説明

ヘテロポリオキソメタレート化合物およびその製造方法

【課題】 二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるSc、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crより選ばれる少なくとも一種の元素(B)が、元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比で導入されているヘテロポリオキソメタレート化合物を提供する。
【解決手段】 ヘテロ原子がケイ素、リン、もしくはゲルマニウムであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン、バナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるSc、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crより選ばれる少なくとも一種の元素(B)が、元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比で導入されていることを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロポリオキソメタレート化合物およびその製造方法に関する。より詳しくは、前周期遷移金属であるSc、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crより選ばれる少なくとも一種の元素(B)を二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比で導入したヘテロポリオキソメタレート化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘテロ原子を中心とし、ポリ原子がヘテロ原子に酸素を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物は、酸化反応や酸塩基反応等の有機反応用触媒として使用できることが広く知られている。特に、ケギン型へテロポリオキソメタレートの構造中にあるべき原子が二つ欠けている欠損構造を有し、その欠損部位に一種類以上の金属元素を二個含有するもの、すなわちポリ原子が一種類以上の他の金属元素により二つ置換された二置換型ヘテロポリオキソメタレートが、一置換型へテロポリオキソメタレートや三置換型へテロポリオキソメタレートに比較して特異な酸化触媒活性を示すことが知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、更に高い酸化触媒特性や、ルイス酸触媒、及び新しい機能性材料等として期待される前周期遷移金属元素で置換されたヘテロポリオキソメタレート化合物を得ること、さらにはその製造方法を確立するには工夫の余地があった。
【0003】
ヘテロ元素がケイ素であるヘテロポリオキソメタレートの二欠損構造部位にTiを導入した二置換型ポリオキソメタレートが開示されており、該化合物は二欠損型ポリオキソメタレートに二個のTiが二個の酸素原子を介して二量化した構造であることがX線結晶構造解析により明らかにされている(非特許文献2参照)。しかしながら、Sc、Y、Zr、Hf、Nb、Ta、Crより選ばれる少なくとも一種の元素を欠損部位に組み込んだヘテロポリオキソメタレート化合物多量体は開示されておらず、その製造方法の確立と該化合物の構造を明確にすることに工夫の余地があった。
【0004】
二欠損型及び/又は三欠損構造部位を有するヘテロポリオキソメタレートアニオンと、バナジウム、タンタル、ニオブ、アンチモン、ビスマス、クロム、モリブデン、セレン、テルル、レニウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、白金、イリジウム、銀、金、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、ゲルマニウム、スズおよびランタノイドからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む触媒により、エチレン性二重結合を酸化剤により酸化させて、目的のエポキシ化合物を得ることが開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crより選ばれる少なくとも一種の元素を欠損部位に導入した触媒では、エポキシ化反応における生成物の収率が、調製した触媒ごとに異なる現象がしばしば見られ、ヘテロポリオキソメタレート化合物の構造に何らかの相違があるものと考えられたことから、その製造方法の確立と該化合物の構造を明確にすると共に、ヘテロ元素をケイ素やリンからゲルマニウムに変えることにより更に触媒活性を高めることに工夫の余地があった。
【0005】
二欠損型ポリオキソメタレートに、希土類、4族、5族、6族、7族、および9、10族のニッケル、パラジウム、イリジウム、白金からなる群から選ばれた元素を欠損部位に導入し、エチレン性二重結合を酸素により酸化させて、目的のエポキシ化合物を得ることが開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、ヘテロ元素がリンやゲルマニウムであるヘテロポリオキソメタレート化合物は開示されていない上、目的のエポキシ化合物の収率および選択率は極めて低く、工業レベルでエポキシ化合物を製造することができるようにするために触媒であるヘテロポリオキソメタレート化合物の改良には工夫の余地があると共に、開示されたヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法では所望の元素が欠損部位に導入できない場合があることが分かった。
【0006】
【非特許文献1】Y.Nishiyama、Y.Nakagawa、N.Mizuno、「アンゲバンテ ヘミー インターナショナル エディション(Angew.Chem.Int.Ed.)」(独国)、2001年、第40巻、p.3639。
【0007】
【非特許文献2】Y.Goto、K.Kamata、K.Yamaguchi、K.Uehara、S.Hikichi、N.Mizuno、「インオーガニック ケミストリー(Inorg.Chem.)」(米国)、2006年、第45巻、p.2347。
【0008】
【特許文献1】国際公開第02/072257号公報明細書
【特許文献2】日本国特許公開第2003−64007号公報明細書このように、二欠損型ヘテロポリオキソメタレート化合物の欠損部位に遷移金属元素を導入することができることは広く知られているものの、前周期遷移金属元素、特にSc、Y、Zr、Hf、Nb、Ta、Crより選ばれる少なくとも一種の元素を導入したヘテロポリオキソメタレート化合物の合成方法はその困難さから未だ確立されておらず、構造も明確に同定されていなかった。また、ヘテロ元素がゲルマニウムである二欠損型ヘテロポリオキソメタレート化合物の欠損部位にVを導入したヘテロポリオキソメタレート化合物や、ヘテロ元素がリンである二欠損型ヘテロポリオキソメタレート化合物の欠損部位にVを導入したヘテロポリオキソメタレート化合物、特に対カチオンがアルキルアンモニウム塩のカチオンであり、有機溶媒中での酸化反応において分解することなく高活性を発現するV二置換型ヘテロポリオキソメタレート化合物はこれまで合成例がなく、その酸化触媒活性も明らかにされていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、酸化反応や酸塩基反応等の有機反応や機能性材料等に好適に適用することができる化合物として、二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるSc、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crより選ばれる少なくとも一種の元素(B)が、元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比で導入されていること特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、酸化反応や酸塩基反応等の有機反応や機能性材料等として工業的に有用なヘテロポリオキソメタレート化合物に着目し鋭意検討を重ねた結果、これまでの製造方法では、生成した化合物が仕込みの上記元素(B)が二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に全て導入されていない構造、すなわち、元素(B)/ヘテロ原子≦1であることを明らかになった。同時に、上記元素(B)を元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比で導入した新規な構造を有する化合物及びその製造方法を見出し、上記課題を見事に解決できることに想到した。
また、本発明者らは、ヘテロポリオキソメタレート化合物について更に検討を重ねた結果、二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオンの欠損部位にV元素が置換した構造を有する新規なヘテロポリオキソメタレート化合物、及び、ヘテロ原子がリンである新規なヘテロポリオキソメタレート化合物を見出し、本発明に到達したものである。
【0011】
すなわち本発明は、ヘテロ原子がケイ素、リンもしくはゲルマニウムであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン、バナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、Sc、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crより選ばれる少なくとも一種の元素(B)を、元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比で導入することを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物である。
【0012】
本発明はまた、ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物であって、上記ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ヘテロ原子がリン又はゲルマニウムであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるV元素(B)が導入されたヘテロポリオキソメタレート構造を有することを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物でもある。
【0013】
