説明

ペリクル付きマスクの検査方法及び検査装置

【課題】ペリクル2付きマスク1の検査を正確に行うことができるようにする。
【解決手段】照明光量がオートフォーカス手段を正常作動させるのに必要な第1設定光量に達するまでペリクルフレーム2aから離れた位置Lxaを主走査方向の境界位置とし、照明光量が第1設定光量よりも高く設定される第2設定光量に達するまでペリクルフレーム2aから内方に離れた位置Lyを副走査方向の境界位置とする。ステージの主走査方向への移動を開始した後、ステージの移動速度が所定の検査速度に達する位置を第1位置Lx1、照明光量が第2設定光量に達する位置を第2位置Lx2として、第1位置Lx1と第2位置Lx2とのうちペリクルフレーム2aからの距離が長い方の位置より内方の走査範囲の部分を検査領域に設定する。第1位置Lx1が検査領域の境界になるときは、x軸方向を主走査方向とする第1検査工程後に、y軸方向を主走査方向とする第2検査工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造等で使用するペリクル付きのマスク(フォトマスク、レチクルの総称)の検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクの製造メーカが行う検査方法として、ステージ上にマスクを載置し、マスクに法線方向から照明光を集光して照射し、マスクを透過した照明光又はマスクで反射した照明光を対物レンズを通して光検出器に結像して得られる光学画像に基づいてマスクの欠陥の有無を検査する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、このものでは、対物レンズの焦点をマスクに合わせるオートフォーカス手段を作動させつつ、マスクに固定の座標系における互いに直交する2つの座標軸方向であるx軸方向とy軸方向との一方を主走査方向、他方を副走査方向として、マスクのパターン形成部分にステージの移動により照明光を走査している。
【0003】
ここで、上記従来例では、一般的に、パターン形成部分の主走査方向の外縁から所定距離だけ外方に離れた位置を主走査方向の境界位置として、この境界位置からステージの主走査方向の移動を開始し、パターン形成部分の外縁に照明光が照射されるときは、ステージの加速が完了して、ステージの移動速度が所定の検査速度に達するようにしている。これにより、パターン形成部分を走査するときに、マスクがステージの加速による力を受けて変形することを防止できる。
【0004】
ところで、半導体製造のフォトリソグラフィ工程で使用するマスクには、マスクへの異物の付着を防止するためにペリクルが取り付けられている。ペリクルは、方形のフレームに透明の膜を取り付けて成るものであり、フレームをマスクのパターン形成部分の周辺に接着等で固定している。
【0005】
このようなペリクル付きのマスクの検査に上記従来法を適用する場合、以下のようにすることが考えられる。即ち、ペリクルのフレームの外方に主走査方向の境界位置を設定して、この境界位置からステージの主走査方向への移動を開始し、フレームの内方のパターン形成部分に照明光が照射される状態になる前に、ステージの移動速度が所定の検査速度に達するようにすることが考えられる。然し、この場合には、ステージの移動中に照明光がフレームに照射され、フレームに対する対物レンズの焦点のずれ量が過大になって、オートフォーカス手段が脱調してしまう。
【0006】
また、オートフォーカス手段の脱調を防止するために、ペリクルのフレームの内面に隣接する位置を主走査方向の境界位置に設定することも考えられる。然し、フレームの近傍部分は、照明光のうちフレームで遮られる割合が大きくなり、照明光量が不足して、オートフォーカス手段が正常に作動しなくなり、更に、照明光量不足により、光検出器で明瞭な光学画像を得られず、正確な検査を行うことができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−322482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、ペリクル付きマスクの検査をオートフォーカス手段の脱調を生ずることなく正確に行うことができるようにした検査方法及び検査装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