することができ、共振周波数を利用して高速に振動させる場合には、アクチュエータの振動系におけるQ値を高めに設定し、共振周波数で得られる振動エネルギーを高くすることが好ましい。
一方、可動部を低速で駆動する場合(交流電流の周波数を共振周波数よりも低く設定する場合)、駆動信号に共振周波数成分が含まれてしまうと、可動部が共振して微振動を生じるので、前記Q値を低めに設定し、共振周波数付近での振動エネルギーを小さくすれば、共振による可動部の微振動を抑制することができる。
【0006】
このように、アクチュエータの振動系におけるQ値は、駆動速度の要求などに応じて適正な値が異なるため、Q値を要求値に簡易に調整できるようにすることが望まれていた。
尚、前記Q値とは、共振のピークの鋭さを表す振動特性値であり、振動エルギーが最大となる周波数をω0、振動エネルギーが最大値の半値となる周波数をω1,ω2としたときに、数1に従って算出される。数1の分母の「ω2−ω1」は所謂半値幅である。
【数1】

【0007】
本発明は上記問題点に着目してなされたものであり、可動部の振動特性を簡易に調整できるプレーナ型アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、請求項1に係る発明は、固定部と、電気要素を備えた可動部と、前記固定部に前記可動部を揺動可能に軸支するトーションバーとを、半導体基板で形成したプレーナ型アクチュエータにおいて、前記トーションバー上に、前記可動部の振動特性を調整するための特性調整部を形成する構成とした。
【0009】
かかる構成では、トーションバー上に形成される特性調整部の面積,数,配置など(形成パターン)によって、トーションバーの機械的特性が変化し、アクチュエータの振動特性が変化するので、同じ形状・材質の可動部及びトーションバーを用いながら、可動部の振動特性を容易に要求特性に設定できる。
【0010】
上記請求項1の構成において、請求項2のように、前記トーションバー上に、前記電気要素の通電回路を構成する配線が形成される場合に、前記特性調整部を前記配線の材料によって形成することができる。
かかる構成では、特性調整部が配線の材料で形成されるので、配線と同じ工程で同時に形成させることが可能で、特性調整部の形成も容易に行える。
【0011】
上記請求項2の構成において、請求項3のように、前記特性調整部のうちの少なくとも一部が、前記配線と共に、前記電気要素の通電回路を構成するようにできる。
この場合、特性調整部のうちの少なくとも一部は、可動部の振動特性の調整機能を有し、かつ、配線と共に、可動部の電気要素に対する通電回路として機能するよう構成され、換言すると、特性調整部は、可動部の電気要素に対して電気的に接続されて配線として機能しつつ、その形成パターンによって振動特性の調整を行う。
【0012】
上記請求項3の構成において、請求項4のように、前記特性調整部のうちの少なくとも一部が、補助導通部を介して前記電気要素に対して電気的に接続される構成とすることができる。
この場合、例えば、特性調整部が、トーションバーの軸方向に分断される場合は、分断部分を、補助導通部を介して導通させ、特性調整部と補助導通部とを組み合わせて電気要素に対して電気的に接続される。
【0013】
上記請求項1の構成において、請求項5のように、前記トーションバー上に、前記電気要素の通電回路を構成する配線が形成されると共に、前記配線を被覆する配線保護膜が形成される場合、前記特性調整部を前記配線保護膜の材料によって形成することができる。
かかる構成では、特性調整部が配線保護膜の材料で形成されるので、配線保護膜と同じ工程で同時に形成させることが可能で、特性調整部の形成も容易に行える。
【0014】
上記請求項1〜5の構成において、請求項6のように、前記振動特性を、前記可動部の振動系におけるQ値とすることができる。
この場合、特性調整部の形成パターンによって可動部のQ値が変化するので、要求のQ値が得られる形成パターンに従って特性調整部を設けることで、共振周波数でより高い振動エネルギーを得られる高Q値に設定したり、共振周波数付近での振動エネルギーの変化を小さくして、共振周波数を外れた周波数での安定駆動を実現できるように、低Q値に設定したりすることができる。
【0015】
また、請求項2〜5構成において、請求項7のように、前記特性調整部を、前記トーションバーの幅方向で前記配線を挟むように、対をなして配することができる。
この場合、配線を軸として線対称になるように、特性調整部を配線の両側に設けて、可動部の振動特性を調整する。
【0016】
また、請求項2〜5構成において、請求項8のように、前記配線が、前記トーションバーの軸方向に平行な複数の配線からなり、これら複数の配線を前記トーションバーの幅方向で挟むように、前記特性調整部が対をなして配される構成とすることができる。
この場合、トーションバーに対して配線が複数形成され、これら複数の配線の束を軸として線対称になるように、特性調整部を複数の配線の束の両側に設けて、可動部の振動特性を調整する。
【0017】
更に、請求項2〜5構成において、請求項9のように、前記配線が、前記トーションバーの軸方向に平行な複数の配線からなり、前記複数の配線で挟まれる領域に前記特性調整部を配する構成とすることができる。
この場合、トーションバーに対して配線が複数形成され、これら配線で挟まれる領域に特性調整部を設けて、可動部の振動特性を調整する。
【0018】
また、請求項1〜9の構成において、請求項10のように、前記特性調整部が、前記トーションバーの軸方向において、複数に分断されて配される構成とすることができる。
