説明

ポンプ装置

【課題】流入側逆止弁45を有する空間に水が溜まりにくくすることにより、例え寒冷地といえど始動時の燃料の流れを良好にするポンプ装置を提供すること。
【解決手段】外郭を形成し内部にポンプ室を有するポンプケースと、ポンプ室に開口し流体が流入する第1通路と、ポンプ室に開口し流体が流出する第2通路と、第1通路を開閉する第1逆止弁と、第2通路を開閉する第2逆止弁とを有するポンプ装置であって、第1通路及び第2通路は、それぞれ上下方向で前記ポンプ室に開口し、第1通路がポンプ室に開口する箇所には、第1逆止弁が設けられる第1収納部を有し、第2通路がポンプ室に開口する箇所には、第2逆止弁が設けられる第2収納部を有し、第1逆止弁は、下から第1弁体と第1バネと第1バネを支持し第1開口部を有する第1支持部材との順で形成し、第2逆止弁は、下から第2バネと第2弁体と第2弁体を支持し第2開口部を有する第2支持部材との順で形成し、第1開口部は、第2逆止弁側に偏心している構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ポンプ装置、特に自動車等の燃料タンクより燃料を汲み上げたりエンジンに送る等のポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンとして古くからディーゼルエンジンがある。ディーゼルエンジンは、燃料として軽油を使用し、その軽油を噴射ポンプで高圧に圧縮し、インジェクタからエンジンの燃焼室に噴射させ、燃焼室で自己燃焼させるものである。
【0003】
図14に従来の手動式のポンプ装置を有するディーゼルフィルタ1を示す。ディーゼルフィルタ1は、外郭を形成するポンプケース2及びフィルタケース3を有する。フィルタケース3内には中央通路5を有する濾過部材4と、この濾過部材4の下方に形成される水溜室6とを有する。
【0004】
ディーゼルフィルタ1の上方には、手動式のポンプ装置7を有する。このポンプ装置7は、ポンプケース2によりその外郭を形成され、ポンプケース2内には、ダイヤフラム8が挟持され、ダイヤフラム8とポンプケース2との間にポンプ室9を形成する。このポンプ室9には、流入側逆止弁10を有する流体流入用通路11と、流出側逆止弁12を有する流体流出口13が連通している。
【0005】
手動操作部としてのノブ14を押圧すると、燃料タンクからの燃料が黒塗り矢印(1)に示すように流体流入用通路11から流入し、流入側逆止弁10を開放してポンプ室9に流入する。ポンプ室9に流入した燃料は、黒塗り矢印(2)に示すように流体流出口13に設けられる流出側逆止弁12を開放して中央通路5に流出する。
【0006】
中央通路5に流出した燃料は、水溜室6に流入し、含まれる水等を分離して黒塗り矢印(3)に示すように反転し、濾過部材4内を通る。濾過部材4内を通る燃料は、含まれる不純物が除去され、黒塗り矢印(4)、(5)で示すように流体流出用通路15より流出し、ディーゼルエンジンに送られる(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
上記従来技術のものは、濾過部材4の中央に中央通路5を設ける等の理由によりポンプ室9に流入側逆止弁10及び流出側逆止弁12を直交する形態で設けている。ところで、このような形態より流入側逆止弁10及び流出側逆止弁12を上下方向に並設した方が両通路に圧力が有効に作用するためポンプ効率が向上することが考えられる。
【0008】
図15にそのようなポンプ装置の一例を示す。ポンプ装置20は、ポンプケース21及びポンプカバー22を有する。ポンプカバー22には手動用のノブ24が上下動自在に取り付けられ、ノブ24の下端にはダイヤフラム23が取り付けられる。このダイヤフラム23の外周は、ポンプケース21とポンプカバー22とで狭持され、ダイヤフラム23の下方にポンプ室25が形成される。
【0009】
ポンプケース21には、ポンプ室25に開口する燃料が流入する第1通路26と、燃料が流出する第2通路28が上下方向に併設される。ポンプ室25と第1通路26との間には第1逆止弁27が設けられ、ポンプ室25と第2通路28との間には第2逆止弁29が設けられる。
