説明

ホルモン依存性疾患の予防および治療のためのプロゲステロンレセプターアンタゴニストおよび純粋なアンチエストロゲンを含んでなる組成物

本発明は、抗プロゲスチン、特に抗プロゲスチン11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンまたはその薬学上許容される誘導体またはアナローグと、純粋なアンチエストロゲン、特にこの明細書中で特定した一般式 (I) の化合物、例えば、11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールとの組み合わせにより、哺乳動物におけるホルモン依存性疾患、特に乳癌を予防または治療する方法および使用に関する。さらに、本発明は、前記組み合わせを含んでなる医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ホルモン依存性疾患 (例えば、エストロゲンおよびプロゲステロン依存性疾患) 、例えば、乳癌を予防および治療するためのプロゲステロンレセプターアンタゴニスト、特に11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンまたはその薬学上許容される誘導体またはアナローグと、純粋なアンチエストロゲンとの組み合わせの使用に関する。さらに、本発明は、ホルモン依存性疾患、例えば、乳癌を予防および治療するためのプロゲステロンレセプターアンタゴニストと純粋なアンチエストロゲンとの組み合わせを含んでなる医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
内分泌療法は、転移性乳癌の有効な、毒性が最小の、期待療法の主な支えを表す。手術不可能な乳房癌腫の標準的期待療法として、また乳房癌腫の一次的治療後のアジュバント療法に、アンチエストロゲン、例えば、非ステロイドアンチエストロゲンタモキシフェンが使用される。しかしながら、タモキシフェンは乳癌を治癒することができない。こうして、二次的療法のために、プロゲスチンまたはアロマターゼインヒビターが普通に使用される。閉経前の女性の卵巣摘出において、タモキシフェンおよびLHRH (黄体化ホルモン放出ホルモン) アナローグは匹敵する結果を達成する (H. T. Mouridson 他、Eur. J. Cancer Clin. Oncol. 24、pp. 99-105、1988) 。タモキシフェンは乳癌のアジュバント療法に広く使用されているが、治療は子宮内膜癌の発生率を増加させることが示されたので、その使用は問題である (I. N. White、Carcinogenesis 20(7): 1153-60、1999; L. Bergman 他、The Lancet Vol. 356、Sept. 9、2000) 。
【0003】
WO 98/07740には、強いアンチエストロゲン活性を有する7α-(ξ-アミノアルキル)-エストラトリエンが開示されている。それらのいくつかは純粋なアンチエストロゲンであり、他のものは部分的アンチエストロゲン (例えば、非ステロイドアンチエストロゲンであるタモキシフェンおよびラロキシフェン) であり、すなわち、それらは部分的エストロゲン作用を示す。WO 98/07740に従う7α-(ξ-アミノアルキル)-エストラトリエンは、腫瘍療法およびホルモン置換療法に適すると報告されている。
【0004】
WO 99/33855には、純粋なまたは部分的エストロゲン活性を有する11β-ハロゲン-7α-置換エストラトリエンが開示されている。追加の11β-ハロゲン原子はWO 99/33855に従うアンチエストロゲンの性質の原因となり、また、これらのアンチエストロゲンはホルモン依存性腫瘍および症状の治療に適すると報告されている。
非公開DE 101 59 217.5 (出願日2001年11月27日) および対応するPCT/EP 02/13484および米国特許出願No. 10/305,418 (これらのすべては引用することによって本明細書の一部とされる) には、17α-アルキル-17β-オキシ-エストラトリエン、それらの製造、薬剤の製造におけるそれらの使用ならびにそれらを含有する医薬製剤が開示されている。
【0005】
これらの化合物は、下記の一般式を有する:
【化1】

【0006】
式中、
HalはFまたはClであり、そして11β-位置においてエストラトリエン骨格に結合しており、
R3 は水素、C1-C4アルキル、C1-C4アルカノイルまたはO原子との環状C3-C7エーテルであり、
R17’ は水素、C1-C4アルキルまたはC1-C4アルカノイルであり、
R17” はC1-C4アルキル、C1-C4アルケニル、C1-C4アルキニルならびに少なくとも部分的にフッ素化されたC1-C4アルキル基であり、
ここで11β-位置におけるR17’-Oおよび17α-位置におけるR17”はエストラトリエン骨格に結合しており、そして
【0007】
SKは基U-V-W-X-Y-Z-Eであり、ここでこの基は7α-位置においてUを介してエストラトリエン骨格に結合しており、式中Uは直鎖状または分枝鎖状のC1-C13アルキレン、C1-C13アルケニレンまたはC1-C13アルキニレン基またはA-B基であり、ここでAはエストラトリエン骨格に結合しており、そして-CH2-を介してエストラトリエン骨格に結合するベンジリデン基、フェニレン基、またはC1-C3アルキル基を介してエストラトリエン骨格に結合するC1-C3アルキルアリール基であり、そしてBは直鎖状または分枝鎖状のC1-C13アルキレン、C1-C13アルケニレンもしくはC1-C13アルキニレン基であり、そしてここでAおよびBはまたO原子を介して互いに結合することができ、式中VはさらにCH2-またはC(O) 基であり、式中WはさらにN(R6)-基もしくはN+(O-)(R6) 基またはアゾリジニレン環またはアゾリジニレン-N-オキシド環であり、ここでアゾリジニレン環またはアゾリジニレン-N-オキシド環は基Xの少なくとも1つのC原子を含み、ここでR6 はさらにHまたはCH2-R7またはC(O)-R7であり、式中R7は下記の意味を有することができ、
【0008】
a) 水素、または
b) 直鎖状または分枝鎖状の、非フッ素化または少なくとも部分的にフッ素化されたC1-C14アルキル、C1-C14アルケニルまたはC1-C14アルキニル基、これらは1または2以上の位置においてヒドロキシル化されることができ、そして1〜3個の異種原子-O-および-S-および/または基-NR9-により中断されることができ、式中R9は水素またはC1-C3アルキル基である、または
c) 非置換または置換のアリールまたはヘテロアリール基、または
d) 非置換または置換のC3-C10シクロアルキル基、または
e) 非置換または置換のC4-C15シクロアルキルアルキル基、または
f) 非置換または置換のC7-C20アラルキル基、または
g) 非置換または置換のヘテロアリール-C1-C6アルキル基、または
h) 非置換または置換のアミノアルキル基またはビフェニル基、
【0009】
式中Xはさらに直鎖状または分枝鎖状のC1-C12アルキレン、C1-C12アルケニレンまたはC1-C12アルキニレン基であり、式中YはXとZとの間の直接結合であるか、あるいは下記の意味を有することができ、
