説明

プロジェクタ

【課題】動画像視認性が抑制されたプロジェクタを提供する。
【解決手段】 本発明は、与えられた画像データに応じて画像を投写するプロジェクタを提供する。このプロジェクタは、光源と、光源から供給された供給光を変調する光変調部と、変調された変調光を投写する投写光学部と、供給光と前記変調光の少なくとも一方を制限する光制限デバイスと、光制限デバイスの状態変化に応じた前記光制限デバイスの特性変動に起因する輝度変動を抑制するように前記光制限デバイスを駆動するデバイス駆動部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像表示技術に関し、特に、動画像の表示において発生する動画像のボケを抑制するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
動画像表示装置には、画像が常時表示されているホールド型表示装置と、CRTのようなインパルス型表示装置とがある。ホールド型表示装置は、フリッカー(ちらつき感)がないという利点を有する一方で、ディスプレイや人間の目の残像に起因する動画像視認性の問題(動画像ボケ)があるという欠点を有していた。このような欠点を解消するために、たとえばホールド型表示装置において液晶パネルの制御によって映像表示と黒表示とを行うインパルス型の表示を実現する技術が特許文献1に提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−106689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような液晶パネルその他のホールド型表示装置の制御は、制御装置の複雑化を伴うものであった。さらに、このような問題は、映像表示と黒表示の最適化による低フリッカーと動画像視認性の両立の実現といった観点からは、ホールド型表示装置に限られずインパルス型表示装置にも共通する問題であった。
【0005】
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、動画像視認性が抑制されたプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、与えられた画像データに応じて画像を投写するプロジェクタを提供する。このプロジェクタは、
光源と、
前記光源から供給された供給光を変調する光変調部と、
前記変調された変調光を投写する投写光学部と、
前記供給光と前記変調光の少なくとも一方を制限する光制限デバイスと、
前記光制限デバイスの状態変化に応じた前記光制限デバイスの特性変動に起因する輝度変動を抑制するように前記光制限デバイスを駆動するデバイス駆動部と、
を備える。
【0007】
本発明では、光制限デバイスの状態変化に応じた特性変動に起因する輝度変動を抑制するように光制限デバイスが駆動されるので、光制限デバイスの状態変化に応じた特性変動に起因する映像表示(たとえば透過率90%)と黒表示(たとえば透過率50%)の輝度の変動を抑制することができる。なお、光制限デバイスの状態変化は、たとえば温度変化や経年変化といった光制限デバイスの状態の変化を含む。
【0008】
上記プロジェクタにおいて、
前記光制限デバイスは、前記変調光を制限するようにしても良い。こうすれば、画像光制限領域の制御を容易かつ正確に実現することができる。
【0009】
上記プロジェクタにおいて、
前記プロジェクタは、さらに、前記光制限デバイスの温度を計測する温度センサを備え、
前記デバイス駆動部は、前記温度センサの計測値に応じて前記光制限デバイスを駆動するようにしても良い。
【0010】
上記プロジェクタにおいて、
前記デバイス駆動部は、さらに、前記光変調部の状態変化に応じた前記光変調部の特性変動に起因する輝度変動を抑制するように前記光制限デバイスを駆動するようにしても良い。
【0011】
こうすれば、温度変化に起因するプロジェクタの輝度変動を光制限デバイスの駆動内容の調整だけで実現することができる。これにより、たとえばRGBのライトバルブの各々のガンマ補正の内容の調整の省略あるいは簡略化(たとえば色づき抑制のための相対的調整のみ)を実現することができる。
【0012】
上記プロジェクタにおいて、
前記デバイス駆動部は、前記光制限デバイスの特定の入出力応答の変化に基づいて前記内部環境の変化を推定するとともに、前記推定された内部環境の変化に応じて前記輝度変動を抑制するように前記光制限デバイスを駆動するようにしても良い。
【0013】
こうすれば、温度センサを省略することができるとともに、温度を介した特性変動の推定でなく特性変動の直接的な計測を実現することができる。なお、温度センサとしては、たとえばサーミスタや熱電対を利用可能である。
【0014】
上記プロジェクタにおいて、
