説明

プレーナ型電磁アクチュエータ

【課題】二つの可動部を有するプレーナ型電磁アクチュエータにおいて、二つの可動部の駆動コイルに通電する(駆動信号を供給する)ための配線の耐久性を向上させる。
【解決手段】プレーナ型電磁アクチュエータ1は、固定部21と、第1トーションバー24a,24bに揺動可能に支持された第1可動部22と、第2トーションバー25a,25bに揺動可能に支持された第2可動部23とを有する。駆動部4は、二つの周波数成分を有する一つの駆動信号を一対の電極端子5a,5bに入力する。入力された駆動信号は一対の配線10,11を介して第1可動部22の第1駆動コイル8及び第2可動部23の第2駆動コイル9に供給され、これにより、第1可動部22と第2可動部23が異なる周期で揺動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレーナ型電磁アクチュエータに関し、特に二つの可動部を有するプレーナ型電磁アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二つの可動部を有するプレーナ型電磁アクチュエータが知られている。この種のプレーナ型電磁アクチュエータは、例えば、枠状の固定部にトーションバーによって揺動可能に支持された外側可動部と、外側可動部の内側にトーショバーによって揺動可能に支持された内側可動部と、を有しており、外側可動部の駆動コイル及び内側可動部の駆動コイルのそれぞれに通電することによって外側可動部及び内側可動部を揺動させる。そして、このようなプレーナ型電磁アクチュエータは、例えば、内側可動部にミラーを設けることにより、いわゆるガルバノミラーとして光ビームを偏向走査する光スキャナなどに利用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2722314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような従来のプレーナ型電磁アクチュエータにおいては、外側可動部の駆動コイルに通電するための配線、及び内側可動部の駆動コイルに通電するための配線が外側可動部を揺動支持するトーションバー上に設けられている。このようにトーションバー上に二つの配線が設けられる構成では各配線の幅を小さくせざるを得ない。上記トーションバーには捩りが繰り返し加わるため、各配線の幅が制限されてしまうと各配線の耐久性を十分に確保できないおそれがある。
【0005】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであり、特に二つの可動部を有するプレーナ型電磁アクチュエータにおいて、二つの可動部の駆動コイルに通電を行う(駆動信号を供給する)ための配線の耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によるプレーナ型電磁アクチュエータは、二つの周波数成分を有する一つの駆動信号を、揺動可能に支持された二つの可動部の駆動コイルに供給して当該二つの可動部を異なる周期で揺動させる。
【発明の効果】
【0007】
上記プレーナ型電磁アクチュエータによれば、二つの可動部の駆動コイルに駆動信号を供給するための配線を従来に比べて減らすことができるので、当該配線の設置等に関する制約も低減される。このため、例えば可動部の揺動の影響が少なくなるように配線を配置したり、配線の幅を大きくしたりすることが可能となり、従来に比べて、配線の耐久性等を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータの概略構成を示す図である。
【図2】上記第1実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータの変形例を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータの概略構成を示す図である。
【図4】上記第2実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の基本的な考え方について説明する。
本発明は、揺動可能に支持された二つの可動部を有するプレーナ型電磁アクチュエータにおいて、上記二つの可動部をそれぞれ駆動するための駆動コイルに対して別々の駆動信号を供給するのではなく、二つの周波数成分を有する一つの駆動信号を上記二つの可動部の駆動コイルに供給することによって当該二つの可動部を異なる周期で揺動させるものである。
【0010】
ここで、上記二つの可動部は、それぞれトーションバーによって異なる方向に揺動可能に支持されており、上記二つの周波数成分としては、上記二つの可動部それぞれについての揺動振動系の固有振動数(共振周波数)に相当する周波数とするのが好ましい。このようにすると、二つの可動部のうちの一方の可動部の揺動については、駆動信号に含まれる二つの周波数成分のうちの一方の周波数成分が支配的となって他方の周波数成分はほとんど影響を与えないようにすることができるので(他方の可動部の揺動についても同様)、一つの駆動信号によって二つの可動部を効果的に駆動できるからである。
