説明

ポンプ、特に燃料高圧ポンプ

本発明は、ポンプ、特に燃料高圧ポンプであって、ハウジング(10,12,24)と、少なくとも1つの駆動区分(16)を有していて回転駆動される駆動軸(14)と、少なくとも1つのポンプピストン(20)とが設けられており、該ポンプピストン(20)が、ポンプの1つのハウジング部分(24)のシリンダ孔(22)内においてシールされて案内されていて、かつ駆動軸(14)の駆動区分(16)によって少なくとも間接的に往復動するように駆動され、少なくとも1つのポンプピストン(20)がばねエレメント(56)によって、少なくとも間接的に駆動軸(14)の駆動区分(16)に向かって負荷されている形式のものに関する。このような形式のポンプにおいて本発明の構成では、ばねエレメント(56)が、駆動軸(14)の、ポンプピストン(20)とは反対の側に配置されていて、駆動軸(14)のそばを延びている連結装置(58)を介して少なくとも間接的にポンプピストン(20)に作用係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された形式のポンプ、すなわちポンプ、特に燃料高圧ポンプであって、ハウジングと、少なくとも1つの駆動区分を有していて回転駆動される駆動軸と、少なくとも1つのポンプピストンとが設けられており、該ポンプピストンが、ポンプの1つのハウジング部分のシリンダ孔内においてシールされて案内されていて、かつ駆動軸の駆動区分によって少なくとも間接的に往復動するように駆動され、少なくとも1つのポンプピストンがばねエレメントによって、少なくとも間接的に駆動軸の駆動区分に向かって負荷されている形式のものに関する。
【0002】
燃料高圧ポンプとして形成されたこのようなポンプは、DE19848040A1に基づいて公知である。このポンプは少なくとも1つのポンプピストンを有しており、このポンプピストンは、ポンプのハウジング部分のシリンダ孔内において密に、つまりシール作用をもって案内されている。ポンプはさらに駆動軸を有しており、この駆動軸は、カム又は偏心体の形の駆動区分を備えており、この駆動区分によって少なくとも1つのポンプピストンが少なくとも間接的に往復動するように駆動される。この少なくとも1つのポンプピストンは、ばねエレメントによって少なくとも間接的に駆動軸の駆動区分に向かって負荷されている。ポンプピストンはその吐出行程時に、ばねエレメントの力に抗して駆動区分によってシリンダ孔内に進入運動させられ、ポンプピストンはその吸込み行程時には、ばねエレメントの力によってシリンダ孔から進出運動させられる。ばねエレメントは円筒形の圧縮コイルばねとして形成されており、この圧縮コイルばねは、シリンダ孔が形成されかつポンプピストンが配置されているハウジング部分を取り囲んでいる。ばねエレメントがこのように配置されていることによって、ハウジング部分の壁厚は、ばねエレメントの配置を可能にするために、シリンダ孔を取り囲む領域において比較的薄く保つ必要がある。このような構成では、ポンプピストンの吐出行程時に生ぜしめられる高圧に基づいて、ハウジング部分の壁厚が比較的薄いことにより、シリンダ孔が拡大してしまうことがあり、その結果漏れ損失が生じる。
【0003】
発明の開示
発明の利点
ゆえに本発明の課題は、このような従来技術における欠点、すなわちシリンダ孔の拡大による漏れ損失の発生を排除することである。
【0004】
この課題を解決するために、冒頭に述べた形式のポンプにおいて本発明の構成では、ばねエレメントが、駆動軸の、ポンプピストンとは反対の側に配置されていて、駆動軸のそばを延びている連結装置を介して少なくとも間接的にポンプピストンに作用係合しているようにした。
【0005】
このように構成された本発明によるポンプには、次のような利点がある。すなわち本発明のポンプでは、ばねエレメントが、駆動軸の、ポンプピストンとは反対の側に配置されていることによって、ハウジング部分を、該ハウジング部分の、シリンダ孔を取り囲む領域において大きな壁厚をもって形成することができるようになり、その結果シリンダ孔の拡大に起因する漏れ損失はまったく又は極めて僅かしか発生しない。
【0006】
