説明

ポリ乳酸系耐熱容器およびその製造方法

【課題】耐熱性および耐衝撃性に優れたポリ乳酸系耐熱容器を熱成形により従来よりも短サイクルで製造可能とするポリ乳酸系耐熱容器の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリ乳酸(A)、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(B)およびタルク(C)を少なくとも含有する樹脂組成物を押出成形して、相対結晶化度Xcが40〜55%の原反シート14を準備する。熱成形機20の加熱部21で前記原反シートを85〜125℃で加熱することにより、当該原反シートの相対結晶化度Xcを60〜70%とする。続いて、熱成形機20の成形部22にて、上記加熱した原反シートに真空成形および/または圧空成形を施して、そのまま成形品を加温状態の金型にて保持することにより、当該原反シートを容器形状に成形すると共にその得られた容器の相対結晶化度Xcを75%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系耐熱容器の製造方法と、その結果物たるポリ乳酸系耐熱容器とに関する。特に、ポリ乳酸系の原反シートを熱成形することによるポリ乳酸系耐熱容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸(乳酸系ポリマー)は、動植物やヒトに対して無害であり、生分解性および熱可塑性があり、しかも比較的安価であることから、環境に配慮した各種の容器や包装材の材料樹脂として注目されている。ただし、ポリ乳酸には、一般的に結晶化速度が遅いために原反シートの熱成形だけでは短時間での結晶化が難しく、生産性と耐熱性との両立が難しいという欠点がある。また、ポリ乳酸単独では、耐衝撃性に劣るという欠点がある。このため、ポリ乳酸にタルクやシリカなどの結晶核剤を添加して、射出成形や熱成形時におけるポリマーの結晶化を促進し、生産性の向上と成形品の耐熱性改善とを図る技術が種々提案されている。また、ポリ乳酸に対し、ポリエステル系樹脂その他の改質樹脂をブレンドして、最終的に得られる成形品の耐衝撃性を改善する技術が種々提案されている。
【0003】
以上のような技術動向の中にあって、特許文献1は、「汎用樹脂製品と同レベルの生産サイクルで成型可能で、且つ耐熱性、耐衝撃性に優れたポリ乳酸系成型品の製造方法」を開示する。特許文献1の方法は、次の各工程からなる。
1) D体含有率が5モル%以下であるとともに残留ラクチド量が0.1〜0.6質量%であるポリ乳酸85〜97質量%と、単独の引張弾性率が40〜1000MPaの脂肪族ポリエステル樹脂および/または脂肪族芳香族ポリエステル樹脂3〜15質量%とを含有する樹脂成分100質量部と、結晶核剤として平均粒径0.1〜10μmのタルク1〜25質量部とを含む樹脂組成物からなるシートを用いること、
2) 前記シートを、予め、100〜120℃かつ5〜30秒の条件で、20℃/分の昇温条件で示差走査型熱量計にて測定したときの結晶融解熱量ΔHmの絶対値と昇温中の結晶化により発生する昇温結晶化熱量ΔHcの絶対値との差である結晶化指標が|ΔHm|−|ΔHc|=10〜15J/gとなるように予備結晶化させること、
3) 前記予備結晶化させたシートを、90〜130℃に加熱された成型金型により、前記結晶化指標が|ΔHm|−|ΔHc|≧25J/gとなるように、賦型および結晶化させること。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−212897号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、ポリ乳酸系成型品を必ずしも短サイクルで製造可能とするものではない。例えば、特許文献1の段落0049に、
『(実施例1)
まず、シートAを予備結晶化させた。すなわち、シートAを、定速で回転する表面温度118℃に加熱された直径300mmのロールに26.5秒間密着させ、次に水冷の冷却ロールを介して上述の加熱ロールからシートAを剥離して、結晶化指標13.3J/gの予備結晶化シートを得た。得られた予備結晶化シートを材料とし、熱板圧空成型機とアルミ製の金型(HMR−3B)とを用いて、縦230mm、横200mm、深さ24mmの箱形の容器を成型した。成型時の加熱熱板温度(加熱軟化温度)は120℃、金型表面温度は117℃であり、賦型に必要な加熱時間(加熱軟化時間)は3.5秒、賦型後に離型に必要な結晶化時間は7.5秒で、ショットサイクルは13.0秒であった。成型した半製品をトムソン刃を使用した抜刃で打ち抜き、成型品を得た。得られた成型品の結晶化指標は29.18J/gであり、耐熱性は良好であった。』
と記載されている通り、特許文献1の技術では、シートAを予備結晶化させるために直径300mmの加熱ロールにシートAを26.5秒間も密着させる工程が必要であった。また、その後の熱板圧空成型機とアルミ製金型とを用いた圧空成型でも、ショットサイクルは13.0秒を必要とした。
【0006】
