説明

マイクロポンプ

本発明は、マイクロシステム技術を用いて構成された容積型ポンプに関し、好ましくは、真空ポンプとして用いられる容積型ポンプに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、微小電気機械システム(MEMS)の分野に関する。本発明は、マイクロシステム技術を用いて構成された容積型ポンプ(移送式ポンプ)に関し、好ましくは、真空ポンプとして用いられる容積型ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
容積型ポンプは、従来の真空技術において、広く普及しており、種々の方法で用いられている。ドイツ工業規格ディー・アイ・エヌ28400、パート2(DIN 28400, Part 2)(1989年)において、容積型ポンプは、流体(液体)のあるなしに拘わらず互いに隔離されたピストン、ロータ若しくはディスクの補助をもって搬送されるべき流体を、任意に弁(バルブ)の手段によって、吸引し、圧縮し、そして排出する、真空ポンプとして、定義されている。
【0003】
1つの単純なタイプの容積型ポンプは、所謂、往復ポンプと呼ばれるものである。この往復ポンプにおいて、ロッドに接続されたピストン又はダイヤフラムは、動作の半周期において、入口弁を通して流体を吸引し、そして、動作の他の半周期において、出口弁を通して流体を再び排出する。従来の容積型ポンプの概観は、たとえば、カール・ユステン氏(Karl Jousten)(第9版)によって編集され、フィーヴェーク+トォイプナー・フェアラーク(Vieweg+Teubner Verlag)(2006年)によって出版された、「ヴツ・ハンドブック・オブ・バキューム・テクノロジー:セオリー・アンド・プラクティス」(Wutz Handbook of vacuum technology: theory and practice)において、見出されることができる。
【0004】
従来のポンプシステムは、直ちに、マイクロシステム技術において用いることができない。新たなシステムを構築するべく、コンピュータサイエンス、バイオテクノロジー及びナノテクノロジーの分野からの進展(developments)及び体系(構造、組織、structures)を結びつけることにより実現される、該コンピュータサイエンス、バイオテクノロジー及びナノテクノロジーにおける発展と同様に、マイクロシステム技術は、マイクロエレクトロニクス、マイクロメカニカルエンジニアリング、マイクロ流体工学、及びマイクロ光学の各方法を結びつける。その機能を決定する体系(structures)の範囲(寸法、次元、dimensions)は、ナノテクノロジーとの境界とみなされ得る、マイクロメーターの範囲内にある。
【0005】
マイクロシステム技術におけるポンプは、主に、圧縮機構用のダイヤフラムを用いるが、しかし、時に、また、非常に高い回転速度を有するタービンホイールや、ジェット若しくは拡散ポンプの原理による気体流を用いる。これらのポンプ機構の多くの共通の特徴は、それらのものが、程度の差こそあれ、ポンプ容積(容量)の小部分を圧縮し、従って、その圧縮比が、特に気体に対して、比較的小さく、或いは、それらのものの寿命が、大変短く、そして、それらのものの粒子に対する感受性(感度、sensitivity)が、高い、という点にある。流体用ポンプの場合、一般に、該ポンプが気泡を含む時に問題が生じる。これらのポンプは、従って、特に、低圧を実現するための真空ポンプとしては、殆ど適していない。
【0006】
独国特許出願公開第19719862A1号明細書は、たとえば、マイクロダイヤフラムポンプを記載している。これは、ドライブユニットの手段によって、第1位置と第2位置に移動せしめられることができるポンプダイヤフラムと、ポンプダイヤフラムに接続されたポンプボデーであって、それらの間にポンプチャンバを形成するためのポンプボデーと、受動的入口弁を有する入口開口と、受動的出口弁を有する出口開口とを有する。ポンプダイヤフラムは、第1位置から第2位置への移動時に、1ストローク容積分、ポンプチャンバの容積を増加させ、第2位置から第1位置への移動時に、この1ストローク容積分、ポンプチャンバの容積を減少させる。このポンプの1つの欠点は、とりわけ、ポンプの大きな死容積である。これは、ポンプの各ストローク時に排出される容積が、ポンプチャンバの容積の小部分(fraction)に過ぎないからである。
【0007】