本発明はまた、ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物であって、上記ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ヘテロ原子がリンであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるV、Sc、Y、Zr、Hf、Nb、Ta及びCrより選ばれる少なくとも一種の元素(B)が導入されたヘテロポリオキソメタレート構造を有することを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物でもある。
【0014】
さらに本発明は、前記へテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、γ型のケギン型へテロポリオキソメタレートアニオンであることを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物であることが好ましいものである。
【0015】
本発明は、前記ヘテロポリオキソメタレート化合物を製造する方法であって、へテロポリオキソメタレートアニオン(A)を有する化合物と元素(B)を有する化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法でもある。
【0016】
本発明はまた、前記ヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として使用する方法であって、酸化反応用触媒、及び/又は、酸塩基反応用触媒として用いることを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物の使用方法でもある。
【発明の効果】
【0017】
本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物は、上述の構成よりなり、これまでの製造方法では合成できなかったヘテロポリオキソメタレート化合物であり、(1)酸化還元性、(2)電気陰性度、(3)磁性、(4)双極子モーメント、(5)酸塩基性、(6)構造といった、物性・性質・構造・触媒活性等の面で、従来のヘテロポリオキソメタレート化合物では成し得なかった性能の発現が期待され、その結果、酸化反応や前周期金属元素の導入により発現するルイス酸性を利用した酸塩基反応等の有機反応用触媒や特異な構造を利用した機能性材料等に適用できる可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物は、二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるSc、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crより選ばれる少なくとも一種の元素(B)が、元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比で導入されていることを特徴とする(以下、第1の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物と表記する。)。
本発明の第1の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物における上記元素(B)と上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)との形態としては、元素(B)がヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の二欠損部位に導入されることになる。二欠損部位に導入されるとは、元素(B)が欠損部位に組み込まれる形態、すなわち、あるべきポリ原子が元素(B)により置換された形態であってもよいし、特に元素(B)のイオン半径が大きい場合には、二欠損部位に元素(B)が組み込まれることなく、配位した形態であってもよい。好ましくは、元素(B)が二欠損部位に組み込まれる形態である。この場合、元素(B)が互いに隣接していることが好ましい。元素(B)が互いに隣接する異性体としては、α、β、γ、δ、ε体等が存在するが、α、β体は角を共有した異性体であり、γ、δ、ε体は稜を共有した異性体である。より好ましくは、β体及び/またはγ体の二欠損ケギン型ポリオキソメタレートアニオンの骨格中に元素(B)が組み込まれた形態であり、この中でも最も好ましくはγ体の二欠損ケギン型ポリオキソメタレートアニオンに組み込まれた形態である。ヘテロポリオキソメタレート化合物は単量体であっても多量体であってもよい。単量体とは、単位構造中にヘテロポリオキソメタレートアニオン部位が一個含まれることを意味し、多量体とは単位構造中にヘテロポリオキソメタレートアニオン部位が複数個含まれることを意味する。このようなヘテロポリオキソメタレート化合物の構造は、X線結晶構造解析、元素分析、UVやFT−IR分光測定等から決定または推定される。
【0019】
本発明の第1の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物は一般に塩を形成しており、該塩を製造する際のカチオン源としては、無機塩でも有機塩でも良いが、中でも酢酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類塩、プロトン塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩等が好適であり、例えば、上記へテロポリオキソメタレートアニオン(A)と上記元素(B)が共存する液に、該塩を粉体のまま、もしくは溶液として添加して、上記へテロポリオキソメタレート化合物の製造を行うことになる。上記へテロポリオキソメタレートアニオン(A)や上記元素(B)が元々持つカチオンを利用してもよい。
【0020】
本発明の第1の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物における元素(B)の合計含有量としては、化合物中のヘテロ原子1個に対して1個を超えることが好ましい。より好ましくは、1.2個以上であり、更に好ましくは、1.5個以上である。また、5個以下であることが好ましい。より好ましくは3個以下であり、更に好ましくは、2.5個以下である。
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、結晶構造中で、あるべきポリ原子が二つ欠けている二欠損構造部位を有するヘテロポリオキソメタレートアニオンであって、ヘテロ原子がケイ素、リン、もしくはゲルマニウムであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン、バナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上のものである。このようなヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、ヘテロ原子に酸素を介してポリ原子が10個配位したケギン型と呼ばれる結晶構造を有するものである。
【0021】
本発明の第1の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物におけるヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、下記一般式(1)で表されるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンであることが好ましい。
一般式(1)
[QM10k− (1)
ここで、一般式(1)において、Qはヘテロ原子であるケイ素、リン、もしくはゲルマニウム原子を表す。Mはポリ原子を表す。jとkは正数であり、kはQとMの価数によって決まる。より好ましくは、Mがタングステンであるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンである。更に好ましくは、Qがケイ素であり、Mがタングステンであるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンである。
また、ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンは、その異性体構造がβ体及び/またはγ体であるものが好ましい。より好ましくは、Qがケイ素又はゲルマニウムである[β−SiW10368−及び/または[γ−SiW10368−、または、[β−GeW10368−及び/または[γ−GeW10368−である。
更に好ましくは、[γ−SiW10368−または[γ−GeW10368−であり、最も好ましくは、Qがケイ素である[γ−SiW10368−である。
【0022】
本発明の第1の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物で用いるヘテロポリオキソメタレートアニオンは二欠損型であるが、本発明の作用効果を有する限り、一欠損型または三欠損型のものを含んでいても良い。
ヘテロポリオキソメタレートアニオンの塩を形成する対カチオンとしては、例えば、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類カチオン、亜鉛イオン、ランタニドイオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、錫イオン、鉛イオン、鉄イオン等の遷移金属イオンや、第四級アンモニウム塩(アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリラウリルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩)、第四級ホスホニウム塩(テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩)等の有機カチオンが好適である。カチオンは一種類または二種類以上用いることができる。
上記元素(B)は、Sc、Y、Zr、V、Hf、Nb、Ta、Crより選ばれる少なくとも一種の元素であるが、用いる用途により適宜選択することができる。より好ましくは、Zr、V、Hf、Nb、Crであり、更に好ましくは、Zr、V、Hfである。また、元素(B)を導入したヘテロポリオキソメタレート化合物の混合物や、異種元素を導入したヘテロポリオキソメタレート化合物を合成する場合には、上記元素(B)より選ばれる元素を二種以上使用しても良い。
【0023】
上記元素(B)を導入する際に使用する形態としては塩の形態でも、酸化物等の形態でも良い。塩としては、無機塩でも有機塩でも良いが、中でも酢酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物塩、ナトリウム塩、カリウム塩、プロトン塩、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等が好適である。導入する上記元素(B)を含む多核錯体のような複合型の塩を用いることも可能である。
合成に使用する上記元素(B)を含む塩のモル量としては、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)1モルに対して、1モルより多いことが好ましい。より好ましくは1.1モル以上であり、更に好ましくは、1.5モル以上である。また、8モル以下であることが好ましい。より好ましくは3モル以下であり、更に好ましくは、2.5モル以下である。