【0010】
第1逆止弁27は、下方から円板状の第1弁体27a、コイル状の第1バネ27b及び第1バネ27bを支持し、中央に円形の第1開口部27dを有する第1支持部材27cを順に配置してなり、第2逆止弁29は、下方からコイル状の第2バネ29b、円板状の第2弁体29a、及び第2弁体29aを支持し、中央に円形の第2開口部29dを有する第2支持部材29cを順に配置してなる。なお、第1支持部材27c及び第2支持部材29cは一体に形成される。
【0011】
ポンプ装置20は上記構造からなり、ポンプ装置20のノブ24が押圧されると、燃料は、燃料タンクから黒塗り矢印(1)で示すように第1通路26に流入し、第1逆止弁27の第1弁体27aを押し上げ黒塗り矢印(2)で示すように流れ、第1開口部27dから黒塗り矢印(3)で示すようにポンプ室25に流入する。
【0012】
ポンプ室25に流入する燃料は、黒塗り矢印(4)で示すように第2開口部29dから第2弁体29aに作用し、第2弁体29aを開放して黒塗り矢印(5)で示すように第2通路28から排出される。
【0013】
ところで、ディーゼルエンジン等の燃料には燃料より比重が重い水を含んでおり、ポンプ装置20の作動時等、第1通路26より第1弁体27aを押し上げて流れる燃料中の一部の水は、白塗り矢印(7)で示すように黒塗り矢印(2)で示す燃料の内側で内側に巻き込むように流れ、内側に溜まる傾向にある。また、一端第1開口部27dよりポンプ室25に流れた燃料も、その燃料に含まれる一部の水が第1開口部27d近傍のポンプ室25の底面に溜まり、白塗り矢印(8)で示すように溜まった水が第1開口部27dから再び第1逆止弁27を有する空間に落下し、上記内側に巻き込まれる水とともに空間内に溜まる傾向になる。
【0014】
このような水は、寒冷地において冬に運転を停止し例えば一晩放置すると、第1逆止弁27を有する空間に溜まった水が凍結し、第1逆止弁27が不作動になり、燃料が流れずエンジンを始動できないという問題が発生する恐れが生じる。
【特許文献1】特開2005−105850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願発明の目的は、第1逆止弁27を有する空間に水が溜まりにくくすることにより、例え寒冷地といえど始動時の燃料の流れを良好にするポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本願発明は、以下のような構成を採用してなる。
【0017】
請求項1に係る発明においては、外郭を形成し内部にポンプ室を有するポンプケースと、前記ポンプ室に開口し流体が流入する第1通路と、前記ポンプ室に開口し流体が流出する第2通路と、前記第1通路を開閉する第1逆止弁と、前記第2通路を開閉する第2逆止弁とを有するポンプ装置であって、前記第1通路及び前記第2通路は、それぞれ上下方向で前記ポンプ室に開口し、前記第1通路が前記ポンプ室に開口する箇所には、前記第1逆止弁が設けられる第1収納部を有し、前記第2通路が前記ポンプ室に開口する箇所には、前記第2逆止弁が設けられる第2収納部を有し、前記第1逆止弁は、下から第1弁体と第1バネと前記第1バネを支持し第1開口部を有する第1支持部材との順で形成し、前記第2逆止弁は、下から第2バネと第2弁体と前記第2弁体を支持し第2開口部を有する第2支持部材との順で形成し、前記第1開口部は、前記第2逆止弁側に偏心している構成。
【0018】
上記構成で第1開口部が第2逆止弁側に偏心しているとは、平面視で第1開口部の中心が第1収納部の中心より第2逆止弁側にずれている意味である。そのため、この意味を満たす開口部であれば、例えば矩形、多角形、円形、楕円形、円弧状、曲線状等、いかなる形状の開口部であってもよい。
【0019】
そしてこのような構成により、第1収納部に流れ込んだ燃料は第1収納部の中心より第2開口部側に偏心した第1開口部方向に流れるため、第1収納部内での水の巻き込みは低減する。また、第1開口部は第2開口部に近い位置を占め、第1開口部からポンプ室に流れる燃料は第2開口部に流れ易くなり、例えポンプ室の底面で水が分離したとしてもその水も第2開口部に流れ易くなる。そのため、第1収納部内で溜まる水は低減する。