前記デバイス駆動部は、前記光制限デバイスの想定された複数の環境に対して予め準備された前記光制限デバイスの特性を表す複数の特性データを備え、前記光制限デバイスの環境に応じて前記複数の特性データに基づいた内挿と外挿の何れか一方を実行することによって推定された特性に基づいて前記光制限デバイスを駆動するようにしても良い。
【0015】
こうすれば、予め準備する特性データの数を削減して、特性データを格納するメモリ(図示せず)の消費量を削減するためである。
【0016】
上記プロジェクタにおいて、
前記光制限デバイスは、前記光変調部と前記投写光学部との間に配置され、前記変調光の一部の領域について前記変調光を制限するようにしても良い。
【0017】
なお、本発明は、プロジェクタに限られず、投影方法や投影制御装置、投影制御方法、投影を制御するためのプログラム(あるいはプログラム製品)といった種々の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.プロジェクタの構成:
B.画像光制限デバイスの構成と温度補償:
B−1.画像光制限デバイスの構成:
B−2.画像光制限デバイスの温度補償:
C.画像光制限デバイスの駆動動作:
D.変形例:
【0019】
A.プロジェクタの構成:
図1は、本発明の一実施例としてのプロジェクタの概略構成を示す説明図である。このプロジェクタ1000は、画像を投写するための光学系ブロック100と、画像の投写を制御するための制御系ブロック200とを備えている。
【0020】
光学系ブロック100は、照明光学系110と、色光分離光学系120と、3つのライトバルブ130R,130G,130Bと、クロスダイクロイックプリズム140と、画像光制限デバイス150と、投写レンズ(投写光学系)160と、を備えている。
【0021】
照明光学系110は、光源装置111を含み、3つのライトバルブ130R,130G,130Bから画像を表す光(以下、「画像光」と呼ぶ。)を射出するために利用される光、いわゆる照明光を射出する。
【0022】
色光分離光学系120は、照明光学系110から射出された光を、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色光に分離し、各色用として割り当てられたライトバルブ130R,130G,130Bへ向けて射出する。
【0023】
各色用のライトバルブ130R,130G,130Bは、それぞれに入射する色光を対応する色の画像光に変換して、クロスダイクロイックプリズム140へ向けて射出する。これらライトバルブ130R,130G,130Bは、例えば、透過型の液晶パネルと、入射側偏光板および射出側偏光板と、により構成することができる。この液晶パネルは、マトリクス状に配置され、複数の画素を構成する複数の液晶セルを有し、各液晶セルが列方向および行方向に順に走査されて、それぞれに対応する画像データが書き込まれることにより、入射する光を変調して画像光を射出する。なお、これらライトバルブ130R,130G,130Bは、本明細書では、表示用デバイスとも呼ばれる。
【0024】
クロスダイクロイックプリズム140は、各色用のライトバルブ130R,130G,130Bから射出された各色の画像光を合成し、合成光を、カラー画像を表す画像光として射出する。
【0025】
画像光制限デバイス150は、クロスダイクロイックプリズム140から射出されて入射する合成光(画像光)の一部についての透過を制限することにより、投写レンズ160への射出を制限する。なお、このような画像光の射出制限機能を実現するデバイスとしては、例えば、透過型の液晶パネルが利用可能である。また、画像光制限デバイス150には、画像光制限デバイス150の温度を計測するための温度センサ153が備えられている。
【0026】
投写レンズ160は、画像光制限デバイス150から射出された画像光を、スクリーンSC上に投写する。
【0027】
なお、図1に示すような光学系の各構成および機能については、画像光制限デバイスを除いて、例えば、本願の出願人によって開示された特開2003−270636号公報に詳述されているので、本明細書において詳細な説明は省略する。また、画像光制限デバイス150の構成および機能については、後で詳述する。
【0028】
図2は、制御系ブロックの概略構成を示す説明図である。制御系ブロック200は、入力信号処理部210と、画像信号処理部220と、フレームメモリ230と、ライトバルブ駆動部240および画像光制限デバイス駆動部250と、制御部260と、を備えている。なお、画像光制限デバイス駆動部250は、特許請求の範囲における「デバイス駆動部」に相当する。
【0029】
制御部260は、図示しないCPUやメモリを含み、メモリに記憶されている制御プログラムや処理条件を読み込んで実行することにより、入力信号処理部210、画像信号処理部220、ライトバルブ駆動部240および画像光制限デバイス駆動部250の動作等を制御する。
【0030】
