説明

ベルト式無段変速機

【課題】ベルト4から受ける反力によりシーブ7が弾性変形してしまうことを抑制することができるベルト式無段変速機を提供する。
【解決手段】回転軸12と一体化された固定シーブ5と、固定シーブ5に接近もしくは離隔するように他の回転軸13と一体化された可動シーブ7と、可動シーブ7を固定シーブ5側に押圧する押圧機構と、固定シーブ5と可動シーブ7とが互いに向かい合う面5a,7aによって形成された溝に巻き掛けられたベルト4とを備えたベルト式無段変速機において、可動シーブ7の背面側の外周部から他の回転軸13の外周面に亘って可動シーブ7と一体となって軸線方向に移動可能に設けられ、可動シーブ7がベルト4から受ける荷重によって変形することを抑制するシーブ支持部材17を備え、可動シーブ7と、他の回転軸13と、シーブ支持部材17とによって覆われた空間20に圧油が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一対のプーリと、それらのプーリに巻き掛けられて動力を伝達するベルトとにより構成されたベルト式無段変速機に関し、特にベルトから受ける反力によってそのベルトを巻き掛ける溝幅が変化してしまうことを抑制することができるベルト式無段変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
入力された動力の変速比を無段階にかつ連続的に変化させて出力することのできる変速機としてベルト式無段変速機が知られている。このベルト式無段変速機は、一対のプーリと、それらプーリに巻き掛けられて動力を伝達するベルトとによって構成され、各プーリは、回転軸と一体に形成された固定シーブと、その固定シーブと接近もしくは離隔してベルトを巻き掛ける溝の幅を変化させることにより変速比を変化させる可動シーブとによって構成されている。このようにベルト式無段変速機を構成することにより、可動シーブを軸線方向に押圧する荷重を変化させることにより固定シーブと可動シーブとの距離を変化させてベルトの巻き掛け半径を変化させることや、ベルトを挟み付ける挟圧力を変化させることができる。つまり、変速比や伝達トルク容量を変化させることができる。また、このように構成されたベルト式無段変速機は、可動シーブの背面側に油圧アクチュエータが設けられており、その油圧アクチュエータに供給される圧油の油圧や油量を制御することにより可動シーブを押圧する荷重を変化させるように構成されている。
【0003】
上述したように構成されたベルト式無段変速機は、可動シーブを押圧する荷重に応じて変速比や伝達トルク容量を変化させるように構成されているため、可動シーブは、その可動シーブの押圧力に応じた反力をベルトから受ける。そのため、シーブが傾いたりベルトを巻き掛けている箇所が弾性変形したりすることにより、ベルトが巻き掛けられている箇所の溝幅が広くなってしまう可能性がある。すなわち、図3に一点鎖線で示すベルトの理想軌道に対して、ベルトが実際に移動する軌道が実線で示すようにプーリの内周側に移動してしまう可能性がある。その結果、ベルトが半径方向に移動することによる滑り損失が生じてしまう可能性がある。
【0004】
そのため、特許文献1に記載されたベルト式無段変速機は、ベルトから受ける反力により可動シーブが傾くこと、すなわちベルトが巻き掛けられている位置の溝幅が増大する方向に可動シーブが傾くことを抑制するために、可動シーブの内周部に固定シーブ側から油圧が作用するように構成されている。具体的には、可動シーブの外周部から軸線方向における背面側に突出した張り出し部を油圧アクチュエータのピストンにより固定シーブ側に押圧し、かつ可動シーブの内周側の背面に形成されたボス部を油圧によって固定シーブ側に押圧するように構成し、さらに、その可動シーブが回転軸に嵌合している箇所に空間を形成し、その空間に油圧が固定シーブ側から可動シーブに作用するように構成されている。なお、可動シーブの外周部と内周部との間には油圧が作用しないように構成している。
【0005】
また、特許文献2に記載されたベルト式無段変速機は、可動シーブを軽量化するとともに、その可動シーブの剛性を向上させるために、円錐ドラム形状のシーブ支えのテーパ面と可動シーブのプーリ面との向きが軸線方向において反対方向を向くようにシーブ支えを配置して、そのシーブ支えの外周部と可動シーブの外周部とを連結し、かつシーブ支えの内周部と回転軸の外周面との間にシール部材を設けることにより、可動シーブとシーブ支え部材と回転軸とに覆われた箇所を空洞とし、かつ可動シーブがベルトから受ける反力により弾性変形してしまうことを抑制するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−249210号公報
