説明

ポジ型レジスト材料及びこれを用いたパターン形成方法

【課題】高感度、高解像度で、ラフネス(LWR)が小さく、露光後のパターン形状が良好であるポジ型レジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料のベース樹脂として好適な高分子化合物を用いたポジ型レジスト材料、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、下記一般式(1)で示される基を有する繰り返し単位aと、カルボキシル基の水素原子が酸不安定基で置換されている繰り返し単位bとを含む、重量平均分子量が1,000〜500,000の高分子化合物をベース樹脂として含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型レジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料のベース樹脂として好適な高分子化合物を用いたポジ型レジスト材料、及びこれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特にフラッシュメモリー市場の拡大と記憶容量の増大化が微細化を牽引している。微細化の細線はArFリソグラフィーによる65nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代のArF液浸リソグラフィーによる45nmノードの量産準備が進行中である。更に次世代の32nmノードとしては、水よりも高屈折率の液体と高屈折率レンズ、高屈折率レジスト膜を組み合わせた超高NAレンズによる液浸リソグラフィー、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィー、ArFリソグラフィーの2重露光(ダブルパターニングリソグラフィー)等が候補であり、検討が進められている。
【0003】
EBやX線等の非常に短波長な高エネルギー線においてはレジスト材料に用いられている炭化水素のような軽元素は吸収がほとんどなく、ポリヒドロキシスチレンベースのレジスト材料が検討されている。
マスク製作用露光装置は線幅の精度を上げるため、レーザービームによる露光装置から電子ビーム(EB)による露光装置が用いられてきた。更にEBの電子銃における加速電圧を上げることによってよりいっそうの微細化が可能になることから、10keVから30keV、最近は50keVが主流であり、100keVの検討も進められている。
【0004】
ここで、加速電圧の上昇と共に、レジスト膜の低感度化が問題になってきた。加速電圧が向上すると、レジスト膜内での前方散乱の影響が小さくなるため、電子描画エネルギーのコントラストが向上して解像度や寸法制御性が向上するが、レジスト膜内を素抜けの状態で電子が通過するため、レジスト膜の感度が低下する。マスク露光機は直描の一筆書きで露光するため、レジスト膜の感度低下は生産性の低下につながり好ましいことではない。高感度化の要求から、化学増幅型レジスト材料が検討されている。
【0005】
また、微細化の進行と共に、酸の拡散による像のぼけが問題になっている。寸法サイズ45nm以降の微細パターンでの解像性を確保するためには、従来提案されている溶解コントラストの向上だけでなく、酸拡散の制御が重要であることが提案されている(例えば非特許文献1等参照)。しかしながら、化学増幅型レジスト材料は、酸の拡散によって感度とコントラストを上げているため、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)温度や時間を短くして酸拡散を極限まで抑えようとすると感度とコントラストが著しく低下する。
【0006】
非特許文献2では、感度と解像度とラフネスのトライアングルトレードオフの関係が示されている。ここでは、露光マージン拡大のためには酸拡散を押さえることが必要であるが、酸拡散距離が50nm以下になると急激にラフネスが劣化することが報告されている。
【0007】
バルキーな酸が発生する酸発生剤を添加して酸拡散を抑えることは有効である。そこで、ポリマーに重合性オレフィンを有するオニウム塩の酸発生剤を共重合することが提案されている。例えば特許文献1には、特定のスルホン酸が発生する重合性オレフィンを有するスルホニウム塩、ヨードニウム塩が提案されている。また例えば特許文献2には、スルホン酸が主鎖に直結したスルホニウム塩が提案されている。
【0008】
感度とラフネスのトレードオフの関係も示されており、例えば非特許文献3では感度とラフネスの反比例の関係が示され、露光量増加によるショットノイズ低減によってレジスト膜のラフネスが低減することが予見されている。非特許文献4には、クエンチャーを増量したレジスト膜がラフネス低減に有効であるが、同時に感度も劣化するためにEUVの感度とラフネスのトレードオフの関係があり、これを打破するために酸発生量子効率を高める必要性が示されている。
【0009】
非特許文献5では、電子ビーム露光における酸発生機構として、露光によるポリマー励起によってPAGに電子が移動し、酸が放出される機構が提案されている。EB、EUVのどちらもイオン化ポテンシャルエネルギーの閾値10eVよりも高く、ベースポリマーが容易にイオン化することが推定される。電子移動を促進させる材料としては、ヒドロキシスチレンが示されている。
【0010】
非特許文献6では、ポリ−4−ヒドロキシスチレンがポリ−4−メトキシスチレンよりもEB露光における酸発生効率が高いことが示され、ポリ−4−ヒドロキシスチレンがEBの照射によって効率よくPAGに電子を移動させていることが示唆されている。
【0011】
そこで、電子移動による酸発生効率を高めるためにヒドロキシスチレン、酸拡散を小さく押さえるためにスルホン酸がポリマー主鎖に直結したPAGのメタクリレート、酸不安定基を有するメタクリレートを共重合した材料が非特許文献7に提案されている。
ヒドロキシスチレンは、弱酸性のフェノール性水酸基を有しているために、アルカリ現像液での膨潤を低減する効果があるものの酸拡散を増大させる。一方、ArFレジスト用として広く用いられている密着性基としてのラクトンを含有するメタクリレートは高い親水性を有し、アルカリ溶解性がないために膨潤を低減させる効果はないものの酸拡散を抑えることができる。密着性基としてヒドロキシスチレンとラクトン環を有するメタクリレートを組み合わせることによって感度向上、膨潤低減と酸拡散制御のバランス取りを行うことが可能であるが、未だ十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−045311号公報
【特許文献2】特開2006−178317号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】SPIE Vol. 6520 65203L−1 (2007)
【非特許文献2】SPIE Vol. 5753 p269 (2005)
【非特許文献3】SPIE Vol. 3331 p531 (1998)
【非特許文献4】SPIE Vol. 5374 p74 (2004)
【非特許文献5】SPIE Vol. 5753 p361(2005)
【非特許文献6】SPIE Vol. 5753 p1034 (2005)
【非特許文献7】SPIE Vol. 6519 p6519F1−1(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、従来のポジ型レジスト材料を上回る高感度、高解像度で、ラフネス(LWR)が小さく、露光後のパターン形状が良好であるポジ型レジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料のベース樹脂として好適な高分子化合物を用いたポジ型レジスト材料、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、下記一般式(1)で示される基を有する繰り返し単位aと、カルボキシル基の水素原子が酸不安定基で置換されている繰り返し単位bとを含む、重量平均分子量が1,000〜500,000の高分子化合物をベース樹脂として含有することを特徴とするポジ型レジスト材料を提供する。
【化1】