a) WがN+(O-)(R6) 基またはアゾリジニレン-N-オキシド環でありかつN(R6) 基およびアゾリジニレン環でない場合にのみ、SOn-R10 基、ここでn = 0、1または2、ここでR10はSOnとZとの間の直接結合または直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C6アルキレン、C1-C6アルケニレンまたはC1-C6アルキニレン基であり、
b) 基R11またはO-R11、ここでR11は下記の意味を有し、
i) 直鎖状または分枝鎖状のC1-C5アルキレン、C1-C5アルケニレンまたはC1-C5アルキニレン基、または
ii) 非置換または置換のアリール基またはヘテロアリール基、または
iii) 非置換または置換のC3-C10シクロアルキル基、または
iv) 非置換または置換のC4-C15シクロアルキルアルキル基、または
v) 非置換または置換のC7-C20アラルキル基、または
vi) 非置換または置換のヘテロアリール-C1-C6アルキル基、
c) 基CH=CF、または
d) 基HN-C(O)-NH-R12、ここでR12は非置換または置換のアリーレン基であり、そしてここでR12はZに結合しており、そして式中ZはさらにYとEとの間の直接結合または直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C9アルキレン、C1-C9アルケニレンまたはC1-C9アルキニレン基であり、これらは部分的または完全にフッ素化されることができ、そして式中EはさらにCF3基または少なくとも部分的にフッ素化されたアリール基であり、
ここで薬理学的に適合性の酸付加塩ならびにエステルがまた包含される。
【0010】
Halは特にフッ素である。
R3は水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルおよびtert-ブチル、対応するアルカノイル (アセチル、プロピオニル、ブタノイル) または環状エーテルである。R3は特に水素、CH3、CH3COまたはC5H10Oである。
【0011】
R17’ およびR17” は特にメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルおよびtert-ブチルであり、ここでR17’ はさらにまた水素、アセチル、プロピオニルおよびブタノイルであり、そしてここでこの場合において、対応する異性体を含むことができる。さらに、R17” はエチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニルおよび3-ブチニルならびにトリフルオロメチル、ペンタフルオロメチル、ヘプタフルオロメチルおよびノナフルオロメチルであることができ、ここでこの場合において、対応する異性体がまた含まれる。R17’ は特に水素、CH3またはCH3COである。R17” は好ましくはメチル、エチニルまたはトリフルオロメチルである。
【0012】
Uは特に直鎖状または分枝鎖状のアルキレン基、特にメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレンまたはトリデシレン基であることができる。Uは好ましくは (CH2)pであり、ここでpは2〜10の整数である。特に、Uは好ましくはブチレン、ペンチレン、ヘキシレンまたはヘプチレン基である。Uは非常にことに好ましくはn-ブチレン基であり、すなわち、Uの式 (CH2)pにおいて、p = 4。
【0013】
特に、VはCH2である。こうして、基U-Vは非常に好ましい態様においてn-ペンチレンであることができる。
特に、Wはアミン-N-オキシド N+(O-)(R6) またはアミンN(R6) であり、ここでR6は好ましくは水素またはCH2-R7であり、式中R7は特に水素またはメチルまたはエチルである。こうしてR6は好ましくは水素またはC1-C3アルキル基であり、こうして特にメチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピル基である。特に好ましい態様において、WはN+(O-)(CH3) 基 (N-メチルアミン-N-オキシド) である。
【0014】
Xは好ましくは (CH2)qであり、ここでqは0または1〜12であり、こうしてXはWとYとの間の直接結合であるか、あるいは直鎖状または分枝鎖状のメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレンまたはドデシレン基である。特に好ましい態様において、Xはエチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン、n-ヘプチレンまたはn-オクチレン基である。
【0015】
特に、YはXとZとの間の直接結合であることができる。この場合において、Xはより長いアルキレン鎖であり、こうして特に、Xはn-ヘキシレン、n-ヘプチレンまたはn-オクチレンである。好ましい態様において、YはSOn基であることもでき、ここでn = 0、1または2、こうしてスルファニル基、スルフィニル基またはスルホニル基である。YがSOn基である場合、Xはむしろ短いアルキレン鎖、特にn-プロピル鎖である。
【0016】
Zは好ましくはYとEとの間の直接結合または直鎖状または分枝鎖状のC1-C7アルキレン基であり、これは少なくとも部分的にフッ素化されることができる。特に、Zはメチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレンであり、これらは少なくとも部分的にフッ素化されることができる。特に、Zはジフルオロメチレンまたは直鎖状アルキレン基であり、これは1端において過フッ化されており、こうして、例えば、1,1-ジフルオロエチレン、1,1,2,2-テトラフルオロ-n-プロピレンまたは1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-n-ブチレン基である。末端のC原子にわずかに2つのフッ素原子を有するアルキレン基はことに好都合であり、ここでCF2基は基Eに結合している。この場合において、側鎖SKは末端にC2F5を有する。
【0017】
特に、EはCF3またはペンタフルオロフェニルである。こうして、基Z-Eは好ましくはC2F5、C3F7およびC4F9ならびにC6F5から成る群から選択される基の1つである。
【0018】
本発明によれば、17α-アルキル-17β-オキシ-エストラトリエンの薬理学的に適合性の酸付加塩ならびにエステルがまた包含される。付加塩は無機酸および有機酸の対応する塩である。付加塩として、特に塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩およびメタンスルホン酸塩が考慮される。R3およびR17’ が水素である場合、3,17β-ジオールが存在し、これらのヒドロキシ化合物のエステルもまた形成することができる。これらのエステルは有機酸と形成することが好ましく、ここで付加塩の形成と同一の酸が適当であり、すなわち、酢酸が適当であるが、高級カルボン酸、例えば、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、バレリアン酸、イソバレリアン酸またはピバル酸もまた適当である。
【0019】
特別の化合物として、下記が列挙される:
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,9-ヘプタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールN-オキシド、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,10,10,10-ヘプタフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールN-オキシド、