本発明の目的は、特許文献1のような加熱ロールによる予備結晶化の工程を必要とすることなく、耐熱性および耐衝撃性に優れたポリ乳酸系耐熱容器を熱成形により従来よりも短サイクルで連続的又は断続的に製造可能とするポリ乳酸系耐熱容器の製造方法を提供することにある。また、そのようなポリ乳酸系耐熱容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1の発明は、ポリ乳酸系耐熱容器を製造する方法であって、
I) ポリ乳酸(A)、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(B)および平均粒径が2〜10μmのタルク(C)を少なくとも含有する樹脂組成物を押出成形によりシート化してなる原反シートであって、相対結晶化度Xcが40〜55%であり、結晶化ピーク温度Tcが95℃以下である原反シートを準備する準備工程と、
II) 原反シートを加熱する加熱部と、加熱した原反シートに真空成形および/または圧空成形を施すための金型を有する成形部とを備えた熱成形機を用いて前記原反シートを熱成形する工程であって、
前記熱成形機の加熱部で、前記原反シートを85〜125℃の温度範囲内で加熱することにより、当該原反シートの相対結晶化度Xcを60〜70%とし、続いて、前記熱成形機の成形部にて、前記加熱した原反シートに真空成形および/または圧空成形を施して、そのまま成形品を加温状態の金型にて保持することにより、当該原反シートを容器形状に成形すると共にその得られた容器の相対結晶化度Xcを75%以上とする、
熱成形工程と、を備え、
ここで、10℃/分の昇温条件で試料に示差走査熱量測定を施したときの結晶化発熱量をΔHc、融解吸熱量をΔHmとしたとき、上記相対結晶化度Xcは、
Xc=100×(|ΔHm|−|ΔHc|)/|ΔHm|
で表わされる、ことを特徴とするポリ乳酸系耐熱容器の製造方法である。
【0008】
本願第2の発明は、ポリ乳酸(A)、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(B)およびタルク(C)を少なくとも含有する樹脂組成物をシート化してなる原反シートに熱成形を施して得られるポリ乳酸系耐熱容器であって、
前記樹脂組成物100質量%のうち、前記ブロック共重合体(B)が3〜9質量%を占め、前記タルク(C)が5〜20質量%を占め、残りを前記ポリ乳酸(A)およびその他の添加物が占めており、当該耐熱容器の相対結晶化度Xcが75%以上である、ことを特徴とするポリ乳酸系耐熱容器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリ乳酸系耐熱容器の製造方法によれば、耐熱性、耐衝撃性および剛性に優れたポリ乳酸系耐熱容器を熱成形により従来よりも短サイクルで連続的又は断続的に製造することができる。また、熱成形機を用いた熱成形工程において、賦型用金型から成形品を離型させるときの変形を効果的に防止することができる。
【0010】
本発明のポリ乳酸系耐熱容器は、90℃の想定使用温度においても優れた耐熱性を示し、想定使用温度でも容器からの溶出物や異臭の発生がなく、又、容器内容物の保護性能(耐衝撃性)にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Tダイ法によるシートの押出成形機の一例を示す図。
【図2】真空・圧空式の熱成形機の一例を示す図。
【図3】実施例等での成形品(お椀型容器)を示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図4】示差走査熱量測定の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施する際の好ましい形態について説明する。
本発明に係るポリ乳酸系耐熱容器を製造する方法は、原反シートを準備する準備工程と、熱成形機を用いて原反シートを熱成形する熱成形工程とからなる。
【0013】
(原反シートの準備)
原反シートは、ポリ乳酸(A)、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(B)、平均粒径が2〜10μmのタルク(C)およびその他の添加物(D)を含有する樹脂組成物を押出成形によりシート化したものである。
【0014】
使用可能なポリ乳酸(A)としては、ポリL−乳酸、L−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリDL−乳酸、又はこれらの混合体があげられる。なお、ポリ乳酸中のD体含有率は3モル%以下であることが好ましい。D体含有率が3モル%を超えると、ポリ乳酸自体の結晶性が低下し、後述のように結晶核剤を添加したり所定の熱処理を施したりしても十分な結晶化度が得られないおそれがある。
【0015】
ポリ乳酸(A)の重量平均分子量(Mw)は、15万〜25万の範囲にあることが好ましく、より好ましくは16万〜20万である。ポリ乳酸の重量平均分子量が15万未満であると、溶融粘度が低くなりすぎて得られた原反シートは機械的特性に劣るものになる。他方、ポリ乳酸の重量平均分子量が25万を超えると、溶融粘度が高くなりすぎて樹脂組成物の溶融押出成形によるシート化が困難になる。
【0016】