【特許文献2】特開2002−174309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した各特許文献1,2に記載されたベルト式無段変速機は、可動シーブの外周部を固定シーブ側に押圧するように構成されている。そのため、ベルトから可動シーブが受ける反力を減少させるように油圧が作用するので、可動シーブが傾くことや弾性変形してしまうことを抑制することができる。一方、各特許文献1,2に記載されたベルト式無段変速機は、可動シーブの内周部と外周部との間に油圧が作用しないように構成されているため、その油圧が作用しない箇所にベルトが配置されている状態では、ベルトから可動シーブが受ける反力と対向した方向の荷重を作用させることができない。そのため、そのような状態では可動シーブが弾性変形してしまう可能性があった。
【0008】
この発明は上述した事情を背景としてなされたものであって、ベルトから受ける反力によりシーブが弾性変形してしまうことを抑制することができるベルト式無段変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、回転軸と一体化された固定シーブと、該固定シーブに接近もしくは離隔するように前記回転軸と嵌合した他の回転軸と一体化された可動シーブと、前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧する押圧機構と、前記固定シーブと前記可動シーブとが互いに向かい合う面によって形成された溝に巻き掛けられたベルトとを備えたベルト式無段変速機において、前記可動シーブの背面側の外周部から前記他の回転軸の外周面に亘って前記可動シーブと一体となって軸線方向に移動可能に設けられ、該可動シーブが前記ベルトから受ける荷重によって変形することを抑制するシーブ支持部材を備え、前記可動シーブと、前記他の回転軸と、前記シーブ支持部材とによって囲われた空間に圧油が供給されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記シーブ支持部材の内周側の端部を、該シーブ支持部材と前記可動シーブの背面とが接触するまで押圧し、かつ前記シーブ支持部材と前記可動シーブの背面とが接触した状態で、前記他の回転軸に連結されるように構成された部材を更に備えていることを特徴とするベルト式無段変速機である。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記押圧機構は、前記可動シーブの背面側から前記固定シーブ側に油圧を作用させる油圧アクチュエータを含み、前記シーブ支持部材は、前記空間と前記油圧アクチュエータとに連通した貫通孔を有することを特徴とするベルト式無段変速機である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、可動シーブがベルトから受ける荷重によって弾性変形をすることを抑制するシーブ支持部材が、その可動シーブの背面側の外周部から可動シーブと一体化された他の回転軸の外周面に亘って可動シーブと一体となって軸線方向に移動することができるように設けられているので、可動シーブの軸線方向の位置にかかわらず可動シーブの外周部の弾性変形を抑制することができる。また、そのシーブ支持部材と可動シーブの背面と他の回転軸の外周面とによって囲われた空間に圧油が供給されるので、シーブ支持部材が可動シーブの背面に接触している箇所より内周側でベルトを挟み付けている場合であっても、その箇所でベルトから受ける荷重に対向して油圧を作用させて弾性変形を抑制することができる。したがって、ベルトの巻き掛け半径によらず可動シーブがベルトから受ける荷重による弾性変形を抑制することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、シーブ支持部材の内周側の端部を、そのシーブ支持部材と可動シーブの背面とが接触するまで押圧し、かつシーブ支持部材と可動シーブの背面とが接触した状態で、他の回転軸に連結されるように構成された部材を更に備えているので、シーブ支持部材と可動シーブの背面とを確実に接触させることができる。また、その部材によりシーブ支持部材が回転軸に対して相対的に軸線方向に移動することを抑制もしくは防止することができるので、そのシーブ支持部材と可動シーブの背面と回転軸の外周面とによって囲われた空間に供給された油圧に基づく荷重を、可動シーブの背面に作用させることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、シーブ支持部材は、そのシーブ支持部材と可動シーブの背面と他の回転軸の外周面とによって囲われた空間と油圧アクチュエータとに連通した貫通孔を有するので、その空間に油圧を供給するための他の油路を設けずに圧油を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係るベルト式無段変速機の構成の一例を説明するためのプライマリプーリの断面図である。