入力信号処理部210は、入力される映像信号を、画像信号処理部220で処理可能な信号に変換するための処理回路である。例えば、アナログの映像信号の場合には、映像信号に含まれている同期信号に同期して、映像信号に含まれているアナログの画像信号をデジタルの画像信号に変換する。また、デジタルの映像信号の場合には、その信号の種類に応じて、映像信号に含まれているデジタルの画像信号を画像信号処理部220で処理可能な形式の信号に変換する。
【0031】
画像信号処理部220は、入力信号処理部210から出力されたデジタルの画像データ信号WVDSに含まれている各フレームの画像データを、対応する書き込み用の同期信号WSYNCに同期して、順にフレームメモリ230に書き込む。なお、書き込み用の同期信号WSYNCには、垂直同期信号や水平同期信号、クロック信号が含まれている。
【0032】
また、画像信号処理部220は、制御部260から与えられる制御条件に基づいて読み出し用の同期信号RSYNCを生成し、この読み出し用の同期信号RSYNCに同期して、フレームメモリ230に記憶された画像データを読み出すことにより、ライトバルブ駆動部240に読み出し画像データ信号RVDSを出力する。また、ライトバルブ駆動部240および画像光制限デバイス駆動部250に読み出し用の同期信号RSYNCを出力する。なお、読み出し用の同期信号RSYNCには、垂直同期信号や水平同期信号、クロック信号が含まれている。また、読み出し用の垂直同期信号の周波数は、フレームメモリ230に書き込まれる映像信号の書き込み用の垂直同期信号の周波数(フレームレート)と同じに設定されている。
【0033】
ライトバルブ駆動部240は、画像信号処理部220から供給される読み出し画像データ信号RVDSおよび読み出し用の同期信号RSYNCに基づいて、各色用のライトバルブ130R,130G,130Bを駆動する駆動信号を生成する。この駆動信号には、各画素の駆動画像データを含む駆動画像データ信号と、水平同期信号、垂直同期信号、クロック信号、および、イネーブル信号等を含む駆動制御信号と、が含まれる。
【0034】
画像光制限デバイス駆動部250は、読み出し用の同期信号RSYNCに基づいて、画像光制限デバイス150を駆動する駆動信号を生成する。この駆動信号には、後述する画像光制限データ信号および画像光制限制御信号が含まれる。
【0035】
B.画像光制限デバイスの構成と温度補償:
B−1.画像光制限デバイスの構成:
図3は、画像光制限デバイスの構成について示す説明図である。画像光制限デバイス150は、図3に示すように、液晶パネル151と、その光入射面側に設けられた入射側偏光板152iと、その光射出面側に設けられた射出側偏光板152oと、を備えている。入射側偏光板152iおよび射出側偏光板152oは、液晶パネル151と間隔を空けた位置に配置されている。もちろん、液晶パネル151に接した位置に配置されていてもよい。
【0036】
入射側偏光板152iは、この画像光制限デバイス150に入射する画像光のうち、設定されている偏光軸と同じ偏光方向の光のみを透過する。従って、液晶パネル151には、入射側偏光板152iを透過した直線偏光光のみが入射する。なお、光の利用効率を高めるため、通常、入射側偏光板152iの偏光軸は、各色用のライトバルブ130R,130G,130Bから射出され、クロスダイクロイックプリズム140で合成された画像光の偏光方向に等しくなるように、設定されている。液晶パネル151に入射した画像光は、入力される駆動信号に従って、その偏光方向が変調される。そして、液晶パネル151から射出された変調光は、射出側偏光板152oに入射する。射出側偏光板152oは、設定されている偏光軸と同じ偏光方向を有する直線偏光光のみを画像光として射出する。
【0037】
図4は、画像光制限デバイスに含まれる液晶パネルの機能的構成を示す説明図である。
【0038】
液晶パネル151は、セルアレイ340と、セルアレイの動作を制御する行駆動回路350および列駆動回路360と、を備えている。
【0039】
セルアレイ340は、紙面横方向(水平方向)に沿って並列に配線されたn本(nは2以上の整数。)の走査線RV1〜RVnと、紙面縦方向(垂直方向)に沿って配線された1本のデータ線RH1と、を備えて、各走査線とデータ線との交点の各部分には、n個の液晶セル342(V1〜Vn)が、行方向に沿って配列されている。各液晶セル342は、一点鎖線で示した円内に拡大して示すように、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、「TFT」と呼ぶ。)343を介して、各交点を形成する走査線とデータ線とに接続されている。具体的には、TFT343のゲート電極が走査線に接続され、ソース電極がデータ線に接続され、ドレイン電極が液晶セル342の電極に接続されている。
【0040】