独国特許出願公開第19922612A1号明細書は、基体(支持層、基板、substrate)内において、駆動媒体が満たされた環状の空洞を導電性のダイヤフラムで覆うことによって形成された蠕動アクチュエータの原理に基づく、マイクロメカニカルポンプを記載している。1つの欠点は、とりわけ、導電性のダイヤフラムの使用である。このダイヤフラムは、機械的ストレスの影響を受け易く、ポンプ使用時における高ストレスにより、限られた寿命を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第19719862A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19922612A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、上記公知技術に基づき、マイクロシステムで用いられるポンプであって、小さい死容積を有すると共に、長寿命であるポンプを提供することが目的である。所望されるポンプは、マイクロリットルのレンジ(範囲)において定義された液量を送出することができると共に、連続的に送出することができなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、容積型ポンプ(移送式ポンプ)の原理に従って動作するマイクロポンプであって、磁力又は電磁(気)力によって駆動される流体(液体)がピストンとして用いられるマイクロポンプによって達成される。
【0011】
本発明は、従って、少なくとも、
−入口と、
−出口と、
−入口と出口との間のチャネルと、
−チャネル内に位置するピストンと、を備えるマイクロポンプであって、
上記ピストンは、外部場(external field)の手段によって移動せしめられることができる流体であることを特徴とする、マイクロポンプに関する。
【0012】
流体は、本発明に係るマイクロポンプの入口を通してチャネル内に吸引され、チャネル内で圧縮され、そして、出口を通して、再度、排出(放出)される。
【0013】
本発明に係るマイクロポンプは、流体排出ポンプ(流体変位ポンプ、liquid displacement pump)の原理であって顕微鏡スケールで用いられる原理に基づくものである。これらの大型システムとの対比において、しかしながら、本発明に係るマイクロポンプのポンプ動作は、収容スペース又はポンプ容積としての流体スペースのほんの一部を使用する流体の機械的駆動により実行されるのではなく、これに代わり、磁力及び/又は電磁(気)力によって外部場で駆動される流体が、ピストンとして用いられる。
【0014】
この駆動を実行するために、その媒体(媒質)は、好ましくは、達成可能な基礎圧力(ベース圧力、base pressure)を決定する低い蒸気圧を有する、導電性の流体又は磁気透過性の流体からなる。たとえば、水銀やガリウム等、問題となっている作動(運転、使用)温度において液状(流動体)である金属、は、導電性の流体として、適切である。これにも拘わらず、また、十分に低い抵抗率(抵抗性、resistivity)と蒸気圧とを有する、導電性の有機流体や他の無機流体であって、好ましくは、高い化学的非活性を有する、導電性の有機流体や他の無機流体の使用も可能である。とりわけ、強磁性のナノ粒子を含む市販の流体は、磁気流体として用いることが可能である。
【0015】
上記流体は、好ましくは、チャネル壁に対して、高い表面張力と、高い海面張力とを有する。これにより、その湿潤が回避される。
【0016】
導電性媒体の駆動は、好ましくは、磁場(磁界)内で移動する電荷担体(電荷キャリヤ)に作用する、ローレンツ力を用いて実行される。この目的のために、永久磁石又は電磁石であって、任意に、磁気抵抗をスクリーニングして減少させるためのヨークを備えた永久磁石又は電磁石が、チャネルの片側若しくは両側に配置される。レアアース磁石(RE磁石)は、永久磁石として、特に、適切である。それらは、好ましくは、高い磁場力が可能性として最小の大きさ(容積、体積、dimensions)との組み合わせにおいて要求されるどのようなところにおいても、用いられる。RE磁石は、比較的高い保持力を有しており、従って、高い反対場(拮抗フィールド、opposing fields)をもってさえ、問題なく使用できる。
【0017】
電流がピストンを通過するとき、力(ローレンツ力)が、磁場内において移動する電荷担体(電子)に作用する。その電流を担うピストンは、磁力線の方向に垂直な向きであって、荷電粒子(電子)の移動方向に垂直な向き、に移動せしめられる。
【0018】
上記導電性のピストンの接触(contacting)は、チャネル壁内に、或いは、チャネル壁上に、適用される、接触層(コンタクト層、contact layers)の手段により実行される。露出せしめられる薄いフィルムも、また、接触層として用いることができる。
【0019】
磁気透過性の流体が用いられるとき、上記駆動は、たとえば、チャネルの上で及び/又は下で回転する1つ又は2つのディスク上に設けられたRE永久磁石により誘導される、円運動(循環)する磁場(磁界)を用いて実行されることができる。
【0020】
上記チャネルは、好ましくは、端部を有さない、連続的な線状であり、特に、好ましくは、環状である。その断面は、コーナーを有さず(たとえば、楕円形若しくは円形)、角度が付けられるか、若しくは、連続的であることができる。好ましくは、チャネルの断面は、楕円形若しくは円形である。
【0021】
端部を有さず、連続的な線状であるチャネルにおいて、ピストン容積を差し引いた全チャネルが圧縮容積として留まるように、入口は、好ましくは、出口のすぐ後に配置される。チャネルは、断面において、一定であることができる。それは、また、(チャネルの断面が円形である場合、たとえば、偏心によって)出口の方向に、狭く(細く)なることができ、これにより、チャネル内における、より急速な圧力増加が達成される。
