説明

ベンジル・シクロアルキル・スフィンゴシン1‐リン酸受容体修飾薬

1つ以上のS1P受容体(特にS1P受容体タイプ)に対して効果があり、且つ、選択的な作用薬である、スフィンゴシン1‐リン酸アナログが提供される。開示の化合物には、任意のリン酸成分だけでなく、加水分解耐性のリン酸サロゲート(例えば、ホスホン酸塩類、アルファ置換ホスホン酸塩類、及びホスホチオネート類)を有する化合物も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上のスフィンゴシン1‐リン酸受容体において活性を有する、新規のスフィンゴシン1‐リン酸アナログに関する。
【0002】
<関連出願への相互参照>
本出願は、2007年9月28日に出願の米国仮出願第60/976,129号の優先権を主張し、この仮出願の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
<アメリカ政府権利>
本発明は、国立衛生研究所によって授けられた認可番号RO1 GM067958のもと、米国政府の支援を受けて成された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
スフィンゴシン1‐リン酸(S1P)は、内皮細胞分化遺伝子(EDG)受容体ファミリーの5つのメンバーの刺激によって、様々な細胞応答を誘起することが報告されているリゾリン脂質メディエーターである。EDG受容体はGタンパク質結合受容体(GPCR)であり、刺激を受けると、アルファサブユニット(Gα)とベータ‐ガンマ(Gβγ)二量体のヘテロ3量体Gタンパク質の活性化を介してセカンドメッセンジャー信号を伝達する。
【0005】
スフィンゴシン1‐リン酸(S1P)は、細胞及び組織からの多くの応答を誘起ことが報告されている。これらの応答のうち有名なものには、リンパ球輸送の変更を介する、アポトーシス抵抗性、細胞形態の変化、細胞遊走、細胞分裂、血管新生、及び免疫系の変調がある。従って、S1P受容体は、例えば、腫瘍性疾患、自己免疫疾患及び組織同種移植の拒否反応を治療するための標的である。スフィンゴシン1‐リン酸は、一部分においてはS1P、S1P、S1P、S1P及びS1Pと名付けられた一連のGタンパク質結合受容体を介して、細胞に信号を伝える。これらの受容体は、50〜55%で同一のアミノ酸を有し、リゾホスファチジン酸(LPA)と構造的に関係付けられる他の3つの受容体(LPA1、LPA2及びLPA3)とともにクラスターを形成する。
【0006】
リガンドがGタンパク質結合受容体(GPCR)結合すると、その受容体で構造変化が誘起され、それによって、結合したGタンパク質のα‐サブユニットにおいてGDPがGTPに置換され、続いてGタンパク質が細胞質へと放出される。α‐サブユニットはその後、βγ‐サブユニットから解離し、それぞれのサブユニットはそれからエフェクタータンパク質と結合し得、これらはセカンドメッセンジャーを活性化して、細胞応答を引き起こす。最終的に、Gタンパク質上のGTPはGDPに加水分解され、その後、Gタンパク質のサブユニットは互いに再会合した後で、受容体と結合する。一般的なGPCR経路において増幅は主要な役割を担うと信じられている。1つのリガンドが1つの受容体に結合すると、多くのエフェクタータンパク質とそれぞれ結合可能な多くのGタンパク質の活性化が引き起こされ得、これにより、細胞応答の増幅を引き起こすことができる。
【0007】
S1P受容体は組織特異的であり、また、応答特異的でもあるとして報告されている。S1P受容体の組織特異性は、ある受容体に対する選択的なアゴニスト若しくはアンタゴニストの開発を、その受容体を含む組織に対する細胞応答に限定することができるので望ましく、これは不必要な副作用を制限する。また、S1P受容体の応答特異性は、他の応答に影響することなく特定の細胞応答を誘導若しくは抑制するアゴニスト又はアンタゴニストの開発を可能にするので重要である。例えば、S1P受容体の応答特異性は、細胞形態に影響を及ぼすことなく血小板凝集を誘導するS1P模倣薬を可能にする。
【0008】
スフィンゴシン1‐リン酸は、スフィンゴシンのスフィンゴシン・キナーゼとの反応でスフィンゴシンの代謝物質として形成され、スフィンゴシン・キナーゼが高濃度で存在し、且つ、S1Pリアーゼが乏しい血小板の凝集において豊富に蓄積する。S1Pは血小板凝集の期間中に放出され、血清に蓄積し、また、悪性腹水においても検出されている。S1Pの可逆的な生物分解性はS1Pリン酸ヒドラーゼのようなエクトフォスファターゼによる加水分解を介して進行すると信じられており、S1PはS1Pリアーゼによって不可逆的に分解される。
【0009】
個々のS1P受容体の刺激することに関しての生理学的意義は、1つには受容体タイプの選択的リガンドが欠如していることに起因してほとんど分っていない。S1P受容体に対する有効なアゴニスト又はアンタゴニスト活性を有するS1Pアナログの分離と解析は、S1Pアナログの溶解度の不足により合成が複雑になることに起因して制限されてきた。
【0010】
現在、S1P受容体を変調することが可能な、新規の有効で選択的な薬剤、より具体的にはS1P受容体アゴニストが、必要とされている。また、S1P受容体の受容体活性化作用と関連する生理学的プロセスの更なる研究のための薬理学的なツールも必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、1つ以上のS1P受容体(特にS1P受容体タイプ)において、有効で選択的なアゴニストであるスフィンゴシン1‐リン酸アナログを提供する。開示の化合物は、リン酸成分を有する化合物、並びに加水分解されないリン酸代替(例えばホスホン酸類、アルファ置換ホスホン酸類(特にアルファ置換はハロゲンある)、及びホスホチオネート類など)を有する化合物を含む。さらに、本発明は、例えば、スフィンゴシン・キナーゼ酵素(最も詳しく言うとスフィンゴシン・キナーゼ2型(SPHK2))によって、インビトロで活性化若しくは変換(例えばリン酸化)される、第一級アルコール含有化合物などのプロドラッグを提供する。
【0012】
従って、本発明は、化学式(I)又は化学式(II)を有するスフィンゴシン1‐リン酸のアナログ、或いは薬理学的に許容されるその塩若しくはそのエステルを提供する。
【0013】
【化1】

【0014】
上記化学式において、RはC、CH又はNである;R、R及びRは、個別にCH、CH、O、S、N又はNRであり;ここでRは水素又は(C‐C10)アルキル基であり;
Xは、ヒドロキシル基(‐OH)、カルボン酸(‐COOH)、メチレン・カルボン酸(‐CHCOOH)、アルファ置換メチレン・カルボン酸、リン酸(‐OPO)、ホスホン酸(‐CHPO)又はアルファ置換ホスホン酸であり;
は水素、ハロ、トリ‐フルオロメチル、(C‐C10)‐アルキル、或いはハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、又はシアノで置換された(C‐C10)アルキル;
は水素、ハロ、(C‐C20)アルキル、(C‐C20)アルコキシ;(C‐C26)アルコキシアルキル;(C‐C20)アルケニル、(C‐C20)アルキニル、(C‐C12)シクロアルキル、(C‐C20)アルキル‐(C‐C12)シクロアルキル、(C‐C10)アリール、(C‐C20)アルキル(C‐C10)アリール、(C‐C10)アリール(C‐C20)アルキル、及びアリール置換アリールアルキルであり;ここでR基の1つ以上の炭素原子は、非過酸化物酸素、硫黄又はNRと個別に置換され得;ここで、Rは水素又は(C‐C10)アルキル基である;
、R、若しくはXのアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、又はヘテロアリール基は、随意に1、2、3、又は4つの基と置換され、ここで置換基は個別にヒドロキシ、ハロ、シアノ、(C‐C10)アルキル、(C‐C10)アルコキシ、C‐アリール、(C‐C24)アリールアルキル、オキソ(=O)、若しくはイミノ(=NR)であり;Rは水素、若しくは(C‐C10)アルキルであり;nは0、1、2、3、若しくは4であり;
【0015】
【化2】

【0016】
は、1つ以上の随意の2重結合を示し、及びRのアルキル基は1つまたは2つのヒドロキシル基と随意に置換され得る。
【0017】
別の態様では、本発明はまた、化学式(I)又は化学式(II)の化合物の任意のエステル類(例えば、化学式(III)又は化学式(IV)を有するリン酸エステル類)も提供する。
【0018】
【化3】