、ステージ上にペリクル付きのマスクを載置し、マスクに法線方向から照明光を集光して照射し、マスクを透過した前記照明光とマスクで反射した前記照明光との少なくとも一方を対物レンズを通して光検出器に結像して得られる光学画像に基づいてマスクを検査するペリクル付きマスクの検査方法であって、前記対物レンズの焦点をマスクに合わせるオートフォーカス手段を作動させつつ、マスクに固定の座標系における互いに直交する2つの座標軸方向であるx軸方向とy軸方向との一方を主走査方向、他方を副走査方向として、ペリクルのフレームで囲われるマスクの部分に前記ステージの移動により前記照明光を走査するものにおいて、前記照明光のうちペリクルのフレームで遮られる割合が減少して、照明光量が前記オートフォーカス手段を正常作動させるのに必要な第1設定光量に達するまでペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分から内方に離れた境界位置より内方を主走査方向の走査範囲に設定すると共に、前記照明光量が第1設定光量よりも高く設定される所定の第2設定光量に達するまでペリクルの副走査方向に位置するフレーム部分から内方に離れた境界位置より内方を副走査方向の走査範囲に設定し、主走査方向の前記境界位置から前記ステージの主走査方向への移動を開始した後、前記ステージの移動速度が所定の検査速度に達する位置を第1位置とし、前記照明光量が前記第2設定光量に達する位置を第2位置として、前記第1位置と前記第2位置とのうちペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分からの距離が長い方の位置より内方の前記走査範囲の部分を前記光学画像に基づく検査を行う検査領域に設定することを特徴とする。
【0010】
第1の態様において、ペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分からの距離が前記第2位置よりも前記第1位置の方が長くなる場合には、前記x軸方向を主走査方向、前記y軸方向を副走査方向として前記照明光を走査する第1検査工程と、前記y軸方向を主走査方向、前記x軸方向を副走査方向として前記照明光を走査する第2検査工程と、を行うことが望ましい。
【0011】
また、前記第1検査工程と前記第2検査工程とを行う場合には、前記第1検査工程での前記検査領域と前記第2検査工程での前記検査領域とがオーバーラップする領域での前記照明光の走査は前記第1検査工程と前記第2検査工程との一方でのみ行うことが望ましい。
【0012】
また、本発明の第2の態様は、ペリクル付きのマスクを載置するステージと、前記ステージの移動を制御する移動制御手段と、マスクに法線方向から照明光を集光して照射する照明手段と、マスクを透過した前記照明光とマスクで反射した前記照明光との少なくとも一方を対物レンズを通して結像させる光検出器を有する結像手段と、光検出器で得られる光学画像に基づいてマスクを検査する処理を行う処理手段と、前記対物レンズの焦点をマスクに合わせるオートフォーカス手段と、を備えるペリクル付きマスクの検査装置であって、マスクに固定の座標系における互いに直交する2つの座標軸方向であるx軸方向とy軸方向との一方を主走査方向、他方を副走査方向として、ペリクルのフレームで囲われるマスクの部分に前記照明光が走査されるように、前記移動制御手段により前記ステージの移動を制御するものにおいて、前記照明光のうちペリクルのフレームで遮られる割合が減少して、照明光量が前記オートフォーカス手段を正常作動させるのに必要な第1設定光量に達するまでペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分から内方に離れた境界位置より内方を主走査方向の走査範囲に設定すると共に、前記照明光量が第1設定光量よりも高く設定される所定の第2設定光量に達するまでペリクルの副走査方向に位置するフレーム部分から内方に離れた境界位置より内方を副走査方向の走査範囲に設定し、前記移動制御手段は、前記照明光がこの走査範囲に走査されるように前記ステージの移動を制御し、前記処理手段は、主走査方向の前記境界位置から前記ステージの主走査方向への移動を開始した後、前記ステージの移動速度が所定の検査速度に達する位置を第1位置とし、前記照明光量が前記第2設定光量に達する位置を第2位置として、前記第1位置と前記第2位置とのうちペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分からの距離が長い方の位置より内方の前記走査範囲の部分を検査領域とし、前記光学画像に基づく前記検査領域の検査を行うことを特徴とする。
