説明

ホスホン酸がグラフトされたハイブリッド無機有機プロトン電解質膜(PEM)

【課題】高分子電解質膜に用いることができる、例えば、燃料電池に用いられるプロトン伝導性ポリマーを提供する。
【解決手段】本発明のプロトン伝導性ポリマーは、有機鎖を含むケイ素化合物、及び少なくとも1つの酸基を含む化合物を含む、複数の化合物の共重合によって形成される。ポリマーは、結合基を介して結合される酸基を有するハイブリッド有機無機マトリックスを含んでいる。結合基は、1つ以上の電子吸引基を含むことができる。電子吸引基は、ハロゲンであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の説明
本出願は、2003年9月11日出願の米国仮特許出願第60/502,178号、2003年10月16日出願の同第60/511,836号の優先権を主張する。これらの明細書の全ての内容は本願明細書に含まれるものとする。
【0002】
本発明はポリマー、特に、高分子電解質膜に用いることができる、例えば、燃料電池に用いられるプロトン伝導性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
プロトン電解質膜(PEM)は、燃料電池における重要な成分である。長年において種々の電解質膜が研究されてきたが、現在の膜は、多くの適用に性能がなお不十分である。ペルフルオロスルホンポリマー(例えば、Nafion(登録商標))を含むポリマープロトン導体は、良好な化学、電気化学、機械的安定性を有するが、高コスト、水分による寸法変化、不十分な親水性、多量の燃料交差といった深刻な欠点がある。
これらの限界は、ナノメートルサイズの吸湿性金属酸化物を有するポリマープロトン電解質、遊離したリン酸(H3PO4)を有する高分子膜、プロトン伝導性成分でドープされたハイブリッド無機有機プロトン伝導性膜を含む多くの他のプロトン伝導性膜の開発を刺激した。M. Rikukawa et al, Prog. Polym. Sci., 25, p 1463 (2000)を参照のこと。
現在のハイブリッド無機有機コポリマーは、燃料電池又は他の電気化学デバイスにおける実際の適用に満足な特性を有していない。例えば、遊離したH3PO4を含有する膜はH3PO4浸出の深刻な問題を有するので、相対湿度の低い環境にのみ用い得る。スルホン化芳香族高分子膜やスルホン酸基がグラフトされたハイブリッド無機有機共重合体膜は、相対湿度が高く100℃より低い条件下で高プロトン伝導性を示した。しかしながら、それらは、通常は脆性で、高スルホン化レベルの水において可溶性でもある。更に、スルホン酸基がグラフトされたハイブリッド無機有機共重合体膜は、非常に限られた熱安定性を有し、通常は、スルホン酸基の酸化のために100℃より高い温度で分解する(M. Popall et al, Electrochim. Acta, 40, p 2305 (1995))を参照のこと)。
従って、高プロトン伝導性、良好な機械的性質及び十分な熱安定性を有する新規なプロトン伝導性膜が求められている。
【発明の概要】
【0004】
プロトン伝導性重合体は、有機鎖を含むケイ素化合物と、少なくとも1つの酸基を含む化合物とを含む複数の化合物の共重合によって形成される。ポリマーは、酸基が結合基によって結合されたハイブリッド有機無機マトリックスを含んでいる。結合基は、1つ以上の電子吸引基を含むことができる。電子吸引基はハロゲンであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】5℃/minの加熱速度で乾燥空気中で測定された、改良されたポリマーを用いて製造された膜のTGA(熱重量分析)曲線、表中、組成物の略語はM = MDSPPO、Be = BTESEB、Oc = BTESO、及びG = GPTSを用いる、及び1 GPTS-1 PETHSのDSC(示差走査熱量測定法)曲線を示すグラフである。
【図2】無水状態におけるホスホン酸基(-PO3H2)がグラフトされた膜のプロトン伝導性を示すグラフである。
【図3】1 G-1 PETHS及び2 MDSPPO-2 BTESEB - 4 PETHSの組成物による膜の31P NMRスペクトルを示すグラフである。
【図4】RH = 70パーセントにおける1 MDSPPO-1 BTESO - 1 TPHSの組成物による膜のプロトン伝導性を示すグラフである。
【図5】80℃と100℃における組成物2 MDSPPO-2 BTESO - 6 PETHSを有する試料のプロトン伝導性の湿度依存性を示すグラフである。
【図6】相対湿度100パーセントにおけるx MDSPPO-y BTESEB - z PETHS (x M - y Be - z P、x = 2、y = 2又は4(z = 4)、2 MDSPPO-2 BTESO - 6 PETHS (2 M - 2 Oc - 6 P)、及び4 BTESO-6 HDMSFP (4Oc -6FP)の組成物を有する膜のプロトン伝導性を示すグラフである。
【図7】周囲圧(H2/O2を80℃で水蒸気と泡立てた)下に80℃で測定された、2 MDSPPO-4 BTESO-6 HDMSFPの組成物による膜に基づく単一電池の電池電圧と電力密度と電流密度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
改良されたプロトン伝導性重合体は、ケイ素原子、酸素原子、及び有機鎖を含む三次元有機無機ハイブリッドマトリックスを含んでいる。酸基は、結合基を介してマトリックスに結合される。結合基は、酸基の酸性度を増強するために1以上の電子吸引基を含有することができる。
一例のポリマーは、複数のケイ素化合物(各々ケイ素原子を少なくとも1つ含んでいる)の反応生成物を含んでいる。例えば、ケイ素化合物は、有機鎖を有する第1ケイ素化合物、少なくとも2つの炭素原子を有する有機鎖、及び少なくとも1つの酸基を含む第2ケイ素化合物を含むことができ、酸基は結合基を介して第2ケイ素化合物のケイ素原子に結合されている。
複数のケイ素化合物は、更に、第3ケイ素化合物、例えば、少なくとも1つの加水分解基を有するシラン誘導体、例えば、テトラアルコキシシラン(例えば、テトラエトキシシラン)又はトリアルコキシシランを含んでもよい。
他の例のポリマーは、有機鎖を含む第1ケイ素化合物、第1官能基を含む第2のケイ素化合物、及び第2官能基と酸基を含む第3化合物の反応生成物を含んでいる。コポリマー形成の間、ケイ素含有基は加水分解されて、ケイ素原子、酸素原子、及び有機鎖を含有する無機有機ハイブリッドマトリックスを形成する。更に、第1及び第2の官能基は、酸基をマトリックスに結合するために相互作用する。
【0007】
ハイブリッドマトリックスにおける有機鎖
1以上有機鎖を含有するケイ素化合物を供給することができる。共重合後、有機鎖、ケイ素原子、及び酸素原子を含む無機有機ハイブリッドマトリックスが形成される。
例えば、第1端と第2端を有する有機鎖を有するケイ素化合物を供給していてもよく、第1端は第1ケイ素含有基(例えば、第1シリル基)に接続され、第2端は第2ケイ素含有基(例えば、第2シリル基)に接続されている。
ケイ素化合物を含有する有機鎖の例としては、ビス(アルコキシシリル)末端ポリマー、オリゴマー及び/又は短鎖有機化合物、例えば、式Si(A3-xBx) - R - Si(A3-xBx) (式中、Aはアルコキシ基、ヒドロキシル基、又は他の加水分解性置換基であり得、Bはアルキル基又は水素であり得、Rは有機鎖である。)の化合物が挙げられる。他の例も本願明細書に述べられる。
他の例においては、有機鎖の第1端はシリル基に接続され、第2端は他の官能基へ接続されている。官能基としては、ビニル、-CH=CH2、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、ウレタン、スチレン、及び他の重合性基、又は、例えば、付加反応によって相互作用する基が挙げられる。官能基の他の例としては、ヒドロキシル(-OH)、ハロゲン(-X)、チオール(-SH)、アミン(例えば、-NH2)、及び化学技術において知られている他の官能基が挙げられる。官能基としては、相互に重合性であり得る基、又は他成分と共重合性であり得る基、例えば、他の前駆物質、例えば、他の有機シリコーン前駆物質についての官能基が挙げられる。
有機鎖の例としては、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラエチレンオキシド、ポリ(1-ブテン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリビニルアルコールが挙げられる。他の例としては、炭素原子2 - 20個を有する直鎖アルキル基が挙げられ、他の鎖は炭素、水素、及び任意に酸素を含み、鎖には環状基、分枝鎖、化学技術において知られている他の鎖が含まれる。有機鎖は、また、N、O、又はSで置換された炭化水素(又は他の有機鎖)を含むことができる。他の鎖、例えば、ポリシロキサン鎖も用いることができる。
従って、一例のコポリマーは、ケイ素原子、酸素原子、及び有機鎖を含む有機無機ハイブリッドマトリックス、並びに、結合基によって有機無機マトリックスに化学的に結合される酸基を含んでいる。有機無機ハイブリッドマトリックスは、有機的に変性シリカ化合物の形であり得る。
他の例においては、2以上の柔軟に相互接続されたシラン基のような追加のオルガノシラン、例えば、炭素原子2 - 20個を有するアルキル鎖によって相互接続される2つのシラン基が、膜の調製に、例えば、機械的性質を改善するために用いることができる。
【0008】
酸基
以下に記載される例においては、示される酸基は、しばしばホスホン酸基である。しかしながら、他のリン含有酸基(例えば、ホスホン酸誘導体)、イオウ含有酸基、ホウ素含有酸基、他の無機酸基又は他の有機酸基のような他の酸基も用いることができる。
