説明

ポットのベローズポンプ構造

【課題】薄型の蓋や押圧部材を特に増圧することなく、スムーズに押圧操作および復動ができ、押圧部材、ベローズポンプの傾きや、それによる拗れ、歪みを防止できるようにする。
【解決手段】器体1、器体1を閉じる蓋2、蓋2に内蔵さればね3で復元した常態で吸気しているベローズポンプ4、これを蓋2上面から押圧操作する押圧部材6、を備え、ベローズポンプ4の上板11が上下動する際の上板11の傾きを防止して摺動させる摺動ガイド12を設けたことにより、上記の目的を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポットのベローズポンプ構造に関し、詳しくは、液体を貯留する器体と、器体の上端を閉じる蓋と、蓋に内蔵されてばねで復元された常態にて内部に吸気しているベローズポンプと、ベローズポンプを蓋上面から押圧操作する押圧部材とを備え、このベローズポンプを蓋上面からばねに抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体内に排気し内容液を加圧して、器体底部から器体外上部に延びる注出路を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるポットのベローズポンプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなポットのベローズポンプ構造は既に種々知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。特許文献1が開示するベローズポンプ構造は、図6に示すようにベローズzの上端に樹脂製の環状な吸気口aを、下端に樹脂製の排気口bをそれぞれ設けてある。吸気口aにはその外まわりに上下摺動できるように嵌合された上板kを設けて、その上下動によって空気口aを開閉する吸気弁dを形成している。この吸気弁dと排気口bの外まわりとの間に復元ばねcを働かせて吸気弁dを吸気口aの上方へ開く常開のものとしている。また、排気口bには吸気弁dとの間に働かせたばねeにより排気口bを下側に開く常開の排気弁fを設けてある。また、排気弁fは常時ベローズz内に通じる吸気路gを持っているが、吸気路gは排気口bの開閉には関与しない。
【0003】
通常、ベローズポンプzは、蓋hの開口i内に抜け出し防止を図って押圧操作できるように嵌め込まれた押圧部材jにより押圧操作される。この押圧操作で、吸気弁dはばねeに抗し下動されて吸気口aを閉じた状態にして上板jを伴い下動させて、ベローズポンプz内の空気を吸気路gを通じ排気する。この排気は排気弁fの吸気弁dと共の下動により蓋hの底部板lの外まわりに密着するので、漏れなく器体内に排気できる。排気弁fの下動量に対する吸気弁dの下動量との差は、吸気弁dがばねeを圧縮しながら排気弁fに近づくことで吸収される。
【0004】
特許文献2が開示するベローズポンプ構造は、蓋における給気口を持った下板にベローズの下端を止着し、中央に吸気弁を持った上板の外周にベローズの上端を止着し、蓋の下板の給気口まわりと吸気弁との間にベローズポンプの復元ばねを働かせて吸気弁を常開とし、蓋の上板の開口に設けた押圧部材に対向させた簡単な構造のものとなっており、押圧部材を押圧ると吸気弁を閉じた状態にしてベローズポンプを圧縮して行くので、ベローズポンプ内の空気は給気口から容器内に供給されて内容液を加圧し注出する。押圧操作を解除するとベローズポンプは復元ばねによって吸気弁が瞬時に開いて吸気を伴い押圧部材を押し上げながら復元する。
【特許文献1】特開2007−236579号公報
【特許文献2】特許第4206204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気ポットなどは、省エネに併せ、小型化、軽量化、低コスト化が推進されるなか、蓋構造にも適用されている。このような背景から蓋板や押圧部材などの樹脂厚さが薄くなってきている。
【0006】
しかし、このような背景にもかかわらず、特許文献1、2に記載のベローズ構造では、ベローズの上端側が復元ばねによるフローティング支持状態で、押圧部材が上下動する蓋の開口内に位置して、押圧部材を下方から支持するだけである。図6を参照しても、吸気