本発明のよるポンプの別の有利な構成は、従属請求項に記載されている。請求項2記載のように構成されていると、連結装置の単純な構成とスペースを節減した配置形式が可能になる。
【0007】
次に図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明によるポンプを示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った横断面図である。
【図3】図1のII−II線に沿った横断面図であって、ポンプの変化実施形態を示す図である。
【0009】
図1〜図3に示されたポンプは、特に、内燃機関の燃料噴射装置用の燃料高圧ポンプである。このポンプはハウジング10を有しており、このハウジング10は複数部分から形成されていることができ、ハウジング部分12には、回転駆動される駆動軸14が回転軸線15を中心にして回転可能に配置されている。駆動軸14はハウジング部分12に、駆動軸14の回転軸線15の方向で互いに間隔をおいた2つの軸受箇所を介して支承されている。両軸受箇所の間に位置する領域に、駆動軸14は少なくとも1つの駆動区分16を有しており、この駆動区分16は、カム又は偏心体であってよい。ポンプは、1つ又はそれぞれ1つのポンプピストン20を備えた少なくとも1つ又は複数のポンプエレメントを有しており、この場合ポンプピストン20は、駆動軸14の駆動区分16によって、駆動軸14の回転軸線15に対して少なくともほぼ半径方向で往復動するように、少なくとも間接的に駆動される。ポンプピストン20は、ポンプのハウジング部分12のシリンダ孔22内において密につまりシールされて案内されている。ポンプピストン20は、駆動軸14とは反対側の端部で、シリンダ孔22内においてポンプ作業室26を画成している。このポンプ作業室26は、該ポンプ作業室26内に開放する流入逆止弁30を介して、フィードポンプ32から延びる供給路34との接続部を有しており、この供給路34を介してポンプ作業室26は、半径方向内側に向かって駆動軸14の回転軸線15に向けられた、ポンプピストン20の吸込み行程時に、燃料を満たされる。ポンプ作業室26はさらに、このポンプ作業室26から開放する流出逆止弁36を介して、流出路38との接続部を有しており、この流出路38は例えば燃料高圧アキュムレータ40に通じており、この燃料高圧アキュムレータ40を介して、駆動軸14の回転軸線15から外方に向かって離れる方向に向けられた、ポンプピストン20の吐出行程時に、燃料がポンプ作業室26から押し退けられる。
【0010】
ハウジング部分24は、ハウジング部分12に載設されているフランジ状の領域42と、この領域42から突出している円筒形の付加部44とを有しており、この付加部44は、ハウジング部分12に設けられた、少なくとも半径方向に駆動軸14の回転軸線15に向かって延びる開口46内に、進入しており、この開口46は例えば穿孔として形成されている。シリンダ孔22は、付加部44の端面を起点として該付加部44を貫いて、ポンプ作業室26が配置されている領域42内にまで延びている。この領域42にはまた流入弁30と流出弁36とが配置されている。領域42から付加部44への移行部には、付加部44に対して直径の大きいセンタリングカラー43が設けられており、このセンタリングカラー43は僅かな遊びをもって孔46内に進入していて、ハウジング部分12に対するハウジング部分24のセンタリングを保証している。
【0011】
図示の実施例では、図2に示されているように駆動軸14の駆動区分16は、ダブルカムとして形成されていて、ポンプピストン20は、転動突き棒装置48を介してダブルカムに支持されている。
【0012】
転動突き棒装置48は、ハウジング部分24の孔46内においてその外周壁を介して案内されるスリーブ状の突き棒本体50と、この突き棒本体50内に挿入された転動シュー52と、この転動シュー52における受容部53に回転可能に支承されたローラ54とを有している。このローラ54は、ダブルカム16上を転動し、受容部53において滑動するように案内されている。択一的に、突き棒本体50は、その内周壁を介してハウジング部分24の付加部44において案内されていてもよい。ポンプピストン20は、シリンダ孔22内において案内される領域に比べて直径を増大されたピストン基部を有しており、このピストン基部を介してポンプピストン20は、転動突き棒装置48とその長手方向軸線の方向で連結されている。
