説明

マイクロチップおよびその製造方法

【課題】流体回路を構成する第2の基板の溝全体が確実に表面処理されているマイクロチップおよび、塵や埃を発生させることなく、また、基板間の接合性が十分に高い、第2の基板の溝全体が確実に表面処理されたマイクロチップの製造方法を提供する。
【解決手段】第1の基板と、基板の両面に設けられた溝を備える第2の基板と、第3の基板とをこの順で貼り合わせてなるマイクロチップであって、該第2の基板が有する溝の側壁面および底面は、表面処理剤を含有する塗膜によって被覆されているマイクロチップおよびその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA、タンパク質、細胞、免疫および血液等の生化学検査、化学合成ならびに、環境分析などに使用されるμ−TAS(Micro Total Analysis System)などとして有用なマイクロチップおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療や健康、食品、創薬などの分野で、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)や酵素、抗原、抗体、タンパク質、ウィルスおよび細胞などの生体物質、ならびに化学物質を検知、検出あるいは定量する重要性が増してきており、それらを簡便に測定できる様々なバイオチップおよびマイクロ化学チップ(以下、これらを総称してマイクロチップと称する。)が提案されている。
【0003】
マイクロチップは、実験室で行なっている一連の実験・分析操作を、小サイズのチップ内で行なえることから、サンプルおよび試薬が微量で済み、コストが安く、反応速度が速く、ハイスループットな検査ができ、サンプルを採取した現場で直ちに検査結果を得ることができるなど多くの利点を有し、たとえば血液検査等の生化学検査用などとして好適に用いられている。
【0004】
かかるマイクロチップはその内部に流体回路を備えており、該流体回路は、流体回路内に導入された検体(検査・分析の対象となる物質。たとえば血液などが挙げられる。)に対して適切な処理を行なうことができるよう、各種の部位を有し、これらの部位は微細な流路によって適切に接続されている(内部に流体回路を有するマイクロチップの一例として、たとえば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−239538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記流体回路を備えるマイクロチップは、たとえば、第1の基板と、流体回路を構成するパターン溝が形成された第2の基板と、第3の基板とを、第1の基板および第3の基板で第2の基板を挟むようにして貼合することにより作製することができる。この際、第2の基板の溝形成面には、流体回路内を移動する液体の制御性の向上、流体回路内壁面への液体の付着残留防止のため、あらかじめ、撥水処理剤等の表面処理剤を塗布する場合がある。
【0006】
ここで、上記3枚の基板を貼合する方法としては、少なくともいずれか1つの基板の貼り合わせ接触面を融解させることにより貼合を行なう溶着法を好適に用いることができるが、第2の基板における第1および第3の基板との貼り合わせ接触面に表面処理剤が塗工されていると、基板の溶着が困難になることがあるため、当該貼り合わせ接触面上の表面処理剤層を除去する必要がある。表面処理剤層を除去する方法としては、たとえば、第2の基板の溝形成面である両面全体に表面処理剤を含有する塗布液を塗布した後、該塗布液層を乾燥させることなく、貼り合わせ接触面上の塗布液層を拭き取る方法が挙げられる。しかし、この方法では、流体回路を構成する溝に塗工された塗布液までもが拭き取られてしまったり、溝に塗工された塗布液が貼り合わせ接触面に付着してしまうという問題があった。
【0007】
また、貼り合わせ接触面上の表面処理剤層を除去する別の方法としては、第2の基板の両溝形成面全体に表面処理剤を含有する塗布液を塗布した後、該塗布液層を乾燥させ、貼り合わせ接触面上の乾燥された表面処理剤からなる塗膜を研磨する方法を挙げることができる。しかし、この方法では、研磨により発生したパーティクルが流体回路内に付着し得るという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、流体回路を構成する第2の基板の溝全体が確実に表面処理されているマイクロチップを提供することである。また、本発明の別の目的は、パーティクルを発生させることなく、また、基板間の接合性が十分に高い、第2の基板の溝全体が確実に表面処理されたマイクロチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の基板と、基板の両面に設けられた溝を備える第2の基板と、第3の基板とをこの順で貼り合わせてなるマイクロチップであって、該第2の基板が有する溝の側壁面および底面は、表面処理剤を含有する塗膜によって被覆されているマイクロチップを提供する。ここで、本発明においては、第2の基板が有する全ての溝の側壁面および底面が、表面処理剤を含有する塗膜によって被覆されていることが好ましい。
【0010】
上記第2の基板は、厚み方向に貫通する貫通穴を有しており、該貫通穴の内壁面は、表面処理剤を含有する塗膜によって被覆されていることが好ましい。
また、第2の基板における第1の基板との接触面および第3の基板との接触面は、表面処理剤を含有する塗膜(または表面処理剤)を有しないことが好ましい。
【0011】