例えば、プロトン伝導性膜は、マトリックスに結合した1以上酸基化学種を有するハイブリッド無機有機マトリックスを含むことができる。酸基は、無機酸基、例えば、リン含有酸基(例えば、ホスホン酸基、-PO3H、又は等価には、ホスホリル基)、イオウ含有酸基(例えば、スルホン酸基、-SO3H)、ホウ素含有酸基(例えば、ボロン酸基、-B(OH)2)等であり得る。酸基は、また、有機酸基、例えば、カルボン酸基(-COOH)であり得る。例えば、それら自体同じでも異なってもよい第1と第2の結合基によってハイブリッド無機有機マトリックスに結合された、2つ以上の異なる酸基が供給されてもよい。他の例においては、酸基の1以上の化学種、及びプロトン溶媒基の1以上化学種(例えば、窒素含有複素環)が、いずれも無機有機マトリックスに結合していることもあり得る。
ある種の環境においては、酸基の分離可能なプロトンは、他のイオン、例えば、アルカリ金属イオン、他の金属イオン、アンモニウムイオン等によって置き換えることができる。
酸基含有ケイ素化合物、例えば、シラン誘導体は、本明細書に記載される他の化合物との共重合反応において用いることができる。
酸基含有ケイ素化合物としては、PETHS、ホスホリルエチルトリヒドロキシルシラン(及びアルコキシ類似体)、酸置換フェニル置換トリアルコキシシランを(例えば、SPS (Si(EtO)3-Ph-SO2OH)、本明細書に述べられる他の化合物等が挙げられる。
酸基含有ケイ素化合物は、更に、官能基、例えば、重合性基、及び/又は有機ポリマー鎖にグラフトすることができる基を含むことができる。
【0009】
酸基をマトリックスに接続する結合基
酸基を無機有機ハイブリッドマトリックスに接続する結合基は、炭化水素鎖のような有機結合基、例えば、アルキル鎖であり得る。結合基は、また、酸基の酸性度を増強するように電子吸引基を含有することができる。電子吸引基は、ハロゲン原子、例えば、塩素又はフッ素原子であり得る。
例えば、酸基が結合基の特定の炭素原子に結合される場合には、その特定の炭素原子及び/又は1つ又は複数の隣接の炭素原子は電子吸引基に結合することができる。従って、結合基の範囲内の1以上炭素原子は、ハロゲン化(例えば、塩素化及び/又はフッ素化)することができる。
例えば、結合基がアルキル鎖である場合には、アルキル鎖は少なくとも部分的にハロゲン化、又は完全にハロゲン化することができる。例えば、酸基は、フッ素化又は塩素化された炭素原子に結合することができる。
結合基は、例えば、炭素原子2〜20個を有する脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル又はアルケン)、フェニル基又は誘導体、又はメタクリル(又はアクリル)含有脂肪族基であり得る。結合基は、例えば、1以上のO、N、S、又はハロゲン(F、Cl、Br、I)原子で置換されてもよい。
他の例においては、酸基はリン含有酸、例えば、ホスホン基であり、ホスホン酸基のリン原子は結合基の炭素原子に結合し、結合基の炭素原子はフッ素化されている。
他の例においては、カルボン酸に隣接した炭素は、電子吸引基、例えば、-CF2COOHに結合されてもよい。
酸基は、ハイブリッドマトリックスに結合基を介して接続されてもよく、結合基は有機鎖であり、第1官能基と第2官能基との反応から得られる。官能基は、二重結合、例えば、ビニル、-CH=CH2、アクリレート、メタクリレート、及びスチレンを含んでいる。これらの例においては、第1前駆物質は加水分解性ケイ素含有基と第1官能基を含んでいる。第2前駆物質は、酸基と第2官能基とを含んでいる。加水分解性ケイ素含有基は加水分解され、その中のケイ素原子がハイブリッド有機無機マトリックスの一部になる。また、第1と第2の官能基(例えば、二重結合)は、重合によって酸基を無機有機ハイブリッドマトリックスに結合するように反応する。結合基の他の例も本明細書に述べられる。
【0010】
共重合
コポリマーは、複数の前駆物質の共重合によって形成することができる。例えば、前駆物質は複数のケイ素化合物を含むことができる。第1ケイ素化合物は、1つ以上の加水分解性ケイ素含有基、例えば、アルコキシシリル(又は他のシリル基)を含むことができるので、アルコキシシリル基は、重合の間、少なくとも部分的に加水分解される。第2ケイ素化合物は、また、1つ以上の加水分解性ケイ素含有基と有機鎖を与えることができるので、加水分解が生じた後に有機鎖はハイブリッド有機無機マトリックスに組込まれる。
1以上の前駆物質は、酸基を含んでいる。酸基含有前駆物質は、結合基によって加水分解性ケイ素含有基に結合した酸基を含むことができる。或はまた、酸基含有前駆物質は官能基に結合した酸基を含むことができ、官能基は他の前駆物質の官能基と反応し、他の前駆物質は加水分解性ケイ素含有基を含有している。いずれの方法でも、酸基はハイブリッド無機有機マトリックスに結合される。
従って、高分子電解質膜に用いられるコポリマーを製造する方法は、炭素原子を少なくとも2個有する有機鎖を含む第1ケイ素化合物を供給することを含み、第1ケイ素化合物はシリル基を官能基を更に含み、そのシリル基と官能基は有機鎖によって接続されている。
更に、少なくとも1つの酸基を含む第2ケイ素化合物が供給され、その酸基は第2ケイ素化合物のシリル基に結合基によって結合されている。その後、第1ケイ素化合物と第2ケイ素化合物は共重合され、共重合プロセスは、第1ケイ素化合物のシリル基の少なくとも部分的な加水分解と、第2ケイ素化合物のシリル基の少なくとも部分的な加水分解とを含んでいる。第1ケイ素化合物のシリル基が与えるケイ素原子と、第2ケイ素化合物のシリル基が与えるケイ素原子と、第1のケイ素化合物が与える有機鎖とを含む無機有機ハイブリッドマトリックスを与えるコポリマーが製造される。酸基は、結合基によって第2ケイ素化合物のシリル基が与えるケイ素原子に結合されている。
従って、一例のコポリマーは、少なくとも第1モノマー単位と第2モノマー単位をランダム配列で含み、ここで、第1モノマー単位は炭素原子2-20個を有する有機鎖と、少なくとも1つのケイ素原子とを含み、第2モノマー単位は他のケイ素原子に結合基によって接続された酸基を含んでいる。
【0011】
他の前駆物質
用いることができる他の前駆物質としては、フェニルトリアルコキシシラン、加水分解性ケイ素含有基を含有する他の化合物(例えば、TEOS)、官能基を含有する他の化合物が含まれる。
【0012】
適用
本明細書に記載されるポリマー(コポリマー)は、改良された高分子電解質膜(PEM)において、又は他の適用に用いることができる。本明細書に記載されるポリマーの適用としては、燃料電池、水素分離、水素精製、炭化水素燃料の改質又は部分酸化、汚染物除去、ガス検知、及びエネルギー貯蔵と変換に関連する他の方法が含まれる。
従って、本発明による燃料電池は、正電極、負電極、及び本明細書に記載されるポリマーから形成されたプロトン伝導性膜を含んでいる。膜の寸法は、当該技術において周知のように、燃料電池の構造によって決定することができる。プロトン伝導材料は、更に処理せずに膜として用いるのに適した形で製造することができ、又は所望の形状に切断され得るテープ又はシートとして形成され、又は更に処理される。
他の適用としては、イオン交換膜、液体から所定の液成分(例えば、イオン)の抽出、化学処理システムにおける酸触媒、他のイオン伝導性応用、又は選択的なイオン送信膜が含まれる。
従って、改良されたPEMは、所望の寸法を有する膜に本明細書に記載されるようなコポリマーを形成することによって提供される。改良された燃料電池は、例えば、当該技術において既知の燃料電池構造のような燃料電池構造に、改良されたPEMを更に含むことによって供給される。
以下の化学略号は、下記の例において用いられる、便宜のためにここに示される。
BTESO - ビス(トリエトキシシリル)オクタン
BTESEB - ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン
DMSFP - [4-(ジエトキシメチルシリル)-1,1-ジフルオロブチル]ホスホン酸ジエチルエステル
DSFP - ジエチル-4-(トリエトキシシリル)-1,1-ジフルオロブチルホスホネート
GPTS - (3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン
MAPOS -メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン
MDSPPO -ビス(3-メチルジメトキシシリル)プロピルポリプロピレンオキシド
HDMSFP - [4-(ジヒドロキシメチルシリル)-1,1-ジフルオロブチル]ホスホン酸ジエチルエステル
OTMOS - 7-オクテニルトリメトキシシラン
PBI - ポリベンズイミダゾール
PETHS - ジヒドロホスホリルエチルトリヒドロキシシラン
PPTHS - p-ジヒドロキシホスホリルフェニルトリヒドロキシシラン
TEOS - テトラエトキシシラン
TPES -トリス(ジメトキシホスホリルエチル)エトキシシラン
TPHS -トリス(ジヒドロキシホスホリルエチル)ヒドロキシシラン
VPA - p-ビニルベンジルホスホン酸
VPMS - (3-(4-ビニルベンジルチオ)プロピル)ジエトキシ(メチル)シラン
【0013】
ポリマーという用語は、本発明によるコポリマーのようなコポリマーを含むように用いられる。
アルコキシホスホリルがグラフトされたアルコキシシラン
アルコキシホスホリル基を、アルコキシシランにグラフトした。例のアルコキシシランの分子構造をスキーム1と2に示す。 対応するアルコキシホスホリルがグラフトされたアルコキシシランの加水分解によって合成された、ジヒドロキシホスホリルがグラフトされたヒドロキシシランを、他のアルコキシシラン、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)と他の前駆物質、例えば、有機鎖形成成分と共に溶媒(例えば、メタノール、エタノール、又はTHF)に溶解し、触媒として塩酸を用いて水で加水分解した。
