説明

ポリαオレフィン及びポリαオレフィンを形成するためのプロセス

本発明は、ポリαオレフィン(PAO)及びPAOを形成するためのプロセスに向けられている。一実施形態では、本発明は、C〜C12α−オレフィンモノマーを、水素、C〜C12飽和炭化水素、たとえばC〜C12飽和直鎖炭化水素、及び触媒系の存在下、反応器内で重合させることを含む、PAOを形成するためのプロセスであって、該C〜C12飽和直鎖炭化水素が該C〜C12α−オレフィンモノマーとほぼ同数の炭素原子を有するプロセスに関する。C〜C12飽和直鎖炭化水素は、所望により、本発明のプロセスによって形成された粗PAO生成物に由来する。また、本発明は、本発明のプロセスを行なうための反応プロセス、滞留時間に基づいたPAO粘度を制御するプロセス、及び固体吸着粒子を用いた使用済み触媒の除去にも向けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、2008年5月6日に提出の米国特許出願第12/116,147号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ポリαオレフィンに関する。より詳細には、本発明は、ポリαオレフィン、並びに、ポリαオレフィンを、α−オレフィン、好ましくは1−デセンなどのC〜C12α−オレフィンから、重合反応混合物に、C〜C12飽和炭化水素、好ましくはα−オレフィンと同数の炭素原子を有するものを同時供給することによって形成するための、プロセス及び反応システム(reaction system)に関する。
【背景技術】
【0003】
オリゴマー炭化水素の流体の合成によって天然鉱物油系の潤滑剤の性能を向上させる努力は、石油業界におけるこの数十年間の重要な研究開発の主題となっており、その結果、いくつかのポリαオレフィン合成潤滑剤の最近の商業生産に至っている。これらの物質は、C〜C20α−オレフィンなどのα−オレフィンの重合に主に基づいている。合成潤滑剤に関する産業研究の努力は、一般に、広範囲の温度にわたって有用な粘度を示す、すなわち改善された粘度指数(VI)を有する一方で、潤滑、熱、及び酸化の安定性並びに鉱物油と同等又はそれより良好な流動点も示す流体に焦点が当てられている。これらのより新しい合成潤滑剤は、鉱物油潤滑剤と較べてより低い摩擦を提供し、したがって、機械負荷の全範囲にわたって、かつより広い稼働条件範囲にわたって、機械効率の増加を示す。
【0004】
ポリマー化学の様々な規律に含まれるポリマーの周知の構造と物理特性との関係性により、改善された潤滑特性を与えるために必要であると考えられる構造を有するオリゴマーを合成するための調査の有益な分野として、α−オレフィンが暗示された。主としてプロペン及びビニルモノマーの重合に関する研究のために、α−オレフィンの重合の機構及びポリマー構造に対するその機構の影響は適度に良好に理解されており、潜在的に有用なオリゴマー化方法及びオリゴマー構造を標的とするための強力な源が提供されている。
【0005】
オレフィンの触媒重合は、潤滑剤として有用な基礎原料(basestock)を製造するための既知の技術である。たとえば、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第4,827,073号、第4,892,851号、第4,912,272号、第5,012,020号、第5,177,276号、第5,661,096号、第5,731,254号、第6,706,828号、第6,858,767号、及び第7,129,197号など、当技術分野ではポリαオレフィンを形成するための様々な既知の方法が存在する。初期の触媒重合プロセスでは、米国特許第4,827,073号及び第5,012,020号に記載されているクロム系の触媒、米国特許第5,177,276号に記載の三塩化チタン及び米国特許第4,912,272号に記載の塩化アルミニウムなどのチーグラー型触媒を使用していた。これらの初期の触媒により、たとえば、米国特許第4,892,851号、第5,661,096号、第5,731,254号、第6,706,828号、第6,858,767号、及び第7,129,197号に記載の、様々なメタロセン触媒及びメタロセン触媒系を用いた、後に開発されたプロセスへの道が開かれた。そのような触媒系には、典型的には、(a)メタロセン化合物、典型的にはジルコニウムなどの第IVb族の遷移金属に基づくメタロセン化合物、及び(b)アルミノキサンの組合せが含まれる。非架橋の置換ビス−シクロペンタジエニル遷移金属メタロセン化合物は、米国公開出願第2007/0043248号に記載されている。
【0006】
そのような方法によって生成したポリαオレフィンは、たとえば、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、米国公開出願第2006/0276355号、第2007/0289897号、及び第2007/0298990号に記載されているように、潤滑剤として又は潤滑剤の添加剤として使用し得る。
【0007】
米国特許第6,858,767号は、実質的に非晶質である、液体のポリαオレフィンのホモ又はコポリマー、好ましくは1−デセンが、水素及び特定の種類のメタロセン触媒を用いた重合プロセスによって得られることを開示している。さらに、2〜約12個の炭素原子を含有する液体のポリαオレフィンのホモ又はコポリマーは、独特な特性の組合せ、すなわち、低い分子量(M)、低い多分散指数(M/M)、制御可能な動粘度(Kv100)、低いヨウ素価(I)及び低いガラス転移温度(T)を保有し、実質的に非晶質である。液体のポリαオレフィンのホモ又はコポリマーは、ポリαオレフィンがその中で粘度調整剤として機能する潤滑油を含めた様々な生成物の製造に有用である。
【0008】
米国特許第7,129,197号は、オレフィンの1つ又は複数のオリゴマーを、シングルサイト触媒の存在下で調製することを開示している。好ましくは、オレフィンはα−オレフィンであり、オリゴマーはポリ−α−オレフィン(PAO)である。このようにして調製されるPAOは、異性化から生じる第三級水素を完全に又は実質的に含まない。その結果、PAOは、向上した生分解性、向上した酸化耐性、及び/又は比較的高い粘度指数を保有する。PAOは、潤滑剤の構成成分などの多くの有用な用途を有する。
【0009】
米国特許第5,177,276号は、以下の構造式を有する反復単位から本質的になるα−オレフィンオリゴマーを開示している:
【化1】


[式中、xは、3〜11の整数(両端を含む)を表し、yは、重量平均分子量が約5,000〜約20,000であるような、オリゴマー中の反復単位の数を表し、前記オリゴマーは、約70〜100%の、オリゴマーの反復単位の頭−尾アラインメントを有する]。好ましくは、オリゴマーの重量平均分子量は5,000〜約10,000であり、前記オリゴマーは、約5.5未満の分散性、及び約24,000未満のZ平均分子量を有することをさらに特徴とする。さらに、米国特許第5,177,276号は、通常は飽和α−オレフィンを含有する変換されていない供給物を、反応溶媒として役割を果たすためにオリゴマー化プロセスへと再循環させることを開示している。
【0010】
米国特許第5,731,254号は、シンジオタクチックポリオレフィンが、式Iのメタロセン:
【化2】


[式中、Mは、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ又はタンタル、及びアルミノキサンである]からなる触媒の存在下における、式R−CH=CH−Rのオレフィンの重合又は共重合によって、高収率で得られることを開示している。このポリオレフィンは、非常に高い分子量、非常に狭い分子量分布及び非常に高いシンジオタクチック指数を有する。このポリマーから生成した造形品は、高い透明度、柔軟性、引裂き抵抗及び優れた表面光沢によって区別される。
【0011】
米国特許第4,892,851号は、シンジオタクチックポリオレフィンの調製において使用するためのメタロセン触媒を開示している。触媒は、シクロペンタジエニル環のうちの一方が他方の環とは実質的に異なる様式で置換されている架橋メタロセンを含む。この種の触媒はシンジオ特異性が高く、また、新規なミクロ構造を有するポリマーも生じることが発見された。本発明には、重合プロセスにおける触媒のうちの1つ又は複数の使用がさらに含まれる。触媒は、一般に、式:
R’’(CpR)(CpR’)MeQ
[式中、各Cpは、シクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニル環であり、各R及びR’は、同一又は異なっており、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R’’は、触媒に立体強剛性を与える、2つのCp環の間の構造的架橋であり、Meは、周期表の第4b、5b、又は6b族の金属であり、各Qは、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基又はハロゲンであり、0≦k≦3であり、0≦n≦4であり、1≦m≦4であり、R’は、(CpR’)が(CpR)とは立体的に異なる環であるように選択される]によって記載される。
【0012】
米国特許第4,827,073号は、αオレフィンを、オリゴマー化条件下、約90°〜250℃の温度で、担持の固体還元第VIB族(たとえばクロム)触媒と接触させて、液体の潤滑性炭化水素を生成するステップが含まれる、潤滑範囲にある炭化水素ストックを生成するためにαオレフィンをオリゴマー化するプロセスを開示している。生成物は直鎖状のC〜C20の1−アルケンのポリマー残基を含み、前記組成物は0.19未満の分枝比を有する。重量平均分子量は420〜45,000であり、数平均分子量は420〜18,000であり、分子量分布は1〜5であり、流動点は−15℃未満である。水素化された潤滑範囲にある炭化水素生成物は、約130〜280の粘度指数及び約750cSまでの粘度を有する。このプロセスは、開始αオレフィンが、8〜14個の炭素原子を有するオレフィン炭化水素又はその混合物から本質的になり、約100°〜180°の反応温度が含まれ、担持触媒に多孔性の不活性シリカが含まれる場合に、特に有用である。
【0013】
米国特許第5,661,096号は、遷移金属構成成分としてメタロセン及び活性化剤としてアルミノキサンに基づくチーグラー触媒において、メタロセンをアルミノキサンで事前に活性化させた結果、触媒系の活性が相当増加したことを開示している。さらに、高い度合のアイソタクチック性であり、コンパクトな球状粒子、非常に狭い粒子径分布及び高いかさ密度を有する1−オレフィンポリマーが、この種の触媒系によって得られる。
【0014】
米国特許第5,012,020号は、潤滑剤の粘度指数の向上剤として特に有用な新規組成物を開示している。組成物は、0.19未満の分枝比及び100℃で725CS〜15,000cSの粘度を有する、分枝状のC30〜C10000の炭化水素を含む。新規組成物は、−20℃〜+90℃の温度のオリゴマー化条件下におけるC〜C20α−オレフィン供給原料のオリゴマー化の生成物、又はその混合物と、還元原子価状態の第VIB族の金属触媒とを、多孔性担体上で接触させたものを含む。組成物は、100℃で725cS〜15,000cSの粘度を有する。前述の組成物を鉱物油及び合成潤滑剤と混合して用いることで、上昇した粘度指数を示す新規潤滑剤混合物が提供される。また、混合物は、ニュートン流動を示すことによって注目される、すべての混合物で、高温における剪断応力に対する安定性の増加も示す。
【0015】
米国特許第4,912,272号は、予想外に高い粘度指数を有する潤滑剤混合物を開示している。混合物は、シリカ担持活性クロム触媒を用いて調製した高い粘度指数のポリαオレフィン(HVIXPAO)とBF3、塩化アルミニウム、又はチーグラー型触媒を用いて調製したポリαオレフィンとの混合物である。優れた混合物は、HVIXPAOと鉱物油及び/又は他の合成液体潤滑剤とからも調製される。
【0016】
米国特許第6,706,828号は、少なくとも1つのα−オレフィンを、水素及びメタロセン触媒と共触媒とを合わせることによって得られた生成物を含む触媒的に有効な量の触媒の存在下で重合させることを含む、ポリ(α−オレフィン)ポリマーを調製するプロセスであって、上記メタロセン触媒が、少なくとも1つの以下の一般式のメソ化合物(meso compound)であるプロセスを開示している:
【化3】


[式中、A及びAは、単核及び多核の炭化水素からなる群から独立して選択され、
は、周期表の第IVb、Vb、又はVIb族の金属であり、
及びRは、水素、C〜C10アルキル、C〜C10−アルコキシ、C〜C10アリール、C〜C10アリールオキシ、C〜C10アルケニル、C〜C40アリールアルキル、C〜C40アルキルアリール、C〜C40アリールアルケニル及びハロゲンからなる群から独立して選択され、
は、以下からなる群から選択され:
【化4】


