説明

マイクロチップ、マイクロチップ用金型及びマイクロチップの製造方法

【課題】ウェルドラインによる流路の短絡を防止する。
【解決手段】上下に貫通する複数の貫通孔22Aを有するとともに、少なくとも2つの貫通孔22Aの間を接続する溝21Aが下面に形成された基板2Aと、基板2Aの下面に接合される底材9Aと、を備えるマイクロチップ1である。基板2Aは射出成形により形成され、貫通孔22Aから延在するウェルドラインが形成される領域に溝21Aが形成されていないため、ウェルドラインによって貫通孔22Aと溝21Aとが短絡しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチップ、マイクロチップ用金型及びマイクロチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な流路、空間内で核酸、タンパク質、血液などの液体試料の反応、分離、分析などを行うマイクロチップ、あるいはμTAS(MicroTotal Analysis Systems)と称する装置が実用化されている。
【0003】
マイクロチップは、微細加工技術を利用してシリコン、ガラス、樹脂等の基板に微細な流路、空間を形成し、他の基板と接合して形成される。近年では、廉価で使い捨て可能な樹脂製マイクロチップの開発が特に望まれている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、図24、図25に示すような流路111や流路111への注入孔112を有するマイクロチップ101は、流路111となる溝121や注入孔112となる貫通孔122を有する基板102と、底材109とを接合して形成される。溝121や貫通孔122を有する基板102は、図26に示すような金型103へ溶融樹脂を射出充填し、冷却することで形成される。
【0005】
金型103は、コア104及びコア104が挿入されるキャビティ151を有する型板105とからなる。コア104には、溝121と対応する形状の突条141や、貫通孔122と対応する形状のコアピン142が設けられている。型板105には、キャビティ151内に溶融樹脂を注入するためのゲート152が形成されている。
【0006】
基板102に貫通孔122を形成する場合、コアピン142がキャビティ151内で型板105と当接しているため、ゲート152より射出された溶融樹脂は、コアピン142により分断された後、コアピン142のゲート152に対して背面側で合流し融着する。このため、ウェルドライン128が発生する場合がある。
【0007】
ウェルドラインの発生を防ぐために、金型の温度を制御するウェルドレス成形方法もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−234600号公報
【特許文献2】特開昭63−42829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ウェルドライン128が長くなり、他の溝121とつながると、ウェルドライン128によって流路111と注入孔112とが短絡し、マイクロチップ101が機能しないおそれがある。
【0010】
金型の温度を制御するウェルドレス成形方法を実施するには専用の設備が必要となる。また、成形サイクルが長くコストが高くなるという問題がある。
【0011】
本発明の課題は、ウェルドラインによる流路の短絡を防止することができるマイクロチップ、マイクロチップ用金型及びマイクロチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、第1の発明は、上下に貫通する複数の貫通孔を有するとともに、少なくとも2つの前記貫通孔の間を接続する溝が下面に形成された基板と、前記基板の下面に接合される底材と、を備え、前記基板は射出成形により形成され、前記貫通孔から延在するウェルドラインが形成される領域に前記溝が形成されていないことを特徴とするマイクロチップである。
【0013】
ここで、「ウェルドラインが形成される領域」とは、ウェルドラインの形状が見える部分及びその周囲の領域をいい、ウェルドラインの形状が見える部分及びその周囲約20μmより外側の領域に溝を形成することが好ましい。ウェルドラインが見える部分以外の領域でも、溝がウェルドラインに近いと、接合した後の状態によっては、界面の接合が不十分な領域(未接合領域)を通して、ウェルドラインと溝が短絡する場合があるからである。
【0014】
第1の発明においては、前記基板のゲート跡と前記貫通孔の中心とを結ぶ直線上の、前記貫通孔に対して前記ゲート跡と反対方向の領域には、前記溝が形成されていないことが好ましい。
