マイクロ流体デバイス
【課題】様々なタイプのモジュールへマイクロチップをインターフェースするための方法およびデバイスの提供。
【解決手段】開示したテクノロジーは、DNAシーケンシングおよびゲノタイピング、プロテオミクス、病原体検出、診断ならびに生物兵器防衛などの様々な用途のためのサンプル調製および分析システムとして使用できる。本発明は、標的分析物を捕捉および精製するための手段および該標的分析物をマイクロ流体デバイス内へ導入するための手段を備える第1モジュールと、該マイクロ流体デバイスを備える第2モジュールと、を備え、ここで該マイクロ流体デバイスは該標的分析物を検出もしくは分析するために適合する、モジュラーシステムを提供する。
【解決手段】開示したテクノロジーは、DNAシーケンシングおよびゲノタイピング、プロテオミクス、病原体検出、診断ならびに生物兵器防衛などの様々な用途のためのサンプル調製および分析システムとして使用できる。本発明は、標的分析物を捕捉および精製するための手段および該標的分析物をマイクロ流体デバイス内へ導入するための手段を備える第1モジュールと、該マイクロ流体デバイスを備える第2モジュールと、を備え、ここで該マイクロ流体デバイスは該標的分析物を検出もしくは分析するために適合する、モジュラーシステムを提供する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2004年9月15日に提出された米国仮特許出願第60/609,970号の利益を主張する。この開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
本発明の態様は、国防総省によって授与されたプロジェクト番号W911SR−04−P−0047、NIHによって授与された助成金番号5R01HG003583−01、HSARPAによって授与された契約番号NBCHC050133、HSARPAによって授与された受付番号TTA−1−0014(協定番号W81XWH−04−9−0012)のうちの1つまたは複数の下で政府の資金提供を受けて実施された。連邦政府は、本発明に所定の権利を有する。
【0003】
過去10〜20年間に、多くはバイオ分析方法におけるサンプル所要量を減少させることを目標として、本質的に異なる、そしてしばしば不適合であるデザインの、広範囲のマイクロ流体デバイスが開発されてきた。外部寸法形態要素、上流および下流の外部インターフェースの性質、ならびに内部マイクロ流体経路の長さ、断面形状、および直径を制御する基準がないために、そのようなマイクロ流体デバイスは、相互に、そして現行の上流にある精製装置および下流にある分析装置と不適合であることがしばしば判明する。
【0004】
超微細加工の分野ではマイクロリットル、さらにナノリットルもしくはピコリットルさえのスケールでの分析を可能にする進歩が遂げられたにもかかわらず、多くの生物学的および環境的サンプルは、最初は現行のマイクロ流体分析装置のスケールよりはるかに大きな、そして不適合な容量で入手される。
【0005】
そこで当技術分野においては集積化流体システムの構成要素として使用でき、様々な外部寸法形状要素、外部インターフェース、および/または内部流体形状を有するマイクロ流体構成要素を効果的流体連絡へインターフェースでき、そして調製モジュールにインターフェースできるモジュラー式マイクロ流体構成要素、またはマイクロ流体調製用および/または分析用構成要素とともにより大きなスケールで作動する方法に対する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本発明は、当技術分野におけるこれらやその他の必要を解決する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
標的分析物を捕捉および精製するための手段および該標的分析物をマイクロ流体デバイス内へ導入するための手段を備える第1モジュールと、
該マイクロ流体デバイスを備える第2モジュールと、
を備え、ここで該マイクロ流体デバイスは該標的分析物を検出もしくは分析するために適合する、モジュラーシステム。
(項目2)
前記標的分析物が、細菌、ウイルス、胞子、真核細胞、または核酸からなる群から選択される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記細菌が炭疽菌(Bacillus anthracis)である、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記胞子が炭疽菌胞子である、項目2に記載のシステム。
(項目5)
前記細胞が癌細胞である、項目2に記載のシステム。
(項目6)
前記核酸がDNAである、項目2に記載のシステム。
(項目7)
前記分析が、前記DNAシーケンシングを含む、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前記分析が、前記DNAの増幅を含む、項目6に記載のシステム。
(項目9)
前記マイクロ流体デバイスが、項目32に記載のマイクロ流体デバイスである、項目1に記載のシステム。
(項目10)
回転式磁極片と、
フロースルーチューブと、
固定磁極片と、
を備え、
ここで、該回転式磁極片、該チューブおよび該固定磁極片は、該磁極片が回転すると該フロースルーチューブ内で磁気進行波を生じる様式で配列されており、そのために適合する材料を含む、磁気進行波フロースルー式デバイス。
(項目11)
前記磁極片の回転が少なくとも約100Hzである、項目10に記載のデバイス。
(項目13)
前記チューブのルーメン内に配置されたビーズをさらに備える、項目10に記載のデバイス。
(項目14)
前記ビーズが磁性ビーズである、項目10に記載のデバイス。
(項目15)
標的分析物が前記磁性ビーズに付着する、項目14に記載のデバイス。
(項目16)
前記標的分析物が前記磁性ビーズへ親和性捕捉される、項目15に記載のデバイス。
(項目17)
前記標的分析物が、細菌、胞子、ウイルス、真核細胞、および核酸からなる群から選択される、項目16に記載のデバイス。
(項目18)
前記フロースルーチューブがマイクロ流体デバイス内へ供給される、項目10に記載のデバイス。
(項目19)
標的分析物を溶解もしくは破壊する方法であって、該方法は、以下:
a)標的分析物および磁性ビーズを項目10に記載の磁気進行波デバイスのフロースルーチューブ内へ導入する工程、ならびに
b)該チューブ内で1つまたは複数の方向に該磁性ビーズを加速させるために適合する周波数で該デバイスの磁極片を回転させる工程、
を包含し、
それにより該ビーズが該標的分析物を溶解または破壊させる、方法。
(項目20)
