ホールダウンアンカー
【課題】基礎と柱材とを直結させるホールダウンアンカーにおいて、施工の簡単化を図る。
【解決手段】基礎11内に埋め込まれる埋込部21と、該埋込部21の上側に形成されて柱材13に固定される固定部22とを有するホールダウンアンカー14であって、上記埋込部21には、鉄筋15を通す挿通孔部27が形成されるとともに、少なくとも上記埋込部21と固定部22との間の中間部23が、ワイヤロープ24で形成されたホールダウンアンカー14。
【解決手段】基礎11内に埋め込まれる埋込部21と、該埋込部21の上側に形成されて柱材13に固定される固定部22とを有するホールダウンアンカー14であって、上記埋込部21には、鉄筋15を通す挿通孔部27が形成されるとともに、少なくとも上記埋込部21と固定部22との間の中間部23が、ワイヤロープ24で形成されたホールダウンアンカー14。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば木造建築において、基礎と柱材とを直結させる場合に使用されるホールダウンアンカーに関する。なお、この発明において柱材とは、ツーバイフォー工法における縦枠を含む意味である。
【背景技術】
【0002】
基礎と柱材との直結は、通常より長いアンカーボルトとホールダウン金物を用いて、図8に示したように行われている。
【0003】
まず、基礎101の施工においてアンカーボルト102を所定の位置に配置する。所定の位置とは、柱材103を建て込む位置の近傍である。基礎101の完成後、土台104を載置してから、ホールダウン金物105が取付けられた柱材103を建て込んで、ホールダウン金物105をアンカーボルト102に結合する。
【0004】
このようにして基礎101と柱材103を直結すると、地震が起こっても柱材103が浮いてしまうようなことを防止できるので、耐震性の点で、より多くの箇所に採用されるのが好ましい。
【0005】
しかし、アンカーボルト102の設置は、アンカーボルト102が土台104とホールダウン金物105のボルト孔104a,105aに正確に通るように、正しく施工されなければならない。この正確な施工をするためには、専用の治具が必要となる。
【0006】
このため、施工は面倒であり、また専用の治具があったとしても細心の注意を払って作業が行なわれない限り、正確な設置はできないため、業者からは敬遠されがちである。この結果、ホールダウン専用のアンカーボルトを使用することが省略されたり、本数を減らされたりすることがある。
【0007】
アンカーボルトを基礎の所定位置に正確に配置できるようにするものとして、下記特許文献1や特許文献2の技術が提案されている。
【0008】
特許文献1のフレキシブルアンカーは、ワイヤロープの上端部にボルトが取付けられ、下端に定着板が取付けられて構成されておいる。そして、施工に当たっては、所定位置に配置された後、ワイヤロープの上部に対応する一部分を残してコンクリートの打設が行われる。その後、別体の支圧板を用いてボルトを所定の位置に位置決めするというものである。
【0009】
この構成によれば、最終的にはフレキシブルアンカーのボルトを所定の位置に固定することができるが、その作業には基礎天端に対して上から固定する別体の支圧板を用いなければならないなど煩雑さが伴う。また、支圧板で固定することになるので、耐引抜力の点において難点がある。
【0010】
特許文献2の基礎用アンカーは、帯板形状をなし、その上端部に取付け孔を有し、下端部に基礎横筋に対する結合部を有する構成である。すなわち、結合部を現場において屈曲させることで、基礎横筋を避けて所定位置に埋め込むことができるとともに、基礎横筋に絡ませることで基礎に対する一体結合力が増大し、引抜力に対し強大な抵抗力を発揮することができるというものである。
【0011】
しかし、基礎縦筋の位置が基礎アンカーを取り付けるべき位置と重なる場合には、所定位置に取付けができない。また、コンクリートの打設時に発生し得る微妙な位置ずれや土台等の製作誤差や設置誤差に後で対応することはできない。
【0012】
【特許文献1】実開平4−130330号公報
【特許文献2】実公昭52−41689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、この発明は、耐震性を向上する施工が簡単に行えるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのための手段は、基礎内に埋め込まれる埋込部と、該埋込部の上側に形成されて柱材に固定される固定部とを有するホールダウンアンカーであって、上記埋込部には、鉄筋を通す挿通孔部が形成されるとともに、少なくとも上記埋込部と固定部との間の中間部が、ワイヤロープで形成されたホールダウンアンカーである。