上記二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)と元素(B)は、元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比で導入されているが、本発明の作用効果を有する限り、元素(B)/ヘテロ原子≦1のものを含んでいても良い。ヘテロポリオキソメタレート化合物は、元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比の化合物を少なくとも10%以上含み、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上を含むものである。
【0024】
本発明はまた、ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物であって、該ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ヘテロ原子がリン又はゲルマニウムであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるV元素(B)が導入されたヘテロポリオキソメタレート構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物でもある(以下、第2の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物と表記する。)。
【0025】
本発明の第2の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物において、前周期遷移金属であるV元素(B)とヘテロ原子(A)とのモル比は特に制限されないが、元素(B)/ヘテロ原子>1の関係を満たすモル比でV元素が導入されたものであることが好ましい。このようなモル比を満たすものであると、酸素原子を介したV二置換型ヘテロポリオキソメタレート化合物を実現することができ、二つのV元素と架橋酸素原子が協同的かつ特異的に作用することが可能となる。
なお、この場合、本発明の作用効果を有する限り、元素(B)/ヘテロ原子≦1のものを含んでいても良い。ヘテロポリオキソメタレート化合物は、元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比の化合物を少なくとも10%以上含むものが好ましい。より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上含むものである。最も好ましくは70%以上を含むものである。
【0026】
上記第2の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物における元素(B)とヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)との形態は、上述した第1の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物と同様である。したがって、元素(B)がヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の二欠損部位に導入されることになる限り、あるべきポリ原子が元素(B)により置換された形態であってもよいし、二欠損部位に元素(B)が組み込まれることなく、配位した形態であってもよいが、元素(B)が二欠損部位に組み込まれる形態であることが好ましく、この場合、元素(B)が互いに隣接していることが好ましい。より好ましくは、β体及び/またはγ体の二欠損ケギン型ポリオキソメタレートアニオンの骨格中に元素(B)が組み込まれた形態であり、最も好ましくはγ体の二欠損ケギン型ポリオキソメタレートアニオンに組み込まれた形態である。
また、ヘテロポリオキソメタレート化合物は、単量体であっても多量体であってもよい。
【0027】
上記第2の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物におけるヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、上記一般式(1)で表されるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンであることが好ましい。上記一般式(1)におけるQは、ゲルマニウムであることが好ましい。すなわち、第2の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物は、ヘテロ原子がゲルマニウムであることが好ましい。上記一般式(1)におけるポリ原子Mは、タングステン、モリブデンであることが好ましい。より好ましくは、タングステンである。
第2の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物として、特に好ましくは、その異性体構造がβ体及び/またはγ体である[β−GeW10368−及び/または[γ−GeW10368−である。最も好ましくは、[γ−GeW10368−である。
【0028】
上記ヘテロ原子がゲルマニウムであり、二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるV元素(B)が導入されたヘテロポリオキソメタレート構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物は、アルカン酸化反応等の、これまで高収率を達成することが困難だった反応にも触媒として高い活性を示すものとなり、酸化反応用触媒として好適に用いることができるものとなる。
このような、本発明の第2の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物であって、ヘテロ原子がゲルマニウムであるものを必須とする酸化反応用触媒もまた、本発明の1つである。
【0029】
本発明の第2の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物におけるカチオン源となる対カチオンの種類、ヘテロポリオキソメタレート化合物における元素(B)合計含有量並びに元素(B)を導入する際の形態並びに合成に使用する元素(B)を含む塩のモル量は、上述した第1の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物と同様である。
【0030】
本発明はまた、ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物であって、該ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ヘテロ原子がリンであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるV、Sc、Y、Zr、Hf、Nb、Ta及びCrより選ばれる少なくとも一種の元素(B)が導入されたヘテロポリオキソメタレート構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物でもある(以下、第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物と表記する。)。
【0031】
本発明の第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物において、前周期遷移金属である元素(B)とヘテロ原子(A)とのモル比は特に制限されないが、元素(B)/ヘテロ原子>1の関係を満たすモル比で元素(B)が導入されたものであることが好ましい。このようなモル比を満たすものであると、酸素原子を介した元素(B)二置換型ヘテロポリオキソメタレート化合物を実現することができ、二つの元素(B)と架橋酸素原子が協同的かつ特異的に作用することが可能となる。
なお、この場合、本発明の作用効果を有する限り、元素(B)/ヘテロ原子≦1のものを含んでいても良い。ヘテロポリオキソメタレート化合物は、元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比の化合物を少なくとも10%以上含むものが好ましい。より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上である。最も好ましくは70%以上を含むものである。
【0032】
上記第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物は、元素(B)がV、Zr、Hf、Nb、Ta及びCrより選ばれる少なくとも一種の元素であることが好ましい。より好ましくは、V、Zr、Nb及びCrである。更に好ましくは、Vである。
ヘテロポリオキソメタレート化合物における元素(B)の合計含有量、元素(B)を導入する際に使用する形態、及び、合成に使用する元素(B)を含む塩のモル量は、上述した第1の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物と同様である。
また、第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物におけるカチオン源となる対カチオンの種類は、上述した第1の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物と同様である。
【0033】
上記第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物における元素(B)とヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)との形態は、上述した第1の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物と同様である。したがって、元素(B)がヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の二欠損部位に導入されることになる限り、あるべきポリ原子が元素(B)により置換された形態であってもよいし、二欠損部位に元素(B)が組み込まれることなく、配位した形態であってもよいが、元素(B)が二欠損部位に組み込まれる形態であることが好ましく、この場合、元素(B)が互いに隣接していることが好ましい。より好ましくは、β体及び/またはγ体の二欠損ケギン型ポリオキソメタレートアニオンの骨格中に元素(B)が組み込まれた形態であり、最も好ましくはγ体の二欠損ケギン型ポリオキソメタレートアニオンに組み込まれた形態である。
【0034】
上記第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物におけるヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、上記一般式(1)で表されるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンであることが好ましい。この場合、上記一般式(1)におけるQは、リンである。上記一般式(1)におけるポリ原子Mは、タングステン、モリブデンであることが好ましい。より好ましくは、タングステンである。