【0019】
上記化学式において、R、R、R、R、R、R及びnについては既に述べたものであり、ここでエステル基は、経口での有用性を高める目的で、プロドラッグを形成するために付加され得る。別の態様では、化学式I、II、III又はIVを有する化合物の光学異性体及び立体異性体が提供される。
【0020】
別の態様では、本発明は、化学式(I)又は(II)の化合物のプロドラッグを提供する。別の態様では、本発明はまた、薬物療法で使用するための化学式(I)、化学式(II)、薬理学的に許容されるその塩類、そのエステル類(例えば、化学式(III)又は化学式(IV))、又はこれらの任意の組合せの化合物も提供する。
【0021】
別の態様では、本発明はまた、以下も提供する。即ち:
S1Pタイプ1受容体におけるアゴニストであり得、それ故、動物に導入した場合に、最大で約5日間若しくはそれ以上の間、リンパ球減少を誘起する化合物;
S1P、S1P及びS1P受容体に対する選択的なアゴニストであり得、例えば、FTY‐720(フィンゴリモド)よりも長い作用持続時間を有し得る本発明の化合物;
化学式(I)、化学式(II)、薬理学的に許容されるその塩類、そのエステル類(例えば、化学式(III)若しくは化学式(IV))又はそれらの任意の組合せの化合物と、薬理学的に許容される担体又は賦形剤と、を含む医薬品組成物;
例えば、ブドウ膜炎、1型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、及び、とりわけ多発性硬化症などの自己免疫疾患の予防又は処置のための方法;
慢性痛、特に神経障害痛(帯状疱疹後の神経痛及び糖尿病に伴う痛みを含むがこれらに限られない)の予防又は処置のための方法;
進行性認知症又は脳変性疾患の予防又は処置のための方法;
移植片の生存を長引かせるためにリンパ球輸送を変更する方法(例えば、固形臓器移植、移植片対宿主病の処置、骨髄移植など);
オータキシンの阻害によってガンの進行を処置若しくは抑制する方法(例えば、腫瘍での血管新生を抑制若しくは阻害することによる);
スフィンゴシン1‐リン酸受容体の活性が関与する、哺乳類における病的状態若しくは病的症状を予防又は処置するための方法。
S1Pリアーゼ活性が関与し、そのS1Pリアーゼの阻害が望まれる、哺乳類の病的状態若しくは病的症状の予防又は処置のための方法;
ここで、これらの方法は、そのような処置を必要としている哺乳類(例えば、ヒト)に、化学式(I)、化学式(II)の化合物、又は薬理学的に許容される塩又はそのエステルの有効量を投与するステップを含む;
哺乳類(例えば、ヒト)において、自己免疫疾患の予防又は阻害、慢性痛の予防又は処置、進行性認知症若しくは脳変性疾患の予防又は処置、リンパ球輸送の変更、或いは腫瘍における血管新生の処置又は予防のための薬剤を調製するための、化学式(I)、化学式(II)の化合物又は薬理学的に許容されるその塩の使用、
が提供される。
【0022】
本発明はまた、化学式(I)、化学式(II)、化学式(III)又は化学式(IV)の化合物を調製するために有用な、本明細書において開示される新規の中間体及びプロセスも提供し、これらには本明細書における図表及び実施例に記載される一般的な及び特異的な中間体並びに合成プロセスが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】化合物VPC122096を調製するための合成スキームを図解する。
【図2】ヒト及びマウスのスフィンゴシン・キナーゼ1型及び2型(SPHK1及びSPHK2)に対する基質としてテスト化合物VPC122093、VPC122096及びVPC122097を、スフィンゴシン(Sph)及びFTY720と比較するインビトロ・アッセイを図解する。
【図3】VPC122096(シクロペンチル)、VPC122093(シクロヘキシル)又はVPC122097(シクロヘプチル)を単回投与量(10mg/kg)で経口投与(強制経口投与)した後のマウスにおける循環リンパ球数を図解する。
【図4】様々な投与量のVPC122096又は媒体をマウスに投与した後の血中総リンパ球数を図解する。
【図5】2%のヒドロキシプロピルβ‐シクロデキストリン(媒体対照)中の単一濃度のVPC122096(1.0mg/kg)を、1グループにつき3匹のマウスに経口投与(強制経口投与)した後の様々な時間帯で循環リンパ球数計測アッセイを行なった結果を図解する。
【図6】化学式IIのさらなる化合物を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の略記が、本明細書において使用される。S1P:スフィンゴシン‐1‐リン酸、S1P1‐5:S1P受容体タイプ、GPCR:Gタンパク質結合受容体、SAR:構造活性相関、EDG:内皮細胞分化遺伝子、EAE:実験的自己免疫脳脊髄炎、NOD:非肥満性糖尿病、TNFα:腫瘍壊死因子アルファ、HDL:高密度リポタンパク質、及び、RT‐PCR:逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応。
【0025】
本発明の記述及び請求においては、別段の定めが無い限りは、本願で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同一若しくは均等な任意の物質及び方法を、本発明の実施又は試験において使用することがあるが、好ましい物質及び方法を本明細書に記載する。以下のそれぞれの用語は、本節におけるものと関連する意味を有する。基、置換基及び範囲についてこれ以下に列挙した特定の好ましい値はただの例示であり、これらの値は、基及び置換基に対して定められた別の値、又は基及び置換基に対して定められた範囲内の別の値を排除するものではない。
【0026】
「1つ(”a”、”an”、”the”)」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」という用語は、1つ若しくは2つ以上(即ち、少なくとも1つ)のその冠詞の文法的目的語について言及するために、本明細書においては交換可能に用いられる。例として、「1つの要素」は1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0027】
「受容体アゴニスト」は、S1P受容体においてS1Pの作用を模倣するが、異なる有用性又は効能を有する化合物として定義される。
【0028】
「受容体アゴニスト」という用語は、S1P受容体においてS1Pの作用を模倣するが、異なる有用性又は効能を有する化合物である。
【0029】
「受容体アンタゴニスト」という用語は、1)固有のアゴニスト活性を欠失しており、また、2)大抵の場合は完全に回復可能で、かつ可逆的に、(1つまたは複数の)S1P受容体のアゴニスト(例えば、S1P)による活性化をブロックする化合物である(「競合的拮抗薬」)。
【0030】
「病的細胞」という用語は、病気又は障害に罹患する被検体の細胞を指し、この病的細胞は、病気又は障害に罹患していない被検体と比較して、変化した表現型を有する。病気又は障害に罹患していない被検体の細胞又は組織と比較して、それと同じ細胞又は組織が変化した表現型を有するのであれば、その細胞又は組織は病気又は障害に「罹患」している。病気又は障害の症状の重症度、そのような症状を患者が経験する頻度、或いはその両方が軽減される場合、病気又は障害は「軽減」される。
【0031】
化学化合物の「アナログ」は、例として、構造において別のものに似ている化合物のことであるが、必ずしも異性体であるわけではない(例えば、5‐フルオロウラシルは、チミンのアナログである)。
【0032】
「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養」という用語は、互いに交換可能に使用され得る。
【0033】
「対照」細胞、「対照」組織、「対照」サンプル又は「対照」被検体は、テスト細胞、テスト組織、テスト・サンプル又はテスト被検体と同じ種類の細胞、組織、サンプル又は被検体である。対照は、例えば、テスト細胞、テスト組織、テスト・サンプル又はテスト被検体が検査されるのと正確に同じ時間又はほぼ同じ時間に検査されてもよい。対照はまた、例えば、テスト細胞、テスト組織、テスト・サンプル又はテスト被検体が検査される時間から離れた時間に検査されてもよく、また、その対照の検査結果は、テスト細胞、テスト組織、テスト・サンプル又はテスト被検体の検査によって得られる結果と比較できるように、記録され得る。対照は、テスト・グループ若しくはテスト被検体以外の別のところから得られても、又は同様のところから得られてもよく、ここで、テスト・サンプルは、テストが実施される対象である病気又は障害を患うと疑われる被検体から得られる。
【0034】
「テスト」細胞、「テスト」組織、「テスト」・サンプル又は「テスト」被検体は、検査されるもののことである。
【0035】
「病変を示す(pathoindicative)」細胞、「病変を示す」組織又は「病変を示す」サンプルとは、それらが存在する場合には、その細胞、組織又はサンプルが見つかった動物(又は、その組織が取得された動物)が、病気又は障害に罹患することを示すものである。例として、動物の肺組織において、1以上の乳腺細胞が存在することは、この動物が転移性乳がんに罹患することを示す指標である。
【0036】
1以上の細胞が病気又は障害に罹患しない動物の組織に存在する場合は、この組織は細胞を「正常に含む」。
【0037】
「検出する」という語、及びその文法的変形は、定量化を伴わない種類の測定を指す。一方、「測定する」若しくは「計測する」という語の用法と、その文法的変形は、定量化を伴う種の測定を指す。「検出」及び「特定」は、本明細書においては互いに交換可能に用いられる。
【0038】
「検出可能なマーカ」又は「レポーター分子」は、マーカを持たない類似した化合物の存在下で、マーカを含む化合物を特異的に検出することが可能な原子又は分子のことである。検出可能なマーカ又はレポーター分子には、放射性同位体、抗原決定基、酵素、ハイブリダイゼーションに使用可能な核酸、クロモフォア、フルオロフォア、化学発光分子、電気化学的に検出可能な分子、並びに、変化した蛍光偏光または変化した光散乱をもたらす分子、が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
「病気」とは、ホメオスタシスを維持することができない動物の健康状態のことであり、病気が改善されない場合は、この動物の健康状態は悪化し続ける。
【0040】
動物の「障害」とは、ホメオスタシスを維持することはできるが、その動物の健康状態が障害の無い場合よりも好ましいものではない健康状態のことである。障害は、処置しないまま放置しても、その動物の健康状態に更なる低下を必ずしも引き起こすわけではない。
【0041】
「有効量」とは、選択した効能を生じるのに十分な量を意味する。化合物の「治療的な有効量」とは、その化合物が投与される被検体に有益な効果を与えるのに十分な化合物の量のことである。例えば、S1P受容体アゴニストの有効量とは、S1P受容体の細胞シグナル伝達の活性を低下させる量のことである。
【0042】
「治療」処置とは、病気の徴候を示す被検体に、それらの徴候を軽減するか又は除去する目的で施される処置のことである。
【0043】
「処置」という用語は、特定の障害又は状態の予防、或いは特定の障害又は状態に関わる症状の緩和、抑制、若しくは除去を含む。「予防」処置とは、病気に伴う病状が進行する危険性を軽減する目的で、病気の徴候を示さないか、又は病気の初期の徴候だけを示す被検体に対して施される処置である。
【0044】
「機能」分子とは、その分子自体が特徴付けられる特性を示す形の分子のことである。例として、機能酵素とは、この酵素が特徴付けられる特徴的な触媒活性を示すもののことである。
【0045】
「阻害」という用語は、上記の機能を低下させるか、若しくは妨げる開示の化合物の能力のことを指す。少なくとも10%の阻害が好ましく、少なくとも25%の阻害がより好ましく、少なくとも50%の阻害がさらに好ましく、そして、機能が少なくとも75%阻害されることが最も好ましい。
【0046】
「サンプル」とは、好ましくは被検体由来の生体サンプルのことを指し、以下に限定されることは無いが、正常組織サンプル、病変組織サンプル、バイオプシー、血液、唾液、糞便、精液、涙及び尿を含む。サンプルはまた、目的の細胞、組織、若しくは液体を含む、被検体から得られる任意の別の起源由来の材料でもあり得る。サンプルはまた、細胞培養又は組織培養からも取得され得る。
【0047】
本明細書で使用される「標準」という用語は、比較のために使用される何らかのものを指す。例えば、これは、テスト・サンプル中の化合物を計測する際に、対照サンプルに対して投与又は添加され、結果を比較するために用いられる既知の標準試薬又は標準化合物であり得る。標準とはまた、試薬又は化合物などの「内部標準」のことも指し得、この試薬または化合物は、既知の量でサンプルに添加され、目的のマーカを計測する前にサンプルが処理されるか又は精製若しくは抽出工程を受ける場合に、精製度又は回収率などの事柄を測定するのに有用である。
【0048】
分析、診断又は処置の「被検体」は、動物である。そのような動物は哺乳類を含み、好ましくはヒトを含む。
【0049】
「精製」という用語及び類義語は、天然の環境で分子又は化合物と通常は関係する他の化合物に比して、その分子又は化合物を濃縮することに関する。「精製」という用語は、処理の期間に、特定の分子の完全な純度が達成されることを必ずしも示す分けではない。本明細書で用いられる「高純度」の化合物とは、純度90%を超える化合物のことを指す。
【0050】
「非経口」という用語は、消化管を通らず、例えば、皮下、筋肉内、髄腔内又は静脈などの他の何らかのルートによることを意味する。
【0051】
化合物の「誘導体」とは、例えば、水素をアルキル基、アシル基若しくはアミノ基で置換するなど、1以上の工程で、類似した構造の別な化合物から生成され得る化学化合物のことを指す。
【0052】
「薬理学的に許容される担体」という用語は、当技術分野で周知の任意の標準的な薬理学的に許容される担体を含む。これらは例えば、リン酸緩衝生理塩食塩水、ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデクストリン(HO‐プロピル‐β‐シクロデクストリン)、水、エマルジョン類(例えば油/水又は水/油エマルジョン)、及び様々な種類の湿潤剤などである。この用語はまた、米国連邦政府の規制機関の承認を得るか、又はヒトを含む動物での使用に関して米国薬局方にリストされる任意の薬剤を包含するものである。
【0053】
「薬理学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の生物学的効果と生物学的特性とを保持し、且つ、生物学的に又は別の観点で有害ではない塩類のことを指す。多くの場合に、本発明の化合物は、アミノ基若しくはカルボキシル基、又はそれらに類似する基の存在によって、酸性塩類若しくは塩基性塩類を形成することができる。
【0054】
「使用説明書資料」には、出版物、記録物、図表、若しくは指定された用途に対する本発明の組成物の有用性を伝えるために使用可能な任意の他の表現媒体が含まれる。本発明のキットの使用説明書資料は、例えば、組成物を含む容器に添付されても、又はこの組成物を含む容器と共に出荷されてもよい。或いは、受取人によって使用説明書資料と組成物とが一緒に使われることを想定の上で、使用説明書資料は容器とは別に出荷されてもよい。
【0055】
開示の方法は、本明細書において特定される阻害剤と、この阻害剤又はこの阻害剤を含む組成物の細胞又は動物への投与を記載する使用説明書資料とを含むキットを含む。これは、開示の化合物を細胞又は動物に投与する前に、その組成物を溶解又は懸濁するための溶媒(好ましくは滅菌されている)を含むキットなど、当業者には周知の他の実施形態のキットが含まれるものと解釈されるべきである。好ましくは、動物はヒトである。
【0056】
不斉中心を有する開示の化合物が存在し得、そして、光学活性体及びラセミ体に分離され得ることが当業者には明らかだろう。いくつかの化合物は多形を示し得る。開示の化合物は、本明細書に記載の有用な特性を有する、ラセミ体、光学活性体、多形、若しくは立体異性体などの任意の形態、又はその混合物の全てを包含するものであることが理解されよう。光学活性体を調製する方法については、当該技術分野においてよく知られており(例えば、再結晶化技術によるラセミ体の溶解によって、光学活性出発物質からの合成によって、キラル合成によって、又はキラル固定相を用いたクロマトグラフ分離によって)、また、本明細書で記載された標準テストを用いて、若しくは当該技術分野では周知の別の類似したテストを用いて、S1Pアゴニスト活性を測定する方法についても、当該技術分野においてよく知られている。
【0057】
化合物が、酸性塩類又は塩基性塩類を形成するのに十分に塩基性又は酸性である場合、塩類としてこの化合物を使用することが適している可能性がある。例えば、トシラート塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α‐ケトグルタル酸塩、及びα‐グリセロリン酸塩などの生理学的に許容されるアニオンを形成する酸を用いて形成される有機酸付加塩類が、許容される塩類の例である。無機塩類もまた形成され得、これらは、塩酸塩類、硫酸塩類、硝酸塩類、重炭酸塩類及び炭酸塩類を含む。
【0058】
薬理学的に許容される酸付加塩類は、無機酸及び有機酸から調製され得る。無機酸由来の塩類には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが含まれる。有機酸由来の塩類には、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、サリチル酸などが含まれる。
【0059】
薬理学的に許容される塩基付加塩類は、無機塩基及び有機塩基から調製され得る。無機塩基由来の塩類には、ほんの一例として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩が含まれる。有機塩基由来の塩類には、以下に限定されることはないが、例えば、アルキルアミン類、ジアルキルアミン類、トリアルキルアミン類、置換アルキルアミン類、ジ(置換アルキル)アミン類、トリ(置換アルキル)アミン類、アルケニルアミン類、ジアルケニルアミン類、トリアルケニルアミン類、置換アルケニルアミン類、ジ(置換アルケニル)アミン類、トリ(置換アルケニル)アミン類、シクロアルキルアミン類、ジ(シクロアルキル)アミン類、トリ(シクロアルキル)アミン類、置換シクロアルキルアミン類、二置換シクロアルキルアミン類、三置換シクロアルキルアミン類、シクロアルケニルアミン類、ジ(シクロアルケニル)アミン類、トリ(シクロアルケニル)アミン類、置換シクロアルケニルアミン類、二置換シクロアルケニルアミン類、三置換シクロアルケニルアミン類、アリールアミン類、ジアリールアミン類、トリアリールアミン類、ヘテロアリールアミン類、ジヘテロアリールアミン類、トリヘテロアリールアミン類、複素環アミン類、ジ複素環アミン類、トリ複素環アミン類、アミンの置換基のうちの少なくとも2つが異なって、これら少なくとも2つの置換基がアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環などであるジアミン類とトリアミン類との混合物などの第一級アミン、第二級アミン、及び、第三級アミンの塩類を含む。また、2つ又は3つの置換基がアミノ窒素と共に複素環基又はヘテロアリール基を形成する、アミン類も含まれる。例示的なアミンは、ほんの一例として、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n‐プロピル)アミン、エタノールアミン、2‐ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N‐アルキルグルカミン類、テオブロミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、N‐エチルピペリジンなどを含む。また、例えば、カルボン酸アミド類(例えば、カルボキサミド類、低級アルキルカルボキサミド類、ジアルキルカルボキサミド類など)などの他のカルボン酸誘導体が本発明の実施において有用であろうことも理解されるべきである。
【0060】
許容される塩類は、当該技術分野で周知の標準的な手順(例えば、アミンなどの十分に塩基性の化合物を、生理学的に許容されるアニオンを供与する酸と反応させることによって)を用いて、得られてもよい。有機酸(例えば、カルボン酸)のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム又はリチウム)塩類又はアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩類もまた生成され得る。
【0061】
化学式(I)、化学式(II)の化合物を調製するための方法、或いは化学式(I)又は化学式(II)の化合物の調製に有用な中間体を調製するための方法が、本発明の更なる実施形態として提供される。化学式(I)又は化学式(II)の化合物の調製に有用な中間体もまた、本発明の更なる実施形態として提供される。
【0062】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、がブロモ、クロロ、フルオロ、及びヨードを含む。
【0063】
本明細書で使用される「ハロアルキル」という用語は、少なくとも1つのハロゲン置換基を有するアルキル基を指す(例えば、クロロメチル、フルオロエチル又はトリフルオロメチルなど)。
【0064】
本明細書で使用される「アルキル又はC‐C20アルキル」という用語は、1から20の炭素原子を有する分岐アルキル基又は直鎖アルキル基のことを表す。典型的には、C‐C20アルキル基は、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec‐ブチル、tert‐ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本明細書で使用される「アルケニル又はC‐C20アルケニル」という用語は、2から20の炭素原子を有し、且つ、少なくとも1つの二重結合を有するオレフィン系の不飽和の分岐又は直鎖の基のことを表す。そのような基の例には、1‐プロペニル、2‐プロペニル、1,3‐ブタジエニル、1‐ブテニル、ヘキセニル、ペンテニルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。「アルキニル又はC‐C20アルキニル」という用語は、2から20の炭素原子を有し、且つ、少なくとも1つの三重結合を有する不飽和した分岐又は直鎖の基のことを指す。そのような基の例には、1‐プロピニル、2‐プロピニル、1‐ブチニル、2‐ブチニル、1‐ペンチニルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。「C‐C12シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどを表す。
【0065】
本明細書で使用される「随意に置換」という用語は、それぞれが個別に選択される0、1つ、2つ、3つ又は、4つの置換基のことを指す。個別に選択される置換基の各々は、他の置換基と同じであっても、又は異なっていてもよい。置換基は、個別に、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、(C‐C10)アルキル、(C‐C10)アルコキシ、C‐アリール、(C‐C24)アリールアルキル、オキソ(=O)、又はイミノ(=NR)であり、ここでRは水素又は(C‐C10)アルキルである。
【0066】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、フェニル、ベンジル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどを含むが、これらに限定はされない1つ又は2つの芳香環を有する、単環式又は二環式のC‐C10炭素環系のことを指す。
【0067】
本明細書で使用される「随意に置換されたアリール」には、0から4つの置換基を有するアリール化合物と、1つから3つの置換基を有するアリール化合物を含む置換されたアリールとを含み、ここで置換基は、例えば、アルキル置換基、ハロ置換基、若しくはアミノ置換基などの基を含む。
【0068】
「アリールアルキル」という用語は、アルキル基を介して親成分に付加される任意のアリール基(例えば、アリール(C‐C20アルキル))のことを指す。従って、(C‐Cアリール)(C‐Cアルキル)という用語は、C‐Cアルキル基を介して親成分に付加される五員環又は六員環の芳香環のことを指す。
【0069】
「複素環式基」という用語は、酸素、硫黄又は窒素である1つから3つのヘテロ原子を含む、随意に置換された単環式‐又は二環式の炭素環系を指す。
【0070】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、1つから3つのヘテロ原子を含む1つから2つの芳香環を有する、随意に置換された単環式‐又は二環式の炭素環系のことを指し、フリル、チエニル、ピリジルなどを限定されることなく含む。
【0071】
「二環式」という用語は、不飽和又は飽和の安定した7から12員の架橋又は縮合二環式の炭素環を表す。二環式の環は、安定した構造を与える任意の炭素原子に付加され得る。この用語には、ナフチル、ジシクロへキシル、ジシクロヘキセニルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
本発明の化合物は、その分子中に1つ以上の不斉中心を含み得る。本発明によれば、この立体化学を示さないいかなる構造も、全てのいろいろな光学異性体、及びそのラセミ混合物を包含するものとして理解されるべきである。
【0073】
本発明の化合物は、互変異性型で存在し得、また、本発明は、互変異性体の混合物と、分離された個別の互変異性体との双方を含む。
例えば、以下の構造:
【0074】
【化4】