この場合、特性調整部が、トーションバーの軸方向において複数に分断され、該分断パターン(間隔、分断数など)によっても、可動部の振動特性が調整される。
【0019】
また、請求項1〜10の構成において、請求項11のように、前記特性調整部が、前記トーションバーの幅方向に相互に隣接して複数配される構成とすることができる。
この場合、特性調整部が、トーションバーの幅方向に相互に隣接して複数配され、このトーションバーの幅方向に並べられる特性調整部の数や、個々の特性調整部の長さ・幅などによって、可動部の振動特性が調整される。
【0020】
上記請求項1〜11の構成において、請求項12のように、前記電気要素が駆動コイルであり、該駆動コイルに前記配線を介して電流を供給することにより発生する駆動力で、前記可動部を前記トーションバーの軸回りに揺動させる構成とすることができる。
【0021】
また、請求項13に係る発明は、固定部と、電気要素を備えた可動部と、前記固定部に前記可動部を揺動可能に軸支するトーションバーとを、半導体基板で形成し、前記トーションバー上に、前記電気要素の通電回路を構成する配線が形成されるプレーナ型アクチュエータにおいて、前記トーションバー上に、配線材料によって形成され、前記電気要素に対して電気的に接続されない調整部を備える構成とした。
【0022】
かかる構成では、トーションバー上に、可動部の電気要素の通電回路を構成する配線と共に、配線材料によって形成されるものの、前記電気要素に接続されずに、前記通電回路を構成しない調整部が備えられ、この通電回路を構成しない調整部が付加的に設けられることで、可動部の振動特性が調整される。
【発明の効果】
【0023】
かかるプレーナ型アクチュエータによれば、トーションバーなどの材質・形状を変更することなく、可動部の振動特性を容易に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るプレーナ型アクチュエータを示す平面図
【図2】アクチュエータの駆動電流の周波数と振動エネルギーとの相関を、Q値の高低毎に示す線図
【図3】図1の部分拡大図
【図4】実施形態におけるアルミニウム配線及び配線保護膜の形成工程を示す図
【図5】実施形態においてアルミニウム配線と同じ材料で形成される特性調整部の形成パターンとQ値との相関を示す図
【図6】実施形態においてアルミニウム配線と同じ材料で形成される特性調整部の形成パターンとQ値との相関を示す図
【図7】実施形態において配線保護膜と同じ材料で形成される特性調整部の形成パターンとQ値との相関を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るプレーナ型アクチュエータの実施形態を示す。
図1に示すプレーナ型アクチュエータは、半導体製造技術を利用して製造したMEMS(micro electro mechanical system)デバイスであって、電磁駆動式のアクチュエータである。
【0026】
図1において、このアクチュエータ1は、枠状の固定部2と、一対のトーションバー3a,3bと、可動部4とを備え、前記可動部4は、前記一対のトーションバー3a,3bを介して前記固定部2の開口部に揺動可能に支持される。
前記固定部2、トーションバー3a,3b及び可動部4は、半導体基板を用いて一体に形成される。具体的には、例えば、Si単結晶基板をKOH水溶液による結晶軸異方性エッチングを行うことによって、前記トーションバー3a,3b及び可動部4が形成される。
【0027】
前記可動部4の周縁部には、通電時に磁界を発生する駆動コイル5(電気要素)が形成され、該駆動コイル5は、トーションバー3a,3b上に形成されるアルミニウム配線6a,6bを介し、固定部2に形成された一対の電極端子7a,7bに電気的に接続される。前記電極端子7a,7bは、図外の駆動回路(制御ユニット)の電極端子に対し、例えばワイヤーボンディング等により電気的に接続される。
即ち、前記駆動コイル5には、前記アルミニウム配線6a,6bを含む通電回路によって電流が供給される。
【0028】
尚、本実施形態では、前述のようにアルミニウム配線を用いるが、配線材料をアルミニウムに限定するものではなく、導電性を有する公知の材料を配線材料として適宜選択できる。
また、トーションバー3a,3bの軸方向と平行な可動部4の対辺部と対面する固定部2の外方には、トーションバー3a,3bの軸方向と平行な可動部4の対辺部の駆動コイル5部分に静磁界を作用させる静磁界発生手段である一対の永久磁石8,8が、互いに反対磁極を対向して配置されている。
【0029】
そして、前記駆動コイル5に電流を供給すると、永久磁石8,8によって発生する静磁界が、トーションバー3a,3bの軸方向と平行な可動部4の対辺部を流れる駆動コイル5の電流に作用することで、駆動コイル5にローレンツ力を発生させ、上記可動部4を、前記トーションバー3a,3bを中心に揺動させる。
ここで、前記可動部4に反射ミラーを設ければ、前記アクチュエータ1を、レーザプリンタのスキャナや、投影型のディスプレイのスキャナ等として用いることができる。
【0030】
尚、永久磁石8,8は、可動部に対してローレンツ力が働く磁場を生じるように配置すればよく、図1に示した配置の他、例えば特開平7−175005号公報に開示されるように、対をなす永久磁石を上下に配置する構成とすることができ、また、特開2004−206043号公報に開示されるように、トーションバーの軸方向に対して略直角でかつ可動部に対して略平行な外部磁界成分を発生するように、永久磁石を配置する構成などであってもよく、更には、永久磁石8,8に代えて電磁石を用いることもできる。
