説明

ポリイミドフィルムおよび製造方法

【課題】 極めてフィルム面内で均一なポリイミドフィルムとこのポリイミドフィルムを使用しての歩留まりの向上した金属化ポリイミドフィルム使用の回路基板と製造方法を提供する。
【解決手段】 芳香族ジアミン成分および芳香族テトラカルボン酸成分を原料モノマーとし、これらの重縮合反応により得られるポリイミドフィルムであって、フィルム巾が0.5m以上、長さ5m以上であり、フィルム中の幅方向幅方向、長手方向のいずれの箇所においても、湿度膨張係数の標準偏差が、0.3ppm/RH%以下であるポリイミドフィルム、フィルムに金属層を積層した積層体、積層体の金属層をパターン化して回路とした回路基板、およびイミド化熱処理工程において特定の熱処理風量を採用した連続式製膜フィルム製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続成形によりその幅方向に特性の差異を生じやすいポリイミドフィルムを幅方向の等方性を改善し特性を均一化した新規なポリイミドフィルム、このポリイミドフィルムを使用した金属積層体とこの金属積層体の金属層を回路化したフレキシブルプリント配線板(FPC)など回路基板およびポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの電子機器の技術進歩に伴って、フレキシブルプリント配線板(FPC)および、Tape Automated Bonding(TAB)、Chip On Film(COF)、Chip On Glass(COG)、フィルムを利用した多層基板のビルドアップ層の需要が急激に伸びており、さらにこうした機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応してFPC等の薄膜化が進んでいる。そのため、FPC用の銅貼フィルム(FCL)の薄膜化も同時に進行しているが、これらの電子機器における製品の歩留まり、生産性が一層求められるようになっている。
従来のFPCとして、例えば、ポリイミドフィルム層、接着剤層、銅層の3層から構成されている3層FPCがあり、かかる3層FPCはポリイミドフィルムと銅箔とを接着剤を介して接着させて3層構造のフレキシブル銅張積層板(金属化ポリイミドフィルム)を作製し、該銅張積層板の銅層をエッチングして回路を形成することにより作製されている。
3層FPCの上記欠点を補うFPCとしての、2層FPCは、接着剤層が存在しないためポリイミドフィルムの特性を充分に活かすことができるうえに、上記3層FPCよりも薄層化させることができ、FPCの耐熱性及び屈曲性の向上を可能とした。この2層FPCは、まず、ポリイミドフィルム層と銅層の2層からなるフレキシブル銅張積層板を作製し、該銅張積層板の銅層をエッチングして回路を形成することにより作製することができる。なお、この2層フレキシブル銅張積層板は、銅箔の片面又は両面にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸のワニスを塗布した後、熱処理を施してイミド化させるキャスト法や、銅箔と熱可塑性ポリイミド樹脂フィルムを熱プレスして熱融着により作製するラミネート法や、銅片を高真空中で加熱蒸発させてポリイミドフィルム表面に薄膜として凝着させる乾式製膜方法、又はメッキ液中での化学還元反応によりポリイミドフィルpム表面に銅を析出させて銅層を形成する無電解メッキ法やメッキ法(湿式製膜方法)などにより作製することができる。
【0003】
2層FPCの更なる薄層化を実現し、屈曲性及び耐熱性に優れたFPCを作製し得るフレキシブル銅張積層板を提供することを目的として、初期引張弾性率が400Kg/mm以上のポリイミド重合体からなる厚みが10μm以下のポリイミドフィルムの片面又は両面に、厚みが10μm以下の銅層を直接形成すること(特許文献1参照)が提案されているが、薄いポリイミドフィルムの機械的強度を規制してハンドリング性において課題を解決してはいるが、蒸着やスパッタリングなどの乾式製膜方法での直接銅層形成におけるポリイミドフィルムの耐熱挙動においての課題例えば現実的な蒸着速度では、フィルムの熱収縮や熱伸張による反りや皺といったフィルムの熱による変形、および、フィルムの変質、或いは破損が生じ、また、銅層との剥離などにおける課題が残るものである。
これらいずれの場合においても使用されるポリイミドフィルムのフィルム内での均一性が不充分な時には、金属層積層体およびこれを回路化した回路基板の均一性が損なわれ製品の歩留まりすなわち生産性に大きな影響をもたらす。
【特許文献1】特開平08−156176号公報
【0004】
フィルム面内における不均一性(特性の差)は、フィルム加工時において、フィルム面内の場所・方向による品質差、特に寸法変化の差を生む原因となり、精密部品等の用途において,例えば、回路形成のベース材や記録媒体等の用途においては、大きな問題となっており、フィルム面内の特性の等方性を確保するための改善が要求されていた。
そこで、加熱ゾーンを移動しながら溶媒を蒸発させる際、フィルムの幅方向に拡縮可能な横型把持具を用いて拡縮率±5%以内で熱処理する方法(特許文献2参照)が開示されている。また、フィルム固定端から炉内進行方向へフィルム幅と同じ長さまでは、主たる揮発分の沸点以上に加熱しないで製造された高分子フィルムであって、縦方向、横方向、右45度方向、左45度方向の線膨張係数のうち、その最大値と最小値との比が、1.5以内である高分子フィルムを製造する方法(特許文献3参照)が開示されている。
