説明

ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置。

【課題】現像工程及び湿度処理後の基板との密着性、及び保存安定性に優れたポジ型感光性樹脂組成物を、また、前記ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物で構成されている硬化膜を、さらに、前記硬化膜で構成されている保護膜、絶縁膜、半導体装置及び表示体装置を提供することを課題とする。
【解決手段】アルカリ可溶性樹脂(A)、感光性ジアゾナフトキノン化合物(B)、一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)を含んでいるポジ型感光性樹脂組成物を提供することにより上記課題を解決する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置である表面保護膜、層間絶縁膜には、耐熱性に優れ、かつ卓越した電気特性及び機械特性等を有したポリイミド樹脂が用いられてきた。しかし、最近では高極性のイミド環由来のカルボニル基が無いことから耐湿信頼性が良いとされるポリベンゾオキサゾール樹脂が使われ始めており、樹脂自身に感光性を付与することにより、レリーフパターン形成工程の一部の簡略化を可能とする感光性樹脂組成物が開発されている。
現在では、安全性の面からの更なる改良によりアルカリ水溶液で現像が可能であるポリベンゾオキサゾール前駆体と感光剤であるジアゾキノン化合物により構成されるポジ型感光性樹脂組成物が開発されている(特許文献1参照)。ここで、ポジ型感光性樹脂組成物のレリーフパターンの作製を現像メカニズムより説明する。ウェハ上の塗膜に、ステッパーと呼ばれる露光装置でマスクの上から化学線を照射(露光)することにより、露光された部分(以下露光部)と露光されていない部分(以下未露光部)が出来る。この未露光部中に存在するジアゾキノン化合物はアルカリ水溶液に不溶であり、また樹脂と相互作用することで更にアルカリ水溶液に対し耐性を持つようになる。一方、露光部に存在していたジアゾキノン化合物は化学線の作用によって化学変化を起こし、アルカリ水溶液に可溶となり、樹脂の溶解を促進させる。この露光部と未露光部との溶解性の差を利用し、露光部を溶解除去することにより未露光部のみのレリーフパターンの作製が可能となる。
【0003】
近年、半導体装置の高機能化は急速に進み、市場のニーズとして「速く、小さく、安く、低消費電力」という条件を同時に満たす半導体装置が求められている。そこで、半導体装置を構成する半導体素子の微細化が必須であり、素子内部のレリーフパターンの微細化も進んでいる。故に、従来よりも塗膜と基板との接触面積が狭くなってきており、特許文献1で開示されている感光性樹脂組成物では、現像工程おいて微細なレリーフパターンが基板から剥れたり、また硬化膜が湿度処理後に剥離したりするという問題がある場合があった。
【0004】
【特許文献1】特公平1−46862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは現像工程及び湿度処理後の基板との密着性、及び保存安定性に優れたポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜およびそれを用いた半導体装置、表示体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記[1]〜[13]に記載の本発明により達成される。
[1]アルカリ可溶性樹脂(A)と、感光性ジアゾキノン化合物(B)と、一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)を含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R、R、R、Rは有機基である。iは1〜3、jは0〜2、kは0〜2、lは1〜4の整数である。)
[2]前記アルカリ可溶性樹脂(A)が少なくとも1種のジアミンと、カルボン酸誘導体とを反応して得られるポリアミド系樹脂を含む[1]記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[3]前記アルカリ可溶性樹脂(A)が一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミド系樹脂を含むものである[1]記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、X、Yは有機基である。Rは水酸基、−O−R、アルキル基、アシルオキシ基、シクロアルキル基であり、同一でも異なっても良い。Rは水酸基、カルボキシル基、−O−R、−COO−Rのいずれかであり、同一でも異なっても良い。mは0〜8の整数、nは0〜8の整数である。Rは炭素数1〜15の有機基である。ここで、Rが複数ある場合は、それぞれ異なっていても同じでもよい。Rとして水酸基がない場合は、Rは少なくとも1つはカルボキシル基でなければならない。また、Rとしてカルボキシル基がない場合、Rは少なくとも1つは水酸基でなければならない。)
[4]前記ケイ素化合物(C−1)が下記構造である[1]乃至[3]のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【化3】

(式中、R、R、Rは炭素数1〜10のアルキル基である。iは1〜3、jは0〜2、lは1〜4の整数である。)
[5]前記ケイ素化合物(C−1)が下記構造である[1]乃至[4]記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化4】

