説明

ホログラム情報再生装置

【課題】ホログラム情報を記録した記録媒体から情報再生を行うことができ、しかも小型化を図ることができるホログラム情報再生装置を提供すること。
【解決手段】光源11から光が出射されると、光は、光学系12のレンズ121で平行光に変えられる。この平行光Aはミラー122で向きを斜め下方に変えられ、記録媒体Mに向けられる。具体的には、上方から見ると、光源11からの光がミラー122で約90°光路が変えられ、さらに、側面から見ると、光源11からの光がミラー122により下方に約45°光路が変えられる。記録媒体Mに記録された干渉縞25はブラッググレーティングとなっているので、この光Aが記録媒体Mの記録領域24に照射されると、ブラッグ回折により再生光Bが得られる。この再生光Bは、記録媒体Mの反射層23で反射して光検出器13で検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム記録媒体に記録された情報を再生する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、大量のデータを記録しておく媒体として、CD(コンパクトディスク)やDVD(ディジタルバーサタイルディスク)などの光記録媒体が広く利用されている。近年、高精細の動画像を記録したいという要望や、パーソナルコンピュータの発達によりさらに大量のデータを記録したいという要望があり、CDやDVDのような光記録媒体では、このような大量のデータを記録するために十分な高密度化を図ることができず、1枚のディスクにこれらの大量のデータを記録することができない。したがって、これらの大量のデータを記録するためには、複数のディスクを交換しながら記録しなければならない。近年、現在のCDやDVDなどに比べてかなりの大量のデータを記録することができるホログラム記録媒体が注目されている。
【0003】
ホログラム情報記録とは、ビーム光を互いにコヒーレントな2つの光に分波し、一方の光を空間光変調器でデータ変調して信号光とし、他方の光を参照光として記録媒体上で合波することにより、データを干渉縞として記録する方式である。そして、この記録媒体に記録時と同じ参照光を照射することにより、信号光を再生光として検出することができ、これによりデータを再生することができる。このホログラム情報記録再生においては、情報再生時の光の波長や照射角度が情報記録時の光の波長や照射角度と異なると信号光が再生されない。この性質を利用して、情報記録再生の光の波長や照射角度を変えて記録媒体の同じ領域にデータを多重して記録することが行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−216359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
情報記録再生の光の波長や照射角度を変えて記録・再生を行う場合(波長多重や照射角度多重)、波長や照射角度を高い精度で制御する必要がある。例えば、照射角度多重で記録媒体に情報を記録・再生する場合においては、高価でサイズの大きなガルバノミラーを用いて照射角度を変えている。このため、装置が大型化すると共に高価になってしまうという問題がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ホログラム情報を記録した記録媒体から情報再生を行うことができ、しかも小型化を図ることができるホログラム情報再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のホログラム情報再生装置は、参照光を出射する光源と、情報が記録された記録媒体に前記参照光を照射する光学系と、前記記録媒体に対して前記光源と同じ側に配置され、前記参照光が前記記録媒体で回折して得られる再生光を検出する検出手段と、を具備し、前記光学系が前記光源からの参照光を透過するレンズと、前記レンズを透過した光を前記記録媒体に向けるミラーと、前記レンズの向きを変える第1駆動手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1駆動手段がレンズの向きを多重方向及び配列方向に独立して駆動させることが可能となるため、第1駆動手段により、多重方向及び配列方向にレンズを駆動させることができる。そのため、ホログラム情報の再生において、光源を切り替えても正確に情報再生することができると共に、角度多重されたホログラム情報を正確に再生することができる。
【0009】