前記標的分析物が、細菌、胞子、ウイルス、真核細胞、および核酸からなる群から選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記回転させる工程が、少なくとも約100Hzである、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記標的分析物が前記磁性ビーズへ付着させられる、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記標的分析物が前記磁性ビーズへ親和性捕捉される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記フロースルーチューブがマイクロ流体デバイスと流体連絡している、項目19に記載の方法。
(項目25)
前記標的分析物が核酸であり、前記マイクロ流体デバイスが前記核酸の配列を増幅させるために適合している、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記標的分析物が核酸であり、前記マイクロ流体デバイスが前記核酸をシーケンシングするために適合している、項目24に記載の方法。
(項目27)
エアロゾルを含有するために適合するチャンバと、
超音波処理装置プローブと、
を備え、
該チャンバがサンプル注入口およびサンプル排出口を備え、該プローブが、該サンプル注入口とサンプル排出口との間に配置されたサンプルを超音波処理するために適合する方法で前記チャンバ内に配置されている、フロースルー式超音波処理装置。
(項目28)
流体サンプルをさらに含み、前記サンプルが前記チャンバを通って流れる項目27に記載の超音波処理装置。
(項目29)
前記サンプル出口がマイクロ流体デバイスと流体連絡している、項目27に記載の超音波処理装置。
(項目30)
標的分析物を含むサンプルが前記超音波処理装置のチャンバ内に存在する間に項目27に記載のフロースルー式超音波処理装置のプローブを作動させるステップを含み、
これにより前記標的分析物が超音波処理される、標的分析物を溶解もしくは破壊させる方法。
(項目31)
前記標的分析物が、細菌、胞子、ウイルス、真核細胞、および核酸からなる群から選択される、項目30に記載の方法。
(項目32)
マイクロ流体デバイスであって、
2つの親和性捕捉チャンバと流体連絡している装填リザーバであって、前記捕捉チャンバが各々分離チャネルと流体連絡している装填リザーバと、
順方向および逆方向核酸シーケンシング産物を含むサンプルを該リザーバから該親和性捕捉チャンバへ電気泳動するために適合する電極であって、該捕捉チャンバが該順方向および逆方向核酸シーケンシング産物のどちらかを捕捉するために適合する親和性捕捉マトリックスを含む電極と、
該親和性捕捉チャンバの温度制御のための手段と、
を備える、マイクロ流体デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0007】
当業者は、以下に記載する図面が例示することだけを目的としており、決して本発明の開示の範囲を限定することが意図されていないことを理解するであろう。
【図1】サンプル捕捉および精製モジュール(SCPM)ならびにバイオプロセッサモジュール(BPM)のワークフローの実施形態の図である。
【図2】毒素アッセイのワークフローの実施形態の図である。
【図3】バイオプロセッサモジュール(BPM)と集積化されたサンプル捕捉および精製モジュール(SCPM)の実施形態の図である。
【図4】オフチップ・フロースルーカートリッジの実施形態の図である。
【図5】進行波フロースルー式ビーズビータの実施形態の図である。
【図6】プローブがコレクタ排出液中へ直接的に挿入されるフロースルー式超音波処理の実施形態の図である。
【図7】核酸精製モジュールの実施形態の図である。
【図8】エアサンプラ、サンプル濃縮モジュール、ならびにマイクロ流体サンプル増幅および分析モジュールを含む、生物兵器防衛用途のために使用できるナノバイオプロセッサモジュラーシステムの実施形態の図である。
【図9】MOV(商標)バルブの実施形態の図である。
【図10】超微細加工ポンプの実施形態の図である。
【図11】超微細加工ルータの実施形態の図である。
【図12】サンプルクリーンアップマトリックスを供給する三次元結合サービスチャネルの実施形態の断面図である。
【図13】反応チャンバへ1つまたは複数の反応物を添加するための流体回路の実施形態の図である。
【図14】サイクルシーケンシングモジュール(CSM)反復ユニットの実施形態の図である。
【図15】単一バイオプロセッサユニットの実施形態の図である。
【図16】外部作動MOVバルブおよびポンプを用いるマイクロチップカートリッジの実施形態の図である。
【図17】12ユニット式バイオプロセッサカートリッジの実施形態の図である。
【図18】ナノバイオプロセッサユニットおよびマイクロチップレイアウトの実施形態の図である。
【図19A】MBI−11のマイクロチップ実施形態の図である。パネルAは、流体層を青色、および作動層を赤色で示しているマスクデザインを示している。パネルBは、2つの各投入および排出口、反応チャンバおよび貯蔵チャンバ、ならびに三方ルータを有するサブアッセンブリを示している。バルブのための8つの空気圧式制御ラインは、空気圧源への標準コネクタで終了する。パネルCは、エッチング加工されたマイクロ流体ウエハを示している。パネルDは、大きさを示すために添えた実験用マーカとともに組立てられたMBI−11型3層マイクロチップを示している。
【図19B】MBI−11のマイクロチップ実施形態の図である。パネルAは、流体層を青色、および作動層を赤色で示しているマスクデザインを示している。パネルBは、2つの各投入および排出口、反応チャンバおよび貯蔵チャンバ、ならびに三方ルータを有するサブアッセンブリを示している。バルブのための8つの空気圧式制御ラインは、空気圧源への標準コネクタで終了する。パネルCは、エッチング加工されたマイクロ流体ウエハを示している。パネルDは、大きさを示すために添えた実験用マーカとともに組立てられたMBI−11型3層マイクロチップを示している。
【図19C】MBI−11のマイクロチップ実施形態の図である。パネルAは、流体層を青色、および作動層を赤色で示しているマスクデザインを示している。パネルBは、2つの各投入および排出口、反応チャンバおよび貯蔵チャンバ、ならびに三方ルータを有するサブアッセンブリを示している。バルブのための8つの空気圧式制御ラインは、空気圧源への標準コネクタで終了する。パネルCは、エッチング加工されたマイクロ流体ウエハを示している。パネルDは、大きさを示すために添えた実験用マーカとともに組立てられたMBI−11型3層マイクロチップを示している。
