説明

ヘッドレスト組み込みスピーカを有する車両オーディオシステム

【課題】ヘッドレストを組み込んだスピーカを有する車両オーディオシステムを提供すること。
【解決手段】車両のヘッドレストの中に組み込まれる2つのスピーカ(1R、1L)と、2つのスピーカの各々のための保護キャップと、オーディオ入力信号を受信するオーディオ信号プロセッサであって、オーディオ信号プロセッサは、オーディオ出力信号が該2つのスピーカによって出力された場合、スピーカを有するヘッドレストが仮想音場として備え付けられるシートに座っているユーザによってオーディオ出力信号が知覚されるように、2つのスピーカに対してオーディオ出力信号を生成するように構成される、オーディオ信号プロセッサと、キャップ補償情報を含むデータベースとを備え、オーディオ信号プロセッサは、キャップ補償情報を考慮に入れるユーザに対して仮想音場を生成するように構成される、車両オーディオシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカが車両シートのヘッドレストの中に組み込まれた車両オーディオシステムおよび車両シートに座っているユーザに仮想音場を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術)
コンバーチブルカーにおいて音響信号を生成するスピーカは、種々の天候状況に曝される。スピーカは、雨および直射日光に対して保護されなければならない。さらにコンバーチブル車両において運転中の騒音は非常に強い場合がある。その結果、ドライバは、コンバーチブルでない車両の場合と比較して、はるかに高度のオーディオ信号レベルを用いる。コンバーチブルカーにおいてスピーカによって放出される強いオーディオ信号は、周囲の領域にいる他の人々にとって迷惑である場合がある。さらに、高度のオーディオ信号を出力するために強い電流が必要であり、結果として、車両のバッテリに高度の要求をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(概要)
従って、車両オーディオシステムによって出力された音声が車両外の人々によって知覚されないかまたはほとんど知覚されない車両オーディオ信号を提供するニーズが存在する。さらに、必要とするバッテリ電力がより少ない車両オーディオシステムを提供するニーズが存在する。さらに、スピーカは天候に対して保護されるべきであり、このことはコンバーチブル車両にとって特に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このニーズは、独立請求項の特徴によって満たされる。従属請求項において、本発明の好ましい実施形態が説明される。
【0005】
本発明の第1の局面に従って、車両のヘッドレストの中に組み込まれる2つのスピーカを備えている車両オーディオシステムが提供される。さらに、各スピーカの上のヘッドレストにおける2つのスピーカの各々に保護キャップが備え付けられ、保護キャップは、各スピーカの音が放出される方向に延びる。このオーディオシステムのオーディオ信号プロセッサは、オーディオ入力信号を受信し、オーディオ出力信号が2つのスピーカによって出力される場合、2つのスピーカを有するヘッドレストが仮想音場として備え付けられるシートに座っているユーザによってオーディオ出力信号が知覚されるように、上記2つのスピーカに対してオーディオ出力信号を生成するように構成される。仮想音場において、音楽の空間知覚が得られ、この場合、ユーザは、スピーカの位置の方向からではなく、空間の任意の点からオーディオ信号を聞く印象を有する。オーディオシステムは、キャップ補償情報を含むデータベースをさらに含み、2つのスピーカによって放出され、ユーザによって仮想音場として知覚されるオーディオ出力信号に対する保護キャップの影響を補償することを可能にする。本発明に従って、オーディオ信号プロセッサは、キャップ補償情報を考慮に入れる上記ユーザに対して仮想音場を生成するように構成される。スピーカの上に備え付けられるキャップは二重の機能を有する。まず第1に、キャップは、ヘッドレストの中に組み込まれたスピーカを雨または任意の他の環境関連の影響などの環境に対して保護する。例として、キャップは、スピーカが太陽に直接曝されることを回避し、スピーカの構成要素の急速な老朽化を回避することをさらに助ける。さらに、保護キャップは、運転中に車両内の気流と共に飛ぶ粒子(例えば、蝿、蚊または任意の他のごみ)に対してスピーカを保護することを助ける。スピーカは、耳の近くに位置を定められるので、信号量は、スピーカが頭部からより距離のあるどこかに備え付けられる場合と比較して下げられ得る。さらに、各スピーカの上に保護キャップを備え付けることによって、放出される音は下方向に向けられる。このことは、車両外の人がオーディオシステムから放出された音によって邪魔されることがより少なくなるように車両内に音を保つことを助ける。当該分野においてスピーカの上部表面と平行に備え付けられる保護グリッドは公知であるが、これらのグリッドは、スピーカから放出される音と主に平行に延びるのではなく、垂直に延びる。保護キャップの主構成要素は、スピーカからの音場が放出される方向に延び、放出された音場のための反射器または誘導として働くので、本発明の保護キャップは、スピーカによって放出される音場に強い影響を及ぼす。例として、仮想サラウンド音はユーザ/ドライバにシミュレートされ得るので、仮想音場は、ユーザに対する聴取印象を改善する。仮想サラウンド音において知覚が引き起こされ、その結果、ユーザは、音場を生成するために実際に用いられている音源よりも多くの音源が存在するという印象を有する。仮想サラウンド場において、ユーザは、音が実際にはそこから来ていないところから来ているという印象をユーザが有するように音を知覚する。保護キャップは、ユーザの耳に音場を導くかまたは集束させるのを助け、周囲への音場の放出を最小限することを助ける。従って、先行技術のオーディオシステムと比較して、はるかに低い信号レベルが本発明のシステムに対して用いられ得る。
【0006】