本発明のホログラム情報再生装置は、参照光を出射する光源と、情報が記録された記録媒体に前記参照光を照射する光学系と、前記記録媒体に対して前記光源と同じ側に配置され、前記参照光が前記記録媒体で回折して得られる再生光を検出する検出手段と、を具備し、前記光学系は、前記光源からの参照光を透過するレンズ及び前記光源を一体的に構成した筒体と、前記レンズを透過した光を前記記録媒体に向けるミラーと、前記筒体の向きを駆動する第2駆動手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第2駆動手段が、レンズと光源とが一体化された筒体の向きを多重方向及び配列方向に独立して駆動させることが可能となるため、第2駆動手段により、多重方向及び配列方向にレンズを駆動させることができる。そのため、ホログラム情報の再生において、光源を切り替えても正確に情報再生することができると共に、角度多重されたホログラム情報を正確に再生することができる。
【0011】
本発明のホログラム情報再生装置においては、前記第1又は第2駆動手段は、前記記録媒体から情報を再生する際に前記レンズの向きを変える方向に対応して第1の方向に前記レンズの向きを変えることが好ましい。
【0012】
本発明のホログラム情報再生装置においては、前記光源は複数の光源を含む光源アレイを有し、前記第1又は第2駆動手段は、前記光源アレイにおける前記光源の配列方向に対応して第2の方向に前記レンズの向きを変えることが好ましい。
【0013】
本発明のホログラム情報再生装置においては、前記第1及び第2の方向が互いに略直交しており、前記第1又は第2駆動手段が前記第1及び第2の方向に前記レンズの向きを変えることが好ましい。この構成によれば、前記第1又は第2駆動手段がレンズの向きを第1及び第2の方向に独立して駆動させることが可能となる。このため、第1又は第2駆動手段により、第1及び第2の方向にレンズを駆動させることができる。そのため、ホログラム情報の再生において、光源を切り替えても正確に情報再生することができると共に、角度多重されたホログラム情報を正確に再生することができる。
【0014】
本発明のホログラム情報再生装置においては、前記第1又は第2駆動手段は、前記レンズ又は前記筒体を磁気回路により駆動させることが好ましい。
【0015】
本発明のホログラム情報再生装置においては、前記記録媒体は、前記参照光が回折することにより得られる再生光を前記検出手段に向けて反射させる反射手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のホログラム情報再生装置は、情報が記録された記録媒体に参照光を照射する光学系が、光源からの参照光を透過するレンズと、レンズを透過した光を前記記録媒体に向けるミラーと、レンズの向きを変える第1駆動手段と、を有するので、第1又は第2駆動手段が、レンズの向き又はレンズと光源とが一体化された筒体の向きを多重方向及び配列方向に独立して駆動させることが可能となる。このため、第1又は第2駆動手段により、多重方向及び配列方向にレンズを駆動させることができる。そのため、ホログラム情報の再生において、光源を切り替えても正確に情報再生することができると共に、角度多重されたホログラム情報を正確に再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るホログラム情報再生装置の概略構成を上面から見た状態を示す図であり、図2は、図1に示すホログラム情報再生装置を側面から見た状態を示す図である。
【0018】
図1に示すホログラム情報再生装置1は、参照光を出射する光源11と、情報が記録された記録媒体Mに参照光を照射する光学系12と、参照光が記録媒体Mで回折して得られる再生光を検出する検出手段である光検出器13と、光源11の切り替え、レンズの駆動、再生光から得られる再生信号の処理などを行う制御部14とから主に構成されている。光学系12は、記録媒体Mに対して光源11と同じ側に配置されている。なお、光源11は、異なる波長範囲をそれぞれ有する複数の光源(ここでは3つ)を並列に配列してなる光源アレイを構成している。光源の数については、3つに限定されず、2つ又は4つ以上であっても良い。
【0019】
光学系12は、光源11からの参照光Aを透過するレンズ121と、レンズ121を透過した参照光Aを記録媒体Mに向けるミラー122と、レンズ121の向きを変える第1駆動手段であるレンズアクチュエータ123とを有する。また、記録媒体Mは、例えば干渉縞が記録される記録層21と、記録層21を挟持する透明基板22と、参照光Aが回折することにより得られる再生光Bを光検出器13に向けて反射させる反射手段である反射層23とから構成されている。この反射層23は、記録媒体Mの最下層に設けられている。記録媒体Mにおいて、記録層21は、例えばフォトポリマーなどの樹脂材料によって構成されており、透明基板22は、例えばポリカーボネート、アクリル、ガラスによって構成されている。
【0020】
記録媒体Mにおいて、記録層21の膨張係数が透明基板22の膨張係数よりも大きいと、記録層21は、透明基板22の表面に対して垂直な方向に大きく膨張するようになる。また、温度変化などに基づく膨張は、記録層21が透明基板22によって挟持、あるいは、支持された状態にあると、透明基板22の表面に沿った方向には起こり難く、主に透明基板22の表面に対して直交する方向に膨張する。したがって、本発明に係るホログラム情報再生装置により情報再生される記録媒体Mは、記録媒体Mの厚さ方向(例えば、記録媒体Mの表面に対して略直交方向)にホログラム情報(干渉縞25)が形成されている。このような干渉縞25は、記録媒体Mに対して同一の面側から参照光及び信号光を照射することで記録媒体Mの情報記録領域に形成することができる。
