説明

ペリンドプリルのアルギニン塩のβ結晶形態、その製造法、およびそれを含有する薬学的組成物

本発明は、その粉末X線回折パターンを特徴とする、式(I):で示されるβ結晶形態に関する。本発明は、薬物を製造するのに役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【0002】
【化2】

【0003】
で示されるペリンドプリルのL−アルギニン塩のβ結晶形態、それを製造する方法、およびそれを含有する薬学的組成物に関するものである。
【背景技術】
【0004】
ペリンドプリルおよび薬学的に許容され得るその塩、より特別にはそのアルギニン塩は、価値ある薬理学的特性を有する。その主要な特性は、アンギオテンシンI変換酵素(またはキナーゼII)を阻害する特性であって、一方では、デカペプチドであるアンギオテンシンIのオクタペプチドであるアンギオテンシンII(血管収縮剤)への変換の阻害を、他方では、ブラジキニン(血管拡張剤)の不活性ペプチドへの減成の防止を可能とする。これら二つの作用が、心血管系疾患、より特別には動脈性高血圧および心不全におけるペリンドプリルの有益な効果に寄与する。
【0005】
ペリンドプリル、その製造、および治療学におけるその使用は、欧州特許明細書EP 0 049 658に記載されている。
【0006】
ペリンドプリルのアルギニン塩は、欧州特許明細書EP 1 354 873に記載されている。
【0007】
この化合物の薬学的価値を考慮すると、主として吸湿性、粉末の加工性、固体の濾過可能性、摩砕可能性、および溶媒保持力の面で、優れた安定性を有するそれを得ることが最も重要であった。
【0008】
充分に明確な結晶形態を得ることは、これらの要件を満たすことを可能とする。
【0009】
特許明細書EP1 354 873は、ペリンドプリルのアルギニン塩を記載している。しかし、この文書は、この塩を充分に明確な結晶形態で得るための条件を特定していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここに、本出願人は、ペリンドプリルのアルギニン塩が、充分に明確な結晶形態で得られること、結果として濾過、乾燥および配合の容易さについて価値ある特徴を示すこと、を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
より具体的には、本発明は、式(I)の化合物のβ結晶形態であって、銅対陰極を備えた回折計を用いて測定され、角2θ(°):4.3、19.1および21.6で表される、該粉末X線回折ピークを特徴とする結晶形態に関する。
【0012】
好ましくは、本発明は、式(I)の化合物のβ結晶形態であって、銅対陰極を備えた回折計を用いて測定され、角2θ(°):4.3、11.1、12.2、16.2、19.1、19.6および21.6で表される、該粉末X線回折ピークを特徴とする結晶形態に関する。
【0013】
よりさらに好ましくは、本発明は、式(I)の化合物のβ結晶形態であって、回折計(銅対陰極)を用いて測定され、面間隔d、ブラッグ角2θ、強さおよび相対強さ(最も強いラインの百分率として表される)で表される、下記の粉末X線回折図表を特徴とする結晶形態に関する。
【0014】
【表2】