【0016】
この場合、前記繰り返し単位aが、下記一般式(2)で示されるものであることが好ましい。
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基である。aは0<a<1.0の範囲である。)
【0017】
またこの場合、前記繰り返し単位bが、下記一般式(3)で示されるものであることが好ましい。
【化3】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは酸不安定基を表す。Xは単結合、エステル基、ラクトン環を有する炭素数1〜12の連結基、フェニレン基、又はナフチレン基である。bは0<b<1.0の範囲である。)
【0018】
このように、上記一般式(1)で示される基を有する繰り返し単位a、特には上記一般式(2)で示される繰り返し単位aと、カルボキシル基の水素原子が酸不安定基で置換されている繰り返し単位b、特には上記一般式(3)で示される繰り返し単位bとを含む、重量平均分子量が1,000〜500,000の高分子化合物をベース樹脂として含有する本発明のポジ型レジスト材料を用いれば、露光前後のアルカリ溶解速度コントラストが大幅に高く、その上特に酸拡散速度を抑制できるため高解像性を有し、高感度で、ラフネス(LWR)が小さく、露光後のパターン形状が良好となる。
【0019】
また、前記繰り返し単位aと前記繰り返し単位bに加えて、更に、ヒドロキシル基、ラクトン環、エーテル基、エステル基、カルボニル基、及びシアノ基から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位cを共重合した高分子化合物(ここで0<a<1.0、0<b<1.0、0<c≦0.9、0.2≦a+b+c≦1.0の範囲である)をベース樹脂として含有することが好ましい。
【0020】
このように、ポジ型レジストのベース樹脂として含有される高分子化合物が、繰り返し単位aと繰り返し単位bに加えて、密着性基を有する繰り返し単位cを含むものであれば、密着性を更に高めることができる。
【0021】
また、前記ポジ型レジスト材料が、化学増幅型のポジ型レジスト材料であることが好ましい。
前記高分子化合物を含む本発明のポジ型レジスト材料は、例えば酸発生剤から発生する酸により、繰り返し単位bの酸不安定基が脱離し、レジスト露光部を現像液に溶解させるように変換することで、極めて高精度なパターンが得られる化学増幅型のポジ型レジスト材料とすることができる。
【0022】
また、前記ポジ型レジスト材料が、有機溶剤、酸発生剤、溶解制御剤、塩基性化合物、及び界面活性剤のいずれか1つ以上を含有するものとすることができる。
【0023】
このように、有機溶剤を配合することによって、例えば、レジスト材料の基板等への塗布性を向上させることができる。また、酸発生剤を配合することによって、より高感度のものとすることができる。また、溶解制御剤を配合することによって、露光部と未露光部との溶解速度の差を一層大きくすることができ、解像度を一層向上させることができる。塩基性化合物を配合することによってレジスト膜中での酸の拡散速度を抑制し、解像度を一層向上させることができる。更に、界面活性剤を配合することによって、レジスト材料の塗布性を一層向上あるいは制御することができる。
【0024】
このような本発明のポジ型レジスト材料は、少なくとも、前記ポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを行うことによって、半導体基板やマスク基板等にパターン形成する方法として用いることができる。
【0025】
本発明のパターン形成方法においては、もちろん、露光後加熱処理を加えた後に現像してもよいし、エッチング工程、レジスト除去工程、洗浄工程等その他の各種の工程が行われてもよいことは言うまでもない。
【0026】
この場合、前記高エネルギー線で露光する工程において、電子ビーム又は波長3〜15nmの範囲の軟X線を光源として用いることができる。
このように、本発明のポジ型レジスト材料は、電子ビーム又は波長3〜15nmの軟X線を光源とする、微細なパターンを形成するのに特に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明のポジ型レジスト材料は、露光前後のアルカリ溶解速度コントラストが大幅に高く、その上特に酸拡散速度を抑制できるため高解像性を有し、高感度で、露光後のパターン形状とラフネスが良好なものである。従って、特に超LSI製造用あるいはフォトマスクの微細パターン形成材料、EB、EUV、ArFエキシマレーザー露光用のパターン形成材料として好適なポジ型レジスト材料、特には化学増幅ポジ型レジスト材料を得ることができる。
また、このような本発明のポジ型レジスト材料、特には化学増幅ポジ型レジスト材料の用途としては、例えば、半導体回路形成におけるリソグラフィーだけでなく、マスク回路パターンの形成、あるいはマイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド回路形成にも応用することができる。
また、フルオレセインは、燐光を発光する物質として知られる。波長488nmのArレーザー等を照射することによって波長521nmの緑色の光が発生される。本発明のレジスト材料がベース樹脂として含有する高分子化合物はフルオレセインを繰り返し単位として含んでいるため、パターニング後のレジスト膜に光照射することによってレジスト膜の部分が発光し、レジストパターンを輝かせることができる。蛍光顕微鏡を用いれば、レジストパターンを高輝度で観察することが可能であり、レジストパターンを用いて位置検出を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
上述のように、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が進むなか、高解像性を確保しつつ、高感度で、ラフネス(LWR)が小さく、なおかつ、パターン形状も良好なポジ型レジスト材料が求められていた。
【0029】
本発明者らは、上記のような近年要望される高解像度、高感度、更にラフネス(LWR)が小さく、パターン形状良好なポジ型レジスト材料を得るべく鋭意検討を重ねた結果、これには特定の繰り返し単位を含むポリマーをポジ型レジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料のベース樹脂として用いれば極めて有効であることを知見し、本発明を完成させたものである。
【0030】
より具体的には、本発明者らは、フェノール性水酸基とラクトン環の両方を分子内に有する繰り返し単位と、更に酸拡散を抑えて溶解コントラストを向上させるためにカルボキシル基の水素原子が酸不安定基で置換されている繰り返し単位との共重合により得られるポリマーを、ポジ型レジスト材料、特に化学増幅ポジ型レジスト材料のベース樹脂として用いることにより、露光前後のアルカリ溶解速度コントラストが大幅に高く、酸拡散を抑える効果が高く、高解像性を有し、高感度で、露光後のパターン形状とラフネス(LWR)が良好である、特に超LSI製造用あるいはフォトマスクの微細パターン形成材料として好適なポジ型レジスト材料、特には化学増幅ポジ型レジスト材料が得られることを知見し、本発明を完成させたものである。
【0031】
即ち、本発明のポジ型レジストは、少なくとも、下記一般式(1)で示される基を有する繰り返し単位aと、カルボキシル基の水素原子が酸不安定基で置換されている繰り返し単位bとを含む、重量平均分子量が1,000〜500,000の高分子化合物をベース樹脂として含有することを特徴とするポジ型レジスト材料である。
【化4】

