説明

マイクロ波線形放電源の電力機能ランピングのためのシステムおよび方法

【課題】基板に成膜を行う新規なシステムを提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態は、基板上に成膜するシステムである。このシステムは、真空チャンバと、真空チャンバに内蔵された線形放電管と、線形放電管に印加可能なマイクロ波電力信号を生成するよう構成されたマグネトロン170と、マグネトロンに電力信号を供給するよう構成された電力供給源160と、電力供給源に接続されたパルス制御部165とを含む。パルス制御部は、複数のパルスのデューティサイクルと、複数のパルスの周波数および/または複数のパルスの輪郭を制御するよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、化学気相堆積(蒸着・成膜)のための電力供給源、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]化学気相堆積(CVD)は、化学薬品がガスまたは蒸気相で反応し、膜を形成することにより、基板上に成膜を行うプロセスである。CVDで用いるガスまたは蒸気は堆積すべき元素を含み、基板または膜を堆積する他のガスとの反応を誘発できるガスまたは化合物である。CVD反応は、光子誘発システムの光による熱活性化、プラズマ誘発、プラズマ強化または活性化されるとよい。
【0003】
[0003]CVDは、半導体業界でウェーハ形成のために広く用いられている。CVDはまた、ガラスやポリカーボネートシート等の大型基板のコーティングに用いることもできる。例えばプラズマ強化CVD(PECVD)は、大型の太陽光発電シートや自動車用のポリカーボネート窓の形成にとってより有望な技術の一つである。
【0004】
[0004]図1は、大規模な成膜工程(現在、最大、幅2.5m)の代表的なPECVDシステム100の断面図を示す。このシステムは真空チャンバ105を含むが、その2個の壁のみ図解する。真空チャンバは線形放電管110を内蔵する。線形放電管110は、マイクロ波信号、またはその他信号を真空チャンバ105に伝達するよう構成された内部導体115の形状を呈する。このマイクロ波電力は、内部導体115から外向きに放射され、サポートガス管120を通って導入される周囲のサポートガスに点火する。点火されたガスはプラズマで、一般に線形放電管110に隣接する。プラズマと電磁放射によって生成されたラジカルが、原料ガス管125を通って導入された原料ガス130を解離し、これによって、原料ガスを分解し、新しい分子を形成する。解離工程中に形成されたある分子が基板135に堆積される。解離工程によって形成された他の分子は廃棄物で、排出口(図示せず)から除去されるが、これら分子自身が基板に堆積される場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]大型基板面を高速でコーティングするため、基板キャリアは一定速度で真空チャンバ105内を通って基板135を移動させる。しかし、静電コーティングを含む実施形態もあり得る。基板135が真空チャンバ105を通って移動する時、解離は一定速度で継続しなければならず、解離された原料ガスからの対象分子は、理論的には均等に基板に堆積され、基板上に均一な膜を形成する。しかし、現実世界の様々な要因により、この工程によって形成された膜は常に均一とは限らない。そしてしばしば、現実世界の要因を補償するための努力が、過度の熱その他圧力を導入することにより基板を損傷する。したがって、改良されたシステムおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]図面に示す本発明の例示的な実施形態を以下にまとめる。これらおよび他の実施形態を「発明を実施するための最良の形態」により完全に説明する。しかしながら、「発明の開示」または「発明を実施するための最良の形態」に述べる形式に本発明を限定する意図はないことを理解しなければならない。当業者は、多くの修正、同等物および代替構成が、特許請求の範囲に述べる本発明の精神および範囲に該当することを認識できる。
【0007】
[0007]本発明の一実施形態は、基板に成膜するシステムである。このシステムは、真空チャンバと、真空チャンバに内蔵された線形放電管と、VHF、マイクロ波、または他の線形放電管に印加可能な高エネルギー電力信号を生成するよう構成されたマグネトロンと、マグネトロンに電力信号を供給するよう構成された電子増幅器を含むことができる電力供給源と、電力供給源に接続されたパルス制御部とを含む。パルス制御部は、複数のパルスのデューティサイクルと、複数のパルスの周波数および/または複数のパルスの輪郭形状を制御するよう構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[0008]本発明の各種目的および利点のより完全な理解は、添付の図面と併せて、次の「発明を実施するための最良の形態」と「特許請求の範囲」を参照することにより明らかになり、より容易に理解されよう。