【0015】
すなわち、基礎の施工に際して埋込部の挿通孔部に鉄筋を挿通して配筋を行い、ホールダウンアンカーの位置を所定位置に固定した後、コンクリートの打設を行って基礎を完成させる。ホールダウンアンカーは鉄筋と一体化され、結合力が高い。そして、その後の床組や軸組の施工は、通常行われる通りに行えばよい。つまり、基礎内に埋め込まれた埋込部の上側に位置する中間部がワイヤロープで形成されているので、土台や柱材を固定する時に中間部は適宜変形する。このため、埋込部が埋め込まれた位置とその他の部材の位置ずれを吸収することができる。
【0016】
ここで、上記構成要素については、次のような態様に構成することができる。
その態様の一つは、上記埋込部がワイヤロープで形成されたものである。
すなわち、埋込部も変形可能であるので、基礎内の配筋位置の誤差を吸収でき、簡易な施工が可能となる。また、中間部と一体に形成できるので、耐引張り力を高めることができるとともに、ワイヤロープを適宜撚ったり結合したりすればよく、製造も容易である。
【0017】
態様の他の一つは、上記固定部に、柱材に対して固定するためのボルトやドリフトピン等の結合部材を挿通する固定孔が形成されたものである。固定部もワイヤロープで形成されるとよい。
すなわち、固定部は固定孔に対して結合部材を挿通することで柱材に対して固定するので、固定部は柱材に沿った状態、または柱材の内部に挿入された状態で取付けることができる。このため、地震の発生によりホールダウンアンカーにテンションがかかっても、柱材には真っ直ぐの力がかかることになり、純粋に引き寄せ力が作用する。柱材が傾くような力はかからず、良好な効果を期待できる。また、ホールダウン金物を不要にすることができる。
【0018】
さらに、固定部もワイヤロープで形成すれば、中間部との一体性を高め、耐引引抜力の高い状態が得られる。しかも、ワイヤロープの撚りや結合によって容易に製造できる。
【0019】
態様の他の一つは、上記固定部がナット状の雌ねじやボルト状の雄ねじなどのねじで形成されたものである。
すなわち、固定部を柱材に固定するのに際して、既存のホールダウン金物を使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、この発明によれば、少なくとも中間部が変形可能であるので、基礎の施工に際してホールダウンアンカーは正確な位置に配置されなければならないわけではなく、厳格な作業が行われなくともそれによる影響をなくして、後の作業を円滑に行わせることができる。このため、作業は簡単である。また、別途に部材を必要とすることもない点からも作業は容易であるといえる。
【0021】
しかも、基礎に埋め込まれる埋込部には、鉄筋と一体化する挿通孔部を有しているので、単に基礎と柱材を直結しただけではなく、基礎を構成する重要な要素である鉄筋と一体化しているので、強度をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、基礎11とその上に配される柱脚部12を示す斜視図である。この図に示すように、柱材13は、ホールダウンアンカー14によって基礎11側に引き寄せられるように建て込まれている。
【0023】
図2がホールダウンアンカー14の構造を示す構造説明図で、図3が図1の基礎11と柱脚部12の構造を示す断面図である。図2中、(a)は正面図、(b)はA−A断面図である。
【0024】
ホールダウンアンカー14は、基礎11内に埋め込まれる埋込部21と、柱材13に固定される固定部22と、これらの間に位置する中間部23とを有し、これら各部21,22,23が1本のワイヤロープ24によって形成されている。つまり、ワイヤロープ24で細長いループ状にするとともに、その長さ方向における中間位置に、ワイヤクリップなど適宜の部材からなるクリップ部材25を止めて複数の環状部分26…をつくることによって形成される。ワイヤロープ24は、所定の強度を有するように、適宜の太さ、たとえば5〜10mm程度、好ましくは8mm程度に形成される。また、環状部分26…は撚って形成されるものであるもよい。
【0025】
上記埋込部21には、基礎11内に配設される横筋15を通す3個の挿通孔部27が形成され、固定部22には、柱材13に対して固定するためのボルト16を挿通する3個の固定孔28が形成されている。挿通孔部27も固定孔28も、上記環状部分26の内側に金具31,32を取付けて構成される。
【0026】
挿通孔部27を形成する金具31は、外周部に断面半円形状の嵌合溝31aが形成され、その幅方向における中間位置の内側に板状部31bが設けられた構造で、該板状部31bの中心部に、横筋15を挿通可能にする大きさの上記挿通孔部27が形成されている。
【0027】