【0032】
フルオレセインはEB、EUVに増感作用があり、アルカリ現像液中での膨潤防止効果があるフェノールと、酸拡散抑制効果がある密着性基のラクトン環を同一分子内に有するため、複数の機能を同一分子内に持たせることができる。
また、フルオレセインは4級炭素のカルド構造を有するために分子内の自由回転が束縛されて酸拡散を押さえる効果が高い。
【0033】
本発明のポジ型レジスト材料は、ベース樹脂となる高分子化合物に、このようなフェノールとラクトン環を同一分子内に有する繰り返し単位、即ち、上記一般式(1)で示される基を有する繰り返し単位aを含んでいるため、特に、酸拡散を抑える効果やレジスト膜の溶解コントラストが高く、高解像性を有し、膨潤防止効果、露光余裕度があり、露光後のパターン形状やラフネス(LWR)が良好である。また優れた密着性、アルカリ溶解性、特にEUVやEB露光での増感効果を発揮することができる。従って、これらの優れた特性を有することから実用性が極めて高く、超LSI用レジスト材料マスクパターン形成材料として非常に有効である。
【0034】
上記一般式(1)で示される基を有する繰り返し単位aとしては、好ましくは(メタ)アクリル酸(尚、本明細書中、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の一方又は両方を意味する)のカルボキシル基の水素原子を置換したものであり、下記一般式(2)で示すことができる。
【化5】

(式中、Rは水素原子又はメチル基である。aは0<a<1.0の範囲である。)
【0035】
また、上記繰り返し単位bは、下記一般式(3)で示されるものを特に好ましく挙げることができる。
【化6】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは酸不安定基を表す。Xは単結合、エステル基、ラクトン環を有する炭素数1〜12の連結基、フェニレン基、又はナフチレン基である。bは0<b<1.0の範囲である。)
【0036】
この場合、本発明のポジ型レジスト材料に含有されるベース樹脂としては、上記一般式(2)で示される繰り返し単位aと、上記一般式(3)で示される繰り返し単位bが共重合されてなる、下記一般式(4)で示される高分子化合物が特に好ましい。
【化7】

(式中、R、R、R、Xは前述と同様である。aは0<a<1.0、bは0<b<1.0、a+bは0.1≦a+b≦1.0の範囲である。)
【0037】
上記一般式(2)に示される繰り返し単位aを得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することができる。
【化8】

(式中、Rは前述と同様である。)
【0038】
このモノマーは、フルオレセインの2つのヒドロキシル基の1つをメタクリレートエステルにすることによって合成することができる。
【0039】
上記一般式(3)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位bを得るためのモノマーとしては、下記に示すことができる。
【化9】

(式中、R、R、Xは前述の通りである。)
【0040】
この場合、Xのラクトン環を有する炭素数1〜12の連結基としては、下記のものを例示することができる。
【化10】

【0041】
上記一般式(3)中のRの酸不安定基は、種々選定されるが、同一でも異なっていてもよく、特に下記式(A−1)〜(A−3)で置換された基で示されるものが好ましく挙げられる。
【0042】
【化11】

【0043】
上記式(A−1)において、R30は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記式(A−3)で示される基を示し、三級アルキル基として具体的には、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基等が挙げられ、トリアルキルシリル基として具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が挙げられ、オキソアルキル基として具体的には、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が挙げられる。a1は0〜6の整数である。
【0044】
上記式(A−1)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0045】
更に、下記式(A−1)−1〜(A−1)−10で示される置換基を挙げることもできる。
【化12】

【0046】
上記式(A−1)−1〜(A−1)−10中、R37は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基、R38は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基である。
また、R39は互いに同一又は異種の炭素数2〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。
a1は上記の通りである。
【0047】
次に、上記式(A−2)において、R31、R32は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基等を例示できる。
33は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の、酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、例えば直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、又はこれらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたもの等を挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0048】
【化13】

