説明

ポリオレフィン系樹脂積層発泡体

【課題】 本発明は、電子製品、精密機器、回路基盤、シリコン半導体、ディスプレイ用ガラス基板などの精密電子機器の包装材料として好適なものであって、精密電子機器に異物が転写しても水洗いや、水を含んだ布で拭う等の精密電子機器表面の汚染物質洗浄時に優れた洗浄性能を付与することができる、ポリオレフィン系樹脂積層発泡体を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のポリオレフィン系樹脂積層発泡体は、ポリオレフィン系樹脂発泡体層の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂層が積層されてなるポリオレフィン系樹脂積層発泡体であり、ポリアルキレンオキサイド及び親水親油バランス(HLB値)8以上の界面活性剤から選択される1以上の親水性化合物が、前記ポリオレフィン系樹脂層に該樹脂層を構成しているポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部の割合で添加されていると共に、前記親水性化合物が、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体層に実質的に無添加であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系樹脂積層発泡体に関し、詳しくは電子製品、精密機器、回路基盤、シリコン半導体、ディスプレイ用ガラス基板などの電子精密機器の緩衝材、包装材として好適に使用可能なポリオレフィン系樹脂積層発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、柔軟性及び緩衝性に富み、被包装物の損傷、傷つきを防止できることから、家電製品、ガラス器具、陶器等の包装材料として広く使用されてきた。更に、近年、薄型テレビの開発、需要拡大に伴い、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートがディスプレイ用ガラス基板の包装材料として使用されるようになったことにより、新たな技術課題が創出され、様々な技術改良が該押出発泡シートになされてきている。このような発泡シートとしては、例えば、特許文献1に記載されたガラス基板用間紙がある。
【0003】
【特許文献1】特開2007−262409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ディスプレイ用ガラス基板等の電子精密機器には、非常に高いレベルの表面清浄性が要求される。しかし、該ガラス基板の包装材料として前記押出発泡シートを使用すると、押出発泡シート製造に使用される添加剤や原材料に起因するブリードアウト物質が押出発泡シート表面にブリードアウトすることがあり、該ブリードアウト物質が電子精密機器に転写されて、電子精密機器表面を汚染してしまう虞がある。また、押出発泡シートは静電気を蓄えて帯電し易いため、空気中の塵や埃を押出発泡シート表面に引き寄せてしまう性質があり、押出発泡シートで電子精密機器を包装すると、その引き寄せられた塵や埃も電子精密機器に転写されて、電子精密機器表面を汚染してしまう虞がある。
【0005】
一方、電子精密機器の場合、其の表面清浄性を高めるために、押出発泡シート等の包装材料を取り外した後の表面洗浄工程は必要不可欠であり、該表面を水で洗浄したり、水を含有するシートで拭くことにより、付着した塵、埃、ブリードアウト物質などの異物を除去することが行われている。従って、電子精密機器に前記異物が付着しても、水で洗浄等するだけで除去できれば、電子精密機器の表面清浄性を保つことができる。ところが、異物の種類、洗浄方法によっては、異物の除去が十分できない場合もあり、そのことが製品不良の原因となることがある。
このような発泡シートによる電子精密機器等の表面汚染の課題は十分な解決をみていない。
【0006】
本発明は、電子製品、精密機器、回路基盤、シリコン半導体、ディスプレイ用ガラス基板などの精密電子機器の包装材料として好適なものであって、精密電子機器に異物が転写しても水洗いや、水を含んだ布で拭う等の精密電子機器表面の汚染物質洗浄時に優れた洗浄性能を付与することができる、ポリオレフィン系樹脂積層発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、親水親油バランス(HLB値)8〜20の親水性化合物をポリオレフィン系樹脂発泡体に含有させると、後工程で欠かせない洗浄工程において、精密電子機器に対する水等による洗浄性が向上し、電子精密機器に従来の簡易な洗浄ではおとし難い異物が転写しても、水等で洗浄するだけで容易に除去できることを見出した。しかし、同時に該親水性化合物は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が悪いため、発泡体を製造することはできるものの、発泡性が低下するので製造の難度が高くなるという課題、更に、親水性化合物は一般に低分子量であるため、その添加量によっては発泡体自体の機械的強度が低下してしまうという課題が新たに発生した。
【0008】
特に、発泡体が液晶ディスプレイ用のガラス基板の間紙として使用される場合には、十分なコシの強さが要求されるので、発泡体に親水性化合物を添加すると、コシの強さを補うために、見かけ密度を高めるなどの対処が必要であった。
【0009】
一方、親水性化合物による洗浄性を向上させるためには、親水性化合物は発泡体全体に含有させる必要はなく、被包装物に接する発泡体の表面付近に、洗浄性を発揮させることができる程度の量の親水性化合物を含有させておけば十分である。そこで、本発明者等は、発泡体の表面に非発泡の樹脂層を設け、該樹脂層に親水性化合物を添加することを試み、本発明に到達した。
【0010】
本発明によれば、以下に示すポリオレフィン系樹脂積層発泡体が提供される。
[1] ポリオレフィン系樹脂発泡体層の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂層が積層されてなるポリオレフィン系樹脂積層発泡体において、
ポリアルキレンオキサイド及び親水親油バランス(HLB値)8以上の界面活性剤から選択される1以上の親水性化合物が、前記ポリオレフィン系樹脂層に該樹脂層を構成しているポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部の割合で添加されていると共に、
前記親水性化合物が、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体層に実質的に無添加あることを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
[2] 前記ポリアルキレンオキサイドがポリエチレンオキサイドであることを特徴とする前記1に記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
[3] 前記ポリアルキレンオキサイドが温度20℃で液状であることを特徴とする前記1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
[4] 前記親水性化合物の数平均分子量が1000以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
[5] 前記ポリオレフィン系樹脂層にポリオレフィン系樹脂と前記親水性化合物との相溶化剤が添加されていることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
[6] ポリオレフィン系樹脂積層発泡体への前記親水性化合物の添加量が、該積層発泡体100重量部に対して2重量部以下であることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
[7] 前記ポリオレフィン系樹脂発泡体層が押出発泡体であり、見掛け密度が10〜200g/L、厚みが0.2〜2mmであることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
[8] 前記ポリオレフィン樹脂層が共押出によりポリオレフィン系樹脂発泡体層に積層されていることを特徴とする前記7に記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
