説明

ポリマーレリーフ構造体の作製方法

本発明は、電磁放射線によりポリマーレリーフ構造体を作製する方法に関する。本方法では、被覆基材の界面張力を低下させる化合物が使用される。その結果、アスペクト比さらには表面の曲率が向上するので、光学素子および複製目的に有益である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、
a)1種以上の放射線感受性成分を含むコーティングで基材を被覆することと、
b)周期的もしくはランダムな放射線強度パターンを有する電磁放射線で被覆基材を局所処理して潜像を形成することと、
c)得られた被覆基材を重合および/または架橋することと、
によりポリマーレリーフ構造体を作製する方法に関する。
【0002】
そのような方法(これ以降では「光エンボス加工」とも呼ばれる)は、「複雑な表面レリーフ構造体を得るツールとしての光エンボス加工(photo−embossing as a tool for complex surface relief structures)」 ド・ヴィッツ・クリスティアーネ(De Witz,Christiane);ブリュア・ディルク(Broer,Dirk)著 論文抄録誌(J.,Abstracts of Papers),第226回ACS全国大会(226th ACS National Meeting),米国ニューヨーク州ニューヨーク(New York,NY,United States),2003年9月7〜11日から公知である。
【0003】
データの伝送、保存、および表示に供される光学系で使用されるポリマーに、現在、大きな関心が寄せられている。ポリマーのフィルムまたは層の表面を構造化することにより、これらの層を通過する光を制御することが可能である。たとえば、表面構造体が素子のような小さい半球を含有していれば、透過光を集束させうるレンズアレイが得られる。そのような素子は、たとえば、ディスプレイの透明領域に光を集束させる液晶ディスプレイのバックライトに有用である。これらのタイプの用途では、多くの場合、マイクロメートルの領域まで表面プロファイルの形状を制御することが必要である。さらに、規則的パターンの表面構造体は、透過時にシングルビームをマルチビームに分割するように光を回折しうるので、たとえば、通信機器でビームスプリッターとして使用可能である。表面構造体はまた、光の反射を制御するうえでも重要である。これは、表面の正反射を抑制するように首尾よく適用可能である。このいわゆるアンチグレア効果は、たとえば、テレビのフロントスクリーンに利用される。しかし、板ガラス、車仕上げ材などの用途にも、使用される。輪郭の明瞭な表面プロファイルを有するポリマーフィルムに、蒸着アルミニウムやスパッター銀などのコンフォーマル反射膜を設けることが可能である。このミラーに当たった入射光は、反射されると非常に制御された形で空間内に分配される。これは、たとえば、反射型液晶ディスプレイ用の内部拡散リフレクターを作製するために使用される。表面プロファイルの他の用途は、ロータス効果として知られる防汚構造体を作製するためのものである。それには、1マイクロメートル未満の寸法を有する表面プロファイルが必要とされる。
【0004】
UV光重合のような電磁放射線誘起重合は、たとえば2種の(メタ)アクリレートモノマーと光開始剤との混合物からデバイスを作製する方法である。重合反応は、UV光が光開始剤を活性化しうる領域でのみ開始される。このほか、光強度を空間的に変化させてそれに応じて重合速度を変化させることが可能である。モノマーの反応性、サイズもしくは長さ、架橋能力、およびエネルギー相互作用の差異は、結果として、モノマーの化学ポテンシャルの勾配を生じる。これらの化学ポテンシャルは、照射領域におけるモノマーの移動およびポリマーの膨潤の原動力となる。モノマーの拡散係数は、この移動が起こるタイムスケールを決定する。その後、パターン化UV照射時よりも高い強度を有する均一なUV照射を用いて膜全体を重合させる。
【0005】
このようにして2種の液体モノマーの混合物のパターン化UV光重合を行うことにより、ポリマー構造体が生成される。これは、ホログラフィーまたはリソグラフィーにより行うことが可能である。ホログラフィーの場合、2つのコヒーレント光ビームの干渉パターンにより、高低光強度の領域が形成される。リソグラフィーの場合、フォトマスクを用いてこれらの強度差を生成させる。たとえば、ストライプ状マスクを使用すれば、グレーティングが作製される。円孔を有するマスクを使用すれば、マイクロレンズ構造体が形成される。屈折率の差は、ポリマー中のモノマー単位濃度の横方向変動により引き起こされる。
【0006】
表面構造体を作製するより良好な方法は、ポリマーとモノマーと開始剤とのブレンドより基本的になるブレンドを使用することである。ポリマーは、単一のポリマー材料でありうるが、2種以上のポリマーのブレンドであってもよい。同様に、モノマーは、単一の化合物でありうるが、構成するいくつかのモノマー材料であってもよい。開始剤は、好ましくは光開始剤であるが、ときには光開始剤と熱開始剤との混合物である。この混合物は、一般的には、加工(たとえば、スピン被覆による薄膜の形成)を促進するために有機溶媒に溶解される。ブレンド条件ならびにポリマーおよびモノマーの性質は、溶媒の蒸発後に固体膜が形成されているように選択される。一般的には、これは、UV光によるパターン化照射時に潜像の形成を可能にするものである。加熱して潜像を現像することにより表面プロファイルを形成することが可能であり、この際、重合と拡散が同時に起こるので、照射領域における材料の体積が増大され、結果として、表面の変形を生じる。