【0049】
31とR32、R31とR33、R32とR33とは結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するR31、R32、R33はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、好ましくは環の炭素数は3〜10、特に4〜10である。
【0050】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、直鎖状又は分岐状のものとしては、下記式(A−2)−1〜(A−2)−35のものを例示することができる。
【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、環状のものとしては、テトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が挙げられる。
【0054】
また、下記式(A−2a)又は(A−2b)で表される酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【0055】
【化16】

【0056】
上記式(A−2a)、(A−2b)中、R40、R41は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、R40とR41は結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR40、R41は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R42は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、b1、d1は、それぞれ独立に0又は1〜10、好ましくは0又は1〜5の整数、c1は1〜7の整数である。Aは、(c1+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はヘテロ環基を示し、これらの基はヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
【0057】
この場合、好ましくは、Aは2〜4価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルキルトリイル基、アルキルテトライル基、炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基はヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、c1は好ましくは1〜3の整数である。
【0058】
上記式(A−2a)、(A−2b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(A−2)−36〜(A−2)−43のものが挙げられる。
【0059】
【化17】

【0060】
次に、上記式(A−3)において、R34、R35、R36は、それぞれ独立に炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基等の1価炭化水素基、又は炭素数2〜20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルケニル基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよく、R34とR35、R34とR36、R35とR36とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に、炭素数3〜20の脂環を形成してもよい。
【0061】
上記式(A−3)に示される三級アルキル基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、2−(2−メチル)アダマンチル基、2−(2−エチル)アダマンチル基、tert−アミル基等を挙げることができる。
【0062】
また、三級アルキル基としては、下記に示す式(A−3)−1〜(A−3)−18を具体的に挙げることもできる。
【化18】

【0063】
上記式(A−3)−1〜(A−3)−18中、R43は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のフェニル基等のアリール基を示す。R44、R46は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基を示す。R45は炭素数6〜20のフェニル基等のアリール基を示す。
【0064】
更に、下記式(A−3)−19、(A−3)−20に示すように、2価以上のアルキレン基、アリーレン基であるR47を含んで、ポリマーの分子内あるいは分子間が架橋されていてもよい。
【化19】

【0065】
上記式(A−3)−19、(A−3)−20中、R43は前述と同様、R47は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキレン基、又はフェニレン基等のアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。e1は1〜3の整数である。
【0066】
特に、上記式(A−3)に示される酸不安定基でカルボキシル基の水素原子を置換した繰り返し単位bとしては、下記式(A−3)−21に示されるエキソ体構造を有する(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位が好ましく挙げられる。
【0067】
【化20】

(式中、R、bは前述の通り、Rc3は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。Rc4〜Rc9及びRc12、Rc13は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示し、Rc10、Rc11は水素原子を示す。あるいは、Rc4とRc5、Rc6とRc8、Rc6とRc9、Rc7とRc9、Rc7とRc13、Rc8とRc12、Rc10とRc11又はRc11とRc12は互いに環を形成していてもよく、その場合には炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい2価の炭化水素基を示す。またRc4とRc13、Rc10とRc13又はRc6とRc8は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。Rc14は水素原子、又は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基を示す。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0068】
ここで、上記式(A−3)−21に示すエキソ構造を有する繰り返し単位を得るためのエステル体のモノマーとしては特開2000−327633号公報に示されている。具体的には下記に挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0069】
【化21】

【0070】
更に、上記式(A−3)に示される酸不安定基でカルボキシル基の水素原子を置換した繰り返し単位bとしては、下記式(A−3)−22に示されるフランジイル、テトラヒドロフランジイル、又はオキサノルボルナンジイルを有する(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位を好ましく挙げることができる。
【0071】
【化22】

(式中、R、bは前述の通りである。Rc14、Rc15は、それぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。あるいは、Rc14、Rc15は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭化水素環を形成してもよい。Rc16はフランジイル、テトラヒドロフランジイル、及びオキサノルボルナンジイルから選ばれる2価の基を示す。Rc17は水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状の1価炭化水素基を示す。)
【0072】
フランジイル、テトラヒドロフランジイル、又はオキサノルボルナンジイルを有する酸不安定基で置換された繰り返し単位を得るためのモノマーは下記に例示される。尚、Acはアセチル基、Meはメチル基を示す。
【0073】
【化23】

【0074】
【化24】

【0075】
更に、上記式(A−3)に示される酸不安定基でカルボキシル基の水素原子を置換した繰り返し単位bとしては、下記式(A−3)−23に示されるフルオレン、下記式(A−3)−24に示されるアセナフチレンを有する(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位を好ましく挙げることができる。
【化25】

(式中、R101、R102、R109は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。R107は水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基であり、酸素原子又は硫黄原子を有していてもよく、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜10のアリール基である。R103、R104、R105、R106は、それぞれ独立に水素原子、あるいはR103とR104、R104とR105、R105とR106が結合してベンゼン環を形成しても良い。R100、R108はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。Xは、単結合、−C(=O)−O−R’−、フェニレン基、又はナフチレン基である。R’は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキレン基であり、エステル基、エーテル基、又はラクトン環を有していても良い。s、t、uは、それぞれ独立に1〜4の整数である。)
【0076】
また、本発明において、ベース樹脂は、上記一般式(1)で示される基を有する繰り返し単位aと、カルボキシル基の水素原子が酸不安定基で置換されている繰り返し単位bに加えて、更に、ヒドロキシル基、ラクトン環、エーテル基、エステル基、カルボニル基、及びシアノ基から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位cを共重合した、重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲である高分子化合物(ここで0<a<1.0、0<b<1.0、0<c≦0.9、0.2≦a+b+c≦1.0の範囲である。)であることが好ましい。
【0077】
ヒドロキシル基、ラクトン環、エーテル基、エステル基、カルボニル基、及びシアノ基のいずれかを密着性基として有する繰り返し単位cを得るためのモノマーとしては、具体的には下記に例示することができる。
【0078】
【化26】

