説明

ポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形体の製造方法

【課題】押出成形加工時の生産性、成形体の二次加工性、耐熱性、表面外観に優れ、電気・電子用部材、自動車用部材、建築用部材、その他産業用部材としての用途に好適なポリフェニレンエーテル系樹脂成形体の製造方法の提供。
【解決手段】ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)5〜95重量部およびポリアミド樹脂(B)5〜95重量部の合計量100重量部に対して、粘度平均分子量が40万〜1500万の超高分子量ポリマー(C)0.1〜10重量部からなるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を、断熱金型を用いて押出成形することを特徴とするポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は加工性・生産性に優れ、射出成形や押出成形などの成形方法により、所望の形状の製品・部品を効率よく生産でき、かつ、得られる成形体の耐熱性、機械特性、電気特性が優れるため、電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業材料分野の製品・部品用の材料として幅広く用いられている(例えば、特許文献1、2参照。)。
しかし、従来の開示技術(例えば、特許文献3参照。)では、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を押出成形加工してフィルム、シートなどの成形体を得る際の生産性、表面平滑性などの品質が必ずしも良好ではない。また、得られた成形体に対して圧縮成形、真空成形する際に大きくたわむなどの二次加工性を十分に満足するものではなかった。更に、得られた成形体は表面外観等に問題を持つことがあり、電気・電子用部材、自動車用部材、建築用部材、その他産業用部材としての用途に広く展開されるには至っていない(例えば、特許文献3〜5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭45−997号公報
【特許文献2】特開2001−302911号公報
【特許文献3】特開昭63−277269号公報
【特許文献4】特開平63−277270号公報
【特許文献5】特開平11−323122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、押出成形加工する際の生産性、得られた成形体に対して圧縮成形、真空成形する際の二次加工性、成形体の耐熱性、成形品の表面外観に優れ、電気・電子用部材、自動車用部材、建築用部材、その他産業用部材としての用途に好適なポリフェニレンエーテル系樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂成形体の製造方法は、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂5〜95重量部および(B)ポリアミド樹脂5〜95重量部の合計量100重量部に対して、粘度平均分子量が40万〜1500万の(C)超高分子量ポリマー0.1〜10重量部からなるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を、断熱金型を用いて押出成形することを特徴とするポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形体の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、押出成形加工する際の生産性、得られた成形体に対して圧縮成形、真空成形する際の二次加工性、成形品の表面外観に優れる効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂5〜95重量部および(B)ポリアミド樹脂5〜95重量部の合計量100重量部に対して、(C)超高分子量ポリマー0.1〜10重量部からなるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物である。
また、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂成形体は、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を溶融混練した後に、ペレタイズして得られるポリフェニレンエーテル系樹脂ペレットを押出成形してなる成形体である。
<(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂>
本発明における(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、特に限定されないが、(D)ポリフェニレンエーテル5〜100重量%と(E)スチレン系樹脂0〜95重量%の混合物よりなることが好ましい。
本発明の(D)ポリフェニレンエーテルとは、下記(式1)の主鎖構造を持ち、溶融射出成形法や溶融押出成形法などの成形方法により所望の形状の製品・部品を生産でき、電気・電子分野、自動車分野、その他の各種工業材料分野の製品・部品用の材料として幅広く用いられているプラスチック材料である。
【0008】
【化1】

【0009】
(式1)で示される(D)ポリフェニレンエーテルにおける、R1、R4は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシを表わす。R2、R3は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニルを表わす。
本発明の(D)ポリフェニレンエーテルは、0.5g/dl,クロロホルム溶液を用い30℃で測定する還元粘度が、0.15〜1.0dl/gの範囲、より好ましくは0.20〜0.70dl/gの範囲にある重合体または共重合体である。