更に、ポリ乳酸(A)は、それ単独で相対結晶化度Xcが35%以上で、結晶化発熱量ΔHcが10J/g以上のものであることが好ましい。市販されているポリ乳酸の結晶化発熱量ΔHcの測定は、次のように行った。即ち、市販のポリ乳酸(例えばペレット状)を220℃にて15分間加熱して一旦完全溶融した後、これを0℃近い冷水で急冷して常温付近にまで戻すと共に非晶状態とした。そして、この非晶状態のポリ乳酸に対して示差走査熱量計(DSC)により10℃/分の昇温条件で示差走査熱量測定を施し、結晶化発熱量ΔHcを測定した(JIS(日本工業規格)K7122参照)。
【0017】
相対結晶化度Xcが35%未満、又は、結晶化発熱量ΔHcが10J/g未満のポリ乳酸では、所望の相対結晶化度(40〜55%)および所望の結晶化ピーク温度Tc(95℃以下)を有する原反シートを得ることが難しくなる。つまり、相対結晶化度Xcが35%未満や、結晶化発熱量ΔHcが10J/g未満では、ポリ乳酸自体の結晶化速度が遅いために、各成形過程において目標の相対結晶化度Xcに達するまでの時間が長くなりすぎるおそれがある。
【0018】
ちなみに、相対結晶化度Xcとは、測定対象となる系(樹脂系)が到達し得る結晶化の最大状態を相対結晶化度100%とみなした場合に、当該系の結晶化がどの程度(相対度)にあるかを示す指標である。この相対結晶化度Xcは、示差走査熱量計(DSC)によって測定可能であり、本発明では、10℃/分の昇温条件で試料(樹脂系)に示差走査熱量測定を施したときの樹脂系の結晶化発熱量をΔHc、樹脂系の融解吸熱量をΔHmとしたときに、
Xc=100×(|ΔHm|−|ΔHc|)/|ΔHm|
で表わされる(単位は%)(JIS(日本工業規格)K7122参照)。
【0019】
本発明で使用するポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(B)は、以下の化学式1に示すように、ポリ乳酸セグメント(B1)と、脂肪族ポリエステルセグメント(B2)とからなるポリ乳酸系ブロック共重合体である。
【化1】

【0020】
ブロック共重合体(B)のうちのポリ乳酸セグメント(B1)は、特にポリ乳酸との親和性を発揮する部分である。この意味において、当該ポリ乳酸セグメント(B1)が、前記ポリ乳酸(A)と同じ化学構造を有するポリ乳酸からなることは好ましい。その一方で、ブロック共重合体(B)のうちの脂肪族ポリエステルセグメント(B2)は、特にシート化後の耐衝撃性や柔軟性の改善に貢献する部分である。本発明では、脂肪族ポリエステルセグメント(B2)がポリプロピレンセバケート(化学式2参照)からなることは好ましい。
【化2】

【0021】
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(B)の重量平均分子量は、6万〜12万の範囲にあることが好ましい。更に、当該ブロック共重合体(B)は、相対結晶化度Xcが40%以上で、結晶化ピーク温度が95℃以下のものであることが好ましい。なお、ブロック共重合体(B)の相対結晶化度Xcおよび結晶化ピーク温度については、上記ポリ乳酸の場合と同様、一旦非晶状態に戻し、その非晶状態のブロック共重合体に対して示差走査熱量計(DSC)により10℃/分の昇温条件で示差走査熱量測定を施すことにより測定した。
【0022】
相対結晶化度が40%未満、又は、結晶化ピーク温度が95℃超えのブロック共重合体(B)では、所望の相対結晶化度(40〜55%)および所望の結晶化ピーク温度Tc(95℃以下)を有する原反シートを得ることが難しくなる。つまり、相対結晶化度Xcが40%未満や、結晶化ピーク温度が95℃超えという条件では、ブロック共重合体(B)の結晶化速度が遅いためにポリ乳酸の結晶化を阻害してしまい、各成形過程において目標の相対結晶化度Xcに達するまでの時間が長くなりすぎるおそれがある。
【0023】
本発明においてタルク(C)は、ポリ乳酸の結晶核剤として使用される。使用可能なタルクの平均粒径は2〜10μmの範囲である。平均粒径が2μm未満であると、分散不良や二次凝集を生じて結晶核剤としての効果を十分に得られないおそれがある。他方、平均粒径が10μmを超えると、シート化した際にシートの物性に悪影響を与え、結果的に成形品の物性に悪影響を及ぼす(例えば成形品の耐衝撃性が低下する)おそれがある。
【0024】
樹脂組成物に含まれるその他の添加物(D)としては、例えば、顔料等の着色剤があげられる。樹脂組成物にタルクが含まれると、シートが灰色に着色される傾向にあるため、灰色着色による意匠性の欠如を補う目的で、顔料等の着色剤を添加することは好ましい。なお、使用可能な着色剤としては、酸化チタン(白色着色剤)やカーボンブラック(黒色着色剤)を例示することができる。なお、着色剤以外の添加剤(D)として、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、離型材、防湿材、酸素バリア剤などを樹脂組成物の特性を損なわない範囲内で、樹脂組成物に添加してもよい。
【0025】