【0020】
請求項2に係る発明においては、前記第1開口部は、中央部が窪み両端が突き出た略鼓状である構成。なお、略鼓状とは、少なくとも第2開口部側の中央部が窪み両端が突き出ていればよく、第2開口部と反対側は例えば直線状或いは円弧状或いは曲線状であってもよい。そしてこのような構成により、第1開口部面積を大きくすることができ第2開口部への流れがより滑らかになり、第1収納部内で溜まる水はより低減する。
【0021】
請求項3に係る発明においては、前記第1開口部は、円弧状である構成。そしてこのような構成により、円弧の中央部が第2開口部側に向いている場合、或いはその両端が第2開口部側に向いている場合とも、第1開口部面積を大きくすることができ第2開口部への流れがより滑らかになり、第1収納部内で溜まる水はより低減する。
【0022】
請求項4に係る発明においては、前記第1開口部は、前記第2逆止弁と反対側に壁を有する構成。そしてこのような構成により、第1開口部から第2逆止弁と反対側のポンプ室への流れが低減し、第1開口部から第2開口部への流れがより滑らかになり、第1収納部内で溜まる水はより低減する。
【0023】
請求項5に係る発明においては、前記ポンプ室内に、前記第1開口部及び前記第2開口部を覆うキャップ状部材を設ける構成。そしてこのような構成により、第1開口部からの燃料はキャップ上部材により強制的に第2開口部側に向けられ、第1開口部から第2開口部への流れがより滑らかになり、第1収納部内で溜まる水はより低減する。
【0024】
請求項6に係る発明においては、前記第1開口部は、前記第2開口部より高い位置に設けられる構成。請求項7に係る発明においては、前記第1開口部から前記第2開口部に向かって下方に傾斜する構成。そしてこのような構成により、第1開口部から第2開口部への流れがより滑らかになり、第1収納部内で溜まる水はより低減する。
【0025】
請求項8に係る発明においては、前記第1支持部材と前記第2支持部材とは一体に形成される構成。そしてこのような構成により、支持部材の成形が容易になる。
【0026】
請求項9に係る発明においては、前記ポンプ装置は、ディーゼルフィルタ用である構成。そしてこのような構成により、ディーゼルフィルタの信頼性が高まる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明においては、第1通路及び第2通路をそれぞれ上下方向でポンプ室に開口し、第1通路が連通する第1収納部には第1逆止弁を設け、第2通路が連通する第2収納部には第2逆止弁を設け、第1開口部を第2逆止弁側に偏心させることにより、第1開口部からポンプ室を介して第2開口部へ流れる燃料の流れを滑らかにすることができる。その結果、第1収納部内に溜まる水を低減することができ、寒冷地でエンジン停止時に水が凍結し燃料が供給できない弊害を防止することができる。
【0028】
請求項2に係る発明においては、第1開口部の形状を少なくとも第2開口部側の中央部が窪み両端が突き出た形状にすることにより、第1開口部の面積を増大することができ、第1開口部から第2開口部への流れを大量且つより滑らかにすることができる。その結果、第1収納部内に溜まる水を低減することができ、寒冷地でエンジン停止時に水が凍結し燃料が供給できない弊害をより防止することができる。
【0029】
請求項3に係る発明においては、円弧の中央部が第2開口部側に向いている円弧形状の場合、或いはその両端が第2開口部側に向いている円弧形状の場合においても、第1開口部面積を増大することができ、第1開口部から第2開口部への流れを大量且つより滑らかにすることができる。その結果、第1収納部内に溜まる水を低減することができ、寒冷地でエンジン停止時に水が凍結し燃料が供給できない弊害をより防止することができる。
【0030】
請求項4に係る発明においては、第1開口部の第2逆止弁と反対側に壁を設けることにより、第1開口部から第2逆止弁と反対側のポンプ室への流れを壁により抑制することができるため、第1開口部から第2開口部への流れをより滑らかにすることができる。その結果、第1収納部内に溜まる水を低減することができ、寒冷地でエンジン停止時に水が凍結し燃料が供給できない弊害をより防止することができる。