(式中、Rはメチル基又はエチル基、Rアルキル基である。lは1〜4の整数である。)
[6]前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、一般式(1)で示されるケ
イ素化合物(C−1)を0.1〜20重量部含むものである[1]乃至[5]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[7]ポジ型感光性樹脂組成物が、更に一般式(5)及び/又は(6)で示されるケイ素化合物(C−2)を含んでなる[1]乃至[6]のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】

(式中、R、R、R10、R11は有機基であり、互いに独立であり、同じでも異なっていても良い。pは0〜2の整数である。)
【化6】

(式中、R12、R13、R14、R15は有機基であり、互いに独立であり、同じでも異なっていても良い。qは0〜2の整数である。)
[8]前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、一般式(5)及び/又は(6)で示されるケイ素化合物(C−2)を0.1〜10重量部含むものである[7]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[9]一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)の添加量をX1、一般式(5)及び/又は(6)で示されるケイ素化合物(C−2)の添加量をX2とした時、(X1)/(X2)=1〜20を満たす[7]又は[8]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[10][1]乃至[9]に記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする硬化膜。
[11][10]に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする保護膜。
[12][10]に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする絶縁膜。
[13][10]に記載の硬化膜を有していることを特徴とする半導体装置。
[14][10]に記載の硬化膜を有していることを特徴とする表示体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、現像工程及び湿度処理後の基板との密着性、及び保存安定性に優れたポジ型感光性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜、保護膜、絶縁膜、半導体装置、表示体装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶樹脂(A)と、感光性ジアゾキノン化合物(B)と、下記一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)を含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物に関するものである。
【0009】
【化7】

(式中、R、R2、R、Rは有機基である。iは1〜3、jは0〜2、kは0〜2
、lは1〜4の整数である。)
【0010】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、ケイ素化合物(C−1)を0.1〜20重量部含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物に関するものである。
更に一般式(5)及び/又は(6)で示されるケイ素化合物(C−2)を併用することを特徴とするポジ型感光性組成物に関するものである。
【0011】
【化8】

(式中、R、R、R10、R11は有機基であり、互いに独立であり、同じでも異なっていても良い。pは0〜2の整数である。)
【0012】
【化9】

(式中、R12、R13、R14、R15は有機基であり、互いに独立であり、同じでも異なっていても良い。qは0〜2の整数である。)
【0013】
ケイ素化合物(C−1)の添加量をX1、ケイ素化合物(C−2)の添加量をX2とした時、(X1)/(X2)=1〜20を満たすことを特徴とする。
また、本発明の硬化膜は、上記記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする。また、本発明の保護膜、絶縁膜は、上記記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする。更に半導体装置、表示体装置は、上記記載の硬化膜を有していることを特徴とする。
以下に本発明のポジ型感光性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。なお下記は例示であり、本発明は何ら下記に限定されるものではない。
【0014】
本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂(A)としては、例えばクレゾール型ノボラック樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、メタクリル酸樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂、水酸基、カルボキシル基等を含む環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等
が挙げられる。これらの中でも耐熱性に優れ、機械特性が良いという点からポリアミド系樹脂が好ましく、具体的にはポリベンゾオキサゾール構造およびポリイミド構造の少なくとも一方を有し、かつ主鎖または側鎖に水酸基、カルボキシル基、エーテル基またはエステル基を有する樹脂、ポリベンゾオキサゾール前駆体構造を有する樹脂、ポリイミド前駆体構造を有する樹脂、ポリアミド酸エステル構造を有する樹脂等が挙げられる。このようなポリアミド系樹脂としては、例えば下記式(2)で示されるポリアミド系樹脂を挙げることができる。
【0015】
【化10】