本発明において第2の基板は黒色基板とすることができ、第1の基板および第3の基板は透明基板とすることができる。また、上記表面処理剤としては、たとえば撥水処理剤を好適に挙げることができる。上記塗膜の厚みは、0.01〜10μmであることが好ましい。
【0012】
また本発明により、第1の基板と、基板の両面に設けられた溝を備える第2の基板と、第3の基板とをこの順で貼り合わせてなり、該第2の基板が有する溝の側壁面および底面が、表面処理剤を含有する塗膜によって被覆されているマイクロチップを製造するための方法であって、以下の工程を含むマイクロチップの製造方法が提供される。
(1)上記第2の基板の両面に表面処理剤を含有する塗布液を塗布する工程、
(2)塗布された上記塗布液を乾燥させて塗膜を得る工程、
(3)上記塗膜のうち、基板の貼合時に第1の基板表面および第3の基板表面と接触する面上の塗膜を、液体を用いて濡らす工程、
(4)上記濡らされた塗膜を除去する工程、および、
(5)第1の基板と第2の基板と第3の基板とを貼り合わせる工程。
【0013】
上記液体は、上記表面処理剤を含有する塗布液または上記表面処理剤を溶解させることができる溶剤であることが好ましい。表面処理剤としては、たとえば撥水処理剤を好適に挙げることができる。
【0014】
上記塗布液を乾燥させて塗膜を得る工程において得られる塗膜の厚みは、0.01〜10μmであることが好ましい。
【0015】
上記第1の基板と第2の基板と第3の基板とを貼り合わせる工程は、少なくともいずれか1つの基板の貼り合わせ面を融解させる工程を含むことが好ましく、第2の基板を黒色基板とし、少なくとも第2の基板の貼り合わせ面が融解されることがより好ましい。基板の貼り合わせ面の融解は、たとえばレーザを用いて行なうことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流体回路を構成する第2の基板の溝が確実に表面処理されたマイクロチップを提供し得る。また、パーティクルを発生させることなく、基板間の接合性が十分に高いマイクロチップを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<マイクロチップ>
本発明のマイクロチップは、第1の基板と、基板の両面に設けられた溝を備える第2の基板と、第3の基板とをこの順で貼り合わせてなるマイクロチップに関する。かかる本発明のマイクロチップは、第1の基板における第2の基板側表面および第2の基板における第1の基板側表面に設けられた溝から構成される第1の流体回路と、第3の基板における第2の基板側表面および第2の基板における第3の基板側表面に設けられた溝から構成される第2の流体回路と、の2層の流体回路を備えている。ここで、2層とは、マイクロチップの厚み方向に関して異なる2つの位置に流体回路が設けられていることを意味する。第1の流路と第2の流路とは、第2の基板に形成された厚み方向に貫通する1または2以上の貫通穴によって連結されていてもよい。
【0018】
本発明のマイクロチップにおいて、流体回路(第1の流路および第2の流路)は、流体回路内の流体(特には、液体)に対して適切な様々な処理を行なうことができるよう、流体回路内の適切な位置に配置された種々の部位を備えており、これらの部位は、微細な流路を介して適切に接続されている。
【0019】
上記部位としては、特に限定されるものではないが、液体試薬を保持するための液体試薬保持部、検体や液体試薬を計量するための計量部、計量された液体試薬と検体とを混合するための混合部、該混合液についての検査・分析(たとえば、混合液中の特定成分の検出)を行なうための検出部などを挙げることができる。必要に応じてさらに別の部位が設けられてもよい。ここで、本明細書中において「検体」とは、流体回路内に導入される検査・分析の対象となる試料自体(たとえば血液)または、マイクロチップ内において当該試料から分離された特定成分(たとえば血液から分離された血漿成分)を意味する。
【0020】
計量部は、所定の容量を有しており、検体や液体試薬を計量部に導入することにより、所定量の検体や液体試薬を計り取ることができる。なお、液体試薬とは、マイクロチップを用いて行なわれる検査・分析の対象となる検体を処理する、または該検体と混合あるいは反応される試薬であり、通常、マイクロチップ使用前にあらかじめ流体回路の液体試薬保持部に内蔵されている。検出部に導入された上記混合液等の被測定物は、特に限定されないが、たとえば、検出部に光を照射して透過する光の強度(透過率)を検出する方法等の光学測定などに供され、検体の検査・分析などが行なわれる。
【0021】
検体や液体試薬の計量、検体と液体試薬との混合、得られた混合液の検出部への導入などのような流体回路内における流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を順次印加することにより行なうことができる。マイクロチップへの遠心力の印加は、典型的には、マイクロチップを、これに遠心力を印加可能な装置(遠心装置)に載置して行なわれる。
【0022】
以下、実施の形態を示して、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明に係るマイクロチップの一例を示す外形図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は側面図、図1(c)は下面図である。図1に示されるマイクロチップ100は、透明基板である第1の基板101、黒色基板である第2の基板102および透明基板である第3の基板103をこの順で貼り合わせてなる(図1(b)参照)。これら基板の縦横の長さは、特に限定されないが、本実施形態においては、横(図1におけるA)およそ62mm×縦(図1におけるB)およそ30mmとしている。また、本実施形態において、第1の基板101、第2の基板102、第3の基板103の厚み(それぞれ図1のC、DおよびEは、それぞれ約1.6mm、約9mm、約1.6mmとしている。ただし、これらに限定されるものではない。