(RS)-11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールN-オキシド、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールN-オキシド、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(9,9,10,10,10-ペンタフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールN-オキシド、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,9-ヘプタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
17α-エチニル-11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
【0020】
17α-エチニル-11β-フルオロ-3-(2-テトラヒドロピラノイルオキシ)-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-オール、
11β-フルオロ-3-(2-テトラヒドロピラノイルオキシ)-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-オール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-17α-トリフルオロメチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロオクチル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,10,10,10-ヘプタフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ウンデカフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(5,5,6,6,7,7,8,8,8-ノナフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(9,9,10,10,11,11,11-ヘプタフルオロウンデシル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、
11β-フルオロ-7α-{5-[メチル(9,9,10,10,10-ペンタフルオロデシル)アミノ] ペンチル}-17α-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール。
【0021】
これらの化合物は経口投与後に高いアンチエストロゲン活性を示す。17α-位置における遮断のために、(活性) 代謝物質の生成は抑制される。
【0022】
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (また、抗プロゲスチンと命名される) は、乳癌治療に対して有意な衝撃を有することができる、治療剤の比較的新しい、有望なクラスを表す。ある種のプロゲステロンレセプターアンタゴニストは、プロゲステロンのレセプターを有する乳癌の内分泌療法において重要性を最近獲得した (T. Maudelonde 他、in: J. G. M. 他、Hormonal Manipulation of Cancer: Peptides, Growth Factors and New (Anti) Steroidal Agents, Raven Press、New York、1987、pp. 55-59) 。内分泌療法におけるこの新しい戦略は、プロゲステロンレセプター陽性ヒト乳癌細胞系統in vitro およびマウスおよびラットのいくつかのホルモン依存性哺乳動物腫瘍in vivo におけるプロゲステロンレセプターアンタゴニスト活性に基づく。
【0023】
特に、プロゲステロンレセプターアンタゴニストのオナプリストンおよびミフェプリストン (RU 486) の抗腫瘍機構は、マウスのホルモン依存性MXT乳癌モデルならびにラットのDMBAおよびMNU誘導乳癌モデルを使用して研究された (M. R. Schneider 他、Eur. J. Cancer Clin. Oncol. Vol. 25、No. 4、pp. 691-701、1989; H. Michna 他、Breast Cancer Research and Treatment 14: 275-288、1989; H. Michna、J. Steroid. Biochem. Vol. 34、Nos. 1-6、pp. 447-453、1989) 。しかしながら、例えば、ミフェプリストンの使用に関係する低い活性および悪い副作用のために、これらの化合物は乳癌管理において単一因子として推奨することができないであろう (D. Perrault 他、J. Clin. Oncol. 1996 Oct. 14(10) 、pp. 2709-2712) 。
【0024】
例えば、RU 486を使用する他の問題は、経口投与したとき、生物学的利用能が低いことであった。こうして、それらは高い投与量で投与しなくてはならず、好ましくない副作用を生ずることがある。その上、経口投与は患者の便宜およびコンプライアンスに関して望ましい。
さらに、乳癌および他のホルモン依存性疾患の治療ばかりでなく、かつまた予防において活性である化合物がなお要求されている。
【0025】
先行技術において、プロゲステロンレセプターアンタゴニストは、なおその上、流産を開始のために、こうして性交後の受精抑制に使用するために、女性用避妊薬として (WO-A 93/23020、WO-A 93/21927) そしてさらにホルモン不規則性の治療に、月経を開始するために、そして分娩を開始するために利用されてきている。それ以上の適用は、ホルモン置換療法 (WO-A 94/18983) の分野、月経困難症に関係する病気の治療および子宮内膜炎(EP-A 0 266 303) ならびに筋腫の治療である。
【0026】
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト活性を有する17α-フルオロアルキルステロイドならびにそれらを製造する方法は、WO 98/34947に記載されている。
ホルモン依存性腫瘍の増殖は、なかでも、例えば、エストロゲン、プロゲステロンおよびさらにテストステロンに依存することが発見された。例えば、大部分の乳房癌腫はエストロゲンレセプターならびにプロゲステロンレセプターを示す。こうして、プロゲステロンレセプターアンタゴニストとアンチエストロゲンとの組み合わせは、閉経前および閉経後の乳房癌腫の療法において有効であろう。
【0027】
EP 0 310 542 B1において、非常に一般的用語で、ホルモン依存性腫瘍を治療する薬剤の製造するために1:50〜50:1の重量比のプロゲステロンレセプターアンタゴニストとアンチエストロゲンとの組み合わせを使用することが教示されている。このような組み合わせにおいて、純粋なアンチエストロゲンおよびプロゲステロンレセプターアンタゴニスト11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンまたはその薬学上許容される誘導体またはアナローグを使用することは開示されていない。