本発明の(D)ポリフェニレンエーテルは具体的には、(F)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等である。
【0010】
本発明の(D)ポリフェニレンエーテルの他の具体的例として、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
上記の本発明の(D)ポリフェニレンエーテルのうち、(F)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく使用でき、最も好ましいのはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
【0011】
本発明で使用する(D)ポリフェニレンエーテルの製造方法は特に限定されない。
本発明で使用する(D)ポリフェニレンエーテルの製造方法の例として、(特許文献6)記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法がある。
米国特許第3306874号明細書、米国特許第3306875号明細書、米国第3257357号明細書、米国第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報、特開昭63−152628号公報、に記載された方法も、本発明のポリフェニレンエーテルの製造方法として好ましい。
本発明の(D)ポリフェニレンエーテルの末端構造は、下記(式2)の構造であることが好ましい。
【0012】
【化2】

【0013】
〔式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ前記(式1)におけるR1、R2、R3、R4と同様に定義される。〕
本発明の(D)ポリフェニレンエーテルの末端構造は、下記(式3)の構造であることが更に好ましい。
【0014】
【化3】

【0015】
〔式中、R5、R5´は水素またはアルキル基を表わす。〕
(式3)の末端構造の(D)ポリフェニレンエーテルを得る手法としては、銅又はマンガンを含有する触媒を用い、第1級または第2級のアミンの存在下で、2,6−ジメチルフェノールを酸化カップリング反応する方法が一例としてあげられる。
上記第1級または第2級のアミンとしては、ジアルキルアミンが好ましく、ジ−n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミンが更に好ましく用いられる。
本発明の(D)ポリフェニレンエーテルは目的に応じ、予め、所望の添加剤を添加しても良い。
【0016】
<(B)ポリアミド樹脂>
本発明で使用することのできる(B)ポリアミド樹脂の種類としては、ポリマー主鎖中にアミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものであれば、いずれも使用することができる。
一般に(B)ポリアミド樹脂は、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合などによって得られるが、これらに限定されるものではない。
上記ジアミンとしては大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジアミンが挙げられ、具体例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルナノメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンが挙げられる。
【0017】
ジカルボン酸としては、大別して脂肪族、脂環式および芳香族ジカルボン酸が挙げられ、具体例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。
ラクタム類としては、具体的にはεカプロラクタム、エナントラクタム、ωラウロラクタムなどが挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては、具体的にはεアミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノナノン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸などが挙げられる。
【0018】
本発明においては、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ωアミノカルボン酸は、単独あるいは二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミド類はいずれも使用することができる。
また、これらラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ωアミノカルボン酸を重合反応機内で低分子量のオリゴマーの段階まで重合し、押出機等で高分子量化したものも好適に使用することができる。
本発明に用いるポリアミド樹脂の重合方法は特に限定されず、溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、固相重合、および、これらを組み合わせた方法のいずれでもよい。これらの中では、溶融重合がより好ましく用いられる。
【0019】
本発明で好ましく用いることのできる(B)ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12、ポリアミド6,MXD(m−キシリレンジアミン)、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド6/6,T、ポリアミド6/6,I、ポリアミド6,6/6,T、ポリアミド6,6/6,I、ポリアミド6/6,T/6,I、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/12/6,T、ポリアミド6,6/12/6,T、ポリアミド6/12/6,I、ポリアミド6,6/12/6,Iなどのポリアミドが挙げられ、複数のポリアミドを押出機等で共重合化したポリアミドも使用することができる。