【0011】
そして、このように一つの駆動信号を二つの可動部の駆動コイルに供給して当該二つの可動部を駆動するように構成すれば、例えば、従来に比べて、駆動信号を供給するための配線数を低減することができるとともに配線の自由度を確保することができるので、結果として、配線の初期不良の発生を低減したり、配線の耐久性を向上させたりすることが可能となり、プレーナ型電磁アクチュエータ全体としての信頼性を向上できる。
【0012】
以下、本発明を適用したプレーナ型電磁アクチュエータの実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ1の概略構成を示している。この第1実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ1は、図示省略した支持体上に設置されるものであり、図1に示すように、アクチュータ本体2と、磁界発生部3と、アクチュエータ本体2を駆動する駆動部4と、を含む。
【0013】
アクチュエータ本体2は、枠状の固定部21と、固定部21の内側に配置された第1可動部22と、第1可動部22の内側に配置された第2可動部23と、を有しており、駆動部4から駆動信号(交流信号)が供給されることによって、第1可動部22及び第2可動部23が揺動(振動)する。
【0014】
第1可動部22は、固定部21と同様に枠状に形成されており、支持梁として固定部21から内側に延びる一対の第1トーションバー24a,24bによって当該第1トーションバー24a,24bの軸回りに揺動可能に支持されている。また、第2可動部23は、矩形状に形成されており、支持梁として第1可動部22から内側に延びる一対の第2トーションバー25a,25bによって当該第2トーションバー25a,25bの軸回りに揺動可能に支持されている。ここで、第1トーションバー24a,24bと第2トーションバー25a,25bとは、その軸方向が互いに直交しており、第1可動部22と第2可動部23とは互いに直交する方向に揺動するように構成されている。
【0015】
なお、本実施形態において、固定部21、第1可動部22、第2可動部23、第1トーションバー24a,24b、及び第2トーションバー25a,25bは、例えば特許第2722314号公報等に記載されているような半導体製造プロセスを用いて、すなわち、異方性エッチングによってシリコン基板を加工することで一体的に形成されている。
【0016】
固定部21の上面には、駆動部4からの駆動信号が入力される一対の電極端子5a,5b、一方の電極端子5aから一方の第1トーションバー24aの近傍に設けられた固定部21上の接合点Aまでのびるリード線6、及び他方の電極端子5bから他方の第1トーションバー24bの近傍に設けられた固定部21上の接合点Bまでのびるリード線7が形成されている。但し、これに限るものではなく、図1において破線で示すように、第1トーションバー24a、第1可動部22、及び第1トーションバー24bを挟んで対向するように固定部2上に一対の電極端子5a、5bを形成してもよい。この場合には、リード線6,7が省略され、電極端子5a、5b自体が接合点A、Bとなる。
【0017】
第1可動部22の上面には、第1可動部22を駆動するために通電される第1駆動コイル8が渦巻き状に形成されている。そして、この第1駆動コイル8の一方の端部(一端)は、一方の第1トーションバー24aの近傍に設けられた第1可動部22上の接合点Cに接続され、第1駆動コイル8の他方の端部(他端)は、他方の第1トーションバー24bの近傍に設けられた第1可動部22上の接合点Dに接続されている。ここで、第1駆動コイル8は、絶縁層を挟む少なくとも二層にわたって形成されており、少なくとも第1駆動コイル8の一端と他端とは異なる層に設けられている。
【0018】
第2可動部23の上面には、第2可動部23を駆動するための通電される第2駆動コイル9が渦巻き状に形成されている。そして、この第2駆動コイル9の一端は、一方の第2トーションバー25aを介して上記接合点Cに接続され、第2駆動コイル9の他端は、他方の第2トーションバー25bを介して上記接合点Dに接続されている。ここで、第1駆動コイル8と同様に、第2駆動コイル9も絶縁層を挟む少なくとも二層にわたって形成されており、少なくとも第2駆動コイル9の一端と他端とは異なる層に設けられている。
【0019】
なお、ここでの詳細な説明は省略するが、一対の電極端子5a,5b、リード線6,7、第1駆動コイル8、及び第2駆動コイル9は、例えば特許第2722314号公報等に記載されているような電鋳法を用いて形成される。
【0020】