【0028】
アンチエストロゲンとプロゲステロンレセプターアンタゴニストとを組み合わせることが望ましいことがあるという一般的開示にかかわらず、乳癌および他のホルモン依存性症状の治療に特定の組み合わせがよりすぐれた利点を有することは、先行技術に開示されていない。先行技術の組み合わせが有する欠点は、主として、組み合わせのアンチエストロゲン部分の弱い活性から生じ、そしてある種のアンチエストロゲン (例えば、タモキシフェン) の部分的エストロゲン作用から生ずる。
【0029】
本発明の目的
本発明の目的は、先行技術の欠点を防止または減少すること、すなわち、乳癌および他のホルモン依存性疾患の高度に効率よい予防および治療を提供することである。
本発明のそれ以上の目的は、乳癌および他のホルモン依存性疾患を予防および治療するための高度に有効な抗腫瘍剤を含んでなる医薬組成物を提供することである。
【0030】
これらの目的は、プロゲステロンレセプターアンタゴニスト11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンまたはその薬学上許容される誘導体またはアナローグと、少なくとも1種の純粋なアンチエストロゲンとを含んでなる、新規な発明的アンチエストロゲンプロゲステロンレセプターアンタゴニストの組み合わせにより達成される。驚くべきことには、新規な発明的組み合わせは腫瘍増殖の抑制において高度に有効である。その上、達成される抑制は、プロゲステロンレセプターアンタゴニストおよび純粋なアンチエストロゲン単独の抑制と比較したとき、よりすぐれており、相乗的であることさえある。
【0031】
さらに、本発明による組み合わせは、腫瘍細胞のアポトーシスの増加、すなわち、乳房癌腫および他のホルモン依存性疾患を治療する特に好都合な機構により達成されることが発見された。他のホルモン依存性疾患において、高い危険のインジケーターは細胞周期のS期における腫瘍細胞の量の増加である。このような他のホルモン依存性疾患は、卵巣癌、子宮内膜癌、骨髄腫、肺癌、無排卵性不妊症、髄膜腫、すなわち、ホルモンレセプターの存在および/またはホルモン依存性経路に実質的に由来しまたはそれらにより影響を受ける疾患を包含するであろう。
【発明の開示】
【0032】
発明の要約
本発明は、プロゲステロンレセプターアンタゴニスト11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンまたはその薬学上許容される誘導体またはアナローグと、少なくとも1種の純粋なアンチエストロゲンとを含んでなる医薬組成物を提供する。好ましい純粋なアンチエストロゲンは、一般式Iのアンチエストロゲンである:
【0033】
【化2】

【0034】
式中置換基は前述の意味を有する。
さらに、本発明は、乳癌を予防および治療する薬剤ならびに他のホルモン依存性疾患を予防および治療する薬剤を製造するための前述の組み合わせの使用に関する。特に、プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) はホルモン依存性腫瘍の予防に特に適当であり、そしてプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) と純粋なアンチエストロゲンとの組み合わせは、プロゲステロンレセプターアンタゴニストまたは純粋なアンチエストロゲン単独に比較して、このような腫瘍の増殖を有効に抑制することが示された。
【0035】
他の面において、本発明は、このような治療を必要とする哺乳動物、特にヒトにおける乳癌および他のホルモン依存性疾患を予防および治療する方法を提供し、この方法は薬学的に有効量のプロゲステロンレセプターアンタゴニスト11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンまたはその薬学上許容される誘導体またはアナローグと、少なくとも1種の純粋なアンチエストロゲンとを含んでなる組成物をそれを必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる。
【0036】
好ましいプロゲステロンレセプターアンタゴニスト11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンを以後において 「プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) 」 と呼ぶ。一般式Iの好ましい純粋なアンチエストロゲンを以後において 「純粋なアンチエストロゲン (I) 」 と呼ぶ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
発明の詳細な説明
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) - 11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンは、下記式 (I) により示される:
【0038】
【化3】

【0039】
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I)
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) (またはその薬学上許容される誘導体またはアナローグ) は、強いプロゲステロンレセプターアンタゴニスト活性を有する価値ある薬剤である。プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) またはその薬学上許容される誘導体またはアナローグは、本発明に従い少なくとも1種の純粋なアンチエストロゲンと組み合わせて使用できる。好ましくは、純粋なアンチエストロゲンは、これらの薬学上許容される誘導体またはアナローグを包含する、純粋なアンチエストロゲン (I) から成る群から選択される。この組み合わせは、乳癌および他のホルモン依存性疾患の予防および治療に特に好都合である。
【0040】
純粋なアンチエストロゲン (I) は、下記式 (I) により表される:
【化4】

【0041】
これらの間で、前に列挙した特定の化合物は好ましい。アンチエストロゲン (Ia) 、11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールは特に好ましい。
【0042】
本発明の関係において、プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) の薬学上許容される誘導体またはアナローグは、例えば、WO 98/34947に開示されている発明的化合物の任意の1つを包含することができる。本発明の関係において、純粋なアンチエストロゲン (I) の薬学上許容される誘導体またはアナローグは、例えば、PCT/EP 02/13484 (米国特許出願No. 10/305,418に対応する) に記載されている発明的化合物の任意の1つを包含することができる。また、アンチエストロゲンとして知られている他の化合物、例えば、ファスロデックス (ICI 182,780) を本発明の目的に対して使用できる。
【0043】