【0007】
この方法の弱点は、そのような光エンボス加工法を用いて製造され得られたレリーフ構造体がいくらか低いアスペクト比を有することである。アスペクト比(AR)は、レリーフの高さと隣接レリーフ間の距離(すなわちピッチ)との比として定義される。レリーフ構造体のエッジは、シャープでもなければ正確に複製されることもないので、結果として、目標とする光学的機能または他の機能は、それほど最適なものではない。
【0008】
本発明は、ポリマーレリーフ構造体を作製するための改良された方法を提供し、光エンボス加工の工程c)において被覆基材の界面張力を低下させる化合物(Cs)が存在することを特徴とする。
【0009】
その結果、向上したレリーフアスペクト比(改良は、典型的には、2倍に増加することが示される)さらにはかなりシャープなエッジのレリーフを有するレリーフ構造体が得られる。
【0010】
界面張力を低下させるために使用される化合物Csは、少なくとも2つの異なる方法で適用可能である。第1の方法は、本方法の工程b)から得られる被覆基材にCsを適用した後に工程c)を行う方法である。第2の方法は、本方法の工程a)で使用されるコーティング中にすでにCsが存在する方法である。この結果として、Csは、工程c)のときだけでなく工程b)のときにも存在する。
【0011】
本方法の工程a)で使用されるコーティングは、1種以上の放射線感受性成分を含み、この成分は、一般的には、電磁放射線により重合可能なC=C不飽和モノマーである。これらの成分は、そのままの状態で使用可能であるが、溶液の形態で使用することも可能である。
【0012】
コーティングは、(湿式)被覆堆積の技術分野で公知の任意の方法により基材上に適用可能である。好適な方法の例は、スピン被覆法、ディップ被覆法、スプレー被覆法、フロー被覆法、メニスカス被覆法、ドクターブレード被覆法、キャピラリー被覆法、およびロール被覆法である。
【0013】
典型的には、放射線感受性成分を好ましくは少なくとも1種の溶媒と場合により架橋開始剤と混合して、選択された適用方法を用いて基材に適用するのに好適な混合物を調製する。
【0014】
原理的には、多種多様な溶媒を使用しうる。しかしながら、溶媒と混合物中に存在するすべての他の材料との組合せは、優先的に安定な懸濁液または溶液を形成するものでなければならない。
【0015】
好ましくは、使用した溶媒は、基材上にコーティングを適用した後で蒸発させる。本発明に係る方法では、場合により、溶媒の蒸発を促進するために、基材への適用後、コーティングを加熱したりまたは真空中で処理したりすることが可能である。
【0016】
好適な溶媒の例は、1,4−ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、クロロフェノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジクロロメタン、ジエチルアセテート、ジエチルケトン、ジメチルカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、エチルアセテート、m−クレゾール、モノ−およびジ−アルキル置換グリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、p−クロロフェノール、1,2−プロパンジオール、1−ペンタノール、1−プロパノール、2−ヘキサノン、2−メトキシエタノール、2−メチル−2−プロパノール、2−オクタノン、2−プロパノール、3−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、ヘキサフルオロイソプロパノール、メタノール、メチルアセテート、ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、n−メチルピロリドン−2、n−ペンチルアセテート、フェノール、テトラフルオロ−n−プロパノール、テトラフルオロイソプロパノール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、および水である。アルコール、ケトン、およびエステルをベースとする溶媒を使用してもよいが、高分子量アルコールを用いた場合にはアクリレートの溶解性が問題になる可能性がある。ハロゲン化溶媒(たとえば、ジクロロメタンおよびクロロホルム)および炭化水素(たとえば、ヘキサンおよびシクロヘキサン)は好適である。
【0017】