【0013】
第2の態様において、前記移動制御手段は、ペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分からの距離が前記第2位置よりも前記第1位置の方が長くなる場合に、前記x軸方向を主走査方向、前記y軸方向を副走査方向として前記照明光が走査されるように前記ステージの移動を制御した後、前記ステージ又はマスクを前記x軸方向及びy軸方向に直交する軸線回りに90°回転させて、前記y軸方向を主走査方向、前記x軸方向を副走査方向として前記照明光が走査されるように前記ステージの移動を制御することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1と第2の態様によれば、ステージの移動中に照明光がペリクルのフレームに照射されることがなく、オートフォーカス手段の脱調を防止できる。更に、主走査方向の境界位置からステージの主走査方向への移動を開始する際に、照明光量が第1設定光量未満となってオートフォーカス手段が正常に作動しなくなることも防止でき、且つ、検査領域では、ステージの移動速度が検査速度になると共に照明光量が第2設定光量以上になって、正確な検査を行うことができる。
【0015】
また、ペリクルのフレームの高さが所定値以下になると、ペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分からの距離は第2位置よりも第1位置の方が長くなる。この場合、第2位置と第1位置との間の領域は照明光量が第2設定光量以上になるにも拘らず、検査領域から外れてしまう。然し、上記の如くx軸方向を主走査方向とする第1検査工程と、y軸方向を主走査方向とする第2検査工程とを行えば、第1工程で検査領域から外れた第2位置と第1位置との間の領域が第2検査工程では検査領域に入り、検査領域を拡大することができる。また、この場合、第1検査工程での検査領域と第2検査工程での検査領域とがオーバーラップする領域での照明光の走査を上記の如く第1検査工程と第2検査工程との一方でのみ行うことにより、走査に要する時間を短縮して能率アップを図ることができる。
【0016】
また、第1検査工程後に上記の如くステージ又はマスクを90°回転させれば、光検出器の向きを変える等の面倒な作業を行わずに第2検査工程を行うことができ、作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の検査装置を示す説明図。
【図2】(a)第1検査工程での走査範囲と検査範囲を示す説明図、(b)第2検査工程での走査範囲と検査範囲を示す説明図。
【図3】ペリクルのフレームによる照明光の遮光状態を示す説明図。
【図4】第1位置と第2位置のフレームからの距離をフレームの高さとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、ペリクル2を取り付けたマスク1を検査する本発明の実施形態の検査装置を示している。ペリクル2は、図2、図3に示す如く、方形のアルミ製のフレーム2aに透明の膜2bを取り付けて成るものであり、フレーム2aをマスク1のパターン形成部分の周辺に接着等で固定している。尚、図3で1aは、マスク1上の遮光膜である。
【0019】
検査装置は、マスク1を載置するステージ10と、ステージ10の移動を制御する移動制御手段20と、マスク1に法線方向から照明光を照射する照明手段30と、マスク1を透過した照明光とマスク1で反射した照明光とを対物レンズ41を通して光検出器42,42に結像させる結像手段40と、光検出器42,42で得られる光学画像に基づいてマスク1の欠陥の有無を検査する処理を行う処理手段50と、対物レンズ41の焦点をマスク1に合わせるオートフォーカス手段60と、を備えている。
【0020】
ステージ10は、互いに直交する水平2方向たるX方向及びY方向に夫々モータ11X,11Yにより移動されると共に、鉛直のθ軸線回りにモータ11θにより回転される。また、ステージ10のX方向及びY方向の位置を計測するレーザー測長計12が設けられている。尚、ステージ10のマスク1を載置する部分には図示省略した窓穴が形成されており、ペリクル2の取付面が下になるようしてステージ10にマスク1が載置される。
