説明

プロキラルケトン及びアルデヒドの不斉接触水素化

塩基の存在下、並びに配位P及びN原子を有する二座リガンド、モノホスフィンリガンド及びアニオン性及び/又は非荷電リガンドを含有するルテニウム錯体の均一触媒としての存在下で、非荷電リガンドが存在する場合、電荷を1若しくは2個の一価酸アニオン又は二価酸アニオンにより平衡にさせて、C(O)基に対する位置でステレオジエン原子を有し、構造要素−(O)C−C−CH−を含有するラセミアルデヒド又はラセミケトンを、水素により反応させることによる立体選択的水素化の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素及び塩基の存在下、P及びN原子を有する二座リガンドとモノホスフィンリガンドを含有するルテニウム錯体を使用して、ケト基にステレオジエンα炭素原子を有する不斉アルデヒド又はケトンを、エナンチオ選択的又はジアステレオ選択的均一水素化してアルコールにする方法に関する。本発明は、また、P結合を有し、オルト置換アリール基を有する1−sec−ホスフィノ−2−オキサゾリジニル−フェロセンに関する。
【0002】
WO2004/050585は、塩基の存在下、並びにリガンドとしてモノホスフィン及び二座PΛNリガンドを含有する触媒又は触媒前駆体として五配位ルテニウム錯体の存在下で、水素によるケトン又はケチミンの接触水素化を記載する。水素化は、高い触媒活性による高い化学変換をもたらし、プロキラルケトンが使用される場合は、非常に良好な立体選択性又は高い光学収率をもたらす。
【0003】
予期しないことに、現在、ケト基に対してα位置にステレオジエン炭素原子(stereogenic carbon atom)を有するアルデヒド又はケトンのラセミ化合物を、同時力学−動力学又は動力学ラセミ化合物分割を介してWO2004/050585に従った不斉水素化により、主に1種類のエナンチオマー第一級アルコール又は主に1種類のジアステレオマーカルビノールへ変換できることが見出されている。予想外のことに、これらのアルデヒド及びケトンの水素化において1種類のエナンチオマーしか水素化されず、塩基の存在は、他のエナンチオマーの連続ラセミ化をもたらして、平衡を素速く確立し、これにより、驚くべきことに、高いジアステレオマー比率及びエナンチオマー過剰を達成することができる。ここで、ルテニウム錯体は、アキラル又はキラルリガンドのいずれかを含有することができる。
【0004】
本発明は、第1には、塩基、並びに配位P及びN原子を有する二座リガンド、モノホスフィンリガンド、及びアニオン性及び/又は非荷電リガンドを含有するルテニウム錯体の均一触媒としての存在下で、非荷電リガンドが存在する場合、電荷を1若しくは2個の一価酸アニオン又は二価酸アニオンにより平衡にさせて、アルデヒド又はケトンを水素と反応させることにより、主にエナンチオマー第一級アルコール又は主にジアステレオマー第二級アルコールを製造する方法であって、
C(O)基に対してα位置にステレオジエン炭素原子を有し、かつ構造要素−(O)C−C−CH−を含有するラセミアルデヒド又はラセミケトンを反応させることを特徴とする方法を提供する。
【0005】
構造要素−(O)C−C−CH−において、Cは、α位置のステレオジエン炭素原子である。
【0006】
ルテニウム錯体は、水素化の前に別個の溶液において「その場(in situ)」で、又は基質を加える若しくは基質が存在する前にリガンドをルテニウム錯体又はその塩に加えることにより、反応溶液において製造することができるか、或いは前もって錯体として製造及び単離してから、単離化合物として使用することができる。ルテニウム錯体は、例えば、S. UemuraらによりOrganometallics 1999, 18, 2291に記載された方法によって製造することができる。
【0007】
本発明の水素化方法は、慣用の圧力、例えば、1・10〜1・10Pa(1〜100bar)で実施することができる。2・10〜8.5・10Pa(20〜85bar)、特に4・10〜8・10Pa(40〜80bar)の圧力を使用することが有益である。
【0008】
反応温度の選択は、実質的に、使用する溶媒における反応体及びルテニウム錯体の溶解度によって決まる。反応温度は、例えば、0℃〜100℃であることができる。より高い温度では、望ましくないラセミ化が起こる可能性があり、したがって反応温度は、有利には、10〜60℃の範囲で選択される。水素化は、室温、とりわけ好ましくは20〜35℃の温度で特に好ましく実施される。
【0009】
本発明の方法は、溶媒なしで、又は不活性溶媒の存在下で実施することができる。適切な溶媒は、例えば、脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素(ペンタン、ヘキサン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン)、脂肪族ハロゲン炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン及びテトラクロロエタン)、ニトリル(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル)、エーテル(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン)、カルボン酸エステル及びラクトン(酢酸エチル又はメチル、バレロラクトン)、N置換ラクタム(N−メチル−ピロリドン)、カルボキサミド(ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド)、非環式尿素(テトラメチル尿素)又は環状尿素(ジメチルイミダゾリジノン)、スルホキシド及びスルホン(ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシド、テトラメチレンスルホン)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、並びに水である。溶媒は、単独で又は少なくとも2種の溶媒の混合物として使用することができる。
【0010】
塩基としては、無機塩基か又は有機窒素塩基のいずれか、例えばアルカリ土類金属若しくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩若しくは炭酸水素塩、アルカリ金属アミド又は第四級アンモニウム塩を使用することが可能である。好ましい塩基は、KOH、KOCH、KOH−C、KO−t−C、LiOH、LiOCH、LiO−i−C、NaOH、NaOCH、NaO−i−C、LiNH若しくはNaNH、又はLiN(CH若しくはNaN(CHである。塩基を、固体形態で、又は例えばメタノール、エタノール、n−若しくはi−プロパノール、又はn−、i−若しくはt−ブタノールのようなアルコール中、水中、又はそのようなアルコールと水の混合物中の溶液として、使用することができる。更に、塩基は、広範囲な濃度範囲で使用することができる。塩基と基質のモル比は、例えば、10対0.1、より好ましくは5対0.5であることができる。
【0011】
ルテニウム錯体は、触媒量で使用される。基質とルテニウム錯体のモル比は、10対20、好ましくは10対50であることができる。
【0012】
適切なルテニウム錯体は、WO2004/050585において包括的に記載されている。これらは、例えば、一般式I:
【0013】
【化11】

【0014】
〔式中、
X及びYは、それぞれ、互いに独立して、水素化物、ハロゲン化物、C1−8アルコキシド若しくはC1−8アシルオキシ、又はO、S及びNからなる群の少なくとも1個のヘテロ原子を含有する配位有機溶媒リガンドであり、得られる、1又は2種の溶媒リガンドを有するカチオン性錯体が、1若しくは2個の一価アニオン又は二価アニオンで中和されており、
、R及びRは、それぞれ、互いに独立して、炭化水素基か、又はO、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子を有するC結合ヘテロ炭化水素基であり、それぞれ、1〜22個、好ましくは1〜14個、特に好ましくは1〜10個の炭素原子を有し、非置換であるか又は置換されているか、或いは基R、R及びRのうちの1つは、上記で提示されたとおりであり、残りの2つの基は、リン原子及び炭素原子と一緒になって、4員〜8員の非置換又は置換環を形成し、そして
P−Z−Nは、式(II):
【0015】
【化12】