【0022】
上記流体ピストンは、好ましくは、閉じた(マイクロ)チャネル(たとえば、環状、長円形状、レーストラック形状)の回路(サーキット)内で移動せしめられる。それは、チャネル壁からチャンバ容積を完全に密閉(シール)する。また、単一のピストン、単一の入口、及び単一の出口に代わり、複数のピストン、複数の入口、及び複数の出口を用いて、そのようなシステムを構成することができる。また、それら自体で閉鎖されているチャネル構造に代わり、たとえば、1つ以上の入口と出口とを有し、振子動作(pendulum operation)を行う線形チャネル構造を用いることが可能である。
【0023】
高圧縮比を達成するために、圧縮容積は、出口において、事実上(実質上)、ゼロになるまで圧縮される。これは、出口で密閉(シール)するために、混合(mixing)を回避するべく、同様に、好ましくは、ピストンと同一の媒体(媒質)からなる流体を用いて達成される。この流体シールは、2つの流体が完全に一緒になるまで、すなわち、圧縮された媒体が、ポンプチャネル内に残留容積を残すことなく、出口を通して完全に押し出されるまで、入ってくる(流入してくる)流体ピストンにより変位せしめられることはない。駆動の形態、及び出口領域におけるチャネルの形状により、夫々、駆動流体の一部(部分)がピストンの端部において裂け(破れ)て、出口の前にあるシールとして後に留まることは可能である。
【0024】
ピストンとしての導電性流体の場合、入ってくる(流入する)ピストンとの接触が生じるときに駆動力のみが作用するように、すなわち、圧縮容積が、出口を通して放出され、ピストンとシールとが「融合」することにより、ゼロになるように、接触層(コンタクト層、contact layers)は、出口の領域において、部分的に(局部的に)邪魔され(割り込まれ、interrupted)得る。
【0025】
磁気透過性の流体の場合、出口における駆動力の減少は、磁気ショートサーキット(磁気短絡、magnetic short circuit)によって、たとえば、この位置におけるニッケル(Ni)等の強磁性材料によって、達成されることができる。
【0026】
出口後方のチャネルのくびれ(狭窄)は、シール媒体の強化効果を有すると共に、それが圧縮力に耐えるように、シール媒体の十分に高い透過力を保証する。この透過力は、また、チャネルの材料よりも高い表面張力を有する部分的な(局部的な)材料との接触によって、達成されることができる。この接触は、次いで、再度、透過(penetration)の後に、たとえば、チャネル内のこのくびれによって、また、適切に形成されたチャネル構造によって、邪魔され、これにより、その媒体の一部が、シールとして、後に(後方に)留まる。
【0027】
上記シール流体又は駆動流体が、入口弁、及び、特に出口弁、に入り込むことを防止するために、低い界面(表面)エネルギーを有する(殆ど湿潤しないか、又は全く湿潤しない)、マイクロ構造(微細構造)又はナノ多孔性構造(ナノポーラス構造)が、好ましくは、そこに、一体化される。これにより、流体媒体(シーリング、ピストン)は、反発する毛(細)管力と高い界面張力とのため、その中に入り込むことができない。これらの構造は、横方向及び縦方向(垂直方向)に案内されることができる。横方向に配置される場合には、入口弁を湾曲部(カーブ)の内側に配置すると共に、出口構造をその外側に配置することが、特に有利である。これは、この配置により、遠心力が、吸引(吸い込み)プロセス及び排出(放出)プロセスに、付加的に、寄与するからである。
【0028】
本発明に係るポンプの構造は、多くのマイクロシステムと同様に、好ましくは、シリコンガラス技術をもって製造される。また、本発明に係るポンプの構造を、シリコン−シリコン技術、若しくは、ガラス−ガラス技術、をもって形成することも、考えられ得る。
【0029】
マイクロシステムにおける構造の製造(生産)は、マイクロシステム技術の分野における当業者に知られている。微細加工(マイクロ加工、マイクロファブリケーション)の技術は、たとえば、マーク・マドウ氏(Marc Madou)(シー・アール・シー・プレス、ボカ・ラトン・エフ・エル・エー 1997年(CRC Press Boca Raton FLA 1997))による「ファンダメンタルズ・オブ・マイクロファブリケーション」という本や、ダブル・メンツ・ジェイ・モア氏(W. Menz. J. Mohr)及びオー・ポール氏(O. Paul)(ウイレー、ヴイ・シー・エイッチ・ヴァインハイム 2005年(Wiley-VCH, Weinheim 2005))による「マイクロシステム・テクノロジー・フォー・エンジニアズ」という本に記載され、説明されている。シリコン−シリコン技術に関するより詳細な記載は、たとえば、キュー・ワイ・トング ユー・ゴセレ:セミコンダクター・ウェハー・ボンディング:サイエンス・アンド・テクノロジー(Q.