【0020】
本発明で更に好ましい(B)ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6/6,6及びそれらの混合物であり、最も好ましくはポリアミド6、ポリアミド6,6、又はそれらの混合物である。
本発明で極めて好ましい(B)ポリアミド樹脂は、ポリアミド6,6、0〜100重量%とポリアミド6、100〜0重量%の混合物よりなるポリアミドである。
本発明で使用できるポリアミドの好ましい粘度範囲は、ISO307に従い96%硫酸中で測定した粘度数が50〜300ml/gの範囲である。より好ましくは80〜180ml/gの範囲である。
【0021】
本発明においては、(B)ポリアミド樹脂が、上記した範囲外の粘度数を持つポリアミドの混合物であっても、その混合物の粘度数が上記した範囲内に入っていれば問題なく使用可能である。例えば、粘度数150ml/gのポリアミドと粘度数80ml/gのポリアミドの混合物、粘度数120ml/gのポリアミドと粘度数115ml/gのポリアミドの混合物等が挙げられる。
これらの場合においても、その混合物の粘度数が上記範囲内である混合比率であれば構わない。これら混合物の粘度数が上記範囲内に有るか否かは、混合する重量比で96%硫酸に溶解して、ISO307に従い粘度数を測定することで容易に確認することができる。
【0022】
(B)ポリアミド樹脂のなかで特に好ましい混合形態は、各々のポリアミドが粘度数90〜150ml/gの範囲内にあり、かつ粘度数の異なるポリアミドの混合物である。
ポリアミドは末端基として一般にアミノ基、カルボキシル基を有しているが、これらの好ましい比はアミノ基/カルボキシル基濃度比で、9/1〜1/9であり、より好ましくは8/2〜1/9、更に好ましくは6/4〜1/9である。
また、末端のアミノ基の濃度としては少なくとも1×105mol/g以上であることが好ましい。更に好ましくは1×105以上、4×105mol/g以下である。
末端のカルボキシル基の濃度としては少なくとも9×105mol/g以上であることが好ましい。更に好ましくは9×105以上、13×105mol/g以下である。
【0023】
ポリアミド末端基であるアミノ基及びカルボキシル基の定量方法としては、J.E.Waltz、Guy B.Taylor,”Determination of the Molecular Weight of Nylon”,Ind.Eng.Chem.Anal.Ed.,19,448(1947年)、の方法を好ましく用いることができる。
また、アミノ基/カルボキシル基濃度比の定量方法としては、上記方法の他に、1H−NMR法により各々の末端基に由来するピークの強度比より求めることができる。
これらポリアミドの末端基の調整方法は、当業者には明らかであるような公知の方法を用いることができる。例えばポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるようにジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物などから選ばれる1種以上を添加する方法が挙げられる。
【0024】
また、本発明においては、(B)ポリアミドの耐熱安定性を向上させる目的で公知となっている特開平1−163262号公報に記載されてあるような金属系安定剤も、問題なく使用することができる。
これら金属系安定剤の中で特に好ましく使用することのできるものとしては、CuI、CuCl2、酢酸銅、ステアリン酸セリウム等が挙げられる。また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるアルキル金属のハロゲン化塩も好適に使用することができる。 これらは、もちろん併用添加しても構わない。
金属系安定剤および、又はアルキル金属のハロゲン化塩の好ましい配合量は、合計量としてポリアミドの100重量部に対して、0.001〜1重量部である。
【0025】
また、本発明においては、上述した金属系安定剤の他に、公知の有機安定剤も問題なく使用することができる。有機安定剤の例としては、イルガノックス1098等に代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤、イルガフォス168等に代表されるリン系加工熱安定剤、HP−136に代表されるラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
これら有機安定剤の中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、もしくはその併用がより好ましい。
これら有機安定剤の好ましい配合量は、(N)ポリアミド100重量部に対して、0.001〜1重量部である。さらに、上記の他に(N)ポリアミドに添加することが可能な公知の添加剤等も(N)ポリアミド100重量部に対して10重量部未満の量で添加してもかまわない。
【0026】
<(C)超高分子量ポリマー>
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物では、(C)超高分子量ポリマーを添加することにより押出成形加工時の生産性が向上するとともに、表面が平滑で外観のよいポリフェニレンエーテル系樹脂成形体が得られる。
(C)超高分子量ポリマーは、粘度法で測定される粘度平均分子量が生産性の向上効果の観点から40万以上、外観問題から1500万以下である。
本発明において、(C)超高分子量ポリマーの粘度平均分子量が、好ましくは120万〜1000万、より好ましくは300万〜900万である場合に、特に、押出成形加工時の生産性が良好になる。
【0027】
本発明で好ましい(C)超高分子量ポリマーは、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ポリメタクリル酸アルキル,アクリル酸アルキル共重合体、ポリ4フッ化エチレン等の超高分子量体を用いることができる。