本発明は、コンバーチブル車両に関連して用いられ得る。しかしながら、本発明は、この用途に限定されない。例として、本発明はまた、トラックなどの閉鎖車両、またはモータボートもしくは飛行機において用いられ得る。保護キャップは、スピーカの上に備え付けられ、音が少なくとも部分的に放出される方向に主として延びるので、放出された音場、従ってユーザによって知覚される仮想音場に影響を及ぼす。仮想音場を提供するために、ヘッドレスト内の2つのスピーカによって生成される音場に対する保護キャップの影響は、決定され、補償されなければならない。この目的のために、キャップ補償情報が用いられる。
【0007】
ユーザによって知覚されるような仮想音場は、ユーザの頭部の位置、すなわち耳の位置に依存する。ヒトの聴覚系は、音源を局在化し、局在化は、音響信号がスピーカからヒトの耳に進む方法に依存する。本発明の一実施形態において、頭部の所定の共通の位置が用いられる。ヘッドレストに対する頭部の位置は、車両のドライバにとって比較的固定されており、わずかな変動を有するのみである。ヘッドレストの正しい設定が考えられる場合、ヘッドレストと頭部との相対的な位置は異なる高さの人々にとって同じであるので、通常、ヘッドレストを有するシートに座っているユーザおよび2つのスピーカの高さは、役を果たさない。別の実施形態において、ユーザの頭部を追跡する画像センサが提供され、データベースは頭部の位置関係のデータをさらに含む。オーディオ信号プロセッサは、次いでキャップ補償情報および追跡された頭部の位置を考慮に入れるユーザに対して仮想音場を生成する。
【0008】
頭部関連データは、種々のあり得る頭部の位置に関して上記ユーザに対して決定される一組の両耳用の室内インパルス応答(BRIR)を含み得る。両耳用の音響信号は、通常ヘッドホンを用いて再生するように意図され、両耳用の記録済音響信号がヘッドホンで再生される場合、音が生成されるところの音の実際の位置をシミュレートする聴取経験が得られる。通常のステレオ信号がヘッドホンを用いて再生される場合、聴取者は頭部の中央で信号を知覚する。両耳用に記録された音響信号がヘッドホンによって再生される場合、信号が最初に記録された場所からの位置がシミュレートされる。この場合、音響信号はヘッドホンによって出力されないで、ヘッドレストに備え付けられた一対のスピーカによって出力される。知覚された音響信号は聴取ユーザの頭部の位置に依存するので、ユーザの頭部の位置は画像センサを用いて追跡される。
【0009】
ユーザに対する仮想音場生成に関して、さらにクロストークキャンセレイションが実行され得、クロストークキャンセレイションにおいて、1つのスピーカによって放出された音響信号は意図された耳に到達し、一方、このスピーカの音響信号は、もう一方の耳に対して抑制され、また逆も同様である。しかしながら、本発明において、1つのスピーカはヘッドレストの側面において1つの耳の隣に位置を定められ得、もう一方のスピーカはもう一方の耳の隣に位置を定められるもう一方の側面に備え付けられ得るので、例えば、左耳に対する右のスピーカのクロストークキャンセレイションにおいて抑制される音響信号の成分は非常に小さい。種々の頭部の位置に対して決定される両耳用の室内インパルス応答(BRIR)は、ダミーの頭部を用いて上記車両において事前に決定され得る。種々のBRIRは、種々の頭部の位置でダミーの頭部の各耳にマイクロホンが備え付けられ、ダミーの頭部を車両に配置することによって、得られ得る。この実施形態によって、頭部に関連する伝達関数およびスピーカから耳への信号経路に対する車内からの影響が決定され得る。反射が無視される場合、BRIRの代わりに頭部に関連する伝達関数を用いることも可能である。例として、頭部の位置は、3つの異なる方向への平行移動を決定することによって画像センサによって追跡され得、さらに、頭部のあり得る回転が追跡され得る。一組の所定の両耳用のインパルス応答は、次いで種々のあり得る平行移動および回転に対してBRIRを含み得る。車両環境において、平行移動(左または右および後、前)および1つの回転すなわち左および右への頭部の回転のみに対し、より少ない自由度を考慮することで十分であり得る。頭部追跡のない所定の共通の頭部の位置におけるユーザ固有の両耳用の音響信号は、次いで上記頭部の位置に対する両耳用の室内インパルス応答による音源信号の畳み込みを決定することによって決定され得る。CD、DVDまたはラジオなどの音源からの音響信号は、1.0、2.0、5.1または7.1信号であり得、ユーザからの両耳用の音響信号は、2チャネル信号(各スピーカに対して1チャネル信号)である。
【0010】
好ましくは、各スピーカの上に備え付けられる保護キャップは、2つのスピーカによって放出されるオーディオ出力信号がヘッドレストの下に提供される車室の領域に導かれるように設計される。このことは、車両内に音を保ち、車両外に放出される音を最小限にすることを助ける。保護キャップの正確な形態はまた、運転している車両における空気の動きなどの他のパラメータにも依存し得る。さらに、ヘッドレストおよび車室の設計は、保護キャップの正確な形態に影響を及ぼし得る。ヘッドレストの側面にスピーカを備え付けることによって、ヘッドレストの安全機能は劣化されない。側面にスピーカを備え付けることによって、事故の場合に頭部がスピーカにぶつかることが回避され得る。
【0011】
好ましくは、車両オーディオシステムは、フロントシートの各ヘッドレストに一対のスピーカ(すなわち、運転者に一対、運転者の隣に座っている人に一対)を備えている。二人の各々に対して、仮想音場が対応する一対のスピーカによって生成され得る。スピーカは耳の非常に近くに備え付けられるので、高信号レベルの放出される音は必要ではない場合がある。その結果、第1のユーザ(例えば、運転者)に対して放出される音場は、もう一方のフロントシートに着席するもう一方のユーザの邪魔をしない。しかしながら、別の実施形態において、オーディオシステムは、オーディオ信号プロセッサがクロス音場抑制を行い、もう一方のユーザに対してもう一方の対のスピーカによって放出される音場が第1のユーザに対して抑制され、そして逆もまた同様であるクロス音場抑制が実行されるように設計され得る。
【0012】
