説明

ポリエステル系樹脂支持体回収方法

【課題】 支持体に天然高分子系バインダー及び合成高分子系バインダーを使用し塗布膜を形成した記録材料から、記録材料用の支持体の原料として再使用出来る状態で生産性、採算性が良い支持体の回収方法の提供。
【解決手段】 ポリエステル系樹脂支持体上に少なくとも1層の塗布膜を有するシート状記録材料をチップ状記録材料に裁断し、アルカリ性処理液により処理し、該チップ状記録材料から該塗布膜を分離・除去した後、該ポリエステル系樹脂支持体を回収するポリエステル系樹脂支持体回収方法において、該シート状記録材料を積層した状態で裁断し、前記チップ状記録材料する裁断部と、前記チップ状記録材料を該アルカリ性処理液により処理する処理部と、第1分離処理部と、第2分離処理部と、中和処理部と、水洗・乾燥部とを有する回収装置を用いることを特徴とするポリエステル系樹脂支持体回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系樹脂支持体上に少なくとも1層の塗布膜を有する記録材料からのポリエステル系樹脂支持体の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートはその優れた特性によりハロゲン化銀写真感光材料、熱現像写真感光材料、インクジェット記録材料、磁気記録材料等の記録材料の支持体として、及び液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイの各種表示装置に使用する光学フィルムとして情報記録産業界でも広く用いられている。ポリエステル系樹脂支持体を使用した記録材料の一例として写真感光材料の場合について図で概略説明する。
【0003】
図5は写真感光材料の概略断面図である。
【0004】
図中、8は写真感光材料を示す。8aはポリエステル系樹脂支持体を示し、8b、8cは下塗り層を示す。8dは下塗り層8bを介してポリエステル系樹脂支持体8a上に形成された塗布膜の感光層を示し、8eは感光層8dの上に形成された塗布膜の保護層を示す。8fは下塗り層8cを介してポリエステル系樹脂支持体8a上に形成された塗布膜のバッキング層を示す。感光層8dは必要に応じて多層から構成されている場合もあるし、上に保護層を塗設していない場合もある。感光層8d、保護層8e及びバッキング層には天然高分子バインダー又は合成高分子バインダーが作製する写真感光材料の種類により選択され使用されている。本発明では、写真感光材料の場合、塗布膜とは感光層と、保護層と、バッキング層とを含めた総称を言う。
【0005】
近年、情報記録産業界は著しい発展を遂げつつあり使用されるポリエステル系樹脂材料も急増しつつある。それに伴い、製造工程において発生する廃棄対象物(例えば、生産端材、製品検査過程で発生する品質不良品等)、使用済み品も多量になりつつある。
【0006】
これらポリエステル系樹脂材料の屑は殆どが有効利用されることなく埋め立て又は焼却処理で対応しているのが実状であるが、埋め立てでは腐敗消滅することは無く、焼却処理では焼却条件によりダイオキシンの発生を引き起こし、地球環境負荷を大きくする一因にもなっている。又、ポリエステル原料損失という問題点があり、省資源の面からも好ましくない。
【0007】
特に、これらポリエステル系樹脂支持体を使用し、塗布膜のバインダーに合成高分子系素材を用いた記録材料に対しては、ポリエステル系樹脂支持体として再使用が出来る状態での回収が出来ず、使用済み品及び生産端材については殆どが有効利用されることなく、やむなく、ダイオキシンの発生を抑えるために高温で焼却処理で対応していた。このため、高温の焼却処理に伴い焼却炉の傷みが早く維持費がかかり問題となっている。
【0008】
これらの問題点を解決するために、ポリエステル系樹脂支持体を使用した記録材料からポリエステル系樹脂支持体を回収する方法が検討されてきた。例えば、塩化ビニリデン、イタコン酸、アクリル酸等の共重合体を下塗り層としたポリエステル系樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)を支持体に用いた印刷製版フィルムを適当な大きさに細断し、アルカリ金属塩の水溶液中でカチオン系界面活性剤とともに50〜95℃で加熱処理することでPETを回収する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0009】
下塗り層を有するポリエステル系樹脂支持体(以下、単に支持体とも言う)及びそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料をチップ状に破砕し、界面活性剤(非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤)を併用し、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含むアルカリ性処理液で温度70〜100℃で撹拌しながら加熱処理することで支持体を回収する方法が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0010】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の回収方法では、支持体上に合成高分子バインダーを使用し、塗布膜を形成した記録材料から支持体を回収した場合、剥離した塗布膜及びアルカリ性処理液による処理で発生するスラッジがシート状記録材料をチップ状記録材料に裁断する際に発生するヒビ、割れ目に入り込み除去されずに残っている支持体の混入が生じ、記録材料用の支持体の原料として再使用するには純度的に不十分となり使用出来ないのが現状である。
【0011】