ここで、各色用のライトバルブ130R,130G,130Bは、上述したように、マトリクス状に配置されたn行m列の液晶セルにより構成されるn行m列の画素を有する液晶パネルと、入射側偏光板および射出側偏光板と、により構成されており、水平同期信号および垂直同期信号等の駆動制御信号に基づいて、各画素が列方向および行方向に順に走査されて、それぞれ対応する画像データが書き込まれることにより、画像を表す画像光が射出されるものであることを前提とする。そして、各液晶セル342(画像光制限領域)の大きさは、画像光の表す画像の1行分の画像光に対応する大きさに設定されていることとする。
【0041】
ここで、あるTFT343に接続されている走査線に走査信号が与えられると、そのTFT343は導通状態となり、そのTFT343に接続されている液晶セル342には、データ線から、その液晶セルに書き込むべき制限データに対応する電圧(以下、「制限電圧」とも呼ぶ。)が印加される。制限電圧が与えられた液晶セル342は、入射側偏光板および射出側偏光板との組み合わせにより、その電圧に対応した光の透過率に変化する。結果として、画像光制限デバイス150は、各液晶セル342に書き込まれた制限データに対応して、入射する画像光の射出を制限することができる。
【0042】
行駆動回路350は、ライトバルブが行ごとに列方向に並ぶm列の画素を駆動している期間(ライトバルブの駆動信号に含まれる駆動制御信号のひとつである水平同期信号に基づく水平走査期間)内において、画像光制限デバイス駆動部250から供給される画像光制限制御信号としての垂直同期信号RBVsおよび水平同期信号RBHsに基づいて、n本の走査線RV1〜RVnに対して順に走査信号を与えて活性化することにより、行方向に配列されているn行の液晶セル342を、順に駆動する。
【0043】
列駆動回路360は、画像光制限デバイス駆動部250から供給される画像光制限データ信号RBDataの表す画像光制限データに応じた制限電圧を、画像光制限デバイス駆動部250から供給される駆動信号としての水平同期信号RBHsおよび水平駆動イネーブル信号RBHEnbに基づいて、画像光制限領域である液晶セル342に対して、データ線RH1を介して順に印加することにより、それぞれに対応する画像光制限データを書き込む。
【0044】
画像光制限デバイス150は、以上の構成を有することにより、ライトバルブにおいて、各行のm列の画素を列方向に順に走査して、それぞれに対応する駆動画像データが書き込まれている期間ごと、すなわち、水平同期信号に基づく水平走査期間ごとに、液晶パネル151の行方向に配列されているn行の液晶セル342を順に走査して、それぞれに対応する画像光制限データの書きこみを行う。これにより、画像光制限デバイス150は、書き込まれた画像光制限データに応じて画像光の射出を制限する機能を実現する。なお、上記したように画像光制限デバイス150は、ライトバルブにおいて、各行のm列の画素を列方向に順に走査している間に、行方向に配列されているn列の液晶セル342を順に走査して、画像光制限データの書き込みを行い、これに応じた画像光射出制限を実行するので、比較的高速な応答特性の良い液晶を用いることが好ましい。ただし、後述するように、画像光の射出を多段階に制御する必要はなく、遮断するか否かを制御できる液晶でもよい。
【0045】
B−2.画像光制限デバイスの温度補償:
図5は、本発明の実施例における画像光制限デバイス150の温度特性を示す説明図である。図5から分かるように、画像光制限デバイス150の温度に応じて、輝度出力と画像データ入力値の関係が変動している。このように、画像光制限デバイス150の特性が温度に応じて変動するので、本実施例では、ガンマ補正の内容を規定するガンマテーブル(図示せず)も温度に応じて変更させている。
【0046】
図6は、本発明の実施例におけるガンマ補正設定処理の処理ルーチンを示す説明図である。ステップS100では、制御部260(図2)は、画像光制限デバイス150の近傍に装備された温度センサ153の出力値を読み取る。なお、温度センサ153の代わりに、たとえば、画像光制限デバイス150が備える所定の回路のRC遅延の変動といった特定の入出力応答の変化に基づいて、画像光制限デバイス150の特性変化を推定するようにしても良い。こうすれば、温度センサ153を省略することができるとともに、温度を介した特性変動の推定でなく特性変動の直接的な計測を実現することができる。また、温度センサとしては、たとえばサーミスタや熱電対を利用可能である。
【0047】
ステップS200では、制御部260は、この出力値と温度判定表(図示せず)とを比較して判定温度を決定する。温度判定表は、本実施例では、温度センサ153の出力電圧と温度センサ153の温度とを対比させたとして構成されている。
【0048】
ステップS300では、制御部260は、判定温度よりも高い温度に対して設定されたガンマテーブル(図示せず)と、判定温度よりも低い温度に対して設定されたガンマテーブル(図示せず)とを読み取る。具体的には、たとえば制御部260が0度〜100度までの範囲で10度毎にガンマテーブルを格納している場合において、判定温度が53度のときには、50度のガンマテーブルと60度のガンマテーブルとが読み取られる。