ゾルの組成物によって1から48時間までの時間ゾルを撹拌した後、ゾルをペトリ皿に注いだ。熱硬化プロセスのために、ゾルを硬化用の高温で乾燥炉内で加熱した。膜の機械的特性が強く蒸発速度に左右されるので、溶媒の蒸発速度を注意深く制御した。UV硬化プロセスのために、溶媒を減圧で蒸発させ、次に、得られた樹脂をUV硬化した。
膜製造の他の方法においては、二重結合を有するホスホン酸がグラフトされた前駆物質、二重結合を有するアルコキシシリルがグラフトされた前駆物質、及び/又はアルコキシシリル末端有機ポリマー、並びに開始剤(0.5%〜5%)の混合物を型に注ぎ入れ、その後、混合物を光/熱開始ラジカル重合によって重合した。
【0014】
ジアルコキシホスホリルがグラフトされたアルコキシシラン
【0015】
【化1】

【0016】
上記スキーム1は、ジアルコキシホスホリルがグラフトされたアルコキシシランの一般構造を示すものである。代表例においては、Rは、結合基、例えば、炭素2〜18個(又は2〜20個)を有する脂肪族炭化水素基、フェニル基又は誘導体、又は脂肪族基を有するメタクリル(又はアクリル)、又は本明細書に記載されるような他の結合基である。Aはアルコキシ基、例えば、C2H5O-又はCH3O-であり、Xは1、2、又は3であり得る。Mは、メチル、エチル、プロピル、又は他のアルキル又は有機基であってもよい。他の代表例としては、アルキル基やアルコキシ基がケイ素原子に結合した化合物を含んでいる。他の例においては、ケイ素原子は、1以上の他の有機基で置換されている。
本発明の例において使用し得る、例のジアルコキシホスホリルがグラフトされたアルコキシシラン(スキーム1を参照のこと)としては、ジエトキシホスホリルエチルトリエトキシシラン、p-ジエトキシホスホリルフェニルトリエトキシシラン、ジメトキシホスホリルフェニルメチルジメトキシシラン、p-ジエトキシホスホリルプロピルトリエトキシシラン、ジエトキシホスホリルオクチルメチルジエトキシシラン、ジエトキシホスホノトリエトキシシランケトン、ジメトキシホスホリルブチルトリメトキシシラン、トリス(ジメトキシホスホリルエチル)エトキシシラン、ビス(ジメトキシホスホリルエチル)ジエトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
ハイブリッド無機有機コポリマーのためのフッ素化ホスホリル含有前駆物質
フッ素化ホスホン酸基、例えば、-(CF2)n-PO3H2又は-(CHF)n-PO3H2)は、-PO3H2基に直接接続されるC-F基の電子求引性効果が大きいことから-CH2-PO3H2基より強い酸性度を有する。従って、グラフトされたフッ素化ホスホン酸基を有する膜は高プロトン伝導性を有する。
ハイブリッド無機有機コポリマーのための前駆物質は、スキーム2に示されるように書くことができる。
【0018】
【化2】

【0019】
上記スキーム2は、フッ素化ホスホリル含有前駆物質の例の一般構造を示すものである。代表例においては、R1は、n = 1〜20を有する-(CHF)n基-又は-(CF2)n-基であり得るし; R2は、C1〜C20を有する炭素-水素鎖(又は他の鎖)であり得るし; R3は、-CH3、-C2H5又は-C3H7であり; Aは、-OCH3、又は-OC2H5であり得るし; Mは、アルキルであり、x = 0、1又は2である。
他の例においては、Aは、あらゆるアルコキシ基又は他の加水分解基、例えば、ヒドロキシルであり得るし、Mは、有機基、例えば、アルキル基であり得る。これらの例においては、結合基は、-R1 - R2 -を含んでいる。他の例においては、R1は、ハロゲン置換炭化水素、例えば、-CF2CHF-、-CCl2-等であり得るし、R1は、1以上の他の電子吸引基を含むことができる。
【0020】
二重結合を有するホスホン酸がグラフトされた前駆物質
【0021】
【化3】

【0022】
上記スキーム3は、官能基Bを有するホスホン酸がグラフトされた前駆物質の代表例のための一般構造を示すものである。例としては、R1が、n = 1 〜 20を有する-(CHF)n-基、又は-(CF2)n-基; 他の(少なくとも部分的に)ハロゲン化された(例えば、フッ素化)アルカン、アルケン、又は炭化水素; 他の置換基(例えば、1つ又は複数の電子吸引基を含有する); 又はC1〜C20を有する炭化水素鎖であり得る。Bは、重合、例えば、Bと反応する第2官能基を有するケイ素含有化合物との共重合によって酸基をハイブリッド無機有機マトリックスに給合するための官能基(例えば、-CH=CH2)であり得る。
このような前駆物質の個々の例としては、p-ビニルベンジルホスホン酸;3-トリフルオロエテノキシヘキサフルオロプロピルホスホン酸; ビニルホスホン酸等が挙げられる。
【0023】
有機鎖形成成分
【0024】
【化4】

【0025】
上記スキーム4は、有機鎖形成成分としての官能基を有するアルコキシシランを示すものである。Rは、有機鎖、例えば、炭素原子1〜20個を有するアルキル鎖のような脂肪族鎖であり、Aは、アルコキシ基、例えば、C2H5O-又はCH3O-であり; Mは、アルキル基、例えば、C2H5-又はCH3-であり; Xは、1又は2である。Bは、官能基、例えば、-OH、-SH、-CH=CH2、-NH2、エポキシ環、第2ケイ素含有基、例えば、第2シリル基、又は他の官能基である。
本発明の例において有機鎖形成成分として用いることができる前駆物質の例を一般的にスキーム4に示す。それらは、膜製造プロセスにおいて有機ポリマー鎖又は網目を熱的に又は化学的に形成することができる。このようなアルコキシシランの個々の例としては、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、n-(2-アミノエチル)−11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、n-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、ドコセニルトリエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、7-オクテニルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0026】
ビスアルコキシシリル末端鎖
ビスアルコキシシリル末端ポリマー又はビスアルコキシシリル末端の短い有機鎖もまた、本発明の例における有機鎖形成成分として用いることができる(例えば、下記のスキーム5に示される)。
個々の例としては、ビス(3-メチルジメトキシシリル)(プロピル)ポリプロピレンオキシド、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0027】
【化5】

【0028】
上記スキーム5は、ビスアルコキシシリル末端ポリマー又はビスアルコキシシリル末端の短い有機鎖の一例の一般式を示すものである。代表例においては、Rは有機鎖であり得る。Aは、C2H5O-、CH3O-、他のアルコキシ、他の加水分解基、又は他の有機基であり得るし、Mは、C2H5-、CH3-、他のアルキル、又は他の炭化水素又は有機基であり得るし、xは、1又は2であり得る。
【0029】
前駆物質の合成
実施例1〜3は、膜を調製するために用いることができる新規な前駆物質の合成を示すものである。
【実施例】
【0030】
実施例1
前駆物質(3-(4-ビニルベンジルチオ)プロピル)ジエトキシ(メチル)シランの合成: (3-(4-ビニルベンジルチオ)プロピル)ジエトキシ(メチル)シランの前駆物質を以下のスキーム6に示されるプロセスで合成した。20mlのエタノール中の10ミリモルのカリウムエタノレート(3.507gの24%エタノール溶液)を10ミリモルの3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロパン-1-チオの溶液に添加した。
その混合液を5分間撹拌し、次に、10ミリモルのp-ビニルベンジルクロリドを滴下し、12時間撹拌した。白色沈殿KIをろ過によって除去した。約2.6gの無色の粘稠な液体を酢酸エチルとヘキサンによって溶離されるシリカゲルカラムクロマトグラフィによってろ液から分離した(容積の1/3)(収率80.2%)。1H NMRデータ: 7.33 (4H, m), 6.70 (1H, m), 5.72 (1H, d, JH-H=17.58), 3.77 (6H, m), 2.43 (2H, t, JH-H=7.30, 1.63 (2H, m), 1.23 (6H, m), 0.67 (2H, m), 0.09 (3H, s).
【0031】
【化6】

【0032】
スキーム6: (3-(4-ビニルベンジルチオ)プロピル)ジエトキシ(メチル)シランの合成。
実施例2
[4-(ジエトキシメチルシリル)-1,1-ジフルオロブチル]ホスホン酸ジエチルエステル(DMSFP)の合成。5g(23.4ミリモル)のジエチル-1,1-ジフルオロブタ-3-エニルホスホネートを7.5g(56ミリモル)のジエトキシメチルシランと数滴のヘキサクロロ白金酸(IV)溶液(5%イソプロパノール)と混合した。60℃で一晩撹拌した後、その溶液を減圧下で蒸発させ、反応成分を除去し、生成物[4-(ジエトキシメチルシリル)-1,1-ジフルオロブチル]ホスホン酸ジエチルエステル(DMSFP、6g、16.6ミリモル、収率71%)を得た。スキーム7を参照のこと。1H NMR (CDCl3):δ(ppm) 0.12(3H, s), 0.65 (2H, m), 1.21 (6H, t, JH-H=6.98), 1.35 (6H, 6, JH-H=7.06), 1.65 (2H, m), 2.15 (2H, m), 3.75 (4H, q, JH-H=6.98), 4.26 (4H, q, JH-H=7.06).