混合物は、好ましくは、ポリマー材料を含有する。実際には、他の成分と共に均一混合物を形成する各ポリマーを使用することが可能である。十分に研究されたポリマーは、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン、ポリベンジルメタクリレート、ポリイソボルニルメタクリレートである。しかしまた、多くの他のポリマーも適用可能である。混合物はまた、反応性粒子すなわちフリーラジカルまたはカチオン性粒子に接触したときに重合する比較的低分子量すなわち1500未満の分子量の化合物であるモノマー化合物をも含有する。好ましい実施形態では、モノマーまたはモノマー混合物のモノマーのうちの1種は、重合時にポリマー網状構造が形成されるように2個以上の重合性基を含有する。さらに、好ましい実施形態では、モノマーは、次のクラス:ビニル、アクリレート、メタクリレート、エポキシド、ビニルエーテル、またはチオール−エンの反応基を含有する分子である。混合物はまた、化学線を照射したときに反応性粒子すなわちフリーラジカルまたはカチオン性粒子を発生する化合物である感光性成分を含有する。
【0018】
重合性成分として使用するのに好適でありかつ1分子あたり少なくとも2個の架橋性基を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリロイル基を含有するモノマー、たとえば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、リン酸モノおよびジ(メタ)アクリレート、C〜C20アルキルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート、および前述のモノマーのいずれかのアルコキシル化体、好ましくはエトキシル化体および/またはプロポキシル化体、さらにはビスフェノールAへのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAへのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ジグリシジルエーテルのビスフェノールAへの(メタ)アクリレート付加物であるエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキル化ビスフェノールAのジアクリレート、およびトリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルアクリレートとイソホロンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物(HIH)、ヒドロキシエチルアクリレートとトルエンジイソシアネートとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物(HTH)、ならびにアミドエステルアクリレートが挙げられる。
【0019】
1分子あたりただ1つの架橋基を有する好適なモノマーの例としては、ビニル基を含有するモノマー、たとえば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン;イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、カプロラクトンアクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ベータ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルカルバミルエチル(メタ)アクリレート、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、フッ素化(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル;および次式(I)
CH=C(R)−COO(RO)−R (I)
〔式中、Rは、水素原子またはメチル基であり;Rは、2〜8個、好ましくは2〜5個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;そしてmは、0〜12、好ましくは1〜8の整数であり;Rは、水素原子もしくは1〜12個、好ましくは1〜9個の炭素原子を含有するアルキル基であるか;またはRは、1〜2個の炭素原子を有するアルキル基で場合により置換されていてもよい4〜20個の炭素原子を有するテトラヒドロフラン基含有アルキル基であるか;またはRは、メチル基で場合により置換されていてもよい4〜20個の炭素原子を有するジオキサン基含有アルキル基であるか;またはRは、C〜C12アルキル基(好ましくはC〜Cアルキル基)で場合により置換されていてもよい芳香族基である〕
により表される化合物、およびアルコキシル化脂肪族単官能性モノマー、たとえば、エトキシル化イソデシル(メタ)アクリレート、エトキシル化ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