また、前記基板には、射出成形後、ゲート跡部分に貫通孔が形成されていてもよい。
【0015】
第2の発明は、一方の面にキャビティが設けられた型板と、前記型板の前記キャビティが設けられた面と対向する面に当接するコアと、を備え、前記型板または前記コアの少なくとも一方に、前記キャビティ内へ溶融樹脂を注入するためのゲートが設けられた金型において、前記コアには前記キャビティの底部に当接するコアピンと、前記コアピンに接続されかつ前記型板とは当接しない突条とが設けられ、前記コアピンによりウェルドラインが形成される領域には、前記突条が形成されていないことを特徴とするマイクロチップ用金型である。
【0016】
第2の発明においては、前記ゲートと前記コアピンの中心とを結ぶ直線上の、前記コアピンに対して前記ゲートと反対方向の領域には、前記突条が形成されていないことが好ましい。
【0017】
第3の発明は、第2の発明の金型を用いて射出成形により基板を形成し、次に、前記基板の下面に底材を接合することを特徴とするマイクロチップの製造方法である。
【0018】
第3の発明においては、前記基板の射出成形後、前記底材の接合前に、前記基板のゲート跡部分に貫通孔を形成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウェルドラインによる流路の短絡を防止することができるマイクロチップ、マイクロチップ用金型及びマイクロチップの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロチップ1Aを示す断面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III矢視断面図である。
【図4】図1のIV−IV矢視断面図である。
【図5】図1のV−V矢視断面図である。
【図6】金型3Aの平面図である。
【図7】図6のVII−VII矢視断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII矢視断面図である。
【図9】図6のIX−IX矢視断面図である。
【図10】図6のX−X矢視断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るマイクロチップ1Bを示す断面図である。
【図12】図11のXII−XII矢視断面図である。
【図13】金型3Bの平面図である。
【図14】図13のXIV−XIV矢視断面図である。
【図15】マイクロチップ1Bの製造方法を示す断面図である。
【図16】金型3Bから取り出した状態の基板2Bを示す断面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係るマイクロチップ1Cを示す平面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII矢視断面図である。
【図19】金型3Cの平面図である。
【図20】図19のXIX−XIX矢視断面図である。
【図21】マイクロチップ1Cの製造方法を示す断面図である。
【図22】金型3Cから取り出した状態の基板2Cを示す断面図である。
【図23】他の形態のマイクロチップ1を示す断面図である。
【図24】従来のマイクロチップ101を示す断面図である。
【図25】図24のXXV−XXV矢視断面図である。
【図26】マイクロチップ101の製造に用いる金型3を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1の実施の形態に係るマイクロチップ1Aを示す平面図であり、図2は図1のII−II矢視断面図である。本実施形態に係るマイクロチップ1Aは長方形状であるが、その形状は任意である。
マイクロチップ1Aは、基板2Aと、底材9Aとが接合されてなる。
【0022】
基板2A、底材9Aには樹脂が用いられる。基板2Aに用いられる樹脂としては、成形性(転写性、離型性)がよいこと、透明性が高いこと、紫外線や可視光に対する自己蛍光性が低いことなどが条件として挙げられるが、特に限定されるものではない。例えば、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリエチレン、ポリジメチルシロキサン、環状ポリオレフィン等が好ましい。特に、ポリメタクリル酸メチル、環状ポリオレフィン等が好ましい。
【0023】
底材9Aは、基板2Aの下面に接合されている。底材9Aの厚さは任意であり、板状であってもよいし、フィルム状であってもよい。底材9Aには基板2Aと同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。底材9Aと基板2Aの接合方法は、接着剤を用いる方法、熱溶着技術を用いる方法等、任意である。
