説明

ポリオレフィン系樹脂発泡シート

【課題】 本発明は、優れた衝撃強度、特に耐寒衝撃強度と、圧縮強度とを有するポリオ
レフィン系樹脂発泡シートを提供する。
【解決手段】 本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂100重
量部及び熱分解型発泡剤2〜20重量部、並びに、所定水素添加物1〜15重量部からな
るポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させて得られるポリオレフィン系樹脂発泡シートで
あって、見掛け密度が30〜130kg/m3 で、気泡のアスペクト比(Dz/Dxy)
が1.1〜4.0で、圧縮弾性率が1MPa以上で、−30℃における50%破壊エネル
ギーが0.5J以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性、特に寒冷時における耐衝撃性及び圧縮強度に優れたポリオレフィ
ン系樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリオレフィン系樹脂は、軽量性、耐熱性、断熱性、柔軟性、機械的強度な
どに優れていることから、各種断熱材、緩衝材、浮揚材などに幅広く用いられている。そ
して、最近では、自動車の天井、ドア、デッキなどの車両内装材として用いられたり、或
いは、建材畳の床材や床用断熱材などの複合建材として用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂発泡シートを上述のような用途に用いた場合、ポ
リオレフィン系樹脂発泡シートに重量物などによる大きな荷重が加わることがあり、この
ような時にポリオレフィン系樹脂発泡シートが凹んでしまったり、更に、荷重を除去した
にもかかわらず、ポリオレフィン系樹脂発泡シートが元の状態に回復せずに凹んだままの
状態となるといった問題点があり、この原因としては、ポリオレフィン系樹脂発泡シート
の圧縮強度が低いことが挙げられる。
【0004】
又、ポリオレフィン系樹脂発泡シートに重量物が衝突した場合に、ポリオレフィン系樹
脂発泡シートが破損することがあり、この問題は特に寒冷時に生じ易く、この原因として
は、ポリオレフィン系樹脂の耐衝撃性、特に耐寒時における耐衝撃性が低いことが挙げら
れる。
【0005】
そこで、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの圧縮強度や耐衝撃性を向上させる方法とし
て、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの発泡倍率を低下させることが考えられるが、ポリ
オレフィン系樹脂発泡シートの発泡倍率を低下させると軽量性が損なわれるという別の問
題が発生した。
【0006】
又、特許文献1には、エラストマー成分として軟質プロピレン−α−オレフィンブロッ
ク共重合体を所定量だけ含んだポリプロピレン系樹脂組成物を加熱発泡成形してなる発泡
成形体が提案されている。
【0007】
ところが、上記発泡成形体は、確かに圧縮強度に改善は見られるものの、寒冷時におけ
る耐衝撃性は未だ満足のいくものではなく、耐衝撃性、特に寒冷時における耐衝撃性及び
圧縮強度の双方を満たすポリオレフィン系樹脂発泡シートが所望されていた。
【特許文献1】特開平9−316251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた衝撃強度、特に耐寒衝撃強度と、圧縮強度とを有するポリオレフィン
系樹脂発泡シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂100重量部及び
熱分解型発泡剤2〜20重量部、並びに、下記(a)〜(d)の化合物からなる群から選
ばれた一種又は二種以上の水素添加物1〜15重量部からなるポリオレフィン系樹脂組成
物を架橋、発泡させて得られるポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、JIS K7
222に準拠して測定された見掛け密度が30〜130kg/m3 で、気泡のアスペクト
比(Dz/Dxy)が1.1〜4.0で、JIS K7181に準拠して測定された圧縮
弾性率が1MPa以上で、JIS K7211に準拠して測定された−30℃における5
0%破壊エネルギーが0.5J以上であることを特徴とする。
(a)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のランダム共重合体の水素添加物
(b)両端のブロック部がエチレン重合体ブロックで且つ中央のブロック部が共役ジエン
化合物の重合体ブロックであるブロック共重合体の水素添加物
(c)両端のブロック部がビニル芳香族化合物の重合体ブロックで且つ中央のブロック部
が共役ジエン化合物の重合体ブロックであるブロック共重合体の水素添加物
(d)エチレン重合体ブロック、共役ジエン化合物の重合体ブロック及びビニル芳香族化
合物の重合体ブロックからなる三元ブロック共重合体の水素添加物
【0010】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン系モノマーの重合体又は共
重合体であって、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、