【図19D】MBI−11のマイクロチップ実施形態の図である。パネルAは、流体層を青色、および作動層を赤色で示しているマスクデザインを示している。パネルBは、2つの各投入および排出口、反応チャンバおよび貯蔵チャンバ、ならびに三方ルータを有するサブアッセンブリを示している。バルブのための8つの空気圧式制御ラインは、空気圧源への標準コネクタで終了する。パネルCは、エッチング加工されたマイクロ流体ウエハを示している。パネルDは、大きさを示すために添えた実験用マーカとともに組立てられたMBI−11型3層マイクロチップを示している。
【図20】サンプル調製と集積化されたマイクロキャピラリ電気泳動(μCAE)のためのナノ流体構造を備えるMBI−12のマイクロチップ実施形態の図である。流体チャネルは青色、MOV作動チャネルは赤色で示されている。
【図21】二重分析チャネルを備える二重対合末端読み込み親和性捕捉サンプルクリーンアップの実施形態の図である。暗色層はマイクロ流体、グレーのラインはサービス層である。バルブ作動層は図示されていない。薄い波線で囲んだ箱は、DNA分析反復ユニットを規定している。
【図22】集積化されたサンプル、調製、クリーンアップおよび分析用MINDSマイクロチップ反復ユニットの実施形態の図である。
【図23】16チャネルの200nLサイクルシーケンシングモジュールマイクロチップの実施形態の図である。
【図24】マイクロビーズ供給型集積化サンプル、調製、クリーンアップおよび分析用MINDSマイクロチップ反復ユニットの実施形態の図である。2本の親和性捕捉および分離チャネルを備える25nLサンプル調製チャンバが示されている。
【図25】充填済み試薬、核酸精製、および毒素モジュールを含んでいるディスポーザブルカートリッジとして設計されているマイクロチップの実施形態の図である。
【図26】マイクロチップインターフェースデバイスの機器制御の実施形態の図である。
【図27】MiniPrep機器に取り付けられたチューブを備えるマイクロチップ真空チャックの実施形態の図である。
【図28】MiniPrep機器の内側でバイオプロセッサ用マイクロチップを作動させるための関連ハードウエアの実施形態の図である。
【図29】増加した路長を備えるRT−PCRチャンバの実施形態の図である。
【図30】回転式スキャナの実施形態の図である。
【図31】核酸分析(RT−PCRおよびμCAE)のために使用できるバイオプロセッサモジュールのためのマスクデザインの実施形態の図である。
【図32】各々がRT−PCRおよびμCAE能力を備える6”ウエハ上に48個のユニットを備えるバイオプロセッサ用マイクロチップのためのウエハスケールデザインの実施形態の図である。
【図33】多重化バイオプロセッサ回路の実施形態の図である。MOVルータは、3つの多重化RT−PCR反応へサンプルを分割し、法医学および再検査サンプルを作製し、さらにμCAE確証のためのサンプルを選択できる。
【図34】8”ウエハを用いた12”ウエハのモデリングの図である。
【図35】ある濃度範囲にわたる、ビーズによる大腸菌(E. coli)の捕捉を示した図である。
【図36】大腸菌の免疫捕捉においてDYNAL(商標)1ビーズへ結合したモノクローナル抗体の滴定を示した図である。
【図37】大腸菌の免疫捕捉にB. cereusが及ぼす作用を示した図である。
【図38】スパイクエアサンプラ液からの免疫捕捉による大腸菌の回収を示した図である。
【図39】特に図38の104CFU/mLの力価に対するデータセットを示した図である。
【図40】100mgのシリカExtract−Clean SPE培地の床を通過させたサンプルの様々な分画について高力価大腸菌を濃縮させた結果を示した図である。
【図41】100mgのシリカExtract−Clean SPE培地床を通過させた後の様々な分画中に存在する高濃度大腸菌サンプル由来の全細菌のパーセンテージを示した図である。
【図42】シリカビーズ(左)およびBig Bead(右)を用いたβ−ガラクトシダーゼの回収を示した図である。
【図43】Big Beadを用いた大腸菌の回収を示した図である。
【図44】分離チャネル内へ直接的に注入する、サンプルクリーンアップを含む直接注入スキームの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(詳細な説明)
図面を含む上記の一般的な説明、および以下の詳細な説明は、どちらも例示かつ説明することだけを目的としており、本開示を制限するものではないことを理解されたい。本開示では、単数形の使用は、特別に記載しない限り、複数形を含んでいる。同様に「または」の使用は、他に特別に記載しない限り「および/または」を意味している。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「包含する(include)」、「包含する(includes)」、および「包含している(including)」は、限定することは意図されていない。「要素」もしくは「構成要素」などの用語は、他に特別に記載しない限り、1つのユニットを含む要素および構成要素ならびに2つ以上のユニットを含む要素もしくは構成要素の両方を包含している。本明細書で使用した章毎の見出しは構成上だけのためであり、本明細書に記載した主題を限定すると解釈してはならない。特許、特許出願、論文、書籍および専門書を含むがそれらに限定されない本明細書で言及した参考文献の全体および参考文献の部分は、これにより明示的にあらゆる目的のために全体として参照して本明細書に組み込まれる。万一1つまたは複数の組み込まれた参考文献が本開示と矛盾する場合は、本開示が優先される。
【0009】
本開示は、様々なサンプル由来の標的分析物を調製および分析するための補完的機能性を有する集積化モジュラーシステムを提供する。本明細書に開示するシステムは、分子(例、毒素、医薬品)、生体分子(例、核酸、ポリペプチド、脂質)、細胞(例、真核細胞および原核細胞(例、バシラス(Bacillus)、エシェリキア(Escherichia))、胞子(例、炭疽菌(B.anthracis))、ウイルス(例、インフルエンザ、疱瘡)、および当業者の裁量で選択できる他の物質を含むがそれらに限定されない様々な標的分析物の調製および分析に使用される。様々な典型的実施形態では、サンプルの調製および分析は、以下に記載するように、1つまたは複数のシステムモジュールによって実施できる。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に開示したシステムは、サンプルの捕捉もしくは精製(SCPM)のためのフロントエンドモジュールを含むが、典型的な実施形態では、これはさらに捕捉および/または精製されたサンプルをそれ以上の調製および/または分析のために、1つまたは複数のマイクロ流体デバイス(例、マイクロスケール、ナノスケール、またはピコスケールのデバイス)を含むことができるバイオプロセッサモジュール(BPM)内へ導入することができる。そこで、本明細書では、サンプルから標的分析物を捕捉する、濃縮する、もしくは精製するため、およびその後に前記標的分析物を1つまたは複数のマイクロ流体デバイス内へ導入するために使用するモジュラーシステムおよび方法が開示される。一部の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、オフチップ・プラットフォームへ供給することができる。