[9] 前記ポリオレフィン系樹脂層に高分子型帯電防止剤がポリオレフィン系樹脂100重量部に対して2〜30重量部の割合で添加されており、該樹脂層の表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)であることを特徴とする前記1〜8のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
[10] 前記高分子型帯電防止剤がポリエーテルとポリオレフィンとのブロック共重合体を主成分とする帯電防止剤であることを特徴とする前記9に記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリオレフィン系樹脂積層発泡体は、アルキレンオキサイド及び親水親油バランス(HLB値)8以上の界面活性剤から選択される1以上の親水性化合物が特定量添加されているので、積層発泡体から塵、埃、ブリードアウト物質などの異物が、電子製品、精密機器、回路基盤、シリコン半導体、ディスプレイ用ガラス基板などの電子精密機器表面に転写された場合であっても、異物と共に該化合物が電子精密機器表面に転写されることにより、電子精密機器を水で洗浄したり、水を含有するシートで拭くなどの簡易な洗浄だけで、異物を該化合物と共に容易に除去することができる。特に電子精密機器表面に転写した場合に、ナトリウムイオン等の金属イオンやオリゴマー物質などの洗浄困難な異物が、積層発泡体から電子精密機器表面に転写するようなことがあっても、該化合物が存在すると簡易な洗浄により電子精密機器表面から容易に除去することができる。
更に、本発明のポリオレフィン系樹脂積層発泡体においては、親水性化合物が樹脂層には添加されているが、発泡体層には実質的に添加されていないので、親水性化合物が発泡性を阻害することがないため、得られた積層発泡体は優れた機械的強度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のポリオレフィン系樹脂積層発泡体について詳細に説明する。
本発明のポリオレフィン系樹脂積層発泡体(以下、単に積層発泡体ともいう。)は、ポリオレフィン系樹脂発泡体層(以下、単に発泡体層ともいう。)と、該発泡体層の少なくとも片面に積層されたポリオレフィン系樹脂層(以下、単に樹脂層ともいう。)とからなる積層体である。
【0013】
本発明の積層発泡体を構成する発泡体層は、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする発泡体である。
該ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン成分単位が50モル%以上の樹脂である。該ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、表面硬度が低く柔軟性に優れ、被包装体の表面保護に優れることから好ましく用いられ、特にポリエチレン系樹脂が、より柔軟性に優れ、被包装体の表面保護性により優れているので好ましい。
【0014】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン成分単位が50モル%以上の樹脂が挙げられ、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、さらにそれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0015】
これらのポリエチレン系樹脂の中でも、発泡性を考慮すると、密度が935g/L以下のポリエチレン系樹脂を主成分とするものが好ましい。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を用いることが好ましく、発泡性が特に良好な低密度ポリエチレンがより好ましい。
尚、密度が935g/L以下のポリエチレン系樹脂を「主成分」とするとは、該ポリエチレン樹脂の含有量が発泡体層の全重量の50重量%以上であることをいう。また、ポリエチレン系樹脂の密度の下限は概ね890g/Lである。
【0016】
また、前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィン等の成分との共重合体が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えば、エチレンや、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセンなどの炭素数4〜10のα−オレフィンが例示される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体等であってもよく、さらに二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。なお、上記共重合体中のプロピレンと共重合可能な他の成分は、25重量%以下、特に15重量%以下の割合で含有されていることが好ましい。なお、該共重合可能な他の成分の含有量の下限値としては共重合体を選択する理由等を勘案して概ね0.3重量%である。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
また、上記ポリオレフィン系樹脂の融点は概ね100〜170℃である。該ポリオレフィン系樹脂の融点は、JIS K7121−1987に準拠する方法により測定することができる。即ちJIS K7121−1987における試験片の状態調節(2)の条件(但し、冷却速度は10℃/分)により前処理を行い、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得る。そして得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。尚、融解ピークが2つ以上現れる場合には、主融解ピーク(最も面積の大きいピーク)の頂点の温度とする。尚、最も大きな面積を有するピークのピーク面積に対して80%以上のピーク面積を有するピークが他に存在する場合には、該ピークの頂点温度と最も面積の大きいピークの頂点の温度との相加平均値を融点として採用する。
【0018】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂には、本発明における発泡体層の目的及び効果を阻害しない範囲で、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、エチレンプロピレンゴム等のエラストマー、ポリブテン等のブテン系樹脂等が添加されていてもよい。その場合の添加量は40重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、10重量%以下が特に好ましい。
【0019】
また、ポリオレフィン系樹脂には、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、例えば、気泡調整剤、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、抗菌剤、収縮防止剤等の機能性添加剤、無機充填剤等の添加剤を含有させることができる。
【0020】
本発明の積層発泡体の厚みに特に制限はないが、発泡体層が押出発泡体である場合、その厚みは、概ね0.2〜100mmであり、シート状のもので概ね0.2〜20mmである。なお、シート状の押出発泡体の厚みが薄すぎると、電子精密機器に対する緩衝性、表面保護性が不十分になり、厚みが厚すぎると電子精密機器の積載量が損なわれる。このような観点から、シート状の押出発泡体の厚みは、0.2〜2.0mm、0.2〜1.5mm、更に0.3〜1.0mm、特に0.3〜0.7mmが好ましい。
【0021】
本発明の積層発泡体の見掛け密度は好ましくは10〜200g/Lである。発泡体層が押出発泡体である場合の積層発泡体の見掛け密度は、好ましくは10〜200g/L、更に好ましくは15〜180g/L、特に好ましくは20〜100g/Lである。積層発泡体の見掛け密度が高すぎると表面保護性が低下する虞があり。一方、該見掛け密度が低すぎると積層発泡体に所望される保形性や圧縮強さなどの機械的強度が低下する虞がある。特に積層発泡体がシート状である場合には、垂れ下がりに関連するコシの強さが低下する虞がある。なお、上記表面保護性の観点から積層発泡体の見掛け密度は150g/L以下が好ましく、より好ましくは120g/L以下、更に好ましくは100g/L以下である。また、コシの強い発泡シートは片持ち梁で支持した際の垂れ下がりが小さいものであり、このような観点から、該見掛け密度は20g/L以上が好ましく、より好ましくは30g/L以上、更に好ましくは40g/L以上である。