直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂;ホモポリプロピレン、プロピレン
と他のオレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系樹脂;ポリブテン;エチレン−プ
ロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重
合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などのエチレンを主成分とする共重合体な
どが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよいが、ポリエチレン系樹脂
とポリプロピレン系樹脂とを併用することが好ましい。又、プロピレンと他のオレフィン
との共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体の何
れであってもよい。
【0011】
なお、プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン
、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン
、1−デセン等のα−オレフィン等が挙げられる。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを併用す
る場合、ポリプロピレン系樹脂の含有量は、少ないと、ポリオレフィン系樹脂発泡シート
の圧縮強度が低下する一方、多いと、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの耐衝撃性が低下
するので、ポリオレフィン系樹脂中、40〜95重量%が好ましい。同様の理由で、ポリ
エチレン系樹脂の含有量は、5〜60重量%が好ましい。
【0013】
又、本発明で用いられる熱分解型発泡剤としては、特に限定されず、例えば、アゾジカ
ルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、
トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)
などが挙げられ、単独で用いられても併用されてもよい。
【0014】
そして、ポリオレフィン系樹脂組成物中における熱分解型発泡剤の含有量は、少ないと
、ポリオレフィン系樹脂組成物が発泡しない虞れがある一方、多いと、ポリオレフィン系
樹脂組成物が過剰に発泡して、得られるポリオレフィン系樹脂発泡シートの機械的強度が
低下したり或いは発泡時に破泡して美麗なポリオレフィン系樹脂発泡シートを得ることが
できないことがあるので、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して2〜20重量部に
限定され、3〜15重量部が好ましい。
【0015】
更に、上記ポリオレフィン系樹脂組成物中には、上記(a)〜(d)の化合物からなる
群から選ばれた一種又は二種以上の水素添加物、即ち、(a)ビニル芳香族化合物と共役
ジエン化合物のランダム共重合体の水素添加物、(b)両端のブロック部がエチレン重合
体ブロックで且つ中央のブロック部が共役ジエン化合物の重合体ブロックであるブロック
共重合体の水素添加物、(c)両端のブロック部がビニル芳香族化合物の重合体ブロック
で且つ中央のブロック部が共役ジエン化合物の重合体ブロックであるブロック共重合体の
水素添加物、並びに、エチレン重合体ブロック、並びに、(d)共役ジエン化合物の重合
体ブロック及びビニル芳香族化合物の重合体ブロックからなる三元ブロック共重合体の水
素添加物よりなる群から選ばれた一種又は二種以上の水素添加物が含有されており、この
水素添加物として、(a)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のランダム共重合体の
水素添加物と、(b)両端のブロック部がエチレン重合体ブロックで且つ中央のブロック
部が共役ジエン化合物の重合体ブロックであるブロック共重合体の水素添加物とを併用す
ることが好ましい。
【0016】
先ず、(a)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のランダム共重合体の水素添加物
(以下、「ランダム共重合体水素添加物」という)について説明する。上記ビニル芳香族
化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルベン
ゼン、ビニルピリジンなどが挙げられ、スチレンが好ましい。
【0017】
又、上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−
メチル−1,3−ブタジエン)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブ
タジエンなどが挙げられ、ランダム共重合体水素添加物がポリプロピレン系樹脂に対する
相溶性に優れていることから、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3−ブ
タジエンがより好ましい。
【0018】
従って、ランダム共重合体水素添加物としては、スチレンと1,3−ブタジエンのラン