【0021】
移動制御手段20は、制御計算機70にバスラインを介して接続される走査範囲設定部21と、走査範囲設定部21で後述する如く設定される走査範囲内でステージ10が移動されるように各モータ11X,11Y,11θを制御するモータ制御部22とで構成される。
【0022】
照明手段30は、光源31から出射されるレーザー光等の照明光をレンズ32,33を介して平行な光束に拡径した後、照明光をミラー34とコンデンサレンズ35とを介してマスク1にその法線方向たる鉛直方向上方から集光して照射する透過照明系と、レンズ33とミラー34との間に配置したハーフミラー36で反射した照明光をミラー37とハーフミラー38と対物レンズ41とを介してマスク1に鉛直方向下方から集光して照射する反射照明系とで構成されている。
【0023】
結像手段40は、マスク1に上方から照射されてマスク1を透過した照明光(透過光)とマスク1に下方から照射されてマスク1で反射した照明光(反射光)とを対物レンズ41とハーフミラー38とを通して分離ミラー43に入射し、透過光を分離ミラー43からレンズ44を介して第1光検出器42に結像させると共に、反射光を分離ミラー43からレンズ45を介して第2光検出器42に結像させるように構成されている。光検出器42,42としては、TDIセンサ、CCDセンサ又はCMOSセンサ等を用いることができる。また、光検出器42,42は長方形に形成されている。そして、光検出器42,42をその長手方向が後述する副走査方向に沿うように配置して、副走査方向の走査ピッチを広く取れるようにしている。
【0024】
処理手段50は、比較部51と参照部52とで構成されている。参照部52は、マスク1の設計データを磁気ディスク53から制御計算機70を通じて読み出し、設計データに基づくマスクパターンの画像(参照画像)を作成する。比較部51には、参照画像と、光検出器42,42で得られた光学画像と、レーザー測長計12に接続されて光学画像のマスク1上の位置を検出する位置検出部54からの位置データとが入力される。そして、光学画像と参照画像とを所定のアルゴリズムに従って比較し、マスク1の欠陥の有無を判定する検査処理を行う。尚、繰り返しパターン同士を比較する方式(die―to―die方式)で欠陥の有無を判定することも可能である。
【0025】
オートフォーカス手段60は、反射光をハーフミラー38と分離ミラー43との間に配置したハーフミラー61を介して入射する共焦点光学系で構成されるフォーカスずれ検出部62と、フォーカスずれ検出部42からの検出信号を入力するフォーカス制御部63と、フォーカス制御部63により制御されて対物レンズ41を鉛直方向に移動させるモータ64とで構成されている。そして、フォーカスずれ検出部62で検出されたマスク1と対物レンズ41の焦点とのずれ量に応じて対物レンズ41を鉛直方向に変位させることにより、対物レンズ41の焦点をマスク1に合わせる。尚、対物レンズ41に代えてステージ10を鉛直方向に変位させるようにしてもよい。
【0026】
図2を参照して、検査に際しては、マスク1に固定の座標系における互いに直交する2つの座標軸方向であるx軸方向とy軸方向との一方、例えば、x軸方向を主走査方向、y軸方向を副走査方向として、ペリクル2のフレーム2aで囲われるマスク1の部分にステージ10の移動により照明光を図2に点線で示す如く走査する。即ち、ステージ10のX方向への移動で照明光をx軸方向に走査することと、ステージ10のY方向への移動で走査位置をy軸方向に所定ピッチずらすこととを繰り返し行う。また、マスク1は、ステージ10の窓穴に臨んでいるため、撓みを生ずる。そして、マスク1の撓みに合わせて対物レンズ41の焦点位置を変化させる必要があるため、オートフォーカス手段60を作動させつつ照明光の走査を行う。
【0027】
ここで、ペリクル2のフレーム2aの近傍では、図3に示す如く、反射照明系からマスク1に照射される照明光B1や透過照明系から照射されてマスク1を透過した照明光B2のうちフレーム2aで遮られる割合が大きくなって、対物レンズ41に達する照明光量が減少する。照明光量が少ないと、オートフォーカス手段60のフォーカスずれ検出部42でマスク1と対物レンズ41の焦点とのずれ量をうまく検出できず、オートフォーカス手段60が正常に作動しない。そこで、マスク1への照明光量がオートフォーカス手段60を正常作動させるのに必要な第1設定光量に達するまでペリクル2のx軸方向各側に位置するフレーム2aの部分から内方に離れた位置を境界位置Lxaとして、この境界位置Lxaより内方を主走査方向たるx軸方向の走査範囲に設定している。
