説明

ポリエン構造成分配合剤

【課題】ポリエン構造を有する成分は安定性が悪く、時間の経過においてその含有量が減少しやすいので、抗酸化剤であるブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエンの配合を行うが、抗酸化剤の使用をできるだけ抑え、長期においても安定性が高い製剤を得る。
【解決手段】ポリエン構造を有する成分と油、30重量%以上の水をリン脂質で乳化又は可溶化し、pH調節剤で、中性からアルカリ性に調整された製剤である。さらに、キレート剤、ソルビトールを配合する。光、酸素を遮断するため内側から酸素を透過するポリオレフィンなどの層、酸素吸収層、アルミ箔などの酸素を遮断する層を有する多層フィルムとの組み合わせが良好な製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌をすこやかに保つための化粧品、医薬部外品、医薬品等の皮膚に塗布する製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
美容において、ポリエン構造を有するユビキノン、ビタミンA、カロテノイドらの成分はしわ、たるみ、くすみなど外観的に老化とも思われる容姿を軽減、改善し、肌を健やかに保つ成分として好まれ、健康食品、医薬部外品、医薬品、化粧品に用いられている。
【0003】
しかし、元々、酸化に対して安定性が悪い物質であるため、異臭の発生、変色、肌につけると刺激を与えることさえある。よって、経時における安定性において充分な工夫が必要となる。
【0004】
通常、酸化防止剤や紫外線吸収剤、キレート剤を配合するなどの組成の工夫と空気を遮断するアルミニウムの層を有するチューブなど容器の工夫が行われている。
【0005】
組成の工夫の例として、リン酸、ホウ酸、クエン酸、グルタミン酸もしくはイプシロンアミノカプロン酸およびそれらのアルカリ金属塩から選ばれた緩衝剤成分と、非イオン界面活性剤およびキレート剤とを含有し、かつ液性がpH5ないしpH8に調整され、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートを材質とする密封容器に充填されていることを特徴とする安定な水性製剤の特願平3−293964、脂溶性ビタミン、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールをポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類に溶解し、次いで水及び水溶性ビタミンを加えて凍結乾燥することにより得られる静脈注射用総合ビタミン剤の特願平3−288555などがある。また、これらの包装形態も含んだ技術としては外気、光、金属との遮断を示した特願平06−326408、チューブの胴部はもとより、該胴部の張合せ部をもこれらと遮断を示した特開2002−370756、多層のフィルムである特開平11−123794などがある。
【0006】
【特許文献1】特願平3−293964
【特許文献2】特願平3−288555
【特許文献3】特願平06−326408
【特許文献4】特開2002−370756
【特許文献5】特開平11−123794
【0007】
従来の発明において安定性を向上する組成や包装形態があるが、レチノールのようなポリエン構造を有する成分のような安定性が悪い物質に対しては、さらなる安定化の発明が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ユビキノン、レチノイド、カロテノイド、スクワレンなどポリエン構造を有する成分を配合した製剤で時間の経過において安定性が高いことが目的とする製剤の課題となる。通常、特に酸化安定性が悪いレチノイド、カロテノイドは抗酸化剤であるブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエンの配合を行うが、これらは高配合にすると安全性を損なう懸念がある。よって、抗酸化剤の使用をできるだけ抑え、長期においても安定性が高い製剤が課題である。レチノイドにはレチノイン酸、レチノール、レチナールが含まれる。カロテノイドにはカロテン、リコピン、クリプトキサンチン、ルテイン、カプサンチン、クロセチン、ゼアキサンチン、ロドキサンチン、ビキシン、アスタキサンチンなどが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する為に、本発明による製剤は、ユビキノン、レチノイド、カロテノイド、スクワレンなどポリエン構造を有する成分を長期にわたり安定に配合できる組成としては、油成分、たとえば、オリーブ油、コメ胚芽油、ホホバ油、ヒマワリ油、スクワラン、パルミチン酸セチル、パルミチン酸オクチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリル、キャンデリラワックス、流動パラフィン、メチルフェニルシロキサン、ジメチコン、シクロペンタシロキサンなどと水、および、その乳化または可溶化にリン脂質、たとえば、リゾレシチン、レシチン、水素添加大豆リン脂質、水酸化大豆リン脂質、水素添加リゾレシチンなどを用い、pH調節剤、たとえば、エデト酸、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アルギニンなどの配合により中性〜アルカリ性へ調整した製剤であることを特徴としている。ユビキノン、レチノイド、カロテノイドは、その量の5倍量以上の油の配合が望ましい。これは、溶解により均一化が容易になるためである。
【0010】
皮膚外用剤の乳化組成物の多くは、非イオン性界面活性剤を用いているが、本発明は、乳化にリン脂質を用いている。油によってはリン脂質だけで乳化または可溶化が困難な場合など、POE鎖を有する界面活性剤やポリグリセリン鎖、糖、糖鎖を有する界面活性剤など他の界面活性剤を併用しても良いが、リン脂質を主体とする必要がある。
【0011】
これらポリエン構造を有する成分と油成分と水をリン脂質で乳化すると、多くは水中油型組成物になる。稀に油中水型組成物が得られる。前者の場合は、その組成物の、後者は水溶成分と水の相のpHが7〜9になるように調整する。pHの調整にはクエン酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グコール酸、アルギン酸、サリチル酸、グルタミン酸やその塩、カルボキシビニルポリマー、リジン、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミンなど特に限定するものではない。組成中の水分が30重量%未満でも調製は可能であるが、効果が弱くなる。