【0031】
ところで、前記トーションバー3a,3bと可動部4の固有振動数に略等しい周波数の交流電流が駆動コイル5に供給されると、可動部4はこの周波数で共振し、共振のピークの鋭さを表すQ値が高いと、図2に示すように、共振周波数で得られる振動エネルギーが高くなり、共振周波数で効率よく揺動させることができる。
また、前記Q値を低く抑えた設定にすれば、図2に示すように、共振周波数付近での振動エネルギーが小さくなって、低速で駆動させる場合に駆動信号に共振周波数成分が含まれても、可動部4が共振して微振動してしまうことを抑制できる。
【0032】
このように、前記Q値の要求は、可動部4を高速で駆動するか低速で駆動するかのなどの仕様によって異なるため、本実施形態では、図1,図3に示すように、前記トーションバー3a,3b上に、前記アルミニウム配線6a,6bに加えて、アルミニウム配線6a,6bと同じ配線材料であるアルミニウムによって薄い帯状の特性調整部11を形成し、該特性調整部11の形成パターンによって、Q値(振動特性)を要求値に調整するようにしてある。
【0033】
前記特性調整部11は、トーションバー3a,3b上に形成されることで、特性調整部11が形成されない場合に比して、トーションバー3a,3bの機械的特性を変化させ、これによって、Q値(振動特性)を変化させるものである。
尚、図1,図3に示した特性調整部11は、前記アルミニウム配線6a,6bと同じ配線材料によって前記アルミニウム配線6a,6bの形成工程で同時に形成され、トーションバー3a,3b上に形成されるアルミニウム製の薄膜である点でアルミニウム配線6a,6bと共通するが、特性調整部11は、前記駆動コイル5に対して電気的に接続されず、駆動コイル5の通電回路を構成するものでない。
【0034】
図1,図3に示した特性調整部11は、トーションバー3a,3bの軸方向に沿って延設される4列の特性調整部11a〜11dからなり、トーションバー3a,3bの幅方向でアルミニウム配線6a,6bを両側から挟むように、アルミニウム配線6a,6bを挟んで両側に2列ずつ配され、アルミニウム配線6a,6bを軸として線対称に設けられることで、可動部4の揺動バランスが崩れて片側に大きく揺動することがないようにしている。
【0035】
即ち、アルミニウム配線6a,6bを境とするトーションバー3a,3bの幅方向の一方側に、特性調整部11aと特性調整部11bとが、トーションバー3a,3bの幅方向に隣接して配され、また、アルミニウム配線6a,6bを境とするトーションバー3a,3bの幅方向の他方側に、特性調整部11cと特性調整部11dとが、トーションバー3a,3bの幅方向に隣接して配され、特性調整部11aと特性調整部11dとが対をなして、アルミニウム配線6a,6bを挟み、特性調整部11bと特性調整部11cとが対をなして、アルミニウム配線6a,6bを挟むように、4列の特性調整部11a〜11dがトーションバー3a,3b上にそれぞれ配される。
【0036】
前記特性調整部11a〜11dのトーションバー3a,3bの軸方向の全長Lは、トーションバー3a,3bの長さよりも短く、前記特性調整部11a〜11dの幅Wはアルミニウム配線6a,6bの幅と略同等で、また、厚さtも、アルミニウム配線6a,6bと略同等に形成される。
更に、特性調整部11a〜11dそれぞれは、トーションバー3a,3bの軸方向に沿って4個に分断されており、かつ、分断された個々の調整部材Xの長さLd、及び、調整部材X間のトーションバー3a,3bの軸方向における間隔SPは一定に設定されている。
【0037】
換言すれば、長さLdの調整部材Xを、トーションバー3a,3bの軸方向に一定の間隔SPで4個並べ、1例の特性調整部11が構成される。
但し、相互に長さLdが異なる調整部材Xを、トーションバー3a,3bの軸方向に沿って複数並べて1列の特性調整部11を形成させることができ、更に、1列の特性調整部11を構成する複数の調整部材Xが、相互に異なる間隔SPでトーションバー3a,3bの軸方向に沿って並べられる構成とすることができる。
【0038】
図4は、前記アクチュエータ1における駆動コイル5、アルミニウム配線6a,6b及び特性調整部11a〜11dの製造工程を示す。
まず、図4(a)に示すような、2枚の単結晶シリコンウェハ21a,21cの間に熱酸化膜層21bを挟んで接合した積層体であるSOI(Silicon On Insulator)基板21について、図4(b)に示すように、例えば酸化炉によって表裏面を熱酸化してシリコン酸化膜22a,22bを形成する。
【0039】
次いで、図4(c)に示すように、前記シリコン酸化膜22a上面全体に、アルミニウム(Al)からなる金属膜23をスパッタリング等により形成する。
次に、前記金属膜23上面全体に感光性レジストをスピンコートにより均一に塗布し、その後、駆動コイル5、該駆動コイル5から引き出されるアルミニウム配線6a,6b、電極端子7a,7b、更に、特性調整部11の形成部分を遮光領域とするフォトマスクを被せて紫外線露光し、露光後、露光(感光)された領域の感光性レジストを、現像液を用いて溶解除去する。
【0040】
そして、以上の工程により形成されたレジストパターンをマスクとして金属膜23をドライエッチングし、図4(d)に示すように、駆動コイル5、アルミニウム配線6a,6b、電極端子7a,7b、更に、特性調整部11(図4(d)では電極端子7a,7b及び特性調整部11の図示省略)を形成する。
その後、図4(e)に示すように、駆動コイル5及びアルミニウム配線6a,6bを、被覆する配線保護膜24を形成する。前記配線保護膜24の材質は、有機膜としてのポリイミドや、無機膜としての二酸化ケイ素SiO2,窒化ケイ素Si34などである。