【0009】
[0009]前述のように、現実世界の要因は、線形マイクロ波成膜システムを含む成膜システムにより形成した膜の品質を制限するように作用する。このような制限要因の1つは、線形放電管周囲に均一なプラズマを作成し維持することが不可能な点である。非均一なプラズマは、線形放電管に沿ったポイントによって非均一な解離を生じ、これにより、基板の一部の成膜が不均一になる。
【0010】
[0010]図2は、マイクロ波成膜システムに用いる典型的な線形放電管110に沿って形成された非均一なプラズマを示す。斜視図では、この線形放電管110は真空チャンバ(図示せず)内側に位置し、非導電管140内にアンテナ等の内部導体115を含む。マイクロ波電力またはその他エネルギー波は、線形放電管110の両端で内部導体115に導入される。マイクロ波電力が線形放電管110近傍のガスを点火し、プラズマ142を形成する。しかし、マイクロ波電力が線形放電管110の中心に向かって移動するにつれ、プラズマを点火して維持するために利用可能な電力量が低下する。場合によっては、線形放電管110中心近傍のプラズマ142は点火しないか、線形放電管110の両端のプラズマ142と比較して非常に低い密度を有することがある。低電力密度によって、線形放電管110の中心近傍のガス解離が低くなり、基板中心近傍の成膜率が低下する。
【0011】
[0011]線形放電管110の中心近傍の低プラズマ密度に対処するシステムの1つに、スプリット内部導体を用いるものがある。例えば、2本の導体を非導電管内部に用いる。図3に示す別のシステムは、2本のアンテナ等の2本の導体145と、非導電管140内部に設置した金属シールド150とを用いる。金属シールド150とスプリットアンテナ145は、エネルギー放電を制御し、均一プラズマ密度142を生成する。
【0012】
[0012]線形放電システムは一般に、マグネトロンに接続された、直流供給源および/または増幅器を含むことのできる、電源システムによって駆動される。線形放電管に沿った電力密度均一性およびプラズマ均一性のさらなる強化は、この電源システムの制御によって実現できる。例えば、線形放電管に沿ったプラズマ均一性は、電源システムの一タイプ、直流電源システムによって生成される直流信号の以下の特性を制御することによって、変化させることができる。すなわち、直流パルスデューティサイクルと、パルス周波数、および/または信号変調である。信号変調には、振幅またはパルス振幅、周波数、パルス位置、パルス幅、デューティサイクルまたは同時振幅の変調と、周波数タイプの変調のいずれかとを含む。信号変調については、指定代理人整理番号(APPL−007/00US)の「SYSTEM AND METHOD FOR MODULATION OF POWER AND POWER RELATEDFUNCTIONS OF PECVD DISCHARGE SOURCES TO ACHIEVE NEW FILM PROPERTIES」に記載され、参照により本書に組み込む。
【0013】
[0013]これら変化のそれぞれが、線形放電管の内部導体に導入されるマイクロ波電力信号を変化させる。マイクロ波電力信号の変化は、線形放電管周囲のプラズマ均一性を変化させる。そして多くの場合、直流電源システムの変化は、プラズマ特性の制御に用いることができ、これにより、膜の化学的組成の均一性を増加させる。このような電力供給源の強化は、単一アンテナシステム、マルチアンテナシステム、シールド付きマルチアンテナシステム等に適用可能である。
【0014】
[0014]成膜システムのさらなる強化は、線形放電管の電力密度の輪郭形成によって実現できる。電力密度は、内部導体に導入される電力信号を輪郭形成することによって輪郭形成できる。内部導体に導入される電力信号を輪郭形成する方法の1つに、直流電源システムの出力の輪郭形成がある。例えば、直流電源システムの個々のパルスを輪郭形成できる。図4に、線形放電管の電力密度を輪郭形成するために用いることのできる例示的な輪郭形成パルスを示す。この信号のデューティサイクル、周波数、振幅等も調整可能である。信号は変調もできる。
【0015】
[0015]図4のa〜dに示す劣化パルス輪郭を用いると、特によい結果が期待できる。この劣化パルスは、プラズマ点火が線形放電管の外側縁から中心に向かって移動する際、線形放電管の全長に沿って均一な電力密度を維持するのに役立つ。これらの強化は、単一アンテナシステム、デュアルアンテナシステム、シールド付きデュアルアンテナシステム等に適用可能である。これら強化はまた、局所的密度の制御のため、平坦な基板だけでなく、曲面基板を均一にコーティングするためにも用いることができる。
