説明

ポリフェニレン・サルファイド組成物およびそれの応用

ポリフェニレン・サルファイド(PPS)組成物およびそれの応用が開示されている。PPS系ブレンドは、酸性化されたPPS樹脂を約40〜95重量%、オレフィン系重合体を約5〜50重量%、および弾性体により構成されてよい。同PPS系ブレンドはPPS自体に比べて耐衝撃性、破断点伸びおよび可撓性が改善されており、PPSが本来的に有している特性に加えて上記の特性が望まれる物品の製造に使用可能である。同PPS系ブレンドは製造物品の形成に使用可能な多層物質内に最終的な層として、例えば複数の部品により構成される物品の個々の部品として、内包できる。同PPS系ブレンドの層が組み込まれたPPS系物品は全体的に(個々の構成部品間の接合部を含む)蒸気および液体に対して不透過性となろう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は2003年8月18日に出願した仮出願60/496,497に対する優先権を主張する。
(発明の分野)
本発明は、一般的にポリフェニレン・サルファイド(PPS)に比べて改善された可撓性関連の特性を有する弾性PPS組成物に関し、より詳細には可撓性を有する被覆物、繊維あるいはバリアに有用な弾性PPS組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本章は、本仕様書内で以下に記載されるおよび/あるいはクレームされる本発明のさまざまな側面に関連すると考えられる発明のさまざまな側面を読者に紹介することを意図している。ここでの記載事項は、本発明のさまざまな側面のより深い理解に資する背景技術の提供に役立つと考えられる。従って、このような観点からこれらの記載事項を読むべきであり、これらでのどの主題が本発明に関する先行技術を構成するかもしれないことをなんら示唆するものではないと理解すべきである。
【0003】
熱可塑性重合体(例えば、加熱下で成型されてもよいが冷却された場合に望ましい形状に硬化するプラスチックスおよびその他の重合体)は商業製品や製造製品、ならびに包装物中に一般的に使用されている。特定の熱可塑性重合体は典型的には様々な特性(例えば耐炎性、耐衝撃性、耐炎性、可撓性、耐化成品性、耐熱性等々)を有している。その結果、ある応用のためには一般的にはそれの要求事項あるいは制約事項に基づいて適切な熱可塑性材料が選択される。しかしながら、時折、ある熱可塑性材料はある種の応用に対して一つの不適切な特性を有しているがために、それ以外では優に適切であるにもかかわらず許容されない場合がある。
【0004】
例えば、ポリフェニレン・サルファイド(PPS)は高い熱安定性、形状安定性、耐化成品性および耐炎性を有しかつ不良導性のエンジニヤリング熱可塑性プラスチックであるが、高度の可撓性、弾性あるいは耐衝撃性が要求されるいくつかの応用先にとっては可撓性あるいは剛性が非常に不足している場合がある。例えば、PPSはそれの低い剛性によってある種の応用には適さない。例えば、曲げられたり他の形状に合致するように変形しなければならないワイヤーあるいはケーブルのような基材のための被覆物、および衝撃に起因する破壊に対して抵抗性がなければならない容器あるいはその他の物品を生産する際の一成分がこのような応用例として挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、十分な可撓性、弾性あるいは耐衝撃性を有しかつその他のPPSの望ましい特性を有していたPPS系組成物は、上記のような応用先に望ましかった可能性がある。特に、PPSそのものに比べて高い可撓性および/あるいは耐衝撃性を有するPPS系組成物は非常に望ましい。同様に、このような組成物を被覆物あるいは構造成分として使用する物品あるいは製品は非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明を実施するための形態)
A.序文
ポリフェニレン・サルファイド(PPS)系の熱可塑性ブレンドはさまざまな製造、商業および/あるいは消費上の応用のために使用できる。特に、結晶性PPSは、PPSが有する機械的および/あるいは電気的特性が望まれるさまざまな物品の製造のために使用できる高性能熱可塑性材料である。例えば、PPSは、高い弾性率、剛性、熱安定性、形状安定性、耐化成品性、耐炎性および/あるいは電気的不良導性が望まれる応用に適している。PPSは製造上の成分として単独であるいは熱可塑性ブレンドとして使用できる。このようなブレンドとは、PPSと一種あるいは複数種の他の成分(例えば、他の種類の熱可塑性材料、弾性材料、共重合体、樹脂、強化剤、添加剤等)による組成物のことである。
【0007】
特に、熱可塑性ブレンドの使用は、例えばPPSのような成分の特定の特性が望ましい場合(それの他の特性がそれほど望ましくないとしても)に有利となる可能性がある。実際、熱可塑性材料の広い応用範囲を考えると、このようなブレンドの一成分の望ましくない特性を最小限にとどめつつそれの望ましい特性を強調する適切な熱可塑性ブレンドの開発はしばしば特定の応用のために望まれている。例えば、PPS系ブレンドは、ケーブルあるいはワイヤーのような可撓性基材のための被覆物として、布あるいは繊維製品に織ることができる繊維の一成分として、あるいは揮発性液体を貯蔵するための容器を生産する際の構造成分として望ましい可能性がある。従って、PPS系熱可塑性ブレンドであって、PPS本来の望ましい化学的、電気的、熱的および/あるいは機械的な特性を維持するために適切な等級の、および/あるいは十分な量のPPSを含有すると同時に同ブレンドに対して望ましい程度の可撓性および/あるいは耐衝撃性を与えるための一種あるいは複数種の他の成分を含有するブレンドの形成が望まれる可能性がある。
【0008】
B.適切なPPS系ブレンド
PPS自身に比べて改善された可撓性および耐衝撃性を有すると同時に十分な程度の化学的、電気的および/あるいは耐炎性を有するPPS系ブレンドの一例は、処理されたPPS樹脂、オレフィン系共重合体および弾性体を組み合わせて生成できる。このようなPPS系ブレンドは処理されたPPS樹脂を約40〜95重量%、オレフィン系共重合体を約5〜50重量%、および弾性体を約1〜20重量%含み得る。このようなPPS系ブレンドの一実施態様においては、オレフィン系共重合体は10重量%未満の割合で含有されている。同共重合体/弾性体の重量比率は約3/1〜20/1の範囲内にある。当業界の通常の熟練者が認識しているように、ブレンド成分の量は合計してブレンド組成物の100%となるように選択される。
【0009】
PPSは、同ブレンドの他の成分と混合される前に、反応性の末端基を例えばそれの酸性化によって修飾するための処理を受けてもよい。特に、そのような反応性の末端基に付随するナトリウムあるいは塩化物のイオンといったイオン種を除去することが望ましい場合もある。この脱イオン化プロセスは、例えばPPS系を酸、高温水、有機溶剤で処理する、あるいはこれらのいくつかの組み合わせで処理するといったような様々な技術で実施可能である。このような脱イオン化処理は湿潤ケバ状あるいは顆粒状PPSの重合および回収後に実施してよい。この処理は、処理効率を上昇するために熱および/あるいは攪拌の存在下で実施してよい(そうすることが望ましいのであれば)。以下に述べるように、このような脱イオン化処理はPPS重合プロセスが完了する以前の時点でも、すなわち重合条件下で、実施してよい。脱イオン化処理を受けたPPS中のイオン濃度(例えばナトリウムイオン濃度)は500ppm未満ではないとしても900ppm未満となることが可能である。
【0010】
処理すべきPPSは、比較的低分子量のPPS樹脂や比較的高分子量の実質的に直鎖状PPS重合体を含有していてもよい。場合によっては(例えば低分子量のPPS樹脂の場合)、重合後に、酸素あるいは架橋剤(例えば過酸化物)の存在下で同PPS重合体を更に加熱処理してそれの重合度を上昇させてもよい。PPSはどのようなプロセスで生成したものでも本発明のために使用可能であるが、PPS系ブレンドを形成するためには比較的高分子量の実質的に直鎖状PPS重合体の使用が望ましい場合がある。
【0011】