ヘッドレストにスピーカを収容するためのスペースは限られているので、2つのスピーカは、好ましくは、100MHz超〜15,000Hzまたは18,000Hzの範囲の周波数範囲においてオーディオ信号を放出するサテライトスピーカである。より低い周波数のための追加のスピーカであるウーハは、車室内の他の場所に備え付けられ得る。
【0013】
本発明は、車両シートに座っているユーザに対して仮想音場を生成する方法に関し、この方法は、キャップ補償情報を提供するステップであって、オーディオ出力信号に対する保護キャップの影響を補償することを可能にする、ステップと、オーディオ信号プロセッサに入力されるオーディオ入力信号を処理するステップであって、ユーザによって仮想音場として知覚されるオーディオ出力信号がキャップ補償情報を考慮に入れ生成されるように処理する、ステップとを包含する。上記に考察されるように、低信号レベルでユーザ固有の音場を生成することが可能である。
【0014】
好ましくは、オーディオ出力信号を処理することは、上記ユーザに対してユーザ固有の両耳用の音響信号を生成するステップと、クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号が生成されるように上記ユーザに対してクロストークキャンセレイション(crosstalk constellation)を行うステップであって、この場合、ユーザ固有の両耳用の音響信号は、クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号が上記ユーザの第1の耳に対して2つのスピーカのうちの1つによって出力された場合、クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号が上記ユーザの第2の耳に対して抑制されるように処理され、逆もまた同様である、ステップとを包含する。さらに、クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号は、オーディオ出力信号を生成するためにキャップ補償情報を用いて処理される。仮想音場の生成のために、固定された頭部の位置が用いられ得るかまたは画像センサを用いて頭部の位置が追跡され得るかのいずれかである。車両の2つのヘッドレスト内にスピーカが用いられる場合、クロス音場抑制をさらに行うことが可能であり、このクロス音場抑制において、1つのヘッドレストの一対のスピーカによって出力されるオーディオ出力信号は、もう一方のヘッドレストが備え付けられている車両のシートに座っているユーザに対して抑制される。
【0015】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
車両のヘッドレスト(20)の中に組み込まれる2つのスピーカ(1R、1L)と、
該2つのスピーカの各々のための保護キャップ(40)であって、該保護キャップは、該ヘッドレスト(20)に、各スピーカ(1R、1L)の上に、各スピーカの音が放出される方向に延びるように備え付けられる、保護キャップ(40)と、
オーディオ入力信号を受信するオーディオ信号プロセッサ(60)であって、該オーディオ信号プロセッサ(60)は、オーディオ出力信号が該2つのスピーカによって出力された場合、該スピーカを有する該ヘッドレストが仮想音場として備え付けられるシートに座っているユーザによって該オーディオ出力信号が知覚されるように、該2つのスピーカ(1R、1L)に対して該オーディオ出力信号を生成するように構成される、オーディオ信号プロセッサ(60)と、
キャップ補償情報を含むデータベース(80)であって、該キャップ補償情報は、該仮想音場として該ユーザに知覚される、該2つのスピーカ(1R、1L)によって放出される該オーディオ出力信号に対する該保護キャップ(40)の影響を補償することが可能である、データベース(80)と
を備え、
該オーディオ信号プロセッサ(60)は、該キャップ補償情報を考慮に入れる該ユーザに対する該仮想音場を生成するように構成される、車両オーディオシステム。
(項目2)
上記ユーザの頭部を追跡する画像センサ(70a、70b)をさらに備え、上記データベース(80)は頭部の位置に関連するデータをさらに備え、上記オーディオ信号プロセッサは、該ユーザが該追跡された頭部の位置をさらに考慮に入れるように該ユーザに対する仮想音場を生成するように構成される、上記項目のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
(項目3)
頭部関連データは、様々な起こり得る頭部の位置に関して上記ユーザに対して決定される一組の両耳用の室内インパルス応答を含む、上記項目のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
(項目4)
各スピーカの上に備え付けられる上記保護キャップ(40)は、上記2つのスピーカによって放出される上記オーディオ出力信号が上記ヘッドレストの下に提供される車室の領域に導かれるように設計される、上記項目のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
(項目5)
スピーカ(1R、1L)は、上記ヘッドレストの各側面(21、22)に備え付けられる、上記項目のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
(項目6)
上記オーディオ信号プロセッサ(60)は、該オーディオ信号プロセッサが上記オーディオ入力信号から上記ユーザに対するユーザ固有の両耳用の音響信号を生成するように該オーディオ入力信号を処理することによって、該ユーザに対する上記仮想音場を生成するように構成され、該オーディオ信号プロセッサは、上記ヘッドレストの上記2つのスピーカによって放出される音響信号に対してクロストークキャンセレイションを行う、上記項目のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
(項目7)