本発明で更に好ましい(C)超高分子量ポリマーは、押出成形加工時の生産性と成形品外観の点で、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリメタクリル酸アルキル、超高分子量メタクリル酸アルキル共重合体、または、超高分子量ポリ4フッ化エチレンである。
本発明で最も好ましい(C)超高分子量ポリマーは、超高分子量ポリエチレンである。
【0028】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物における(C)超高分子量ポリマーの添加量は、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂5〜95重量部および(B)ポリアミド樹脂5〜95重量部、よりなる100重量部に対して、成形体表面の平滑性の点から0.1重量部以上、剛性および耐熱性の点から10重量部以下であり、好ましくは、0.3〜8重量部、最も好ましくは、0.5〜6重量部である。
超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量は、粘度法で測定された平均分子量である。具体的には、DIN 53 728 sheet4に従い、デカヒドロナフタレンを用いて粘度数を測定し、更に以下の等式を用いて計算された平均分子量である。
【0029】
マーチンの等式
log η = log[η]+K・[η]・c
η : 粘度数
[η]: 極限粘度(dl/g)
K : 0.139(g)
c : 0.03(g/dl)
マーゴリースの等式
M = 5.37・104[η]1.49
M : 粘度平均分子量
【0030】
<(E)スチレン系樹脂>
本発明でいう(E)スチレン系樹脂とは、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)、スチレン含有ブロック共重合体等が挙げられる。
本発明では、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の耐熱性を高く維持するという観点で、スチレン含有ブロック共重合体が(E)スチレン系樹脂として好ましく使用できる。
【0031】
<スチレン含有ブロック共重合体>
本発明で使用する事のできるスチレン含有ブロック共重合体とは、少なくとも1個のスチレン系化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体、もしくは、上記ブロック共重合体中の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック中の不飽和結合に対して水素添加した水素添加スチレン含有ブロック共重合体である。
【0032】
本発明のスチレン系化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50重量%以上がスチレン系化合物であるブロックを指す。より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50重量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを指す。より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
この場合、例えばスチレン系化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50重量%がスチレン系化合物より形成されていれば、スチレン系化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
【0033】
スチレン系化合物の具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
スチレン含有ブロック共重合体の共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造は1,2−ビニル含量もしくは1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量の合計量が5〜80%好ましく、さらには10〜50%が好ましく、15〜40%が最も好ましい。
本発明におけるスチレン含有ブロック共重合体は、スチレン系化合物を主体とする重合体ブロックaと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックbがa−b型、a−b−a型、a−b−a−b型のから選ばれる結合形式を有するブロック共重合体である事が好ましい。これらの中でもa−b−a型がより好ましい。これらはもちろん混合物であっても構わない。
【0034】
また、本発明で使用するスチレン含有ブロック共重合体は、水素添加されたスチレン含有ブロック共重合体であることが好ましい。
水素添加されたスチレン含有ブロック共重合体とは、上述のスチレン系化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を少なくとも50%以上水素添加したものである。より好ましくは80%以上、最も好ましくは98%以上水素添加したものである。
また、本発明で用いることができる水素添加されたスチレン含有ブロック共重合体の数平均分子量は、200,000以上300,000以下である事が望ましい。この分子量範囲以外の水素添加ブロック共重合体の使用も可能であるが、少量の添加で高い衝撃性を発現するためには、この範囲の水素添加ブロック共重合体を、たとえ少量でも用いることが望ましい。
【0035】
本発明でいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置[GPC SYSTEM21:昭和電工(株)製]を用いて、紫外分光検出器[UV−41:昭和電工(株)製]で測定し、標準ポリスチレンで換算した数平均分子量の事を指す。[溶媒:クロロホルム、温度:40℃、カラム:サンプル側(K−G,K−800RL,K−800R)、リファレンス側(K−805L×2本)、流量10ml/分、測定波長:254nm,圧力15〜17kg/cm2]。この時、重合時の触媒失活による低分子量成分が検出されることがあるが、その場合は分子量計算に低分子量成分は含めない。通常、計算された正しい分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.0〜1.2の範囲内である。