【0012】
油溶成分として過酸化物価が高い物質の配合は好ましくない。しかし、本発明に悪影響を及ぼさない範囲の配合量に抑えていればこれらも配合は可能となる。
【0013】
一般的に酸化安定性の向上に酸化防止剤が用いられる。酸化防止剤として特に安定性が悪いレチノイド、カロテノイドには、ブチルヒドロキシアニソールやジブチルヒドロキシトルエンの配合が望ましい。
【0014】
キレート剤、例えばエデト酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリシン、シュウ酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸とその塩などの一種以上を配合する。変臭を防ぐなど、安定性を向上する効果が得られる。
【0015】
本発明の組成からなる配合物は、酸素吸収層を含む多層容器を用いるとより安定性が向上する。多層とは、内側から酸素を透過するポリオレフィンなどの層、鉄系脱酸素剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層、アルミ箔などの酸素を遮断する層を最低必要とする。
【0016】
本発明の効果が損なわれない範囲で、通常、皮膚外用剤に使用されるエタノール、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、異性化糖などのアルコール類、リン酸リボフラビンナトリウム、アスコルビン酸、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、トコフェロールなどのビタミンおよびその誘導体、アスパラギン酸、カチオニン、メチオニン、リジン、トリメチルグリシンなどのアミノ酸およびその誘導体、ポリクオタニウム−51、キトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロースやヒアルロン酸ナトリウムなどの水溶性高分子、グリチルリチン酸およびその誘導体、グリチルレチン酸およびその誘導体、アラントインおよびその誘導体などの抗炎症剤、ナイロン末や架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、タルク、酸化鉄などの粉体、タール系色素などの色素、シコンエキス、ソウハクヒエキスなどの植物エキス、香料、パール剤、防腐剤や殺菌剤、菌代謝液、還元剤、γ−オリザノール、セラミド、トコトリエノール、ピロリドンカルボン酸ナトリウムなどの配合も可能である。
【0017】
クリーム、乳液、化粧水、エアゾール、ファンデーションなど剤型は限定しない。
【発明の効果】
【0018】
ユビキノン、レチノイド、カロテノイド、スクワレンなどポリエン構造を有する成分を配合した製剤で時間の経過においも安定性を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ユビキノン、レチノイド、カロテノイド、スクワレンなどポリエン構造を有する成分の一種または二種以上と油成分として不飽和結合を有しない炭化水素、エステル油、水素添加された天然油、天然油の一種または二種以上、水素添加レシチン、水素添加リゾレシチン、水酸化レシチンから選ばれるリン脂質の一種または二種以上、エデト酸、クエン酸、グリコール酸、アルギニン、水酸化ナトリウムなどpH調節剤の一種または二種以上、そして50重量%以上の水を含有するポリエン構造成分配合剤がより良好な安定性を示す。上記の油成分と水および水溶成分を均一に混合するため、リン脂質を界面活性剤として用いる。本発明では、リン脂質が乳化の主体となるため、不飽和結合を有するレシチンなどのリン脂質は、臭気の問題があり、使用感が悪くなる傾向がある。
【0020】
pH調節剤の種類、配合量は特に限定するものではないが、pHは7〜9に調節し、経時においてもこの範囲内に収まるように、種類と配合量を選定することが望ましい。pH6.5以下では本発明の効果が弱く、pH9.5以上では皮膚刺激が生じる場合がある。
【0021】
通常、使用される酸化防止剤は配合するべきである。特に安定性が悪いレチノイド、カロテノイドにはブチルヒドロキシアニソールまたはおよびジブチルヒドロキシトルエンの配合が望まれ、本発明は、その量を抑えることが出来る。還元剤の配合も可能であるが、未配合でも安定性を維持できる。
【0022】
エデト酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリシン、シュウ酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸とその塩などの一種または二種以上のキレート剤を配合する。キレート剤の種類、配合量は特に限定するものではない。
【0023】
水溶成分としてソルビトールを1重量%以上配合するとより安定性を増すことができる。1重量%未満の配合も可能であるが、その効果が明確に得られない。
【0024】
本発明の配合剤を製造、充填工程においても、空気、特に酸素の存在比率は0%に近い方が望ましい。これは、本発明の配合剤を迅速に調製できれば問題ないが、調製できるまでの劣化を防ぐためである。
【0025】
紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の配合も可能であるが、遮光され、空気と遮断でき、酸素が透過しない機能を有した容器を選ぶべきである。特に、本発明のポリエン構造成分配合剤は、酸素吸収層を含む多層容器を用いるとより安定性が向上する。多層とは、内側から酸素を透過するポリオレフィンなどの層、鉄系脱酸素剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層、アルミ箔などの酸素を遮断する層を最低必要とする。
【0026】
ユビキノン、レチノイド、カロテノイド、スクワレンなどポリエン構造を有する成分の安定性は均一ではない。レチノールやカロテン、リコピンなど酸化安定性が、特に悪い成分を含有する場合、本発明の効果が短期間で現れやすい。
【実施例】
【0027】
〔処方例〕
実施例として、美容液、クリーム、ジェル、化粧水、シート付きパックの浸透液、ヘアートニックの7点につき下記に例示する。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】