図1に示すように、固定部2側の接合点Aと第1可動部22側の接合点Cとは、一方の第1トーションバー24aを挟むように設けられており、これらはワイヤーボンディングによる配線10によって接続されている。この配線10は、第1トーションバー24aの軸心に沿って、すなわち、第1トーションバー24aの軸線の上方を通過するように設けられている。
【0021】
また、固定部2側の接合点Bと第1可動部22側の接合点Dとは、他方の第1トーションバー24bを挟むように設けられており、これらはワイヤーボンディングによる配線11によって接続されている。この配線11は、第1トーションバー24bの軸心に沿って、すなわち、第1トーションバー24bの軸線の上方を通過するように設けられている。
【0022】
なお、本実施形態において、接合点Aが本発明の「第1接合部」に相当し、接合点Bが本発明の「第3接合部」に相当し、接合点Cが本発明の「第2接合部」に相当し、接合点Dが本発明の「第4接合部」に相当する。
【0023】
磁界発生部3は、第1可動部22上に形成された第1駆動コイル8、及び第2可動部23上に形成された第2駆動コイル9に静磁界を作用させるものであり、固定部2を挟んで互いに反対磁極が対向するように配置された二対の永久磁石31a,31b、32a,32bを含む。一対の永久磁石31a,31bが主に第1駆動コイル8に静磁界を作用させ、もう一対の永久磁石32a,32bが主に第2駆動コイル9に静磁界を作用させる。
ここで、磁界発生部3は、第1駆動コイル9及び第2駆動コイル9に対して有効な静磁界を作用させるものであればよく、例えば永久磁石に代えて電磁石を用いてもよい。
【0024】
駆動部4は、駆動信号としての交流電圧を一対の電極端子5a、5bに供給(印加)することにより、第1駆動コイル8及び第2駆動コイル9に通電する。上記駆動信号は、第1トーションバー24a、24bによって揺動可能に支持された第1可動部22の(揺動)振動系の固有振動数に相当する第1の周波数成分ω1と、第2トーションバー25a、25bによって揺動可能に支持された第2可動部23の(揺動)振動系の固有振動数に相当する第2の周波数成分ω2とを含んでおり、これらは十分に離れた値となるように設定されている。
すなわち、駆動部4は、第1トーションバー24a、24bの軸回りの第1可動部22の揺動(振動)に関する共振周波数に相当する第1の周波数成分ω1、及び第2トーションバー25a、25bの軸回りの第2可動部23の揺動(振動)に関する共振周波数に相当する第2周波数成分ω2を含む交流電圧V(=Xsin(ω1)t+Ysin(ω2)t)を、一対の電極端子5a、5b、リード線6、7、及び配線10、11を介して、駆動信号として第1駆動コイル8及び第2駆動コイル9に供給する。
【0025】
次に、上記第1実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ1の作用を説明する。
駆動部4からアクチュータ本体2に駆動信号(交流電圧)が供給されると、第1駆動コイル8及び第2駆動コイル9には交流電流が流れ、これにより、第1駆動コイル8及び第2駆動コイル9に発生する磁界の向きが交互に切り替わる。第1可動部22及び第2可動部23は磁界発生部3(31a,31b、32a,32b)による静磁界中に配置されているため、磁界発生部3による静磁界と第1駆動コイル8に発生した磁界との相互作用によって第1可動部22が第1トーションバー24a,24bの軸回りに揺動し、同様に、磁界発生部3による静磁界と第2駆動コイル9に発生した磁界との相互作用によって第2可動部23が第2トーションバー25a,25bの軸回りに揺動する。
【0026】
ここで、駆動信号は二つの周波数成分を含んでいるが、上述のように、その一方は第1トーションバー24a、24bの軸回りの第1可動部22の揺動(振動)に関する共振周波数に相当する第1の周波数成分ω1であり、他方は第2トーションバー25a、25bの軸回りの第2可動部23の揺動(振動)に関する共振周波数に相当する第2の周波数成分ω2であり、これらは十分に離れている。このため、第1可動部22の揺動については第1の周波数成分ω1が支配的になる一方、第2可動部23の揺動については第2の周波数成分ω2が支配的になる。換言すれば、駆動信号に含まれる第2の周波数成分ω2は、第1可動部22の揺動に関してほとんど影響を与えず、第1の周波数成分ω1は、第2可動部23の揺動に関してほとんど影響を与えない。
この結果、二つの周波数成分を有する一つの駆動信号を第1駆動コイル8及び第2駆動コイル9に供給することによって、第1駆動コイル8と第2駆動コイル9に別々に駆動信号を供給した場合と同様に、駆動信号が供給されている間、第1可動部22と第2可動部23とが異なる方向に異なる周期で揺動する。
【0027】