【0075】
は、以下の構造の混合物を表すものとして理解される。
【0076】
【化5】

【0077】
16:0、18:0、18:1、20:4又は22:6の炭化水素とは、分岐又は直鎖のアルキル基或いはアルケニル基のことを指し、ここで1つ目の整数は基中の炭素の総数を表し、2つ目の整数は基中のシス二重結合の数を表す。
【0078】
「S1P修飾薬」とは、インビボ又はインビトロで、S1P受容体活性における検出可能な変化(例えば、実施例に記載されるか、または、当該技術分野で周知なバイオアッセイなどの所定のアッセイによって計測されるS1P活性における少なくとも10%の増加又は減少など)を誘起することが可能な化合物又は組成物のことを指す。本明細書で使用される「S1P受容体」とは、特定のサブタイプが示されない限りは、S1P受容体サブタイプの全て(例えば、S1P受容体のS1P、S1P、S1P、S1P及びS1P)を指す。
【0079】
「薬剤の50%効果濃度(EC50)」という用語は、スフィンゴシン若しくはS1P受容体の他のリガンドの結合、又は、S1P受容体の機能活性(例、信号伝達活性)を含む、所定の活性がそのS1P受容体に対する最大値の50%となるときの薬剤の濃度のことを指す。別の言い方をすれば、さらにリガンド/アゴニストを添加してもS1P受容体活性が増加しない場合のS1P受容体の活性量に100%の活性化が設定され、且つ、0%の活性化には、そのアッセイにおいてリガンド/アゴニストを添加していない状態での活性量が設定される場合に、50%の活性化を与える薬剤の濃度がEC50である。
【0080】
「リン酸アナログ」、「ホスホン酸アナログ」又は「リン酸エステル」という用語は、リン原子が+5の酸化状態にあり、且つ、1つ以上の酸素原子が、酸素ではない成分(non‐oxygen moiety)と置換されるリン酸及びホスホン酸のアナログを含み、これらのアナログには、例えば、リン酸アナログ類のホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノアート(phosphoroselenoate)、ホスホロジセレノアート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホラニリデート(phosphoranilidate)、ホスホラミデート(phosphoramidate)、ボロノホスフェート類(boronophosphates)などが含まれ、また、結合する対イオンが存在する場合には、例えば、水素、NH、Naなどの対イオンが含まれる。「アルファ‐置換ホスホン酸」という用語は、例えば‐CHFPO、‐CFPO、‐CHOHPO、‐C(=O)POなどのアルファ‐炭素が置換されるホスホン酸(‐CHPO)基を含む。
【0081】
本発明は、1以上のS1P受容体(特に、S1P、S1P及びS1P受容体タイプ)に対して、受容体アゴニストとしての活性を有する、スフィンゴシン1‐リン酸(S1P)アナログを提供する。本発明は、リン酸成分を有する化合物と、ホスホン酸類、特にアルファ置換基がハロゲンであるアルファ‐置換ホスホン酸類、及びホスホチオネート類などの加水分解耐性のリン酸サロゲートを有する化合物との両方を含む。
【0082】
S1P受容体の一実施形態において、アゴニストは、化学式(IIA)の一般構造を有する。
【0083】
【化6】

【0084】
ここで、nは0、1、2、3又は4であり;Xは、ヒドロキシル基(‐OH)、カルボン酸(‐COOH)、メチレン・カルボン酸(‐CHCOOH)、アルファ‐置換カルボン酸、リン酸(‐OPO)、ホスホン酸(‐CHPO)又はアルファ置換ホスホン酸(以下を含む:‐CHFPO、‐CFPO、‐CHOHPO、‐C(=O)PO)であり;
ここで、Rは水素、ハロゲン(ここで、F又はClは好ましいハロゲンである)、(C‐C)アルキル(例えば、メチル、エチル及びプロピルなど)、或いは例えば、トリフルオロメチルなどのハロ‐、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ置換(C‐C)アルキル;Rはアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキル置換アリール、アルキル置換シクロアルキル、アリールアルキル、或いは、アリールアルキル置換アリールである。Rにおいて、鎖長5〜8の炭素原子が好ましく;又は薬理学的に許容されるその塩である。
【0085】
本発明はまた、例えば、リン酸エステル類などの化学式(II)の任意の化合物のエステルを提供する。経口での有用性を向上させる目的でプロドラッグを形成するために、エステル基が付加され得る。
【0086】
好ましい一実施形態では、化学式(II)を有する化合物において、Rは、H、ハロ(好ましくはF若しくはCl)、メチル、トリ‐フルオロメチル、エチル、プロピル又は他の低級アルキル(C―C)、或いは、ハロ‐、ヒドロキシ‐、アルコキシ‐、シアノ‐置換低級アルキル基であり;また、Rは、好ましくは炭素原子5〜8の鎖長を有する、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキル(随意に置換されたアリール)、アルキル(随意に置換されたシクロアルキル)、アリールアルキル、及びアリールアルキル(随意に置換されたアリール)である。
【0087】
S1P受容体アゴニスト・プロドラッグ(好ましくは、S1P受容体タイプに選択的なアゴニスト)の潜在的用途には、例えば、ブドウ膜炎、I型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、及び、とりわけ多発性硬化症などの自己免疫疾患に対する処置方法として、リンパ球輸送を変更することが含まれるが、これに限定されるわけではない。多発性硬化症の「処置」には、再発寛解型、慢性進行性などを含む病気の様々な形態が含まれ、そして、S1P受容体アゴニストは、病気の徴候及び症状を軽減するために、或いは予防的に、単独で若しくは他の薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0088】
更に、本発明の化合物はリンパ球輸送の変更のために使用され得、これは例えば、固形臓器移植、移植片対宿主病の処置、骨髄移植などの同種移植片の生存を引き伸ばすための方法である。
【0089】
開示の化合物は、オータキシンを阻害するために使用され得る。オータキシンは、血漿・ホスホジエステラーゼであり、最終産物阻害を受けることが例証されてきた。オータキシンは、いくつかの基質を加水分解して、リゾホスファチジン酸とスフィンゴシン1‐リン酸とを産生し、また、癌の進行及び血管新生に関わるとされてきた。従って、VPC122096などのS1P受容体アゴニスト・プロドラッグは、オータキシンを阻害するために使用され得る。この活性は、S1P受容体での受容体活性化作用と組み合わせられても、又はそのような活性とは無関係であってもよい。
【0090】
更に、本発明の化合物は、S1Pリアーゼの阻害に有用であり得る。S1Pリアーゼは、不可逆的にS1Pを分解する細胞内酵素である。S1Pリアーゼの阻害は、リンパ球減少を伴ってリンパ球輸送を乱す。従って、S1Pリアーゼ阻害剤は、免疫系機能を変調するのに有用であり得る。それ故、VPC122096などのプロドラッグは、S1Pリアーゼを阻害するために使用され得る。この阻害は、S1P受容体活性と協調してもよく、或いは、あらゆるS1P受容体における活性と無関係であってもよい。
【0091】
本発明はまた、本発明の化合物を含有する医薬組成物も含む。より詳細には、そのような化合物は、当業者には周知の薬理学的に許容される標準的な、担体、充填剤、可溶化剤及び安定剤を使用する医薬品組成物として処方され得る。本明細書で記載されるように、例えば、本発明の化合物、またはそのアナログ、誘導体、もしくは修飾物を含む医薬品組成物は、被検体に適切な化合物を投与するために使用される。
【0092】
本発明の化合物は病気又は障害の処置に有用であり、これらの病気又は障害の処置は、治療的に許容される量の化学式(I)の化合物、或いは治療的に有効な量の化学式(I)又は化学式(II)の化合物と、薬理学的に許容される担体とを含む医薬品組成物を、病気又は障害の処置を必要とする被検体に投与することを含む。
【0093】
基、置換基及び範囲に対して以下に列挙された値は、ただの例示であって、これらの値は、基及び置換基に対して規定された他の値、或いは基及び置換基に対して規定された範囲内の他の値を排除するものではない。
【0094】
低級アルキル基に対する典型的な値は、エチル又はプロピルである。
【0095】
ハロに対する典型的な値は、フッ素又は塩素である。
【0096】
Xに対する典型的な値は、ヒドロキシ又はOPOである。
【0097】
アルファ‐置換ホスホン酸は、‐CHFPO、‐CFPO、‐CHOHPO、‐C(=O)PO)又はチオリン酸塩(OPOSH)を含む。
【0098】
に対する典型的な値は、水素である。
【0099】
に対する典型的な値は、5〜8の炭素原子の鎖長を有するアルキル基である。
【0100】
に対する更なる典型的な値は、ヘプチル、オクチル、ノニル、‐O‐ヘプチル、CH‐O‐CH‐CH‐CH‐CH‐CH‐CH‐、‐C(=O)ヘプチル又はCH‐CH‐O‐CH‐CH‐O‐CH‐CH‐O‐である。
【0101】
アルキル基に対する更なる典型的な値は、オクチル、CH‐O‐CH‐CH‐CH‐CH‐CH‐CH‐又は‐O‐ヘプチルである。
【0102】
別の典型的なRアルキル基は、オクチルである。
【0103】
nに対する典型的な値は、2又は3である。
【0104】
二重結合を有する典型的なシクロアルキル基又は複素環式基は、以下を含む:
【0105】
【化7】

