説明

ポリカチオン化合物とその使用

【解決手段】 本発明の側面は、血管新生の調整に有用な化合物および方法と、ポリカチオン化合物を投与することにより、血管新生に関連する疾患を治療する、または防ぐ方法に関する。本発明は、動物および人間を含む哺乳類の、血管新生介在疾患を抑制する組成物とその使用法に関する。さらに、本発明は、異なる血管新生介在疾患治療におけるポリカチオンとその他の抗血管新生剤の併用に関する。さらに、このようなポリカチオン化合物は、腫瘍増殖と転移を防ぎ治療するラジオ治療剤と同様に様々な抗炎症剤および細胞毒性剤と併用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年6月15日に出願された米国暫定シリアル番号60/579,282の名称「ポリカチオン化合物による血管新生の調節」の優先権を請求するものであり、参照することによりここにその全内容が援用される。
【背景技術】
【0002】
血管新生は、現在ある血管から新しい血管を発達させることである。生理学的に、血管新生は、成熟した有機体が適切に確実に発達するようにし、卵が着床するよう子宮を整え、傷を癒し、骨折を治し、妊娠を確率し維持する役目を果たす。血管新生は、癌、炎症、および、眼疾患などの数多くの病状と関連した病的状態とも関連する。
【0003】
血管新生もしくは「新血管形成」は、血管新生および抗血管新生因子の平衡により調整される多段階過程である。この過程の段階の後半は、内皮細胞(EC)をこの管構造の中で増殖させ組織化することを含む。線維芽細胞の増殖因子2(FGF2)や血管内皮増殖因子(VEGF)などの増殖因子は、内皮増殖や分化を促す鍵となる働きをすると考えられている。内皮細胞は、血管新生過程の中枢となる成分でありその細胞表面にある受容体と内部細胞信号メカニズムを通して多くのサイトカインに反応する。 血管新生の調整は、血管増殖因子、細胞外マトリクス接着分子と代謝因子の局所放出を含む複雑な過程である。血管内の機能力も必要である。また新しい血管増殖に関わる内因増殖要因で主要なものとしては、線維芽細胞増殖因子類(FGF)と血管内皮増殖因子(VEGF)が挙げられる。マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK;ERK1/2)の情報伝達カスケードは、VEGF遺伝子発現および血管内皮細胞の増殖抑制の両方に関わる。
【0004】
ある状態のもと、一定の時間、もしくは特定の細胞で毛細血管の延長と増殖を抑えることができると、多くの疾患および不調は、防ぐ、あるいは症状を和らげることができる。ここに開示される本発明によって治療可能な血管新生に依存する疾患は、血管増殖を誘発する、もしくは要求する前記状態あるいは前記疾患である。一方、血管新生の促進が好ましい状態は、脈管化が制限されることなく確立されるもしくは延長される脳梗塞、心臓病、潰瘍、強皮症や不妊症などである。
【0005】
血管新生の抑制は、例えば腫瘍増殖などの無秩序な血管の増殖を制限するのに有益な治療である。血管新生の抑制は、Folkmanらによる癌生態学3:89−96(1992)で提案されているように、血管新生の刺激対する内皮細胞の反応を抑制することにより働き、その提案の中で、アンジオスタティックステロイド(angiostatic steroid)、フマギリン(fumagilin)、などから取り出された真菌性の製品、血小板因子4、トロンボスポンジン、アルファーインターフェロン、ビタミンD類似物質、D―ぺニシラミンなどが内皮細胞の反応抑制因子として挙げられている。また他に提案された血管形成抑制因子については、Bloodら、Bioch. Biophys. Acta1032:89−118(1990)、Mosesら、Science248:1408−1410(1990)、米国特許Nos.5,092,885、5,112,946、5,192,744、および5,202,352を参照。
【0006】
好ましくない血管新生を抑制する過程には、治療上の処置と、もしくは不適切な、あるいは好ましくない血管新生に対する予防がある。反対に、血管新生の過程を促進する際は、血管新生から恩恵を受ける前記疾患の状態に治療上の処置を提供する。ここに開示される本発明の側面は、非血管新生特性に用いられるポリカチオン化合物のような両親媒性化合物を提供する。血管新生抑制能力は血管新生疾患および、状態を調整する効果的な治療法を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の側面は血管新生の調整において有用なポリカチオン化合物を含む化合物とポリカチオン化合物に関する。
【0008】
ポリカチオン
本発明の他の側面は、必要な場合に、動物もしくは人間の血管新生を調整する方法に関し、治療上効果的なポリカチオン化合物の量を前記動物に投与することから成る。
【0009】
本発明のさらに他の側面はまた、必要な場合に、動物もしくは人間の疾患を治療する、あるいは防ぐ方法に関し、治療上効果的なポリカチオン化合物の量を前記動物に投与することから成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
現合成物と方法について述べる前に、本発明は、特定の分子、合成物、発明、方法もしくは記述プロトコルは、様々で、制限を受けないということが理解される必要がある。また、記述のために使用されている専門用語は、特定の転用あるいは実施例の説明のためにのみ使用され、付記請求のみによって制限される本発明の範囲を制限することを意図しないことも理解される必要がある。
【0011】
明細書および添付の請求項に使用されるように、単数形は、本文で特別な説明がない限り複数形の意味を含む。従って、例えば、「細胞」という意味は、複数形でなくても、1つ以上の細胞を意味し、当該技術などの意味として知られているものと同等である。特別に定義されない限り、本文で使用されている技術用語や科学用語は、当該技術の通常技術の一つとして一般的に理解されている意味で使用されている。本文で述べられているものと類似のあるいは同等のどの方法や物質も、本発明の実践や実施例のテストで使用が可能であるが、優先される方法、工夫および物質がここで述べられる。文中述べられている広報全ては、参考文献で示されている。本発明は、これまでの発明の長所によりこのような開示を先行する権利を所有しないことを承認するものとしては解釈されない。
【0012】
本文で使用されている、「およそ」は、使用されている数値の10%の上下を意味する。従って、およそ50%とは、45%から55%を示す。
【0013】
前記「血管新生」または前記「新血管形成」と言う単語は現存血管(脈管構造など)から新たに血管、毛細血管、導管などの血液の供給のための血管を生成することを意味する。血管新生は、多くの種類の組織細胞が関係し、例えば、血流や回りの組織間で置換を規則化するのに関与している全ての血管の細胞単層膜を形成する内皮細胞などもそのうちの一つである。新しい血管は(血管新生)、内皮細胞の増生によって現存小血管の壁作り出すことができる。また、血管新生は、腫瘍細胞の生存および増殖(成長)に必要な血液を腫瘍に運ぶ役割もしている。
【0014】
「患者」および「被験者」とう単語は、人間を含めた全ての動物を指している。患者と被験者の例として、人間、牛、犬、猫、ヤギ、羊、豚などが挙げられる。
【0015】
薬剤配合を言及する「治療上効果的な量」とは、病気や治療が必要な状態の原因となっている症状を軽減したり、防ぐ、あるいは身体上の特定の機能において機能障害を引き起こす疾患や障害がある際に身体機能を正常化する、あるいは疾患の臨床的測定パラメーターの1つ、あるいはそれ以上を改善するために十分な量を言う。本出願に関して、治療上効果的なポリカチオン化合物の量は、血管新生を減少させるあるいは阻止するために充分な量を意味する。
【0016】
本発明の側面は、治療上効果的な量のポリカチオン化合物を動物に投与することにより必要な際、動物の血管新生を調整する方法に関する。本発明の側面はまた、治療上効果的な量のポリカチオン化合物を動物に投与することにより必要な際、疾患を治療する、または防ぐ方法に関する。
【0017】
一般的に、前記ポリカチオン化合物は、好ましくは、剛体あるいは半剛体の骨格を示し、その構造は、ねじりを伴い、骨格の一面上で正電荷を持つ側基を表示する。正電気を帯びた側基は、骨格の長さに伴い最適に分配され、一つ以上のヘテロ原子を任意に含む炭素スペーサーにより骨格から最適に分離される。骨格に沿ったねじり自由は分子内水素結合、立体的拘束、または環化により安定する。アリールアミド、ヒドラジド、カリクスレン(calixrene)、サリチルアミドなどの望ましい様々なポリカチオン化合物の配合が述べられる一方、正電気を安定させるのに用いられる他の置き換え可能な側基は、A−Gなどがある。
【0018】
【化11】

