説明

ボンネットの開放ロック装置

【課題】ボンネットが開放されると、ボンネットに連結されているスタンドロッドがガイド孔によって起立操作されてボンネットを開き姿勢に突っ張り支持するボンネットの開放ロック装置において、スタンドロッドに抜け止め部を設けながら、ボンネットをスタンドロッドが連結されたままの状態で組み付ける組付け方法を採用できるようにする。
【解決手段】スタンドロッド42の遊端側に、ボンネット14の開き揺動に伴うスタンドロッド42のガイド孔45からの抜け外れを防止するように支持体41に当接作用する抜け止め部52を設けてある。スタンドロッド42をガイド孔45に組み込む通路56を形成する切り欠き55を、支持体41の横外側に向けて開口させるとともにガイド孔45に連通させた状態で支持体41に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に揺動開閉自在なボンネットに揺動自在に連結したスタンドロッドと、前記スタンドロッドがこのスタンドロッドの長手方向に摺動自在に挿通したガイド孔を有した支持体とを備え、前記ボンネットが開き揺動操作されるに伴い、前記ガイド孔が前記スタンドロッドを起立操作して、かつ前記スタンドロッドの遊端側に位置する係止部が前記ガイド孔の下端部に係合して受け止め支持されて、前記スタンドロッドが起立姿勢に支持されて前記ボンネットを開き姿勢に突っ張り支持し、前記ボンネットが閉じ揺動操作されるに伴い、前記ガイド孔が前記スタンドロッドを倒伏操作するように構成したボンネットの開放ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したボンネットの開放ロック装置は、ボンネットが開き操作されることにより、ガイド孔のスタンドロッドに対する起立操作と、ガイド孔の下端部のスタンドロッドに対する受け止め作用とにより、ガイドロッドが起立姿勢になるとともに起立姿勢に支持されてボンネットを開き姿勢に突っ張り支持するものである。
【0003】
この種のボンネットの開放ロック装置として、従来、たとえば特許文献1に示されたものがあった。特許文献1に示されたものでは、スタンドロッドとしての突っ張り材、支持体としてのポストを備えている。ポストは、ガイド孔としての長孔を備えている。突っ張り材は、抜け止め部としてのスナップピンを備えており、このスナップピンは、ボンネットの開放に伴う突っ張り材の長孔からの抜け出しを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−48264号公報(段落〔0032〕〜〔0035〕、図2,3,13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した開放ロック装置が備えられるボンネットにあっては、車体側に組み付ける前のボンネットにスタンドロッドを連結しておき、ボンネットをスタンドロッドが連結されている状態で車体側に組み付け、スタンドロッドをボンネットに連結されたままの状態で車体側の支持体のガイド孔に挿入するという組み付け方法を採用されることがある。上記した従来の技術に基づいて得たボンネットの開放ロック装置を採用しながら、上記したボンネットの組み付け方法を採用しようとすると、スタンドロッドに抜け止め部を設けるための面で不利になりがちであった。
【0006】
上記した従来の技術に基づいて得たボンネットの開放ロック装置の場合、スタンドロッドがボンネットに連結され、かつスタンドロッドに抜け止め部が設けられた状態にあると、抜け止め部が障害となってスタンドロッドをガイド孔に挿入することができなかった。
したがって、上記したボンネットの組み付け方法を採用するには、スタンドロッドの抜け止め部を、ガイド孔に挿入した後のスタンドロッドに取り付ける後付け形に構成する必要があり、スタンドロッドと抜け止め部とを別々に作製せねばならなくて、あるいは、スタンドロッドをガイド孔に組み付けた後に抜け止め部を装着する手間を掛けねばならなくて、スタンドロッドに抜け止め部を設けるための製作費や組み付け手間の面から経費が大になりがちであった。