第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物として、特に好ましくは、その異性体構造がβ体及び/またはγ体である[β−PW10367−及び/または[γ−PW10367−である。最も好ましくは、[γ−PW10367−である。
【0035】
本発明の第1、2及び3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物は、へテロポリオキソメタレートアニオン(A)に対する対カチオンがアルキルアンモニウム塩のカチオンであることが好ましい。アルキルアンモニウム塩としては、炭素原子数4〜48のものが好ましい。より好ましくは、4〜40である。
アルキルアンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリラウリルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩が好ましい。より好ましくは、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩である。
【0036】
上記第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物において、対カチオンとしてアルキルアンモニウム塩のカチオンを用いると、過酸化水素により分解する従来のリン中心ポリオキソメタレート化合物と異なり、過酸化水素によっても分解しない安定なリン中心ポリオキソメタレート化合物が得られる。また、有機溶媒にも溶解することができるようになるため、この化合物は、エポキシ化反応等の酸化反応に高活性を示す触媒として好適に用いることができる。更に、有機溶媒に溶解しない場合においても、不均一系触媒として分解することなく、エポキシ化反応等の酸化反応に高活性を示す触媒として好適に用いることができ、対カチオンとしてアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩のカチオンを用いて不均一系触媒を使用した場合には、その活性が非常に低いことと大きく異なっている。これは、アルキルアンモニウム塩のカチオンを用いたヘテロポリオキソメタレート化合物がチャネル構造を形成し、表面積が劇的に向上すると共に、基質や溶媒等がその中に入り込むことができるためと考えられ、X線結晶構造解析等により確認することができる。またチャネル構造の構築や保持を目的として、反応に不活性な〔(CN〕〔γ−SiW1240〕等を系に共存させることもできる。
このような、上記第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物であって、対カチオンがアルキルアンモニウム塩のカチオンであるものを必須とする酸化反応用触媒もまた、本発明の1つである。
以下においては、本発明の第1、第2、及び、第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物をまとめて本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物と表記する。
【0037】
本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法は、上記へテロポリオキソメタレートアニオン(A)に上記元素(B)を導入する際に、(A)および(B)が共存する液のpHを0.1〜7.5に設定する工程を含むことを特徴とし、また、(A)および(B)を液中で7分間以上共存させる工程を含むことを特徴とする。7分間以上共存させなければ、上記元素(B)が上記へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損部位に完全に導入されない可能性がある。
上記元素(B)の添加としては、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)を含む溶液または混合液中に、元素(B)の塩または化合物を、粉体のままもしくは溶液として添加して行うことが好ましいが、(A)と同時に添加するか、または先に溶媒中に溶解された状況で行っても良い。元素(B)の塩または化合物の添加は、一括添加しても良いし、徐々に添加しても良い。へテロポリオキソメタレート化合物の製造は、一回の工程で行っても、複数回に分けて行っても良い。例えば、(B)の所定量のうちの一部を残した状態でいったん生成物を取り出し、再度生成物を溶媒に再溶解した後、残りの(B)を添加する方法でもよい。
【0038】
pHとしては、0.1〜7.5の範囲が良く、好ましくは0.15〜6.0であり、より好ましくは、0.2〜3.5であり、更に好ましくは、0.25〜2.9である。pHの設定は、上記へテロポリオキソメタレート化合物の構造を決定する重要な要素の一つであり、上記元素(B)の種類によって上記の範囲内で適宜選定すればよい。上記元素(B)の添加に伴いpHが変化する場合には、酸もしくは塩基により適宜最適値に設定することもできる。
【0039】
ヘテロポリオキソメタレート化合物製造時に使用する溶媒としては、特に限定されるものではないが、水や含水有機溶媒および有機溶媒を用いることができる。有機溶媒は水に溶解するものでも溶解しないものでも良いが、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノール、クロロホルム等が好適である。より好ましくは、水である。
【0040】
上記溶媒の体積は、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)1ミリモルに対して、0.5mL以上であることが好ましい。より好ましくは1mL以上であり、更に好ましくは1.5mL以上である。また、300mL以下であることが好ましい。より好ましくは200mL以下であり、更に好ましくは、180mL以下である。
上記溶媒の液温は、0℃以上120℃以下が好ましい。より好ましくは、5℃以上75℃以下であり、更に好ましくは、10℃以上50℃以下である。
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)への二種類の上記元素(B)の導入は、上記(A)と上記(B)を7分間以上共存させることになる。より好ましくは、10分以上であり、更に好ましくは、20分以上である。また、48時間以内であることが好ましい。より好ましくは、24時間以内である。7分間以上共存させるとは、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)0.34ミリモルを使用した時に、主に均一系溶液中で上記元素(B)と共存させる時間を意味し、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)を含む溶液または混合液中に、元素(B)を含む塩または化合物を添加し終えた時点から、上記無機塩や有機塩の添加等により、上記へテロポリオキソメタレート化合物を析出させる時点までの間の時間を指す。上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の使用ミリモル数(0.34 x nミリモル)(nは正数)により、例えば0.68ミリモル使用時には14分間共存させるといった具合に、共存時間を適宜n倍とする方が好ましい。共存中に不純物等の沈殿が発生した場合は、必要に応じて取り除くことができる。共存させる時間の設定は、上記へテロポリオキソメタレート化合物の構造を決定する重要な要素の一つであり、上記元素(B)の種類によって上記の範囲内で適宜選定すればよい。へテロポリオキソメタレート化合物は、再結晶等により精製することが可能である。ただし、上記元素(B)がVである場合にはこの限りではなく、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の使用ミリモル数にかかわらず、7分間以上共存させればよい。
【0041】
本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物を、例えば触媒として利用する場合、気相・液相・超臨界相等いずれの反応場においても使用することができる。その使用形態としては、気相反応で用いる場合、触媒自体を固体として反応を行う形態や触媒を担体に担持して反応を行う形態が可能である。触媒担体としては、各種イオン交換樹脂、シリカ、アルミナ、チタニア、シルコニア、酸化錫や他の酸化物等の一般的に気−固反応に使用される担体を用いることができる。
【0042】
触媒自体を固体として使用する場合、上述した第1又は第2の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物を用いる場合には、好ましい対カチオンは、プロトン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ランタニドイオン、鉄イオン、錫イオン、銅イオン、パラジウムイオン、白金イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、チタンイオン、ジルコニウムイオン、バナジウムイオン、ニオブイオン、クロムイオン、マンガンイオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、イリジウムイオン、インジウムイオン、アルキルアンモニウムイオンである。上述した第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物を用いる場合には、対カチオンとしてアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。
【0043】
液相反応で用いる場合には、触媒を溶解させて均一系で反応させる形態、触媒を溶媒に溶解させずに液相に懸濁させて反応を行う形態が挙げられる。触媒を固相として反応を行うことも可能である。この時、対カチオンを変更することで触媒自体を固体として使用することができ、反応後の触媒と生成物の分離が容易になる。
【0044】
また、触媒を担体に担持することによっても、触媒を固相として使用することができる。触媒担体としては、各種イオン交換樹脂、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫や他の酸化物等の一般的に不均一系反応に使用される担体を用いることができる。均一系及び/または不均一系で反応を行うに際し、好ましい対カチオンは、上述した第1又は第2の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物を用いる場合には、プロトン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ランタニドイオン、鉄イオン、錫イオン、銅イオン、パラジウムイオン、白金イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、チタンイオン、ジルコニウムイオン、バナジウムイオン、ニオブイオン、クロムイオン、マンガンイオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、イリジウムイオン、インジウムイオン、並びに、テトラブチルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、メチルトリセチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩等のアルキルアンモニウム塩のイオンであり、一種類または二種類以上用いることができる。上述した第3の形態のヘテロポリオキソメタレート化合物を用いる場合には、対カチオンとしてテトラブチルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、メチルトリセチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩のイオンを用いることが好ましい。