【0079】
【化27】

【0080】
【化28】

【0081】
【化29】

【0082】
【化30】

【0083】
【化31】

【0084】
ヒドロキシル基を有するモノマーの場合、例えば重合時にヒドロキシル基をエトキシエトキシ基等の酸によって脱保護し易いアセタールで置換しておいて、重合後に弱酸と水によって脱保護を行ってもよいし、アセチル基、ホルミル基、ピバロイル基等で置換しておいて重合後にアルカリ加水分解を行ってもよい。
【0085】
また、本発明のポジ型レジスト材料のベース樹脂となる高分子化合物には、下記一般式(5)に示されるインデンd1、アセナフチレンd2、クロモンd3、クマリンd4、ノルボルナジエンd5等の繰り返し単位dを共重合することもできる。
【0086】
【化32】

(式中、R110〜R114は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、一部もしくは全てがハロゲン原子で置換されたアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール基である。Yはメチレン基、酸素原子、又は硫黄原子である。d1は0≦d1≦0.4、d2は0≦d2≦0.4、d3は0≦d3≦0.4、d4は0≦d4≦0.4、d5は0≦d5≦0.4、0≦d1+d2+d3+d4+d5≦0.4である。)
【0087】
更に、本発明のポジ型レジスト材料のベース樹脂となる高分子化合物には、下記一般式(6)に示されるフェノール性水酸基の水素原子が酸不安定基で置換された繰り返し単位e1、e2を追加共重合することもできる。
【化33】

(式中R115、R118は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R117、R120は酸不安定基である。R116、R119は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、又は炭素数2〜6のアルケニル基であり、q、rは1又は2である。e1は0≦e1≦0.4、e2は0≦e2≦0.4、0≦e1+e2≦0.4である。)
尚、酸不安定基R117、R120としてはAL−1、AL−2、AL−3に示されるものを用いることができる。
【0088】
繰り返し単位a、b、c、d、e以外に共重合できる繰り返し単位fとしては、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、メチレンインダン等が挙げられる。
【0089】
また、その他に重合性オレフィンを有するオニウム塩の酸発生剤(繰り返し単位g)を共重合することもできる。
例えば、特開2006−045311号公報には、特定のスルホン酸が発生する重合性オレフィンを有するスルホニウム塩、ヨードニウム塩が提案されている。また例えば、特開2006−178317号公報には、スルホン酸が主鎖に直結したスルホニウム塩が提案されている。
【0090】
本発明では、特に好ましくは下記一般式(7)で示されるスルホニウム塩を持つ繰り返し単位g1、g2、g3を共重合することができる。
【化34】