前記樹脂組成物では、その全体(100質量%)のうち、前記ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(B)が3〜9質量%を占め、前記タルク(C)が5〜20質量%を占め、前記ポリ乳酸(A)および前記その他の添加物(D)が残りを占める。ブロック共重合体(B)の含有量が3質量%未満になると、ブロック共重合体(B)による樹脂組成物の改質効果があまり期待できなくなり、シート又は容器形態での耐衝撃性が悪化する等の不都合を生じ得る。他方、ブロック共重合体(B)の含有量が9質量%を超えると、シート又は容器形態での剛性低下を招く等の不都合を生じ得る。また、タルク(C)の含有量が5質量%未満になると、結晶核剤としての効果を十分発揮できなくなる。他方、タルク(C)の含有量が20質量%を超えると、タルクの含有量が多くなりすぎてシート化が困難になり、また仮にシート化が可能であったとしても、成形品が非常に脆くなるなど製品品質に悪影響が出る。
【0026】
原反シートは、ポリ乳酸(A)、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(B)、タルク(C)およびその他の添加物(D)を含有してなる上記樹脂組成物を押出成形にてシート化することにより製造される。その際の押出成形法としては、例えばTダイを用いて溶融混練した樹脂組成物を押し出すTダイ法が好ましい。
【0027】
Tダイ法では、図1に示すように、Tダイ11、タッチロール12およびキャストロール13を具備した押出成形機10が使用される。シート成形に際しては、押出成形機のホッパーに準備された上記樹脂組成物が、温度200〜230℃に加熱されたTダイ11にて溶融・混練されると共にそこから押し出される。押し出されたシート状物は、30〜50℃の温度範囲に設定されたキャストロール13にて冷却され、厚さ150〜1000μm程度の未延伸シートになる。これが巻き取られて、原反シートのロール14ができあがる。
【0028】
押出成形によって得られた原反シートは、相対結晶化度Xcが40〜55%、結晶化ピーク温度Tcが95℃以下のものである。原反シートの相対結晶化度Xcおよび結晶化ピーク温度Tcが上記範囲を外れると、最終的に相対結晶化度Xcが75%以上の耐熱容器を得ることが難しくなる。
【0029】
(原反シートの熱成形工程)
上記原反シートは、熱成形機を用いて熱成形される。図2に示すように、熱成形機20は、原反シートを加熱する加熱部21と、加熱した原反シートに真空成形および/または圧空成形を施すための金型(図示略)を有する成形部22と、成形部で成形された容器を連続した原反シートから切り離すためのカットプレス部23とを備える。
【0030】
熱成形の第一段階では、熱成形機の加熱部21にて原反シートが85〜125℃の温度範囲内(より好ましくは110〜120℃の温度範囲内)で加熱される。このときの加熱温度が85℃未満であると、結晶化速度が遅いために相対結晶化度Xcが60%に達しない。他方で、加熱温度が125℃を超えると、原反シートのドローダウンが大きくなり、次の第二段階でのシート成形時に成形品にシワが生じてしまう。なお、この第一段階での加熱時間は、2ショット加熱で6〜8秒(トータルの加熱時間で12〜16秒)程度で足りる。
【0031】
原反シートを85〜125℃の温度で所定時間(比較的短い時間)だけ加熱することにより、当該原反シートの相対結晶化度Xcを60〜70%としている。この第一段階の加熱により原反シートの相対結晶化度Xcを60〜70%にしておくことで、次の第二段階において最終的に相対結晶化度Xcが75%以上の耐熱容器を比較的短時間で得ることが可能になる。なお、この第一段階の加熱によって原反シートの相対結晶化度Xcが70%を超えると、結晶化の程度が高くなりすぎ、次の第二段階でのシート成形(シートの機械的成形)が非常に難しくなる。
【0032】
熱成形の第二段階では、熱成形機の加熱部21で加熱された原反シートに対し、熱成形機の成形部22にて真空成形および/または圧空成形を施し、その後、そのまま成形品を加温状態の金型にて保持することにより、当該原反シートを容器形状に成形すると共にその得られた容器の相対結晶化度Xcを75%以上としている。
【0033】
この第二段階のシート成形に用いられる成形用金型の温度については、85℃以上、125℃未満であり、且つ上記第一段階でのシート加熱温度よりも低いことが好ましい。このときの金型温度が85℃未満であると、結晶化が遅い又は進まず短時間では相対結晶化度Xcが75%に達せず、所望の耐熱性が得られない。他方で、金型温度が125℃以上になると、金型上または金型内での成形品の剛性低下により、成形品を金型から離型させるときに成形品が変形を起こし易くなる。また、金型温度が前記シート加熱温度以上であると、成形品の金型に対する密着性が過度に強くなり、成形品を金型から離型させるときに成形品が変形を起こし易くなる。このような事情から、例えば熱成形の第一段階での原反シートの加熱温度が110〜120℃の場合には、熱成形の第二段階での成形用金型の温度は85〜110℃であることが好ましい。
【0034】
