説明

ボール式支承装置及びワーク搬送装置

【課題】搬送されているワークを適切に停止させることができ、さらに発塵しても、塵埃が飛散しないようにしたボール式支承装置を提供する。
【解決手段】このボール式支承装置は、裏面12と凹曲面状のボール受け座11aを形成した表面11との間に側面13が設けられているボール受け部10と、ボール受け座11a上に転動自在に並べられた多数の小球21と、一部分が前記ボール受け部10の表面11から突出するように多数の小球21上に転動自在に載せられた1個の主球22とを備え、さらに、ボール受け部10の側面13を保持するケース50と、先端41aが前記主球22の突出している頂点よりも突出する位置と突出しない位置との間で往復動するストッパ40と、ストッパ40を突出しない位置に付勢する圧縮バネ31と、圧縮バネ31のバネ力に抗して前記ストッパ40を突出させるための空気を前記ケース50とストッパ40との間に供給する流体流路51cとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹曲面状に形成されたボール受け座の上に多数の小球が転動自在に並べられ、この多数の小球上に1個の主球が転動自在に載せられ、ワークが主球上を点接触して搬送されるようにしたボール式支承装置、及びこのボール式支承装置を搬送ラインに多数並列したワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレート状のワークやボックス状のワークなどを搬送するための手段として、ボール式支承装置が提供されている。ボール式支承装置の一例である支承体が特許文献1に記載されている。
【0003】
この支承体は、図5に示すように、円柱体状のボール受け部110の表面(図面では上面)111に凹曲面状のボール受け座111aを形成し、このボール受け座111aの上に多数の小球121,121,…を転動自在に並べ、この小球121,121,…上に1個の主球122を転動自在に載せ、ボール受け座111aの表面111に蓋体130を被せたものとされている。蓋体130によって、主球122が脱落しないようにするとともに、塵埃などがボール受け座111aの方に入らないようにされている。
【0004】
このような支承体は、ワークを搬送するために使用される。なお、従来のワークを搬送するローラコンベアは、多数のローラを平行に並列したものとされ、ワークがローラ上を移動するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−181819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のローラコンベアは、各ローラが正確に平行に並列されていない。したがって、ローラ上のワークは、偏向して進行し、したがって、わずかながら蛇行している。そうすると、ワークがガイドレールに当たってしまい、そこで発塵することがある。また、隣り合っているローラがワークに異なる方向の力加え、ワークが擦られることによって発塵し、疵(きず)が付けられることもある。
【0007】
さらに、ローラコンベアによって搬送されているワークは、所定の位置で別の場所に移動される。この移動に際して、ワークがローラコンベア上で停止することがある。しかし、ローラコンベアは回転し続けるため、ワークとベルトとが擦れてしまい、発塵し、疵が付けられることがある。したがって、ローラコンベアは、クリーンルームでの使用に適さないだけでなく、疵が付きやすいワークの搬送に適していないものとなっている。
【0008】
また、このような不具合を解消するため、支承体は、図6に示すように、ワークWを主球122から持ち上げるストッパ140を備えたボール式支承装置とすることが考えられる。ストッパ140は、ボール受け部110を外嵌して昇降する有底筒状又は筒状に形成され、図6(a)に示すような下降位置でワークWが主球122上に載り、図6(b)示すような上昇位置でワークWを載せて持ち上げ、主球122から離間する。
【0009】
しかし、このようなボール式支承装置にあっては、ストッパ140の上昇位置において、ストッパ140とワークWとの間に窪みを有する密閉空間Sが形成される。すると、塵芥が密閉空間S内に閉じ込められ、ストッパ140が下降したときに、この塵芥が気流の乱れに乗って飛散することがある。したがって、このボール式支承装置は、クリーンルームでの使用に適さないといえる。
【0010】