なお、第2可動部23の下面又は第2可動部23の第2駆動コイル9の内側にミラーを設け、このミラーに光ビームを照射するようにすれば、光ビームを二次元走査するガルバノミラーとして機能させることができる。そして、上記「X」及び/又は「Y」の値を調整して第1駆動コイル8及び/又は第2駆動コイル9に流れる電流値を制御することで第1可動部22及び/又は第2可動部23の揺動角度を可変できるので、光ビームの走査範囲を拡大したり、縮小したりすることもできる。
【0028】
上記第1実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ1では、ワイヤーボンディングによる一対の配線10,11が第1駆動コイル8及び第2駆動コイル9に通電するために用いられる。そして、一方の配線10が第1トーションバー24aを挟むように設けられた固定部2側の接合点Aと第1可動部22側の接合点Cとを接続し、他方の配線11が第1トーションバー24bを挟むように設けられた固定部2側の接合点Bと第1可動部22側の接合点Dとを接続する。
これにより、第1駆動コイル8及び第2駆動コイル9に通電するための配線を第1トーションバー24a,24bとは分離して設けることができるので、配線10,11が第1トーションバー24a,24bの捩りによる影響をほとんど受けなくなり、配線の耐久性が向上する。また、配線10,11を設けることによる第1可動部22や第2可動部23の振動特性のずれ(第1トーションバー24a,24bの捩り特性の変化)も抑制することができる。さらに、ワイヤーボンディングによる配線は、比較的容易なため、断線等の初期不良も大幅に低減できる。
【0029】
なお、上記第1実施形態においては、第1駆動コイル8の一端及び第2駆動コイル9の一端が接合点Cに接続し、第1駆動コイル8の他端及び第2駆動コイル9の他端が接合点Dに接続しており、第1駆動コイル8と第2駆動コイル9とが並列接続された状態となっている。しかし、これに限るものではなく、第1駆動コイル8と第2駆動コイル9とが直列接続されてもよい。この場合には、例えば図2に示すように、第1駆動コイル8の一端を接合点Cに接続し、第1駆動コイル8の他端と第2駆動コイル9の一端とを接続し、第2駆動コイル9の他端を接合点Dに接続するように構成すればよい。
【0030】
次に、第2実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータについて説明する。
図3は、第2実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ50の概略構成を示している。なお、第1実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ1と同じ構成については同じ符号を用いてその説明を適宜省略する。
第1実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ1との相違点は、第1実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ1では、アクチュエータ本体2において、第1駆動コイル8及び第2駆動コイル9に通電するために一対の配線としてワイヤーボンディングによる配線10、11を用いているのに対し、第2実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ50では、アクチュエータ本体51において、第1トーションバー24a,24b上に形成された配線部(導電パターン)52、53を上記一対の配線として用いていることである。
【0031】
図3に示すように、第2実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ50において、アクチュエータ本体51を構成する固定部21の上面には、駆動部4から駆動信号が入力される一対の電極端子5a,5b、一方の電極端子5aから固定部21上を第1トーションバー24aの近傍までのびるリード線6、及び電極端子5bから固定部21上を第1トーションバー24bの近傍までのびるリード線7が形成されている。もちろん、第1実施形態と同様、図3に破線で示すように、第1トーションバー24a、第1可動部22、及び第1トーションバー24bを挟んで対向するように固定部2上に一対の電極端子5a、5bを形成して、リード線6,7を省略してもよい。
【0032】
また、第1可動部22の上面には、第1可動部22を駆動するために通電される第1駆動コイル8が渦巻き状に形成されている。そして、この第1駆動コイル8の一端は、第1可動部22上の一方の第1トーションバー24aの近傍に配置され、第1駆動コイル8の他端は、第1可動部22上の他方の第1トーションバー24bの近傍に配置されている。
第2可動部23の上面には、第2可動部23を駆動するための通電される第2駆動コイル9が渦巻き状に形成されている。そして、この第2駆動コイル9の一端は、一方の第2トーションバー25aを介して第1可動部22上の一方の第1トーションバー24aの近傍に配置され、第2駆動コイル9の他端は、他方の第2トーションバー25bを介して第1可動部22上の他方の第1トーションバー24bの近傍に配置されている。
