説明

ポリ(アリールエーテルスルホン)材料及びその使用

少なくとも1種のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)、又は少なくとも1種のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)及びポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)とは異なる少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)からなるポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)、及び少なくとも1種のフルオロカーボンポリマーを含有するポリマー組成物(C)を含有する、100μm以下の厚みを有する高性能の薄いフィルム。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、2005年2月16日に提出された米国仮出願60/653,137号明細書の優先権を主張し、その全内容を参照としてここに組み込む。
【0002】
本発明は、特に航空機の一部に含まれる種々の絶縁性材料を包むのに好適な高性能の薄いフィルムに関する。
【0003】
産業、特に航空機産業は、ガラス繊維のような有益な種々の材料を用い、熱、音及び/又は水分に対する種々の産業部材の絶縁性中綿を製造している。それらの物理的形態(例えば、繊維状又は粒子状)のため、及びさらにそれらを水分から保護するために、これらの絶縁性材料は通常は包まれている必要がある。ポリマーフィルムが好ましくは用いられ、バッグを形成する。ポリマーフィルムは、該ポリマーが本質的にかなり高い防炎性及び難燃性を示す場合でさえ、通常はバッグ自体の中身(例えばガラス繊維)よりも炎に対していくぶん脆弱に振舞うため、及び産業、特に航空機産業がさらなる耐火性材料からなる部材を必要としているために、通常は薄くある必要がある。
薄い袋用フィルムは、厳しい環境に曝される又は曝されやすいために、望ましくはその薄い厚みにも関わらず、種々の機械的、熱的及び/又は化学的特性の広い組み合わせを満たすべきである。
【0004】
現在のところ、金属化PETからなる薄い袋用フィルム(特にMYLAR(登録商標)製品として入手可能)は、航空機部材の製造者によってしばしば用いられている。しかし、一般的には、金属化PETからなる薄い袋用フィルムは、特にそれらが新規要求に応じた十分な難燃性をしばしば示さないために、包含される最終使用にそれ以上十分でない。これらは、特にクラッシュ後の外部燃料の炎上が胴体から内部に貫通するのにかかる時間を増加させ、並びに航空機の内壁及び外部機体の間で開始する飛行炎上の伝播を除去することにより解決した。
続いて、他のポリマーが、金属化PET、特にPVF(特にTEDLAR(登録商標)ポリマーとして市場で入手可能)の代わりに薄い袋用フィルムを製造するのに試された。しかし、PVFからなる薄い袋用フィルムは、特にそれらが燃焼したときにかなり高い毒性ヒュームを排出するため、一般的に航空機製造者に嫌がられる。さらに、PVCフィルムを製造することができる方法には、それらの厚みが少なくとも50μmより薄くてはいけないような制限がある。
ポリイミド、例えばKAPTON(登録商標)樹脂からなる薄い袋用フィルムも製造され、特に水分縮合物に繰り返し曝された後の不十分な硬度及び不十分な硬度抵抗のためにほとんどの場合で不適であることが示された。
【0005】
従って、現在のところ、産業、特に航空機産業において、特に航空機の一部分に含まれる種々の絶縁性材料を包むのに好適な薄いフィルムであって、以下の要求の一部、及び好ましくは全てを満たし、先行技術の薄いフィルムより実質的に進んだフィルムが強く要求されている:
製造の容易さ、フィルムが製造される材料の高い加工可能性を含む、
高い硬度、水分縮合物に曝された後を含む、
高い引き裂き抵抗、疲労サイクル後を含む、
高い耐火性、特に高い難燃性、
燃焼中の低い毒性、
放射性パネル炎上伝播試験の通過率、
適度なコスト、及び
規則的な表面特性(特に、該表面は本質的に出っ張りを含んではならず、あるいは全く含んではならない)。
【0006】
特に、製造されるフィルムが非常に薄い必要があるとき、その表面特性の質は最も重要な特性の一つとなり得、しばしば最も重要な特性となる。
ある種の用途では、該薄いフィルムは、化学的試薬、特に強酸、強塩基、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素に対する高い化学抵抗をさらに提供し、高い加水分解安定性を有するべきである。
上記特性の一部を改善する試みは一般的に一部の他の特性の低落となったため、全てではないが一部の上記要求を満たす挑戦は本出願人にとって厄介であると思われた。
【0007】
しかし、優れたバランスの特性は、
-ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)、これは
・少なくとも1種のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)、又は