【0013】
択一的に可能な、図3に示されたポンプの変化実施形態では、駆動軸14の駆動区分16は偏心体として形成されており、この場合ポンプピストン20は直に又は突き棒を介して、例えばバケットタペット(Tassenstoessel)148を介して、偏心体に又は、該偏心体に回転可能に支承されたリング150に接触している。リング150は、ポンプピストン20もしくは突き棒48の接触領域に、少なくともほぼ平らな面取り部152を有している。
【0014】
ポンプピストン20がその吸込み行程時に転動突き棒装置48を介して駆動軸14の駆動区分16に接触していることは、ばねエレメント56によって保証される。ばねエレメント56は、駆動軸14の、ポンプピストン20とは反対の側において、ポンプのハウジング10内に配置されている。ばねエレメント56は、連結装置58を介して少なくとも間接的にポンプピストン20に作用係合する。図示の実施例では連結装置58は、転動突き棒装置48の突き棒本体50もしくはタペット148と結合されており、これによってこの突き棒本体50もしくはタペット148を介して間接的にポンプピストン20と結合されている。連結装置58は例えば2つの保持体60を有しており、この場合各1つの保持体60が、駆動軸14の駆動区分16のそばで側部に配置されている。両保持体60は、図1に示されているように駆動軸14の回転軸線15の方向において僅かな厚さを有するように、形成されている。駆動軸14の回転軸線15の方向で見て、保持体60は、図2及び図3に示されているように、駆動軸14の領域に大きな幅を有する中央のボス状の領域62と、この領域62に接続していて駆動軸14から半径方向で離れる方向に延びるアーム64とを有しており、これらのアーム64は領域62に比べて小さな幅を有している。両アーム64は、少なくともほぼ直径方向で互いに反対側に位置するように配置されている。保持体60のボス領域62にはそれぞれ長孔66が形成されており、この長孔66を貫いて駆動軸14が貫通している。連結装置58の両保持体60は有利には同一に形成されており、これによって製造コストを安価に保つことができる。
【0015】
連結装置58の保持体60の、突き棒本体50に向かって延びているアーム64は、その端部領域において突き棒本体50もしくはタペット148と、例えばねじ、リベットを用いて、溶接結合によって又はこれに類した形式で、結合されている。連結装置58の保持体60のアーム64は、ほぼポンプピストン20の基部の高さにまで延びていて、ハウジング部分24の付加部44の前で間隔をおいて終わっている。連結装置58の保持体60のアーム64のうち、駆動軸14を挟んで、ポンプピストン20とは反対の側に配置されたアーム64は、その端部において皿形部材68を用いて結合されている。ばねエレメント56は例えば円筒形の圧縮コイルばねとして形成されていて、皿形部材68と、ポンプのハウジング10内において駆動軸14の駆動区分16に隣接配置された位置固定の支持70との間において緊縮されている。位置固定の支持70はこの場合、駆動軸14の回転時に駆動区分16との接触を回避するために、駆動区分16から十分な間隔をおいて配置されている。
【0016】
ポンプの運転時にポンプピストン20は転動突き棒装置48と一緒に往復動を行う。この往復動は連結装置58も行い、この場合ばねエレメント56は収縮と弛緩を交互に繰り返す。連結装置58の保持体60における長孔66によって、駆動軸14に対する連結装置58の往復動が可能である。駆動軸14の、ポンプピストン20とは反対の側に、ばねエレメント56が配置されていることによって、ハウジング部分24の付加部44とハウジング部分12における孔46との間には、突き棒本体50を受容するための小さな幅をもったリング間隙だけが必要である。この場合突き棒本体50は僅かな壁厚をもって形成されることができるので、リング間隙も相応に狭くすることができる。これによって、ハウジング部分24の付加部44をその端面に至るまで大きな壁厚をもって構成することが可能になり、その結果、シリンダ孔22は、ポンプピストン20の吐出行程時におけるポンプ作業室26における高圧の作用下において、僅かしか拡大せず、ポンプ作業室26からは相応に僅かな漏れ損失しか発生しない。