上記固定孔28を形成する金具32は、外周部に断面半円形状の嵌合溝32aが形成され、その幅方向における一側面に板状部32bが設けられた構造で、該板状部32bの中心にボルト16を挿通可能にする大きさの上記固定孔28が形成されている。
【0028】
このように構成されたホールダウンアンカー14は、埋込部21、固定部22、中間部23が可撓性を有し、変形可能な状態である。
【0029】
ホールダウンアンカー14の使用は次のように行われる。
まず基礎11の施工に当たって、配筋を行う際に、ホールダウンアンカー14の埋込部21の各挿通孔部27に横筋15を挿通して、ホールダウンアンカー14を配置すべき位置の横筋15に取付ける。このとき、埋込部21はワイヤロープで形成されているので変形可能であり、上下に配設された横筋15の位置ずれ等に対応できる。続いて、図示はしないが、型枠を組むとともにホールダウンアンカー14の位置決めをする。位置決めは、アンカーボルトを固定する一般的な方法で行われる。この状態でコンクリートの打設が行われ、基礎11が形成される。
【0030】
基礎11が形成されると、図4に示したような状態となり、基礎天端11aから上に向けてホールダウンアンカー14の中間部23と固定部22が突出した状態となる。
【0031】
続いて、図3に示したように、土台17に形成された貫通孔17aにホールダウンアンカー14の固定部22と中間部23を挿通して土台17を載置してから柱材13を建て込む。建て込んだ柱材13に対して、ホールダウンアンカー14の固定部22をボルト16で固定する。このとき、固定部22に設けた金具32の板状部32bが柱材13側に位置するようにしておき、座金18を介して固定する。座金18の厚みは、クリップ部材25の突出長さと同一かそれより厚く設定し、固定部22が柱材13の側面に沿うように固定できるようにしている。なお、上記ボルト16を挿通する挿通孔13aは現場でも加工され得る。
【0032】
このような固定を行うとき、中間部23も固定部22も、前後左右に変形可能であるので、ホールダウンアンカー14の位置、土台17の貫通孔17aの位置、柱材13の位置にずれがあっても、そのずれを吸収して取り付けが行える。
【0033】
上述のように、中間部23が変形可能であるので、基礎11の施工に際してホールダウンアンカー14を正確な位置に配置しなければならないわけではなく、厳格な作業が行われなくともそれによる影響をなくして、後の作業を円滑に行わせることができる。たとえばホールダウンアンカー14を取付けるべき位置に縦筋(図示せず)が存在した場合には、そのわきに取付けておいても、後の作業が円滑に行える。このため、作業は簡単である。
【0034】
しかも、基礎11に埋め込まれる埋込部21には、横筋15と一体化する挿通孔部27を有しているので、単に基礎11と柱材13を直結しただけではなく、基礎11を構成する重要な要素である横筋15と一体化しているので、強度をより一層高めることができる。
【0035】
また、埋込部21もワイヤロープ24で形成されており、可撓性を有し変形可能であるので、基礎11内の配筋位置の誤差を吸収できる。このため、簡易な施工が可能となる。
【0036】
さらに、埋込部21と中間部23に加えて固定部22もワイヤロープで一体に形成されているので、一体性を高め、耐引張り力のあるホールダウンアンカー14を得ることができるとともに、1本のワイヤロープ24をクリップ部材25で止めて製造するので、生産も容易である。
【0037】
しかも、固定部22は柱材13に沿った状態で取付けられるので、地震の発生によりホールダウンアンカー14にテンションがかかっても、柱材13には真っ直ぐの力がかかることになり、純粋に引き寄せ力が作用し、良好な効果を期待できる。また、ホールダウン金物は不要である。
【0038】
以下、その他の形態について説明する。説明に当たって、上記構成と同一または同等の部位については、同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0039】
図5は、ホールダウンアンカー14を柱材13の下端部に対してその中心に挿入した例である。この場合、固定部22の挿通孔部27を形成する金具32の板状部32bは、幅方向の中心に位置させている。図中13bは、柱材13の下面から形成された挿入孔である。
【0040】
このように柱脚部12を構成した場合には、筋かい(図示せず)を設ける場合でも、その存在に配慮する必要なく、容易に固定できる利点がある。
【0041】
図6は、固定部22がボルト状の雄ねじ29で形成されたホールダウンアンカー14の例である。
すなわち、埋込部21と中間部23は1本のワイヤロープ24で形成され、上記中間部23の上側に、ワイヤロープ24の両端部を束ねるようにボルト状の雄ねじ29が形成されている。
【0042】