【0036】
スチレン含有ブロック共重合体は、一般的にはリビングアニオン重合法により生産され、極めて分子量分布の狭い(Mw/Mn=1.0〜1.2程度)共重合体が得られる。
また、スチレン含有ブロック共重合体は、本発明の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、スチレン系化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2−結合ビニル含有量もしくは1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量の異なるもの、スチレン系化合物成分含有量の異なるもの、水素添加率の異なるもの等混合して用いても構わない。もちろん、本発明に規定しているスチレン含有ブロック共重合体以外のブロック共重合体を添加することに何ら問題はない。
また、本発明で使用するスチレン含有ブロック共重合体は、全部又は一部が変性されたスチレン含有ブロック共重合体であっても構わない。
【0037】
ここでいう変性されたスチレン含有ブロック共重合体とは、後に詳しく述べる(G)変性剤、または、(I)酸変性剤で変性されたスチレン含有ブロック共重合体を指す。
変性されたスチレン含有ブロック共重合体の製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でスチレン含有ブロック共重合体の軟化点温度以上でかつ、250℃以下の範囲の温度で変性化合物と溶融混練して反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でスチレン含有ブロック共重合体の軟化点以下の温度で、スチレン含有ブロック共重合体と(G)変性剤、または、(I)酸変性剤を溶液中で反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下、非存在下でスチレン含有ブロック共重合体の軟化点以下の温度でスチレン含有ブロック共重合体と(G)変性剤、または、(I)酸変性剤を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられる。
【0038】
これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、更には(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
また、本発明のスチレン含有ブロック共重合体には、パラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合したものを用いても構わない。パラフィンを主成分とするオイルをあらかじめ混合する事により、樹脂組成物の加工性を向上することができる。
【0039】
<(G)変性剤>
本発明で用いる(G)変性剤は、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または三重結合、及び少なくとも1個の酸化アシル基、イミノ基、イミド基、またはグリシジル基を有するものである。
本発明の(G)変性剤として用いられる化合物は、例えば、マレイミド、N−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド、N−アルキルマレインアミド酸、N−アリールマレインアミド酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フェニルマレイミド、イタコン酸、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどがある。
そして、本発明の(G)変性剤は、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フェニルマレイミド、又は、イタコン酸であることが極めて好ましい。
本発明の変性ポリフェニレンエーテルは、(F)ポリ(2,6−ジメチル−フェニレンオキシド)100重量部と、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または三重結合、及び少なくとも1個の酸化アシル基、イミノ基、イミド基、またはグリシジル基を有するものより選ばれる少なくとも1種の(G)変性剤0.1〜10重量部とをあらかじめ加熱反応させることにより得られる。
【0040】
本発明の変性ポリフェニレンエーテルの製造法は、ポリフェニレンエーテル(A)100重量部に対して、効果の点から0.1重量部以上であり、成形時のシルバーストリーク発生の観点から10重量部以下であり、上記の量の(G)変性剤を混合し、かつ、加熱して反応させることが必要である。
本発明の(D)ポリフェニレンエーテルとして、(F)ポリ(2,6−ジメチル−フェニレンオキシド)100重量部と、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または三重結合、及び少なくとも1個の酸化アシル基、イミノ基、イミド基、またはグリシジル基を有するものより選ばれる少なくとも1種の(G)変性剤0.1〜10重量部とをあらかじめ加熱反応させることにより得られる(H)変性ポリフェニレンエーテルを用いると(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂の相溶性が良好となるため好ましく使用できる。
【0041】