弁dと排気弁fとが互いに嵌合しあって、ベローズポンプの上板を支持しているかに見えるが、吸気弁dおよび排気弁fの双方はベローズの吸気口aおよび排気口bに遊びを有して嵌り合ったフローティング支持状態にあり、ベローズポンプに支持されてはいるが、ベローズポンプを支持する機能はない。このため、ベローズポンプは押圧部材を安定に支え切れず、押圧部材を偏って押圧操作などによって斜めに入り込んで拗れを起こし、それ以上の押圧操作や復帰動作の妨げになったり、ベローズが大きく歪んで損傷の原因になることがときとしてある。これは、蓋の開口壁や押圧部材が薄肉で歪みやすいのが原因している。このような問題は、特許文献1に記載のように、押圧部材自体の側周壁外面に設けた係合突部が蓋の開口の周壁内面に設けた逆L字状溝に係合し、押圧部材自体の回転で、係合突部が押圧を阻止される横溝部から押圧が可能となる縦溝部に移動することにより、押圧ができるようにしたベローズ構造において特に生じやすい。これは、縦溝が比較的幅広く形成されて押圧部材に対する開口内での遊びを大きくしていることが原因と思われる。これらに対応するのに蓋や押圧部材の厚みを増すのでは時代に逆行することになる。
【0007】
本発明は、薄型の蓋や押圧部材を特に増圧することなく、スムーズに押圧操作および復動ができ、押圧部材、ベローズポンプの傾きや、それによる拗れ、歪みを防止できるポットのベローズポンプ構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のポットのベローズポンプ構造は、液体を貯留する器体と、器体の上端を閉じる蓋と、蓋に内蔵されてばねで復元された常態にて内部に吸気しているベローズポンプと、ベローズポンプを蓋上面から押圧操作する押圧部材とを備え、このベローズポンプを蓋上面からばねに抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体内に排気し内容液を加圧して、器体底部から器体外上部に延びる注出路を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるポットのベローズポンプ構造において、前記ベローズポンプの上板が上下動する際の上板の傾きを防止して摺動させる摺動ガイドを設けたことを1つの特徴としている。
【0009】
このような構成では、器体に液体を貯留し、器体の上端を閉じている蓋において、この蓋に内蔵されたベローズポンプを蓋の上面から押圧部材を介し押圧操作して、内部に吸気している空気を器体内に排気して内容液を加圧し、注出路を通じ押し出し、外部に注出でき、押圧操作を解除するとベローズポンプは押圧部材を伴い復動して外気を吸引し、再度の押圧による内容液の注出に備える基本構造を踏襲して、しかも、ベローズポンプの上板が摺動ガイドの案内によって傾きなく上下動されるので、押圧部材が例え偏って押圧操作されても、傾かないベローズポンプの上板に支えられて共に傾くことなくスムーズに下動して注出操作することができる。
【0010】
本発明のポットのベローズポンプ構造は、また、液体を貯留する器体と、器体の上端を閉じる蓋と、蓋に内蔵されてばねで復元された常態にて内部に吸気しているベローズポンプと、ベローズポンプを蓋上面から押圧操作する押圧部材とを備え、このベローズポンプを蓋上面からばねに抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体内に排気し内容液を加圧して、器体底部から器体外上部に延びる注出路を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるポットのベローズポンプ構造において、前記ベローズポンプの上板が上下動する際の上板の傾きを防止して摺動させる摺動ガイドを設け、この摺動ガイドは、ベローズポンプの上板および下板の双方または一方に設けたことを別の特徴としている。
【0011】
このような構成では、上記1つの特徴の場合に加え、さらに、摺動ガイドがベローズポンプの上板および下板の双方または一方にベローズポンプ内の空間を有効利用して、設けられて、しかも、部品点数が特に増大することなく上板の摺動をガイドすることができる

【0012】
本発明のポットのベローズポンプ構造は、また、液体を貯留する器体と、器体の上端を閉じる蓋と、蓋に内蔵されてばねで復元された常態にて内部に吸気しているベローズポンプと、ベローズポンプを蓋上面から押圧操作する押圧部材とを備え、このベローズポンプを蓋上面からばねに抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体内に排気し内容液を加圧して、器体底部から器体外上部に延びる注出路を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるポットのベローズポンプ構造において、前記ベローズポンプの上板が上下動する際の上板の傾きを防止して摺動させる摺動ガイドを設け、この摺動ガイドは、上下板の少なくとも下板に設けられた筒部であることを他の特徴としている。