【0106】
典型的な化合物は、シクロアルキル環のパラ位に配置されたR基を有する。
【0107】
典型的な化合物は、Rのオルト位又はメタ位に配置されたR基を有する。
【0108】
典型的な化合物は、ベンジル・シクロアルキル基のパラ位(即ち、1,4)に配置されたR基を有する。
【0109】
本発明の化合物のエステル類の例(これらに限定はされない)は、X基が以下である化合物を含む;
【0110】
【化8】

【0111】
ここで、YはO、CH、CHOH、CHF、CF若しくは‐C(=O)‐であり;RとR10は、個別にアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、及び以下に示すものである;
【0112】
【化9】

【0113】
ここで、R11はC‐Cアルキル、C‐Cアルケニル、C‐Cアルキニル又は随意に置換されたアリールである。好ましいR基及びR10基は、アルコキシ、及び以下に示すものである;
【0114】
【化10】

【0115】
VPC122096を調製するための合成経路は、図1のスキームで提供される。化学式(I)又は化学式(II)の更なる化合物は、下記の特定の実施例におけるスキームと、詳細な説明とによる手順に対して既知の変更を用いて、当業者によって調製され得る。
【0116】
化学式(II)の典型的な化合物はVPC122096であり、ここで、XはOH、Rは水素、Rはオクタン(C17)、nは2であり、また、R基はフェニル環のパラ位にある。この化学式は以下の通りである:
【0117】
【化11】

【0118】
化学式(II)の別の典型的な化合物はVPC122093であり、ここで、XはOH、Rは水素、Rはオクタン(C17)、nは3であり、また、R基はフェニル環のパラ位にある。この化学式は以下の通りである:
【0119】
【化12】

【0120】
化学式(II)の別の典型的な化合物はVPC122097であり、ここで、XはOH、Rは水素、Rはオクタン(C17)、nは4であり、また、R基はフェニル環のパラ位にある。この化学式は以下の通りである:
【0121】
【化13】

【0122】
本発明はまた、以下の異性体を含む:
【0123】
【化14】

【0124】
化学式(II)の別の典型的な化合物はVPC122096‐Pであり、ここで、XがOPO、Rは水素、Rはオクタン(C17)、nは2であり、また、R基はフェニル環のパラ位にある。この化学式は以下の通りである:
【0125】
【化15】

【0126】
化学式(II)の更なる典型的な化合物は、図6に例示される。
【0127】
化学式(I)の更なる典型的な化合物は、シクロアルキル環にヘテロ原子(例えば、N、S、O)或いは二重結合を含み、以下の構造含む:
【0128】
【化16】