【0022】
また、発泡体層がシート状の押出発泡体の場合、積層発泡体の坪量は10〜80g/mが好ましく、より好ましくは12〜60g/m、更に好ましくは15〜50g/m、特に好ましくは20〜40g/mである。該坪量が10g/m以上であればコシの強さが確保され、80g/m以下であれば、過大なコストアップに繋がることもない。
【0023】
本発明における積層発泡体全体の厚みは、積層発泡体の全幅に亘って幅方向に1cm間隔で測定される厚み(mm)の算術平均値である。
【0024】
本発明における積層発泡体の見掛け密度は、積層発泡体から切り出した試験片の重量(g)を該試験片の外形寸法から求められる体積(cm)で除した値を単位換算(g/L)して求められる。
【0025】
また、前記発泡体層が押出発泡体の場合、その平均気泡径は、発泡体層の引張等の機械的物性、外観、表面平滑性、被包装物の表面保護性などの観点から押出方向および幅方向の平均気泡径が共に0.2〜0.8mm、更に0.3〜0.7mm、0.4〜0.6mmが好ましい。
【0026】
前記発泡体層の平均気泡径は、発泡体層を、幅方向、及び幅方向と直交する押出方向に切断し、現れた断面に基づき測定される。具体的には、発泡体層の幅方向断面拡大写真に発泡体層の厚みを2等分する長さ30mm(拡大写真の拡大率を考慮して30mmに拡大率を乗じた長さの線分)の中心線を引き、該線分と交わる気泡数(n)を求める。線分の長さ30mmと求められた気泡数(n)に基づき、幅方向の気泡径の平均値を30/(n−1)の計算式により求める。同様の操作を発泡体層の他の幅方向断面において繰り返して計5箇所の幅方向の気泡径の平均値を求め、これらの算術平均値を発泡体層の幅方向における平均気泡径とする。また、発泡体層の押出方向断面拡大写真に基づき測定する以外は、幅方向の平均気泡径の測定方法と同様にして求められる値を、発泡体層の押出方向における平均気泡径とする。
【0027】
本発明のポリオレフィン系樹脂積層発泡体においては、前記発泡体層の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂層が積層されている。
【0028】
本発明における樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂、これに配合される他の樹脂や添加剤等は、発泡体層について前記したものと同様のものである。但し、発泡体層と樹脂層の構成は同一である必要はなく、両者が積層可能でありさえすれば、前記ポリオレフィン系樹脂の範疇の中で異なる構成を採用することもできる。
【0029】
該樹脂層の坪量は一面あたり、0.5g/m以上が好ましく、より好ましくは0.7g/m以上であり、更に好ましくは1g/m以上である。該樹脂層の坪量が上記範囲内であれば、所望される洗浄性が十分に発揮される。洗浄性の観点からは坪量の上限は制限されるものではないが、緩衝性や軽量性の観点からはその上限は100g/m以下であることが好ましく、より好ましくは60g/mであり、さらに好ましくは50g/m以下である。特に、樹脂層が共押出により形成されてなる場合には、樹脂層の厚みを薄くすることができるので、樹脂層の坪量は0.5〜10g/mであることが好ましく、より好ましくは0.7〜5g/mであり、更に好ましくは1〜3g/mである。
【0030】
また、樹脂層の厚みは、均一であることが好ましいが、本発明の目的、効果が達成される範囲内であれば、厚みむらがあってもかまわない。本発明において、上記の樹脂層の坪量は、以下の2通りの方法のいずれかにて求めることができる。
【0031】
坪量測定の第1の方法においては、積層発泡体の垂直断面を顕微鏡などで適宜拡大して、樹脂層の厚みを等間隔に幅方向に10点測定し、得られた値の算術平均値を樹脂層の平均厚みとし、該平均厚みに樹脂層を構成している基材樹脂の密度を乗じ、単位換算して樹脂層の坪量[g/m]を求めることができる。ただし、この方法は樹脂層と発泡層の界面が明確な場合に限られる。
【0032】
坪量測定の第2の方法においては、積層発泡体が共押出によって製造される場合、積層発泡体を製造する際に、押出発泡条件の内、樹脂層の吐出量X[kg/時]と、得られる積層発泡体の幅W[m]、積層発泡体の単位時間あたりの長さL[m/時]から、以下の(1)式にて樹脂層の坪量[g/m]を求めることができる。なお、発泡体層の両面に樹脂層を積層する場合には、それぞれの樹脂層の吐出量からそれぞれの樹脂層の坪量を求める。
坪量[g/m]=〔1000X/(L×W)〕・・・(1)
【0033】
本発明の積層発泡体は、発泡体層と、特定の親水性化合物が添加されている樹脂層とからなり、該樹脂層が発泡体層の少なくとも片面に積層されている。樹脂層が特定の親水性化合物を含有するので、樹脂層側を被包装体に向けて包装することにより、樹脂層から塵、埃、ブリードアウト物質などの異物が、電子製品、精密機器、回路基盤、シリコン半導体、ディスプレイ用ガラス基板などの電子精密機器表面に転写された場合であっても、異物と共に該親水性化合物が電子精密機器表面に転写されることにより、電子精密機器を水で洗浄したり、水を含有するシートで拭くなどの簡易な洗浄だけで、異物を該化合物と共に容易に除去することができる。特に電子精密機器表面に転写した場合に、ナトリウムイオン等の金属イオンやオリゴマー物質などの洗浄が困難で、厳密な洗浄を行わなければ除去することができない異物が、樹脂層から電子精密機器表面に転写するようなことがあっても、該親水性化合物が存在すると簡易な洗浄を行うだけで、電子精密機器表面から容易に除去することができる。
【0034】
樹脂層に添加される親水性化合物は、ポリアルキレンオキサイド及びHLB値が8以上の界面活性剤から選択される1以上の化合物である。
【0035】
なお、本発明の樹脂層には後述する高分子型帯電防止剤を添加することができ、該高分子型帯電防止剤にポリアルキレンオキサイド等が含まれることがある。しかし、高分子型帯電防止剤に含まれるポリアルキレンオキサイド等は、共重合体成分等として高分子型帯電防止剤に少量含有されるものであって、帯電防止性を高めるために用いられているものであり、本発明において、親水性化合物として樹脂層に添加されるポリアルキレンオキサイド等の添加量と比較して微量であり、本発明で特定する該親水性化合物の添加量の範囲に影響する量ではなく、本発明の目的、効果である被包装物の洗浄性を大きく高める効果が期待できるものではない。
【0036】
前記ポリアルキレンオキサイドを構成するアルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド(エチレングリコール)、プロピレンオキサイド(プロピレングリコール)、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、ブチレンオキサイド(ブチレングリコール)、ペンチルオキサイド(ペンチルグリコール)、ヘキシルオキサイド(ヘキシルグリコール)等が挙げられる。ポリアルキレンオキサイドとしては、2種以上のアルキレンオキサイドが併用されているものでもよい。
ポリアルキレンオキサイドの中では、入手しやすく、取扱いやすいことから、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)が好ましい。
【0037】
本発明におけるHLB値は、その親水性化合物の型に応じ、下記の通り、周知の方法であるアトラス法、またはグリフィン法で求められる。
アトラス法(親水性化合物の型がエステル系の界面活性剤の場合)
HLB=20(1−S/A)
S:けん化価 A:親水性化合物を構成する脂肪酸の酸価
グリフィン法(親水性化合物の型がエステル系の界面活性剤以外の場合)
HLB=20×親水基部分の分子量/親水性化合物全体の分子量
【0038】
上記HLB値が8未満では、洗浄性が不十分であり、ディスプレイ用ガラス基板などの電子精密機器の表面に付着した汚染物を容易に除去することができない虞がある。かかる観点から、HLB値は10以上が好ましく、15以上がより好ましい。なお、界面活性剤のHLB値の上限は20未満である。
【0039】