【0013】
このような構成では、上記1つの特徴の場合に加え、さらに、摺動ガイドが上下板の少なくとも下板に設けられた筒部よりなり、優れた耐座屈性、内周またはおよび外周による軸線まわり無方向への位置拘束性、を持って、上板の上下摺動をガイドすることができる。
【0014】
本発明のポットのベローズポンプ構造は、また、液体を貯留する器体と、器体の上端を閉じる蓋と、蓋に内蔵されてばねで復元された常態にて内部に吸気しているベローズポンプと、ベローズポンプを蓋上面から押圧操作する押圧部材とを備え、このベローズポンプを蓋上面からばねに抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体内に排気し内容液を加圧して、器体底部から器体外上部に延びる注出路を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるポットのベローズポンプ構造において、前記ベローズポンプの上板が上下動する際の上板の傾きを防止して摺動させる摺動ガイドを設け、この摺動ガイドは、上下板の少なくとも下板に設けられた筒部であって、下板は筒部の外まわりへベローズポンプのベローズの外径近くにまで、または同外径よりも大きく張り出す張り出し部を有し、張り出し部は、ベローズポンプまわりに設けられる断熱材のベローズポンプ下の部分を上方から覆っていることをさらなる特徴としている。
【0015】
このような構成では、上記他の特徴の場合に加え、さらに、下板は筒部の外まわりへベローズポンプのベローズの外径近くにまで、または同外径よりも大きく張り出して、筒部との間で連結上互いの強度を高め合い、上板の摺動に対する案内強度に生かせられる。しかも、この下板の張り出しを利用して、ベローズポンプまわりに設けられる断熱材のベローズポンプ下の部分を上方から覆って、断熱材のベローズポンプ下部分を介した上部への熱の逃げや外部温度の貯留液への影響を防止しやすくなる。
【0016】
本発明のポットのベローズポンプ構造は、また、液体を貯留する器体と、器体の上端を閉じる蓋と、蓋に内蔵されてばねで復元された常態にて内部に吸気しているベローズポンプと、ベローズポンプを蓋上面から押圧操作する押圧部材とを備え、このベローズポンプを蓋上面からばねに抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体内に排気し内容液を加圧して、器体底部から器体外上部に延びる注出路を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるポットのベローズポンプ構造において、前記ベローズポンプの上板が上下動する際の上板の傾きを防止して摺動させる摺動ガイドを設け、ベローズポンプの上板に吸気口を設け、この吸気口に、ベローズポンプの復元時に吸気を伴い開き、ベローズポンプの押圧操作時の排気圧により閉じる逆止弁を設けたことを今1つの特徴としている。
【0017】
このような構成では、上記1つの特徴の場合に加え、さらに、ベローズポンプの上板は押圧部材の直ぐ下に位置するが、そこに設けた吸気口に逆止弁を有して、押圧部材との関係なしにベローズポンプの復動時の吸気を伴い開いて外気をベローズポンプ内に吸気し、押圧部材による押圧時の排気圧によって閉じられ排気口を通じ容器内に排気することを保
証して、内容液を繰り返し注出できるようにする。
【0018】
本発明のそれ以上の特徴は、以下の具体的な説明および図面によって明らかになる。また、本発明の各特徴はそれ自体単独で、あるいは複合して種々な組み合わせで採用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のボトルのベローズポンプ構造の1つの特徴によれば、器体に貯留した内容液を、器体の上端を閉じている蓋内のベローズポンプを蓋上面から押圧部材により押圧操作する都度、ベローズポンプ内に吸気している空気を器体内に排気して内容液を加圧し外部に注出できるようにする基本機能が、ベローズポンプの上板の押圧部材と共の傾きのない上下摺動を保証して実現し、偏った押圧操作によっても拗れや損傷を回避しスムーズに注出操作、復帰動作ができる。