-Y. Tong, U. Gosele: Semiconductor Wafer Bonding: Science and Technology)(ザ・エレクトロケミカル・ソサイアティ・シリーズ、ウイレー、ニューヨーク 1999年(The Electrochemical Society Series, Wiley, New York 1999))に見い出すことができる。ガラス−ガラス技術に関しては、次の出版物を例として参照することができる。ジェイ・ヴィー氏等、ロー・テンプラチュア・グラス・ツー・グラス・ウェハー・ボンディング、アイ・イー・イー・イー・トランザクション・オン・アドバンスト・パッケージング、第26巻、第3番、2003年、289〜294頁(J. Wie et al., Low Temperature Glass-to-Glass, Wafer Bonding, IEEE Transactions on advanced packaging, Vol. 26, No. 3, 2003, pages 289-294)、及び、ダック・ヨング・リー氏等、グラス・ツー・グラス・アノディック・ボンディング・フォー・ハイ・バキューム・パッケージング・オブ・マイクロエレクトロニクス・アンド・イッツ・ステイビリティ、エム・イー・エム・エス、2000年、ザ・サーティーンス・アニュアル・インターナショナル・コンファレンス・オン・マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ、23〜27、2000年1月、253〜258頁(Duck-Jung Lee et al., Glass-to-Glass Anodic Bonding for High Vacuum Packaging of Microelectronics and its Stability, MEMS 2000, The Thirteenth Annual International Conference on Micro Electro Mechanical Systems, 23-27 January 2000, pages 253-258)。
【0030】
マイクロシステム技術は、基本的に、高アスペクト比(たとえば、大きな深さ(〜100μm)について、狭い溝(〜μm))を有する、シリコン又はガラスの基体(支持層)の構造化に基づくものであって、それらの熱膨張係数の観点で適合される、ナトリウム含有ガラスの基体(支持層)(たとえば、パイレックス(Pyrex)[登録商標])と結合される、湿式化学エッチングプロセス、好ましくは、湿式化学プラズマエッチングプロセスを用いる、マイクロメーターの範囲(レンジ)における正確さをもってなされる構造化に基づくものである。それらは、エッチングされた簡単な構造を有しており、そして、好ましくは、所謂、陽極接合による直接的な気密シール、若しくは、選択的に、ハンダ合金(AuSi)として機能する、薄いAu層、をもって互いに接続される。
【0031】
高アスペクト比を有する金属構造は、比較可能な精度(UV-LIGA)をもって、厚いフォトレジスト(100μm以上)における電解成長(electrolytic growth)により作られることができる。高真空蒸発やスパッタリング等の薄膜技術、フォトリソグラフィ(写真平版術)との組み合わせにおいて、好ましくはプラズマにおけるPVDプロセス又は化学的蒸着(CVDプロセス)、及びエッチング技術、を用いることにより、金属化面、疎水性面又は親水性面等の機能層と、弁シールやダイヤフラム等の機能要素と、加熱要素と、温度センサと、圧力センサと、流量センサとが、完全なプロセス適合技術(プロセス互換技術)において、これらの基体(支持層)上で、一体化(統合)されることができる。
【0032】
上記ポンプは、好ましくは、シリコン−ガラスの堆積(積み重ね、スタック)で、若しくは、シリコン−ガラス−シリコン−支持層の堆積で、構成される。この場合、チャネル構造と弁構造とは、好ましくは、そのより単純且つより正確な構造化特性のため、化学的方法及び物理的方法により、シリコンで作られるべきである。その電気的な相互接続は、たとえば、薄膜方法による被覆(沈殿、堆積、deposited)でなされることができる。特に、比較的大きいバッチ処理作業(運転)に対して、射出成形やホットスタンピング(熱間鍛造)等のポリマー成形技術の方法によるパターニングは、有利である。表面の規定エネルギーに関する、任意に付加的であり局部的に相違する調整のために、たとえば、プラズマ(プラズマ処理、PECVD、スパッタリング)での沈殿(堆積、析出、deposition)による、若しくは、蒸着(自己組織化単分子層(SAM)、高真空蒸発)による、被覆(コーティング)が、フォトリソグラフィとエッチング又はリフトオフ技術との組み合わせにおいて、用いられ得る。
【0033】