本発明の関係において用語 「ホルモン依存性疾患」 は下記のものを包含するが、これらに限定されない:例えば、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮内膜炎、骨髄腫、胃癌、無排卵性不妊症、髄膜腫、すなわち、ホルモンレセプターの存在および/またはホルモン依存性経路に実質的に由来しまたはそれらにより影響を受ける疾患。
【0044】
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) は本発明の目的に対して好ましいプロゲステロンレセプターアンタゴニストであるが、これは他の適当なプロゲステロンレセプターアンタゴニストをその上使用する可能性を排除しない。
【0045】
先行技術を超える本発明の優秀性に関して、例えば、本発明に従い使用するプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) において、それ以上の内分泌副作用、例えば、アンドロゲン、エストロゲンまたは抗グルココルチコイド活性は、たとえ存在しても、非常に弱いということは特に好適である。
【0046】
さらに、本発明に従い使用する純粋なアンチエストロゲンは、タモキシフェンまたはラロキシフェンに比較して、部分的エストロゲン活性を実質的にもたない。本発明に従い使用する純粋なアンチエストロゲン、特に純粋なアンチエストロゲン (Ia) は、例えば、慣用されているアンチエストロゲンICI 182,780 (EP-A-0 138 504) と比較した場合、特に高い生物学的利用能を示す。プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) および純粋なアンチエストロゲン (I) 、好ましくは純粋なアンチエストロゲン (Ia) (これらの純粋なアンチエストロゲンの薬学上許容される誘導体またはアナローグを包含する) を含んでなる本発明による組み合わせ医薬製剤は高い生物学的利用能を有するので、薬剤は経口投与することができる。経口投与は便宜および患者のコンプライアンスが改善されるという利点を有する。
【0047】
それ以上の好適な結果として、本発明のプロゲステロンレセプターアンタゴニスト-純粋なアンチエストロゲン組成物は十分に許容される。部分的作用性は、望ましくない副作用、例えば、下記の副作用に普通に関係する: 部分的アンチエストロゲンのタモキシフェンの場合において、子宮内膜癌の発生率の増加 (参照: I. N. White、Carcinogenesis 20(7): 1153-60、1999; L. Bergman 他、The Lancet Vol. 356、Sep. 9、2000、881-887) ならびに先行技術のプロゲステロンレセプターアンタゴニストであるミフェプリストン投与に関係する抗グルココルチコイド作用およびある種の毒性副作用 (参照: D. Perrault 他、J. Clin. Oncol. 1996 Oct. 14(10) 、pp. 2709-2712; L. M. Kettel 他、Fertil. Steril. 1991 Sep. 56(3) 、pp. 402-407; X. Bertagna、Psychoneuroendocrinology 1997、22 Suppl. 1; pp. 51-55) 。純粋なアンチエストロゲンは、本発明に従う量で使用する場合、部分的アンチエストロゲンに関連する望ましくない副作用を示さないであろう。
【0048】
第1の面において、本発明は、プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) またはその薬学上許容される誘導体またはアナローグと、少なくとも1種の純粋なアンチエストロゲン (I) とを含んでなる医薬組成物に関する。純粋なアンチエストロゲンは好ましくは純粋なアンチエストロゲン (Ia) である。また、これらの好ましい純粋なアンチエストロゲンの薬学上許容される誘導体またはアナローグは本発明の範囲内に包含される。必要に応じて、プロゲステロンレセプターアンタゴニストおよび純粋なアンチエストロゲンを他の薬学的活性剤とさらに組み合わせることができる。例えば、それらは細胞障害性因子と組み合わせることもできる。
【0049】
第2の面において、本発明は、薬剤、特に乳癌または他のホルモン依存性疾患を予防または治療する薬剤を製造するためのプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) またはその薬学上許容される誘導体またはアナローグと、少なくとも1種の純粋なアンチエストロゲン (I) とを含んでなる組成物の使用に関する。純粋なアンチエストロゲンは好ましくは純粋なアンチエストロゲン (Ia) である。また、これらの好ましい純粋なアンチエストロゲンの薬学上許容される誘導体またはアナローグは本発明の範囲内に包含される。
【0050】
他の面において、本発明は、乳癌および他のホルモン依存性疾患を予防または治療する方法に関し、この方法は、このような予防または治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに、プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) またはその薬学上許容される誘導体またはアナローグと、少なくとも1種の純粋なアンチエストロゲン (I) とを含んでなる組成物を投与することを含んでなる。純粋なアンチエストロゲンは好ましくは純粋なアンチエストロゲン (Ia) である。また、これらの好ましい純粋なアンチエストロゲンの薬学上許容される誘導体またはアナローグは本発明のこの面の範囲内に包含される。
【0051】
必要に応じて、本発明による医薬組成物、使用および方法は、他の薬学的活性剤を含んでなる。薬剤/医薬組成物の製造は、この分野において知られている方法に従い実施することができる。普通に知られかつ使用されているアジュバントならびにそれ以上の適当な担体または希釈剤を使用することができる。適当な担体または希釈剤は、それら自体、薬学、化粧品および関係する分野について推奨されているものであることができる: Ullmann’s Encyclopedia of Technical Chemistry Vol. 4 (1953) 、pp. 1-39; Journal of Pharmaceutical Sciences Vol. 52 (1963) 、p. 918ff; H. v. Czetsch-Lindenwald、“Hilfsstoffe fuer Pharmazie und angrenzende Gebiete”; Pharm. Ind. 1961、p. 72ff; Dr. H. P. Fiedler、Lexikon der Hilfsstoffe fuer Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete、Cantor KG、Aulendorf in Wuerttemberg、1971。
【0052】
本発明の目的に対して適当なプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) と、少なくとも1種の純粋なアンチエストロゲン (I) 、好ましくは純粋なアンチエストロゲン (Ia) との組み合わせは、経口的、非経口的、例えば、腹腔内、筋肉内、皮下または経皮的適用のためのガレン製剤を製造する既知の方法に従い、医薬組成物中に混入することができる。また、それらは組織中に移植することができる。