(式中、X、Yは有機基である。Rは水酸基、−O−R、アルキル基、アシルオキシ基、シクロアルキル基であり、同一でも異なっても良い。Rは水酸基、カルボキシル基、−O−R、−COO−Rのいずれかであり、同一でも異なっても良い。mは0〜8の整数、nは0〜8の整数である。Rは炭素数1〜15の有機基である。ここで、Rが複数ある場合は、それぞれ異なっていても同じでもよい。Rとして水酸基がない場合は、Rは少なくとも1つはカルボキシル基でなければならない。また、Rとしてカルボキシル基がない場合、Rは少なくとも1つは水酸基でなければならない。)
【0016】
一般式(2)で示されるポリアミド系樹脂において、Xの置換基としてのO−R、Yの置換基としてのO−R、COO−Rは、水酸基、カルボキシル基のアルカリ水溶液に対する溶解性を調節する目的で、炭素数1〜15の有機基であるRで保護された基であり、必要により水酸基、カルボキシル基を保護しても良い。Rの例としては、ホルミル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0017】
一般式(2)で示される構造を含むポリアミド系樹脂は、例えば、Xを含むジアミン或いはビス(アミノフェノール)、2,4−ジアミノフェノール等から選ばれる化合物と、Yを含むジカルボン酸或いはジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸誘導体等から選ばれる化合物とを反応して得られるものである。なお、ジカルボン酸の場合には反応収率等を高めるため、1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等を予め反応させた活性エステル型のジカルボン酸誘導体を用いてもよい。
【0018】
一般式(2)のXとしては、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、フラン類等の複素環式化合物、シロキサン化合物等が挙げられ、より具体的には下記式(7)で示されるものを好ましく挙げることができる。これらは、必要により1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0019】
【化11】

(ここで*はNH基に結合することを示す。R18〜R21は有機基である。)
【0020】
一般式(2)で示すように、XにはRが0〜8個結合される(式(7)において、Rは省略)。
【0021】
式(7)中で特に好ましいものとしては、耐熱性、機械特性が特に優れる下記式(8)で表されるものが挙げられる。
【0022】
【化12】

(式中、*はNH基に結合することを示す。式中Dは、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−NHCO−、−C(CF−、又は単結合である。R22は、はアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、シクロアルキル基のいずれかであり、同一でも異なっても良い。R23は、アルキル基、アルキルエステル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。s=1〜3、t=0〜2の整数である。)
【0023】
【化13】

(式中、*はNH基に結合することを示す。)
【0024】
一般式(2)のXが上記式(8−4)、(8−5)、(8−7)である場合、式(C−1)で示されるケイ素化合物との組み合わせにより、基板との密着性がより向上する。
【0025】
又、一般式(2)のYは有機基であり、前記Xと同様のものが挙げられ、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族化合物、ビスフェノール類、ピロール類、ピリジン類、フラン類等の複素環式化合物等が挙げられ、より具体的には下記式(9)で示されるものを好ましく挙げることができる。これらは1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
【化14】

(ここで*はC=O基に結合することを示す。R26〜R29は有機基である。)
【0027】
一般式(2)で示すように、Yには、Rが0〜8個結合される(式(9)において、Rは省略)。
【0028】
これらの中で特に好ましいものとしては、耐熱性、機械特性が特に優れる下記式(10)、式(11)で表されるものが挙げられる。
下記式(10)中のテトラカルボン酸二無水物由来の構造については、C=O基に結合する位置が両方メタ位であるもの、両方パラ位であるものを挙げているが、メタ位とパラ位をそれぞれ含む構造でもよい。
【0029】
【化15】

【0030】
【化16】

(式中、*はC=O基に結合することを示す。R30は、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ベンジルエーテル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。R31は、水素原子又は炭素数1〜15の有機基から選ばれた1つを示し、一部が置換されていてもよい。v=0〜2の整数である。)
【0031】
【化17】

(式中、*はC=O基に結合することを示す。)
【0032】
また、上述の一般式(2)で示されるポリアミド系樹脂は、該ポリアミド系樹脂の末端のアミノ基を、アルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基、または環式化合物基を含む酸無水物を用いてアミドとしてキャップすることが好ましい。これにより、保存性を向上することができる。
このような、アミノ基と反応した後のアルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基または環式化合物基を含む酸無水物に起因する基としては、例えば式(12)、式(13)で示される基等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0033】
【化18】

【0034】
【化19】

【0035】
これらの中で特に好ましいものとしては、式(14)で選ばれる基が好ましい。これにより、特に保存性を向上することができる。
【0036】
【化20】

【0037】
またこの方法に限定される事はなく、該ポリアミド系樹脂中に含まれる末端の酸をアル
ケニル基又はアルキニル基を少なくとも1個有する脂肪族基又は環式化合物基を含むアミン誘導体を用いてアミドとしてキャップすることもできる。
【0038】
本発明で用いる感光性ジアゾキノン化合物(B)は、例えばフェノール化合物と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸とのエステルが挙げられる。具体的には、式(15)〜式(18)に示すエステル化合物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0039】
【化21】