本発明に係るマイクロポンプは、好ましくは、マイクロシステムにおける真空ポンプとして適切である。従って、本発明は、また、たとえば、センサーズ・アンド・アクチュエーターズ・エイ(Sensors and Actuators A)(フィジカル:138(1)(2007年)、第22〜27頁)で出版された「コンプレックス・エム・イー・エム・エス:ア・フリー・インテグレイテッド・ティー・オー・エフ・マイクロ・マス・スペクトロメータ」(Complex MEMS: A fully integrated TOF micro mass spectrometer)という論文に記載されているような、マイクロ質量分析計における、マイクロシステムにおける真空ポンプとして、本発明に係るマイクロポンプの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るマイクロポンプ1の断面を、例として、平面図において概略的に示す図である。
【図2(a)】図1の本発明に係るマイクロポンプの作動時における概略図である。
【図2(b)】図1の本発明に係るマイクロポンプの作動時における概略図である。
【図2(c)】図1の本発明に係るマイクロポンプの作動時における概略図である。
【図2(d)】図1の本発明に係るマイクロポンプの作動時における概略図である。
【図2(e)】図1の本発明に係るマイクロポンプの作動時における概略図である。
【図2(f)】図1の本発明に係るマイクロポンプの作動時における概略図である。
【図3】本発明に係るマイクロポンプを側面からの断面として概略的に示す図である。
【図4(a)】本発明に係るマイクロポンプ1の振子動作(振子作用、pendulum operation)を示す図である。
【図4(b)】本発明に係るマイクロポンプ1の振子動作(振子作用、pendulum operation)を示す図である。
【図4(c)】本発明に係るマイクロポンプ1の振子動作(振子作用、pendulum operation)を示す図である。
【図4(d)】本発明に係るマイクロポンプ1の振子動作(振子作用、pendulum operation)を示す図である。
【図4(e)】本発明に係るマイクロポンプ1の振子動作(振子作用、pendulum operation)を示す図である。
【図4(f)】本発明に係るマイクロポンプ1の振子動作(振子作用、pendulum operation)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、以下に、図面を用いて、非制限的に、より詳しく説明される。
【0036】
図1は、本発明に係るマイクロポンプ1の断面を、例として、平面図において概略的に示す図である。それは、チャネル40の手段によって互いに接続された入口30と出口20とを有している。チャネル40は、リングとして、端部を有さず線形に連続的に構成されている。それは、入口30と出口20との間に、くびれ部(狭窄部)45を有している。チャネル内には、導電性又は磁気透過性の流体(液体)50,55が存在しており、当該流体50,55は、ピストン55及びシール50として、用いられる。
【0037】
ポンプの作動時、くびれ部45は、導電性又は磁気透過性の流体をピストン55とシール50とに分離することを容易化する。
【0038】
図2(a)〜(f)は、本発明に係るマイクロポンプの作動時における概略図である。図面の簡略化のため、くびれ部45は、図2に示されていない。開始状態(a)において、チャネル40は、ピストン55とシール50とにより、内部空間41と内部空間43とを有する、2つのセクションに分離(分割、隔離)されている。内部空間41は、閉じられて(閉鎖されて)いる。内部空間41内に含まれている流体は、ピストン55の反時計周りの方向(矢印で図示)の移動により、圧縮される。シール50は、内部空間41を出口からシールする。上記ピストン55の反時計周りの方向の移動により、内部空間43の拡張が同時に生じる。この結果、流体が、入口30を通して、内部空間43内に吸引される(吸い込まれる)。図2(b)において、内部空間41及び43は、略同一のサイズ(大きさ)になっている。図2(c)において、内部空間41は、次第に減少せしめられ、内部空間41内に収容されている流体は、これに応じて、圧縮されている。図2(d)において、シール50は、もはや、出口に対する流路(通路)を閉鎖してはいない。上記圧縮された流体は、内部空間41から、出口20を通して、排出(放出)される。図2(e)において、図2(a)〜(e)に示されるピストン55とシール50とを形成していた流体部分は、結合(一体化)されて、1つの流体部分になる。内部空間43は、その最大の大きさ(サイズ)に達しており、上記入口を通しての流体で満たされている。下記ポンプサイクル(図2(f)参照)において、その流体プラグは分離される。すなわち、前回、シールの機能を実現していた前部領域50は、ピストンになり、そして、後部領域55は、シールになる。内部空間43は、圧縮される。新しい内部空間44が形成され、該内部空間44内に、上記入口30を通して流体が吸引される。
【0039】
図3は、本発明に係るマイクロポンプを側面からの断面として概略的に示す図である。チャネル40は、円形断面のプロフィール(輪郭)を有している。それは、基体(支持層)60とカバー70とに形成されている。出口20と、(ここに不図示の)入口とは、カバーに形成されている。多孔性メッシュ90は、チャネル内に収容され且つシールとして又ピストンとして作用(act)する電気的流体が出口を通して押し出されることを防止する、ことが意図されている。磁石80は、チャネルの上下に配置されている。