【0028】
本発明の請求項1の実施例1、請求項2の実施例2、請求項2と3の実施例3と比較例1、比較例2の処方を表8に示した。40℃6ケ月間放置後のレチノールの残存率(%)と臭い、外観の変化を表9に示した。実施例は両者とも90%以上レチノールが残存しているのに対し、比較例は残存率が低い。実施例2は実施例1より臭いが改善されている。実施例3はさらにレチノールの残存量が高くなっっている。比較例2の処方で安定性を向上させるには比較例3のようにブチルヒドロキシトルエンを増量する必要がある。

【表8】


【表9】

【0029】
請求項4の実施例4と比較例4および比較例5の処方を表10に示した。これらの組成物を容器内部からポリオレフィン層、ポリオレフィンと鉄系酸素吸収剤の層、アルミ箔の層、ポリマー層の多層フィルムに入れ、40℃6ケ月間放置後のレチノールの残存率(%)と臭い、外観の変化を表11に示した。実施例は両者とも90%以上レチノールが残存しているのに対し、比較例は残存率が低く、臭い、外観の変化も認められた。

【表10】


【表11】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユビキノン、レチノイド、カロテノイド、スクワレンなどポリエン構造を有する成分、油、30重量%以上の水、リン脂質、pH調節剤を含有し、リン脂質でポリエン構造を有する成分および油を乳化または可溶化し、中性からアルカリ性であることを特徴するポリエン構造成分配合剤。
【請求項2】
キレート剤を含有した請求項第一項記載のポリエン構造成分配合剤。
【請求項3】
ソルビトールを1重量%以上配合した請求項第一項記載のポリエン構造成分配合剤。
【請求項4】
内側から酸素を透過するポリオレフィンなどの層、鉄系脱酸素剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層、アルミ箔などの酸素を遮断する層を有する多層フィルムに封入された請求項第一項記載のポリエン構造成分配合剤。


【公開番号】特開2008−7472(P2008−7472A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180967(P2006−180967)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(399091120)株式会社ピカソ美化学研究所 (29)
【Fターム(参考)】