【特許文献2】特開昭60−190314号公報
【特許文献3】特開平08−230063号公報
【0005】
近年、4.0GPa以上の弾性率の高いフィルムが、応力による寸法変化が少ないこと、ハンドリング性が良好である等の理由から、要求されている。特に、引張弾性率が5.0GPa以上のフィルムは、ハンドリング性が良好であり、薄層フィルムを製造した場合でも自己支持性が高いことから、要求されている。しかし、このような弾性率の高いフィルムでは、上述したような面内での収縮力の影響がさらに大きくなり、上述した、特許文献2においては、高弾性率を有するフィルムには対応することができず、幅方向全体にわたって等方的なフィルムを得ることが困難であった。また、特許文献3においては、線膨張係数の測定をその都度測定し、その差を判断するという手段であり、手間と時間を要し、測定結果を即時評価して、製造工程に反映することが困難である。また、特に、高弾性率を有するフィルムの場合や、フィルムの厚さが相違した場合、等方性のフィルムを得にくい場合がある。
さらに、フィルムの任意の場所におけるMOR−cの最大値が1.35以下、かつ、引張弾性率が5.0GPa以上のポリイミドフィルムおよび原反フィルムの幅方向での両端部の配向角θが正の値を取るときにはフィルム固定端からフィルム幅と同じ長さまでは主たる揮発分の沸点以上に加熱せず、θが負の値を取るときにはフィルム幅と同じ長さに至るまでに主たる揮発分の沸点+100℃以上で加熱する製造方法(特許文献4参照)が提案されているが、特許文献3と同様に煩雑な手法を使用しており、等方性のフィルムを得にくい場合が多い。
【特許文献4】特開2002−154168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記従来技術の問題を解決し、高品質FPCの効率生産を実現し、電子機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応し配線パターンが微細化した、屈曲性及び耐熱性に優れたFPCなどの回路基板に使用可能な均一性に優れたポリイミドフィルムおよびこのポリイミドフィルムを用いた金属層積層体(金属化ポリイミドフィルム)と回路基板を提供することを目的に鋭意研究を重ねた結果、フィルム端部での風量を減らしつつ温度を上げることにより、フィルム内の残留溶媒量のばらつきが少なく、そのことで得られたポリイミドフィルムのフィルム中の幅方向幅方向、長手方向のいずれの箇所においても、湿度膨張係数のばらつきが少ないことを見出し本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.フィルム巾が0.5m以上、長さ5m以上であり、フィルム中の幅方向および長手方向のいずれの箇所においても、湿度膨張係数の標準偏差が0.3ppm/RH%以下であることを特徴とするポリイミドフィルム。
2.ポリイミドフィルムが芳香族ジアミン成分および芳香族テトラカルボン酸成分を原料モノマーとし、これらの重縮合反応により得られるポリイミドフィルムであって、芳香族テトラカルボン酸成分が、ピロメリット酸を全芳香族テトラカルボン酸成分に対して30モル%以上含有するものである前記1記載のポリイミドフィルム。
3.前記1又は2いずれかに記載のポリイミドフィルムの少なくとも片面に金属層を積層した積層体。
4.芳香族ジアミン成分および芳香族テトラカルボン酸成分を原料モノマーとし、これらの重縮合反応により得られるポリイミドのフィルム製造方法において、ポリイミド前駆体溶液を支持体上に流延・乾燥して自己支持性の前駆体フィルムを製造する第一の乾燥工程と前記フィルムを熱により反応させてイミド化させる第二の熱処理工程とを少なくとも含む連続式製膜フィルム製造方法であり、第二の熱処理工程において、フィルム中央部における温度(t1)と風量(w1)に比較して、フィルム幅方向の端部(全フィルム幅の1/10以下の両端部)における温度(t2)が(t1)より5℃以上高いこと、および又は、両端部における風量(w2)が(w1)より0.5m/分以上少なくすることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の芳香族ジアミン成分および芳香族テトラカルボン酸成分を原料モノマーとし、これらの重縮合反応により得られるポリイミドフィルムであって、フィルム巾が0.5m以上、長さ5m以上であり、フィルム中の幅方向および長手方向のいずれの箇所においても、湿度膨張係数の標準偏差が0.3ppm/RH%以下であるポリイミドフィルムは、均一性に優れたフィルムであって、そのために高品質FPCなどの回路基板の効率生産を実現し、電子機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応し得る屈曲性及び耐熱性に優れたFPCなどの回路基板に使用可能な金属化ポリイミドフィルムおよびそれを使用した回路基板となり、しかもそれらの製品均一性による歩留まりが高く、工業的な意義は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明におけるポリイミドフィルムは、フィルム巾が0.5m以上、長さ5m以上であり、フィルム中の幅方向および長手方向のいずれの箇所においても、湿度膨張係数の標準偏差が、0.3ppm/RH%以下となし得るポリイミドフィルムであれば、とくに限定されるものではないが、工業的、かつ経済的に連続的に生産できるフィルムであることからフィルム巾が0.5〜10m、長さ5〜50000mが好適であり、好ましくは芳香族ジアミン成分および芳香族テトラカルボン酸成分を原料モノマーとし重縮合反応により得られるポリイミドフィルムであって、芳香族テトラカルボン酸成分がピロメリット酸を全芳香族テトラカルボン酸成分に対して30モル%以上含有するものであり、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とフェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
