説明

ベッセルを備えた作業車両の制御装置

【課題】ベッセルを備えた作業車両が、ベッセルを起立させたダンプ状態でトンネル等の狭い空間に進入する際に、ベッセルがトンネル壁等と接触、衝突する不具合を未然に防ぐことができる、ベッセルを備えた作業車両の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置(24)が、ベッセルがダンプ状態にあるか否かを検知するベッセル検知手段(26)と、警報ランプ(28)および警報ブザー(30)と、走行変速装置に変速信号を出力する変速レバーが操作されたときに、ベッセルがダンプ状態であることが検知されているときには、警報ランプおよび警報ブザーを作動させ、かつ走行変速装置への変速信号を最低速度段に固定する制御器(32)を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッセルを備えた作業車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプ状態と格納状態とに起伏可能なベッセルを備えた作業車両として、例えばトンネル掘削工事において、トンネル内の掘削土砂をベッセルに積載し、トンネルの外に搬出する、周知のアーティキュレート式ダンプトラックがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−186078号公報(第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したとおりの形態の従来のベッセルを備えた作業車両には、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0004】
すなわち、ベッセルを備えた作業車両は、トンネル工事のような現場において、トンネル内で土砂をベッセルに積載し、トンネル内を走行し、土砂をトンネルの外に搬出し、所定の場所においてベッセルを起立させダンプ状態にして土砂を放出し、空になったベッセルを格納状態に戻してトンネル内に進入し、土砂の積込現場に向けて走行する、一連の作業を繰返して遂行する。
【0005】
この一連の作業において、作業車両をトンネルのような狭い空間に進入させる場合、ベッセルがダンプ状態から格納状態に十分に戻されていないことに気付かずに、ベッセルを起立させた状態で車両を走行させ、ベッセルがトンネルの壁等に接触しないようにするために、オペレータは車両の運転操作に細心の注意を払う必要がある。また、変速装置の速度段の選択は自由で高速度段を選択することが可能であるので、ベッセルを格納状態に戻しながら車両をトンネルの入口に到達させる場合には、ベッセルがトンネル壁と接触しないように、さらに注意が必要になる。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、ベッセルを備えた作業車両が、ベッセルを起立させたダンプ状態でトンネル等の狭い空間に進入する際に、ベッセルがトンネル壁等と接触、衝突する不具合を未然に防ぐことができる、ベッセルを備えた作業車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記技術的課題を解決するベッセルを備えた作業車両の制御装置として、ダンプ状態および格納状態に起伏可能なベッセルがダンプ状態にあるか否かを検知するベッセル検知手段と、運転室に配設された警報ランプおよび警報ブザーと、走行変速装置に変速信号を出力する変速レバーが操作されたときに、ベッセル検知手段によってベッセルがダンプ状態であることが検知されているときには、該警報ランプおよび警報ブザーを作動させ、かつ走行変速装置への変速信号を最低速度段に固定する制御器と、を具備していることを特徴とするベッセルを備えた作業車両の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従って構成されたベッセルを備えた作業車両の制御装置は、ベッセルがダンプ状態にあるか否かを検知するベッセル検知手段と、運転室に配設された警報ランプおよび警報ブザーと、走行変速装置に変速信号を出力する変速レバーが操作されたときに、ベッセル検知手段によってベッセルがダンプ状態であることが検知されているときには、警報ランプおよび警報ブザーを作動させ、かつ走行変速装置への変速信号を最低速度段に固定する制御器を具備している。
【0009】
したがって、オペレータが変速レバーを操作し、車両をトンネル等の狭い空間に進入させる際に、ベッセルが起立したダンプ状態のときには、警報ランプおよび警報ブザーによってそのことがオペレータに知らされ、かつ車両を最低速度段で走行させるので、トンネル壁等と接触、衝突する不具合を未然に防ぐことができる。
【0010】
なお、本発明において「ダンプ状態」とは、ベッセルを車体に格納した「格納状態」からダンプ方向の位置に起立させた状態を意味し、必ずしもベッセルを一杯に起立させた状態のみを意味するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成されたベッセルを備えた作業車両の制御装置について、代表的な作業車両であるアーティキュレート式ダンプトラックにおける好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0012】
図2および図3を参照して、主として図2を参照して、先ずアーティキュレート式ダンプトラックの概要について説明する。全体を番号2で示すアーティキュレート式ダンプトラックは、運転室4および前車輪6を有した前車体8と、ダンプシリンダ10によりダンプ作動を自在に取付けられたベッセル12および2軸の後輪14,14を有した後車体16を備えている。
【0013】