本明細書においては、ポリアルキレンオキサイドのHLB値についてもグリフィン法により求める。具体的には、例えば、ポリアルキレンオキサイドがポリエチレンオキサイドとそれ以外のポリアルキレンオキサイドの共重合体からなる場合には、ポリエチレンオキサイドを親水基部分と見なし、それ以外のポリアルキレンオキサイドについてはその親油親水性を考慮して親水基部分であるか疎水基部分であるかを決定して、グリフィン法によりHLB値を求める。なお、ポリエチレンオキサイドの場合には全てが親水基部分であるので、ポリアルキレンオキサイドのHLB値の上限は20となる。
【0040】
前記HLB値が8以上の界面活性剤としては、HLB値が8以上であれば、いかなる種類の界面活性剤でも使用することができるが、その中でもノニオン系界面活性剤であるポリアルキレンオキサイド系界面活性剤が好ましい。ポリアルキレンオキサイド系界面活性剤としては、前記ポリアルキレンオキサイドを始めとして、アルキレンオキサイド付加型非イオン界面活性剤が好ましく用いられ、その具体例としては、オキシアルキレンアルキルエ−テル(例えば、オクチルアルコールエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物、オレイルアルコールエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック付加物など);ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル(例えば、ステアリル酸エチレンオキサイド付加物、ラウリル酸エチレンオキサイド付加物など);ポリオキシアルキレン多価アルコ−ル高級脂肪酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールのラウリン酸ジエステル、ポリエチレングリコールのオレイン酸ジエステル、ポリエチレングリコールのステアリン酸ジエステルなど);ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエ−テル(例えば、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ノニルフェノールエチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック付加物、オクチルフェノールエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ジノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、スチレン化フェノールエチレンオキサイド付加物など);ポリオキシアルキレンアルキルアミノエ−テルおよび(例えば、ラウリルアミンエチレンオキサイド付加物,ステアリルアミンエチレンオキサイド付加物など);ポリオキシアルキレンアルキルアルカノ−ルアミド(例えば、ヒドロキシエチルラウリン酸アミドのエチレンオキサイド付加物、ヒドロキシプロピルオレイン酸アミドのエチレンオキサイド付加物、ジヒドロキシエチルラウリン酸アミドのエチレンオキサイド付加物など)が挙げられる。
【0041】
前記親水性化合物の中では、ポリアルキレンオキサイド及びHLB値が8以上のポリアルキレンオキサイド系界面活性剤から選択される1以上の化合物が好ましく、ポリアルキレンオキサイドがより好ましい。
【0042】
本発明におけるポリアルキレンオキサイドは、温度20℃で液状であることが好ましい。20℃で固体のポリアルキレンオキサイド等もオリゴマーや金属イオンを水で除去する際に優れた洗浄性を発揮することができるが、20℃で液状のポリアルキレンオキサイド等は、樹脂層からよりブリードアウトしやすく、より水等に溶けやすいことから、水等での洗浄が難しいオリゴマーや金属イオン等の異物に対してより優れた洗浄性を発揮することができる。かかる観点から、10℃で液状であることがより好ましく、0℃で液状であることが更に好ましく、−10℃で液状であることが更に好ましく、−20℃で液状であることが特に好ましい。
【0043】
同様の理由から、ポリアルキレンオキサイドや上記界面活性剤の数平均分子量は1000以下、更に600以下が好ましい。また、其の下限は、概ね150である。
【0044】
なお、ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量は、水酸基価から算出される周知の方法で求められる。また、ポリアルキレンオキサイド等の数平均分子量が該水酸基価から算出することが難しい場合には、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いる方法にて求められる。
【0045】
該樹脂層への親水性化合物の添加量は、該樹脂層を構成しているポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部の割合である。該親水性化合物の添加量が0.5重量部未満では、洗浄性が不十分であり、ディスプレイ用ガラス基板などの電子精密機器の表面に付着した汚染物を容易に除去することができない虞がある。一方、該添加量が20重量部超では洗浄性の面では何ら問題ないが、添加量に見合う洗浄性が発現しなくなるばかりか、添加量が多すぎると樹脂層を形成する際に親水性化合物が樹脂層から分離してしまい樹脂層自体が形成できなくなる。かかる観点から、樹脂層への親水性化合物の添加量は、該樹脂層を構成しているポリオレフィン系樹脂100重量部に対して好ましくは1〜15重量部、より好ましくは1.5〜12重量部、更に好ましくは2〜10重量部、特に好ましくは3〜7重量部の割合である。
【0046】
本発明における樹脂層には、ポリオレフィン系樹脂と親水性化合物との馴染みを良くして、両者の分離を抑制するために、相溶化剤が添加されていることが好ましい。
該相溶化剤としては、ポリオレフィンと親水性ポリマーとの共重合体などが挙げられ、具体的には、ポリオレフィンとポリエーテルとの共重合体などが挙げられ、後述する高分子型帯電防止剤を使用することができる。
【0047】
本発明においては、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体層には親水性化合物が実質的に添加されていない。実質的に添加されていないとは、発泡層に親水性化合物が全く添加されていないか、添加されているとしても発泡性を阻害せず無添加の場合と比べて機械的強度を低下させない添加量であることを意味し、その添加量は、前記発泡体層を構成しているポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.4重量部以下(ただし、0を含む。)であり、好ましくは0.3重量部以下(ただし、0を含む。)であり、更に好ましくは0.1重量部以下(ただし、0を含む。)であり、無添加であることが特に好ましい。
なお、発泡層に親水性化合物が添加される可能性としては、意図的に添加しなくても、回収原料を使用した結果、意に反して添加される場合が挙げられる。
【0048】
本発明のポリオレフィン系樹脂積層発泡体(積層発泡体)は、前記の通り、ポリオレフィン系樹脂発泡体層(発泡体層)と、その表面に積層されたポリオレフィン系樹脂層(樹脂層)とからなる多層構造を有するものである。更に、樹脂層には、特定量の親水性化合物が添加されているので、優れた洗浄性を発揮することができる。一方、発泡体層には親水性化合物が実質的に添加されていないので、発泡体層製造時に親水性化合物により発泡性が阻害されることがなく、機械的強度に優れる積層発泡体となる。更に、樹脂層に添加された親水性化合物は発泡性を阻害するということがないので、添加量濃度を増やすことができるので、洗浄性が単層の発泡体に比較すると向上したものである。更に、積層発泡体全体における親水性化合物の添加量が、高濃度であっても、発泡体層のみの単層構造における親水性化合物の添加量より少ないので、該積層発泡体は、同坪量、同厚みという条件下において、単層の発泡体と比較して同等以上の機械的強度を有する。
【0049】
本発明の積層発泡体は、発泡体層の片面のみに樹脂層が積層されているもの、両面に樹脂層が積層されているものの両方の形態を含む。両面に樹脂層が積層されている場合、使用される用途に応じて、親水性化合物が片面のみに添加されていても、両面に添加されていてもよい。本発明の積層発泡体がガラス基板の間紙として使用される場合には、親水性化合物が添加されている樹脂層が発泡体層の両面に積層されていることが好ましい。