【0020】
本発明のポットのベローズポンプ構造の別の特徴によれば、1つの特徴の場合に加え、さらに、摺動ガイドがベローズポンプ内空間を有効利用して上板および下板の双方または一方に設けられ、部品点数が特に増大することなく上板の摺動をガイドすることができ、特にコスト上昇の原因にならない。
【0021】
本発明のポットのベローズポンプ構造の他の特徴によれば、1つの特徴の場合に加え、さらに、少なくとも下板に設けられた筒部の優れた耐座屈性による高い摺動案内強度と、内周またはおよび外周による軸まわり無方向への高い位置拘束性と、を持って、上板の上下摺動をガイドし、大きな偏り操作力にも十分に耐えて傾きや拗れを確固に防止し、よりスムーズに注出動作および復帰動作できる。
【0022】
本発明のポットのベローズポンプ構造のさらなる特徴によれば、上記他の特徴の場合に加え、さらに、下板の筒部まわりへの大きな張り出しによって筒部と強度を高め合って上板の摺動に対する案内強度をさらに高められるし、この張り出しを利用して、ベローズポンプまわりに設けられる断熱材のベローズポンプ下の部分を上方から覆い、この部分での上部への熱の逃げや外部温度の貯留液への影響を防止しやすく、ポットの保温、保冷性、省エネ性を高められる。
【0023】
本発明のポットのベローズポンプ構造の今1つの特徴によれば、上記1つの特徴の場合に加え、さらに、ベローズポンプの上板に設けた吸気口に逆止弁を有して、直ぐ上の押圧部材と関係しない簡単な弁構造で、押圧操作による排気および復帰動作による吸気とを保証して、内容液を繰り返し注出できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明における実施の形態について図1〜図5を参照しながら説明する。しかし、本発明は、特に限定的な記載がない限りは、本発明の範囲を以下の実施形態に限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0025】
図1に示す本実施の形態のボトルのベローズポンプ構造100は、図1に示すように、液体を貯留する器体1と、器体1の上端を閉じる蓋2と、蓋2に内蔵されてばね3で復元された常態にて内部に吸気しているベローズポンプ4と、ベローズポンプ4を蓋2上面から押圧操作する押圧部材6とを備え、このベローズポンプ4を蓋2上面からばね3に抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体1内に排気し内容液を加圧して、器体1底部から器体1外上部に延びる注出路5を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるようにしている。従って、器体1に液体を貯留し、器体1の上端を閉じている蓋2において、この蓋2に内蔵されたベローズポンプ4を蓋2の上面から押圧部材6を
介し押圧操作して、内部に吸気している空気を器体1内に排気して内容液を加圧し、注出路5を通じ押し出し、外部に注出でき、押圧操作を解除するとベローズポンプ4は押圧部材6を伴い復動して外気を吸引し、再度の押圧による内容液の注出に備える。
【0026】
本実施の形態では、以上のような基本的なベローズポンプ構造において、ベローズポンプ4の上板11が上下動する際の上板11の傾きを防止して摺動させる摺動ガイド12を設けている。これにより、ベローズポンプ4の上板11が摺動ガイド12の案内によって傾きなく上下動されるので、押圧部材6が例え偏って押圧操作されても、傾かないベローズポンプ4の上板11に支えられて共に傾くことなくスムーズに下動して注出操作することができる。この結果、器体1に貯留した内容液を、器体1の上端を閉じている蓋2内のベローズポンプ4を蓋2上面から押圧部材6により押圧操作する都度、ベローズポンプ4内に吸気している空気を器体1内に排気して内容液を加圧し外部に注出できるようにする基本機能が、ベローズポンプ4の上板11の押圧部材6と共の傾きのない上下摺動を保証して実現し、偏った押圧操作によっても拗れや損傷を回避しスムーズに注出操作、復帰動作ができる。
【0027】
このような摺動ガイド12は、ベローズポンプ4の外まわりや内まわりから、どのように働かせてもよいが、外まわりからでは、蓋2の押圧部材6が上下動できるように嵌め合される開口13との間、ないしは蓋2の下板21との間に設けることになるが、スペースを採りにくい。
【0028】