【0040】
【化22】

【0041】
【化23】

【0042】
【化24】

【0043】
【化25】

式中Qは、水素原子、式(19)、式(20)のいずれかから選ばれるものである。ここで各化合物のQのうち、少なくとも1つは式(19)、式(20)である。
【0044】
本発明で用いる感光性ジアゾキノン化合物(B)の添加量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して1〜50重量部が好ましい。より好ましくは10〜40重量部である。添加量が上記範囲内であるとすると、特に感度が優れる。
【0045】
本発明で用いるケイ素化合物(C−1)は、下記一般式(1)で示される構造である。
【0046】
【化26】

(式(1)中、R、R、R、Rは有機基である。iは1〜3、jは0〜2、kは0〜2、lは1〜4の整数である。)
【0047】
前記ケイ素化合物を添加することにより、塗膜と基板との密着性が向上するため、現像工程における微細なレリーフパターンの剥れは見られず、また熱処理工程(後述する)後に行う湿度処理後のJIS D0202に準拠した密着性試験においてもパターンの剥離
等は見られない。前記ケイ素化合物は、柔軟性に富む有機基Rを介してアルコキシシラン基を有しており、アルコキシシラン基が基板と相互作用するの対し、柔軟性に富む有機基はアルカリ可溶性樹脂と絡まりあい、親和性が向上する為に、現像工程における密着性が良好であると考えられる。また、前記ケイ素化合物は、芳香環を持つことから熱処理工程に耐えうる耐熱性を所有している上に極性基がなく耐湿安定性にも優れていると考えられる為、湿度処理後においても密着性が良好であると考える。
また、前記ケイ素化合物を添加したポジ型感光性樹脂組成物は、室温で放置した時の保存安定性に優れている。これは、前記ケイ素化合物が、アルカリ可溶性樹脂との反応性基を有していない疎水的な構造である為と考える。
【0048】
一般式(1)中のR、R、Rは有機基であれば特に限定されないが、アルキル基が好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
一般式(1)中のRは有機基であれば特に限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基等が好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
一般式(1)で示されるケイ素化合物のうち、基板との密着性、保存性の観点から下記式(3)で示される構造が好ましい。
【0051】
【化27】

(式中、R、R、Rは炭素数1〜10のアルキル基である。iは1〜3、jは0〜2、lは1〜4の整数である。)
【0052】
特に好ましくは、更に基板との密着性、保存性に優れる下記式(4)で示される構造である。
【0053】
【化28】

(式中、Rはメチル基又はエチル基、Rはアルキル基である。lは1〜4の整数である。)
【0054】
前記有機ケイ素化合物(C−1)の添加量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、0.05〜50重量部であることが好ましい。より好ましくは0.1〜20重量部である。添加量が上記範囲内であると、基板との密着性が良好で有り、また保存安定性にも優れる。
【0055】
一般式(1)で示されるケイ素化合物は、例えば、メチルフェネチル(トリメトキシシ
ラン)、エチルフェネチル(トリメトキシシラン)、プロピルフェネチル(トリメトキシシラン)、ブチルフェネチル(トリメトキシシラン)、メチルフェネチル(トリエトキシシラン)
、エチルフェネチル(トリエトキシシラン)、プロピルフェネチル(トリエトキシシラン)、ブチルフェネチル(トリエトキシシラン)、メチルベンジル(トリメトキシシラン)、エチルベンジル(トリメトキシシラン)、メチルベンジル(トリエトキシシラン)、エチルベンジル(トリエトキシシラン)、1,3−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン,1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリルメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリルメチル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中で特に好ましいのはより密着性が向上するエチルフェネチル(トリメトキシシラン)、1,3−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンである。これらは単独でも複数の組み合わせで用いても良い。
【0056】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、更に一般式(5)及び/又は(6)で示されるケイ素化合物(C−2)を併用しても良い。これにより、前記ケイ素化合物はカルボン酸を有している為、現像工程後にパターンの周辺部に発生する可能性のある樹脂のとけ残り(スカム)を低減させる効果が得られる。また、前記ケイ素化合物は、基板に作用した式(1)で示されるケイ素化合物と相互作用することにより、更に樹脂との親和性が高くなる為、基板との良好な密着性が得られる。
【0057】
【化29】

