説明

ポンプ

【課題】逆止弁の寿命を向上可能なポンプを提供すること。
【解決手段】ポンプ1に用いられる吸込ケーシング10に設けられた水を供給する吸込部20には、その内周面の一部に受け部26を有する吸込口21と、吸込口21に設けられ、シール面29を有するフランジ部22と、吸込口21及びフランジ部22に狭持される円環状の固定部31、シール面29と離接する弁体32及び固定部31と弁体32を連続する接続部33を有する逆止弁23と、を備え、弁体32がシール面29から離間する際に、受部26により弁体32を支持する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の逆流を防止する逆止弁を用いたポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
融雪に用いられる融雪ポンプや自吸式ポンプ等の流体の供給を行うポンプは、ポンプ停止時の落水等の逆流を防止するために、吸込口に逆止弁が用いられている(例えば、引用文献1参照)。
【0003】
このような逆止弁は、吸込口から吸込方向に吸い込まれる水をポンプ内部へと流通させる。また、逆止弁は、ポンプ内部の水が吸込口から吐出する所謂逆流を防止可能に形成されている。
【0004】
具体的には、逆止弁は、例えば、ゴム部材の樹脂材で形成され、固定部と弁体とを有している。逆止弁は、ポンプケーシングの吸込口に固定部が固定されることで、弁体が離接可能に形成されている。逆止弁は、ポンプ内部への水の移動により、弁体が吸込口から離間し、流路を形成するとともに、逆流方向に水が流れると、弁体が吸込口を閉塞し、逆流を防止する。
【0005】
このような構成の逆止弁は、吸込口から水が吸い込まれると、弁体が吸込口から離間して開状態となり、水が吸い込まれる。また、水の逆流時には、逆止弁は、弁体が押圧されて吸込口に接近又は当接して閉状態となり、水の流路を閉塞することで、水の逆流を防止する。このように、逆止弁は、弁体の開閉により、水の流路を開放及び閉塞することで、水の流れを規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−119671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した逆止弁を用いたポンプでは、以下の問題があった。即ち、上述した逆止弁は、弁体の開閉により、フランジ等から離接する動作がなされるため、固定部と弁体との接続部は、弾性変形が繰り返される。
【0008】
また、水の吸込み時には、水の流れによる影響により、弁体のばたつきが発生し、接続部に曲折や捩れ等が発生する虞がある。また、水の流れによっては、弁体の開度が大きくなり、接続部の曲折も大きくなることがある。
【0009】
接続部は樹脂で成形されていることから、曲折等による弾性変形が大となると、接続部の破損等の発生の虞があり、逆止弁の寿命の低下の原因となる。
【0010】
そこで本発明は、逆止弁の寿命の向上が可能なポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のポンプは次のように構成されている。
【0012】
本発明の一態様として、回転軸に固定されるインペラ、及び、前記インペラを収納するポンプ室を有し、前記インペラを介してその二次側へ水の流路を形成する案内部を具備するポンプ部と、前記ポンプ部の一次側に接続され、前記ポンプ室へ水を供給する吸込口を有するケーシングと、前記吸込口に設けられ、シール面を有する取付部材と、前記シール面と離接可能、且つ、前記シール面と当接することで前記吸込口を閉塞する弁体を有する、前記吸込口及び前記取付部材に設けられた逆止弁と、前記吸込口に設けられ、前記シール面から離間した前記弁体の移動を規制する受部と、を備えることを特徴とするポンプが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、逆止弁の弁体のばたつきを防止可能、且つ、弁体の開度を規制可能となり、逆止弁の寿命の低下を防止可能なポンプを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係るポンプの構成を一部断面で示す説明図。
【図2】同ポンプの構成を拡大して示す断面図。
【図3】同ポンプの要部構成を拡大して示す平面図。