【0024】
基板2Aには、溝21Aと、貫通孔22Aとが設けられている。
溝21Aは基板2Aの下面に形成されている。溝21Aの下部が底材9Aにより塞がれることで流路11Aが形成される。
貫通孔22Aは基板2Aを上下に貫通している。貫通孔22Aが底材9Aにより塞がれることで注入孔12Aが形成される。
流路11A、注入孔12Aは、非常に微細な溝(マイクロ流路)であり、核酸、タンパク質、血液や薬剤などの液体試料の反応、混合、分離、分析などを行うのに好適に用いられる。
【0025】
溝21Aの幅及び貫通孔22Aの径は、分析試料、試薬の使用量を少なくできること、成形金型の作成精度、転写性、離型性等を考慮して、幅は10μm〜200μm程度であることが好ましい。
溝21Aの深さは、30μm〜150μm程度であることが好ましく、基板2Aの厚さよりも浅いことが好ましい。
貫通孔22Aにより形成される注入孔12Aの深さは基板2Aの厚さによって定まる。基板2Aの厚さは30μmよりも厚くかつ200μm以下であることが好ましいが、マイクロチップ1Aの用途、分析手法、分析装置に応じて適宜調整すればよい。
【0026】
本実施形態に係る基板2Aは、射出成形により形成されるため、一端にゲート跡29Aが形成されている。ゲート跡29Aは基板2Aの金型のゲートに該当する部分である。
図3〜図5はマイクロチップ1Aの各貫通孔22Aの中心とゲート跡29Aとを結ぶ線(III−III線、IV−IV線、V−V線)における断面図である。なお、図1のマイクロチップ1Aは左右対称であるため、図1の左半分の貫通孔22Aの中心とゲート跡29Aとを結ぶ線における断面図についてのみ記載し、右半分の貫通孔22Aについての説明は割愛する。
【0027】
図3〜図5に示すように、どの貫通孔22Aについても、ウェルドラインが形成される領域には、溝21Aが形成されていない。
ここで、「ウェルドラインが形成される領域」とは、例えば、貫通孔22Aから延在するウェルドラインが形成された場合において、ウェルドラインの形状が見える部分及びその周囲の領域である。
本実施形態においては、ゲート跡29Aと貫通孔22Aの中心とを結ぶ直線上の、貫通孔22Aに対してゲート跡29Aと反対方向の領域には、溝21Aが形成されていない。
溝21Aは、ウェルドラインの形状が見える部分及びその周囲約20μmより外側の領域に溝を形成することが好ましい。ウェルドラインが見える部分以外の領域でも、溝がウェルドラインに近いと、接合した後の状態によっては、界面の接合が不十分な領域(未接合領域)を通して、ウェルドラインと溝が短絡する場合があるからである。
【0028】
ここで、基板2Aの射出成形に用いる金型3Aについて説明する。図6は金型3Aの平面図であり、図7は図6のVII−VII矢視断面図である。金型3Aは、コア4Aと、型板5Aと、等から概略構成される。
【0029】
コア4Aには、型板5Aとの対向面に、突条41A及びコアピン42Aが設けられている。突条41Aは溝21Aと対応する形状であり、コアピン42Aは貫通孔22Aと対応する形状である。
【0030】
型板5Aには、コア4Aとの対向面に、基板2Aが形成されるキャビティ51Aが設けられている。キャビティ51Aの底部にはコアピン42Aが当接する。
また、基板2Aの材料となる溶融樹脂をキャビティ51A内に射出するためのゲート59Aが設けられている。
【0031】
図8〜図10は金型3Aの各コアピン42Aの中心とゲート59Aとを結ぶ線(VIII−VIII線、IX−IX線、X−X線)における断面図である。なお、図6の金型3Aは左右対称であるため、図6の左半分のコアピン42Aの中心とゲート59Aとを結ぶ線における断面図についてのみ記載し、右半分のコアピン42Aについての説明は割愛する。
図8〜図10に示すように、金型3Aのどのコアピン42Aについても、ゲート59Aとコアピン42の中心とを結ぶ直線上の、コアピン42に対してゲート59Aと反対方向の領域には、突条41Aが形成されていない。
【0032】
ここで、マイクロチップ1Aの製造方法について説明する。まず、図6に示す状態の金型3Aのキャビティ51A内に、ゲート59Aから基板2Aの材料となる溶融樹脂を射出充填し、冷却することで基板2Aを成形する。次に、型板5Aからコア4Aを離し、キャビティ51Aから基板2Aを取り出す。なお、突条41Aの跡が溝21Aに、コアピン42Aの跡が貫通孔22Aとなる。その後、基板2Aの下面に底材9Aを接合する。以上により、マイクロチップ1Aが完成する。
【0033】
