説明

ベルトクランプ

【課題】ベルトクランプの大きさや厚みを変えることなく、作業者がベルトを引っ張るときに滑りにくいベルトクランプを提供することである。
【解決手段】ベルトクランプ1のベルト3におけるベルト本体部11の幅方向13の両端部の表面(歯部14が設けられている側の面)に一対の滑り止め部17を設ける。一対の滑り止め部17は、ベルト本体部11の先端部11aで、歯部14が設けられていない部分に設けるとともに、幅方向13において歯部14と重ならないように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被結束物を結束するためのベルトクランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両において、ワイヤハーネス(電線束)をボディ等に取り付けるために、ベルトクランプが使用されている。
【0003】
ベルトクランプは、長尺帯状のベルトと、ベルトの基端部を固着するとともに、被結束物に巻き付けられたベルトの先端部を挿通するベルト挿通孔を有するバックルとを備えている。ベルトの片面には、多数の歯部が並設されていて、バックルのベルト挿通孔に挿通したときにその内側に設けられたロック部と係合する。これにより、ベルトのベルト挿通孔からの抜止めが図られている。
【0004】
ベルトクランプが使用されるとき、ベルトを被結束物に巻き付けてバックルのベルト挿通孔に挿通し、ベルトの歯部をロック部に係合させながら、その先端部をベルト挿通孔の出口部から所定長さだけ突出させる。このために、作業者はベルトの先端部を把持して引っ張る。この状態で、所定の工具(例えば、引締めガン)でベルトの先端部を把持し、ロック部が多数の歯部を順次係合しようとする抵抗力に抗してベルトを引っ張り、被結束物を結束した状態でベルトを切断する。
【0005】
上記したロック部が歯部を係合しようとする抵抗力は比較的大きなものであるため、作業者がベルトの先端部を把持して引っ張っても滑ってしまうことがある。これにより、被結束物の結束作業の効率が低下してしまう。
【0006】
これを防止するために、ベルトの先端部に滑り止め部を形成したベルトクランプが開示されている(特許文献1を参照)。しかし、滑り止め部を形成することによりベルトの厚みが厚くなり、その結果、バックルの厚みも厚くなってしまう。これにより、ベルトクランプを取り付けるためのスペースが大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−40004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑み、ベルトクランプの大きさや厚みを変えることなく、作業者がベルトを引っ張るときに滑りにくいベルトクランプを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するための本発明は、
長尺帯状で、被結束物の外周面に巻付け可能となる可撓性を有したベルトと、
前記ベルトの基端部に設けられるとともに、前記ベルトを挿入するためのベルト挿通孔を備えたバックルと、
前記ベルト挿通孔に挿入された前記ベルトの表面に向かって突出するロック部と、
前記ロック部に対向する前記ベルトの表面に配置した係止部と、を備えたベルトクランプであって、
前記ロック部は前記ベルトの表面の一部に対向して設けられ、前記ベルトの表面の長手方向に沿って前記係止部が列状に配置されており、
前記係止部の無い前記ベルトの表面が延長された前記ベルトの先端付近には、凹凸による滑り止め部が、前記ベルトの表面で長手方向に列状に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るベルトクランプは、上記したように構成され、ベルトの先端付近の表面(係止部が設けられている側の面)には、凹凸による滑り止め部が長手方向に列状に配置されている。作業者が、被結束物に係止したベルトの先端をバックルのベルト挿通孔に挿入し、その出口部から突出した先端を引っ張るとき、滑り止め部を押圧して引っ張ることができるため滑りにくい。これにより、被結束物の結束作業の効率が良好になる。
【0011】
前記ベルトの表面にはそのベルトの長手方向に沿って延びる少なくとも2本の突条が所定の間隔をおいて形成され、前記列状の係止部はその突条の間隔幅でかつベルト長手方向においてそれら突条の内側に列状に設けられ、