このように構成されたホールダウンアンカー14では、図7に示したように、既存のホールダウン金物19を用いて柱材13の固定が行われる。雄ねじ29に代えて、雌ねじで構成することもできる。
【0043】
この発明の構成と、上記一形態の構成との対応において、
この発明の鉄筋は、上記一形態における横筋15に対応し、
同様に、
結合部材は、ボルト16に対応し、
ねじは、雄ねじ29に対応するも、
この発明は、上記一形態の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することができる。
たとえば、挿通孔部27と固定孔28の個数は、適宜設定できる。
【0044】
また、挿通孔部27と固定孔28の各孔は、金具31,32なしで形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】柱脚部の構造を示す斜視図。
【図2】ホールダウンアンカーの構造説明図。
【図3】柱脚部の断面図。
【図4】基礎に取付けられたホールダウンアンカーの斜視図。
【図5】他の例に係るホールダウンアンカーとそれを用いた柱脚部の断面図。
【図6】他の例に係るホールダウンアンカーの正面図。
【図7】図6のホールダウンアンカーを用いた柱脚部の斜視図。
【図8】従来技術の斜視図。
【符号の説明】
【0046】
11…基礎
13…柱材
14…ホールダウンアンカー
15…横筋
16…ボルト
21…埋込部
22…固定部
23…中間部
24…ワイヤロープ
27…挿通孔部
28…固定孔
29…雄ねじ
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば木造建築において、基礎と柱材とを直結させる場合に使用されるホールダウンアンカーに関する。なお、この発明において柱材とは、ツーバイフォー工法における縦枠を含む意味である。
【背景技術】
【0002】
基礎と柱材との直結は、通常より長いアンカーボルトとホールダウン金物を用いて、図8に示したように行われている。
【0003】
まず、基礎101の施工においてアンカーボルト102を所定の位置に配置する。所定の位置とは、柱材103を建て込む位置の近傍である。基礎101の完成後、土台104を載置してから、ホールダウン金物105が取付けられた柱材103を建て込んで、ホールダウン金物105をアンカーボルト102に結合する。
【0004】
このようにして基礎101と柱材103を直結すると、地震が起こっても柱材103が浮いてしまうようなことを防止できるので、耐震性の点で、より多くの箇所に採用されるのが好ましい。
【0005】
しかし、アンカーボルト102の設置は、アンカーボルト102が土台104とホールダウン金物105のボルト孔104a,105aに正確に通るように、正しく施工されなければならない。この正確な施工をするためには、専用の治具が必要となる。
【0006】
このため、施工は面倒であり、また専用の治具があったとしても細心の注意を払って作業が行なわれない限り、正確な設置はできないため、業者からは敬遠されがちである。この結果、ホールダウン専用のアンカーボルトを使用することが省略されたり、本数を減らされたりすることがある。
【0007】
アンカーボルトを基礎の所定位置に正確に配置できるようにするものとして、下記特許文献1や特許文献2の技術が提案されている。
【0008】
特許文献1のフレキシブルアンカーは、ワイヤロープの上端部にボルトが取付けられ、下端に定着板が取付けられて構成されておいる。そして、施工に当たっては、所定位置に配置された後、ワイヤロープの上部に対応する一部分を残してコンクリートの打設が行われる。その後、別体の支圧板を用いてボルトを所定の位置に位置決めするというものである。
【0009】
この構成によれば、最終的にはフレキシブルアンカーのボルトを所定の位置に固定することができるが、その作業には基礎天端に対して上から固定する別体の支圧板を用いなければならないなど煩雑さが伴う。また、支圧板で固定することになるので、耐引抜力の点において難点がある。
【0010】
特許文献2の基礎用アンカーは、帯板形状をなし、その上端部に取付け孔を有し、下端部に基礎横筋に対する結合部を有する構成である。すなわち、結合部を現場において屈曲させることで、基礎横筋を避けて所定位置に埋め込むことができるとともに、基礎横筋に絡ませることで基礎に対する一体結合力が増大し、引抜力に対し強大な抵抗力を発揮することができるというものである。
【0011】
しかし、基礎縦筋の位置が基礎アンカーを取り付けるべき位置と重なる場合には、所定位置に取付けができない。また、コンクリートの打設時に発生し得る微妙な位置ずれや土台等の製作誤差や設置誤差に後で対応することはできない。
【0012】
【特許文献1】実開平4−130330号公報