ここで使用されるPPSは、以下の構造式で示される反復単位を少なくとも70モル%、一般的には90モル%以上含有し、
【0012】
【化1】

【0013】
また以下の構造式で示される一つあるいは複数の反復単位を30モル%まで含有してもよい。
【0014】
【化2】

【0015】
上述のPPS重合体のオレフィン系共重合体に対する親和性を向上するために、同PPS重合体は上述のように脱イオン化処理を受けてもよい。一般的には、処理すべきPPSは粉状の粒子(特に微粒子)の状態であり、これは同処理およびその後のどのような洗浄プロセスをも容易化するためである。
【0016】
酸処理に関しては、重合されたPPS(重合直後の、すなわち湿潤状態のPPSを含む)を、適切な攪拌条件あるいは加熱条件の下で酸あるいは酸溶液内に浸す。例えば、PPSを処理するためにpH4の酢酸水溶液の使用が可能である。同酢酸水溶液を80〜90°C程度に加熱し、その中にPPSを攪拌状態で30分程度浸してよい。酸処理されたPPSは100°C以上に加圧下で加熱された水(例えば蒸留水あるいは脱イオン水)で一回あるいは複数回洗浄してよい。一般的に、ここで使用可能な酸はPPSを分解あるいは劣化させない種類のものを包含する。酢酸以外の使用可能な酸の例として塩酸、硫酸、リン酸、ケイ酸、炭酸およびプロピオン酸が挙げられる。
【0017】
PPS樹脂のオレフィン系共重合体に対する親和性を向上するために、有機溶剤による処理を酸処理の代わりに、あるいはそれに追加して実施してよい。この技術によるPPSの処理は、攪拌および/あるいは熱の存在下で(そうすることが適切であるのであれば)、一種あるいは複数種の有機溶剤中にPPSを浸すことにより実施してよい。回収されたPPSは、洗浄および乾燥後に、あるいは未だに湿潤状態である間に、重合溶剤あるいは洗浄水により処理してよい。実際、PPS重合混合物は、PPSの処理のために、一種あるいは複数種の有機溶剤と混合してよい。有機溶剤での処理温度は、その溶剤によって室温から約300°Cまで変化する可能性がある。しかし、有機溶剤による十分な処理は、約25〜150°Cの温度で達成できる。この処理は、使用する有機溶剤の種類および処理温度によっては、その溶剤の沸騰を防止するために高圧下で実施してよい。有機溶剤に接触させる時間には特に制限はないが、一般的には回分式あるいは連続式のいずれかの方法により約5分以上接触させることにより望ましい効果が得られる。処理後、PPSは水により一回あるいは複数回洗浄してよい。有機溶剤の溶解度および沸点によっては、この目的のために蒸留水あるいは脱イオン水を使用する。洗浄は100°Cまでの温度、あるいは加圧下でより高い温度で実施してよい。
【0018】
処理に使用される有機溶剤は、PPSの分解あるいは劣化を起因しない限り制限はない。使用できる有機溶剤の例として以下が挙げられるが、これらに限られない。含窒素極性溶剤(N−メチルピロリドン、N、N−ジメチルフォルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、1、3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルフォスフォリルアミド、ピペラジノン系溶剤等)。その他の可能性のある有機溶剤の例として以下が挙げられる。スルフォキシドおよびスルホン系溶剤(ジメチルスルフォキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等)、およびケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトンおよびアセトフェノン)。更にその他の可能性のある有機溶剤の例として以下が挙げられる。エーテル系溶剤(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン)およびハロゲン化物系溶剤(クロロフォルム、メチレンジクロライド、トリクロロエチレン、エチレンジクロライド、パークロロエチレン、モノクロロエタン、ジクロロエタン、テトラモノクロロエタン、パークロロエタン、クロロベンゼン等)。アルコール系およびフェノール系溶剤(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)ならびに芳香族炭化水素系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)も使用できる。
【0019】
更に、PPS重合体のオレフィン系共重合体に対する親和性を向上するために、PPSを高温水(例えば蒸留水あるいは脱イオン水)で処理してよい。高温水による処理は100°C以上の水により実施してよい。170°C以上の水の使用により望まれる化学修飾をより効果的に達成できる可能性がある。例えば、所定量のPPS(湿潤状態あるいは重合直後のPPSを含む)を圧力容器内でその後例えば170°C以上に加熱され攪拌される所定量の水に投入してよい。PPS/水の比率は、状況によって変化するが、一般的には1Lの水に対して200g以下のPPSであることができる。水処理は典型的には不活性雰囲気中で実施される。高温水による処理が完了後、望ましくない成分の全てを除去するためにPPSを一回あるいは複数回洗浄してよい。
【0020】
上記の処理はPPSの末端基の脱イオン化あるいは酸性化によって達成可能であるが、このプロセスを反応容器内で重合条件下で実施するのが望ましい場合もある。特に、このようなプロセスは工程(例えばPPSの生産に関連する洗浄および回収工程)の数を減少したり、および/あるいは回収後のPPS内の灰分(すなわち不純物)の濃度を低下する可能性がある。このようなプロセスは、本仕様書で引用されている米国特許5,352,768に開示されている。
【0021】
例えば、重合反応混合物に対して重合条件下で酸あるいは酸溶液を加えてよい。酸あるいは酸溶液を、重合が相当な程度進行した後、ただし重合反応が終了する以前の段階で加えてよい。典型的には、酸あるいは酸溶液を重合反応が終了する直前に加える。重合反応混合物の塩基性を低下するに十分な量の酸あるいは酸溶液をそれに加える。特に、酸/PPSモル比は0.025/1〜0.1/1の範囲内であり、0.4/1〜0.8/1が典型的な比率である。
【0022】
重合反応混合物中の極性有機化合物あるいは溶剤(例えばN−メチル−2−ピロリドン)に可溶性あるいは相溶性の有機酸あるいは無機酸を使用してよい。適切な有機酸の例として、酢酸、蟻酸、シュウ酸、フタル酸および非カリ系のフタル酸が挙げられるが、これらに限られない。同様に、適切な無機酸の例として、塩酸、リン酸モノアンモニウム、硫酸、リン酸、ホウ酸、硝酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、炭酸およびHSOが挙げられる。
【0023】
酸あるいは酸溶液を加えた後、重合反応を停止してよい。重合反応混合物を重合反応が実質的に進行する温度未満(典型的には235°C未満の温度)にまで冷却することにより同反応を停止できる。重合反応停止後、PPS重合体は通常の技術(すなわち、ろ過、洗浄、フラッシュ回収等)により回収できる。回収されたPPSは、本仕様書に記載される技術に関連すると考えられる修飾PPSを構成するように酸によって効果的に脱イオン処理される。
【0024】
例えば、PPS重合体は、重合反応混合物を以下の方法で酸処理することにより生成できる。まず、32.40kg(71.42lbs.)の50重量%の水酸化ナトリウム水溶液と39.34kg(86.74lbs.)の60重量%の水硫化ナトリウム(NaSH)および0.4重量%の硫化ナトリウム(NaS)を含有する水溶液との混合物を調整する。同混合溶液、11.34kg(25lbs.)の粉末状酢酸ナトリウム(NaOAc)および104.1L(27.5gal)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を400rpmで攪拌されている反応容器に加え、同反応容器を窒素で置換する。次いで、同混合物を約172°C(342°F)に加熱し、次いで約211°C(411°F)にまで温度を上昇させつつ水分除去のための脱水処理を施す。22.7L(6gal)のNMP中に溶解した63.27kg(139.49lbs.)のp−ジクロロベンゼン(DCB)を反応容器内に添加してよい。次いで、同混合物を約282°C(540°F)に加熱し、その温度で1.5時間保持してよい。次いで、2、000mLの氷酢酸を3.79L(1gal)のNMPと共に反応容器に加え、279°C(535°F)の温度で約5分間前記反応混合物と反応させてよい。