・少なくとも1種のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)及びポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)とは異なる少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)からなる、及び
-少なくとも1種のフルオロカーボンポリマー、
を含有するポリマー組成物(C)を含有する、100μm以下の厚みを有するフィルムによって達成され、上記要求の全て、場合によっては他のさらなる特性がしばしば満たされる。
【0008】
フィルムの厚み(t)は有利には以下で定義される:
t = ∫V τ(x,y,z) dx dy dz / V
(式中、x、y及びzは、全単純体積Vのフィルムの基本体積dV(dVはdx×dy×dzに等しい)の3次元空間における座標であり、τは局所的な厚みである)。
座標(x,y,z)の質点に関連する局所的な厚みτは、該質点を含む最短直線Dの長さとして定義され、フィルムを貫通する(すなわち、Dがフィルムに入る質点からDが造形品を出る質点まで通る)。
本発明のフィルムは、基体上にコーティングされないと理解される。一般的にコーティングと呼ばれる基体上にコーティングされる材料の薄い層は、本発明のフィルムと異なる。コーティングは通常は溶解加工によって製造される;対照的に、以下に詳細されるように、本発明のフィルムは通常は溶融加工によって調製される。
【0009】
フィルムの厚みは、好ましくは50μmより薄く、さらに好ましくは30μmより薄く、及びさらに好ましくは20μmよりも薄い。
さらに、フィルムの厚みは、有利には1μmより厚く、好ましくは2μmより厚く、さらに好ましくは3μmより厚く、及びさらに好ましくは4μm以上である。
最も好ましい厚みの範囲は4〜8μmである。
別の最も好ましい厚みの範囲は8〜16μmである。
任意に、該フィルムは、例えばその末端において又はその外辺部に沿って局所的な一部の領域を含有してよく、これらはポリマー組成物(C)以外の少なくとも1種の材料、例えば金属又はポリ(ビフェニルエーテルスルホン)及び/又はフルオロカーボンポリマーを含まない熱可塑性材料からなる。
ポリマー組成物(C)は、フィルムの全質量に基づいて有利には50質量%より多い量でフィルムに含有される。
好ましくは、フィルムは本質的にポリマー組成物(C)からなる。さらに好ましくは、フィルムはポリマー組成物(C)からなる。
【0010】
ポリ(アリールエーテルスルホン)材料
上記のように、ポリマー組成物(C)はポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)を含有する。
本発明の目的では、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料が、その50mol%より多い繰り返し単位が少なくとも1種のエーテル基(-O-)、少なくとも1種のスルホン基(-SO2-)及び少なくとも1種のアリーレン基を含有する1種以上の重縮合ポリマーを意味することが意図される。
ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)は、ポリマー組成物(C)の全質量に基づいて有利には50質量%より多く、好ましくは70質量%より多く、及びさらに好ましくは85質量%より多い量でポリマー組成物(C)に含有される。
【0011】
上記のように、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)は、少なくとも1種のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)を含有する。
発明の目的では、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)が、その50mol%よりも多い繰り返し単位が繰り返し単位(R1)である重縮合ポリマーを意味することが意図され、繰り返し単位(R1)は、少なくとも1つのエーテル基(-O-)、少なくとも1つのスルホン基(-SO2-)、及びフェニレン、ナフチレン(例えば2,6-ナフチレン)、アントリレン(例えば2,6-アントリレン)及びフェナントリレン(例えば2,7-フェナントリレン)、ナフタセニレン及びピレニレンから選択される少なくとも2つの基(G)を含有するものであり、前記基(G)のそれぞれは、それ自体とは異なる少なくとも1つの基(G)に、少なくとも1つの単結合及び、任意にさらに、多くても1つのメチレン基によって直接結合されている。従って、基(G)は共に結合して、特にビフェニレン基、例えばp-ビフェニレン、1,2'-ビナフチレン基、トリフェニレン基、例えばp-トリフェニレン及びフルオレニレン基(すなわち、フルオレンから誘導される二価の基)を形成し得る。
【0012】
繰り返し単位(R1)は、好ましくは少なくとも1つのエーテル基(-O-)、少なくとも1つのスルホン基(-SO2-)及び少なくとも1つのp-ビフェニレン基を含有するものである:
【化1】