【0129】
本発明はまた、化学式(I)又は化学式(II)の化合物のエステル類も提供し、ここで、エステルを形成することにより化合物をプロドラッグへと変換して、例えば、経口での有用性の向上など、投与を向上させることができる。更に、本発明はまた、化学式(I)又は化学式(II)の化合物の薬理学的に許容される塩類も提供する。更に、本発明は、化学式(I)又は化学式(II)によって記述される構造の考え得る全ての異性体を提供し、nが1(シクロブタン)である場合は、化合物は対称性を有し、また、不斉中心を持たず、しかしながら、シス型とトランス型が存在することに留意されたい。
【0130】
本発明の1つ以上の化合物を含む医薬品組成物は、その投与を必要としている患者に、以下の経路と手法のうちいくつかを用いても投与することができる。これらの経路と手法には、局所性、経口、口腔、静脈、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下腺、膣、眼、肺、又は直腸の手法が含まれるが、これらに限定されるものではない。経口経路は、本発明の化合物を必要とするほとんどの状況に対して通常は使用される。急性治療には、静脈注射又は静脈内注入が好ましい。メンテナンス療法には、経口又は非経口(例えば、筋肉内若しくは皮下)の経路が好ましい。
【0131】
一実施形態によれば、化学式(I)、化学式(II)の化合物、薬理学的に許容されるその塩類、そのエステル類、そのアナログ、その誘導体、その修飾物或いはそれらの組合せと、アルブミンとを含む組成物が提供される。より詳細には、この組成物は、化学式(I)、化学式(II)の化合物、薬理学的に許容されるその塩類、そのエステル類、そのアナログ、その誘導体、その修飾物或いはそれらの組合せと、薬理学的に許容される担体と、0.1〜1.0%のアルブミンとを含む。アルブミンはバッファとして機能し、また、化合物の溶解度を向上させる。一態様において、アルブミンは添加されない。
【0132】
一実施形態において、本発明の実施に有用な医薬品組成物は、1ng/kg/日から100mg/kg/日の間の投与量を供給するように投与され得る。別の実施形態において、本発明の実施に有用な医薬品組成物は、1ng/kg/日から100g/kg/日の間の投与量を供給するように投与され得る。
【0133】
有用な薬理学的に許容される担体は、グリセロール、水、食塩水、エタノール及び他の薬理学的に許容される塩溶液(例えば、リン酸塩及び有機酸塩類)を含むが、これらに限定されるものではない。これらの及び他の薬理学的に許容される担体の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1991年、Mack出版社、ニュージャージー)に記載される。
【0134】
医薬品組成物は、滅菌した注射可能な水性若しくは油性の懸濁液又は溶液の形で調製、包装、或いは販売され得る。この懸濁液又は溶液は周知技術によって処方され得、また、有効成分に加えて、本明細書に記載される、分散剤、湿潤剤、及び懸濁化剤などの付加成分を含み得る。そのような滅菌された注射可能な製剤は、例えば、水、又は1,3ブタン・ジオールなどの非毒性で非経口的に許容される希釈剤或いは溶媒を用いて調製され得る。他の許容される希釈剤及び溶媒には、リンガー溶液、等張食塩水及び不揮発性油(例えば合成のモノグリセリド又はジグリセリド)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
本明細書に記載されるいずれかの方法を用いて特定される化合物は、本明細書に記載されるいずれかの病気及び障害の処置のために、被検体に処方及び投与され得る。しかしながら、本発明の化合物の使用は、本明細書に記載される病気及び障害のみを含むものと解釈されるべきではない。好ましくは、被検体はヒトである。
【0136】
本明細書に記載される医薬品組成物の製剤は、薬理学の分野で周知の任意の方法、或いは薬理学の分野で今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、そのような調製方法は、有効成分を、担体又は1つ以上の他の副成分と関連した状態にするステップと、その後で、必要であるか又は望ましい場合は、その生産物を、所望の単回投与量単位若しくは複数回投与量単位に成形又は包装するステップと、を含む。
【0137】
本明細書に提供される医薬品組成物の記載は、主には、ヒトに投与するための医薬品組成物を対象とするが、そのような組成物はあらゆる種類の動物への投与に適していることが、当業者には理解されるだろう。
【0138】
ヒトへと投与するための医薬品組成物を、様々な動物へと投与するための組成物を提供するために改変することについてはよく理解されており、通常の熟練した獣医薬理学者であれば、例えあったとしても、ただ単に通常の実験を用いて、そのような改変を設計及び実施することができる。本発明の医薬品組成物の投与が意図される被検体には、ヒト、他の霊長類、及び、哺乳類(例えば牛、ブタ、馬、羊、猫及び犬などの商業的に関連する哺乳類を含む)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0139】
本発明の医薬品組成物は、バルクで、単回単位用量として、若しくは複数の単回単位用量として、調製、包装、又は販売され得る。本明細書で使用される「単位用量」とは、所定量の有効成分を含む医薬品組成物の個々の量のことである。有効成分の量は、一般的には、被検体に投与されるであろう有効成分の用量と等しいか、又は、利便性が良いようにそのような用量を分割した用量(例えば、そのような用量の2分の1又は3分の1)である。
【0140】
本発明の医薬品組成物における、有効成分、薬理学的に許容される担体、及び任意の付加成分の相対量は、処置を受ける被検体の体質、大きさ、並びに状態に応じて、また更には、組成物が投与されることになる経路にも応じて、変化する。例として、組成物は0.1%から100%(w/w)の間で有効成分を含み得る。
【0141】
有効成分に加えて、本発明の医薬品組成物は、1以上の追加の薬学的に有効な成分を更に含み得る。特に想定される追加の薬剤には、制吐剤及びスカベンジャー(例えばシアン化物スカベンジャー及びシアン酸スカベンジャーなど)が含まれる。
【0142】
本発明の医薬品組成物の放出制御製剤又は徐放出製剤は、従来の技術を用いて作成され得る。
【0143】
いくつかの場合には、使用される剤形は、その剤形において、例えば、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、浸透圧システム、多層膜コーティング、微小粒子、リポソーム、又はミクロスフェア、或いはそれらの組み合わせを使用して、1以上の有効成分の徐放又は放出制御するものとして提供され得、これにより、様々な比率で所望の放出特性をもたらすことができる。当業者には周知の典型的な放出制御製剤(本明細書に示されるものを含む)が、本発明の医薬品組成物とともに使用するために、容易に選択され得る。このようにして、放出制御に適する、例えば錠剤(タブレット)、カプセル、ジェルキャップ、及びカプレットなどの経口投与用の単回単位用量の形態が包含される。
【0144】
放出制御製剤は、所望の治療的効果を直ちに生じる量の薬を初めに放出し、その後、長期間にわたって、この治療的効果のレベルを維持するために、他の量の薬を徐々に且つ持続的に放出するように設計され得る。体内で薬をこの一定のレベルの維持するためには、代謝され、体から排出される薬の量を補う速度で、剤形から薬が放出されなければならない。有効成分の放出制御は、例えば、pH、温度、酵素、水又は他の生理学的状態若しくは他の化合物などの様々な誘導因子によって促進され得る。
【0145】
本発明の医薬品の粉末製剤及び粒剤は、既知の方法を使用して調製され得る。そのような製剤は、直接被検体に投与されてもよく、例えば、錠剤を形成するために用いられても、カプセルを充填するために用いられても、或いは、そのような製剤に水性若しくは油性の媒体を加えることよって水性又は油性の懸濁液又は溶液を調製するために用いられてもよい。これらの製剤の各々は更に、1つ以上の分散剤若しくは湿潤剤、懸濁化剤、及び防腐剤を含み得る。例えば、充填剤、甘味剤、香味剤又は着色剤などの更なる賦形剤もまた、これらの製剤に含まれ得る。
【0146】
「油性」液体とは、カーボンを含有する液体分子を含み、且つ、水よりも極性が低い特性を示すもののことである。
【0147】
経口投与用の本発明の医薬品組成物の製剤は、それぞれが所定量の有効成分を含む個々の固形投与単位の形状(錠剤、硬カプセル若しくは軟カプセル、カシェー、トローチ又はロゼンジを含むが、これらに限定はされない)で調製、包装、若しくは販売され得る。経口投与用の他の製剤は、粉末製剤又は粒剤、水性又は油性の懸濁液、水性又は油性の溶液、ペースト、ジェル、歯みがき粉、洗口液、コーティング、含嗽液、或いはエマルジョンを含むが、これらに限定されるものではない。含嗽液及び洗口液という用語は、本明細書においては互いに交換可能に用いられる。
【0148】
有効成分を含む錠剤は、例えば、随意に1つ以上の付加成分と伴に、有効成分を圧縮するか、又は成形することによって作成され得る。圧縮錠は、結合剤、潤滑剤、賦形剤、界面活性剤、及び分散剤のうちの1つ以上と随意に混合された、粉末製剤又は粒剤などの自由に流動する形状の有効成分を、適切な装置において圧縮することによって、調製され得る。湿製錠は、有効成分、薬理学的に許容される担体、及び液体の混合物であって、この液体はこの混合物を湿らせるのに少なくとも十分である、混合物を、適切な装置において成型することによって作成され得る。錠剤の製造に使用される薬理学的に許容される賦形剤には、不活性希釈剤、造粒剤及び崩壊剤、結合剤、及び平滑剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。既知の分散剤には、ポテトスターチ、及びカルボキシメチルスターチナトリウム(sodium starch glycollate)が含まれるが、これらに限定されるものではない。既知の界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウムが含まれるが、これに限定されるものではない。既知の希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム及びリン酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されるものではない。既知の造粒剤及び崩壊剤には、コーンスターチ及びアルギン酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。既知の結合剤には、ゼラチン、アカシア、予めゼラチン化されたトウモロコシスターチ、ポリビニルピロリドン及びヒドロキシプロピル・メチルセルロースが含まれるが、これらに限定されるものではない。既知の平滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、二酸化ケイ素及びタルクが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
錠剤はコーティングされていなくてもよく、又は、被検体の消化管で遅延した崩壊を起こすための既知の方法を用いてコーティングされていてもよく、それによって、有効成分の徐放と、持続する吸収とがもたらされる。例として、グリセリルモノステアレート、又はジステアリン酸グリセリルなどの材料が、錠剤をコーティングするために使用され得る。更なる例として、浸透圧的な放出制御錠剤を形成するために、米国特許第4,256,108号;4,160,452号;4,265,874号に記載される方法を使用して、錠剤はコーティングされ得る。錠剤は更に、薬学的に洗練された口当たりのいい製剤を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、防腐剤又はこれらのうちのいくつかの組合せを含み得る。
【0150】
有効成分を含む硬カプセルは、例えばゼラチンなどの生理学的に分解可能な組成を用いて作成され得る。そのような硬カプセルは、有効成分を含み、また更に、例えば、不活性の固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンなど)を含む付加成分を含み得る。
【0151】
有効成分を含む軟ゼラチンカプセルは、生理学的に分解可能な組成(例えばゼラチン)を用いて、作成され得る。そのような軟カプセルは有効成分を含み、これは水媒体又は油媒体(例えば落花生油、流動パラフィン又はオリーブ油など)と混合され得る。
【0152】
経口投与用の開示の医薬品組成物の液剤は、液体状態で、又は、使用の前に水又は別の適切な媒体を用いて再構成することを意図した乾燥製品の状態で、調製、包装、並びに販売され得る。
【0153】
注射製剤は、例えば、アンプル中、又は防腐剤を含む複数回投与用容器(multi dose container)中に単位用量の形で調製、包装、及び販売され得る。非経口投与用製剤には、懸濁液、溶液、水性若しくは油性の媒体中のエマルジョン、ペースト、及び移植可能な徐放性の製剤若しくは生分解性の製剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような製剤は、懸濁化剤、安定剤、又は分散剤を、限定されることなく含む、1以上の付加成分を更に含み得る。非経口投与用製剤の一実施形態において、有効成分は、再構成された組成物の非経口投与の前に、適当な媒体(例えば、ピロゲンフリーの滅菌水)を用いて再構成するために、乾燥状態(例えば粉末、又は粒状)で提供され得る。
【0154】
本発明の医薬品組成物は、口腔投与用の製剤として、調製、包装、又は販売され得る。そのような製剤は、例えば、従来の方法を使用して作成される錠剤又はロゼンジの形であってよく、また、例えば、有効成分0.1〜20%(w/w)であってよく、このバランスは、経口で溶解可能又は分解可能な組成を含むことができ、本明細書に記載される1つ以上の付加成分を随意に含むことができる。或いは、口腔投与用の製剤は、有効成分を含む、粉末、或いはエアロゾル化若しくは霧化した溶液又は懸濁液を含み得る。散布される際に、そのような粉末化、エアロゾル化、又はエアロゾル化された製剤は、好ましくは、約0.1から約200ナノメートルまでの範囲の平均粒径又は平均液滴径を有し、また、本明細書に記載される1つ以上の付加成分を更に含み得る。
【0155】
「付加成分」は、以下の一つ以上を含むが、これらに限定されるものではない。即ち:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒剤及び崩壊剤;結合剤;平滑剤;甘味剤;香味剤;着色剤;防腐剤;ゼラチンなどの生理学的に分解可能な組成物;水性媒体及び溶媒;油性媒体及び溶媒;懸濁化剤;分散剤又は湿潤剤;乳化剤、緩和剤;バッファ;塩類;増粘剤;充填剤;乳化剤;酸化防止剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;及び、薬理学的に許容される高分子材料又は疎水性材料。Genaro編、1985年、ペンシルバニア州イーストンのMack出版社のRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照のこと。これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0156】