上記オーディオ信号プロセッサ(60)は、別のユーザに対する他のスピーカによって放出される音場が、上記ユーザの各耳に対して抑制されるクロス音場抑制を行うように構成される、項上記項目のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
(項目8)
上記2つのスピーカ(1R、1L)は、100Hzより高い周波数範囲でオーディオ信号を出力するように最適化されるように設計される、上記項目のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
(項目9)
車両シートに座っているユーザに対する仮想音場を生成する方法であって、該仮想音場は、該車両シートのヘッドレスト(20)の中に組み込まれた2つのスピーカ(1R、1L)によって生成され、各スピーカ(1R、1L)は、各スピーカの上のヘッドレストに備え付けられ、各スピーカの音が放出される方向に延びる保護キャップ(40)によって保護され、該方法は、
キャップ補償情報を提供するステップであって、該キャップ補償情報は、該仮想音場として該ユーザによって知覚される該2つのスピーカによって出力されるオーディオ出力信号に対する該保護キャップの影響を補償することを可能にする、ステップと、
該ユーザによって該仮想音場として知覚される該オーディオ出力信号が該キャップ補償情報を考慮に入れて生成されるように該オーディオ入力信号を処理するステップと
を包含する、方法。
(項目10)
上記オーディオ入力信号を処理することは、
上記ユーザに対するユーザ固有の両耳用の音響信号を生成するステップと、
クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号を生成するために該ユーザに対してクロストークキャンセレイションを行うステップであって、該ユーザ固有の両耳用の音響信号は、該クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号が該ユーザの第1の耳に対して該2つのスピーカのうちの1つによって出力された場合、該クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号が該ユーザの第2の耳に対して抑制され、該クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号が該ユーザの第2の耳に対して該2つのスピーカのうちのもう一方によって出力された場合、該クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号が該ユーザの該第1の耳に対して抑制されるように処理される、ステップと、
該オーディオ出力信号を生成するために該キャップ補償情報を用いて該クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号を処理するステップと
を包含する、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
上記オーディオ出力信号は、上記ヘッドレストにおける上記ユーザの頭部の固定された位置を用いて生成される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
上記ユーザの頭部の位置を追跡するステップをさらに包含し、上記オーディオ出力信号は、上記キャップ補償情報および該追跡された頭部の位置を考慮に入れて生成される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
2つの車両シートが提供され、各車両シートの上記ヘッドレストは2つのスピーカを組み込み、上記オーディオ入力信号の上記処理は、1つの車両シートの該ヘッドレスト内のスピーカによって出力されるオーディオ出力信号が、もう一方の車両シートに座っているユーザの各耳に対して抑制されるクロス音場抑制を行うステップをさらに包含する、上記項目のいずれかに記載の方法。
【0016】
(摘要)
本発明は、
−車両のヘッドレストの中に組み込まれる2つのスピーカと、
−上記2つのスピーカの各々のための保護キャップであって、ヘッドレストに、各スピーカの上にかつ各スピーカの音が放出される方向に延びるように備え付けられる、保護キャップと、
−オーディオ入力信号を受信するオーディオ信号プロセッサであって、このオーディオ信号プロセッサは、オーディオ出力信号が2つのスピーカによって出力された場合、スピーカを有するヘッドレストが仮想音場として備え付けられるシートに座っているユーザによってオーディオ出力信号が知覚されるように、上記2つのスピーカに対してオーディオ出力信号を生成するように構成される、オーディオ信号プロセッサと、
キャップ補償情報を含むデータベースであって、このデータベースは、仮想音場としてユーザに知覚される、2つのスピーカによって放出されるオーディオ出力信号に対する保護キャップの影響を補償することが可能である、データベースと
を備え、
オーディオ信号プロセッサは、キャップ補償情報を考慮に入れる上記ユーザに対して仮想音場を生成するように構成される、車両オーディオシステムに関する。
【0017】
本発明は、添付の図面を参照してさらに詳細に考察される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ヘッドレスト内のスピーカの設置を例示する図面である。
【図2】図2は、本発明のオーディオシステムのブロック図である。
【図3】図3は、オーディオ信号を処理するオーディオ信号プロセッサのより詳細な図である。
【図4】図4は、仮想ヘッドホンの生成を示す図である。
【図5】図5は、クロス音場キャンセレイションを用いるユーザ固有の仮想音場の生成を示す図である。
【図6】図6は、ひとりのユーザに対して仮想音場を生成するステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