【0023】
第1の基板101には、その厚み方向に貫通する液体試薬導入口110(本実施形態において合計11個)および検体(たとえば血液)をマイクロチップ流体回路内に導入するための検体導入口120が形成されている。マイクロチップ100は、通常、液体試薬を液体試薬導入口110から注入した後、当該液体試薬導入口110を封止用ラベル等により封止して、実使用に供される。
【0024】
第2の基板102には、その両面に形成された溝および厚み方向に貫通する複数の貫通孔が形成されており、これに第1の基板101および第3の基板103を貼り合わせることによって、内部に2層の流体回路が形成されたマイクロチップ100が作製される。以下では、第1の基板101における第2の基板102側表面および第2の基板102における第1の基板101側表面に設けられた溝から構成される流体回路を「第1の流体回路」、第3の基板103における第2の基板102側表面および第2の基板102における第3の基板103側表面に設けられた溝から構成される流体回路を「第2の流体回路」と称する。これら2つの流体回路は、第2の基板102に形成された厚み方向に貫通する貫通孔によって連結している。以下、本実施形態のマイクロチップ100が有する2層の流体回路の構成について詳細に説明する。
【0025】
図2は、第2の基板102に形成された溝のパターンを示す斜視図であり、図2(a)は、第1の基板101側(以下、単に「上側」と称することがある。)表面に形成された溝のパターンを示す斜視図、図2(b)は、第3の基板103側(以下、単に「下側」と称することがある)表面に形成された溝のパターンを示す斜視図である。すなわち、図2(a)は、第1の流体回路を示しており、図2(b)は、第2の流体回路を示している。図2に示されるように、第2の基板102には、その表面に形成された溝および厚み方向に貫通する貫通孔によって、検体、液体試薬またはそれらの混合液の処理が行なわれる各部位とこれら部位を適切に接続する微細な流路とが形成されている。なお、本発明のマイクロチップが有する流体回路構造は、図2に示されるものに限定されるものではなく、いかなる流体回路構造であってもよい。マイクロチップ100は、血液から血漿成分を取り出し、該血漿成分について検査・分析を行なうマイクロチップとして好適に適用され得る流体回路構造を有している。
【0026】
図3および図4に、それぞれ第2の基板102の上面図および下面図を示す。図3は、第2の基板102の上側流体回路(第1の流体回路)を示しており、図4は、下側流体回路(第2の流体回路)を示している。なお、図4では、図3に示される上側流体回路との対応関係が明確に把握できるよう、左右反転させた状態で第2の基板の下側流体回路を示している。本実施形態のマイクロチップ100は、1つの検体について6項目の検査・分析を行なうことができる多項目チップであり、その流体回路は、6項目の検査・分析を行なうことができるよう、6つのセクション(図3におけるセクション1〜6)に分けられている(ただし、検体計量部設置領域(下側流体回路上部領域)においてこれらは互いに接続されている)。このように、本発明によれば、2層の流体回路を有するため、流体回路の集積化・高密度化が可能であり、比較的小さな面積を有しているにもかかわらず、多項目の検査・分析が可能なマイクロチップを提供できる。
【0027】
上記各セクションには、第1の流体回路(上側流体回路)内に、液体試薬が内蔵された液体試薬保持部が1つまたは2つ設けられている(図3における液体試薬保持部301a、301b、302a、302b、303a、303b、304a、304b、305a、305bおよび306aの合計11個)。図1における検体導入口120から導入された検体は、血球成分が分離除去された後、各セクションに分配されるとともに計量されると、別途計量された各セクション内の1種または2種の液体試薬と混合されて、それぞれ検出部311、312、313、314、315、316に導入される。各セクションの各検出部に導入された混合液は、たとえば、マイクロチップ表面と略垂直な方向から検出部に光を照射し、その透過光の透過率を測定する等の光学的測定に供され、該混合液中の特定成分の検出等がなされる。これら一連の処理は、マイクロチップに対して適切な方向の遠心力を印加することにより、液体試薬、検体またはこれらの混合液を、各セクションに設けられた2層の流体回路内の各部位へ適切な順序で移動させていくことにより行なわれる。マイクロチップへの遠心力の印加は、たとえばマイクロチップを載置するためのマイクロチップ搭載部を有する遠心装置に載置して行なうことができる。各液体試薬保持部は、第2の基板102を貫通する貫通穴を介して液体試薬計量部と接続されている。このように、2層の流体回路を設け、これらを貫通穴によって連結させることにより、比較的面積の小さなマイクロチップであっても、第1の流体回路−第2の流体回路相互間を移動させることにより流体回路を効率的に利用することができ、複雑な液体移動等も制御可能となる。
【0028】