【0031】
請求項5に係る発明においては、ポンプ室内に第1開口部及び第2開口部を覆うキャップ状部材を設けることにより、第1開口部からの燃料をキャップ状部材により強制的に第2開口部側に指向することができるため、第1開口部から第2開口部への流れをより滑らかにすることができる。その結果、第1収納部内に溜まる水を低減することができ、寒冷地でエンジン停止時に水が凍結し燃料が供給できない弊害をより防止することができる。
【0032】
請求項6に係る発明においては、第1開口部を第2開口部より高い位置に設け、請求項7に係る発明においては、第1開口部から第2開口部に向かって下方に傾斜させることにより、第1開口部から第2開口部への流れをより滑らかにすることができる。その結果、第1収納部内に溜まる水を低減することができ、寒冷地でエンジン停止時に水が凍結し燃料が供給できない弊害をより防止することができる。
【0033】
請求項8に係る発明においては、第1支持部材と第2支持部材とを一体に形成することにより、部品点数ならびに生産コストを低減することができる。
【0034】
請求項9に係る発明においては、ポンプ装置をディーゼルフィルタ用とすることにより、請求項1乃至8に係る発明の効果に加え、ディーゼルフィルタの信頼性を高めることができる。
【実施例】
【0035】
図1はポンプ装置を備えたディーゼルエンジンの燃料フィルタの断面図を示し、図2は図1のポンプ装置の拡大断面図を示し、図3はポンプ室の平面図を示し、図4及び図5は流入側と流出側の支持部材を一体にした支持部材の平面図及び断面図を示し、図6〜13に一体形支持部材の他の例を示す。構造について説明する。
【0036】
ディーゼルフィルタ30は、外郭を形成するポンプケース41及びフィルタケース32を有する。フィルタケース32内には中央通路33を有する濾過部材34と、この濾過部材34の下方に形成される水溜室35とを有する。
【0037】
まず、最初に流体である燃料の流れの概略を述べると、手動操作部としてのノブ43aを押圧すると、燃料タンクからの燃料が黒塗り矢印(1)、(2)に示すように流体流入用パイプ36から流入し、流入側逆止弁45を開放してポンプ室44に流入する。ポンプ室44に流入した燃料は、黒塗り矢印(3)、(4)に示すように流出側逆止弁48を開放して中央通路33に流出する。
【0038】
中央通路33に流出した燃料は、水溜室35に流入し、含まれる水等を分離して黒塗り矢印(6)に示すように反転して濾過部材34内を通る。濾過部材34内を通る燃料は、含まれる不純物が除去され、黒塗り矢印(7)、(8)で示すように流体流出用パイプ37より流出し、ディーゼルエンジンに送られる。
【0039】
ディーゼルフィルタ30の上方には、手動式のポンプ装置40が配設される。このポンプ装置40は、ポンプケース41によりその外郭を形成され、ポンプケース41の上方にはポンプカバー42がカシメ或いは螺合等の手段で取り付けられる。ポンプケース41にポンプカバー42を取り付ける際、ポンプケース41とポンプカバー42とでダイヤフラム43が挟持されるとともに、ポンプケース41とダイヤフラム43との間にポンプ室44を形成する。なお、ポンプカバー42はポンプケース41と合わせてポンプケースと呼んでもよい。
【0040】
前記ポンプ室44には、流入側逆止弁45を有する流体流入用通路46と、流出側逆止弁48を有する流体流出用通路49を有する(図2参照)。また、ポンプ装置40は、前記ダイヤフラム43の中央に取り付けられ、ポンプカバー42より外方に突き出た軸の他端に取り付けられるノブ43aを有し、このノブ43aを押圧することによりポンプ室44内に圧力を生起する。なお、流入側逆止弁45は、請求項の第1逆止弁に相当し、流体流入用通路46は、請求項の第1通路に相当し、流出側逆止弁48は、請求項の第2逆止弁に相当し、流体流出用通路49は、請求項の第2通路に相当する。
【0041】