図1は、ヘッドレスト20を有する車両シート(図示されていない)に座っているユーザ10の概略図である。ヘッドレストは、スピーカ1R、1Lが組み込まれている2つの側面21および22を備え、2つのスピーカはユーザ10に対して音響信号を放出する。図1に示される車両シートおよびヘッドレストは、好ましくはコンバーチブルカーに位置を定められる。環境に対してスピーカを保護するために、各スピーカの上に保護キャップ40が取り付けられる。保護キャップの内側面は、凹形を有し、スピーカから放出された音声を車内の下部の方にそしてユーザの耳の方に向ける。保護キャップは、事故の場合、他の乗員に関する安全要件が満たされるように設計される。さらに、運転中の車両の場合の気流は、保護キャップの形状に影響を及ぼす。保護キャップの外側面はヘッドレストと同じ材料によって覆われ得る。図1から分かり得るように、2つのスピーカは、ユーザの2つの耳に非常に接近して位置を定められる。図1に示される2つのスピーカ1R、1Lは、必ずしも車両に備え付けられる唯一のスピーカではない。車両内のあらゆるヘッドレストは、図1に示されるように組み込まれる一対のスピーカを有し得る。ヘッドレスト内のスペースは制限されるので、スピーカは、例えば、車両内のどこかに低音拡声器(woofer)をさらに含むスピーカシステムのサテライトコンポーネントなどの小さいスピーカである。スピーカの大きさを考慮に入れ、スピーカは、好ましくは、低周波数用ではなく、高い方の周波数用に設計される。例として、スピーカ1R、1Lは、特に、約100Hzを超える周波数範囲に適合され得る。スピーカとユーザの耳との間の短い距離のために、図1に示される音響システムが組み込まれている車両がコンバーチブルであり、運転中であっても、低信号レベルの出力オーディオ信号で十分である。
【0020】
図2〜図4に関連して、2つのスピーカのオーディオ出力信号によって生成される仮想音場が、より詳細に説明される。図2において、車両のフロントシートの2つのヘッドレストに組み込まれるオーディオシステムが概略的に示される。図の左部分に示されるユーザAは、2つのスピーカ1Lおよび1Rが組み込まれているヘッドレスト20を有するシートに座っており、保護キャップは明快にするために想像線で示されるだけである。ユーザBは隣接するシートに座っており、2つのスピーカ2Lおよび2Rはヘッドレスト20に組み込まれている。1L、1Rならびに2Lおよび2Rと呼称される、図2に示されるスピーカは、図1に示されるものと同じスピーカであり得る。オーディオシステムは、スピーカによって出力されるオーディオ信号を提供するオーディオ信号源50を備えている。オーディオ信号は、オーディオ信号がデジタル形式で格納され得るCD、DVDまたはハードディスクからあり得る。オーディオシステムは、オーディオ信号が左と右の対のスピーカに出力される前に、オーディオ信号源50から受信されるオーディオ信号を処理する信号プロセッサ50をさらに備えている。信号プロセッサは、スピーカ1L、1R、2Lおよび2Rに提供されるオーディオ出力信号が仮想音場としてのシートに座っているユーザAおよびBによって知覚されるように、受信されたオーディオ入力信号を処理する。仮想音場において、ユーザはオーディオ信号の空間聴覚表現が提供される。好ましくは、仮想音場は、仮想周囲音であり、その仮想周囲音は、いくつかのスピーカが備え付けられているという印象および実際にはスピーカが全く存在しない空間において信号が種々のスピーカから分配されて来るという印象をユーザに与える。オーディオ信号が出力される前に、スピーカ1Lによって放出されるオーディオ信号が左耳に対して送信され、一方、スピーカ1Lによって右耳に対して出力されるオーディオ信号成分(破線で示される)が抑制されるようにオーディオ信号を処理することが可能である場合に、この仮想周囲音は可能である。同じ方法で、スピーカ1Rのオーディオ出力信号は右耳に対して指定され、ユーザAの左耳に対する右スピーカ1Rからのオーディオ出力信号は抑制される。示される実施形態において、ユーザAおよびBの両方が同じ音源からオーディオ信号を聞くことが考えられる。同じことがユーザBに対しなされ、スピーカ2Lおよび2Rを用いて仮想音場がユーザBに対して提供される。各ユーザに対する仮想音場のシステムは仮想ヘッドホンとも呼ばれ、この概念は図4においてより詳細に開示される。
【0021】
2つのスピーカ1Lおよび1Rならびにオーディオ信号がユーザの2つの耳に送信される、ユーザAに対するシステムがより詳細に示される。図2から分かるように、明快にするために、2つのスピーカは、スピーカの実際の位置には示されないで、2つのスピーカから左耳および右耳への音響信号の伝達をより明確に示すことを可能にするためにより大きい距離で表される。オーディオ信号の空間聴覚表現は両耳用の信号を放出することによって得られ、スピーカ1Lによって放出される両耳用の信号は左耳に運ばれ、一方、スピーカ1Rによって放出される両耳用の信号は右耳に運ばれる。この目的のために、クロストークキャンセレイションが必要であり、スピーカ1Lから放出されたオーディオ信号は右耳に対して抑制され(図4の1L−R)、スピーカ1Rのオーディオ出力信号は左耳に対して抑制される(1R−L)。図4から分かり得るように、スピーカから耳への送信経路は頭部の位置に依存する。本発明の一実施形態において、計算の基礎として固定の頭部の位置がとられる。別の実施形態において、図2に示されるようにユーザAのためのカメラ70AおよびユーザBのためのカメラBなど、各ユーザに対してカメラが提供される。カメラ70Aおよびカメラ70Bは、ユーザの頭部の位置を決定することが可能である。例として、カメラはパターン認識技術を用いることによって頭部の位置を決定し得、パターン認識技術において、顔または頭部の任意の他の所定の部分は画像において認識される。画像の認識された部分の動きから頭部の動きが推論され得る。カメラは、3つの異なるあり得る回転の他に頭部の三次元の平行移動を決定し得る。図3および図5に関連してより詳細に後に説明されるように、信号プロセッサ60はデータベース80に接続され、異なる頭部平行移動および回転位置に関する両耳用の室内インパルス応答(BRIR)がデータベース80に格納される。頭部の位置が追跡されない場合、固定の一般的な頭部の位置が用いられ、この頭部の位置に対する両耳用の室内インパルス応答がデータベースに用いられる。