(式中、R20、R24、R28は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、R21は単結合、フェニレン基、−O−R−、又は−C(=O)−Y−R−である。Yは酸素原子又はNH、Rは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキレン基、フェニレン基、又はアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基、又はヒドロキシル基を含んでいてもよい。R22、R23、R25、R26、R27、R29、R30、R31は同一又は異種の、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又はチオフェニル基を表す。Zは単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R32−、又は−C(=O)−Z−R32−である。Zは酸素原子又はNH、R32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシル基を含んでいてもよい。Mは非求核性対向イオンを表す。g1は0≦g1≦0.3、g2は0≦g2≦0.3、g3は0≦g3≦0.3、0≦g1+g2+g3≦0.3である。)
【0091】
の非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチド等のメチド酸等を挙げることができる。
【0092】
このように、繰り返し単位gを共重合しポリマー主鎖に酸発生剤を結合させることによって、酸拡散を小さくし、酸拡散のぼけによる解像性の低下を防止できる。また、酸発生剤が均一に分散するため、ラフネス(LWR)が改善される。
【0093】
本発明のポジ型レジスト材料のベース樹脂となるこれら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては、繰り返し単位a〜gを与えるモノマーのうち所望のモノマーを、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加え加熱重合を行い、共重合体の高分子化合物を得ることができる。
【0094】
重合時に使用する有機溶剤としてはトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。
【0095】
ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンを共重合する場合は、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンの代わりにアセトキシスチレン、アセトキシビニルナフタレンを用い、重合後上記アルカリ加水分解によってアセトキシ基を脱保護してポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシポリビニルナフタレンにする方法もある。
【0096】
アルカリ加水分解時の塩基としては、アンモニア水、トリエチルアミン等が使用できる。また反応温度としては−20〜100℃、好ましくは0〜60℃であり、反応時間としては0.2〜100時間、好ましくは0.5〜20時間である。
【0097】
ここで、繰り返し単位a〜cの割合は、0<a<1.0、0<b<1.0、0≦c≦0.9、特に0<c≦0.9、0.2≦a+b+c≦1.0であり、好ましくは0.02≦a≦0.9、0.1≦b≦0.8、0.1≦c≦0.8、0.3≦a+b+c≦1.0、より好ましくは0.05≦a≦0.8、0.15≦b≦0.7、0.15≦c≦0.7、0.4≦a+b+c≦1.0である。
【0098】
更に繰り返し単位d〜gを含む場合、繰り返し単位d〜gの割合は、0≦d+e+f+g≦0.8、特に0≦d+e+f+g≦0.7であることが好ましく、a+b+c+d+e+f+g=1である。
【0099】
尚、例えば、a+b+c=1とは、繰り返し単位a、b、cを含む高分子化合物において、繰り返し単位a、b、cの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示し、a+b+c<1とは、繰り返し単位a、b、cの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%未満でa、b、c以外に他の繰り返し単位を有していることを示す。
【0100】
本発明のポジ型レジスト材料に用いられる高分子化合物は、それぞれ重量平均分子量が1,000〜500,000、好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料が耐熱性に劣るものとなり、大きすぎるとアルカリ溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じ易くなってしまう。
尚、重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いたポリスチレン換算による測定値である。
【0101】
更に、本発明のポジ型レジスト材料に用いられる高分子化合物においては、多成分共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために、露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりする恐れがある。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
【0102】
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーや、フルオレセインメタクリレートを共重合していないポリマーをブレンドすることも可能である。
【0103】
本発明に用いられる高分子化合物は、ポジ型レジスト材料のベース樹脂として好適で、このような高分子化合物をベース樹脂とし、これに有機溶剤、酸発生剤、溶解制御剤、塩基性化合物、界面活性剤等を目的に応じ適宜組み合わせて配合してポジ型レジスト材料を構成することによって、露光部では前記高分子化合物が触媒反応により現像液に対する溶解速度が加速されるので、極めて高感度のポジ型レジスト材料とすることができ、レジスト膜の溶解コントラスト及び酸拡散速度抑制効果が高いため、解像性が高く、露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好でありながら、より優れたラフネス(LWR)を示し、特に酸拡散を抑制できることから粗密寸法差が小さく、これらのことから実用性が高く、超LSI用レジスト材料として非常に有効なものとすることができる。
【0104】
特に、酸発生剤を含有させ、酸触媒反応を利用した化学増幅ポジ型レジスト材料とすると、より高感度のものとすることができると共に、諸特性が一層優れたものとなり極めて有用なものとなる。
例えば、酸発生剤として、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。
【0105】
酸発生剤の具体例としては、特開2008−239918号公報の段落[0139]〜[0160]に記載されており、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0106】
また、本発明のポジ型レジスト材料に溶解制御剤を配合することによって、露光部と未露光部との溶解速度の差を一層大きくすることができ、解像度を一層向上させることができる。
更に、塩基性化合物を添加することによって、例えばレジスト膜中での酸の拡散速度を抑制し解像度を一層向上させることができるし、界面活性剤を添加することによってレジスト材料の塗布性を一層向上あるいは制御することができる。
【0107】
本発明のポジ型レジスト材料に含有することができる有機溶媒の具体例としては、特開2008−239918号公報の段落[0162]〜[0163]、塩基性化合物の具体例としては段落[0164]〜[0181]、界面活性剤の具体例としては段落[0182]〜[0183]、溶解制御剤の具体例としては段落[0185]〜[0192]に記載されている。
【0108】
更に、特開2008−239918号公報記載のポリマー型のクエンチャーを添加することもできる。また、必要に応じ、カルボン酸化合物やアセチレンアルコール類を添加することもでき、カルボン酸化合物の具体例としては、特開2008−239918号公報の段落[0193]〜[0201]、アセチレンアルコール類の具体例としては段落[0202]〜[0204]に記載されている。
【0109】
これらのものは、コート後のレジスト表面に配向することによってパターン後のレジストの矩形性を高める。ポリマー型クエンチャーは、液浸露光用の保護膜を適用したときのパターンの膜減りやパターントップのラウンディングを防止する効果もある。
【0110】
尚、本発明のポジ型レジスト材料において、酸発生剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.01〜100質量部、特に0.1〜80質量部とすることが好ましく、有機溶剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し50〜10,000質量部、特に100〜5,000質量部であることが好ましい。また、ベース樹脂100質量部に対し、溶解制御剤は0〜50質量部、特に0〜40質量部、塩基性化合物は0〜100質量部、特に0.001〜50質量部、界面活性剤は0〜10質量部、特に0.0001〜5質量部の配合量とすることが好ましい。
【0111】
このように調製した本発明のポジ型レジスト材料は、少なくとも、前記ポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを行うことによって、半導体基板やマスク基板等にパターン形成する方法として用いることができる。
【0112】
この場合、本発明のポジ型レジスト材料、例えば上記一般式(4)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物と、有機溶剤、酸発生剤、塩基性化合物を含む化学増幅ポジ型レジスト材料を種々の集積回路製造に用いる場合は、特に限定されないが公知のリソグラフィー技術を適用することができる。
【0113】
例えば、本発明のポジ型レジスト材料を、集積回路製造用の基板(Si、SiO、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi等)上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.1〜2.0μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で60〜150℃、10秒〜30分間、好ましくは80〜120℃、30秒〜20分間プリベークする。
【0114】
次いで、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線、真空紫外線(軟X線)等の高エネルギー線から選ばれる光源で、目的とするパターンを所定のマスクを通じて又は直接露光を行う。露光量は1〜200mJ/cm程度、好ましくは10〜100mJ/cm、又は0.1〜100μC、好ましくは0.5〜50μC程度となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、10秒〜30分間、好ましくは80〜120℃、30秒〜20分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0115】
更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜10質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、3秒〜3分間、好ましくは5秒〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより、光を照射した部分は現像液に溶解し、露光されなかった部分は溶解せず、基板上に目的のポジ型のパターンが形成される。
【0116】
尚、本発明のレジスト材料は、高エネルギー線の中でも電子線、真空紫外線(軟X線)、X線、γ線、シンクロトロン放射線、特に電子線又は波長3〜15nmの範囲の軟X線による微細パターニングに最適である。
【0117】
また、現像工程において用いる現像液としては、一般的に広く用いられているTMAH水溶液よりも、アルキル鎖を長くしたTEAH、TPAH、TBAHは現像中の膨潤を低減させてパターンの倒れを防ぐ効果があるため好ましい。例えば特許公報第3429592号には、アダマンタンメタクリレートのような脂環構造を有する繰り返し単位と、t−ブチルメタクリレートのような酸不安定基を有する繰り返し単位を共重合し、親水性基が無くて撥水性の高いポリマーの現像のために、TBAH水溶液を用いた例が提示されている。
【0118】
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)現像液は2.38重量%の水溶液が最も広く用いられている。これは0.26Nに相当し、TEAH、TPAH、TBAH水溶液も同じ規定度であることが好ましい。0.26NとなるTEAH、TPAH、TBAHの重量は、それぞれ3.84、5.31、6.78重量%である。
【0119】
EB、EUVで解像される32nm以下のパターンにおいて、ラインがよれたり、ライン同士がくっついたり、くっついたラインが倒れたりする現象が起きている。これは、現像液中に膨潤して膨らんだライン同士がくっつくのが原因と考えられる。膨潤したラインは、現像液を含んでスポンジのように軟らかいために、リンスの応力で倒れやすくなっている。アルキル鎖を長くした現像液はこの様な理由で、膨潤を防いでパターン倒れを防ぐ効果がある。
【0120】
本発明のレジスト材料はフルオレセインを繰り返し単位として含んでいる高分子化合物をベース樹脂として含有しているため、現像後のレジストパターンに光を照射すると、波長521nmの緑色の燐光を発光する。照射する光としては波長488nmのArレーザーが好ましく、発光しているレジストパターンを顕微鏡付きのCCDカメラで観察することによって位置観察をすることができる。
【実施例】
【0121】
以下、合成例、比較合成例及び実施例、比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
尚、重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いたポリスチレン換算による測定値である。
また、下記合成例で用いた密着性モノマー1、2及びPAGモノマー1は以下の通りである。
【0122】
【化35】