放射線感受性成分として使用するのに好適なオリゴマーは、たとえば、芳香族もしくは脂肪族のウレタンアクリレートまたはフェノール樹脂をベースとするオリゴマー(たとえば、ビスフェノールエポキシジアクリレート)、およびエトキシレートで連鎖延長された上記のオリゴマーのいずれかである。ウレタンオリゴマーは、たとえば、ポリオール主鎖、たとえば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオールなどをベースとするものでありうる。これらのポリオールは、単独でまたは2種以上の組合せで使用可能である。これらのポリオール中の構造ユニットの重合方法には、とくに制限はない。ランダム重合、ブロック重合、またはグラフト重合のいずれも許容しうる。ウレタンオリゴマーの形成に好適なポリオール、ポリイソシアネート、およびヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの例は、国際公開第00/18696号パンフレット(参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0021】
一緒になって架橋相の形成を引き起こししうる、したがって、組み合わせて反応性希釈剤として使用するのに好適である化合物の組合せは、たとえば、エポキシと組み合わされたカルボン酸および/またはカルボン酸無水物、ヒドロキシ化合物(とくに2−ヒドロキシアルキルアミド)と組み合わされた酸、イソシアネート(たとえば、ブロック化イソシアネート、ウレトジオン、カルボジイミド)と組み合わされたアミン、アミンまたはジシアンジアミドと組み合わされたエポキシ、イソシアネートと組み合わされたヒドラジンアミド、イソシアネート(たとえば、ブロック化イソシアネート、ウレトジオン、カルボジイミド)と組み合わされたヒドロキシ化合物、無水物と組み合わされたヒドロキシ化合物、(エーテル化)メチロールアミド(「アミノ樹脂」)と組み合わされたヒドロキシ化合物、イソシアネートと組み合わされたチオール、アクリレートまたは他のビニル系種と組み合わされたチオール(場合によりラジカル開始)、アクリレートと組み合わされたアセトアセテート、およびカチオン性架橋が用いられる場合にはエポキシ化合物とエポキシまたはヒドロキシ化合物である。
【0022】
放射線感受性成分として使用しうるさらなる可能な化合物は、湿分硬化性イソシアネート、アルコキシ/アシルオキシ−シラン、アルコキシチタネート、アルコキシジルコネート、またはウレア−、ウレア/メラミン−、メラミン−ホルムアルデヒド、もしくはフェノール−ホルムアルデヒド(レゾールタイプおよびノボラックタイプ)の湿分硬化性混合物、あるいはラジカル硬化性(過酸化物開始または光開始)エチレン性不飽和単官能性および多官能性モノマーならびにポリマー、たとえば、アクリレート、メタクリレート、マレエート/ビニルエーテル、あるいはスチレンおよび/またはメタクリレート中のラジカル硬化性(過酸化物開始または光開始)不飽和(たとえば、マレイン酸またはフマル酸)ポリエステルである。
【0023】
好ましくは、適用されるコーティングはまた、ポリマー(好ましくは、放射線感受性成分の架橋から得られるポリマーと同一の性質のポリマー)を含む。好ましくは、このポリマーは、少なくとも20,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0024】
ポリマーは、被覆工程a)で使用する場合、好ましくは、少なくとも300Kのガラス転移温度を有する。好ましくは、工程a)で使用されるコーティング中のポリマーは、工程a)の放射線感受性コーティング中に存在するモノマーに溶解されるか、または本発明に係る方法の工程a)のコーティングで使用される溶媒に溶解される。
【0025】
多種多様な基材を本発明に係る方法で基材として使用することが可能である。好適な基材は、たとえば、フラットなもしくは湾曲した、剛性もしくは可撓性のポリマー基材、たとえば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン(pyrollidone)、ポリビニルクロリド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロ−エチレン、ナイロン、ポリノルボルネンのフィルム、またはアモルファス固体たとえばガラス、あるいは結晶性材料たとえばシリコンまたはヒ化ガリウムなどである。金属基材を使用することも可能である。ディスプレイ用途に使用するのに好ましい基材は、たとえば、ガラス、ポリノルボルネン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate)、ポリイミド、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、およびポリエチレンナフタレートである。
【0026】
架橋反応を開始するために、コーティング中に開始剤を存在させることが可能である。開始剤の量は、広範にわたりさまざまでありうる。開始剤の好適量は、架橋反応に関与する化合物の全重量を基準にして、たとえば0超〜5重量%である。
【0027】
UV架橋を用いて架橋を開始する場合、混合物は、好ましくは、UV光開始剤を含む。光開始剤は、光を吸収したときに架橋反応を開始することが可能であり;したがって、UV光開始剤は、スペクトルの紫外領域で光を吸収する。任意の公知のUV光開始剤を本発明に係る方法で使用することが可能である。
【0028】
好ましくは、重合開始剤は、光開始剤と熱開始剤との混合物を含む。