【0033】
【化7】

【0034】
スキーム7: [4-(ジエトキシメチルシリル)-1,1-ジフルオロブチル]ホスホン酸ジエチルエステルの合成
実施例3
[4-(トリエトキシシリル)-1,1-ジフルオロブチル]ホスホン酸ジエチルエステル(DSFP)の合成: 5g(23.4ミリモル)のジエチル-1,1-ジフルオロブタ-3-エニルホスホネートを56ミリモルのトリエトキシメチルシランとヘキサクロロ白金酸(IV)溶液(イソプロパノール中5%)と混合した。60℃で一晩撹拌した後、その溶液を減圧下で蒸発させて反応成分を除去し、生成物[4-(トリエトキシシリル)−1,1-ジフルオロブチル]ホスホン酸ジエチルエステル(DSFP、収率50%)を得た。1H NMR (CDCl3): δ(ppm) 0.67 (2H, m), 1.21 (9H, t, JH-H=6.98), 1.35 (6H, 6, JH-H=7.06), 1.70 (2H, m), 2.08 (2H, m), 3.85 (6H, q, JH-H=6.98), 4.26 (4H, q, JH-H=7.06).
【0035】
【化8】

【0036】
スキーム8: [4-(トリエトキシシリル)-1,1-ジフルオロブチル]ホスホン酸ジエチルエステルの合成。
実施例4
アルコキシシリル基を含有する前駆物質においてジエトキシホスホリル-をジヒドロキシホスホリル-に変換するプロセスを記載する。下記スキーム9に示されるように、一例としてジエトキシホスホリルエチルトリエトキシシランによるプロセスが以下の通りに記載され得る。3.28gのジエトキシホスホリルエチルトリエトキシシランをコンデンサとアルゴンガスのラインを備えた三つ口フラスコにおいて撹拌することによって50mlの縮合塩酸水溶液に溶解した。フラスコを油浴に入れ、アルゴンの保護下で90℃で約24時間で保持した。50℃に冷却した後、塩酸水溶液を減圧で蒸発させ、透明な粘稠な固形物を得た。得られた固形物のFTIRスペクトルは、-POH基の特有のピークが2320cm-1に現れたことを示している。固形物を、膜製造に用いられるエタノールに再溶解した。
【0037】
【化9】

【0038】
上記スキーム9は、ジエトキシホスホリルエチルトリエトキシシランがジヒドロキシホスホリルエチルトリヒドロキシシラン(PETHS)に加水分解されることを示している。
膜の製造
以下の実施例は、膜標品プロセスを示すものである。
【0039】
実施例5
プロトン伝導性膜は、ポリマー網目形成成分としてビス(3-メチルジメトキシシリル)プロピルポリプロピレンオキシド(MDSPPO)とビス(トリエトキシシリル)オクタン(BTESO)を用いて作製した。PETHSと共にこれらの前駆物質をエタノールに溶解した。20分間撹拌した後、0.5N HCl水溶液(又は純水)をその前駆物質溶液に滴下し、12時間撹拌してゾルを形成した。
膜の組成は、(x M - y Oc - z P)として表示することができ、(x MDSPPO - y BTESO - z PETHS)を示し、ここで、x、y、zは、それぞれMDSPPO、BTESO、PETHSからのSiのモル数である。これらの実施例においては、xは1-2であり、yは2-4であり、zは3-6である。添加される水の量は、全Si/モルの4倍であった。
自立膜を製造するために、ゾルをペトリ皿に注入した。カバーに小さな穴を開けて約6日で徐々に有機溶液と水を蒸発させた。次に、カバーを除去し、膜を、60℃3日間、80℃で12時間、100℃で3時間乾燥した。
TGA-DSC曲線から、膜が220℃まで熱的に安定であり(図1を参照のこと)、且つプロトン伝導性が100℃においてほぼ100パーセント相対湿度を有する環境では6.8×10-2 S/cm(図5を参照のこと)、100℃において約20パーセントRHにおいて2.2×10-3 S/cm(図6を参照のこと)に達し得ることがわかる。
種々の図は、組成物略語: M = MDSPPO(本実施例)、Be = BTESEB、Oc = BTESO(本実施例)、G = GPTS、P = PETHS、FP = HDMSFPを用いている。
【0040】
実施例6 (MDSPPO/ BTESEB/ PETHS)
有機鎖網目形成成分としてビス(3-メチルジメトキシシリル)プロピルポリプロピレンオキシド(MDSPPO)とビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン(BTESEB)によりプロトン伝導性膜を作製した。上記の前駆物質をPETHSと共にエタノールに溶解した。20分間撹拌した後、0.5N HCl水溶液を前駆物質溶液に滴下し、12時間撹拌してゾルを形成した。
膜の組成物は、x MDSPPO-y BTESEB - z PETHSとして表示することができ、x、y、zは、それぞれMDSPPO、BTESEB、PETHSからのSiのモル数である。代表例においては、xは1-2であり、yは2-4であり、zは3-8である。添加される水の量は、全Si/モルの4倍であった。
自立膜を製造するために、ゾルをペトリ皿に注入した。カバーに小さな穴を開けて約6日で徐々に有機溶液と水を蒸発させた。次に、カバーを除去し、膜を、60℃3日間、80℃で12時間、100℃で3時間乾燥した。膜は、厚さが0.1mm以下の可撓性である。
膜は、また、所望の適用によって必要に応じて他の寸法、例えば、1mm以下、0.2mm以下、不均一な厚さ、又は他の形状に製造することができる。膜は、多層構造において積み重ねることができ、所望によりより厚い寸法が得られる。
図1は、膜が220℃まで熱的に安定であることを示すTGA-DSC曲線を示すグラフである。
図6は、ほぼ100%相対湿度を有する環境ではプロトン伝導性が100℃において0.02S/cmに達し得ることを示している。
【0041】
実施例7
ポリマー網目形成成分としてビス(3-メチルジメトキシシリル)プロピルポリプロピレンオキシド(MDSPPO)とビス(トリエトキシシリル)オクタン(BTESO)によるプロトン伝導性膜を作製した。これらの前駆物質をHDMSFP([4-(ジヒドロキシメチルシリル)-1,1-ジフルオロブチル]ホスホン酸ジエチルエステル)と共にエタノールに溶解した。20分間撹拌した後、0.5のN HCl水溶液(又は純水)を前駆物質溶液に滴下し、48時間撹拌してゾルを形成した。
膜の組成は、x MDSPPO - y BTESO - z HDMSFPとして表示することができ、ここで、x、y、zはそれぞれMDSPPO、BTESO、HDMSFPからのSiのモル数である。代表例においては、xは0-2であり、yは2-4であり、zは3-6である。添加される水の量は、全Si/モルの4倍であった。
自立膜を製造するために、ゾルをペトリ皿に注入した。カバーに小さな穴を開けて約6日で徐々に有機溶液と水を蒸発させた。次に、カバーを除去し、膜を、60℃3日間、80℃で12時間、100℃で3時間乾燥した。100℃においてほぼ100%相対湿度による環境ではプロトン伝導性が5.4×10-2 S/cmに達し得る(図6を参照のこと)。
【0042】
実施例8
ポリマー網目形成成分として(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン(GPTS)によるプロトン伝導性膜を作製した。
GPST、テトラエトキシシラン(TEOS)及びジヒドロキシホスホリルエチルトリヒドロキシシラン(PETHS)をエタノールに溶解することによって前駆物質溶液を調製した。20分間撹拌した後、0.5N HCl水溶液(又は純水)を前駆物質溶液に滴下し、12時間撹拌してゾルを形成した。膜の組成は、x GPTS-y TEOS - z PETHSとして表示することができ、xは20〜50モル%であり、yは0-50モル%であり、zは30-50モル%である。添加される水の量は、全Si/モルの4倍である。自立膜を製造するために、ゾルをペトリ皿に注入した。ペトリ皿にカバーをし、60℃で3日間乾燥炉内で保持した後、カバーに小さな穴を開けて約6日で徐々に有機溶液と水を蒸発させた。次に、カバーを除去し、膜を、60℃3日間、80℃で12時間、100℃で3時間乾燥した。TGA-DSC曲線(図1)から、膜が300℃まで熱的に安定であり、且つほぼ100%相対湿度による環境ではプロトン伝導性が50℃において4×10-3 S/cmに達し得ることがわかる。
【0043】
実施例9
p-ジエトキシホスホリルフェニルトリエトキシシランを、実施例4と同様のプロセスで加水分解してp-ジヒドロキシホスホリルフェニルトリヒドロキシシラン(PPTHS)を得た。PPTHSを7-オクテニルトリメトキシシラン(OTMOS)とTEOSと共にエタノールに溶解した。20分間撹拌した後、0.5N HCl水溶液(又は純水)を前駆物質溶液に滴下し、12時間撹拌してゾルを形成した。最後に、触媒として過酸化ベンゾイル(重量で0.2-1.0%のOTMOS)をゾルに添加し、更に30分間撹拌した。膜の組成は、x OTMOS-y TEOS - z PPTHSとして表示することができ、ここで、x、y、zは、それぞれOTMOS、TEOS、PPTHSからのSiのモルである。 代表例においては、xは1-2であり、yは2-4であり、zは3-6である。添加される水の量は、全Si/モルの4倍である。自立膜を製造するために、ゾルの溶媒を減圧で蒸発させた。残留樹脂を型に注入し、60℃で3日間、80℃で12時間、100℃で3時間加熱した。ほぼ100%相対湿度による環境ではプロトン伝導性は100℃において410-2 S/cmに達し得る。