【0025】
上記で得られた反応混合物を約282°C(540°F)の温度下でフラッシュさせてNMPを除去すると同時にPPS重合体を固化してよい。このようにして得られた乾燥し塩で満たされた重合体を周囲温度で454.25L(120gal)の脱イオン水で2回洗浄し、次いでろ過し、次いで約177°C(350°F)の温度下で30分間302.83L(80gal)の脱イオン水で洗浄してよい。同溶液をろ過することにより約26.76kg(59lbs.)のPPSが回収できる。回収された同PPSは約0.23以下の灰分を含有する。
【0026】
上記の脱イオン技術は反応性末端基が例えば酸性化によって修飾された脱イオン化PPSの製造に有用である。しかしながら、当業界の通常の熟練者が認識しているように、これら以外の脱イオン技術も採用可能であり、これらもここで開示された発明の範囲内である。更に、ここで記載される異なった脱イオン技術は独立してあるいは組み合わせて採用可能である。例えば、酸処理を受けたPPSは、次いで有機溶剤、高温水等で処理されてよい。
【0027】
PPSは、脱イオン化および/あるいは酸性化処理の他に、さまざまな添加剤を含有してよい。これらの添加剤の例として、酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、核形成剤、UV安定剤、カーボンブラック、金属不活性化剤、可塑化剤、二酸化チタン、顔料、粘土、雲母、難燃剤、処理助剤、接着剤、粘着付与剤が挙げられる。これらは、PPSあるいはそれからのPPS系ブレンドの望ましい特性に影響を及ぼさない濃度で使用される。その他の様々な重合体も望ましい特性に影響を及ぼさない濃度で存在してよい。架橋に影響を及ぼす添加剤(例えば過酸化物、架橋促進剤および/あるいは架橋防止剤)もPPSに添加されてよい。
【0028】
処理されたPPSは、上記の添加剤を含有しているいないにかかわらず、PPS系ブレンドに使用してよい。同PPS系ブレンドは、処理済のPPSおよび望ましいどのような添加剤の他に、オレフィン系重合体(例えば共重合体あるいは三元重合体)も含有する。同オレフィン系重合体は少なくとも50重量%のa−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1等)および50重量%未満のグリシジルエステルを含有してよい。本発明に使用できるグリシジルエステルの例として、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル等が挙げられるが、これらに限られない。同オレフィン系重合体は40重量%以下の他の共重合可能な不飽和モノマーも含有してよい。これらの不飽和モノマーの例として、ビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。
【0029】
オレフィン系重合体に加えて、一種あるいは複数種の弾性体もPPSと混合してよい。このような弾性体は典型的には少なくとも50重量%のエチレンを含有している。可能性のある弾性体の例として以下が挙げられるが、これらに限られない。エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、および水素化されたスチレン/ブタジエン/スチレンブロック。その他の可能性のある弾性体の例として以下が挙げられる。エチレンとアクリル酸、メタクリル酸あるいはアルキルエステルとの共重合体、および/あるいはこれらの金属塩、ならびにポリアミド系弾性体。当業界の通常の熟練者が容易に認識できるように、その他のオレフィン系共重合体も弾性体として有用である。
【0030】
エチレンとアクリル酸、メタクリル酸あるいはアルキルエステルとの共重合体、あるいはこれらの金属塩を含有する弾性体でのアルキル基は炭素数1〜5のものから選ばれる。このような弾性体の例として以下が挙げられるが、これらに限られない。エチレン/アクリル酸エステル共重合体(例えば、エチレン/アクリル酸メチル、エチレン/アクリル酸エチル、エチレン/アクリル酸プロピルおよびエチレン/アクリル酸ブチル共重合体)。同様に、適切なエチレン/メタクリル酸エステル共重合体の例として、エチレン/メタクリル酸メチル、エチレン/メタクリル酸エチル、エチレン/メタクリル酸プロピルおよびエチレン/メタクリル酸ブチル共重合体が挙げられる。上述したように、同弾性体はエチレン/アクリル酸および/あるいはエチレン/メタクリル酸共重合体から構成され、あるいは実質的にそれのみから構成できる。同様に、当業界の通常の熟練者が認識しているように、弾性を有する共重合体の金属塩(例えばナトリウム、亜鉛、カリ、カルシウム、リチウム、アルミニウム、あるいはマグネシウム塩)も一般的に記載される共重合体の中に含まれる。
【0031】
選択された一種あるいは複数種の弾性体はオレフィン系共重合体、酸性化処理されたPPSおよび関連する添加剤と共にPPS系ブレンドを構成できる。上述したように、このようなPPS系ブレンドは約40〜95重量%の脱イオン処理(すなわち酸性化処理)されたPPS樹脂、約5〜50重量%のオレフィン系共重合体および約1〜20重量%の弾性体を含む。このようなPPS系ブレンドの一実施態様においては、オレフィン系共重合体は10重量%未満の割合で含有されている。同オレフィン系共重合体/弾性体の重量比率は約3/1〜20/1の範囲内にある。更にこのようなPPS系ブレンドは、後述するように、PPS、オレフィン系共重合体および弾性体の合計100重量部に対して400重量部以下の一種あるいは複数種の強化剤を含有してよい。望ましいのであれば、これらの強化剤はPPS系ブレンド内に添加される前に架橋剤(例えば、シランあるいはチタン酸塩)で処理されてもよい。強化剤の例として、繊維状の強化剤(例えば無機質あるいは炭素質の繊維)、および中空あるいは空隙のない顆粒状強化剤(例えばケイ酸塩、金属酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ガラスビード、シリカ、窒化ホウ素、炭化ケイ素等)が挙げられる。
【0032】
PPS系ブレンドは、当業界の通常の熟練者にとってはおなじみのさまざまな技術によって溶融状態でのブレンディングにより生成できる。例えば、PPS、オレフィン系共重合体、弾性体およびどのようなものでも望ましい一種あるいは複数種の強化剤を、押出成型機内で高せん断応力下かつPPSの融点を越える温度下(例えば280〜340°Cの範囲内)での溶融状態でブレンディングできる。これらの成分は、予め混合されていてもよいし、あるいは同時あるいは別々に軽量されつつ混合機あるいはブレンディング機内に投入されてよい。このようにして得られた混合物は、次いで輸送およびその後の加工の便のために押出によりペレット化されてよい。
【0033】
PPS系ブレンドは一般的には化学的に非反応性かつ耐炎性であり、また一般的には液体および/あるいは蒸気を透過させない。このようなPPS系ブレンドの可撓性は、同ブレンドに関連する破断点伸び、すなわち試料の破断点での伸びを当初の長さの割合で示した値、によって立証できる。特に、PPS系ブレンドは典型的には150%を越える破断点伸びを有している。このような破断点伸びは、例えばワイヤー被覆のような可撓性被覆にとっては一般的には望ましい値である。しかしながら、当業界の通常の熟練者が認識しているように、他の望ましい破断点伸び範囲を実現するための望ましい実施態様に基づいて弾性体あるいは他のブレンド成分の割合を変更できる。例えば、100〜150%の破断点伸びを有するPPS系ブレンドは弾性体の割合の低下によって実現できる。同様に、150〜200%あるいはそれを越える破断点伸びを有するPPS系ブレンドは弾性体の割合の増加によって実現できる。
【0034】