【0045】
本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物は、種々の酸化反応や酸塩基反応等の有機反応用触媒として適用することができるものであるが、中でも酸化反応や酸塩基反応を液相で行う際に好適に適用することができるものである。
【0046】
上記酸化反応の具体例としては特に限定されず、例えば、(1)不飽和結合の酸化(アルケンやアルキンの不飽和二重結合や不飽和三重結合の酸化)、(2)水酸基の酸化、(3)ヘテロ原子の酸化(硫黄原子や窒素原子等の酸化)、(4)飽和炭化水素部位の酸化、(5)芳香環の酸化、(6)これら(1)〜(5)以外の酸化カップリング反応等の酸化反応等が挙げられる。このような酸化反応により被酸化性官能基が酸化され、酸化された有機化合物が製造されることになる。
【0047】
本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物は、上述した中でも、液相での不飽和結合の酸化や飽和炭化水素部位の酸化触媒として好適である。以下では、本発明の好ましい実施形態として上記触媒を用い、酸化剤により酸化して含酸素有機化合物の製造を行う場合における反応基質、酸化剤、製造条件等について説明する。
【0048】
本発明において使用する反応基質としては、非環式であっても環式有機化合物であってもよく、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、アダマンタン等のアルカン類;プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、イソプレン、ジイソブチレン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、プロピレンのトリマーおよびテトラマー類、1,3−ブタジエン等の末端にエチレン性二重結合を有するアルケン;2−ブテン、2−オクテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン等の分子内部にエチレン性二重結合を有するアルケン;シクロペンテン、シクロヘキセン、1−フェニル−1−シクロヘキセン、1−メチル−1−シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロペンタジエン、シクロデカトリエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、メチレンシクロプロパン、メチレンシクロペンタン、メチレンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の環式アルケン;トルエン、エチルトルエン、ジエチルトルエン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、イソプロピルエチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、プロピルベンゼン、4,4’−ジメチルビフェニル、4−t−ブチル−1−メチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン等の側鎖を持つ芳香族化合物;ベンゼン等が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、アダマンタン、炭素数3〜12のアルケン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレン、ベンゼンが好適である。基質の種類としては、一種類または二種類以上用いることができる。
【0050】
上記反応基質はまた、例えば、−CHO、−COOH、−CN、−COOR、−OR(Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリルアルキル置換基を表す)等の官能基や、アリール基、アリルアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボニル基、水酸基等を有していても良い。
【0051】
このような化合物としては、例えば、アリルメチルエーテル、アリルビニルエーテル、ジアリルエーテル、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、桂皮アルコール、クロチルアルコール、ペンテノール、ヘキセノール、シクロヘキセノール、ヘプテノール、オクテノール、アクロレイン、桂皮アルデヒド、クロチルアルデヒド、ペンテナール、ヘキセナール、オクテナール等が挙げられる。
【0052】
上記酸化反応における酸化剤としては、例えば、酸素イオンや酸素ラジカル、ペルオキシドやスーパーペルオキシドを生成しうるものを用いることができ、例えば、分子状酸素、過酸化水素やクメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、過酢酸等の有機過酸化物、酸素と水素の混合ガス、酸素と水素と窒素の混合ガス、一酸化二窒素、ヨードシルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、分子状酸素や過酸化水素が好適である。
【0053】
分子状酸素を酸化剤として使用する場合、酸素圧力は0.0001atm以上、150atm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.01atm以上、50atm以下である。過酸化水素を酸化剤として使用する場合、過酸化水素の使用形態としては、実用的には0.01〜70質量%の水溶液、アルコール類の溶液が好適であるが、100%の過酸化水素も使用可能である。使用量としては、反応基質と過酸化水素のモル比(反応基質のモル数/過酸化水素のモル数)が1000/1以下となるようにすることが好ましく、より好ましくは100/1以下である。また、1/1000以上となるようにすることが好ましく、より好ましくは、1/500以上である。
【0054】
上記ヘテロポリオキソメタレート触媒の使用量としては、反応基質1モルに対して、0.000000001モル以上とすることが好ましく、また、10000モル以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.0000001モル以上であり、また、5000モル以下である。また、触媒の種類としては、一種類または二種類以上用いることができる。
【0055】
上記反応方法としては、上記反応基質および酸化剤に酸化反応用触媒を接触させることにより反応を行うことが好ましい。気相反応もしくは液相反応のいずれの反応方法にも、本発明の酸化反応用触媒を使用することが可能であるが、基質と酸化剤を溶媒に溶解させて液相中で反応を行うことが反応活性の面でより好ましい。
【0056】
上記反応を液相中で行う場合、用いる溶媒としては、水および/または有機溶媒であり、有機溶媒としては一種類または二種類以上用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルまたはイソプロパノール、第三級ブタノール等の炭素数1〜6の第一、二、三級の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキシド、プロピレンオキシドが開環したオリゴマー類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の窒素化合物、リン酸トリエチル、リン酸ジエチルヘキシル等のリン酸エステル等のリン化合物、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
【0057】
上記溶媒の中でも、水、炭素数1〜6のアルコール類、ジクロロメタン、ヘプタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等や、これらの混合物を用いることが好ましい。なお、反応基質化合物が反応条件で液体の場合には、上記溶媒を使用することなくニートで反応を行うことも可能である。
【0058】
上記反応における反応系は、中性〜酸性であることが好ましく、反応系中に酸性物質を加えても良い。酸性物質としては、例えば、ブレンステッド酸、ルイス酸等が挙げられ、一種または二種以上を用いることができる。ブレンステッド酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸や酢酸、安息香酸、蟻酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、ゼオライト類、混合酸化物類等の無機酸類が好適であり、ルイス酸としては、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化ホウ素化合物、塩化第二錫、フッ化アンチモン、塩化亜鉛、チタン化合物、ゼオライト類、混合酸化物等が好適である。更に無機、有機酸性塩を用いることもできる。
【0059】
上記反応における反応系において水が存在する場合には、場合によっては相間移動触媒や界面活性剤を共存させることができる。また光照射下での反応を行うことも可能である。
【0060】
上記反応における反応条件としては、例えば、反応温度は、液相反応の場合には、0℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上である。また250℃以下が好ましく、より好ましくは、180℃以下である。反応時間は、数分以上が好ましく、また150時間以内が好ましい。より好ましくは、48時間以内である。反応圧力は、常圧以上が好ましく、また、150atm以下が好ましい。より好ましくは、50atm以下である。また、減圧下で反応を行うこともできる。気相反応の場合には、100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上である。また600℃以下が好ましく、より好ましくは、500℃以下である。反応時間は、数分以上が好ましく、また1000時間以内が好ましい。より好ましくは、800時間以内である。反応圧力は、常圧以上が好ましく、また、150atm以下が好ましい。より好ましくは、100atm以下である。
【0061】