【0044】
実施例10
第1官能基(第1二重結合)を有するヒドロキシシリルグラフト前駆物質、第2官能基(第2二重結合)を有するホスホン酸グラフト前駆物質を、ヒドロキシシリル末端プラスチックポリマー(鎖の各端に加水分解性ケイ素含有基を有する有機鎖)と共に用いてプロトン伝導性膜を作製した。
(3-(4-ビニルベンジルチオ)プロピル)ジエトキシ(メチル)シラン(VPMS、実施例1を参照のこと)、p-ビニルベンジルホスホン酸(VPA)、及びMDSPPOを少量のエタノールに撹拌しながら溶解することによって前駆物質溶液を調製した。水(H2O/Si = 4/1モル)を前駆物質溶液に滴下し、30分間撹拌し、次に、開始剤として過酸化ベンゾイル(BPO)を添加した(VPMS、VPA及びMDSPPOの全質量の0.5%)。
膜の組成はx MDSPPO-y VPMS - z VPAとして表示することができ、ここで、xは0〜20モル%であり、yは0-50モル%であり、zは30-60%モルである。
自立膜を製造するために、液体混合物をペトリ皿に注入した。ペトリ皿にカバーをした後、乾燥炉内で80℃で3日間、100℃で3時間保持した。ほぼ100%相対湿度を有する環境ではプロトン伝導性は100℃において10-2 S/cmに達し得る。
【0045】
実施例11
トリス(ホスホリルエチル)ヒドロキシシラン(TPHS)を含有するハイブリッド無機有機プロトン伝導性膜を作製した。第一段階において、米国特許第3,122,581号に記載されるようにトリビニルエトキシシランとジメチルホスファイトからトリス(ジメトキシホスホリルエチル)エトキシシラン(TPESは、スキーム10を参照のこと)を合成した。3.30gのジメチルホスファイト(30ミリモル)をコンデンサとArガスラインを備えた三つ口フラスコに入れた。フラスコを油浴に入れ、145℃まで加熱した。1.543gのトリビニルエトキシシラン(10ミリモル)中の0.08gの過酸化ベンゾイルの混合を滴下した。2時間加熱を続け、次に、室温まで冷却した。
【0046】
【化10】

【0047】
スキーム10: トリス(ジメトキシホスホリルエチル)エトキシシラン(TPES)
第2段階において、得られたTPESを上記実施例1と同様の方法を用いて加水分解した。得られたTPHSを無色の粘稠な液体であり、水に可溶性であった。
最後に、ポリマー網目形成成分としてビス(3-メチルジメトキシシリル)(プロピル)ポリプロピレンオキシド(MDSPPO)とビス(トリエトキシシリル)オクタン(BTESO)を用いたTPHSを含有するハイブリッド無機有機膜を、溶媒を含まないプロセスで作製した。MDSPPOとBTESOは、注意深く共に混合した。一定量の水(MDSPPOとBTESOにおける全Siのモル数の約3倍)をTPHSに添加し、次に、MDSPPOとBTESOの混合物に急速に撹拌しながら滴下した。得られた無色の粘稠な液体をペトリ皿に注ぎ、60℃で数日間乾燥炉に入れて、水と小有機分子を膜から蒸発させ、次に、100℃で6時間の乾燥した。
膜の組成をx MDSPPO-y BTESO - z TPHSとして表示することができ、、x、y、zはそれぞれMDSPPO、BTESO、TPHSからのSiのモルである。代表例においては、xは1-2であり、yは2-4であり、zは3-6である。得られた膜は、可撓性が高く、機械強度が良好である。31P NMRスペクトルから3%未満の全Pが膜において遊離H3PO4分子として存在することが確認された。TGA-DSC曲線は、膜が250℃まで熱的に安定であることを示している。100℃における1 MDSPPO-1 BTESO - 1 TPHSの組成による膜のプロトン伝導性は、RH 70%において2.6×10-2 S/cmであった(図4を参照のこと)。
【0048】
膜の熱安定性
図1は、2 MDSPPO-2 BTESO-6 PETHS(実施例5)、2 MDSPPO-4 BTESEB-4 PETHS(実施例6)、及び1 GPTS-1 PETHS(実施例8)組成を有する試料のTGA曲線を室温から500℃まで乾燥空気における1 GPTS-1 PETHSのDSC曲線と共に示すグラフである。TGA曲線において主に2つの質量損失段階がある。分解温度より低い小さな質量損失は、膜における水と小有機分子の蒸発に対応する。コポリマーの有機部分の分解は、膜2 MDSPPO-2 BTESO-6 PETHS、2 MDSPPO-4 BTESEB-4 PETHS及び1 GPTS-1 PETHSについてそれぞれ220℃、240℃、280℃から始まる。対応してDSC曲線において分解温度近くに発熱ピークが現れる。それ故、ハイブリッド無機有機膜は、乾燥空気において220℃まで安定である。
【0049】
膜における-PO3H2基の状態
膜におけるホスホン酸基の状態を更に検査するために膜1 GPTS-1 PETHSと2 MDSPPO-2 BTESEB - 3 PETHSの31P NMRスペクトルを得た(図3を参照のこと)。
2つの31P共鳴ピークがそれぞれδ = -0.1 ppmと+31 ppmに認められた。δ = 31 ppmの極めて強いピークは、C-P結合によって脂肪鎖にグラフトした-PO3H2基のものであると考えられる。弱いピークは、δ=-0.11 ppmにある。弱いピークの実測積分は、1 GPTS-1 PETHS及び2 MDSPPO-2 BTESEB - 3 PETHSの組成を有する試料に対する全31P共鳴ピークの約0.3%及び4.3%である。膜における95%を超えるホスホン基-PO3H2が新規なハイブリッド無機有機膜におけるSiO網目と反応しなかったので、-PO3H2基として残ることがわかる。これらの基は、プロトン供与体と受容体として作用することができ、プロトン伝導に関与することができる。
【0050】
無水状態におけるプロトン伝導性
図2は、無水状態における3つの試料のプロトン伝導性を示すグラフである。HDMSFPは、加水分解されたDMSFPである。2MDSPPO (M) -2 BTESO (Oc)-6 PETHSの組成を有する試料のプロトン伝導性は140℃において4.3×10-5 S/cmである。
【0051】
プロトン伝導性の湿度依存性
図5は、80℃と100℃における2 MDSPPO-2 BTESO-6 PETHSの組成を有する膜のプロトン伝導性の湿度依存性を示すグラフである。プロトン伝導性は、80℃から100℃までの温度範囲における無水状態では10-6〜10-5 S/cm程度であるが、増加する相対湿度において劇的に増加する。プロトン伝導性は、RH〜20%において2.3×10-3 S/cm、80℃のRH〜100%において1.76×10-2 S/cmに達することができる。湿った雰囲気におけるこれらの膜のプロトン伝導性の劇的な増加は、プロトンの媒体としてH3O+の高速輸送によるものと考えることができる。
100%相対湿度における水吸収率は、乾燥試料(乾燥Ar中、70℃で約12時間)と水飽和試料(密閉した水室において室温で24時間)間の質量の変化によって算出した。試料の-PO3H2基含量の増加と共に増加することがわかった。試料2 MDSPPO-4 BTESEB-4 PETHS, 2MDSPPO-2 BTESEB-4 PETHS、2 MDSPPO-2 BTESEB-6 PETHSについてそれぞれ10.8質量%、15.0質量%、26.5質量%であり、これらの膜において1モルの-PO3H2基がそれぞれ2.6モル、3.1モル、4.4モルの水を吸収することを意味する。
2 MDSPPO-2 BTESO-6 PETHS(-CH2-PO3H2をグラフトした)と2 MDSPPO-2 BTESO-6 HSMSFP(-CF2-PO3H2をグラフトした)の組成を有する膜は、1モルの-PO3H2が、それぞれ5.1モルと5.4モルの水を吸収した同様の水吸収を有する。1モルの酸基が、通常は少なくとも12モルの水を吸収することができる、リン基をグラフトしたポリマーポリ(ビニルアクリレートリン酸)と比較して、-PO3H2基を有する新規なハイブリッド無機有機膜は非常に少量の水を吸収した。
酸基をグラフトした高分子材料の水吸収は、材料の分子構造によって制御されることが報告されている。例えば、S-PPBP(スルホン化ポリ(4-フェノキシベンゾイル-1,4-フェニレン))及びS-PEEK(スルホン化ポリ(オキシ-1,4-フェニレンオキシ-1,4-フェニレンカルボニル-1,4-フェニレン))において、1モルの-SO3Hは、S-PPBPの可撓性側鎖のためにRTにおける100%相対湿度では、それぞれ9モルと3モルの水を吸収することができる。新規なハイブリッド無機有機共重合体膜の少量の水の吸収は、強固な無機-Si-O-Si-O-網目によると考えることができる。
【0052】
100%相対湿度における膜のプロトン伝導性
得られた膜全てのプロトン伝導性を室温から100℃まで〜100%RHにおいて測定した。
図6は、MDSPPOをベースにした膜と比較のためのNafion(登録商標)115のプロトン伝導性の温度依存性を示すグラフである。プロトン伝導性は、-PO3H2含量につれて増加した。-PO3H2 /Siモル比が膜において1/2より大きい場合、100℃において10-2 S/cmに達することができる。新規なハイブリッド無機有機膜のプロトン伝導性は、Nafion(登録商標)やスルホン化芳香族高分子膜に匹敵する。