本発明の化合物は、毎日、数回の頻度で被検体に投与され得、或いは、1日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1月に1回といった低い頻度で投与されてもよく、又は、例えば、数ヶ月に1回、若しくは1年に1回又はそれ以下といったより低い頻度で投与されてもよい。服用の頻度は、当業者には簡単に分るものであり、以下に限定される分けではないが、例えば、処置される病気の種類及び重症度、被検体の種類及び年齢などのいくつかの要因に依存する。
【0157】
本発明はまた、本発明の医薬品組成物の1以上の成分で充填される1つ以上の容器を含む医薬包装又は医薬キットを提供する。一実施形態によって、免疫調節を必要とする被検体を処置するためにキットが提供される。好ましくは、被検体はヒトである。一実施形態において、このキットは本発明の1つ以上のS1Pアナログを含み、また、1つ以上の既知の免疫抑制剤も含み得る。これらの薬剤は、例えば、小びん、チューブ、マイクロタイターウェルプレート、ビンなどの様々な容器に包装され得る。他の試薬が、個別の容器に含められ得、キットが提供される;例えば、陽性対照サンプル、陰性対照サンプル、バッファ、細胞培養培地など。好ましくは、これらキットはまた、使用説明書も含む。
【0158】
本明細書に記載されるものと同じ若しくは均等な任意の方法及び材料が、本発明の実施若しくは試験に使用され得るが、好ましい方法及び材料について本明細書に記載している。
【0159】
本発明は、その目的を達成するために、また、本明細書において記載されるとともに本発明に本質的に備わっている結果及び効果を得るために、適切に適用され得ることが、当業者には容易に理解されるであろう。本発明は、本発明の精神又は本質的な特質から逸脱することなく、他の特定の形式で具現化され得る。
【0160】
<実施例>
本発明は、以下の実施例を参照して、ここに記述される。これらの実施例は説明目的でのみ提供され、本発明はこれらの実施例に限定されるものとして解釈されるべきでは決してなく、むしろ本発明は、本明細書で提供される教示の結果として明らかとされる任意の及び全ての変化物を包含するものとして解釈されるべきである。
【0161】
<実施例1:(1‐アミノ‐2‐(4’‐オクチルベンジル)シクロペンチル)メタノール(9)>
A.:2‐(4’‐ヨードベンジル)シクロペンタノン(3)
2‐カルボエトキシシクロペンタノン(1)(1.0当量(eq)、1.56g、10.0mmole)が、室温、窒素雰囲気下で100mlのテトラヒドロフランに溶解された。ナトリウム・エトキシド(1.10当量、748mg、11.0mmole)が加えられ、それから、4’‐ヨードベンジルクロリド(1.25当量、3.15g、12.5mmole)が誘導され、この反応物は還流するために加熱され6時間維持された。その後、この反応物は冷却され、そして溶媒は真空中で除去され、これにより、粗2‐カルボエトキシ‐2‐(4’‐ヨードベンジル)シクロペンタノン(2)が得られた。この粗生成物は100mlの水性エタノール(10%水v/v)に溶解され、硫酸(0.1ml)が加えられ、この反応物は窒素下で6時間、還流された。その後、この反応物は冷却され、100mlのエーテルで希釈され、5%含水重炭酸塩溶液(2×50ml)で抽出された。その後、有機層は塩水で洗浄され、MgSO上で乾燥された。溶媒は真空中で除去され黄色油が得られた。この黄色油は、溶離剤として酢酸エチル/ヘキサンを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製され、これにより、2‐(4’‐ヨードベンジル)シクロペンタノン(3)(2.145g、7.20mmole、72%)が得られた。(Organic Syntheses、Coll. Vol.5、76頁(1973年);Vol.45、7頁(1965年)を参照)
【0162】
B.:2‐(4’‐(オクト‐1‐イル)ベンジル)シクロペンタノン(4)
1.1g(10mmol)の1‐オクチンが、1.49g(5mmol)の2‐(4’‐ヨードベンジル)シクロペンタノン(3)の入った10mLのTHF溶液が充填された、炎で乾燥させた25mLフラスコに加えられた。30分間の脱気の後に、2mlのトリエチルアミン、5mgのCuI及び10mgのPd(PPhがN保護下で加えられた。この反応物は、6時間室温で撹拌され、その後、溶媒が真空中で除去され、残留物はクロロホルム溶離剤を用いてクロマトグラフィーにかけられ、これにより、1.25g(93%)の黄色油が得られた。
13C NMR(CDCl)δ220、143、132、127、122、91、80、46、42、39、32、31、29、29、23、20、14
【0163】
C.:2‐(4’‐オクチルベンジル)シクロペンタノン(5)
数滴のギ酸及び触媒量5%Pd/Cが、10mLメタノール及び1.25g(4.75mmol)の2‐(4’‐(オクト‐1‐イル)ベンジル)シクロペンタノン(4)で充填された25 mLフラスコに加えられた。この反応容器は、Hで3回洗浄され、その後、Hバルーンが取り付けられた。水素雰囲気下で2日間経過後に、この反応混合物は窒素に曝され、その後、シリカゲルのパッド通して濾過された。シリカゲルプラグはエチルエーテル(2×25ml)で洗浄され、結合した有機層は粗生成物へと濃縮され、これにより、淡黄色油を得た(1.24g、98%)。
13C NMR(CDCl)δ220、142、140、129、127、46、42、39、36、32、32、32、30、30、29、23、14
【0164】
D.:1‐アミノ‐2‐(4’‐オクチルベンジル)シクロペンタンカルボニトリル(6)
2‐(4‐オクチルベンジル)シクロペンタノン(5)3.20g(11.8mmol)、シアン化ナトリウム1.15g(23.5mmol)、及び塩化アンモニウム1.25g (23.5mmol)が、20mLの水酸化アンモニウムに加えられた。この混合物は12時間室温で勢いよく撹拌され、その後、分液ロートに注がれ、そして、10mlの塩化メチレンで二回抽出された。有機層が結合され、乾燥されて、その後、濃縮されて、黄色の粗油(3.30g、〜100%)が得られた。粗生成物は、更なる精製なしに次のステップのために使用される。(J.med.Chem.、1986年、29、1988‐1995を参照のこと)
【0165】
E.:1‐アミノ‐2‐(4’‐オクチルベンジル)シクロペンタンカルボン酸(7)
1‐アミノ‐2‐(4’‐オクチルベンジル)シクロペンタンカルボニトリル (6)(3.3g、11.2mmol)、及び50mLの濃塩酸が、70°Cまで加熱され、一晩中撹拌された。結果として得られた透明な水性溶液は、蒸発乾燥された。10mlの水が加えられ、その後再び乾燥された。この処理は、数回繰り返された。粗生成物は、水とアセトンで洗浄され、これにより、白色の微粉末を得た。この微粉末は、更なる精製なしで次のステップにおいて使用された。粗生成物の収率は、1.71g(45%)であった。
13C NMR(d‐DMSO)δ175、141、140、64、51、46、45、44、36、35、35、34、32、32、29、29、23、15
【0166】
F.:(1‐アミノ‐2‐(4’‐オクチルフェニル)シクロペンチル)メタノール(8)
1‐アミノ‐2‐(4’‐オクチルベンジル)シクロペンタンカルボン酸(7)(63.4mg、0.2mmol)と、27mg(0.6mmol)の水素化ホウ素ナトリウムが、3mlのTHFに溶解された。その溶液が0℃まで冷却された後で、51mg(0.2mmol)のIが1mLのTHFに溶解され滴加された。その後、容器にはコンデンサーが取り付けられ、反応混合物はN下で5時間還流された。過剰なNaBHは、その後メタノールでクエンチされ、溶媒は真空中で除去された。水(2ml)及び塩化メチレン(5ml)がその残留物に加えられ、その混合物は有機層が透明になるまで約1時間の間撹拌された。有機相が回収され、また、水相は塩化メチレンを用いてさらに2度抽出された(5ml画分)。結合した有機抽出物は乾燥濃縮され、43mg(71%)の粗生成物が得られた。メタノール/クロロホルム(5:95)を用いたTLCでの更なる精製で、13mgの透明な油を得た。J.Org.Chem.、1993年、58、3568‐3571。
13C NMR(CDCOCD)δ141、128、127、96、45、44、43、35、35、33、33、32、32、29、29、29、23、13
【0167】
<実施例2:(1‐アミノ‐3‐(4‐オクチルフェニル)シクロペンチル)メチル二水素リン酸塩(9)>
(1‐アミノ‐3‐(4‐オクチルフェニル)シクロペンチル)メチル二水素リン酸塩(9)
1ml85%のHPOが0.5gのPに滴加され、この酸無水混合物が、その後、窒素保護下で1時間の間100℃で加熱された。別の0.5gのPと、30mgの(1‐アミノ‐2‐(4’‐オクチルフェニル)シクロペンチル)メタノール(8)がポリリン酸溶液に加えられ、5時間の間100℃で加熱された。室温に冷やした後に、10mLの氷水が反応混合物に加えられた。粗生成物が白色固体として沈殿し、この白色固体はフィルターにかけられ、冷水で洗浄された。真空乾燥の後に淡緑色の生成物(31mg、82%)が回収された。質量スペクトルでは2つのピークだけが得られた:M+1=398.4(所望のリン酸化された物質9を示す)及び318.4(脱リン酸化された物質8、又は出発物質8の特徴を示す)。
【0168】
<実施例3:スフィンゴシン・キナーゼ・アッセイ>
テスト化合物VPC122093、VPC122096及びVPC122097をスフィンゴシン及びFTY720と比較するインビトロのアッセイにおいて、組み換えヒト及びマウス・スフィンゴシン・キナーゼ・アイソフォーム用いて、開示の化合物の活性が評価された。組み換え型スフィンゴシン・キナーゼ1型又は2型(SPHK1、SPHK2)は、関連プラスミドDNAをHEK293T細胞に形質転換することによって、マウス又はヒト組み換え酵素を発現させることにより、調製される。約60時間後に、細胞は収集され、破砕され、その後、非ミクロソーム(例えば、可溶性)画分が保持された。
【0169】
組み換え酵素を含む破砕細胞の上清液は、基質(即ち、スフィンゴシン(Sph)、FTY720又はテスト化合物(VPC122096、VPC122097又はVPC122093))及びガンマ‐32P‐ATPと混合される。基質濃度は、以下の通りである。即ち:スフィンゴシンが15マイクロモル;FTY720が50マイクロモル;VPC化合物が100マイクロモル。32P‐ATP及び基質を含む先に示したSPHKアイソフォームを発現しているHEK293T細胞からの上清ホモジネート溶液は、37°Cで1時間インキュベートされた。反応後、脂質は酸性化したクロロホルム/メタノールで抽出され、薄層クロマトグラフィーで分離され、S1Pを含むバンドがオートラジオグラフィーで視覚化され、分離され、さらに、シンチレーション計数によって定量化された。その結果を図2に図示する。
【0170】
<実施例4:リンパ球減少アッセイ>
テスト化合物であるVPC122096化合物(ベンジルシクロペンチル)、VPC122093化合物(ベンジルシクロへキシル)又はVPC122097化合物(ベンジルシクロへプチル)が、2%のヒドロキシプロピルβ‐シクロデクストリンに溶解され、体重1kg当たりに0.01から10mgの用量でマウスに強制経口投与された。24時間後(又は他の特定時間帯)に、マウスは軽度麻酔され、そして、眼窩洞から約0.1mlの血液が採取される。リンパ球の数(血液1マイクロリットルにつき数千;通常は4,000〜11,000である)は、ヘマベット血液分析器(Hemavet blood analyzer)を使用して測定される。オスで系統がsv129×C57BL/6の交雑種で、生後10‐11週間目の3匹のマウスが各グループ毎にいた。
【0171】
<実施例4A>
テスト化合物VPC122096、VPC122097又はVPC122093が、2%のヒドロキシプロピルβ‐シクロデクストリン水溶液に溶解され、10mg/kgでマウスに強制経口投与された(各グループ毎に3匹のマウス)。18時間後に血液が採血され、調べられた。テスト化合物はリンパ球減少を引き起こした。その結果を図3に図示する。
【0172】
<実施例4B>
テスト化合物VPC122096が2%のヒドロキシプロピルβ‐シクロデクストリン水溶液(媒体)に溶解され、用量反応曲線を得るために、0.01mg/kg、0.03mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg及び3mg/kgの用量でマウスに(強制)経口投与された(成体、系統C57Bl/6のマウスをグループ毎に3〜4匹)。血液サンプルは、18時間と42時間に採取された。生後10‐11週、オス、系統sv129/C57Bl6のマウスをグループ毎に3匹。その結果を図4に図示する。縦軸はK/μlでのリンパ球を表す。横軸は、単回服用量を投与した後の日毎の時間を表す。縦軸はK/μlでのリンパ球を表す。横座標は、体重1kg当たりにミリグラム単位の化合物の服用量を表す(mpk)。
【0173】
<実施例4C>
テスト化合物の効果持続期間がテスト化合物VPC122096を投与した後で評価された。テスト化合物VPC122096は、2%のヒドロキシプロピルβ‐シクロデクストリン水溶液(媒体)に溶解され、マウスに(強制)経口投与された。このテスト化合物は長期にわたるリンパ球減少を引き起こした。血液サンプルは、16時間、4日、12日及び19日に採取された。図5は、VPC122096又は媒体の単回服用後の総血中リンパ球数を図解する。VPC122096のED95単回投与は、1週以上の間マウスにリンパ球減少を引き起こし得る。
【0174】
本明細書で使用される省略形は、臨床、化学、生物学の技術分野の範囲内における、それら省略形の標準的な意味を有する。何らかの矛盾が生じる場合は、いくつかの定義を含んでいる本発明の開示が優先される。
【0175】
本発明は、本明細書に記述されるアッセイ及び方法だけに限定されるものとして解釈されるべきではなく、更に他の方法及びアッセイを含むものと解釈されるべきである。本明細書には記述されていないが、使用された他の方法は、既知であり、また、化学、生化学、分子生物学、及び臨床医学の技術分野における当業者の能力の範囲内にある。他のアッセイ及び方法が、本明細書に記載される手順を実施するために利用可能であることが当業者には分るだろう。
【0176】
本明細書において引用された特許、特許出願及び出版物のそれぞれの、及び全ての開示は、その全容が本開示へと、参照によりに明確に本明細書に組み込まれる。本開示の例示的実施形態が議論され、そして、本開示の範囲内にある可能な変形形態について触れてきた。本開示のこれらの及び他の変形形態並びに修飾形態は、本開示の範囲を逸脱することなく当業者とって明らかであろう、そして、これらの開示と以下に示される請求項とは、本明細書で説明された例示的実施形態に限定されるものでは無いことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式の化合物であって:
【化17】