C.可撓性および/あるいは耐衝撃性PPS系ブレンドの応用
1.可撓性基材の被覆
ペレット化されたPPS系ブレンドは、商業製品あるいは製造製品の生産のために単独材料として、あるいは複合材料の成分として使用できる。例えば、図1を参照して、PPS系ブレンドはワイヤー24あるいはその他の可撓性媒体のための被覆材22として使用できる。例えば、PPS系ブレンドを構成する成分からなる混合物を例えば押出成型機により溶融状態で混合し、次いでペレット化してよい。次いでこのペレット化されたブレンドを溶融し、被覆される基材(例えばワイヤー24あるいはケーブル)上に押し出してよい。そこで、同ブレンドは冷却されて被覆材22として硬化する。
【0035】
ワイヤー24あるいはケーブルはPPS系ブレンドで被覆できる可撓性媒体の例であるが、他の可撓性物体も簡単に被覆できる。例えば、PPS系ブレンドを含有する被覆材を、ガスタンク、化学ドラム、台所用品等の物品の内面あるいは外面に設置できる。このような表面はその組成からみて本来的に可撓性であり、従って可撓性のPPS系ブレンドの被覆により有利となる可能性がある。被覆材は、ある程度の耐衝撃性を保持しつつ、その下側の基材に機械的、化学的、熱的あるいは電気的な保護を与える保護覆いの役割を果たせる。
【0036】
他の種類の基材の被覆はPPS系ブレンドが適用できる一つの応用例であるが、PPS系ブレンド自身が主建設材として使用可能である。例えば、PPS系ブレンドは化学的に不活性および/あるいは耐炎性でありかつある程度の可撓性を有する単一部品あるいは複数部品からなる容器あるいは物品を形成できる。これらの物品を製造するために、PPS系ブレンドはさまざまな既知の技術により成型できる。このような技術の例として射出成型、押出成型、圧縮成型、トランスファー成型、ブロー成型が挙げられるが、これらに限られない。
【0037】
2.繊維
PPS系ブレンドは、単独あるいは他の成分との組み合わせにより、より糸あるいは繊維に形成できる。PPS系ブレンドの繊維は、フィルター、カンバス、衣料品、断熱材・絶縁材(例えば電気的絶縁材)に形成できる布あるいは織物に織られる。例えば、PPS系ブレンドは押出成型あるいはその他の成型法により繊維が束ねられた糸あるいはより糸に成型できる。これらの糸は、PPS系ブレンド繊維自身で構成され得るか、あるいは繊維を形成するために長さ方向に結合され得る。PPS系ブレンド繊維が形成されれば、これらは繊維製品、衣料品あるいは布に織られるかもしれないし、あるいは例えば断熱性あるいは絶縁性のフィルターを形成するために結合されるかもしれない。このような繊維はPPS系ブレンドで構成されているので、同繊維あるいはそれから構成される材料はPPS自身に比べて可撓性が向上し、また脆性が低下している。
【0038】
3.多層構造物
その他、PPS系ブレンドは多層構造物での一つあるいは複数の層として使用できる。このような構造においては、外側に暴露されている表面が追加的な望ましい特性あるいは異なった特性を有している。例えば、図2はバリア層52を有する多層構造物50を示している。このバリア層52はPPS単独あるいは上記のようなPPS系ブレンド;異なる熱可塑性プラスチック(例えばポリプロピレン);あるいは望ましい特性(例えば蒸気不透過性)を有する熱可塑性ブレンドにより構成されてよい。PPS単独あるいはPPS系ブレンドがバリア層52を構成する場合は、空隙のない層、膜あるいは細かく分散された粒子に形成されてよい。当業界の通常の熟練者が容易に認識できるように、多層構造物50の追加の層もPPS単独あるいはPPS系ブレンドで構成されてよい。
【0039】
多層構造物50は、同構造に耐衝撃性および/あるいは成形性を付与するための追加的な層を有してよい。例えば、外層54は保護被覆物として働き得る。更にこの外層54は望ましい構造上の特性および/あるいは機械的な特性も付与し得る。外層54は以下の材料で構成してよい。PPS、PPS系ブレンド、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)あるいはその他の望ましい特性を有している重合体。更に外層54は望ましい特性を有している重合体ブレンドで構成されていてもよいし、あるいは再生された重合体(例えば再生HDPE)を含んでいてもよい。
【0040】
更に、図2に示されているように、第二の層56も多層構造物50に含まれていてもよい。第二層56は内側の層(例えばバリア層52)に対して追加的な保護を付与するかもしれないし、あるいは多層構造物50に対して望ましい構造上の特性および/あるいは機械的な特性を付与するかもしれない。従って、第二層56は、もし使用されるのであれば、外層54と同じあるいは同様な組成物で形成してよい。別の場合、第二層56は外層54とは異なる特性を多層構造物50に付与する場合もあり、この場合には望まれる特性に基づいて異なるあるいは異質の組成物で構成してよい。図2においては、多層構造物50は簡便さのために限定的な数の層によって構成されているように描かれているが、多層構造物50を構成する層の数は最終使用目的に応じて増減させてよい。例えば、多層構造物50全体に要求される化学的、構造的、電気的、機械的および/あるいは可燃性関連の特性に応じて追加的な層を含んでいてもよい。
【0041】
バリア層52、外層54および第二層56(設置されるのであれば)の各組成に基づいて、各層相互間の接着を向上するために多層構造物50内に1個あるいは複数個の結合層58を設置してよい。例えば、Xtel(登録商標)XE3200(シェブロンフィリップス化学会社LP社製のPPS系ブレンド)および/あるいは直鎖状低密度ポリエチレン(LDPE)を用いて結合層58を製作してよい。結合層58の組成は隣接層の特性(例えば、雰囲気温度の予想される全範囲での隣接層の形状安定性)に応じて決めてよい。例えば、隣接するバリア層52の材料がPPSあるいはPPS系ブレンドの場合には結合層58の材料はXtel(登録商標)XE3200が望ましい。同様に、隣接する外層54あるいは第二層56の材料がHDPEあるいは再生HDPEの場合には結合層58の材料は直鎖状LDPEが望ましい。望ましいのであれば、複数の隣接層の異なる組成に対応するために、図示されているように複数個の結合層58を用いてよい。このような場合には、これらの結合層58は一面で互いに接合し、他面で内側および外側の層と結合する。
【0042】
多層構造物50は、結合層58の設置に加えてあるいはそれの代わりにさまざまな方法で製作できる。例えば、バリア層52、外層54およびその他のどのような追加的な層から構成される多層構造物50を温度および圧力の下で処理して(すなわち積層処理)2種あるいはそれ以上の層を結合してよい。その他、層間の層表面あるいは接着剤をある種のエネルギー(例えば、UV、熱あるいはプラズマ)で活性化しそれによりこれらの層を結合してよい。更にその他、多層構造物50内のある層を積層膜として設置してよい。この場合の同積層膜は、噴霧あるいはプラズマ噴霧により設置するか、あるいは溶剤を蒸発除去して溶質を残留させるといった方法で設置してよい。
【0043】
上述の技術は、望ましい重合体あるいは重合体ブレンドからなる2種以上の独立したシートあるいは膜の製作を想定しているが、結合層58はこれら以外に多層押出成型プロセスを使用して共押出により製作してもよい。例えば、多層構造物50は押出成型機を使用する標準的なブロー成型プロセスあるいは射出成型(この場合には各層は順々に設置される)により製作してよい。しかしながら、当業界の通常の熟練者が認識しているように、上述の複数のプロセスは互いに他を除外するものではなく、これらを組み合わせたプロセスにより多層構造物50全体を製作してよい。
【0044】
a.多層構造物を用いた部品あるいは物品の製作
形成された多層構造物50を1種あるいは複数種の目的とする物品あるいは部品に成型してよい。このような物品の例として、容器(例えば燃料、化成品あるいは飲料の貯蔵および/あるいは輸送のために使用される)が挙げられる。このような容器においては、内部のバリア層は化成品に対して不活性であり不透過性であること、および/あるいは燃焼抵抗性といった特性を有することが望ましい。例えば、多層構造物50の単一部品から構成される物品80(図3〜6)はブロー成型あるいは他のプロセスにより製作できる。
