説明

プロセスカートリッジ

【課題】像担持体と現像ローラの間に所定量の隙間を有する構成において、余計な作業を必要とせず、簡単な構成で、使用前に落下等による衝撃が加わって像担持体と現像ローラが当接することを抑制する。
【解決手段】現像ローラ10dの内周面と主磁石部15aとの間の隙間の大きさが、少なくとも主磁石部15aと感光体ドラム7とが現像ローラ10dを介して対向する領域で、現像ローラ10dの回転軸の軸方向の中央部よりも両端側の方が小さくなるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の記録材上に画像を形成する機能を備えた、例えば、複写機、プリンタなどの画像形成装置に着脱可能に備えられるプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真画像形成プロセスを用いた電子写真画像形成装置の現像装置においては、現像枠体に現像剤担持体を回転可能に支持する構成が知られている。磁性トナーを用いた現像装置における現像剤担持体の構成としては、次のようなものが知られている。それは、現像枠体に回転可能に支持された現像ローラ、現像ローラに内包されて所定の位相で固定された磁石部材、及び、像担持体としての感光体ドラムと現像ローラとの間に所定量の間隙を保つためのスペーサ部材からなるものである。
【0003】
磁石部材は、現像ローラ表面に磁性トナーを担持するための部分と、所定の位相で固定するための支持部とからなる。磁性トナーを担持するための部分は現像ローラ内周面と当接しないよう所定量の間隙を保つが、磁力を現像ローラ表面部に有効に作用させるために、少なくとも各磁極位相における間隙は、可能な限り小さく設定することが多い。また、固定のための支持部は支持構成上、磁性トナーを担持するための部分より細径となっていることが多い。
【0004】
磁石部材に他の機能を有する形状を設けた例としては、現像剤担持体の組立性向上を目的として磁石部材に突出部を設けた例が知られている(特許文献1参照)。また、現像剤担持体の端部トナーシール性向上を目的として磁石部材に切り欠き部を設けた例が知られている(特許文献2参照)。また、感光体ドラムと現像ローラの間に所定量の間隙を保つ構成において、使用前に落下等による衝撃が加わって感光体ドラムと現像ローラが当接することの防止を目的として、次のように構成したものが知られている。それは、感光体ドラムと現像ローラの間にシート状の保護部材を配置したものである(特許文献3参照)。また、感光体ドラムとプロセス手段との間に所定量の間隙を保つ構成において、使用前に落下等による衝撃が加わって感光体ドラムとプロセス手段が当接することの防止を目的として、次のように構成したものが知られている。それは、感光体ドラム保護部材によって感光体ドラムとプロセス手段を離間させたものである(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−157433号公報
【特許文献2】特開2007−47396号公報
【特許文献3】特開2000−19800号公報
【特許文献4】特開2002−182541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記構成においては、例えば感光体ドラムと現像ローラの間にシート状の保護部材を配置した例の場合、使用者がシート状の保護部材を取り除く作業が必要であった。また、感光体ドラム保護部材によって感光体ドラムとプロセス手段を離間させた例の場合、画像形成時に必要な感光体ドラムとプロセス手段の間隙以上にお互いを離間させるための構成が必要であった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、像担持体と現像ローラの間に所定量の隙間を有する構成において、余計な作業を必要とせず、簡単な構成で、使用前に落下等による衝撃が加わって像担持体と現像ローラが当接することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に対して隙間を介して設けられた現像ローラ、及び、前記現像ローラの内周側に設けられ前記現像ローラの内周面に対して隙間を介して設けられた磁石部材を有する現像剤担持体と、
を少なくとも有し、画像形成装置に対して着脱可能に設けられたプロセスカートリッジであって、