(式中、R、R、R10、R11は有機基であり、互いに独立であり、同じでも異なっていても良い。pは0〜2の整数である。)
【0058】
【化30】

(式中、R12、R13、R14、R15は有機基であり、互いに独立であり、同じでも異なっていても良い。qは0〜2の整数である。)
【0059】
式(5)中のRは、有機基であれば特に限定されないが、好ましくは下記式(21)で表されるもの等が挙げられる。
【0060】
【化31】

(ここで*はC=O基に結合することを示す。式中Eは、−CH−、−C(CH
−、−O−、−S−、−SO −、−CO−、−NHCO−、−C(CF−、又
は単結合である。)
【0061】
式(22)中で特に好ましいものとしては、密着性に優れる下記式(22)で表されるものである。
【0062】
【化32】

(ここで*はC=O基に結合することを示す。)
【0063】
式(5)中のR〜R11は、有機基であれば特に限定されないが、好ましくはアルキ
ル基等が挙げられる。
【0064】
式(6)中のR12は、有機基であれば特に限定されないが、好ましくは下記式(23)で表されるもの等が挙げられる。
【0065】
【化33】

(ここで*はC=O基に結合することを示す。R32は水素原子又は炭素数1〜10の有機基から選ばれた1つを示し、一部が置換されていてもよい。R33は、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ベンジルエーテル基、ハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。w=0〜2の整数である。)
【0066】
式(23)中で特に好ましいものとしては、密着性に優れる下記式(24)で表されるものである。
【0067】
【化34】

(ここで*はC=O基に結合することを示す。)
【0068】
式(6)中のR13〜R15は、有機基であれば特に限定されないが、好ましくはアルキル基等が挙げられる。
【0069】
前記ケイ素化合物(C−2)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、0.05〜30重量部であることが好ましい。より好ましくは0.1〜10重量部である。添加量が上記範囲内であると、更なる基板との良好な密着性が得られ、またカルボン酸が適度に存在することにより、現像工程後にパターンの周辺部に発生する可能性のあるスカムをより低減させる効果がある。
【0070】
前記ケイ素化合物(C−2)は、例えばアミノ基を有するケイ素化合物と酸二無水物又は酸無水物とを反応することにより得られる。
【0071】
前記ケイ素化合物(C−1)の添加量をX1、ケイ素化合物(C−2)の添加量をX2とした時、(X1)/(X2)=0.1〜30を満たすことが好ましい。
【0072】
特に好ましくは、(X1)/(X2)=1〜20を満たすことである。
前記範囲内にあると、更に基板との密着性が良好であり、保存安定性も優れる。
【0073】
更に本発明では、高感度で更にスカム無くパターニングできるようにフェノール性水酸基を有する化合物を併用することができる。
【0074】
具体的な構造としては、式(25)で表されるものが挙げられる。これらは1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0075】
【化35】

【0076】
前記フェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、特に限定されないが、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。添加量が、上記範囲内であると現像時において更にスカムの発生が抑制され、また露光部の溶解性が促進されることにより感度が向上する。
【0077】
本発明における樹脂組成物およびポジ型感光性樹脂組成物には、必要によりアクリル系、シリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、あるいはシランカップリング剤等の添加剤等を含んでも良い。
【0078】
前記シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】