【0021】
このような記録媒体Mを用いることにより、情報再生時において、記録媒体Mの膨張などが生じても、反射型ホログラムの場合と比較して、ホログラム情報が変化(干渉縞の幅が変化)することが低減又は防止される。また、記録媒体Mは反射層23を有するので、情報再生時においては、この反射層23が形成されていない側から同一条件の参照光を記録媒体Mに照射することにより、反射層23で反射された光で再生光(回折したホログラム情報)が得られるようになる。したがって、ホログラム情報再生装置1においては、参照光Aを照射する側に配設した光検出器13で再生光Bを検知することが可能であるので、光検出器13を記録媒体Mに対して光源11と同一の面側に設置することが可能となる。このため、光検出器13を記録媒体Mに対して光源11の反対側に設置する構成と比較して、構成部品を記録媒体Mに対して同じ側に集約することが可能となり、装置全体のサイズを小さくすることが可能となる。
【0022】
光検出器13は、再生光の2次元パターンに対応する2次元の受光セルアレイを有しており、例えばPDアレイ、CCD素子アレイ、CMOS素子アレイなどで構成することができる。
【0023】
制御部14は、図3に示すように、記録媒体Mから得られた再生光に基づく再生信号に対して信号処理を行う信号処理回路141と、信号処理回路141での処理結果に基づいてレンズ121の向きを変える駆動部142と、信号処理回路141での処理結果に基づいて光源11を切り替える光源制御部143とを有する。駆動部142は、記録媒体Mへのホログラム情報の多重方向、すなわち記録媒体Mへの照射角度を変える方向(ブラッグ方向)(第1の方向)にレンズを駆動する多重方向駆動部1421と、光源11における複数の光源の配列している方向(第2の方向)にレンズを駆動する配列方向駆動部1422とを有する。なお、第1の方向は、記録媒体Mから情報を再生する際にレンズ121の向きを変える方向に対応しており、第2の方向は、光源アレイにおける複数の光源の配列方向に対応している。
【0024】
次に、レンズアクチュエータ123の構成について説明する。図4(a)〜(c)は、本発明の実施の形態1に係るホログラム情報再生装置におけるレンズアクチュエータの構成を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は上面図であり、(c)は(a)の矢印方向から見た図である。
【0025】
レンズアクチュエータ123において、レンズ121は、第1支持部材31に取り付けられている。第1支持部材31と、この第1支持部材31に対して光源11側に所定の間隔をおいて配置された第2支持部材33とは、それぞれの主面が対向しており、両者の間には、4本のワイヤ32a〜32dが渡されている。すなわち、4本のワイヤ32a〜32dの一方の端部が第1支持部材31の4隅にそれぞれ取り付けられ、他方の端部が第2支持部材33の4隅にそれぞれ取り付けられている。これにより、第1支持部材31に取り付けられたレンズ121が吊り下げられた状態となる。
【0026】
第1支持部材32のレンズ121近傍には、第1コイル34及び第2コイル35が配置されている。第1コイル34は、ワイヤ32a,32dで構成される面及びワイヤ32b,32cで構成される面に沿って長手方向が位置するように配置されている。また、第2コイル35は、ワイヤ32a,32bで構成される面及びワイヤ32c,32dで構成される面に沿って長手方向が位置するように配置されている。また、第1コイル34及び第2コイル35の近傍には、マグネット36が配置されている。このマグネット36は略矩形環状形状を有しており、第1コイル34及び第2コイル35とにより磁気回路を構成するようになっている。
【0027】
レンズアクチュエータ123において、第1コイル34に電流を流すことにより、光源11における複数の光源11a〜11cの配列している方向(第2の方向)に対応してレンズ121を駆動することができ(レンズ121の向きを水平方向に駆動する)、第2コイル35に電流を流すことにより、記録媒体Mへの照射角度を変える方向(ブラッグ方向)(第1の方向)に対応してレンズ121を駆動することができる(レンズ121の向きを垂直方向に駆動する)。なお、第1の方向と第2の方向とは、互いに略直交するように設定されている。これにより、レンズアクチュエータ123がレンズ121の向きを多重方向及び配列方向に独立して駆動させることが可能となる。このため、レンズアクチュエータ123により、多重方向及び配列方向にレンズ121を駆動させることができる。そのため、ホログラム情報の再生において、光源11を切り替えても正確に情報再生することができると共に、角度多重されたホログラム情報を正確に再生することができる。