流体流入用通路46及び流体流出用通路49は、ポンプ室44に対し上下方向に平行する形態で開口し、流体流入用通路46のポンプ室44に開口する箇所には、流体流入用通路46の径より大きい径を有する流入側収納部47(請求項の第1収納部が相当)が上下方向に形成され、流体流出用通路49のポンプ室44に開口する箇所には、流体流出用通路49の径より大きい径を有する流出側収納部50(請求項の第2収納部が相当)が上下方向に形成される。
【0042】
ポンプ室44の平面を図3に示すように、流入側収納部47及び流出側収納部50の平面視形状は、3個の円を重なった状態でお互い左右方向に所定距離ずらしたような形状からなり、図において右側(流入側)から左側(流出側)にかけて領域R1、領域R2及び領域R3を有する。
【0043】
流入側収納部47には、流出側収納部50寄りの領域R2に、後記略鼓状或いは蝶々状の第1開口部45cとほぼ同様な形状、即ち中央部が窪み、流出側収納部50寄りの両端部が流出側収納部50側に突き出た形状の拡張室51を有し、その外周は全体で猫顔状(但し90度横にした形状)とされている。その結果、領域R1には流体流入用通路46が位置し、領域R2には拡張室51が位置し、領域R3には流体流出用通路49が位置する。また、流入側収納部47の内面には、内方へ突出する3個の第1弁体45a用の弁体ガイド52が立設している。
【0044】
流出側収納部50は、平面視円形であり、その内面には、内方へ突出する3個の第2バネ48b用のバネガイド53を有する。また、領域R1〜R3の全外周には、後記の支持部材55を載置するための載置溝54が形成される。
【0045】
流入側逆止弁45は、下方から円板状の第1弁体45a、コイル状の第1バネ45b及び第1バネ45bを支持し、中央から流体流入用通路46側に偏心した第1開口部45cを有する流入側支持部材55a(請求項の第1支持部材が相当)の順で形成する。流出側逆止弁48は、下方からコイル状の第2バネ48b、円板状の第2弁体48a、及び第2弁体48aを支持し、中央に円形の第2開口部48cを有する流出側支持部材55b(請求項の第2支持部材が相当)の順で形成する。前記第1開口部45cは、中央部が窪み、流出側の両端部が流出側に突き出た略鼓状或いは蝶々状の形状を有する。
【0046】
なお、第1開口部45cの略鼓状或いは蝶々状とは、少なくとも第2開口部48c側の中央部が窪み両端が第2開口部48c側に突き出ていればよく、第2開口部と反対側は例えば直線状或いは円弧状或いは曲線状であってもよい。また、流入側支持部材55a及び流出側支持部材55bは別体のものであっても一体のものであってもよい。この例では一体のものとして説明し、全体で呼ぶ時には支持部材55と呼び、それぞれで呼ぶ時は流入側支持部材55a、流出側支持部材55bと呼ぶ。
【0047】
支持部材55の一例を図4(平面図)及び図5(A−A線断面図)に示す。支持部材55平面視形状は、3個の円を重なった状態でお互い左右方向に所定距離ずらしたような形状からなり、図において右側(流入側)から左側(流出側)にかけて領域S1、領域S2及び領域S3を有する。
【0048】
支持部材55は、ポンプ室44の底部に形成される載置溝54より若干小さい形状を有し、載置溝54に挿入される。支持部材55を載置溝54に載置すると、ポンプ室44の領域R1は支持部材55の領域S1の上方に位置し、領域R2は領域S2の上方に位置し、領域R3は領域S3の上方に位置する。その結果、第1開口部45cは、領域R2の拡張室51の上方に位置し、第2開口部48cは、領域R3の流体流出用通路49の上方に位置する。
【0049】
即ち、第1弁体45aを開放して流入側収納部47に浸入する流体は、拡張室51側に偏流して流れ、第1開口部45cからポンプ室44に流入する。そのため、例え流入側収納部47内で水が分離したとしても、その水は流入側収納部47の中央部に巻き込まれることはなくなり、流体の流れとともに拡張室51側に偏流し、ポンプ室44に流出する。この場合、第1開口部45cと拡張室51との平面視形状を略同じにするか、拡張室51の方を相似形で且つ小さくすることにより拡張室51から第1開口部45cを経てポンプ室44に流れる燃料の流れを良好にすることができる。