前記磁石部材は、
磁石本体部と、
前記磁石本体部に対して前記現像ローラの回転軸の軸方向の両端側に設けられ、プロセスカートリッジ本体側に支持される支持部と、
を有するプロセスカートリッジにおいて、
前記現像ローラの内周面と前記磁石本体部との間の隙間の大きさが、少なくとも前記磁石本体部と前記像担持体とが前記現像ローラを介して対向する領域で、前記回転軸の軸方向の中央部よりも両端側の方が小さくなるように設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に対して隙間を介して設けられた現像ローラ、及び、前記現像ローラの内周側に設けられ前記現像ローラの内周面に対して隙間を介して設けられた磁石部材を有する現像剤担持体と、
を少なくとも有し、画像形成装置に対して着脱可能に設けられたプロセスカートリッジであって、
前記磁石部材は、
磁石本体部と、
前記磁石本体部に対して前記現像ローラの回転軸の軸方向の両端側に設けられ、プロセスカートリッジ本体側に支持される支持部と、
を有するプロセスカートリッジにおいて、
前記現像ローラの内周面と前記磁石本体部との間の隙間のうち、少なくとも前記磁石本体部と前記像担持体とが前記現像ローラを介して対向する領域であって、前記回転軸の軸方向の中央領域には、前記支持部を支点として前記磁石本体部が前記像担持体側に撓んだ場合の撓み量を規制する弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、像担持体と現像ローラの間に所定量の隙間を有する構成において、余計な作業を必要とせず、簡単な構成で、使用前に落下等による衝撃が加わって像担持体と現像ローラが当接することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の画像形成装置の概略構成を示す断面図。
【図2】実施例1のプロセスカートリッジの概略構成を示す断面図。
【図3】実施例1の現像部の概略構成を示す斜視図。
【図4】実施例1の現像部から現像剤担持体を除いた状態の概略構成を示す斜視図。
【図5】実施例1の現像剤担持体の構成及び現像枠体に対する支持方法を示す断面図。
【図6】実施例1の現像剤担持体の一端側支持構成を示す断面図。
【図7】実施例1の現像剤担持体の一端側支持構成を示す断面図。
【図8】実施例1の現像剤担持体の他端側支持構成を示す断面図。
【図9】実施例1の現像剤担持体の概略構成を示す断面図。
【図10】実施例1の磁石部材端部の概略構成を示す現像剤担持体の切断斜視図。
【図11】実施例1の磁石部材端部の他の例を示す現像剤担持体の切断斜視図。
【図12】落下等の衝撃により磁石部材が撓んだ場合について説明する図。
【図13】落下等の衝撃により磁石部材が撓んだ場合について説明する図。
【図14】実施例2の現像剤担持体の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関するもので、特に電子写真方式の画像形成装置に用いられる現像装置、プロセスカートリッジに関するものである。ここで、電子写真方式の画像形成装置とは、電子写真画像形成プロセスを用いて記録材(シート材、記録紙、OHPシート、布等)に画像を形成する装置である。これには、例えば、電子写真複写機、電子写真プリンタ、レーザビームプリンタ、電子写真ファクシミリ等が含まれる。また、プロセスカートリッジ(プロセスユニット)とは、少なくとも現像手段と電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化して画像形成装置本体に着脱可能に設けられたものをいう。
【実施例1】
【0013】
以下に、本発明を適用可能な画像形成装置Aについて詳細に説明する。本実施例では、プロセスユニットの一例として、感光体ドラムを有するプロセスカートリッジを示す。以下の説明において、長手方向とは、プロセスカートリッジを画像形成装置本体に装着する方向と交差する方向(略直交する方向)であり、感光体ドラムや現像ローラの回転軸(回転軸線)の軸方向(軸線方向)である。また、この長手方向は、搬送される記録材の表面と略平行であり、かつ、記録材の搬送方向と交差(略直交)する方向でもある。また、上下は、プロセスカートリッジを画像形成装置本体に装着した状態での上下をいう。まず、プロセスカートリッジ、及びプロセスカートリッジを着脱可能に備えた画像形成装置本体について、図1及び図2を参照して具体的に説明する。図1は、プロセスカートリッジを装着した画像形成装置本体の概略構成を示す断面図である。図2は、プロセスカートリッジの概略構成を示す断面図である。