特に記録材料用の支持体の原料として再使用する場合、要求される項目としては、1)物理的特性(色調、分子量分布等)が変化していないこと、2)性能に悪影響(例えば写真感光材料の場合、カブリ、増感・減感等の感度異常等)を与える不純物の混入がなく、3)撮影したときに画像に悪影響を与える異物の混入が無いこと等が挙げられる。
【0012】
これらの状況から、支持体に天然高分子系バインダー及び合成高分子系バインダーを使用し塗布膜を形成した記録材料から、記録材料用(特に純度的に要求が高い写真感光材料用)の支持体の原料として再使用出来る状態で支持体を回収する方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平11−302580号公報
【特許文献2】特開平8−146560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は、支持体に天然高分子系バインダー及び合成高分子系バインダーを使用し塗布膜を形成した記録材料から、記録材料用の支持体の原料として再使用出来る状態で生産性、採算性が良い支持体の回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0015】
(請求項1)
ポリエステル系樹脂支持体上に少なくとも1層の塗布膜を有するシート状記録材料をチップ状記録材料に裁断し、アルカリ性処理液により処理し、該チップ状記録材料から該塗布膜を分離・除去した後、該ポリエステル系樹脂支持体を回収するポリエステル系樹脂支持体回収方法において、
該シート状記録材料を積層した状態で裁断し、前記チップ状記録材料する裁断部と、
前記チップ状記録材料を該アルカリ性処理液により処理する処理部と、
第1分離処理部と、
第2分離処理部と、
中和処理部と、
水洗・乾燥部とを有する回収装置を用いることを特徴とするポリエステル系樹脂支持体回収方法。
【0016】
(請求項2)
前記裁断部は、積層されたシート状記録材料を短冊状記録材料に裁断する第1裁断装置と、該短冊状記録材料をチップ状記録材料に裁断する第2裁断装置とを有していることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系樹脂支持体回収方法。
【0017】
(請求項3)
前記チップ状記録材料は、外形サイズが0.1〜100mmの不定形であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂支持体回収方法。
【0018】
(請求項4)
前記塗布膜が天然高分子系バインダー又は合成高分子系バインダーを使用していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のポリエステル系樹脂支持体回収方法。
【発明の効果】
【0019】
支持体に天然高分子系バインダー及び合成高分子系バインダーを使用し塗布膜を形成した記録材料から、記録材料用の支持体の原料として再使用出来る状態で生産性、採算性が良い支持体の回収方法を提供することが出来、記録材料用の支持体の原料として再使用出来る状態で支持体の回収率を大幅に向上できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る実施の形態を図1〜図4を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
図1はチップ状記録材料から支持体の回収方法の一例を示す模式図である。
【0022】
図中、1は回収装置を示す。回収装置1は、集められたシート状記録材料9を積層体9aとし、積層体9aを裁断し、チップ状記録材料とする裁断部2と、アルカリ性処理液により処理を行う処理部3と、第1分離処理部4と、第2分離処理部5と、中和処理部6と、水洗・乾燥部7とを有している。
【0023】
裁断部2は、集められたシート状記録材料9を積層体9aとし、積層体9aを短冊状記録材料9bに裁断する第1裁断装置201と、短冊状記録材料9bを積層体9cとし、積層体9cをチップ状記録材料9dに裁断する第2裁断装置202とを有している。202aは第2裁断装置202で裁断されたチップ状記録材料9dを受ける容器を示す。第1裁断装置201と第2裁断装置202とに関しては図2で説明する。
【0024】
チップ状記録材料9dは次工程の処理部3に移動される。移動手段は特に限定は無く、例えばコンベアベルト受けて、直接処理部に運ぶことも勿論可能であり、本図は容器に入れて処理部3移動する場合を示している。移動手段は処理量に合わせ適宜選択することが可能である。チップ状記録材料の大きさとしては、外形サイズが0.1〜100mmの不定形であることが好ましい。外形サイズとは、チップ記録材料の中心(重心)から最も遠い角の頂点までの距離の2倍の長さを言う。外形サイズが0.1mm未満の場合は、図1に示す回収装置の各送液管の太さによっては、送液管が詰まる危険がある。100mmを越えた場合も同様に、図1に示す回収装置の各送液管の太さによっては、送液管が詰まる危険がある。又、次工程の洗浄処理で撹拌が充分に出来なくなったり、洗浄が不十分となりチップに付着しているスラッジ、再付着した塗布膜が残る場合がある。又、アルカリ処理での撹拌が均一に行われずに部分的に塗布膜が残る場合がある。
【0025】
3はアルカリ性処理液により処理する処理部を示す。301は、支持体上に塗布膜を有する細断したチップ状記録材料9dを、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含むアルカリ性処理液303で撹拌しながら加熱処理し、支持体から塗布膜を剥離する処理装置を示す。処理装置301は処理槽301aと撹拌羽根301bとを有している。細断したチップ状記録材料9dとしては、製造工程において発生する廃棄対象物(例えば、生産端材、製品検査過程で発生する品質不良品等)、使用済み品、市場からの回収品等が挙げられる。