本発明の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂の製法として、更に好ましい方法は、(F)ポリ(2,6−ジメチル−フェニレンオキシド)100重量部と、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または三重結合、及び少なくとも1個の酸化アシル基、イミノ基、イミド基、またはグリシジル基を有するものより選ばれる少なくとも1種の(G)変性剤0.1〜10重量部とをあらかじめ加熱反応させて変性ポリフェニレンエーテルを得た後に、引続き、(B)ポリアミド樹脂を添加して得る方法である。
【0042】
<(I)酸変性剤>
本発明で用いる(I)酸変性剤は、ポリカルボン酸、及び/または、ポリカルボン酸の変性物より選ばれる化合物である。
本発明で用いる(I)酸変性剤は、クエン酸、リンゴ酸のようなポリカルボン酸、または、クエン酸、リンゴ酸の誘導体であることが好ましい。
本発明の酸変性ポリフェニレンエーテルの製造法は、ポリフェニレンエーテル(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部の上記の(I)酸変性剤を混合し、かつ、加熱して反応する。
【0043】
本発明の酸変性ポリフェニレンエーテルとは、(F)ポリ(2,6−ジメチル−フェニレンオキシド)100重量部とポリカルボン酸、及び/または、ポリカルボン酸の変性物より選ばれる少なくとも1種の(I)酸変性剤0.1〜10重量部とをあらかじめ加熱反応させることにより得られるものである。
本発明の(D)ポリフェニレンエーテルとして、(F)ポリ(2,6−ジメチル−フェニレンオキシド)100重量部とポリカルボン酸、及び/または、ポリカルボン酸の変性物より選ばれる少なくとも1種の(I)酸変性剤0.1〜10重量部とをあらかじめ加熱反応させることにより得られる酸変性ポリフェニレンエーテルを用いると(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂の相溶性が良好となるため好ましく使用できる。
【0044】
本発明の(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂の製法として、更に好ましい方法は、(F)ポリ(2,6−ジメチル−フェニレンオキシド)100重量部とポリカルボン酸、及び/または、ポリカルボン酸の変性物より選ばれる少なくとも1種の(I)酸変性剤0.1〜10重量部とをまず加熱反応して(J)酸変性ポリフェニレンエーテルを得た後に、引続き、(B)ポリアミド樹脂を添加して得る方法である。
本発明では、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂100重量部に対して(G)変性剤を0.1〜5重量部含有したポリフェニレンエーテル系樹脂組成物も好ましく使用できる。
本発明では、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂脂100重量部に対して(I)酸変性剤を0.1〜5重量部含有したポリフェニレンエーテル系樹脂組成物もまた好ましく使用できる。
【0045】
<カーボン>
本発明において、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物はカーボンを添加しても構わない。
本発明において使用可能なカーボンとしては、例えばケッチェンブラックインターナショナル社から入手可能なケッチェンブラック(EC,EC−600JD)や、ハイペリオンキャタリシスインターナショナル社から入手可能なカーボンフィブリル(BNフィブリル)を挙げることができる。カーボンフィブリルの中でも、特に国際公開特許WO94/23433号に開示されているようなカーボンフィブリルが好ましい。
カーボンの添加方法に関して、特に制限はないが、カーボンがあらかじめポリアミド中に配合されたマスターバッチの形態で添加する方法が好ましい。この場合、ポリアミドマスターバッチを100重量%としたとき、カーボンの量が5〜15重量%である事が望ましい。
【0046】
<その他添加剤>
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に使用する添加剤は、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤、充填剤、ポリマー添加剤、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシ、パーオキシカーボネート、ヒドロパーオキサイド、パーオキシケタール、無機充填材(タルク、カオリン、ゾノトライト、ワラストナイト、酸化チタン、チタン酸カリウム、炭素繊維、ガラス繊維など、)、無機充填材と樹脂との親和性を高める為の公知のシランカップリング剤、難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、有機燐酸エステル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)及び、三酸化アンチモン等の難燃助剤、カーボンブラック等の着色剤、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等である。
【0047】
これらの成分の具体的な添加量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計を100重量部としてとき、100重量部を越えない範囲(付加的成分の合計として)である。
更に、ポリフェニレンエーテルの安定化の為に公知となっている各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤であり、これらの好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して5重量部未満である。
【0048】
<ポリフェニレンエーテル系樹脂ペレット>