【0007】
本発明の目的は、スタンドロッドに抜け止め部を設けるものでありながら、経済面の有利化を図りながら上記したボンネットの組み付け方法を採用することできるボンネットの開放ロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明は、上下に揺動開閉自在なボンネットに揺動自在に連結したスタンドロッドと、前記スタンドロッドがこのスタンドロッドの長手方向に摺動自在に挿通したガイド孔を有した支持体とを備え、前記ボンネットが開き揺動操作されるに伴い、前記ガイド孔が前記スタンドロッドを起立操作して、かつ前記スタンドロッドの遊端側に位置する係止部が前記ガイド孔の下端部に係合して受け止め支持されて、前記スタンドロッドが起立姿勢に支持されて前記ボンネットを開き姿勢に突っ張り支持し、前記ボンネットが閉じ揺動操作されるに伴い、前記ガイド孔が前記スタンドロッドを倒伏操作するように構成したボンネットの開放ロック装置において、
前記スタンドロッドの遊端側に、前記ボンネットの開き揺動に伴う前記スタンドロッドの前記ガイド孔からの抜け外れを防止するように前記支持体に当接作用する抜け止め部を設け、
前記スタンドロッドを前記ガイド孔に組み込む通路を形成する切り欠きを、前記支持体の横外側に向けて開口させるとともに前記ガイド孔に連通させた状態で前記支持体に設けてある。
【0009】
本第1発明の構成によると、車体側に組み付ける前のボンネットにスタンドロッドを連結しておいて、ボンネットをスタンドロッドが連結されている状態で車体側に組み付けて、スタンドロッドがボンネットには連結されていながらガイド孔にはまだ挿入していない状態になっても、かつスタンドロッドが抜け止め部を既に設けてある状態になっていても、支持体に形成してある通路を利用することにより、スタンドロッドの遊端側であって抜け止め部よりもスタンドロッドの基端側に位置する部位を通路からガイド孔に嵌め込んで、スタンドロッドの遊端側がガイド孔を挿通し、かつスタンドロッドの抜け止め部がガイド孔に対してスタンドロッドの基端側とは反対側に位置した所定の組み付け状態にスタンドロッドを組み付けることができる。
【0010】
そして、ボンネットが勢いよく開き操作された場合など、ボンネットの慣性によってスタンドロッドの係止部がガイド孔の下端部に係合しにくくてスタンドロッドがガイド孔から抜けそうになっても、抜け止め部が支持体に当接して抜け出しを防止する。
【0011】
従って、車体側に組み付ける前のボンネットにスタンドロッドを連結しておき、ボンネットをスタンドロッドが連結されている状態で車体側に組み付け、スタンドロッドをボンネットに連結されたままの状態でガイド孔に挿入するという組み付け方法を採用してボンネットの組み付けを行なうことができる。しかも、スタンドロッドの抜け止め部を後付け形に構成する必要がなく、抜け止め部をスタンドロッドに一体成形して安価に製作できるとか、スタンドロッドの組み付け後に抜け止め部を装着する手間を不要にできるなど、安価に済ませることができる。
【0012】
本第2発明では、前記切り欠きの下端を前記ガイド孔の下端よりも高い配置高さに配置してある。
【0013】
スタンドロッドは、ガイド孔の下端側に沿って摺動するから、本第2発明の構成によると、スタンドロッドがガイド孔の下端部から浮き上がって切り欠きに入り込むことを回避しやすい。
【0014】
従って、スタンドロッドをボンネットに連結されたままで、かつ抜け止め部を設けたままでガイド孔に組み込むことができるものでありながら、スタンドロッドが切り欠きで成る組み込み用の通路からも抜け外れにくく、ボンネットの開放ロックが精度よく行なわれるように信頼性の高い開放ロック装置を得ることができる。
【0015】
本第3発明では、前記スタンドロッドの遊端部に、前記係止部及び前記抜け止め部を形成する鉤形の折り曲げ部を設けてある。
【0016】
本第3発明の構成によると、スタンドロッドの遊端部に折り曲げ部を設けることによってスタンドロッドに係止部及び抜け止め部を備えさせることができる。
【0017】