【0033】
すなわち、第1可動部22上に形成された第1駆動コイル8の一端と第2可動部23上に形成された第2駆動コイル9の一端とは、一方の第1トーションバー24a近傍の第1可動部22側の所定位置に互いに近接して配置され、第1可動部22上に形成された第1駆動コイル8の他端と第2可動部23上に形成された第2駆動コイル9の他端とは、他方の第1トーションバー5b近傍の第1可動部22側の所定位置に互いに近接して配置されている。
【0034】
第1トーションバー24a,24b上には、第1駆動コイル8及び第2駆動コイル9に通電するための一対の配線として機能する配線部(導電パターン)52,53が形成されている。配線部52、53は、第1トーションバー24a、24bの幅の1/2以上の幅を有しており、好ましくは、第1トーションバー24a、24bの幅とほぼ等しい幅を有して形成される。配線部52、53の形成を容易にして断線等の初期不良(形成不良)の発生を防止するとともに、配線部52,53を幅広にして第1トーションバー24a、24bの捩れに対する配線部52,53の耐久性を向上させるためである。
【0035】
そして、配線部52は、電極端子5aからのびるリード線6の端部と、第1駆動コイル8の一端及び第2駆動コイル9の一端とを接続し、配線部53は、電極端子5bからのびるリード線7の端部と、第1駆動コイル8の他端及び第2駆動コイル9の他端とを接続する。ここで、図3からも明らかなように、配線部52は、一方の第1トーションバー5aよりも長く形成されており、配線部53は、他方の第1トーションバー5bよりも長く形成されている。
【0036】
本実施形態において、リード線6の端部が本発明の「第1接合部」に相当し、第1駆動コイル8の一端及び第2駆動コイル9の一端が本発明の「第2接合部」に相当し、リード線7の端部が本発明の「第3接合部」に相当し、第1駆動コイル8の他端及び第2駆動コイル9の他端が本発明の「第4接合部」に相当する。
【0037】
なお、ここでの詳細な説明は省略するが、一対の配線部52,53も、一対の電極端子5a,5b、リード線6,7、第1駆動コイル8、及び第2駆動コイル9と同様、例えば特許第2722314号公報等に記載されているような電鋳法を用いて形成される。
【0038】
この第2実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ50においても、駆動部4は、二つの周波数成分、すなわち、上記第1の周波数成分ω1と上記第2周波数成分ω2とを含む交流電圧V(=Xsin(ω1)t+Ysin(ω2)t)を、一対の電極端子5a,5b、リード線6,7、及び配線部(導電パターン)52,53を介して、第1駆動コイル8及び第2駆動コイル9に供給し、これにより、駆動信号が供給されている間、第1可動部22と第2可動部23とが異なる方向に異なる周期で揺動する。
【0039】
上記第2実施形態によるプレーナ型電磁アクチュエータ50では、第1トーションバー24a,24b上に形成された一対の配線部(導電パターン)52,53が第1可動部22の第1駆動コイル8及び第2可動部23の第2駆動コイル9に通電するために用いられる。そして、一方の配線部52が固定部2側に配置されるリード線6の端部と、第1可動部22側に配置される第1駆動コイル8の一端及び第2駆動コイル9の一端とを接続し、他方の配線部53が固定部2側に配置されるリード線7の端部と、第1可動部22側に配置される第1駆動コイル8の他端及び第2駆動コイル9の他端とを接続する。
【0040】
ここで、第1トーションバー24a,24b上には、それぞれ一つの配線部を形成すればよいので、一つのトーションバー上に二つの配線を設ける従来の構成のように、各配線部の幅が第1トーションバー24a、24bの幅の1/2未満に制限されることはない。そこで、本実施形態では、配線部52,53の幅を第1トーションバー24a,25bの幅の1/2以上としている。このように、本実施形態によるプレーナ型電磁アクチュータ50では、トーションバー上に形成される配線の幅を従来のアクチュエータに比べて大きくできるので、トーションバーの捩れに対する強度を高めることができ、配線の耐久性を向上できる。
【0041】
また、比較的幅の小さいトーションバー上に複数の配線を形成する場合には、一定の割合で断線等の初期不良が発生するおそれがあったが、本実施形態では、トーションバー上には一つの幅広の配線を形成するので、そのような初期不良の発生を低減できる。
【0042】
なお、第2実施形態においても第1駆動コイル8と第2駆動コイル9とが並列接続されているが、これらを直接接続してもよい。この場合には、例えば図4に示すように、配線部52がリード線6の端部と第1駆動コイル8の一端とを接続し、第1駆動コイル8の他端と第2駆動コイル9の一端とを接続し、配線部53が第2駆動コイル9の他端とリード線7の端部とを接続するように構成すればよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0044】