BRIRは、スピーカから鼓膜への遷移経路および車内におけるオーディオ信号のあり得る反射を考慮に入れる。オーディオ信号源からのユーザAに対するユーザ固有の両耳用の音は、最初にユーザ固有の両耳用の音響信号を生成することによって、次いでクロストークキャンセレイションを行なうことによって生成され得、クロストークキャンセレイションにおいて、左スピーカから右耳および右スピーカから左耳への信号経路は抑制される。ユーザ固有の両耳用の音響信号は、両耳用の室内インパルス応答によるオーディオ入力信号のコンボリューション(convolution)を決定することによって得られる。クロストークキャンセレイションは、次いでクロストークキャンセレイションのための新しいフィルタを計算することによって得られ、そのクロストークキャンセレイションは、再び、クロストークキャンセレイションフィルタを用いる追跡された頭部の位置に依存し得る。頭部回転に依存するクロストークキャンセレイションのより詳細な分析は、119th Convention,October 2005,7−10において提出されたAudio Engineering Society Paper 6541におけるT.Lentz,I.AssenmacherおよびJ.Sokollによる「Perfomance of Spatial Audio Using Dynamic Cross−Talk Cancellation」およびJ.Audio Eng.Soc.,Vol.54,No.4,April 2006,pages 283−294における「Dynamic Crosstalk Cancellation for Binaural Synthesis」にT.Lentzによって説明されている。クロストークキャンセレイションは、新しく決定されたクロストークキャンセレイションフィルタによるユーザ固有の両耳用の音響信号の畳み込みを決定することによって得られる。この新しいフィルタによる処理後、クロストークキャンセレイションされたみユーザ固有の音響信号は、スピーカの各々に対して得られ、ユーザに出力されると、スピーカからの位置によって決定される方向からのオーディオ信号のみならず、空間上の任意の他の点からのオーディオ信号を聞く印象をユーザが有する、オーディオ信号の空間的認識を提供する。
【0022】
図3において、信号プロセッサ60において実行される信号処理のより詳細な図が示される。オーディオ信号源50からのオーディオ入力信号は、ステレオ信号または5.1サラウンド信号である。オーディオ信号は、任意のフォーマットのマルチチャネルオーディオ信号であり得る。図3において、本発明の理解を容易にするために、種々の計算ステップが種々のモジュールによって記号化される。しかしながら、好ましくは図3においてモジュールによって記号化される種々の計算ステップを実行する単一の処理ユニットによって処理が実行されることは理解されるべきである。以下において、信号処理は、ユーザの頭部の動きが考慮に入れられる頭部追跡によって考察される。しかしながら、図3に示される処理ステップはまた、頭部の固定位置を用いて実行され得る。画像センサ70から来る矢印によって記号化されるように頭部の位置を受信する第1のモジュールにおいて、その位置に対する両耳用の室内インパルス応答は、データベース80から抽出される。第1の処理ユニット61において、マルチチャネルオーディオ信号は、両耳用のオーディオ信号に変換され、その両耳用のオーディオ信号は、ヘッドホンによって出力された場合、聴取者に3D印象を与える。このユーザ固有の両耳用の音響信号は、追跡される頭部の位置の対応するBRIRによってマルチチャネルオーディオ入力信号の畳み込みを決定することによって得られる。ユーザ固有の両耳用の音響信号は、次いで、クロストークキャンセレイションフィルタが計算されるモジュール62においてさらに処理される。クロトークキャンセレイションフィルタは、そのクロストークキャンセレイションフィルタによってユーザ固有の両耳用の音響信号のコンボリューションを決定することによってクロストークキャンセレイションを決定するために用いられる。モジュール62の出力は、クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号であり、このクロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号は、スピーカによって出力された場合、ヘッドホンを用いてユーザ固有の両耳用の音響信号を聴く聴取者と同じ印象を聴取者に与える。クロストークキャンセレイションはまた頭部の位置に依存するので、対応する頭部の位置情報もまたモジュール62に出力される。モジュール63において、保護キャップの影響が決定される。この目的のために、データベースは、対応する車両に座っているダミーの頭部を用いて事前に決定され得る種々の頭部の位置に対する所定のフィルタを備え得る。種々のフィルタは、保護キャップが備え付けられている状態で、スピーカによって放出される信号の測定値を用いて決定され得る。これらの測定値は、放出された音に対する保護キャップの影響を決定することを可能にする。モジュール61および62において用いられる種々のフィルタに関して、データベース80は、種々の頭部の位置に対するフィルタを備え、モジュール62から放出される信号は、対応する頭部の位置のキャップ補償フィルタによるモジュール62から放出されるクロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号の畳み込みを決定するために用いられる。このようにキャップ補償されたオーディオ出力信号は、アドレス指定された各スピーカに対して決定され、対応するスピーカに出力される。2つのスピーカによって放出された音は、ユーザに対する仮想音場を生成する。
【0023】
頭部の位置が追跡されない場合、両耳用の音、クロストークキャンセレイションおよびキャップ補償のそれぞれの生成のために、中間の頭部の位置に対するフィルタのみが備え付けられなければならない。図3に示されるような信号処理は、図2に示されるユーザAおよびBの各々に対して実行され得る。二対のスピーカによって放出される音場の信号レベルは非常に低いので、ユーザAに対して作られる音場の妨害はユーザBにとって低く、逆もまた同様である。しかしながら、別の実施形態において、ユーザAに対して生成される音場がユーザBに対して抑制されるクロス音場キャンセレイションを実行することが可能である。そのような実施形態は、図5に関連してより詳細に開示される。