繰り返し単位(R1)は、さらに好ましくは:
【化2】

(式中、R1〜R4は、-O-、-SO2-、-S-、-CO-であるが、R1〜R4の少なくとも1種は-SO2-であり、且つR1〜R4の少なくとも1種は-O-である;Ar1、Ar2及びAr3は、6〜24個の炭素原子を含有するアリーレン基であり、好ましくはフェニレン又はp-ビフェニレンであり;及びa及びbは0又は1である)
である。
【0013】
ある種の本発明のフィルムでは、繰り返し単位(R1)が:
【化3】

であることがさらに好ましい。
ある種の他の本発明のフィルムでは、繰り返し単位(R1)が:
【化4】

であることがさらに好ましい。
【0014】
任意に、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)は、繰り返し単位(R2)[繰り返し単位(R1)とは異なる]をさらに含む。
繰り返し単位(R2)は、好ましくは:
【化5】

から選択される。
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)は、特にホモポリマー、ランダム、交互又はブロックコポリマーでよい。
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)の好ましくは少なくとも70質量%、さらに好ましくは少なくとも85質量%の繰り返し単位が繰り返し単位(R1)である。さらに好ましくは、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)が、繰り返し単位(R1)のホモポリマーである。
【0015】
ある種の本発明のフィルムでは、優れた結果が、その繰り返し単位が:
【化6】

であるホモポリマーで得られた。
Solvay Advanced Polymers, L.L.C.からのRADEL(登録商標)Rポリフェニルスルホンが、上記ホモポリマーの例である。
ある種の他の本発明のフィルムでは、優れた結果が、その繰り返し単位が:
【化7】

であるホモポリマーで得られた。
【0016】
上記のように、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)に加え、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)とは異なる少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)を含有してよい。
ポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)は、有利にはポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルエーテルスルホンから選択することができる。
ここで定義されるポリエーテルエーテルスルホンは、その50mol%より多い繰り返し単位が:
【化8】

である重縮合ポリマーである。
【0017】
ここで定義されるポリエーテルスルホンは、その50mol%より多い繰り返し単位が:
【化9】

である重縮合ポリマーであり、前記ポリエーテルスルホンは、50mol%より少ない繰り返し単位:
【化10】

を任意にさらに含んでよい。
【0018】
ポリエーテルスルホンは、Solvay Advanced Polymers, L.L.CからRADEL(登録商標)Aとして入手可能である。
ここで定義されるポリスルホンは、その50mol%より多い繰り返し単位が:
【化11】