【0026】
処理装置301による処理条件としては、アルカリ性処理液中の固形分濃度が0.1〜30質量%で、アルカリ性処理液の濃度が0.01〜4mol/Lで、温度が70〜95℃、時間10〜120minで処理することが好ましい。
【0027】
アルカリ性処理液中の固形分濃度が0.1質量%未満の場合は、超音波振動のエネルギー効率が悪く、生産性が悪くなる場合がある。固形分濃度が30質量%を越えた場合は、チップ状記録材料の撹拌が困難となりチップ状記録材料同士の衝突による剪断力が掛けられなくなり、塗布膜の剥離がされないで残るチップ状の記録材料が多くなる場合がある。
【0028】
アルカリ性処理液のアルカリ濃度が0.01mol/L未満の場合は、チップ状記録材料からの塗布膜の剥離がし難くなり、処理時間が長くなること、及び塗布膜の残りが多くなる場合がある。アルカリ濃度が4mol/Lを越えた場合は、支持体の加水分解が進み、支持体の物理化学特性が変化し、記録材料の原料として再使用出来なくなる場合がある。
【0029】
アルカリ性処理液の温度が70℃未満の場合は、塗布膜の種類によっては剥離に時間が掛かり、完全に剥離しないで残り、不純物として混入し記録材料としての原料に再使用することが出来なくなる場合がある。温度が95℃を越えた場合は、支持体が劣化してしまい、記録材料としての原料に再使用することが出来なくなる場合がある。
【0030】
時間が10min未満の場合は、塗布膜の種類によっては剥離しないで残る場合があり、記録材料としての原料に再使用することが出来なくなる場合がある。時間が120minを越えた場合は、支持体が劣化してしまい、記録材料としての原料に再使用することが出来なくなる場合がある。
【0031】
本図では、チップ状記録材料のアルカリ処理を撹拌羽根による撹拌で行う場合を示しているが、方法は特に限定されることなく、例えば、超音波振動による方法であってもかまわない。
【0032】
4は第1分離処理部を示し、ハイドロサイクロン401と、第1衝突型遠心脱水機402と、水切り手段403とを有している。水切り手段403としては特に限定はなく、例えばエアーサイクロン、スクリーンコンベア等が挙げられる。本図では、エアーサイクロンを使用した場合を示している。
【0033】
401aはハイドロサイクロン401によりアルカリ性処理液より分離された固形物を受けるホッパーを示す。ハイドロサイクロン401と、第1衝突型遠心脱水機402と、エアーサイクロン403はいずれも市販のものを使用することが可能であり、処理量から適宜大きさを選択することが可能である。
【0034】
第1分離処理部では、前工程のアルカリ性処理液から固形物を分離する工程である。処理部1からの固形物を含むアルカリ性処理液は、ハイドロサイクロン401の円柱部の401bの上部より、ハイドロサイクロンの円周方向の接線方向に10〜2500m/minの速度で導入することが好ましい。10m/min未満の場合は、ハイドロサイクロン本体中に渦流の発生が弱くなり、処理部3から送られてくるアルカリ性処理液中の固形物の状態によっては分離が出来なくなる場合がある。2500m/minを越えた場合は、処理部3から送られてくるアルカリ性処理液中の固形物の状態によっては、ハイドロサイクロンの下部のオリフィス201cに固形物が詰まり分離が出来なくなる場合がある。
【0035】
ハイドロサイクロン401に導入するときの固形分濃度は0.1〜2質量%になるようにアルカリ性処理液を水で希釈することが好ましい。0.1質量%未満の場合は、水を多量に使用することになり、生産性を悪くする原因のひとつになる場合がある。2質量%を越えた場合は、細断したチップ状記録材料の大きさによってはハイドロサイクロンが詰まってしまう場合がある。
【0036】
ハイドロサイクロンの円周方向の接線方向に沿って導入されたアルカリ性処理液は、遠心力により固形物は、ハイドロサイクロン401のテーパー部401eを介してオリフィス401cよりホッパー401aに分離回収され、上部の排出口401dからは剥離した塗布膜と、発生したスラッジ等の一部を含むアルカリ処理液が排出される。
【0037】
これら固形物から、支持体に再付着した塗布膜及びスラッジ、剥離した塗布膜、スラッジ等を分離除去するために、ホッパー401aから、水を加え固形分濃度を0.1〜50質量%の範囲に調整し、第1衝突型遠心脱水機402の下部から導入される。
【0038】
第1衝突型遠心脱水機402に導入された溶液は互いに衝突しながら上部に移動する間に付着物の一部及び剥離した塗布膜、スラッジ等が下部402aより排出される。上部402bからは支持体(塗布膜が剥離された支持体と、一部の塗布膜が残った支持体と、剥離した塗布膜及びスラッジ等が付着した支持体等とを含む)、分離出来ずに残った剥離した塗布膜等が排出される。
【0039】
第1衝突型遠心脱水機402の上部402bから排出される支持体(塗布膜が剥離された支持体と、一部の塗布膜が残った支持体と、剥離した塗布膜及びスラッジ等が付着した支持体等とを含む)、分離出来ずに残った剥離した塗布膜等は水切り手段であるエアーサイクロンに導入され付着している水が除去される。
【0040】
この段階で回収された固形物は、塗布膜が剥離された支持体と、一部の塗布膜が残った支持体と、剥離した塗布膜が再付着した支持体と、アルカリ性処理液により生じたスラッジ等が付着した支持体と、剥離した塗布膜と、アルカリ性処理液により生じたスラッジ等とが混入しているため、未だ記録材料の支持体に再利用出来る状態とはなっていない。
【0041】
5は第2分離処理部を示し、高剪断撹拌装置501と第2衝突型遠心脱水機502とを有している。高剪断撹拌装置501と第2衝突型遠心脱水機502はいずれも市販のものを使用することが可能であり、処理量に合わせ適宜大きさを選択することが可能である。