駆動コイル5、アルミニウム配線6a,6b、電極端子7a,7b、特性調整部11の製造工程を、図4に示した工程に限定するものではないが、特性調整部11を、アルミニウム配線6a,6bと同じ工程で同じ配線材料で形成させるようにすれば、特性調整部11を付加的に設けることによる製造工程の増大を回避できる。尚、駆動コイル5が多層に形成されるアクチュエータ1であってもよい。
【0041】
図5は、前記特性調整部11の形成パターンとQ値との相関を示すものであり、図1,図3に示した特性調整部11a〜11dは、系列(ii)のDパターンに相当する。
図5の系列(ii)のA〜Cパターンは、Dパターンに対して特性調整部11a〜11dの全長を短くしたパターン、換言すれば、全長Ldの調整部材Xについてのトーションバー3a,3bの軸方向に沿った並び数を減らしたパターンを示し、Dパターンが、トーションバー3a,3bの軸方向に沿って調整部材Xを4個並べたのに対し、Cパターンは3個、Bパターンは2個、Aパターンは1個の場合を示す。
【0042】
図5の系列(ii)のA〜Dパターンに示すように、調整部材Xの並び数を減らし、特性調整部11a〜11dの全長Lを短くすると、Q値は増大変化を示し、特性調整部11a〜11dを備えない場合に対しては、調整部材Xを付加する数(特性調整部11の総面積)を増やすほどQ値は低下する。
そこで、要求のQ値に近いQ値が得られる調整部材Xの並び数(特性調整部11a〜11dの全長L)を、実際にアクチュエータ1に適用する特性調整部11a〜11dの形成パターンとして選択し、選択した形成パターンに従って特性調整部11a〜11dを、アクチュエータ1のトーションバー3a,3b上にアルミニウム配線6a,6bと共に設けるようにする。
【0043】
具体的には、特性調整部11a〜11dを備えない場合に対して、Q値の低下要求が高いほど、A〜DパターンのうちのDパターン側を選択し(調整部材Xの並び数を増やし)、特性調整部11a〜11dの全長Lを長くする。
このように、特性調整部11の形成パターンの選択によって実際のQ値を要求値に近づけることができ、例えば、可動部4を高速駆動させるか低速駆動させるかによって異なるQ値の要求を、特性調整部11の形成パターンの選択によって満たすことができる。
【0044】
前記特性調整部11は、前記アルミニウム配線6a,6bの形成工程において同じ配線材料を用いて形成されるから、特性調整部11を付加的に形成することによる工程数の増大がなく、また、半導体製造技術(フォトマスク)を用いて特性調整部11を形成させることで、特性調整部11を寸法精度良く形成できるから、要求のQ値に高精度に調整することができる。
特性調整部11とQ値との相関は、基本的には、特性調整部11の総面積が増えるほどQ値は低下する傾向を示し、係る基本的な傾向に基づいて、特性調整部11の形成パターンは適宜変更することが可能である。
【0045】
特性調整部11の幅を一定とすると、上記のように、特性調整部11の全長Lが長いほどQ値が下がる傾向となり、このQ値変化の傾向は、トーションバー3a,3b軸方向に沿って複数に分断しない場合でも同様で、特性調整部11を分断しないで設けた例を、図5の系列(i)に示してある。
系列(i)のAパターンは、特性調整部11a〜11dを備えない場合であり、Bパターン〜Dパターンでは、4列の特性調整部11a〜11dを、アルミニウム配線6a,6bを挟んで両側に2列ずつ設けてあり、特性調整部11a〜11dはそれぞれ分断されることなくトーションバー3a,3bの軸方向に沿って連続的に形成される。
【0046】
系列(i)のBパターン〜Dパターンのうち、特性調整部11a〜11dの全長Lは、Bパターンが最も短く、次いでCパターンが長く、Dパターンが最も長く設定されており、Q値は、A>B>C>Dの順になり、系列(ii)と同様に、特性調整部11a〜11dの全長Lが長くなるほど、振動系のQ値をより低い値に調整される。
ところで、トーションバー3a,3bの捩れ運動に伴って特性調整部11a〜11dに剪断応力が発生するが、この剪断応力により発生するストレスマイグレーションによって特性調整部11a〜11dにボイドが発生することで、特性調整部11a〜11dを含むトーションバー3a,3b全体の捩れ剛性が変化し、可動部4の共振周波数などの駆動特性が変化してしまう可能性がある。
【0047】
ここで、系列(i)のCパターンと系列(ii)のCパターンとは、略同等のQ値を示すが、系列(ii)のように、トーションバー3a,3bの軸方向に特性調整部11a〜11dを複数に分断し、個々の調整部材Xの長さを短くすれば、系列(i)のように、トーションバー3a,3bの軸方向に連続して特性調整部11a〜11dを形成する場合に比べて、特性調整部11a〜11dに発生する剪断応力を小さくできる。
そして、特性調整部11a〜11dに発生する剪断応力を小さくできれば、ボイドの発生、引いては、特性調整部11a〜11dを含むトーションバー3a,3b全体の捩れ剛性の変化を抑制でき、可動部4の共振周波数が変化してしまうことを抑制できる。
【0048】
このため、系列(i)のように、トーションバー3a,3bの軸方向に連続して特性調整部11a〜11dを形成するパターンよりも、系列(ii)のように、トーションバー3a,3bの軸方向に特性調整部11a〜11dを複数に分断して設け、個々の調整部材Xのトーションバー3a,3bの軸方向の長さが短くなるようにすることが好ましい。