【0045】
図3を参照して、多層構造物のパリソン82(溶融状態の重合体のチューブ)は、溶融した1種あるいは複数種の重合体を押出成型機84の環状ダイを通過するように押し出すことにより形成される。パリソン82は、内部形状が目的とする物品80の形状をしている型88内へ下降する。型88においては、成型されるパリソン82部分の周りが密封されており(図4参照)、パリソン82は、例えばガスノズル90から内部に流入するガスにより膨張する。パリソン82は、型88の内部形状(すなわち目的とする物品形状)になるまで膨張を続ける。次いで物品80は柔らかくなくなる、および/あるいは変形しなくなるまで冷却される(図5参照)。冷却後、物品80は回収、使用のために型88から抜き出してよい。パリソン82が多層構造物の場合、成型された物品80もまた多層構造物50により構成される筈である。例えば、最も単純な場合、物品80は、内部バリア層52(例えばPPSあるいはPPS系ブレンドからなる)および外層54(例えばHDPEからなる)で構成される。
【0046】
上記は単独の部品により構成された物品80が多層構造物50を使用して形成できる一つの方法を示したが、複数の部品により構成される物品100を多層構造物50の使用により形成することが諸々の観点から望ましい場合がある。例えば、内部部品を有する、あるいは単独の部品による製作技術では大き過ぎる燃料あるいは化成品用のタンクの場合には、複数種の部品で構成することが望ましい。このような場合には、多層構造物50は、本体部品、燃料容器のネック部等のように製作された後複数部品により構成される望ましい物品100に組み立てられる部品に形成できる。
【0047】
例えば、複数部品により構成される物品100は、図3〜6に示されるブロー成型法の変形プロセスの一種であるブローフォーミングにより製作できる。このプロセスにおいては、多層構造物のパリソン82は望ましい形状に押出成型される。次いで、このように成型された物品を2以上の部分に分割してよい。図7にはこのように分割された部分の一例として容器半分102を示している。例えば容器上半分102のような2以上の物品部分は成型用の道具あるいは機会により更に成型される。望ましいのであれば、内部部品104(例えば燃料ポンプ、燃料液面計、フィルター、切替器、スプラッシュバッフル等)を容器半分(例えば図8に示される容器下半分103)あるいは他の部分に挿入してよい。図9に示すように、2以上の部分は次いで後述するように不透過性の複数部品により構成される物品100に組み立てられてよい。この場合の物品100で内部部品104の有無は問わない。図9Aは複数部品により構成される物品100の2部品間の接合部のクローズアップ図である。複数部品により構成される物品100は次いで望ましい寸法、形状に整えられてよい。
【0048】
更に、多層構造物50は容器半分102、103あるいは複数部品により構成される物品100の他の部分に別の成型プロセス(例えば図10に示される真空成型法)で製作してよい。このプロセスにおいては、変形可能な状態の多層構造物50を望ましい形状を有する型110に一致させるために同型110内を減圧する。PPSを含有する一つあるいは複数の層を有する多層構造物50を成型する際には、真空成型プロセスは典型的には製作後の多層構造物50が高温で変形可能な状態である間に実施される。複数部品により構成される物品100の各部分が真空成型された後、内部部品104を例えば容器半分102あるいは103のような部分に挿入して物品100を形成してよい。複数部品により構成される物品100は次いで望ましい寸法、形状に整えられてよい。
【0049】
複数部品により構成される物品100の部品(例えば容器半分102、103)は同様に他の方法によっても成型できる。例えば、多層構造物50は射出圧縮成型プロセスといった方法によっても製作できる。多層構造物50を成型法によって製作する場合には、バリア層52を膜状、シート状あるいは粒子からなる被覆物等といった状態で最初に型内に挿入する。次の層(例えば第二層56、結合層あるいは外層54)を射出圧縮成型法によりバリア層52上に設置してよい。射出圧縮成型プロセスでの熱と圧力により各層間での接着が促進される。多層構造物50を含有する望ましい部品を製作するために、追加的な層も同様に設置してよい。複数部品により構成される物品100の各部品が形成されれば、上述のように同物品100が組み立てられてよい(この工程には、どのような望ましい内部部品104の設置も含まれる)。これらの部品の成型をブロー成型、真空成型および射出圧縮成型といった方法を例にとって説明したが、当業界の通常の熟練者が容易に認識できるように、他の方法(例えば加圧成型や冷間成型)を用いても複数部品により構成される物品100の部品を成型できる。
【0050】
b.複数部品により構成される物品の組立
複数部品により構成される物品100の様々な部品は様々な方法で組み立てられる。このような方法の例として以下が挙げられるが、これらに限られない。熱板溶接、IRあるいはUVで活性化された表面あるいは接着剤の使用、EMA接合および熱風溶接。例えば、図11に示しているように、容器の上下半分102、103は熱板溶接で組み立ててよい。加熱された表面114は、上下半分102、103の各々の対応する表面116を加熱してこれらを接合する。これら対応する表面116が十分に加熱されれば、加熱表面114を取除いて圧力下で互いに押し付けられ(図12参照)、溶融された接合部118あるいは溶接部を形成する(図9Aのクローズアップ図を参照)。上述したように、複数部品により構成される物品100は組み立て工程の後に望ましい重要寸法に整えられてよい。
【0051】
図9Aに示されるように、複数部品により構成される物品100の部品(例えば容器の上下半分102、103)が、バリア層52が物品100の内部に設置されるように製作されるのであれば、対応する両表面116はバリア層52で構成されることになろう。このようにしてバリア層52の溶融あるいは溶接により、バリア材料(例えばPPSあるいはPPS系ブレンド)を含有する溶融された接合部118あるいは溶接部が形成され、そこでバリア層52の不透過性特性が発揮される。このようにすれば、液体あるいは蒸気を透過する特性を有する溶融された接合部118あるいは溶接部の形成が避けられる。
【0052】
これまで簡便のために2部品からなる容器を例にとって複数部品により構成される物品100を説明してきたが、当業界の通常の熟練者が容易に認識できるように、上述の技術はより多くの部品あるいはより複雑な複数部品を有する物品100に対してもたやすく採用できる。実際、複数部品により構成される物品100の部品数は、典型的には工具費および物品容積によって決められ、本発明の技術はより複雑な物品100の製作に採用可能である。例えば、図13に示されるような燃料タンク130は製作可能であり、エンジン駆動の輸送手段132(例えば、自動車、トラック、バイク、小型船舶、航空機等)に搭載されてこれらの燃料タンクとして使用できる。本発明の技術により製作された燃料タンク130は、組み立てられた部品間に溶融して形成される接合部118を燃料蒸気が通過するのを完全にあるいは実質的に阻止するという利点を享受できる。このような燃料タンク130は、PPSあるいはPPS系ブレンドのバリア層52と一つあるいは複数のHDPEの耐衝撃層(例えば、どのような望ましい結合層58のみならず外層54および/あるいは第二層56)により構成されてよい。当業界の通常の熟練者が認識しているように、構造的、機械的および不透過性に関する望まれる特性によっては、他のバリア材料および層材料も用いてよい。同様に、様々な形状、寸法を有する他の化成品容器も本発明の技術により製作可能である。
【0053】