【0042】
第2分離処理部5は、第1分離処理部で回収された剥離した塗布膜及びスラッジ等が付着している支持体から物理的な力により塗布膜及びスラッジ等の剥離と、剥離した塗布膜を細分化し除去し易くし支持体を分離する工程である。
【0043】
第1分離処理部4で回収された固形物は、水により固形分濃度を0.1〜50質量%に調整し、高剪断撹拌装置501に入れられる。尚、高剪断撹拌装置501の機構及び処理条件は図3を参照して説明する。
【0044】
固形物は、高剪断撹拌装置501で高剪断力を掛けられて処理されることで、支持体に残っている塗布膜、付着していた塗布膜及びスラッジ等が剥離されと同時に細分化される。又、同様に分離せずに残っていた剥離した塗布膜、スラッジ等も高剪断力を掛けられて処理されることで細分化され、水と混合した溶液となる。
【0045】
この状態で第2衝突型遠心脱水機502に導入され処理されることで、支持体と塗布膜、スラッジ等が分離され、支持体が回収される。尚、第2衝突型遠心脱水機502から支持体を回収するときは、第1分離処理部に示した様なエアーサイクロンを介して回収してもかまわない。この段階で回収された支持体には、僅かな塗布膜、スラッジ等が付着している支持体と、細分化された塗布膜等が混入しているため、未だ記録材料の支持体に再利用出来る状態とはなっていない。第2衝突型遠心脱水機502の機構及び条件については図4で説明する。
【0046】
6は第2分離処理部5より回収された支持体を記録材料の支持体に再利用出来る状態にする中和処理部を示す。601は、処理槽601aに入れられた、第2衝突型遠心脱水機502から回収した支持体602を、酸性処理液603で温度1〜95℃で攪拌機601bで撹拌しながら、支持体を処理する処理装置を示す。酸性処理液で処理ことにより、支持体602に付着している僅かな塗布膜、スラッジ、混入している微細な塗膜のバインダーが分解し、銀を硝酸銀として分離除去することが出来る状態となる。
【0047】
酸性処理液で処理が終了した段階で回収された支持体は、異物の付着が無く、酸性処理液を分離することで記録材料の製造時に使用する支持体と同じ程度となっており、記録材料の支持体に再利用出来る状態となっている。
【0048】
中和処理部で使用する酸性処理液としては特に限定は無く、例えば硝酸、ハロゲン化水素酸、硫酸等が挙げられ、特に硝酸、ハロゲン化水素酸が好ましい。酸性処理液の濃度は0.01〜10mol/Lが好ましい。0.01mol/L未満の場合は、バインダーの種類によっては塗膜のバインダーが分解せず、銀が溶液中に溶出しない場合がある。10mol/Lを越える場合は、設備に使用している材質によっては、腐食が進み生産に支障をきたす場合がある。
【0049】
7は水洗・乾燥部を示す。水洗・乾燥部7は、中和処理部6で酸性処理液で処理した支持体を分離、水洗し、乾燥することで写真感光材料の支持体の原材料に再利用出来る状態にする工程である。
【0050】
701は水洗装置を示し、702は乾燥装置を示す。水洗装置701は回収された支持体を効率良く洗浄出来れば装置には特に限定はなく、例えば、メッシュのベルト上でシャワーで水洗水を掛けてもよいし、撹拌機が付いた水洗槽でもよく、水洗水をシャワーで欠けながら回転可能なメッシュのドラム式容器等でも良い。本図はメッシュのベルト上でシャワーで水洗水を掛ける場合を示している。
【0051】
乾燥装置702も水洗装置701と同様に効率良く乾燥出来れば装置には特に限定はなく、例えば、メッシュのベルト上で乾燥風を吹き付けてもよいし、乾燥風を吹き付けながら回転可能なメッシュのドラム式容器等でも良い。本図はメッシュのベルト上で乾燥風を吹き付けて乾燥する場合を示している。乾燥が終了した段階で、写真感光材料の支持体の原材料に再利用出来る状態の支持体の回収が終了する。
【0052】
図1に示される、分別細断部、アルカリ性処理液による処理部、第1分離処理部、第2分離処理部、中和処理部、水洗・乾燥部は連続方式でもバッチ処理方式で行うことも可能であり、処理量に応じて適宜選択することが好ましい。
【0053】
図2は、図1に示す裁断部の第1裁断装置と第2裁断装置の概略斜視図である。図2の(a)は第1裁断装置の概略斜視図である。図2の(b)は第2裁断装置の概略斜視図である。
【0054】
第1裁断装置201は、集められたシート状記録材料9を載置する載置台201cと、載置台201cに配設された吸引板201a(201b)と、押し板201dと、裁断刃201eと、収納容器201fとを有している。吸引板201a(201b)はシート状記録材料9の幅に合わせて移動(図中の矢印方向)が可能となっている。吸引板201a(201b)は、内側に複数の吸引孔が配設されており、吸引板201a(201b)に配設された真空ポンプ(不図示)に繋がる吸引管201a1(201b1)を有している。押し板201dは押し軸201d1を介してエアーシリンダ、油圧シリンダ、ボールネジ等で積層体9aを裁断刃201eで裁断する幅に合わせて押し出す(図中の矢印方向)ことが可能となっている。第1裁断装置201を使用して積層体9aを短冊状に裁断する方法を次に説明する。
【0055】
第1段階として載置台の吸引板201a(201b)の間にシート状記録材料9を積み上げ載置する。
【0056】
第2段階として積み上げ載置されたシート状記録材料9の幅に合わせて吸引板201a(201b)を移動させた後、真空ポンプ(不図示)により吸引することで積み上げられ載置されたシート状記録材料9の間の空気が抜け積層体9aが出来上がる。
第3段階として、積層体9aを押し板201dで裁断する幅に合わせて裁断刃201eの位置まで押し出す。
【0057】