である重縮合ポリマーである。
ポリスルホンは、Solvay Advanced Polymers, L.L.CからUDEL(登録商標)PSFとして入手可能である。
ポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)は、好ましくはポリエーテルスルホン及びポリエーテルエーテルスルホンから選択され、さらに好ましくはポリエーテルスルホンから選択される。
ある種の好ましい本発明のフィルムでは、ポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)の質量が、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の全質量に基づいて25〜75%、さらに好ましくは40〜60%である。
ある種の他の好ましい本発明のフィルムでは、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)が、ポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)を含まない。従って、前記フィルムでは、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)がポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)からなる。
ポリマー(P1)及び(P2)は有利にはアモルファスである。
【0019】
フルオロカーボンポリマー
本発明の目的では、フルオロカーボンポリマーが、その50mol%より多い繰り返し単位が少なくとも1種のフッ素原子含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以下では“フッ素化モノマー”)から誘導される全てのポリマーを意味することが意図される。
好ましくは、フルオロカーボンポリマーの90mol%より多い繰り返し単位がフッ素化モノマーから誘導される。
さらに好ましくは、フルオロカーボンポリマーの全ての繰り返し単位がフッ素化モノマーから誘導される。
フッ素化モノマーは、ペルフルオロ化化モノマー、例えばオクタフルオロブテン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及びペルフルオロアルキルビニルエーテル(例えば、ペルフルオロメチルビニルエーテル及びペルフルオロプロピルビニルエーテル)、及び非ペルフルオロ化モノマー、例えばトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及びフッ化ビニリデンから選択され得る。
フッ素化モノマーは、好ましくはテトラフルオロエチレン又はテトラフルオロエチレンと少なくとも1種のペルフルオロ化化モノマー(テトラフルオロエチレン以外)の混合物である。
フッ素化モノマーは、さらに好ましくはテトラフルオロエチレンである。
【0020】
良好な結果は、フルオロカーボンポリマーがテトラフルオロエチレンのホモポリマー(“PTFE”)であったときに得られた。
優れた結果は、フルオロカーボンポリマーが非繊維状PTFE(“低分子量PTFE”又は“低融解粘度PTFE”とも呼ばれる)であったときに得られた。
非繊維状PTFEは、好ましくは700,000以下の平均分子量(従来のGPC技術で測定)を有する。
さらに、非繊維状PTFEは、好ましくは50,000以上の平均分子量(従来のGPC技術で測定)を有する。
非繊維状PTFEは、好ましくは米国特許第4,380,618号明細書に開示されているように改良した手順ASTM D1239-52Tに従って372℃で測定すると104Pa.s以下の融解粘度を有する。
非繊維状PTFEは、好ましくはテトラフルオロエチレンの高分子量ホモポリマー(典型的には、2,000,000以上の平均分子量を有する)の放射分解か、又は直接米国特許第5,223,343号明細書の実施例1に開示されているような重合技術によって得られる。
【0021】
非繊維状PTFEは通常は微粉化された固体の形態であり、その際は一般的に“PTFE微粉末”と呼ばれる。微粉化された固体は、好ましくは100μmより小さく、さらに好ましくは20μmより小さく、さらに好ましくは10μmより小さく、最も好ましくは5μmより小さい平均粒子サイズを有する。
非繊維状PTFEは、好ましくは熱安定性、化学的不活性、潤滑性、及び高分子量PTFEと類似する高融点を有する。
特に好適な非繊維状PTFEは、Solvay Solexis, Incから市場で入手可能なPOLYMIST(登録商標)F5A PTFEである。他の好適な非繊維状PTFEは、特にZONYL(登録商標)PTFE(例えば、ZONYL(登録商標)MP1600グレード)としてDuPontから、及びLUBLON(登録商標)(例えば、LUBLON(登録商標)L-5 PTFE)としてDaikin Industries, Ltd.から市場で入手可能である。
フルオロカーボンポリマーの質量が、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の質量に基づいて、有利には少なくとも1.0%、好ましくは2.5%以上、さらに好ましくは4.0%以上である。
さらに、フルオロカーボンポリマーの質量が、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の質量に基づいて、有利には多くても30%、好ましくは18%以下、さらに好ましくは12%以下である。
【0022】
任意成分
(1)無水ホウ酸亜鉛及び他の無機難燃剤
ポリマー組成物(C)は、任意にさらに無水ホウ酸亜鉛を含んでよい。フルオロカーボンポリマーに対する無水ホウ酸亜鉛の質量比(q1)は:
0≦q1≦50%
である。
米国特許第5,204,400号明細書に記載のように、無水ホウ酸亜鉛(すなわち、U.S. BoraxからのXPI-187ホウ酸亜鉛のような0.2質量%より少ない、好ましくは測定できない水含有量を有するホウ酸亜鉛)は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)組成物の好適な難燃剤であり、有益にはフルオロカーボンポリマーと組み合わせて用いられ得ることがさらに知られている。