【0019】
他に用いられるアミンには、ピペリジン、4位のアミノピリジン、モルホリン、アミノチアゾールなどがある。アミノ基の塩基性は、選択的に、連鎖において1つか2つのフッ素を一つのメチレン基の一つに結合させることによって調整される。骨格の剛性を強化する(ねじり自由を抑制する)ために用いられる他の中央リング置換基には(H−K)などがある。
【0020】
【化12】

【0021】
本発明の実施例の一つとして、前記ポリカチオン化合物は、アリールアミドのオリゴマー化合物の化学式である。
【0022】
【化13】

【0023】
Xが0もしくはSである場合、Rは、直鎖または分岐鎖C−Cのアルキルであり、
その中で、Rは一つあるいはそれ以上の−NHと任意に置換される、あるいは、
【0024】
【化14】

【0025】
Yは結合、もしくは
【0026】
【化15】

【0027】
Zは結合、もしくは
【0028】
【化16】

【0029】
が水素、あるいは直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、その中でRは一つあるいはそれ以上の−NHあるいは、
【0030】
【化17】

【0031】
と任意に置換され、
もしくはRは、−X−Rであり、Rは、
【0032】
【化18】

【0033】
またはメチレンであり、
前記メチレンは、直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルと任意に置換され、その中で前記の直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルは一つあるいはそれ以上の−NHまたは
【0034】
【化19】

【0035】
と任意に置換され、
nは2−10であり、mは1または2である。本発明の他の実施例の一つとして、アリールアミドのオリゴマー化合物は、次の化学式の化合物である。
【0036】
【化20】

【0037】
その中で、R
【0038】
【化21】

【0039】
より好ましい実施例として、化合物は、次の式のアリールアミドである。
【0040】
【化22】

【0041】
Xは0またはSである。
Yは0またはSである。
はまたは−C(=O)−Aである、Aは、直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでAは、任意に一つ以上のNH、−N(CHまたは
【0042】
【化23】

【0043】
と置換され、
は、直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0044】
【化24】

【0045】
と置換され、
は、直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0046】
【化25】

【0047】
と置換され、
はH、−Bまたは−C(=O)−O−Bであり、ここでBは直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルである。
【0048】
他の実施例では、前記ポリカチオン化合物は、次のヒドラジドの化学式である。
【0049】
【化26】

【0050】
その中で、nが1から10で、
XはOかSであり、
YはOかSであり、
Zは結合であり、C−Cの直鎖または分岐鎖のアルキルもしくは1、4−シクロヘキシルであり、
はNHあるいはNH−Aであり、その中でAはC−Cの直鎖または分岐鎖のアルキルであり、その中でAは、任意に−NH、−N(CHまたは
【0051】
【化27】

【0052】
と置換され、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、ここでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0053】
【化28】

【0054】
と置換され、
は直線、あるいは枝分かれしたC−Cのアルキルであり、ここでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0055】
【化29】

【0056】
と置換され、
は、Hまたは
【0057】
【化30】

【0058】
である。
【0059】
他の本発明の実施例では、ポリカチオン化合物は、次の化学式のカリクスレン(calixrene)である。
【0060】
【化31】

【0061】
nが2−8で、より好ましくは、4−8であり、
XはOまたは−O−CH2−C(=O)−O−の結合であり、
ここでAはC−Cの直鎖または分岐鎖のアルキルであり;
はC−Cの直鎖または分岐鎖のアルキルであり、ここでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0062】
【化32】

【0063】
と置換される。
【0064】
他の本発明の実施例では、前記ポリカチオン化合物は次の化学式のサリチルアミドである。
【0065】
【化33】

【0066】
nは、2から10である;
【0067】
【化34】

【0068】
はHまたは
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、ここでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0069】
【化35】

【0070】
と置換され、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、ここでRは、任意に一つ以上の−NH2、−N(CHまたは
【0071】
【化36】