【0024】
図3に示される信号処理ステップの他に、クロス音場キャンセレイションが実行され得、基本原理は図5に示される。第1のユーザAに対する2つのスピーカ1L、1Rは第1のユーザAに対するユーザ固有の音響信号を生成し、2つのスピーカ2L、2Rは、第2のユーザBに対してユーザ固有の音響信号を生成する。2つのカメラ70aおよび70bは、それぞれ二人のユーザAおよびBの頭部の位置を決定するために備え付けられる。第1のスピーカ1Lは、通常の状況下において、ALおよびARで示される、聴取者Aの左耳および右耳によって聞かれるオーディオ信号を出力する。聴取者Aの左耳に対してスピーカ1Lから放出される信号に対応する信号1L、ALは、太線(bolt)で示され、抑制されない。ユーザAの右耳に対して破線で示されるもう一方の音響信号1L、ARは抑制される。同じ方法で、信号1R、ARは右耳に到達し、一方、左耳に対する信号1R、ALは抑制される。しかしながら、スピーカ1Lおよび1Rからの信号は聴取者Bによって知覚されるので、音場が抑制されるクロス音場キャンセレイションが実行され得る。スピーカ1Lからの抑制されるべき信号は、1L、BRおよび1L、BLとして示される。同じ方法で、スピーカ1Rによって放出される信号は、聴取者Bの両耳に対して抑制される。同じ方法で、スピーカ2Lおよび2Rから放出される音響信号は、ユーザAに対して抑制される。従って、原則的にクロス音場キャンセレイションは、クロストークキャンセレイションと同じ方法で働く。
【0025】
図3に示される実施形態において、3つの畳み込みが信号経路において実行される。オーラライゼーション(auralisation)クロストークキャンセレイションおよびキャップ補償に対するフィルタリングは、次々と実行され得る。別の実施形態において、3つの異なるフィルタリング動作は、事前に決定されたフィルタを用いて1つの畳み込みに結合され得る。頭部追跡を用いるクロストークキャンセレイションは、「Dynamic Crosstalk Cancellation for Binaural Synthesis in Virtual Reality Environments」、J.Audio Eng.Soc.,Vol.54,No.4,April 2006,pages 283−294にT.Lentzによってより詳細に説明されている。クロス音場キャンセレイションにおいて同じ原理が用いられるが、もう一方の2つのスピーカから放出される信号が抑制される。
【0026】
図6において、クロス音場キャンセレイションのないユーザ固有の仮想音場を決定する種々のステップが要約される。方法は、ステップ100において開始する。ステップ110において、例えばユーザAまたはユーザBなどのユーザの頭部が追跡される。追跡された頭部の位置によって、決定された頭部の位置に対するBRIRによるオーディオ入力信号の畳み込みを計算することによってステップ120において両耳用の音響信号を決定することが可能である。ステップ130において、クロストークキャンセレイションは、モジュール62において図3に関連して説明されるように実行される。ステップ140において、保護キャップの放出された音響信号に対する影響が考慮に入れられる。補償ステップ140後、信号は、モジュール63後に信号出力に対応して出力される。クロス音場キャンセレイションが実行される場合、このクロス音場キャンセレイションは、ステップ140後に実行され得る。次いで信号がステップ150において出力されると、ユーザ固有の仮想音場が得られる。
【0027】
ヘッドレストに備え付けられるスピーカは、スピーカの外側面がヘッドレストの側面と平行の状態で位置を定められる必要はない。スピーカはまた、ヘッドレストの外側面に対してわずかに斜めに置かれ得る。さらに保護キャップの形状は、スピーカを保護する必要と、キャップの周りを進む気流によって生成されるノイズを避ける必要と、ユーザによって受け入れ可能なデザインを得る必要とによって左右される。
【符号の説明】
【0028】
10 ユーザ
20 ヘッドレスト
21 側面
22 側面
40 保護キャップ
50 オーディオ信号源
60 信号プロセッサ
61 モジュール
62 モジュール
70 画像センサ
70A カメラ
70B カメラ
80 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のヘッドレスト(20)の中に組み込まれる2つのスピーカ(1R、1L)と、
該2つのスピーカの各々のための保護キャップ(40)であって、該保護キャップは、該ヘッドレスト(20)に、各スピーカ(1R、1L)の上に、各スピーカの音が放出される方向に延びるように備え付けられる、保護キャップ(40)と、
オーディオ入力信号を受信するオーディオ信号プロセッサ(60)であって、該オーディオ信号プロセッサ(60)は、オーディオ出力信号が該2つのスピーカによって出力された場合、該スピーカを有する該ヘッドレストが仮想音場として備え付けられるシートに座っているユーザによって該オーディオ出力信号が知覚されるように、該2つのスピーカ(1R、1L)に対して該オーディオ出力信号を生成するように構成される、オーディオ信号プロセッサ(60)と、
キャップ補償情報を含むデータベース(80)であって、該キャップ補償情報は、該仮想音場として該ユーザに知覚される、該2つのスピーカ(1R、1L)によって放出される該オーディオ出力信号に対する該保護キャップ(40)の影響を補償することが可能である、データベース(80)と
を備え、
該オーディオ信号プロセッサ(60)は、該キャップ補償情報を考慮に入れる該ユーザに対する該仮想音場を生成するように構成される、車両オーディオシステム。
【請求項2】