そこで、本発明は、主として、搬送されているワークを適切に停止させることができ、さらに発塵しても、塵埃が飛散しないようにしたボール式支承装置、及びこのボール式支承装置を多数並列したワーク搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るボール式支承装置は、裏面と凹曲面状のボール受け座を形成した表面との間に側面が設けられているボール受け部と、前記ボール受け座上に転動自在に並べられた多数の小球と、一部分が前記ボール受け部の表面から突出するように前記多数の小球上に転動自在に載せられた1個の主球とを備えているボール式支承装置であって、前記ボール受け部の裏面との間に空間を設けるようにボール受け部の側面を保持するケースと、先端が前記主球の突出している頂点よりも突出する位置と突出しない位置との間で往復動し、かつ、前記ケースとの間に密閉空間を形成するストッパと、該ストッパを前記突出しない位置の方に付勢する付勢手段と、該付勢手段の付勢力に抗して前記ストッパを突出する位置の方に移動させるための流体を前記ケースとストッパとの間の密閉空間に供給する流体流路とを備えていることを特徴としている。
【0012】
このボール式支承装置によれば、ストッパの先端が主球の頂点よりも突出していない位置にあるときに、ワークが主球上に載って搬送され、ストッパの先端が主球の頂点よりも突出することによって、ワークがストッパに持ち上げられて主球から離間し、ワークを停止させることができる。ストッパの先端は通常、付勢手段によって主球の頂点よりも突出しない位置とされ、ワークを停止させるときに、流体が流体流路から密閉空間内に供給され、付勢手段の付勢力に抗してストッパが移動し、ストッパの先端が突出するようにされている。
【0013】
また、前記本発明に係るボール式支承手段において、前記ボール受け部は、前記表面から裏面まで貫通した1本又は複数本のピン挿通孔を形成したものとされ、前記ストッパは、前記ピン挿通孔内に挿入され、先端が前記ボール受け部の表面から突出し、基端部が前記ボール受け部の裏面から前記密閉空間内に突出しているピンと、前記密閉空間内で前記ピンの基端部を保持し、前記ボール受け部の裏面と前記ケースとの間の密閉空間内で往復動可能に収納されたピストン部とを備えたものとされていることが好ましい。
【0014】
このボール式支承装置によれば、ストッパが1本又は複数本のピンによって構成されることにより、ワークがピンによって点接触して支承されるだけでなく、ピンに支承されたワークとピンとの間に密閉空間が形成されないようにすることができる。そして、ピンの基端部を保持するピストン部がボール受け部の裏面とケースとの間に設けられた密閉空間部内に配置され、密閉空間内に流体が供給され、また、供給されないようにすることにより、付勢部材の付勢力と相俟って、ストッパを往復動させることができる。
【0015】
また、前記本発明に係るボール式支承装置において、前記ピストン部は、平盤状の基盤部と、該基盤部の外周に突設された筒状部とからなり、前記ボール受け部は、前記裏面側に前記筒状部の内径よりも小さな外径の縮径部を設けたものとされ、前記付勢手段は、前記ピストン部の筒状部と前記ボール受け部の縮径部との間に挿入される圧縮バネであることが好ましい。
【0016】
このボール式支承装置によれば、ピストン部に筒状部が設けられることにより、ピストン部がケースの内面と広範囲に摺接し、したがって、ピストンの往復動作が安定し、さらに、付勢手段がピストン部の筒状部とボール受け部の縮径部との間に挿入される圧縮バネによって構成されることにより、構成を簡素化することができる。
【0017】
また、本発明に係るワーク搬送装置は、搬送ライン上のワークの底面の少なくとも両側部を支承するように並列された前記何れかの本発明に係るボール式支承装置と、搬送ライン上のワークの底面に接触するように配置された搬送手段とが備えられていることを特徴としている。
【0018】
このワーク搬送装置によれば、ワークの底面の両側部が前記本発明に係るボール式支承装置の主球に支承されることによって、搬送されているワークを停止させ、また、塵埃が飛散しないようにすることができる。そして、ボール式支承装置自体にワークを搬送する機能が備えられていないため、ワークの底面の中心部に搬送手段が備えられ、搬送手段がワークの底面に接触することにより、ボール式支承装置に支承されたワークを搬送することができる。
【0019】
また、前記本発明に係るワーク搬送装置において、搬送ライン上のワークの各側面と当接するように並列された前記何れかの本発明に係るボール式支承装置がさらに備えられていることが好ましい。
【0020】
このワーク搬送装置によれば、ワークの各側面に当接するように配置されたボール式支承装置がガイドレールのようになって、ワークを搬送ラインから外れないように搬送することができ、さらに、このボール式支承装置のストッパがワークの側面に当接することによって、ワークを側面からも停止させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、搬送されているワークを適切に停止させることができ、さらにワークを停止させるときに発生した塵埃が飛散しないようにすることができるため、クリーンルームになどにおいて好適に使用可能なボール式支承装置及びワーク搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るボール式支承装置の一実施形態を示す断面斜視図である。