=BR11、=AlR11、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO、=NR11、=CO、=PR11及び=P(O)R11
[ただし、R11、R12、及びR13は、水素、ハロゲン、C〜C10アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10アリール、C〜C10フルオロアリール、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルケニル、C〜C40アリールアルキル、C〜C40アリールアルケニル、及びC〜C40アルキルアリールからなる群から独立して選択されるか、又は、R11とR12若しくはR11とR13は、それぞれの場合において、それらを結合している原子と共に、環を形成し、Mは、ケイ素、ゲルマニウム、及びスズからなる群から選択される]、
及びRは、水素、ハロゲン、C〜C10アルキル、C〜C10フルオロアルキル、C〜C10アリール、C〜C10フルオロアリール、C〜C10アルコキシ、C〜C10アルケニル、C〜C40アリールアルキル、C〜C40アリールアルケニル、及びC〜C40アルキルアリールからなる群から独立して選択され、m及びnは、同一又は異なっており、0、1、又は2であり、かつm+nは、0、1又は2である]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
用いる触媒系及びプロセスのパラメータにかかわらず、より高い粘度の副生物並びにより高い分子量のオリゴマー及びポリマーが同時に生成されるため、より低い粘度範囲のポリαオレフィン、たとえば約100cSt以下の粘度を有するポリαオレフィンを、選択性及び収率の低下を被ることなく直接生成することは困難であった。したがって、合成潤滑剤の製造における顕著な課題は、好ましい粘度範囲の潤滑剤を、高い選択性及び収率、並びに転化率(conversion)で生成することである。したがって、所望の潤滑剤粘度のポリαオレフィンを、高い転化率、選択性及び収率で形成するためのプロセス及び反応システムの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、α−オレフィンモノマーからポリαオレフィン(PAO)を形成するための、高い選択性のプロセスに向けられている。飽和炭化水素、好ましくは該α−オレフィンモノマーとほぼ同数の炭素原子を有する飽和炭化水素を、PAO反応器に、該α−オレフィンモノマーと共に、水素及び適切な触媒系の存在下で加えることで、そのような炭化水素を反応システムに同時供給しない又は最小限にしか同時供給しない同様の系と比較して、選択性が増加する一方で、粘度、粘度指数、ヨウ素価、分子量(M及びM)並びにタクティシティなどの、生じるPAOの望ましい物理的特徴が維持されることが、驚くべきことにかつ予想外に発見された。
【0019】
第1の実施形態では、プロセスは、C〜C12α−オレフィン、C〜C12飽和炭化水素、水素、及び触媒的に有効な量の触媒系を反応器に加えるステップであって、該C〜C12飽和炭化水素を、該反応器に供給した該C〜C12α−オレフィン及び該C〜C12飽和炭化水素の合わせた重量に基づいて、5〜70重量%、たとえば、10〜50重量%又は15〜30重量%の範囲の量で該反応器に供給するステップ、及び該C〜C12α−オレフィンを、該反応器内で、該C〜C12飽和炭化水素、該水素、及び該触媒系の存在下、PAOを形成するために有効な条件下で重合させるステップ、を含む。このプロセスは、好ましくは連続的なプロセスである。
【0020】
第2の実施形態では、本発明は、α−オレフィン、50℃で該α−オレフィンの蒸気圧から20%以内、たとえば、10%以内又は5%以内の蒸気圧を有する炭化水素、水素、及び触媒的に有効な量の触媒系を反応器に加えるステップと、該α−オレフィンを、該反応器内で、該炭化水素、該水素、及び該触媒系の存在下、PAOを形成するために有効な条件下で重合させるステップとを含む、PAOを形成するためのプロセス、好ましくは連続的なプロセスである。
【0021】
上記実施形態では、オレフィン、たとえばC〜C12α−オレフィンと、炭化水素、たとえばC〜C12飽和炭化水素とは、所望により同数の炭素原子、所望により1個以内の差の炭素原子を有する。たとえば、C〜C12α−オレフィンが1−デセンを含む場合は、C〜C12飽和炭化水素は、好ましくはn−デカンなどのデカンを含む。炭化水素、たとえばC〜C12飽和炭化水素は、所望により、反応器内のC〜C12α−オレフィン、C〜C12飽和炭化水素、及びPAOの合わせた重量に基づいて8〜40重量%のレベルで、反応器内に維持される。触媒系は、好ましくは、メタロセン触媒、たとえば、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドなどの架橋メタロセン触媒を含み、所望により、アルミノキサン共触媒、たとえばメチルアルミノキサン(MAO)をさらに含む。上に示したように、どちらの実施形態においても、プロセスは、典型的には選択性が高く、たとえば、80重量%を超える、85重量%を超える、90重量%を超える又は95重量%を超えるPAO選択性が提供される。さらに、プロセスは、典型的には高い、たとえば95%を超える全転化率、及び、たとえば、85%を超える、90%を超える、又は95%を超える高収率を有する。重合プロセスは、所望により、105℃〜170℃の範囲の温度、かつ好ましくは520〜720kPagの圧力で実施される。プロセスは、好ましくは、10〜60分間、たとえば15〜45分間のPAO滞留時間を有する。
【0022】
好ましい態様では、このプロセスにおいて、PAO、未反応のモノマー、及びC〜C12飽和炭化水素を含む粗PAO生成物が最初に形成され、このプロセスは、C〜C12飽和炭化水素を粗PAO生成物から分離するステップと、分離されたC〜C12飽和炭化水素の少なくとも一部分を反応器に加えるステップとをさらに含む。所望により、分離されたC〜C12飽和炭化水素の第1の部分をパージし、分離されたC〜C12飽和炭化水素の第2の部分を反応器に加える。未反応のモノマーは、分離されたC〜C12飽和炭化水素と共に粗PAO生成物から分離し、分離されたC〜C12飽和炭化水素と共に反応器に加えてもよい。所望により、このプロセスは、反応器からの粗PAO生成物を、触媒除去カラム内に詰めた固体吸着粒子と、PAO反応システムからの使用済み触媒を選択的に吸着させるために有効な条件下で接触させるステップをさらに含む。
【0023】
別の実施形態では、本発明は新規PAO組成物に関し、これは、一実施形態では、本発明の上記プロセスによって形成し得る。このPAOは、13C NMRによって測定して、0.5〜5モル%のmmトライアッド(mm triad)及び40〜58モル%のrrトライアッド(rr triad)を含む。また、このPAOは、好ましくは37〜59.5モル%のmrトライアッド(mr triad)も含む。PAOは、理想的には、13C NMRスペクトルにおいて、27.0〜29.0ppmの領域及び/又は約20.0ppmの領域及び/又は約42.5ppmの領域中のピークを実質的に含まない。PAOは、好ましくは高い度合の飽和を有し、理想的には0.2〜5のヨウ素価を有する。PAOは、好ましくは、上述のように、オレフィンモノマー、たとえばC〜C12オレフィン、好ましくは1−デセンを、メタロセン触媒、好ましくは架橋メタロセン、及び水素の存在下で重合させることによって形成される。PAOの粘度は変動し得るが、好ましくは、PAOは、100℃で50〜500センチストーク、たとえば50〜150センチストークの動粘度を有する。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、PAO反応器と流体接続した触媒除去カラムに向けられている。触媒除去カラムには、PAO反応システムからの使用済み触媒を選択的に吸着するように構成された固体吸着粒子が詰められている。固体吸着粒子は、たとえば、酸性粘土、ゼオライト、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリケート及びその混合物からなる群から選択され得る。所望により、固体吸着剤は、当技術分野で知られている方法を用いて、すべての水分を除去するために乾燥させる。好ましい態様では、固体吸着粒子は金属酸化物を含む。固体吸着粒子は100μm〜1cmの平均粒子径を有し得る。触媒除去カラムは触媒を失活させるために水を用いないため、触媒除去カラムは、粗PAO生成物の少なくとも一部分を反応器に再循環させるPAO合成プロセスで用いるために特に良好に適している。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、PAO滞留時間に基づいたPAO粘度を制御するプロセスに関する。具体的には、滞留時間がPAO粘度と逆相関していることが、驚くべきことに、かつ予想外に発見された。本態様では、本発明は、反応器内で、C〜C12α−オレフィンを、水素及び触媒的に有効な量の触媒系の存在下、PAOを形成するために有効な条件下で重合させるステップを含む、PAOを形成するためのプロセスに関する。PAOは、1分間を超える反応器内での平均滞留時間を有し、それでPAOは、1000cSt未満、たとえば、500cSt未満、250cSt未満、150cSt未満、又は100cSt未満の動粘度を有する。好ましくは、PAOは、5分間を超える反応器内での平均滞留時間を有し、それでPAOは、200cSt未満、たとえば、150cSt未満、又は100cSt未満の動粘度を有する。より好ましくは、PAOは、10分間を超える反応器内での平均滞留時間を有し、それでPAOは、150cSt未満、たとえば、125cSt未満、又は100cSt未満の動粘度を有する。上記プロセスと同様、1つ又は複数のC〜C12飽和炭化水素、好ましくは該α−オレフィンと同数の炭素原子を有するものを、反応器に同時供給し得る。好ましくは、C〜C12α−オレフィンは1−デセンを含み、存在する場合は、C〜C12飽和炭化水素はn−デカンを含む。触媒系は、好ましくは、メタロセン触媒、たとえば、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドなどの架橋メタロセン触媒を含み、所望により、アルミノキサン共触媒、たとえばメチルアルミノキサン(MAO)をさらに含む。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、PAOを形成するための反応システム、好ましくはPAOを形成するための連続的な反応システムに関する。反応システムは、C〜C12α−オレフィンが、C〜C12飽和炭化水素、水素、及び触媒的に有効な量の触媒系と、粗PAO流を形成するために有効な条件下で接触する反応器を含む。また、系には、使用済み触媒を粗PAO流から分離し、触媒を減らしたPAO流を形成するための反応器と流体接続した触媒分離ユニットも含まれる。反応システムは、触媒を減らしたPAO流を精製PAO流とC〜C12飽和直鎖炭化水素及び未反応のC〜C12α−オレフィンを含む再循環流とに分離するための、触媒分離ユニットと流体接続した分離区域をさらに含む。この実施形態によれば、再循環流は、分離区域と反応器の間を流体接続している。C〜C12α−オレフィン及びC〜C12飽和炭化水素は、好ましくは同数の炭素原子を有する。好ましくは、C〜C12α−オレフィンは1−デセンを含み、C〜C12飽和炭化水素はn−デカンを含む。触媒系は、好ましくは、メタロセン触媒、たとえば、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドなどの架橋メタロセン触媒を含み、所望により、アルミノキサン共触媒、たとえばMAOをさらに含む。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、α−オレフィンが、50℃で該α−オレフィンから20%以内、たとえば、10%以内又は5%以内の蒸気圧を有する炭化水素、水素、及び触媒的に有効な量の触媒系と、粗PAO流を形成するために有効な条件下で接触する反応器を含む、PAOを形成するための反応システム、好ましくは連続的な反応システムに関する。また、系には、使用済み触媒を粗PAO流から分離し、触媒を減らしたPAO流を形成するための反応器と流体接続した触媒分離ユニットも含まれる。分離区域は、触媒を減らしたPAO流を精製PAO流と炭化水素及び未反応のα−オレフィンを含む再循環流とに分離するために触媒分離ユニットと流体接続している。再循環流は、分離区域と反応器の間を流体接続している。炭化水素は、好ましくは、α−オレフィンと同数の炭素原子、1個以内の差の炭素原子を有する飽和炭化水素を含む。好ましくは、α−オレフィンは1−デセンを含み、炭化水素はn−デカンを含む。触媒系は、好ましくは、メタロセン触媒、たとえば、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドなどの架橋メタロセン触媒を含み、所望により、アルミノキサン共触媒、たとえばMAOをさらに含む。
【0028】
本発明は、添付の非限定的な図に鑑みて、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に従ってポリαオレフィン(「PAO」)形成するための反応システムの例示的な流れ図である。
【図2】本発明の別の実施形態に従ってPAOを形成するための反応システムの例示的な流れ図である。
【図3】本発明の別の実施形態に従ってPAOを形成するための反応システムの例示的な流れ図である。
【図4】図2の反応システムの溶出液流中に含有される様々な構成成分の例示的な相対流速を提供する表である。
【図5A】第1の比較例と比較した、本発明の一実施形態による13C NMRスペクトルを示す図である。
【図5B】図5Aの13C NMRスペクトルの詳細な一部分を示す図である。
【図6】例8で形成したPAOの13C NMRスペクトルを示す図である。
【図7】第2の比較例の13C NMRスペクトルを示す図である。
【図8】例4〜6に従って、粘度を滞留時間の関数としてプロットしたチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
序論
第1の実施形態では、本発明は、ポリαオレフィン(「PAO」)を、α−オレフィンモノマー、好ましくはC〜C12α−オレフィンモノマー、より好ましくは1−デセンモノマーから形成するためのプロセスに関する。この実施形態では、本発明は、1−デセンなどのC〜C12α−オレフィンを、水素及び触媒的に有効な量の触媒(又は触媒系)の存在下で重合させて、合成潤滑剤の用途に適した粘度及び他の物理特性を有するオリゴマー及び/又はポリマーを形成するプロセスに関する。この実施形態では、C〜C12飽和炭化水素、好ましくは飽和直鎖炭化水素、好ましくは該C〜C12α−オレフィンモノマーと同数の炭素原子を有するものを、モノマーと共に反応混合物に同時供給する。たとえば、モノマーが1−デセンを含む場合、飽和の直鎖又は分枝鎖の炭化水素は、好ましくは、1つ又は複数種のデカン(特にn−デカン)を含む。この実施形態では、C〜C12飽和炭化水素、好ましくは飽和直鎖炭化水素は、理想的には、供給物中のα−オレフィンモノマー(たとえばC〜C12α−オレフィンモノマー)及びC〜C12飽和炭化水素の重量に基づいて、5〜50重量%の範囲の量、好ましくは10〜50重量%の範囲の量、最も好ましくは15〜30重量%の範囲の量で供給物中に存在する。
【0031】
反応混合物中の飽和炭化水素の濃度を高めて維持することによって、生じるプロセスの全体的な選択性及び収率を有利に増加させ得ることが、驚くべきことにかつ予想外に発見された。この選択性及び収率の増加は、望ましくかつ驚くべきことに、一般に、PAO粘度の顕著な変化を伴わない。さらに、本発明の本実施形態のプロセスは、転化率の向上を提供し得る。所望により、C〜C12飽和炭化水素は、重合プロセス中に形成された粗PAO副生物からもたらすことができる。
【0032】
第2の実施形態では、本発明は、(a)α−オレフィンモノマー、好ましくはC〜C12α−オレフィンモノマー、より好ましくは1−デセンモノマーを、水素及び触媒系の存在下、反応器内で重合させるステップ及び、(b)炭化水素を反応器に加えるステップ、を含む、PAOを形成するためのプロセスに関する。この実施形態では、炭化水素は、純粋なα−オレフィンモノマーの蒸気圧から20%以内、たとえば、10%以内又は5%以内の蒸気圧を有する(50℃で測定)。好ましくは、炭化水素は、飽和炭化水素、たとえば、主α−オレフィンモノマーと実質的に同数の炭素原子、1個以内の差の炭素原子を有する飽和炭化水素を含む。より好ましくは、炭化水素は、C〜C12飽和炭化水素、好ましくは主α−オレフィンモノマーと同数の炭素原子を有するものを含む。第1の実施形態と同様、炭化水素は、所望により、重合プロセス中に形成された粗PAO生成物からもたらすことができる。同様に、炭化水素は、所望により、反応器に供給したα−オレフィンモノマー(好ましくはC〜C12α−オレフィンモノマー)及び炭化水素の合わせた重量に基づいて、5〜50重量%の範囲の量、好ましくは10〜50重量%の範囲の量、最も好ましくは15〜30重量%の範囲の量で供給物中に存在する。
【0033】
第3の実施形態では、本発明は、本発明のプロセスを行なうために適した反応システムに向けられている。
【0034】
第4の実施形態では、本発明は、連続的なPAO反応システムにおける使用に特に良好に適した触媒除去カラムに関する。触媒除去カラムは、PAO反応器と流体接続しており、PAO反応システムからの使用済み触媒を選択的に吸着するように構成された固体吸着粒子が詰められている。このカラムにより、反応器に再循環させた場合はメタロセン触媒系を失活させる水を使用せずに、使用済み触媒を粗溶出液流から効率的に分離することが可能となるため、この実施形態は、上述のように生成物の一部分が再循環されて反応器に戻される態様に特に望ましい場合がある。
【0035】
第5の実施形態では、本発明は、反応器内でのPAOの滞留時間に基づいたPAOの動粘度が制御される、PAOを形成するためのプロセスに関する。プロセスは、反応器内で、C〜C12α−オレフィンを、水素及び触媒的に有効な量の触媒(又は触媒系)の存在下、PAOを形成するために有効な条件下で重合させるステップを含み、PAOは、1分間を超える反応器内での平均滞留時間を有し、PAOは、500cSt以下の動粘度を有する。
【0036】
モノマー
上に示したように、本発明のプロセスでは、α−オレフィンモノマー、好ましくはC〜C12α−オレフィンモノマーを、水素及び触媒的に有効な量の触媒(又は触媒系)の存在下で重合させて、PAOを形成する。α−オレフィンは、好ましくは、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、及び1−ドデセンからなる群から選択され、より好ましくは、1−オクテン、1−デセン、及び1−ドデセンからなる群から選択され、最も好ましくは1−デセンである。用いるα−オレフィン、好ましくは1−デセンの純度レベルは、理想的には、必ずしもではないが、90重量%を超える、たとえば、94重量%を超える又は98重量%を超える。
【0037】
反応器に加えるα−オレフィンの量は、たとえば、用いる触媒の活性に応じて、変動し得る。一部の例示的な実施形態では、α−オレフィンモノマー、たとえばC〜C12α−オレフィンは、反応器に供給したすべての材料の合計重量に基づいて、10〜95重量%、たとえば、50〜95重量%又は70〜93重量%の範囲の量で反応器に加える。理想的には、C〜C12α−オレフィンモノマーは、反応器に加えたC〜C12α−オレフィンモノマーの合計重量に基づいて、75重量%を超える、たとえば、90重量%を超える又は99重量%を超える量で1−デセンを含む。