【0010】
本発明は、前記事項に限定されず下記例示の芳香族ジアミンを使用してもよく、これらジアミン類を一種又は二種以上、併用してのポリイミドフィルムである。
そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0011】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0012】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0013】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0014】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0015】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0016】
本発明で用いられる芳香族テトラカルボン酸類は例えば芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。化1のピロメリット酸が全芳香族テトラカルボン酸類の30モル%以上含有するものが好ましく使用でき、さらに好ましくは全芳香族テトラカルボン酸類の70モル%以上使用することが好ましい。
【0017】
【化1】

【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【0023】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種又は二種以上、併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、
【0024】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0025】
前記芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを反応(重縮合)させてポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。 これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。
【0026】
ポリアミド酸を得るための重合反応の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割することや、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましい。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
【0027】
高温処理によるイミド化方法としては、従来公知のイミド化反応条件を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)である。
脱水剤をポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0028】
本発明における、ポリイミドフィルムの残存溶媒量は、0.1ppm以上100ppm以下とすることが好ましい要件であり、少なければ少ないほど好ましいが、製造の容易性、コスト等を考慮すれば、実質的に不具合が生じない程度にすればよく、その下限としては、具体的には0.1ppmである。
「溶媒残存量」の測定は、ガスクロマトグラフ測定によるものであり、フィルム内の残存溶媒量を次の方法で定量化測定した。この標準偏差については湿度膨張係数の測定に準じて求めた。但しフィルムの幅方向(以下TD方向ともいう)の中央部で長手方向(以下MD方向ともいう)に10点の測定を等分に分割して行い、MD方向中央部でTD方向に5点の測定を等分に分割して行い、合計15点の測定から、標準偏差を求めた。
まず、測定フィルムを約10mgの大きさに採取し、その質量を正確に計量した。計量後サンプルをガスクロマトグラフ用ガラスインサートに充填し、そのガラスインサートを充填カラム装着ガスクロマトグラフの注入口にセットした。注入口温度を350℃に保ったまま、窒素キャリヤーガスで30分間パージし、気化した溶剤成分を室温状態で充填カラムにトラップさせた。そのトラップしたものをFID検出器で、そのままガスクロマトグラフ分析を行い、直接検量線法により測定フィルムの残存溶媒量を定量化した。検量線作成に用いた標準液は、水又はメタノールであり、注入口にスパイクして、フィルムと同様の測定を行った。下記に、ガスクロマトグラフの測定条件を示す。
[測定条件]
装置 : 島津GC14A
分離カラム : 内径3mm×1.6m ガラス製
充填剤 : TENAX−TA
キャリヤーガス : N2、40ml/min.