【図2】本発明に係るボール式支承装置の一実施形態であって、(a)は平面図、(b)はストッパが突出していない状態の断面正面図、(c)はストッパが突出している状態の断面正面図である。
【図3】本発明に係るワーク搬送装置の一実施形態であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図4】本発明に係るワーク搬送装置の一実施形態であって、(a)はワークを搬送していないときの一部断面側面図、(b)はボール式支承装置がワークを支承しているときの一部断面側面図である。
【図5】従来のボール式支承装置(支承体)の一例を示す正面断面図である。
【図6】従来の図5と異なるボール式支承装置であって、(a)はストッパが突出していない状態を示す断面正面図、(b)はストッパが突出している状態を示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るボール式支承装置及びワーク搬送装置の一実施形態について図1ないし図4を参照しながら説明する。ボール式支承装置は、従来と同様、ボール受け部10、多数の小球21,21,…、1個の主球22を備えている。
【0024】
ボール受け部10は、表面11と裏面12との間に側面13が設けられた変形円柱状とされ、表面11に凹曲面状のボール受け座11aが形成されている。
【0025】
そして、ボール受け座11a上に多数の小球21,21,…が転動自在に並べられ、1個の主球22が多数の小球21,21,…上に転動自在に載せられている。主球22の中心部分がボール受け部10内に位置し、主球22の一部分は、ボール受け部10の表面11から突出している。
【0026】
そして、多数の小球21,21,…は、ボール受け部10の表面11まで並べられず、ボール受け部10の表面11の部分と主球22との間に間隔が空けられ、この間隔にリング状の蓋体30が嵌められている。この蓋体30と主球22との間には隙間が設けられるが、蓋体30によって塵埃などがボール受け座11aの方に入らないようにされ、また、主球22が脱落しないようにもされている。
【0027】
そして、本発明のボール式支承装置は、往復動するストッパ40を備えていることを特徴としている。ストッパ40の先端は、主球22がボール受け部10の表面11から突出している頂点(以下、単に「頂点」という。)よりも突出する位置と突出しない位置との間で往復動するようにされている。
【0028】
このようなストッパ40は、1本又は複数本(図面では3本)のピン41と、このピン41の基端部を保持するピストン部42とを備えている。そのため、ボール受け部10には、表面11から裏面12まで貫通するピン挿通孔14が形成されている。
【0029】
そして、ストッパ40は、ピン41とピストン部42とに分離されることにより、ピン41はワークWを損傷させにくい樹脂によって成形し、ピストン部42は耐久性に優れたステンレス鋼によって成形することができる。ただし、ピン41とピストン部42とは一体成形してもよい。
【0030】
そして、ピストン部42は、円盤状の基盤部42aと、この基盤部42aの外周に突設された筒状部42bとからなる有底筒状に形成されている。筒状部42bの外周には、溝が形成され、この溝にOリング43が嵌め込まれている。そして、筒状部42bの先端側は、内周を拡径した薄肉状に形成されて段差部42cが設けられ、さらに、先端縁に内向きの突条42dを形成したものとされている。
【0031】
一方、ピン41の基端部には、ピストン部42の突条42dが嵌る溝部が形成されている。突条42dは、ストッパ40の外周から中心軸の方に向かってピン41の溝部内に嵌められる。また、図示しないが、筒状部42bの先端側は、外径を縮径し、先端縁に外向きの突条42dを形成し、突条42dがストッパ40の中心軸から外周の方に向かってピン41の溝部内に嵌るようにしてもよい。
【0032】
そして、ピン41の基端側の端面は、ピストン部42の段差部42c上に載せられる。このようにして、ピン41とピストン部42とが一体化されている。なお、ピン41は、ボール受け部10のピン挿通孔14内に挿入されることにより、位置ずれしない。
【0033】
そして、ボール受け部10は、裏面12側に縮径部15を設け、縮径部15と先端側との境界に段差部16を設けたものとされている。縮径部15は、前記ピストン部42の筒状部42bの内径よりも当然、小さく、縮径部15と筒状部42bとの間に間隔が空けられている。
【0034】