【0053】
それらは、錠剤、丸剤、糖剤、ゲルカプセル剤、顆粒、坐剤、移植片、注射可能な無菌水性または油性溶液、懸濁液または乳濁液、軟膏、クリーム、ゲル、経皮的投与のためのパッチ、吸入適用に適する処方物、例えば、鼻スプレーの形態で、または膣内系 (例えば、膣リング) または子宮内系 (横隔膜、ループ) により投与することができる。
【0054】
経口投与のための医薬組成物を製造するために、上に定義した本発明の目的に対して適当な活性因子を、普通に知られかつ使用されているアジュバントおよび担体、例えば、アラビアゴム、タルク、澱粉、糖、例えば、マンニトール、メチルセルロース、ラクトース、ゼラチン、表面活性剤、ステアリン酸マグネシウム、水性または非水性の賦形剤、パラフィン誘導体、架橋剤、分散剤、乳化剤、滑剤、保存剤および香味剤 (例えば、エーテル油) と混合することができる。医薬組成物において、プロゲステロンレセプターアンタゴニストおよび純粋なアンチエストロゲンは、微小粒子、例えば、ナノ粒子の組成物中に分散させることができる。
【0055】
活性因子の生物学的利用能をさらに増強するために、上に定義した本発明の目的に対して適当な活性因子は、それらをPCT/EP 95/02656に開示されている方法に従いα-、β-またはγ-シクロデキストリンまたはそれらの誘導体と反応させることによって、シクロデキストリン包接体として配合することもできる。非経口的投与のために、上に定義した本発明の目的に対して適当な活性因子は、可溶化剤、表面活性剤、分散剤または乳化剤を使用するか、あるいは使用しないで、生理学上許容される希釈剤、例えば、油中に溶解または分散させることができる。油として、例えば限定されずに、オリーブ油、落花生油、綿実油、大豆油、ヒマシ油およびゴマ油を使用することができる。
【0056】
また、本発明による医薬組成物/薬剤は、デポー剤注射または移植片医薬製剤を介して、必要に応じて1種または2種以上の活性因子を持続送達するために、投与することができる。
移植片は、不活性物質、例えば、生物分解性ポリマーまたは合成シリコーン、例えば、シリコーンゴムを含んでなることができる。
経皮的適用のために、1種または2種以上の活性因子は接着剤中に配合することもできる。
【0057】
好ましい投与モードは経口投与である。本発明による組成物、特にプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) またはその薬学上許容される誘導体またはアナローグおよび純粋なアンチエストロゲン (I) または両方の化合物の薬学上許容される誘導体またはアナローグを含んでなる組成物は、経口投与に特に適する。
また、プロゲステロンレセプターアンタゴニストおよび1種または2種以上の純粋なアンチエストロゲンの投与モードは異なり、例えば、プロゲステロンレセプターアンタゴニストを皮下的に投与し、そして1種または2種以上の純粋なアンチエストロゲンを経口投与できることが考えられる。
【0058】
組み合わせた投与すべき活性因子の量 ( 「薬学的に有効量」 ) は広い範囲内で変化し、治療すべき症状および投与モードに依存する。それらは意図する治療に効率よい任意の量であることができる。組み合わせた活性因子の 「薬学的に有効量」 の決定は当業者の範囲内である。
【0059】
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) /1種または2種以上の純粋なアンチエストロゲン (I) の重量比は、上に定義したように、広い範囲内で変化させることができる。それらは等しい量で存在することができるか、あるいは1つの成分は1種または2種以上の他の成分より過剰量で存在することができる。好ましくは、0.1〜200 mgの純粋なアンチエストロゲン (I) および0.1〜100 mgのプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) 、より好ましくは10〜50 mgの純粋なアンチエストロゲン (I)および10〜50 mgのプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) の各々を投与する。特別の場合において、200 mgまでのプロゲステロンレセプターアンタゴニストを投与することができる。純粋なアンチエストロゲン (I) およびプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) は好ましくは100:1〜1:100の比で存在する。より好ましくは、それらは4:1〜1:4の比で存在する。
【0060】
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) および1種または2種以上の純粋なアンチエストロゲン (I) は、一緒にまたは別々に、同時におよび/または順次に投与することができる。好ましくは、それらは1つの単位投与量で組み合わせて投与する。それらを順次に投与する場合、好ましくは上に定義したように純粋なアンチエストロゲン (I) の前にプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) を投与する。
【0061】
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) および純粋なアンチエストロゲン (I) またはこれらの成分の薬学上許容される誘導体またはアナローグの組み合わせは、ホルモン依存性乳癌モデルのパネルにおいて非常に強い腫瘍抑制作用を発揮する (実施例1参照) 。ある場合において、これらの化合物単独により達成される抑制と比較したとき、強い抑制作用は相乗的であると思われることさえある。プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) と純粋なアンチエストロゲン (I) との組み合わせは、プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) と部分的にアンチエストロゲンであるタモキシフェン、すなわち、乳癌治療における標準的因子との組み合わせよりなおその上優れる (実施例1参照) 。
【0062】
因子、例えば、本発明の種々の面における組み合わせは、細胞において、例えば、腫瘍細胞の場合において、G0G1期における進行をブロックすることによってアポトーシスを誘導し、多数の症状の治療および予防において適用することができる。例えば、プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) および1種または2種以上の純粋なアンチエストロゲン (I) は、高い危険のインジケーターが細胞周期のS期における腫瘍細胞の量の増加である癌、例えば、乳癌の治療に使用することができる (参照: G. M. Clark 他、New England J. Med. Med. 320、1989、March、pp. 627-633; L. G. Dressler 他、Cancer 61(3) 、1988、pp. 420-427およびその中に引用された文献) 。
【0063】