本出願人は、驚くべきことに、無水ホウ酸亜鉛を含まないか又はそうでなければフルオロカーボンポリマーの濃度と比較して減少した濃度(すなわち、上記範囲内の比q1を有する)の無水ホウ酸亜鉛を含有するポリ(ビフェニルエーテルスルホン)組成物からなる薄いフィルムが、さらに改善されたバランスの特性を示すことを見出した。特に、本出願人は、該薄いフィルムの表面特性に関するさらなる改善に注目した:比q1>50%の無水の(ほぼ無水の)ホウ酸亜鉛を有する難燃性ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)組成物は、時にかなり多くの望ましくない出っ張りを有する薄いフィルムを提供し得(前記出っ張りは、場合によってホウ酸亜鉛の水和水によって引き起こされることが知られているスプレー及びクラックとは性質及び起源が完全に異なる)、比q1が0≦q1≦50%にある場合以外の同一の組成物からなる薄いフィルムは、出っ張りを本質的に又はさらに全体的に含まなかった。フィルムが薄くなればなるほど、改善性は向上した。
【0023】
質量比q1は好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下である。さらに好ましくはq1は0に等しい;別な言い方をすれば、ポリマー組成物(C)が無水ホウ酸亜鉛を含まない。
無水ホウ酸亜鉛の質量は、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の質量に基づき、有利には4.0%以下、好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。さらに好ましくは、ポリマー組成物(C)は上記のように無水ホウ酸亜鉛を含まない。
さらに一般的には、ポリマー組成物(C)は無機難燃剤を含有するべきであり、それらの質量は、有利にはフルオロカーボンポリマーの質量と比較して低くあるべきである。従って、フルオロカーボンポリマーに対する無機難燃剤の質量比(q'1)は:
0≦q'1≦60%
である。
質量比q'1は、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下でる。
無機難燃剤の質量は、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の質量に基づき、有利には6.0%以下、好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0024】
(2)二酸化チタン
任意に、ポリマー組成物(C)はさらに二酸化チタンを含んでよい。
特に米国特許第5,204,400号明細書及び米国特許第5,916,058号明細書に記載のように、二酸化チタンをポリ(ビフェニルエーテルスルホン)組成物の顔料として用いることができ、有益にはフルオロカーボンポリマーと組み合わせて効率的な色素性及び難燃性の組成物を提供できることがさらに知られている。
難燃性におけるその起こり得る有益な効果(フルオロポリマーとの組み合わせ)にも関わらず、二酸化チタンは通常は本質的に無機難燃剤としては認定されず、本発明では無機難燃剤ではない。
ポリマー組成物(C)に用いられる二酸化チタンは、市場で入手可能である。
二酸化チタンの粒子サイズは、より大きい粒子サイズはポリマー組成物(C)の物理的特性に特に影響を及ぼし得るために有利には5.0μm以下である。
二酸化チタンの有用な結晶形態のいずれを用いてよく、ルチル形態がその優れた顔料特性のために好ましい。
本出願人は、本発明のフィルムの中で、さらなる改善がフルオロカーボンポリマーに対する二酸化チタンの比(q2)を最適化することによってさらに達成されることを見出した。
特に、本出願人は、本発明のフィルムの表面特性(例えば、出っ張りのレベル)及び/又は引き裂き抵抗に関する可能なさらなる改善に注目した。
【0025】
従って、フルオロカーボンポリマーに対する二酸化チタンの質量比(q2)が:
0≦q2≦150%
である。
ある種の好ましい本発明のフィルムでは、質量比(q2)が50〜125%であり;さらに好ましくは、50〜100%である。
ある種の他の好ましい本発明のフィルムでは、質量比(q2)が50%以下であり;さらに好ましくは、ポリマー組成物(C)が二酸化チタンを含まない。
同様の理由により、二酸化チタンの質量は、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)に基づいて有利には8.0%以下である。
ある種の好ましい本発明のフィルムでは、二酸化チタンの質量が、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の質量に基づいて好ましくは2.0〜6.0%であり;さらに好ましくは3.0〜5.0%である。
ある種の他の好ましい本発明のフィルムでは、二酸化チタンの質量が、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の質量に基づいて5.0%以下であり;さらに好ましくは、ポリマー組成物(C)が二酸化チタンを含まない。
【0026】
(3)無機熱安定化剤
ポリマー組成物(C)は、有利には少なくとも1種の無機安定化剤をさらに含む。
無機安定化剤は好ましくは金属酸化物であり;さらに好ましくは酸化亜鉛である。
フルオロカーボンポリマーに対する無機安定化剤の質量比(q3)は:
0≦q3≦50%
である。
質量比(q3)は好ましくは1〜20%であり;さらに好ましくは2〜10%である。
熱安定化剤の質量は、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の質量に基づき、好ましくは0.1〜2.0%であり;さらに好ましくは0.2〜1.0%である。
【0027】
(4)他の成分
ポリマー組成物(C)は、スルホンポリマー組成物の他の従来の成分をさらに含んでよい。これらは通常は以下から選択される:
上記のもの以外の無機化合物(IC)、
有機抗酸化剤などの有機非高分子化合物(OC)、及び
(P1)及び(P2)以外の有機ポリマー(P3)、例えば溶融加工性ポリイミド及びポリ(アリールエーテルケトン)。
フルオロカーボンポリマーに対する無機化合物(IC)の質量比(q4)は:
0≦q4≦50%
である。