この間隔内にストッパ40を突出しない位置に付勢するための付勢手段31が配置されている。付勢手段31としては、圧縮バネやゴムなどが使用される(以下、「圧縮バネ」として説明する。)。圧縮バネ31の各端部は、ボール受け部10の段差部16とピストン部42の基盤部42aとに当接している。
【0035】
そして、ボール受け部10の側面13がケース50によって保持されている。ケース50は、ボール受け部10の裏面12側を囲う有底筒状のケース本体51と、ボール受け部10の表面11側を外嵌する筒状のカバー部52を組み合わせたものとされ、例えばケース本体51に雄ネジ51aが形成され、カバー部52に雌ネジ52aが形成され、雄ネジ51aと雌ネジ52aが螺合することによって一体化するようにされている。
【0036】
そして、ボール受け部10の表面11側には、わずかに縮径した段差部17が設けられており、カバー部52の内面には、この段差部17と重なり合う段差部52bが設けられている。また、ケース本体51の先端面がボール受け部10の縮径部15との境界に設けられた段差部16に当接し、前記カバー部52とともにボール受け部10の側面13を挟んでいる。
【0037】
そして、ケース本体51の内周面は、ピストン部42の筒状部42bと摺接し、また、Oリング43に当接している。また、ケース本体51は、ピストン部42がケース50の底部とボール受け部10の裏面12との間を往復動することができる大きさとされている。なお、ピストン部42は、筒状部42bの内周を拡径したものの方が外周を縮径したものよりも広い面積でケース本体51の内周面と摺接するため、安定して往復動する。
【0038】
そして、ケース本体51とピストン部42とで囲まれた領域には、密閉空間Tが形成される。この密閉空間T内のケース本体51の底部には、浅い座ぐり51dが形成されている。
【0039】
また、ケース本体51の底部には、ブラケットなどに取り付けられる固定部51bが突設されている。固定部51bの外周面には、ブラケットなどに形成された雌ネジに締結するための雄ネジが形成され、固定部51bの中心軸には、流体流路51cが形成されている。流体流路51cからピストン部42の基盤部42aとケース本体51の底部との間に空気や圧油などの流体(以下、「空気」として説明する。)が送り込まれ、圧縮バネ31の付勢力(バネ力)に抗してピストン部42をボール受け部10の方に移動させ、ピン41が主球22の頂点よりも突出するようにされている。
【0040】
なお、ケース50がケース本体51とカバー部52に分離されてボール受け部10を覆うため、ボール受け部10は、周方向に回転することができる。したがって、ピン41が3本備えられていても、複数のボール式支承装置をブラケットなどに並列させたときに、3本のピン41が同一方向を向くようにすることができる。
【0041】
このボール式支承装置は、以上のように構成され、次に使用方法について説明する。
【0042】
このボール式支承装置は、ワークWを搬送させる状態においては流体流路51c内に空気流体が供給されず、図2(b)に示すように、圧縮バネ31のバネ力によってピストン部42がケース本体51の底部の方に付勢され、ピン41の先端41aが主球22の頂点よりも突出しない位置にある。したがって、ワークWは、主球22上に点接触し、主球22と多数の小球21,21,…が転動することによって、摩擦力がほとんど生じない状態で搬送される。
【0043】
そして、ワークWを停止させるには、流体流路51cから密閉空間T内に空気を供給する。すると、図2(c)に示すように、ピストン部42が圧縮バネ31のバネ力に抗してボール受け部10の方に移動し、ピン41の先端41aが主球22の頂点よりも突出する。そして、主球22に支承されていたワークWがピン41の先端41aで支承される状態となり、ワークWが停止する。このとき、ピン41とワークWとによって密閉された空間が形成されないため、発塵したとしても、塵芥が密閉された空間内に溜まらず、ストッパ41がケース本体51の底部の方へ移動しても、塵芥が飛散することがない。
【0044】
そして、流体流路51cから密閉空間T内への空気の供給を停止すると、圧縮バネ31のバネ力によってピストンがケース本体51の底部の方に戻され、ピン41の先端41aが主球22の頂点よりも突出しない位置となる。
【0045】
ここで、このようなボール式支承装置をワークWの搬送ラインに並列したワーク搬送装置について図3及び図4を参照しながら説明する。
【0046】
このワーク搬送装置は、ワークWの搬送ラインに立設された4本の支柱61,61,…にフレーム62,62が支持され、このフレーム62,62に前記実施形態のボール式支承装置(以下、「底面側のボール式支承装置」という。)A,A,…を複数(図面では5台)組み付けたブラケット63が固定され、そして、ワークWを誘導する搬送手段70を備えたものとされている。
【0047】