【0049】
ステップS400では、制御部260は、読み取られた2つのガンマテーブルの補間演算を行うことによって判定温度のガンマテーブルを算出する。ステップS500では、制御部260は、算出された判定温度のガンマテーブルに基づいてガンマ補正用のルックアップテーブルを設定する。このように、補間演算を行うのは、予め準備する温度毎のガンマテーブルの数を削減して、ガンマテーブルを格納するメモリ(図示せず)の消費量を削減するためである。
【0050】
このような処理は、投影が終了するまで所定の更新レート(たとえば10秒毎)に繰り返して実行される(ステップS600)。
【0051】
このように、本実施例では、画像光制限デバイス150の温度に応じてガンマ補正の内容が設定されるので、映像表示(たとえば透過率90%)と黒表示(たとえば透過率50%)の画像光制限デバイス150の温度変化に応じた輝度の変動を抑制することができる。
【0052】
なお、上述の実施例では、画像光制限デバイス150の温度変化に起因する特性の変動に着目してガンマ補正の内容が設定されているが、さらに、ライトバルブ130R、130G、130Bの温度変化に起因する特性の変動にも着目してガンマ補正の内容を設定するようにしても良い。こうすれば、温度変化に起因するプロジェクタ1000の輝度変動を画像光制限デバイス150のガンマ補正の内容の調整だけで実現することができる。これにより、ライトバルブ130R、130G、130Bの各々のガンマ補正の内容の調整の省略あるいは簡略化(色づき抑制のための相対的調整のみ)を実現することができる。
【0053】
なお、ライトバルブ130R、130G、130Bの温度変化に起因する特性の変動は、ライトバルブ130R、130G、130Bに温度センサを設けるようにしても良いし、画像光制限デバイス150の温度変化に応じて推定しても良いし、あるいはライトバルブ130R、130G、130Bの特定の入出力応答の変化に基づいて特性変化を推定するようにしても良い。
【0054】
また、上述の実施例では、温度変化に起因する特性の変動にのみ着目しているが、たとえば経年変化に起因する輝度低下といった他のプロジェクタの内部環境の変化に着目してガンマ補正の内容を設定するようにしても良い。
【0055】
なお、黒表示の透過率は、透過率を小さくすれば動画ボケを顕著に抑制できる一方、輝度やコントラスト比の低下の要因となるというトレードオフの関係にあるが、透過率を30%程度低下させれば動画ボケの効果が飽和し始めることが発明者の実験によって確認されている。ただし、後述の画像光制限デバイスの駆動動作の説明では、説明を分かりやすくするために、単純に映像表示(透過率100%)と黒表示(透過率0%)として説明している。
【0056】
C.画像光制限デバイスの駆動動作:
図7は、画像光制限デバイスの駆動動作について示す説明図である。図7(a)はNフレーム目(Nは1以上の整数)の期間において、フレームメモリ230から読み出されて表示されるべき表示対象画像について示している。図7(b)は、Nフレーム目の期間において、各色用のライトバルブ130R,130G,130Bにそれぞれ書き込まれ、画像光として射出される駆動画像データについて示している。なお、各色用のライトバルブ130R,130G,130Bは、入射される光の色が異なること、および、ライトバルブ駆動部240から与えられる駆動信号に含まれる駆動画像データ信号が、それぞれの色に対応する画像信号であること、を除いて全く同じであるので、図7(b)は、説明を容易にするため、R,G,Bを区別することなく、1つのライトバルブ130に、画像光として射出する駆動画像データが書き込まれていることとして示している。図7(c)は、Nフレーム目の期間で、画像光制限デバイス150を構成する液晶パネル151のセルアレイ340に書き込まれ、画像光の射出を制限する画像光制限データについて示している。図7(d)は、Nフレーム目の期間において、画像光制限デバイス150から射出され、投写レンズ160により投写される画像光の表す画像(表示画像)について示している。なお、説明を容易にするため、ライトバルブの画素および画像光制限デバイスの画像光制限領域の行数nは「6」とした。
【0057】
ライトバルブ130では、各フレームの期間内において、1行目〜6行目までの各画素に対して、図7(b)に示すように、垂直方向(行方向)の各行ごとに、それぞれ水平方向(列方向)に並ぶ各列の画素に対して順に、それぞれ対応する駆動画像データが書き込まれ、行単位で変化する6段階の駆動画像データPM[N(1)],PM[N(2),・・・PM[N(6)]に対応する画像光が射出される。
【0058】