第3段階として、裁断刃201eにより積層体9aが短冊状記録材料9bに裁断され、収納容器201fに収納される。収納容器201fの内側寸法は短冊状記録材料9bの寸法に合わせておくことが好ましく、収納容器201fに収納された短冊状記録材料9bの状態は短冊状記録材料9bが積み上げられた状態となっている。
【0058】
第2裁断装置202は、短冊状記録材料9bを積み上げて載置する載置台202bと、載置台202bに配設された吸引板202c(202d)と、押し板202eと、裁断刃202fと、収納容器202aとを有している。吸引板202c(202d)は積み上げた短冊状記録材料9bの幅に合わせて移動(図中の矢印方向)が可能となっている。本図は10本の短冊状記録材料9bを並べて積み上げた場合を示している。吸引板202c(202d)は、内側に複数の吸引孔が配設されており、吸引板202c(202d)に配設された真空ポンプ(不図示)に繋がる吸引管202c1(202d1)を有している。押し板202eは押し軸202e1を介してエアーシリンダ、油圧シリンダー、ボールネジ等で短冊状記録材料9bの積層体9cを裁断刃202fで裁断する幅に合わせて押し出す(図中の矢印方向)ことが可能となっている。第2裁断装置202を使用して積層体9cをチップ状に裁断する方法を次に説明する。
【0059】
第1段階として載置台の吸引板202c(202db)の間に第1裁断装置201で裁断され収納容器に収納されている短冊状記録材料9bを積み上げ載置する。載置は、1本の短冊状記録材料9bを積み上げた状態を1ブロックとすると、複数本の短冊状記録材料9bを積み上げ複数のブロックにすることが可能である。
【0060】
第2段階として積み上げ載置された短冊状記録材料9bの複数のブロックの幅に合わせて吸引板202c(202d)を移動させた後、真空ポンプ(不図示)により吸引することで積み上げられ載置された複数のブロックの短冊状記録材料9bの間の空気が抜け積層体9cが出来上がる。
第3段階として、積層体9cを押し板202eで裁断する幅に合わせて裁断刃202fの位置まで押し出す。
【0061】
第3段階として、裁断刃202fにより積層体9cがチップ状記録材料9dに裁断され、収納容器202aに収納される。
【0062】
シート状記録材料9の集積体9a、短冊状記録材料9bの集積体9cを作製する方法は特に限定はなく、例えば、液体チッ素、液体酸素、ドライアイス等で固める方法も可能である。又、集積体9a、集積体9cを裁断する方法も特に限定はなく、例えば超音波カッター、サンドブラスト、アイスブラスト等も使用することが可能である。
【0063】
本図に示す様にシート状記録材料を集積体にしてからチップ状記録材料に裁断することで次の効果が得られる。
1)裁断時の剪断応力が分散されるため、ヒビ、割れの発生を防止したチップ状記録材料の作製が可能となる。
2)チップ状記録材料のヒビ、割れの発生が防止されているため、アルカリ処理により発生するスラッジ、剥離した塗布膜等が塗布膜が剥離した支持体のヒビ、割れに入り込むことが無くなるため、後処理工程が容易になり、純度の高い支持体の回収が可能となる。
3)チップ状記録材料の大きさを揃えることが可能となったため、アルカリ処理による均一な塗布膜の剥離が可能となり後処理工程が容易になり、純度の高い支持体の回収が可能となる。
4)裁断刃に角の剪断力が掛からないため裁断刃の寿命を延ばすことが可能となる。
【0064】
図3は図2の第2分離処理部の高剪断撹拌装置であるヘンシェルミキサーの概略図である。図3の(a)はヘンシェルミキサーの概略断面図である。図3の(b)はヘンシェルミキサーの下羽根の概略斜視図である。図3の(c)はヘンシェルミキサーの上羽根の概略斜視図である。
【0065】
第1分離処理部で回収した固形物から支持体のみを回収するためには、これらに高剪断力を掛け、支持体に残存している塗布膜、支持体に付着している塗布膜及びスラッジ等を剥離し細分化して除去する、及び混入している塗布膜を細分化して除去することが一番効果的であることが検討の結果明らかになった。
【0066】
支持体に残存している塗布膜は、アルカリ溶液で処理が終了している段階で下塗り層にアルカリ溶液が染み込んでいる状態であるため塗布膜に高剪断力を掛けることで剥離が促進され易い状態となっている。又、支持体に付着している塗布膜及びスラッジ等も高剪断力を掛けることで剥離が促進される。剥離された塗布膜、スラッジ等は高剪断力を掛けることで細分化され次の工程で支持体との分離がし易くなる。
【0067】
均等に高剪断力を掛ける最適な装置としてヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)が挙げられる。本図では高剪断撹拌装置としてヘンシェルミキサーを使用した場合に付き説明する。
【0068】
図中、301aはヘンシェルミキサーの有底円筒状の胴部を示し、301bは蓋部を示す。301cは回転軸を示し、301dは回転軸31cに取り付けられた下羽根を示し、301eは回転軸301cに取り付けられた上羽根を示す。回転軸が回転(図中の矢印方向)することで胴部301aの液体は2つの方向の流れが発生する。1つは下羽根301dの回転により下から上向きの流れ(図中の矢印方向)が発生する。他の1つは上羽根301eの回転により水平方向の流れ(図中の矢印方向)が発生する。処理液中に固形物が存在する場合、固形物は、一旦上向きの流れに乗り流れ、次に下向きの流れに乗り、上羽根に接触することで剪断力が掛けられる。この様な流れを発生させるヘンシェルミキサーで一定時間処理することで固形物毎に高剪断力が均一に掛けられることで、支持体に残存していた塗布膜、付着していた塗布膜及びスラッジ、分離せずに残っていた塗布膜が剥離されると同時に細断され細分化することで次の工程で分離が容易となる。
【0069】
下羽根及び上羽根の形状は特に限定は無く、被撹拌物の種類と固形物の濃度とにより適宜選択することが可能である。