【0050】
また、第1開口部45cと第2開口部48cの距離は近くなる。そのため、例え、ポンプ室44の底部に分離した水滴ができたとしても、分離した水滴は流れに乗って第2開口部48c側に流れ易くなるため、第1開口部45cから流入側収納部47に滴下する水滴も低減する。即ち、例え寒冷地であっても、流入側収納部47内で溜まった水が凍結する弊害はなくなる。
【0051】
支持部材55の底面、即ち、流入側支持部材55aの底面には、第1バネ45b用の環状支持突起56を垂下し、流出側支持部材55bの底面には、第2弁体48a用の環状弁座57を垂下している。
【0052】
上記構成により、流入側収納部47には、流入側収納部47の底面に3個の弁体ガイド52にガイドされる形態で第1弁体45aが載り、その上に第1バネ45bが載り、その上に環状支持突起56が第1バネ45bの他端をガイドする形態で流入側支持部材55aが載り、第1弁体45aは第1バネ45bにより流体流入用通路46を閉鎖する。
【0053】
そして流出側収納部50には、流出側収納部50の底面に3個のバネガイド53にガイドされる形態で第2バネ48bが載り、その上に第2弁体48aが載り、その上に環状弁座57に第2弁体48aが当接する形態で流出側支持部材55bが載り、第2弁体48aは第2バネ48bにより環状弁座57に当接し流体流出用通路49を閉鎖する。
【0054】
燃料の流れについて説明する。ポンプ装置40は上記構造からなり、ポンプ装置40のノブ43aが押圧されると、燃料は、燃料タンクから黒塗り矢印(1)で示すように流体流入用パイプ36から流入する。流体流入用パイプ36から流入する燃料は、黒塗り矢印(2)で示すように流体流入用通路46より流入側収納部47の下部に至る。流入側収納部47の下部に至った燃料は、第1弁体45aを押し上げ、黒塗り矢印(2’)で示すように拡張室51内に偏入する。
【0055】
拡張室51内に偏入した燃料は、上方の第1開口部45cより黒塗り矢印(3)で示すようにポンプ室44に流入する。この場合、流入側収納部47内に分離した水があったとしても、その水は燃料とともに第1開口部45cよりポンプ室44に流出する。そのため、例え寒冷地であってもエンジン停止時に流入側収納部47内が凍結する弊害がなくなる。
【0056】
ポンプ室44に流入した燃料は、黒塗り矢印(4)で示すように第2開口部48cに向かい、第2弁体48aを押し下げる。第2弁体48aが開放すると、燃料は流出側収納部50に流れ込み、次いで、黒塗り矢印(5)で示すように流体流出用通路49を介して中央通路33に至る。
【0057】
中央通路33に流出した燃料は、水溜室35に流入し、含まれる水等を分離して黒塗り矢印(6)で示すように反転して濾過部材34内に流入する。濾過部材34内に流入した燃料は、含まれる不純物が除去され、黒塗り矢印(7)、(8)で示すように流れ、流体流出用パイプ37よりディーゼルエンジンに送られる。
【0058】
図6に第1開口部45cの変形例を示す。この例は、第1開口部45cの形状が異なるもので、支持部材55の形状は、図4及び図5のものと同じであり説明は省略する。この例は、第1開口部45cの形状を円弧状にするとともに、円弧状の中央部を第2開口部48cに最も近くなるように配置するものである。このような形状により、第1開口部の面積を増大することができ、第1開口部から第2開口部48c側への燃料の流れが大量且つ滑らかになり、分離水が流入側収納部47に溜まる弊害が低減する。
【0059】
図7に第1開口部45cの他の変形例を示す。この例は、図6のものと同様第1開口部45cの形状が異なるもので、支持部材55の形状は、図4及び図5のものと同じであり説明は省略する。この例は、第1開口部45cの形状を円弧状にするとともに、図6のものと比べ、円弧状の両端部を第2開口部48cに最も近くなるように配置するものである。このような形状により、図6のものと同様に第1開口部の面積を増大することができ、第1開口部から第2開口部48c側への燃料の流れが大量且つ滑らかになり、分離水が流入側収納部47に溜まる弊害が低減する。