画像光制限デバイス150では、ライトバルブ130において各行の駆動画像データが書き込まれている期間(水平同期信号に基づく水平走査期間)ごとに、1行目〜6行目までの各行の液晶セル(画像光制限領域)342に対して、図7(c)に示すように、6段階で変化する輝度制限データBM(1),BM(2),・・・BM(6)が書き込まれ、それぞれに対応して制限された画像光が射出される。各段階の画像光制限データは、ライトバルブ130で駆動画像データの書き込みが実行されている行(この行が本実施例の走査行に相当する。)の光の透過を遮断し、他の行の光の透過を制限せずに透過させるような制限データである。例えば、ライトバルブ130で1行目の液晶セルに対して駆動画像データの書き込みが実行されている場合にはその間に、1行目の光の透過を遮断するとともに2〜6行目の光の透過を制限しない画像光制限データが書き込まれる。なお、光の透過が遮断されている行は、クロスハッチングで示されている。次に、2行目に駆動画像データの書き込みが実行されている場合にはその間に、2行目の光の透過を遮断するとともに1,3〜6行目の光の透過を制限しない画像光制限データが書き込まれる。そして、画像光制限デバイス150では、以下同様にして、画像光制限データの書き込みが繰り返され、最後の6行目に駆動画像データの書き込みが実行されている場合にはその間に、6行目の光の透過を遮断するとともに、1〜5行目の光の透過を制限しない画像光制限データが書き込まれる。
【0059】
画像光制限デバイス150が上記のように動作することにより、画像光制限デバイス150から射出され、投写レンズ160により投写される画像光の表す画像は、図7(d)に示すように、駆動画像データの書き換えが行われている行からの画像光の射出を遮断し、その行についての表示を黒画像とすることができる。なお、画像光の射出が遮断されている行は、クロスハッチングで示されている。これにより、書き換え前までに表示されていた画像の視覚的な影響を実効的に消去した後で、書き換えられた新たな画像を表示することができるので、従来技術で説明したような、各画素が液晶のようなホールド型の電気光学素子で構成されていることに起因して発生する動画ボケを抑制することが可能となる。
【0060】
また、画像光制限デバイスは、行方向に沿って液晶セルを配列した解像度の低い液晶パネルにより簡単で安価に構成できるので、内部に複雑な制御回路を備えた従来の特殊な液晶パネルを用いてプロジェクタを構成する場合に比べて、簡単で安価な構成で動画ボケを改善したプロジェクタを実現することができる。
【0061】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0062】
D1.変形例1:
図8は、変形例としての画像光制限デバイスの駆動動作について示す説明図である。図7に示した実施例における画像光制限デバイスの駆動動作では、画像光制限デバイス150から射出される画像光の表す画像(表示画像)として、ライトバルブにおいて駆動画像データの書き換えが行われている行の画像光の射出を遮断して黒画像を表示するように、画像光制限デバイス150において画像光制限データの書き込みが行われている。しかしながら、図8に示すように、ライトバルブにおいて駆動画像データの書き換えが行われている行および1つ前の行の画像光の射出を遮断して黒画像を表示するようにしてもよい。具体的には、図8では、ライトバルブにおける1行目の駆動画像データの書き換え時において、画像光制限デバイスでは、1行目および6行目の2行の光の透過を遮断するとともに2〜5行目の光の透過を制限しない画像光制限データが書き込まれて、1行目および6行目の2行に黒画像を表示すればよい。次に、2行目の駆動画像データの書き換え時において、画像光制限デバイスでは、2行目および1行目の2行の光の透過を遮断するとともに3〜6行目の光の透過を制限しない画像光制限データが書き込まれ、2行目および1行目の2行に黒画像を表示すればよい。そして、画像光制限デバイスでは、以下同様にして、各行の駆動画像データの書き換えごとに、画像光制限データの書き込みが繰り返され、最後の6行目の駆動画像データの書き換え時おいて、画像光制限デバイスでは、6行目および5行目の2行の光の透過を遮断するとともに1〜4行目の光の透過を遮断しない画像光制限データが書き込まれ、6行目および5行目の2行に黒画像を表示すればよい。
【0063】
また、図8に示した変形例では、ライトバルブにおいて駆動画像データの書き換えが行われている行および1つ前の行の2行の画像光の射出を遮断して黒画像を表示する構成を例に説明しているが、書き換えが行われている行を少なくとも含む3行以上の複数行の画像光の射出を遮断して黒画像を表示する構成としてもよい。
【0064】
なお、このような複数行の画像光を遮断するための画像光制限データは、図1に示した制御部260から画像光制限デバイス駆動部250に与えられる制御条件を変更することにより容易に変更が可能である。これにより、動画ボケの発生を適切に抑制可能な画像光制限データを、画像光制限デバイス150に書き込んで、画像光制限デバイスにおける画像光の射出制限を適切に実行することができる。また、このような画像光制限データの変更を画像の動き量を検出することにより、その検出した動き量に応じて行うようにしてもよい。このようにすれば、画像光を遮光する行数を動き量に応じて最適な値に変更して動画像のボケの発生を抑制することができる。