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を各種成形法に適用するための好適な形態は、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を溶融混練した後に、ペレタイズして得られるポリフェニレンエーテル系樹脂ペレットである。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を溶融混練するための具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられるが、中でも二軸押出機が好ましく使用できる。
本発明で好ましく使用できる上記加工機械は二軸押出機である。
本発明で特に好ましく使用できる加工機械は、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えたスクリュー直径40mm以上でL/Dが30以上の二軸押出機である。
この際に加工機械のシリンダー等の加工設定温度は特に限定されるものではなく、通常240〜360℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。
【0049】
<ポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形法、及び、成形体>
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物より、各種業界で要求される部品等の形状を付与するために、通常、射出成形法、押出成形法などの溶融成形法、プレス成形法、真空成形法などの加熱成形法など、公知の加工方法が採用できる。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物および/または上記のポリフェニレンエーテル系樹脂ペレットは、特に、押出成形法の加工方法に好適に使用することができる。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物および/または上記のポリフェニレンエーテル系樹脂ペレットを押出成形してなるポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形体は、従来の押出成形体に比べて、生産性に優れ、かつ製品の表面平滑性に優れる。本発明の押出成形で用いられる金型としては特に限定されないが、好ましくは断熱金型、さらに好ましくはフッ素樹脂被覆金型を用いると、生産性、製品品質をより向上させることができ好ましい。
【0050】
殊に、押出成形する際に、
断熱金型を用いて成形加工してなるポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形体は、成形体の押出速度が安定するため、生産性、製品の表面平滑性が特に優れ、かつ、製品厚みが安定しているため、非常に好ましい。
本発明の断熱金型は、金属性の金型内面に断熱層を付したものである。
本発明における上記断熱層の材料としては、特に限定されないが、セラミックス、高耐熱の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が好ましく使用できる。
本発明では、上記断熱層として、熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、フッ素樹脂を使用することが極めて好ましい。
断熱金型として、フッ素樹脂被覆金型を用いると、表面が良好な成形体が得られ、かつ、断熱層の劣化が小さいためポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形法として極めて好ましい。
【0051】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形法で得られる成形体の形状は特に限定されない。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形法は厚みが1μm〜5mmのフィルム、または、シートの成形法として好ましく使用できる。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形法で成形するポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形フィルムは、表面平滑性、厚みの均一性が特に優れる。
更に、このポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形フィルムはプレス成形または真空成形などの成形法で二次加工する際に予備加熱した時の撓みが小さく生産性に優れる。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形フィルムをプレス成形、または真空成形してなるマスキング材は、表面平滑性、寸法精度に優れるため電子・電気分野、自動車分野における種々の用途に好適に使用できるものである。
以下、本発明を実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。尚、実施例中における「部」は、「重量部」を表す。
<原料>
実施例で用いた原料は以下の通りである。
<(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂>
本発明の実施例では、(A)ポリフェニレンエーテル系樹脂として、還元粘度:0.42dl/g(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃にてウベローデ型粘度計を用いて測定)の(F)ポリ(2,6−ジメチル−フェニレンオキシド)100重量部に対して、ラジカル開始剤を0.1重量部、及び、無水マレイン酸を1.5重量部添加したものをシリンダー温度320℃に設定した二軸押出機を用い溶融混練して得られる変性ポリフェニレンエーテル(以下、MPPE)を用いた。
【0053】
<(B)ポリアミド樹脂>
本発明の実施例では、(B)ポリアミド樹脂として、旭化成ケミカルズ株式会社社製のポリアミド−6,6であるレオナ1200(商品名)(以下、PA)を用いた。
<(C)超高分子量ポリマー>