【0038】
所望により、C〜C12α−オレフィンモノマーは、主C〜C12α−オレフィンモノマー、たとえば1−デセンを、1つ又は複数の副モノマーと組み合わせて含む。本明細書中で使用する「主」C〜C12α−オレフィンモノマーとは、供給原料中に含有される全モノマー合計に基づいて、50重量%以上の量で重合供給原料中に存在するC〜C12α−オレフィンモノマーである。逆に、本明細書の目的のために、「副」モノマーとは、供給原料中に含有される全モノマー合計に基づいて、50重量%未満の量で重合供給原料中に存在するモノマーである。したがって、本発明のプロセスにおいて形成されるPAOは、1つのα−オレフィンモノマー、たとえば、1−デセンなどのC〜C12α−オレフィンモノマーのホモポリマー、又は主C〜C12α−オレフィンモノマーと1つ若しくは複数の副モノマーとのコポリマーであり得る。副モノマー(単数又は複数)は、たとえば、1つ又は複数のC〜C25モノマー、好ましくは1つ又は複数のC〜C25α−オレフィンを含み得る。たとえば、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、2008年2月6日出願の、題名「プロペンの添加を用いたポリαオレフィンの分枝レベル及び粘度の制御(Controlling Branch Level and Viscosity of Polyalphaolefins with Propene Addition)」の米国特許出願第12/026,981号明細書に記載されているように、たとえば生じるPAO生成物の分枝特徴及び粘度を制御するために、重合反応混合物中に2つ以上のモノマーの組合せが存在することが望ましい場合がある。たとえば、一部の例示的な実施形態では、モノマー供給原料は、(1)約75重量%〜約99重量%の主C〜C12α−オレフィンモノマー(1−デセンなど)、たとえば、約80重量%〜約90重量%の主C〜C12α−オレフィンモノマー、約85重量%〜約95重量%の主C〜C12α−オレフィンモノマー、又は約90重量%〜約99重量%の主C〜C12α−オレフィンモノマー、及び(2)約1重量%〜約25重量%の副モノマー(単数若しくは複数)(プロペンなど)、たとえば、約10重量%〜約20重量%の副モノマー、約5重量%〜約15重量%の副モノマー、又は約1重量%〜約10重量%の副モノマーを含み得る。副モノマーには、たとえば、以下のうちの1つ又は複数が含まれ得る:エチレン、プロピレン、2−メチルプロペン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなど。用いるモノマーにデセン及び1つ又は複数の副モノマーが含まれる場合、重合反応混合物中のデセン対1つ又は複数の副モノマーの重量比は、好ましくは、3:1を超える、たとえば、4:1を超える、5:1を超える、10:1を超える、20:1を超える又は50:1を超える。
【0039】
水素
本発明のプロセスで用いるモノマーは、好ましくは、水素の存在下でPAOに転化される。反応における水素の主要な役割は、PAO分子中に残った残留不飽和を水素化することである。したがって、反応器内に水素が存在することで、有利なことに、PAOが形成された後の追加の水素化ステップの必要性の排除がもたらされ得る。残念ながら、水素は、モノマーα−オレフィン中の不飽和を増大させて一般に非反応性である飽和副生物を形成し得る。したがって、PAOの水素化をα−オレフィンの水素化よりも促進することが望ましい。しかし、望ましいことに、飽和モノマーの形成(及び/又は添加)により反応混合物の全体的な粘度が減少し、水素の溶解度が増強され得る。理論に束縛されずに、水素の溶解度の増強は、反応混合物を通ってPAOの不飽和部位まで水素がより良好に拡散することを可能にし得る。PAOへの水素の物質移動の改善は、α−オレフィンの水素化を超えるPAOの水素化の、相対反応速度の好都合なシフトを最終的にもたらし、したがって、水素化されるモノマーの量が減少する結果、選択性及び収率の向上がもたらされる。たとえば、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、2006年7月19日出願の米国特許公開第2007/0043248号を参照されたい。
【0040】
重合反応を水素の存在下で実施し、本明細書中に記載の触媒を用いることによって、本発明のプロセスによって形成される液体PAOは実質的に飽和であり、したがって、低いヨウ素価、たとえば、約0.0〜約10、好ましくは約0.1〜約5、より好ましくは約0.2〜約5、最も好ましくは約0.2〜約3のヨウ素価を有する。本明細書中で使用するヨウ素価とは、100グラムのポリマーによって消費されるヨウ素の質量のグラム数をいう。好ましい実施形態では、かつ本明細書の目的のために、ヨウ素価は、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、Gallo他、「イソプレン−イソブチレンコポリマー中の不飽和(Unsaturation in Isoprene−Isobutylene Copolymers)」、Industrial and Engineering Chemistry、第40巻、(1948)ページ1277〜1280に記載のようにして決定したが、ただし、o−ジクロロベンゼンを溶媒として、0.8gの試料サイズ、50%の関連試薬体積を使用し、還流なしで行なった。
【0041】
好ましくは、モノマー及び水素は重合反応器内に同時供給する。「同時供給する」とは、モノマー及び水素を、反応器に、少なくとも部分的に同時に供給することを意味する(単一の合わせた流れか別々の流れかにかかわらない)。一態様では、水素は、モノマー供給原料とは別に反応器に加える。たとえば、水素は、スパージ系を介して反応混合物に直接加え得る。それに加えて又はその代わりに、水素は、所望により加圧下で、反応器に加える前に、モノマー供給原料に加え得る。
【0042】
反応器に供給する水素の量は、たとえば、所望の水素化の度合及び用いる触媒系の活性に応じて広く変動し得る。所望により、水素は、モノマー1モル当たり0.01モルを超える水素、たとえば、モノマー1モル当たり0.04モルを超える水素又はモノマー1モル当たり0.08モルを超える水素の量で、反応器に加える。範囲で言えば、所望によりモノマー1モル当たり0.01〜1.2モルの水素、たとえば、モノマー1モル当たり0.04〜0.76モルの水素又はモノマー1モル当たり0.08〜0.12モルの水素を反応器に供給する。
【0043】
一部の例示的な実施形態では、反応器への水素の流速は、反応器1リットル当たり毎分10〜10,000標準立方センチメートル(sccm)、たとえば、反応器1リットル当たり10〜5,000sccm、又は反応器1リットル当たり500〜1000sccm/分である。
【0044】
炭化水素
上に示したように、本発明の一部の態様では、飽和炭化水素、たとえばC〜C12飽和炭化水素、好ましくはC〜C12飽和直鎖炭化水素を、α−オレフィンモノマー、たとえばC〜C12α−オレフィンモノマーと共に反応混合物に同時供給する。好ましい実施形態では、炭化水素は、主C〜C12α−オレフィンモノマーと同数の炭素原子を有する。同様に、一部の実施形態では、50℃で重合反応器に加える主α−オレフィンモノマーの蒸気圧から20%以内、たとえば、10%以内又は5%以内の蒸気圧を有する炭化水素(好ましくは、主α−オレフィンモノマーと実質的に同数の炭素原子、1個以内の差の炭素原子を有する飽和炭化水素)を、主α−オレフィンモノマーと共に反応混合物に同時供給する。
【0045】
飽和炭化水素、たとえばC〜C12飽和炭化水素、好ましくはC〜C12飽和直鎖炭化水素を、モノマーと共に反応器に同時供給することによって、選択性及び収率を有利に増加させ得ることが、驚くべきことにかつ予想外に発見された。反応システムに同時供給する飽和炭化水素のレベルは、触媒系の活性及び用いるプロセス条件などの条件に応じて変動し得るが、反応器に供給したα−オレフィンモノマー(たとえばC〜C12α−オレフィンモノマー)及びC〜C12飽和炭化水素の合わせた重量に基づいて、好ましくは40重量%未満、たとえば、30重量%未満又は20重量%未満である(しかし、好ましくは5重量%を超える、たとえば、10重量%を超える又は15重量%を超える)。好ましい態様では、反応器内の飽和炭化水素レベルは、実質的に一定に維持される。特に好ましい実施形態では、飽和炭化水素は、反応器に供給したα−オレフィンモノマー(たとえばC〜C12α−オレフィンモノマー)及びC〜C12飽和炭化水素の合わせた重量に基づいて、5〜50重量%、たとえば、8〜30重量%、10〜50重量%、約10〜約25重量%、又は15〜30重量%の範囲のレベルで、反応器に供給する(又はその中に維持する)。供給物中のモノマー対炭化水素(別々か合わせるかにかわらない)の重量比は、所望により、19:1未満、たとえば、9:1未満、5.7:1未満又は2.3:1未満であり、範囲で言えば、1:1〜19:1、たとえば、9:1〜19:1、又は2.3:1〜5.7:1の範囲であり得る。これらの飽和炭化水素レベルは、選択性及び収率を有効に最大限にする一方で、全体的なPAO生産の商業的に許容されるレベルを維持することが、驚くべきことに、かつ予想外に示された。
【0046】
理論に束縛されずに、選択性及び収率は、反応システムにおける、モノマーと比較して不飽和PAOに対する水素の接近性を向上させることによって、改善されると考えられている。たとえば、1−デセンをモノマーとして使用し、デカン、たとえばn−デカンを飽和炭化水素として用いた場合、1−デセンモノマーから形成されたいかなる不飽和ポリデセンも、同じ条件であるが飽和炭化水素の非存在下で反応システム中に存在するであろう不飽和ポリデセンよりも、高い度合で水素化され得る。逆に、飽和炭化水素を、特に主張した量で含有する反応システム中のモノマーは、同じ条件であるが飽和炭化水素の非存在下で反応システム中に存在するであろうモノマーと比較して、水素化されて追加の飽和炭化水素を形成する(たとえば、n−デカンを1−デセンから形成する)可能性がより低い。したがって、飽和炭化水素、たとえばデカンの存在は、さらなるn−デカンの形成を抑制し、したがって全体的な選択性及び収率を向上させるであろう。
【0047】
飽和炭化水素、たとえばC〜C12飽和炭化水素、好ましくはC〜C12飽和直鎖炭化水素が、本発明のPAO重合プロセスの副生物として形成され得る。したがって、反応器から収率される粗PAO生成物は、1つ又は複数の分離ユニットにおいて、濃縮飽和炭化水素流と精製PAOを含む精製PAO生成物流とに所望により分離し得る。複数の分離ユニット(たとえば、蒸留カラム、エバポレーター(evaporator)(好ましくはワイプフィルムエバポレーター(wiped film evaporator))、フラッシュ室など)を分離ステップで用いる場合、濃縮飽和炭化水素流は、たとえば、複数の分離ユニットからの1つ又は複数のオーバーヘッド流を含み得る。同様に、複数の分離ユニットを分離ステップで用いる場合、精製PAO生成物流は、たとえば、複数の分離ユニットからの1つ又は複数のボトム流を含み得る。
【0048】
濃縮飽和炭化水素流中に含有される炭化水素(たとえば、1つ若しくは複数のデカン、又は、50℃でα−オレフィンから20%以内、たとえば、10%以内若しくは5%以内の蒸気圧を有する炭化水素などのC〜C12飽和直鎖炭化水素)の濃度は、反応条件、用いる触媒、及び使用する分離系に応じて変動する。一部の例示的な実施形態では、濃縮飽和炭化水素流は、炭化水素を、濃縮飽和炭化水素流の合計重量に基づいて、40重量%を超える、たとえば、50重量%を超える、60重量%を超える又は75重量%を超える量で含み得る。また、濃縮飽和炭化水素流は、未反応のモノマーも、濃縮飽和炭化水素流の合計重量に基づいて、40重量%を超える、たとえば、50重量%を超える、60重量%を超える又は75重量%を超える量で含み得る。濃縮飽和炭化水素流は、好ましくは、PAOを、濃縮飽和炭化水素流の合計重量に基づいて、5重量%未満、たとえば、2重量%未満又は1重量%未満の量で含む。逆に、精製PAO生成物流は、好ましくは、炭化水素を、精製PAO生成物流の合計重量に基づいて、1重量%未満、たとえば、0.5重量%未満又は0.1重量%未満の量で含む。精製PAO生成物流は、好ましくは、PAOを、精製PAO生成物流の合計重量に基づいて、97重量%を超える、たとえば、99重量%を超える又は99.9重量%を超える量で含む。
【0049】
分離した後、濃縮飽和炭化水素流の少なくとも一部分を、所望によりモノマー供給原料と合わせた後に、再循環流として反応器に再循環させ得る。所望する場合は、反応器中に含有されるC〜C12飽和炭化水素の濃度を押し上げるために、追加の炭化水素(たとえば、市販のC〜C12飽和炭化水素、好ましくは直鎖炭化水素)を再循環流及び/又はモノマー供給原料に加え得る。
【0050】
本態様では、望ましくない副生物及び汚染物質の蓄積を防止するために、濃縮飽和炭化水素流の一部分をパージ流として重合系から除去することが好ましい。パージ流は、好ましくは、濃縮飽和炭化水素流合計の5〜35重量%程度、たとえば、10〜30重量%、又は15〜25重量%を含む。言い換えれば、濃縮飽和炭化水素流の約65〜95重量%、たとえば、70〜90重量%、又は75〜85重量%を反応器に再循環させることが好ましい。
【0051】
代替態様では、飽和炭化水素、たとえば、C〜C12飽和炭化水素又はC〜C12飽和直鎖炭化水素を、モノマーと共に反応器に同時供給するが、粗PAO生成物には由来しない。本態様では、たとえば、炭化水素は、市販の飽和炭化水素、たとえば、50℃でα−オレフィンの蒸気圧から20%以内、たとえば、10%以内又は5%以内の蒸気圧を有する飽和炭化水素である。
【0052】
混成態様では、反応器の始動時に、飽和炭化水素をモノマーと共に最初に反応器に同時供給し得るが、粗PAO生成物には由来しない。上に示したように、追加の飽和炭化水素が重合プロセスの副生物として形成される。反応システム中で形成される飽和炭化水素副生物のレベルが増加し、粗PAO生成物から分離され、反応器に再循環されるにつれて、系が安定な状態に達するまで、系に同時供給する「新鮮な」炭化水素のレベルを徐々に減少させ得る。
【0053】
上に示したように、特に、用いるモノマーは典型的にはC〜C12α−オレフィンモノマーを含み、反応は水素の存在下で実施するため、追加の飽和炭化水素、たとえばC〜C12飽和炭化水素は、本発明の重合プロセスの副生物としても形成され得る。所望の飽和炭化水素レベルが反応器内で維持されるように、反応器に供給する「新鮮な」炭化水素の量を決定する際にはこのことを考慮すべきである。一部の例示的な実施形態では、飽和炭化水素(たとえば、1つ若しくは複数のデカン、又は、50℃でα−オレフィンから20%以内、たとえば、10%以内若しくは5%以内の蒸気圧を有する炭化水素などのC〜C12飽和炭化水素)のレベルは、反応器内で、反応器内のα−オレフィンモノマー(たとえばC〜C12α−オレフィンモノマー)、飽和炭化水素及びPAOの合わせた重量に基づいて、5〜70重量%、たとえば、8〜40重量%、8〜30重量%、又は15〜40重量%のレベルに維持する。
【0054】
触媒
本発明のPAOを生成するために使用する触媒系は、好ましくは、メタロセンプロ触媒(procatalyst)を適切な共触媒で活性化することによって形成する。メタロセンプロ触媒は架橋又は非架橋であり得る。好ましくは、メタロセンプロ触媒は、以下の式(I)のメタロセン化合物のうちの1つ又はその混合物を含む:
(Cp)R(Cp)MX (I)
[式中、リガンド(配位子)(Cp)のCp及びリガンド(Cp)のCpは、同一又は異なるシクロペンタジエニル環であり、R及びRは、それぞれ、独立して、20個までの炭素原子を含有するヒドロカルビル、ハロカルビル、ヘテロカルビル、ヒドロカルビル置換の有機半金属又はハロカルビル置換の有機半金属基であり、mは、0〜5の整数であり、pは、0〜5の整数であり、シクロペンタジエニル環の隣接する炭素原子上でそれと会合している2つのR及び/又はR置換基は、一緒になって、シクロペンタジエニル環と縮合した環を形成することができ、縮合環は4〜20個の炭素原子を含有し、Rは、Cp及びCpを架橋する架橋基であり、Mは、3〜6の原子価を有する遷移金属であり、各Xは、非シクロペンタジエニルリガンドであり、独立して、ハロゲン又は20個までの炭素原子を含有するヒドロカルビル、オキシヒドロカルビル、ハロカルビル、ヒドロカルビル置換の有機半金属、オキシヒドロカルビル置換の有機半金属若しくはハロカルビル置換の有機半金属基であり、qは、Mの原子価−2に等しい]。これら及び他の有用なメタロセンプロ触媒を調製する方法は当技術分野で知られている。本明細書中で使用するための触媒組成物は、好ましくは、メタロセンプロ触媒を適切な触媒で活性化することによって形成する。本明細書中で使用する用語「メタロセン」及び「メタロセンプロ触媒」とは、遷移金属M、少なくとも1つの非シクロペンタジエニル由来のリガンドX及び0〜1個のヘテロ原子含有リガンドY[リガンドは、Mに配位しており、数がその原子価に対応する]を保有する化合物をいうことを理解されたい。そのような化合物、その活性化に有用な、ポリオレフィンホモポリマー及びコポリマーを提供するためにオレフィンの重合で用い得るメタロセン触媒を提供するための共触媒、並びに/又は、メタロセン触媒のうちの1つ若しくは複数を用いた重合プロセスは、とりわけ、その内容が本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第4,752,597号、第4,892,851号、第4,931,417号、第4,931,517号、第4,933,403号、第5,001,205号、第5,017,714号、第5,026,798号、第5,034,549号、第5,036,034号、第5,055,438号、第5,064,802号、第5,086,134号、第5,087,677号、第5,126,301号、第5,126,303号、第5,132,262号、第5,132,380号、第5,132,381号、第5,145,819号、第5,153,157号、第5,155,080号、第5,225,501号、第5,227,478号、第5,241,025号、第5,243,002号、第5,278,119号、第5,278,265号、第5,281,679号、第5,296,434号、第5,304,614号、第5,308,817号、第5,324,800号、第5,328,969号、第5,329,031号、第5,330,948号、第5,331,057号、第5,349,032号、第5,372,980号、第5,374,753号、第5,385,877号、第5,391,629号、第5,391,789号、第5,399,636号、第5,401,817号、第5,406,013号、第5,416,177号、第5,416,178号、第5,416,228号、第5,427,991号、第5,439,994号、第5,441,920号、第5,442,020号、第5,449,651号、第5,453,410号、第5,455,365号、第5,455,366号、第5,459,117号、第5,466,649号、第5,470,811号、第5,470,927号、第5,477,895号、第5,491,205号、及び第5,491,207号に記載されている。
【0055】
前述のメタロセンプロ触媒を用い、かつ共触媒が完全にアルミノキサンである場合、リガンド(Cp)は、好ましくは、リガンド(Cp)とは異なり、架橋基Rは、好ましくは少なくとも2つのかさ高い基を含有する。これらの架橋メタロセンのうち、架橋基Rが以下の構造を保有することが好ましい:
【化5】