【0014】
(全体構成)
画像形成装置Aは、図1に示すように、光学手段としての光学系1からドラム形状の電子写真感光体(像担持体、以下「感光体ドラム」という)7に、画像情報に基づいた情報光が照射される。これにより、感光体ドラム7には静電潜像が形成され、この静電潜像を現像剤(以下「トナー」という)tで現像してトナー像が形成される。そしてトナー像の形成と同期して、給送部(カセット)3aから、ピックアップローラ3b及びこれに圧接する圧接部材3cによって、記録材2が一枚ずつ分離給送される。搬送ガイド3f1に沿って搬送された記録材2には、転写手段としての転写ローラ4に電圧が印加されることによって、プロセスカートリッジBの感光体ドラム7に形成されたトナー像が転写される。さらに、トナー像が転写された記録材2は搬送ガイド3f2に沿って定着手段5へ搬送される。この定着手段5は、駆動ローラ5a、ヒータ5b、支持体5c、及び、支持体5cによって回転可能に支持された筒状シートで構成された定着回転体5dからなり、通過する記録材2に熱及び圧力を印加して転写トナー像を定着する。転写トナー像が定着された記録材2は排出ローラ3dで搬送され、反転搬送経路を通して排出部6へ排出される。なお本実施例では、搬送手段3をピックアップローラ3b、圧接部材3c、排出ローラ3d
等により構成しているがその限りではない。
【0015】
(プロセスカートリッジ構成)
プロセスカートリッジBは、感光体ドラム7と、少なくとも1つのプロセス手段を備えたものである。プロセス手段としては、例えば感光体ドラム7を帯電させる帯電手段、感光体ドラム7に形成された静電潜像を現像する現像手段、感光体ドラム7に残留するトナーtをクリーニングするためのクリーニング手段等がある。本実施例のプロセスカートリッジBでは、図2に示すように、感光層を有する電子写真感光体としての感光体ドラム7を回転駆動し、帯電手段としての帯電ローラ8に電圧を印加して感光体ドラム7の表面を一様に帯電する。この帯電した状態の感光体ドラム7に対して、光学系1からの画像情報に基づいた情報光(光像)が露光開口9bを通して露光されて、感光体ドラム7表面に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像手段としての現像部10によって現像するように構成している。
【0016】
現像部10は現像枠体10fを有しており、現像枠体10fに設けられた現像剤収容部としてのトナー収容部10a内のトナーtはトナー送り手段としての回転可能な撹拌部材10bで送り出される。そして、現像部10において現像枠体10fに配設された現像剤担持体10gにおいては、回転可能な現像ローラ10dと、現像ローラ10dの内側(内周側)に配置された磁石部材15とを有している。ここで、現像ローラ10dは回転自在に現像枠体10fに支持されており、磁石部材15は、現像枠体10f(プロセスカートリッジ本体側)に固定(支持)されている。現像ローラ10dの表面には現像ブレード10eによって摩擦帯電電荷が付与されたトナー層が形成され、そのトナーを静電潜像に応じて感光体ドラム7に転移させることによってトナー像が形成され可視像化される。すなわち、現像ローラ10dはトナーtを担持して感光体ドラム7との対向領域に搬送する機能を有する。
【0017】
そして、転写ローラ4に前記トナー像と逆極性の電圧が印加されることで、トナー像が記録材2に転写される。転写後に、感光体ドラム7に残留したトナーは、クリーニング手段としてのクリーニング部11に設けられたクリーニングブレード11aによって掻き落とされると共に、スクイシート11bによって除去トナー収納部11c外への漏出が防止されている。クリーニング部11は、クリーニング枠体11fを有し、感光体ドラム7、帯電ローラ8及びクリーニングブレード11aは、クリーニング枠体11fに支持されている。現像部10とクリーニング部11は、揺動中心11gにおいて回転可能に結合されている。そして、現像部10とクリーニング部11の間に設けられた弾性部材19により、感光体ドラム7に現像ローラ10dが押圧されている。