また、上記各セクションには、その第2の流体回路(下側流体回路)内に、検体を計量する検体計量部(図4における検体計量部401、402、403、404、405、406の合計6個)および液体試薬を計量する液体試薬計量部(図4における液体試薬計量部411a、411b、412a、412b、413a、413b、414a、414b、415a、415bおよび416aの合計11個)が設けられている。各検体計量部は、流路によって直列的に接続されている(図4参照)。
【0029】
また、本実施形態のマイクロチップ100は、図3に示されるように、計量時において検体計量部から溢れ出た検体を収容するための溢出検体収容部330および計量時において液体試薬計量部から溢れ出た液体試薬を収容するための溢出試薬収容部331a、331b、332a、332b、333a、333b、334a、334b、335a、335bおよび336aを有する。溢出検体収容部330は、流路16a(図4参照)、厚み方向に貫通する貫通穴26aおよび流路16b(図3参照)を介して検体計量部406に接続されている。また、各溢出試薬収容部は、対応する各液体試薬計量部に、流路および貫通穴を介して接続されている。たとえば、セクション1において、液体試薬保持部301a内に収容される液体試薬を計量するための液体試薬計量部411aと、溢れ出た液体試薬を収容する溢出試薬収容部331aとは、流路11a(図4参照)、厚み方向に貫通する貫通穴21aおよび流路11b(図3参照)を介して接続されている。他の溢出試薬収容部についても同様である。
【0030】
次に、本実施形態のマイクロチップ100を用いた流体処理の一例を、図5〜11を参照して説明する。図5〜11は、流体処理の各工程における第2の基板102の上面(第1の基板側表面)の液体(検体、液体試薬およびその混合液)の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。各図における(a)が第2の基板上面(第1の流体回路)の液体の状態を示す図であり、(b)が第2の基板下面(第2の流体回路)の液体の状態を示す図である。なお、図5(b)〜11(b)においては、図4と同様に、図5(a)〜11(a)に示される上側流体回路との対応関係が明確に把握できるよう、左右反転させた状態で第2の基板の下側流体回路を示している。また、以下の説明においては、セクション1の流体回路における流体処理についてのみ説明するが、他のセクションについても同様の処理がなされており、このことは、図面を参照することにより明確に理解することができる。さらに、以下では、検体が血液(以下では、上で定義したように、血液から分離された血漿成分をも検体と称することがある。)である場合を例に説明するが、検体の種類はこれに限定されるものではない。
【0031】
(A)血漿分離、液体試薬計量工程
まず、本工程において、図3および4に示される状態にあるマイクロチップに対して、図5における下向き(以下、単に下向きという。図6〜11についても同様であり、また、他の方向についても同様である。)に遠心力を印加する。これにより、第1の基板101の検体導入口から導入された血液は、貫通穴20aを通って下側流体回路に移動し、血漿分離部420に導入される(図5(b)参照)。血漿分離部420に導入された血液600は、血漿分離部420にて遠心分離され、血漿成分(上層)と血球成分(下層)とに分離される。血漿分離部420から溢れた血液は、貫通穴20bを通って上側流体回路に移動し、廃液溜め430に収容される(図5(a)参照)。また、下向きの遠心力印加により、液体試薬保持部301a、301b内の液体試薬は、それぞれ貫通穴21b、21cを通って液体試薬計量部411a、411bに至り、計量される(図5(b)参照)。計量部から溢れた液体試薬は、それぞれ貫通穴21a、21dを通って、上面側流体回路内の溢出試薬収容部331a、331bに収容される(図5(a)参照)。
【0032】
(B)検体計量工程
次に、左向きの遠心力を印加する。これにより、血漿分離部420において分離された血漿成分は、検体計量部401に導入され(同時に検体計量部402、403、404および405,406にも導入される)、計量される(図6(b)参照)。計量部から溢れた血漿成分は、貫通穴26aを通って上側流体回路内に移動される(図6(a)参照)。
【0033】
(C)第1混合工程
次に、下向きの遠心力を印加する。これにより、計量された液体試薬(液体試薬保持部301aに保持されていた液体試薬)と、検体計量部401にて計量された血漿成分とが、液体試薬計量部411aにおいて混合される(第1混合工程第1ステップ、図7(b)参照)。この際、下側流体回路の混合部441aには、一部の液体試薬が残存している。次に、左向きの遠心力を印加することにより、混合液は、混合部441aに残存していた液体試薬とさらに混合される(第1混合工程第2ステップ、図8(b)参照)。これら第1ステップおよび第2ステップを必要に応じて複数回行ない、確実に混合を行なう。最終的に、図8に示される状態と同様の状態を得る。
【0034】
(D)第2混合工程
次に、上向きの遠心力を印加する。これにより、混合部441a内の混合液は、貫通穴21eを通って混合部441bに至り、計量されたもう一方の液体試薬(液体試薬保持部301b内に保持されていた液体試薬)もまた、貫通穴21eを通って混合部441bに至り、これらは混合される(第2混合工程第1ステップ、図9(a)参照)。次に、右向きの遠心力を印加することにより、図10(a)に示されるように、混合液は混合部441b内を移動し、混合が促進される(第2混合工程第2ステップ、図10(a)参照)。また、この右向きの遠心力により、溢出試薬収容部332bに液体試薬が収容されることとなる(図10(a)参照)。これら第1ステップおよび第2ステップを必要に応じて複数回行ない、確実に混合を行なう。最終的に、図10に示される状態と同様の状態を得る。