【0016】
で示される二座リガンドであり、
ここで、
及びRは、それぞれ、互いに独立して、炭化水素基か、又はO、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子を有するC結合ヘテロ炭化水素基であり、それぞれ、1〜22個、好ましくは1〜14個、特に好ましくは1〜10個の炭素原子を有するか、或いはR及びRは、リン原子及び更なる炭素原子と一緒になって、4員〜8員環を形成し、ここでR及びRは、非置換であるか又は置換されており、
及びCは、一緒になって、5員又は6員のアレーン又はヘテロアレーンの一部であり、これは、非置換であるか又はOH、F、Cl、Br、−CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フェニル、C1−4アルキル若しくはC1−4アルコキシフェニル、−C(O)O−C1−4アルキル又はジ(C〜Cアルキル)アミノで置換されており、
は、水素原子、直鎖、分岐鎖若しくは環状のC1−10アルキル若しくはC2−10アルケニル基、又はC6−10アリール基であり、それぞれ、非置換であるか又はC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジ(C〜Cアルキル)アミノ、フェニル、ベンジル、C1−4アルキルフェニル又はC1−4アルキルベンジルで置換されているか、或いはRは、−OR6′又は−NR6′6″基であり、ここでR6′及びR6″は、Rと同じ意味を有し、
は、水素原子、直鎖、分岐鎖若しくは環状のC1−10アルキル若しくはC2−10アルケニル基であるか、又はRは、R7′CO−若しくはR7′SO−基であり、ここでR7′は、1〜14個の炭素原子を有する炭化水素基であるか、或いは
及びRは、基−C=N−と一緒になって、不飽和の5員〜10員、好ましくは5員〜7員、置換又は非置換複素環を形成する〕
に対応することができる。
【0017】
説明として、5員アレーンは、メタロセン、例えばフェロセンにおけるシクロペンタジエニル環であることもできると記述することができる。
【0018】
式Iの錯体において、X及びYは、それぞれ、好ましくは塩化物、臭化物及びヨウ化物のようなハロゲン化物であり、塩化物が特に好ましい。アルコキシ及びアシルオキシ基X及びYの例は、メトキシ、エトキシ、n−及びi−プロポキシ、n−、i−及びt−ブトキシ、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ及びフェニルオキシである。適切な触媒リガンドは、溶媒の項目で上記に記述されている。中和に適切なアニオンは、例えば、SO2−、CN、OCN、BF、PF、FC−SO、HC(O)O又はCHC(O)Oである。
【0019】
炭化水素又はヘテロ炭化水素基R、R、R、R及びRは、非置換であるか又は1、2若しくは3つの基で置換されていることができる好ましい置換基は、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロエトキシ及びジ(C〜Cアルキル)アミノのうちから選択される。R、R、R、並びにR及びRも、好ましくは同一の基である。
【0020】
好ましい基R、R、R、R及びRは、直鎖又は分岐鎖C〜C12アルキル;非置換又はC〜Cアルキル若しくはC〜Cアルコキシ置換のC〜C12シクロアルキル若しくはC〜C12シクロアルキル−CH−;フェニル、ナフチル、フリル又はベンジル;並びにハロゲン(例えば、F、Cl及びBr)、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルコキシ(例えば、トリフルオロメトキシ)、(CSi、(C〜C12アルキル)Si、sec−アミノ若しくは−CO−C〜Cアルキル(例えば、−COCH)で置換されているフェニル又はベンジルからなる群より選択される基である。
【0021】
好ましくは1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基R、R、R、R及びRの例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、並びにペンチル及びヘキシルの異性体である。Pにおける非置換又はアルキル置換シクロアルキルの置換基の例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びエチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル及びエチルシクロヘキシル及びジメチルシクロヘキシルである。Pにおけるアルキル−、アルコキシ−、ハロアルキル−、ハロアルコキシ−及びハロゲン−置換フェニル及びベンジル置換基の例は、o−、m−又はp−フルオロフェニル、o−、m−又はp−クロロフェニル、ジフルオロフェニル又はジクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、メチルベンジル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ビストリフルオロメチルフェニル、トリストリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメトキシフェニル、ビストリフルオロメトキシフェニル、並びに3,5−ジメチル−4−メトキシフェニルである。
【0022】
好ましい基R、R、R、R及びRは、C〜Cアルキル、非置換シクロペンチル若しくはシクロヘキシル、又は1〜3つのC〜Cアルキル若しくはC〜Cアルコキシ基で置換されているシクロペンチル若しくはシクロヘキシル、非置換であるか又は1〜3つのC〜Cアルキル、C〜CアルコキシF、Cl、C〜Cフルオロアルキル若しくはC〜Cフルオロアルコキシ基で置換されている、ベンジル、及び、特にフェニルからなる群より選択される。置換基Fは、更に4又は5回存在することもできる。
【0023】
好ましい基R、R、R、R及びRは、直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキル、非置換シクロペンチル若しくはシクロヘキシル、又は1〜3つのC〜Cアルキル若しくはC〜Cアルコキシ基で置換されているシクロペンチル若しくはシクロヘキシル、フリル、ノルボルニル、アダマンチル、非置換ベンジル又は1〜3つのC〜Cアルキル若しくはC〜Cアルコキシ基で置換されているベンジル、及び、特に、非置換フェニル又は1〜3つのC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、−NH、−N(C〜Cアルキル)、OH、F、Cl、C〜Cフルオロアルキル若しくはC〜Cフルオロアルコキシ基で置換されているフェニルからなる群より選択される。
【0024】
、R、R、R及びRは、特に好ましくは、C〜Cアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フリル、並びに非置換フェニル又は1〜3つのC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ及び/若しくはC〜Cフルオロアルキル基で置換されているフェニルからなる群より選択される基である。
【0025】
及びR、又は、R及びRが一緒の場合、得られる基は、環状sec−ホスフィノであり、例えば、下記式:
【0026】
【化13】

【0027】
のうちの1つを有する基であり、これは、非置換であるか、又は1個以上の−OH、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシ−C〜Cアルキル、フェニル、C〜Cアルキルフェニル若しくはC〜Cアルコキシフェニル、ベンジル、C〜Cアルキルベンジル若しくはC〜Cアルコキシベンジル、ベンジルオキシ、C〜Cアルキルベンジルオキシ若しくはC〜Cアルコキシベンジルオキシ、又はC〜Cアルキリデンジオキシル基で置換されている。
【0028】
置換基は、キラル炭素原子を導入するために、P原子に対して一方又は両方のα位置に結合することができる。一方又は両方のα位置の置換基は、好ましくは、C〜Cアルキル又はベンジル、例えばメチル、エチル、n−若しくはi−プロピル、ベンジル、又は−CH−O−C〜Cアルキル若しくは−CH−O−C〜C10アリールである。
【0029】
β,γ位置の置換基は、例えば、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ベンジルオキシ、−OH又は−O−CH−O−、−O−CH(C〜Cアルキル)−O−、−O−C(C〜Cアルキル)−O−及び−O−CH−(C〜C10アリール)−O−であることができる。幾つかの例は、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、−O−CH(フェニル)−O−、−O−CH(メチル)−O−及び−O−C(メチル)−O−である。
【0030】
脂肪族5員若しくは6員環又はベンゼンを、上記式の基における2個の隣接炭素原子に縮合することができる。
【0031】
他の既知で適切な第二級ホスフィノ基は、環に7個の炭素原子を有する環状及びキラルホスホランから誘導されるもの、例えば、下記式:
【0032】
【化14】

【0033】
で示されるものであり、ここで、芳香族間は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシ−C〜Cアルキル、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、又はC〜Cアルキリデンジオキシ若しくはC〜Cアルキリデンジオキシルで置換されていてもよい(US2003/0073868A1及びWO02/048161を参照すること)。
【0034】
置換の種類及び置換基の数に応じて、環状ホスフィノ基は、C−キラル、P−キラル、又はC−及びP−キラルであることができる。
【0035】
環状sec−ホスフィノ基は、例えば、下記式(可能性のあるジアステレオマーのうちの1つが示されている):
【0036】
【化15】

【0037】
〔式中、
基R′及びR″は、それぞれ、C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、n−若しくはi−プロピル、ベンジル、又は−CH−O−C〜Cアルキル又は−CH−O−C〜C10アリールであり、R′及びR″は、同一又は異なっていることができる〕のうちの1つに対応することができる。R′及びR″が同じ炭素原子に結合している場合、これらは共にC〜Cアルキレンであることができる。
【0038】
好ましい実施態様において、R、R、R、R及びRは、好ましくは、−P(C〜Cアルキル)、−P(C〜Cシクロアルキル)、−P(C〜C12ビシクロアルキル)、−P(o−フリル)、−P(C、−P〔2−(C〜Cアルキル)C、−P〔3−(C〜Cアルキル)C、−P〔4−(C〜Cアルキル)C、−P〔2−(C〜Cアルコキシ)C、−P〔3−(C〜Cアルコキシ)C、−P〔4−(C〜Cアルコキシ)C、−P〔2−(トリフルオロメチル)C、−P〔3−(トリフルオロメチル)C、−P〔4−(トリフルオロメチル)C、−P〔3,5−ビストリフルオロメチル)C、−P〔3,5−ビス(C〜Cアルキル)、−P〔3,5−ビス(C〜Cアルコキシ)、−P〔3,4,5−トリス(C〜Cアルコキシ)及び−P〔3,5−ビス(C〜Cアルキル)−4−(C〜Cアルコキシ)Cからなる群より選択される非環式sec−ホスフィノであるか、又は下記:
【0039】
【化16】

【0040】
からなる群より選択される環状ホスフィンであり、これらは、非置換であるか、又は1個以上のC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシ−C〜Cアルキル、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、C〜Cアルキリデンジオキシル又は非置換若しくはフェニル置換メチレンジオキシル基で置換されている。
【0041】
幾つかの特定の例は、−P(CH、−P(i−C、−P(n−C、−P(i−C、−P(C11、−P(ノルボルニル)、−P(o−フリル)、−P(C、P〔2−(メチル)C、P〔3−(メチル)C、−P〔4−(メチル)C、−P〔2−(メトキシ)C、−P〔3−(メトキシ)C、−P〔4−(メトキシ)C、−P〔3−(トリフルオロメチル)C、−P〔4−(トリフルオロメチル)C、−P〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)C、−P〔3,5−ビス(メチル)C、−P〔3,5−ビス(メトキシ)C、−P〔3,4,5−トリ(メトキシ)C、−P〔3,5−ビス(メチル)2−4−(メトキシ)C及び下記式:
【0042】
【化17】