成形部22において、加熱済み原反シートに対し真空成形および/または圧空成形を施し、そのまま成形品を加温状態の金型にて保持することにより、当該原反シートが所望の容器形状に成形され且つ所望の相対結晶化度Xcにされる。その後、カットプレス部23において、連続した原反シートからシート成形部分を切り離すことで、所望形状の容器が得られる。こうして得られた容器(ポリ乳酸系耐熱容器)は相対結晶化度Xcが75%以上の容器であり、非常に優れた耐熱性を有する。本発明のポリ乳酸系耐熱容器における相対結晶化度Xcと耐熱温度との相関性について言えば、相対結晶化度Xc=75%で耐熱温度が約90℃となり、相対結晶化度Xc=80%で耐熱温度が約110℃となり、相対結晶化度Xc=100%で耐熱温度が約130℃となることが、実験によって把握されている。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例および比較対象となる例(比較例)について説明するが、その前に、各種物性データの測定方法、耐熱安定性、耐衝撃性および曲げ弾性率の評価方法、並びに、使用した材料ポリマーについて説明する。
【0036】
(DSC測定からの物性データ)
示差走査型熱量計(リガク社製:DSCモデル8230)を用い、検査対象となる試料(約5mg)をセットし、昇温速度10℃/分にて測定を行った。そして、図4に示すように、測定から得られた融解吸熱曲線において、発熱側ピークのピーク点から結晶化ピーク温度Tcを、その発熱側ピークの面積から結晶化発熱量ΔHcを得た。また、吸熱側ピークのピーク点から融解ピーク温度Tmを、その吸熱側ピークの面積から融解吸熱量ΔHmを得た。そして、相対結晶化度Xc(単位:%)を次式に基づいて計算した。
Xc=100×(|ΔHm|−|ΔHc|)/|ΔHm|
【0037】
(耐熱安定性)
以下に記載の実施例および比較例では、図3(a)(b)に示すように、直径D=120mm、高さh=40mm(深さでもある)、底面部の厚さt=約0.2mmのお椀型容器を成形した。このお椀型容器を所定温度のオーブンに入れて15分間放置し、その後、室温にまで戻したときの寸法変化率(具体的には収縮率)を測定した。即ち、オーブンに入れる前の容器の直径がD1、オーブンで加熱後の容器の直径がD2である場合に、寸法変化率Yd(単位:%)を、Yd=100×(D1−D2)/D1、で計算した。
そして、オーブンの温度として70℃、90℃、100℃および110℃を設定し、各設定温度での15分間の加熱処理によっても寸法変化率Ydが1%未満の場合には、少なくとも当該温度での耐熱安定性について合格(後掲の表4において「○」)と評価し、寸法変化率Ydが1%以上となる場合には、当該温度での耐熱安定性につき不合格(後掲の表4において「×」)と評価した。
【0038】
(耐衝撃性)
以下に記載の実施例および比較例で成形したお椀型容器(図3参照)内に粒状物150gを入れて蓋をしたもの(検体)を各例につき10個準備した。そして、室温約20℃の検査室内でこれらの10個の検体を一つずつ1mの高さから床面上に自由落下させる落下試験を行った。この落下試験において、10個の検体のどれも容器に割れが生じなかった場合には、耐衝撃性につき良好(後掲の表5において「○」)と評価し、10個の検体中の1つでも容器に割れが生じた場合には、耐衝撃性につき不良(後掲の表5において「×」)と評価した。
【0039】
(曲げ弾性率)
以下に記載の実施例および比較例では、上述のようなお椀型容器(図3参照)を成形したが、全く同じ手順で曲げ弾性率測定用の皿型容器(図示略)を成形した。即ち、各例では、縦235mm×横200mm×深さ25mm、底面部の厚さt=約0.2mmの皿型容器を成形し、その皿型容器の平らな底面部を打ち抜いて25mm×150mmの長方形状の試験片を採取した。そして、各試験片につきJIS(日本工業規格)K7171に準じて、島津製作所株式会社製オートグラフを用い、支点間距離:30mm、曲げ速度:20mm/分の測定条件にて曲げ弾性率(単位はPa)を測定した(表5参照)。
曲げ弾性率は容器の剛性の高さを示す指標となるものであり、本発明の容器では、曲げ弾性率が5.00GPa以上であれば、剛性は良好、曲げ弾性率が5.00GPa未満の場合には、剛性不足と評価される。表5では、曲げ弾性率が5.00GPaに満たなかった一部の比較例に対し、剛性不足を意味する「NG」の記号が付されている。
【0040】
(使用した材料ポリマー)
全ての実施例および比較例を通じ、ポリ乳酸(A)として、ネイチャーワークスLLC社製:商品名「ネイチャーワークスポリ乳酸4032D」を使用した。ネイチャーワークスポリ乳酸4032Dは、D体含有量が1.2〜1.6モル%で重量平均分子量(Mw)が約18万のポリ乳酸である。このポリ乳酸を単独でDSC測定したときの物性データを後掲の表1に示す。
【0041】
実施例1〜4および比較例1〜3では、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(B)として、DIC株式会社製:商品名「プラメートPD150」を使用した。プラメートPD150は、ポリ乳酸セグメント(B1)が上記ネイチャーワークスポリ乳酸4032Dであり、脂肪族ポリエステルセグメント(B2)がポリプロピレンセバケート(化学式2参照)である。プラメートPD150の重量平均分子量(Mw)は約9万である。このブロック共重合体を単独でDSC測定したときの物性データを後掲の表1に示す。
【0042】