さらにその列状の係止部が形成されていない、前記突条が存在するベルト領域において、前記突条にそれぞれベルト長手方向における高低差が生じるように凹凸が形成されて、各突条の凹凸が該ベルト領域が把持されたときの前記滑り止め部となっている。
【0012】
また、前記係止部は、前記ベルトの長手方向と交差する方向である幅方向の中央部に設けられ、
前記滑り止め部は、前記ベルトにおける幅方向の両端部で、前記係止部と重ならない部分に設けられている。
【0013】
これにより、係止部をベルト挿通孔に挿入したときに、滑り止め部がバックルのロック部と干渉することを防止できる。
【0014】
具体的には、前記滑り止め部は、前記ベルトの表面を頂部とする凸部と、前記ベルトの表面よりも厚み方向に切り欠かれた面を底面とする凹部とが前記ベルトの長手方向に交互に設けられて形成されている。
【0015】
そして、前記滑り止め部における少なくともベルトの基端部側の壁面を、前記ベルトの正面視において斜めに又は湾曲して形成したり、前記滑り止め部における少なくともベルトの基端部側の壁面を、前記ベルトの側面視において前記ベルトの長手方向に対して斜めに又は湾曲して形成したりしてもよい。
【0016】
さらに、前記滑り止め部の凹部における前記ベルトの長手方向の長さは、前記滑り止め部の凸部における同方向の長さよりも大であることが望ましい。
【0017】
これらにより、滑り止め部と作業者の指との密着度合いが大きくなり、より滑りにくくなる。
【0018】
ベルトクランプは、前記ベルトの先端付近で、前記係止部が列状に配置された面と反対側の面には、凹凸による滑り止め部を前記ベルトの長手方向に列状に配置されているものであってもよい。このベルトクランプでは、ベルトの両側の面に滑り止め部が設けられているため、一層滑りにくくなっている。
【0019】
さらに、前記ベルトの反対側の面に設けられた滑り止め部は、その頂部が前記反対側の面から突出しないように形成されているものであることが望ましい。これにより、ベルトクランプのベルトの厚みが従来のものと同一になる(換言すれば、従来のベルトクランプより厚くならない)ので、ベルトをバックルのベルト挿通孔に挿入させる作業に支障は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)はベルトクランプ1の正面図、(b)は同じく右側面図、(c)は同じく背面図である。
【図2】(a)はベルト3の下部の拡大正面図、(b)は一部を破断した右側面図である。
【図3】バックル5及び係合部8の拡大正面図である。
【図4】同じく側面断面図である。
【図5】作業者が指18でベルト本体部11を引っ張る状態の作用説明図である。
【図6】(a)は第2実施例の滑り止め部36の左側面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく斜視図である。
【図7】(a)は第3実施例の滑り止め部38の左側面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく斜視図である。
【図8】(a)は第4実施例の滑り止め部41の左側面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく斜視図である。
【図9】(a)は第5実施例の滑り止め部43の左側面図、(b)は同じく正面図である。
【図10】(a)は第6実施例の滑り止め部45の正面図、(b)は同じく右側面図、(c)は同じく背面図である。
【図11】(a)は第7実施例の滑り止め部49の正面図、(b)は第8実施例の滑り止め部51の正面図、(c)は第9実施例の滑り止め部52の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1の(a)はベルトクランプ1の正面図、(b)は同じく右側面図、(c)は同じく背面図、図2の(a)はベルト3の下部の拡大正面図、(b)は一部を破断した右側面図、図3はバックル5及び係合部8の拡大正面図、図4は同じく側面断面図である。
【実施例1】
【0022】