【0072】
と置換され、
4は、OH、NHあるいは
【0073】
【化37】

【0074】
AはOHまたはNH2である。
【0075】
さらなる実施例では、前記ポリカチオン化合物は、表1に示される化合物1、化合物2、化合物3、化合物4、化合物5、化合物6、化合物7、化合物8、化合物9、化合物10、化合物11、化合物12、化合物13、化合物14、化合物15、化合物16、化合物17、化合物18、化合物19、化合物20、化合物21、化合物22、化合物23、化合物24、化合物25、化合物26、化合物27、化合物28、化合物29、化合物30、化合物31、化合物32、化合物33、化合物34、化合物35、化合物26、化合物37、化合物38、化合物39、化合物40、化合物41、化合物42、化合物43、化合物44、化合物45、化合物46、化合物47、化合物48、化合物49、化合物50、化合物51、化合物52、化合物53、化合物54と化合物55から成る基より選択される。
【0076】
化合物1と化合物2が、アリールアミドと同じ構造のである時、化合物1と化合物2は異なる状態で合成され、異なる純度を示す。重合の際、DCM(ジクロロメタン)は、化合物2の溶媒として用いられ、NMP(1−メチル−2−ピロリジノン)は、化合物1の溶媒として用いられる。重合はNMPであまり効果的ではないため、化合物1はn=2−10で、化合物2ではn=10である。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【0082】
【表6】

【0083】
【表7】

【0084】
【表8】

【0085】
【表9】

【0086】
【表10】

【0087】
【表11】

【0088】
さらに前記ポリカチオン化合物は、そこで化合物26、化合物28、化合物29、化合物34、化合物48または化合物50あるいはその混合である。
他に、本発明の方法において有益なポリカチオン化合物は、2002年3月7日に出願された「抗感染症薬としての顔面両親媒性高分子」と言う表題のWO 02/07/2007、2002年3月7日に出願された「抗感染症薬としての顔面両親媒性高分子」と言う表題のWO 02/100295、2004年3月17日に出願された「顔面両親媒性高分子とそこでのオリゴマーとその使用法」言う表題のWO 04//082634に示されているものである。
【0089】
他の実施例として、化合物はポリカチオン化合物の治療上効果的な量から成る血管新生の調整をするために提供される。
【0090】
本発明の実施例の一つとして、前記ポリカチオン化合物は、次の化学式のアリールアミドオリゴマー化合物である:
【0091】
【化38】

【0092】
Xは0もしくはSであり、
は、直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、
その中で、Rは一つあるいはそれ以上の−NHあるいは
【0093】
【化39】

【0094】
と任意に置換され、
Yは結合、あるいは
【0095】
【化40】

【0096】
Zは結合、あるいは
【0097】
【化41】

【0098】
は、水素または、直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこで前記Rは、任意に一つ以上の−NHまたは
【0099】
【化42】

【0100】
と置換され、
あるいはR2は、−X−Rであり、
は、
【0101】
【化43】

【0102】
あるいはメチレンであり、
その中で前記メチレンは、直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルと任意に置換され、その中で前記直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルは一つあるいはそれ以上の−NHまたは
【0103】
【化44】

【0104】
と置換され、
nは2−10である;
またmは1あるいは2である。
【0105】
より好ましい実施例では、化合物は、下記のアリールアミドの化学式である。
【0106】
【化45】

【0107】
Xが0またはSである。
Yが0またはSである。
は、Hまたは−C(=O)−A、直鎖または分岐鎖のAC−Cのアルキルであり、その中でAは一つあるいはそれ以上の−NH、−N(CHあるいは
【0108】
【化46】

【0109】
と任意に置換され、
直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこで、R一つあるいはそれ以上の−NH、−N(CHあるいは
【0110】
【化47】

【0111】
と任意に置換され、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこで、R一つあるいはそれ以上の−NH、−N(CHあるいは
【0112】
【化48】

【0113】
と任意に置換され、
は、H、−Bまたは−C(=O)−O−Bであり、ここでBは直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルである。
【0114】
その他の実施例として、前記ポリカチオン化合物は、次の化学式のヒドラジドである。
【0115】
【化49】

【0116】
n=1から10であり;
XはOまたはSであり、
YはOまたはSであり、
Zは直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルまたは1,4−シクロヘキシル基の結合で、
はNHあるいはNH−Aであり、その中でAはC1からC9の直鎖または分岐鎖のアルキルであり、その中でAは、任意に−NH、−N(CHまたは
【0117】
【化50】

【0118】
と置換され、
は、直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0119】
【化51】

【0120】
と置換され、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、ここでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0121】
【化52】

【0122】
と置換され、
はHまたは
【0123】
【化53】

【0124】
である。
【0125】
他の本発明の実施例では、前記ポリカチオン化合物は次の化学式のカリクスレン(calixrene)である。
【0126】
【化54】

【0127】
nは、2から8、より好ましくは4から8であり、
XはOまたは−O−CH2−C(=O)−O−の結合であり、
は、−Aまたは−O−Aであり、そこでAは直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、ここでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0128】
【化55】

【0129】
と置換される。
【0130】
他の本発明の実施例では、前記ポリカチオン化合物は次の化学式のサリチルアミドである。
【0131】
【化56】

【0132】
nは、2から10であり、
はHまたは
【0133】
【化57】

【0134】
であり、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0135】
【化58】

【0136】
と置換され、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0137】
【化59】

【0138】
と置換され、
はOH、NHまたは、
【0139】
【化60】

【0140】
であり、そこでAはOHまたはNHである。
【0141】
より好ましい実施例では、本化合物は、化合物1、化合物2、化合物3、化合物4、化合物5、化合物6、化合物7、化合物8、化合物9、化合物10、化合物11、化合物12、化合物13、化合物14、化合物15、化合物16、化合物17、化合物18、化合物19、化合物20、化合物21、化合物22、化合物23、化合物24、化合物25、化合物26、化合物27、化合物28、化合物29、化合物30、化合物31、化合物32、化合物33、化合物34、化合物35、化合物26、化合物37、化合物38、化合物39、化合物40、化合物41、化合物42、化合物43、化合物44、化合物45、化合物46、化合物47、化合物48、化合物49、化合物50、化合物51、化合物52、化合物53、化合物54と化合物55、あるいはその混合から成る。
【0142】
より好ましい実施例では、本化合物は、化合物26、化合物28、化合物29、化合物34、化合物48、または化合物50、あるいはその混合から成る。
【0143】
サリチルアミドのポリカチオン化合物は下記のように合成される:
【0144】
【化61】