【0043】
〔式中、
R′は、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル又はベンジルオキシメチルであり、そしてR″は、独立してR′の意味のうちの1つを有する〕
で示される基である。
【0044】
本発明の方法の好ましい実施態様において、R及びRは、それぞれ、フェニルか、又はO、S、N、NH若しくはN−C1−4アルキルからなる群より選択されるヘテロ原子を有するC結合ヘテロアリールであり、それぞれ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、C1−6フルオロアルキル、F、Cl、Br、OH若しくはN(C1−6アルキル)により、P−C結合に対して少なくとも1つのオルト位置で置換されているか、又は脂肪族、脂肪族複素環、芳香族若しくは芳香族複素環の5員若しくは6員環が2,3位で縮合しており、ヘテロアリールの場合は、3,4位でも縮合しており、ここで、フェニル又はヘテロアリールは、更なる置換基を含有することもできる。
【0045】
更なる炭素原子と、又は炭素原子及びヘテロ原子と一緒になったC及びCは、5員又は6員のアレーン又はヘテロアレーンから、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、ピリジン、N−C1−4アルキルピロール、インドール、キノリン、イソキノリン又はメタロセン、特にフェロセンから誘導されることができる。特に好ましいものは、フェニレン及びフェロセンである。
【0046】
は、例えば、水素原子、C1−8アルキル、C5−8シクロアルキル、C5−8シクロアルキル−C1−4アルキル、C4−7ヘテロシクロアルキル、又はO、S、NH若しくはN−C1−4アルキルからなる群より選択されるヘテロ原子を有するC4−7ヘテロシクロアルキル−C1−4アルキル、フェニル、ナフチル、ベンジル、フェニルエチル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、フラニル、ベンゾフラニル、ピリジニル、N−C1−4アルキルピリル、インドリル、キノリニル又はイソキノリニルであることができ、それぞれ非置換であるか又は上記で定義されたとおりである。
【0047】
は、好ましくは、水素原子、C1−8アルキル、C5−8シクロアルキルである。R7′は、好ましくは、C1−8アルキル、C5−8シクロアルキル、C6−10アリール又はC7−12アラルキル、例えばメチル、エチル、n−若しくはi−プロピル、n−、i−若しくはt−ブチル、シクロヘキシル、フェニル又はベンジルである。
【0048】
及びRは、好ましくは、基−C=N−と一緒になって、不飽和、5員又は6員、置換又は非置換の複素環を形成し、これは、特に好ましくは、式III:
【0049】
【化18】

【0050】
〔式中、
nは、1又は2であり、
は、O、S、N、NH又はN−C1−4アルキルであり、そして
は、C1−6アルコキシ−C1−4アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−8アルキル、C5−8シクロアルキル、C5−8シクロアルキル−C1−8アルキル、C6−14アリール、C7−12アラルキル、C3−12ヘテロアリール、C4−16ヘテロアラルキルであり、ここで環状基は、非置換であるか、又はOH、F、Cl、Br、−CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トルフルオロメチル、トルフルオロメトキシ、フェニル、C1−4アルキルフェニル若しくはC1−4アルコキシフェニル、−C(O)O−C1−4アルキル又はジ(C〜Cアルキル)アミノで置換されている〕
に対応する。
【0051】
式IIIの特に好ましい基は、nが1であり、XがOであり、そしてRが、C1−4アルコキシ−C1−2アルキル、直鎖若しくは分岐鎖C1−6アルキル、フェニル又はベンジルであるものである。Rの例は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、n−プロポキシメチル、i−プロポキシメチル、n−プロポキシエチル、i−プロポキシエチル、n−ブトキシメチル、i−ブトキシメチル、t−ブトキシメチル、n−ブトキシエチル、i−ブトキシエチル、t−ブトキシエチル、メチル、エチル、n−又はi−プロピル、n−、i−又はt−ブチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、フェニル及びベンジルである。
【0052】
本発明の方法の好ましい実施態様において、式IIのリガンドは、好ましくは、式IV:
【0053】
【化19】

【0054】
〔式中、
は、非置換又はC1−4アルキル若しくはハロゲン(例えば、F、Cl、Br若しくはメチル)で置換されていてもよい式(A)のフェロセン基であるか、或いは非置換又はOH、F、Cl、Br、−CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フェニル、C1−4アルキルフェニル若しくはC1−4アルコキシフェニル、−C(O)O−C1−4アルキル若しくはジ(C〜Cアルキル)アミノで置換されていてもよい式(B)の基であり:
【0055】
【化20】

【0056】
nは、1又は2、好ましくは1であり、
は、C1−4アルコキシ−C1−2アルキル、直鎖若しくは分岐鎖C1−4アルキル、シクロヘキシル、フェニル又はベンジルであり、ここで環状基は、上記で定義されているように置換されていてもよく、そして
基Rは、それぞれ、フェニルか、又はO、S、N、NH若しくはN−C1−4アルキルからなる群より選択されるヘテロ原子を有するC結合ヘテロアリールであり、それぞれ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、C1−6フルオロアルキル、F、Cl、Br、OH若しくはN(C1−6アルキル)により、P−C結合に対して少なくとも1つのオルト位置で置換されているか、又は脂肪族、脂肪族複素環、芳香族若しくは芳香族複素環の5員若しくは6員環が2,3位で縮合しており、ヘテロアリールの場合は、3,4位でも縮合しており、ここで、フェニル又はヘテロアリールは、更なる置換基を含有することもできる〕
に対応する。
【0057】
フェニル基Rは、例えば、式C:
【0058】
【化21】

【0059】
〔式中、
10は、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、C1−4フルオロアルキル、F、Cl、Br、I、OH又はN(C1−4アルキル)であり、
11は、水素原子又は独立してR10の意味のうちの1つを有するか、或いは
10及びR11は、一緒になって、非置換又はC1−4アルキル−、C1−4アルコキシ−、C1−4フルオロアルキル−、F−若しくはCl−置換の−CH=CH−CH=CH−、−N=CH−CH=CH−、−CH=N−CH=CH−、−CH=CH−N=CH−、−CH=N−CH=N−、=CH−X−CH=、=CH−X−CH−、−CH−X−CH−、−X−CH−CH=、−X−CH−CH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−O−CH−O−、−O−CHCH−O−、−CH−CH−O−、−CH−CHCH−O−、−O−CH−CH−若しくは−O−CHCH−CH−であり、
は、O、S、N、NH又はN−C1−4アルキルであり、そして
12、R13及びR14は、それぞれ、互いに独立して、水素原子、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4フルオロアルキル、F、Cl又はN(C1−6アルキル)である〕
に対応することができる。
【0060】
式Cの基の望ましい置換において、R10ばかりでなく、好ましくはR12及びR14も置換基である。置換基の好ましい例は、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、n−、i−及びt−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−及びi−プロポキシ、n−、i−及びt−ブトキシ、F、CF及びCF−CFである。
【0061】
ヘテロアリール基Rは、例えば、式D又はE:
【0062】
【化22】

【0063】
〔式中、
15は、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、C1−4フルオロアルキル、F、Cl又はN(C1−4アルキル)であり、
16及びR17は、それぞれ、水素原子又は独立してR15の意味のうちの1つを有するか、或いは
式DのR15及びR16、又はそれぞれの場合のR16及びR17は、一緒になって、非置換又はC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4フルオロアルキル、F−若しくはCl−置換の−CH=CH−CH=CH−であり、そして、
は、O、S、N、NH又はN−C1−4アルキルである〕
に対応することができる。
【0064】
置換基R15、R16及びR17の好ましい例は、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、n−、i−及びt−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−及びi−プロポキシ、n−、i−及びt−ブトキシ、F、CF及びCF−CFである。
【0065】
水素化されるラセミアルデヒド及びケトンは、式V:
【0066】
【化23】