ダム共重合体の水素添加物が好ましい。
【0019】
更に、上記ランダム共重合体水素添加物中におけるビニル芳香族化合物成分の含有量は
、少ないと、ポリエチレン系樹脂との相溶性が低下することがある一方、多いと、ポリプ
ロピレン系樹脂との相溶性が低下することがあるので、3〜50重量%が好ましく、5〜
30重量%がより好ましい。同様の理由で、上記ランダム共重合体水素添加物中における
共役ジエン化合物成分の含有量は、50〜97重量%が好ましく、70〜95重量%がよ
り好ましい。
【0020】
なお、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のランダム共重合体の水素添加物として
は、JSR社から商品名「ダイナロン1320P」「ダイナロン1321P」「ダイナロ
ン2324P」で市販されている。
【0021】
次に、(b)両端のブロック部がエチレン重合体ブロックで且つ中央のブロック部が共
役ジエン化合物の重合体ブロックであるブロック共重合体の水素添加物(以下、「第一ブ
ロック共重合体水素添加物」という)について説明する。この第一ブロック共重合体水素
添加物は、A−B−A型の所謂、サンドイッチ型ブロック共重合体であり(Aはエチレン
重合体ブロックで、Bは共役ジエン化合物の重合体ブロックである)、両端のブロック部
がエチレン重合体ブロックで且つ中央のブロック部がブタジエン重合体ブロックであるブ
ロック共重合体の水素添加物が好ましい。
【0022】
第一ブロック共重合体水素添加物を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、1,
3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、1,3−ペンタジエ
ン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられ、第一ブロック共重合体水素
添加物がポリプロピレン系樹脂に対する相溶性に優れていることから、1,3−ブタジエ
ン、イソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
【0023】
更に、第一ブロック共重合体水素添加物中における共役ジエン化合物成分の含有量は、
少ないと、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が低下することがある一方、多いと、ポリエ
チレン系樹脂との相溶性が低下することがあるので、10〜90重量%が好ましく、30
〜70重量%がより好ましい。同様の理由で、第一ブロック共重合体水素添加物中におけ
るエチレン成分の含有量は、10〜90重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ま
しい。
【0024】
なお、両端のブロック部がエチレン重合体ブロックで且つ中央のブロック部が共役ジエ
ン化合物の重合体ブロックであるブロック共重合体の水素添加物としては、JSR社から
商品名「ダイナロン6200P」で市販されている。
【0025】
続いて、(c)両端のブロック部がビニル芳香族化合物の重合体ブロックで且つ中央の
ブロック部が共役ジエン化合物の重合体ブロックであるブロック共重合体の水素添加物(
以下、「第二ブロック共重合体水素添加物」という)について説明する。この第二ブロッ
ク共重合体水素添加物は、上記(b)のブロック共重合体と同様に、a−b−a型の所謂
、サンドイッチ型ブロック共重合体であり(aはビニル芳香族化合物の重合体ブロックで
あり、bは共役ジエン化合物の重合体ブロックである)、両端のブロック部がスチレン重
合体ブロックで且つ中央のブロック部がブタジエン重合体ブロックであるブロック共重合
体の水素添加物が好ましい。
【0026】
第二ブロック共重合体水素添加物を構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、ス
チレン、メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルピリジンなど
が挙げられ、スチレンが好ましい。
【0027】
又、第二ブロック共重合体水素添加物を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、
1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、1,3−ペンタ
ジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられ、ブロック共重合体の水
素添加物がポリプロピレン系樹脂に対する相溶性に優れていることから、1,3−ブタジ
エンとイソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
【0028】
そして、第二ブロック共重合体水素添加物中におけるビニル芳香族化合物成分の含有量
は、少ないと、ポリエチレン系樹脂との相溶性が低下することがある一方、多いと、ポリ
プロピレン系樹脂との相溶性が低下することがあるので、3〜50重量%が好ましく、5
〜30重量%がより好ましい。同様の理由で、第二ブロック共重合体水素添加物中におけ
る共役ジエン化合物成分の含有量は、50〜97重量%が好ましく、70〜95重量%が