[式中、かさ高い基R及びRのそれぞれは、独立して、20個まで、好ましくは6〜12個の炭素原子及び0〜3個のヘテロ原子、たとえば酸素、硫黄、第三級窒素、ホウ素若しくはリンを含有するシクロヒドロカルビル基であるか、又はそれを含有し、特に、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルカリール、アルキルヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキルなどである]。式(I)の化合物中のMは、チタン、ジルコニウム又はハフニウム、qは2であり、各Xはハロゲンである。
【0056】
架橋メタロセンのこの好ましい基のうち、リガンド(Cp)が置換又は非置換のシクロペンタジエニルであり、リガンド(Cp)がインデニル又はフルオレニルであり、Mがジルコニウムであり、R及びRがそれぞれ置換又は非置換のフェニルであり、各Xリガンドが塩素であるものが、特に好ましい。
【0057】
本発明の実施形態の重合プロセスで使用することができる例示的な式(I)の架橋メタロセンには、それだけには限定されないが、ジフェニルメチレン(インデニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(4,5,6,7−テトラヒドロ−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(2,4−ジメチルシクロ−ペンタジエニル)(3’,5’ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(2−メチル−4−tert−ブチルシクロ−ペンタジエニル)(3’−tert−ブチル−5メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジキシリルメチレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2’,4,5’−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジキシリルメチレン(2,4ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジキシリルメチレン(2−メチル−4−tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジキシリルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジ−o−トリルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジ−o−トリルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジ−o−トリルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジ−o−トリルメチレン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジシクロヘキシルメチレン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジシクロヘキシル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジシクロヘキシルメチレン(2−メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシリル(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシリル(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシリル(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2,4,トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、テトラフェニルジシリル(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、テトラフェニルジシリル(3−メチルシクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、テトラフェニルジシリル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジ−o−トリルシリル(シクロペンタジエニル)(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジ−o−トリルシリル(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジ−o−トリルシリル(シクロペンタジエニル)(3,4−ジエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジ−o−トリルシリル(シクロペンタジエニル)(トリエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジベンジルシリル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジベンジルシリル(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジシクロヘキシルシリル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、及びジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドが含まれる。
【0058】
好ましい実施形態では、重合は、以下の構造にょって表される、式PhC(Cp−9−Flu)ZrCl(ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、本明細書中ではCpFluとも呼ぶ)を有する触媒の存在下で起こる。
【化6】