最初に、本実施例のベルトクランプ1の全体構成について説明する。図1に示されるように、ベルトクランプ1は樹脂材(例えば、ポリプロピレン)よりなり、被結束物(例えば、図5に示すワイヤハーネス2)の外側面に巻き付けられる長尺帯状のベルト3と、ベルト3の基端部を固着し、ベルト3を入口部4aから挿入するためのベルト挿通孔4が設けられたバックル5とを備える。本実施例のベルトクランプ1の場合、バックル5におけるベルト挿通孔4と反対側の面には、被取付物(例えば、図3に示す車両のボディパネル6)の取付穴7に挿入されて係合される係合部8が設けられている。
【0023】
最初に、ベルト3について説明する。図1に示されるように、ベルト3は、バックル5におけるベルト挿通孔4の出口部4b側の端部(図1の(b)の図面視における左端部)の底面からその幅が連続的に狭くなる形で斜め下方に延設される基端部9と、基端部9から一定の幅W1で延設される薄い平板よりなる長尺帯状のベルト本体部11とを備える。ベルト本体部11は、その先端部11aの側からバックル5のベルト挿通孔4に挿入される。このため、ベルト本体部11の先端部11aはベルト挿通孔4への挿入を容易にするために厚みが薄くなっていて、正面視において三角形を呈する先細形状となっている。以下、ベルト3の長手方向を符号12で表し、長手方向12と直交する方向である幅方向を符号13で表す。なお、ベルト本体部11の先端部11aとは、作業者が把持するために必要な長さ部分をいい、ベルト本体部13の先端から20〜30mm程度の長さ部分をいう。
【0024】
図2の(a)に示されるように、ベルト本体部11における幅方向13の中央部で、先端部11aを除く部分の表面には、長手方向に多数の歯部14(係止部)が、ベルト3の長手方向に列状に配置されている。歯部14は、ベルト本体部11がバックル5のベルト挿通孔4に挿通されたとき、バックル5に設けられたロック部24のロック片26(後述)と係止されることにより、ベルト本体部11がベルト挿通孔4から抜け出ることを防止する。
【0025】
図2の(b)に示されるように、歯部14は、頂部15aがベルト本体部11の表面(ワイヤハーネス2をクランプしたときに、外方に露出する面)と同一面となる台形状の多数の歯部単体15が、ベルト本体部11の長手方向12に一定の間隔をおいて配置されてなる。歯部単体15におけるベルト本体部11の先端部11aの側は、所定角度αで傾斜する傾斜面部15bとなっている。同じくベルト本体部11の基端部9の側は、歯部単体15の頂部15aに対してほぼ垂直となる垂直面部15cとなっている。歯部単体15どうしの間で、傾斜面部15aと垂直面部15cとの間の部分には、肉厚が薄くなった底面部16が形成されている。
【0026】
図2の(a)に示されるように、ベルト本体部11の先端部11aにおける幅方向13の両端部には、一対の滑り止め部(第1実施例の滑り止め部17)が設けられている。滑り止め部17は、作業者がベルト本体部11の先端部11aを把持して引っ張るときに、図5に示す作業者の指18が滑らないようにするためのもので、ベルト本体部11の先端部11aにおける歯部14が設けられていない部分で、かつ幅方向13において歯部14と重ならないように設けられている。一対の滑り止め部17は、ベルト本体部11の軸線(図示せず)に対して対称であることを除いて、それらの形状は同一である。
【0027】
第1実施例の滑り止め部17について説明する。図2に示されるように、滑り止め部17は、複数の断面略三角形状の滑り止め部単体19が、ベルト本体部3の長手方向12に一定の間隔をおいて列状に配置されてなる。滑り止め部単体19におけるベルト本体部11の先端部11aの側は、ベルト3の側面視においてその長手方向12に対して所定角度βで傾斜する第1傾斜面部19aとなっている。同じくベルト本体部11の基端部9の側は、ほぼ垂直に設けられる第2傾斜面部19bとなっている。第1傾斜面部19aの角度βは緩く、例えば15〜25度(望ましくは18〜22度)となっている。このため、作業者が、ベルト本体部11の先端部11aを把持して引っ張るとき、作業者の指18は、隣接する第1傾斜面部19aと第2傾斜面部19bとによって形成される空間部に入り込み、それらと密着する。このときの密着度合いが大きいほど、指18とベルト本体部11との摩擦力が大きくなるため、滑り止めの効果が大きくなる。そして、第2傾斜面部19bがほぼ垂直面となっていて、作業者がベルト本体部11を引っ張ったときの滑りに対する抵抗を大きくしている。また、滑り止め部単体19の頂部(第1傾斜面部19aと第2傾斜面部19bとの接続部)は湾曲形状(アール面形状)となっているため、作業者が滑り止め部17に指18を押し付けても痛みを感じることはない。