【0018】
(現像部についての説明)
図3は、現像部10の概略構成を示す斜視図である。また図4は、現像部10から現像剤担持体10gを除いた状態の概略構成を示す斜視図である。図4に示すように、現像枠体10fは現像ローラ10dの一部を露出させるための開口部10hを有する。開口部10hは、トナーtを現像枠体10fの内部から感光体ドラム7に搬送(供給)するためのもので略長方形である。開口部10hの長手方向の一端部と他端部には、シール部材10i,10jが取付けられている。シール部材10i,10jは、現像ローラ10dの長手方向に沿って現像枠体10fと現像ローラ10dとの間からトナーtが漏れるのを規制している。ここで、シール部材10i,10jには、現像ローラ10dと非接触の磁気シール部材を用いてもよく、また、現像ローラに当接する弾性シール部材を用いてもよい。
【0019】
開口部10hの長手方向に亘って下辺部には被取付け部10kが設けられている。被取付け部10kには、両面テープ10m(図3,4中の破線部)を介して可撓性シート部材10nが取付けられている。可撓性シート部材10nは、現像ローラ10d下辺部と被取
付け部10kとの間からトナーtが漏れるのを規制している。ここで、可撓性シート部材10nは、長手方向に直交する短手方向の一端側が被取付け部10kに取付けられていて、短手方向他端側が現像ローラ10dと当接している。可撓性シート部材10nの一端側から他端側への方向は、現像ローラ10dの回転方向に対して順方向となるように構成されている。
【0020】
現像ブレード10eは、開口部10hの長手方向に亘って被取付け部10kとは反対側に設けられている。すなわち、現像ローラ10dの回転方向において、現像枠体10fの下流側端部に設けられている。また、現像ブレード10eは、弾性体で形成された規制部10pを有し、規制部10pの長手方向の長さは、開口部10hの長手方向の長さと略同一である。現像剤担持体10gは、現像枠体10fに対して、現像枠体10fの長手方向側面部に取付けられた一端側ホルダ24と他端側ホルダ25を介して回転自在に支持されている。
【0021】
(現像剤担持体についての説明)
図5は、現像剤担持体10gの構成及び現像枠体10fに対する支持方法を示す概略断面図である。現像剤担持体10gを構成する現像ローラ10dは、長手方向一端側にフランジ部12を有する。材質としては、フランジ部12も含めてアルミニウム合金等が用いられている。フランジ部12は、感光体ドラム7の長手方向一端側に設けられたドラムギア7aから駆動伝達を受ける現像ローラギア13を一体的に取付ける取付け部12aを有する。現像ローラギア13の長手方向先端軸部13aは、一端側ホルダ24と一体的に構成された軸受部14に回転自在に支持されている。現像ローラ10dの長手方向他端側は、内周面側に他端側ホルダ25と一体的に構成された軸受部16に回転自在に支持される支持部17を有する。
【0022】
磁石部材15は、現像ローラ10dの表面にトナーtを担持するための磁石本体部としての主磁石部15aと、磁石部材15を所定の位相で現像枠体10fに対して固定するための支持部としての一端側軸部15b及び他端側軸部15cとかならなる。一端側軸部15b及び他端側軸部15cは、主磁石部15aに対して長手方向の両端側に設けられている。材質としては、フェライト入りのナイロン樹脂等を用いる。例えば、現像ローラ10dの外径がφ10mm〜φ14mmである場合、磁石部材15の主磁石部15aの外径はφ7.6mm〜φ11.6mmで主磁石部15aと現像ローラ10dの内周面との空隙(隙間)は0.4mm程度である。磁石部材15の一端側軸部15bは、現像ローラ10dの長手方向一端側のフランジ部12に設けられた支持部12bに回転自在に支持されている。磁石部材15の他端側軸部15cは、現像枠体10fと一体的に構成された軸受部16に支持されている。
【0023】
現像ローラ10dの長手方向両端部には、スペーサ部材18が取付けられている。スペーサ部材18はキャップ状で、現像ローラ10dの長手方向両端部に被せるように取付けられている。そして図2に示すように、現像部10とクリーニング部11の間に設けられた弾性部材19により、スペーサ部材18が感光体ドラム7に当接するように押圧されている。これにより、感光体ドラム7と現像ローラ10dの間には、最近接部で0.2mm〜0.5mm程度の空隙が形成される。