【図4】同ポンプの要部構成を拡大して示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態に係るポンプ1を図1〜4を用いて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係るポンプ1の構成を一部断面で示す説明図、図2はポンプ1の要部であって、特にポンプ1に用いられる吸込口21の逆止弁23及びその周囲の構成を拡大して示す断面図、図3は吸込口21に設けられた開口部24及び受部26の構成を拡大して示す平面図、図4は逆止弁23の構成を拡大して示す平面図である。なお、図1中、Fは水の流れを、Kは電源ケーブルを、それぞれ示している。
【0016】
図1に示すように、ポンプ1は、吸込ケーシング10と、ポンプ部11と、モータ部12と、回転軸13と、吐出ケーシング14と、を備えている。ポンプ1は、図1中の水の流れFに示すように、吸込ケーシング10から吸い込まれた水を、ポンプ部11を介して吐出ケーシング14から吐出可能に形成されている。
【0017】
吸込ケーシング10は、有底の円筒形状に形成されている。吸込ケーシング10は、その側面に設けられ、その内部に水を供給する吸込部20を有している。吸込ケーシング10は、その上端部に、ポンプ部11を取付可能に形成されている。また、吸込ケーシング10は、その下面がポンプ1の設置時に、設置面と当接可能に形成されている。
【0018】
吸込部20は、前記吸込ケーシング10へ水を吸い込む吸込口21と、この吸込口21にボルト等で接続されたフランジ部(取付部材)22と、吸込口21及びフランジ部22に狭持された逆止弁23と、を備えている。
【0019】
吸込口21は、吸込ケーシング10の側面から突出し、水の流れFに示す流路を形成する円筒状の開口部24と、吸込口21の端面に設けられ、逆止弁23の一部を当接可能な狭持面25が形成されている。また、吸込口21は、開口部24の内周面の一部に設けられた受部26を備えている。
【0020】
図1〜3に示すように、この受部26は、開口部24の軸心方向に沿って所定の角度に傾斜する突出部である。具体的には、受部26は、軸心方向に沿って傾斜し、逆止弁23を受ける(当接可能な)座面26aと、この座面26aの一部が切欠する切欠部26bと、が形成されている。切欠部26bは、受部26に流れる水及び気泡等を通過させることで、吸込ケーシング10内に流入可能に形成されている。
【0021】
フランジ部22は、吸込口21に固定可能に形成され、吸込口21の開口部24と連続する水の流れFを形成可能な開口部27を有して形成されている。フランジ部22は、吸込口21と対向する対向面に、逆止弁23を吸込口21の狭持面25と狭持可能な狭持面28を備えている。また、フランジ部22は、逆止弁23の一部と当接することで、吸込口21を密閉可能なシール面29を備えている。このようなフランジ部22は、逆止弁23を取り付ける取付部材である。
【0022】
図2に示すように、シール面29は、所定の角度、具体的には、開方向に若干移動(変形)した逆止弁23と当接するように、狭持面28に対して傾斜する角度に形成されている。
【0023】
なお、狭持面25及びシール面29は、一体に形成されていても、別体に形成されていてもよい。また、狭持面25及びシール面29は、フランジ部22に設けられているのではなく、別途逆止弁23の取付部材を有する構成でも良い。
【0024】
逆止弁23は、図1,2,4に示すように、ゴム部材等の樹脂材料で円板状に形成されている。逆止弁23は、固定部31と、弁体32と、固定部31及び弁体32を接続する接続部33と、を備えている。即ち、逆止弁23は、円環状の固定部31と、この固定部31の内面側に設けられた円板状の弁体32と、を接続部33により連続させることで形成されている。この逆止弁23は、固定部31が固定されるとともに、接続部33が弾性変形することで、弁体32が移動(傾斜)可能に形成されている。
【0025】
固定部31は、吸込口21及びフランジ部22の狭持面25,28に狭持されるとともに、これら狭持面25,28間を密封可能に形成されている。
【0026】
弁体32は、その内部に弁体32の変形を規制する、金属等で形成された円板状の補強部材34を有する円板形状に形成されている。弁体32は、一方の面32aがシール面29と当接可能に形成され、他方の面32bの一部が受部26の座面26aと当接可能に形成されている。弁体32は、他方の面32b側からの水圧により、一方の面32aとシール面29とが当接することで、吸込口21を閉塞可能に形成されている。
【0027】
ポンプ部11は、回転軸13に接続されたインペラ41と、インペラ41を収納するポンプケーシング42と、を備えている。
【0028】
ポンプケーシング42は、インペラ41を収納するポンプ室43と、ポンプ室43と吸込ケーシング10とを連通させる第1連通孔44と、ポンプ室43と吐出ケーシング14内とを連通する第2連通孔45と、を備えている。
【0029】