【0028】
また、照明光量が第1設定光量よりも高く設定される所定の第2設定光量に達するまでペリクル2のy軸方向各側に位置するフレーム2aの部分から内方に離れた位置を境界位置Lyとして、この境界位置Lyより内方を副走査方向たるy軸方向の走査範囲に設定している。尚、光検出器42,42で明瞭な光学画像を得るのに必要な照明光量をNAとして、第1設定光量は例えばNA×70%に設定され、第2設定光量は例えばNA×100%に設定される。
【0029】
また、主走査方向の境界位置Lxaからステージ10の主走査方向への移動を開始した後、ステージ10の移動速度が所定の検査速度に達する位置、即ち、検査速度への加速が完了するまでにステージ10が移動する助走距離(例えば、2mm)だけ境界位置Lxaから内方に離れた位置を第1位置Lx1とし、照明光量が第2設定光量に達する位置を第2位置Lx2として、第1位置Lx1と第2位置Lx2とのうちペリクル2の主走査方向各側に位置するフレーム2aの部分からの距離が長い方の位置より内方の走査範囲の部分を処理手段50による上記検査処理を行う検査領域(図2(a)で左下がりの斜線を付した領域)に設定している。
【0030】
ここで、ペリクル2の主走査方向(x軸方向)各側に位置するフレーム2aの部分からの第1位置Lx1と第2位置Lx2の距離は、ペリクル2のフレーム2aの高さHに応じて図4に示す如く変化する。そして、この距離は、フレーム2aの高さHが所定値Ha未満であるときは第1位置Lx1の方が長くなり、フレーム2aの高さHが所定値Haを超えると第2位置Lx2の方が長くなる。図2(a)に示されているのは、フレーム2aの高さHが所定値Ha未満である場合であり、第1位置Lx1と副走査方向の境界位置Lyとで囲われる領域が検査領域になる。
【0031】
上記の如く走査範囲と検査領域とを設定すれば、主走査方向の境界位置Lxaからステージ10の主走査方向への移動を開始する際に、照明光量が第1設定光量未満となってオートフォーカス手段60が正常に作動しなくなることを防止できる。更に、ステージ10の移動速度が検査速度に安定した領域で検査が行われることになって、加速による力でマスク1が変形することに起因する誤検査を防止できると共に、検査領域では照明光量が第2設定光量以上になって、正確な検査を行うことができる。また、主走査方向の境界位置をペリクル2のフレーム2aの外方に設定するものと異なり、ステージ1の移動中に照明光がペリクル2のフレーム2aに照射されることがなく、オートフォーカス手段60の脱調を生ずることも防止できる。
【0032】
但し、ペリクル2の主走査方向(x軸方向)に位置するフレーム2aの部分からの距離が第2位置Lx2よりも第1位置Lx1の方が長くなる場合、第2位置Lx2と第1位置Lx1との間の領域は、照明光量が第2設定光量以上になるにも拘らず、検査領域から外れてしまい、検査領域が狭くなってしまう。
【0033】
そこで、この場合には、x軸方向を主走査方向、y軸方向を副走査方向として照明光を走査する上記第1検査工程を行った後に、図2(b)に示す如く、y軸方向を主走査方向、x軸方向を副走査方向として照明光を走査する第2検査工程を行うようにしている。
【0034】
第2検査工程においては、照明光量が第1設定光量に達するまでペリクル2のy軸方向各側に位置するフレーム2aの部分から内方に離れた位置を境界位置Lyaとして、この境界位置Lyaより内方を主走査方向たるy軸方向の走査範囲に設定すると共に、照明光量が第2設定光量に達するまでペリクル2のx軸方向各側に位置するフレーム2aの部分から内方に離れた位置、即ち、上記第2位置Lx2を境界位置として、この境界位置Lx2より内方を副走査方向たるx軸方向の走査範囲に設定している。
【0035】
また、主走査方向の境界位置Lyaからステージ10の主走査方向への移動を開始した後、ステージ10の移動速度が所定の検査速度に達する位置Ly1より内方の走査範囲の部分を処理手段50による上記検査処理を行う検査領域(図2(b)で右下がりの斜線を付した領域)に設定している。