【図2】そのベルト式無段変速機の基本的な構成を説明するための模式図である。
【図3】ベルトが移動する軌道を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、この発明に係るベルト式無段変速機の構成の一例について説明する。図2は、その構成を模式的に示した模式図である。図に示すベルト式無段変速機1の基本的な構成は、従来車両に搭載されたベルト式無段変速機の構成と同様のものであり、図示しないエンジンなどの動力源と動力伝達可能に連結されたプライマリプーリ2と、そのプライマリプーリ2の回転軸線と平行に配置されたセカンダリプーリ3と、各プーリ2,3同士が動力を伝達することができるようにそれらプーリ2,3に巻き掛けられたベルト4とにより構成されている。
【0017】
また、このベルト式無段変速機1は、ベルト4の巻き掛け半径を変化させることにより変速比を変化させるものであり、またそのベルト4と各プーリ2,3のプーリ面との摩擦力によって動力を伝達するものである。したがって、各プーリ2,3は、回転軸と一体化された固定シーブ5,6と、その固定シーブ5,6のプーリ面に対向して回転軸の軸線方向に移動可能に配置された可動シーブ7,8とによって構成され、その可動シーブ7,8の背面に可動シーブ7,8を固定シーブ5,6側に押圧する油圧アクチュエータ9,10が設けられている。すなわち、油圧アクチュエータ9(10)により可動シーブ7(8)を固定シーブ5(6)側に押圧する荷重を変化させることにより、可動シーブ7(8)を軸線方向に移動させて可動シーブ7(8)と固定シーブ5(6)との溝幅すなわちベルト巻き掛け半径を変化させたり、各シーブ5,7(6,8)でベルト4を挟み付ける挟圧力を変化させたりするように構成されている。さらに、各シーブ5,7(6,8)同士が対向する面、すなわちプーリ面は、ベルト4の巻き掛け半径を連続的に無段階に変化させることができるようにテーパ形状に形成されている。
【0018】
上記各プーリ2,3は、固定シーブ5,6と可動シーブ7,8との相対位置が左右反対になっているが、基本的な構成は同じであるので、以下の説明では、プライマリプーリ2を例に挙げて説明する。図1は、プライマリプーリ2の断面図であり、図における上側が変速比が最大の状態を示し、下側が変速比が最初の状態を示している。図に示すプライマリプーリ2の構成を具体的に説明する。プライマリプーリ2を構成する固定シーブ5は、エンジンなどの動力源と動力伝達可能に連結され両端部を軸受11,11により支持された入力軸12と一体化されて形成されている。また、固定シーブ5のプーリ面5a側には、可動シーブ7がその可動シーブ7のプーリ面7aと固定シーブ5のプーリ面5aとが対向するように配置されている。この可動シーブ7は、入力軸12の軸線方向に移動することができるように、内周部を中空状に形成されており、また背面側に延出した円筒軸13と一体化されている。なお、「円筒軸13」がこの発明に係る『他の回転軸』に相当する。そして、この円筒軸13の内周面と入力軸12の外周面とがスプラインやキーなどにより係合されており、したがって、入力軸12および円筒軸13を介して固定シーブ5と可動シーブ7とが一体となって回転することができるように構成されている。つまり、固定シーブ5と可動シーブ7とが同期して回転するように構成されている。
【0019】
また、可動シーブ7の背面側には、その可動シーブ7の背面および外周面を囲うように可動シーブ7側に開口した中空円筒状に形成されたシリンダ14が入力軸12と連結して設けられている。このシリンダ14は、内部に供給された圧油の油圧や油量を制御することにより可動シーブ7の背面側から固定シーブ5側に押圧する荷重を制御するためのものである。したがって、シリンダ14の内部の圧油が外部に漏洩しないように、すなわちシリンダ14の内部が液密状となるように、シリンダ14の外周部の内壁面と可動シーブ7の外周側の背面側に延出して形成された張り出し部7bの外周側との間にシール部材15が設けられている。このように構成することにより、シリンダ14の内部を油圧室16として、その油圧室16に供給される圧油の油圧や油量に応じて可動シーブ7が軸線方向に荷重を受ける。つまり、油圧アクチュエータとして機能することができる。なお、この「油圧アクチュエータ」がこの発明に係る『押圧機構』に相当する。