従って、スタンドロッドの遊端部を折り曲げ加工するだけで製作容易に係止部および抜け止め部を設け、この面からも安価に済ませることができる。
【0018】
本第4発明では、前記ボンネットが開き姿勢にある状態において、前記折り曲げ部の鉛直方向での大きさが前記ガイド孔の鉛直方向での大きさよりも大になるように、前記折り曲げ部を構成してある。
【0019】
本第4発明の構成によると、勢いよく開き操作されたボンネットの慣性によってスタンドロッドがガイド孔から抜けそうになっても、折り曲げ部の鉛直方向での大きさによって抜け止め部を支持体に確実に当接させて抜け止め部による抜け止めを精度よく行わせることができる。
【0020】
従って、スタンドロッドの端部を折り曲げ加工するだけで容易に抜け止め部を設けることができるものでありながら、スタンドロッドのガイド孔からの抜け止めが確実に行なわれるように信頼性の高いボンネット開放ロック装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】トラクタの全体を示す側面図である。
【図2】原動部の内部を示す側面図である。
【図3】開放ロック装置のロック状態を示す側面図である。
【図4】閉じロック装置を示す正面図である。
【図5】開放ロック装置のロック状態を示す正面図である。
【図6】(a)は、係止部の作用状態を示す斜視図、(b)は、係止部の作用状態を示す側面図である。
【図7】(a)は、係止部の作用解除状態を示す斜視図、(b)は、係止部の作用解除状態を示す側面図である。
【図8】(a)は、スタンドロッドをガイド孔に組み付ける要領を示す斜視図、(b)は、スタンドロッドをガイド孔に組み付ける要領を示す説明図である。
【図9】(a)は、支持体の上部を示す正面図、(b)は、スタンドロッドの遊端部を示す側面図、(c)は、抜け止め部の作用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のボンネットの開放ロック装置が装備されたトラクタの全体を示す側面図である。この図に示すように、このトラクタは、左右一対の操向操作および駆動自在な前車輪1,1と左右一対の駆動自在な後車輪2,2とを有した自走車を備え、この自走車の車体フレーム3の後部に上下揺動操作自在に連結された左右一対のリフトアーム4a,4aが装備されたリンク機構4を備え、車体フレーム3の後部から車体上方向きに立設された転倒保護枠5を備えて構成してある。
【0023】
このトラクタは、車体フレーム3の後部にリンク機構4を介してロータリ耕耘装置(図示せず)が連結されることによって乗用型耕耘機を構成し、ロータリ耕耘装置に替えて各種の作業装置が連結されることによって各種の乗用型作業機を構成する。
【0024】
自走車は、車体フレーム3の後部に設けた運転座席6a、運転座席6aの前方に位置するステアリングホィール6bが装備された乗用型の運転部6を備えており、この運転部6に搭乗して運転するように乗用型になっている。
【0025】
自走車は、車体フレーム3の前部に設けた原動部10を備えており、この原動部10に備えられたエンジン11が出力する駆動力を車体フレーム3を構成している伝動ケース3a及びミッションケース3bを介して左右の後車軸に伝達して左右の後車輪2,2を駆動して、エンジン11の駆動力をミッションケース3bから伝動軸8を介して左右の前車軸に伝達して左右の前車輪1,1を駆動して走行する。自走車は、ミッションケース3bの後部に設けた動力取り出し軸9を備えており、エンジン11の駆動力を動力取り出し軸9から連結されたロータリ耕耘装置などの作業装置に伝達する。
【0026】
リンク機構4は、左右一対のリフトアーム4a,4aを備える他、ミッションケース3bの下部に上下揺動自在に連結された左右一対のロワーリンク4b,4bと、左右のリフトアーム4a,4aを左右のロワーリンク4b,4bに各別に連結する左右一対のリフトロッド4c,4cとを備えて構成してある。
【0027】
リンク機構4は、左右一対のロワーリンク4b,4bの遊端側に作業装置を連結し、左右のリフトアーム4a,4aによって左右のロワーリンク4b,4bを上下に揺動操作することにより、連結された作業装置を昇降操作する。