本発明においては、これらの成分を溶剤に溶解し、ワニス状にして使用する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコール
モノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられ、単独でも混合して用いても良い。
【0080】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の使用方法は、まず該組成物を適当な支持体(基板)、例えば、シリコンウエハー、セラミック基板、アルミ基板等に塗布する。塗布量は、半導体素子上に塗布する場合、硬化後の最終膜厚が0.1〜30μmになるよう塗布する。膜厚が下限値を下回ると、半導体素子の保護表面膜としての機能を十分に発揮することが困難となり、上限値を越えると、微細な加工パターンを得ることが困難となるばかりでなく、加工に時間がかかりスループットが低下する。塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等がある。次に、60〜130℃でプリベークして塗膜を乾燥後、所望のパターン形状に化学線を照射する。化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜500nmの波長のものが好ましい。
【0081】
次に照射部を現像液で溶解除去することによりレリーフパターンを得る。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等のアルカリ類の水溶液、及びこれにメタノール、エタノールのごときアルコール類等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0082】
次に、現像によって形成したレリーフパターンをリンスする。リンス液としては、蒸留水を使用する。次に加熱処理を行い、オキサゾール環、又はオキサゾール環及びイミド環を形成し、耐熱性に富む最終パターンを得る。
加熱処理温度は、180℃〜380℃が好ましく、より好ましくは200℃〜350℃である。ここで行う加熱処理が前述した熱処理工程のことである。
【0083】
次に、本発明によるポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜について説明する。ポジ型感光性樹脂組成物の硬化物である硬化膜は、半導体素子等の半導体装置用途のみならず、TFT型液晶や有機EL等の表示体装置用途、多層回路の層間絶縁膜やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜としても有用である。
【0084】
半導体装置用途の例としては、半導体素子上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなるパッシベーション膜、パッシベーション膜上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなるバッファーコート膜等の保護膜、また、半導体素子上に形成された回路上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなる層間絶縁膜等の絶縁膜、また、α線遮断膜、平坦化膜、突起(樹脂ポスト)、隔壁等を挙げることができる。
【0085】
表示体装置用途の例としては、表示体素子上に上述のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜を形成してなる保護膜、TFT素子やカラーフィルター用等の絶縁膜または平坦化膜、MVA型液晶表示装置用等の突起、有機EL素子陰極用等の隔壁等を挙げることができる。その使用方法は、半導体装置用途に準じ、表示体素子やカラーフィルターを形成した基板
上にパターン化されたポジ型感光性樹脂組成物層を、上記の方法で形成することによるものである。表示体装置用途の、特に絶縁膜や平坦化膜用途では、高い透明性が要求されるが、このポジ型感光性樹脂組成物層の硬化前に、後露光工程を導入することにより、透明性に優れた樹脂層が得られることもでき、実用上更に好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
≪実施例1≫
[アルカリ可溶性樹脂(A−1)の合成]
ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸0.900モルと1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール1.800モルとを反応させて得られたジカルボン酸誘導体(活性エステル)443.21g(0.900モル)とヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン366.26g(1.000モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン3200gを加えて溶解させた。その後オイルバスを用いて75℃にて12時間反応させた。
次にN−メチル−2−ピロリドン100gに溶解させた4−エチニルフタル酸無水物34.43g(0.200モル)を加え、更に12時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/イソプロパノール=3/1(体積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、目的のアルカリ可溶性樹脂(A−1)を得た。
【0087】
[感光性ジアゾキノン化合物の合成]
フェノール式(Q−1)15.82g(0.025モル)と、トリエチルアミン8.40g(0.083モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、テトラヒドロフラン135gを加えて溶解させた。この反応溶液を10℃以下に冷却した後に、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロライド22.30g(0.083モル)をテトラヒドロフラン100gと共に10℃以上にならないように徐々に滴下した。その後10℃以下で5分攪拌した後、室温で5時間攪拌して反応を終了させた。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(体積比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、式(B−1)の構造で示される感光性ジアゾキノン化合物を得た。
【0088】
[ポジ型感光性樹脂組成物の作製]
合成したアルカリ可溶性樹脂(A−1)100g、式(B−1)の構造を有する感光性
ジアゾキノン化合物15g、下記式(C−1)−1の構造を有するケイ素化合物18gを、γ―ブチロラクトン150gに溶解した後、孔径0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過しポジ型感光性樹脂組成物を得た。
【0089】
[現像工程の密着性評価]
上記ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分プリベークし、膜厚約8.0μmの塗膜を得た。この塗膜に凸版印刷(株)製・マスク(テストチャートNo.1:幅0.88〜50μmの残しパターン及び抜きパターンが描かれている)を通して、i線ステッパー((株)ニコン製・4425i)を用いて、100mJ/cmから780mJ/cmまで10mJ/cm刻みで露光量を変化させて照射した。