本発明の実施例では、(C)超高分子量ポリマーとして、TICONA GmbH社製の超高分子量ポリエチレン、GUR(登録商標)4113(粘度平均分子量:320万)(以下、HMWPE−1)およびGHR8110(粘度平均分子量:49万)(以下、HMWPE−2)を用いた。
【0054】
<(E)スチレン系樹脂>
本発明の実施例では、(E)スチレン系樹脂として、クレイトンポリマージャパン社製の(K)スチレン含有ブロック共重合体の一種のポリスチレン−ポリエチレンブチレン−ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)であるKratonG1651(商品名)(数平均分子量:約250,000)(以下、SEBS)を用いた。
<二軸押出機>
本発明の実施例では、L/Dが44のZSK40MC[コペリオン社製(ドイツ国)]の同方向回転二軸押出機を用いた。シリンダー温度を全て300℃に設定し、ダイの温度を280℃に設定した。また、スクリューの全長を1.0とした時に、上流側より見て約0.35の位置及び約0.90の位置の2箇所にベントポートを設置し、真空吸引を行った。
【0055】
[実施例1]
各々の原料は、重量式フィーダーを用いて、ホッパー型の供給口より二軸押出機に定量供給した。ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の原料の供給量は、時間あたりの全原料供給量の総計100重量部に対して、MPPE:38重量部、SEBS:10重量部、PA:47重量部、HMWPE−1:5重量部である。
二軸押出機のスクリュー回転数を240rpm(吐出量/スクリュー回転数比=0.25)に設定し、時間あたりの全原料供給量の総計60kg/hで溶融混練を実施した。
溶融混練してダイスより吐出する紐状のストランドをストランドカッターで切断し、ポリフェニレンエーテル系樹脂ペレットを得た。
【0056】
得られたペレットを金型内面に約200μmのテフロン(登録商標)を塗布してなる断熱金型を付したシート成形機(テクノベル社製:KZW15型二軸押出機)を用いて、溶融樹脂温度280℃、金型温度90℃に設定し、厚み3mmの幅15cmのシート状に成形し、ポリフェニレンエーテル系樹脂製シートを得た。シート表面の不良が発生するまで、成形速度を徐々に上げ、シート端面部にササクレ状の不良が発生する不良発生吐出量を求めた。
得られたシートに対して、JIS K 7105の方法で入斜角60度の光沢度を測定して表面平滑性を評価した。
また、得られたシートに真空成形を実施した。真空成形に先立って予備加熱を実施するが、予備加熱温度を徐々に上げ、ポリフェニレンエーテル系樹脂製シートに撓みが発生した後に、破断する破断温度を測定した。
上記のペレットを真空成形により箱型の成形品を成形し、成形品の表面を観察した。
【0057】
[実施例2]
実施例1で用いたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物における原料中のHMWPE−1をHMWPE−2に代え、その他は実施例1同様に実施した。
【0058】
[比較例1]
実施例1におけるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の各原料の供給量を、時間あたりの全原料供給量の総計100重量部に対して、MPPE:40重量部、SEBS:10重量部、PA:50重量部に代え、その他は実施例1同様に実施した。
【0059】
[比較例2]
実施例1で用いたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物における原料中のHMWPE−1を粘度平均分子量が8万の高密度ポリエチレンに代え、その他は実施例1同様に実施した。
(結果)
不良発生吐出量、60度光沢度、破断温度を実施例1の結果を100にした時の値に補正して実施例2、比較例と対比した。結果をプレス成形品の観察結果とあわせて表1に示す。
【0060】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を用いることにより、押出成形加工する際の生産性、得られた成形体に対して圧縮成形、真空成形する際の二次加工性、成形品の表面外観に優れ、電気・電子用部材、自動車用部材、建築用部材、その他産業用部材としての用途に好適なポリフェニレンエーテル系樹脂成形体を安定して成形することができるようになった。
更に、このポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を成形して得られるポリフェニレンエーテル系樹脂成形体は品質良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)5〜95重量部およびポリアミド樹脂(B)5〜95重量部の合計量100重量部に対して、粘度平均分子量が40万〜1500万の超高分子量ポリマー(C)0.1〜10重量部からなるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を、断熱金型を用いて押出成形することを特徴とするポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形体の製造方法。
【請求項2】
前記断熱金型が、フッ素樹脂被覆金型であることを特徴とする、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂押出成形体の製造方法。

【公開番号】特開2009−255585(P2009−255585A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181331(P2009−181331)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【分割の表示】特願2004−118238(P2004−118238)の分割
【原出願日】平成16年4月13日(2004.4.13)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】