【0028】
図2は、原動部10の内部を示す側面図である。この図及び図1に示すように、原動部10は、エンジン11を備える他、エンジン11の前方に配置されたエンジン冷却用のラジェエータ12と、エンジン11の前部に回転駆動自在に取り付けられた冷却ファン13と、エンジン11及びラジエータ12などの上方を覆うボンネット14と、エンジン11およびラジエータ12などの両横側に位置する横ボンネット15と、ラジエータ12の前方に前記ボンネット14の前端部の下方に位置させて設けたフロントグリル16とを備えている。
【0029】
図2に示すように、エンジン11及びラジエータ12の上方を覆うボンネット14は、このボンネット14の後端側の内部に固定された連結ブラケット20を備えている。この連結ブラケット20は、エンジン11の後側に配置して車体フレーム3に固定された車体前後方向視で門形の支持フレーム21に支持部材22を介して取り付けた支軸23に回動自在に支持されており、ボンネット14は、支軸23の車体横向き軸芯のまわりに上下に揺動開閉できるように支持されている。
【0030】
つまり、ボンネット14は、図1に二点鎖線で示す如く支軸23の車体横向き軸芯まわりに上昇揺動操作されることにより、フロントグリル16および横ボンネット15から上方に離間して上昇開き姿勢となり、原動部10のボンネット内を開く。ボンネット14は、図1に実線で示す如く、かつ図2に示す如く支軸23の車体横向き軸芯まわりに下降揺動操作されることにより、フロントグリル16および横ボンネット15の上端部に重なって下降閉じ姿勢となり、原動部10のボンネット内を閉じる。
【0031】
図2に示すように、ラジエータ12の前側に、車体フレーム3にバッテリー搭載台24を介して固定された車体上下向きの支持体25を設け、この支持体25の上端側とボンネット14の前端部とにわたって閉じロック装置30設けてある。この閉じロック装置30は、ボンネット14を下降閉じ姿勢に固定するものである。この閉じロック装置30について次に説明する。
【0032】
図4は、閉じロック装置30を示す正面図である。この図および図2に示すように、閉じロック装置30は、前記支持体25の上端部に固定された車体前後向きの支持ピン31と、ボンネット14の前端側の内部に横架された平板製の支持杆32およびこの支持杆32に連結されたステー33に固定されたガイド部材34と、このガイド部材34に支持されたフック体35と、ガイド部材34の上端部から延出した支持アーム36およびボンネット14の前端部に回転自在に支持された操作軸37とを備えて構成してある。
【0033】
フック体35は、枢支ピン35aを介してガイド部材34に枢支されており、枢支ピン35aのまわりに揺動操作されることにより、ガイド部材34に設けてあるピン溝の開口側を閉じたロック姿勢と、ピン溝を開いたロック解除姿勢とに切り換わる。
【0034】
操作軸37は、操作軸37の下端部から車体下方及び車体前方向きに延出した操作アーム38と、操作軸37の上端側の端部にボンネット14の外側に位置させて一体回転自在に取り付けた解除操作具39とを備えている。操作アーム38の延出側の端部は、フック体35の上端部に設けた切り欠きに係入している。操作アーム38の端部と支持杆32とにわたってロックバネ35bが連結されており、このロックバネ35bは、操作アーム38を揺動付勢することによってフック体35をロック姿勢に揺動付勢している。
【0035】
閉じロック装置30は、ボンネット14が下降閉じ姿勢に操作されるに伴ってボンネット14を下降閉じ姿勢に自動的にロックする。
【0036】
すなわち、ボンネット14が下降するに伴い、ガイド部材34が支持体25の前側に下降し、支持ピン31がロック姿勢にあるフック体35の先端の傾斜部に押圧作用してフック体35をロックバネ35bに抗して揺動操作しながらガイド部材34のピン溝に入っていく。ボンネット14が下降閉じ姿勢になって支持ピン31がピン溝の奥に入り込むと、フック体35がロックバネ35bによる揺動付勢によってロック姿勢に戻り、ガイド部材34をフック体35によって支持ピン31に固定してボンネット14を下降閉じ姿勢にロックする。