【特許文献2】実公昭52−41689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、この発明は、耐震性を向上する施工が簡単に行えるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのための手段は、基礎内に埋め込まれる埋込部と、該埋込部の上側に形成されて柱材に固定される固定部とを有するホールダウンアンカーであって、上記埋込部には、鉄筋を通す挿通孔部が形成されるとともに、少なくとも上記埋込部と固定部との間の中間部が、ワイヤロープで形成されたホールダウンアンカーである。
【0015】
すなわち、基礎の施工に際して埋込部の挿通孔部に鉄筋を挿通して配筋を行い、ホールダウンアンカーの位置を所定位置に固定した後、コンクリートの打設を行って基礎を完成させる。ホールダウンアンカーは鉄筋と一体化され、結合力が高い。そして、その後の床組や軸組の施工は、通常行われる通りに行えばよい。つまり、基礎内に埋め込まれた埋込部の上側に位置する中間部がワイヤロープで形成されているので、土台や柱材を固定する時に中間部は適宜変形する。このため、埋込部が埋め込まれた位置とその他の部材の位置ずれを吸収することができる。
【0016】
ここで、上記構成要素については、次のような態様に構成することができる。
その態様の一つは、上記埋込部がワイヤロープで形成されたものである。
すなわち、埋込部も変形可能であるので、基礎内の配筋位置の誤差を吸収でき、簡易な施工が可能となる。また、中間部と一体に形成できるので、耐引張り力を高めることができるとともに、ワイヤロープを適宜撚ったり結合したりすればよく、製造も容易である。
【0017】
態様の他の一つは、上記固定部に、柱材に対して固定するためのボルトやドリフトピン等の結合部材を挿通する固定孔が形成されたものである。固定部もワイヤロープで形成されるとよい。
すなわち、固定部は固定孔に対して結合部材を挿通することで柱材に対して固定するので、固定部は柱材に沿った状態、または柱材の内部に挿入された状態で取付けることができる。このため、地震の発生によりホールダウンアンカーにテンションがかかっても、柱材には真っ直ぐの力がかかることになり、純粋に引き寄せ力が作用する。柱材が傾くような力はかからず、良好な効果を期待できる。また、ホールダウン金物を不要にすることができる。
【0018】
さらに、固定部もワイヤロープで形成すれば、中間部との一体性を高め、耐引引抜力の高い状態が得られる。しかも、ワイヤロープの撚りや結合によって容易に製造できる。
【0019】
態様の他の一つは、上記固定部がナット状の雌ねじやボルト状の雄ねじなどのねじで形成されたものである。
すなわち、固定部を柱材に固定するのに際して、既存のホールダウン金物を使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、この発明によれば、少なくとも中間部が変形可能であるので、基礎の施工に際してホールダウンアンカーは正確な位置に配置されなければならないわけではなく、厳格な作業が行われなくともそれによる影響をなくして、後の作業を円滑に行わせることができる。このため、作業は簡単である。また、別途に部材を必要とすることもない点からも作業は容易であるといえる。
【0021】
しかも、基礎に埋め込まれる埋込部には、鉄筋と一体化する挿通孔部を有しているので、単に基礎と柱材を直結しただけではなく、基礎を構成する重要な要素である鉄筋と一体化しているので、強度をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、基礎11とその上に配される柱脚部12を示す斜視図である。この図に示すように、柱材13は、ホールダウンアンカー14によって基礎11側に引き寄せられるように建て込まれている。
【0023】
図2がホールダウンアンカー14の構造を示す構造説明図で、図3が図1の基礎11と柱脚部12の構造を示す断面図である。図2中、(a)は正面図、(b)はA−A断面図である。
【0024】
ホールダウンアンカー14は、基礎11内に埋め込まれる埋込部21と、柱材13に固定される固定部22と、これらの間に位置する中間部23とを有し、これら各部21,22,23が1本のワイヤロープ24によって形成されている。つまり、ワイヤロープ24で細長いループ状にするとともに、その長さ方向における中間位置に、ワイヤクリップなど適宜の部材からなるクリップ部材25を止めて複数の環状部分26…をつくることによって形成される。ワイヤロープ24は、所定の強度を有するように、適宜の太さ、たとえば5〜10mm程度、好ましくは8mm程度に形成される。また、環状部分26…は撚って形成されるものであるもよい。