【0067】
〔式中、
は、ステレオジエン炭素原子を意味し、
18は、水素原子、炭化水素基、又はO、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子若しくはヘテロ基を有するC結合ヘテロ炭化水素基であり、それぞれ、1〜40個、好ましくは1〜30個、特に好ましくは1〜20個の炭素原子を含有し、非置換であるか又は水素化条件下で不活性である基により置換されており、
19及びR20は、それぞれ、互いに独立して、炭化水素基、又はO、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子若しくはヘテロ基を有するC−若しくはヘテロ原子結合ヘテロ炭化水素基であり、それぞれ、1〜40個、好ましくは1〜30個、特に好ましくは1〜20個の炭素原子を含有し、非置換であるか又は水素化条件下で不活性である基により置換されているか、或いはR19は、この意味を有し、R20は、ハロゲン(F、Cl、Br及びヨウ素)、OH、SH又はCNであり;
18及びR20は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、O、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子若しくはヘテロ基を有する3員〜10員炭化水素又はヘテロ炭化水素環を形成し、それぞれ、非置換であるか又は水素化条件下で不活性である基により置換されているか、或いは
19及びR20は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、O、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子若しくはヘテロ基を有する3員〜10員炭化水素又はヘテロ炭化水素環を形成し、それぞれ、非置換であるか又は水素化条件下で不活性である基により置換されている〕
に対応することができる。
【0068】
少なくとも2つの基が1つの方法工程で水素化される場合、直鎖基又は置換基は、−C=C−、−C=N−(イミノ)、−CH=O(アルデヒド)又は=C=O(ケトン)のような不飽和基を含有することができる。この場合、基は、水素化条件下で不活性ではない。
【0069】
19及びR20は、異なっており、環状基は、非置換であるか又は置換されており、これにより、この基の選択は、ステレオジエン炭素原子をもたらす。
【0070】
適切な置換基は、例えば、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、C〜Cアルコキシメチル若しくはC〜Cアルコキシエチル、C〜Cハロアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルコキシ、C〜Cシクロアルキルメチル若しくはC〜Cシクロアルキルエチル、C〜Cシクロアルコキシ、C〜Cシクロアルキルメトキシ、フェニル、フェニルオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、フェニルエチル、フェニルエチルオキシ、ハロゲン、−OH、−OR、=O、−OC(O)R、−NH、−NHR、−NR、−NH−C(O)−R、−NR−C(O)−R、−CO、−CO−NH、−CO−NHR、−CO−NRであり、ここでR及びRは、それぞれ、互いに独立して、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、フェニル又はベンジルである。
【0071】
炭化水素基又はヘテロ炭化水素基は、1個の炭素原子及び/若しくはヘテロ原子において、並びに/又は異なる炭素原子及び/若しくはヘテロ原子において、同一又は異なる置換基により置換されていることができ、ここで炭素原子は、例えば、=O及びアルキル又は=O及びアミノで置換されていることもできる。後者の場合では、R19及びR20は、互いに独立して、それぞれ、例えば−CO、−CO−NH、−CO−NHR又は−CO−NRであることができる。ヘテロ原子を介して結合しているヘテロ炭化水素基には、オキシ基(例えば、アルコキシ、シクロアルコキシ、フェノキシ及びベンジルオキシ)、チオ基(例えば、アルキルチオ)、並びにアミノ基が含まれる。
【0072】
好ましい置換基は、メチル、エチル、n−及びbi−プロピル、n−及びt−ブチル、ビニル、アリル、メトキシ、エチルオキシ、n−及びi−プロピルオキシ、n−及びt−ブチルオキシ、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、β−ヒドロキシエチル、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル又はエトキシエチル、トリフルオロメトキシ、シクロヘキシル、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルメチルオキシ、フェニル、フェニルオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ、フェニルエチル、ハロゲン、−OH、−OR、−OC(O)R、−NH、−NHR、−NR、−NH−C(O)−R、−NR−C(O)−R、−CO、−CO−NH、−CO−NHR、−CO−NRであり、ここでR及びRは、それぞれ、互いに独立して、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、フェニル又はベンジルである。
【0073】
炭化水素基は、それぞれ、1〜18個の炭素原子を有する一価の飽和若しくは不飽和脂肪族基、1〜17個の炭素原子及び1〜6個、好ましくは1〜4個のヘテロ原子を有する一価の飽和若しくは不飽和脂肪族複素環式基、4〜8個の環炭素を有する飽和若しくは不飽和脂環式基、3〜8個の環員及びO、N、S及びNRからなる群より選択される1若しくは2個のヘテロ原子を有する飽和若しくは不飽和ヘテロ脂環式基、1〜4個の炭素原子を脂肪族基に有し、そして4〜8個の環炭素を有する飽和若しくは不飽和脂環式−脂肪族基、1〜4個の炭素原子を脂肪族基に有し、そして3〜7個の炭素原子及びO、N、S及びNRからなる群より選択される1若しくは2個のヘテロ原子を環に有する飽和若しくは不飽和ヘテロ脂環式−脂肪族基、6〜10個の炭素原子を有する芳香族基、4〜9個の炭素原子及びO、N、S及びNRからなる群より選択される1若しくは2個のヘテロ原子を環に有する芳香族複素環式基、6〜10個の炭素原子を芳香族環に有し、1〜4個の炭素原子を脂肪族基に有する芳香族−脂肪族基、又は4〜9個の炭素原子及びO、N、S及びNRからなる群より選択される1若しくは2個のヘテロ原子を芳香族環に有し、そして1〜4個の炭素原子を脂肪族基に有する芳香族複素環式−脂肪族基であることができ、ここでRは、H、C〜Cアルキル、好ましくはC〜Cアルキル、C−又はC−シクロアルキル、フェニル若しくはナフチルのようなC〜C10アリール、フェニルメチル若しくはフェニルエチルのようなC〜C12アリールである。
【0074】
脂肪族基は、好ましくは、直鎖若しくは分岐鎖であることができ、好ましくは、1〜12個、特に好ましくは1〜8個の炭素原子を含有するアルキルであるか、又は好ましくは、それぞれ直鎖若しくは分岐鎖であることができ、好ましくは2〜12個、特に好ましくは2〜8個の炭素原子を含有するアルケニル若しくはアルキニルである。脂肪族複素環式基は、好ましくは、アルコキシル、アルキルチオ、1〜12個、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する第一級及び第二級アミノ、又は1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子をアルキル基若しくはアルコキシル基に有し、1〜12個、特に好ましくは1〜8個の炭素原子をアルコキシ基、アルキルチオ基及び第一級若しくは第二級アミノ基に有するアルコキシアルキル、アルキルチオアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルコキシ若しくはアミノアルコキシルである。脂肪族及び脂肪族複素環式基の例は、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、n−、i−及びt−ブチル、ペンチル、i−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ビニル、アリル、エチニル、プロパルギル、メトキシ、エトキシ、n−及びi−プロポキシ、n−、i−及びt−ブトキシ、ペントキシ、i−ペントキシ、ヘキソキシ、メチルチオ、メチルアミノ、エチルアミノ、エチル、n−及びi−プロピルアミノ、n−、i−及びt−ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、メトキシメトキシ、エトキシメトキシ、メトキシエトキシ、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、エチルアミノメチル、メチルエチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノメトキシル又はジメチルアミノエトキシル、並びにメトキシエチルアミノメチルである。
【0075】
好ましくは、脂環式基は、好ましくは3〜8個、特に好ましくは5〜6個の環炭素を有するシクロアルキル又はシクロアルケニルである。幾つかの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル、またシクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロヘキサジエニルである。特に好ましいものは、シクロペンチル及びシクロヘキシルである。
【0076】
好ましくは、ヘテロ脂環式基は、好ましくは3〜6個の炭素原子、4〜7個の環員、そして−O−、S及び−NR′−からなる群より選択されるヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルケニルであり、ここでR′は、H、C〜Cアルキル、好ましくはC〜Cアルキル、C−又はC−シクロアルキル、C〜C10アリールであり、例えばフェニル又はナフチル、フェニル又はフェニルエチルである。幾つかの例は、ピロリジニル、ピロリニル、ピペラジニル、N−メチルピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル及びジヒドロチオフェニルである。
【0077】
好ましくは、ヘテロ脂環式−脂肪族基は、好ましくは3〜6個の炭素原子、4〜7個の環員、そして−O−、S及び−NR′−からなる群より選択されるヘテロ原子を有し、また、1〜4個、又は2〜4個の炭素原子をアルキル又はアルケニル基に有するヘテロシクロアルキルアルキル又はヘテロシクロアルキルアルケニルであり、(ここでRは、H、C〜Cアルキル、好ましくはC〜Cアルキル、C−又はC−シクロアルキル、C〜C10アリールであり、例えばフェニル又はナフチル、フェニル又はフェニルエチルである)、好ましくは、1〜4個、特に好ましくは1又は2個の炭素原子をアルキル基に有するか、又は2〜4個、特に好ましくは2又は3個の炭素原子をアルケニル基に有する、ヘテロシクロアルキルアルキル又はヘテロシクロアルキルアルケニルである。例は、ピロリジニルメチル、ピロリジニルエチル又はピロリジニルエテニル、ピロロニルメチル、ピロリニルエチル又はピロリニルエテニル、テトラヒドロフラニルメチル、テトラヒドロフラニルエチル又はテトラヒドロフラニルエテニル、ジヒドロフラニルメチル、ジヒドロフラニルエチル又はジヒドロフラニルエテニル、ジヒドロチオフェニルメチル又はテトラヒドロチオフェニルメチル、及びピペラジニルメチル、ピペラジニルエチル又はピペラジニルエテニルである。
【0078】
芳香族基は、好ましくは、アントラセニル、フェナントレニル、ナフチル及びフェニルであり、好ましいものは、フェニル及びナフチルである。
【0079】
芳香族−脂肪族基は、好ましくは、フェニル−又はナフチル−C〜Cアルキル又は−C〜Cアルケニルである。幾つかの例は、ベンジル、ナフチルメチル、β−フェニルエチル及びβ−フェニルエテニルである。
【0080】
芳香族複素環式基は、好ましくは、5員又は6員の縮合又は非縮合環系である。幾つかの例は、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピロリニル、フラニル、オキサゾリル、チオフェニル、イミダゾリル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニルである。
【0081】
芳香族複素環式−脂肪族基は、好ましくは、炭素原子のうちの1個を介して又はN原子を介してアルキル基又はアルケニル基の遊離結合に結合している5員又は6員の縮合又は非縮合環系であり、ここで、アルキル基は、好ましくは1〜6個、特に好ましくは1又は4個の炭素原子を有し、アルケニル基は、好ましくは2〜6個、特に好ましくは2〜4個の炭素原子を有する。幾つかの例は、ピリジニルメチル、ピリジニルエチル又はピリジニルエテニル、ピリミジニルメチル、ピリミジニルエチル又はピリミジニルエテニル、ピロリルメチル、ピロリルエチル又はピロリルエテニル、フラニルメチル、フラニルエチル又はフラニルエテニル、イミダゾリルメチル、イミダゾリルエチル又はイミダゾリルエテニル、チオフェニルメチル、チオフェニルエチル又はチオフェニルエテニル、インドリルメチル、インドリルエチル又はインドリルエテニル、ベンゾフラニルメチル、ベンゾチオフェニルメチル、及びキノリニルメチル又はキノリニルエチルである。
【0082】
19及びR20が、一緒になって、炭化水素又はヘテロ炭化水素環を形成する場合、R19及びR20は、共に、C〜Cアルキレン若しくはC〜Cヘテロアルキレン、又は1,2−フェニレン縮合C〜Cアルキレン若しくはC〜Cヘテロアルキレンであることができる。幾つかの例は、ジメチレンからペンタメチレン、−CH−O−、−CH−NH−、−CH−N(CH)−、−CH−CH−O−、−CH−CH−NH−、−CH−CH−N(CH)−、−CH−CH−O−CH−、−CH−CH−NH−CH−、−CH−CH−N(CH)−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−NH−CH−CH−、−CH−CH−N(CH)−CH−CH−、−CH−CH−N=CH−CH−、−CH−CH−N(−)CH−CH−、−CH−CH−CH−CH−NH−及び−CH−CH−CH−CH−O−である。
【0083】
18及びR20が、一緒になって、炭化水素又はヘテロ炭化水素環を形成する場合、R18及びR20は、共に、C〜Cアルキレン、C〜Cヘテロアルキレン、又はC〜Cシクロアルキレンが縮合しているアルキレン若しくはヘテロアルキレン、C〜Cヘテロシクロアルキレン、1,2−フェニレン、1,2−ナフチレン、又は5若しくは6個の環員と、O、N、S及びNRからなる群より選択される1若しくは2個のヘテロ原子とを有するヘテロアリーレンであることができ、ここでRは上記で定義されたとおりである。アルキレンの例は、ジメチレンからヘキサメチレンである。ヘテロアルキレンの例は、R19及びR20で提示されている。縮合アルキレン又はヘテロアルキレンの例は、テトラヒドロナフチレン、ヘキサヒドロナフチレン、オクタヒドロナフチレン又はデカヒドロナフチレン、テトラヒドロキノリニレン、ヘキサヒドロキノリニレン、オクタヒドロキノリニレン又はデカヒドロキノリニレン、ジヒドロフラニレン、テトラヒドロフラニレン、ヘキサヒドロフラニレン又はオクタヒドロフラニレン、ジヒドロチオフェニレン、テトラヒドロチオフェニレン、ヘキサヒドロチオフェニレン又はオクタヒドロチオフェニレン、ジヒドロインドリレン、テトラヒドロインドリレン、ヘキサヒドロインドリレン又はオクタヒドロインドリレン、及びジヒドロインダニレン、テトラヒドロインダニレン、ヘキサヒドロインダニレン又はオクタヒドロインダニレンである。
【0084】
好ましい実施態様において、式Vの化合物は、下記式:
【0085】
【化24】