上記の説明は、主として、一つあるいは複数のPPSあるいはPPS系ブレンドからなる層を有する多層構造物を使用して単独あるいは複数の部品により構成される物品製作の可能性に焦点を当ててきたが、PPS単独層も同様に使用可能である。例えば、容器あるいは燃料タンクはPPS単独層を用いて製作してもよいし、あるいは各種のPPSあるいはPPS系ブレンドからなる複数の層からなる多層構造物を用いて製作してもよい。このような容器あるいは燃料タンクは、もし上述の技術、すなわちPPSあるいはPPS系ブレンドからなる不透過性の溶接部あるいは接合部118の形成、により製作すれば、上述したように不透過性特性を有することになろう。PPSからなる各部品はブロー成型、真空成型等の上述した技術により製作が可能であるし、またここで開示されている熱板溶接あるいは熱風溶接のような技術により組み立てが可能である。
【0054】
本発明はさまざまな変更が可能であるし、また異なった形式を取ることも可能であり、ここでは特定の実施態様を例として図面に示し、またそれらが本仕様書内で詳述されよう。しかしながら、本発明はここで開示された特定の形式に限定されることを意図したものではないと理解すべきである。それどころか、本発明は以下の特許請求の範囲で規定されるそれの精神および範囲内に入る全ての変更、同等物および代案を包含する。
本発明の利点は以下の詳細な説明および添付図面の参照により明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一態様のPPS系ブレンドで被覆されたワイヤの説明図である。
【図2】本発明の一態様の多層構造物の説明図であり、同構造物内にはバリヤ層が配置されている。
【図3】本発明の一態様のパリソンの説明図であり、同パリソンはブロー成型用型に突き出している。
【図4】図3に示すパリソンを型内に密封しブロー成型を施している様子の説明図である。
【図5】図4に示すブロー成型されたパリソンを冷却している様子の説明図である。
【図6】図5に示すブロー成型されたパリソンを型から抜き出している様子の説明図である。
【図7】本発明の一態様の図2に示す多層構造物により製作された複数の部品により構成される物品の一部品の説明図である。
【図8】本発明の一態様の図2に示す多層構造物により製作された複数の部品により構成される物品の一部品の説明図であり、最終製品に組み入れられる一つあるいは複数の内部部品を挿入した後の様子を示している。
【図9】本発明の一態様である図7および8に示される複数の部品を組み入れた、複数の部品により構成される物品の説明図である。
【図9A】本発明の一態様である複数の部品を組み入れた、図9に示される複数の部品により構成される物品における2部品間の接合部のクローズアップ図である。
【図10】本発明の一態様である部品を真空成型により製作する様子を示している。
【図11】本発明の一態様である図7および/あるいは8に示される複数の部品を組み入れた、複数の部品により構成される物品のアセンブリーを熱板溶接により製作する様子を示している。
【図12】本発明の一態様である図7および/あるいは8に示される複数の部品を組み入れた、熱板溶接あるいは他の接着あるいは接合技術で製作された複数の部品により構成される物品のアセンブリーの説明図である。
【図13】本発明の一態様である燃料タンクを組み込んだエンジン駆動の車両の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
エチレンおよびグリシジルエステルを含有するオレフィン系重合体を約5〜50重量%;
酸性化されたPPSを約40〜95重量%;および
アクリル酸、メタクリル酸、アルキルエステル(そこでのアルキル基は1〜5の炭素数を有する)および各々の金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種とエチレンとの共重合体を含有する弾性体を約1〜20重量%;
を含む組成物であって、
該オレフィン系重合体/弾性体の重量比率が約3/1〜20/1の範囲内にある、組成物。
【請求項2】
該酸性化されたPPSが900ppm未満の濃度のナトリウムイオンを含有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
破断点伸びが150%を越えることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
該酸性化されたPPSが酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、核形成剤、UV安定剤、カーボンブラック、金属不活性化剤、可塑化剤、二酸化チタン、顔料、粘土、雲母、難燃剤、処理助剤、接着剤および粘着付与剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有していることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
該酸性化されたPPSが1種あるいは複数種の強化剤を含有していることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項6】
該オレフィン系重合体が10%未満の濃度で含有されていることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の硫黄源、少なくとも1種のジハロ芳香族化合物および1種の極性有機化合物を含む重合反応混合物を重合条件下で反応させてPPS重合体を生成し;
該PPS重合体内の1種あるいは複数種の末端基を酸性化して酸性化されたPPSを生成し;
該重合反応を停止し;
該酸性化されたPPSを回収し;および
該酸性化されたPPSを、少なくともエチレンおよびグリシジルエステルからなるオレフィン系重合体、およびエチレンとアクリル酸、メタクリル酸、アルキルエステル(そこでのアルキル基は1〜5の炭素数を有する)および各々の金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種との共重合体を含有する弾性体と、該酸性化されたPPSの融点よりは高い温度でブレンドしてPPS系ブレンドを生成する;
工程を包含し、
該オレフィン系重合体/弾性体の重量比率が約3/1〜20/1の範囲内にある、PPS系ブレンドを生成する方法。
【請求項8】
該1種あるいは複数種の末端基の酸性化を重合反応の停止前に実施することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
該1種あるいは複数種の末端基の酸性化を重合条件下で実施することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項10】
該1種あるいは複数種の末端基の酸性化を該PPS重合体の回収後に実施することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項11】
該PPS系ブレンドのペレット化を含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項12】
1種あるいは複数種の強化剤を該酸性化されたPPS重合体、該オレフィン系共重合体および該弾性体にブレンドすることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項13】
該PPS系ブレンドが該オレフィン系共重合体を約5〜50重量%の濃度で含有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項14】
該PPS系ブレンドが該オレフィン系共重合体を10重量%未満の濃度で含有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項15】
該PPS系ブレンドが該酸性化されたPPSを約40〜90重量%の濃度で含有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項16】
該PPS系ブレンドが該弾性体を約1〜20重量%の濃度で含有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項17】
複数のPPS系ブレンドのより糸により構成され、各々のより糸が以下の成分:
少なくともエチレンおよびグリシジルエステルのオレフィン系重合体を約5〜50重量%;
酸性化されたPPSを約40〜95重量%;および