本実施形態においても、ゲート59Aからキャビティ51A内に充填される溶融樹脂がコアピン42Aにより分断された後、コアピン42Aのゲート59Aに対して背面側で合流し融着することでウェルドラインが形成されるおそれがある。しかし、図8〜図10に示すように、金型3Aのどのコアピン42Aについても、ゲート59Aとコアピン42Aの中心とを結ぶ直線上の、コアピン42Aに対してゲート59Aと反対方向の領域には、すなわち、ウェルドラインが形成される領域には、突条41Aが形成されていない。このため、成形後の基板2Aで溝21Aと貫通孔22Aとがウェルドラインによって短絡することがない。
【0034】
〔第2実施形態〕
図11は本発明の第2の実施の形態に係るマイクロチップ1Bを示す平面図であり、図12は図11のXII−XII矢視断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、説明を割愛する。
本実施形態に係るマイクロチップ1Bは、図11、図12に示すように、円板形状であり、マイクロチップ1Bは基板2Bと、底材9Bとが接合されてなる。
【0035】
基板2Bには、溝21B、23B、及び、貫通孔22B、24B、28Bが設けられている。
貫通孔22Bは基板2Bの外周部に設けられており、貫通孔28Bは基板2Bの中心に設けられている。溝21Bは、基板2Bの下面であって、貫通孔22Bと貫通孔28Bとの間に放射状に設けられている。
溝23Bは一部の溝21Bから分岐して設けられており、端部に貫通孔24Bが設けられている。
溝21B、23Bの下部が底材9Bにより塞がれることで流路11B、13Bが形成される。貫通孔22B、24B、28Bが底材9Bにより塞がれることで注入孔12B、14B、18Bが形成される。
【0036】
本実施形態においては、どの貫通孔22B及び貫通孔24Bについても、貫通孔28Bと貫通孔22B、24Bの中心とを結ぶ直線上の、貫通孔22B、24Bに対して貫通孔28Bと反対方向の領域には、溝21B、23Bが形成されていない。
【0037】
ここで、基板2Bの射出成形に用いる金型3Bについて説明する。図13は金型3Bの平面図であり、図14は図13のXIV−XIV矢視断面図である。金型3Bは、コア4Bと、型板5Bと、等から概略構成される。
【0038】
コア4Bには、型板5Bとの対向面に、突条41B、43B及びコアピン42B、44Bが設けられている。突条41B、43Bは溝21B、23Bと対応する形状であり、コアピン42B、44B、は貫通孔22B、24Bと対応する形状である。
また、コア4Bの中心には、ゲート49Bが設けられている。
型板5Bには、コア4Bとの対向面に、基板2Bが形成されるキャビティ51Bが設けられている。キャビティ51Bの底部にはコアピン42B、44Bが当接する。キャビティ51B内には、基板2Bの材料となる溶融樹脂がゲート49Bより射出される。
【0039】
本実施形態においても、金型3Bのどのコアピン42B、44Bについても、ゲート49Bとコアピン42B、44Bの中心とを結ぶ直線上の、コアピン42B、44Bに対してゲート49Bと反対方向の領域には、突条41B、43Bが形成されていない。
【0040】
ここで、マイクロチップ1Bの製造方法について説明する。まず、図15に示すように、金型3Bのキャビティ51B内に、ゲート49Bから基板2Bの材料となる溶融樹脂を射出充填し、冷却することで成形する。次に、型板5Bからコア4Bを離し、キャビティ51Bから基板2Bを取り出す。なお、突条41B、43Bの跡が溝21B、23Bに、コアピン42B、44Bの跡が貫通孔22B、24Bとなる。この状態では、図16に示すように、基板2Bには貫通孔28Bがまだ形成されておらず、ゲート49Bと対応する位置にゲート跡29Bが形成されている。
【0041】
次に、ゲート跡29Bの部分(図16の一点鎖線で示す位置)に貫通孔28Bを削孔することで、基板2Bが完成する。
その後、基板2Bの下面に底材9Bを接合する。以上により、マイクロチップ1Bが完成する。
【0042】
本実施形態においても、ゲート49Bからキャビティ51B内に充填される溶融樹脂がコアピン42B、44Bにより分断された後、コアピン42B、44Bのゲート49Bに対して背面側で合流し融着することでウェルドラインが形成されるおそれがある。しかし、金型3Bのどのコアピン42Bについても、ゲート49Bとコアピン42B、44Bの中心とを結ぶ直線上の、コアピン42B、44Bに対してゲート49Bと反対方向の領域には、すなわちウェルドラインが形成される領域には、突条41B、43Bが形成されていない。このため、成形後の基板2Bで溝21B、23Bと貫通孔22B、24Bとがウェルドラインによって短絡することがない。