【0028】
上記構成を有するホログラム情報再生装置においては、図1及び図2に示すように、光源11から光が出射されると、光は、光学系12のレンズ121で平行光に変えられる。この平行光Aはミラー122で向きを斜め下方に変えられ、記録媒体Mに向けられる。具体的には、図1に示すように、上方から見ると、光源11からの光がミラー122で約90°光路が変えられ、さらに、図2に示すように、側面から見ると、光源11からの光がミラー122により下方に約45°光路が変えられる。記録媒体Mに記録された干渉縞25はブラッググレーティングとなっているので、この光Aが記録媒体Mの記録領域24に照射されると、ブラッグ回折により再生光Bが得られる。光源11の光(情報再生用の光)の波長と情報記録用の光の波長が略同じであれば、これによりそのページに記録されたホログラム情報を再生することができる。この再生光Bは、記録媒体Mの反射層23で反射して光検出器13で検出される。光検出器13で検出された再生光Bは、再生信号として図3に示す制御部14の信号処理回路141に送られる。信号処理回路141では、再生信号の回折強度が測定される。測定された回折強度が所定の値(しきい値)を超えていれば、その再生信号からホログラム情報を得る。
【0029】
ここで、外界の温度により記録媒体Mの膨張・収縮が起こった場合においては、この膨張・収縮を考慮して情報再生を行う必要がある。例えば、外界温度が情報記録時の温度よりも一つの光源の波長範囲の光では情報を再生することができないことがある。このような場合においては、異なる波長範囲を有する光源に切り替えて情報再生を行う。具体的には、一つの光源、例えば図4(b)における光源11aから出射された光に基づく再生光の回折強度を測定し、その回折強度が所定の値未満であれば、光源制御部143により光源11aの波長を所定量補正し、補正後の波長の光に基づく再生光の回折強度を測定する。光源11aの波長範囲においては、再生光の回折強度が所定の値を超えないときには、光源制御部143は光源11を切り替える。ここでは、光源11aから光源11bに切り替える。そして、上記と同様にして、光源11bから出射された光に基づく再生光の回折強度を測定して、その回折強度に対してしきい値判定を行う。測定された回折強度がしきい値を超えていれば、その再生信号からホログラム情報を得る。
【0030】
光源11aを光源11bに切り替える場合、光源11aの位置と光源11bの位置とが異なるので、レンズアクチュエータ123によりレンズ121の向きを変える必要がある。すなわち、光源の位置のシフトに対応してレンズ121の向きを変える。これにより、光源の位置が変わっても、再生光を用いてホログラム情報を正確に再生することができる。具体的には、光源制御部143による光源切り替えのための制御信号が光源11だけでなく駆動部142の配列方向駆動部1422にも送られる。配列方向駆動部1422では、その制御信号にしたがってレンズアクチュエータ123に対してレンズ121の向きを光源配列方向(第2の方向)に駆動させる制御信号を出力する。レンズアクチュエータ123においては、その制御信号にしたがって第1コイル34に電流を流してレンズ121の向きを配列方向に沿って変える。なお、光源11における各光源11a〜11c間の間隔はあらかじめ決まっているので、その間隔に応じてあらかじめ設定された量の電流を第1コイル34に流すことにより、光源が切り替えられた際にシフトする角度分だけレンズ121の向きを変えることができる。
【0031】
多重パラメータである照射角度を変えて同じ記録領域24にホログラム情報を多重記録した記録媒体Mからホログラム情報を再生する場合、レンズアクチュエータ123によりレンズ121の向きを変える必要がある。すなわち、同じ記録領域24に対して多重する際に変えた照射角度のシフトに対応してレンズ121の向きを変える。これにより、同じ記録領域24に多重されたホログラム情報を正確に再生することができる。具体的には、信号処理回路141から多重パラメータ変更のための制御信号が駆動部142の多重方向駆動部1421に送られる。多重方向駆動部1421では、その制御信号にしたがってレンズアクチュエータ123に対してレンズ121の向きを多重方向(第1の方向)に駆動させる制御信号を出力する。レンズアクチュエータ123においては、その制御信号にしたがって第2コイル35に電流を流してレンズ121の向きを配列方向に沿って変える。なお、多重記録の際の照射角度のシフト量はあらかじめ決まっているので、そのシフト量に応じてあらかじめ設定された量の電流を第2コイル35に流すことにより、照射角度のシフト量に対応する角度分だけレンズ121の向きを変えることができる。また、ある照射角度において、光源11aから出射された光に基づく再生光の回折強度を測定し、その回折強度が所定の値未満であれば、多重方向駆動部1421によりレンズ121の角度を所定量補正し、補正後の照射角度の光に基づく再生光の回折強度を測定する。測定された回折強度がしきい値を超えていれば、その再生信号からホログラム情報を得る。この補正量を決定する方法としては、通常のPID制御などにより行うことができる。