【0059】
式(I)のメタロセンプロ触媒と共に用いる共触媒、すなわち活性化剤は、メタロセンプロ触媒を活性化することが知られているアルミノキサンのうちの任意のものであることができる。例示的なアルミノキサン共触媒には、メチルアルミノキサン(MAO)などのアルキルアルミノキサンが含まれる。たとえば、本明細書中に完全に記載した場合と同様にその全体が参照により組み込まれている、米国特許第5,229,478号を参照されたい。
【0060】
一般に、架橋メタロセンプロ触媒は、その遷移金属含量換算で表して、0.0001mmol/L〜5mmol/L、たとえば、0.0001mmol/L〜0.09mmol/L、0.001mmol/L〜0.05mmol/L、0.002mmol/L〜0.05mmol/L、0.01mmol/L〜0.05mmol/L、0.015mmol/L〜0.03mmol/L、好ましくは約0.025mmol/Lの量で反応器内に存在することができる。
【0061】
これらの遷移金属の量に対応して、アルミノキサン共触媒は、反応器内に約0.002mmol/L〜約50mmol/L、好ましくは約0.002mmol/L〜約25mmol/L、より好ましくは約0.02mmol/L〜約10mmol/Lの量で利用することができる。架橋メタロセンプロ触媒及びアルミノキサン共触媒の最適なレベルは、ある程度、選択した具体的なプロ触媒及び共触媒並びに他の重合プロセスの変数に依存する。
【0062】
反応器内のアルミノキサン共触媒対メタロセンプロ触媒のレベルに関して、モル比は、たとえば、約1000:1、約750:1、約500:1、約250:1、約100:1、約50:1、又は約25:1であることができる。一部の実施形態では、メタロセンプロ触媒対アルミノキサン共触媒のレベルは、好ましくは500:1である。他の実施形態では、メタロセンプロ触媒対アルミノキサン共触媒のレベルは、好ましくは100:1である。さらに他の実施形態では、メタロセンプロ触媒対アルミノキサン共触媒のレベルは、好ましくは25:1である。範囲で言えば、アルミノキサン共触媒対メタロセン触媒のモル比は、所望により、25:1〜3000:1、たとえば、25:1〜1000:1、又は250:1〜1000:1である。C〜C12飽和炭化水素及び/又は該α−オレフィンから20%以内の蒸気圧を有する炭化水素を反応システムに供給する場合、アルミノキサン共触媒対メタロセン触媒の好ましいモル比は、約50:1〜約1000:1、たとえば、約200:1〜約800:1、最も好ましくは約300:1である。炭化水素を反応システムに供給しない重合反応システムでは、より高い比が一般に望ましい。
【0063】
アルミノキサン共触媒を用いる場合、メタロセンプロ触媒の適切な活性化に必要なアルミノキサンの量を減少するために、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ(n−プロピル)アルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ(n−ブチル)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物を含めることが有利な場合がある。一般に、所望により、トリアルキルアルミニウムを、約1〜約1000、好ましくは約2〜約500の、メタロセンプロ触媒に対するモルレベルで利用することができる。
【0064】
また、中性又は陰イオン性の半金属含有構成成分を、メタロセンプロ触媒の活性化において、所望によりアルミノキサン共触媒と共に用いることができることも考慮される。例示的な中性半金属含有構成成分には、ペルフルオロアリールボラン化合物、たとえば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(メトキシフェニル)ボラン、トリス(トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジ[トリフルオロ−メチル]フェニル)ボラン、トリス(テトラフルオロキシリル)ボラン、トリス(テトラフルオロ−o−トリル)ボランなどのボランが含まれる。前述のボランのうち、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン及びトリス(3,5ジ[トリフルオロメチル]フェニル)ボランが好ましい。他の有用な第2の構成成分には、前述の化合物のアルミニウム相同体が含まれる。
【0065】
例示的な陰イオン性半金属含有構成成分には、ペルフルオロアリールボレート、たとえば、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(3,5−ジ[トリ−フルオロメチル]フェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(ペンタフルオロ−フェニル)ボレート、カリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、マグネシウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、チタンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、スズテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのボレートが含まれる。前述のボレートのうち、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート並びにリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びリチウムテトラキス(3,5−ジ[トリフルオロ−メチル]フェニル)ボレートなどのアルカリ金属ボレートが好ましい。一部の実施形態では、前述の化合物のアルミネート相同体を使用し得る。
【0066】
一般に、中性又は陰イオン性の半金属含有構成成分は、約1:2、約1:1.5、約1:1、又は約1:0.5の、メタロセンプロ触媒に対するモルレベルで利用することができる。陰イオン性半金属含有構成成分がジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである場合、ボレート対メタロセンプロ触媒のレベルは1:1である。
【0067】
活性メタロセン触媒組成物を得るためにメタロセンを活性化することは、所望により中性又は陰イオン性の半金属含有構成成分の存在下、同時に又は任意の順序で、かつそれらの間を任意の時間間隔で、オレフィンモノマー(単数若しくは複数)及び水素の存在下又は非存在下で、前述のメタロセンプロ触媒をアルミノキサン共触媒と合わせることによって、達成することができる。活性化は、所望により0〜100℃の範囲の温度で、所望により1分間〜72時間の範囲の時間で起こる。所望により、活性化は、0〜99%の脂肪族又は芳香族のどちらかの不活性炭化水素溶媒中で起こる。好ましい実施形態では、メタロセン触媒は、トルエンを溶媒として用いて10分間、室温で活性化させる。
【0068】
一部の実施形態では、活性メタロセン触媒組成物を事前に調製し、その後、組成物をオレフィンモノマー(単数又は複数)と共に、所望により水素の存在下で重合反応器内に導入する。
【0069】
活性メタロセン触媒を生成するための、メタロセンプロ触媒とアルミノキサン共触媒との反応は、好ましくは、約0〜約100℃、たとえば、約0〜約80℃、約10〜約50℃、又は約25〜約50℃の範囲の温度で、約1分間〜約72時間、たとえば、約1分間〜約50時間、約1分間〜約30時間、又は約1分間〜約24時間の時間で実施する。
【0070】
プロセスのパラメータ
本発明の重合プロセスは、任意の既知の様式、たとえば液相中、すなわち、溶液若しくはスラリープロセス中、又は懸濁液プロセス中で、連続的、半連続的、又はバッチで実施し得る。これらのプロセスは、一般に、約105℃〜約170℃、好ましくは110℃〜150℃、120℃〜140℃、及び好ましくは約130℃の範囲の温度で実施する(重合反応プロセスには、より低い温度が一般に望ましい)。反応器内の圧力は、所望により0〜3000psig(0〜20700kPag)、たとえば、0〜600psig(0〜4100kPag)又は10〜240psig(70〜1700kPag)の範囲である。他の好ましい圧力は、0〜4240kPag、たとえば、1.7〜1760kPag又は520〜720kPagの範囲である。1500kPagを超える圧力が、慣用の重合反応プロセスには一般に望ましい。当業者には容易に理解されるように、重合温度の制御は、重合の品質、たとえば活性、及び最終生成物の特性、たとえばヨウ素価に直接影響を与える。しかし、これらの温度は150℃以上に達すると、発熱温度、すなわち、重合中に達する最大温度は、初期重合温度たとえば、約150℃を超える温度に実質的に近いべきであり、発熱温度は、初期重合温度と比較して約20℃より大きくは高まるべきでない。
【0071】
重合は、液体モノマー中、溶媒の非存在下、又は所望する場合は溶媒の存在下で実施することができる。このコンテキストでは用語「溶媒」とは、第1の実施形態のC〜C12飽和炭化水素又は第2の実施形態の炭化水素以外の非反応性の液体をいう。用いることができる希釈溶媒には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの直鎖及び分枝鎖の炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチル−シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタンなどの環状及び脂環式の炭化水素、トルエン、キシレンなどのアルキル置換の芳香族化合物等、並びに前述のものの混合物が含まれる。
【0072】
好ましくは、重合プロセスは連続的又は半連続的な重合反応プロセスであり、これは、モノマーを連続的又は半連続的に反応器に供給し、生成物が連続的又は半連続的に反応器から取り出されることを意味する。本発明のこの態様は、図1〜3を参照しながら、以下により詳細に記載されている。これらの態様では、PAOは、好ましくは、5〜300分間、たとえば、10〜60分間、15〜45分間、又は20〜40分間程度の、反応器内での滞留時間を有する。
【0073】
驚くべきことにかつ予想外に、反応器内でのPAOの滞留時間は、形成される生じるPAOの粘度に逆の影響を与えることが発見された。具体的には、反応システムをより大きな滞留時間で稼働した場合、生じるPAOの動粘度は、より低い滞留時間で形成したPAOと比較して減少していることが発見された。したがって、第5の実施形態では、本発明は、反応器内でのPAOの滞留時間に基づいたPAOの動粘度が制御される、PAOを形成するためのプロセスに関する。このプロセスは、反応器内で、C〜C12α−オレフィンを、水素及び触媒的に有効な量の触媒系の存在下、PAOを形成するために有効な条件下で重合させるステップを含み、PAOは、5分間を超える反応器内での平均滞留時間を有し、それでPAOは、200cSt以下の動粘度を有する。好ましい実施形態では、PAOは、10分間を超える反応器内での平均滞留時間を有し、それでPAOは、150cSt以下の動粘度を有する。さらにより好ましい実施形態では、PAOは、25分間を超える反応器内での平均滞留時間を有し、それでPAOは、125cSt以下の動粘度を有する。
【0074】
別の実施形態では、プロセスはバッチ重合プロセスである。典型的なバッチ溶液重合プロセスは、最初に、α−オレフィンモノマー、たとえば、1−デセンなどのC〜C12α−オレフィンモノマーを、単独で又は所望により炭化水素溶媒、たとえば、ヘキサン、キシレンなどと組み合わせて、攪拌タンク反応器内に導入することによって実施することができる。第1の実施形態のC〜C12飽和炭化水素、たとえば1つ若しくは複数種のデカン、又は第2の実施形態の炭化水素(50℃で純粋なα−オレフィンモノマーの蒸気圧から20%以内、たとえば、10%以内又は5%以内の蒸気圧を有するもの)を、α−オレフィンモノマーに続き、又は同時に供給することができる。微量の不活性不純物捕捉剤、たとえば前述のトリアルキルアルミニウム化合物も、このときに供給することができる。その後、反応器を所望の温度、たとえば、約0℃〜約200℃、約50℃〜約150℃、又は80℃〜140℃まで上げ、その後、測定した量の水素を攪拌タンク反応器内に導入することができる。気体モノマーとの共重合が望ましい場合は、副モノマー、たとえば、エチレン又は1−プロペンを含む副モノマー供給を、水素供給と組み合わせて又はそれとは別々に、液相内にスパージ(sparge、散布)し得る。
【0075】
所望の条件が確立された後、所要量の触媒の炭化水素溶液を反応器内の液相に供給する。本態様では、炭化水素溶液は、所望により、第1の実施形態のC〜C12飽和炭化水素又は第2の実施形態の炭化水素を含む。別の態様では、炭化水素溶液はトルエンを含む。高レベルのトルエンは選択性の低下をもたらし得るが、小量のトルエン、たとえば、供給原料の合計重量に基づいて、7重量%未満、5重量%未満、2重量%未満又は1重量%未満のトルエンが、本発明の重合反応プロセスにおいて一般に許容されることが見い出されている。キシレン及びベンゼンなどの他の脂肪族及び芳香族の溶媒が、選択性に同様の効果を有し得る。重合速度は、他の要因と共に、重合中に存在し又は供給される触媒及びモノマーの濃度によって制御されている。反応器の温度は、好ましくは、冷却コイル、攪拌などによって制御され、反応器内の初期合計圧力は、一定流量の水素、不活性ガス、気体モノマー又はその組合せによって維持し得る。この重合が完了した後、反応器を減圧し、慣用の手段によって触媒を失活させる。
【0076】
モノマー転化の量及び反応器の内容物の粘度に応じて、炭化水素溶媒(第1の実施形態のC〜C12飽和炭化水素又は第2の実施形態の炭化水素に加えて)を、反応器からの生成物ポリオレフィンの除去を補助するために加えることができる。使用済み触媒構成成分は、たとえば、アルコール、水、又は両方の混合物と混合し、その後、ヒドロカルビル構成成分を水性構成成分から相分離することによって、反応生成物から単離することができる。その後、液体PAOを、慣用方法、たとえば、蒸発、蒸留などによってヒドロカルビル構成成分から回収し、その後、所望に応じてさらに処理することができる。
【0077】
水は、少量でも重合反応器において非常に望ましくないため、上述のように、第1の実施形態のC〜C12飽和炭化水素又は第2の実施形態の炭化水素が粗PAO生成物に由来して反応器に再循環させる本発明の実施形態では、使用済み触媒構成成分は、好ましくは、水相と混合することによっては単離しない。その代わり、たとえば、使用済み触媒(たとえば、メタロセン触媒、共触媒及び任意選択の活性化剤)は、使用済み触媒を含有する粗PAO生成物流を、それに触媒を選択的に吸着させることができる1つ又は複数の固体吸着物質と接触させることによって、粗PAO生成物流から分離し得る。
【0078】
接触は、特に重合プロセスが連続的又は半連続的なプロセスである場合は、好ましくは触媒除去カラム中で起こる。触媒除去カラムには、好ましくは固体吸着物質を詰める。粗PAO生成物流は、上方向若しくは下方向、斜めに、又は水平方向に流れさせ得る。例示的な固体吸着物質の非限定的なリストには、酸性粘土、ゼオライト、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリケート及びその混合物が含まれる。他の金属酸化物も使用し得る。固体吸着物質は、たとえば50μm〜2cm、たとえば、100μm〜1cm、又は250μm〜1000μmの範囲の体積平均粒子径(概して球状の粒子の直径)、及び合理的な圧力低下(たとえば、<200psi(<1379kPa))を維持するかさ密度を有し得る。触媒除去カラムを用いる本発明の実施形態では、飽和炭化水素が、粗PAO生成物が固体吸着物質を通ることが可能となるように、粗PAO生成物流の粘度を低下させるため、飽和炭化水素を反応器へ再循環させることが非常に望ましい。飽和炭化水素の再循環の非存在下(又は代替溶媒系の存在下)では、生じるPAO生成物流の高い粘度が、本発明の触媒除去カラムの使用を妨害し得る。したがって、飽和炭化水素の再循環は、本発明の触媒除去カラムと一緒に用いることが好ましい。
【0079】
カラム内に含有される固体吸着剤の量は、たとえば、使用する吸着剤、粒子径及び分布、並びに流速に応じて変動する。一部の例示的な実施形態では、用いる吸着剤対処理するPAOの重量比の範囲は、0.005:1〜0.5:1、たとえば、0.01:1〜0.25:1、又は0.01:1〜0.1:1であり、最も好ましくは約0.05:1である。カラムの温度の範囲、たとえば、ほぼ室温〜約125℃以上であり得る。
【0080】
触媒除去カラムを使用するにつれて、カラムを通るPAO生成物流の流速は徐々に遅くなる傾向にある。したがって、カラムが徐々に塞がれることをオフセットするために、カラムに対するPAOの圧力を徐々に増加させ得る。カラムに対するPAOの圧力の範囲は、たとえば、新鮮なカラムで約10psig(172kPag)から、より使用されたカラムで約200psig(1379kPag)、たとえば、約25psig(172kPag)〜約200psig(1379kPag)又は約100psig(689kPag)〜約200psig(1379kPag)であり得る。ある時点で、消費した吸着剤を新鮮な吸着剤と交換することを可能にするために、カラムへの触媒の流れを一時的に停止させることが必要であり得る。消費した吸着剤は、廃棄するか、又は再生して再利用し得る。
【0081】
バッチプロセスでは、固体吸着物質を、粗PAO生成物に、たとえば粉末として直接加え、その後、その上に吸着した固体吸着物質及び触媒を除去するためにろ過し、それにより触媒を減らしたPAO流を形成し得る。
【0082】
上に示したように、本発明のプロセスは、好ましいことに、慣用のPAO合成プロセスを超える顕著に向上した選択性及び収率を提供する一方で、高い転化率を維持する。たとえば、本発明の重合プロセスの全転化率は、85%を超える、たとえば、90%を超える、95%を超える又は99%を超える場合がある。転化率(conversion)とは、重合プロセス中に飽和モノマー、PAO、又は任意の他の副生物へと転化されるα−オレフィンの量をいう。転化率のパーセンテージは、反応させたα−オレフィンの重量を、系に供給したα−オレフィンの重量で除算することによって計算する。本発明のプロセスによる選択性は、好ましくは、高いレベル、たとえば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%又は少なくとも99%で維持される。本明細書中で使用する「選択性(selectivity)」とは、転化されたα−オレフィンのうちPAOに転化された割合をいう(重量に基づく)。より高い選択性は、非PAO生成物よりも所望のPAOが多く生成されたことを示す。同様に、本発明の重合プロセスの全収率は、たとえば、75%を超える、たとえば、80%を超える、85%を超える、90%を超える又は95%を超える場合がある。収率(yield)のパーセンテージは、転化率を選択性と乗算することによって計算する。一実施形態では、選択性は90%を超え、収率は75%を超え、転化率は85%を超える。さらに他の実施形態では、本発明によって生成されるPAOは、上に規定した選択性、収率及び転化率の範囲の任意の組合せによって定義されるパーセンテージを有し得る。
【0083】
ポリαオレフィン及び応用
本明細書中に記載の重合プロセスによって得ることができるPAOポリマーは、好ましくは実質的に非晶質である。実質的に非晶質であることに加えて、本明細書中の重合プロセスによって得ることができるPAOポリマーは、低い重量平均分子量(M)、低い多分散指数(polydispersity index)(M/M、ただしMは数平均分子量である)、制御可能な動粘度(Kv100)、高い粘度指数(VI)、低いヨウ素価(I#)、すなわち実質的に飽和なPAO、及び低いガラス転移温度(T)の独特な組合せを保有し、それによりこれらは既知のPAOから区別される。新規PAOポリマーは、約500〜約80,000、たとえば、約750〜約60,000、約1,000〜約40,000、約1,000〜約10,000、又は約2,500〜約7,500のM、約1.0〜約10、好ましくは約1.5〜約5、より好ましくは約1.75〜約4のM/M、約0.0〜約10、好ましくは約0.1〜約5、より好ましくは約0.2〜約3のヨウ素価、及び約−20℃未満、好ましくは約−30℃未満、より好ましくは約−40℃未満のTを保有する。別段に指定しない限りは、本明細書中で提供する分子量は、ポリスチレン標準物質を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって決定する。
【0084】
本発明のプロセスによって形成されるPAOは、好ましくは特に低い動粘度を有する。様々な例示的な実施形態では、Kv100は、約10〜約10,000cSt、たとえば、約20〜約7,500cSt、又は約25〜約5,000cStの範囲であり得る。より好ましい態様では、Kv100は、50〜500cSt、たとえば、50〜150cSt、90〜120cSt又は95〜115cStの範囲であり得る。別段に指定しない限りは、動粘度は、その全体が本明細書中に参照により組み込まれているASTM D−445に従って決定する。PAOは、好ましくは、その全体が本明細書中に参照により組み込まれているASTM D−2270によって決定して、120〜500、たとえば、170〜200の範囲のVIを有する。
【0085】
これらの有利な特性は、たとえば、粘稠の油又は流体特性を有する不活性物質を必要とする製品、たとえば、分散剤、熱伝達流体、化粧品、又は他のそのような消費製品などの様々な製品で活用することができる。
【0086】
一実施形態では、PAO構造は主に頭−尾の立体配置を有し、α−オレフィンモノマーの70%以上、たとえば80%以上又は90%以上が、頭−尾の様式で結合されている。頭−尾の立体配置は、第1のモノマー中の第1の炭素原子(頭部)が第2のモノマー中の第2の炭素(尾部)と結合する1−2付加の結果である。一実施形態では、PAO構造は低い頭−頭又は尾−尾の立体配置を有し、モノマーの30%未満、たとえば、20%未満又は10%未満が、頭−頭又は尾−尾のどちらかである。本発明によって生成された主に頭−尾であるPAOの立体配置は、13C核磁気共鳴(NMR)分析において41〜40ppmの領域中にピークを有し得る。さらに、低い頭−頭の立体配置は、42.5ppmの領域に識別可能なピークを有さない場合があり、低い尾−尾の立体配置は、21〜20ppmの領域中に識別可能なピークを有さない場合がある。「識別可能なピークを有さない」とは、各領域中の相対含量又はピーク積分値が、合計ピーク積分値の1.0%未満、たとえば、0.5%未満又は0.1未満であることを意味する。低い頭−頭又は尾−尾の立体配置は、PAO構造中に誤挿入(misinsertion)又は再配置(rearrangement)がわずかしか存在しないことを示す。一実施形態では、低い頭−頭又は尾−尾の立体配置は、PAO構造中に誤挿入又は再配置が存在しないことを意味する。
【0087】
主に頭−尾の立体配置に加えて、本発明のPAOは、典型的には低いアイソタクチック性を有する。アイソタクチック性は、mmトライアッドに対応する領域中の相対含量又はピーク積分に基づいて、13C NMR分析を用いて決定し得る。アイソタクチック構造の相対含量は、mmトライアッドのモル%と等価である。mmトライアッドの領域は35.50〜34.96ppmであり、この領域には、mmmm、mmmr、又はrmmrなどの1つ又は複数のペンタッドが含まれ得る。本発明の一実施形態による低いアイソタクチック性のPAOは、0.5〜5.0、たとえば、1.0〜4.0、又は1.5〜3.0の、mmトライアッドのモル%を有する。
【0088】
主に頭−尾の立体配置に加えて、本発明のPAOは、典型的には非常に高い度合のシンジオタクチック性を有する。シンジオタクチック性は、rrトライアッドに対応する領域中の相対含量又はピーク積分によって、13C NMR分析を用いて決定し得る。シンジオタクチック構造の相対含量は、rrトライアッドのモル%と等価である。rrトライアッドの領域は34.40〜33.71ppmであり、この領域には、rrrr、rrrm、又はmrrmなどの1つ又は複数のペンタッドが含まれ得る。本発明の一実施形態によるPAOのシンジオタクチック性は、40.0〜58.0、たとえば、42.0〜55.0、又は46.0〜52.0モル%の、rrトライアッドのモル%を有する。
【0089】
また、本発明のPAOは、主に頭−尾の立体配置を有することに加えて、アタクチック又はヘテロタクチックであってもよい。アタクチック性は、mrトライアッドに対応する13C NMR分析を用いた、領域の相対含量によって決定し得る。アタクチック構造の相対含量は、mrトライアッドのモル%と等価である。mrトライアッドの領域は34.96〜34.40ppmであり、この領域には、mmrr、mmrm、rmrr又はrmrmなどの1つ又は複数のペンタッドが含まれ得る。本発明の一実施形態によるPAOのアタクチック性は、37.0〜59.5、たとえば、40.0〜55.0モル%又は45.0〜50.0モル%の、mrトライアッドのモル%を有する。
【0090】
一実施形態では、PAO構造は、0.5〜5.0モル%のmmトライアッド及び40.0〜58.0モル%のrrトライアッドのタクチック性を有し得る。別の実施形態では、PAO構造は、0.5〜5.0モル%のmmトライアッド、40.0〜58.0モル%のrrトライアッド及び37.0〜59.5モル%のmrトライアッドのタクチック性を有し得る。さらに別の実施形態では、本発明によって生成されるPAOは、mm、mr又はrrトライアッドの上記同定した範囲の任意の組合せによって定義されるタクチック性を有し得る。
【0091】
さらに、本発明の生成物は、機能化した低分子量ポリマーを生成するためのグラフト用途に使用することができる。本発明のPAOポリマーは、潤滑剤、特に潤滑油の粘度調整剤として特に有用であり、その場合、このポリマーは粘度を調整できる量で使用される。潤滑剤組成物の合計重量に基づいて、約1〜約99重量%の濃度で使用することができる。好ましくは、濃度は約5〜約85重量%である。
【0092】
一般に、米国石油協会のI、II、及びIII群として定義される油を含めた、パラフィン性、ナフテン性の両方の鉱物油及びその混合物を、潤滑ビヒクルとして用いることができ、たとえば、100℃で約2cStから100℃で約1,000cSt、好ましくは100℃で約2〜約100cStなどの、任意の適切な潤滑粘度範囲であることができる。これらの油は、好ましくは約180までの範囲の粘度指数を有することができる。これらの油の平均分子量は、約250〜約800の範囲であることができる。