【0020】
そして、入力軸12には、油圧室16に圧油を供給するための油路が形成されている。具体的には、入力軸12の端部に開口した中空部12aが入力軸の中心軸線上に形成され、その中空部12aの外周面から油圧室16に連通した貫通孔12bが形成されている。また、その中空部12aには、図示しない電磁制御弁などを介してオイルポンプやアキュムレータなどの油圧源が連結されている。したがって、油圧源から中空部12aと貫通孔12bとを介して油圧室16に圧油が供給されるように構成されている。つまり、中空部12aと貫通孔12bとが油路として機能するように構成されている。
【0021】
上述したように構成されたベルト式無段変速機1は、油圧室16に供給された圧油の油圧や油量に応じて可動シーブ7が軸線方向に荷重を受け、その結果、可動シーブ7が軸線方向に移動してベルト巻き掛け半径を変化させることや、ベルト4を挟み付ける挟圧力を変化させることができる。一方、ベルト4は各シーブ5,7との摩擦力によって動力を伝達するものであるので、各シーブ5,7はベルト4からその摩擦力に応じた反力を受ける。言い換えれば、ベルト4を挟み付ける挟圧力の反力、すなわち可動シーブ7を軸線方向に押圧する荷重の反力を受ける。その結果、ベルト4から受ける反力によってシーブ5(7)が弾性変形をしてしまい、ベルト4の巻き掛け半径が変化することによる滑り損失などが生じる可能性がある。
【0022】
そのため、この発明に係るベルト式無段変速機1は、特にベルト4が巻き掛けられる頻度が多い外周側の弾性変形を抑制するようにシーブ支持部材17が設けられている。図1に示す例では、テーパ状に形成されその外径が大きく形成された側が開口しており、その開口部が可動シーブ7の背面と対向するように配置された中空円錐状のシーブ支持部材17が、円筒軸13と嵌合している。また、シーブ支持部材17の開口部と可動シーブ7の外周側の背面とが接触して配置されており、可動シーブ7がベルト4から荷重を受けて弾性変形することを抑制するように構成されている。さらに、シーブ支持部材17が軸線方向に移動することを防止するために、円筒軸13の端部からネジ部材18が螺合して配置され、そのネジ部材18の外周部とシーブ支持部材17の内周部とが接触し、また開口部側の先端部が可動シーブ7に形成された張り出し部7bに沿って折り曲げられ、その先端部が張り出し部7bから半径方向の内周側に突出するように設けられたスナップリング19と接触するように構成されている。すなわち、シーブ支持部材17を円筒軸13に嵌合させた後に、ネジ部材18を内周部の端部側から、シーブ支持部材17と可動シーブ7とが接触するまで螺合させて組み付けるように構成されている。つまり、可動シーブ7の背面にシーブ支持部材17が接触するまで、シーブ支持部材17を押圧するように構成されている。その結果、シーブ支持部材17は、可動シーブ7の背面とネジ部材18もしくはスナップリング19により挟み付けられた状態となるので、可動シーブ7と一体に軸線方向に移動することができ、また、可動シーブ7の外周側が弾性変形することを抑制することができる。
【0023】
さらに、可動シーブ7の外周側の背面のみを支持するようにシーブ支持部材17を設けると、可動シーブ7の外周側の部分以外でベルト4を挟み付けている場合には、その部分での弾性変形を十分に抑制することができない可能性がある。そのため、この発明に係るベルト式無段変速機1は、シーブ支持部材17と可動シーブ7の背面との間に形成された空間20に圧油を供給し、その圧油の油圧に基づいた荷重を可動シーブ7の背面に作用させることにより、可動シーブ7の弾性変形を抑制するように構成されている。具体的には、上述した油圧室16に圧油を供給するために入力軸12に形成された中空部12aの端部からその入力軸12の外周面に貫通した貫通孔12cおよび、円筒軸13の内周部と空間20とに連通した孔13aを更に形成し、それら中空部12a、貫通孔12cおよび孔13aを介して油圧源から圧油が空間20に供給されるように構成されている。さらに、シーブ支持部材17の壁面には、上記空間20と油圧室16とに連通した貫通孔21が形成され、空間20と油圧室16とに供給された圧油が往来することができるように構成されている。つまり、油圧室16と略同一の油圧が空間20に供給されるように構成されている。このように空間20に油圧を供給することにより、ベルト4からの反力に対向して空間20に供給される油圧に基づいた荷重を可動シーブ7の背面に作用させることができるので、ベルト4が可動シーブ7の外周側で挟み付けられている場合以外であっても、可動シーブ7の弾性変形を抑制することができる。