【0145】
他の実施例では、前記化合物は、ポリカチオン化合物の治療上効果的な量による血管新生の調整のために提供される。
【0146】
ある実施例では、前記化合物は、血管新生を促すポリカチオン化合物の治療上効果的な量を含む。より好ましい実施例では、本化合物は、血管新生を阻止するポリカチオン化合物の治療上効果的な量を含む。
【0147】
好ましい実施例では、前記化合物は、次の化学式のアリールアミドである。
【0148】
【化62】

【0149】
XはOまたはSであり、
YはOまたはSであり、
は、Hまたは−C(=O)−A、直鎖または分岐鎖のAC−Cのアルキルであり、その中でAは一つあるいはそれ以上の−NH、−N(CHあるいは
【0150】
【化63】

【0151】
と任意に置換され、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0152】
【化64】

【0153】
と置換され、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0154】
【化65】

【0155】
と置換され、
は、H、−Bあるいは−C(=O)−O−Bであり、そこではBは直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルである。
【0156】
ある実施例では、前記ポリカチオン化合物は、次の化学式のヒドラジドである。
【0157】
【化66】

【0158】
n=1から10であり;
XはOまたはSであり、
YはOまたはSであり、
Zは直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルまたは1、4−シクロヘキシル基の結合で、
はNHあるいはNH−Aであり、その中でAはCからCの直鎖または分岐鎖のアルキルであり、その中でAは、任意に−NH、−N(CHまたは
【0159】
【化67】

【0160】
と置換され、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0161】
【化68】

【0162】
と置換され、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこで、R一つあるいはそれ以上の−NH、−N(CHあるいは
【0163】
【化69】

【0164】
と任意に置換され、
はHまたは
【0165】
【化70】

【0166】
である。
【0167】
本発明の他の実施例では、前記ポリカチオン化合物は、次の化学式のカリクスレン(calixarene)である。
【0168】
【化71】

【0169】
nは、2から8、より好ましくは4から8であり、
Xは、Oまたは−O−CH2−C(=O)−O−の結合であり、
は、−Aまたは−O−Aであり、そこでAは直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0170】
【化72】