【0093】
合成油を用いる場合、これらには、それだけには限定されないが、ポリイソブチレン、ポリブテン、水素化ポリデセン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチルプロパンエステル、ネオペンチル及びペンタエリスリトールエステル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジブチル、炭化フッ素、ケイ酸エステル、シラン、リン含有酸のエステル、液体尿素、フェロセン誘導体、水素化合成油、鎖型ポリフェニル、シロキサン及びシリコン(ポリシロキサン)、ブチル置換のビス(p−フェノキシフェニル)エーテルによって代表されるアルキル置換のジフェニルエーテル、並びにフェノキシフェニルエーテルが含まれてもよい。
【0094】
また、潤滑剤組成物は、1つ又は複数の他の物質、たとえば、洗剤、腐食阻害剤、酸化阻害剤、分散剤、流動点分散剤、消泡剤、抗摩耗剤、他の粘度調整剤、摩擦改質剤などを、通常レベルで、周知の実務に従って含有することもできる。それぞれ、金属フェネート又はスルホネート、ポリマースクシンイミド、非金属又は金属ホスホロジチオエートなどによって例示される、極圧剤、低温特性改質剤などを含めた他の物質も、通常のレベルで、周知の実務に従って使用することができる。これらの物質は、本発明の組成物の価値を損なわなず、むしろ、それらを取り込ませた具体的な組成物に、その慣用の特性を与える役割を果たす。
【0095】
一態様では、本発明の低粘度のPAOを、たとえば、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている、米国公開特許出願US2006/0276355 A1号、US2007/0298990 A1号、US2007/0289897 A1号、US2008/0020954 A1号、並びにWO2007/145924 A1号及びWO2007/146081号に記載のような1つ又は複数のより高粘度の物質と混合し得る。
【0096】
反応システム
別の実施形態では、本発明は、上述の本発明のプロセスを行なうための反応システムに関する。図1は、本発明の第2の実施形態の一態様による例示的な反応システム100の流れ図を例示している。示すように、反応システム100は、反応器101、触媒除去ユニット102、及び分離区域103を含む。
【0097】
示すように、モノマー含有供給原料104、水素供給原料106及び触媒供給105は、反応器101に向かわせる。モノマー含有供給原料104は、α−オレフィン(たとえば、1−デセンなどのC〜C12α−オレフィンモノマー)、炭化水素(たとえば、1つ若しくは複数種のデカン、又は、50℃で該α−オレフィンから20%以内、たとえば、10%以内若しくは5%以内の蒸気圧を有する炭化水素などのC〜C12飽和炭化水素)、所望により1つ又は複数の副モノマー(minor monomer)、及び所望により溶媒を含む。この実施形態では、炭化水素は、たとえば、市販の炭化水素であり得る。上に示したように、炭化水素は、好ましくは該α−オレフィンと同数の炭素原子を有する。触媒供給105は、好ましくは上述のように重合触媒(好ましくはメタロセンプロ触媒)、適切な共触媒(好ましくはMAOなどのアルミノキサン)、及び所望により陰イオン性半金属含有構成成分(たとえば、ボラン又はボレート)を含む、触媒系を含む。また、触媒供給105には、トルエンなどの触媒溶媒も含まれ得る。水素供給原料106は水素ガスを含む。水素供給原料106は、たとえば、反応システム100内にスパージし得る。示していない別の実施形態では、水素をモノマー含有供給原料104に加えてもよく(たとえば、バブリング又はスパージする)、その後、これを反応器101に向かわせる。また、反応器101には、好ましくは、それからの気体構成成分を排気するための、示していない排気管路も含まれる。
【0098】
反応器101内で、モノマーを、重合触媒、炭化水素、及び水素と、PAO、好ましくは高度に飽和なPAOを形成するために有効な条件下で接触させる。粗PAO生成物が反応器101から粗PAO流107を介して得られ、これを触媒分離ユニット102に向かわせる。示すように、触媒分離ユニットは、好ましくは、触媒を失活させることができ、好ましくは触媒を粗PAO生成物から選択的に分離して触媒を減らしたPAO流108(これは分離区域103に向かう。)を形成することができる1つ又は複数の物質を詰めた触媒除去カラムを含む。
【0099】
分離区域103は、PAO生成物を、触媒を減らしたPAO流108中に含有される他の構成成分から分離することができる、1つ又は複数の分離ユニット、たとえば、フラッシュ室、エバポレーター、ストリッパー(stripper)、蒸留カラムなどを含む。示すように、分離区域103では、触媒を減らしたPAO流108が、1つ又は複数の副生物流109(1つを示す)と精製PAO生成物流110とに分離される。
【0100】
別の態様では、上述のように、炭化水素を粗PAO生成物から分離して、反応器に再循環させる。図2は、本発明のこの態様による例示的な反応システム200の流れ図を提供する。示すように、反応システム200は、反応器201、触媒除去ユニット202、及び分離区域203を含む。示すように、分離区域203は、フラッシュ室211及び分離ユニット212を含む。
【0101】
示すように、初期モノマー含有供給原料213を、炭化水素、たとえばC〜C12飽和炭化水素を含む再循環流220と組み合わせて、複合モノマー含有供給原料204を形成する。再循環流220は未反応のモノマーも含み得る。複合モノマー含有供給原料204、水素供給原料206及び触媒供給205を反応器201に向かわせる。複合モノマー含有供給原料204は、α−オレフィン(たとえば、1−デセンなどのC〜C12α−オレフィン)、粗PAO生成物に由来する炭化水素(たとえば、1つ若しくは複数種のデカン、又は、50℃で該α−オレフィンから20%以内、たとえば、10%以内若しくは5%以内の蒸気圧を有する炭化水素などのC〜C12飽和炭化水素)、所望により1つ又は複数の副モノマー、及び所望により溶媒を含む。上に示したように、炭化水素は、好ましくは該α−オレフィンと同数の炭素原子を有する。触媒供給205は、好ましくは上述のように重合触媒(好ましくはメタロセンプロ触媒)、適切な共触媒(好ましくはMAOなどのアルミノキサン)、及び所望により陰イオン性半金属含有構成成分(たとえば、ボラン又はボレート)を含む、触媒系を含む。また、触媒供給205には、トルエンなどの触媒溶媒も含まれ得る。水素供給原料206は水素ガスを含む。示していない別の実施形態では、水素をモノマー含有供給原料204に加えてもよく、その後、これを反応器201に向かわせる。また、反応器201には、好ましくは、それからの気体構成成分を排気するための、示していない排気管路も含まれる。
【0102】
反応器201内で、α−オレフィンを、重合触媒、炭化水素、及び水素と、PAO、好ましくは高度に飽和なPAOを形成するために有効な条件下で接触させる。粗PAO生成物が反応器201から粗PAO流207を介して得られ、これを触媒分離ユニット202に向かわせる。示すように、触媒分離ユニットは、好ましくは、触媒を失活させることができ、好ましくは触媒を粗PAO生成物から分離して触媒を減らしたPAO流208(これは、分離区域203に向かう。)を形成することができる1つ又は複数の物質を詰めた触媒除去カラムを含む。
【0103】
図2では、分離区域203は、フラッシュ室211並びに1つ又は複数の分離ユニット212(1つを示す)、たとえば、フラッシュ室、エバポレーター、及び/又は蒸留カラムを含み、好ましくは、PAO生成物を、触媒を減らしたPAO流208中に含有される他の構成成分から効率的に分離することができる。また、分離区域203は、好ましくは、重量で大部分の炭化水素、たとえばデカンを触媒(weight majority)PAO流208から効率的に分離することもできる。示すように、分離区域203では、触媒を減らしたPAO流208が、第1段階のオーバーヘッド流(overhead stream)214と、第2段階のオーバーヘッド流216と、精製PAO生成物流210とに分離される。
【0104】
示した実施形態では、触媒を減らしたPAO流208をフラッシュ室211に向かわせ、ここで、反応プロセス中に形成されたPAO生成物と、触媒を減らしたPAO流208中に含有される軽い構成成分(たとえば、未反応のモノマー、炭化水素及び触媒溶媒)との間の粗い分離が行なわれる。具体的には、フラッシュ室211は、第1のオーバーヘッド流214及び第1のボトム流(bottom stream)215を形成する。第1のオーバーヘッド流214は、好ましくは、触媒を減らしたPAO流208中に含有される炭化水素(たとえば、1つ若しくは複数のデカン、又は、50℃で該α−オレフィンから20%以内、たとえば、10%以内若しくは5%以内の蒸気圧を有する炭化水素などのC〜C12飽和炭化水素)の重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%を含む。また、第1のオーバーヘッド流214は、好ましくは、触媒を減らしたPAO流208中に含有される未反応のモノマーの重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%をも含む。触媒供給205からの触媒に、触媒溶媒、たとえばトルエンが含有される場合は、第1のオーバーヘッド流214は、触媒を減らしたPAO流208中に含有される触媒溶媒の重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%をも含み得る。第1のボトム流215は、好ましくは、触媒を減らしたPAO流208中に含有されるPAOの重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%を含む。好ましくは、第1のオーバーヘッド流214は、第1のアリコート(aliquot)部分217と第2のアリコート部分218とに分離される。第2のアリコート部分218は、反応システムにおける軽い汚染物質の望ましくない蓄積を回避するために、パージ流として反応システム200から除去される。
【0105】
その後、第1のボトム流215を分離ユニット212に向かわせ、ここで、第1のボトム流215中に含有されるPAO生成物とあらゆる軽い構成成分(たとえば、未反応のモノマー、炭化水素及び触媒溶媒)との間の第2の分離が行なわれる。具体的には、分離ユニット212は、第2のオーバーヘッド流216及び精製PAO生成物流210を形成する。第2のオーバーヘッド流216は、好ましくは、第1のボトム流215中に含有される炭化水素(たとえば、1つ若しくは複数のデカン、又は、50℃でα−オレフィンの20%以内、たとえば、10%以内若しくは5%以内の蒸気圧を有する炭化水素などのC〜C12飽和炭化水素)の重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%を含む。第1のオーバーヘッド流214を参照して上述したように、第2のオーバーヘッド流216の示していないアリコート部分を、反応システム200からパージ流として除去し得る。精製PAO生成物流210は、好ましくは、第1のボトム流215中に含有されるPAOの重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%を含む。理想的には、精製PAO生成物流210は、実質的に純粋なPAO生成物を含む。
【0106】
図2の実施形態では、第1のオーバーヘッド流214の第1のアリコート部分217を第2のオーバーヘッド流216と複合再循環流220を形成し、これを初期モノマー含有流213に加えて、複合モノマー含有供給原料204を形成する。このようにして、第1のオーバーヘッド流214及び第2のオーバーヘッド流216からの炭化水素及び未反応のモノマーを反応器201に再循環させて、驚くべきかつ予想外に、全体的な選択性及び収率の向上がもたらされる。
【0107】
別の態様では、望ましくない軽い構成成分、たとえば触媒溶媒を粗PAO生成物から除去する一方で、粗PAO生成物からの炭化水素(たとえば、1つ若しくは複数のデカン、又は、50℃で該α−オレフィンの20%以内、たとえば、10%以内若しくは5%以内の蒸気圧を有する炭化水素などのC〜C12飽和炭化水素)を反応器に再循環させるために、追加の分離ステップを用いる。図3は、本発明のこの態様による例示的な反応システム300の流れ図を提供する。示すように、反応システム300は、反応器301、触媒除去ユニット302、及び分離区域303を含む。示すように、分離区域303は、第1のフラッシュ室321、第2のフラッシュ室311及び分離ユニット312を含む。
【0108】
示すように、初期モノマー含有供給原料313を、炭化水素を含む再循環流320と合わせて、複合モノマー含有供給原料304を形成する。複合モノマー含有供給原料304、水素供給原料306及び触媒供給305を反応器301に向かわせる。複合モノマー含有供給原料304は、α−オレフィン(たとえば、1−デセンなどのC〜C12α−オレフィン)、粗PAO生成物に由来する炭化水素(たとえば、1つ若しくは複数のデカン、又は、50℃で該α−オレフィンの20%以内、たとえば、10%以内若しくは5%以内の蒸気圧を有する炭化水素などのC〜C12飽和炭化水素)、所望により1つ又は複数の副モノマー、及び所望により溶媒を含む。上に示したように、該炭化水素は、好ましくは該α−オレフィンと同数の炭素原子を有する。触媒供給305は、好ましくは上述のように重合触媒(好ましくはメタロセンプロ触媒)、適切な共触媒(好ましくはMAOなどのアルミノキサン)、及び所望により陰イオン性半金属含有構成成分(たとえば、ボラン又はボレート)を含む、触媒系を含む。また、触媒供給305には、トルエンなどの触媒溶媒も含まれ得る。水素供給原料306は水素ガスを含む。示していない別の実施形態では、水素をモノマー含有供給原料304に加えてもよく、その後、これを反応器301に向かわせる。また、反応器301には、好ましくは、それからの気体構成成分を排気するための、示していない排気管路も含まれる。
【0109】
図3に示す反応器301内で、モノマーを、重合触媒、炭化水素、及び水素と、PAO、好ましくは高度に飽和なPAOを形成するために有効な条件下で接触させる。粗PAO生成物が反応器301から粗PAO流307を介して得られ、これを触媒分離ユニット302に向かわせる。示すように、触媒分離ユニットは、好ましくは、触媒を失活させることができ、好ましくは触媒を粗PAO生成物から分離して触媒を減らしたPAO流308を形成することができる1つ又は複数の物質を詰めた触媒除去カラムを含み、これを分離区域303に向かわせる。
【0110】
図3では、分離区域303は、第1のフラッシュ室321、第2のフラッシュ室311及び1つ又は複数の分離ユニット312(1つを示す)を含み、好ましくは、PAO生成物を、触媒を減らしたPAO流308中に含有される他の構成成分から効率的に分離することができる。また、分離区域303は、好ましくは、重量大部分の以下の構成成分を触媒を減らしたPAO流308から別の流れで効率的に分離することもできる:(1)炭化水素、たとえばデカン、及び(2)より軽い構成成分(たとえば、トルエンなどの触媒溶媒)。本明細書中で使用する用語「より軽い構成成分」とは、粗PAO流307中に含有される主炭化水素の蒸気圧未満の蒸気圧を有する構成成分を意味する。
【0111】
示すように、分離区域303では、触媒を減らしたPAO流308が、第1段階のオーバーヘッド流322と、第2段階のオーバーヘッド流314と、第3のオーバーヘッド流316と、精製PAO生成物流310とに分離される。
【0112】
示した実施形態では、触媒を減らしたPAO流308を第1のフラッシュ室321に向かわせ、ここで、触媒を減らしたPAO流308中に含有されるより軽い構成成分と、より軽い構成成分よりも高い蒸気圧を有する構成成分、たとえば、PAO生成物、未反応のモノマー及び炭化水素との間の粗い分離が行なわれる。具体的には、フラッシュ室321は、第1のオーバーヘッド流322及び第1のボトム流323を形成する。第1のオーバーヘッド流322は、好ましくは、触媒を減らしたPAO流308中に含有されるより軽い構成成分、たとえば、トルエンなどの触媒溶媒の重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%を含む。第1のオーバーヘッド流322は、好ましくは、触媒を減らしたPAO流308中に含有される炭化水素(たとえば、1つ若しくは複数のデカン、又は、50℃でα−オレフィンの20%以内、たとえば、10%以内若しくは5%以内の蒸気圧を有する炭化水素などのC〜C12飽和炭化水素)の20重量%未満、たとえば、10重量%未満又は5重量%未満を含む。第1のボトム流323は、好ましくは、触媒を減らしたPAO流308中に含有されるPAOの重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%を含む。また、第1のボトム流323は、好ましくは、触媒を減らしたPAO流308中に含有される炭化水素の重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%をも含む。また、第1のボトム流323は、好ましくは、触媒を減らしたPAO流308中に含有される未反応のモノマーの重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%をも含む。
【0113】
その後、第1のボトム流323の粗い分離を行なって、その中に含有されるPAO生成物を、その中に含有される未反応のモノマー及びC〜C12飽和炭化水素のバルクから分離する。具体的には、第2のフラッシュ室311は、第1のボトム流323を第2のオーバーヘッド流314と第2のボトム流315とに分離する。第2のオーバーヘッド流314は、好ましくは、第1のボトム流323中に含有される炭化水素の重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%を含む。また、第2のオーバーヘッド流314は、好ましくは、第1のボトム流323中に含有される未反応のモノマーの重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%をも含む。第2のボトム流315は、好ましくは、第1のボトム流323中に含有されるPAOの重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%を含む。所望により、第2のオーバーヘッド流314は、第1のアリコート部分317と第2のアリコート部分318とに分離される。第2のアリコート部分318は、反応システムにおける軽い汚染物質の望ましくない蓄積を回避するために、反応システム300からパージ流として除去される。
【0114】
その後、第2のボトム流315を分離ユニット312に向かわせ、ここで、第2のボトム流315中に含有されるPAO生成物とあらゆる軽い構成成分(たとえば、未反応のモノマー、C〜C12飽和炭化水素)との間の第3の分離が行なわれる。具体的には、分離ユニット312は、第3のオーバーヘッド流316及び精製PAO生成物流310を形成する。第3のオーバーヘッド流316は、好ましくは、第2のボトム流315中に含有される炭化水素(たとえば、1つ若しくは複数のデカン、又は、50℃で該α−オレフィンの20%以内、たとえば、10%以内若しくは5%以内の蒸気圧を有する炭化水素などのC〜C12飽和炭化水素)の重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%を含む。第2のオーバーヘッド流314を参照して上述したのと同様に、第3のオーバーヘッド流316の示していないアリコート部分を、反応システム300からパージ流として除去し得る。精製PAO生成物流310は、好ましくは、第2のボトム流315中に含有されるPAOの重量大部分、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%を含む。理想的には、精製PAO生成物流310は、実質的に純粋なPAO生成物を含む。
【0115】
図3の実施形態では、図2と同様に、第1の第2のオーバーヘッド流314の第1のアリコート部分317を第3のオーバーヘッド流316と合わせて再循環流320を形成し、これを初期モノマー含有流313に加えて、複合モノマー含有供給原料304を形成する。このようにして、第2のオーバーヘッド流314及び第3のオーバーヘッド流316からの炭化水素及び未反応のモノマーを反応器301に再循環させて、驚くべきかつ予想外に、全体的な選択性及び収率の向上がもたらされる。さらに、第1のフラッシュ室321は、より軽い構成成分(たとえば触媒溶媒)を反応システムから有利に除去することによって、それが反応器306内に戻って再循環することを防止し、全体的なプロセスの選択性を有効に最大化する。
【0116】
本発明の様々な特長及び態様を、以下の実施例中でさらに例示する。これらの実施例は、本発明の範囲内でどのように稼働するかを当業者に示すために提示するものであるが、いかなる形であっても本発明の範囲を制限する役割を果たすことを意図しない。
【実施例】
【0117】
重合に使用したデカン
例1〜3は、1−デセンをn−デカンの存在下で重合させた場合の、選択性及び収率の予想外の増加を実証する。選択性(%)、収率(%)、転化率(%)及び100℃でのKv、cStを以下の表1に示す。
【0118】
例1(比較例)
2リットルのステンレス鋼製の油加熱のオートクレーブ反応器に、300psig(2068kPa)の圧力及び150℃を達成することができ、1リットルの液体体積でオーバーフローする、攪拌器、1−デセン送達系(圧流及び質量流の制御)、触媒並びに水素送達系(表面下の水素スパージを用いた圧流及び質量流の制御)を備えた。系に閉ループの温度、圧力及び流れの制御を備えた(水素、デセン、及び触媒に関して)。その後の触媒の失活化及び分析のために、生成物を生成物タンク内に収集した。
【0119】
触媒溶液を以下のように事前に作製した。酸素を含まないグローブボックス内で、136.16gの乾燥トルエン及びトルエン中の29.08gの10%のメチルアルミノキサン(MAO)を、浸漬管キャップを備えた清浄な1リットルのボトルに加えた。MAOを30分間混合した。0.080gのジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド(CpFlu)触媒を1リットルのボトルに加え、生じた混合物をさらに15分間混合した。ボトルを浸漬管キャップで密封した。
【0120】
1リットルの残留粗ポリデセンを含有する反応器を115℃まで加熱し、水素を用いて240psig(1655kPag)まで加圧した。触媒溶液のボトルを高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ピストンポンプに接続し、これを用いて触媒を反応器に供給した。10リットルのデセン供給タンクを、3Åのモレキュラーシーブ及びアルミナを含有する充填カラムをポンプで通すことによって処理した乾燥1−デセンで満たした。反応は、触媒供給ポンプの供給を1ml/分の触媒溶液で、1−デセン流コントローラーを2L/時間で、及び水素流コントローラーを500標準立方センチメートル/分(sccm)で、同時に開始することによって開始した(時間=0)。2.5時間後、反応器は安定な状態に達成し、試料を採取した。試料中の未反応のデセン及びデカンを真空蒸発(240℃、5mm Hgの絶対圧)によって除去し、パージした。試料の粘度はASTM D445によって決定した。転化率、選択性、及び収率も決定し、以下の表1に示す。
【0121】
例2
例2は、未反応の1−デセン及び1−デカンを再循環する操作をシミュレートする。2リットルのステンレス鋼製の油加熱のオートクレーブ反応器に、300psig(2068kPag)の圧力及び150℃を達成することができ、1リットルの液体体積でオーバーフローする、攪拌器、1−デセン送達系(圧流及び質量流の制御)、触媒及び1−デカンの送達系(HPLCポンプ)並びに水素送達系(表面下の水素スパージを用いた圧流及び質量流の制御)を備えた。使用したモノマーは、約95重量%の1−デセン、約3重量%の他のデセン、及び約2重量%の他の炭化水素を含有していた。使用したデカンは、約98重量%の1−デカン、約1.5重量%の他のデカン及び約0.5重量%の未知の炭化水素を含有していた。系に閉ループの温度、圧力及び流れの制御を備えた(水素、デセン/デカン、及び触媒に関して)。その後の触媒の失活化及び分析のために、生成物を生成物タンク内に収集した。
【0122】
触媒溶液を例1の手順に従って事前に作製した。
【0123】
浸漬管を備えた2つの清浄な1リットルのボトルを、別々に、それぞれ1リットルの実質的に純粋なデカンで満たした。デセンは、50℃で約20%及び150℃で10%、デカンよりも高い蒸気圧を有する。
【0124】
残留ポリデセンを含有する反応器を115℃まで加熱し、水素を用いて240psig(1655kPag)まで加圧した。触媒溶液のボトル及びデカン溶液のボトルを別々の高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ピストンポンプに接続し、これを用いて触媒及びデカンを反応器に供給した。10リットルのデセン供給タンクを、3Åのモレキュラーシーブ及びアルミナを含有する充填したカラムをポンプで通すことによって処理した乾燥1−デセンで満たした。反応は、触媒供給ポンプの供給を1ml/分の触媒溶液で、デカン供給ポンプを0.5L/時間のデカンで、デセン流コントローラーを1.5L/時間で(したがって反応器内に25%のデカンを達成)、及び水素流コントローラーを500標準立方センチメートル/分(sccm)で、同時に開始することによって開始した(時間=0)。
【0125】
平均滞留時間は、反応器内の液体体積を液体の流速で除算することによって計算した。この例では、1リットルの液体体積÷(1.5+0.5)すなわち2リットル/時間=30分間の滞留時間となった。デカン/デセン/水素及び触媒溶液を、約4回の反応器のターンオーバー(滞留時間)、すなわち合計2時間の間供給した後、反応器は、その安定状態の組成の1−e−4又は98.2%に達した。その後、反応を運転停止し、生成物を分析用にサンプリングした。
【0126】
以下の表1では、例1及び2からの粘度、転化率、選択性及び収率のデータを比較する。
【表1】