【0060】
支持部材55の他の例を図8(平面図)及び図9(B−B線断面図)に示す。この例は、第1開口部の第2逆止弁と反対側に壁を立設するものである。その他の支持部材55の形状は、図4及び図5のものと同じであり説明は省略する。この例は、第1開口部45cの回りに第2開口部48cの方向が開放した略C字状の壁60を立設するものである。このような壁60を設けることにより、第1開口部45cからポンプ室44に流入する燃料は、壁60により第2開口部48cと反対側への流れが阻止され、その多くがそのまま第2開口部48c側へ流れるため、ポンプ室44内に分離した水滴が溜まる弊害が低減する。
【0061】
なお、壁60の形状は、第2開口部48cの方向が開放しておればどのような形状、例えば、円弧状、曲線状、コ字状等の形状であってもよい。また、壁60を図6及び図7の円弧状の開口部に適用してもよい。その場合には、図8及び図9のような形状でも第2開口部48cから遠い側の円弧の外周に沿って立設する等の形状であってもよい。
【0062】
支持部材55の更に他の例を図10(平面図)及び図11(C−C線断面図)に示す。この例は、第1開口部を第2開口部より高い位置に設ける例である。その他の支持部材55の形状は、図4及び図5のものと同じであり説明は省略する。具体的には、図4で記載したのと同じ領域でいえば、領域S1及び領域S3を水平にし、領域S3より領域S1を高くするとともに、領域S2を傾斜面62とし、傾斜面62である領域S2に第1開口部45cを設けるものである。更に、第1開口部45cは、第1開口部45cの開口軸を領域S2の傾斜面62に略直交させている。第1開口部45cをこのような傾斜角度にすることにより、第1開口部45cから第2開口部48cへの流れをより円滑にすることができる。なお、第1開口部45cは、より第2開口部48c側に傾斜させてもよく、また、垂直方向であってもよい。
【0063】
この場合、ポンプ室44の底面の載置溝54もこの支持部材55の底面形状と同じように段差を有する形状にする。また、第1開口部45cが第2開口部より上に位置する形態であれば、第1開口部45cは例えば水平、即ち、領域S2と領域S3との間に垂直な段差を設け、領域S2を水平にする形状であってもよい。
【0064】
そして、この例のものにおいても、第1開口部45cからポンプ室44に流入する燃料は、その多くがそのまま第2開口部48c側へ流れるため、流入側収納部47内は勿論のことポンプ室44内に分離した水滴が溜まる弊害が低減する。
【0065】
支持部材55の更に他の例を図12(平面図)及び図13(A−A線断面図)に示す。この例は、ポンプ室内に、第1開口部45c及び第2開口部48cを覆うキャップ状部材65を設けるものであり、その他の支持部材55の形状は、図4及び図5のものと同じであり説明は省略する。
【0066】
キャップ状部材65は、第1開口部45c及び第2開口部48cを全て覆い、その内方に平面視略繭状の内部空間67を形成するとともに、第2開口部48c側に開放部66を設け、この開放部66を介して内部空間67とポンプ室44とを連通する。
【0067】
そして、この例のものにおいても、第1開口部45cからポンプ室44に流入する燃料は、そのほとんどがそのまま第2開口部48c側へ流れるため、流入側収納部47内は勿論のことポンプ室44内に分離した水滴が溜まる弊害が低減する。
【0068】
本願発明は、上記各実施の態様の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能であり、ディーゼルエンジンの燃料フィルタに設けられるポンプ装置として説明したが、単なるポンプ装置にも適用可能である。また、図4〜図13に示すものは適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本願発明のポンプ装置を備えたディーゼルエンジンの燃料フィルタの断面図
【図2】図1のポンプ装置の拡大断面図
【図3】支持部材がないポンプ室の平面図
【図4】ポンプ装置の支持部材の平面図
【図5】図4のA−A線断面図
【図6】ポンプ装置の他の支持部材の平面図