【0036】
これによれば、第1検査工程では検査領域から外れた第2位置Lx2と第1位置Lx1との間の大部分の領域が第2検査工程では検査領域に入り、検査領域を拡大することができる。
【0037】
また、本実施形態では、第1検査工程での検査領域と第2検査工程での検査領域とがオーバーラップする領域(図2(b)で左下がりの斜線と右下がりの斜線とを付した領域)での照明光の走査は第1検査工程でのみ行い、第2検査工程での走査範囲は、LyaとLx2とLx1とで囲われる範囲に限定している。この場合、第2検査工程で実際に検査処理が行われる領域は、Ly1とLx2とLx1とで囲われる領域になる。これにより、走査及び検査処理に要する時間を短縮して能率アップを図ることができる。
【0038】
ところで、第2検査工程において、ステージ10をY方向に移動させることにより照明光を主走査方向たるy軸方向に走査することも考えられる。然し、この場合には、光検出器42,42をその長手方向が副走査方向たるx軸方向に沿うように90°回転させるという非常に面倒な作業が必要になる。
【0039】
そこで、本実施形態では、第1検査工程後にステージ10をx軸方向及びy軸方向に直交するθ軸線回りに90°回転してから第2検査工程を行うようにしている。これによれば、光検出器42,42を90°回転させなくても、第2検査工程での副走査方向であるx軸方向を光検出器42,42の長手方向が沿わせることができ、作業が容易になる。尚、第2検査工程では、ステージ10をX方向に移動させることにより照明光が主走査方向たるy軸方向に走査される。
【0040】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、第1検査工程での検査領域と第2検査工程での検査領域とがオーバーラップする領域での照明光の走査を第1検査工程でのみ行うようにしたが、オーバーラップする領域での照明光の走査を第2検査工程でのみ行うことも可能である。また、上記実施形態では、照明手段30を透過照明系と反射照明系とで構成したが、透過照明系と反射照明系との一方を省略し、透過光と反射光との一方を光検出器に結像して得られる光学画像に基づいて検査処理を行うことも可能である。また、上記実施形態では、第1検査工程後にステージ10を90°回転させてから第2検査工程を行っているが、ステージ10を回転させずにマスク1のみを90°回転させてから第2検査工程を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 マスク
2 ペリクル
2a フレーム
10 ステージ
20 移動制御手段
30 照明手段
40 結像手段
41 対物レンズ
42、42光検出器
50 処理手段
60 オートフォーカス手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上にペリクル付きのマスクを載置し、マスクに法線方向から照明光を集光して照射し、マスクを透過した前記照明光とマスクで反射した前記照明光との少なくとも一方を対物レンズを通して光検出器に結像して得られる光学画像に基づいてマスクを検査するペリクル付きマスクの検査方法であって、前記対物レンズの焦点をマスクに合わせるオートフォーカス手段を作動させつつ、マスクに固定の座標系における互いに直交する2つの座標軸方向であるx軸方向とy軸方向との一方を主走査方向、他方を副走査方向として、ペリクルのフレームで囲われるマスクの部分に前記ステージの移動により前記照明光を走査するものにおいて、
前記照明光のうちペリクルのフレームで遮られる割合が減少して、照明光量が前記オートフォーカス手段を正常作動させるのに必要な第1設定光量に達するまでペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分から内方に離れた境界位置より内方を主走査方向の走査範囲に設定すると共に、前記照明光量が第1設定光量よりも高く設定される所定の第2設定光量に達するまでペリクルの副走査方向に位置するフレーム部分から内方に離れた境界位置より内方を副走査方向の走査範囲に設定し、