【0037】
閉じロック装置30は、解除操作具39が操作軸37の軸芯まわりにロック解除側に回転操作されることにより、ボンネット14の閉じロックを解除する。
【0038】
すなわち、解除操作具39が解除側に回転操作されると、操作軸37が回転操作されて操作アーム36を操作軸37の軸芯まわりに揺動操作して操作アーム36がフック体35をロックバネ35bに抗して揺動操作し、フック体35がロック解除姿勢になってガイド部材34の支持ピン31に対する固定を解除する。
【0039】
図2に示すように、エンジン11の上部とボンネット14の後端側とにわたって開放ロック装置40を設けてある。この開放ロック装置40は、ボンネット14を上昇開き姿勢に固定するものである。開放ロック装置40について次に説明する。
【0040】
図5は、開放ロック装置40の正面視での構造を示している。この図及び図2に示すように、開放ロック装置40は、エンジン11の上部に固定された車体上下向きの支持体41と、ボンネット14の後端側の内部に連結されたスタンドロッド42とを備えて構成してある。
【0041】
支持体41は、エンジン用のエヤクリーナ43を支持するようにエンジン11の上部に装着されたステー44に連結されていることにより、エンジン11の上部に固定されている。
【0042】
図5及び図9に示すように、支持体41は、支持体41の上端側に車体上下方向に長い長孔形に形成して設けたガイド孔45と、このガイド孔45の直下にガイド孔45とすこし離間させて設けた円形の接当回避孔46と備えている。
【0043】
スタンドロッド42は、ボンネット14の後端側の内部に取り付けたブラケット47に、スタンドロッド42の基端側に設けた連結軸42aによって連結されている。連結軸42aは、ブラケット47に回動自在に連結されており、スタンドロッド42は、連結軸42aの車体横向き軸芯まわりに揺動自在にボンネット14に連結している。連結軸42aは、スタンドロッド42の基端部に備えさせたスタンドロッド42の折り曲げ部によって構成してある。スタンドロッド42は、連結軸42aに装着されたスプリング48によってボンネット14に対して下降側に揺動付勢されている。
【0044】
スタンドロッド42の遊端側は、支持体41のガイド孔45にスタンドロッド42の長手方向に摺動自在に挿通しており、スタンドロッド42は、ボンネット14が上昇開き姿勢に操作された場合、ガイド孔45によって起立操作されて起立姿勢になり、ボンネット14が下降閉じ姿勢にされた場合、ガイド孔45によって倒伏操作されて倒伏姿勢になる。
【0045】
すなわち、図3は、スタンドロッド42の起立姿勢を示している。この図および図5に示すように、ボンネット14が上昇開き姿勢に操作されると、ボンネット14がスタンドロッド42の基端側を引き上げ操作し、ガイド孔45がスタンドロッド42をボンネット14のスタンドロッド連結点としてのブラケット47が位置する側にブラケット47の移動量に対応した量を摺動させた状態で支持し、スタンドロッド42は、ガイド孔45とこれに対して上昇したブラケット47とに支持されて起立姿勢になる。
【0046】
図2は、スタンドロッド42の倒伏姿勢を示している。この図に示すうように、ボンネット14が下降閉じ姿勢に操作されると、ボンネット14がスタンドロッド42の基端側を押し下げ操作し、ガイド孔45がスタンドロッド42をボンネット14のブラケット47が位置する側とは反対側にブラケット47の移動量に対応した量を摺動させた状態で支持し、スタンドロッド42は、ガイド孔45とこれに対して下降したブラケット47とに支持されて倒伏姿勢になる。
【0047】
図9(b)はスタンドロッド42の遊端部を示す側面図である。この図に示すように、スタンドロッド42は、スタンドロッド42の遊端側に設けた係止部51および抜け止め部52を備えている。係止部51は、車体下方向きに開口した係合凹部53を備えている。
【0048】