アクリル酸、メタクリル酸、アルキルエステル(そこでのアルキル基は1〜5の炭素数を有する)および各々の金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、エチレンとの共重合体を含有する弾性体を約1〜20重量%;
を含み、該オレフィン系重合体/弾性体の重量比率が約3/1〜20/1の範囲内にある、PPS系ブレンドの繊維。
【請求項18】
該酸性化されたPPSが900ppm未満の濃度のナトリウムイオンを含有することを特徴とする請求項17記載のPPS系ブレンドの繊維。
【請求項19】
該酸性化されたPPSが酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、核形成剤、UV安定剤、カーボンブラック、金属不活性化剤、可塑化剤、二酸化チタン、顔料、粘土、雲母、難燃剤、処理助剤、接着剤および粘着付与剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有していることを特徴とする請求項17記載のPPS系ブレンドの繊維。
【請求項20】
該酸性化されたPPSが1種あるいは複数種の強化剤を含有していることを特徴とする請求項17記載のPPS系ブレンドの繊維。
【請求項21】
該より糸が該オレフィン系重合体を10%未満の濃度で含有していることを特徴とする請求項17記載のPPS系ブレンドの繊維。
【請求項22】
変形可能な基材;と
該変形可能な基材の一つあるいは複数の表面上に設置され以下の成分を含む被覆物;
エチレンおよびグリシジルエステルを含有するオレフィン系重合体を約5〜50重量%;
酸性化されたPPSを約40〜95重量%;および
アクリル酸、メタクリル酸、アルキルエステル(そこでのアルキル基は1〜5の炭素数を有する)および各々の金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種とエチレンとの共重合体を含有する弾性体を約1〜20重量%;
とを含む被覆された物品であって、
該オレフィン系重合体/弾性体の重量比率が約3/1〜20/1の範囲内にある、被覆された物品。
【請求項23】
該酸性化されたPPSが900ppm未満の濃度のナトリウムイオンを含有することを特徴とする請求項22記載の被覆された物品。
【請求項24】
破断点伸びが150%を越えることを特徴とする請求項22記載の被覆された物品。
【請求項25】
該酸性化されたPPSが酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、核形成剤、UV安定剤、カーボンブラック、金属不活性化剤、可塑化剤、二酸化チタン、顔料、粘土、雲母、難燃剤、処理助剤、接着剤および粘着付与剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有していることを特徴とする請求項22記載の被覆された物品。
【請求項26】
該酸性化されたPPSが1種あるいは複数種の強化剤を含有していることを特徴とする請求項22記載の被覆された物品。
【請求項27】
該被覆物が該オレフィン系重合体を10%未満の濃度で含有していることを特徴とする請求項22記載の被覆された物品。
【請求項28】
少なくとも一つの基材層;と
該基材層の少なくとも一つの表面上に設置され以下の成分を含むバリア層;
エチレンおよびグリシジルエステルを含有するオレフィン系重合体を約5〜50重量%;
酸性化されたPPSを約40〜95重量%;および
アクリル酸、メタクリル酸、アルキルエステル(そこでのアルキル基は1〜5の炭素数を有する)および各々の金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種とエチレンとの共重合体を含有する弾性体を約1〜20重量%;
とを含む多層構造物であって、
該オレフィン系重合体/弾性体の重量比率が約3/1〜20/1の範囲内にある、多層構造物。
【請求項29】
該基材層が外層を含むことを特徴とする請求項28記載の多層構造物。
【請求項30】
内表面および外表面を有する容器を構成することを特徴とする請求項28記載の多層構造物。
【請求項31】
該バリア層が該内表面を構成し、該基材層が該外表面を構成することを特徴とする請求項30記載の多層構造物。
【請求項32】
一つあるいは複数の結合層が該バリア層と該基材層の間に配置されていることを特徴とする請求項28記載の多層構造物。
【請求項33】
該結合層の少なくとも一つがXtel XE3200および直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも一つを含有していることを特徴とする請求項28記載の多層構造物。
【請求項34】
該基材層がポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ(ブチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンテレフタレート)の少なくとも一つを含有していることを特徴とする請求項28記載の多層構造物。
【請求項35】
該バリア層が、膜、空隙のない層、および細かく分散された粒子の1つを含有していることを特徴とする請求項28記載の多層構造物。
【請求項36】
一つあるいは複数の第二層が該バリア層と該基材層の間に配置されていることを特徴とする請求項28記載の多層構造物。
【請求項37】
該酸性化されたPPSが酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、核形成剤、UV安定剤、カーボンブラック、金属不活性化剤、可塑化剤、二酸化チタン、顔料、粘土、雲母、難燃剤、処理助剤、接着剤および粘着付与剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有していていることを特徴とする請求項28記載の多層構造物。
【請求項38】
該バリア層が1種あるいは複数種の強化剤を含有していることを特徴とする請求項28記載の多層構造物。
【請求項39】
該バリア層が該オレフィン系重合体を10%未満の濃度で含有していることを特徴とする請求項28記載の多層構造物。
【請求項40】
バリア層および外層を含む複合シートから形成される少なくとも二つの構造部品;及び
隣接する二つの構造部品の間に配置される少なくとも一つの蒸気不透過性シールであって、隣接する二つの構造部品の各々のバリア層の溶融により形成される溶融領域を有する該蒸気不透過性シール;
を含む、蒸気不透過性構造物。
【請求項41】
該バリア層が以下の成分:
エチレンおよびグリシジルエステルを含有するオレフィン系共重合体を約5〜50重量%;
酸性化されたPPSを約40〜95重量%;および
アクリル酸、メタクリル酸、アルキルエステル(そこでのアルキル基は1〜5の炭素数を有する)および各々の金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種とエチレンとの共重合体を含有する弾性体を約1〜20重量%;
を含み、該オレフィン系共重合体/弾性体の重量比率が約3/1〜20/1の範囲内にあることを特徴とする請求項40記載の蒸気不透過性構造物。
【請求項42】
該バリア層が該オレフィン系共重合体を10%未満の濃度で含有していることを特徴とする請求項41記載の蒸気不透過性構造物。
【請求項43】
該複合シートが該バリア層と該外層の間に配置された一つあるいは複数の結合層を有していることを特徴とする請求項40記載の蒸気不透過性構造物。
【請求項44】
該結合層の少なくとも一つがXtel XE3200および直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも一つを含有していることを特徴とする請求項43記載の蒸気不透過性構造物。
【請求項45】
該外層がポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ(ブチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンテレフタレート)の少なくとも一つを含有していることを特徴とする請求項40記載の蒸気不透過性構造物。