換言すれば、特性調整部11a〜11dに発生する剪断応力を小さくして、可動部4の共振周波数の変化を抑制するため、特性調整部11は多くに分割して分散配置させることが好ましく、特性調整部11a〜11dの形成パターンは、要求のQ値が得られ、かつ、共振周波数の変化を抑制できるように選択するとよい。
【0049】
尚、図5に示す系列(i)及び系列(ii)では、トーションバー3a,3bを挟んで一方側に2列、他方側に2列の計4列の特性調整部11a〜11dを形成したが、列数を4列に限定するものではなく、トーションバー3a,3bを挟んで一方側に1列、他方側に1列の計2列の特性調整部11を形成させたり、トーションバー3a,3bを挟んで一方側に3列、他方側に3列の計6列の特性調整部11を形成させたりすることができ、列数を4列に限定するものではない。
【0050】
また、例えば、トーションバー3a,3bを挟んで対称位置に形成される特性調整部11a,11dの全長と、同じく対称位置に形成される特性調整部11b,11cの全長とを、相互に異なる長さにすることもできる。
更に、特性調整部11a,11dと特性調整部11b,11cとの一方がトーションバー3a,3bの軸方向に分断され、他方がトーションバー3a,3bの軸方向に連続して形成される構成とすることもできる。
【0051】
また、所定幅及び所定長さの調整部材Xを千鳥状に配置したり、調整部材Xを円弧状に並べたりすることが可能であって、調整部材Xの配置は、縦横に一定の間隔で直線的に並べる構成に限定されない。
また、短冊状の特性調整部11を、その長手方向をトーションバー3a,3bの幅方向として配置することができ、更に、特性調整部11の形状は短冊状に限定されず、楕円形などの他の形状を適宜選択できる。
【0052】
また、前記トーションバー3a,3bそれぞれに形成されるアルミニウム配線6は1本に限定されるものではなく、図5の系列(iii)及び系列(iv)に示すように、前記トーションバー3a,3bそれぞれに複数(系列(iii)及び系列(iv)の場合、2本)のアルミニウム配線6が相互に平行に形成される構成であっても良い。
1個のトーションバー3上に複数形成されるアルミニウム配線6は、1個の電極端子7に対し並列に接続される構成であっても良いし、また、一対の電極端子7a,7bを固定部2の一方端(トーションバー3a,3bの一方側)に並べて配置し、電極端子7aに接続されるアルミニウム配線と、電気端子7bに接続されるアルミニウム配線とが、同じトーションバー3上に併設される構成であっても良い。
【0053】
図5の系列(iii)に示す例では、2本のアルミニウム配線6-1,6-2が、トーションバー3の軸に対して線対称に相互に近接して平行に配置され、これら2本のアルミニウム配線6-1,6-2を挟むように、両側にそれぞれ1列の計2列の特性調整部11a,11bが形成される。
また、系列(iii)のAパターン〜Dパターンでは、2列の特性調整部11a,11bが、トーションバー3の軸方向に沿って複数に分断され、かつ、調整部材Xのトーションバー3の軸方向に沿った並び数(分割数)を、1個から4個まで段階的に増やしており、調整部材Xの並び数(特性調整部11の全長L)が増えることで、Q値が減少する特性を示している。
【0054】
一方、図5の系列(iv)に示す例では、2本のアルミニウム配線6-1,6-2が、トーションバー3の両側面に近い側に配置されることで、平行に対向する2本のアルミニウム配線6-1,6-2の間隔が空けられ、この2本のアルミニウム配線6-1,6-2で挟まれる領域に、2列の特性調整部11a,11bをトーションバー3の軸に対して線対称に配置している。
この系列(iv)のAパターン〜Dパターンでも、系列(iii)のAパターン〜Dパターンと同様に、調整部材Xのトーションバー3の軸方向に沿った並び数(分割数)を、1個から4個まで段階的に増やしており、調整部材Xの並び数(特性調整部11の全長L)が増えることで、Q値が減少する特性を示している。
【0055】
従って、1個のトーションバー3上にアルミニウム配線6が複数形成される構成においても、特性調整部11を付加し、かつ、特性調整部11の形成パターンを選択することで、アクチュエータ1のQ値を調整することが可能である。
ここで、1個のトーションバー3上にアルミニウム配線6が1本だけ形成される構成に対して、アルミニウム配線6を2本に増やすことによっても、Q値が減少変化するから、実際のQ値を要求値に調整するために、1個のトーションバー3上に形成されるアルミニウム配線6を1本から複数に増やし、更に、特性調整部11を付加的に形成させることで、実際のQ値を要求値にまで減少させることができる。
【0056】
この場合、増やしたアルミニウム配線6は、駆動コイル5の通電回路を構成すると共に、可動部4の振動特性(Q値)を調整するための特性調整部11としても機能することになる。
尚、トーションバー3の軸に沿って配されるアルミニウム配線の両側に線対称に2本のアルミニウム配線を配し、計3本のアルミニウム配線がトーションバー3に配される構成であっても良いし、この3本のアルミニウム配線がトーションバー3に配される構成において、中央の1本と両側の2本とで挟まれる2つの領域それぞれに特性調整部11を形成させることができる。
【0057】
また、系列(iii)及び系列(iv)では、特性調整部11が、トーションバー3の軸方向に複数に分断される構成としたが、特性調整部11を、トーションバー3の軸方向に連続して設けることができる。
但し、系列(iii)及び系列(iv)のように、特性調整部11をトーションバー3の軸方向に複数に分断した方が、特性調整部11a〜11dに発生する剪断応力を小さくして、可動部4の共振周波数の変化を抑制でき、特性調整部11をトーションバー3の軸方向に連続して設ける形成パターンよりも好ましい。