【0050】
積層発泡体の機械的強度を低下させないという観点から、積層発泡体全体における親水性化合物の添加量は、該積層発泡体100重量部に対して2重量部以下であることが好ましく、より好ましくは1.5重量部以下であり、更に好ましくは1重量部以下である。
【0051】
また、本発明の積層発泡体は発泡体層に親水性化合物が実質的に無添加であるため、発泡体層に親水性化合物を添加した場合に比べて積層発泡体の独立気泡率を高く維持しやすい。積層発泡体としての独立気泡率は、被包装物の表面保護性と機械的強度との両立という観点から40%以上が好ましく、更に50%以上が好ましい。
【0052】
前記積層発泡体の独立気泡率は、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、東芝ベックマン株式会社の空気比較式比重計930型を使用して測定(積層発泡体から25mm×25mm×20mmに切断したカットサンプルをサンプルカップ内に収容して測定する。なお、積層発泡体が薄すぎて前記サイズのカットサンプルを切り出すことができない場合には、25mm×25mm×積層発泡体厚みのサンプルを複数枚切り出し、積み重ねることにより、25mm×25mm×約20mmの測定用カットサンプルとする。)された積層発泡体(カットサンプル)の真の体積Vxを用い、下記(1)式により独立気泡率S(%)を計算する。
【0053】
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ) (1)
【0054】
Vx:上記方法で測定されたカットサンプルの真の体積(cm)であり、カットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。
Va:測定に使用されたカットサンプルの外寸から計算されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm)。
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)。
ρ:積層発泡体を脱泡して求められる樹脂組成物の密度(g/cm
【0055】
本発明における樹脂層には、高分子型帯電防止剤を添加し、樹脂層の表面抵抗率を1×10〜1×1014(Ω)にすることができる。
該表面抵抗率が大きすぎる場合には、帯電防止特性が不十分となり、樹脂層の表面には静電荷が蓄積し、埃が付着しやすくなる。埃がより付着しにくくするためには、該表面抵抗率は、5×1013Ω以下が好ましく、1×1013Ω以下がさらに好ましい。一方、表面抵抗率が小さすぎる場合には、帯電防止性能においては問題ないが、包装材に要求される帯電防止性能が過剰となりコストが高くなる虞がある。
【0056】
本明細書における表面抵抗率は、下記の試験片の状態調節を行った後、JIS K6271(2001)に準拠して測定される。すなわち、測定対象物である積層発泡体から切り出した試験片(縦100mm×横100mm×厚み:試験片厚み)を温度20℃、相対湿度30%の雰囲気下に36時間放置することにより試験片の状態調節を行ってから、JIS K6271(2001)に準拠して印加電圧500kVの条件にて電圧印加を開始して1分経過後の表面抵抗率を求める。
【0057】
樹脂層の表面抵抗率を1×10〜1×1014Ωにするためには、ポリオレフィン系樹脂層に高分子型帯電防止剤がポリオレフィン系樹脂100重量部に対して2〜30重量部の割合で添加されていることが好ましい。該添加量が少なすぎると、所望の帯電防止特性を発揮できない虞がある。一方、該添加量が多すぎても帯電防止性能の面では何ら問題ないが、帯電防止性能が頭打ちになるためコストパフォーマンスに劣る。かかる観点から、帯電防止剤の添加量は、4〜30重量部が好ましく、6〜25重量部がより好ましい。
【0058】
該帯電防止剤の数平均分子量は、2000以上、好ましくは2,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜60,000、特に好ましくは8,000〜40,000である。従って、該帯電防止剤は、界面活性剤からなる帯電防止剤とは区別される高分子型の帯電防止剤である。尚、該高分子型の帯電防止剤の数平均分子量の上限は概ね1,000,000である。高分子型の帯電防止剤の数平均分子量を前記の範囲とすることにより、被包装体へ帯電防止剤が移行して被包装体表面を汚染することもない。
【0059】
なお、前記数平均分子量は、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求められる。例えば、高分子型帯電防止剤がポリエーテルエステルアミドやポリエーテルを主成分とする親水性樹脂の場合にはオルトジクロロベンゼンを溶媒として試料濃度3mg/mlとし、ポリスチレンを基準物質としてカラム温度135℃の条件にて測定される値である。なお、前記溶媒の種類、カラム温度は、高分子型帯電防止剤の種類に応じて適宜変更される。
【0060】
本発明で使用される高分子型帯電防止剤としては、体積抵抗率が10〜1011Ω・cmの親水性樹脂と、ポリオレフィンとの共重合体が挙げられる。
該親水性樹脂としては、ポリエーテルジオール,ポリエーテルジアミン,及びこれらの変性物等のポリエーテル、ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド,ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルアミドイミド,ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド,ポリエーテルセグメント形成成分としてポリエーテルジオールまたはポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタン等のポリエーテル含有親水性樹脂、非イオン性分子鎖で隔てられた2〜80個、好ましくは3〜60個のカチオン性基を分子内に有するカチオン性ポリマー、及びスルホニル基を有するジカルボン酸とジオール又はポリエーテルとを必須構成単位とし、かつ分子内に2〜80個、好ましくは3〜60個のスルホニル基を有するアニオン性ポリマーが使用できる。
【0061】
また高分子型帯電防止剤にはポリオレフィン系樹脂との相溶性を向上させ、優れた帯電防止効果を与えると共に、帯電防止剤を添加することによる物性低下を抑制する効果を得るために、ポリオレフィン系樹脂と同種或いは相溶性の高いポリオレフィン系樹脂をブロック共重合させたものが好ましく、例えば、ポリオレフィンのブロックと、体積抵抗率が10〜1011Ω・cmの上記親水性樹脂のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有する数平均分子量(Mn)が2000〜60000のブロックコポリマーが挙げられる。これらの中でも、ポリエーテルとポリオレフィンとのブロックコポリマー(ブロック共重合体)が前記相溶性にも優れているので好ましい。
尚、上記ポリオレフィンのブロックと親水性樹脂のブロックとは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合から選ばれる少なくとも1種の結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有することをいう。
【0062】
また、高分子型帯電防止剤として好ましく用いられる前記ブロックポリマーのポリオレフィンのブロックとしては、カルボキシル基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン、カルボニル基をポリマーの片末端に有するポリオレフィンが好ましい。
【0063】
更に詳しくは、上記のような高分子型帯電防止剤として、特開平3−103466号公報、特開2001−278985号公報に記載の組成物が挙げられる。特開平3−103466号公報記載の組成物は、(I)熱可塑性樹脂、(II)ポリエチレンオキサイドまたは50重量%以上のポリエチレンオキサイドブロック成分を含有するブロック共重合体、及び(III)上記(II)中のポリエチレンオキサイドブロック成分と固溶する金属塩からなるものであり、特開2001−278985号公報記載の組成物は、ポリオレフィン(a)のブロックと、体積抵抗率が1×10〜1×1011Ω・cmの親水性樹脂(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有する数平均分子量(Mn)が2000〜60000のブロック共重合体である。上記(a)のブロックと(b)のブロックとは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合から選ばれる少なくとも1種の結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有するものである。このような高分子型帯電防止剤としては、例えば三井・デュポンポリケミカル株式会社製「SD100」、三洋化成工業株式会社製「ペレスタット300」などの商品名で市販されている。