上記反応において、本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として使用することにより、含酸素有機化合物を製造することができ、各種工業製品の製造において用いる中間体や原料として有用な化合物であるこれら化合物を供給するための製造方法として好適に適用することができる。
【0062】
上記酸塩基反応の具体例としては特に限定されず、例えば、(1)エステル化反応、(2)炭素骨格異性化反応、(3)重合反応、(4)付加反応、(5)開環反応、(6)脱離反応(7)アセタール化反応(8)ケタール化反応(9)芳香族求電子置換反応(10)芳香族求核置換反応(11)アルドール反応(12)ピナコール転移反応(13)ベックマン転移反応(14)カニッツァロ反応(15)クライゼン縮合反応(16)ダルゼンズ縮合反応(17)ディールズアルダー反応(18)フリーデルクラフツ反応(19)フリース転移反応(20)ガッターマン・コッホ反応(21)マンニッヒ反応(22)マイケル反応(23)プリンス反応(24)グリコシル化反応(25)加溶媒分解反応(26)1,3−双極性環状付加反応(27)エン反応やカルボニル−エン反応(28)これら(1)〜(27)以外の酸塩基反応等が挙げられる。このような酸塩基反応により、官能基や骨格が新しく構築された有機化合物の製造が可能となる。
【0063】
本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物は、上述した中でも、特に液相での不飽和結合のエン反応やカルボニル−エン反応等のシグマトロピー反応に対する酸塩基触媒として好適である。以下では、本発明の好ましい実施形態として上記触媒を用い、該反応を行う場合における反応基質、製造条件等について説明する。
【0064】
本発明において使用する反応基質としては、非環式であっても環式有機化合物であってもよく、分子間反応を起こすものであっても分子内反応を起こすものであってもよい。具体的には、エチレン性二重結合やアセチレン性三重結合を有するアルケン、カルボニル基含有化合物、及びその両方の官能基を持つ化合物等が挙げられる。これらの中でも、炭素数3〜24のアルケン、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、シトロネラール類等が挙げられる。
【0065】
上記ヘテロポリオキソメタレート触媒の使用量としては、反応基質1モルに対して、0.000000001モル以上とすることが好ましく、また、10000モル以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.0000001モル以上であり、また、5000モル以下である。また、触媒の種類としては、一種類または二種類以上用いることができる。
【0066】
上記反応方法としては、気相反応もしくは液相反応のいずれの反応方法にも、本発明の酸塩基反応用触媒を使用することが可能であるが、液相中で反応を行うことが好ましい。
反応を液相中で行う場合、用いる溶媒としては、一種類または二種類以上用いることができ、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルまたはイソプロパノール、第三級ブタノール等の炭素数1〜6の第一、二、三級の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキシド、プロピレンオキシドが開環したオリゴマー類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の窒素化合物、リン酸トリエチル、リン酸ジエチルヘキシル等のリン酸エステル等のリン化合物、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
【0067】
上記溶媒の中でも、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサン、ヘプタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等や、これらの混合物を用いることが好ましい。なお、反応基質化合物が反応条件で液体の場合には、上記溶媒を使用することなくニートで反応を行うことも可能である。
【0068】
上記反応における反応条件としては、例えば、反応温度は、液相反応の場合には、0℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上である。また250℃以下が好ましく、より好ましくは、180℃以下である。反応時間は、数分以上が好ましく、また150時間以内が好ましい。より好ましくは、48時間以内である。反応雰囲気は特に限定されるものではないが、空気、酸素、窒素、アルゴン等の雰囲気が好ましい。反応圧力は、常圧以上が好ましく、また、150atm以下が好ましい。より好ましくは、50atm以下である。また、減圧下で反応を行うこともできる。気相反応の場合には、100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上である。また600℃以下が好ましく、より好ましくは、500℃以下である。反応時間は、数分以上が好ましく、また1000時間以内が好ましい。より好ましくは、800時間以内である。反応圧力は、常圧以上が好ましく、また、150atm以下が好ましい。より好ましくは、100atm以下である。
【0069】
上記反応において、本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として使用することにより、含酸素有機化合物等を製造することができ、各種工業製品の製造において用いる中間体や原料として有用な化合物であるこれら化合物を供給するための製造方法として好適に適用することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものではない。pHの測定には、HORIBA製pHメーターF−22およびHORIBA製電極6366−10Dを使用した。上記pHは、水もしくは含水有機溶媒を溶媒として用いる場合には、その液温が25℃の時の値であり、また有機溶媒を溶媒として用いる場合には、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A) 1ミリモルを共存させた調製有機溶媒に水を1mL添加した液の温度が25℃の時の値である。X線結晶構造解析は、SHELXH−97を使用した。IRの測定にはJASCO FT/IR−460、X線の測定にはRIGAKU AFC−10 Saturn 70 CCD Detector、収率の測定にはSHIMADZU ガスクロマトグラフ GC−2014を使用した。ケイ素中心二欠損型ケギン型ポリオキソメタレートK[γ−SiW1036]・12HO、リン中心二欠損型ケギン型ポリオキソメタレートCs[γ−HPV1040]・6HO、ケイ素中心無欠損型ケギン型ポリオキソメタレート〔(CN〕[γ−SiW1240]は、以下の文献に従い合成した。
A.Teze、G.Herve、「インオーガニック シンセシーズ(Inorg.Synth.)」(米国)、1990年、第27巻、p.85。
ゲルマニウム中心二欠損型ケギン型ポリオキソメタレートK[γ−GeW1036]・6HOは、以下の文献に従い合成した。
N.H.Nsouli、B.S.Bassil、M.H.Dickman、U.Kortz、B.Keita、L.Nadjo、「インオーガニック ケミストリー(Inorg.Chem.)」(米国)、2006年、第45巻、p.3858。
[(CN][HSiV1040]・HOは、以下の文献に従い合成した。
Y.Nakagawa、K.Kamata、M.Kotani、K.Yamaguchi、N.Mizuno、「アンゲバンテ ヘミー インターナショナル エディション(Angew.Chem.Int.Ed.)」(独国)、2005年、第44巻、p.5136。
なお、「%」は、特に断りのない限り「モル%」を意味するものとする。
【0071】
(実施例1)H1246.5Cs4.5SiW10Zrの合成
[γ−SiW1036]・12HO 1.0g(0.34mmol)を水15mLに添加した。ここにZrCl2O・8H2O 0.23g(0.67mmol)を水5mLに溶かした溶液を加え、25℃で30分間攪拌した。この時の溶液のpHは2.3であった。不溶物を除去した後、CsCl 0.56g(3.3mmol)を添加して30分間攪拌し、吸引ろ過して沈殿物を回収した。収量:0.50g。X線結晶構造解析の結果を図1及び表1〜2に示した。
【0072】
(実施例2)H1246.5Cs4.5SiW10Hfの合成
[γ−SiW1036]・12HO 1.0g(0.34mmol)を水15mLに添加した。ここにHfCl2O・8H2O 0.26g(0.67mmol)を水5mLに溶かした溶液を加え、25℃で30分間攪拌した。この時の溶液のpHは2.6であった。不溶物を除去した後、CsCl 0.56g(3.3mmol)を添加して30分間攪拌し、吸引ろ過して沈殿物を回収した。収量:0.50g。X線結晶構造解析の結果を図2及び表3〜4に示した。
【0073】
(比較例1)H39SiW10CsZrの合成
[γ−SiW1036]・12HO 1.0g(0.34mmol)を水15mLに添加した。ここにZrCl2O・8H2O 0.23g(0.67mmol)を水5mLに溶かした溶液を加え、25℃で2−3分間攪拌した。この時の溶液のpHは2.3であった。CsCl 0.56g(3.3mmol)を添加して20分間攪拌し、吸引ろ過して沈殿物を回収した。収量:0.89g。FT−IR分析結果:(KBr)/cm−1: 3441, 1624, 1032, 999, 950, 919, 892, 868, 800, 736, 633, 570, 540, 484, 383, 362, 321, 290。X線結晶構造解析の結果を図3及び表5〜6に示した。
【0074】
(比較例2)H1143CsSiW10Hfの合成
[γ−SiW1036]・12HO 1.0g(0.34mmol)を水15mLに添加した。ここにHfCl2O・8H2O 0.26g(0.67mmol)を水5mLに溶かした溶液を加え、25℃で2〜3分間攪拌した。この時の溶液のpHは2.6であった。CsCl 0.56g(3.3mmol)を添加して30分間攪拌し、吸引ろ過して沈殿物を回収した。収量:0.62g。FT−IR分析結果:(KBr)/cm−1: 3441, 1623, 1027, 999, 952, 915, 899, 871, 801, 737, 633, 563, 542, 485, 399, 381, 362, 325。X線結晶構造解析の結果を図4及び表7〜8に示した。
【0075】
(実施例3)[(CN]〔γ−HGeV1040〕・2HOの合成