これに対し、内部からであればベローズポンプ4内の空間を有効利用できる。それには、図1に示すように摺動ガイド12は、ベローズポンプ4の上板11および下板14の双方または一方に設けることになる。これにより、摺動ガイド12がベローズポンプ4内空間を有効利用してその上、下板11、14の双方または一方に設けられて、部品点数が特に増大することなく上板11の上下摺動をガイドすることができ、特にコスト上昇の原因にはならない。
【0029】
具体的には、摺動ガイド12は、上下板11、14の少なくとも下板14に設けられた筒部15としている。このように、上下板11、14の少なくとも下板14に設けられた筒部15よりなる摺動ガイド12は、耐座屈性に優れた高い摺動案内強度と、この筒部15の内周またはおよび外周での軸線周りで無方向の位置拘束力と、を持って、上板11の上下摺動をガイドすることができる。従って、少なくとも下板14に設けられた筒部15による高い摺動案内強度と、その内周またはおよび外周の軸まわり無方向への優れた位置拘束性と、を持って、上板11の上下摺動をガイドし、大きな偏り操作力にも十分に耐えて傾きや拗れを確固に防止しよりスムーズに注出動作および復帰動作できる。
【0030】
しかも、下板14は図1に示すように、筒部15の外まわりへベローズポンプ4のベローズ17の外径近くにまで、または同外径よりも大きく張り出す張り出し部14aを有し、張り出し部14aは、ベローズポンプ4まわりに設けられる断熱材18のベローズポンプ4下の部分を上方から覆っている。このように、下板14は筒部15の外まわりへ大きく張り出して、筒部15との間で連結上互いの強度を高め合い、上板11の摺動に対する案内強度に生かせられる。しかも、この下板14の張り出しを利用して、ベローズポンプ4まわりに設けられる断熱材18のベローズポンプ4下の部分を上方から覆って、断熱材18のベローズポンプ下4部分を介した上部への熱の逃げや外部温度の貯留液への影響を防止しやすくなる。結果、ベローズポンプ4の注出動作性および復帰動作性、ポットの保温、保冷性、省エネ性を高められる。断熱材18は、蓋2の下板21に設けたベローズポンプ設置域の囲い壁21a内に、開口13の周壁との間を埋める筒状に設けられ、筒状部の下端に下板21とベローズポンプ4の下板14との間に入り込む部分を持った断面L型の形状をなしている。囲い壁21aと蓋2の下板21が形成している外周壁21bとの間
には別の断熱材118を設けている。
【0031】
さらに、ベローズポンプ4の上板11に図4(c)に示すような吸気口19を設け、この吸気口19に、ベローズポンプ4の復元時に吸気を伴い開き、ベローズポンプ4の押圧操作時の排気圧により閉じる逆止弁22を設けている。これにより、ベローズポンプ4の上板11は図1に示すように、押圧部材6の直ぐ下に位置するが、そこに設けた吸気口19に逆止弁22を有して、押圧部材6との関係なしにベローズポンプ4の復動時の吸気を伴い開いて外気をベローズポンプ4内に吸気し、押圧部材6による押圧時の排気圧によって閉じられ排気口23を通じ器体1内に排気することを保証して、内容液を繰り返し注出できるようにする。従って、ベローズポンプ4の上板11に設けた吸気口19に逆止弁22を有して、直ぐ上の押圧部材6と関係しない簡単な弁構造で、押圧操作による排気および復帰動作による吸気とを保証して、内容液を繰り返し注出できるようになる。
【0032】
さらに具体的に説明すると、図1に示すように、ベローズポンプ4を押圧操作して内容液を注出することから、器体1は定置型としてある。一例として、器体1はステンレス製の真空二重容器31を採用して、外まわりを内周が鏡面である反射筒31aにより覆って保温性、保冷性の優れたものとし、これを図示しない樹脂製の定置構造を有した樹脂製の底部と、器体1の蓋2により開閉する開口32を形成した樹脂製の肩部材33との間を金属製の胴部34により連結した外装ケース35内に収容している。
【0033】