【0035】
(E)検出部導入工程
最後に、下向きの遠心力を印加する。これにより、混合液は検出部311に導入される(他の混合液についても同様、図11(a)および(b)参照)。また、溢出試薬収容部331a、331bおよび溢出検体収容部330には、液体試薬または検体(血漿成分)が収容された状態となる。他の溢出試薬収容部についても同様である。検出部に充填された混合液は、光学測定に供され、検体(血漿成分)の検査・分析が行なわれる。たとえば、マイクロチップ表面に対して略垂直な方向から光を照射し、その透過光を測定することにより、混合液中の特定成分の検出等がなされる。
【0036】
以上、本発明のマイクロチップを好ましい一例を挙げて説明したが、本発明のマイクロチップが有する流体回路構造は、上記実施形態に示される構造に限定されるものではない。本発明のマイクロチップは、必ずしも多項目チップである必要はなく、1種類の検査・分析のみを行なう単項目チップであってもよい。また、本発明においては、上記した各部位のすべてを有している必要はなく、いずれか1種以上の部位を有していなくてもよい。あるいは、上記されていない他の部位を有していてもよい。また、マイクロチップが備える各部位の数も特に限定されるものではない。
【0037】
ここで、本実施形態のマイクロチップ100は、第2の基板102が有する溝の側壁面および底面が、表面処理剤を含有する塗膜によって被覆されていることを特徴の1つとしている。図12は、本実施形態のマイクロチップを模式的に示す断面図である。ただし、図12における第2の基板102に形成されている溝のパターンは、模式的に示されたものに過ぎず、図2〜11に示される溝パターン形状と必ずしも一致するものではない。図12に示されるように、第2の基板102の両面における溝の側壁面および底面は、表面処理剤を含有する塗膜1210によって被覆されている。本発明において表面処理剤とは、流体回路内壁面に特定の性状を付与する薬剤を意味する。表面処理剤としては、特に限定されないが、たとえば、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の撥水処理剤、MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)ポリマー等のタンパク吸着抑制剤などを挙げることができる。撥水処理剤の塗膜を第2の基板両面における溝の側壁面および底面に形成することにより、流体回路内を移動する液体(検体、液体試薬、およびこれらの混合物など)の制御性を向上させることができ、また、流体回路内壁面への該液体の付着残留を防止することができる。表面処理剤による効果が流体回路全体にわたって発揮されるよう、表面処理剤の塗膜は、第2の基板102が有する全ての溝の側壁面および底面に形成されていることが好ましい。なお、マイクロチップ使用時において底面に位置する基板(本実施形態における第3の基板103)の表面のうち、流体回路内壁を構成する表面領域にも表面処理剤を含有する塗膜を形成してもよい。
【0038】
塗膜1210の厚さは、所望の効果が得られる限りにおいて特に制限されるものではない。たとえば、撥水処理剤の塗膜を形成する場合、上記した流体回路内を移動する液体(試料、液体試薬、およびこれらの混合物など)の制御性向上や流体回路内壁面への該液体の付着残留の防止等の効果が得られる限り、その塗膜の厚みは特に制限されない。表面処理剤を含有する塗膜1210の厚みは、たとえば、0.01〜10μmであり、好ましくは、0.1〜1μmである。
【0039】
第2の基板102における第1の基板101および第3の基板103との接触面1220a、1220b、1220c、1221aおよび1221bは、表面処理剤を含有する塗膜を有しないことが好ましい。これにより、第1の基板101および第3の基板103との接合性を向上させることができる。また、第2の基板102の貼り合わせ面を融解させて基板の貼合を行なう場合においては、基板の貼合が困難であるか、または基板間の接合性が低くなる傾向にある。
【0040】
第1の基板101、第2の基板102および第3の基板103を構成する材料は、特に限定されるものではないが、流体回路を構成する溝の形成のし易さ等を考慮すると、樹脂を用いることが好ましく、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、環状ポリオレフィン(COP)などから構成することができる。第1の基板101、第2の基板102および第3の基板103を構成する樹脂は、上記樹脂のほか、上記樹脂を構成するモノマー成分と該モノマー成分と共重合可能な他のモノマー成分との共重合体であってもよい。着色基板を用いる場合には、上記樹脂中に、たとえばカーボンブラックなどの顔料成分を添加すればよい。第1の基板101および第2の基板102および第3の基板103の材質はそれぞれ異なっていてもよいし、同じ材質であってもよい。
【0041】