図6(a)は、スタンドロッド42の係止部51の作用状態を示す斜視図である。図6(b)は、スタンドロッド42の係止部51の作用状態を示す側面図である。こられの図に示すように、ボンネット14が上昇開き姿勢になって、スタンドロッド42が起立姿勢になった場合、支持体41のガイド孔45の下端部45aの周囲に位置する壁部分41aが係合凹部53に係入することにより、係止部51がガイド孔45の下端部45aに係合する。このとき、支持体41の接当回避孔46は、抜け止め部52の先端部52aを支持体41の側面41bに当接しないように入り込ませ、係止部51のガイド孔45の下端部45aに対する係合を可能にする。ガイド孔45の下端部45aに係合した係止部51は、ガイド孔45の下端部45aによって受け止め支持されてスタンドロッド42をボンネット14の荷重に抗して起立姿勢に保持する。
【0049】
図7(a)は、スタンドロッド42の係止部51の作用解除状態を示す斜視図である。図7(b)は、スタンドロッド42の係止部51の作用解除状態を示す側面図である。これらの図に示すように、スタンドロッド42の係止部51は、スタンドロッド42の先端部が手で少し持ち上げ操作されることにより、ガイド孔45の下端部45aから離脱してスタンドロッド42の倒伏姿勢への変化を可能にする。
【0050】
図9(c)は、スタンドロッド42の抜け止め部52の作用状態を示す側面図である。この図に示すように、スタンドロッド42の抜け止め部52は、ボンネット14の開き操作に伴うスタンドロッド42の起立にかかわらず係止部51がガイド孔45の下端部45aにうまく係合しなかった場合、支持体41の側面41bに当接作用してスタンドロッド42がガイド孔45から抜け出ることを防止する。
【0051】
図3は、開放ロック装置40のロック状態を示す側面図である。図5は、開放ロック装置40のロック状態を示す正面図である。これらの図に示すように、開放ロック装置40は、ボンネット14が上昇開き姿勢に操作されると、ボンネット14によるスタンドロッド42の引き上げ操作と、ガイド孔45によるスタンドロッド42の起立操作とによってスタンドロッドが起立姿勢に切り換わり、スタンドロッド42が起立姿勢になると、スタンドロッド42の係止部51がガイド孔45の下端部45aに係合して受け止め支持されることによってスタンドロッド42を起立姿勢に保持させ、起立姿勢に保持されたスタンドロッド42によってボンネット14を上昇開き姿勢に突っ張り支持させる。
【0052】
ボンネット14を開き操作する場合、ボンネット14が勢いよく開き操作されてボンネット14の慣性やスタンドロッド42の歪みなどに起因して抜け止め部52の先端部52aが接当回避孔46にうまく入り込まず、スタンドロッド42の係止部51がガイド孔45の下端部45aにうまく係合しない事態が発生しても、スタンドロッド42の抜け止め部52が支持体41に当接して抜け止め作用することにより、スタンドロッド42がガイド孔45から抜け出ることを防止する。
【0053】
図2に示すように、開放ロック装置40は、ボンネット14を上昇開き姿勢から閉じるに当たり、スタンドロッド42に係止部51がガイド孔45の下端部45aから離脱操作されてボンネット14が下降操作されることにより、ボンネット14によるスタンドロッド42の押し下げ操作と、ガイド孔45によるスタンドロッド42の倒伏操作とにより、スタンドロッド42を倒伏姿勢に切り換えてボンネット14の下降閉じ姿勢への切り換わりを可能にする。
【0054】
図9(a)は、支持体41の上部を示す斜視図である。この図および図8(a)に示すように、支持体41は、支持体41の上端部にガイド孔45の横側に配置して設けた切り欠き55を備えている。この切り欠き55は、支持体41の横外側に向けて開口しているとともにガイド孔45の上端部に連通しており、スタンドロッド42を支持体41の横側からガイド孔45に組み込む通路56を形成している。
【0055】
つまり、スタンドロッド42に抜け止め部52が備えられているにもかかわらず、支持フレーム21に組み付ける前のボンネット14にスタンドロッド42を連結しておき、ボンネット14をスタンドロッド42が連結されている状態で支持フレーム21に組み付ける組み付け方法を採用することが可能になっている。