【0123】
密着性モノマー1:メタクリル酸(2−オキソ−1,3−ベンゾオキサチオール−5−イ
ル)
密着性モノマー2:メタクリル酸(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾオキサゾール−
5−イル)
PAGモノマー1:トリフェニルスルホニウム 1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−
2−メタクリロイルオキシプロパン−1−スルホネート
【0124】
[合成例1]
2Lのフラスコにメタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル8.2g、メタクリル酸フルオレセインエステルを8.0g、メタクリル酸5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イルを11.1g、溶媒としてテトラヒドロフランを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
メタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル:メタクリル酸フルオレセインエステル:メタクリル酸5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル=0.30:0.20:0.50
重量平均分子量(Mw)=9,700
分子量分布(Mw/Mn)=1.83
この高分子化合物を(ポリマー1)とする。
【化36】

【0125】
[合成例2]
2Lのフラスコにメタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル8.2g、メタクリル酸フルオレセインエステル8.0g、密着性モノマー1を9.4g、PAGモノマー1を5.6g、溶媒としてテトラヒドロフランを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
メタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル:メタクリル酸フルオレセインエステル:密着性モノマー1:PAGモノマー1=0.30:0.20:0.40:0.10
重量平均分子量(Mw)=9,200
分子量分布(Mw/Mn)=1.68
この高分子化合物を(ポリマー2)とする。
【化37】

【0126】
[合成例3]
2Lのフラスコにメタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル8.2g、メタクリル酸フルオレセインエステル8.0g、密着性モノマー2を8.7g、PAGモノマー1を5.6g、溶媒としてテトラヒドロフランを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
メタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル:メタクリル酸フルオレセインエステル:密着性モノマー2:PAGモノマー1=0.30:0.20:0.40:0.10
重量平均分子量(Mw)=7,300
分子量分布(Mw/Mn)=1.88
この高分子化合物を(ポリマー3)とする。
【化38】

【0127】
[合成例4]
2Lのフラスコにメタクリル酸 アセナフテニル8.3g、メタクリル酸フルオレセインエステル12.0g、メタクリル酸3−オキソ−2,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−9−イル6.7g、PAGモノマー3を5.6g、溶媒としてテトラヒドロフランを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
メタクリル酸 アセナフテニル:メタクリル酸フルオレセインエステル:メタクリル酸3−オキソ−2,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−9−イル:PAGモノマー1=0.30:0.30:0.30:0.10
重量平均分子量(Mw)=9,300
分子量分布(Mw/Mn)=1.68
この高分子化合物を(ポリマー4)とする。
【化39】

【0128】
[合成例5]
2Lのフラスコにメタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル5.5g、メタクリル酸−4−tert−ブトキシフェニル3.5g、メタクリル酸フルオレセインエステル22.0g、PAGモノマー1を5.6g、溶媒としてテトラヒドロフランを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
メタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル:メタクリル酸−4−tert−ブトキシフェニル:メタクリル酸フルオレセインエステル:PAGモノマー1=0.20:0.15:0.55:0.10
重量平均分子量(Mw)=9,300
分子量分布(Mw/Mn)=1.67
この高分子化合物を(ポリマー5)とする。
【化40】

【0129】
[合成例6]
2Lのフラスコにメタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル8.2g、メタクリル酸フルオレセインエステル16.0g、メタクリル酸3−オキソ−2,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−9−イル4.5g、PAGモノマー1を5.6g、溶媒としてテトラヒドロフランを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
メタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル:メタクリル酸フルオレセインエステル:メタクリル酸3−オキソ−2,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−9−イル:PAGモノマー1=0.30:0.40:0.20:0.10
重量平均分子量(Mw)=9,100
分子量分布(Mw/Mn)=1.88
この高分子化合物を(ポリマー6)とする。
【化41】

【0130】
[合成例7]
2Lのフラスコにメタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル8.2g、メタクリル酸フルオレセインエステル16.0g、メタクリル酸4−ヘキサフルオロイソプロパノールシクロヘキシル4.5g、PAGモノマー1を5.6g、溶媒としてテトラヒドロフランを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1.2g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液をイソプロピルアルコール1L溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
メタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル:メタクリル酸フルオレセインエステル:メタクリル酸4−ヘキサフルオロイソプロパノールシクロヘキシル:PAGモノマー1=0.30:0.40:0.20:0.10
重量平均分子量(Mw)=7,100
分子量分布(Mw/Mn)=1.83
この高分子化合物を(ポリマー7)とする。
【化42】