【0024】
図6,7は、現像剤担持体10gにおける長手方向一端側の支持構成を示す概略断面図である。図8は、現像剤担持体10gにおける長手方向他端側の支持構成を示す概略断面図である。現像ローラ10d及び磁石部材15の支持構成として、長手方向一端側においては、例えば図6に示すように構成されていてもよい。すなわち、現像ローラ10dの長手方向一端側に設けられたフランジ部12の長手方向先端軸部12cが現像ローラギア13より延伸していて、一端側ホルダ24と一体的に構成された軸受部14aに回転自在に
支持されていてもよい。また、図7に示すように、フランジ部12に設けられた穴12dを磁石部材15の一端側軸部15dが貫通し、一端側軸部先端15eが一端側ホルダ24と一体的に構成された軸受部14bに回転方向位相を規制されて支持されていてもよい。
【0025】
一方、長手方向他端側においては図8に示すように、現像ローラ10dの長手方向他端側にフランジ部材22が一体的に取付けられ、フランジ部材22の長手方向先端軸部22aが、他端側ホルダ25に設けられた軸受部16aに回転自在に支持されていてもよい。このとき、磁石部材15の他端側軸部15cは、軸受部16aに回転方向位相を規制されて支持される。
【0026】
(磁石部材についての説明)
図9は、現像剤担持体10gの概略構成を示す断面図である。図10は、磁石部材15端部の概略構成を説明するための図であり、現像剤担持体10gの切断面の斜視図である。図11は、磁石部材15端部の他の構成を示す現像剤担持体10gの切断面の斜視図である。磁石部材15を構成する主磁石部15aの長手方向両端側には、突出部として一対の凸部20が設けられている。凸部20は、少なくとも図10に示すように、長手方向に直交する短手方向において、現像剤担持体10gと感光体ドラム7が最近接する部分を含む領域(主磁石部15aと感光体ドラム7とが現像ローラ10dを介して対向する領域)に配置されている。そして、凸部20は、短手方向に突出するように主磁石部15aに設けられている。凸部20と現像ローラ10dの内周面との間には空隙が設けられるが、その空隙量xは、主磁石部15aの長手方向中央付近の空隙量yより小さく設定される。例えば、上述のように、主磁石部15aと現像ローラ10dの内周面との空隙を0.4mmに設定した場合、凸部20と現像ローラ10dの内周面との空隙量は0.2mm程度に設定する。また、この凸部20は図11に示すように、主磁石部15aの外周全域に設けられてもよい。
【0027】
次に、磁石部材15の長手方向位置について図9を用いて説明する。主磁石部15aの長さbは、現像枠体10fに設けられた開口部10hの長手幅eより長い(図4,9参照)。すなわち、主磁石部15aの長手方向端部15fは、開口部10hの長手方向端部21より長手方向外側に位置する。凸部20は、主磁石部15aにおいて、長手方向中央寄りに設けるのが望ましい。一方、開口部10hが設けられた範囲は、現像ローラ10dの表面にトナーtが担持され、トナーtの担持には主磁石部15aも作用することから、凸部20は開口部10hの長手方向端部21より長手方向外側に設けるのが望ましい。ここで、凸部20を開口部10hの長手方向端部21より長手方向外側に設けるということは、凸部20は、凸部20を含み長手方向に直交する2つの仮想領域の間に開口部10hが位置するように設けられているということである。但し、凸部20の材質を非磁性とすれば、画像に影響の少ない範囲で開口部10hの長手方向端部21より長手方向内側に設けることも可能である。
【0028】
(現像剤担持体に衝撃が加わったときの作用)
図12,13は、現像剤担持体10gの概略断面図であって、落下等の衝撃により磁石部材15が撓んだ場合について説明するための図であり、図12は凸部20が設けられていない状態、図13は凸部20が設けられている状態を示している。例えば現像剤担持体10gを含むプロセスカートリッジBが物流等の過程において落下による衝撃を受けた場合、プロセスカートリッジBが梱包状態にあったとしても、100G(980m/s)前後の衝撃が加わることがある。このような場合、磁石部材15はその自重により、長手方向両端部の軸部15b及び15cを支点として主磁石部15aに撓みが生じる。そして、図12に示す長手方向中央部の撓み量zが現像ローラ10dの内周面と主磁石部15aとの空隙量yに達すると、主磁石部15aは現像ローラ10dの内周面に当接することとなる。このとき、現像ローラ10d中央部は、現像ローラ10dの長手方向両端部に設け