【0127】
示すように、例1では、より低い選択性(デカンを加えないことによる)及び未反応のデセンをパージしたことが原因で、全収率がはるかに低かった。例2においてデカンを加えたこと(デカンの再循環をシミュレート)で、ワンパス及び全体的な選択性が改善された。また、例2においてデセンを加えたことで(デセンの再循環をシミュレート)、未反応のデセンをパージしなかったため、全転化率も改善された。選択性は、Kvも増加させることによって増加させ得ることに注意が必要である。しかし、例2に示すように、Kvは比較例1と比較してわずかにしか増加しなかったにもかかわらず、選択性は、驚くべきかつ予想外に増加した。
【0128】
例3
例2からの転化率、選択性及び収率のデータに基づいた物質バランス分析を、モノマーが1−デセンを含み、デカン/デセンの再循環及びCpFlu触媒を用いた上述の図2を参照する反応システムについて行なった。物質バランスの条件を以下の表2に提示する。図4は、図2の様々な流れ中に含有されている構成成分の相対量を提供する。表3は、物質バランス分析の転化率、選択性及び収率を提示し、これらは例2に由来し、以下の表3に示される。
【表2】


【表3】


複合モノマー含有流204から粗PAO生成物流207へ。
デセン供給流213から精製PAO生成物流210へ。
【0129】
滞留時間
例4
例1と同様の系及び触媒を用いて、デカンを存在させずに1−デセンを重合させた。時間(0)で、反応を、触媒供給ポンプを2ml/分の触媒溶液で、デセン流コントローラーを4.0L/時間で、及び水素流コントローラーを1000sccmで同時に開始することによって開始した。平均滞留時間は、反応器内の液体体積を液体流速で除算することによって計算した。この例では、1リットルの液体体積÷4リットル/時間=15分間の滞留時間であった。デセン/水素及び触媒溶液を、約4回の反応器のターンオーバー(滞留時間)、すなわち合計1時間の間供給した後、反応器は、その安定状態の組成の1−e−4又は98.2%に達成した。100℃でのKvは147cStと測定された。触媒濃度を一定に保つために、触媒流はデセン流と比例するように保った。
【0130】
例5
例4と同様のプロセスを用いて、1.0ml/分の触媒溶液、2.0l/時間のデセン及び1000sccmの水素を供給することによって滞留時間を30分間まで増加した。100℃でのKvは113cStと測定された。
【0131】
例6
例4と同様のプロセスを用いて、0.67ml/分の触媒溶液、1.3l/時間のデセン及び1000sccmの水素を供給することによって滞留時間を45分間まで増加した。100℃でのKvは81cStと測定された。
【0132】
例4〜6で用いた条件及び生じた生成物PAOの粘度を以下の表4に提示する。図8には、例4〜6からのデータに基づいた、PAO粘度を滞留時間の関数としてプロットしたチャートを提示する。示すように、例4〜6は、驚くべきかつ予想外に、滞留時間が増加するにつれて粘度が減少したことを実証している。粘度は、一般に分子量に比例していた。したがって、例5に示すように、30分間の滞留時間により、約100cStの非常に望ましい粘度を有するPAOが生じた。
【表4】