【0029】
最終コーティングが形成されるようにコーティングの重合および/または架橋を引き起こしうる架橋方法はいずれも、本発明に係る方法で使用するのに好適である。架橋を開始する好適な方法は、たとえば、電子ビーム線、電磁放射線(UV、可視、および近IR)、熱、および湿分硬化性化合物を使用する場合には湿分添加によるものである。好ましい実施形態では、架橋はUV線により達成される。UV架橋は、フリーラジカル機構を介してもしくはカチオン機構によりまたはそれらの組合せにより行われうる。他の好ましい実施形態では、架橋は熱により達成される。
【0030】
本発明に係る方法の工程b)において、方法工程a)から得られた被覆基材は、周期的もしくは潜在的な放射線強度パターンを有する電磁放射線で局所処理され、その結果として、潜像が形成される。好ましい一実施形態では、この処理は、UV光をマスクと組み合わせて用いて行われる。他の好ましい実施形態では、この処理は、光干渉/ホログラフィーを用いることにより行われる。さらに他の実施形態は、電子ビームリソグラフィーを用いることによる。
【0031】
本発明の本質的特徴は、フォトポリマーとその周囲との間の界面張力を低下させる化合物(Cs)の使用である。この用語については、出版物「ポリマー表面(Polymer Surfaces)」,F.ガルボッシ(F.Garbossi)ら著,ワイリー(Wiley)刊,1994年,183〜184頁を参照されたい。これには、ジスマン(Zisman)プロットを用いることにより固体と空気との界面張力を決定する方法が記載されている。本発明の利点を実現し評価するために、最初に、Cs以外のすべての成分を用いて得られる被覆基材の(空気との)界面張力を決定し、そうして得られた値を、すべての成分(したがってCsを含む)を用いて得られる被覆基材の界面張力と比較することが望ましい(フライヤー(Fryer)ら著,高分子(Macromolecules),2001年,34巻,5627〜5634頁を参照されたい)。好ましくは、Csは、界面張力を少なくとも10mJ/m低下させる。
【0032】
化合物Csとして好適な成分は、被覆基材の表面張力を低下させる化合物である。
【0033】
Csは、ポリマーコーティングに混和可能および溶解可能である必要はない。これは、極性ポリマーコーティングを使用したときにCsが非極性である必要があり;非極性コーティングを使用したときにCsが極性である必要があることを意味する。好ましくは、Csは、次の性質:
・非弾性または非粘弾性
・低粘度
・揮発性がないかもしくはほとんどない
・方法工程c)の後で被覆基材から抽出可能/除去可能
のうちの1つ以上を有する。その結果、化合物Csとして油の使用が優先される。非極性油としては、シリコン油、パラフィン系油、(過)フッ素化油が挙げられうる。極性油としては、グリセロール、(ポリ−)エチレングリコールが挙げられうる。
【0034】
Csの使用は、コーティングの量を基準にして、優先的には0.01〜1000重量%の量であり;好ましくは、該量は、0.05〜500重量%の範囲内である。
【0035】
方法工程a)−c)を行うべき条件は、放射線重合の技術分野で知られているとおりである。該方法工程に適した温度として、工程b)では好ましくは175〜375Kの温度が使用され、工程c)では好ましくは300〜575Kの温度が使用される。
【0036】
本発明に係るポリマーレリーフ構造体は、改良されたアスペクト比さらには改良された鮮鋭度を有する。本発明に係るレリーフのアスペクト比(ARは、レリーフの高さと隣接レリーフ間の距離との比であり、いずれもμm単位である)は、一般的には少なくとも0.075、より好ましくは少なくとも0.12であり;さらにより好ましくは、ARは少なくとも0.2である。レリーフ構造体の鮮鋭度は、曲率kの最大絶対値により定量化することが可能である。AFM測定から曲率kを導き出す手順は次のとおりである:(i)レリーフ構造体の形状をたとえば(Boltzmann)あてはめによりあてはめ、(ii)あてはめの一次微分および二次微分を計算し、(iii)次式により曲率kを計算する:
【数1】

【0037】
本発明に係るレリーフ構造体の曲率の絶対最大値(|kmax|)は、少なくとも0.35μm−1、より好ましくは少なくとも0.45μm−1、さらにより好ましくは0.65μm−1であり、最も好ましいのは、少なくとも0.7μm−1である。パラメーター(アスペクト比および鮮鋭度)は両方とも、原子間力顕微鏡法(AFM)により測定されるものとする。
【0038】
本発明に係るポリマーレリーフ構造体は、光学素子に適用可能である。その例は、たとえばLCDまたはLEDで利用される1/4波長フィルムおよびワイヤグリッド偏光子である。自己清浄性表面に供されるモスアイ構造体またはロータスフラワー構造体もまた、これにより達成可能である。他のおよび好ましい実施形態は、有機物または無機物における複製目的のマスターとしてのポリマーレリーフ構造体の使用である。
【0039】
以下の実施例および比較実験により、本発明についてさらに明確に説明するが、それらにより本発明を限定しようとするものではない。
【0040】
比較実験A.