【0070】
ヘンシェルミキサー301における好ましい条件としては次の条件が挙げられる。固形分濃度は1〜70質量%が好ましい。1質量%未満の場合は、槽内旋回流が支配的となり、軸流が発生しなくなり、被撹拌物の種類と固形物の種類によっては上羽根による粉砕が出来なくなる場合がある。70質量%を越えた場合は、固形物の種類によっては、ブリッジを起こしやすくなり均一な撹拌が出来なくなる場合がある。
【0071】
羽根の回転速度(羽根の先端の周速度)は10〜70m/secが好ましい。20m/sec未満では固形物毎に与える剪断力が小さくなり、付着した塗布膜及びスラッジの状態によっては剥離されなくなったり、剥離した塗布膜等が細分化しなくなる場合がある。70m/secを越えた場合は、塗布膜の種類によっては、剥離した塗布膜が撹拌に伴い温度が上昇し、塗膜中に使用しているバインダーの種類によっては粘性が上がり軟化し、剥離した塗膜が再び支持体に付着し、その後の工程で再付着した塗膜を剥離することが困難となる場合がある。
【0072】
時間は、10〜30分が好ましい。10分未満の場合は、塗布膜の種類及び付着している異物の状態によって剥離が終了しない場合がある。30分を越えた場合は、内部の温度が上昇し塗膜中に使用しているバインダーの種類によっては粘性が上がり軟化し、剥離した塗膜が再び支持体に付着し、その後の工程で再付着した塗膜を剥離することが困難となる場合がある。
【0073】
温度は、1〜40℃が好ましい。1℃未満の場合は、内容物の種類によっては部分的に凝固が生じ完全な流動が出来なくなる場合がある。40℃を越えた場合は、塗布膜の種類によっては、粘性を帯び始め支持体に再付着する場合がある。
【0074】
図4は図2に示す第2衝突型遠心脱水機の概略図である。図4の(a)は図1に示す第2衝突型遠心脱水機の概略断面図である。図4の(b)は衝突型遠心脱水機の概略平面図である。
【0075】
図中、302aは衝突型遠心脱水機の円筒状の外筒を示し、302bは外筒302aの内部に配設された回転ローターを示す。302cは円筒状の分離筒を示す。302dは回転ローター302bの駆動用のモータを示す。302c1は円筒状の分離筒302cに設けられた孔を示す。302b1は回転ローター302bの表面に取り付けられた撹拌羽根を示す。撹拌羽根は回転ローター302bが回転(図中の矢印方向)したとき、分離筒302cと回転ローター302bの外側との間隙303に供給口304から入れられた高剪断撹拌装置により処理された処理液が上方向の流れになるような角度で取り付けられている。回転ローター302bが回転することで遠心力が作用し、分離筒302cに設けられた孔からは支持体から剥離した塗布膜、スラッジ及び処理液が通過し除去され、支持体は通過しないで残り上部の排出口305から排出分離される。孔を通過した塗布膜、付着物が混入している処理液は外筒302aの下部の排出口306から排出される。孔302c1の大きさは、細断されたチップ状の写真感光材料の大きさに対して1/10〜1/2が好ましい。1/10未満の場合は、剥離した塗布膜の大きさ及び付着物の大きさによっては孔を通過しないで除去されない場合がある。1/2を越えた場合は、支持体の大きさによっては支持体が除去されてしまう場合がある。尚、細断されたチップ状の写真感光材料の大きさとは、細断されたチップ状の写真感光材料を100g取り、この中の各チップの最大長さを測定した平均値を示す。孔302c1の形状は特に限定はないが、円形が分離筒の清掃、強度維持、作りやすさの面から好ましい。
【0076】
分離筒302cに設けられた孔302c1の開口率(孔の総面積/分離筒の総表面積×100で表される値)は、10〜80%が好ましい。更に、30〜60%が好ましい。10%未満の場合は、処理液中の固形物濃度によっては分離に時間が掛かり、作業効率が悪くなる場合がある。80%を越えた場合は、分離筒の材質によっては強度が不足し、分離筒のメンテナンスに時間と費用が掛かり、生産効率が悪くなる場合がある。
【0077】
回転ローター302bの形状は高速回転が可能であるならば特に限定は無く、例えば円筒形、多角筒形等であってもかまわない。本図では円筒形の場合を示している。尚、第1分離処理部に使用している第1衝突型遠心脱水機も本図に示す第2衝突型遠心脱水機と同じ構造をしている。
【0078】
衝突型遠心脱水機に入れる処理液の量は、固形分濃度と衝突型遠心脱水機の大きさにより適宜決めることが可能である。回転ローターの回転速度(周速度)は、5〜40m/secが好ましい。5m/sec未満の場合、処理液中の塗布膜の一部が残った支持体、剥離した塗布膜、アルカリ性処理液処理により発生したスラッジ及び剥離した塗布膜が付着している支持体の大きさによっては、衝突型遠心脱水機内にて固形物の巻き上がりが生じず、これらの支持体同士の衝突がなくなり、塗布膜及びアルカリ性処理液処理により発生したスラッジ等が分離出来なくなる場合がある。40m/secを越えた場合は、ロータの羽根により支持体が破損され微細化が進むため、分離筒に設けられた孔の大きさによっては、微細化した支持体か除去され、回収率が大幅に低下する場合がある。
【0079】
図2に示す様に集められ積層されたシート状の記録材料をチップ状に断裁し、図1、図3、図4に示す回収装置を使用して、記録材料から支持体を回収することにより次の効果が得られる。
【0080】
1)シート状の記録材料を断裁しチップ状の記録材料とする際、周縁部に微細なヒビ、割れ目、支持体の層内破壊が発生しないチップが作製されるため、剥離した塗布膜、発生したスラッジ等の混入を防止出来るため、回収した支持体の純度が高くなり、記録材料の原材料として利用価値の向上が可能となった。
【0081】
2)積層した状態で断裁が行われるため、大量処理が可能となり、作業効率の向上が可能となった。