【0011】
様々な典型的実施形態では、SCPMは、溶解、乳化、超音波処理、遠心分離、クロマトグラフィ、固相抽出法(SPE)、免疫捕捉(例、免疫磁気分離(IMS))、ビーズに基づく捕捉法、およびそれらの組み合わせなどの様々な方法によって標的分析物を捕捉する、精製する、または濃縮することができる。一部の実施形態では、SCPMは、例えば1つまたは複数のマイクロ流体デバイス内へ導入するためにミリリットルをマイクロリットル以下の容量へ濃縮することによって、マクロスケールのサンプル液をマイクロスケールの容量へ減少させることができる。これらのSCPM実施形態は、より大きなスケールで作動する作業モジュールを含む流体デバイス内へマイクロスケールおよび/またはナノスケールのデバイスを集積化することを許容することで、モジュラースケールのインターフェースとして機能することができる。これらのSCPM実施形態は、有用にも様々な寸法形態の要素を有するモジュールが流体連絡しているシステム内へ集積化することを可能にする。一部の実施形態では、SCPMは、粗サンプル中に存在する可能性がある、そして下流での処理もしくは分析の阻害剤として作用する1つまたは複数の物質を除去することによってサンプルを精製できる。サンプル中の標的分析物を捕捉する、精製する、もしくは濃縮することによって、SCPMは、本明細書に開示したシステムの感度を従来型方法に比較して上昇させることができる。
【0012】
BPMは、典型的には1つまたは複数のマイクロ流体デバイスを含む。本明細書で使用する「マイクロ流体デバイス」は、マイクロリットル(μL)、ナノリットル(nL)、および/またはピコリットル(pL)容量などのミリリットル未満の量の流体を操作する、保存する、処理する、または分析するために適合するデバイスを意味する。様々な典型的実施形態では、マイクロ流体デバイスは、1つまたは複数のマイクロチップ(例、マイクロスケール、ナノスケール、ピコスケールのデバイス)、キャピラリ、およびそれらの組み合わせを含むことができる。本明細書に開示したマイクロチップは、当技術分野において知られている超微細加工技術によって製造することができ、バルブ、ポンプ、チャンバ、チャネル、リザーバなどを含むことができ、そして1つまたは複数の標的分析物を処理または分析するために適合する可能性がある。様々な典型的実施形態では、マイクロ流体デバイスは、マイクロチップに基づくカートリッジであってよく、そして非交換型/再使用型またはディスポーザブル型であってよい。本明細書に開示したマイクロチップは、任意の形状もしくは寸法を有していてよい。例えば、マイクロチップは、1つまたは複数の放射状サンプル調製もしくは分析ユニットを備える円形カートリッジであってよく、マイクロチップを作動させる機器と一緒に使用できる。一部の実施形態では、マイクロ流体デバイスは自動化できる。例えば、マイクロチップは「CDチェンジャ」内に保存し、1つまたは複数の機能を実行するために自動的に挿入、操作することができ、必要に応じてプログラマブル機器によって保存できる。そこで、機器は、同時または連続的に1つまたは複数のマイクロチップを作動させるために、マイクロチップの取り扱い、外部空気圧、温度制御装置、試薬溶液などを提供できる。
【0013】
一部の実施形態では、SCPMは、1つまたは複数の付加された標的分析物を含むことのできる懸濁液、コロイド(例、エマルジョン)、もしくは捕捉用ビーズをBMP内へ、または様々なそのような実施形態では、BPMの1つまたは複数のマイクロ流体デバイス内へ導入することができる。そのような実施形態では、BPMの1つまたは複数のマイクロ流体デバイスは、ビーズなどの1つまたは複数のそのような固体を目詰まりを起こさずにデバイスのマイクロ流体経路に通して移動させるために適合する。
【0014】
SCPMからBPM内へのビーズもしくは他の固体の通過は、分析物含有サンプルの容量のダウンスケールを実行する、したがってマクロスケールモジュールからマイクロスケールデバイスへインターフェースするために役立つことができる。そこでそのようなSCPMおよびBPM実施形態は、マイクロスケールおよび/またはナノスケールのデバイスを、より大きなスケールで作動する作業モジュールを含むマイクロ流体デバイス内へ集積化することを許容するので、相違するスケールおよび/または寸法形態の要素を備えるデバイスをモジュラー式でインターフェースすることができる。
【0015】
ビーズに基づくマイクロ流体デバイスによる処理のために適合する様々な典型的実施形態では、ビーズは、流体回路内に挿入された堰もしくは他の物理的障害によって、磁場によって、ビーズの親和性捕捉によって、電気的捕捉もしくは他の機構によって、マイクロ流体通路もしくは回路の様々なポイントで可逆的に固定化できる。様々な実施形態では、ビーズは、マイクロ流体通路もしくは回路に通して移動させることができ、そして物理的もしくは化学的処理を受けさせることができる。ビーズへ付着性である、もしくは付加された、もしくは吸着された、もしくは吸収された、さもなければ結合された分析物は、引き続いていっそうのオンチップ(すなわち、マイクロ流体デバイス内での)処理もしくは分析のために下流反応チャンバ内へ移動させることができる。一部の実施形態では、標的分析物などの物質は、必要に応じてビーズから溶離させることができる。一部の実施形態では、相違する親和性を備える一連のビーズを、高い特異性および感受性を備えるより複雑な生体分子プロセスに連結させることができる。例えば、1つのステップは細胞をビーズに結合させることができ、次のステップは特異的DNA配列を反応前のクリーンアップのためにビーズ上に固定化することができ、そして第3のステップでは質量分析計などへ導入する前に精製のためにビーズを使用して反応生成物へ結合させることができる。一部の実施形態では、親和性捕捉試薬を備えるゲルもまた、当業者の裁量で選択された様々なステップで使用できる。
【0016】