フォトポリマーは、(i)ポリマー、ポリベンジルメタクリレート(Mw=70kg/mol)、50%wt/wtと、(ii)多官能性モノマー、ジ−ペンタエリトリトールテトラアクリレート、50%wt/wtと、を含有する混合物よりなるものであった。この混合物に、光開始剤(イルガキュア369(Irgacure 369)、4%wt/wt)および130℃で活性な熱開始剤(ジクミルペルオキシド、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン)を添加した。完全混合物をプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶解させた(25%wt/wt)。
【0041】
溶解された混合物をガラス基材上にドクターブレード被覆した。ドクターブレード被覆後、薄膜(4〜5ミクロン)を有する基材を80℃に5分間加熱して残留する痕跡量の溶媒を除去した。室温を超えるガラス転移温度(Tg>20℃)を有する固体膜をガラス基板上に得た。グレーティング(ピッチ=10ミクロン)を有するフォトマスクを固体ポリマー膜に直接接触させた状態で使用した。紫外光(キセノンランプ、帯域通過干渉フィルター、365nm、0.1J/cm)の照射を行った。その後、第1の加熱工程を80℃(10分間)で行い、第2の加熱工程を130℃(10分間)で行った。
【0042】
レリーフ構造体が形成された。これを原子間力顕微鏡法(AFM)により分析した(図1)。レリーフ構造体は、約1.1ミクロンの高さを有し、レリーフ構造体の上面に丸形加工形状を有していた。これは、フォトマスクの形状を正確に模擬するものではない。アスペクト比ARは0.11であり、曲率の最大値は0.3μm−1であった。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例I
使用したフォトポリマーは、比較実験Aと同等であった。スピン被覆および紫外光照射は、比較実験Aと同等に行われた。
【0045】
UV光照射後、フォトポリマー膜を有する基材にシリコン油の膜を適用した。界面張力は、18mJ/m低下した。
【0046】
フォトポリマー中への油の溶解を回避するように、特別な注意を払った。続いて、第1および第2の加熱工程を行った(比較実験A参照)。その後、室温においてヘプタンで濯ぐことにより、シリコン油を除去した。
【0047】
レリーフ構造体が形成された。これを原子間力顕微鏡法(AFM)により分析した(図2)。レリーフ構造体は、約1.9ミクロンの高さを有していた。さらに、レリーフ構造体の上面に非常にシャープな加工形状が観測された。これは、フォトマスクの照射(透明)領域の優れた複製であった。アスペクト比ARは0.19であり、曲率の最大値は0.8μm−1であった。
【0048】
【表2】

【0049】
比較実験B:
比較実験Aの被覆基材をホログラフィック照射(グレーティング、ピッチ=1.2ミクロン、アルゴンイオンレーザー、351nm、0.1J/cm)に供した。その後、第1の加熱工程を80℃(10分間)で行い、第2の加熱工程を130℃(10分間)で行った。レリーフ構造体が形成された。これを原子間力顕微鏡法により分析した(図3)。レリーフ構造体は、約0.07ミクロンの高さを有していた。アスペクト比ARは、0.06であった。
【0050】
【表3】

【0051】
実施例II
比較実験Aの被覆基材を使用した。ホログラフィック照射後、比較実験Bのときと同一の条件下で、フォトポリマー膜を有する基材にシリコン油の膜を適用した。フォトポリマー中への油の溶解を回避するように、特別な注意を払った。続いて、第1および第2の加熱工程を行った(比較実験B参照)。その後、室温においてヘプタンで濯ぐことにより、シリコン油を除去した。
【0052】
レリーフ構造体が形成された。これを原子間力顕微鏡法(AFM)により分析した(図4)。レリーフ構造体は、約0.16ミクロンの高さを有していた。アスペクト比ARは、0.13であった。
【0053】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種以上の放射線感受性成分を含むコーティングで基材を被覆することと、
b)周期的もしくはランダムな放射線強度パターンを有する電磁放射線でこの被覆基材を局所処理して潜像を形成することと、
c)得られた該被覆基材を重合および/または架橋することと、
によりポリマーレリーフ構造体を作製する方法であって、工程c)において該被覆基材の界面張力を低下させる化合物(Cs)が存在する、方法。
【請求項2】
Csが、工程b)で得られた前記被覆基材に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Csが、工程a)で使用される前記コーティング中にすでに存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程a)における前記放射線感受性成分が、1種以上の重合開始剤と組み合わせて1種以上のモノマーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において前記コーティングがポリマーをも含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記重合開始剤が光開始剤と熱開始剤との混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングが、揮発性溶媒の蒸発後の固体膜である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