本発明において、第1の基板および第3の基板は、必ずしも透明基板である必要はないが、少なくとも検出部を構成する領域については、入射した光の透過光が測定できるよう、透明であることが好ましく、後述するレーザ溶着により基板の貼合を行なう場合には、当該両基板の全体を透明とすることがより好ましい。第1の基板、第2の基板および第3の基板を貼り合わせる方法として、基板の貼り合わせ面に光(たとえばレーザ光)を照射して融解させることによって貼合する等の溶着法(レーザ溶着法)を用いる場合には、入射した光をより効率的に吸収できるよう、第2の基板を不透明基板(好ましくは黒色基板)とし、第1の基板および第3の基板を透明基板とすることが好ましい。これにより、第1の基板および第3の基板側から光を照射して、第2の基板の貼り合わせ面を融解させることによって、第2の基板と第3の基板との貼合を容易に行なうことができる。
【0042】
<マイクロチップの製造方法>
次に、本発明のマイクロチップの製造方法について詳細に説明する。本発明のマイクロチップの製造方法は、第1の基板と、基板の両面に設けられた溝を備える第2の基板と、第3の基板とをこの順で貼り合わせてなり、該第2の基板が有する溝の側壁面および底面が、表面処理剤を含有する塗膜によって被覆されているマイクロチップを作製するために好適に用いることができる。
【0043】
本発明のマイクロチップの製造方法は、以下の工程を含む。
(1)上記第2の基板の両面に表面処理剤を含有する塗布液を塗布する工程、
(2)塗布された上記塗布液を乾燥させて塗膜を得る工程、
(3)上記塗膜のうち、基板の貼合時に第1の基板表面および第3の基板表面と接触する面上の塗膜を、液体を用いて濡らす工程、
(4)上記濡らされた塗膜を除去する工程、および、
(5)第1の基板と第2の基板と第3の基板とを貼り合わせる工程。
以下、各工程について、図13を参照しながら詳細に説明する。図13は、本発明のマイクロチップの製造方法の一例を示す概略工程図であり、製造途中のいくつかの段階におけるマイクロチップを構成する基板の概略断面図を示すものである。
【0044】
(1)表面処理剤塗布工程
本工程において、まず、第2の基板1302を用意し(図13(a))、第2の基板1302の両面に表面処理剤を含有する塗布液を塗布する。図13(a)に示される第2の基板1302は、たとえば黒色基板であり、その両面に、流体回路を構成する溝1304、1305および1306を有している。なお、溝の数および形状(幅、深さ等)は、特に制限されるものではなく、所望する流体回路の構造に応じて適宜のパターンとすることができる。このような溝が形成された基板は、かかる溝パターンの転写構造を有する金型を用いて作製することができる。第2の基板1302の材質としては、上記したものを挙げることができる。
【0045】
表面処理剤を含有する塗布液は、表面処理剤の他、該表面処理剤を溶解、分散または希釈するための溶剤を含む。必要に応じてその他の添加剤が添加されていてもよい。本発明において用いられる塗布液は、表面処理剤が溶剤に溶解されて溶液状となっている場合、固体状の表面処理剤が溶剤に分散されているスラリー状である場合等を含む。表面処理剤の具体例としては、上記したものを挙げることができる。
【0046】
塗布液の塗布量は、上記した流体回路内を移動する液体(試料、液体試薬、およびこれらの混合物など)の制御性向上や流体回路内壁面への該液体の付着残留の防止等の表面処理剤によって付与される効果が得られる限り、特に制限されるものではなく、当該分野において通常採用される程度の塗布量が採用される。塗布液の塗布量は、たとえば、乾燥後の塗膜の厚みが0.01〜10μm程度、好ましくは0.1〜1μm程度となるように調整される。
【0047】
塗布液の塗布方法としては、特に限定されないが、たとえば、スプレー塗布、ディップ塗布等を挙げることができる。スプレー塗布においては、第2の基板の片面に塗布液をスプレー塗布した後、基板を裏返し、再度スプレー塗布を行なうことにより、両面に塗布液層が形成された第2の基板を得ることができる。なお、当該塗布工程の前に、塗布液が塗布される表面の洗浄を行なう工程を設けてもよい。洗浄液としては、たとえばHFE(ハイドロフルオロエーテル)などのような代替フロン系洗浄剤を用いることができる。
【0048】
(2)乾燥工程
次に、塗布された塗布液を乾燥させて表面処理剤を含有する塗膜1310を得る(図13(b))。乾燥は、たとえば送風機等を用いて、20〜80℃の条件下で行なうことができる。乾燥を行なわずに、後述する表面処理剤除去工程を実施すると、第1の基板および第3の基板との接触面上の表面処理剤だけでなく、溝の側壁面および/または底面に形成された表面処理剤まで除去されてしまったり、逆に溝の側壁面または底面に形成された表面処理剤が、第1の基板および第3の基板との接触面上に付着したり場合があるためである。
【0049】
(3)濡らし工程
次に、上記塗膜のうち、第1の基板および第3の基板との接触面(基板の貼合時に第1および第3の基板表面と接触する面)1320a、1320b、1320c、1321aおよび1321b上の塗膜を、液体を用いて濡らす(図13(c))。該液体としては、特に制限されないが、表面処理剤を含有する塗布液自体または該塗布液中に含有される溶剤を好適に用いることができる。当該塗膜を溶解し得る他の溶剤を用いることも可能である。このような液体を用いて、第1の基板および第3の基板との接触面上の塗膜を濡らすことにより、該塗膜は、典型的には、該液体によって溶解される。塗膜を液体を用いて濡らす方法としては、たとえば、スタンプ方式、ローラー方式、スクリーン印刷方式等を挙げることができる。
【0050】
このような濡らし工程を設けることにより、次のような問題を回避することができ、容易に、表面処理剤を含有する塗膜を有しない、平坦な貼り合わせ接触面を得ることができる。