前記ユーザの頭部を追跡する画像センサ(70a、70b)をさらに備え、前記データベース(80)は頭部の位置に関連するデータをさらに備え、前記オーディオ信号プロセッサは、該ユーザが該追跡された頭部の位置をさらに考慮に入れるように該ユーザに対する仮想音場を生成するように構成される、請求項1に記載の車両オーディオシステム。
【請求項3】
頭部関連データは、様々な起こり得る頭部の位置に関して前記ユーザに対して決定される一組の両耳用の室内インパルス応答を含む、請求項2に記載の車両オーディオシステム。
【請求項4】
各スピーカの上に備え付けられる前記保護キャップ(40)は、前記2つのスピーカによって放出される前記オーディオ出力信号が前記ヘッドレストの下に提供される車室の領域に導かれるように設計される、請求項1〜3のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
【請求項5】
スピーカ(1R、1L)は、前記ヘッドレストの各側面(21、22)に備え付けられる、請求項1〜4のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
【請求項6】
前記オーディオ信号プロセッサ(60)は、該オーディオ信号プロセッサが前記オーディオ入力信号から前記ユーザに対するユーザ固有の両耳用の音響信号を生成するように該オーディオ入力信号を処理することによって、該ユーザに対する前記仮想音場を生成するように構成され、該オーディオ信号プロセッサは、前記ヘッドレストの前記2つのスピーカによって放出される音響信号に対してクロストークキャンセレイションを行う、請求項1〜5のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
【請求項7】
前記オーディオ信号プロセッサ(60)は、別のユーザに対する他のスピーカによって放出される音場が、前記ユーザの各耳に対して抑制されるクロス音場抑制を行うように構成される、請求項1〜6のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
【請求項8】
前記2つのスピーカ(1R、1L)は、100Hzより高い周波数範囲でオーディオ信号を出力するように最適化されるように設計される、請求項1〜7のいずれかに記載の車両オーディオシステム。
【請求項9】
車両シートに座っているユーザに対する仮想音場を生成する方法であって、該仮想音場は、該車両シートのヘッドレスト(20)の中に組み込まれた2つのスピーカ(1R、1L)によって生成され、各スピーカ(1R、1L)は、各スピーカの上のヘッドレストに備え付けられ、各スピーカの音が放出される方向に延びる保護キャップ(40)によって保護され、該方法は、
キャップ補償情報を提供するステップであって、該キャップ補償情報は、該仮想音場として該ユーザによって知覚される該2つのスピーカによって出力されるオーディオ出力信号に対する該保護キャップの影響を補償することを可能にする、ステップと、
該ユーザによって該仮想音場として知覚される該オーディオ出力信号が該キャップ補償情報を考慮に入れて生成されるように該オーディオ入力信号を処理するステップと
を包含する、方法。
【請求項10】
前記オーディオ入力信号を処理することは、
前記ユーザに対するユーザ固有の両耳用の音響信号を生成するステップと、
クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号を生成するために該ユーザに対してクロストークキャンセレイションを行うステップであって、該ユーザ固有の両耳用の音響信号は、該クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号が該ユーザの第1の耳に対して該2つのスピーカのうちの1つによって出力された場合、該クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号が該ユーザの第2の耳に対して抑制され、該クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号が該ユーザの第2の耳に対して該2つのスピーカのうちのもう一方によって出力された場合、該クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号が該ユーザの該第1の耳に対して抑制されるように処理される、ステップと、
該オーディオ出力信号を生成するために該キャップ補償情報を用いて該クロストークキャンセレイションされたユーザ固有の音響信号を処理するステップと
を包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記オーディオ出力信号は、前記ヘッドレストにおける前記ユーザの頭部の固定された位置を用いて生成される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記ユーザの頭部の位置を追跡するステップをさらに包含し、前記オーディオ出力信号は、前記キャップ補償情報および該追跡された頭部の位置を考慮に入れて生成される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
2つの車両シートが提供され、各車両シートの前記ヘッドレストは2つのスピーカを組み込み、前記オーディオ入力信号の前記処理は、1つの車両シートの該ヘッドレスト内のスピーカによって出力されるオーディオ出力信号が、もう一方の車両シートに座っているユーザの各耳に対して抑制されるクロス音場抑制を行うステップをさらに包含する、請求項9〜12のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−19506(P2012−19506A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92482(P2011−92482)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(504147933)ハーマン ベッカー オートモーティブ システムズ ゲーエムベーハー (165)
【Fターム(参考)】