一部の実施形態では、BPMは、スタンドアロン型サンプル調製システムとして使用できる。このため、様々な典型的実施形態では、BPMは、様々な上流サンプル収集デバイス(例、エアロゾルサンプラ)へ接続できる、または下流分析プラットフォームもしくは方法(例、質量分析法(MS)、核磁気共鳴(NMR)、キャピラリアレイ電気泳動法(CAE)、逆転写PCR(RT−PCR)、単分子検出システムなど)へ供給することができる。しかし、一部の実施形態では、1つまたは複数の分析方法をチャネル内、リザーバ内、反応チャンバ内など、またはそれらの組み合わせにおけるマイクロチップ上で実施できる。
【0017】
本明細書に開示したシステムは、生物兵器防衛監視、感染性疾患の診断、法医学、ゲノミクス、プロテオミクスおよびその他の分野において広汎な用途を有する。生物兵器防衛については、本テクノロジーは、例えば建築物、飛行機、または空港のための病原体監視デバイスとして機能する分野において配備できる、または検査需要の急増に対応するために研究室で使用できる、コンパクトなユニットを提供する。本システムは、空気、生体液、農業作物、またはその他の起源から標的病原体を検出するためにサンプルを調製および分析することができる。低消費コストと自動化された調製および分析との組み合わせは、分子診断学に重要な影響を及ぼす。臨床診断のためには、本テクノロジーは、所望に応じて追加の分析を構成するために継目なく集積化されるディスポーザブルデバイスを用いてPCR診断機器を製造するのに適合させることができる。本明細書に開示したシステムは、薬理遺伝学、ヒト遺伝医学、バイオメディカル研究、動物および植物の遺伝子型特定、ならびにヒトの同定に適用することもできる。
【0018】
本明細書に開示したシステムの追加の用途には、微生物の検出、生物の遺伝子型特定、シーケンシング、および法医学などの分子診断学;RT−PCR、再シーケンシング、およびタンパク質分析などの様々な方法のためのサンプル調製および分析用プラットフォームの作製;質量分析、キャピラリアレイ電気泳動、ディファレンシャル・ディスプレイ、および単分子検出などの大多数の分析用プラットフォームならびに生物兵器防衛用途のためのサンプル調製ステーションの作製が含まれる。
【0019】
本明細書に開示したシステムは、全体として、もしくは部分的に、例えばロボット工学によって自動化できる、そしてハンドヘルド型デバイスから現場モニタ、そして実験室用機器へ拡張することができる。
【0020】
1. 標的分析物の濃度
一部の実施形態では、サンプル中の標的分析物は、その後の処理もしくは分析のためにマイクロ流体デバイス内へ導入する前に濃縮することができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分析物は、マクロスケール容量(例、ミリリットルからリットル容量)を保持して1つまたは複数の標的分析物を小さな表面(例、マイクロビーズ)上へ濃縮できる、1つまたは複数のオフチップ・フロースルー式デバイスを用いて濃縮することができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分析物は、マクロスケール容量を保持するオフチップ・リザーバによって供給できるオンチップ・フロースルー式デバイスを用いて濃縮できる。一部の実施形態では、オンチップおよびオフチップ・デバイスを組み合わせて使用できる。一部の実施形態では、捕捉された標的分析物は、下流での処理もしくは分析のために適合する容量へ選択的に溶離させることができる。図1に示したように、SCPM1は免疫捕捉2、溶解3、核酸精製4のためのモジュールを含むことができ、ナノバイオプロセッサ(nanobioprocessor)5と集積化することができる。一部の実施形態では、毒素などの分子を免疫捕捉して、ナノバイオプロセッサ5へ直接的に供給することができる(図2)。
【0021】
表面上へ標的分析物を捕捉するために適合する物質には、ビーズ、モノリス、改質ポリマーなどを含むことのできる様々なタイプの抽出マトリックス物質が含まれる。一部の実施形態では、抽出マトリックス物質は、様々な付加された官能基(例、C4、C18、カルボキシ基、およびアミノ基)、様々なビーズもしくは化学的物質の混合床、または親和性捕捉成分(例、抗体、レクチン、ハプテン、リガンド(例、ビオチン)、受容体、核酸など)を含むことができる。一部の実施形態では、核酸は、SPRIもしくは未改質シリカビーズなどのカルボキシ化ビーズを用いて捕捉でき、そして水などの適合する容量の極性溶媒中へ溶出させることができる。一部の実施形態では、チオシアン酸塩などのカオトロピック剤が核酸をキャピラリ表面へ押し進め、洗浄後に、濃縮かつ精製された核酸をその後の処理もしくは分析のためにバッファ中へ溶出させることのできる、シリカキャピラリを利用するナノスケール捕捉法を使用できる(例えば、米国特許第6,489,112号参照)。様々な標的分析物の固相捕捉の他の方法は、例えば、Weimer et al. 2001 Appl. Environ. Microbiology, 67:1300−1307に記載されている。
【0022】
a) オフチップ・フロースルー式デバイス
一部の実施形態では、標的分析物は、マクロスケールのサンプル容量を濃縮マトリックス140に通して流すオフチップ・フロースルー式デバイス130を用いて濃縮できる(図4)。一部の実施形態では、濃縮マトリックスが標的分析物を保持し、他方バルク溶液および干渉化合物はデバイスを通過する。一部の実施形態では、干渉化合物もしくは望ましくない化合物がマトリックス140上に保持され、標的分析物はデバイスを通過する。サンプルの形状(表面、水、土壌、エアロゾル、生体物質)に依存して、粗濾過(約、20μm)は、かさの高い不純物および微粒子を除去するために役立つことがある。一部の実施形態では、オフチップ・フロースルー式デバイスは、その中にマトリックスが装填されている底部にフリット製開口部150を含むことができ、溶出のための孔(≦1mm)ポートを含むことができる(図4)。濃縮マトリックスは、本明細書に記載するように、非親和性培地もしくは親和性捕捉培地を使用できる。BPMマイクロ流体デバイスと集積化されたオフチップ・フロースルー式デバイスの実施例は、図3に示されている。
【0023】
i) 非親和性捕捉
本明細書で使用する「非親和性捕捉」は、疎水性、親水性、もしくはイオン性相互作用による培地上での標的分析物の非特異的捕捉を意味する。
【0024】
一部の実施形態では、標的分析物の非親和性捕捉は、20μmポリエチレン製フリットを備える1揃いのSPE培地が前もって装填された1.5mL(または4mL)カラムを含むExtract−Clean(商標)固相抽出法(SPE)キット(Alltech社)を使用できる。培地は、その後の溶出のために標的分析物を捕捉できる、または望ましくない物質が培地上に保持されている間に標的分析物が通過するのを許容できる。例えば、1〜104CFU/mL、約102〜103PFU/mL、および0.1〜102ng/mLの範囲内の細胞溶解液中の細胞、ウイルス、もしくはタンパク質は、各々培地へ適用できる。サンプルは、手動もしくはロボット利用によって装填し、必要に応じて真空を適用して培地を貫流させることができる。一部の実施形態では、標的分析物は、洗浄できる充填物質へ結合させられ、標的分析物は培地からの溶出によって濃縮することができる。様々な典型的実施形態では、流動特性および保持特性のためにチャネリングを防止するシリカマイクロファイバディスクを備える3mLシリンジバレルSPEC(ANSYS