ここで、RはC、CH又はNであり;R、R及びRは、個別にCH、CH、O、S、N又はNRであり;
Xは、ヒドロキシル、カルボン酸、メチレン・カルボン酸、アルファ置換カルボン酸、リン酸、ホスホン酸又はアルファ置換ホスホン酸であり;
は、水素、ハロ、トリ‐フルオロメチル、(C‐C10)アルキル、ハロ(C‐C10)アルキル、ヒドロキシ‐(C‐C10)アルキル、(C‐C10)アルコキシ(C‐C10)アルキル、又はシアノ(C‐C10)アルキルであり;
は水素、ハロ、(C‐C20)アルキル、(C‐C20)アルコキシ;(C‐C26)アルコキシアルキル;(C‐C20)アルケニル、(C‐C20)アルキニル、(C‐C12)シクロアルキル、(C‐C20)アルキル‐(C‐C12)シクロアルキル、(C‐C10)アリール、(C‐C20)アルキル(C‐C10)アリール、(C‐C10)アリール(C‐C20)アルキル、及びアリール置換アリールアルキルであり;ここで、前記R基中の1つ以上の炭素原子が、個別に非過酸化物酸素、硫黄又はNRと置換され得;
、R又はXのアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環式基又はヘテロアリール基は、1つ、2つ、3つ又は、4つの基と、随意に置換され、ここで置換基は、個別にヒドロキシ、ハロ、シアノ、(C‐C10)アルキル、(C‐C10)アルコキシ、C‐アリール、(C‐C24)アリールアルキル、オキソ(=O)、或いはイミノ(=NR)であり;Rは水素又は(C‐C10)アルキルであり;nは0、1、2、3又は4であり;
【化18】