2本の支柱61,61と2本の支柱61,61は、その間隔がワークWの幅とほぼ同じ幅に向き合っている。そして、間隔を空けて立設された支柱61,61間にフレーム62が固定されている。
【0048】
搬送手段70は、ワークWの底面の中心部に接触する無端のベルト71を中心に構成されている。ベルト71の下側にユニット(図示せず)を介してエアシリンダー(図示せず)が配置され、ワークWが置かれてない状態において、ベルト71の表面がボール式支承装置A,A,…の主球22よりもわずかに上に位置し、ワークWが置かれると、エアシリンダーが押され、ワークWの底面がボール式支承装置A,A,…の主球22によって支承されつつベルト71上に載せられ、ベルト71がワークWを誘導するようにされている。
【0049】
このようなベルト71は、2個のプーリ72,72に掛けられて一方向に進行する。このプーリ72,72は、フレーム62,62の上流側に架け渡された軸64と下流側に架け渡された軸64に取り付けられている。下流側のプーリ72は、駆動源となり、そのため、このプーリ72を取付けている軸64にモータ73の回転軸に架け渡されたベルト74が掛けられている。
【0050】
そして、ベルト71にテンションを加える2個のプーリ75,75が前記プーリ72,72の下側に備えられている。このプーリ75,75は、各支柱61,61から突出した軸65,65に取り付けられている。なお、テンションを加えるプーリ75は、1個であってもよい。
【0051】
また、ブラケット63には、図4に示すように、各ボール式支承装置A,A,…の流体流路51cにつながる流体流路63aが設けられ、1箇所に流体取入口63bが設けられ、この流体取入口63bにパイプ66が接続されている。このパイプ66から、流体流路63a内に空気が供給される。
【0052】
そして、各フレーム62,62には、上向きのガイド部材67が取り付けられ、このガイド部材67にも前記実施形態のボール式支承装置(以下、「側面側のボール式支承装置」という。)B,B,…が多数並列されている。各フレーム62,62に取り付けられた側面側のボール式支承装置B,Bは、主球22,22が向き合い、その向き合った主球22,22の頂点の間隔がワークWの幅と一致するようにされている。
【0053】
そして、ワーク搬送装置の下流端には、搬送されてきたワークWを停止させるストッパ40と、このワークWを検知するセンサとが備えられている(ともに図示せず)。
【0054】
ここで、このようなワーク搬送装置によって、ワークWを搬送する方法について説明する。ワークWを搬送するときは、流体流路63aに空気が供給されず、底面側及び側面側のボール式支承装置のストッパ40のピン41が突出しない状態とされている。また、ベルト71は、一方向に進行し続けている。
【0055】
そして、ワーク搬送装置の上流端にワークWが供給されると、ワークWの底面の両側部と、ワークWの側部がボール式支承装置の主球22に当接し、ワークWの底面の中心部が進行しているベルト71に接触する。したがって、ワークWは、ベルト71に誘導されて下流側に搬送される。
【0056】
このとき、ワークWは、基本的にボール式支承装置の主球22に支承され、ベルト71と擦れることがないため、疵(きず)が付けられず、また、発塵しにくいようにされている。なお、多数のローラを並列したワーク搬送装置にあっては、各ローラが正確に平行に並列されていないことから、実際は微妙に蛇行して発塵塵することもあるが、このワーク搬送装置は、側面側のボール式支承装置B,B,…によって適切に搬送され、発塵しにくいようにされている。
【0057】
そして、ワークWが下流側まで搬送されると、このワークWはストッパによって停止するが、このワークWがセンサに検知されることにより、底面側のボール式支承装置Aの流体流路51cに空気が供給される。すると、底面側のボール式支承装置Aのストッパ40が上向きに突出し、ピン41がワークWを押し上げる。したがって、ワークWの底面がベルト71によって擦られることがなく、ワークWに疵が付けられず、また発塵することもない。
【0058】
そして、ワークWが連続して搬送され、先行しているワークWが支(つか)えているときは、中流ないし下流の底面側のボール式支承装置の流体流路51cにも空気が供給され、ストッパ40を上向きに突出させることにより、ピン41がワークWを支承するようにする。このとき、側面側のボール式支承装置B,B,…の流体流路51cにも空気が供給され、ストッパ40を内向きに突出させることにより、ピン41がワークWの側面を保持するようにする。ワークWは、側面が保持されることによって安定する。
【0059】
なお、クリーンルームにおいては、天井から床に向かう気流(ダウンフロー)を起こしているが、ベルト71とワークWとの接触部分で発塵があったとしても、この気流によって塵芥がワークWに付着しないようにされている。