注入口温度 : 350℃
オーブン温度 : 室温トラップ30分→80〜250℃(15℃/min.)
【0029】
ポリイミドフィルムに対する残存溶媒量が所定の範囲であるポリイミドフィルムを得るための方法は特に限定されないが、ポリイミドフィルムの前駆体であるグリーンフィルムの乾燥条件と高温イミド化の条件を選定して実施することが好ましい方法であり、グリーンフィルムを得るための乾燥条件としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミドを溶媒として用いる場合は、乾燥温度は、好ましくは70〜130℃、より好ましくは80〜125℃であり、さらに好ましくは85〜120℃である。この乾燥温度が130℃より高い場合は、分子量低下がおこり、グリーンフィルムが脆くなりやすい。また、グリーンフィルム製造時にイミド化が一部進行し、イミド化工程時に所望の物性が得られにくくなる。また70℃より低い場合は、乾燥時間が長くなり、分子量低下がおこりやすく、また乾燥不十分でハンドリング性が悪くなる傾向がある。また、乾燥時間としては乾燥温度にもよるが、好ましくは5〜90分間であり、より好ましくは15〜80分間である。乾燥時間が90分間より長い場合は、分子量低下がおこり、フィルムが脆くなりやすく、また5分間より短い場合は、乾燥不十分でハンドリング性が悪くなる傾向がある。
乾燥装置は従来公知のものを適用でき、熱風、熱窒素、遠赤外線、高周波誘導加熱などを挙げることができる。
【0030】
得られたグリーンフィルムを所定の条件でイミド化することで残存溶媒量が0.1〜100ppmであるポリイミドフィルムを得ることができる。
イミド化の具体的な方法としては、従来公知のイミド化反応、イミド化処理を適宜用いることが可能であるが、好ましくは最高処理温度が460℃以上500℃未満であり、3分間以上30分間以下の時間で、高温イミド化処理することが好ましい。
上記したポリイミドフィルムの製造方法において、本発明においては、ポリイミド前駆体溶液を支持体上に流延・乾燥して自己支持性の前駆体フィルムを製造する第一の乾燥工程と前記フィルムを熱により反応させてイミド化させる第二の熱処理工程とを少なくとも含む連続式製膜フィルム製造方法において、第二の熱処理工程において、フィルム幅方向の中央部における温度(t1)と風量(w1)に比較して、フィルム幅方向の両端部(第二の熱処理工程における全フィルム幅の1/10以下の両端部)における温度(t2)が(t1)より5℃以上高くすることおよび又は、両端部における風量(w2)が(w1)より0.5m/分以上少なくすることが好ましく、この製造方法を採用することで本発明のフィルム巾が0.5m以上、長さ5m以上であり、フィルム中の幅方向、長手方向のいずれの箇所においても、湿度膨張係数の標準偏差が、0.3ppm/RH%以下であるポリイミドフィルムが得られる。中でも最も好ましいのは、第二の熱処理工程において、フィルム幅方向の中央部における温度(t1)と風量(w1)に比較して、フィルム幅方向の両端部における温度(t2)が(t1)より5℃以上高くすることおよび両端部における風量(w2)が(w1)より0.5m/分以上少なくすることである。
本発明におけるフィルム幅方向の両端部とは、フィルム製造時におけるイミド化されるフィルムの全幅における全フィルム幅の1/10以下の両端部を示すものであり、フィルム幅方向の中央部とは幅方向での中心部から両端部までの部分を示すものである。
フィルム内の残留溶媒量を低減させることは、温度を上げることによって達成されるが、温度を上げ過ぎることにより、フィルムの引張り強度を低下させてしまう。そこで、温度を上げすぎることなく、残留溶媒量を下げるために、温度を一定にする事で、ばらつきを小さくするように試みたがこれだけでは十分ではなかった。また、風量を各部で均一にすることも試みたが十分な結果は得られなかった。これらの実験結果を仔細に検討し、フィルム端部での風量を減らしつつ温度を上げることにより、フィルム内の残留溶媒量のばらつきが少ない結果を得ることができ、そのことでフィルム中の幅方向幅方向、長手方向のいずれの箇所においても、湿度膨張係数のばらつきが少ないポリイミドフィルムとなることが判った。
【0031】
ポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、軽少短薄なプリント配線基板用ベース基板などに用いることを考慮すると、通常1〜25μm、好ましくは3〜10μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