Technologies社)またはBig Beadを使用できる。所望の物質の濃縮もしくは精製を提供するためには、標準もしくは特殊クロマトグラフィ用培地もまた使用できる。任意の選択された培地に対して、床容量、相違する培地処方、洗浄、および溶出条件は、当業者であれば感受性を増強する目的で最大保持のために最大化できる。
【0025】
デバイスを貫流するサンプルを監視するためには、例えばAvalanche蛍光スキャナ(GE社)を使用する免疫タグ付けおよび蛍光検出、例えばMegaBACE 1000(GE社)を使用するキャピラリ電気泳動法、細胞についての増殖アッセイ、または当業者によく知られている他の方法などの様々な方法を使用できる。
【0026】
ii) 親和性捕捉
本明細書で使用する「親和性捕捉」は、標的分析物に対して実質的に特異的である分子(例、抗体、リガンド、受容体、レクチン、ハプテン、エピトープ、オリゴヌクレオチドなど)を含む培地を用いる標的分析物の捕捉を意味する。一部の実施形態では、標的分析物(例、細胞、微生物、胞子、または毒素)の表面エピトープに対するモノクローナル抗体を用いて修飾された磁性ビーズをサンプルへ添加することができる。一部の実施形態では、特異的微生物、細胞タイプ、サブタイプ、種、核酸、タンパク質などに対する抗体でコーティングされたビーズの混合物もしくは数セットのビーズを、サンプルへ連続的に、または当業者の裁量で選択された様々な組み合わせで適用できる。抗体がコーティングされたビーズは、標的分析物へ結合するのでそれにより溶液から標的分析物を捕捉できる。ビーズは、磁石によって収集でき、不純物および潜在的阻害剤は洗浄によって除去できる。
【0027】
様々な典型的実施形態では、収集および洗浄されたビーズは、フロースルー式デバイスもしくは別のデバイス内でさらに処理するために再懸濁させる、またはBPMのマイクロチップ上に移動させることができる。本明細書で記載するように、生物兵器防衛用途に関連する実施形態については、収集および洗浄されたビーズは、10μLのバッファ中に再懸濁させ、小型超音波ホーンに挿入できる。一部の実施形態では、図6に示したデバイスを用いるフロースルー型超音波処理を使用できる。超音波処理後、超音波処理された物質はフィルタに通して、BPMマイクロ流体デバイスへ通過させることができる。
【0028】
b) オンチップ・フロースルー式デバイス
一部の実施形態では、BPMマイクロ流体デバイスは、標的分析物を濃縮するために使用できる。一部の実施形態では、標的分析物のオンチップ濃縮は、モジュール集積化、超微細加工テクノロジーの使用、および同一チャンバ内でPCRなどの様々な方法を実行する能力を促進できる。一部の実施形態では、これは適切な流量を産生するために相当に大きな径のチャネルの使用を必要とすることがある。一部の実施形態では、免疫親和性捕捉は、病原性微生物もしくはウイルス、タンパク質、または他の標的分析物をサンプルから濃縮および精製するための迅速かつ特異的方法を提供する。例えば、標的分析物を濃縮するために、ビーズに基づくサンプル調製は、バッチプロセスからオンチッププロセスへ適応させることができる。例えば、抗体がコーティングされたビーズは、導電学的ビーズ床充填および堰式ビーズ捕獲法を用いて集積化かつ超微細加工された捕捉チャンバ内へ配置することができる(Oleschuk et al. 2000. Analytical Chemistry 72:585−5909)。
【0029】
一部の実施形態では、フロースルーモードにおける充填床内のカルボキシル化ビーズは、DNAシーケンシング混合物などのポリヌクレオチドを後処理するために超微細加工ガラスデバイス内で使用できる。ビーズを捕獲するためのダムを備えるガラスチップは、Borofloatガラスから超微細加工することができる。ダムの上部と反対側のチャネルとのダムの間隙は、カルボキシル化ビーズもしくはシリカビーズなどの他のタイプのビーズ、抗体、レクチン、もしくは核酸などを使用する親和性捕捉を備えるビーズのために設計できる。深いチャネルは、最初にHFを用いてエッチングし、次に特定のビーズおよび用途に依存して第2の浅いエッチングにより0.5μm以上までの高さにダムを規定できる。一部の実施形態では、ビーズは、圧力によって充填し、真空吸引によって除去することができる。一部の実施形態では、免疫官能化もしくはその他の磁性ビーズは堰を備えないチャンバ内へ導入できる。チャンバの平面に垂直な小さな磁場を適用すると、ビーズは約5mmの間隔を備える準規則的な一連の垂直柱へ自己集合する(Doyle et al. 2002. Science 295:2237)。
【0030】
様々な典型的実施形態では、クロマトグラフィ培地、付加された抗体もしくは他の親和性捕捉物質を備えるゲル、化学修飾を伴う、もしくは伴わないゲル、固相抽出媒体、モノリス、または当業者によく知られている他の分離もしくは結合マトリックスなどのマトリックスを使用できる。
【0031】
2. 溶解モジュール
一部の実施形態では、標的分析物は、オンチップもしくはオフチップで破壊および溶解することができる。破壊または溶解することができる標的分析物の非限定的例は、(例、原核細胞、真核細胞、古細菌)、胞子(例、細菌性(例、炭疽菌(B. anthracis)、クロストリジウム(Clostridium))もしくは真菌性(例、C.イミチス(C. immitis)))、細胞小器官(例、ミトコンドリア、核など)、核酸、染色体、プラスミド、リボソーム、プロテオソーム、ウイルス(疱瘡、インフルエンザ、ウエストナイル、ポリオ、肝炎、およびレトロウイルスなど)である。一部の実施形態では、標的分析物は超音波処理によって破壊または溶解することができる。一部の実施形態では、ビーズ上に捕捉された標的分析物は、マイクロチップ上に導入する前に超音波処理することができる。
【0032】
超音波による破壊は、ビーズ上に捕捉され、濃縮され、そして精製された粗標的分析物溶液もしくは標的分析物を含む溶液中に浸漬されるホーンを用いて実施できる。超音波処理装置は、コレクタ排出液中に直接的に浸漬できるプローブを有するフロースルー式超音波処理装置であってよい(図6)。チャンバもまたエアロゾルを含有もしくは捕獲するように設計することができ、本明細書に記載するように自動化できる。