【0043】
〔第3実施形態〕
図17は本発明の第3の実施の形態に係るマイクロチップ1Cを示す平面図であり、図18は図17のXVIII−XVIII矢視断面図である。なお、第2実施形態と同様の構成については、説明を割愛する。
【0044】
本実施形態に係るマイクロチップ1Cは、図17、図18に示すように、円板形状であり、マイクロチップ1Cは基板2Cと、底材9Cとが接合されてなる。
【0045】
基板2Cには、溝21C、23C、及び、貫通孔22C、24C、26C、28Cが設けられている。
貫通孔22Cは基板2Cの外周部に設けられており、貫通孔28Cは基板2Cの中央部に設けられている。貫通孔26Cは貫通孔28Cの近傍に設けられている。
溝21Cは、基板2Cの下面であって、いずれかの貫通孔22Cといずれかの貫通孔26Cとの間に設けられている。
溝23Cは一部の溝21Cから分岐して設けられており、端部に貫通孔24Cが設けられている。
溝21C、23Cの下部が底材9Cにより塞がれることで流路11C、13Cが形成される。貫通孔22C、24C、26C、28Cが底材9Cにより塞がれることで注入孔12C、14C、16C、18Cが形成される。
【0046】
本実施形態においても、どの貫通孔22C、24C、26Cについても、貫通孔28Cと貫通孔22C、24C、26Cの中心とを結ぶ直線上の、貫通孔22C、24C、26Cに対して貫通孔28Cと反対方向の領域には、溝21C、23Cが形成されていない。また、貫通孔22Cと貫通孔28Cとの間の領域には、貫通孔24C、26Cが形成されていない。
【0047】
ここで、基板2Cの射出成形に用いる金型3Cについて説明する。図19は金型3Cの平面図であり、図20は図19のXIX−XIX矢視断面図である。金型3Cは、コア4Cと、型板5Cと、等から概略構成される。
【0048】
コア4Cには、型板5Cとの対向面に、突条41C、43C及びコアピン42C、44C、46Cが設けられている。突条41C、43Cは溝21C、23Cと対応する形状であり、コアピン42C、44C、46Cは貫通孔22C、24C、26Cと対応する形状である。
また、コア4Cの中央部には、ゲート49Cが設けられている。
型板5Cには、コア4Cとの対向面に、基板2Cが形成されるキャビティ51Cが設けられている。キャビティ51Cの底部にはコアピン42C,44C、46Cが当接する。キャビティ51C内には、基板2Cの材料となる溶融樹脂がゲート49Cより射出される。
【0049】
本実施形態においても、金型3Cのどのコアピン42C、44C、46Cについても、ゲート49Cとコアピン42C、44C、46Cの中心とを結ぶ直線上の、コアピン42C、44C、46Cに対してゲート49Cと反対方向の領域には、突条41C、43Cが形成されていない。また、コアピン42Cとゲート49Cとの間の領域には、コアピン44C、46Cが形成されていない。
【0050】
ここで、マイクロチップ1Cの製造方法について説明する。まず、図21に示すように、金型3Cのキャビティ51C内に、ゲート49Cから基板2Cの材料となる溶融樹脂を射出充填し、冷却することで成形する。次に、型板5Cからコア4Cを離し、キャビティ51Cから基板2Cを取り出す。なお、突条41C、43Cの跡が溝21C、23Cに、コアピン42C、44C、46Cの跡が貫通孔22C、24C、26Cとなる。この状態では、図22に示すように、基板2Cには貫通孔28Cがまだ形成されておらず、ゲート49Cと対応する位置にゲート跡29Cが形成されている。
【0051】
次に、ゲート跡29Cの部分(図22の一点鎖線で示す位置)に貫通孔28Cを削孔することで、基板2Cが完成する。
その後、基板2Cの下面に底材9Cを接合する。以上により、マイクロチップ1Cが完成する。
【0052】
本実施形態においても、ゲート49Cからキャビティ51C内に充填される溶融樹脂がコアピン42C、44C、46Cにより分断された後、コアピン42C、44C、46Cのゲート49Cに対して背面側で合流し融着することでウェルドラインが形成されるおそれがある。しかし、金型3Cのどのコアピン42C、44C、46Cについても、ゲート49Cとコアピン42C、44C、46Cの中心とを結ぶ直線上の、コアピン42C、44C、46Cに対してゲート49Cと反対方向の領域、すなわちウェルドラインが形成される領域には、突条41C、43Cが形成されていない。このため、成形後の基板2Cで溝21C、23Cと貫通孔22C、24C、26Cとがウェルドラインによって短絡することがない。