比較例4では、ポリ乳酸(A)と併用するポリマーとして、特許文献1の実施例で使用されていたBASF社製:商品名「エコフレックスF」を使用した。エコフレックスFは、1,4−ブタンジオール(HO-(CH2)4-OH)、アジピン酸(HOOC-(CH2)4-COOH)、テレフタル酸(HOOC-C6H4-COOH)を共重合させた脂肪族芳香族ポリエステル(即ち、ポリブチレンアジペートテレフタレート)であり、その重量平均分子量(Mw)は約14万である。この脂肪族芳香族ポリエステルを単独でDSC測定したときの物性データを後掲の表1に示す。
【0043】
全ての実施例および比較例を通じ、タルク(C)として、日本タルク株式会社製:商品名「ミクロエースP−8」(平均粒径3.3μm)を使用した。また、その他の添加物(D)として、堺化学工業株式会社製:商品名「SH−1」の白色顔料(酸化チタン)を使用した。
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例1)
ポリ乳酸(ネイチャーワークスポリ乳酸4032D)79質量%、ポリ乳酸/ポリプロピレンセバケートのブロック共重合体(プラメートPD150)5質量%、タルク(ミクロエースP−8)15質量%、顔料(酸化チタン)1質量%を配合して樹脂組成物(100質量%)を調整した。そして、Tダイ法により上記樹脂組成物から原反シートを製造した。即ち、上記樹脂組成物を220〜230℃の温度で溶融混練すると共に、タッチロール温度約39℃、キャストロール温度約43℃、ロール速度13m/分の条件下、溶融した樹脂組成物を押出成形して厚さ0.3mmの原反シート(図1のロール14参照)を得た。実施例1で得られた原反シートは、結晶化ピーク温度Tc=87.0℃、相対結晶化度Xc=48.6%であった(後掲の表2参照)。
【0046】
次に、真空・圧空間接熱成形機を用いて、ロール状の原反シートから成形品を連続成形した。即ち、熱成形機20の加熱部21において原反シートの上下に配置されるヒータの温度を290〜350℃に設定すると共に、この加熱部21に原反シートを2ショット加熱で約6秒間(トータルで約12秒間)滞在させることで、原反シートの被加熱部分を約118℃に加熱した。ちなみに、この加熱直後(且つ成形直前)の原反シートから一部を切り取ってDSC測定したところ、その相対結晶化度は66.2%であった(後掲の表4参照)。
【0047】
続いて、その約118℃の原反シートの被加熱部分を熱成形機20の成形部22に移動させ、表面温度が80〜110℃の金型に真空・圧空に基づいて前記被加熱部分を密着させ、当該シート部分に所定形状(本例ではお椀型形状)を付与した。その際の金型保持時間は3.0秒であった。その後、真空・圧空成形されたシート部分を熱成形機のカットプレス部23に移動させ、カットプレスによって原反シートから成形品を切り離した。実施例1における成形品連続成形のショットサイクルは6.8秒であった(後掲の表5参照)。
【0048】
得られた成形品は、図3(a)(b)に示すように、直径D=120mm、高さh=40mm、底面部の厚さt=約0.2mmのお椀型容器である。このお椀型容器の底面部の一部を切り取ってDSC測定したところ、その相対結晶化度Xcは100%であった(後掲の表4参照)。この実施例1のお椀型容器について耐熱安定性を測定したところ、70℃、90℃、100℃および110℃のいずれの温度でも、寸法変化率Ydは1%未満に過ぎず、優れた耐熱安定性を示した(後掲の表4参照)。また、耐衝撃性および曲げ弾性率ともに良好な結果を示した(後掲の表5参照)。
【0049】
(実施例2)
ポリ乳酸(ネイチャーワークスポリ乳酸4032D)81質量%、ポリ乳酸/ポリプロピレンセバケートのブロック共重合体(プラメートPD150)8質量%、タルク(ミクロエースP−8)10質量%、顔料(酸化チタン)1質量%を配合して樹脂組成物(100質量%)を調整した。そして、実施例1と同様、Tダイ法により上記樹脂組成物から原反シートを製造すると共に、真空・圧空間接熱成形機を用いて原反シートから成形品を連続成形した。
実施例2の原反シートの物性データを表2に示す。加熱直後の原反シートおよび成形品(お椀型容器)の物性データ、並びに耐熱安定性の評価結果を表4に示す。実施例2における成形品連続成形のショットサイクル、耐衝撃性および曲げ弾性率を表5に示す。
【0050】
(実施例3)
ポリ乳酸(ネイチャーワークスポリ乳酸4032D)89質量%、ポリ乳酸/ポリプロピレンセバケートのブロック共重合体(プラメートPD150)5質量%、タルク(ミクロエースP−8)5質量%、顔料(酸化チタン)1質量%を配合して樹脂組成物(100質量%)を調整した。そして、実施例1と同様、Tダイ法により上記樹脂組成物から原反シートを製造すると共に、真空・圧空間接熱成形機を用いて原反シートから成形品を連続成形した。
実施例3の原反シートの物性データを表2に示す。加熱直後の原反シートおよび成形品(お椀型容器)の物性データ、並びに耐熱安定性の評価結果を表4に示す。実施例3における成形品連続成形のショットサイクル、耐衝撃性および曲げ弾性率を表5に示す。
【0051】
(実施例4)