【0025】
上記埋込部21には、基礎11内に配設される横筋15を通す3個の挿通孔部27が形成され、固定部22には、柱材13に対して固定するためのボルト16を挿通する3個の固定孔28が形成されている。挿通孔部27も固定孔28も、上記環状部分26の内側に金具31,32を取付けて構成される。
【0026】
挿通孔部27を形成する金具31は、外周部に断面半円形状の嵌合溝31aが形成され、その幅方向における中間位置の内側に板状部31bが設けられた構造で、該板状部31bの中心部に、横筋15を挿通可能にする大きさの上記挿通孔部27が形成されている。
【0027】
上記固定孔28を形成する金具32は、外周部に断面半円形状の嵌合溝32aが形成され、その幅方向における一側面に板状部32bが設けられた構造で、該板状部32bの中心にボルト16を挿通可能にする大きさの上記固定孔28が形成されている。
【0028】
このように構成されたホールダウンアンカー14は、埋込部21、固定部22、中間部23が可撓性を有し、変形可能な状態である。
【0029】
ホールダウンアンカー14の使用は次のように行われる。
まず基礎11の施工に当たって、配筋を行う際に、ホールダウンアンカー14の埋込部21の各挿通孔部27に横筋15を挿通して、ホールダウンアンカー14を配置すべき位置の横筋15に取付ける。このとき、埋込部21はワイヤロープで形成されているので変形可能であり、上下に配設された横筋15の位置ずれ等に対応できる。続いて、図示はしないが、型枠を組むとともにホールダウンアンカー14の位置決めをする。位置決めは、アンカーボルトを固定する一般的な方法で行われる。この状態でコンクリートの打設が行われ、基礎11が形成される。
【0030】
基礎11が形成されると、図4に示したような状態となり、基礎天端11aから上に向けてホールダウンアンカー14の中間部23と固定部22が突出した状態となる。
【0031】
続いて、図3に示したように、土台17に形成された貫通孔17aにホールダウンアンカー14の固定部22と中間部23を挿通して土台17を載置してから柱材13を建て込む。建て込んだ柱材13に対して、ホールダウンアンカー14の固定部22をボルト16で固定する。このとき、固定部22に設けた金具32の板状部32bが柱材13側に位置するようにしておき、座金18を介して固定する。座金18の厚みは、クリップ部材25の突出長さと同一かそれより厚く設定し、固定部22が柱材13の側面に沿うように固定できるようにしている。なお、上記ボルト16を挿通する挿通孔13aは現場でも加工され得る。
【0032】
このような固定を行うとき、中間部23も固定部22も、前後左右に変形可能であるので、ホールダウンアンカー14の位置、土台17の貫通孔17aの位置、柱材13の位置にずれがあっても、そのずれを吸収して取り付けが行える。
【0033】
上述のように、中間部23が変形可能であるので、基礎11の施工に際してホールダウンアンカー14を正確な位置に配置しなければならないわけではなく、厳格な作業が行われなくともそれによる影響をなくして、後の作業を円滑に行わせることができる。たとえばホールダウンアンカー14を取付けるべき位置に縦筋(図示せず)が存在した場合には、そのわきに取付けておいても、後の作業が円滑に行える。このため、作業は簡単である。
【0034】
しかも、基礎11に埋め込まれる埋込部21には、横筋15と一体化する挿通孔部27を有しているので、単に基礎11と柱材13を直結しただけではなく、基礎11を構成する重要な要素である横筋15と一体化しているので、強度をより一層高めることができる。
【0035】
また、埋込部21もワイヤロープ24で形成されており、可撓性を有し変形可能であるので、基礎11内の配筋位置の誤差を吸収できる。このため、簡易な施工が可能となる。
【0036】
さらに、埋込部21と中間部23に加えて固定部22もワイヤロープで一体に形成されているので、一体性を高め、耐引張り力のあるホールダウンアンカー14を得ることができるとともに、1本のワイヤロープ24をクリップ部材25で止めて製造するので、生産も容易である。
【0037】
しかも、固定部22は柱材13に沿った状態で取付けられるので、地震の発生によりホールダウンアンカー14にテンションがかかっても、柱材13には真っ直ぐの力がかかることになり、純粋に引き寄せ力が作用し、良好な効果を期待できる。また、ホールダウン金物は不要である。
【0038】
以下、その他の形態について説明する。説明に当たって、上記構成と同一または同等の部位については、同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0039】