4 BTESO-6 HDMSFPのプロトン伝導性は、-CF2-PO3H2基の酸性度が-CH2-PO3H2基より強いことから2 MDSPPO-2 BTESO - 6 PETHSや2 MDSPPO-2 BTESEB - 6 PETHSより高い(試料は全て6/10のP/Si比を有する)。-PO3H2基が同じ含量を有する場合、BTESOによる膜がBTESEBによる膜より高いプロトン伝導性を有することは注目すべきことである。BTESOによる膜においては、1モルの-PO3H2基はBTESEBによる膜より少し多くH2Oを吸収することができる。
一方では、BTESOによる膜のより高いプロトン伝導性は、BTESOによって導入される脂肪族鎖がBTESEBによって導入される芳香環含有鎖より弾力があるという事実に関連するものである。
膜の弾力のある構造は、プロトン輸送に役だつものである。試料全てについて、プロトン伝導性は100℃までの温度につれて増加し、アレニウス型挙動を示す。室温から100℃までの平均活性化エネルギーは、-PO3H2基含量の増加につれて低下する傾向がある。2 MDSPPO-4 BTESEB-4 PETHS (モルにおける-PO3H2/Si = 4/10)の膜については0.71eV、-PO3H2基含量の高い膜については0.27eVであった。後者の値はNafion(登録商標)膜に匹敵し、新規な膜がヒドロニウムイオンを含む同様の伝導メカニズムを有することを示している。
【0053】
電解質として膜(2 MDSPPO-4BTESO-6 HSMSFP) を用いた燃料電池の試験結果
燃料電池試験のために、膜電極アセンブリ(MEA)は、電解質として新規な高分子膜と電極(陽極及び陰極)として市販のPt装填カーボン紙(1mg/cm2)を用いた。MEAは、電極間に高分子膜を110bar下に100℃で2分間熱時押圧することによって得た。
新規なハイブリッド無機有機共重合体膜を、燃料電池が作動する同じ温度において水蒸気で飽和される燃料としてH2と酸化剤としてO2を用いる燃料電池において試験した。膜の厚みは約200μmであった。燃料電池を大気圧において作動させた。
図7は、電解質として膜2 MDSPPO-4BTESO-6 HSMSFPを用いた80℃における電圧電流と電力密度電流の曲線を示すグラフである。開路電圧は約0.8Vであり、電力密度は80℃において12.2mW/cm2である。膜電極アセンブリ(MEA)と作動条件を最適化することにより非常に高い性能が予想される。2 MDSPPO-4BTESO-6 HSMSFPの電池電圧と電力密度と電流密度を周囲圧下に80℃で得た。(H2/O2を80℃温度において水蒸気で泡立てた)。
本明細書に記載される他の改良された膜を用い、当該技術において既知の異なるMEA構造と異なる燃料(例えば、メタノール、エタノール、他のアルコール、水、水素の他の供給源、又は他の化合物又は混合物)によって、燃料電池を製造することができる。
【0054】
有機ケイ素ポリマーと塩基性ポリマーの複合膜
PBI-H3PO4系、酸をベースにした高分子膜は、高プロトン伝導性と良好な機械的性質を与える。PBI-H3PO4系は、燃料電池用途に非常に有望である。しかしながら、流動性H3PO4は漏洩することがあり、電極のフラッディングや腐食を引き起こすことがあることから、この種の膜の長期間安定性と信頼性は疑問である。
シリル基に結合基を介して結合されるホスホン酸基を有するケイ素含有化合物(ケイ素化合物)は、例えば、本明細書に記載されるように、側鎖の中にホスホン酸基を有する有機ケイ素ポリマーを形成するために用いることができる。側鎖は、結合基と酸基を含み、ケイ素原子と有機鎖を含むハイブリッド有機無機マトリックスに結合されている。
加水分解された前駆物質を種々の比で溶液における他のポリマーに添加することによって、種々の組成物の酸塩基高分子膜を供給することができる。この種の膜において、ホスホン酸基は固定される。同時に、可撓性ポリシロキサン骨格鎖は結合したホスホン酸基に良好な局所的移動性を与える。それ故、これらの種類の膜は、良好なプロトン伝導性を与え、流動性H3PO4分子と関連がある問題を解決する。
従って、例えば、複合物として塩基性ポリマーと組合わせた、酸基を含むポリマー系を含む高分子膜を形成することができる。
塩基性ポリマーとしては、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリ(シラミン)(PSA)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(2,5-ベンズイミダゾール)、ポリ(デカメチレンカルボキシアミド)(ナイロン)、ポリ(ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン)、ポリウレタン、ポリアクリルアミド(PAAM)、及び他のポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0055】
ハイブリッド無機有機マトリックスに結合した追加基
同時係属出願に記載されるように、プロトン溶媒基、例えば、少なくとも1つの孤立電子対を与える基を可撓性枝分れによるハイブリッド有機無機マトリックスに結合することによってプロトン伝導性を増強することもできる。可撓性枝分れは、炭化水素鎖、例えば、アルキル基のような有機鎖であり得る。基の例としては、窒素含有複素環が挙げられる。窒素含有複素環としては、芳香族複素環、例えば、イミダゾール基及びその誘導体が含まれる。このような窒素含有複素環又は他の孤立電子対を与える基は、本明細書に記載される酸基に加えて、本発明の場合には、ポリマーに含めることができる。
従って、無機有機ハイブリッドマトリックスは、結合した酸基と結合した窒素含有複素環(例えば、イミダゾール)を含むことができる。酸基はプロトン源として作用することができ、複素環(又は他の孤立電子対を与える基)は、プロトン伝導性を増強する。
他の基は、ハイブリッドマトリックス、例えばアミド基(例えば、ビススルホニルアミド基)に結合することができる。我々の係属出願のもう一方に述べられるように、ポリマーは、また、ハロゲン化複素環、例えば、フッ素化イミダゾールを含むことができる。フッ素化イミダゾールの例は、米国仮出願第60/539,641号に記載され、その全ての内容は本願明細書に含まれるものとする。
【0056】
追加成分
本明細書に記載されるようなコポリマーと、膜の1つ以上の特性を改善するために与えられる追加成分とを含むイオン伝導性膜を製造することができる。例えば、追加成分は、機械的性質、イオン伝導性、又は1つ又は複数のある他の特性を改善するために含めることができる。
伝導性を改善するために含めることができる追加成分は、遊離酸分子(例えば、H3PO4)、プロトン伝導性無機化合物(例えば、Zr(HPO4)2.H2O、ケイタングステン酸(SiO2.12WO3.26H2O))、他の固体酸、Nafion(登録商標)のようなペルフルオロスルホン酸ポリマー、及び/又は伝導性粒子(例えば、金属ナノ粒子)を含むことができる。
膜の伝導性や耐水性を改善するために、不溶性金属塩を含むことができる。塩の例としては、リン酸塩(CsH2PO4、他のアルカリリン酸塩)、他の金属リン酸塩(例えば、Zr(HPO4)2)、硫酸塩(例えば、CsHSO4)、他のアルカリ金属塩(例えば、CsHSO4)、他の無機塩、他の酸塩等が挙げられる。
膜の伝導性は、また、マトリックスに結合したあらゆる酸基に加えて遊離酸の分子の1以上の化学種を含むことによって改善することができる。酸の例としては、リン酸H3PO4、硫酸、固形物無機酸、例えば、タングストリン酸又はモリブドリン酸、有機酸、例えば、カルボン酸、1以上の酸基で置換された有機分子(例えば、フェニルリン酸、その誘導体、アルキルリン酸等)、ハロゲン化酸分子、過酸等が挙げられる。膜は、また、添加された水を含有することができる。酸基という用語には、酸基に容易に変換することができる酸塩、酸基の電離型が含まれる。
機械的性質の改善や他の用途に、他のポリマー、例えば、繊維、ウェブ、シート等の形のポリマーを含めることができる。材料を脆性でなくするために、マトリックスに熱的に安定な材料、例えば、ポリマー、ガラス、セラミック、又は他の材料を、グリッド、シート、繊維、ウェブ、環、枝分れ構造、らせん、波打つ形、又は他の形等の形で導入することができる。
【0057】
脆性を低下させ、おそらく伝導性を増加するために添加することができるポリマーとしては、フルオロスルホネートアイオノマー、例えば、上記Nafion(登録商標)、他のアイオノマー、他の高分子電解質、他のフルオロポリマー、例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)又はTeflon(登録商標)、他のサーモポリマー、及び/又は窒素含有複素環を有するポリマー(例えば、ポリベンズイミダゾール、PBI)が含まれる。可塑剤もまた含めることができる。
プロトン伝導性材料は、1つ以上の補強性シートを含むことができ、その上に配置することもできる。例えば、熱的に安定な材料を、例えば、ウェブ又はグリッドの形で、膜内に又はその表面上に含むことができ、膜の機械的性質を改善する。例えば、Nafion(登録商標)グリッド又はシートは、膜脆性を低下させるために、プロトン伝導性を改善するために、又は基質として供給することができる。
本発明に従って形成された材料は、更に、(例えば、ナノメートルサイズの吸湿性金属酸化物)、上記のように改良された機械的性質のための膜を通って分散されるポリマー、主鎖の中に孤立電子対を与える原子を有する主鎖ポリマー、他の酸基含有ポリマー、ドーパント、例えば、プロトン伝導性無機化合物、1以上の酸基(例えば、-SO3H、-PO3H2)を含む他の非高分子化合物、及び/又はハロゲン化された酸含有基(例えば、-SO2NHSO2CF3、-CF2SO3H及び-CF2SO2NHSO2CF3等)を有する他の化合物を含むことができる。他のプロトン源やプロトン溶媒もまた、追加成分として含むことができる。