られたスペーサ部材18と感光体ドラム7の当接位置を支点として撓みを生じる。
【0029】
図12に示すT方向の落下による衝撃を受けた場合、撓みの方向が現像ローラ10dの回転軸と感光体ドラム7の回転軸を通り現像ローラ10d(感光体ドラム7)の回転軸に直交する直線方向で、かつ、現像ローラ10dが感光体ドラム7に接近する方向となる。この場合、現像ローラ10dと感光体ドラム7に設けられた空隙がなくなり、現像ローラ10dと感光体ドラム7とが当接する。これにより感光体ドラム7や現像ローラ10d(現像剤担持体10g)の表面にはキズが生じる。
【0030】
一方、本実施例のように主磁石部15aの長手方向両端部に一対の凸部20が設けられている場合、上記同様の衝撃が加わって磁石部材15が撓んだとき、図13に示すように、主磁石部15aより先に凸部20が現像ローラ10d内周面と当接する。このとき、主磁石部15aの長手方向中央部における主磁石部15aの撓みの支点が、前述の軸部15b,15cより長手方向の中央側になる。そして支点間の距離が短くなり、主磁石部15aに同量の荷重がかかったときの撓み量は低減する。これにより、主磁石部15aの長手方向中央部での主磁石部15aと現像ローラ10d内周面との当接は低減もしくは無くなる。その結果、現像ローラ10dの長手方向中央部においては、長手方向両端部に設けられたスペーサ部材18と感光体ドラム7の当接位置を支点とした撓みが低減することとなり、現像ローラ10dと感光体ドラム7の当接も低減もしくは無くなる。
【0031】
以上のように本実施例によれば、磁石部材15と現像ローラ10d内周面との空隙を主磁石部15aの長手方向両端部において狭くすることで、落下等の衝撃が加わった時には、空隙を狭くした部分で、撓んだ磁石部材15と現像ローラ10d内周面が当接する。この結果、主磁石部15aの長手方向中央部で現像ローラ10d内周面が主磁石部15aと当接するのを低減または防ぐことができ、主磁石部15aが当接することによる現像ローラ10d長手方向中央部の撓みを低減することができる。したがって、現像ローラ10d長手方向中央部の撓み方向が感光体ドラム方向(像担持体側)であっても、現像ローラ10dと感光体ドラム7の当接を防止もしくは低減することができる。
【実施例2】
【0032】
以下に、実施例2について説明する。図14は、本実施例の現像剤担持体10gの概略構成を示す図である。なお、実施例1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施例では、現像剤担持体10gにおいて、磁石部材15の主磁石部15aと現像ローラ10dの内周面との間に、図14に示すような弾性体(弾性部材)23が配置されている。弾性体23は、少なくとも短手方向において現像剤担持体10gと感光体ドラム7が最近接する部分を含む領域に配置される。また、弾性体23は長手方向中央部近傍(中央領域)のみに配置されていてもよい。弾性体23には、発泡性ポリウレタンフォーム等の発泡体を用いてもよい。
【0033】
(現像剤担持体に衝撃が加わったときの作用)
実施例1同様、プロセスカートリッジBが物流等の過程において落下による衝撃を受ける場合がある。このような場合、磁石部材15はその自重により、長手方向両端部の軸部15b及び15cを支点として主磁石部15aに撓みが生じる。このとき、現像ローラ10dの内周面と主磁石部15aとの空隙に配置された弾性体23により主磁石部15aの撓みを低減させる(撓み量を規制する)ことができる。これにより、主磁石部15aが現像ローラ10dの内周面に当接することによる現像ローラ10dの長手方向中央部の撓みが低減することとなる。その結果、現像ローラ10dの長手方向中央部においては、長手方向両端部に設けられたスペーサ部材18と感光体ドラム7の当接位置を支点とした撓みが低減することとなり、現像ローラ10dの撓みによる感光体ドラム7との当接も低減もしくは無くなる。
【0034】