同様に、コアピン44C、46Cに対してゲート49Cと反対側の領域、すなわちウェルドラインが形成される領域には、コアピン42Cが形成されていない。このため、成形後の基板2Cで貫通孔22C、24Cと貫通孔26Cとがウェルドラインによって短絡することがない。
【0053】
なお、以上の実施形態においては、基板の上面が平坦な例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、図23に示すように、注入孔12の外周部に沿って突起22aを有する形状の基板2を用いてマイクロチップ1を形成してもよい。
【0054】
また、マイクロチップの大きさは、ハンドリング、分析しやすい形状であればどのような形状であってもよい。例えば、10mm角〜200mm角程度の大きさが好ましく、10mm角〜100mm角がより好ましい。マイクロチップの形状は、分析手法、分析装置に合わせて任意の形状とすることができる。また、ゲート跡の位置についても任意である。
【0055】
また、本発明はウェルドラインが形成される領域に流路が形成されなければよく、貫通孔の中心とゲート跡の中心とを結ぶ直線上の、貫通孔からゲート跡に対して反対方向の領域であっても、ウェルドラインが形成されない程度に貫通孔から十分に離れた領域であれば、流路を形成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、1A、1B、1C、101 マイクロチップ
11、11A、11B、11C、111 流路
12、12A、12B、12C、112 注入孔
13B 流路
2、2A、2B、2C、102 基板
21、21A、21B、21C、121 溝
22、22A,22B,22C,122 貫通孔
22a 突起
23B 溝
24B 貫通孔
26C 貫通孔
28B、28C 貫通孔
29A、29B、29C ゲート跡
3A、3B、3C、103 金型
4A、4B、4C、104 コア
41A、41B、41C、141 突条
42A、42B、42C コアピン
43B 突条
44B コアピン
49B、49C ゲート
5A、5B、5C、 型板
51A、51B、51C キャビティ
59A ゲート
9、9A、9B、9C、109 底材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に貫通する複数の貫通孔を有するとともに、少なくとも2つの前記貫通孔の間を接続する溝が下面に形成された基板と、
前記基板の下面に接合される底材と、を備え、
前記基板は射出成形により形成され、
前記貫通孔から延在するウェルドラインが形成される領域に前記溝が形成されていないことを特徴とするマイクロチップ。
【請求項2】
前記基板のゲート跡と前記貫通孔の中心とを結ぶ直線上の、前記貫通孔に対して前記ゲート跡と反対方向の領域には、前記溝が形成されていないことを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記基板には、射出成形後、ゲート跡部分に貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
一方の面にキャビティが設けられた型板と、
前記型板の前記キャビティが設けられた面と対向する面に当接するコアと、を備え、前記型板または前記コアの少なくとも一方に、前記キャビティ内へ溶融樹脂を注入するためのゲートが設けられた金型において、
前記コアには前記キャビティの底部に当接するコアピンと、前記コアピンに接続されかつ前記型板とは当接しない突条とが設けられ、
前記コアピンによりウェルドラインが形成される領域には、前記突条が形成されていないことを特徴とするマイクロチップ用金型。
【請求項5】
前記ゲートと前記コアピンの中心とを結ぶ直線上の、前記コアピンに対して前記ゲートと反対方向の領域には、前記突条が形成されていないことを特徴とする請求項4に記載のマイクロチップ用金型。
【請求項6】
請求項4または5に記載の金型を用いて射出成形により基板を形成し、
次に、前記基板の下面に底材を接合することを特徴とするマイクロチップの製造方法。
【請求項7】
前記基板の射出成形後、前記底材の接合前に、前記基板のゲート跡部分に貫通孔を形成することを特徴とする請求項6に記載のマイクロチップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−212867(P2011−212867A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80956(P2010−80956)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】