【請求項46】
該バリア層が、膜、空隙のない層、および細かく分散された粒子の1つを含有していることを特徴とする請求項40記載の蒸気不透過性構造物。
【請求項47】
該複合シートが該バリア層と該外層の間に配置された一つあるいは複数の第二層を有していることを特徴とする請求項40記載の蒸気不透過性構造物。
【請求項48】
該バリア層が酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、核形成剤、UV安定剤、カーボンブラック、金属不活性化剤、可塑化剤、二酸化チタン、顔料、粘土、雲母、難燃剤、処理助剤、接着剤および粘着付与剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有していていることを特徴とする請求項40記載の蒸気不透過性構造物。
【請求項49】
該バリア層が1種あるいは複数種の強化剤を含有していることを特徴とする請求項40記載の蒸気不透過性構造物。
【請求項50】
バリア層および
外層
を含む複合シートから形成される部品本体を含み、該部品本体の少なくとも一つの端面が第二の部品の合わせ端面に適合し、それによって該部品本体の該バリア層と該第二の部品が接合できる、蒸気不透過性部品。
【請求項51】
該バリア層が以下の成分:
エチレンおよびグリシジルエステルを含有するオレフィン系共重合体を約5〜50重量%;
酸性化されたPPSを約40〜95重量%;および
アクリル酸、メタクリル酸、アルキルエステル(そこでのアルキル基は1〜5の炭素数を有する)および各々の金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種とエチレンとの共重合体を含有する弾性体を約1〜20重量%;
を含み、該オレフィン系重合体/弾性体の重量比率が約3/1〜20/1の範囲内にあることを特徴とする請求項50記載の蒸気不透過性部品。
【請求項52】
該バリア層が該オレフィン系共重合体を10%未満の濃度で含有していることを特徴とする請求項51記載の蒸気不透過性部品。
【請求項53】
該複合シートが該バリア層と該外層の間に配置された一つあるいは複数の結合層を有していることを特徴とする請求項50記載の蒸気不透過性部品。
【請求項54】
該結合層の少なくとも一つがXtel XE3200および直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも一つを含有していることを特徴とする請求項53記載の蒸気不透過性部品。
【請求項55】
該外層がポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ(ブチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンテレフタレート)の少なくとも一つを含有していることを特徴とする請求項50記載の蒸気不透過性部品。
【請求項56】
該バリア層が、膜、空隙のない層、および細かく分散された粒子の1つを含有していることを特徴とする請求項50記載の蒸気不透過性部品。
【請求項57】
該複合シートが該バリア層と該外層の間に配置された一つあるいは複数の第二層を有していることを特徴とする請求項50記載の蒸気不透過性部品。
【請求項58】
該バリア層が酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、核形成剤、UV安定剤、カーボンブラック、金属不活性化剤、可塑化剤、二酸化チタン、顔料、粘土、雲母、難燃剤、処理助剤、接着剤および粘着付与剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有していていることを特徴とする請求項50記載の蒸気不透過性部品。
【請求項59】
該バリア層が1種あるいは複数種の強化剤を含有していることを特徴とする請求項50記載の蒸気不透過性部品。
【請求項60】
燃料タンク内部を規定する燃料タンク本体を含む燃料タンクであって、該燃料タンク本体は:
各々がバリア層および外層を含む複合シートから各々形成される2以上の本体部品;および
隣接する二つの本体部品の間に配置される少なくとも一つの蒸気不透過性シールであって、隣接する二つの本体部品の各々のバリア層の溶融により形成される溶融領域を有する該蒸気不透過性シール;
を含む、燃料タンク。
【請求項61】
燃料タンク内部に配置される一つあるいは複数の内部部品により構成されることを特徴とする請求項60記載の燃料タンク。
【請求項62】
一つあるいは複数の該内部部品はポンプ、フィルターおよび切替器の少なくとも一つにより構成されることを特徴とする請求項61記載の燃料タンク。
【請求項63】
該バリア層が以下の成分:
エチレンおよびグリシジルエステルを含有するオレフィン系共重合体を約5〜50重量%;
酸性化されたPPSを約40〜95重量%;および
アクリル酸、メタクリル酸、アルキルエステル(そこでのアルキル基は1〜5の炭素数を有する)および各々の金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種とエチレンとの共重合体を含有する弾性体を約1〜20重量%;
を含み、該オレフィン系重合体/弾性体の重量比率が約3/1〜20/1の範囲内にあることを特徴とする請求項60記載の燃料タンク。
【請求項64】
該バリア層が該オレフィン系共重合体を10%未満の濃度で含有していることを特徴とする請求項63記載の燃料タンク。
【請求項65】
該複合シートが該バリア層と該外層の間に配置された一つあるいは複数の結合層を有していることを特徴とする請求項60記載の燃料タンク。
【請求項66】
該結合層の少なくとも一つがXtel XE3200および直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも一つを含有していることを特徴とする請求項65記載の燃料タンク。
【請求項67】
該外層がポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ(ブチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンテレフタレート)の少なくとも一つを含有していることを特徴とする請求項60記載の燃料タンク。
【請求項68】
該バリア層が、膜、空隙のない層、および細かく分散された粒子の1つを含有していることを特徴とする請求項60記載の燃料タンク。
【請求項69】
該複合シートが該バリア層と該外層の間に配置された一つあるいは複数の第二層を有していることを特徴とする請求項60記載の燃料タンク。
【請求項70】
該バリア層が酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、核形成剤、UV安定剤、カーボンブラック、金属不活性化剤、可塑化剤、二酸化チタン、顔料、粘土、雲母、難燃剤、処理助剤、接着剤および粘着付与剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有していていることを特徴とする請求項60記載の燃料タンク。
【請求項71】
該バリア層が1種あるいは複数種の強化剤を含有していることを特徴とする請求項60記載の燃料タンク。
【請求項72】
該燃料タンクの内部空間へのアクセスを可能にする充填器ネック部を有していることを特徴とする請求項60記載の燃料タンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2007−502894(P2007−502894A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524038(P2006−524038)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/026927
【国際公開番号】WO2005/019341
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(502303175)シェブロン フィリップス ケミカル カンパニー エルピー (42)
【Fターム(参考)】