【0086】
〔式中、
21及びR23は、それぞれ、互いに独立して、直鎖若しくは分岐鎖C〜Cアルキル(例えば、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、n−、i−及びt−ブチル)、C〜Cアルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、n−及びi−プロポキシ、n−、i−及びt−ブトキシ)、フェノキシ、ベンジルオキシ、−C(O)OC〜Cアルキル(アルキルは、好ましくは、メチル若しくはエチルである)、又は−C(O)−N(OC〜Cアルキル)(アルキルは、好ましくは、メチル若しくはエチルである)であり、
21及びR23は、異なっており、そして
22は、水素、C〜Cアルキル(例えば、メチル若しくはエチル)又はC〜Cアルコキシ(例えば、メトキシ若しくはエトキシ)である〕
で示されるものに対応する。
【0087】
本発明の方法は、例えば、触媒を窒素塩基と一緒に、適当であれば溶媒と一緒に、オートクレーブの中に入れ、次にラセミアルデヒド又はラセミケトンを加え、次に空気を不活性ガス、例えば希ガスに代え、水素を注入し、次に反応を、適当であれば撹拌又は振とうしながら、開始させ、水素取込が観察されなくなるまで水素化することによって実施することができる。形成されたアルコールを、慣用の方法により、例えば、蒸留、結晶化又はクロマトグラフ法により単離及び精製することができる。
【0088】
本発明により製造することができるアルコールは、天然活性化合物(B. T. Cho et al. in Tetrahedron: Asymmetry Vol. 5, No. 7 (1994), pages 1147 to 1150)及び薬学的に活性な合成化合物及び殺虫剤を製造するための貴重な中間体である。
【0089】
更に、予期しないことに、式IIのR及びRが、P原子に対して少なくとも1つのオルト位置で置換されている同一のフェニル基である場合、より高いジアステレオマー比率及びより高いエナンチオマー過剰を達成できることが見出されている。また、選択されるプロキラルケトンの水素化における触媒としてのルテニウム錯体におけるそのようなリガンドが、著しく改善された触媒活性及びより高いエナンチオ選択性をもたらしうることが見出されている。更に、そのような水素化触媒を使用すると、予想外に高い立体選択性が、プロキラルケトンの水素化において観察され、エチレン性不飽和ケトンの水素化における化学選択性が観察されている。
【0090】
本発明は、更に式VI:
【0091】
【化25】

【0092】
〔式中、
は、C1−6アルコキシ−C1−4アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−8アルキル、C5−8シクロアルキル、C5−8シクロアルキル−C1−8アルキル、C6−14アリール、C7−12アラルキル、C3−12ヘテロアリール、C4−16ヘテロアラルキルであり、ここで環状基は、非置換であるか、又はOH、F、Cl、Br、−CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トルフルオロメチル、トルフルオロメトキシ、フェニル、C1−4アルキル若しくはC1−4アルコキシフェニル、−C(O)O−C1−4アルキル又はジ(C〜Cアルキル)アミノで置換されており、
及びCは、一緒になって、5員又は6員のアレーン又はヘテロアレーンの一部であり、これは、非置換であるか又はF、Cl、Br、−CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フェニル、C1−4アルキルフェニル若しくはC1−4アルコキシフェニル、−C(O)O−C1−4アルキル又はジ(C〜Cアルキル)アミノで置換されており、
基R24は、それぞれ、OH、F、Cl、Br、I、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、C1−4アルキルチオ、フェニル−C1−4アルキル、フェニル−C1−4アルコキシ、フェニル−C1−4アルキルチオ又はジ(C〜Cアルキル)アミノであるか、或いは
24及びR25は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、O、S、N、NH又はN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子又はヘテロ基を有する5員又は6員の炭化水素又はヘテロ炭化水素環を形成し、そして
25単独、並びにR26、R27及びR28は、それぞれ、互いに独立して、水素原子、OH、F、Cl、Br、I、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、C1−4アルキルチオ又はジ(C〜Cアルキル)アミノである〕
で示される化合物を提供する。
【0093】
上記に記載されている説明及び選択肢はC及びC、並びにRに当てはまる。C及びCは、特に好ましくは、1,2−フェニレン、1,2−ナフチレン及び1,2−フェロセニレンである。Rは、特に好ましくは、C1−4アルキル(とりわけ好ましくは、i−プロピル及びt−ブチル)並びにフェニルである。
【0094】
好ましい基R24は、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、n−、i−及びt−ブチル、ベンジル、ベンジルオキシ、メトキシ、エトキシ、n−及びi−プロポキシである。特に好ましいものは、メチル、メトキシ及びi−プロポキシである。
【0095】
24及びR25が、それらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成する場合、R24及びR25は、一緒になって、例えば、−CH=CH−CH=CH−、−N=CH−CH=CH−、−CH=N−CH=CH−、−CH=CH−N=CH−、−CH=N−CH=N−、=CH−X−CH=、=CH−X−CH−、−CH−X−CH−、−X−CH−CH=、−X−CH−CH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−O−CH−O−、−O−CHCH−O−、−CH−CH−O−、−CH−CHCH−O−、−O−CH−CH−又は−O−CHCH−CH−であることができる。特に好ましくは、R24及びR25は、一緒になって、−CH=CH−CH=CH−である。
【0096】
好ましい実施態様において、式VIのリガンドは、好ましくは、式VII:
【0097】
【化26】