より好ましい。
【0029】
なお、両端のブロック部がビニル芳香族化合物の重合体ブロックで且つ中央のブロック
部が共役ジエン化合物の重合体ブロックであるブロック共重合体の水素添加物としては、
JSR社から商品名「ダイナロン8601P」で、クレイトンポリマー社から「クレイト
ンG1657」「クレイトンG1726」「クレイトンG1730」で市販されている。
【0030】
更に、(d)エチレン重合体ブロック、共役ジエン化合物の重合体ブロック及びビニル
芳香族化合物の重合体ブロックからなる三元ブロック共重合体の水素添加物(以下、「三
元共重合体水素添加物」という)について説明する。
【0031】
三元共重合体水素添加物を構成している共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−
ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、1,3−ペンタジエン、
2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられ、三元共重合体水素添加物がポリ
プロピレン系樹脂に対する相溶性に優れていることから、1,3−ブタジエンとイソプレ
ンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
【0032】
更に、三元共重合体水素添加物中における共役ジエン化合物成分の含有量は、少ないと
、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が低下することがある一方、多いと、ポリエチレン系
樹脂との相溶性が低下することがあるので、10〜80重量%が好ましく、30〜70重
量%がより好ましい。
【0033】
又、三元共重合体水素添加物を構成しているビニル芳香族化合物としては、例えば、ス
チレン、メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルピリジンなど
が挙げられ、スチレンが好ましい。
【0034】
そして、三元共重合体水素添加物中におけるビニル芳香族化合物成分の含有量は、少な
いと、ポリエチレン系樹脂との相溶性が低下することがある一方、多いと、ポリプロピレ
ン系樹脂との相溶性が低下することがあるので、3〜40重量%が好ましく、5〜20重
量%がより好ましい。
【0035】
更に、三元共重合体水素添加物中におけるエチレン成分の含有量は、少ないと、ポリエ
チレン系樹脂との相溶性が低下することがある一方、多いと、ポリプロピレン系樹脂との
相溶性が低下することがあるので、10〜70重量%が好ましく、20〜60重量%がよ
り好ましい。
【0036】
なお、エチレン重合体ブロック、共役ジエン化合物の重合体ブロック及びビニル芳香族
化合物の重合体ブロックからなる三元ブロック共重合体の水素添加物としては、JSR社
から商品名「ダイナロン4600P」で市販されている。
【0037】
そして、上記水素添加物(a)〜(d)の水添率は、少ないと、ポリオレフィン系樹脂
との相溶性が低下することがあるので、90%以上が好ましく、97%以上がより好まし
い。なお、水素添加物(a)〜(d)の水添率とは、水素添加する前の共重合体中に存在
する二重結合に対する水素添加された二重結合の百分率をいう。
【0038】
又、上記水素添加物(a)〜(d)のポリオレフィン系樹脂組成物中における総含有量
は、少ないと、水素添加物を添加した効果が発現せず、得られるポリオレフィン系樹脂発
泡シートの寒冷時における耐衝撃性が低下する一方、多いと、得られるポリオレフィン系
樹脂発泡シートが柔らかくなり過ぎて圧縮強度が低下するので、ポリオレフィン系樹脂1
00重量部に対して1〜15重量部に限定され、3〜10重量部が好ましい。
【0039】
更に、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートにおけるJIS K7222に準拠し
て測定された見掛け密度は、小さいと、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの気泡壁の厚み
が薄くなり、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの圧縮強度及び寒冷時の耐衝撃性が低下す
る一方、大きいと、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの圧縮強度が高くなりすぎて実用上
、使用し難くなるので、30〜130kg/m3 に限定され、40〜100kg/m3
好ましい。
【0040】
又、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートにおける気泡のアスペクト比(Dz/D
xy)は、小さいと、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの気泡が略球状となり、ポリオレ
フィン系樹脂発泡シートの圧縮強度が低下する一方、大きいと、ポリオレフィン系樹脂発
泡シートの断熱性が低下したり或いは圧縮強度が高くなり過ぎて緩衝性が低下するので、
1.1〜4.0に限定され、1.3〜3.0が好ましい。
【0041】
ここで、ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおける気泡のアスペクト比(Dz/Dxy