【0028】
なお、ベルト本体部11の先端部11aで、一対の滑り止め部17の間の部分には、歯部14が設けられていない。一対の滑り止め部17の間の部分は、歯部14の終端部(下端部)から先端部11aに接近するに伴い連続的にその肉厚が薄くなる傾斜面となっていて、ベルト挿通孔4に挿入するときの挿入案内部21となっている。また、第1実施例の滑り止め部17の場合、一対の滑り止め部17の幅は同一である。そして、挿入案内部21の幅(即ち、一対の滑り止め部17の間の幅)は、歯部14の幅と同一である。
【0029】
図1の(c)に示されるように、ベルト本体部11の裏面(ワイヤハーネス2を結束したときに、内側に配置される面)における幅方向13の両端部でその先端部11aを除く部分には、リブの機能を有する一対の突条22がベルト本体部11の長手方向12に沿って設けられている。同じく幅方向13のほぼ中央部には、ベルト本体部11をワイヤハーネス2の外周面に巻き付けたとき、ワイヤハーネス2を押圧してその回り止めを図るための多数(本実施例の場合、15個)の突起部23が、ベルト3の長手方向12に一定の間隔をおいて設けられている。
【0030】
次に、バックル5について説明する。図1、図3及び図4に示されるように、バックル5は略直方体形状で、正面視におけるそのほぼ中央部に断面略長方形状のベルト挿通孔4がバックル5の背面部(入口部4a)から正面部(出口部4b)に貫通する形態で設けられている。ここで、ベルト本体部11の幅を「W1」とすると、図3に示されるように、ベルト挿通孔4の内幅W2はベルト本体部11の幅W1よりも僅かに大きい。
【0031】
図3及び図4に示されるように、ベルト挿通孔4の内側で、その天井部分における幅方向のほぼ中央部には、ベルト本体部11に設けられた歯部14を係合するためのロック部24が垂設されている。ロック部24は、ベルト挿通孔4の天井部から出口部4bの側に向かって張り出して設けられている。そして、ロック部24の基端部24a(ベルト挿通孔4の天井部との接合部)を中心に、矢印25の方向に回動(弾性変形)自在である。ロック部24の先端部には、隣接する歯部単体15の傾斜面部15bと垂直面部15cとの間に形成される空間部に入り込むロック片26が垂設されている。ロック片26におけるベルト挿通孔4の出口側4bの面は、ロック部24の底面部に対してほぼ垂直に起立する垂直面部26aとなっている。同じくベルト挿通孔4の入口側4aの面は、ロック部24の底面部に対して角度γで斜めに形成される傾斜面部26bとなっている。この角度γは、図2の(b)に示すベルト本体部11における歯部単体15の傾斜面部15bの形成角度αとほぼ等しい。そして、図3に示されるように、ロック部24の幅W3は、ベルト本体部11の歯部14の幅W4よりも少し狭い。
【0032】
図3に示されるように、ベルト挿通孔4において、ロック部24の両側部と底面部には、それぞれベルト挿通孔4に挿通されたベルト本体部11をガイドするための上側ガイド部27と下側ガイド部28が、それぞれ一対となって設けられている。また、下側ガイド部28の両側方には、それぞれ窪み部29が設けられている。これらの窪み部29には、ベルト本体部11に設けられた一対の突条22が入り込む。そして、上側ガイド部26と下側ガイド部27との隙間の高さは、ベルト本体部11の厚みよりも僅かに大きい。ベルト挿通孔4に挿入されたベルト本体部11は、その高さ方向の位置が上側ガイド部27と下側ガイド部28とによって規制される。これにより、挿入途中のベルト本体部11が傾きにくくなって、作業者はベルト本体部11をスムーズにベルト挿通孔4に通すことができる。また、ロック片26と下側ガイド部28との隙間の高さは、ベルト本体部11の厚みよりも小さい。このため、図4に示されるように、ベルト本体部11がベルト挿通孔4に挿入されたとき、ロック片26と歯部14とが確実に係止される。
【0033】
次に、係合部8について簡単に説明する。図1、図3及び図4に示されるように、バックル5の上面から、上方に向かってスカート状に広がるスタビライザ31が設けられている。また、バックル5の上面のほぼ中央部から係合部本体32が突出して設けられている。係合部本体32の両側面部から、一対の爪部33が突出している。各爪部33は、それらの上端部のみが係合部本体32と連結され、それ以外の部分は係合部本体32から分離されている。このため、各爪部33は、係合部本体32との連結部33a(上端部)を中心に、係合部本体32の軸線(図示せず)に接近・離隔するように回動(弾性変形)自在である。図3において、各爪部33の回動方向(変形方向)を矢印34で示す。