本発明のポリイミドフィルムは、通常は無延伸フィルムであるが、1軸又は2軸に延伸しても構わない。ここで、無延伸フィルムとは、テンター延伸、ロール延伸、インフレーション延伸などによってフィルムの面拡張方向に機械的な外力を意図的に加えずに得られるフィルムをいう。
【0032】
本発明の金属層積層体であるポリイミドフィルムの少なくとも一面に金属層を積層下金属化ポリイミドフィルムは、前記特定物性のポリイミドフィルムに、乾式製膜方法でクロム、ニッケル、銅などの金属層を形成し、さらにこの乾式製膜方法による金属膜上にメッキ法などで厚膜を形成する、またその他公知の方法で所定厚さの金属層を形成するなどして、金属化フィルムを得ることができる。
乾式製膜方法としては、薬剤液などを使用しない乾式製膜方法であれば特に限定されず、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム加熱蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、溶射法などの方法が挙げられる。
【0033】
本発明においては、ポリイミドフィルムの表面を、金属層形成前に表面処理を施してもよい、例えば表面処理を施したポリイミドフィルムの片面又は両面に金属層を積層する際、下地金属層を予め形成して主金属層を形成してもよく、これらの下地金属層として使用される金属としては、ポリイミドフィルムとの密着性を強固にするもの、拡散がないこと、耐薬品性や耐熱性が良いこと等が重要な特性であり、銅、ニッケル、クロム、クロム合金、クロム系セラミック、モネル合金、TiN、Mo含有Cuが好適である。クロム合金としては、マンガン、ニッケル、コバルト、ケイ素、チタン、バナジウム、カーボン、モリブデン、タングステンを含有する合金が、クロム系セラミックとしてはCrが、それぞれ例示することができる。
前記した下地金属層は、例えば表面処理を施したプラスチックフィルムの片面又は両面に、クロム、クロム合金、及びクロム系セラミック、モネル合金、TiN、Mo含有Cuからなる群から選択した1種以上を、好適にはスパッタリング法、イオンプレーティング法で蒸着させて、下地金属層を形成する。この場合、加工の安定性、プロセスの簡素化、蒸着層の均一性を良好にし、カールの発生を少なくするスパッタリング法がより好適である。
【0034】
下地金属層の膜厚は、1〜50nmの範囲が好ましく、1〜7nmの範囲がより好ましい。前記下地金属層上又は直接ポリイミドフィルム上に、銅などの主金属層を設けることができるが、この主金属層の金属としては、導電性の大きい金属であれば特に限定されず、金、銀、アルミニウム、銅、インジウム、錫などが挙げられるが、経済性、導電性などから銅又は銅を主成分とする銅合金が好ましく使用できる。
本発明の金属化ポリイミドフィルムは、例えばFPC(フレキシブルプリント配線用基板)として極めて効果的に使用することができるが、本発明の金属化ポリイミドフィルムからのFPCは、軽少薄膜化に優れ、柔軟性に富んだフレキシブルプリント配線板とすることができ、より高精度な配線回路を形成することができる。
【0035】
本発明で使用する金属層の表面には、金属単体や金属酸化物などといった無機物の塗膜を形成してもよい。また金属層の表面を、カップリング剤(アミノシラン、エポキシシランなど)による処理、サンドプラスト処理、ホ−リング処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などに供してもよい。同様に、ポリイミドフィルムの表面をホ−ニング処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理、アルカリ、酸化剤などによる薬液処理、サンドブラスト処理、湿式のサンドブラスト処理およびこれらの複合処理などに供してもよい。プラズマ処理においては、使用するガスとして、酸素、アルゴン、窒素、CF4、水素あるいはこれらの混合ガスが望ましい。さらに望ましくは、酸素ガス、窒素ガスである。また、処理時の圧力として、真空プラズマのほかに、大気圧でのプラズマを行ってもよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は前記したもの以外は、以下の通りである。
【0037】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.ポリイミドフィルムのフィルム厚さ
フィルムの厚さは、マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
【0038】
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