【0040】
図4は、本発明に係るマイクロポンプ1の振子動作(振子作用、pendulum operation)を示す図である。この実施形態は、2つのくびれ部(狭窄部)の手段により、互いに接続された3つのチャンバを備えている。外側のチャンバは、夫々、入口30a及び30bを有している。中央のチャンバは、狭いチャネルの形態の出口20であって、流体シール50が通過することができない出口20を有している。第1ステップ(図4(a)参照)において、流体ピストン55は、出口20の方向に移動する。これにより、内部空間41は、次第に減少せしめられ、そして、その中に収容されている流体であって、入口30bを通して内部空間に入っていた流体は、次第に圧縮される。図4(b)において、内部空間41内の圧力は、制限値を超えており、シール50は、左側のチャンバ内に押圧されている。これにより、出口が開き、そして圧縮された流体は逃げることができる(図4(c))。図4(d)において、上記ピストンと上記シールとは、それらの機能を変更する。左側チャンバ内にあるピストンが出口20の方向に移動することにより、内部空間43内に収容されている流体は、次第に圧縮される(図4(e))。シール50は、最終的に、上記くびれ部内を通して右側のチャンバ内に押し出される。そして、内部空間43内の流体は、覆われていない出口を通して逃げることができる(図4(f))。
【符号の説明】
【0041】
1 マイクロポンプ
20 出口
30 入口
40 チャネル
41 内部空間
43 内部空間
44 内部空間
45 くびれ部(狭窄部)
50 流体シール
55 流体ピストン
60 基体(支持層)
70 カバー
80 磁石
90 多孔性メッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロポンプであって、少なくとも、
入口と、
出口と、
入口と出口との間のチャネルと、
チャネル内に位置するピストンと、を有し、
上記ピストンは、外部場の手段により移動せしめられることができる流体であることを特徴とする、マイクロポンプ。
【請求項2】
上記流体は、導電性であり、流体内で移動する電荷担体に作用するローレンツ力の結果として、外部磁場に垂直な方向に移動せしめられることができることを特徴とする、請求項1記載のマイクロポンプ。
【請求項3】
上記流体は、磁気透過性であり、円運動する外部磁場を用いて、移動せしめられることができることを特徴とする、請求項1記載のマイクロポンプ。
【請求項4】
上記チャネルは、端部を有さない、連続的な線状であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロポンプ。
【請求項5】
ポンプの作動時に、上記流体を、ピストンとして機能する一方の部分と、シールとして機能する他方の部分との、2つの部分に分離する手段が備えられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロポンプ。
【請求項6】
上記手段は、上記入口と上記出口との間の狭窄部を備えることを特徴とする、請求項5記載のマイクロポンプ。
【請求項7】
上記手段は、マイクロ構造又はナノ多孔性構造を備えることを特徴とする、請求項5記載のマイクロポンプ。
【請求項8】
マイクロシステムにおける真空ポンプとしての、請求項1〜7のいずれかに記載のマイクロポンプ、の使用法。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図2(e)】
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【図2(f)】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図4(e)】
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【図4(f)】
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【公表番号】特表2012−527559(P2012−527559A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511174(P2012−511174)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002917
【国際公開番号】WO2010/133311
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(504109610)バイエル・テクノロジー・サービシーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Technology Services GmbH
【Fターム(参考)】