本実施例では、磁石部材15と現像ローラ10d内周面との間に弾性体23を配置した。このことで、落下等の衝撃が加わった時には、主磁石部15aの長手方向中央部での撓みを弾性体23により低減することができ、主磁石部15aの長手方向中央部で主磁石部15aと現像ローラ10d内周面の当接を防ぐことができる。この結果、主磁石部15aの撓みに起因した現像ローラ10d長手方向中央部の撓みを低減することができ、現像ローラ10d長手方向中央部の撓み方向が感光体ドラム方向であっても、現像ローラ10dと感光体ドラム7の当接を防止もしくは低減できる。
【0035】
上述した実施例1,2においては、現像ローラ10dと感光体ドラム7の当接を避ける手段として、従来のようなシート状保護部材を配置する必要がないため、部品増加分のコストアップや組立工数増加分のコストアップを避けることができる。
【符号の説明】
【0036】
7 感光体ドラム
10d 現像ローラ
10g 現像剤担持体
15 磁石部材
15a 主磁石部
15b 一端側軸部
15c 他端側軸部
B プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に対して隙間を介して設けられた現像ローラ、及び、前記現像ローラの内周側に設けられ前記現像ローラの内周面に対して隙間を介して設けられた磁石部材を有する現像剤担持体と、
を少なくとも有し、画像形成装置に対して着脱可能に設けられたプロセスカートリッジであって、
前記磁石部材は、
磁石本体部と、
前記磁石本体部に対して前記現像ローラの回転軸の軸方向の両端側に設けられ、プロセスカートリッジ本体側に支持される支持部と、
を有するプロセスカートリッジにおいて、
前記現像ローラの内周面と前記磁石本体部との間の隙間の大きさが、少なくとも前記磁石本体部と前記像担持体とが前記現像ローラを介して対向する領域で、前記回転軸の軸方向の中央部よりも両端側の方が小さくなるように設けられていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項2】
前記隙間の大きさが前記回転軸の軸方向の中央部よりも両端側の方が小さくなるように、前記磁石本体部のうち前記両端側の領域であって少なくとも前記現像ローラを介して前記像担持体に対向する領域に、前記回転軸に直交する方向に突出する突出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項3】
前記現像剤担持体が配設された現像枠体であって、現像剤が収容された現像剤収容部と、前記現像剤収容部に収容された現像剤を前記現像剤担持体に供給するための開口部とを有する現像枠体が設けられ、
前記突出部は、前記突出部を含み前記回転軸の軸方向に直交する2つの仮想領域の間に前記開口部が位置するように設けられていることを特徴とする請求項2に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項4】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に対して隙間を介して設けられた現像ローラ、及び、前記現像ローラの内周側に設けられ前記現像ローラの内周面に対して隙間を介して設けられた磁石部材を有する現像剤担持体と、
を少なくとも有し、画像形成装置に対して着脱可能に設けられたプロセスカートリッジであって、
前記磁石部材は、
磁石本体部と、
前記磁石本体部に対して前記現像ローラの回転軸の軸方向の両端側に設けられ、プロセスカートリッジ本体側に支持される支持部と、
を有するプロセスカートリッジにおいて、
前記現像ローラの内周面と前記磁石本体部との間の隙間のうち、少なくとも前記磁石本体部と前記像担持体とが前記現像ローラを介して対向する領域であって、前記回転軸の軸方向の中央領域には、前記支持部を支点として前記磁石本体部が前記像担持体側に撓んだ場合の撓み量を規制する弾性部材が設けられていることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−22284(P2011−22284A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166010(P2009−166010)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】