乾燥後のフィルムを長手方向(以下MD方向ともいう)および幅方向(以下TD方向ともいう)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、引張試験機(島津製作所製オートグラフ(商品名)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、引張弾性率、引張強度及び破断伸度を測定した。それぞれの力学物性データ値は、MD方向とTD方向の平均値で示した。
【0039】
4.ポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件でMD方向およびTD方向の寸法変化率をそれぞれ測定し、30〜45℃、45〜60℃、・・・と15℃の間隔での寸法変化率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。MD方向とTD方向の意味は上記「3.」の測定と同じである。また、この標準偏差については、湿度膨張係数における方法に準じて求めた。但しフィルムのTD方向中央部でMD方向に10点の測定を等分に分割して行い、MD方向中央部でTD方向に5点の測定を等分に分割して行い、合計15点の測定から、標準偏差を求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0040】
5.ポリイミドフィルムの融点、ガラス転移温度
試料の熱的データ(融点(融解ピーク温度Tpm)とガラス転移点(Tg))をJIS K 7121に準拠して下記測定条件で求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0041】
6.厚付け銅(金属)層の厚さ
金属化フィルムをエポキシ樹脂で包埋したものをミクロトーム(ライカ(株)製ミクロトーム JUNG RM2065)を用いて、面出し・研磨を行った。その後、走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−4500)により、研磨後サンプルの断面を観察し、厚付け金属層の厚さを測定した。なお、走査型電子顕微鏡観察の倍率は、厚付け金属層の厚さに応じて適宜調製した。
【0042】
7.金属化ポリイミドフィルムの耐マイグレーション性
マイグレーション:これらの各ポリイミドフィルムの金属化フィルム(銅層積層体)における銅層のパターンの良否とHAST試験を評価した。抵抗測定装置JIS−C−1303規定品、試験条件110℃、85%RH、400時間にて行った。その結果を表1、2、3に示す。
8.リフロー後の剥がれ、膨れ
金属化ポリイミドフィルムを260℃半田浴に10秒浸漬したときの外観評価が、金属の剥がれや、膨れがなく良好のものを○、膨れなどの外観不良が明らかなものを×とした。
【0043】
9.湿度膨張係数
ポリイミドフィルムがたるまない様に最低限の加重をかけた状態(5mm×50mmのフィルムサンプルに対して約3g)で、湿度25RH%に調湿し完全に飽和するまで吸湿させて寸法を計測し、その後湿度を80RH%に調湿し同様に飽和吸湿させた後寸法を測定し、両者の結果から相対湿度差1%あたりの寸法変化を求める。フィルムのMD方向に10点、TD方向に5点の測定を等分に分割して行い、合計15点の測定から、標準偏差を求めた。
【0044】
〔合成例1〕 <ポリアミド酸の重合−1>
(ベンゾオキサゾール構造を有するジアミンからなるポリアミド酸の重合)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(以下DAMBOという)500質量部を仕込んだ。次いで、N、N−ジメチルアセトアミド8000質量部を加えて完全に溶解させた後,ピロメリット酸二無水物(以下PMDAという)485質量部を加え,25℃の反応温度で48時間攪拌すると,淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(A)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは4.0dl/gであった。
【0045】
〔合成例2〕 <ポリアミド酸の重合−2>
ピロメリット酸無水物545質量部、4,4’ジアミノジフェニルエーテル(以下ODAという)500質量部を8000質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液(B)を得た。得られた溶液のηsp/Cは2.2でdl/gあった。
【0046】
〔合成例3〕 <ポリアミド酸の重合−3>