【0033】
一部の実施形態では、破壊または溶解はビーズビーティング法によって達成できる。ビーズは、本明細書に記載するように、捕捉ビーズと同一であっても相違していてもよい。一部の実施形態では、磁気対非磁気、相違する密度などの溶解および/または捕捉のために使用されるビーズの相違する特性は、下流での処理もしくは分析を単純化するために様々なタイプのビーズを分離するために使用できる。一部の実施形態では、フロースルー式進行波ビーズビーティングデバイス10を使用できる(図5)。例えば、図5に示したように回転式磁極片20は、磁極片が回転するにつれてチューブ30を下方へ貫流する磁気波を作り出す。回転は約100Hzまでであってよく、チューブを貫流する胞子およびその他のタイプの標的分析物を破壊させるために隣接チューブを通過するビーズの十分な加速を作り出すことができる。一部の実施形態におけるビーズは、溶解を促進するために複数の形状を有する。
【0034】
破壊または溶解を評価するためには、生育性の消失対時間を使用して所望の出力設定、曝露時間、容量、および幾何学的形状を決定できる;そのようなパラメータの設定は、当業者の能力の範囲内に含まれる。一部の実施形態では、TaqManアッセイにおけるDNAもしくはRNAの遊離を試験するために選択されたサンプルを使用できる。破壊は、胞子に対して、および下流での処理もしくは分析のためにそれらを不適合にすることなく、高分子をより低いそれらの粘度および断面積へ剪断するために最適化できる。一部の実施形態では、溶解液は、マイクロ流体デバイスのマイクロチャネルを閉塞させる可能性がある凝塊を除去するために、少なくとも約10μm、さらに少なくとも約20μm、30μm、またはそれ以上さえの孔径を有するフィルタに通過させることができる。
【0035】
一部の実施形態では、破壊または溶解された物質は、オンチップもしくはオフチップのいずれかで、さらに精製するための供給原料として使用できる。例えば、核酸をアッセイするために、選択的オリゴヌクレオチドを備えるビーズ上での核酸ハイブリダイゼーションの精製ステップはバックグラウンドから標的配列を精製することができる。タンパク質については、疎水性、カルボキシル化、または他の化学物質などの固体表面上への捕捉は、あるクラスのタンパク質の非特異的精製を提供することができ、他方では親和性捕捉は必要な場合に強化された特異性を提供できる。同様に、必要に応じてオンチップおよびオフチップ、ならびにビーズに基づく、およびその他のマトリックスの種々雑多の組み合わせを用いて、複数の精製ステップを実施できる。
【0036】
一部の実施形態では、溶解は、マイクロチップ内へ導入後に実施できる。そのような実施形態では、マイクロチップは、溶解すべき細胞を備えるサンプルを受け入れる。
3. 核酸精製モジュール
一部の実施形態では、本発明のシステムは、核酸精製モジュール(NAPM)を含むことができる。NAPMは、溶液または1つもしくは複数のビーズ、コロイド、多相(不均質もしくは均質)溶液、または他の組成物などの他の物理的形態にあるサンプルを受け入れるように設計できる。一部の実施形態では、NAPは、溶解モジュールからの流入を受け入れるように設計できる。NAPMによって受け入れられる容量の範囲は、ミリリットルからピコリットル未満の容量に及ぶ可能性がある。一部の実施形態では、NPAからの排出は、その後の処理もしくは分析のためにBPMマイクロチップまたは他のマイクロ流体デバイスへ送達することができる。
【0037】
様々な化学物質は、NPAMによって使用するために適合させることができる。様々な典型的実施形態では、NAPMは、カオトロピック剤を用いる表面吸着/脱着による精製;例えばオリゴヌクレオチド含有ゲル上での電気泳動捕捉による選択的核酸精製;またはオリゴヌクレオチド含有ビーズ上へのハイブリダイゼーションによる選択的核酸精製などの様々な方法による全核酸精製を実施するように設計できる。NAPMの実施例は、図7に示されている。
【0038】
a) 全核酸精製
サンプル中の全核酸は、核酸を溶液から表面上へ推し進めるためにカオトロピック剤を使用する非特異的捕捉法を用いて精製できる。例えば、米国特許第6,489,112号は、シリカキャピラリの表面上へ核酸を推し進めるためにチオシアン酸塩もしくはグアニジニウムなどのカオトロピック剤を用いる定量的ナノスケール「テンプレート捕捉」法について記載している。洗浄後、濃縮かつ精製された核酸は、サイクルシーケンシングなどのナノスケールのサンプル処理もしくは分析のためにバッファ中へ溶出させることができる。本方法は、溶解液から核酸を精製するためにも使用できる。
【0039】
一部の実施形態では、投入サンプルは、ガラスビーズ、またはチャネルの壁などの他の適切な表面の存在下でカオトロピック剤と混合することができる。カオトロピック剤は、溶液から核酸を押し出し、それらがガラスビーズもしくは他の表面に吸着することを引き起こす。カオトロピック剤は、さらにサンプル中に存在する可能性がある、核酸分解を実質的に阻害するヌクレアーゼを不活性化する。インキュベーション期間後、細胞破片、変性タンパク質、およびカオトロピック剤中に溶解性の他の構成成分は、例えば、真空を用いて吸引によって除去し、廃棄物流中へ廃棄することができる。精製されたサンプルは、追加の不純物を除去するためにさらに洗浄でき、そして回収してマイクロチップもしくは他の流体システム内へ導入するために核酸をバッファ中へ溶出させることができる。
【0040】
一部の実施形態では、核酸精製のための条件は、5Mチオシアン酸ナトリウム、95℃で90秒間の変性、30℃で5分間の表面(例、ガラスビーズ)への結合および2秒間にわたる80% EtOHへの結合を含んでいる。一部の実施形態では、核酸は、数種の相違するカオトロピック剤および溶出回収化学を用いて、SPRIカルボキシル化ビーズなどの改質ビーズ上へ精製することができる。
【0041】
b) 選択的核酸精製
一部の実施形態では、標的核酸は、オリゴヌクレオチド捕捉配列へのオフチップ・ハイブリダイゼーションを用いて選択的に精製できる。
【0042】
一部の実施形態では、サンプルは、電気泳動法、流体力学的圧力、遠心分離、または他の力によって除去して、未改質ビーズ、改質ビーズ、交換式親和性捕捉ゲル、モノリス、コロイド、2相溶液、およびその他の物質から構成される固定もしくは可動マトリックス上に移動させることができる。様々な典型的実施形態では、マトリックスは未改質であってよく、物質の表面特性に基づいて標的核酸へ結合することができる、マトリックスはサンプルの構成成分の結合を強化もしくは遅延させるために改質することができる、またはマトリックスは標的配列、結合抗体、もしくは他の親和性捕捉物質に相補的な付加されたオリゴヌクレオチド配列を有することができる。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチド上のビオチンラベルは、標的DNAとハイブリダイズすることができる。ビーズ上のストレプトアビジン成分は、所望の標的核酸を精製するためにビオチンへ結合させることができる。