【0017】
上においては1つのポンプピストン20についてだけ記載されているが、ポンプは複数の、例えば2つのポンプピストン20を有することができる。この場合両ポンプピストン20は、駆動軸14の回転軸線15を中心にしてほぼ90°の角度をおいて、相対的に回動させられて配置されていることができ、この場合各ポンプピストン20には連結装置58を介して、それぞれ所属のばねエレメント56が作用係合し、この各ばねエレメント56は、駆動軸14の、ポンプピストン20とは反対の側に配置されている。両ポンプピストン20の連結装置58はこの場合有利には、駆動軸14の回転軸線15の方向で、互いにずらされて延びているので、連結装置58が相互に邪魔になることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ、特に燃料高圧ポンプであって、ハウジング(10,12,24)と、少なくとも1つの駆動区分(16)を有していて回転駆動される駆動軸(14)と、少なくとも1つのポンプピストン(20)とが設けられており、該ポンプピストン(20)が、ポンプの1つのハウジング部分(24)のシリンダ孔(22)内においてシールされて案内されていて、かつ駆動軸(14)の駆動区分(16)によって少なくとも間接的に往復動するように駆動され、少なくとも1つのポンプピストン(20)がばねエレメント(56)によって、少なくとも間接的に駆動軸(14)の駆動区分(16)に向かって負荷されている形式のものにおいて、ばねエレメント(56)が、駆動軸(14)の、ポンプピストン(20)とは反対の側に配置されていて、駆動軸(14)のそばを延びている連結装置(58)を介して少なくとも間接的にポンプピストン(20)に作用係合していることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
連結装置(58)が2つの部分(60)を有しており、各1つの部分(60)が、駆動軸(14)の駆動区分(16)のそばにおいて側部に配置されていて、少なくとも間接的にポンプピストン(20)と結合されている、請求項1記載のポンプ。
【請求項3】
連結装置(58)の2つの部分(60)がそれぞれ長孔(66)を有しており、該長孔(66)を貫いて駆動軸(14)が延びている、請求項2記載のポンプ。
【請求項4】
連結装置(58)の両部分(60)がそれぞれ、駆動軸(14)の回転軸線(15)の方向で見て、大きな幅を備えた1つの中央領域(62)を有していて、該中央領域(62)に長孔(66)が配置されており、さらに、該中央領域(62)を起点として延びていて互いに反対側に位置している、中央領域(62)に比べて僅かな幅を備えた各2つのアーム(64)を有している、請求項3記載のポンプ。
【請求項5】
連結装置(58)の両部分(60)の、ポンプピストン(20)側のアーム(64)が、その端部領域において少なくとも間接的にポンプピストン(20)と結合されている、請求項4記載のポンプ。
【請求項6】
ばねエレメント(56)が、連結装置(58)の、ポンプピストン(20)とは反対側のアーム(64)の端部領域と、駆動軸(14)の近傍に配置された位置固定の支持(70)との間において緊縮されている、請求項4又は5記載のポンプ。
【請求項7】
ポンプピストン(20)が支持エレメント(48)を介して駆動軸(14)の駆動区分(16)に接触しており、連結装置(58)が支持エレメント(48)と結合されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−537096(P2010−537096A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520528(P2010−520528)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060172
【国際公開番号】WO2009/021865
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】