【0034】
図3に示されるように、被取付物の一例である車両のボディパネル6の取付孔7は、一対の爪部33の頂部33bどうしを結ぶ長さよりも少し短い。このため、係合部本体32が取付孔7に挿入されるとき、一対の爪部33は、取付孔7の内周縁に押圧されて軸線に向かう方向に回動(弾性変形)する。そして、取付孔7を通過した状態で、一対の爪部32が軸線から遠ざかる方向に回動する(弾性復元)とともに、スタビライザ31がボディパネル6を押圧する。これにより、ベルトクランプ1がボディパネル6に抜止め状態で取り付けられる。
【0035】
ベルトクランプ1を使用して、ワイヤハーネス2をクランプするときの作用を説明する。図5に示されるように、ワイヤハーネス2の外周面にベルトクランプ3のベルト本体部11を巻き付け、その先端部11aを、ベルト挿通孔4の入口部4aから挿入する。ベルト本体部11の先端部11aが薄肉になっていて、しかも先端部11aの挿入案内部21が傾斜面となっている。さらに、一対の滑り止め部17とロック片26とが干渉することはない。このため、ベルト本体部11の先端部11aをベルト挿通孔4へ通すときの抵抗は小さい。
【0036】
ベルト本体部11の先端部11aがベルト挿通孔4の出口部4bから少し突出すると、作業者は、自身の指18でベルト本体部11の先端部11aを上下から押圧して把持する。このとき、ベルト本体部11の表面(即ち、一対の滑り止め部17が設けられている側の面)を押圧する指18は、隣接する滑り止め部単体19における第1傾斜面部19aと第2傾斜面部19bとの間に形成される空間部に入り込む。この状態で、作業者は、ベルト本体部11を矢印35の方向に引っ張る。このとき、滑り止め部単体19において、ほぼ垂直に形成された第2傾斜面部19bが、作業者の指18が滑ることを防止する機能を発揮する。作業者は、ベルト本体部11を矢印35の方向に引っ張ることにより、歯部14における1つ目の歯部単体15と2つ目の歯部単体15との間に形成された空間部に、ロック片26を入り込ませる。図4に示されるように、ロック片26の垂直面部26aと1つ目の歯部単体15の垂直面部15cとが当接する。これにより、ベルト本体部13が戻る(矢印35の逆方向に移動する)ことはない。また、ロック片26の傾斜面部26bと2つ目の歯部単体15の傾斜面部15bとがほぼ平行に配置され、それらの間に僅かな隙間が形成される。
【0037】
続いて、作業者は、ベルト本体部11の先端部11aで、ベルト挿通孔4の出口部4bから突出した部分を所定の工具(例えば、引締めガン)に把持させて引っ張る。このときの引張り力は、ベルト本体部11の歯部14とロック片26との係合力よりも遥かに大きいため、ベルト本体部11は、各歯部単体15がロック片26を押し上げる方向に回動させながら引っ張られる。そして、ワイヤハーネス2を結束した状態でベルト本体部11におけるバックル5からの突出部分を切断する。
【0038】
本実施例のベルトクランプ1の場合、ベルト本体部11の先端部11aに滑り止め部17が設けられている。作業者は、この滑り止め部17を把持してベルト本体部11を引っ張ることができるため、滑りにくい。しかも、滑り止め部17を設けても、ベルト本体部11の厚みはそのまま(不変)なので、他の部材の厚みを変更する必要はない。さらに、滑り止め部17が、ベルト本体部17における幅方向13の両側に設けられているため、バックル5のベルト挿通孔4を通すときの支障となることはない。
【実施例2】
【0039】
次に、第2実施例の滑り止め部36について説明する。図6に示されるように、第2実施例の滑り止め部36は、側面視において略等脚台形状の滑り止め部単体37が、幅方向13の両端部で、ベルト本体部11の長手方向12に等間隔をおいて列状に配置されている形態である。このとき、滑り止め部単体37における頂部37aの長さL1よりも、底面部37bの長さL2の方を長くすることにより、作業者の指18との押圧面積が大きくなる。この実施例の滑り止め部36は、第1実施例の滑り止め部17と同様な効果が奏される。
【実施例3】
【0040】