従って、本発明の例による改良されたポリマーは、複数のケイ素化合物の反応生成物を含むコポリマーを含み、各々のケイ素化合物が、有機鎖を含む第1ケイ素化合物であって、有機鎖が少なくとも2つの化合物炭素原子を有する、前記第1ケイ素化合物; 及び少なくとも1つの酸基を含む第2ケイ素化合物であって、酸基が結合基を介して第2ケイ素化合物のケイ素原子に結合し、酸基の酸性度を増強するために、結合基が電子吸引基を含んでいる、前記第2ケイ素化合物を含んでいる。例えば、結合基は少なくとも部分的にフッ素化されるアルキル鎖を含むことができる。
例のポリマーとしては、また、ケイ素原子、酸素原子、及び有機鎖を含む三次元有機無機ハイブリッドマトリックス; 及び結合基によって有機無機ハイブリッドマトリックスに化学的に結合される酸基を含むコポリマーも含まれる。
【0058】
高分子電解質膜に用いられる改良されたポリマーを製造する方法は、少なくとも2つの炭素原子を有する有機鎖を含む第1前駆物質を準備する工程であって、有機鎖は第1端と第2端を有し、第1端は第1加水分解性ケイ素含有基に結合し、第2端は第2加水分解性ケイ素含有基に結合している前記工程;第2前駆物質を準備する工程であって、その前駆物質が酸基と第1官能基を含んでいる前記工程;少なくとも前駆物質と第2前駆物質を共重合することによってコポリマーを形成する工程であって、共重合が第1と第2の加水分解性ケイ素含有基の加水分解を含む前記工程によってコポリマーを形成して、ケイ素原子と有機鎖を含むハイブリッド無機有機マトリックスを製造し、酸基が結合基によってハイブリッド無機有機マトリックスに結合していることを含んでいる。第2前駆物質は結合基を含むことができ、第1官能基は結合基を介して酸基に接続される第3加水分解性ケイ素含有基である。結合基は、炭素原子2〜18個を有する部分的にフッ素化された脂肪族炭化水素鎖であり得る。
本方法は、第3前駆物質の供給を更に含むことができ、第3前駆物質は第4加水分解性ケイ素含有基と第2官能基を含み、共重合は第1、第2、第4の加水分解性ケイ素含有基の加水分解を含み、共重合は第1と第2の官能基の反応を更に含み、それによって、酸基がハイブリッド無機有機マトリックスに接続される。第1と第2の官能基は、共にビニル基、又は他の二重結合含有基であり得る。
一例のポリマーは、有機鎖を含む少なくとも第1ケイ素化合物; 第1官能基を含む第2ケイ素化合物; 及び第2官能基と酸基を含む第3化合物を共重合することによって形成することができ、共重合は第1と第2のケイ素化合物内のケイ素含有基を少なくとも部分的に加水分解してケイ素原子、酸素原子、及び有機鎖を含有する無機有機ハイブリッドマトリックスを形成することを含み、共重合は第1と第2の官能基を反応させて酸基を無機有機ハイブリッドマトリックスに結合することを更に含む。
一例のポリマーは、また、式[-O - Si(A,B) - O - R - O - Si (C,D) - ]の少なくとも1つの骨格鎖単位を有するハイブリッド無機有機マトリックスを含み、ここで、A、B、C、Dは各々置換基であり、Rは少なくとも2つの炭素原子、結合基を含む少なくとも1つの置換基及びホスホン酸基を含む有機鎖であり、結合基はホスホン酸基をケイ素原子に接続し、結合基は少なくとも2つの炭素原子を含んでいる。結合基は、イオン(例えばプロトン)電解質の伝導性を高めるために、少なくとも1つのC-F基を含むことができる。
【0059】
改良された膜は、また、本明細書に記載される酸基含有ポリマーと、塩基性ポリマー、例えば、ポリベンズイミダゾール、ポリ(シラミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(2,5-ベンズイミダゾール)、ポリ(デカメチレンカルボキシアミド)、ポリ(ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン)、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、他のポリアミド、他のポリイミド、上記ポリマー誘導体又は組合わせ、又は他の塩基性重合体との複合物として形成することができる。
化合物(例えば、共重合プロセスによってPEMを調製するのに用いられる)は、ホスホン酸基、官能基、ホスホン酸基を官能基に結合する結合基を含み、その接続基は少なくとも2つの炭素原子を含んでいる。官能基は、炭素-炭素二重結合又は本明細書に記載される他の官能基を含むことができる。官能基は、加水分解性ケイ素含有基、例えば、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、及びトリアルコキシシランからなる群より選ばれたアルコキシシランであり得る。接続基は、少なくとも部分的にハロゲン化することができ、例えば、ホスホン酸基が結合される炭素原子はフッ素化され得る。ポリマーは、該化合物と少なくとも第2化合物との共重合によって形成することができ、第2化合物は加水分解性ケイ素含有基と有機鎖を含むので、共重合は、ケイ素原子、酸素原子、及び有機鎖、及び結合基によって無機有機ハイブリッドマトリックスに結合される酸基であって、結合基は接続基を含んでいる前記酸基を含む無機有機ハイブリッドマトリックスを製造する。
本発明は、上記説明的例に限定されない。実施例は、本発明の範囲に対する制限として意味しない。本明細書に記載されるプロセス、装置、組成等は、例示であり、本発明の範囲に対する制限として意味しない。その中の変更及び他の使用は当業者に見出される。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって決定される。
この明細書に述べられる特許、特許出願、刊行物又は他の文書は、それぞれ個々の文書が詳細に個々に含まれるものであることを意味するかのように同じ程度まで本願明細書に含まれるものである。特に、9/11/2003出願の米国仮特許出願第60/502,178号、10/16/03出願の同第60/511,836号は、全体で本願明細書に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケイ素化合物の反応生成物を含むコポリマーであって、各々のケイ素化合物が少なくとも1つのケイ素原子を含み、該ケイ素化合物が
有機鎖を含む第1ケイ素化合物であって、有機鎖が少なくとも2つの炭素原子を有する前記第1ケイ素化合物; 及び
少なくとも1つの酸基を含む第2ケイ素化合物であって、酸基が結合基を介して第2ケイ素化合物のケイ素原子に結合されている前記第2ケイ素化合物
を含む前記ポリマー。
【請求項2】
結合基が、酸基の酸性度を増強するために、電子吸引基を含んでいる、請求項1記載のコポリマー。
【請求項3】
酸基がホスホン酸基である、請求項1記載のコポリマー。
【請求項4】
結合基がアルキル鎖を含んでいる、請求項3記載のコポリマー。
【請求項5】
アルキル鎖が少なくとも部分的にフッ素化されている、請求項4記載のコポリマー。
【請求項6】
有機鎖が第1端と第2端を有し、第1端が第1シリル基に接続され、第2端が第2シリル基に接続されている、請求項1記載のコポリマー。
【請求項7】
有機鎖がポリプロピレンオキシド鎖である、請求項6記載のコポリマー。
【請求項8】
有機鎖が、少なくとも2つの炭素原子を含む炭化水素鎖である、請求項6記載のコポリマー。
【請求項9】
複数のケイ素化合物が第3ケイ素化合物を含み、
第3ケイ素化合物が少なくとも1つの加水分解性基を有するシラン誘導体である、請求項1記載のコポリマー。
【請求項10】
第3ケイ素化合物がアルコキシシランである、請求項9記載のコポリマー。
【請求項11】
第3ケイ素化合物がテトラエトキシシランである、請求項9記載のコポリマー組成物。
【請求項12】
請求項1記載のコポリマーを含む高分子電解質膜。
【請求項13】
請求項12記載の高分子電解質膜を含む燃料電池。
【請求項14】
ケイ素原子、酸素原子、及び有機鎖を含む三次元有機無機ハイブリッドマトリックス; 及び
結合基によって有機無機ハイブリッドマトリックスに化学的に結合される酸基
を含むコポリマー。
【請求項15】
酸基がホスホン酸基である、請求項14記載のコポリマー。
【請求項16】
結合基が電子吸引基を更に含んでいる、請求項14記載のコポリマー。
【請求項17】
電子吸引基がハロゲン原子を含んでいる、請求項16記載のコポリマー。
【請求項18】
結合基が2つ以上の炭素原子を含んでいる、請求項16記載のコポリマー。
【請求項19】
結合基内の少なくとも1つの炭素原子がハロゲン化されている、請求項18記載のコポリマー。
【請求項20】
結合基内の少なくとも1つの炭素原子がフッ素化されている、請求項18記載のコポリマー。
【請求項21】
ホスホン酸基のリン原子が結合基の炭素原子に結合され、結合基の炭素原子がフッ素化されている、請求項15記載のコポリマー。
【請求項22】
コポリマーが、第1前駆物質を含む複数の前駆物質から形成され、第1前駆物質が有機鎖を含んでいる、請求項14記載のコポリマー。
【請求項23】
第1前駆物質の有機鎖が第1端と第2端を有し、第1端が第1ケイ素含有基に結合され、第2端が第2ケイ素含有基に結合されている、請求項22記載のコポリマー。