いかなる理論にも制限されないで、実施例において提供された結果によれば、試験したモデルにおける本発明によるプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) と純粋なアンチエストロゲン (I) との組み合わせの抗腫瘍活性の主要な機構は、末期的腫瘍細胞の死に関連する末期的分化の誘導を介する、腫瘍細胞レベルにおける、直接的エストロゲンレセプターおよび/またはプロゲステロンレセプター仲介抗増殖作用であることが示される。この方法において、本発明による組み合わせは、プロゲステロンレセプター陽性およびエストロゲンレセプター陽性の腫瘍における悪性腫瘍細胞に本来の末期的分化における固有ブロックを排除できるように思われる。
本発明を実施例によりさらに説明する。下記の実施例は本発明を限定しない。
【実施例】
【0064】
マウスにおけるMXT乳癌モデル
材料および方法:
ドナーマウスから得られたMXT乳癌を、雌BDF1マウス (Charles River) の鼠径部中に直径約2 mmの断片で移植する。腫瘍が大きさ25 mm2であるとき、下記を使用して治療を開始する:
A) 1) 対照、2) 卵巣摘出、3) タモキシフェン、4) 純粋なアンチエストロゲン (Ia) 、5) プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) 、6) プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) と純粋なアンチエストロゲン (I) との組み合わせ、7) プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) とタモキシフェンとの組み合わせ、ここですべての化合物を6回/週で皮下投与する、または
B) 1) 対照、2) 卵巣摘出、3) 純粋なアンチエストロゲン (Ia) 、4) プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) 、5) プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) と純粋なアンチエストロゲン (I) との組み合わせ、ここですべての化合物を6回/週で経口投与する。
【0065】
キャリパー測定により、腫瘍面積を決定する。実験の終わりにおいて、腫瘍重量を測定する。
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) = PA-I: 11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン。
純粋なアンチエストロゲン (Ia) = AE-I: 11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール。
化合物の経口投与の結果を第1図に示す。皮下投与の結果は同等である (データは示されてない) 。
【0066】
対照の急速増殖に比較して、卵巣摘出は顕著な増殖抑制を引き起こす。本発明によるプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) と純粋なアンチエストロゲン (Ia) との組み合わせは、卵巣摘出の抗腫瘍作用に類似し、単一化合物のそれよりも有意にすぐれた抗腫瘍作用を発揮する。こうして、本発明による組成物の腫瘍増殖抑制作用を相乗的作用と呼ぶことができる。本発明による組成物は、タモキシフェン、すなわち、部分的アゴニスト性質をもつアンチエストロゲンよりもすぐれる。タモキシフェンのこの部分的作用は、組み合わせにおける腫瘍増殖を減少させることができないことを明らかに反映している。さらに、これは、本発明による組み合わせ、すなわち、純粋なアンチエストロゲン (Ia) (これはアゴニスト性質をもたない) およびプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) のよりすぐれた作用に比較して、タモキシフェンとプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) との組み合わせが発揮する腫瘍増殖抑制作用が弱いことにより証明される。
【0067】
結論:
本発明によるプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) と純粋なアンチエストロゲン (I) との組み合わせは、MXTマウス乳癌の増殖の抑制において効力があることが明らかである。この組み合わせは、単一化合物による増殖抑制よりもすぐれ、相乗作用を示す。
また、本発明によるプロゲステロンレセプターアンタゴニスト (I) と純粋なアンチエストロゲン (I) との組み合わせは、雌ラットにおいて化学的に誘導された腫瘍 (NMU、DMBAモデル) の治療において相乗作用を示す。
NMU = ニトロソ-メチル-尿素 (Nitroso-methyl-urea) 。
DMBA = ジメチル-ベンズ-アントラセン (Dimethyl-benz-anthracene) 。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明の医薬の経口投与の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロゲステロンレセプターアンタゴニスト11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンまたはその薬学上許容される誘導体またはアナローグと、少なくとも1種の純粋なアンチエストロゲンとを含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
純粋なアンチエストロゲンが一般式Iにより表される化合物の群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物:
【化1】

式中、
HalはFまたはClであり、そして11β-位置においてエストラトリエン骨格に結合しており、
R3 は水素、C1-C4アルキル、C1-C4アルカノイルまたはO原子との環状C3-C7エーテルであり、
R17’ は水素、C1-C4アルキルまたはC1-C4アルカノイルであり、
R17” はC1-C4アルキル、C1-C4アルケニル、C1-C4アルキニルならびに少なくとも部分的にフッ素化されたC1-C4アルキル基であり、
ここで11β-位置におけるR17’-Oおよび17α-位置におけるR17”はエストラトリエン骨格に結合しており、そして
SKは基U-V-W-X-Y-Z-Eであり、ここでこの基は7α-位置においてUを介してエストラトリエン骨格に結合しており、式中Uは直鎖状または分枝鎖状のC1-C13アルキレン、C1-C13アルケニレンもしくはC1-C13アルキニレン基またはA-B基であり、ここでAはエストラトリエン骨格に結合しており、そして-CH2-を介してエストラトリエン骨格に結合するベンジリデン基、フェニレン基、またはC1-C3アルキル基を介してエストラトリエン骨格に結合するC1-C3アルキルアリール基であり、そしてBは直鎖状または分枝鎖状のC1-C13アルキレン、C1-C13アルケニレンまたはC1-C13アルキニレン基であり、そしてここでAおよびBはまたO原子を介して互いに結合することができ、式中VはさらにCH2-またはC(O) 基であり、式中WはさらにN(R6)-基もしくはN+(O-)(R6) 基またはアゾリジニレン環またはアゾリジニレン-N-オキシド環であり、ここでアゾリジニレン環またはアゾリジニレン-N-オキシド環は基Xの少なくとも1つのC原子を含み、ここでR6 はさらにHまたはCH2-R7またはC(O)-R7であり、式中R7は下記の意味を有することができ、