【0016】
[0016]図5は、本発明の一実施形態に従って構成したシステムを示す。このシステムは、パルス制御部165によって制御可能な直流電源160を含む。直流電源はマグネトロン170に電力を供給し、これが線形放電管内の内部導体を駆動するマイクロ波(またはその他の波)を生成する。パルス制御部165は、直流パルスの形状を輪郭形成し、デューティサイクル、周波数および振幅などのパルス特性を調整できる。
【0017】
[0017]ここで図6を参照すると、本発明の原理に従って構成されたシステム170の別の実施形態が示している。このシステムは、図5にも示すパルス制御部165を有する直流電源160と、マグネトロン170とを含む。このシステムはさらに、マルチプレクサ180と、タイミング制御システム185とを含む。マルチプレクサ180は、マグネトロンの出力をいくつかの信号に分割するのに関与する。そして、各信号を用いて、別途線形放電管または単一線形放電管内の別途アンテナに電力を投入することができる。
【0018】
[0018]大半の線形放電成膜システムは、数本の線形放電管を含むことが想起される。場合により、隣接しあった線形放電管を駆動するパルスのタイミングをオフセットすることが望ましい。1本の線形放電管で生成したマイクロ波は、隣接する線形放電管まで移動し、電力密度とプラズマ均一性に影響を与えることができる。適切なタイミング制御により、この影響がプラスになり、均一な電力密度及びプラズマを維持するのに役立つ。タイミング制御システム185はこのタイミング制御を行うことができる。当業者は、タイミング制御の調整方法を理解するであろう。
【0019】
[0019]タイミング制御システム185はまた、複数のマグネトロン170および/または直流電源160を含む線形放電システムと共に用いることもできる。このようなシステムでは、各線形放電管は別々のマグネトロンと、場合によっては別々の直流電源とによって駆動される。タイミング制御システムは、各マグネトロンおよび/または各直流電源に適用可能である。「直流電源」および「直流電力供給源」という用語は、線形増幅器、非線形増幅器を用いるもの、または増幅器を用いないものを含む任意のタイプの電力システムに言及する。この用語はまた、単独に増幅器に言及する。
【0020】
[0020]要するに、本発明は、なによりも基板への成膜を制御するためのシステムおよび方法を提供する。本書に記載する実施形態によって達成されるものと実質的に同じ結果を達成するため、本発明とその利用および構成においては多数の変形および代替が可能なことを当業者は容易に理解できる。したがって、本発明を開示した例示的な形式に限定する意図はない。多くの変形、変更および代替構成が特許請求の範囲に示す開示の本発明の範囲および精神内にある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】既存線形PECVDシステムを示す図である。
【図2】不規則なプラズマを包囲する線形放電管を示す図である。
【図3】線形放電管のシールドスプリットアンテナ配置を示す図である。
【図4】本発明で用いることのできる例示的な電源信号を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による電源を示す図である。
【図6】本発明の実施形態による別の電源を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
100 PECVDシステム
105 真空チャンバ
110 線形放電管
115 内部導体
120 サポートガス管
125 原料ガス管
130 原料ガス
135 基板
140 非導電管
142 プラズマ
145 導体、スプリットアンテナ
150 金属シールド
160 直流電源
165 パルス制御部
170 マグネトロン
180 マルチプレクサ
185 タイミング制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に成膜するシステムであって、
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内に収容された線形放電管と、
前記線形放電管に印加可能なマイクロ波電力信号を生成するよう構成されたマグネトロンと、
前記マグネトロンへ電力信号を供給するよう構成された電力供給源であり、直流の前記電力信号が複数のパルスを含む、前記電力供給源と、
前記電力供給源に接続されたパルス制御部であり、複数のパルスのデューティサイクルと、複数のパルスの周波数と、複数のパルスの輪郭形状とを制御するよう構成された前記パルス制御部と