【0032】
このように本実施の形態に係るホログラム情報再生装置においては、図1に示すように、上方から見ると、光源11からの光がミラー122で約90°光路が変えられ、さらに、図2に示すように、側面から見ると、光源11からの光がミラー122により下方に約45°光路が変えられる。さらに、光検出器13を記録媒体Mに対して光源11と同一の面側に設置するので、光検出器13を記録媒体Mに対して光源11の反対側に設置する構成と比較して、構成部品を記録媒体Mに対して同じ側に集約することが可能となり、装置全体のサイズを小さくすることが可能となる。また、レンズアクチュエータ123がレンズ121の向きを多重方向及び配列方向(2軸方向)に独立して駆動させることが可能となるため、レンズアクチュエータ123により、多重方向及び配列方向にレンズ121を駆動させることができる。そのため、ホログラム情報の再生において、光源11を切り替えても正確に情報再生することができると共に、角度多重されたホログラム情報を正確に再生することができる。
【0033】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、レンズと一体化した筒体を駆動させることにより、レンズの向きを多重方向及び配列方向に独立して駆動させる場合について説明する。図5(a),(b)は、本発明の実施の形態2に係るホログラム情報再生装置における筒体アクチュエータの構成を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。図5において図4と同じ部分については図4と同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0034】
実施の形態2に係るホログラム情報再生装置は、レンズアクチュエータ123の代わりに、筒体の向きを変える筒体アクチュエータを用いること以外実施の形態1と同じ構成を有している。図4(a),(b)に示すように、筒体42は、光源11からの光を透過するレンズ121と、光源11とが一体的に構成されている。具体的には、筒体アクチュエータにおいて、筒体42は、支持部材41に取り付けられている。支持部材41と、筒体42とは、例えば図6に示すような構造で取り付けられている。すなわち、図6(a)に示すように、筒体42は、弾性板47を介して支持部材41に取り付けられており、弾性板47と筒体42との間、及び弾性板47と支持部材41との間には、支持部48a,48bが設けられている。弾性板47と筒体42との間の支持部48aは、垂直方向において対向する位置に配置され、弾性板47と支持部材41との間の支持部48bは、水平方向において対向する位置に配置されている。このように、支持部材41と筒体42との間に弾性板47を支持部48a,48bを用いて介在させることにより、2軸方向に筒体42を駆動させることが可能となる。また、図6(b)に示すように、弾性板47と筒体42との間、及び弾性板47と支持部材41との間に、ボールベアリング49a,49bを設けても、2軸方向に筒体42を駆動させることが可能となる。
【0035】
筒体42の光源11(先端)側には、第1コイル43及び第2コイル44が配置されている。第1コイル43は、図5(a)に示すように、筒体42の側面に沿って長手方向が位置するように配置されている。また、第2コイル44は、筒体42の上面及び底面に沿って長手方向が位置するように配置されている。また、第1コイル43及び第2コイル44の近傍には、マグネット45が配置されている。このマグネット45は略矩形環状形状を有しており、第1コイル43及び第2コイル44とにより磁気回路を構成するようになっている。
【0036】
筒体アクチュエータにおいて、第1コイル43に電流を流すことにより、光源11における複数の光源11a〜11cの配列している方向(第2の方向)に対応して筒体42を駆動することができ(筒体42の向きを水平方向に駆動する)、第2コイル44に電流を流すことにより、記録媒体Mへの照射角度を変える方向(ブラッグ方向)(第1の方向)に対応して筒体42を駆動することができる(筒体42の向きを垂直方向に駆動する)。なお、第1の方向と第2の方向とは、互いに略直交するように設定されている。これにより、筒体アクチュエータが筒体42の向きを多重方向及び配列方向に独立して駆動させることが可能となる。このため、筒体アクチュエータにより、多重方向及び配列方向にレンズ121を駆動させることができる。そのため、ホログラム情報の再生において、光源11を切り替えても正確に情報再生することができると共に、角度多重されたホログラム情報を正確に再生することができる。
【0037】