(i)塗布した表面処理剤を含有する塗布液の乾燥を行なうことなく、拭取り紙等を用いて塗布液を除去する場合に生じ得る、第1および第3の基板表面との接触面上の表面処理剤だけでなく、溝側壁面および/または底面上の表面処理剤まで除去されたり、溝側壁面または底面上の表面処理剤が、第1および第3の基板表面との接触面上に付着したりするという問題、および、
(ii)塗布液の乾燥を行なった後、研磨紙等を用いて第1および第3の基板表面との接触面を研磨することにより塗膜を除去する場合に生じ得る、塗膜のパーティクルなどが発生するという問題。
【0051】
(4)表面処理剤除去工程
ついで、第1および第3の基板表面との接触面上の濡らされた塗膜1310a(図13(c)参照)を除去する(図13(d))。これにより、第2の基板と第1の基板および第3の基板との接合性が向上する。濡らされた塗膜1310aの除去は、たとえば、拭取り紙(ワイパー)上に第2の基板1302を押し付けて移動させる「拭取り」などの方法により行なうことができる。
【0052】
(5)基板貼合工程
最後に、第2の基板1302の上面および下面に、それぞれ第1の基板1301および第3の基板1303を貼り合わせる(図13(e))。第1の基板1301および第3の基板1303は、必ずしも平板状である必要はなく、これらの基板表面にも流体回路を構成し得る溝が形成されていてもよい。第1の基板1301および第3の基板1303を構成する材質としては、上記したものを挙げることができる。
【0053】
基板の貼り合わせ方法としては、特に限定されるものではないが、たとえば第1の基板、第2の基板、第3の基板の少なくともいずれか1つの基板の貼り合わせ面を融解させて溶着させる溶着法;接着剤を用いて接着させる方法などを挙げることができる。貼り合わせ時における流路変形の抑制、接着剤の流体回路へのはみ出しや接着剤と試薬との反応による悪影響を考慮すると、溶着法により貼り合わせることが好ましい。溶着法としては、レーザを用いて基板の貼り合わせ面を融解させるレーザ溶着のほか、熱溶着、超音波溶着などが挙げられる。なかでも、貼り合わせ面近傍のみを融解させることができることから、レーザ溶着法を用いることが好ましい。
【0054】
レーザ溶着法においては、典型的にはまず、透明基板である第1の基板1301と、第2の基板1302とを、位置合わせを行ないつつ積層させた後、第1の基板1301側からレーザ光を基板貼り合わせ面に向けて照射し、発生した熱により両基板界面におけるいずれかもしくは両方の基板の貼り合わせ面を融解させる。この際、第2の基板1302を着色基板、好ましくは黒色基板とすれば、第2の基板1320の光吸収率が第1の基板1301に比べて高くなるため、主に、基板界面における第2の基板1302の貼り合わせ面が融解されることになる。ついで、当該第1の基板1301と第2の基板1302との積層体に対して、ガラス基板等を介して積層体の上下面から圧力を印加して圧着することにより、第1の基板1301と第2の基板1302との接合体を得る。次に、当該接合体の第2の基板1302上に第3の基板1303を、位置合わせを行ないつつ積層させた後、第3の基板1303側からレーザ光を照射することにより、同様にしてレーザ溶着を行なう。ついで、この3枚の基板からなる積層体に対して、ガラス基板等を介して積層体の上下面から圧力を印加して圧着することにより、マイクロチップを得る。
【0055】
上記本発明の方法によれば、基板間の接合性が高く、第2の基板が有する溝に確実に表面処理が施されたマイクロチップを、塗膜に由来する塵や埃などを発生させることなく製造することが可能となる。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るマイクロチップの一例を示す外形図である。
【図2】本発明に係るマイクロチップの第2の基板に形成された溝のパターンの一例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るマイクロチップの第2の基板の一例を示す上面図である。
【図4】本発明に係るマイクロチップの第2の基板の一例を示す下面図である。
【図5】血漿分離、液体試薬計量工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図6】検体計量工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図7】第1混合工程第1ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図8】第1混合工程第2ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図9】第2混合工程第1ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図10】第2混合工程第2ステップにおける第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図11】検出部導入工程における第2の基板の上面(第1の基板側表面)の液体の状態および下面(第3の基板側表面)の液体の状態を示す図である。
【図12】本発明に係るマイクロチップの一例を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明のマイクロチップの製造方法の一例を示す概略工程図である。
【符号の説明】
【0058】