【請求項24】
第1ケイ素含有基と第2ケイ素含有基が共に加水分解性シラン誘導体であり、コポリマーが第1ケイ素含有基と第2ケイ素含有基双方の少なくとも部分的な加水分解を含むプロセスによって形成されている、請求項23記載のコポリマー。
【請求項25】
第1ケイ素含有基と第2ケイ素含有基が共にアルコキシシリル基である、請求項23記載のコポリマー。
【請求項26】
有機鎖がポリ(プロピレンオキシド)又はその誘導体である、請求項23記載のコポリマー。
【請求項27】
複数の前駆物質が第2前駆物質を含み、第2前駆物質が酸基を含んでいる、請求項23記載のコポリマー。
【請求項28】
第2前駆物質が、第2前駆物質、ケイ素含有基、結合基、及び酸基を含み、
コポリマーが第2前駆物質ケイ素含有基の少なくとも部分的な加水分解を含むプロセスによって形成されている、請求項27記載のコポリマー。
【請求項29】
第2前駆物質が酸基と第1官能基を含み、第1官能基が第2官能基と反応して、可撓性結合基によって酸基をハイブリッド無機有機マトリックスに結合させる、請求項27記載のコポリマー。
【請求項30】
第2官能基が第3前駆物質の一部であり、第3前駆物質が第3前駆物質ケイ素含有基を含み、
コポリマーが第3前駆物質ケイ素含有基の少なくとも部分的な加水分解を含むプロセスによって形成されている、請求項29記載のコポリマー。
【請求項31】
第1と第2の官能基が共にビニル基である、請求項29記載のコポリマー。
【請求項32】
請求項14のコポリマーを含む高分子電解質膜。
【請求項33】
請求項32の高分子電解質膜を含む燃料電池。
【請求項34】
高分子電解質膜に用いられるコポリマーを製造する方法であって、
少なくとも2つの炭素原子を有する有機鎖を含む第1の前駆物質を準備する工程であって、有機鎖が第1端と第2端を有し、第1端が第1加水分解性ケイ素含有基にされ、第2端が第2加水分解性ケイ素含有基に結合されている、前記工程;
第2前駆物質を準備する工程であって、前駆物質が酸基と第1官能基を含む前記工程; 及び
少なくとも前駆物質と第2前駆物質を共重合することによりコポリマーを形成する工程であって、共重合が、第1と第2の加水分解性ケイ素含有基を加水分解して、ケイ素原子と有機鎖を含むハイブリッド無機有機マトリックスを生成させることを含み、酸基が結合基によってハイブリッド無機有機マトリックスに結合されている、前記工程を含む前記方法。
【請求項35】
酸基がリン含有酸基である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
酸基がホスホン酸基である、請求項34記載の方法。
【請求項37】
第2前駆物質が結合基を含み、第1官能基が、結合基によって酸基に接続される第3加水分解性ケイ素含有基である、請求項34記載の方法。
【請求項38】
結合基が、炭素原子2〜18個を有する部分的にフッ素化された脂肪族炭化水素鎖である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
第3前駆物質の供給を更に含み、
第3前駆物質が第4加水分解性ケイ素含有基と第2官能基を含み、
共重合が第1、第2、第4の加水分解性ケイ素含有基の加水分解を含み、
共重合が第1と第2の官能基の反応を更に含み、ここで、酸基がハイブリッド無機有機マトリックスに接続されている、請求項34記載の方法。
【請求項40】
第1と第2の官能基が共にビニル基である、請求項34記載の方法。
【請求項41】
少なくとも:
有機鎖を含む第1ケイ素化合物;
第1官能基を含む第2ケイ素化合物; 及び
第2官能基と酸基を含む第3化合物
の共重合によって形成されるコポリマーであって、
共重合が、第1と第2のケイ素化合物内のケイ素含有基を少なくとも部分的に加水分解して、ケイ素原子、酸素原子、及び有機鎖を含有する無機有機ハイブリッドマトリックスを形成する工程を含み、
共重合が、第1と第2の官能基を反応させて、無機有機ハイブリッドマトリックスに酸基を結合させることを更に含む、前記コポリマー。
【請求項42】
酸基が、結合基を介して無機有機ハイブリッドマトリックスに結合され、結合基が炭素2〜18個を有する脂肪族炭化水素基である、請求項41記載のコポリマー。
【請求項43】
結合基が電子吸引基を含んでいる、請求項42記載のコポリマー。
【請求項44】
電子吸引基がフッ素原子を含んでいる、請求項43記載のコポリマー。
【請求項45】
式[-O - Si(A,B) - O - R - O - Si (C,D) - ]
(式中、A、B、C、Dは各々置換基であり、Rは少なくとも2つの炭素原子を含む有機鎖である。)
の少なくとも1つの骨格鎖単位を有するハイブリッド無機有機マトリックスを含むポリマーであって、
少なくとも1つの置換基が結合基とホスホン酸基を含み、結合基がホスホン酸基をケイ素原子に接続させ、
結合基が少なくとも2つの炭素原子を含んでいる、前記ポリマー。
【請求項46】
結合基が少なくとも1つのC-F基を含み、イオン電解質の伝導性を高める、請求項45記載のポリマー。
【請求項47】
請求項45記載のポリマーと塩基性ポリマーとの複合物。
【請求項48】
塩基性ポリマーが、ポリベンズイミダゾール、ポリ(シラミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(2,5-ベンズイミダゾール)、ポリ(デカメチレンカルボキシアミド)、ポリ(ビス(トリフルオロエトキシ)ホスファゼン)、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる、請求項45記載の複合物。
【請求項49】
請求項45のポリマーを含んでいるイオン電解質。
【請求項50】
ホスホン酸基;
官能基
ホスホン酸基を官能基に接続する接続基であって、接続基が少なくとも2つの炭素原子を含んでいる前記接続基
を含む化合物。
【請求項51】
官能基が炭素-炭素二重結合を含んでいる、請求項50記載の化合物。
【請求項52】
官能基が加水分解性ケイ素含有基である、請求項50記載の化合物。
【請求項53】
官能基が、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、及びトリアルコキシシランからなる群より選ばれたアルコキシシランである、請求項50記載の化合物。
【請求項54】
下記一般式
【化1】

(式中、R1は、炭素原子1-20個を有する少なくとも部分的にフッ素化された炭化水素鎖であり、R2は、炭素原子1-20個を有する炭化水素鎖であり、R3は、アルキル基であり、Aは、アルコキシ基であり、Mは、アルキル基であり、x = 0、1又は2であり、R3を示した2つの基は、同じか又は異なるアルキル基であり得る。)
の構造を有する、請求項50記載の化合物。
【請求項55】
R1が-(CHF)n-又は-(CF2)n-、n = 1〜20であり、R3が-CH3、-C2H5又は-C3H7であり、Aが-OCH3又は-OC2H5である、請求項54記載の化合物。
【請求項56】
接続基が、少なくとも部分的にハロゲン化されている、請求項52又は53記載の化合物。
【請求項57】
接続基が、ホスホン酸基が結合される炭素原子を含み、少なくとも1つのフッ素原子が同じ炭素原子に結合されている、請求項52又は53記載の化合物。
【請求項58】
シラン誘導体と前駆物質ホスホン酸化合物の反応生成物であり、前駆物質ホスホン酸化合物が二重結合を含んでいる、請求項52又は53記載の化合物。
【請求項59】
請求項50記載の化合物と少なくとも第2化合物との共重合によって形成されるポリマーであって、
第2化合物が加水分解性ケイ素含有基と有機鎖を含み、
共重合が、ケイ素原子、酸素原子、及び有機鎖を含む無機有機ハイブリッドマトリックス、及び結合基を介して無機有機ハイブリッドマトリックスに結合された酸基を生成し、結合基が接続基を含んでいる、前記ポリマー。
【請求項60】
実質的に本明細書に記載される化合物。
【請求項61】
実質的に本明細書に記載されるプロトン伝導性ポリマー。
【請求項62】
実質的に本明細書に記載されるプロトン伝導性ポリマーを調製する方法。
【請求項63】
陽極、陰極、燃料、及びプロトン電解質膜を含む燃料電池であって、
プロトン電解質膜が実質的に本明細書に記載されるポリマーを含み、
ポリマーが本発明によるあらゆるコポリマーを含んでいる、前記燃料電池。
【請求項64】
陽極、陰極、燃料、及びプロトン電解質膜を含む燃料電池であって、
プロトン電解質膜が請求項1-11又は14-31又は41-11記載のコポリマー、又は請求項45-46又は56記載のポリマー、又は請求項34-40記載の方法によって製造されたポリマーを含んでいる、前記燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−107245(P2012−107245A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285879(P2011−285879)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2006−526352(P2006−526352)の分割
【原出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【出願人】(504466834)ジョージア テック リサーチ コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】