【0171】
と置換される。
【0172】
本発明の他の実施例では、前記ポリカチオン化合物は、次の化学式のサリチルアミドである。
【0173】
【化73】

【0174】
nは2から10であり、
は、Hまたは
【0175】
【化74】

【0176】
であり、
は、直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0177】
【化75】

【0178】
と置換され、
は直鎖または分岐鎖のC−Cのアルキルであり、そこでRは、任意に一つ以上の−NH、−N(CHまたは
【0179】
【化76】

【0180】
と置換され、
はOH、NHあるいは
【0181】
【化77】

【0182】
であり、そこでAはOHまたはNHである。
【0183】
本発明の一つの側面は、本発明の前記化合物は、血管新生と関連する疾患や障害に有用である。より好ましい実施例では、本化合物は治療上効果的な量の化合物26、化合物28、化合物29、化合物34、化合物48、または化合物50あるいはその混合物から成る。
【0184】
本発明の他の実施例では、前記ポリカチオン化合物は、血管新生が十分でない時に起こる疾患または障害を防ぐまたは治療するために使用される。具体的には脳梗塞、心臓病、潰瘍、強皮症や不妊症などの疾患がある。
【0185】
本発明のある実施例では、前記ポリカチオン化合物は、血管新生が過剰である時に起こる疾患または障害を防ぐまたは治療するために使用される。具体的には癌、関節リウマチ、AIDS合併症、乾癬、失明などの疾患がある。
【0186】
通常、癌は異常で抑制が効かない細胞部分での悪性増殖もしくは腫瘍全てのことを言い、リンパ系もしくは、血流を通って違った身体部分に広がっていく。癌には、充実性腫瘍と血液感染性腫瘍のものがある。充実性腫瘍には、カポジ肉腫、血管腫、充実性腫瘍、乳癌、肺癌、卵巣癌、睾丸癌、大腸癌、横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、および骨肉腫などがある。血管新生はまた、骨髄で白血球細胞が無制限に増殖する様々な急性または慢性的腫瘍性疾患全てを指す白血病などの血液感染性腫瘍に関連しており、このような疾患は、通常は貧血、血液凝固能およびリンパ節、肝臓そして脾臓の増大に伴って起こる。血管新生は、白血病のような腫瘍を生み出す骨髄で異常な働きをすると考えられている。
【0187】
また、本発明の他の実施例では、疾患または障害には、肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、腎臓癌、膀胱癌、膵臓癌、膠芽腫細胞、神経芽細胞腫、盲目、黄斑変性、糖尿病性網膜症、角膜移植、近視性変性、AIDSに関連する合併症、関節炎、リウマチ関節炎、乾癬、強皮症、炎症性大腸炎、脳梗塞、心疾患、潰瘍および不妊症がある。例えば、これらに限定されるのではないが、癌、炎症性関節炎(リウマチ関節炎など)、糖尿病性網膜症やその他の眼に関する他の新生血管疾患、(例えば、角膜血管新生、緑内障、水晶体後線維増殖症および黄斑変性など)、動静脈奇形、過剰出血の状態(月経過剰)、Osler−Weber症候群、心筋血管新生、プラーク新生血管、血管拡張症、血友病関節、血管線維腫および傷口肉芽発生がある。ここに提供される抗血管新生化合物は内皮細胞が異常に刺激されるあるいは過剰に増殖する疾患の治療にもまた有用である。この疾患には、これらに限定されるのではないが、腸管癒着症、クローン病、アテローム性動脈硬化、強皮症および肥厚性瘢痕(例えばケロイド)などがある。
【0188】
ポリカチオン化合物での予防、または治療に適した血管新生−介在疾患は、これらに限定されるものではないが、腫瘍および癌に関連した障害(例えば、網膜腫瘍増大、良性腫瘍(血管腫、聴神経腫瘍、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫など)、固形腫瘍、血液由来腫瘍(白血病、血管線維腫、カポジ肉腫など)、腫瘍転移、腫瘍の成長を促す新血管形成を必要とするその他の癌など)、眼球新生血管障害(糖尿病性網膜症、黄斑変性、未熟児網膜症、新生血管緑内障、角膜移植拒絶、およびその他の眼球血管新生媒介障害など)、炎症性障害(免疫性および非免疫性炎症、リウマチ関節炎、慢性関節リウマチ、炎症性大腸炎、乾癬、およびその他の慢性炎症性障害など)、子宮内膜症、およびその他の血管の不当または、不適切な浸潤に関連する障害(水晶体後線維増殖症、ルベオーシスおよびアテローム硬化性プラーグと骨粗しょう症における毛細血管の増殖など)、Osler−Weber症候群、心筋血管新生、プラーク新生血管、血管拡張症、血友病関節、傷口肉芽発生などがある。血管新生により病理状態が継続または進行する他の疾患は、当業者にはよく知られており、同じように血管新生媒介としてここで使用されている単語の意味の範囲に含まれることを目的としている。
【0189】
ある実施例では、ポリカチオン性化合物は他の血管新生阻害物と併用して用いられる。血管新生阻害物は、当該技術として知られており、既知の方法として用意される。血管新生阻害物と対象物の詳細については、Chenら、Cancer Res.55:4230−4233(1995)、Goodら、Proc.Natl、
Acad.Sci.USA87:6629−6628(1990)、O’Reillyら、cell 79:315−328(1994)、Parangiら、Proc. Natl.Acad.Sci.USA93:2002−2007(1996)、Rastinejadら、cell 56:345−355(1989)、Guptaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA92:7799−7803(1995)、Maioneら、Science 247:77−79(1990)、Angiolilloら、J.Exp.Med.182:155−162(1995)、Strieterら、Biochem.Biophys.Res、Comm.210:51−57(1995);Voestら、J.Natl.cancerInst.87:581−586(1995)、Caoら、J.Exp.Med.182:2069−2077(1995)、およびClappら、Endocrinology 133:1292−1299(1993)、などを参照。これらは参照することによりその全体がここに組み込まれる。血管新生阻害物のその他の詳細については、例えばBloodら、Bioch.Biophys Acta.,1032:89−118(1990)、Mosesら、Science、248:1408−1410(1990)、Ingberら、LatInvest.,59:44−51(1988)、および米国特許No 5,092,885および5,112,946を参照。、これらは参照することによりその全体がここに組み込まれる。
【0190】
他の実施例では、ポリカチオン性化合物は、他の治療法、例えば抗炎症性治療法、標準眼球治療法、標準皮膚治療法、放射線治療、腫瘍手術、および充実性腫瘍に対する従来の化学療法などと併用したり、転移の抑制に使用する。血管新生阻害物の投与は、化学療法の後、もしくは最中に通常行われ、化学療法では、腫瘍組織へ栄養素と血液を供給することで血管新生を回復に導くことにより腫瘍組織が、毒の攻撃に反応する。また、転移を防ぐために充実性腫瘍を取り除く外科手術の後に、血管新生阻害物を投与することが望ましい。細胞毒性または抗癌剤は、アジリジンチオテパ、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、白金錯体、非標準アルキル化剤、葉酸類似物質、プリン類似物質、アデノシン類似物質、ピリミジン類似物質、置換尿素、抗腫瘍抗生物質、微小管剤、およびアスプリナーゼ(asprignase)などが当該技術として知られている。
【0191】
本発明の他の側面は、血管新生媒介過程の阻害において、単独、または他の既存の抗炎症性、抗血管新生、抗癌および眼球の治療法と併用されるポリカチオン性化合物の使用に関する。ポリカチオン性化合物は、炎症性疾患、および眼球疾患において血管新生媒介障害の効果的な治療と予防策の代表的なものである。
【0192】
上記に述べた化合物は、投与の際利用できる担体と供にポリカチオン性化合物と誘導体が含まれる処方により投与される。通常当事者に良く知られている、この使用目的に適した活性成分が含まれる処方あるいは薬物送達システム全てを使用することができる。経口、直腸、局所、または非経口(皮下、腹腔内、筋肉内および静脈内を含む)投与に適した薬学上利用可能な担体は、当事者に知られている。担体は、処方上、他の内容物と混合可能であるという点で薬学上利用可能でなければならなく、本出願において有害であってはならない。
【0193】