次に2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、未露光部の塗膜を0.5〜1.0μm膜減りさせるような時間で現像することによって露光部を溶解除去した後、純水で10秒間リンスした。現像後に、パターンが形成された露光量からプラス100mJ/cmの部分における3μmラインの剥れの有無を確認した。その結果
、3μmラインは剥れず残っており、現像工程において未露光部が基板から剥れないことが確認された。
【0090】
[湿度処理後の密着性評価]
上記ポジ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分プリベークし、膜厚約8.0μmの塗膜を得た。
次にクリーンオーブンを用いて酸素濃度1,000ppm以下で、150℃/30分+320℃/30分で加熱硬化を行い、硬化膜を得た。この硬化膜に、JIS K540
0に準拠してカッターナイフにて1×1(mm)サイズの正方形が縦横10列づつ計100個の碁盤目を作成した。このサンプルを湿度処理(プレッシャークッカー)試験;125℃、100%、0.2MPaの条件下24時間連続処理した後、JIS D0202に
準拠して評価した。その結果、剥れた碁盤目の数は0個であった。碁盤目100個のうち1個でも剥れると実用上問題であることを考えると、湿度処理後も良好な密着性を示すことが確認された。
【0091】
[保存安定性の評価]
上記ポジ型感光性樹脂組成物は作製時にE型粘度計(TV−22形,東機産業製)により、粘度(T1)を測定した。その結果988Paだった。そのポジ型感光性樹脂組成物を室温放置して20日後に再度、前記同様に粘度(T2)を測定し、その結果1220Paだった。((T2)−(T1)/(T1))×100(%)により粘度上昇率を算出すると、19%であった。20日間での粘度上昇率は20%以下であることが実用上問題ないレベルであり、室温での保存安定性は良好であることが確認された。
【0092】
≪実施例2≫
下記式(C−1)−1の構造を有するケイ素化合物の代わりに下記式(C−1)−2、(C−2)−1、(C−2)−2の構造を有するケイ素化合物を各々6g、2g、2g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0093】
≪実施例3≫
下記式(C−1)−1の構造を有するケイ素化合物の代わりに下記式(C−1)−2、(C−2)−1の構造を有するケイ素化合物を各々9g、0.5g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0094】
≪実施例4≫
実施例1のポジ型感光性樹脂組成物より、下記式(C−1)−1の構造を有するケイ素化合物の代わりに下記式(C−1)−2の構造を有するケイ素化合物を10g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0095】
≪実施例5≫
実施例1におけるアルカリ可溶性樹脂の合成において、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸のモル比を0.45モルに減らし、替わりにイソフタル酸を0.45モル新たに加え、更にヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン366.26g(1.000モル)をすべて4,4′‐メチレンビス(2−アミノ−3,6‐ジメチルフェノール)286.4g(1.000モル)へ変更して同様に反応し、アルカリ可溶性樹脂(A−2)を合成した。
アルカリ可溶性樹脂(A−1)の代わりに(A−2)を、かつ下記式(C−1)−1の構造を有するケイ素化合物の代わりに、下記式(C−1)−2、(C−2)−1、(C−2)−2の構造を有するケイ素化合物を各々9g、2g、1g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0096】
≪実施例6≫
アルカリ可溶性樹脂(A−1)の代わりに(A−2)を、かつ下記式(C−1)−1の構造を有するケイ素化合物の代わりに、下記式(C−1)−2、(C−2)−2の構造を有するケイ素化合物を各々12g、0.8g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0097】
≪実施例7≫
アルカリ可溶性樹脂を(A−1)の代わりに(A−2)を、かつ下記式(C−1)−1の構造を有するケイ素化合物の代わりに、下記式(C−1)−2の構造を有するケイ素化合物を12g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0098】
≪実施例8≫
実施例1におけるアルカリ可溶性樹脂の合成において、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸のモル比を0.54モルに減らし、替わりにイソフタル酸を0.36モル新たに加え、更にヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン366.26g(1.000モル)すべてを、4,4′‐メチレンビス(2−アミノ−3,6‐ジメチルフェノール)214.78g(0.750モル)と4,4′‐メチレンビス(2−アミノフェノール)70.08g(0.250モル)へ変更して同様に反応し、アルカリ可溶性樹脂(A−3)を合成した。
アルカリ可溶性樹脂(A−1)の代わりに(A−3)を、かつ下記式(C−1)−1の構造を有するケイ素化合物の代わりに、下記式(C−1)−2、(C−2)−1、(C−2)−2、(C−3)の構造を有するケイ素化合物を各々10g、1g、1g、2g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0099】
≪実施例9≫
アルカリ可溶性樹脂(A−1)の代わりに(A−3)を、かつ下記式(C−1)−1の構造を有するケイ素化合物の代わりに、下記式(C−1)−2、(C−2)−2の構造を有するケイ素化合物を各々10g、1g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0100】
≪実施例10≫
アルカリ可溶性樹脂(A−1)の代わりに(A−3)を、かつ下記式(C−1)−1の構造を有するケイ素化合物の代わりに、下記式(C−1)−2、(C−2)−1の構造を有するケイ素化合物を各々12g、2g添加した以外は実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0101】
≪比較例1≫
下記式(C−1)−2の構造を有するケイ素化合物を添加しない以外は実施例2と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0102】
≪比較例2≫
下記式(C−1)−2の構造を有するケイ素化合物の代わりに、下記式(C−4)の構造を有するケイ素化合物を10g添加した以外は実施例5と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
【0103】
≪比較例3≫
下記式(C−1)−2の構造を有するケイ素化合物の代わりに、下記式(C−5)の構造を有するケイ素化合物を10g添加した以外は実施例5と同様にポジ型感光性樹脂組成
物を作製し、評価を行った。
【0104】
≪比較例4≫
下記式(C−1)−2の構造を有するケイ素化合物の代わりに、下記式(C−6)の構造を有するケイ素化合物を5g添加した以外は実施例5と同様にポジ型感光性樹脂組成物を作製し、評価を行った。
以下に、実施例及び比較例の(Q−1)、(B−1)、(C−1)−1、(C−1)−2、(C−2)−1、(C−2)−2、(C−3)、(C−4)、(C−5)、(C−6)の構造、及び表1を示す。ここで、表1中のアルカリ可溶性樹脂、及びケイ素化合物の数字は添加重量部である。
【0105】
【化36】