【0015】
本発明は、式(I)の化合物のβ結晶形態を製造する方法であって、ペリンドプリルの(L)−アルギニン塩を、トルエンまたはアセトニトリルとともに還流にて加熱し、次いで、得られた結晶を、高温状態で濾取し、乾燥する方法にも関する。
【0016】
本発明は、活性成分としての式(I)の化合物のβ結晶形態を、1種類またはそれ以上の適切な、不活性かつ無毒の賦形剤と一緒に含む薬学的組成物にも関する。本発明による薬学的組成物のうちでは、より特別には、経口、非経口(静脈内または皮下)または経鼻投与、錠剤もしくは糖衣錠、舌下錠、ゼラチンカプセル剤、トローチ剤、坐剤、クリーム剤、軟膏、皮膚用ゲル、注射可能製剤および服用可能懸濁液剤に適切であるものを列挙し得る。
【0017】
用いられる投与量は、障害の性質および重篤さ、投与経路、ならびに患者の年齢および体重に応じて変動させることができる。投与量は、1回またはそれ以上の投与で1日あたり1〜500mgに変動する。
【0018】
本発明による薬学的組成物は、インダパミドのような利尿剤を含有してもよい。
【0019】
下記の実施例は、本発明を例示する。
【0020】
粉末X線回折スペクトルは、下記の実験条件下で測定した:
Siemens D5005なる回折計、シンチレーション検出器;
銅対陰極、40kVの電圧、30mAの強さ;
θ−θのマウンティング、固定標本;
温度:常温;
測定範囲:3〜30°;
各測定間の増分:0.04°;
1ステップあたりの測定時間:4秒;
固定スリット:1.6mm;
Kβフィルター(Ni);
内部参照なし;
Siemensのスリットを用いたゼロ化プロシージャー;
EVAなるソフトウエア(ヴァージョン9.0)を用いて、実験データを処理。
【実施例1】
【0021】
ペリンドプリルアルギニン塩のβ結晶形態
ペリンドプリル(L)−アルギニン塩100g、およびアセトニトリル5Lを、反応器内に撹拌しつつ導入した。次いで、混合物を、還流まで撹拌しつつ加熱した。当初は懸濁液中にあった固体は、完全に溶解し、次いで数分後には高温状態で沈澱した。還流にて1時間撹拌した後、得られた結晶を、80℃の温度で濾取した、得られた結晶を乾燥して、表記生成物を無水物の形態で得た。
【0022】
粉末X線回折図表:
ペリンドプリルアルギニン塩のβ形態の粉末X線回折プロフィール(回折角)を、強さおよび相対強さ(最も強いラインの百分率として表す)と一緒に下表に並記した有意ラインによって示す。
【0023】
【表3】

【実施例2】
【0024】
薬学的組成物
それぞれ、活性成分4mgを含有する、1,000錠のための調合処方:
実施例1の化合物........................4g
ヒドロキシプロピルセルロース..................2g
コムギ澱粉..........................10g
乳糖............................100g
ステアリン酸マグネシウム....................3g
タルク.............................3g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


で示されるペリンドプリルのL−アルギニン塩のβ結晶形態であって、銅対陰極を備えた回折計を用いて測定され、ブラッグ角2θ(°):4.3、19.1および21.6で表される、該粉末X線回折ピークを特徴とする、結晶形態。
【請求項2】
銅対陰極を備えた回折計を用いて測定され、ブラッグ角2θ(°):4.3、11.1、12.2、16.2、19.1、19.6および21.6で表される、該粉末X線回折ピークを特徴とする、請求項1記載の式(I)の化合物のβ結晶形態。
【請求項3】
回折計(銅対陰極)を用いて測定され、面間隔d、ブラッグ角2θ、強さおよび相対強さ(最も強いラインの百分率として表される)で表される、下記の粉末X線回折図表:
【表1】


を特徴とする、請求項1記載の式(I)の化合物のβ結晶形態。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の式(I)の化合物のβ結晶形態を製造する方法であって、ペリンドプリルの(L)−アルギニン塩を、トルエンまたはアセトニトリルとともに還流にて加熱し、次いで、得られた結晶を、高温状態で濾取し、乾燥する方法。
【請求項5】
活性成分としての請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物を、薬学的に許容され得る1種類またはそれ以上の、不活性かつ無毒の担体と組み合わせて含む、薬学的組成物。
【請求項6】
利尿剤も含有することを特徴とする、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
利尿剤がインダパミドであることを特徴とする、請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項8】
アンギオテンシンI変換酵素のインヒビターとして用いるための医薬の製造における、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
心血管系疾患の処置に用いるための医薬の製造における、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−529500(P2009−529500A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556811(P2008−556811)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000334
【国際公開番号】WO2007/099216
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【Fターム(参考)】