【0064】
上記高分子型帯電防止剤はそれぞれ単独で使用することができるが、複数組み合わせて使用してもよい。
【0065】
また、高分子型帯電防止剤の融点は、好ましくは70〜270℃、より好ましくは80〜230℃、特に好ましくは80〜200℃であることが、帯電防止機能発現性の観点から望ましい。
【0066】
高分子型帯電防止剤の融点は、以下のJIS K7121(1987)に準拠する方法により測定することができる。即ちJIS K7121(1987)における試験片の状態調節(2)の条件(但し、冷却速度は10℃/分)により前処理を行い、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得る。そして得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。尚、融解ピークが2つ以上現れる場合には、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0067】
所期の表面抵抗率を達成するためには、発泡体層には前記高分子型帯電防止剤が添加されている必要はないが、積層発泡体の回収原料を発泡体層用原料として用いることによって高分子型帯電防止剤が添加される場合には、発泡体層が高分子型帯電防止剤を含有することとなる。その場合であっても、発泡体層の発泡性を阻害しないために、高分子型帯電防止剤の含有量は発泡体層を構成するポリオレフィン系樹脂100重量部に対して15重量部以下の割合とすることが好ましい。さらに、積層発泡体の機械的強度を維持するためには、発泡体層を構成するポリオレフィン系樹脂100重量部に対して5重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下である。
【0068】
次に、本発明のポリオレフィン系樹脂積層発泡体の製造方法について説明する。
本発明の積層発泡体を構成する発泡体層は、押出発泡により製造することもできれば、発泡粒子を金型内で加熱して融着させる型内成形方法により製造することもできる。更に、樹脂層を発泡体層に積層する方法としては、予め製造した発泡体層の表面に親水性化合物が添加されているフィルムを熱ラミネーションにより積層する方法や、押出ラミネーションにより積層する方法で製造することができる。また、発泡体層と樹脂層とを一のダイから押出す共押出法により製造することもできる。型内成形方法による場合には、予め製造した親水性化合物を含有させたフィルムを金型内で発泡粒子成形体に融着させることもできる。発泡体層が押出発泡体である場合には、共押出法により、帯電防止剤が添加されている樹脂層を発泡体層に積層して押出発泡することが、樹脂層の厚みを薄くできると共に、樹脂層と発泡体層との間の接着力が高い積層発泡体を得ることができることから好ましい。
【0069】
共押出法によりシート状の積層発泡体を製造する方法には、共押出用フラットダイを用いてシート状に共押出発泡させて積層する方法と、共押出用環状ダイを用いて筒状積層発泡体を共押出発泡し、次いで筒状発泡体層を切り開いてシート状の積層発泡体とする方法等がある。これらの中では、共押出用環状ダイを用いる方法が、コルゲートと呼ばれる波状模様の発生を抑えることや、幅が1000mm以上の幅広の積層発泡体を容易に製造することができるので、好ましい方法である。
【0070】
前記環状ダイを用いて共押出しする場合について以下に詳細に説明する。図1に示すように、まず、ポリオレフィン系樹脂(A1)、親水性化合物(B)と必要に応じて添加される高分子型帯電防止剤(C)を樹脂層形成用押出機11に供給し、加熱溶融し混練した後、必要に応じて揮発性可塑剤(D)を添加し溶融混練してポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂溶融物(E1)とする。同時に、ポリオレフィン系樹脂(A2)と必要に応じて添加される気泡調整剤などの添加剤(G)とを発泡体層形成用押出機12に供給し、加熱溶融し混練してから物理発泡剤(F)を圧入し、さらに混練してポリオレフィン系樹脂発泡体層形成用樹脂溶融物(E2)とする。
【0071】
なお、親水性化合物(B)が液状の親水性化合物(B1)の場合には、物理発泡剤(K)と同様に圧入することにより添加することができ、親水性化合物(B)が固体状の親水性化合物(B2)の場合にはマスターバッチとして又は加熱して液状にしてポリオレフィン系樹脂(A1)に添加することができる。
【0072】
尚、共押出方法においては、環状ダイ内で樹脂層形成用樹脂溶融物(E1)と発泡体層形成用樹脂溶融物(E2)とを積層することもできれば、押出された上記溶融物同士をダイの出口の外で積層することもできる。また、前記環状ダイ、押出機、円柱状冷却装置、筒状積層発泡体を切開く装置等は、従来から押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを用いることができる。
【0073】
ポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂溶融物(E1)に揮発性可塑剤(D)を添加する場合には、樹脂溶融物(E1)の溶融粘度を低下させる機能を有すると共に、ポリオレフィン系樹脂層(J)形成後に、該ポリオレフィン系樹脂層より揮発して樹脂層中に存在しなくなるものが用いられる。揮発性可塑剤(D)を樹脂溶融物(E1)中に添加することにより、積層発泡体を共押出しする際に、樹脂層形成用樹脂溶融物の押出温度を発泡体層形成用樹脂用物の押出温度に近づけることができると共に、溶融状態の樹脂層(J)の溶融伸びを著しく向上させることができる。そうすると、発泡時に樹脂層の熱によって発泡体層の気泡構造が破壊されにくくなり、さらに該樹脂層(J)の伸びがポリオレフィン系樹脂発泡体層(I)の発泡時の伸びに追随するので、樹脂層(J)の伸び不足による亀裂発生が防止される。
【0074】
揮発性可塑剤(D)としては、炭素数2〜7の脂肪族炭化水素、炭素数1〜4の脂肪族アルコール、又は炭素数2〜8の脂肪族エーテルから選択される1種、或いは2種以上のものが好ましく用いられる。滑剤のように揮発性の低いものを可塑剤として用いた場合、滑剤等は樹脂層(J)に残存し、被包装体の表面を汚染することがある。これに対し揮発性可塑剤(D)は、樹脂層(J)の樹脂を効率よく可塑化させ、得られる樹脂層(J)に揮発性可塑剤自体が残り難いという点から好ましいものである。
【0075】
前記炭素数2〜7の脂肪族炭化水素としては、例えば、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタンなどが挙げられる。
【0076】
前記炭素数1〜4の脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ノルマルブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールが挙げられる。
【0077】
前記炭素数2〜8の脂肪族エーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルアミルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチルアミルエーテル、エチルイソアミルエーテル、ビニルエーテル、アリルエーテル、メチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、エチルアリルエーテルが挙げられる。
【0078】