【0133】
例7:PAOの構造解析
ポリデセンを、例2と同様であるが、1−デセン及びデカンを事前に混合して30/70重量%のデカン/1−デセン混合物を作製し、デセン送達系を介して供給して、調製した。プロセスは130℃及び90psig(621kPag)で実行し、51.0グラムの乾燥トルエン、19.14グラムの10重量%のMAO及び0.068グラムのCpFluの触媒混合物を0.5ml/分の速度で加えた。生じた生成物を13C NMRで分析した。図5Aの上図は例7の13C NMRスペクトルを提供し、図5Bの上図は35.5〜33.6ppmの領域のより詳細な13C NMRスペクトルを提供する。例7の図5Aにおいて21〜20ppm又は42.5ppmの領域中で識別可能なピークは示されず、これは、誤挿入又は再配置の度合が低いことを示す。
【0134】
例8:特性の分析
ポリデセンを、例2と同様であるが、140℃、40psig(276kPag)、及び1.5ml/分の触媒溶液の触媒供給ポンプの供給を用いて調製した。デカンは1.0L/時間のデカンで供給し、デセン流コントローラーは2.0L/時間に設定した。図6は例8の13C NMRスペクトルを提供し、図5と比較した場合、これは例7及び8の構造的類似を実証している。特性の分析を以下の表6に提示する。
【0135】
比較例A
ポリデセンを、クロム触媒を用いて、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている米国特許第4,921,272号に記載の重合プロセスによって調製した。ポリデセンの13C NMRスペクトルを図5Aの下図に提供する。図5Bの下図は、比較例Aの35.5〜33.6ppmの領域中の詳細な13C NMRスペクトルを提供する。比較例Aにおいて形成されたPAOの特性を以下の表6に示す。
【0136】
図5Aは、例7からのPAO試料が、比較例AのPAOよりも少ないピークを有する、はるかにクリーンなスペクトルを有することを示しており、これは、比較例Aからのポリデセンよりも多様性の低い構造であることを反映している。
【0137】
比較例Aからのポリデセンは28.0及び36〜37ppmの領域中に追加のピークを有する一方で、例7において分析したPAOでは、同様のピークは存在しない(図5Aを参照)。示すように、図5の13C NMRスペクトルを比較した場合、比較例Aの相対含量(面積)は、35.50〜34.96ppmの領域において例7で分析したPAOよりも大きく、これは、比較例AのPAOにより高いアイソタクチック性が存在することを示している。表5は、図5Bのスペクトルからの35.40〜33.71ppmの領域における相対含量(面積)を比較している。
【表5】

【0138】
比較例B
ポリデセンを、その全体が本明細書中に参照により組み込まれている米国特許第4,532,061号に記載の重合プロセスによって調製した。図7は、比較例BのPAOの13C NMRスペクトルを例示する。図7のスペクトルは、図5Aにおいて例7について示したスペクトルと比較して全くクリーンではなく、これは、例7において形成された構造よりもはるかに多様な構造を示している。図7は、21〜20ppmの領域中のピークの存在に基づいて、比較例Bのポリデセンが、例7又は比較例AのPAOよりも高い度合の尾−尾の挿入を有することを示している。さらに、図7は、42.5ppmの領域中のピークの存在によって、より高い度合の頭−頭の挿入を示している。図7では、41〜40ppmの領域中にかろうじて識別可能なピークしか存在しないため、わずかな頭−尾の立体配置のみが証明される。
【0139】
例7及び8のポリデセンの特性を以下の表6に提供し、図5A、5B、6及び7に示すように、これらの例のポリデセンは比較例A及びBとは異なる構造を有するにもかかわらず、これらは比較例A及びBのポリデセンと比較可能である。
【表6】

【0140】
例9−カラム処理による触媒除去
例7と同様であるが、180psig(1241kPag)並びに0.5ml/分の速度で加えた106.3グラムの乾燥トルエン、41.08グラムの10%のMAO及び0.14グラムのCpFluの触媒混合物を用いて調製したポリデセンを、酸粘土、Engelhard Corporation製のFiltrol F−24を詰めたカラムを用いて失活させた。以下の表7に示す、触媒の除去を測定するために使用される金属分析により、カラムで失活させたポリマーと事前に失活させたポリマーとの比較における有効性が実証された。
【表7】

【0141】
開示したいかなる実用例に関して記載又は特許請求したいかなる特長も、その特長が必然的に技術的に不適合とならない限りにおいて、いかなる他の開示した実用例又は複数の実用例に関して記載又は特許請求したいかなる1つ又は複数の他の特長(単数又は複数)と、いかなる組合せで組み合わせてよく、すべてのそのような組合せが本発明の範囲内にある。さらに、以下に添付する特許請求の範囲は、本発明の範囲内にある特長の一部の非限定的な組合せを記載するが、任意の2つ以上の特許請求の範囲の主題のすべての可能な組合せも、組合せが必然的に技術的に不適合とならない限りは、いかなる可能な組合せも本発明の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)C〜C12α−オレフィン、C〜C12飽和炭化水素、水素、及び触媒的に有効な量の触媒系を反応器に加えるステップであって、該C〜C12飽和炭化水素を、該反応器に供給した該C〜C12α−オレフィン及び該C〜C12飽和炭化水素の合わせた重量に基づいて、5〜70重量%、所望により10〜50重量%又は15〜30重量%の範囲の量で該反応器に供給するステップ、及び
(b)該C〜C12α−オレフィンを、該反応器内で、該C〜C12飽和炭化水素、該水素、及び該触媒系の存在下、ポリαオレフィンを形成するために有効な条件下で重合させるステップ
を含む、ポリαオレフィンを形成するためのプロセス。
【請求項2】
(a)α−オレフィン、50℃で該α−オレフィンの蒸気圧から20%以内、所望により10%以内又は5%以内の蒸気圧を有する炭化水素、水素、及び触媒的に有効な量の触媒系を反応器に加えるステップ、及び
(b)該α−オレフィンを、該反応器内で、該炭化水素、該水素、及び該触媒系の存在下、ポリαオレフィンを形成するために有効な条件下で重合させるステップ
を含む、ポリαオレフィンを形成するためのプロセス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロセスであって、前記ポリαオレフィン、未反応のモノマー、及びC〜C12飽和炭化水素を含む粗ポリαオレフィン生成物が最初に形成され、
(c)該C〜C12飽和炭化水素を該粗ポリαオレフィン生成物から分離するステップ、及び
(d)分離された該C〜C12飽和炭化水素の少なくとも一部分を前記反応器に加えるステップ
をさらに含むプロセス。
【請求項4】
前記分離されたC〜C12飽和炭化水素の第1の部分をパージし、該分離されたC〜C12飽和炭化水素の第2の部分を前記反応器に加える、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
未反応のモノマーを、前記分離されたC〜C12飽和炭化水素と共に前記粗ポリαオレフィン生成物から分離し、該分離されたC〜C12飽和炭化水素と共に前記反応器に加える、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
(e)前記粗ポリαオレフィン生成物を、触媒除去カラム内に詰めた固体吸着粒子と、ポリαオレフィン反応システムからの使用済み触媒を選択的に吸着させるために有効な条件下で接触させるステップ
をさらに含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
95%を超える全転化率を有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
90%〜100%のPAO選択性を有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
85%を超える全収率を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
連続的である、請求項1から9までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記炭化水素が、前記反応器内に含有される前記α−オレフィン、該炭化水素及び前記ポリαオレフィンの合わせた重量に基づいて8〜40重量%のレベルで該反応器内に維持される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記炭化水素を、前記反応器に供給した前記α−オレフィン及び該炭化水素の合わせた重量に基づいて10〜50重量%の範囲の量で該反応器に加える、請求項1から11までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記反応器に供給した前記α−オレフィン及び前記炭化水素の合わせた重量に基づいて、該α−オレフィンを70〜93重量%の量で該反応器に加え、該炭化水素を7〜30重量%の量で該反応器に加える、請求項1から11までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記炭化水素が、前記α−オレフィンと同数の炭素原子、1個以内の差の炭素原子を有する飽和炭化水素を含む、請求項1から13までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記α−オレフィン及び前記炭化水素が同数の炭素原子を有する、請求項1から14までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記α−オレフィンが1−デセンを含み、前記炭化水素がn−デカンを含む、請求項1から15までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記触媒系が、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド及び所望によりアルミノキサン共触媒を含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ポリαオレフィンが、100℃で50〜500センチストーク、所望により50〜150センチストークの動粘度を有する、請求項1から17までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ポリαオレフィンが0.2〜5のヨウ素価を有する、請求項1から18までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記ポリαオレフィンが、10〜60分間、所望により15〜45分間の前記反応器内での滞留時間を有する、請求項1から19までのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
(a)C〜C12α−オレフィンが、C〜C12飽和炭化水素、水素、及び触媒的に有効な量の触媒系と、粗ポリαオレフィン流を形成するために有効な条件下で接触する反応器と、
(b)使用済み触媒を該粗ポリαオレフィン流から分離して触媒を減らしたポリαオレフィン流を形成するための、該反応器と流体接続した触媒分離ユニットと、
(c)該触媒を減らしたポリαオレフィン流を精製したポリαオレフィン流と該C〜C12飽和直鎖炭化水素及び未反応のC〜C12α−オレフィンを含む再循環流とに分離するための該触媒分離ユニットと流体接続した分離区域であって、該再循環流が、上記分離区域と該反応器の間を流体接続している上記分離区域と
を含む、ポリαオレフィンを形成するための反応システム(system)。
【請求項22】
(a)α−オレフィンが、50℃で該α−オレフィンの蒸気圧から20%以内、所望により該α−オレフィンの蒸気圧の10%以内又は5%以内を有する炭化水素、水素、及び触媒的に有効な量の触媒系と、粗ポリαオレフィン流を形成するために有効な条件下で接触する反応器と、
(b)使用済み触媒を該粗ポリαオレフィン流から分離して触媒を減らしたポリαオレフィン流を形成するための、該反応器と流体接続した触媒分離ユニットと、
(c)該触媒を減らしたポリαオレフィン流を精製したポリαオレフィン流と該炭化水素及び未反応のα−オレフィンを含む再循環流とに分離するための該触媒分離ユニットと流体接続した分離区域であって、該再循環流が、上記分離区域と該反応器の間を流体接続している上記分離区域と
を含む、ポリαオレフィンを形成するための反応システム。
【請求項23】
前記触媒を減らしたポリαオレフィン流が触媒溶媒をさらに含み、前記分離区域が、該触媒溶媒を該触媒を減らしたポリαオレフィン流から除去するためのフラッシュ室を含む、請求項21又は22に記載の反応システム。
【請求項24】
前記触媒分離ユニットが、酸性粘土、ゼオライト、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリケート及びその混合物からなる群から選択される固体吸着剤を含む触媒分離カラムを含む、請求項21から23までのいずれか一項に記載の反応システム。
【請求項25】
前記α−オレフィン及び前記炭化水素が同数の炭素原子を有する、請求項21から24までのいずれか一項に記載の反応システム。
【請求項26】
前記α−オレフィンが1−デセンを含み、前記炭化水素がn−デカンを含む、請求項21から25までのいずれか一項に記載の反応システム。
【請求項27】
連続的な反応システムである、請求項21から26までのいずれか一項に記載の反応システム。
【請求項28】
前記触媒系が、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド及び所望によりアルミノキサン共触媒を含む、請求項21から27までのいずれか一項に記載の反応システム。
【請求項29】
前記触媒を減らしたポリαオレフィン流が触媒溶媒をさらに含み、該触媒溶媒が、前記分離区域によって前記再循環流中へと分離される、請求項21から28までのいずれか一項に記載の反応システム。
【請求項30】
ポリαオレフィン反応器と流体接続した触媒除去カラムであって、該ポリαオレフィン反応システムからの使用済み触媒を選択的に吸着するように構成された固体吸着粒子が充填された上記触媒除去カラム。
【請求項31】
前記固体吸着粒子が、酸性粘土、ゼオライト、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリケート及びその混合物からなる群から選択される、請求項30に記載の触媒除去カラム。
【請求項32】
前記固体吸着粒子が金属酸化物を含む、請求項30に記載の触媒除去カラム。
【請求項33】
前記固体吸着粒子が100μm〜1cmの平均粒子径を有する、請求項30に記載の触媒除去カラム。
【請求項34】
前記使用済み触媒が、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド及び所望によりアルミノキサン共触媒を含む、請求項30に記載の触媒除去カラム。
【請求項35】
0.5〜5モル%のmmトライアッド(mm triad)及び40〜58モル%のrrトライアッド(rr triad)を含むポリαオレフィン。
【請求項36】
1種類のオレフィンモノマーを、架橋メタロセン触媒及び水素の存在下で重合させることによって形成される、請求項35に記載のポリαオレフィン。
【請求項37】
前記オレフィンモノマーがC〜C12オレフィンである、請求項36に記載のポリαオレフィン。
【請求項38】
前記オレフィンモノマーが1−デセンである、請求項36に記載のポリαオレフィン。
【請求項39】
前記架橋メタロセン触媒がジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライドであり、前記モノマーを、所望によりアルキルアルミノキサン共触媒の存在下で重合させる、請求項36に記載のポリαオレフィン。
【請求項40】
1モルの前記モノマー当たり0.01〜1.2モルの前記水素が存在する、請求項36に記載のポリαオレフィン。
【請求項41】
37〜59.5モル%のmrトライアッド(mr triad)を含む、請求項35に記載のポリαオレフィン。
【請求項42】
13C NMRスペクトルにおいて27.0〜29.0ppmの領域のピークを実質的に有しない、請求項35に記載のポリαオレフィン。
【請求項43】
13C NMRスペクトルにおいて約20.0ppmの領域のピークを実質的に有しない、請求項35に記載のポリαオレフィン。
【請求項44】
13C NMRスペクトルにおいて約42.5ppmの領域のピークを実質的に有しない、請求項35に記載のポリαオレフィン。
【請求項45】
反応器内で、C〜C12α−オレフィンを、水素及び触媒的に有効な量の触媒系の存在下、ポリαオレフィンを形成するために有効な条件下で重合させるステップを含むポリαオレフィンを形成するためのプロセスであって、該ポリαオレフィンは、1分間を超える該反応器内での平均滞留時間を有し、かつ1000cSt未満の動粘度を有する上記プロセス。
【請求項46】
前記ポリαオレフィンが5分間を超える前記反応器内での平均滞留時間を有し、かつ該ポリαオレフィンが200cSt未満の動粘度を有する、請求項45に記載のプロセス。
【請求項47】
前記ポリαオレフィンが10分間を超える前記反応器内での平均滞留時間を有し、かつ該ポリαオレフィンが150cSt未満の動粘度を有する、請求項45に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−520010(P2011−520010A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508542(P2011−508542)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/041115
【国際公開番号】WO2009/137264
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】