真空二重容器31は、図示しない一重底部にヒータを当てがって内容液を加熱し、湯沸かしや保温を行う電気ポットとしてある。このため、蓋2は、真空二重容器31内で発生する蒸気を、蓋2の器体1内への給気口37を通じ、外部に放出する蒸気通路36を備えている。このように蒸気通路36に給気口37を共用する関係から、ベローズポンプ4の排気口23に設ける排気弁38は、前記筒部15内に遊びを有して嵌め合され、ベローズポンプ4の上板11との間に働かせた連動用のばね39によって上板11の上下摺動に連動するようにされた給気弁体41の下端部に、外周を排気口23の外まわりに装着されて蓋2の下板21に設けた給気口37に接続、接続解除するシール部材よりなる給気接続弁42と、この給気接続弁42の内側で排気口23を下方から開閉するシール部材よりなる排気開閉弁43とを装着してあり、ベローズポンプ4が復元した常態では、給気接続弁42の弾性復元力とばね39の付勢力との釣り合いによって、給気接続弁42が図1に示すように蓋2の最下面を形成する金属製の内蓋44に設けた給気37から上方に離れて接続解除状体となり、排気開閉弁43が排気口23を下方から閉じるようにしてある。
【0034】
これにより、常態では、給気弁体41は給気接続弁42を給気口37から離れていて、器体1内で発生する蒸気は給気口37を通じ蒸気通路36から蓋2の外部に逃がされるが、排気口23は排気開閉弁43により閉じられているので、蒸気が排気口23を通じてベローズポンプ4内に侵入することはない。図1の常態から押圧部材6が押圧操作されると、ばね3に抗しベローズポンプ4の上板11を押し下げていくので、給気弁体41はばね39を介し下動されて、排気開閉弁43を排気口23から下方に離してそれを開きベローズポンプ4の圧縮に伴う排気口23からの排気を行わせるのに併せ、給気接続弁42を蓋2の給気口37の外まわりに押しつけた接続状態として、ベローズポンプ4からの排気が蒸気通路36に逃がすことなく、器体1内に給気して内容液を加圧し注出されるようにする。
【0035】
蓋2は肩部材33の後部に軸51によってヒンジ連結して開閉できるようにされるが、蓋2の前部、つまり自由端側に設けてばね53の付勢でロック位置に保たれるロック部材52の肩部材33における係止部61への係合によって蓋2を閉じ状態にロックし、器体1の転倒時の不用意な開放や、閉じ不良による不用意な蒸気漏れや注出操作時の空気漏れ、加圧漏れなどが生じないようにしている。蓋2の閉じ位置へのロックはロック解除部材
54のばね53に抗した軸55まわりの回動操作にて解除することができる。ロック解除時蓋2は手で開くか、ばねの付勢によって自動的に開かれるようにする。ばねによる開き操作は特に最終段階で開き速度を下げる制動力を働かせることが行われる。また、器体1の転倒や前傾きなどの異常姿勢時に内容液が注出路5や蒸気通路36を通じ流出するのを防止し、また遅らせる異常姿勢時止水弁56、57などが設けられている。
【0036】
なお、ベローズポンプ4は、押圧部材6自体の回転操作で、押動操作阻止と、押動操作阻止解除とを行うようにしてある。そのために、押圧部材は、図3(b)に示すように6の押圧操作面6a上に回動操作用の摘み6cを一体形成するとともに、操作面6aまわりの周壁6bの周方向複数個所、具体的には3箇所に係合突部6dを一体成形してある。これに対応して、図3(a)に示すように蓋2は、押圧部材6を嵌め合わせる開口13の内周面13aの周方向3箇所に係合突部6dと嵌まり合う逆L字状の係止凹部13bを設けてある。係止凹部13bは係合突部6dとの係合によって、係合突部6dが水平部13b1に位置している間、押圧部材6の押動、注出動作を阻止し、係合突部6dが垂直部13b2に位置している間、押圧部材6の押動、注出操作および復帰動作を可能とする。
【0037】
さらに、ベローズポンプ4における前記下板14の筒部15は、その内周または外周を利用して上板11から下向きに突出などする被ガイド部との接触や嵌り合いによって上板11の上下摺動を案内して傾きを防止できるが、図4(b)、図5に示すように、上板11にも一体成形して設けた筒部62と嵌め合わせた、二重壁構造によって上板11の上下摺動を確固に案内できるようにしている。ここに、筒部62は上板11との連結構造上互いの強度を高め合うので、筒部15にガイドされる強度も高く傾きや拗れのないスムーズな上下摺動に寄与する。特に、下板14の筒部15は、周方向複数位置、具体的には4カ所に設けた軸方向の凹条(凸条でもよい)の摺動ガイド部16によるいわゆるスプライン嵌合と同様なガイド機能による倒れ防止、傾き防止の高い拘束力を持って、より拗れや捩れ、回転などなく上板11の上下摺動するようにガイドすることができる。この摺動ガイド部16に対応して上板11の筒部62には摺動ガイド部16と軸方向に嵌まり合う凸条(凹条でもよい)の摺動被ガイド部63を形成している。
【0038】