次に、第3実施例の滑り止め部38について説明する。図7に示されるように、第3実施例の滑り止め部38は、第2実施例の滑り止め部36の各滑り止め部単体39を、正面視において幅方向13で対称になるようにそれぞれ所定角度θ1,θ2で傾けたものである。この角度θ1,θ2は同一であっても、異なっていてもよい。これにより、各滑り止め部単体39の基端部9側の壁面39a及び先端部11a側の壁面39bは、ベルト本体部11の長手方向12に対して斜めとなっている。この場合、各滑り止め部単体39が、ベルト本体部11の長手方向12の先端部11a側に向かって先細形状となるように(即ち、ベルト本体部11を引っ張る方向に細くなるように)傾けることにより、作業者の指18と滑り止め部単体39におけるベルト本体部11の長手方向12で基端部9側の接続面39aとの当接面積が増加するため、より滑りにくくなる。このため、各滑り止め部単体39の基端部9側の壁面が斜めであれば、先端部11a側の壁面を斜めとしなくてもよい。
【実施例4】
【0041】
次に、第4実施例の滑り止め部41について説明する。図8に示されるように、第4実施例の滑り止め部41は、第2実施例の滑り止め部36の各滑り止め部単体37に相当する滑り止め部単体42において、正面視におけるベルト本体部11の長手方向12の基端部9側の接続面42aを湾曲させた形態である。このとき、湾曲面(接続面42a)の湾曲中心(図示せず)は、ベルト本体部11の長手方向12の基端部9側に存する。
【実施例5】
【0042】
次に、第5実施例の滑り止め部43について説明する。前述した第1〜第4実施例の滑り止め部17,36,38,41は、ベルト本体部11の幅方向13の両端部に一対にして設けられている。しかし、第5実施例の滑り止め部43は、図9に示されるように、ベルト本体部11の先端部11aで歯部14と干渉しない位置に、ベルト本体部11の幅方向13の全体に亘って設けられている。この場合の滑り止め部単体44は、側面視において略等脚台形状であるが、第1〜第4実施例の滑り止め部単体19,37,39,42と同様な形状としてもよい。また、ベルト本体部11をバックル5のベルト挿通孔4に挿入させるときにロック片26との抵抗を最小にするため、各滑り止め部単体44の頂部の面によって挿入案内部21が形成されるように、ベルト本体部11の長手方向12の先端部11aの側が連続的に薄くなる傾斜面とすることが望ましい。
【実施例6】
【0043】
次に、第6実施例の滑り止め部45,46について説明する。前述した第1〜第5実施例の滑り止め部17,36,38,41,43は、ベルト本体部11の表面にのみ設けられている。しかし、図10に示されるように、第6実施例の滑り止め部45,46はベルト本体部11の両面に設けられている。即ち、ベルト本体部11の表面には、第2実施例の滑り止め部36と同様な滑り止め部45が設けられ、同じく裏面には、幅方向13の全長に亘って形成される滑り止め部46が設けられている。作業者はベルト本体部11を引っ張るときに、その両面を指18で押圧する。この実施例の場合、滑り止め部45,46が両面に設けられているため、より滑りにくくなる。なお、ベルト本体部11の両面に滑り止め部45,46を形成すると、それらの滑り止め部単体47,48の底面部47a,48aの厚みが極めて薄くなってしまう。このため、ベルト本体部11の裏面に突条22が設けられていない。ただし、この部分はワイヤハーネス2を結束した後、切断されて廃棄されるため、工具でベルト本体部11の先端部11aを引っ張ったときに切断されない程度の厚みとすれば充分である。また、裏面側の各滑り止め部単体48の頂部は、ベルト本体部11の裏面と同一面となること(換言すれば、裏面から突出しないようにすること)が望ましい。
【0044】
図10の(c)に示されるように、第6実施例の滑り止め部45,46のうち、ベルト本体部11の裏面の滑り止め部46は、幅方向13の全長に亘って設けられている。しかし、表面の滑り止め部45と同様に、幅方向13の両端部に一対にして設けられている形態であってもよい。
【実施例7】
【0045】
前述した第1〜第4実施例のベルトクランプ1では、滑り止め部17,36,38,41は、ベルト本体部11の幅方向13の両端部に一対となって(即ち、2本)設けられている。しかし、図11の(a)に示される第7実施例の滑り止め部49のように、ベルト本体部11の表面に3本(又はそれ以上の本数)の滑り止め部49が設けられていてもよい。
【実施例8】
【0046】