[γ−GeW1036]・6HO 15g(5.1mmol)を1M HCl水溶液53mLにすばやく溶解させた。ここに0.5M NaVO水溶液(20.3mL、10.2mmol)を加え、25℃で7分間攪拌した。この時の溶液のpHは0.4であった。不溶物を除去した後、RbCl 7.5g(62mmol)を添加した。吸引ろ過して沈殿物を回収し、冷水(10mL)で洗浄した。収量:8.3g。得られた化合物(4.0g)を0.05M HCl水溶液250mLに溶かし、臭化テトラブチルアンモニウム3.75g(11.6mmol)を加えて30分間攪拌した。吸引ろ過して黄色沈殿物を回収し、アセトニトリル(50mL)/水(1L)溶液を用いて再沈させた後、アセトン(250mL)で再結晶して減圧乾燥した。収量:2.45g。51V−NMR分析結果(CDCN):−545ppm。H−NMR分析結果(CDCN):5.02(2H)、3,14(32H)、1.63(32H)、1.39(32H)、0.98(48H)ppm。元素分析結果:(計算値)Ge:1.98、V:2.78、W:50.2 (実測値)Ge:1.94、V:2.75、W:49.7、HO:0.98。
【0076】
(実施例4)[(CHN]〔γ−HGeV1040〕の合成
[γ−GeW1036]・6HO 3.0g(1.0mmol)を1M HCl水溶液10.5mLにすばやく溶解させた。ここに0.5M NaVO水溶液(4.05mL、2.03mmol)を加え、25℃で7分間攪拌した。この時の溶液のpHは0.4であった。不溶物を除去した後、RbCl 1.5g(12mmol)を添加し、吸引ろ過して沈殿物を回収した。収量:1.2g。得られた化合物(1.0g)を0.1M HCl水溶液30mLに溶かし、臭化テトラメチルアンモニウム1.0g(6.5mmol)を加えて30分間攪拌した。吸引ろ過して黄色沈殿物を回収し、少量の冷水で洗浄した。この化合物(20mg)をニトロメタン(2.0mL)に溶かし、ここに1,4−ジオキサン(3.0mL)をゆっくり加えて7日間放置することにより単結晶を得た。51V−NMR分析結果(CDCN):−546ppm。CSI−MS分析結果(MeCN):m/z 3024{[(CHN][γ−HGeV1040]}。X線結晶構造解析の結果を図5及び表9〜10に示した。
【0077】
(実施例5)
[(CN]〔γ−HGeV1040〕・2HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=0.8mL/1.2mLに溶解させ、ここにシクロヘキサン(1mL、9.3mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて60℃で30分間攪拌した。収率(過酸化水素基準)はシクロヘキサノール(89%)、シクロヘキサノン(2.8%)であった。
【0078】
(実施例6)
[(CN]〔γ−HGeV1040〕・2HO(0.50μmol)をMeCN/t−BuOH=1.25mL/0.75mLに溶解させ、ここにシクロヘキサン(1mL、9.3mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて60℃で30分間攪拌した。収率(過酸化水素基準)はシクロヘキサノール(49%)、シクロヘキサノン(2.0%)であった。
【0079】
(実施例7)
[(CN]〔γ−HGeV1040〕・2HO(0.50μmol)をMeCN/t−BuOH=1.0mL/1.0mLに溶解させ、ここにシクロヘキサン(1mL、9.3mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて40℃で6時間攪拌した。収率(過酸化水素基準)はシクロヘキサノール(73%)、シクロヘキサノン(2.0%)であった。
【0080】
(実施例8)
[(CN]〔γ−HGeV1040〕・2HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=0.8mL/1.2mLに溶解させ、ここにアダマンタン(0.37mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて60℃で1時間攪拌した。収率(過酸化水素基準)は1−アダマンタノール(82%)、2−アダマンタノール(13%)、2−アダマンタノン(1.0%)、1,3−アダマンタンジオール(3.0%)であった。
【0081】
(実施例9)
[(CN]〔γ−HGeV1040〕・2HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=0.8mL/1.2mLに溶解させ、ここに1−オクタン(6.2mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて60℃で3時間攪拌した。収率(過酸化水素基準)は1−オクタノール(2.0%)、2−オクタノール(54%)、3−オクタノール(22%)、4−オクタノール(18%)、1−オクタナール(4.0%)であった。
【0082】
(実施例10)
[(CN]〔γ−HGeV1040〕・2HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=1.5mL/1.5mLに溶解させ、ここに7−オクテン−1−オール(0.10mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて20℃で24時間攪拌した。エポキシ化合物の収率(過酸化水素基準)は85%であった。この時、水酸基は酸化されず、エポキシ化合物の選択率は100%であった。
【0083】
(比較例3)
[(CN]〔γ−HSiV1040〕・HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=1.0mL/1.0mLに溶解させ、ここにシクロヘキサン(1mL、9.3mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて40℃で24時間攪拌した。収率(過酸化水素基準)はシクロヘキサノール(59%)、シクロヘキサノン(2.0%)であった。
【0084】
(比較例4)
[(CN]〔γ−HSiV1040〕・HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=1.5mL/1.5mLに溶解させ、ここに7−オクテン−1−オール(0.10mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて20℃で24時間攪拌した。エポキシ化合物の収率(過酸化水素基準)は79%であった。
【0085】
(実施例11)〔(CN〕[γ−HPV1040]・HOの合成
0.01M NaVO水溶液120mL(1.2mmol)に3MHClを加えてpHを2に調節し、続いてCs[γ−HPV1040]・6HO 3.8g(1.1mmol)を加えて溶解させた。濁りを濾過して取り除き、臭化テトラブチルアンモニウム1.8g(5.6mmol)を加えたところ、黄色沈殿が生成した。この沈殿をガラスフィルター上に取り出し、水400mLで洗浄し、真空下で1時間乾燥した。粗生成量は4.7gであった。この粗生成物150mgをアセトン15mLに溶かし、メンブレンフィルターで濾過してスクリュー瓶に入れた後、ジエチルエーテル雰囲気下で3日間静置した。黄色柱状結晶が生成し、結晶を回収・風乾した。収量:83mg(Cs塩からの収率60%)。51V−NMR分析結果(MeCN):−581ppm。
【0086】
(実施例12)〔(CN〕[γ−HPV1040]・2HO・2Cの合成
〔(CN〕[γ−HPV1040]・HO(216mg、60μmol)をアセトニトリル10mLに溶かした後、70%過塩素酸をアセトニトリルで希釈して調製した0.2MHClO(0.5mL、100μmol)を加えた。ここに臭化テトラエチルアンモニウム(76mg、360μmol)を加え、ジエチルエーテル20mLを加えたところ、黄色沈殿が生成した。上澄みをデカンテーションで除去し、沈殿をエーテルで洗浄した。この沈殿をアセトニトリル10mLに溶かし、ジオキサン20mLを加えた後、濁りを濾過して取り除き、溶液量が20mL程度になるまで空気下でアセトニトリルをゆっくり揮発させた。黄色針状結晶が生成し、結晶を回収・風乾した。収量:120mg(収率63%)。51V−NMR分析結果(MeCN):−578ppm。
X線結晶構造解析の結果を図6に示した。X線結晶構造解析結果:Pnma、a=28.8724(6)Å、b=14.2261(2)Å、c=16.3470(4)Å、R=0.059。V−V:3.144(7)Å。V−O−V架橋酸素のBVS:1.37(2個は等価)。
【0087】
(実施例13)
〔(CN〕[γ−HPV1040]・HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=0.8mL/1.2mLに溶解させ、ここにシクロヘキサン(1mL、9.3mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて60℃で60分間攪拌した。収率(過酸化水素基準)は、シクロヘキサノール(92%)、シクロヘキサノン(2.0%)であった。
【0088】
(比較例5)
[(CN]〔γ−HSiV1040〕・HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=0.8mL/1.2mLに溶解させ、ここにシクロヘキサン(1mL、9.3mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて60℃で4時間攪拌した。収率(過酸化水素基準)は、シクロヘキサノール(73%)、シクロヘキサノン(2.0%)であった。
【0089】
(実施例14)
〔(CN〕[γ−HPV1040]・HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=1.5mL/1.5mLに溶解させ、ここに7−オクテナール(0.10mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて20℃で4時間攪拌した。エポキシ化合物の収率(過酸化水素基準)は、90%であった。この時、アルデヒド基は酸化されず、エポキシ化合物の選択率は97%であった。
【0090】
(比較例6)
[(CN]〔γ−HSiV1040〕・HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=1.5mL/1.5mLに溶解させ、ここに7−オクテナール(0.10mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて20℃で24時間攪拌した。エポキシ化合物の収率(過酸化水素基準)は、80%であった。
【0091】
(実施例15)
〔(CN〕[γ−HPV1040]・HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=1.5mL/1.5mLに溶解させ、ここに1−オクテン(0.10mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて20℃で24時間攪拌した。エポキシ化合物の生成速度は、0.72mM/分であり、エポキシ化合物の収率(過酸化水素基準)は、96%であった。
【0092】
(比較例7)
〔(CN〕[γ−HSiV1040]・HO(5.0μmol)をMeCN/t−BuOH=1.5mL/1.5mLに溶解させ、ここに1−オクテン(0.10mmol)、30%過酸化水素水溶液(0.10mmol)を加えて20℃で24時間攪拌した。エポキシ化合物の生成速度は、0.39mM/分であり、エポキシ化合物の収率(過酸化水素基準)は、93%であった。