リソグラフィーマスクが、フォトポリマー膜に直接接触させた状態で使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電磁放射線が、マスクと組み合わされたUV光である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)における前記処理が、光干渉/ホログラフィーを用いることによるものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記基材がポリマーを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程a)の前記コーティング中の前記ポリマーが少なくとも20,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
工程a)の前記コーティング中の前記ポリマーが少なくとも300Kのガラス転移温度を有する、請求項5または12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーが、工程a)で使用される前記放射線感受性コーティングのモノマーに溶解される、請求項5、12〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記放射線感受性コーティング中の成分が、(メタ−)アクリレート類、エポキシ類、ビニルエーテル類、スチレン類、およびチオール−エン類を含む群から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
Csが前記界面張力を少なくとも10mJ/m低下させる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
Csが、前記コーティングの量を基準にして0.05〜5重量%の量で適用される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法に従って取得可能なポリマーレリーフ構造体。
【請求項19】
アスペクト比(AR)が少なくとも0.12であり、該ARが、レリーフの高さと隣接レリーフ間の距離との比である、請求項18に記載のポリマーレリーフ構造体。
【請求項20】
曲率の最大絶対値(|kmax|)が、少なくとも0.35μm−1、より好ましくは少なくとも0.45μm−1、さらにより好ましくは少なくとも0.65μm−1である、請求項18または19に記載のポリマーレリーフ構造体。
【請求項21】
前記ARが少なくとも0.2である、請求項18〜20のいずれか一項に記載のポリマーレリーフ構造体。
【請求項22】
|kmax|が少なくとも0.7μm−1である、請求項18〜21のいずれか一項に記載のポリマーレリーフ構造体。
【請求項23】
工程b)が175〜375Kの温度で行われる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程c)が300〜575Kの温度で行われる、請求項1〜17および23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
光マネージメント用途における、請求項18〜22のいずれか一項に記載のポリマーレリーフ構造体または請求項1〜17あるいは23〜24のいずれか一項に記載の方法に従って作製されたポリマーレリーフ構造体の使用。
【請求項26】
回折光学素子またはホログラフィック光学素子における、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
有機物または無機物の複製目的のマスターとしての、請求項18〜22のいずれか一項に記載のポリマーレリーフ構造体または請求項1〜17あるいは23〜25のいずれか一項に記載の方法に従って作製されたポリマーレリーフ構造体の使用。

【公表番号】特表2007−527804(P2007−527804A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554038(P2006−554038)
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000127
【国際公開番号】WO2005/081071
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(505307806)スティッチング ダッチ ポリマー インスティテュート (18)
【出願人】(506284360)
【Fターム(参考)】