上記構成を有するホログラム情報再生装置においては、筒体アクチュエータにより筒体42の向きを変えてレンズ121の向きを変える。基本的な動作は実施の形態1と同様である。すなわち、光源11から出射された光が、上方から見ると、光源11からの光がミラー122で約90°光路が変えられ、さらに、側面から見ると、光源11からの光がミラー122により下方に約45°光路が変えられる。記録媒体Mに記録された干渉縞25はブラッググレーティングとなっているので、この光Aが記録媒体Mの記録領域24に照射されると、ブラッグ回折により再生光Bが得られる。この再生光Bは、記録媒体Mの反射層23で反射して光検出器13で検出される。光検出器13で検出された再生光Bは、再生信号として図3に示す制御部14の信号処理回路141に送られる。信号処理回路141では、再生信号の回折強度が測定される。測定された回折強度が所定の値(しきい値)を超えていれば、その再生信号からホログラム情報を得る。
【0038】
ここで、外界の温度により記録媒体Mの膨張・収縮が起こった場合においては、実施の形態1と同様にして、膨張・収縮を考慮して情報再生を行う。光源11aを光源11bに切り替える場合、光源11aの位置と光源11bの位置とが異なるので、筒体アクチュエータにより筒体42の向きを変える必要がある。すなわち、光源の位置のシフトに対応して筒体42の向きを変える。これにより、光源の位置が変わっても、再生光を用いてホログラム情報を正確に再生することができる。具体的には、光源制御部143による光源切り替えのための制御信号が光源11だけでなく駆動部142の配列方向駆動部1422にも送られる。配列方向駆動部1422では、その制御信号にしたがって筒体アクチュエータに対して筒体42の向きを光源配列方向(第2の方向)に駆動させる制御信号を出力する。筒体アクチュエータにおいては、その制御信号にしたがって第1コイル43に電流を流して筒体42の向きを配列方向に沿って変える。なお、光源11における各光源11a〜11c間の間隔はあらかじめ決まっているので、その間隔に応じてあらかじめ設定された量の電流を第1コイル43に流すことにより、結果として、光源が切り替えられた際にシフトする角度分だけレンズ121の向きを変えることができる。
【0039】
多重パラメータである照射角度を変えて同じ記録領域24にホログラム情報を多重記録した記録媒体Mからホログラム情報を再生する場合、筒体アクチュエータにより筒体42の向きを変える必要がある。すなわち、同じ記録領域24に対して多重する際に変えた照射角度のシフトに対応して筒体42の向きを変える。これにより、同じ記録領域24に多重されたホログラム情報を正確に再生することができる。具体的には、信号処理回路141から多重パラメータ変更のための制御信号が駆動部142の多重方向駆動部1421に送られる。多重方向駆動部1421では、その制御信号にしたがって筒体アクチュエータに対して筒体42の向きを多重方向(第1の方向)に駆動させる制御信号を出力する。筒体アクチュエータにおいては、その制御信号にしたがって第2コイル44に電流を流して筒体42の向きを配列方向に沿って変える。なお、多重記録の際の照射角度のシフト量はあらかじめ決まっているので、そのシフト量に応じてあらかじめ設定された量の電流を第2コイル44に流すことにより、結果として、照射角度のシフト量に対応する角度分だけレンズ121の向きを変えることができる。また、ある照射角度において、光源11aから出射された光に基づく再生光の回折強度を測定し、その回折強度が所定の値未満であれば、多重方向駆動部1421により筒体42の角度を所定量補正し、補正後の照射角度の光に基づく再生光の回折強度を測定する。測定された回折強度がしきい値を超えていれば、その再生信号からホログラム情報を得る。この補正量を決定する方法としては、通常のPID制御などにより行うことができる。
【0040】
このように本実施の形態に係るホログラム情報再生装置においては、図1に示すように、上方から見ると、光源11からの光がミラー122で約90°光路が変えられ、さらに、図2に示すように、側面から見ると、光源11からの光がミラー122により下方に約45°光路が変えられる。さらに、光検出器13を記録媒体Mに対して光源11と同一の面側に設置するので、光検出器13を記録媒体Mに対して光源11の反対側に設置する構成と比較して、構成部品を記録媒体Mに対して同じ側に集約することが可能となり、装置全体のサイズを小さくすることが可能となる。また、筒体アクチュエータが筒体42の向きを多重方向及び配列方向(2軸方向)に独立して駆動させることが可能となるため、筒体アクチュエータにより、多重方向及び配列方向にレンズ121を駆動させることができる。そのため、ホログラム情報の再生において、光源11を切り替えても正確に情報再生することができると共に、角度多重されたホログラム情報を正確に再生することができる。
【0041】
本発明は上記実施の形態1,2に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態1,2においては、レンズ又は筒体の駆動に、コイル及びマグネットで構成される磁気回路を用いた場合について説明しているが、本発明においては、レンズ又は筒体の駆動に、ピエゾ素子を用いた圧電回路を用いても良い。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1に係るホログラム情報再生装置の概略構成を上面から見た状態を示す図である。