ポリ乳酸(ネイチャーワークスポリ乳酸4032D)74質量%、ポリ乳酸/ポリプロピレンセバケートのブロック共重合体(プラメートPD150)5質量%、タルク(ミクロエースP−8)20質量%、顔料(酸化チタン)1質量%を配合して樹脂組成物(100質量%)を調整した。そして、実施例1と同様、Tダイ法により上記樹脂組成物から原反シートを製造すると共に、真空・圧空間接熱成形機を用いて原反シートから成形品を連続成形した。
実施例4の原反シートの物性データを表2に示す。加熱直後の原反シートおよび成形品(お椀型容器)の物性データ、並びに耐熱安定性の評価結果を表4に示す。実施例4における成形品連続成形のショットサイクル、耐衝撃性および曲げ弾性率を表5に示す。
【0052】
(比較例1)
比較例1は、ポリ乳酸と併用するポリ乳酸/ポリプロピレンセバケートのブロック共重合体(プラメートPD150)の配合量が、その下限値である3質量%を下回る2質量%である場合を示す。即ち、ポリ乳酸(ネイチャーワークスポリ乳酸4032D)82質量%、ポリ乳酸/ポリプロピレンセバケートのブロック共重合体(プラメートPD150)2質量%、タルク(ミクロエースP−8)15質量%、顔料(酸化チタン)1質量%を配合して樹脂組成物(100質量%)を調整した。そして、実施例1と同様、Tダイ法により上記樹脂組成物から原反シートを製造すると共に、真空・圧空間接熱成形機を用いて原反シートから成形品を連続成形した。
比較例1の原反シートの物性データを表3に示す。加熱直後の原反シートおよび成形品(お椀型容器)の物性データ、並びに耐熱安定性の評価結果を表4に示す。比較例1における成形品連続成形のショットサイクル、耐衝撃性および曲げ弾性率を表5に示す。
実施例1〜4と比較して、比較例1では特に耐衝撃性の低下がみられた。
【0053】
(比較例2)
比較例2は、ポリ乳酸と併用するポリ乳酸/ポリプロピレンセバケートのブロック共重合体(プラメートPD150)の配合量が、その上限値である9質量%を上回る11質量%である場合を示す。即ち、ポリ乳酸(ネイチャーワークスポリ乳酸4032D)73質量%、ポリ乳酸/ポリプロピレンセバケートのブロック共重合体(プラメートPD150)11質量%、タルク(ミクロエースP−8)15質量%、顔料(酸化チタン)1質量%を配合して樹脂組成物(100質量%)を調整した。そして、実施例1と同様、Tダイ法により上記樹脂組成物から原反シートを製造すると共に、真空・圧空間接熱成形機を用いて原反シートから成形品を連続成形した。
比較例2の原反シートの物性データを表3に示す。加熱直後の原反シートおよび成形品(お椀型容器)の物性データ、並びに耐熱安定性の評価結果を表4に示す。比較例2における成形品連続成形のショットサイクル、耐衝撃性および曲げ弾性率を表5に示す。
実施例1〜4と比較して、比較例2では特に曲げ弾性率の低下(即ち剛性の低下)がみられた。
【0054】
(比較例3)
比較例3は、タルク(ミクロエースP−8)の配合量が、その下限値である5質量%を下回る2.5質量%である場合を示す。即ち、ポリ乳酸(ネイチャーワークスポリ乳酸4032D)91.5質量%、ポリ乳酸/ポリプロピレンセバケートのブロック共重合体(プラメートPD150)5質量%、タルク(ミクロエースP−8)2.5質量%、顔料(酸化チタン)1質量%を配合して樹脂組成物(100質量%)を調整した。そして、実施例1と同様、Tダイ法により上記樹脂組成物から原反シートを製造すると共に、真空・圧空間接熱成形機を用いて原反シートから成形品を連続成形した。
比較例3の原反シートの物性データを表3に示す。加熱直後の原反シートおよび成形品(お椀型容器)の物性データ、並びに耐熱安定性の評価結果を表4に示す。比較例3における成形品連続成形のショットサイクル、耐衝撃性および曲げ弾性率を表5に示す。
比較例3では、タルクの配合量が少ないことで原反シートの相対結晶化度Xcが40%に届かず、熱成形により容器化した後も高い耐熱性は得られなかった。また、曲げ弾性率の低下(即ち剛性の低下)がみられ、ショットサイクルも短縮できなかった。
【0055】
(比較例4)
比較例4は、ポリ乳酸と併用するポリマーとして、特許文献1で使用の脂肪族芳香族ポリエステル(エコフレックスF)を使用した。つまり、実施例1におけるブロック共重合体(プラメートPD150)を脂肪族芳香族ポリエステル(エコフレックスF)で置換した事例に相当する。なお、比較例4でのシート成形および熱成形の手順は実施例1に順ずるものであり、特許文献1の実施例とは異なる手順を経ている。即ち、ポリ乳酸(ネイチャーワークスポリ乳酸4032D)79質量%、脂肪族芳香族ポリエステル(エコフレックスF)5質量%、タルク(ミクロエースP−8)15質量%、顔料(酸化チタン)1質量%を配合して樹脂組成物(100質量%)を調整した。そして、実施例1と同様、Tダイ法により上記樹脂組成物から原反シートを製造すると共に、真空・圧空間接熱成形機を用いて原反シートから成形品を連続成形した。
比較例4の原反シートの物性データを表3に示す。加熱直後の原反シートおよび成形品(お椀型容器)の物性データ、並びに耐熱安定性の評価結果を表4に示す。比較例4における成形品連続成形のショットサイクル、耐衝撃性および曲げ弾性率を表5に示す。