【0098】
〔式中、
は、式(A)又は(B):
【0099】
【化27】

【0100】
で示される基であり、
nは、1であり、
は、直鎖若しくは分岐鎖C1−4アルキル又はフェニルであり、そして
は、それぞれの場合、C1−4アルキル又はC1−4アルコキシによりP/C結合に対してオルト位置で置換されているフェニルであるか、或いはRは、それぞれの場合、1−ナフチルである〕
に対応する。
【0101】
本発明により使用されるリガンドの製造は、それ自体既知の方法及び類似の方法により実施することができ(例えば、S. Uemura et al. in J. Organometallic Chem., 1999, 572, 163又はWO 2004/050585を参照すること)、実施例において例示されている。
【0102】
本発明は、また、式VIのリガンドを有し、式VIII:
【0103】
【化28】

【0104】
〔式中、
Xは、水素化物、ハロゲン化物、C1−8アルコキシド又はC1−8アシルオキシであり、P−Z−Nは、式VI又は式VIIの化合物であり、そしてR、R及びRは、上記で定義されたとおりである〕
に対応するルテニウム錯体を提供する。
【0105】
上記に示された選択肢は、X、式VIの化合物及びR、R及びRに当てはまる。
【0106】
Xは、特に好ましくは、Cl又はBrであり、R、R及びRは、それぞれ、特に好ましくはフェニルであり、そしてP−Z−Nは、特に好ましくは、式VIIの化合物である。
【0107】
本発明は、更に、水素を用いる、アルデヒド及び好ましくはプロキラルケトンの水素化のための、式VIIIのルテニウム錯体の使用を提供する。
【0108】
以下の実施例は本発明を説明する。比較の目的で、既知の錯体Kcomparison(Kcomp)(例えば、S. Uemura et al. in Organometallics, 1999, 18, 2291又はWO 2004/050585を参照すること):
【0109】
【化29】

【0110】
を使用して実施した接触水素化の結果も報告している。
【0111】
A)新規P−Z−Nリガンドの調製
例A1:下記式(リガンドL1)の(S)−4−イソプロピル−2−〔(S)−2−(ビス(1−ナフチル)ホスフィノ)フェロセン−1−イル〕オキサゾリンの調製
【0112】
【化30】

【0113】
(S)−4−イソプロピル−2−(フェロセン−1−イル)オキサゾリン10g(33.65mmol)を、ジエチルエーテル100mlに溶解し、アルゴン下、−73℃に冷却した。s−ブチル−Li(シクロヘキサン中1.3M)31ml(40.38mmol、1.2当量)を、この温度で滴加し、混合物を2時間撹拌した。ビス(1−ナフチル)ホスフィンクロリド13.4g(40.38mmol、1.2当量)を一度に全て加え、反応混合物を10時間かけて室温に温めた。反応を、飽和炭化水素ナトリウム溶液35mlの添加により停止させた。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、次に溶媒を除去した。次に粗生成物を、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離剤=3:1 ヘプタン:メチルt−ブチルエーテル〔MTBE〕)に付した。これにより表記化合物2.05g(理論値の10.5%)を黄色の固体として得た。
【0114】
【表1】

【0115】
例A2:下記式(リガンドL2)の(S)−4−イソプロピル−2−〔(S)−2−(ビス(2−メトキシフェニル)ホスフィノ)フェロセン−1−イル〕オキサゾリンの調製
【0116】
【化31】

【0117】
(S)−4−イソプロピル−2−(フェロセン−1−イル)オキサゾリン8g(26.92mmol)を、ジエチルエーテル100mlに溶解し、アルゴン下、−73℃に冷却した。s−ブチル−Li(シクロヘキサン中1.3M)25ml(32.30mmol、1.2当量)を、この温度で滴加し、混合物を2時間撹拌した。ビス(2−メトキシフェニル)ホスフィンクロリド9g(32.30mmol、1.2当量)を一度に全て加え、反応混合物を10時間かけて室温に温めた。反応を、飽和炭化水素ナトリウム溶液35mlの添加により停止させた。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、次に溶媒を除去した。粗生成物を、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離剤=3:1 ヘプタン:MTBE)に付した。これにより表記化合物4.6g(理論値の32%)を黄色の固体として得た。
【0118】
【表2】

【0119】
例A3:下記式(リガンドL3)の(S)−4−イソプロピル−2−〔(S)−2−(ビス(2−メチルフェニル)ホスフィノ)フェロセン−1−イル〕オキサゾリンの調製
【0120】
【化32】

【0121】
(S)−4−イソプロピル−2−(フェロセン−1−イル)オキサゾリン8g(26.92mmol)を、ジエチルエーテル100mlに溶解し、アルゴン下、−73℃に冷却した。s−ブチル−Li(シクロヘキサン中1.3M)25ml(32.30mmol、1.2当量)を、この温度で滴加し、混合物を2時間撹拌した。ビス(2−メチルフェニル)ホスフィンクロリド8g(32.30mmol、1.2当量)を一度に全て加え、反応混合物を10時間かけて室温に温めた。反応を、飽和炭化水素ナトリウム溶液35mlの添加により停止させた。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、次に溶媒を除去した。粗生成物を、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離剤=3:1 ヘプタン:MTBE)に付した。これにより表記化合物9.3g(理論値の68%)を黄色の泡状物として得た。この生成物は依然として約15%の(S、R)−ジアステレオマーを含有した。
【0122】
【表3】

【0123】
B)金属錯体の調製
例B1:〔(Cl)Ru(Pフェニル)(リガンドL1)〕、K1のその場での調製
ルテニウム化合物〔RuCl(PPh〕(4.81mg、5.02μmol)及びリガンドL1(2.95mg、5.07μmol)を、シュレンク管の中、トルエン3mlとアルゴン下で混合した。混合物を90℃で2時間撹拌して、褐色の溶液の形成をもたらした。これを水素化に直接使用した。
【0124】
例B2:〔(Cl)Ru(Pフェニル)(リガンドL2)〕、K2の調製
【0125】
【化33】

【0126】
ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)272.5mg(0.284mmol)及びリガンドL2 160.0mg(0.296mmol)を、10mlのシュレンク管の中に入れ、無水トルエン6.5mlとアルゴン下で混合した。暗色懸濁液を室温で一晩撹拌して、橙赤色への変色をもたらした。無水トルエン4mlを加えた後、撹拌を止めて、上澄み橙色溶液を橙色の固体からの吸引により濾取した。固体をペンタンによりそれぞれ4mlで5回洗浄し、高真空下で乾燥した。これにより表記化合物244mg(理論値の88%)を橙色の粉末として得た。
【0127】
【表4】

【0128】
例B3:〔(Cl)Ru(Pフェニル)(リガンドL3)〕、K3の調製
【0129】
【化34】

【0130】
ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)278.7mg(0.291mmol)及びリガンドL3 154.0mg(0.302mmol)を、10mlのシュレンク管の中に入れ、無水トルエン6.0mlとアルゴン下で混合した。暗色懸濁液を室温で一晩撹拌して、赤色への変色をもたらした。無水トルエン4mlを加えた後、撹拌を止めて、上澄み溶液を赤色の固体から分離した。固体をペンタンによりそれぞれ4mlで3回洗浄し、高真空下で乾燥した。これにより表記化合物316mg(トルエン36%m/m、有効収率:理論値の73%)を赤色の粉末として得た。
【0131】
【表5】

【0132】
C)プロキラルケトンの水素化
一般的方法:
シュレンク管中で、金属錯体K1、K2若しくはK3、又は比較のためにKcomp(水素化触媒)を、1mlの無水トルエン(方法A)又は新たに蒸留したイソプロパノール(方法B)に溶解した。代替物として、その場で生成したルテニウム錯体の溶液も使用することができた。出発材料を、第2のシュレンク管中でトルエン2ml(方法A)又はイソプロパノール1ml(方法B)に溶解した。2本のシュレンク管の内容物を、予めアルゴンを充填した50mlのオートクレーブに、アルゴン圧力下でテフロン管により移した。最後に、水性脱ガスNaOH(1M、方法A)1ml又はイソプロパノール中のカリウムt−ブトキシド1M溶液1ml(方法B)を加えた。オートクレーブを密閉し、内容物をアルゴンで3回フラッシュし、次に水素で3回フラッシュしてから、水素圧を設定した。望ましい場合、オートクレーブを油浴により加熱した。反応温度に達した後、圧力を再び設定し、磁気撹拌機を始動した。所望の水素化時間の後、撹拌及び加熱を止めて、オートクレーブを、冷却した後、アルゴンで通風した。粗生成物の試料をGC及びHPLC分析により試験した。
【0133】
方法A:塩基:1M NaOH水溶液1.0ml(1.0mmol);溶媒:トルエン3ml。
方法B:塩基:1Mカリウムt−ブトキシド1.0ml(1.0mmol);溶媒:2−プロパノール2ml。
S/Cは、基質と触媒の比率である。Solvは溶媒である。
【0134】
例C1及びC2:α,α,α−トリフルオロアセトフェノンの水素化:
【0135】
【化35】