は、1つ以上の随意の2重結合を示し、また、Rのアルキル基は随意に1つ又は2つのヒドロキシ基と置換される;
、化合物、或いは薬理学的に許容されるその塩又はそのエステル。
【請求項2】
化学式(II):
【化19】

の化合物であって、
ここで、Xはヒドロキシル、リン酸、ホスホン酸又はアルファ置換ホスホン酸であり;
ここで、Rは水素、ハロゲン、(C‐C)アルキル、ハロ(C‐C)アルキル、ヒドロキシ(C‐C)アルキル、アルコキシ(C‐C)アルキル又はシアノ(C‐C)アルキルであり;
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキル置換アリール、アルキル置換シクロアルキル、アリールアルキル又はアリールアルキル置換アリールであり;nは0、1、2又は3である;
、化合物、或いは、薬理学的に許容されるその塩である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がフッ素又は塩素である、請求項1又は2の化合物。
【請求項4】
Xがヒドロキシ又はOPOである、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
XがOPOである、請求項4の化合物。
【請求項6】
Xがヒドロキシである、請求項4の化合物。
【請求項7】
アルファ置換ホスホン酸が、‐CHFPO、‐CFPO、‐CHOHPO、‐C(=O)PO又は‐OPOSHである、請求項1又は2の化合物。
【請求項8】
アルファ置換ホスホン酸が‐CHFPO、‐CFPO、‐CHOHPO又は‐C(=O)POである、請求項7の化合物。
【請求項9】
が水素である、請求項1から8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
が5つ、6つ、7つ又は8つの炭素原子を有するアルキルである、請求項1から9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
がヘプチル、オクチル、ノニル、‐O‐ヘプチル、又はCH‐O‐CH‐CH‐CH‐CH‐CH‐CH‐である、請求項10の化合物。
【請求項12】
がオクチルである、請求項11の化合物。
【請求項13】
nが1又は2である、請求項1から12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
基が前記シクロアルキル基の環のパラ位に配置された、請求項1から13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
前記シクロアルキル基が、化学式:
【化20】

を有する、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項16】
前記R基がRに対してオルト位、又はメタ位にある、請求項1から15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
前記R基が、前記ベンジル・シクロアルキル基に対してパラ位にある、請求項1から15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
化学式:
【化21】

を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の化合物と、薬理学的に許容される担体とを含む、医薬品組成物。
【請求項20】
哺乳類における病的状態又は病的症状を予防或いは処置する方法であって、
スフィンゴシン1‐リン酸受容体の活性が関与し、前記活性の受容体活性化作用が望まれ、請求項1から18のいずれか1項に記載の化合物の有効量を前記哺乳類に投与するステップ、を含む、方法。
【請求項21】
前記病的状態が自己免疫疾患である、請求項20の方法。
【請求項22】
前記自己免疫疾患が、ブドウ膜炎、I型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患又は多発性硬化症である、請求項21の方法。
【請求項23】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項22の方法。
【請求項24】
前記病的状態又は処置がリンパ球輸送を変更することである、請求項20の方法。
【請求項25】
リンパ球輸送を変更することが、移植片の長期の生存をもたらす、請求項24の方法。
【請求項26】
哺乳類における病的状態又は病的症状を予防或いは処置する方法であって、
S1Pリアーゼ活性が関与し、前記S1Pリアーゼの阻害が望まれ、請求項1から18のいずれか1項に記載の化合物の有効量を、前記哺乳類に投与するステップを含む、方法。
【請求項27】
内科治療に使用される請求項1から18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
スフィンゴシン1‐リン酸受容体の活性が関与し、前記活性の受容体活性化作用が望まれるか、或いは、S1Pリアーゼ活性が関与し、前記S1Pリアーゼの阻害が望まれる、哺乳類における病的状態又は病的症状を予防又は処置する方法において使用するための請求項1から18のいずれか1項に記載の化学式を有する化合物であって、
前記方法は、前記化合物、又は前記薬理学的に許容されるその塩若しくはそのエステルの有効量を前記哺乳類に投与するステップを含む、化合物。
【請求項29】
スフィンゴシン1‐リン酸受容体の活性が関与するか、或いは、S1Pリアーゼ活性が関与し、前記S1Pリアーゼの阻害が望まれる哺乳類における病的状態又は病的症状を予防又は処置するための薬剤を調製するための請求項1から18のいずれか1項に記載の化合物の用途。
【請求項30】
前記薬剤が液体担体を含む、請求項29の用途。
【請求項31】
請求項1から18に記載の化合物の少なくとも1つを必要とする患者に、前記少なくとも1つの化合物を投与するためのキットであって、前記少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物と、アプリケータと、それらを使用するための使用説明書資料とを含む、キット。


【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−540561(P2010−540561A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527241(P2010−527241)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/078139
【国際公開番号】WO2009/043013
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(501038296)ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファンデーション (17)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF VIRGINIA PATENT FOUNDATION
【Fターム(参考)】