【0058】
上記系列(i)〜(iv)に示した例では、トーションバー3a,3b上に設けられる特性調整部11a〜11dの全長(調整部材Xのトーションバー3の軸方向に沿った並び数)を変更することで、Q値の調整を図るが、トーションバー3の幅方向における特性調整部11の並び数を変更することで、Q値を調整する構成とすることができる。
更に、上記系列(i)〜(iv)に示した例では、特性調整部11a〜11dは、駆動コイル5の通電回路を構成しない(電気端子7a,7b及び駆動コイル5に対して電気的に接続されない)が、特性調整部11はアルミニウム配線6と同じ配線材料で形成されるから、Q値調整のために設けられる特性調整部11を、電気端子7a,7b及び駆動コイル5に対して電気的に接続することで、配線を兼ねるように構成することができる。
【0059】
以下では、特性調整部11が配線を兼ね、駆動コイル5の通電回路を構成する実施形態を、図6に基づいて説明する。
図6の系列(v)のAパターンは、特性調整部11を備えず、トーションバー3a,3b上にアルミニウム配線6a,6bのみが形成される場合を示し、これに対し、同じ系列(v)のBパターン〜Dパターンは、トーションバー3a,3b上に形成するアルミニウム配線6の数を、2本、3本、4本と増やしたものであり、アルミニウム配線6の数を増やすことで、Q値が低下する特性を示す。
【0060】
ここで、系列(v)のAパターンを基準とすると、Bパターン〜Dパターンで増やしたアルミニウム配線6は、Q値を低下させるために付加された特性調整部11に相当することになり、Q値を調整するための特性調整部11は、駆動コイル5の通電回路を構成しないもの(前記通電回路に対して電気的に遮断されたもの)に限定されず、電気端子7と駆動コイル5とを電気的に接続し、駆動コイル5の通電回路を構成する配線であってもよい。
換言すれば、Q値を調整するために形成した特性調整部11を、電気端子7と駆動コイル5とに電気的に接続すれば配線を兼ねることになり、また、電気端子7と駆動コイル5とに電気的に接続しない場合は、配線としては機能せず、振動特性(Q値)調整用としてのみ機能することになる。
【0061】
従って、Q値を低下させて要求のQ値に調整するために、トーションバー3a,3b上に形成するアルミニウム配線6の数を、1本(必要最小数)から増やすように構成することができ、この場合、増やしたアルミニウム配線6が、Q値を調整するための特性調整部11に相当することになる。
前述のように、系列(iii)及び系列(iv)のアルミニウム配線6-1,6-2が、1つの電極端子7に対し並列に接続される場合、2本のうちの1本は、駆動コイル5の通電回路を構成とすると共に、Q値を調整するための特性調整部11として付加されたものであると見なすことができる。
【0062】
尚、一対の電極端子7a,7bを固定部2の一方端(トーションバー3a,3bの一方側)に並べて配置し、電極端子7aに接続されるアルミニウム配線と、電気端子7bに接続されるアルミニウム配線とを、同じトーションバー3上に併設させる場合には、この必要最小数である2本のアルミニウム配線のいずれか一方と並列に接続されるアルミニウム配線を付加することで、Q値を低下させる調整が行われ、前記付加したアルミニウム配線が特性調整部に相当することになる。
【0063】
また、1本のトーションバー3上に複数のアルミニウム配線6を備える場合において、これらアルミニウム配線6をトーションバー3の軸方向に分断させて設けるようにすれば、分断させない場合に比べてQ値を高くすることができ、更に、共振周波数の変化を抑制することができる。
アルミニウム配線6としても機能する特性調整部11を分断させた場合のQ値変化の様子を、図6の系列(vi),(vii)に示してあり、この系列(vi),(vii)に示すように、アルミニウム配線6の数を変化させることなく、トーションバー3の軸方向におけるアルミニウム配線6の分断数を増やすことで、Q値を増大させることができる。
【0064】
即ち、図6の系列(vi),(vii)の場合、Aパターンは、トーションバー3の軸方向において分断されないアルミニウム配線6が複数併設されるが、Bパターンは、各アルミニウム配線6をトーションバー3の軸方向に2個に分断し、また、Cパターンは、各アルミニウム配線6をトーションバー3の軸方向に3個に分断し、更に、Dパターンは、各アルミニウム配線6をトーションバー3の軸方向に4個に分断しており、分断数が増えるに従ってQ値は増大する傾向を示す。
【0065】
ここで、アルミニウム配線6をトーションバー3の軸方向に分断して設ける場合、分断部分は電気的に非導通状態となるので、系列(vi),(vii)に示す例では、前記分断部分に補助導通部を設けて導通させている。
具体的には、可動部4から固定部2にかけての全ての分断部分を包含する領域に、半導体基板材料に不純物を拡散させて拡散導通部31を形成し、この拡散導通部31を介して分断部分が電気的に導通されるようにしてある。
【0066】
前記拡散導通部31を形成する場合、図4に示す工程(b)において、酸化膜22aの拡散導通部31の形成領域に相当する部分を除去し、この酸化膜22aが除去されたシリコンウェハ21aの領域に、不純物イオンの注入或いは熱拡散によって拡散導通部31を形成する。以後は、前記工程と同様にして、アルミニウム配線6等を形成させる。
【0067】
上記実施形態では、前記特性調整部11を、アルミニウム配線6a,6bの形成工程において同じ配線材料を用いて形成する構成としたが、前記特性調整部11を、前記配線保護膜24と同じ材料によって配線保護膜24の形成行程において同時に形成させることができる。