【0106】
【化37】

【0107】
表1に示すように、実施例1〜10は,現像工程及び吸湿処理後の密着性評価において、塗膜の剥れは見られておらず、基板との密着性が良いことが分かる。また、保存安定性評価においても、20日間の室温粘度上昇率は20%以下となっており、安定性も優れていると考えられる。
【0108】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、現像工程及び、吸湿処理後においても基板との密
着性が良好で、かつ保存安定性に優れており、半導体素子、表示素子の表面保護膜、層間絶縁膜等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂(A)と、感光性ジアゾキノン化合物(B)と、一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)を含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R、R、R、Rは有機基である。iは1〜3、jは0〜2、kは0〜2、lは1〜4の整数である。)
【請求項2】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が少なくとも1種のジアミンと、カルボン酸誘導体とを反応して得られるポリアミド系樹脂を含む、請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミド系樹脂を含むものである、請求項1記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、X、Yは有機基である。Rは水酸基、−O−R、アルキル基、アシルオキシ基、シクロアルキル基であり、同一でも異なっても良い。Rは水酸基、カルボキシル基、−O−R、−COO−Rのいずれかであり、同一でも異なっても良い。mは0〜8の整数、nは0〜8の整数である。Rは炭素数1〜15の有機基である。ここで、Rが複数ある場合は、それぞれ異なっていても同じでもよい。Rとして水酸基がない場合は、Rは少なくとも1つはカルボキシル基でなければならない。また、Rとしてカルボキシル基がない場合、Rは少なくとも1つは水酸基でなければならない。)
【請求項4】
前記ケイ素化合物(C−1)が下記構造である、請求項1乃至3のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
【化3】

(式中、R、R、Rは炭素数1〜10のアルキル基である。iは1〜3、jは0〜2、lは1〜4の整数である。)
【請求項5】
前記ケイ素化合物(C−1)が下記構造である、請求項1乃至4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化4】

(式中、Rはメチル基又はエチル基、Rアルキル基である。lは1〜4の整数である。)
【請求項6】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)を0.05〜50重量部含むものである、請求項1乃至5のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポジ型感光性樹脂組成物が、更に一般式(5)及び/又は(6)で示されるケイ素化合物(C−2)を含んでなる、請求項1乃至6のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】

(式中、R、R、R10、R11は有機基であり、互いに独立であり、同じでも異なっていても良い。pは0〜2の整数である。)
【化6】

(式中、R12、R13、R14、R15は有機基であり、互いに独立であり、同じでも異なっていても良い。qは0〜2の整数である。)
【請求項8】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、一般式(5)及び/又は(6)で示されるケイ素化合物(C−2)を0.05〜30重量部含むものである請求項7に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
一般式(1)で示されるケイ素化合物(C−1)の添加量をX1、一般式(5)及び/又は(6)で示されるケイ素化合物(C−2)の添加量をX2とした時、(X1)/(X2)=0.1〜30を満たす請求項7又は8に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化物で構成されていることを特徴とする硬化膜。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする保護膜。
【請求項12】
請求項10に記載の硬化膜で構成されていることを特徴とする絶縁膜。
【請求項13】
請求項10に記載の硬化膜を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項10に記載の硬化膜を有していることを特徴とする表示体装置。

【公開番号】特開2008−191574(P2008−191574A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28251(P2007−28251)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】