また、シーブ支持部材17は、上述したようにネジ部材18やスナップリング19によって軸線方向の移動を制限されているので、空間20に油圧が作用した場合であっても、その油圧に基づく荷重によりシーブ支持部材17が移動してしまうこと、すなわち、可動シーブ7の背面に作用する荷重が低下してしまうことを防止することができる。なお、図に示す例では、入力軸12から空間20に圧油が供給される経路と油圧室16から空間に圧油が供給される経路とを有しているが、そのいずれか一方の経路もしくは他の油路から圧油が供給されるように構成されていてもよく、また、その空間20に供給される圧油の油圧が油圧室16の油圧と異なるものであってもよい。
【0024】
なお、上述した構成例では、可動シーブ7の外周側の背面とシーブ支持部材17とが接触するように構成されているが、可動シーブ7の外周側の背面とシーブ支持部材17とが接着あるいは溶接などにより一体化されたものであってもよい。また、シーブ支持部材17の内周部は、ネジ部材18により軸線方向の移動を制限されるように構成されているが、例えば、内周部の内壁面にネジ部を形成し、そのネジ部と円筒軸13の外周面とを螺合するように構成してもよい。上記のようにシーブ支持部材17を可動シーブ7の背面と一体化させることや円筒軸13と螺合させることにより、スナップリング19やネジ部材18などのシーブ支持部材17の軸線方向の移動を制限する部材を設けずにシーブ支持部材17を可動シーブ7と一体に軸線方向に移動させることができる。また、可動シーブ7の背面にシーブ支持部材17を接触させる際に、ネジ部材18によりシーブ支持部材17を可動シーブ7の背面に押圧して、所定の荷重を可動シーブ7の背面側に作用させるように構成してもよい。さらに、上述した構成例では、油圧アクチュエータにより可動シーブ7に軸線方向の荷重を作用させるように構成されているが、可動シーブ7の軸線方向に荷重を作用させる構成は、特に限定されるものではなく、カム機構や電動機などにより可動シーブ7に軸線方向の荷重を作用させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1…ベルト式無段変速機、 4…ベルト、 5,6…固定シーブ、 5a,7a…プーリ面、 7,8…可動シーブ、 9,10…油圧アクチュエータ、 12…入力軸、 13…円筒軸、 17…シーブ支持部材、 20…空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と一体化された固定シーブと、該固定シーブに接近もしくは離隔するように前記回転軸と嵌合した他の回転軸と一体化された可動シーブと、前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧する押圧機構と、前記固定シーブと前記可動シーブとが互いに向かい合う面によって形成された溝に巻き掛けられたベルトとを備えたベルト式無段変速機において、
前記可動シーブの背面側の外周部から前記他の回転軸の外周面に亘って前記可動シーブと一体となって軸線方向に移動可能に設けられ、該可動シーブが前記ベルトから受ける荷重によって変形することを抑制するシーブ支持部材を備え、
前記可動シーブと、前記他の回転軸と、前記シーブ支持部材とによって囲われた空間に圧油が供給されることを特徴とするベルト式無段変速機。
【請求項2】
前記シーブ支持部材の内周側の端部を、該シーブ支持部材と前記可動シーブの背面とが接触するまで押圧し、かつ前記シーブ支持部材と前記可動シーブの背面とが接触した状態で、前記他の回転軸に連結されるように構成された部材を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機。
【請求項3】
前記押圧機構は、前記可動シーブの背面側から前記固定シーブ側に油圧を作用させる油圧アクチュエータを含み、
前記シーブ支持部材は、前記空間と前記油圧アクチュエータとに連通した貫通孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載のベルト式無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−47535(P2013−47535A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185774(P2011−185774)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】