また、図11の(b),(c)に示される第8実施例の滑り止め部51及び第9実施例の滑り止め部52のように、ベルト本体部11の表面における幅方向13の中央部又は幅方向13の一端部に1本だけ設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のベルトクランプは、作業者が引っ張るときに滑りにくいベルトクランプとして利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ベルトクランプ
2 ワイヤハーネス(被結束物)
3 ベルト
4 ベルト挿通孔
5 バックル
6 ボディパネル(被取付物)
7 取付穴
8 係合部
9 基端部(ベルトの基端部)
11 ベルト本体部(ベルト)
11a 先端部(先端、ベルト領域)
12 長手方向
13 幅方向
14 歯部(係止部)
17,36,38,41,43,45,46,49,51,52 滑り止め部
19 滑り止め部単体(凸部)
19a 第1傾斜面部(傾斜面)
24 ロック部
37a 頂部
37b 底面部(凹部)
39a,42a 接続面(接続部)
L1,L2 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状で、被結束物の外周面に巻付け可能となる可撓性を有したベルトと、
前記ベルトの基端部に設けられるとともに、前記ベルトを挿入するためのベルト挿通孔を備えたバックルと、
前記ベルト挿通孔に挿入された前記ベルトの表面に向かって突出するロック部と、
前記ロック部に対向する前記ベルトの表面に配置した係止部と、を備えたベルトクランプであって、
前記ロック部は前記ベルトの表面の一部に対向して設けられ、前記ベルトの表面の長手方向に沿って前記係止部が列状に配置されており、
前記係止部の無い前記ベルトの表面が延長された前記ベルトの先端付近には、凹凸による滑り止め部が、前記ベルトの表面で長手方向に列状に配置されていることを特徴とするベルトクランプ。
【請求項2】
前記ベルトの表面にはそのベルトの長手方向に沿って延びる少なくとも2本の突条が所定の間隔をおいて形成され、前記列状の係止部はその突条の間隔幅でかつベルト長手方向においてそれら突条の内側に列状に設けられ、
さらにその列状の係止部が形成されていない、前記突条が存在するベルト領域において、前記突条にそれぞれベルト長手方向における高低差が生じるように凹凸が形成されて、各突条の凹凸が該ベルト領域が把持されたときの前記滑り止め部となることを特徴とする請求項1に記載のベルトクランプ。
【請求項3】
前記係止部は、前記ベルトの長手方向と交差する方向である幅方向の中央部に設けられ、
前記滑り止め部は、前記ベルトにおける幅方向の両端部で、前記係止部と重ならない部分に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルトクランプ。
【請求項4】
前記滑り止め部は、前記ベルトの表面を頂部とする凸部と、前記ベルトの表面よりも厚み方向に切り欠かれた面を底面とする凹部とが前記ベルトの長手方向に交互に設けられて形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のベルトクランプ。
【請求項5】
前記滑り止め部における少なくともベルトの基端部側の壁面は、前記ベルトの正面視において斜めに又は湾曲して形成されていることを特徴とする請求項4に記載のベルトクランプ。
【請求項6】
前記滑り止め部における少なくともベルトの基端部側の壁面は、前記ベルトの側面視において前記ベルトの長手方向に対して斜めに又は湾曲して形成されていることを特徴とする請求項4に記載のベルトクランプ。
【請求項7】
前記滑り止め部の凹部における前記ベルトの長手方向の長さは、前記滑り止め部の凸部における同方向の長さよりも大であることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載のベルトクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−253909(P2012−253909A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124774(P2011−124774)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】