【図7】ポンプ装置の更に他の支持部材の平面図
【図8】ポンプ装置の更に他の支持部材の平面図
【図9】図8のB−B線断面図
【図10】ポンプ装置の更に他の支持部材の平面図
【図11】図10のC−C線断面図
【図12】ポンプ装置の更に他の支持部材の平面図
【図13】図12のD−D線断面図
【図14】従来のポンプ装置の断面図
【図15】従来の他のポンプ装置の断面図
【符号の説明】
【0070】
30…ディーゼルフィルタ 32…フィルタケース
33…中央通路 34…濾過部材
35…水溜室 36…流体流入用パイプ
37…流体流出用パイプ 40…ポンプ装置
41…ポンプケース 42…ポンプカバー
43…ダイヤフラム 43a…ノブ
44…ポンプ室 45…流入側逆止弁
45a…第1弁体 45b…第1バネ
45c…第1開口部 46…流体流入用通路
47…流入側収納部 48…流出側逆止弁
48a…第2弁体 48b…第2バネ
48c…第2開口部 49…流体流出用通路
50…流出側収納部 51…拡張室
52…弁体ガイド 53…バネガイド
54…載置溝 55…支持部材
55a…流入側支持部材 55b…流出側支持部材
56…環状支持突起 57…環状弁座
60…壁 62…傾斜面
65…キャップ状部材 66…開放部
67…内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を形成し内部にポンプ室を有するポンプケースと、前記ポンプ室に開口し流体が流入する第1通路と、前記ポンプ室に開口し流体が流出する第2通路と、前記第1通路を開閉する第1逆止弁と、前記第2通路を開閉する第2逆止弁とを有するポンプ装置であって、
前記第1通路及び前記第2通路は、それぞれ上下方向で前記ポンプ室に開口し、
前記第1通路が前記ポンプ室に開口する箇所には、前記第1逆止弁が設けられる第1収納部を有し、
前記第2通路が前記ポンプ室に開口する箇所には、前記第2逆止弁が設けられる第2収納部を有し、
前記第1逆止弁は、下から第1弁体と第1バネと前記第1バネを支持し第1開口部を有する第1支持部材との順で形成し、
前記第2逆止弁は、下から第2バネと第2弁体と前記第2弁体を支持し第2開口部を有する第2支持部材との順で形成し、
前記第1開口部は、前記第2逆止弁側に偏心していることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記第1開口部は、中央部が窪み両端が突き出た略鼓状であることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記第1開口部は、円弧状であることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記第1開口部は、前記第2逆止弁と反対側に壁を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記ポンプ室内に、前記第1開口部及び前記第2開口部を覆うキャップ状部材を設けることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記第1開口部は、前記第2開口部より高い位置に設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記第1開口部から前記第2開口部に向かって下方に傾斜することを特徴とする請求項6に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは一体に形成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記ポンプ装置は、ディーゼルフィルタ用であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−1807(P2010−1807A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161526(P2008−161526)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】