揮発性可塑剤(D)の沸点は、樹脂層(J)から揮発し易いことから、120℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以下である。揮発性可塑剤(D)の沸点がこの範囲であれば、共押出しした後、得られた積層発泡体(H)を放置しておけば、共押出し直後の熱により、更に後の室温下でのガス透過により、揮発性可塑剤(D)は積層発泡体の樹脂層(J)から自然に揮散して、自然に除去される。該沸点の下限値は、概ね−50℃である。
【0079】
揮発性可塑剤(D)の添加量は、ポリオレフィン系樹脂(A1)と親水性化合物(B)と必要に応じて添加される高分子型帯電防止剤(C)の混練物100重量部に対して5重量部〜50重量部であることが好ましい。揮発性可塑剤(D)の添加量が5重量部以上であれば、樹脂層(J)を構成するポリオレフィン系樹脂等の混練時のせん断による発熱が抑えられるので、樹脂層(J)が積層される発泡体層(I)となる発泡体層形成用樹脂溶融物(E2)の樹脂温度の上昇が抑えられる(温度低下効果)。従って、発泡体層形成用樹脂溶融物(E2)が発泡する際に、気泡が破泡する等の弊害が防止される。さらに、揮発性可塑剤(D)は、樹脂層形成用樹脂溶融物(E1)の発泡体層形成用樹脂溶融物(E2)が発泡する際に追随する伸張性を向上させ(伸張性改善効果)、樹脂層(J)の厚みを均一に薄く形成する効果も有する。かかる観点から、揮発性可塑剤(D)の添加量は、7重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましい。
【0080】
一方、揮発性可塑剤(D)の添加量がポリオレフィン系樹脂(A1)100重量部に対して50重量部以下であれば、樹脂層(J)自体の物性低下を引き起こすことがなく、揮発性可塑剤(D)が樹脂層形成用樹脂溶融物(E1)中に浸透して十分に混練されるので、ダイリップから揮発性可塑剤が噴き出したりすることがなく、樹脂層(J)に穴が開いたり、表面が凹凸状となり表面平滑性が低下したりする虞がない。かかる観点から、揮発性可塑剤(D)の添加量は、40重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、25重量部以下が更に好ましい。揮発性可塑剤(D)の添加量を上記範囲とすることで、共押出時の脂層形成用樹脂溶融物の温度低下効果と伸張性改善効果が確保される。
【0081】
また、樹脂層形成用樹脂溶融物(E1)には、本発明の目的を阻害しない範囲において該溶融物(E1)を形成するポリオレフィン系樹脂(A1)に各種の添加剤を添加してもよい。各種の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤、抗菌剤等が挙げられる。その場合の添加量は、該樹脂100重量部に対して10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下が特に好ましい。下限は概ね0.01重量部である。
【0082】
物理発泡剤(F)としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフッ化炭化水素等の有機系物理発泡剤、酸素、窒素、二酸化炭素、空気等の無機系発泡剤、アゾジカルボンアミド等の分解型発泡剤が挙げられる。上記した物理発泡剤は、2種以上を混合して使用することが可能である。これらのうち、特にポリエチレン系樹脂との相溶性、発泡性の観点から有機系発泡剤が好ましく、中でもノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好適である。
【0083】
主要な添加剤(G)として、通常、気泡調整剤が添加される。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
【0084】
物理発泡剤(F)の添加量は、発泡剤の種類、目的とする見掛け密度に応じて調整する。また気泡調整剤の添加量は、目的とする気泡径に応じて調節する。例えば、発泡剤としてイソブタン30重量%とノルマルブタン70重量%とのブタン混合物を用いて上記密度範囲の積層発泡体を得るためには、ブタン混合物の添加量はポリオレフィン系樹脂(A2)100重量部当たり3〜30重量部、好ましくは4〜20重量部、より好ましくは6〜18重量部である。また気泡調整剤の添加量はポリオレフィン系樹脂(A2)100重量部当たり、0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜8重量部である。
【0085】
ポリオレフィン系樹脂発泡体層形成用樹脂溶融物(E2)には、前記の通り、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲で、スチレン系樹脂やエラストマー等の他の樹脂や、熱安定剤の添加剤を添加することができる。
【0086】
前記したように、積層発泡体を共押出によって製造する場合には、押出機11を用いて樹脂層形成用樹脂溶融物(E1)を形成し、押出機12を用いて発泡体層形成用樹脂溶融物(E2)形成し、押出機12内において樹脂溶融物(E2)を発泡可能な温度に調整し、押出機11内において樹脂溶融物(E1)を共押出可能な温度に調整してから、樹脂層形成用樹脂溶融物(E1)と発泡体層形成用樹脂溶融物(E2)とを共押出用環状ダイ13に導入して両者を積層し、更に大気中に共押出して、発泡体層形成用樹脂溶融物(E2)を発泡させて、発泡体層に樹脂層が積層された筒状積層発泡体を形成し、該筒状積層発泡体の内面を、円柱状冷却装置に沿わせて冷却しつつ引取りながら切開くことにより、積層発泡体を得る。
但し、樹脂層形成用樹脂溶融物(E1)と発泡体層形成用樹脂溶融物(E2)との積層は、環状ダイの内部で積層することもできれば、出口付近や、ダイの出口の外で積層することができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0088】
気泡調整剤として、ポリエチレン系樹脂80重量%に対してタルク(松村産業株式会社製商品名「ハイフィラー#12」)を20重量%配合してなる気泡調整剤マスターバッチを用いた。
【0089】
発泡体層形成用及び樹脂層形成用のポリオレフィン系樹脂として、株式会社日本ユニカー製の低密度ポリエチレン「NUC8321」(密度922g/L、MFR:2.4g/10分)を用いた。
【0090】
高分子型帯電防止剤として、三洋化成工業株式会社製のポリエーテル−ポリプロピレンブロック共重合体を主成分とする「ぺレスタット300」(融点136℃、数平均分子量14000、密度990g/L)を用いた。
【0091】
物理発泡剤として、ノルマルブタン70重量%とイソブタン30重量%とからなる混合ブタンを用いた。
【0092】
【表1】

使用した親水性化合物を表1に示す。
なお、化合物3はその構成成分として20質量%のポリプロピレンオキサイド成分を有する。ポリプロピレンオキサイドは、低分子量では親水性を示すが分子量が高くなるにしたがって疎水性を示すようになる。化合物3では、ポリプロピレンオキサイド成分の数平均分子量が1750と大きいため、その部分は疎水性を示す。ポリプロピレンオキサイド部分を疎水基部分とみなしてHLB値を計算した。
【0093】
実施例1〜9、比較例1〜5
ポリオレフィン系樹脂発泡体層形成用の押出機(12)として、直径115mmの第一押出機と直径150mm第二押出機からなるタンデム押出機を用い、ポリオレフィン系樹脂層形成用の押出機(11)として直径65mm、L/D=50の第三押出機を用いた。更に、共押出用環状ダイに、第二押出機と第三押出機の夫々の出口を連結し、夫々の溶融樹脂を環状ダイ中で積層可能にした。
【0094】
ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン「NUC8321」と、表2に示す種類、量の親水性化合物を第三押出機に供給して加熱混練し、揮発性可塑剤として表2に示す量の前記混合ブタンを圧入し、更に混練し、表2に示す押出樹脂温度に調節して樹脂層形成用樹脂溶融物とし、該樹脂層形成用樹脂溶融物を表2に示す吐出量で共押出用環状ダイに導入した。なお、実施例1、3、9及び比較例5では、高分子型帯電防止剤として「ペレスタット300」を表2に示す量の割合で添加した。
但し、液状の親水性化合物は物理発泡剤と同様に直接圧入して添加し、固体状の親水性化合物は低密度ポリエチレン「NUC8321」をベース樹脂とした濃度10重量%のマスターバッチを作製し、所定量となるように添加した。
【0095】