【図2】図1に示すホログラム情報再生装置を側面から見た状態を示す図である。
【図3】図1に示すホログラム情報再生装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の実施の形態1に係るホログラム情報再生装置におけるレンズアクチュエータの構成を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は上面図であり、(c)は(a)の矢印方向から見た図である。
【図5】(a),(b)は、本発明の実施の形態2に係るホログラム情報再生装置における筒体アクチュエータの構成を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【図6】(a),(b)は、本発明の実施の形態2に係るホログラム情報再生装置における筒体の駆動構造を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ホログラム情報再生装置
11,11a,11b,11c 光源
12 光学系
13 光検出器
14 制御部
21 記録層
22 透明基板
23 反射層
24 記録領域
25 干渉縞
31 第1支持部材
32a〜32d ワイヤ
33 第2支持部材
34,43 第1コイル
35,44 第2コイル
36,45 マグネット
41 支持部材
42 筒体
47 弾性板
48a,48b 支持部
49a,49b ボールベアリング
121 レンズ
122 ミラー
123 レンズアクチュエータ
141 信号処理回路
142 駆動部
143 光源制御部
1421 多重方向駆動部
1422 配列方向駆動部
M 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照光を出射する光源と、情報が記録された記録媒体に前記参照光を照射する光学系と、前記記録媒体に対して前記光源と同じ側に配置され、前記参照光が前記記録媒体で回折して得られる再生光を検出する検出手段と、を具備し、前記光学系が前記光源からの参照光を透過するレンズと、前記レンズを透過した光を前記記録媒体に向けるミラーと、前記レンズの向きを変える第1駆動手段と、を有することを特徴とするホログラム情報再生装置。
【請求項2】
参照光を出射する光源と、情報が記録された記録媒体に前記参照光を照射する光学系と、前記記録媒体に対して前記光源と同じ側に配置され、前記参照光が前記記録媒体で回折して得られる再生光を検出する検出手段と、を具備し、前記光学系は、前記光源からの参照光を透過するレンズ及び前記光源を一体的に構成した筒体と、前記レンズを透過した光を前記記録媒体に向けるミラーと、前記筒体の向きを駆動する第2駆動手段と、を有することを特徴とするホログラム情報再生装置。
【請求項3】
前記第1又は第2駆動手段は、前記記録媒体から情報を再生する際に前記レンズの向きを変える方向に対応して第1の方向に前記レンズの向きを変えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のホログラム情報再生装置。
【請求項4】
前記光源は複数の光源を含む光源アレイを有し、前記第1又は第2駆動手段は、前記光源アレイにおける前記光源の配列方向に対応して第2の方向に前記レンズの向きを変えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のホログラム情報再生装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の方向が互いに略直交しており、前記第1又は第2駆動手段が前記第1及び第2の方向に前記レンズの向きを変えることを特徴とする請求項3又は請求項4記載のホログラム情報再生装置。
【請求項6】
前記第1又は第2駆動手段は、前記レンズ又は前記筒体を磁気回路により駆動させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のホログラム情報再生装置。
【請求項7】
前記記録媒体は、前記参照光が回折することにより得られる再生光を前記検出手段に向けて反射させる反射手段を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のホログラム情報再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−344264(P2006−344264A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167379(P2005−167379)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】