非経口的投与に適した処方は、都合よく活性化合物の無菌性水溶性調合であり、それを受け取る血液に都合よく等張性を持つ。すなわち、そのような処方は都合良く蒸留水、5%のブドウ糖を含む蒸留水または生理食塩水である。また、有用な処方は、濃縮液または処方(1)の化合物を含む固体であり、それを適切な溶媒と供に希釈することで、上記の非経口的投与に適した溶液ができる。
【0194】
腸内投与では、化合物は、それぞれに粉上または顆粒上の決められた量の活性化合物を含むカプセル、錠剤またはトローチ剤のような不連続単位、あるいはシロップ、エリキシル剤、乳液、ドラフト(draught)などの水溶液または非水溶液に浮遊または溶解させ、不活性担体と混合させることができる。適した担体は、でんぷん、砂糖などで、潤滑油、香味料結合剤など、または同じ性質の物質などを含む。
【0195】
錠剤は、圧縮または型に押し付けて成形することにより作られ、任意に一つまたはそれ以上の副成分を混合する。圧縮された錠剤は、適した機械で流通型、例えば、粉上または顆粒などの中で活性化合物を圧縮することにより調合され、任意に結合剤、潤滑油、不活性希釈剤、表面活性または分散剤などの副成分を混合する。型に押し付けて成形するタイプの錠剤は、適した担体のうちのいずれかと粉上の活性化合物の混合物を型に押し付けて成形することで作られる。
【0196】
シロップまたは浮遊液は、活性化合物をサッカロースなどの濃縮砂糖水に加えることにより作られ、副成分のうちのどれかを混ぜることもある。そのような副成分には、香味料、砂糖の結晶化を遅らせる薬剤、または他のどの内容物の溶解度も向上させる薬剤、例えばグリセロールやソルビトールなどの多価アルコールなどがある。
【0197】
直腸投与のための処方は、通常担体と供に座薬基材としてココアバターまたはWitepsol S55(ドイツDynamite Nobel Chemical社の商標)を使用した坐薬である。
【0198】
他の選択として、化合物は、リポソーム、またはマイクロスフェア(あるいは微粒子)で投与される。リポソーム、またはマイクロスフェアを患者に投与するために調合する方法は、当事者に良く知られている。参考文献としてここに取り入れられた内容、米国特許.No4,789,734には、リポソームに生体物質を包み込むための方法が述べられている。基本的に、前記物質は、適量のリン脂質および脂質が加えられた水溶液に溶け、必要に応じて界面活性剤も加えられ、前記物質は、必要な場合は透析または超音波分解されることもある。既知の方法の再検討は、「Drug Carriers in Biology and Medicine」(医学における薬物担体)の287ページから341ページにG. Gregoriadiにより紹介されている(Academic Press、1979)。
【0199】
ポリマーまたは蛋白質で形成されたマイクロー球体あるいはナノ球体は、当該者に良く知られており、消化管から直接、血流まで到達する通路の確保を可能にする。他の選択として、前記化合物は、取り入れられてから、マイクロー球体・ナノ球体、またはその両方の合成物として、数日から数ヶ月かけてゆっくりと体内で開放され植えつけられる。参考例としては、参考文献としてここに取り入れられた内容、米国特許番号4,906,474,4,925,673、番号3,625,214とJeinのTIPS19:155−157(1998)を参照。
【0200】
本発明の前記ポリカチオン性化合物は、生体外および生体内の抗血管新生効果を示す。さらに、本発明の前記ポリカチオン性化合物はヘパリンに対する拮抗効果を示す。理論に縛られることは望ましくないが、前記ポリカチオン性化合物の前記抗血管新生効果は、少なくともFGFおよびVEGF受容体の活性化を促すヘパリンの役割を中和する前記ポリカチオン性化合物の能力の一部である。
【0201】
下記の例において、多様な物質を次に示すように得た。
全ての試薬は、化学用で、シグマケミカル社(ミズーリ州、セントルイス)からもしくは、VWR化学(ニュージャージ州、ブリッジポート)を通じて購入したものである。酢酸コルチゾン、ウシ血清アルブミン(BSA)、およびゼラチン溶液(牛皮からのB種2%)をシグマケミカル社(ミズーリ州、セントルイス)から購入した。Earl’s saltsのM199成長培地、基本FGF、インスリン・トランスフェリン・セレンG補給剤(I−T−Se)100X、ダルベッコのCa+2およびMg+2の入ったリン酸緩衝食塩水(PBS)とCa+2およびMg+2の入らないもの、および0.5 M EDTAをGibco BRL(ニューヨーク州、グランドアイランド)から得た。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、内皮細胞基礎培地(血清、EBM)、内皮基礎培地(EGM)(成長因子、ウシ胎仔血清などにより補給される)およびトリプシン0.025%とEDTA0.01%の溶液をClonetics社(カリフォルニア州、サンディエゴ)から購入した。ヒト前立腺(TSU−Pr)腫瘍 細胞をAmerican Type Culture Collection(メリーランド州、Rockville)から得られた。マトリゲル(登録商標)マトリックス、およびヒトコラーゲンIIIは、ベクトン・ディッキンソン株式会社(マサチューセッツ州ベッドフォード)から購入した。HEMA−3固定液と染色溶液をバイオケミカル化学社(ニュージャージー州、Swedesboro)から購入した。受精鶏卵をチャ−ルス・リバー社SPAFAS Avian Products&Services(コネチカット州、North Franklin)より購入した。生体内新生血管は、以前、Auerbachらにより述べられた方法により検査を行った(Auerbachら、J.Dev. Biol.,41:391−394、1974年)が、参照することによりよりその全体がここに組み込まれる。
【実施例1】
【0202】
次の例は、本発明の模範的ポリカチオン性化合物の抗血管新生効果を示す。受精後10日経過した胚をSpafas社(コネチカット州、Preston)より購入し、55%の相対湿度で気温を37度に保ち培養した。ロウソクの灯りをかりながら暗闇の中、空気嚢を覆う殻に皮下注射器で小さな穴を開けた。二つ目の穴は、ロウソクの灯りで観察しながら、胚膜の無血管蛋白質の上の平らな面の卵の殻に穴を開けた。偽空気嚢は、絨毛尿膜(CAM)を殻と分離させる最初の穴にかかる陰圧を応用して二つ目の穴の下に作られた。小さな工芸砥石車を利用して落としたCAMの上の殻を切って、底にあるCAMに直接およそ1.0cmの窓が作られ、(ドレメル、RacineneにあるEmerson Electric社の部門、ウエスコンシン)、直接底にあるCAMに近づけるようになった。番号1のろ紙(Whatman International製、英国)のろ過材ディスクを、水とエタノール95%溶液に3mg/mLの酢酸コルチゾン(シグマ社製、ミズーリ州、セントルイス)を入れた中に浸し、続いて、無菌状態で乾かした。FGF2(Life Technologies製、メリーランド州、Gaithersburg)を受精後10日経過した鶏胚のCAMの血管を増殖するために使用した。1μg/mLのPBSを溶かしたFGF2に吸着した無菌のろ過材ディスクを増殖中のCAMに置いた。24時間、検査化合物もしくは対象物をCAMに局所的に、直接的加えた。
【0203】
FGF2が染み込んだろ過材ディスクの直下のCAM組織を、検査化合物もしくは対象物で48時間前に前もって処理した胚から切除した。PBSを用いて組織を、3回洗浄した。その組織を、35−mmのシャーレー(Nalgen Nunc製、ニューヨーク州、ロチェスター)に置き、50Xの倍率のSV6実体立体顕微鏡(Karl Zeiss製、ニューヨーク州、Thomwood)で検査した。CAM組織のフィルター隣接部位のデジタル映像を3−CCDカラービデオカメラシステム(米国東芝製、ニューヨーク州、ニューヨーク)を使って集め、Image−Pro Plusソフトウエア(Media Cybernetics製、メリーランド州、Silver Spring)で分析した。表4には、それぞれの部位を数えるフィルターディスク部分と同じ円領域内にある血管分岐点の数が入っている。
【0204】
CAM細胞は、FGF2が染み込んだろ過材ディスクの直下のCAM組織を、検査化合物もしくは対象物で48時間前に前もって処理した胚から切除した。PBSを用いて組織を、3回洗浄した。その組織を、35−mmのシャーレー(Nalgen Nunc製、ニューヨーク州、ロチェスター)に置き、50Xの倍率のSV6実体立体顕微鏡(Karl Zeiss製、ニューヨーク州、Thomwood)で検査した。CAM組織のフィルター隣接部位のデジタル映像を3−CCDカラービデオカメラシステム(米国東芝製、ニューヨーク州、ニューヨーク)を使って集め、Image−Pro Plusソフトウエア(Media Cybernetics製、メリーランド州、Silver Spring)で分析した。血管新生に対するポリカチオン性化合物の前記効果を表2,3および4に示す。図1にも前記効果を示す。
【0205】
【表12】