【0131】
[比較合成例1]
上記合成例と同様の方法で下記ポリマーを合成した。
共重合組成比(モル比)
メタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル:メタクリル酸5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル:メタクリル酸4−ヒドロキシフェニル=0.30:0.40:0.30
重量平均分子量(Mw)=8,200
分子量分布(Mw/Mn)=1.89
この高分子化合物を(比較ポリマー1)とする。
【化43】

【0132】
[比較合成例2]
共重合組成比(モル比)
メタクリル酸−3−エチル−3−エキソテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル:メタクリル酸4−ヒドロキシフェニル:メタクリル酸3−オキソ−2,7−ジオキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−9−イル:PAGモノマー1=0.30:0.20:0.40:0.10
重量平均分子量(Mw)=7,300
分子量分布(Mw/Mn)=1.88
この高分子化合物を(比較ポリマー2)とする。
【化44】

【0133】
[実施例1〜7、比較例1〜2]
電子ビーム描画評価
電子ビーム描画評価では、上記で合成した高分子化合物を用いて、界面活性剤として住友スリーエム(株)製界面活性剤のFC−4430を100ppm溶解させた溶媒に、表1に示される組成で溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過してポジ型レジスト材料を調製した。
【0134】
尚、表1、及び後述する表2中の各組成は次の通りである。
ポリマー1〜7:上記合成例1〜7で得られた高分子化合物
比較ポリマー1、2:上記比較合成例1、2で得られた高分子化合物
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
CyH(シクロヘキサノン)
酸発生剤:PAG1(下記構造式参照)
塩基性化合物:Amine1、Amine2(下記構造式参照)
【0135】
【化45】

【0136】
得られたポジ型レジスト材料を直径6インチ(150mm)のヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理したSi基板上に、クリーントラックMark 5(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコートし、ホットプレート上で110℃で60秒間プリベークして100nmのレジスト膜を作製した。これに、(株)日立製作所製HL−800Dを用いてHV電圧50keVで真空チャンバー内描画を行った。
【0137】
描画後、直ちにクリーントラックMark 5(東京エレクトロン(株)製)を用いてホットプレート上で95℃で60秒間ポストエクスポージャベーク(PEB)を行い、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
得られたレジストパターンを次のように評価した。
100nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量をレジストの感度、この時の露光量における最小の寸法を解像力とし、100nmLSのラフネス(LWR)をSEMで測定した。
レジスト組成と、EB露光における感度、解像度、及びラフネス(LWR)の結果を表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
[実施例8、比較例3]
EUV露光評価
EUV露光評価では、上記で合成した高分子化合物を用いて、表2に示される組成で溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過してポジ型レジスト材料を調製した。
得られたポジ型レジスト材料をヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理した直径4インチ(100mm)のSi基板上にスピンコートし、ホットプレート上で105℃で60秒間プリベークして50nmのレジスト膜を作製した。これに、NA0.3、ダイポール照明でEUV露光を行った。
【0140】
露光後直ちにホットプレート上で60秒間ポストエクスポージャベーク(PEB)を行い2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
得られたレジストパターンを次のように評価した。
35nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量をレジストの感度、この時の露光量における最小の寸法を解像力とし、35nmLSのラフネス(LWR)をSEMで測定した。
レジスト組成と、EUV露光における感度、解像度、及びラフネス(LWR)の結果を表2に示す。
【0141】
【表2】

【0142】
表1、2より、本発明のポジ型レジスト材料(実施例1〜8)は、従来のポジ型レジスト材料(比較例1〜3)に比べ、十分な解像力と感度とラフネス(LWR)を満たしており、更に酸発生剤を共重合することによって解像度とラフネス(LWR)の特性を一段と向上させることができることがわかった。
また、本発明のポジ型レジスト材料を用いた実施例1〜8では、露光後のパターン形状がいずれも矩形と良好であった。
【0143】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(1)で示される基を有する繰り返し単位aと、カルボキシル基の水素原子が酸不安定基で置換されている繰り返し単位bとを含む、重量平均分子量が1,000〜500,000の高分子化合物をベース樹脂として含有することを特徴とするポジ型レジスト材料。
【化1】

【請求項2】
前記繰り返し単位aが、下記一般式(2)で示されるものであることを特徴とする請求項1に記載のポジ型レジスト材料。
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基である。aは0<a<1.0の範囲である。)
【請求項3】
前記繰り返し単位bが、下記一般式(3)で示されるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポジ型レジスト材料。
【化3】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは酸不安定基を表す。Xは単結合、エステル基、ラクトン環を有する炭素数1〜12の連結基、フェニレン基、又はナフチレン基である。bは0<b<1.0の範囲である。)
【請求項4】
前記繰り返し単位aと前記繰り返し単位bに加えて、更に、ヒドロキシル基、ラクトン環、エーテル基、エステル基、カルボニル基、及びシアノ基から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位cを共重合した高分子化合物(ここで0<a<1.0、0<b<1.0、0<c≦0.9、0.2≦a+b+c≦1.0の範囲である)をベース樹脂として含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料。
【請求項5】
前記ポジ型レジスト材料が、化学増幅型のポジ型レジスト材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料。
【請求項6】
前記ポジ型レジスト材料が、有機溶剤、酸発生剤、溶解制御剤、塩基性化合物、及び界面活性剤のいずれか1つ以上を含有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料。
【請求項7】
少なくとも、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のポジ型レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
前記高エネルギー線で露光する工程において、電子ビーム又は波長3〜15nmの範囲の軟X線を光源として用いることを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2012−37867(P2012−37867A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118830(P2011−118830)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】