1…プレーナ型電磁アクチュエータ、2…アクチュエータ本体、3…磁界発生部、4…駆動部、5a,5b…電極端子、6,7…リード線、8…第1駆動コイル、9…第2駆動コイル、10,11…配線、21…固定部、22…第1可動部、23…第2可動部、24a,24b…第1トーションバー、25a,25b…第2トーションバー、31a,31b…永久磁石、32a,32b…永久磁石、50…プレーナ型電磁アクチュエータ、51…アクチュエータ本体、52,53…配線部(導電パターン),A〜D…接合点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの周波数成分を有する一つの駆動信号を、揺動可能に支持された二つの可動部の駆動コイルに供給して当該二つの可動部を異なる周期で揺動させるプレーナ型電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記二つの可動部は、それぞれトーショバーによって互いに異なる方向に揺動可能に支持されている、請求項1に記載のプレーナ型電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記駆動信号は、前記二つの可動部のうちの一方の可動部についての揺動振動系の固有振動数に相当する周波数成分と、前記二つの可動部のうちの他方の可動部についての揺動振動系の固有振動数に相当する周波数成分と、を含む、請求項1又は2に記載のプレーナ型電磁アクチュエータ。
【請求項4】
枠状の固定部の内側に、当該固定部から延びる一対の第1トーションバーによって揺動可能に支持された第1可動部と、
前記第1可動部の内側に、当該第1可動部から延びて前記一対の第1トーショバーと軸方向が直交する一対の第2トーションバーによって揺動可動に支持された第2可動部と、
前記第1可動部に形成された第1駆動コイルと、
前記第2可動部に形成された第2駆動コイルと、
前記第1駆動コイル及び前記第2駆動コイルに静磁界を作用させる磁界発生部と、
前記第1駆動コイル及び前記第2駆動コイルに通電するための一対の配線と、
を含み、
前記一対の配線の一方は、前記一対の第1トーションバーの一方を挟むように形成された前記固定部側の第1接合部と前記第1可動部側の第2接合部とを接続し、
前記一対の配線の他方は、前記一対の第1トーションバーの他方を挟むように形成された前記固定部側の第3接合部と前記第1可動部側の第4接合部とを接続する、請求項1〜3のいずれか一つに記載のプレーナ型電磁アクチュエータ。
【請求項5】
前記駆動信号は、前記第1接合部及び前記第3接合部を介して供給され、
前記第2接合部には、前記第1駆動コイルの一方の端部及び前記第2駆動コイルの一方の端部が接続され、
前記第4接合部には、前記第1駆動コイルの他方の端部及び前記第2駆動コイルの他方の端部が接続されている、請求項4に記載のプレーナ型電磁アクチュエータ。
【請求項6】
前記駆動信号は、前記第1接合部及び前記第3接合部を介して供給され、
前記第2接合部には、前記第1駆動コイルの一方の端部が接続され、
前記第1駆動コイルの他方の端部と前記第2駆動コイルと一方の端部とが接続され、
前記第4接合部には、前記第2駆動コイルの他方の端部が接続されている、請求項4に記載のプレーナ型電磁アクチュエータ。
【請求項7】
前記第1接合部と前記第2接合部との接続、及び、前記第3接合部と前記第4接合部との接続は、それぞれワイヤーボンディングによって行われている、請求項4〜6のいずれか一つに記載のプレーナ型電磁アクチュエータ。
【請求項8】
前記第1接合部と前記第2接合部との接続、及び、前記第3接合部と前記第4接合部との接続は、それぞれ前記一対の第1トーションバー上に形成された導電パターンによって行われ、前記導電パターンの幅が前記第1トーションバーの幅の1/2以上である、請求項4〜6のいずれか一つに記載のプレーナ型電磁アクチュータ。
【請求項9】
前記第1トーションバーの軸回りの揺動振動に関する前記第1可動部の共振周波数に相当する第1周波数成分と前記第2トーションバーの軸回りの揺動振動に関する前記第2可動部の共振周波数に相当する第2周波数成分とを含む駆動信号を、前記一対の配線を介して前記第1駆動コイル及び前記第2駆動コイルに供給可能な駆動部をさらに備える、請求項4〜8のいずれか一つに記載のプレーナ型電磁アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−34301(P2013−34301A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168949(P2011−168949)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】