前車体8と後車体16は、鉛直に延びる軸線Zを中心に屈折自在に連結されており、操向シリンダ18によって前車体8と後車体16は相対的に屈折され(図3(b)の状態)操向される。
【0014】
前車体8の運転室4の下方に、電子制御式の走行変速装置20が装備されている。走行変速装置20は、運転室4に備えた変速レバー22(図1)の操作による電気変速信号によって操作される。
【0015】
ベッセル12は、上方が開口し車両2の前後方向に延びた凹状断面の本体部12aと、本体部12aの前端部を塞ぐ前部12bを備え、前部12bの上端には水平に延び運転室4の上面後部を覆い保護する天板12cを備えている。ベッセル12は、後車体16の後端に位置する軸線Yを中心に後方にダンプ可能に取付けられ、ダンプシリンダ10はベッセル12と後車体16の間に取付けられている。
【0016】
図2、図3とともに図1、主として図1を参照して、番号24で示す、ベッセルを備えた作業車両の制御装置について説明する。制御装置24は、ダンプ状態(図2)および格納状態(図3)に起伏可能なベッセル12がダンプ状態にあるか否かを検知するベッセル検知手段としてのリミットスイッチ26と、運転室4に配設された警報ランプ28および警報ブザー30と、制御器32を具備している。
【0017】
リミットスイッチ26は、後車体16のフレームに設置され、その触手26aと起伏自在なベッセル12とがベッセル12格納状態(図3)において接触し、ダンプシリンダ12を伸長作動させベッセル12をダンプ状態(図2)に起立させると触手26aとベッセル12との接触が解除され、ベッセル12がダンプ状態にあるか否かが検知される。
【0018】
制御器32は、変速レバー22が操作され走行変速装置20に変速信号が出力されたときに、ベッセル検知手段のリミットスイッチ26によってベッセル12がダンプ状態であることが検知されているときには、警報ランプ28および警報ブザー30を作動させ、かつ走行変速装置20への変速信号を最低速度段に、変速レバー22の変速信号が高速段であっても、固定する。
【0019】
上述したとおりのベッセルを備えた作業車両の制御装置24の作用効果について説明する。
【0020】
制御装置24は、ベッセル12がダンプ状態にあるか否かを検知するベッセル検知手段26と、運転室4に配設された警報ランプ28および警報ブザー30と、制御器32を具備し、制御器32は、走行変速装置20に変速信号を出力する変速レバー22が操作されたときに、ベッセル検知手段26によってベッセル12がダンプ状態であることが検知されているときには、警報ランプ28および警報ブザー30を作動させ、かつ走行変速装置20への変速信号を最低速度段に固定する。
【0021】
したがって、オペレータが変速レバー22を操作して、車両をトンネル等の狭い空間に進入させる際に、ベッセル12が起立したダンプ状態のときには、警報ランプ28および警報ブザー30によってそのことがオペレータに知らされ、かつ車両を最低速度段で走行させ遅延させるので、トンネル壁等と接触、衝突する不具合を未然に防ぐことができる。
【0022】
また、アーティキュレート式ダンプトラック2は、車体を屈折させた状態においては、ベッセル12が外方に張り出し(図3(b))トンネル壁等と接触、衝突しやすくなるので、制御装置24は、アーティキュレート式ダンプトラック2に特に有効である。
【0023】
さらに、ベッセルをダンプ状態にした車両のバランスが悪い状態においては、走行速度が低速に規制され高速にならないので、走行路面が不安定な作業現場における車両の転倒などを効果的に予防することができる。
【0024】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0025】
ベッセル検知手段としてリミットスイッチ26が用いられているが、ベッセル検知手段はベッセル12が格納状態からダンプ状態の方向に起立した状態にあることを検知するものであればよいから、例えばダンプシリンダ10の伸長を検知するスイッチ、あるいはベッセル12が軸線Yを中心に回動する回動角を検知するスイッチなどでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に従って構成されたベッセルを備えた作業車両の制御装置の構成説明図。
【図2】本発明に係るベッセルを備えた作業車両をベッセルダンプ状態で示した側面図。
【図3】本発明に係るベッセルを備えた作業車両をベッセル格納状態で示した(a)側面図および(b)平面図。
【符号の説明】
【0027】
2:アーティキュレート式ダンプトラック(作業車両)
12:ベッセル
22:変速レバー
24:制御装置
26:リミットスイッチ(ベッセル検知手段)
28:警報ランプ
30:警報ブザー
32:制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンプ状態および格納状態に起伏可能なベッセルがダンプ状態にあるか否かを検知するベッセル検知手段と、
運転室に配設された警報ランプおよび警報ブザーと、
走行変速装置に変速信号を出力する変速レバーが操作されたときに、ベッセル検知手段によってベッセルがダンプ状態であることが検知されているときには、該警報ランプおよび警報ブザーを作動させ、かつ走行変速装置への変速信号を最低速度段に固定する制御器と、
を具備していることを特徴とするベッセルを備えた作業車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−166669(P2009−166669A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6897(P2008−6897)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】