【0082】
本発明に係る支持体としては特に限定はなく、例えば特開2000−206646、同2001−290243、同2002−99063、同2002−116320、同2002−131872、同2002−250990、同2003−1774等に記載のものが挙げられる。
【0083】
本発明に係る、支持体を用いた記録材料としては、天然高分子バインダー及び合成高分子バインダーを使用して塗布膜を形成した記録材料のいずれも対象とすることが可能である。天然高分子バインダーを用いた記録材料としては、例えば医療用、印刷用、一般用のハロゲン化銀写真感光材料が挙げられる。
【0084】
本発明のポリエステル系樹脂支持体回収方法に適用する合成高分子バインダーを用いた記録材料としては、熱現像感光材料、放射線画像変換シート等が挙げられる。特に、特開平9−292671号、同9−304870号、同9−304871号、同9−304872号、同10−31282号、特開平10−62898号、特開平11−295844号、特開平11−352627号に開示されている熱現像感光材料が好ましい。
【0085】
本発明において、支持体上に形成される塗布膜に用いる透明又は半透明の天然高分子、合成高分子バインダーとしては次のものが挙げられる。天然高分子バインダーとしては例えば:ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、デンプン等が挙げられる。合成高分子バインダーとしては例えば:ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセタール類(例えば、ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラール)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート、セルロースエステル類、ポリアミド類が広く用いられる。
【0086】
塗布膜に用いるバインダーとしては、疎水性樹脂及び親水性樹脂のいずれでもよく、それぞれの適性に応じて使い分けられる。
【0087】
好ましい疎水性樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明の具体的な効果を示すが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0089】
実施例1
〈支持体の回収〉
図1に示す方法に従って順次処理を行った。
【0090】
〈チップ状の記録材料の準備〉
シート状記録材料(コニカミノルタエムジー(株)製SD−P(熱現像感光材料))を1000枚用意し、図1に示す裁断部(図2に示す第1裁断装置と第2裁断装置)により、10mm×10mm(外形サイズ14mm)に裁断しチップ状記録材料を作製し1−1とした。比較として、同じシート状記録材料を市販の破砕機により外形サイズ14mmに裁断しチップ状記録材料を作製し1−2とした。
【0091】
(アルカリ性処理液による処理条件の設定)
直径30cm、高さ50cmの円筒状の処理槽を用意し、アルカリ性処理液としては濃度1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を使用した。撹拌は撹拌羽根により行い、処理槽の固形分濃度は10%、処理温度は90℃とし、処理時間は60分とした。
(支持体の回収)
アルカリ性処理液の処理が終了した後、アルカリ性処理液を分離し、残された固形物(塗布膜が剥離された支持体、一部塗布膜が残存している支持体、アルカリ性処理液の処理で発生したスラッジ、剥離した塗布膜等が再付着した支持体等を含む)を図1に示す第1分離処理部の水分離手段、第2分離処理部、中和処理部、水洗・乾燥部による処理を行い支持体を回収し、試料101、102とした。
【0092】
(第1分離部の第1衝突型遠心脱水機による水分その他付着物等の分離)
湿式比重分離装置により分離された固形物に、更に水を加え固形分濃度を50質量%に調整し、図1、図4に示す第1衝突型遠心脱水機の下部より、流速5m/minの速度で混合液を導入し、不要物の一部を分離した。尚、使用した第1衝突型遠心脱水機は、外筒直径0.4m、高さ1.5m、回転ローターの直径0.3m、直径1.5mのものを使用し、回転速度(回転周速)は15m/secで行った。尚、分離筒は、直径2mm(チップ状のSD−Pの大きさ(外形サイズ)に対して約1/5)の円形の孔が3mm間隔でチドリ状に配列し開孔率40%のものを使用した。
(エアーサイクロンによる水分、その他付着物等の分離)
第1衝突型遠心脱水機の上部より、排出されてくる固形物をエアーサイクロンにより、付着している水分、その他付着物を分離した。
【0093】
〈第2分離処理部による固形物から塗布膜、スラッジ等の分離〉
第1分離処理部により分離された固形物から、支持体に残存している塗布膜、付着しているスラッジ及び塗布膜、分離せずに残っている剥離した塗布膜等を除去するために図1に示される第2分離処理部による処理を行った。
【0094】
(高剪断撹拌装置による混合)
高剪断撹拌装置としてはヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製FM20C/L、上羽根はYi羽根、下羽根はSo羽根)を使用した。分離された固形物を図1、図6に示されるヘンシェルミキサーによる処理を行うため、固形分濃度が50質量%になるように水を加えて調整した。調製した処理液を、羽根の回転速度(羽根の先端の周速度)は40m/sec、温度30℃で10分間ヘンシェルミキサーによる処理を行った。
【0095】
(第2衝突型遠心脱水機による分離)