【0065】
D2.変形例2:
図9は、別の変形例としての画像光制限デバイスの駆動動作について示す説明図である。この変形例の駆動動作は、1フレームの期間を2つのサブフレーム期間に分割し、前半のサブフレーム1の期間および後半のサブフレーム2の期間で、実施例の1フレームの期間で行う動作を2回繰り返す動作を示している。この場合には、1フレームの期間で2回同じ画像を表示することができるので、1フレームの期間で1回画像を表示する場合に比べてフリッカの発生を抑制する効果がある。なお、外部から入力される映像信号がインタレース方式の映像信号の場合に、第1フィールドをサブフレーム1とし第2フィールドをサブフレーム2として動作させることも可能である。
【0066】
また、1フレームの期間を3つ以上のサブフレーム期間に分割するようにしてもよい。サブフレーム数を多くすれば、フリッカの発生の抑制にはより効果的である。
【0067】
D3.変形例3:
上記実施例の画像光制限デバイスでは、ライトバルブにおいて1行分の駆動画像データを書き込んでいる間(水平同期信号に基づく水平走査期間)に、1画面分の画像光制限データを書き込む構成を例に説明しているが、これに限定されるものではなく、従来技術で上げられている、動画ボケの改善を図るために複雑な制御回路を備える液晶パネルを用いて画像光制限デバイスを構成するようにしてもよい。
【0068】
ここで、上記実施例で説明したように、画像光制限領域としての液晶セルの列方向(水平方向)の大きさは、ライトバルブの列方向に沿って並ぶ複数の液晶セル全体としての大きさ以上を有しておればよく、ライトバルブに含まれる液晶パネルに比べて解像度の低い液晶パネルを用いることができる。このため、複雑な制御構造を有する液晶パネルを用いたとしても、比較的簡単で安価に構成することが可能である。
【0069】
D4.変形例4:
画像光制限デバイスは、少なくとも、ライトバルブで書き換えを行っている行の画像光の射出を遮断することができればよいので、必ずしもライトバルブの画素の行数と同じ行数の液晶セル(画像光制限領域)を有する必要はなく、ライトバルブの複数行を1行にまとめた行に対応する液晶セルを有する低解像度な液晶パネルを用いることが可能である。
【0070】
D5.変形例5:
上記実施例では、ライトバルブで書き換えを行っている行の画像光の射出を遮断することとして説明しているが、完全に遮断しなくてもよく、走査が実行される前に射出されていた画像光の表す画像の視覚的な影響を実効的に消去できる程度に、制限できればよい。
【0071】
D6.変形例6:
上記実施例のプロジェクタ1000では、透過型の液晶パネルによる透過型の画像光制限デバイス150を用いた場合を例に説明しているが、図10に示すプロジェクタ1000Bのように、反射型の画像光制限デバイス150Bを用いるようにしてもよい。反射の画像構制限デバイス150Bとしては、反射型の液晶パネルやデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)(DMDは米国テキサスインスツルメンツ社の商標)等が利用可能である。
【0072】
D7.変形例7:
上記実施例では、表示用デバイスである透過型の液晶パネルをライトバルブとして用いたプロジェクタを例に説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、反射型の液晶パネルやデジタルマイクロミラーデバイス等の非発光型の表示用デバイス、PDP,EL,LED等の発光型の表示用デバイス等の種々のホールド型の電気光学素子を用いた表示用デバイスを用いたプロジェクタにおいても適用可能である。
【0073】
D8.変形例8:
上記実施例では、画像光制限デバイス150、150Bが、ライトバルブ130R,130G,130Bと投写光学系160との間に設置されているが、たとえば照明光学系110とライトバルブ130R,130G,130Bとの間に設置するようにしても良いし、あるいは双方に設置しても良い。本発明では、一般に、光制限デバイスは、光源から供給された供給光と光変調部で変調された変調光の少なくとも一方を制限するように構成されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施例としてのプロジェクタの概略構成を示す説明図。
【図2】制御系ブロックの概略構成を示す説明図。
【図3】画像光制限デバイスの構成について示す説明図。
【図4】画像光制限デバイスに含まれる液晶パネルの機能的構成を示す説明図。
【図5】本発明の実施例における画像光制限デバイス150の温度特性を示す説明図。