【0060】
そして、先行のワークWが排出されると、各ボール式支承装置A,B,…の流体流路51c,51cへの空気の供給を停止する。すると、各ボール式支承装置A,Bの圧縮バネ31,31のバネ力により、ストッパ40が主球22の頂点より低くなり、ワークWが主球22に当接する。そして、ベルト71がワークWの底面の中心部に接触することによって、ワークWが搬送される。
【0061】
なお、本発明は、前記の実施形態に限定することなく、種々変更することができる。例えば、ボール式支承装置において、ストッパ40は、ボール受け部10の外側に配置されるようにしてもよい。この場合は、ボール受け部10にピン挿通孔14が形成されず、ケース50はケース本体51のみがボール受け部10の裏面12側を保持するようにする。
【0062】
また、ワーク搬送装置は、底面側のボール式支承装置Aがワークの両側部だけでなく、中心部よりも支承するようにしてもよい。また、ワーク搬送装置は、側面側のボール式支承装置Bを複数段設けてもよいし、逆に、側面側のボール式支承装置Bを備えていないものとしてもよい。さらに、ワーク搬送装置は、カーブしたものでも実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
10……ボール受け部
11……表面
11a…ボール受け座
12……裏面
13……側面
14……ピン挿通孔
15……縮径部
21……小球
22……主球
31……付勢手段(圧縮バネ)
40……ストッパ
41……ピン
41a…先端
42……ピストン部
50……ケース
70……搬送手段
T………密閉空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面と凹曲面状のボール受け座を形成した表面との間に側面が設けられているボール受け部と、前記ボール受け座上に転動自在に並べられた多数の小球と、一部分が前記ボール受け部の表面から突出するように前記多数の小球上に転動自在に載せられた1個の主球とを備えているボール式支承装置であって、
前記ボール受け部の裏面との間に空間を設けるようにボール受け部の側面を保持するケースと、先端が前記主球の突出している頂点よりも突出する位置と突出しない位置との間で往復動し、かつ、前記ケースとの間に密閉空間を形成するストッパと、該ストッパを前記突出しない位置の方に付勢する付勢手段と、該付勢手段の付勢力に抗して前記ストッパを突出する位置の方に移動させるための流体を前記ケースとストッパとの間の密閉空間に供給する流体流路とを備えていることを特徴とするボール式支承装置。
【請求項2】
前記ボール受け部は、前記表面から裏面まで貫通した1本又は複数本のピン挿通孔を形成したものとされ、
前記ストッパは、前記ピン挿通孔内に挿入され、先端が前記ボール受け部の表面から突出し、基端部が前記ボール受け部の裏面から前記密閉空間内に突出しているピンと、前記密閉空間内で前記ピンの基端部を保持し、前記ボール受け部の裏面と前記ケースとの間で往復動可能に収納されたピストン部とを備えたものとされていることを特徴とする請求項1に記載のボール式支承装置。
【請求項3】
前記ピストン部は、平盤状の基盤部と、該基盤部の外周に突設された筒状部とからなり、
前記ボール受け部は、前記裏面側に前記筒状部の内径よりも小さな外径の縮径部を設けたものとされ、
前記付勢手段は、前記ピストン部の筒状部と前記ボール受け部の縮径部との間に挿入される圧縮バネであることを特徴とする請求項2に記載のボール式支承装置。
【請求項4】
搬送ライン上のワークの底面の少なくとも両側部を支承するように並列された前記請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のボール式支承装置と、
搬送ライン上のワークの底面に接触するように配置された搬送手段とが備えられていることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項5】
搬送ライン上のワークの各側面と当接するように並列された前記請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のボール式支承装置がさらに備えられていることを特徴とする請求項4に記載のワーク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−80501(P2011−80501A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231472(P2009−231472)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(391025039)株式会社フリーベアコーポレーション (6)
【Fターム(参考)】