)は下記の要領で測定されたものをいう。先ず、ポリオレフィン系樹脂発泡シートをその
厚み方向に切断し、図1のように、この切断面に露出している気泡断面を少なくとも50
個、抽出する。
【0042】
次に、各気泡断面におけるポリオレフィン系樹脂発泡シートの厚み方向の最大長さDz
とポリオレフィン系樹脂発泡シートの厚み方向に対して垂直で且つ切断面に沿った方向の
最大長さDxyとを測定し、各気泡断面のアスペクト比(Dz/Dxy)を算出する。こ
こで、気泡断面の最大長さDz,Dxyは、図1に示したように、測定方向における任意
の気泡内壁部分間を結ぶ直線のうち最長の直線長さをいう。なお、測定対象となる直線は
、その全長が全て気泡内を通過する直線のみとする。
【0043】
そして、得られた各気泡断面のアスペクト比(Dz/Dxy)の平均値を算出して、ポ
リオレフィン系樹脂発泡シートの気泡のアスペクト比(Dz/Dxy)とする。なお、ポ
リオレフィン系樹脂発泡シートの厚み方向とは、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面
に対して直交する方向をいう。
【0044】
上記測定において測定の対象となる気泡は、切断面において隣接する気泡と連通したり
することなく完全に独立した状態の気泡のみであり、例えば、切断面において隣接する気
泡同士がそれら対向する部分において連通して一体化している気泡や、端部がポリオレフ
ィン系樹脂発泡シートの表面に達しているような気泡などは測定対象から除外される。
【0045】
更に、ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおけるJIS K7181に準拠して測定さ
れた圧縮弾性率は、小さいと、重量物などによる大きな荷重が加わった場合、ポリオレフ
ィン系樹脂発泡シートが凹んだり或いは荷重を除去した後も凹んだままの状態となること
があるので、1MPa以上に限定され、大き過ぎると、ポリオレフィン系樹脂発泡シート
の柔軟性が低下することがあるので、1〜10MPaが好ましい。
【0046】
又、ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおけるJIS K7211に準拠して測定され
た−30℃での50%破壊エネルギーは、小さいと、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの
寒冷時の耐衝撃性が低下するので、0.5J以上が好ましく、大きすぎると、ポリオレフ
ィン系樹脂発泡シートの柔軟性が低下することがあるので、0.5〜5Jが好ましい。
【0047】
なお、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートには、その物性を損なわない範囲内に
おいて、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化マグネシウムなどの気泡形成剤、フェノ
ール系、リン系、アミン系、硫黄系などの酸化防止剤、金属害防止剤、ヘキサブロモビフ
ェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテルなどのハロゲン系難燃剤、ポリリン酸ア
ンモニウム、トリメチルフォスフェートなどのリン系難燃剤、充填剤、帯電防止剤、安定
剤、顔料などの添加剤が添加されてもよい。
【0048】
次に、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法について説明する。ポリオ
レフィン系樹脂発泡シートの製造方法としては、特に限定されず、例えば、ポリオレフィ
ン系樹脂、熱分解型発泡剤及び上記(a)〜(d)の化合物からなる群から選ばれた一種
又は二種以上の水素添加物を添加して所定量づつ押出機に供給し溶融混練して所望形状の
発泡性樹脂シートを形成し、この発泡性樹脂シートの両面に表面材を積層する前或いは積
層した後に発泡性樹脂シートを架橋させ、発泡させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを
得る方法が挙げられる。なお、ポリオレフィン系樹脂を押出機中にて架橋させてもよい。
【0049】
上記発泡性樹脂シートの両面に積層する表面材としては、発泡性樹脂シートがその面方
向に発泡するのを抑制し、発泡性樹脂シートをその厚み方向に優先的に発泡させて、得ら
れるポリオレフィン系樹脂発泡シートの気泡がその厚み方向に長い紡錘形状となり、アス
ペクト比(Dz/Dxy)が所定範囲内となるように発泡性樹脂シートの発泡を制御する
ことができるものであれば、特に限定されない。このような表面材としては、例えば、合
成樹脂シート、不織布、金属板などが挙げられる。
【0050】
又、上記発泡性樹脂シートを架橋させる方法としては、ポリオレフィン系樹脂中に架橋
剤を添加し、この架橋剤によってポリオレフィン系樹脂を架橋させる方法や、発泡性樹脂
シートに電離性放射線を照射する方法などが挙げられる。
【0051】
上記架橋剤としては、特に限定されず、例えば、p−キノンジオキシム、p,p’−ジ
ベンゾイルキノンジオキシムなどのジオキシム化合物;ビスマレイミド化合物;ジビニル
ベンゼン;トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタ
クリレートなどの(メタ)アクリル系多官能モノマー;キノン化合物;2,4−ジクロロ
ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、
クミルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ジ(t−
ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−
ブチルパーオキシ)バレレート、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)
ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−
ブチルパーオキシクメンなどの有機過酸化物などが挙げられ、p−キノンジオキシム、p
,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、トリメチロールプロパントリメタクリレート、
1,9−ノナンジオールジメタクリレートが好ましい。なお、架橋剤は単独で用いられて
も二種以上が併用されてもよい。
【0052】
そして、ポリオレフィン系樹脂組成物中における架橋剤の含有量は、少ないと、架橋が
不充分となって発泡時に破泡が生じて美麗な発泡シートを得ることができない一方、多い
と、架橋が過度に施されてしまい発泡が困難となるので、ポリオレフィン系樹脂100重
量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜6重量部がより好ましい。そして
、架橋剤として(メタ)アクリル系多官能モノマーを用いる場合には、架橋を促進するた
めに発泡性樹脂シートに電離性放射線を照射してもよい。なお、上記電離性放射線として
は、例えば、α線、β線、γ線、電子線などが挙げられ、電子線が好ましい。
【発明の効果】
【0053】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂100重量部及び
熱分解型発泡剤2〜20重量部、並びに、下記(a)〜(d)の 化合物からなる群から
選ばれた一種又は二種以上の水素添加物1〜15重量部からなるポリオレフィン系樹脂組
成物を架橋、発泡させて得られるポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、JIS K
7222に準拠して測定された見掛け密度が30〜130kg/m3 で、気泡のアスペク
ト比(Dz/Dxy)が1.1〜4.0で、JIS K7181に準拠して測定された圧
縮弾性率が1MPa以上で、JIS K7211に準拠して測定された−30℃における
50%破壊エネルギーが0.5J以上であることを特徴とし、特定の水素添加物が所定量
、含有されており、この水素添加物の添加によってポリオレフィン系樹脂発泡シートは、
優れた圧縮強度を有すると共に、優れた耐衝撃性、特に、寒冷時にあっても良好な耐衝撃
性を有する。
【0054】
そして、上記ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおいて、ポリオレフィン系樹脂が、ポ
リエチレン系樹脂5〜60重量%及びポリプロピレン系樹脂40〜95重量%からなる場
合には、ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、より優れた圧縮強度及び耐衝撃性を有する

【0055】
更に、上記ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおいて、ビニル芳香族化合物がスチレン
で且つ共役ジエン化合物がブタジエンである場合には、上記水素添加物(a)〜(d)の
添加によってポリオレフィン系樹脂発泡シートの耐衝撃性、特に寒冷時における耐衝撃性
及び圧縮強度をより優れたものとすることができ、種々の用途に更に幅広く用いることが
できる。
【実施例】
【0056】
(実施例1〜6、比較例1〜5)
ポリプロピレン系樹脂としてエチレン−プロピレンランダム共重合体(日本ポリプロピ
レン社製 商品名「ノバテックPP EG7」、メルトフローレイト:1.7g/10分
、密度:0.9g/cm3 、エチレン含有量:4重量%)、ポリエチレン系樹脂として直
鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 商品名「ノバテックPE UF340
」、メルトフローレイト:1.9g/10分、密度:0.92g/cm3 )、架橋剤とし
てp−キノンジオキシム及び熱分解型発泡剤としてアゾジカルボンアミド、並びに、水素
添加物として、スチレンと1,3−ブタジエンのランダム共重合体の水素添加物(JSR
社製 商品名「ダイナロン1320P」、スチレン成分:10重量%、1,3−ブタジエ
ン成分:90重量%、水添率:98%以上、表1では「ランダム共重合体水素添加物」と
した)、両端のブロック部がエチレン重合体ブロックで且つ中央のブロック部が1,3−
ブタジエンの重合体ブロックであるブロック共重合体の水素添加物(JSR社製 商品名
「ダイナロン6200P」、エチレン成分:30重量%、1,3−ブタジエン成分:70
重量%、水添率:98%以上、表1では「第一ブロック共重合体水素添加物」とした)、