同時に、ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン「NUC8321」と、表3に示す量の気泡調整剤マスターバッチとを、タンデム押出機の第一押出機の原料投入口に供給し、加熱混練し、約200℃に調整された溶融樹脂混合物とした。次に、該溶融樹脂混合物に、表3に示す量の物理発泡剤を圧入し、次いで前記第一押出機の下流側に連結された第二押出機に供給して、表2に示す押出樹脂温度に温調して発泡体層形成用樹脂溶融物とし、該発泡体層形成用樹脂溶融物を表3に示す吐出量で共押出用環状ダイに導入した。
【0096】
共押出用環状ダイに導入されて環状に流動する発泡体層形成用樹脂溶融物の外側と内側に、共押出用環状ダイに導入されて環状に流動する樹脂層形成用樹脂溶融物を積層し、溶融物の積層体をダイから大気中に押出して、樹脂層/発泡体層/樹脂層からなる3層構成の筒状積層発泡体を形成した。押出された筒状積層発泡体を冷却された円柱状冷却装置(マンドレル)に沿わせて引き取りながら切開いて、積層発泡体を得た。
【0097】
参考例1
ポリオレフィン系樹脂発泡体層形成用の押出機として、直径115mmの第一押出機と直径150mm第二押出機からなるタンデム押出機を用い、第二押出機の出口に環状ダイを連結した。
ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン「NUC8321」と、表2に示す量の気泡調整剤マスターバッチとを、タンデム押出機の第一押出機の原料投入口に供給し、加熱混練し、約200℃に調整された溶融樹脂混合物とした。次に、該溶融樹脂混合物に、親水性化合物として表1記載の「化合物1」をポリオレフィン系樹脂100重量部に対して3.1重量部の割合で圧入し、表2に示す量の物理発泡剤を圧入し、次いで第一押出機の下流側に連結された第二押出機に供給して、表2に示す押出樹脂温度に温調して発泡体層形成用樹脂溶融物とし、該発泡体層形成用樹脂溶融物を表3に示す吐出量で環状ダイに導入した。該溶融物をダイから大気中に押出して、発泡体層のみからなる筒状発泡体を形成した。押出された筒状発泡体を冷却されたマンドレルに沿わせて引き取りながら切開いて発泡体を得た。
【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
実施例、比較例及び参考例にて得られた得られた積層発泡体の厚み、見掛け密度、坪量、平均気泡径、表面低効率、洗浄性等の評価を表4に示す。
【0101】
【表4】

【0102】
表4における洗浄性の評価は次の通り行った。
<洗浄性の評価方法>
平均表面租度0.2μmの鏡面のステンレス板に硬質クロムメッキ処理した鋼板を、積層発泡体で挟み、その上から50g/cmの荷重をかけ、60℃の雰囲気下に48時間放置した。その後、鋼板を純水中に浸漬、洗浄した。洗浄乾燥後、鋼板表面に呼気を吹きかけ汚れ(曇り)具合を目視にて観察し以下の基準にて評価した。
◎:汚れ(曇り)が全くない。
○:汚れ(曇り)が僅かに点在する。
×:汚れ(曇り)が多数存在する。
【0103】
積層発泡体における表面抵抗率は次のように行なった。
<表面抵抗率の測定>
積層発泡体から3片切り出した試験片(縦100mm×横100mm×厚み:試験片厚み)をサンプルとした。
表中の表面抵抗率は、試験片を試験片を相対湿度30%、温度30℃の雰囲気下で36時間放置して、試験片の状態調整を完了した後、直ちに23℃、50%RH環境下にて表面抵抗を測定した。その際、前述したJIS K6271(2001)の方法に準じて印加電圧500Vで印加してから1分後の表面抵抗値を採用し、得られた測定値の平均値から表面抵抗率を求めた。測定装置はタケダ理研工業株式会社製「TR8601」を用いた。なお、樹脂層に高分子型帯電防止剤を添加していない積層発泡体については、表面抵抗率の測定は行わなかった。
【0104】
<垂下がり量(コシの強さ)の測定>
表3中のコシの強さ測定は、以下の通り行った。
幅100mm、長さ200mm、厚み:「積層発泡体厚み」の試験片を、積層発泡体の幅方向と試験片の長さ方向が一致するように実施例、比較例及び参考例にて得られた積層発泡体から切り出し、該試験片を水平な支持台上に、マンドレル面側を上として、長さ200mmの内50mmの部分が支持台端部からはみ出すようにして支持して、試験片はみ出し部先端の垂下がり量[mm]を測定し、積層発泡体のコシ強度を評価した。なお、押出方向よりも幅方向の垂れ下がり量が大きくなるめ、幅方向の垂下がり量のみを測定した。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明発泡シートの製造方法の1例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0106】
11 樹脂層形成用押出機
12 発泡体層形成押出機
13 共押出用環状ダイ
A1、A2 ポリオレフィン系樹脂
B 親水性化合物
B1 液状の親水性化合物
B2 固体の親水性化合物
D 揮発性可塑剤
E1 ポリオレフィン系樹脂層形成用樹脂溶融物
E2 ポリオレフィン系樹脂発泡体層形成用樹脂溶融物
F 物理発泡剤
G 添加剤
H 積層発泡体
I 発泡体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂発泡体層の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂層が積層されてなるポリオレフィン系樹脂積層発泡体において、
ポリアルキレンオキサイド及び親水親油バランス(HLB値)8以上の界面活性剤から選択される1以上の親水性化合物が、前記ポリオレフィン系樹脂層に該樹脂層を構成しているポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部の割合で添加されていると共に、
前記親水性化合物が、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体層に実質的に無添加であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
【請求項2】
前記ポリアルキレンオキサイドがポリエチレンオキサイドであることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
【請求項3】
前記ポリアルキレンオキサイドが温度20℃で液状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
【請求項4】
前記親水性化合物の数平均分子量が1000以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂層にポリオレフィン系樹脂と前記親水性化合物との相溶化剤が添加されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
【請求項6】
ポリオレフィン系樹脂積層発泡体への前記親水性化合物の添加量が、該積層発泡体100重量部に対して2重量部以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡体層が押出発泡体であり、ポリオレフィン系樹脂積層発泡体の見掛け密度が10〜200g/L、厚みが0.2〜2mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系樹脂層が共押出によりポリオレフィン系樹脂発泡体層に積層されていることを特徴とする請求項7に記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
【請求項9】
前記ポリオレフィン系樹脂層に高分子型帯電防止剤がポリオレフィン系樹脂100重量部に対して2〜30重量部の割合で添加されており、該樹脂層の表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。
【請求項10】
前記高分子型帯電防止剤がポリエーテルとポリオレフィンとのブロック共重合体を主成分とする帯電防止剤であることを特徴とする請求項9に記載のポリオレフィン系樹脂積層発泡体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−42556(P2010−42556A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207131(P2008−207131)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】