また、下板14は図4に示すように、筒部15の給気接続弁42を装着した部分の直ぐ上からの直近張り出し位置にて上向きに屈曲した後、水平に外周部へ向かうZ型段部14bを有して、筒部15との連結上の材料力学的強度をより高め、自身の筒部15に対する歪みや変形への耐力を高め、筒部15に対する倒れ防止強度も高めている。しかも、下板14のZ型段部14bの外側には放射状のリブ14c、そのさらに外側には環状壁14dを設けてさらに曲げ強度を高め、下板14の最外周に形成した外向き段部14eにベローズ17のL型の下端部を溶着している。図1、図5での図示例とは若干形状が異なっているがいずれを採用してもよい。下板14は、その筒部15の下端部に装着した給気接続弁42の筒部15下端への装着基部42bを蓋2の下板21に形成した給気部外筒66に上方から圧入してベローズポンプ4を接続してあり、この接続状態は給気部外筒66の内周に形成された突条66aと、装着基部42bの筒部15下端から下に外れた直ぐの外周位置に設けられた環状溝42aと、の弾性的な凹凸嵌合によって確固に保持される。また、給気部外筒66の上端と下板14との間には装着基部42bの上端フランジ42cが挟圧されて下板14の蓋2の下板21への装着状態の安定に寄与するようにしている。
【0039】
上板11は図4に示すように、筒部62を一体成形した部分を押圧部材6による押圧操作を受ける範囲として上に最も突出した受動域に設定してその中央部にさらに高くした平面視して十字形の受動部11aを窪み11c内に形成し、裏面のばね39を受ける平面視して十字形のばね座11bと併せ、耐押圧強度を筒部62の形成範囲にて十分に確保しながら、外周へ向け3段階に低くなるようにした段形状と、最外周の段部位置の内側に下向きに形成した環状壁11dと、外周に形成した下向きにフランジ部11eとによって、上
板11の全体の曲げ強度、変形強度を高め、ベローズ17の内向き上端縁を上板11の環状壁11dと下向きフランジ部11eとの間の下面に溶着してある。
【0040】
逆止弁22は図4、図5に示すように、上板11の筒部62の形成部外側の中段環状域の一部に形成した凹陥部11fの底部に吸気口19と共に形成した取り付け穴64に、弁体基部22aから立ち上がる突起22bを下方から圧入して取り付けてあり、押圧部材6による押圧によっても外力を受けず、弁体基部22aから舌片状に張り出したフラップ弁22cが吸気口19に下方から当てがわれて機能するようになっている。取り付け穴64近傍の突起65は弁体基部22aの後部と当接しあって、逆止弁22が突起22bを中心に回動するのを防止する。
【0041】
なお、注出路5には図示しない電動ポンプを設けて電動でも内容液の注出ができるようにすることもでき、電動ポンプは遠心ポンプとすることでベローズポンプ4による注出路5を通じた内容液の注出の妨げにはならない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は定置型の電気ポットに実用して、特に構造が複雑化したりコスト上昇の原因になることなく、ベローズポンプの押圧によるスムースな注出動作、注出操作後の復帰動作を保証できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気ポットのベローズポンプ構造を示す断面図である。
【図2】同電気ポットの蓋の平面図である。
【図3】同電気ポットの蓋と押圧部材とを分解して示す斜視図である。
【図4】同電気ポットの蓋の斜視図およびベローズポンプの断面図である。
【図5】同電気ポットのベローズポンプの上下板を示す組み合わせ状態および分離状態の斜視図である。
【図6】従来のベローズポンプ構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
100 ベローズポンプ構造
1 器体
2 蓋
3 ばね
4 ベローズポンプ
5 注出路
6 押圧部材
11 上板
12 摺動ガイド
13 開口
14 下板
14a 張出し部
15 筒部
16 摺動ガイド部
17 ベローズ
18 断熱材
19 吸気口
21 下板
22 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する器体と、器体の上端を閉じる蓋と、蓋に内蔵されてばねで復元された常態にて内部に吸気しているベローズポンプと、ベローズポンプを蓋上面から押圧操作する押圧部材とを備え、このベローズポンプを蓋上面からばねに抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体内に排気し内容液を加圧して、器体底部から器体外上部に延びる注出路を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるポットのベローズポンプ構造において、