【0206】
【表13】

【0207】
【表14】

【0208】
データは、平均+SEM、n=8である。
【0209】
表2、3および4に示されているように、CAMモデルにおいて、前記ポリカチオン性化合物は、FGF2誘発性血管新生を阻止した。
【実施例2】
【0210】
次の例は、本発明のポリカチオン性化合物による内皮細胞管形成の阻害を示す。内皮細胞ごとの違いがGrantらにより開発された方法を用いて検査された。(Grantら、生体外細胞Dev.Biol.,27A:327−336(1991)、マトリゲル(登録商標)マトリックス赤フェノールフリー(ベクトン・ディッキンソン株式会社の市販製品、マサチューセッツ州ベッドフォード)を4℃で一晩かけて解凍した。冷たくしたピペットチップを用い、3.0mgのウエルマトリゲル(登録商標)マトリックスを冷たくした24マルチウェルプレートに置いた。マトリゲル(登録商標)マトリックスは、37℃での30分間の培養中、重合可能であった。
【0211】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)が、2%のウシ胎仔血清(EGM)が混ざった内皮細胞成長培地で5%の二酸化炭素と95%の湿度、および気温37℃の中、保管された。真空管検定を0.5%のウシ血清アルブミン(BSA)、1:100に希釈したインスリン・トランスフェリン・セレンG補給剤(I−T−Se、100X)を補給した内皮細胞基礎培地(EGM)で行った。HUVECは、トリプシン処理され、遠心分離機で分離し、続いてリン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄した。数を数えた後、細胞密度を35、000細胞s/mLに調整した。
【0212】
35,000細胞s/mL/ウエルの最終濃縮物を、100ng/mlの組み換えヒト線維芽細胞増殖因子塩基で処理し、ポリカチオン性化合物(表1Bを参照)をEBM媒介物に溶かした。処理済の細胞を、細胞結合が可能な5%の二酸化炭素と95%の湿度、および気温37℃の中で培養した。
【0213】
続いて、前記媒介物を吸引し、細胞を固定して、改良HEMA−3染色液キットを使用し、染色した。マイクロタイターのウェル部分のデジタル映像をDKC5000 3−CCDカラービデオカメラシステム(米国東芝製、ニューヨーク州、ニューヨーク)を用いて集め、Image−Pro Plusソフトウエア(Media Cybernetics製、メリーランド州、Silver Spring)で分析した。管状形態を持つ染色された細胞の主軸の長さと範囲をマトリゲル(登録商標)マトリックス(ベクトン・ディッキンソン製、マサチューセッツ州ベッドフォード)上で5映像/ウエルから数え、測定した。
【0214】
下記の表5に示すように、ポリカチオン性化合物は、生体外でEC管形成の強力な阻害物質である。
【0215】
【表15】

【実施例3】
【0216】
この例は細胞転移検査に関する。これまでの検査は、8μmの細孔サイズによる使い捨てのNeuroprobe96ウエル走化性チャンバーを使用して行われてきた。このチャンバーでは、ビトロネクチンまたはオステオポンチンのいずれかの勾配に対する細胞転移を計量することができた。培養細胞を、EDTA/トリプシン(0.01%/0.025%)を使用した標準化法に従って除去した。前記細胞を二回洗浄し、EBM(内皮細胞基本培地、Clonetics社製)の中で再懸濁した(2x10/ml)。0.0125−100μg/mlのビトロネクチンまたはオステオポンチンのいずれか(33μl)を使い捨て走化性チャンバーの底部のウエルに加え、前記のフレーム付きのフィルターを使用して集めた。前記細胞浮遊液(45μl)を、違った濃度の検査薬5μlを含むポリプロピレン皿に加え、22度で10分間培養した。細胞・検査薬浮遊液25μlを上部フィルターウエルに加え、それから加湿細胞培養器の中で一晩培養した(37℃で22時間)。一晩培養した後、転移しなかった細胞や、過剰な媒体は12チャンネルピペットと細胞擦過器を使用してゆっくりと除去した。前記フィルターを、PBS(noCa+2 or Mg+2)の中で2回洗浄し、1%のホルムアルデヒドで固定した。転移細胞の腹膜を、TritonX−100(0.2%)に浸透させ、PBSで2〜3回洗浄した。転移細胞のアクチン・フィラメントを30分間(22℃)でローダミンファロイジンを用い、洗浄した(12.8IU/ml)。ローダミンファロイジンは、保管先が4度に保たれ、光を避ける環境の場合、毎週新しく作られ、最長3日間までの使用とした。走化性は、Cytofluor II(530励振/590発光)を使用して蛍光検出により量を決定した。全細胞処理とそれに続く洗浄は、特別に設計された処理・洗い場で行った。この場所は、それぞれ容積容量30mlの6つの個別の試薬ユニットから成る。個別ユニットは、次に述べる試薬の一つで占められている−PBS、ホルムアルデヒド、Triton X−100またはローダミンファロイジン。この技術を使用して、フィルターは、適切な溶液に浸されるため、転移細胞の損失は最小限となる。この技術は、最大量での細胞転移を可能にし、再現可能な結果が求められ、最低限の内外検査信頼性が得られる(Bozarthら、Methods in cell science(細胞科学における方法)、19(3):179−187、1997:Pennoら、Methods in cell science(細胞科学における方法)、19(3):189−195、1997)。
【0217】
表6に示すように、本発明のポリカチオン性化合物は、ヒト臍帯静脈内皮転移を阻止する。
【0218】
【表16】