図5は、ホールダウンアンカー14を柱材13の下端部に対してその中心に挿入した例である。この場合、固定部22の挿通孔部27を形成する金具32の板状部32bは、幅方向の中心に位置させている。図中13bは、柱材13の下面から形成された挿入孔である。
【0040】
このように柱脚部12を構成した場合には、筋かい(図示せず)を設ける場合でも、その存在に配慮する必要なく、容易に固定できる利点がある。
【0041】
図6は、固定部22がボルト状の雄ねじ29で形成されたホールダウンアンカー14の例である。
すなわち、埋込部21と中間部23は1本のワイヤロープ24で形成され、上記中間部23の上側に、ワイヤロープ24の両端部を束ねるようにボルト状の雄ねじ29が形成されている。
【0042】
このように構成されたホールダウンアンカー14では、図7に示したように、既存のホールダウン金物19を用いて柱材13の固定が行われる。雄ねじ29に代えて、雌ねじで構成することもできる。
【0043】
この発明の構成と、上記一形態の構成との対応において、
この発明の鉄筋は、上記一形態における横筋15に対応し、
同様に、
結合部材は、ボルト16に対応し、
ねじは、雄ねじ29に対応するも、
この発明は、上記一形態の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することができる。
たとえば、挿通孔部27と固定孔28の個数は、適宜設定できる。
【0044】
また、挿通孔部27と固定孔28の各孔は、金具31,32なしで形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】柱脚部の構造を示す斜視図。
【図2】ホールダウンアンカーの構造説明図。
【図3】柱脚部の断面図。
【図4】基礎に取付けられたホールダウンアンカーの斜視図。
【図5】他の例に係るホールダウンアンカーとそれを用いた柱脚部の断面図。
【図6】他の例に係るホールダウンアンカーの正面図。
【図7】図6のホールダウンアンカーを用いた柱脚部の斜視図。
【図8】従来技術の斜視図。
【符号の説明】
【0046】
11…基礎
13…柱材
14…ホールダウンアンカー
15…横筋
16…ボルト
21…埋込部
22…固定部
23…中間部
24…ワイヤロープ
27…挿通孔部
28…固定孔
29…雄ねじ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎内に埋め込まれる埋込部と、該埋込部の上側に形成されて柱材に固定される固定部とを有するホールダウンアンカーであって、
上記埋込部には、鉄筋を通す挿通孔部が形成されるとともに、
少なくとも上記埋込部と固定部との間の中間部が、ワイヤロープで形成された
ホールダウンアンカー。
【請求項2】
前記埋込部がワイヤロープで形成された
請求項1に記載のホールダウンアンカー。
【請求項3】
前記固定部に、柱材に対して固定するための結合部材を挿通する固定孔が形成された
請求項1または請求項2に記載のホールダウンアンカー。
【請求項4】
前記固定部がねじで形成された
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載のホールダウンアンカー。
【請求項1】
基礎内に埋め込まれる埋込部と、該埋込部の上側に形成されて柱材に固定される固定部とを有するホールダウンアンカーであって、
上記埋込部には、鉄筋を通す挿通孔部が形成されるとともに、
少なくとも上記埋込部と固定部との間の中間部が、ワイヤロープで形成された
ホールダウンアンカー。
【請求項2】
前記埋込部がワイヤロープで形成された
請求項1に記載のホールダウンアンカー。
【請求項3】
前記固定部に、柱材に対して固定するための結合部材を挿通する固定孔が形成された
請求項1または請求項2に記載のホールダウンアンカー。
【請求項4】
前記固定部がねじで形成された
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載のホールダウンアンカー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2007−170049(P2007−170049A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369297(P2005−369297)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(591000757)株式会社アクト (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(591000757)株式会社アクト (20)
【Fターム(参考)】
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