100 マイクロチップ、101,1301 第1の基板、102,1302 第2の基板、103,1303 第3の基板、110 液体試薬導入口、120 検体導入口、130 凹部、301a,301b,302a,302b,303a,303b,304a,304b,305a,305b,306a 液体試薬保持部、311,312,313,314,315,316 検出部、330 溢出検体収容部、331a,331b,332a,332b,333a,333b,334a,334b,335a,335b,336a 溢出試薬収容部、401,402,403,404,405,406 検体計量部、411a,411b,412a,412b,413a,413b,414a,414b,415a,415b,416a 液体試薬計量部、420 血漿分離部、430 廃液溜め、441a,441b 混合部、11a,11b,16a,16b 流路、20a,20b,21a,21b,21c,21d,21e,26a 貫通穴、510 溢出液収容部、600 血液、1210,1310 表面処理剤を含有する塗膜、1220a,1220b,1220c,1221a,1221b,1320a,1320b,1320c,1321a,1321b 第1の基板および第3の基板との接触面、1304,1305,1306 溝、1310a 濡らされた塗膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、基板の両面に設けられた溝を備える第2の基板と、第3の基板とをこの順で貼り合わせてなるマイクロチップであって、
前記第2の基板が有する溝の側壁面および底面は、表面処理剤を含有する塗膜によって被覆されているマイクロチップ。
【請求項2】
前記第2の基板が有する全ての溝の側壁面および底面が、表面処理剤を含有する塗膜によって被覆されている請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記第2の基板は、厚み方向に貫通する貫通穴を有しており、前記貫通穴の内壁面は、表面処理剤を含有する塗膜によって被覆されている請求項1または2に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記第2の基板における前記第1の基板との接触面および前記第3の基板との接触面は、表面処理剤を含有する塗膜を有しない請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロチップ。
【請求項5】
前記第2の基板は、黒色基板である請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロチップ。
【請求項6】
前記第1の基板および前記第3の基板は、透明基板である請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロチップ。
【請求項7】
前記表面処理剤は、撥水処理剤である請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロチップ。
【請求項8】
前記塗膜の厚みは、0.01〜10μmである請求項1〜7のいずれかに記載のマイクロチップ。
【請求項9】
第1の基板と、基板の両面に設けられた溝を備える第2の基板と、第3の基板とをこの順で貼り合わせてなり、前記第2の基板が有する溝の側壁面および底面が、表面処理剤を含有する塗膜によって被覆されているマイクロチップを製造するための方法であって、
前記第2の基板の両面に表面処理剤を含有する塗布液を塗布する工程と、
塗布された前記塗布液を乾燥させて塗膜を得る工程と、
前記塗膜のうち、基板の貼合時に前記第1の基板表面および前記第3の基板と接触する面上の塗膜を、液体を用いて濡らす工程と、
前記濡らされた塗膜を除去する工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板と前記第3の基板とを貼り合わせる工程と、
を含むマイクロチップの製造方法。
【請求項10】
前記液体は、前記表面処理剤を含有する塗布液または前記表面処理剤を溶解させることができる溶剤である請求項9に記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項11】
前記表面処理剤は、撥水処理剤である請求項9または10に記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項12】
前記塗布液を乾燥させて塗膜を得る工程において得られる前記塗膜の厚みは、0.01〜10μmである請求項9〜11のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項13】
前記第1の基板と前記第2の基板と前記第3の基板とを貼り合わせる工程は、少なくともいずれか1つの基板の貼り合わせ面を融解させる工程を含む請求項9〜12のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項14】
前記第2の基板は黒色基板であり、少なくとも前記第2の基板の貼り合わせ面が融解される請求項13に記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項15】
基板の貼り合わせ面の融解は、レーザを用いて行なわれる請求項13または14に記載のマイクロチップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−128342(P2009−128342A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307194(P2007−307194)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】