ヘンシェルミキサーにより混合された混合液を、図1に示す第2衝突型遠心脱水機の下部より、流速5m/minの速度で混合液を導入し、固形物より支持体の分離を行った。尚、使用した第2衝突型遠心脱水機は、図4に示す第1衝突型遠心脱水機と同じ物を使用し、同じ条件で処理した。
【0096】
(中和処理部による処理)
図1に示す様な中和槽中で、処理液として、濃度0.5mol/Lの硫酸を使用し、固形分濃度を10%とし処理を行った。
(水洗・乾燥)
水洗は、図1に示す様にベルト式の搬送を行い、シャワーで、水量100L/min、搬送速度10m/minで行った。乾燥は、図1に示す様にベルト式の搬送を行い、温度70℃、乾燥風量100m3/minで行った。
【0097】
(評価)
得られた各試料101、102に付き、分子量測定、着色度測定、異物付着観察を行い、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表1に示す。尚、分子量測定は柴山科学機械製作所製粘度測定器SS−270LC−1を用いて測定し、得られた粘度から換算した。着色度測定は、各試料を使用し、日精樹脂工業(株)製射出成型機AU3Eを用いて、厚さ0.5mmのプレートを作製した。それぞれのプレートを(株)日立製作所製分光光度計U−3210を用いて測定した。
【0098】
分子量の評価ランク
○:基準試料に対する差が10%未満
△:基準試料に対する差が10〜30%未満
×:基準試料に対する差が30%以上
尚、評価に使用した基準試料には、製膜直後の支持体を使用した。
【0099】
着色度の評価ランク
○:基準試料に対する差が3%未満
△:基準試料に対する差が3〜5%未満
×:基準試料に対する差が5%以上
尚、評価に使用した基準試料には、製膜直後の支持体を細断し、各試料と同様に日精樹脂工業(株)製射出成型機AU3Eを用いて、厚さ0.5mmのプレートを作製した物を使用した。
【0100】
異物付着観察
各試料101、102につき、各10gを任意サンプリングし、目視により異物付着の有無を確認した。
【0101】
異物付着の評価ランク
○:回収した支持体の全てに異物付着が認められない
△:回収した支持体の1枚に直径0.1mm程度の大きさの異物が1〜4個付着している
×:回収した支持体の1枚に直径0.1mm程度の大きさの異物が5個以上付着している
【0102】
【表1】

【0103】
以上の結果より、使用前のPETと同じ純度の支持体が回収されたことが確認され、本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】チップ状記録材料から支持体の回収方法の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す裁断部の第1裁断装置と第2裁断装置の概略斜視図である。
【図3】図2の第2分離処理部の高剪断撹拌装置であるヘンシェルミキサーの概略図である。
【図4】図2に示す第2衝突型遠心脱水機の概略図である。
【図5】写真感光材料の概略断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 回収装置
2 裁断部
201 第1裁断装置
201a、201b、202c、202d 吸引板
201c、202b 載置台
201d、202e 押し板
201e、202f 裁断刃
202 第2裁断装置
3 処理部
301、601 処理装置
4 第1分離処理部
401 ハイドロサイクロン
402 第1衝突型遠心脱水機
5 第2分離処理部
501 高剪断撹拌装置
502 第2衝突型遠心脱水機
6 中和処理部
7 水洗・乾燥部
70 1水洗装置
702 乾燥装置
8 写真感光材料
8a ポリエステル系樹脂支持体
8b、8c 下塗り層
8d 感光層
8e 保護層
8f バッキング層
9 シート状記録材料
9a、9c 積層体
9b 短冊状記録材料
9d チップ状記録材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂支持体上に少なくとも1層の塗布膜を有するシート状記録材料をチップ状記録材料に裁断し、アルカリ性処理液により処理し、該チップ状記録材料から該塗布膜を分離・除去した後、該ポリエステル系樹脂支持体を回収するポリエステル系樹脂支持体回収方法において、
該シート状記録材料を積層した状態で裁断し、前記チップ状記録材料する裁断部と、
前記チップ状記録材料を該アルカリ性処理液により処理する処理部と、
第1分離処理部と、
第2分離処理部と、
中和処理部と、
水洗・乾燥部とを有する回収装置を用いることを特徴とするポリエステル系樹脂支持体回収方法。
【請求項2】
前記裁断部は、積層されたシート状記録材料を短冊状記録材料に裁断する第1裁断装置と、該短冊状記録材料をチップ状記録材料に裁断する第2裁断装置とを有していることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系樹脂支持体回収方法。
【請求項3】
前記チップ状記録材料は、外形サイズが0.1〜100mmの不定形であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂支持体回収方法。
【請求項4】
前記塗布膜が天然高分子系バインダー又は合成高分子系バインダーを使用していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のポリエステル系樹脂支持体回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−7465(P2006−7465A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184869(P2004−184869)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】