【実施例4】
【0219】
次の例に、本発明におけるポリカチオン性化合物のヘパリン拮抗効果を示す。前記ポリカチオン性化合物の抗ヘパリン活性について理解するために、固定濃度のポリカチオン性化合物または、50%のヒト赤血球細胞の溶解を起こす濃度のポリカチオン性化合物を用いて、阻害度を測定する検査を行った。
【0220】
10IUの抗トロンビンを10mlの緩衝液に溶かし、1IU/ml抗トロンビン原液を作った。1IU/ml(250x)の抗トロンビン原液と336mMのNaCl原液が、全容量50μlの緩衝液で希釈されたため最終的な抗トロンビン濃度は、0.004IU/サンプルウエル、NaClでは、150mM/サンプルウエルとなった。実験のための前記化合物の1μl、すなわち最終濃度10μg/ml(0.5の対数拮抗希釈に匹敵する)のものをサンプルウエルに加えた。サンプルをかき混ぜ、20分間室温で培養することができた。50μlの緩衝液にXa因子を溶かしたもの50μlをサンプルウエルに加え最終濃度0.14knat/ウエルとした。(100μlの最終サンプルウエル緩衝液とする7.1knat/ml原液2μl)。前記サンプルに混ぜた後、10分間室温の中でさらに培養した。4mM S−2765の基質原液10μlを最終濃度0.4Mmにするためにそれぞれのサンプルウエルに加えた。
サンプルを混ぜ、発色基質Z−D−Arg−Gly−Arg−pNA(S−2765)の加水分解を行い、それに従い、発色団pNA(p−ニトロアニリン)を遊離して、405nmで観測した。30秒ごと液の均一性を保つためにサンプルをかき混ぜた。ThermoLabsystems Multiskanスペクトル分光光度計を用いて吸光スペクトルを測定した。分光の増加と酵素(Xa因子)の活動化は比例した。Xa因子の阻害度%を標準曲線を用いて決定した。結果を表7に示す。図2も阻害度%を棒グラフで表わしている。
【0221】
【表17】

【0222】
上記図2および表7に説明されているように本発明におけるポリカチオン化合物はXa因子を抑制する。
【0223】
Xa因子の抑制:EC50。ヒトの赤血球の50%の溶解を引き起こすポリカチオン化合物の濃度を判断するため、一定のヘパリン濃度が使用され、異なる量のヘパリン抑制因子が加えられた。この結果が表8に記述されている。
【0224】
【表18】

【0225】
上記表7で説明されているように本発明のポリカチオン化合物はXa因子の種々抑制度合いを示す。
【実施例5】
【0226】
次の例は本発明のポリカチオン化合物の凝固時間に対する効果を示す。本明細書に記載されている抗ヘパリン検査が使用された。検査は1mg/L、2mg/Lもしくは4mg/Lのヘパリンを含み、化合物26の増加量が加えられた。表9および図3が化合物26の凝固時間に対する効果を示す。
【0227】
【表19】

【0228】
上記図3および表9に説明されているように、本発明におけるポリカチオン化合物である化合物26は種々のヘパリン濃度において凝固時間を短縮しており、これは前記化合物のヘパリンの活動に対する抑制能力を証明している。
本明細書に好適実施形態が詳細に渡り記載されているが、以下に続く特許請求の範囲により定義された本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々修正、追加、代替や同様の行為が可能であることはこの技術に精通したものなら言うまでもない。本発明のその他の実施例は、明細書もしくは本明細書に開示されている本発明の実践で考慮されている事項によりこの技術に精通したものなら言うまでもない。以下の特許請求の範囲に示されている本発明の真の範囲と精神のもとに、本明細書および種々の例は模範をとして考慮されるよう意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0229】
本発明の出願は、カラーによる履行ずみの図あるいや写真が少なくとも1枚含んでいる。このカラーの図と写真を伴う本発明の複写は要望があり次第、必要な料金が支払われてから特許および商標事務所により提供される。
【図1】図1に抗血管新生のCAM模型でのポリカチオン化合物の効果を示す。
【図2】図2は、本発明のポリカチオン化合物のXa因子の抑制度を示す。
【図3】図3は、本発明の凝固時間においてのポリカチオン化合物の化合物110002化合物の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上効果的な量のポリカチオン性化合物を含む、血管新生を阻止するための化合物。
【請求項2】
前記ポリカチオン性化合物がアリールアミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記アリールアミドが
【化1】

である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記アリールアミドが、
【化2】

である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
前記アリールアミドが、
【化3】

である、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
前記ポリカチオン性化合物がヒドラジドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記ヒドラジドが、
【化4】

である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記ヒドラジドが、
【化5】

である、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
前記ポリカチオン性化合物がカリクスレン(calixrene)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記カリクスレン(calixrene)が、
【化6】

である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
前記カリクスレン(calixrene)が、
【化7】

である、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
前記ポリカチオン性化合物がサリチルアミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
前記サリチルアミドが、
【化8】

である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記サリチルアミドが、
【化9】

である、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
前記サリチルアミドが、
【化10】

である、請求項9に記載の化合物。
【請求項16】
それを必要とする動物において血管新生を阻止する方法であって、治療上効果的な量のポリカチオン性化合物を前記動物に投与することを含む方法。
【請求項17】
前記ポリカチオン性化合物がアリールアミドである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリカチオン性化合物がヒドラジドである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリカチオン性化合物がカリクスレン(calixrene)である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリカチオン性化合物がサリチルアミドである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
それを必要とする動物において血管新生に関連する疾患や障害を治療する、あるいは予防する方法であって、治療上効果的な量のポリカチオン性化合物を前記動物に投与することを含む方法。
【請求項22】
前記ポリカチオン性化合物は、アリールアミド、ヒドラジド、カリクスレン(calixrene)、サリチルアミド、およびその組合せからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患や障害が過剰な血管新生に関連する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患や障害が、肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、腎臓癌、膀胱癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、神経芽腫、盲目、黄斑変性、糖尿病性網膜症、角膜移植、近視性変性、AIDSに関連する合併症、関節炎、リウマチ関節炎、乾癬、強皮症、炎症性大腸炎、脳梗塞、心疾患、潰瘍および不妊症からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−502703(P2008−502703A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516741(P2007−516741)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/021323
【国際公開番号】WO2005/123660
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506416798)ポリメディックス、インク. (3)
【Fターム(参考)】