モータ部12は、モータケーシング47と、モータケーシング47内に設けられた固定子48及び回転子49を有し、外部電源等に電源ケーブルKを介して接続されている。回転子49には、回転軸13が回転可能に接続されている。モータ部12は、ポンプ部11及び吐出ケーシング14に固定されている。
【0030】
回転軸13は、回転子49に固定されるとともに、インペラ41が接続され、回転子49の回転をインペラ41に伝達可能に形成されている。回転軸13は、例えば重力方向に延設されるとともに、モータ部12に設けられた軸受50等により軸支される。
【0031】
吐出ケーシング14は、一方の端側が開口し他方の端側が閉塞された有底円筒状に形成されている。吐出ケーシング14は、その開口する一方の端側がポンプ部11に接続され、その閉塞する他方の端側に吐出口51が設けられる。また、吐出ケーシング14は、その中心側にモータ部12が設けられ、モータ部12のモータケーシング47と吐出ケーシング14の内周面との間に、水の流れFに示す流路が形成されている。
【0032】
このように構成されたポンプ1は、モータ部12を駆動することで、水の流れFに示すように、増圧給水されるとともに、モータ部12を停止させることで、給水が停止可能となる。このようなポンプ1の運転について以下説明する。
【0033】
ポンプ1を運転させ、水の供給(増圧給水)を行う際には、先ず、電源ケーブルKを供給電源と接続し、電源ケーブルKを介してモータ部12に電力を供給させる。モータ部12は、供給された電力により回転子49を回転駆動し、回転軸13を回転させる。この回転軸13の回転に伴って、ポンプ部11のインペラ41も回転することとなる。インペラ41は、その回転によりポンプ室43内の水を増圧させる。この増圧した水が第2連通孔45から吐出ケーシング14内を通過して吐出口51から水を吐出することで、水が供給される。
【0034】
また、水の流れFに示すように、吸込ケーシング10内の水が第1連通孔44からポンプ室43に移動するとともに、吸込口21から吸込ケーシング10内に水が吸い込まれる。吸込口21から吸込ケーシング10内に水が吸い込まれると、逆止弁23は、図1に示すようにシール面29と当接した弁体32の一方の面32aが水の流れにより押圧され、図2に示すように接続部33を支点に回動してシール面29から離間し、他方の面32bが受部26に当接する。
【0035】
弁体32が受部26に当接することで、逆止弁23が開状態となり、図1の水の流れFに示すように、フランジ部22から吸込ケーシング10までの流路が形成される。逆止弁23が開状態の間は、弁体32は、水の流れFの方向に押圧され、受部26に常時当接することで、弁体32が固定される。
【0036】
ポンプ1の停止、即ち、水の供給を停止させる場合には、モータ部12への電力の供給を停止させる。電力の供給が停止すると、モータ部12が停止、即ち、回転子49の回転が停止し、インペラ41も停止する。インペラ41の停止により、ポンプ室43内の水は増圧されない。また、ポンプ室43の二次側、具体的には、吐出ケーシング14内の水及び吐出口51の二次側の水は、重力により水の流れFの方向とは反対方向(落水方向、逆流方向)に移動するため、弁体32の二次側の水圧が一次側の水圧よりも高くなる。このとき、弁体32は、接続部33の復元力と、二次側からの水圧により、一方の面32aがシール面29に当接する。
【0037】
このように、逆止弁23は、モータ部12の駆動時には、受部26に当接して開状態となり、モータ部12の停止時には、シール面29と当接して閉状態となる。このような弁体32の開閉により、逆止弁23は、水の流れ方向Fに、水の移動が可能となるとともに、水の逆流(落水)を防止可能となる。
【0038】
このように構成されたポンプ1によれば、逆止弁23は、開状態時において、水の流れFをその一方の面32aで受けることで、弁体32が受部26に当接する。このため、弁体32は、受部26で支持され、弁体32がばたつくことがなく、接続部33は、水の流れF方向へ曲折するだけである。
【0039】
即ち、弁体32のばたつきを防止することで、接続部33捩れを防止する。また、弁体32は、シール面29及び受部26との間で回動する。弁体32は、受部26で弁体32の移動が規制され、シール面29から受部26の角度(回動角度)間でのみ回動するため、その開度は所定の開度となる。これにより、接続部33は、弁体32がシール面29から受け部26までの回動角度間でのみ曲折(弾性変形)する。
【0040】
また、弁体32は、受部26へ所定の開度以上には移動しない構成であるため、受部26は、水の流れFの水量及び水圧の変化があっても、極力、接続部33の曲折を防止することが可能となる。これらのように、受け部26は、過度な弾性変形を防止する。