主走査方向の前記境界位置から前記ステージの主走査方向への移動を開始した後、前記ステージの移動速度が所定の検査速度に達する位置を第1位置とし、前記照明光量が前記第2設定光量に達する位置を第2位置として、前記第1位置と前記第2位置とのうちペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分からの距離が長い方の位置より内方の前記走査範囲の部分を前記光学画像に基づく検査を行う検査領域に設定することを特徴とするペリクル付きマスクの検査方法。
【請求項2】
請求項1記載のペリクル付きマスクの検査方法において、
ペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分からの距離が前記第2位置よりも前記第1位置の方が長くなる場合には、前記x軸方向を主走査方向、前記y軸方向を副走査方向として前記照明光を走査する第1検査工程と、前記y軸方向を主走査方向、前記x軸方向を副走査方向として前記照明光を走査する第2検査工程と、を行うことを特徴とするペリクル付きマスクの検査方法。
【請求項3】
請求項2記載のペリクル付きマスクの検査方法において、
前記第1検査工程での前記検査領域と前記第2検査工程での前記検査領域とがオーバーラップする領域での前記照明光の走査は前記第1検査工程と前記第2検査工程との一方でのみ行うことを特徴とするペリクル付きマスクの検査方法。
【請求項4】
ペリクル付きのマスクを載置するステージと、前記ステージの移動を制御する移動制御手段と、マスクに法線方向から照明光を集光して照射する照明手段と、マスクを透過した前記照明光とマスクで反射した前記照明光との少なくとも一方を対物レンズを通して結像させる光検出器を有する結像手段と、光検出器で得られる光学画像に基づいてマスクを検査する処理を行う処理手段と、前記対物レンズの焦点をマスクに合わせるオートフォーカス手段と、を備えるペリクル付きマスクの検査装置であって、
マスクに固定の座標系における互いに直交する2つの座標軸方向であるx軸方向とy軸方向との一方を主走査方向、他方を副走査方向として、ペリクルのフレームで囲われるマスクの部分に前記照明光が走査されるように、前記移動制御手段により前記ステージの移動を制御するものにおいて、
前記照明光のうちペリクルのフレームで遮られる割合が減少して、マスクへの照明光量が前記オートフォーカス手段を正常作動させるのに必要な第1設定光量に達するまでペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分の内方に離れた境界位置より内方を主走査方向の走査範囲に設定すると共に、前記照明光量が第1設定光量よりも高く設定される所定の第2設定光量に達するまでペリクルの副走査方向に位置するフレーム部分の内方に離れた境界位置より内方を副走査方向の走査範囲に設定し、前記移動制御手段は、前記照明光がこの走査範囲に走査されるように前記ステージの移動を制御し、
前記処理手段は、主走査方向の前記境界位置から前記ステージの主走査方向への移動を開始した後、前記ステージの移動速度が所定の検査速度に達する位置を第1位置とし、前記照明光量が前記第2設定光量に達する位置を第2位置として、前記第1位置と前記第2位置とのうちペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分からの距離が長い方の位置より内方の前記走査範囲の部分を検査領域とし、前記光学画像に基づく前記検査領域の検査を行うことを特徴とするペリクル付きマスクの検査装置。
【請求項5】
請求項4記載のペリクル付きマスクの検査装置であって、
前記移動制御手段は、ペリクルの主走査方向に位置するフレーム部分からの距離が前記第2位置よりも前記第1位置の方が長くなる場合に、前記x軸方向を主走査方向、前記y軸方向を副走査方向として前記照明光が走査されるように前記ステージの移動を制御した後、前記ステージ又はマスクを前記x軸方向及びy軸方向に直交する軸線回りに90°回転させて、前記y軸方向を主走査方向、前記x軸方向を副走査方向として前記照明光が走査されるように前記ステージの移動を制御することを特徴とするペリクル付きマスクの検査装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−164665(P2010−164665A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5343(P2009−5343)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】