【0136】
C1:α,α,α−トリフルオロアセトフェノン:0.14ml(1.0mmol);Ru化合物:〔RuCl(PPh〕4.81mg(5.02μmol);リガンドL1:2.95mg(5.07μmol);S/C:200;塩基:1M NaOH水溶液1.0ml(1.0mmol);溶媒:トルエン3ml;H/25℃の80bar;18時間。100%変換、81%ee。
【0137】
C2(比較):α,α,α−トリフルオロアセトフェノン:0.14ml(1.0mmol);触媒:Kcomp 4.85mg(5.0μmol);S/C:200;塩基:1M NaOH水溶液1.0ml(1.0mmol);溶媒:トルエン3ml;H/25℃の80bar;16時間。100%変換、僅か21%ee。
【0138】
例C3、C4及びC5:2−トリフルオロメチルアセトフェノンの水素化
【0139】
【化36】

【0140】
C3:トリフルオロメチルアセトフェノン:0.15ml(1.0mmol);Ru化合物:〔RuCl(PPh)〕:4.79mg(5.0μmol);リガンドL1:2.91mg(5.0μmol);S/C:200;塩基:1M NaOH水溶液1.0ml(1.0mmol);溶媒:トルエン3ml;H/25℃の80bar;16時間。100%変換、96%ee(R)。
【0141】
C4:2−トリフルオロメチルアセトフェノン:0.15ml(1.0mmol);触媒:K2 4.88mg(5.00μmol);S/C:200;塩基:1M NaOH水溶液1.0ml(1.0mmol);溶媒:トルエン3ml;H/25℃の80bar;17時間。100%変換、94%ee(R)。
【0142】
C5(比較):2−トリフルオロメチルアセトフェノン:0.15ml(1.0mmol);触媒:Kcomp 4.58mg(5.00μmol);S/C:200;塩基:1M NaOH水溶液1.0ml(1.0mmol);溶媒:トルエン3ml;H/25℃の80bar;16時間。100%変換、90%ee(R)。
【0143】
例C6:2,4−ジクロロアセトフェノンの水素化:
【0144】
【化37】

【0145】
2,4−ジクロロアセトフェノン:189mg(1mmol);Ru化合物〔RuCl(PPh)〕:4.81mg(5.02μmol);リガンドL1:2.95mg(5.07μmol);S/C:200;塩基:1M NaOH水溶液1.0ml(1.0mmol);溶媒:トルエン3ml;H/25℃の80bar;18時間。100%変換、97%ee。
【0146】
例C7及びC8:インダノンの水素化:
【0147】
【化38】

【0148】
C7:インダノン:132.7mg(1.0mmol);触媒:K2 4.90mg(5.02μmol);S/C:200;塩基:1Mカリウムt−ブトキシド1.0ml(1.0mmol);溶媒:2−プロパノール2ml;H/25℃の80bar;20時間。100%変換、84%ee。
【0149】
C8:インダノン:132.7mg(1.0mmol);Ru化合物〔RuCl(PPh)〕:4.81mg(5.02μmol);リガンドL1:2.95mg(5.07μmol);S/C:200;塩基:1M NaOH水溶液1.0ml(1.0mmol);溶媒:トルエン3ml;H/25℃の80bar;18時間。94%変換、90%ee。
【0150】
D)キラルケトンの水素化
例D1:2−メチル−1−テトラロンの水素化
【0151】
【化39】

【0152】
2−メチル−1−テトラロン(ラセミ体):320mg(2mmol);触媒:K2 0.02mmol;S/C:100;塩基:カリウムt−ブトキシド:112mg;溶媒:エタノール/トルエン(1:1)5ml;H/25℃の80bar;20時間。97%変換、ジアステレオマー比率:シス/トランス=99:1;94.7%ee(シス)。
【0153】
例D2:2−メトキシシクロヘキサノンの水素化
【0154】
【化40】

【0155】
2−メトキシシクロヘキサノン:256mg(2mmol);触媒:K2 0.02mmol;S/C:100;塩基:カリウムt−ブトキシド:112mg;溶媒:エタノール/トルエン(1:3)8ml;H/25℃の80bar;20時間。100%変換、ジアステレオマー比率:27:73;それぞれ58%又は73%ee。
【0156】
例D3:2−メチル−1−インダノンの水素化
【0157】
【化41】

【0158】
2−メチル−1−インダノン(ラセミ体):0.14ml(1.0mmol);触媒:K2 4.90mg(5.02μmol);S/C:200;塩基:1M NaOH水溶液1.0ml(1.0mmol);溶媒:トルエン3ml;H/25℃の80bar;18時間。93%変換、ジアステレオマー比率:95:5;それぞれ82%又は39%ee。
【0159】
E)エノンの水素化(比較)
例E1及びE2:3−メチル−2−シクロヘキセノンの水素化
【0160】
【化42】

【0161】
E1:3−メチル−2−シクロヘキセノン:0.11ml(0.97mmol);触媒:K2 4.90mg(5.02μmol);S/C:193;塩基:1M NaOH水溶液1.0ml(1.0mmol);溶媒:トルエン3ml;H/25℃の80bar;18時間。97%変換、選択性:3−メチル−2−シクロヘキセノン−1−オール(5%ee)の93%及び3−メチルシクロヘキサン−1−オールの4%。
【0162】
E2(比較):3−メチル−2−シクロヘキセノン:0.11ml(0.97mmol);触媒:Kcomp 4.60mg(5.02μmol);S/C:193;塩基:1M NaOH水溶液1.0ml(1.0mmol);溶媒:トルエン3ml;H/25℃の80bar;18時間。100%変換、選択性:3−メチルシクロヘキサン−1−オールの100%、ジアステレオマー比率:72:28.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基、並びに配位P及びN原子を有する二座リガンド、モノホスフィンリガンド、及びアニオン性及び/又は非荷電リガンドを含有するルテニウム錯体の均一触媒としての存在下で、非荷電リガンドが存在する場合、電荷を1若しくは2個の一価酸アニオン又は二価酸アニオンにより平衡にさせて、アルデヒド又はケトンを水素と反応させることにより、主にエナンチオマー第一級アルコール又は主にジアステレオマー第二級アルコールを製造する方法であって、
C(O)基に対してα位置にステレオジエン炭素原子を有し、かつ構造要素−(O)C−C−CH−を含有するラセミアルデヒド又はラセミケトンを反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
ルテニウム錯体が、一般式I:
【化1】


〔式中、
X及びYは、それぞれ、互いに独立して、水素化物、ハロゲン化物、C1−8アルコキシド若しくはC1−8アシルオキシ、又はO、S及びNからなる群の少なくとも1個のヘテロ原子を含有する配位有機溶媒リガンドであり、得られる、1又は2個の溶媒リガンドを有するカチオン性錯体が、1若しくは2個の一価アニオン又は二価アニオンで中和されており、
、R及びRは、それぞれ、互いに独立して、炭化水素基か、又はO、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子を有するC結合ヘテロ炭化水素基であり、それぞれ、1〜22個、好ましくは1〜14個、特に好ましくは1〜10個の、非置換であるか又は置換されている炭素原子を有するか、或いは基R、R及びRのうちの1つは、上記で提示されたとおりであり、残りの2つの基は、リン原子及び炭素原子と一緒になって、4員〜8員の非置換又は置換環を形成し、そして
P−Z−Nは、式(II):
【化2】


で示される二座リガンドであり、
ここで、
及びRは、それぞれ、互いに独立して、炭化水素基か、又はO、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子を有するC結合ヘテロ炭化水素基であり、それぞれ、1〜22個、好ましくは1〜14個、特に好ましくは1〜10個の炭素原子を有するか、或いはR及びRは、リン原子及び更なる炭素原子と一緒になって、4員〜8員環を形成し、ここでR及びRは、非置換であるか又は置換されており、
及びCは、一緒になって、5員又は6員のアレーン又はヘテロアレーンの一部であり、これは、非置換であるか又はOH、F、Cl、Br、−CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フェニル、C1−4アルキル若しくはC1−4アルコキシフェニル、−C(O)O−C1−4アルキル又はジ(C〜Cアルキル)アミノで置換されており、
は、水素原子、直鎖、分岐鎖若しくは環状のC1−10アルキル若しくはC2−10アルケニル基、又はC6−10アリール基であり、それぞれ、非置換であるか又はC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジ(C〜Cアルキル)アミノ、フェニル、ベンジル、C1−4アルキルフェニル又はC1−4アルキルベンジルで置換されているか、或いはRは、−OR6′又は−NR6′6″基であり、ここでR6′及びR6″は、Rと同じ意味を有し、
は、水素原子、直鎖、分岐鎖若しくは環状のC1−10アルキル若しくはC2−10アルケニル基であるか、又はRは、R7′CO−若しくはR7′SO−基であり、ここでR7′は、1〜14個の炭素原子を有する炭化水素基であるか、或いは
及びRは、基−C=N−と一緒になって、不飽和の5員〜10員、好ましくは5員〜7員、置換又は非置換複素環を形成する〕
に対応することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式IIのリガンドが、式IV:
【化3】