【図6】本発明の実施例におけるガンマ補正設定処理の処理ルーチンを示す説明図。
【図7】画像光制限デバイスの駆動動作について示す説明図。
【図8】変形例としての画像光制限デバイスの駆動動作について示す説明図。
【図9】別の変形例としての画像光制限デバイスの駆動動作について示す説明図。
【図10】変形例としてのプロジェクタの概略構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0075】
100…光学系ブロック
100B…光学系ブロック
110…照明光学系
111…光源装置
120…色光分離光学系
130…ライトバルブ
130R,130G,130B…ライトバルブ
140…クロスダイクロイックプリズム
150…画像光制限デバイス
150B…画像光制限デバイス
151…液晶パネル
152i…入射側偏光板
152o…射出側偏光板
153…温度センサ
160…投写レンズ(投写光学系)
200…制御系ブロック
210…入力信号処理部
220…画像信号処理部
230…フレームメモリ
240…ライトバルブ駆動部
250…画像光制限デバイス駆動部
251…温度センサ
260…制御部
340…セルアレイ
342…液晶セル
350…行駆動回路
360…列駆動回路
1000…プロジェクタ
1000B…プロジェクタ
SC…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられた画像データに応じて画像を投写するプロジェクタであって、
光源と、
前記光源から供給された供給光を変調する光変調部と、
前記変調された変調光を投写する投写光学部と、
前記供給光と前記変調光の少なくとも一方を制限する光制限デバイスと、
前記光制限デバイスの状態変化に応じた前記光制限デバイスの特性変動に起因する輝度変動を抑制するように前記光制限デバイスを駆動するデバイス駆動部と、
を備えるプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1記載のプロジェクタであって、
前記光制限デバイスは、前記変調光を制限するプロジェクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプロジェクタであって、
前記プロジェクタは、さらに、前記光制限デバイスの温度を計測する温度センサを備え、
前記デバイス駆動部は、前記温度センサの計測値に応じて前記光制限デバイスを駆動するプロジェクタ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のプロジェクタであって、
前記デバイス駆動部は、さらに、前記光変調部の状態変化に応じた前記光変調部の特性変動に起因する輝度変動を抑制するように前記光制限デバイスを駆動するプロジェクタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のプロジェクタであって、
前記デバイス駆動部は、前記光制限デバイスの特定の入出力応答の変化に基づいて前記内部環境の変化を推定するとともに、前記推定された内部環境の変化に応じて前記輝度変動を抑制するように前記光制限デバイスを駆動するプロジェクタ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のプロジェクタであって、
前記デバイス駆動部は、前記光制限デバイスの想定された複数の環境に対して予め準備された前記光制限デバイスの特性を表す複数の特性データを備え、前記光制限デバイスの環境に応じて前記複数の特性データに基づいた内挿と外挿の何れか一方を実行することによって推定された特性に基づいて前記光制限デバイスを駆動するプロジェクタ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のプロジェクタであって、
前記光制限デバイスは、前記光変調部と前記投写光学部との間に配置され、前記変調光の一部の領域について前記変調光を制限するプロジェクタ。
【請求項8】
与えられた画像データに応じて画像を投写する投影方法であって、
光源と、前記光源から供給された供給光を変調する光変調部と、前記変調された変調光を投写する投写光学部と、前記供給光と前記変調光の少なくとも一方を制限する光制限デバイスとを準備する工程と、
前記光制限デバイスの状態変化に応じた前記光制限デバイスの特性変動に起因する輝度変動を抑制するように前記光制限デバイスを駆動する駆動工程と、
を備える画像投影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−158416(P2008−158416A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349587(P2006−349587)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】