全ジアミン成分に対して75モル%の4,4’−オキシジアニリン(ODA)をN,N’−ジメチルアセトアミド溶媒に溶かし、次にピロメリット酸二無水物を全量投入する(すなわち、すでに投入されているジアミン成分に対して133%の酸無水物を投入する)ことで、酸末端プレポリマーを得る。次いでこの酸末端プレポリマー溶液に、残りのジアミン成分であるパラフェニレンジアミン(以下PDAという)を、全酸成分と実質的に等モルになるように、不足分のジアミンを添加し、反応させて重合溶液を得た。この重合溶液を約0℃に冷却した上で、約0℃に冷却したポリアミド酸有機溶媒溶液のアミック酸1モルに対して2.0モル%の無水酢酸及び0.5モル%のイソキノリンを添加し、充分に攪拌してポリアミド酸溶液(C)を得た。得られた溶液のηsp/Cは2.5でdl/gあった。
【0047】
〔合成例4〕 <ポリアミド酸の重合−4>
N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMAcという)中に4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを全ジアミン基準で60モル%供給して溶解させ、続いてパラフェニレンジアミン40モル%およびピロメリット酸二無水物を順次供給し、室温で、約1時間撹拌した。最終的にテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が約100モル%化学量論からなるポリアミド酸濃度20重量%の溶液を調製しポリアミド酸溶液(D)を得た。得られた溶液のηsp/Cは2.7でdl/gあった。
このポリアミド酸溶液を氷冷し、無水酢酸、β−ピコリンを加え撹拌した。
【0048】
〔合成例5〕 <ポリアミド酸の重合−5>
ジアミン成分として、4,4−ジアミノジフェニルエーテル40モル%と、パラフェニレンジアミン60モル%とを用いるとともに、酸二無水物成分として、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(以下TMHQという)55モル%、ピロメリット酸二無水物45モル%を用い、これら各モノマー成分をこれらモル比でN,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)中に添加して重合し、ポリアミド酸溶液(E)を得た。
得られた溶液のηsp/Cは2.6でdl/gあった。
得られたポリアミド酸溶液に、アミド酸当量に対して、2.0倍当量の無水酢酸と1.0倍当量のイソキノリンを添加した。
【0049】
〔実施例1〜19、比較例1〜5〕
各合成例で得られたポリアミド酸溶液を、コンマコーターを用いて幅600mm、ステンレス製エンドレスベルトの片面に塗膜乾燥厚さが表1〜5に示した厚さとなるようにコーティングして、110℃で60分間乾燥・剥離して各ポリイミド前駆体フィルムであるグリーンフィルムを得て、この幅600mmのグリーンフィルムを窒素置換された連続式の熱処理炉に通し、第1段、第2段の2段階の高温加熱を施して、イミド化反応を進行させた。1段目の炉は200℃としている。2段階目の炉の温度を表1〜5中に炉温度条件として示した。
その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈する各例のポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの測定結果を表1〜5(引張破断伸度の欄以上)に記載する。
【0050】
第二の熱処理工程における炉条件はかきの通りである。
炉条件1; フィルム両端部での風量を減らしつつ温度を上げる。両端部温度(t2)が(t1)より5℃以上高く、両端部における風量(w2)が(w1)より0.5m/分以上少ない。
炉条件2; 装置でできるだけの均一化を図った。両端部温度(t2)が(t1)とほぼ同一。両端部における風量(w2)が(w1)とほぼ同一。
炉条件3; フィルム端部での風量を減らす。両端部温度(t2)が(t1)とほぼ同一。両端部における風量(w2)が(w1)より0.5m/分以上少ない。
炉条件4; フィルム端部での温度を上げる。両端部温度(t2)が(t1)より5℃以上高く、両端部における風量(w2)が(w1)とほぼ同一。
【0051】
(スパッタリング下地金属層膜の作製)
前記各例において得られたフィルムを巻き出し装置、巻き取り装置、プラズマ処理装置、2つのターゲットを備えたスパッタリング室のある、真空装置内にセットし、次いでフィルムを送りながら、フィルム表面のプラズマ処理を行った。プラズマ処理条件は酸素ガス中で、周波数13.56MHz、出力90W、ガス圧0.9Paの条件であり、処理時の温度は特にコントロールはしていない。プラズマ雰囲気での滞留時間約20秒であった。