i) 水素、または
j) 直鎖状または分枝鎖状の、非フッ素化または少なくとも部分的にフッ素化されたC1-C14アルキル、C1-C14アルケニルまたはC1-C14アルキニル基、これらは1または2以上の位置においてヒドロキシル化されることができ、そして1〜3個の異種原子-O-および-S-および/または基-NR9-により中断されることができ、式中R9は水素またはC1-C3アルキル基である、または
k) 非置換または置換のアリールまたはヘテロアリール基、または
l) 非置換または置換のC3-C10シクロアルキル基、または
m) 非置換または置換のC4-C15シクロアルキルアルキル基、または
n) 非置換または置換のC7-C20アラルキル基、または
o) 非置換または置換のヘテロアリール-C1-C6アルキル基、または
p) 非置換または置換のアミノアルキル基またはビフェニル基、
式中Xはさらに直鎖状または分枝鎖状のC1-C12アルキレン、C1-C12アルケニレンまたはC1-C12アルキニレン基であり、式中YはXとZとの間の直接結合であるか、あるいは下記の意味を有することができ、
a) WがN+(O-)(R6) 基またはアゾリジニレン-N-オキシド環でありかつN(R6) 基およびアゾリジニレン環でない場合にのみ、SOn-R10 基、ここでn = 0、1または2、ここでR10はSOnとZとの間の直接結合または直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C6アルキレン、C1-C6アルケニレンまたはC1-C6アルキニレン基である、
b) 基R11またはO-R11、ここでR11は下記の意味を有する、
i) 直鎖状または分枝鎖状のC1-C5アルキレン、C1-C5アルケニレンまたはC1-C5アルキニレン基、または
ii) 非置換または置換のアリール基またはヘテロアリール基、または
iii) 非置換または置換のC3-C10シクロアルキル基、または
iv) 非置換または置換のC4-C15シクロアルキルアルキル基、または
v) 非置換または置換のC7-C20アラルキル基、または
vi) 非置換または置換のヘテロアリール-C1-C6アルキル基、
c) 基CH=CF、または
d) 基HN-C(O)-NH-R12、ここでR12は非置換または置換のアリーレン基であり、そしてここでR12はZに結合しており、そして式中ZはさらにYとEとの間の直接結合または直鎖状もしくは分枝鎖状のC1-C9アルキレン、C1-C9アルケニレンまたはC1-C9アルキニレン基であり、これらは部分的または完全にフッ素化されることができ、そして式中EはさらにCF3基または少なくとも部分的にフッ素化されたアリール基であり、
ここで薬理学的に適合性の酸付加塩ならびにエステルがまた包含される。
【請求項3】
純粋なアンチエストロゲンが、11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールまたはその薬学上許容される誘導体またはアナローグである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
プロゲステロンレセプターアンタゴニストおよび純粋なアンチエストロゲンの重量比が1:100〜100:1である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
プロゲステロンレセプターアンタゴニストおよび純粋なアンチエストロゲンの重量比が1:4〜4:1である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
プロゲステロンレセプターアンタゴニストが0.1〜100 mgの単位投与量で存在し、そして純粋なアンチエストロゲンが0.1〜200 mgの単位投与量で存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
プロゲステロンレセプターアンタゴニストが10〜50 mgの単位投与量で存在し、そして純粋なアンチエストロゲンが10〜50 mgの単位投与量で存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
哺乳動物におけるホルモン依存性疾患を予防または治療する薬剤を製造するためのプロゲステロンレセプターアンタゴニスト11β-(4-アセチルフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オンまたはその薬学上許容される誘導体またはアナローグと、少なくとも1種の純粋なアンチエストロゲンとを含んでなる組成物の使用。
【請求項9】
純粋なアンチエストロゲンが請求項2に記載の一般式Iにより表される化合物から成る群から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
純粋なアンチエストロゲンが、11β-フルオロ-17α-メチル-7α-{5-[メチル(8,8,9,9,9-ペンタフルオロノニル)アミノ]ペンチル}-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオールである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
疾患が乳癌である、請求項8または10に記載の使用。
【請求項12】
哺乳動物がヒトである、請求項8〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
プロゲステロンレセプターアンタゴニストおよび純粋なアンチエストロゲンの重量比が1:100〜100:1である、請求項8〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
プロゲステロンレセプターアンタゴニストおよび純粋なアンチエストロゲンの重量比が1:4〜4:1である、請求項8〜13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
プロゲステロンレセプターアンタゴニストを0.1〜100 mgの単位投与量で投与し、そして純粋なアンチエストロゲンを0.1〜200 mgの単位投与量で投与する、請求項8〜14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
プロゲステロンレセプターアンタゴニストおよび純粋なアンチエストロゲンの両方を10〜50 mgの単位投与量で投与する、請求項8〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
薬剤を経口的に投与する、請求項8〜16のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2006−528226(P2006−528226A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529938(P2006−529938)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005732
【国際公開番号】WO2004/105768
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(300049958)シエーリング アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】