【0093】
(実施例16)
〔(CN〕[γ−HPV1040]・HO(4.0μmol)を酢酸エチル3.0mLに溶解させ、ここに1−オクテン(0.50mmol)、50%過酸化水素水溶液(0.50mmol)を加えて32℃で24時間攪拌した。この時、触媒は溶媒に溶解せず、系は不均一であった。エポキシ化合物の収率(過酸化水素基準)は、31%であった。
【0094】
(実施例17)
〔(CN〕[γ−HPV1040]・HO(4.0μmol)及び〔(CN〕[γ−SiW1240](20μmol)を酢酸エチル3.0mLに溶解させ、ここに1−オクテン(0.50mmol)、50%過酸化水素水溶液(0.50mmol)を加えて32℃で24時間攪拌した。この時、触媒は溶媒に溶解せず、系は不均一であった。エポキシ化合物の収率(過酸化水素基準)は、65%であった。
【0095】
(実施例18)(C1224Cs[(SiW1036{Hf(HO)}O(OH)]・7HOの合成
18−クラウン−6−エーテル0.85g(0.32mmol)を水10.0mLに溶かした。実施例2で合成したH1246.5Cs4.5SiW10Hf 0.42g(0.058mmol)を加え、50℃で30分間攪拌した後、水を減圧下留去した。化合物をジエチルエーテルでよく洗浄し、目的化合物を得た。収量:0.49g。元素分析結果:(計算値)C:13.86、H:2.63、Si:0.60、W:39.29、Hf:7.63 (実測値)C:13.56、H:2.67、Si:0.58、W:38.30、Hf:7.69。
【0096】
(実施例19)
ニトロメタン1.0mLに(C1224Cs[(SiW1036{Hf(HO)}O(OH)]・7HO(12.5μmol)、3−メチルシトロネラール(0.50mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、75℃で攪拌した。分子内カルボニル−エン反応が進行し、トランス体の環化生成物が91%、シス体の環化生成物が6%の収率で得られた。
【0097】
上述の実施例及び比較例から、次のように言えることが分かった。すなわち、元素(B)の一つとしてジルコニウムまたはハフニウムを用いた上記へテロポリオキソメタレートの製造において、従来の方法では比較例に示すように、元素(B)一個のみが一個のヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の二欠損構造部位に導入された後に二量化された構造(元素(B)/ヘテロ原子=1)である一方、本発明の方法では、二個の元素(B)が一個のヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の二欠損構造部位に導入された後に二量化された構造(元素(B)/ヘテロ原子>1)であることが明らかとなった。pHと(A)及び(B)を共存させる時間の選定が重要であることは明らかである。また、ゲルマニウム中心二欠損型ヘテロポロキソメタレートアニオン(A)に元素(B)としてVを二個導入したヘテロポリオキソメタレート化合物は、アルカンの酸化反応やアルケンのエポキシ化反応を温和な条件下で進行させる、非常に優れた酸化触媒と成り得ることが明らかとなり、その触媒活性はこれまで知られているケイ素中心二欠損型ヘテロポロキソメタレートアニオン(A)に元素(B)としてVを二個導入したヘテロポリオキソメタレート化合物触媒に比較して高いことが分かった。更に、これまで調製が困難であったリン中心二欠損型ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)に元素(B)としてVを二個導入した、対カチオンがアルキルアンモニウム塩のカチオンであるヘテロポリオキソメタレート化合物の調製方法を確立した。該化合物はアルカンの酸化反応やアルケンのエポキシ化反応を温和な条件下で進行させる、非常に優れた酸化触媒と成り得ることが明らかとなり、その触媒活性はこれまでに知られているケイ素中心二欠損型ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)に元素(B)としてVを二個導入したヘテロポリオキソメタレート化合物触媒に比較して高いことが分かった。
【0098】
本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物は、上述の構成からなり、二欠損型へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に元素(B)を導入した新しい構造を有する新規化合物である。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【0105】
【表7】

【0106】
【表8】

【0107】
【表9】

【0108】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物は、二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、元素(B)/ヘテロ原子>1を満たすモル比で導入した構造を有しており、酸化反応や酸塩基反応といった有機反応用触媒や、機能性材料として有効に利用することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】ケイ素中心γ−二欠損型へテロポリオキソメタレートアニオンの欠損構造部位に、二個のジルコニウム元素が組み込まれ、かつ、ジルコニウムが組み込まれたヘテロポリオキソメタレートアニオンが二量化したアニオン部分のX線結晶構造解析図である。
【図2】ケイ素中心γ−二欠損型へテロポリオキソメタレートアニオンの欠損構造部位に二個のハフニウム元素が組み込まれ、かつハフニウムが組み込まれたヘテロポリオキソメタレートアニオンが二量化したアニオン部分のX線結晶構造解析図である。
【図3】ケイ素中心γ−二欠損型へテロポリオキソメタレートアニオンの欠損構造部位に、一個のジルコニウム元素が組み込まれ、かつ、該ヘテロポリオキソメタレートアニオンが二量化したアニオン部分のX線結晶構造解析図である。この場合、一個のジルコニウム元素が、二個の異なるγ−二欠損型へテロポリオキソメタレートアニオンの欠損構造部位にそれぞれ組み込まれている。
【図4】ケイ素中心γ−二欠損型へテロポリオキソメタレートアニオンの欠損構造部位に、一個のハフニウム元素が組み込まれ、かつ、該ヘテロポリオキソメタレートアニオンが二量化したアニオン部分のX線結晶構造解析図である。この場合、一個のハフニウム元素が、二個の異なるγ−二欠損型へテロポリオキソメタレートアニオンの欠損構造部位にそれぞれ組み込まれている。
【図5】ゲルマニウム中心γ−二欠損型へテロポリオキソメタレートアニオンの欠損構造部位に、二個のバナジウム元素が組み込まれたアニオン部分のX線結晶構造解析図である。
【図6】リン中心γ−二欠損型ヘテロポリオキソメタレートアニオンの欠損構造部位に、二個のバナジウム元素が組み込まれたアニオン部分のX線結晶構造解析図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物であって、
該ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ヘテロ原子がケイ素、リン又はゲルマニウムであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるSc、Y、Zr、Hf、V、Nb、Ta及びCrより選ばれる少なくとも一種の元素(B)が、元素(B)/ヘテロ原子>1の関係を満たすモル比で導入されたヘテロポリオキソメタレート構造を有する
ことを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物。
【請求項2】
ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物であって、
該ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ヘテロ原子がリン又はゲルマニウムであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるV元素(B)が導入されたヘテロポリオキソメタレート構造を有する
ことを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物。
【請求項3】
ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物であって、
該ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ヘテロ原子がリンであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有へテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、前周期遷移金属であるV、Sc、Y、Zr、Hf、Nb、Ta及びCrより選ばれる少なくとも一種の元素(B)が導入されたヘテロポリオキソメタレート構造を有する
ことを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物。
【請求項4】
前記ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ヘテロ原子がゲルマニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘテロポリオキソメタレート化合物。
【請求項5】
前記ヘテロポリオキソメタレート化合物は、へテロポリオキソメタレートアニオン(A)に対する対カチオンがアルキルアンモニウム塩のカチオンである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のヘテロポリオキソメタレート化合物。
【請求項6】
前記ヘテロポリオキソメタレート化合物は、へテロポリオキソメタレートアニオン(A)がγ型のケギン型へテロポリオキソメタレートアニオンである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のヘテロポリオキソメタレート化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のヘテロポリオキソメタレート化合物を製造する方法であって、へテロポリオキソメタレートアニオン(A)を有する化合物と元素(B)を有する化合物とを反応させる工程を含む
ことを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として使用する方法であって、酸化反応用触媒、及び/又は、酸塩基反応用触媒として用いる
ことを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−23897(P2009−23897A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323905(P2007−323905)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】