無機化合物(IC)の質量は、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の質量に基づいて有利には2.0%以下である。
好ましくは、ポリマー組成物(C)は無機化合物(IC)を含まない。
(IC)、(OC)及び(P3)成分の全質量は、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の質量に基づいて有利には25質量%以下であり;好ましくは5質量%以下であり;さらに好ましくは、ポリマー組成物(C)が成分(IC)、(OC)及び(P3)を含まない。
【0028】
ポリマー組成物は、有利には任意の従来の混合方法によって調製される。好ましい方法は、例えば機械的ブレンダーを用いてポリマー組成物(C)の成分を粉末又は顆粒で乾燥混合すること、続いて該混合物をストランドに押出すこと、及び該ストランドをペレットに細断することを含む。
本発明のフィルムを製造するのに好適な技術は、当業者によく知られている。例えば、本発明のフィルムは、原理的には溶液流延によって製造することができる[この方法は、ポリマー組成物(C)を溶媒に溶解させて溶液を得ること、得られた溶液を不安定な基体上に置いてフィルムを形成すること、及び形成されたフィルムを該不安定な基体から除去することを含む]。しかし、本発明のフィルムは、通常は溶融加工、好ましくは押出加工によって製造される。
【0029】
押出方法では、ポリマー組成物(C)が有利には押出される前に乾燥される。乾燥は除湿オーブンで行ってよい。乾燥温度は有利には135℃〜165℃であり、典型的には約150℃である。乾燥時間は特に乾燥温度に依存して有利には6〜24時間であり、典型的には約12時間である。多くの他の好適な押出機及び金型の中では、25mm Optical Control Systems Model 20/26 Extruderがよく機能する。当業者に知られているように、押出機の加熱領域の温度は、通常は押出されるポリマー組成物、ここではポリマー組成物(C)の特に(a.o.)化学的性質の関数として適応される。例えば、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料がRADEL(登録商標)R ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ニートポリマーからなるポリマー組成物では、押出機の加熱領域は、好ましくは少なくとも360℃、さらに好ましくは少なくとも370℃である;さらに、それらは好ましくは多くても390℃、さらに好ましくは多くても380℃である。押出機の全ての加熱領域は、同一の温度に設定され得る。当業者にもよく知られているように、押出機のスクリュー速度は、通常はフィルムの特に厚みの関数として適応される。一般的に、フィルムが薄ければ薄いほどスクリュー速度は遅くなる。該フィルムは、有利には2つ以上の連続するチルロール上にキャストされ、前記チルロールは、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料がRADEL(登録商標)Rポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ニートポリマーからなるときは好ましくは220〜240℃の範囲の温度で保持される。
【0030】
従って、本発明はまた、本発明のフィルムを製造するための方法であって、ポリマー組成物(C)を溶融加工することを含む方法にも関する。好ましくは、本発明の方法はポリマー組成物(C)を押出す工程を含む。
本発明は、さらに上記フィルム又は上記方法によって調製されたフィルムを含む造形品に関する。
本発明の造形品は、有利には且つ好ましくは、
-該フィルムからなる袋用部材、及び
-袋用部材によって包まれている材料(Z)、
からなる。
該袋用部材は、有利には閉じられており、場合によっては封着によって閉じられている。
該材料は、有利には分割された形態、例えば粒子状又は繊維状形態である。好ましくは繊維である。非常に好ましくはガラス繊維である。
【0031】
本発明はさらに、本発明のフィルムを製造するのに特に好適なポリマー組成物に関する。前記ポリマー組成物、以下では本発明のポリマー組成物は:
-ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)、これは
・少なくとも1種のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)、又は
・少なくとも1種のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)及びポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)とは異なる少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)からなる、及び
-少なくとも1種のフルオロカーボンポリマー、及び
-任意に、無水ホウ酸亜鉛及び/又は二酸化チタン、
を含有するものであり:
-フルオロカーボンポリマーに対する無水ホウ酸亜鉛の質量比(q1)は:
0≦q1≦50%
であり、
-フルオロカーボンポリマーに対する二酸化チタンの質量比(q2)は:
0≦q2≦150%
であり、及び
-ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)は、ポリマー組成物の全質量に基づいて70質量%より多い量でポリマー組成物に含有される。
【0032】
上記特徴を除いて、本発明のポリマー組成物は、表現される好みのレベルに関わらず、好ましくはポリマー組成物(C)の全ての好ましい特徴を満たす。
本発明のポリマー組成物は、有利にはフィルム、さらに詳細には薄いフィルムを製造するのに用いたが、より一般的にはさらに、種々の物品、好ましくはフィラメント、シート及び中空体を製造するのに有用であることが示された。従って、本発明の最後の特徴は前記物品に関する。
本発明は、例証のために提供される以下の実施例の考察によってさらに理解され、それらに限定されない。
【0033】
実施例(本発明による)
ポリマー組成物の調製
ポリマー組成物(a)、(b)及び(c)は、ペレットの形態で調製した。
前記ポリマー組成物はそれぞれ以下からなる:

続いて、得られたペレットを押出し、以下に記載されているような12μmの厚みを有するフィルムを得る。
【0034】
約12μmの厚みを有するフィルムへのポリマー組成物の押出
ペレット、除湿オーブンにおいて150℃で終夜約12時間乾燥させた。該ペレットを、10.16cmの幅の金型を有する25mm Optical Control Systems Model 20/26 Extruderを用いてフィルムに押出した。加熱領域は全て375℃に設定して約375℃の溶融を達成し、押出機のスクリューは3rpmで回転させた。フィルムを2つの連続するチルロール上にキャストし、一つを225℃に保持し、もう一つを220℃に保持した。フィルムを約2.0m/分で取り上げ、約8.32cmの幅及び12μmの厚みであった。
12μm-フィルムの評価
フィルムは優れたバランスの特性を示し、先行技術のフィルムから実質的に進化した。特に高いレベルの他の特性の中では、該フィルムは、水分凝縮物に曝された後も高い硬度、高い引き裂き抵抗、高い難燃性及び規則的な表面特性を有した;特にそれらは、数種類が市販されているRadel(登録商標)Rポリ(ビフェニルエーテルスルホン)耐火性グレードからなる数種類の先行技術のフィルムとは対照的に出っ張りを含まなかった。
約6μmの厚みを有するフィルムへのポリマー組成物の押出し
6μmの厚みを有するフィルムが、ポリマー組成物(a)、(b)及び(c)のペレットを押出すことによって製造される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)、これは
・少なくとも1種のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)、又は
・少なくとも1種のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)及びポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)とは異なる少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)からなる、及び
-少なくとも1種のフルオロカーボンポリマー、
を含有するポリマー組成物(C)を含有する、100μm以下の厚みを有するフィルム。
【請求項2】
厚みが20μmより薄い、請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
厚みが2μmより厚い、請求項1又は2記載のフィルム。
【請求項4】
厚みが4〜8μmである、請求項2又は3記載のフィルム。
【請求項5】
厚みが8〜16μmである、請求項2又は3記載のフィルム。
【請求項6】
ポリマー組成物(C)からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項7】
ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)が、50質量%より多い量でポリマー組成物(C)に含有される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項8】
ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)が、85質量%より多い量でポリマー組成物(C)に含有される、請求項7記載のフィルム。
【請求項9】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)の繰り返し単位の50モル%より多くが繰り返し単位(R1)であり、前記繰り返し単位が、少なくとも1種のエーテル基(-O-)、少なくとも1種のスルホン基(-SO2-)及び少なくとも1種のp-ビフェニレン基:
【化1】