図7は、前記特性調整部11を、前記配線保護膜24と同じ材料によって形成させる実施形態を示す。
【0068】
図7に示す系列(viii)は、前記系列(i)と同様な配置パターンで特性調整部11を設けたものであり、トーションバー3a,3bの軸方向に沿って延設される4列の特性調整部11a〜11dを備え、これら4列の特性調整部11a〜11dは、トーションバー3a,3bの幅方向でアルミニウム配線6a,6bを両側から挟むように、アルミニウム配線6a,6bを挟んで両側に2列ずつ配され、アルミニウム配線6a,6bを軸として線対称に設けられる。
但し、前記特性調整部11a〜11dは、前記配線保護膜24と同じ材料(例えばポリイミドなど)によって、配線保護膜24の形成工程(図4の(e)に示す工程)で同時に形成されるものである。
【0069】
前記配線保護膜24の形成工程は、例えば、感光性ポリイミドをスピンコートにより均一に塗布し、塗布後、アルミニウム配線6a,6bの形成領域に相当する部分が開口した形状のフォトマスクを基板上に被せ、フォトマスクの上方より紫外線を照射して感光性ポリイミドの露光を行い、露光後、露光された領域以外の感光性ポリイミドを現像液により除去することにより、露光された部分、即ち、アルミニウム配線6a,6bの形成領域に相当する部分のみが現像液に溶解されずに残り、配線保護膜24として形成される。
ここで、前記特性調整部11a〜11dを、配線保護膜24と同じ材料(感光性ポリイミド)で形成させる場合には、アルミニウム配線6a,6bの形成領域及び特性調整部11a〜11dの形成領域が開口したフォトマスクを用いて感光性ポリイミドの紫外線露光を行わせ、露光された領域以外を現像液で溶解させることで、配線保護膜24と同時に、特性調整部11a〜11dを形成することができる。
【0070】
そして、図7の系列(viii)に示すように、配線保護膜24と同じ材料で形成される特性調整部11a〜11dにおいても、アルミニウム配線6a,6bと同じ材料で特性調整部11a〜11dを形成させる場合と同様に、特性調整部11a〜11dのトーションバー3a,3bの軸方向における長さを長くすることで、Q値が減少する傾向を示す。
従って、配線保護膜24と同じ材料で形成される特性調整部11a〜11dの長さの調整によって、可動部4の振動特性(Q値)を要求値に設定することができる。
尚、配線保護膜24と同じ材料で形成される特性調整部11a〜11dの本数や幅を変化させることによっても、振動特性(Q値)を変更できる。
【0071】
また、図7の系列(ix)は、アルミニウム配線6をトーションバー3の軸方向に分断して設け、分断部分が、半導体基板材料に不純物を拡散させて形成した拡散導通部31を介して電気的に導通されるようにし、更に、トーションバー3a,3bの幅方向でアルミニウム配線6a,6bを両側から挟むように、アルミニウム配線6a,6b及び拡散導通部31を挟んで両側に1列ずつ、計2列の特性調整部11a,11bを配線保護膜24と同じ材料で形成する構成とした例を示す。
図7の系列(ix)の場合、拡散導通部31及びアルミニウム配線6a,6bを包含する領域を被覆するように配線保護膜24を形成するが、この配線保護膜24を形成する工程で、特性調整部11a,11bを配線保護膜24と同じ材料で形成する。
【0072】
特性調整部11a,11bと配線保護膜24との同時形成は、前述のように、拡散導通部31及びアルミニウム配線6a,6bを包含する領域及び特性調整部11a,11bの形成領域を開口とするマスクを用いて行える。
図7の系列(ix)のアルミニウム配線6をトーションバー3の軸方向に分断して設ける場合においても、特性調整部11a,11bのトーションバー3a,3b軸方向における長さを長くすることで、Q値が減少する傾向を示し、更に、アルミニウム配線6を分断させることはQ値を増大変化させることになるから、アルミニウム配線6の分断と特性調整部11a,11bの長さとでQ値が特定されることになる。
【0073】
従って、配線保護膜24と同じ材料で形成される特性調整部11a,11bの長さの調整及びアルミニウム配線6の分断数の設定とによって、可動部4の振動特性(Q値)を要求値に設定することができる。
尚、配線保護膜24と同じ材料で形成される特性調整部11を、図5の系列(ii)〜(iv)と同様に、トーションバー3a,3b軸方向において分断させて設けることができ、また、図5の系列(iii)と同様に、複数並んだアルミニウム配線6を挟んで両側に配線保護膜24と同じ材料で形成される特性調整部11を配置することができ、更に、図5の系列(iv)と同様に、アルミニウム配線6で挟まれる領域に、配線保護膜24と同じ材料で形成される特性調整部11を配置することもできる。
【0074】
尚、上記実施形態における固定部2を、前記トーションバー3a,3bの軸方向と直交する方向に、一対のトーションバーによって、第2固定部に支持させ、第2固定部に対して、固定部2及び可動部4を一体として揺動させ、更に、固定部2に対して可動部4を揺動させることで、可動部4が2次元に揺動する構成であってもよい。
この場合、第2固定部に対して固定部2を支持するトーションバー上に形成させる特性調整部11の形成パターンと、固定部2に対して可動部4を支持するトーションバー上に形成させる特性調整部11の形成パターンとの違いによって、第2固定部に対する固定部2及び可動部4の振動特性(Q値)と、固定部2に対する可動部4の振動特性(Q値)とを個別に調整することが可能である。
【0075】