【0041】
これらのことから、受部26を設けたポンプ1は、接続部33の疲労破壊を極力防止し、逆止弁23の寿命の低下を防止することが可能となる。即ち、逆止弁23の寿命を向上させ、逆止弁23の機能停止を防止することで、水の逆流(落水)をより確実に防止させることが可能となり、ポンプ1の信頼性を向上することが可能となる。
【0042】
さらに、受部26は、切欠部26bを有するため、開口部24の上方に位置する水や空気等は、切欠部26bから移動することとなり、開口部24の上方及び受部26の周囲に空気等が溜まることがない。即ち、空気の溜まり(気泡)の発生を防止可能となり、この空気の溜まりによるキャビテーションの発生を防止することが可能となる。
【0043】
上述したように、本実施の形態に係るポンプ1によれば、受部26により弁体32の移動を規制することで、水の流れFによる弁体32のばたつきを防止し、接続部33の破損を防止可能となる。これにより、逆止弁23の寿命を向上し、逆止弁23の破損による落水を防止し、ポンプ1の信頼性を向上することが可能となる。
【0044】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、回転軸13が重力方向に延設された縦型のポンプ1を用いる構成で説明したがこれに限定されない。例えば、回転軸を水平方向に延設させた自吸式のポンプであってもよい。即ち、吸込口等のポンプ部の一次側に水の逆流を防止可能な逆止弁を設け、受部26等により弁体32を支持可能、且つ、開度の規制可能とし、弁体32のばたつきを防止することで接続部33の過度な曲折を防止可能な構成であれば、各種ポンプに用いても同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、上述した例では、ポンプ部11に接続された吸込ケーシング10に設けられた吸込口21に逆止弁23を設ける構成としたが、これに限定されない。例えば、ポンプ部11のポンプケーシング42に吸込口を設け、この吸込口に逆止弁23及び受部26を設ける構成であってもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…ポンプ、10…吸込ケーシング、11…ポンプ部、12…モータ部、13…回転軸、14…吐出ケーシング、20…吸込部、21…吸込口、22…フランジ部、23…逆止弁、24…開口部、25…狭持面、26…受部、26a…座面、26b…切欠部、27…開口部、28…狭持面、29…シール面、31…固定部、32…弁体、32a…一方の面、32b…他方の面、33…接続部、34…補強部材、41…インペラ、42…ポンプケーシング、43…ポンプ室、44…第1連通孔、45…第2連通孔、47…モータケーシング、48…固定子、49…回転子、50…軸受、51…吐出口、F…方向、K…電源ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固定されるインペラ、及び、前記インペラを収納するポンプ室を有するポンプ部と、
前記ポンプ部の一次側に接続され、前記ポンプ室へ水を供給する吸込口を有するケーシングと、
前記吸込口に設けられ、シール面を有する取付部材と、
前記シール面と離接可能であって、前記シール面と当接により前記吸込口を閉塞する弁体を有する、前記吸込口及び前記取付部材に設けられた逆止弁と、
前記吸込口に設けられ、前記シール面から離間した前記弁体の移動を規制する受部と、
を備えることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記逆止弁は、前記吸込口及び前記取付部材に狭持される固定部と、前記固定部及び前記弁体を接続するとともに、前記弁体と前記シール面との離接時に弾性変形し前記弁体を前記シール面から前記受部へと回動させる接続部と、をさらに有し、
前記受部は、前記シール面から回動する前記弁体の回動角度を規制することを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記受部は、前記弁体の支持時に、その一部に水の移動が可能な切欠を有することを特徴とする請求項1に記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−144717(P2011−144717A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4400(P2010−4400)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000148209)株式会社川本製作所 (161)
【Fターム(参考)】