前記ベローズポンプの上板が上下動する際の上板の傾きを防止して摺動させる摺動ガイドを設けた
ことを特徴とするポットのベローズポンプ構造。
【請求項2】
液体を貯留する器体と、器体の上端を閉じる蓋と、蓋に内蔵されてばねで復元された常態にて内部に吸気しているベローズポンプと、ベローズポンプを蓋上面から押圧操作する押圧部材とを備え、このベローズポンプを蓋上面からばねに抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体内に排気し内容液を加圧して、器体底部から器体外上部に延びる注出路を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるポットのベローズポンプ構造において、
前記ベローズポンプの上板が上下動する際の上板の傾きを防止して摺動させる摺動ガイドを設け、
この摺動ガイドは、ベローズポンプの上板および下板の双方または一方に設けた
ことを特徴とするポットのベローズポンプ構造。
【請求項3】
液体を貯留する器体と、器体の上端を閉じる蓋と、蓋に内蔵されてばねで復元された常態にて内部に吸気しているベローズポンプと、ベローズポンプを蓋上面から押圧操作する押圧部材とを備え、このベローズポンプを蓋上面からばねに抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体内に排気し内容液を加圧して、器体底部から器体外上部に延びる注出路を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるポットのベローズポンプ構造において、
前記ベローズポンプの上板が上下動する際の上板の傾きを防止して摺動させる摺動ガイドを設け、
この摺動ガイドは、上下板の少なくとも下板に設けられた筒部である
ことを特徴とするポットのベローズポンプ構造。
【請求項4】
液体を貯留する器体と、器体の上端を閉じる蓋と、蓋に内蔵されてばねで復元された常態にて内部に吸気しているベローズポンプと、ベローズポンプを蓋上面から押圧操作する押圧部材とを備え、このベローズポンプを蓋上面からばねに抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体内に排気し内容液を加圧して、器体底部から器体外上部に延びる注出路を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるポットのベローズポンプ構造において、
前記ベローズポンプの上板が上下動する際の上板の傾きを防止して摺動させる摺動ガイドを設け、
この摺動ガイドは、上下板の少なくとも下板に設けられた筒部であって、
下板は筒部の外まわりへベローズポンプのベローズの外径近くにまで、または同外径よりも大きく張り出す張り出し部を有し、
張り出し部は、ベローズポンプまわりに設けられる断熱材のベローズポンプ下の部分を上方から覆っている
ことを特徴とするポットのベローズポンプ構造。
【請求項5】
液体を貯留する器体と、器体の上端を閉じる蓋と、蓋に内蔵されてばねで復元された常
態にて内部に吸気しているベローズポンプと、ベローズポンプを蓋上面から押圧操作する押圧部材とを備え、このベローズポンプを蓋上面からばねに抗し押圧したときの圧縮にて内部の空気を器体内に排気し内容液を加圧して、器体底部から器体外上部に延びる注出路を通じ外部に注出させた後、押圧を解除されたとき常態に復元されるポットのベローズポンプ構造において、
前記ベローズポンプの上板が上下動する際の上板の傾きを防止して摺動させる摺動ガイドを設け、
ベローズポンプの上板に吸気口を設け、
この吸気口に、ベローズポンプの復元時に吸気を伴い開き、ベローズポンプの押圧操作時の排気圧により閉じる逆止弁を設けた
ことを特徴とするポットのベローズポンプ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−246782(P2010−246782A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100459(P2009−100459)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】