例えば、ラスタスキャンにおける垂直走査に相当する側のQ値が、水平走査側のQ値よりも低くなるように、前記特性調整部11を形成すれば、水平走査を共振周波数付近の周波数の交流電流を用いて高速に行わせつつ、垂直走査を共振周波数よりも低い周波数によって低速に行わせる場合に、共振周波数よりも低い周波数の交流電流に、共振周波数成分が重畳しても、可動部4が微振動することを抑制でき、安定した低速駆動を行える。
【0076】
また、上記実施形態では、電磁駆動式のアクチュエータに適用した例を示したが、本発明の適用が可能なアクチュエータは、これに限らず、静電駆動式、圧電駆動式等の駆動方式のアクチュエータにも適用できる。
更に、配線材料で形成される特性調整部11の厚みtは、アルミニウム配線6a,6bや駆動コイル5とは異なる厚みtに形成されてもよし、同様に、配線保護膜24と同じ材料で形成される特性調整部11の厚みtは、配線保護膜24とは異なる厚みtに形成されてもよい。また、固定部2・可動部4の外形形状は、四角形に限定されず、丸形や楕円形などであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 プレーナ型アクチュエータ
2 固定部
3a,3b トーションバー
4 可動部
5 駆動コイル
6a,6b アルミニウム配線
7a,7b 電極端子
8 永久磁石
11 特性調整部
24 配線保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、電気要素を備えた可動部と、前記固定部に前記可動部を揺動可能に軸支するトーションバーとを、半導体基板で形成したプレーナ型アクチュエータにおいて、
前記トーションバー上に、前記可動部の振動特性を調整するための特性調整部を形成したことを特徴とするプレーナ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記トーションバー上に、前記電気要素の通電回路を構成する配線が形成され、
前記特性調整部を前記配線の材料によって形成したことを特徴とする請求項1記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項3】
前記特性調整部のうちの少なくとも一部が、前記配線と共に、前記電気要素に対する通電回路を構成することを特徴とする請求項2記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記特性調整部のうちの少なくとも一部が、補助導通部を介して前記電気要素に対して電気的に接続されることを特徴とする請求項3記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項5】
前記トーションバー上に、前記電気要素の通電回路を構成する配線が形成されると共に、前記配線を被覆する配線保護膜が形成され、
前記特性調整部を前記配線保護膜の材料によって形成したことを特徴とする請求項1記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項6】
前記振動特性が、前記可動部の振動系におけるQ値であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項7】
前記特性調整部が、前記トーションバーの幅方向で前記配線を挟むように、対をなして配されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項8】
前記配線が、前記トーションバーの軸方向に平行な複数の配線からなり、これら複数の配線を前記トーションバーの幅方向で挟むように、前記特性調整部が対をなして配されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項9】
前記配線が、前記トーションバーの軸方向に平行な複数の配線からなり、前記複数の配線で挟まれる領域に前記特性調整部を配したことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項10】
前記特性調整部が、前記トーションバーの軸方向において、複数に分断されて配されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項11】
前記特性調整部が、前記トーションバーの幅方向に相互に隣接して複数配されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項12】
前記電気要素が駆動コイルであり、該駆動コイルに前記配線を介して電流を供給することにより発生する駆動力で、前記可動部を前記トーションバーの軸回りに揺動させることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項13】
固定部と、電気要素を備えた可動部と、前記固定部に前記可動部を揺動可能に軸支するトーションバーとを、半導体基板で形成し、前記トーションバー上に、前記電気要素の通電回路を構成する配線が形成されるプレーナ型アクチュエータにおいて、
前記トーションバー上に、配線材料によって形成され、前記電気要素に対して電気的に接続されない調整部を備えたことを特徴とするプレーナ型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−43554(P2011−43554A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189955(P2009−189955)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】