を含有するものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項10】
繰り返し単位(R1)が:
【化2】

である、請求項9記載のフィルム。
【請求項11】
繰り返し単位(R1)が:
【化3】

である、請求項9記載のフィルム。
【請求項12】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)が、繰り返し単位(R1)のホモポリマーである、請求項9〜11のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項13】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルエーテルスルホンから選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項14】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)の質量が、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の全質量に基づいて40〜60%である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項15】
ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)が、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)からなる、請求項1〜12のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項16】
フルオロカーボンポリマーの全ての繰り返し単位が、少なくとも1種のフッ素化モノマーから生じる、請求項1〜15のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項17】
フッ素化モノマーが、テトラフルオロエチレン又はテトラフルオロエチレンと少なくとも1種のペルフルオロ化化モノマーの混合物である、請求項16記載のフィルム。
【請求項18】
フルオロカーボンポリマーが、テトラフルオロエチレンのホモポリマーである、請求項17記載のフィルム。
【請求項19】
フルオロカーボンポリマーが、テトラフルオロエチレンの非繊維状ホモポリマーである、請求項18記載のフィルム。
【請求項20】
フルオロカーボンポリマーの質量が、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の質量に基づいて少なくとも1.0%である、請求項1〜19のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項21】
フルオロカーボンポリマーの質量が、ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)の質量に基づいて18%以下である、請求項1〜20のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項22】
ポリマー組成物(C)がさらに無水ホウ酸亜鉛を含んでもよく、フルオロカーボンポリマーに対する該無水ホウ酸亜鉛の質量比(q1)が:
0≦q1≦50%
である、請求項1〜21のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項23】
ポリマー組成物(C)が無水ホウ酸亜鉛を含まない、請求項22記載のフィルム。
【請求項24】
ポリマー組成物(C)がさらに二酸化チタンを含んでもよく、フルオロカーボンポリマーに対する二酸化チタンの質量比(q2)が:
0≦q2≦150%
である、請求項1〜23のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項25】
フルオロカーボンポリマーに対する二酸化チタンの質量比(q2)が、有利には:
50≦q2≦100%
である、請求項24記載のフィルム。
【請求項26】
二酸化チタンを含まない、請求項24記載のフィルム。
【請求項27】
ポリマー組成物(C)を押出す工程を含む、請求項1〜26のいずれか1項に記載のフィルムを製造するための方法。
【請求項28】
請求項1〜26のいずれか1項に記載のフィルム、又は請求項27記載の方法によって調製されたフィルムを含む、造形品。
【請求項29】
請求項28記載の造形品であって、
-該フィルムからなる袋用部材、及び
-該袋用部材によって包まれている材料(Z)、
を含む、造形品。
【請求項30】
材料(Z)がガラス繊維である、請求項29記載の造形品。
【請求項31】
-ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)、これは
・少なくとも1種のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)、又は
・少なくとも1種のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)及びポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)とは異なる少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(P2)からなる、及び
-少なくとも1種のフルオロカーボンポリマー、及び
-任意に、無水ホウ酸亜鉛及び/又は二酸化チタン、
を含有するポリマー組成物であり:
-フルオロカーボンポリマーに対する無水ホウ酸亜鉛の質量比(q1)が:
0≦q1≦50%
であり、
-フルオロカーボンポリマーに対する二酸化チタンの質量比(q2)が:
0≦q2≦150%
であり、及び
-ポリ(アリールエーテルスルホン)材料(P)が、該ポリマー組成物の全質量に基づいて70質量%より多い量で該ポリマー組成物に含有される、組成物。

【公表番号】特表2008−530330(P2008−530330A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555609(P2007−555609)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050974
【国際公開番号】WO2006/087352
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(502030880)ソルヴェイ アドバンスド ポリマーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (39)
【Fターム(参考)】