両端のブロック部がスチレンの重合体ブロックで且つ中央のブロック部が1,3−ブタジ
エンの重合体ブロックであるブロック共重合体の水素添加物(JSR社製 商品名「ダイ
ナロン8601P」、スチレン成分:15重量%、1,3−ブタジエン成分:85重量%
、水添率:98%以上、表1では「第二ブロック共重合体水素添加物」とした)、並びに
、エチレン重合体ブロック、1,3−ブタジエンの重合体ブロック及びスチレンの重合体
ブロックからなる三元ブロック共重合体の水素添加物(JSR社製 商品名「ダイナロン
4600P」、エチレン成分:50重量%、1,3−ブタジエン成分:30重量%、スチ
レン成分:20重量%、水添率:98%以上、表1では「三元共重合体水素添加物」とし
た)を表1に示した所定量づつ押出機に供給して樹脂温185℃にて溶融混練してシート
状に押出し、厚さが0.4mmの発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを製造した。なお、
ランダム共重合体水素添加物は化1、第一ブロック共重合体水素添加物は化2、第二ブロ
ック共重合体水素添加物は化3、三元共重合体水素添加物は化4に示した分子構造を有し
ていた。
【0057】
【化1】

【0058】
【化2】

【0059】
【化3】

【0060】
【化4】

【0061】
そして、上記発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの両面にポリテトラフルオロエチレン
ーシートを積層した。この発泡性ポリオレフィン系樹脂発泡シートを250℃に加熱して
、ポリテトラフルオロエチレンシートによって発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの面方
向の発泡を抑制する一方、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの厚み方向の発泡を優先さ
せて、厚みが6mmのポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。なお、ポリオレフィン系
樹脂発泡シートの両面に積層された状態のポリテトラフルオロエチレンシートは剥離除去
した。
【0062】
得られたポリオレフィン系樹脂発泡シートのJIS K7222に準拠して測定された
見掛け密度、気泡のアスペクト比(Dz/Dxy)、JIS K7181に準拠して測定
された圧縮弾性率、及び、JIS K7211に準拠して測定された−30℃における5
0%破壊エネルギーを測定し、その結果を表1に示した。
【0063】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シートの断面気泡の一例を示した模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100重量部及び熱分解型発泡剤2〜20重量部、並びに、下記(
a)〜(d)の化合物からなる群から選ばれた一種又は二種以上の水素添加物1〜15重
量部からなるポリオレフィン系樹脂組成物を架橋、発泡させて得られるポリオレフィン系
樹脂発泡シートであって、JIS K7222に準拠して測定された見掛け密度が30〜
130kg/m3 で、気泡のアスペクト比(Dz/Dxy)が1.1〜4.0で、JIS
K7181に準拠して測定された圧縮弾性率が1MPa以上で、JIS K7211に
準拠して測定された−30℃における50%破壊エネルギーが0.5J以上であることを
特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シート。
(a)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のランダム共重合体の水素添加物
(b)両端のブロック部がエチレン重合体ブロックで且つ中央のブロック部が共役ジエン
化合物の重合体ブロックであるブロック共重合体の水素添加物
(c)両端のブロック部がビニル芳香族化合物の重合体ブロックで且つ中央のブロック部
が共役ジエン化合物の重合体ブロックであるブロック共重合体の水素添加物
(d)エチレン重合体ブロック、共役ジエン化合物の重合体ブロック及びビニル芳香族化
合物の重合体ブロックからなる三元ブロック共重合体の水素添加物
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂5〜60重量%及びポリプロピレン系樹脂
40〜95重量%からなることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡
シート。
【請求項3】
ビニル芳香族化合物がスチレンで且つ共役ジエン化合物がブタジエンであることを特徴と
する請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。

【図1】
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【公開番号】特開2006−52263(P2006−52263A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233470(P2004−233470)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】