を備える前記システム。
【請求項2】
前記パルス制御部が、複数のパルスのうちの1つの電力を増減させるよう構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記線形放電管が第1の線形放電管である場合において、
第2の線形放電管と、
第1の線形放電管、第2の線形放電管およびマグネトロンに接続されたマルチプレクサと
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記線形放電管が、
非導電性外層と、
前記非導電性外層内に配置された2つの内部導体と、
前記2つの内部導体と非導電性外層とに隣接して配置された金属シールドと
を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
成膜用の電力システムであって、
成膜システムの線形放電管を駆動するマイクロ波電力信号を生成するよう構成されたマグネトロンと、
前記マグネトロンに接続され、複数のパルスを生成するよう構成される電源と、
前記電源に接続された制御システムであり、複数のパルスの輪郭形状を制御するよう構成され、これにより、マグネトロンの出力と成膜システムの線形放電管の動作とを制御するようになっている前記制御システムと
を備えるシステム。
【請求項6】
前記制御システムが、さらに複数のパルスのデューティサイクルを制御するよう構成され、これにより、マグネトロンの出力と成膜システムの線形放電管の動作とを制御するようになっている請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御システムが、さらに複数のパルスの周波数を制御するよう構成され、これにより、マグネトロンの出力と成膜システムの線形放電管の動作とを制御するようになっている請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
基板上に成膜する方法において、
輪郭形成された形状を有する直流パルスを生成するステップと、
前記輪郭形成された直流Cパルスを用いてマイクロ波電力信号を生成するステップと、
成膜システム内に配置された線形放電管に生成したマイクロ波電力信号を供給するステップと、
前記生成したマイクロ波電力信号を用いて前記線形放電管にプラズマを生成するステップと、
前記生成したプラズマを用いてガスを解離するステップと、
前記解離したガスの一部を基板に堆積するステップと
を備える方法。
【請求項9】
成膜用の電力システムにおいて、
前記線形放電管に印加可能なマイクロ波電力信号を生成するよう構成されたマグネトロンと、
前記マグネトロンに複数のパルスを含む直流信号を供給するよう構成された増幅器と、
前記増幅器に接続されたパルス制御部であり、複数のパルスのデューティサイクルと、複数のパルスの周波数と、複数のパルスの輪郭形状とを制御するよう構成された前記パルス制御部と
を備えるシステム。
【請求項10】
前記増幅器が線形増幅器である請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記増幅器が非線形増幅器である請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記マグネトロンの出力に接続されたマルチプレクサをさらに備える請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記パルス制御部が、複数のパルスのうちの1つの形状を輪郭形成するよう構成され、複数のパルスのうちの1つの電力が、複数のパルスのうちの1つの初期電力ポイントから低下する、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記パルス制御部が、複数のパルスのうちの1つの形状を輪郭形成するよう構成され、複数のパルスのうちの1つの電力が、複数のパルスのうちの1つの初期電力ポイントから上昇する、請求項9に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−126742(P2007−126742A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−165169(P2006−165169)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(504448944)アプライド フィルムズ コーポレイション (5)
【出願人】(502208722)アプライド マテリアルズ ゲーエムベーハー アンド コンパニー カーゲー (28)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】