比較例4では、エコフレックスF自体の相対結晶化度Xcが17.8%とかなり低いために、シート化後の原反シートの相対結晶化度Xcが40%に届かず、熱成形により容器化した後も高い耐熱性は得られなかった。また、ショットサイクルを短縮することはできなかった。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【符号の説明】
【0060】
10…押出成形機、11…Tダイ、12…タッチロール、13…キャストロール、14…原反シートのロール、20…熱成形機、21…加熱部、22…成形部、23…カットプレス部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系耐熱容器を製造する方法であって、
I) ポリ乳酸(A)、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(B)および平均粒径が2〜10μmのタルク(C)を少なくとも含有する樹脂組成物を押出成形によりシート化してなる原反シートであって、相対結晶化度Xcが40〜55%であり、結晶化ピーク温度Tcが95℃以下である原反シートを準備する準備工程と、
II) 原反シートを加熱する加熱部と、加熱した原反シートに真空成形および/または圧空成形を施すための金型を有する成形部とを備えた熱成形機を用いて前記原反シートを熱成形する工程であって、
前記熱成形機の加熱部で、前記原反シートを85〜125℃の温度範囲内で加熱することにより、当該原反シートの相対結晶化度Xcを60〜70%とし、続いて、前記熱成形機の成形部にて、前記加熱した原反シートに真空成形および/または圧空成形を施して、そのまま成形品を加温状態の金型にて保持することにより、当該原反シートを容器形状に成形すると共にその得られた容器の相対結晶化度Xcを75%以上とする、
熱成形工程と、を備え、
ここで、10℃/分の昇温条件で試料に示差走査熱量測定を施したときの結晶化発熱量をΔHc、融解吸熱量をΔHmとしたとき、上記相対結晶化度Xcは、
Xc=100×(|ΔHm|−|ΔHc|)/|ΔHm|
で表わされる、ことを特徴とするポリ乳酸系耐熱容器の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物100質量%のうち、前記ブロック共重合体(B)が3〜9質量%を占め、前記タルク(C)が5〜20質量%を占め、残りを前記ポリ乳酸(A)およびその他の添加物が占めることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系耐熱容器の製造方法。
【請求項3】
前記ポリ乳酸(A)は、相対結晶化度Xcが35%以上で、結晶化発熱量ΔHcが10J/g以上のものである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ乳酸系耐熱容器の製造方法。
【請求項4】
前記ブロック共重合体(B)は、相対結晶化度Xcが40%以上で、結晶化ピーク温度Tcが95℃以下のものである、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリ乳酸系耐熱容器の製造方法。
【請求項5】
前記ブロック共重合体(B)のうちの脂肪族ポリエステルセグメント(B2)は、ポリプロピレンセバケートからなる、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリ乳酸系耐熱容器の製造方法。
【請求項6】
前記ブロック共重合体(B)のうちのポリ乳酸セグメント(B1)は、前記ポリ乳酸(A)と同じ化学構造を有するポリ乳酸からなる、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリ乳酸系耐熱容器の製造方法。
【請求項7】
ポリ乳酸(A)、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体(B)およびタルク(C)を少なくとも含有する樹脂組成物をシート化してなる原反シートに熱成形を施して得られるポリ乳酸系耐熱容器であって、
前記樹脂組成物100質量%のうち、前記ブロック共重合体(B)が3〜9質量%を占め、前記タルク(C)が5〜20質量%を占め、残りを前記ポリ乳酸(A)およびその他の添加物が占めており、当該耐熱容器の相対結晶化度Xcが75%以上である、ことを特徴とするポリ乳酸系耐熱容器。
【請求項8】
前記ブロック共重合体(B)のうちのポリ乳酸セグメント(B1)は、前記ポリ乳酸(A)と同じ化学構造を有するポリ乳酸からなり、脂肪族ポリエステルセグメント(B2)は、ポリプロピレンセバケートからなる、ことを特徴とする請求項7に記載のポリ乳酸系耐熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−46005(P2011−46005A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193930(P2009−193930)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(396000422)リスパック株式会社 (53)
【Fターム(参考)】