【0056】
すなわち、スタンドロッド42が連結された状態にあるボンネット14を支持フレーム21に組み付けると、ボンネット14を上昇開き姿勢にしておき、スタンドロッド42の遊端側を支持体41の横外側から通路56を通してガイド孔45に組み付ける。
【0057】
図9(b)は、スタンドロッド42の遊端部を示す側面図である。この図に示すように、スタンドロッド42の遊端部に、下向きに開口する凹入部を有した鉤形の折り曲げ部50を設け、この折り曲げ部50によってスタンドロッド42の係止部51および抜け止め部52を形成してある。折り曲げ部50の凹入部が、係止部51の係合凹部53になっている。
【0058】
すなわち、図9(a),(b),(c)に示すように、ボンネット14が上昇開き姿勢となってスタンドロッド42が起立姿勢となった状態における折り曲げ部50の鉛直方向での大きさをH1とする。ガイド孔45の鉛直方向での実質の大きさをH2とすると、折り曲げ部50の鉛直方向での大きさH1をガイド孔45の実質の鉛直方向での大きさH2よりも大に設定してある。これにより、折り曲げ部50が、抜け止め部51となり、支持体41の側面41bに当接してスタンドロッド42の抜け止めを行なう。
【0059】
折り曲げ部50の鉛直方向での大きさH1を、ガイド孔45の実際の鉛直方向での大きさHよりも大に設定せずに、ガイド孔45の実質の鉛直方向での大きさH2よりも大に設定する理由は、次のとおりである。
【0060】
図9(a)に示すように、ガイド孔45は、スタンドロッド42をガイド孔45の底から浮かせた状態で摺動自在に支持する支持点を備えるように底孔部Bを備えて構成してある。底孔部Bは、スタンドロッド42の半径よりも小さい半径を備えて構成してあり、折り曲げ部50の挿通が不可能な部分となっている。したがって、ガイド孔45のうちの底孔部Bを除く部分の鉛直方向での大きさであって、ガイド孔45の実際の鉛直方向での大きさHよりも底孔部Bによってやや小となる大きさをガイド孔45の実質の鉛直方向での大きさH2とし、この大きさH2よりも折り曲げ部50(抜け止め部52)の鉛直方向での大きさH1の方を大に設定する。
【0061】
図9(b)に示すように、ボンネット14が上昇開き姿勢となってスタンドロッド42が起立姿勢となった状態におけるスタンドロッド42の折り曲げ部50が始まる屈曲箇所Kでの鉛直方向での大きさH3は、スタンドロッド42の直線部分の鉛直方向での大きさH4よりも小になる。図9(a)に示すように、通路56の鉛直方向での幅Wを、スタンドロッド42の前記屈曲箇所Kでの鉛直方向での大きさH3よりも大であり、スタンドロッド42の直線部分の鉛直方向での大きさH4よりも小である大きさの幅に設定してある。
【0062】
つまり、図8(a),(b)に示すように、ボンネット14の上昇開き姿勢において、スタンドロッド42を通路56からガイド孔45に組み付ける場合、スタンドロッド42の屈曲箇所Kでは、通路56に通すことができても、スタンドロッド42の直線部分では、通路56に通すことができない。
【0063】
この構成を採用すると、ボンネット14の開閉を行なう場合、スタンドロッド42の直線部分がガイド孔45に位置することにより、ガイドロッド42がガイド孔45から通路56に入り込むことを防止でき、スタンドロッド42のガイド孔45からの抜け外れを防止できる。
【0064】
尚、図9(b)に示すスタンドロッド42の折り曲げ部50の大きさH5は、折り曲げ部50のスタンドロッド42の直線部分の軸芯に沿った方向視での大きさである。この大きさH5は、折り曲げ部50の前記大きさH1よりも小となっている。そして、スタンドロッド42の直線部分が水平姿勢になる状態でスタンドロッド42をガイド孔42からスタンドロッド42の基端側に抜き出そうとしても、折り曲げ部50の先端部の両横側部分がガイド孔42から底孔部Bの横側にはみ出た箇所で支持体41の側面41bに当接し、スタンドロッド42がガイド孔42から抜け出ない。