次いで、プラズマ処理後のフィルムを、スパッタリングエリアで、出力800W、到達真空度2×10−4Paまで、真空引きをした後に、アルゴンガスを導入して、アルゴンガス圧0.5Paの条件、ニッケル−銅合金ターゲットを用い、アルゴン雰囲気下にてDCマグネトロンスパッタリング法により、ニッケル−銅合金被膜を形成した。次いで、銅ターゲットを用いてスパッタリングにより厚さ300nm銅薄膜を形成させ薄膜作製例1として得た。スパッタリング時のフィルムは、5℃に温度コントロールされたチルロールに接している。
【0052】
(パターンの作製)
感光レジストを上記フレキシブル金属張積層体の銅箔表面に積層し、マスクフィルムにて露光焼付け、現像し、必要なパターンとして、「くし形パターン」を転写した。ここで、導体幅と導体間隔は、5μm/5μmとして、パターンの重ねしろは15.75mmとした。パターン本数は片側20本、もう片側を21本とした。次いで、40℃の35%塩化第二銅液を用いて銅箔をエッチング除去し、回路形成に用いたレジストをアルカリにより除去して回路加工を行った。
パターンの良否は光学顕微鏡観察を行い、その後、HAST試験法に準じた試験を行った。印加電圧は0.5VDC、測定間隔1回・60分絶縁である。
これらの各ポリイミドフィルムの銅薄膜層積層体における銅薄膜層のパターンの良否とHAST試験を評価した。抵抗測定装置JIS C1303規定品、試験条件110℃、85%RH、400時間にて行った。その結果を表1〜6に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の芳香族ジアミン成分および芳香族テトラカルボン酸成分を原料モノマーとし、これらの重縮合反応により得られるポリイミドフィルムであって、フィルム巾が0.5m以上、長さ5m以上であり、フィルム中の幅方向、長手方向のいずれの箇所においても、湿度膨張係数の標準偏差が0.3ppm/RH%以下であるポリイミドフィルムは、均一性に優れたフィルムであって、そのために高品質FPCなどの回路基板の効率生産を実現し、電子機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応し得る屈曲性及び耐熱性に優れたフレキシブルプリント配線板(FPC)、Tape Automated Bonding(TAB)、Chip On Film(COF)、Chip On Glass(COG)、フィルムを利用した多層基板のビルドアップ層などの回路基板などに使用可能な金属化ポリイミドフィルムおよびそれを使用した回路となり、しかもそれらの製品均一性による歩留まりが高く、工業的な意義は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム巾が0.5m以上、長さ5m以上であり、フィルム中の幅方向および長手方向のいずれの箇所においても、湿度膨張係数の標準偏差が0.3ppm/RH%以下であることを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項2】
ポリイミドフィルムが芳香族ジアミン成分および芳香族テトラカルボン酸成分を原料モノマーとし、これらの重縮合反応により得られるポリイミドフィルムであって、芳香族テトラカルボン酸成分が、ピロメリット酸を全芳香族テトラカルボン酸成分に対して30モル%以上含有するものである請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2いずれかに記載のポリイミドフィルムの少なくとも片面に金属層を積層した積層体。
【請求項4】
芳香族ジアミン成分および芳香族テトラカルボン酸成分を原料モノマーとし、これらの重縮合反応により得られるポリイミドのフィルム製造方法において、ポリイミド前駆体溶液を支持体上に流延・乾燥して自己支持性の前駆体フィルムを製造する第一の乾燥工程と前記フィルムを熱により反応させてイミド化させる第二の熱処理工程とを少なくとも含む連続式製膜フィルム製造方法であり、第二の熱処理工程において、フィルム中央部における温度(t1)と風量(w1)に比較して、フィルム幅方向の端部(全フィルム幅の1/10以下の両端部)における温度(t2)が(t1)より5℃以上高いこと、および又は、両端部における風量(w2)が(w1)より0.5m/分以上少なくすることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−321079(P2007−321079A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153819(P2006−153819)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】