〔式中、
は、非置換又はC1−4アルキル若しくはハロゲンで置換されていてもよい式(A)のフェロセン基であるか、或いは非置換又はOH、F、Cl、Br、−CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フェニル、C1−4アルキルフェニル若しくはC1−4アルコキシフェニル、−C(O)O−C1−4アルキル若しくはジ(C〜Cアルキル)アミノで置換されていてもよい式(B)の基であり:
【化4】


nは、1又は2、好ましくは1であり、
は、C1−4アルコキシ−C1−2アルキル、直鎖若しくは分岐鎖C1−4アルキル、シクロヘキシル、フェニル又はベンジルであり、ここで環状基は、上記で定義されているように置換されていてもよく、そして
基Rは、それぞれ、フェニルか、又はO、S、N、NH若しくはN−C1−4アルキルからなる群より選択されるヘテロ原子を有するC結合ヘテロアリールであり、それぞれ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、C1−6フルオロアルキル、F、Cl、Br、OH若しくはN(C1−6アルキル)により、P−C結合に対して少なくとも1つのオルト位置で置換されているか、又は脂肪族、脂肪族複素環、芳香族若しくは芳香族複素環の5員若しくは6員環が2,3位で縮合しており、ヘテロアリールの場合は、3,4位でも縮合しており、ここで、フェニル又はヘテロアリールは、更なる置換基を含有することもできる〕
に対応することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
フェニル基Rが、式C:
【化5】


〔式中、
10は、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、C1−4フルオロアルキル、F、Cl、Br、I、OH又はN(C1−4アルキル)であり、
11は、水素原子又は独立してR10の意味のうちの1つを有するか、或いは
10及びR11は、一緒になって、非置換又はC1−4アルキル−、C1−4アルコキシ−、C1−4フルオロアルキル−、F−若しくはCl−置換の−CH=CH−CH=CH−、−N=CH−CH=CH−、−CH=N−CH=CH−、−CH=CH−N=CH−、−CH=N−CH=N−、=CH−X−CH=、=CH−X−CH−、−CH−X−CH−、−X−CH−CH=、−X−CH−CH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−O−CH−O−、−O−CHCH−O−、−CH−CH−O−、−CH−CHCH−O−、−O−CH−CH−若しくは−O−CHCH−CH−であり、
は、O、S、N、NH又はN−C1−4アルキルであり、そして
12、R13及びR14は、それぞれ、互いに独立して、水素原子、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4フルオロアルキル、F、Cl又はN(C1−6アルキル)である〕
に対応することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
1・10〜1・10Pa(1〜100bar)の圧力で実施されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
0℃〜100℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
溶媒又は少なくとも2種の溶媒の存在下で実施されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
アルカリ土類金属若しくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属炭酸塩若しくは炭酸水素塩及びアルカリ金属アミドからなる群より選択される無機塩基、又は有機窒素塩基が、塩基として使用されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
塩基と基質のモル比が10対0.1であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
基質とルテニウム錯体のモル比が10対20であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
水素化されるラセミアルデヒドとラセミケトンが、式V:
【化6】


〔式中、
は、ステレオジエン炭素原子を意味し、
18は、水素原子、炭化水素基、又はO、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子若しくはヘテロ基を有するC結合ヘテロ炭化水素基であり、それぞれ、1〜40個、好ましくは1〜30個、特に好ましくは1〜20個の炭素原子を含有し、非置換であるか又は水素化条件下で不活性である基により置換されているか、若しくは不飽和基−C=C−、−C=N−(イミン)、−CH=O(アルデヒド)若しくは=C=O(ケトン)を含有する基により置換されており、
19及びR20は、それぞれ、互いに独立して、炭化水素基、又はO、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子若しくはヘテロ基を有するC−若しくはヘテロ原子結合ヘテロ炭化水素基であり、それぞれ、1〜40個、好ましくは1〜30個、特に好ましくは1〜20個の炭素原子を含有し、非置換であるか又は水素化条件下で不活性である基により置換されているか、或いはR19は、この意味を有し、R20は、ハロゲン、OH、SH又はCNであり;
18及びR20は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、O、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子若しくはヘテロ基を有する3員〜10員炭化水素又はヘテロ炭化水素環を形成し、それぞれ、非置換であるか又は水素化条件下で不活性である基により置換されているか、若しくは不飽和基−C=C−、−C=N−(イミン)、−CH=O(アルデヒド)若しくは=C=O(ケトン)を含有する基により置換されているか、或いは
19及びR20は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、O、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子又はヘテロ基を有する3員〜10員炭化水素又はヘテロ炭化水素環を形成し、それぞれ、非置換であるか又は水素化条件下で不活性である基により置換されているか、若しくは不飽和基−C=C−、−C=N−(イミン)、−CH=O(アルデヒド)若しくは=C=O(ケトン)を含有する基により置換されている〕
に対応することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項12】
式VI:
【化7】


〔式中、
は、C1−6アルコキシ−C1−4アルキル、直鎖又は分岐鎖C1−8アルキル、C5−8シクロアルキル、C5−8シクロアルキル−C1−8アルキル、C6−14アリール、C7−12アラルキル、C3−12ヘテロアリール、C4−16ヘテロアラルキルであり、ここで環状基は、非置換であるか、又はOH、F、Cl、Br、−CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トルフルオロメチル、トルフルオロメトキシ、フェニル、C1−4アルキル若しくはC1−4アルコキシフェニル、−C(O)O−C1−4アルキル又はジ(C〜Cアルキル)アミノで置換されており、
及びCは、一緒になって、5員又は6員のアレーン又はヘテロアレーンの一部であり、これは、非置換であるか又はF、Cl、Br、−CN、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フェニル、C1−4アルキルフェニル若しくはC1−4アルコキシフェニル、−C(O)O−C1−4アルキル又はジ(C〜Cアルキル)アミノで置換されており、
基R24は、それぞれ、OH、F、Cl、Br、I、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、C1−4アルキルチオ、フェニル−C1−4アルキル、フェニル−C1−4アルコキシ、フェニル−C1−4アルキルチオ又はジ(C〜Cアルキル)アミノであるか、或いは
24及びR25は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、O、S、N、NH又はN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子又はヘテロ基を有する5員又は6員の炭化水素又はヘテロ炭化水素環を形成し、そして
25単独、並びにR26、R27及びR28は、それぞれ、互いに独立して、水素原子、OH、F、Cl、Br、I、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、C1−4アルキルチオ又はジ(C〜Cアルキル)アミノである〕
で示される化合物。
【請求項13】
式VII:
【化8】


〔式中、
は、式(A)又は(B):
【化9】


で示される基であり、
nは、1であり、
は、直鎖若しくは分岐鎖C1−4アルキル又はフェニルであり、そして
は、それぞれの場合、C1−4アルキル又はC1−4アルコキシによりP/C結合に対してオルト位置で置換されているフェニルであるか、或いはRは、それぞれの場合、1−ナフチルである〕
に対応することを特徴とする、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
式VIII:
【化10】


〔式中、
Xは、水素化物、ハロゲン化物、C1−8アルコキシド又はC1−8アシルオキシであり、
P−Z−Nは、請求項12又は請求項13記載の式VIの化合物であり、そして
、R及びRは、それぞれ、互いに独立して、炭化水素基か、又はO、S、N、NH及びN(C〜Cアルキル)からなる群より選択されるヘテロ原子を有するC結合ヘテロ炭化水素基であり、それぞれ、1〜22個の炭素原子を有するか、或いはR及びRは、リン原子及び更なる炭素原子と一緒になって、4員〜8員環を形成し、Rは、上記で定義されたとおりであり、ここでR、R及びRは、非置換であるか又は置換されている〕
で示されるルテニウム錯体。
【請求項15】
水素を用いるアルデヒド、好ましくはプロキラルケトンの水素化のための、請求項14記載の式VIIIのルテニウム錯体の使用。

【公表番号】特表2009−529569(P2009−529569A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558785(P2008−558785)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052160
【国際公開番号】WO2007/104690
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(599163159)ソルヴィーアス アクチェンゲゼルシャフト (22)
【氏名又は名称原語表記】Solvias AG
【Fターム(参考)】