【0065】
図9(a)に示すように、ガイド孔45のうちのスタンドロッド42が実際に挿通する部分での下端をガイド孔45の実質の下端Sとし、ガイド孔45の実質の下端Sよりも通路56の下端の方が高い箇所に位置するように、切り欠き55の下端55aをガイド孔45の実質の下端Sよりも高い配置高さに配置してある。
【0066】
つまり、スタンドロッド42がスプリング48による下降付勢のためにガイド孔45の下端側から上側に浮き上がりにくいことにより、かつ、スタンドロッド42がガイド孔45の下端側から浮き上がっても、ガイド孔45の実質の下端Sと通路56の下端との配置高さの差によって通路56に入り込みにくいことにより、スタンドロッド42がガイド孔45から横側に抜け外れることを回避しやすい。
【0067】
〔別実施形態〕
スタンドロッド42の遊端部に折り曲げ部50を設けて、この折り曲げ部50によって抜け止め部52を形成するに替え、スタンドロッド42の遊端部に加圧加工を施して突起を突出させて、この突起によって抜け止め部を形成する構成、あるいは、スタンドロッド42の遊端部にピンを貫設して、このピンを抜け止め部とする構成を採用して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によるボンネットの開放ロック装置は、トラクタの他、田植機、運搬車など各種の車両にも利用できる。また、原動部に備えられるボンネットの他、トランク部に備えられるボンネットにも利用できる。
【符号の説明】
【0069】
14 ボンネット
41 支持体
42 スタンドロッド
45 ガイド孔
45a ガイド孔の下端部
50 折り曲げ部
51 係止部
52 抜け止め部
55 切り欠き
55a 切り欠きの下端
56 通路
H1 折り曲げ部の鉛直方向での大きさ
H2 ガイド孔の鉛直方向での大きさ
S ガイド孔の下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に揺動開閉自在なボンネットに揺動自在に連結したスタンドロッドと、前記スタンドロッドがこのスタンドロッドの長手方向に摺動自在に挿通したガイド孔を有した支持体とを備え、
前記ボンネットが開き揺動操作されるに伴い、前記ガイド孔が前記スタンドロッドを起立操作して、かつ前記スタンドロッドの遊端側に位置する係止部が前記ガイド孔の下端部に係合して受け止め支持されて、前記スタンドロッドが起立姿勢に支持されて前記ボンネットを開き姿勢に突っ張り支持し、前記ボンネットが閉じ揺動操作されるに伴い、前記ガイド孔が前記スタンドロッドを倒伏操作するように構成したボンネットの開放ロック装置であって、
前記スタンドロッドの遊端側に、前記ボンネットの開き揺動に伴う前記スタンドロッドの前記ガイド孔からの抜け外れを防止するように前記支持体に当接作用する抜け止め部を設け、
前記スタンドロッドを前記ガイド孔に組み込む通路を形成する切り欠きを、前記支持体の横外側に向けて開口させるとともに前記ガイド孔に連通させた状態で前記支持体に設けてあるボンネットの開放ロック装置。
【請求項2】
前記切り欠きの下端を前記ガイド孔の下端よりも高い配置高さに配置してある請求項1記載のボンネットの開放ロック装置。
【請求項3】
前記スタンドロッドの遊端部に、前記係止部及び前記抜け止め部を形成する鉤形の折り曲げ部を設けてある請求項1又は2記載のボンネットの開放ロック装置。
【請求項4】
前記ボンネットが開き姿勢にある状態において、前記折り曲げ部の鉛直方向での大きさが前記ガイド孔の鉛直方向での大きさよりも大になるように、前記折り曲げ部を構成してある請求項3記載のボンネットの開放ロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−63135(P2011−63135A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215927(P2009−215927)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】