【0043】
例えば、標的核酸を含むサンプルは、標的核酸に対して相補的な結合オリゴヌクレオチド配列を含有するビーズへ適用することができる。結合標的核酸は、塩、不純物、および誤対合フラグメントを除去するために低イオン強度バッファ中で洗浄し、熱および電圧によってナノリットル容量で溶出できる。一部の実施形態では、親和性捕捉は、高効率(サイクルシーケンシング生成物に対して≧90%)で迅速な可能性がある(≦7分間)。このアプローチは、オフチップ構成へスケールを拡張できる。排出容量は、物理的構成に依存して約10nL〜約1mLで変動してよい。
【0044】
一部の実施形態では、上述した組成物および方法は、さらにタンパク質、脂質、炭水化物もしくは非同族核酸に対してアッセイできるサンプルから核酸を除去するためにも使用することができる。
【0045】
4. マイクロチップ内へのビーズもしくは溶液の導入
サンプルは、様々なマイクロ流体デバイスもしくは他の流体システム内へ直接的に、または例えば本明細書に記載したように捕捉および核酸精製による処理後に導入できる。一部の実施形態では、親和性捕捉ステップからのビーズは、マイクロリットルもしくはナノリットル容量などの小さな容量でマイクロチップ内へ導入することができる。ビーズは、シリンジポンプもしくはピペッティングデバイスを用いるなどでマイクロチップ上のリザーバ内へポンプで送り込むことができ、そしてオンマイクロチップポンプを使用してそこにビーズを捕獲もしくは保持できるマイクロチップの部分へビーズを移動させることができる。
【0046】
一部の実施形態では、単独ビーズは、DNAシーケンシング、単分子分析、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)スキャニングおよびペプチドフィンガプリンティングを含むタンパク質のMS分析などの処理もしくは分析のためにマイクロチップ上へ移動させることができる。単独ビーズは、例えば、フローサイトメトリー法の適用によって個々のチャンバへオンマイクロチップで送り込むことができる。または、単独ビーズは、平均するとチャンバ内には単独ビーズしか到着しないと予想される確率配分プロセスによってチャンバ内に配置することができる。
【0047】
一部の実施形態では、サンプルは、バッチモードなどの様々なタイプの流体システム、もしくはフロースルー式システム、またはそれらの組み合わせでさらに処理することができる。本システムは、マイクロチップ、キャピラリ、チューブ、ウエル、または他の容器およびマイクロ流体デバイスに基づいてよい。導入されたサンプルは、構成成分、タグ成分を生化学的もしくは化学的に分離するために処理できる、またはオンマイクロチップで分析できる、または下流での分析のために調製できる。
【0048】
5. BPM
BPMは、典型的には以下で記載するように機器およびプログラマブルソフトウエアによって任意に作動できる1つまたは複数のマイクロ流体デバイスを含んでいる。一部の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、SCPMからサンプルを投入し、流体回路と反応チャンバ間に液体を送り、試薬を添加し、核酸および毒素などの様々な標的分析物についてのアッセイを実行する、カートリッジ内に保持されたマイクロチップ、ナノチップ、もしくはピコチップであってよい。一部の実施形態では、様々なタイプのチップは、それにより反応時間および順序を制御するためのシステム制御要素としてのMOVバルブ、ポンプおよびルータを用いて、個別バイオプロセッサモジュール内でサンプルを処理できる。一部の実施形態では、本明細書に開示したチップはSCPMと集積化できる。
【0049】
a) マイクロロボット利用オンチップバルブおよびポンプ(MOV(商標))テクノロジー
MOVマイクロバルブ、マイクロポンプ、およびマイクロルータは、2つのガラス製マイクロ流体層を、バルブを開閉するポリジメチルシロキサン(PDMS)などの変形可能な膜層、および膜を変形させてバルブを作動させるための空気層と結合する。上部ガラス層(図9)内にエッチングされた流体チャネルは、不連続性で、バルブシートとして機能するバイアへ通じている。PDMS膜40はバルブシートに接して置かれており、通常は2つのバイア間の流体路を閉鎖する。PDMS膜40の反対側には、エッチングによって形成された空気置換チャンバがフルスケール真空源もしくは圧力源へ接続されている。超小型オフチップ・ソレノイドを制御することによって、真空もしくは圧力(ほぼ1/2気圧)をPDMS膜40へ適用すると、柔軟性膜の単純な変形によってバルブを開放したり(50)閉鎖したり(60)できる。
【0050】
自給式MOVポンプ(図10)は、3つのバルブ70、80、90の作動を調整することによって作り出すことができ、さらにいずれかの方向への流動を作り出せる。様々な流量は、作動順序のタイミング、ダイアフラムのサイズ、チャネル幅の変化、およびその他のオンチップ寸法によって達成できる。ルータ(図11)は、同様にこれらのバルブおよびポンプから形成できる。ルータは、中心ダイアフラムバルブ100へ接続する別個のチャネル110、120上に各3つ以上のバルブを用いて形成できる。適正な組み合わせのバルブを作動させることによって、1つのチャネルからの液体を中心ダイアフラムバルブ内へ引出し、その液体を様々なチャネル内に排出して送り出すことができる。バス構造もまた作り出すことができる。
【0051】
MOVバルブおよびポンプは、単一シートのPDMS膜を用いて1つの製造プロセス中に同時に作製できる。すなわちチップ上で5個のMOVポンプを作製するのに要する時間も500個のポンプを作製するのに要する時間も同じである。そこで、本明細書の開示は、チップ上で複雑なマイクロ、ナノ、およびピコ流体回路を作り出すための方法を提供し、チップ上への実質的に任意の反応もしくはアッセイの移植を可能にする。一般に、本テクノロジーは、溶液イオン強度および表面汚染における変動に対して少なくとも実質的に非感受性である可能性があり、さらに電場の適用を必要としない。
【0052】
b) マイクロ流体デバイス
図31は、核酸分析のために使用できる単一バイオプロセッサモジュールの実施例を示している。このデザインでは、IMSおよび核酸精製からの結合した精製核酸を備える捕捉されたビーズを下方チャネル350内へ投入できる。オンチップMOVポンプ351は、ビーズを堰352へ移動させ、そこではリアルタイムPCR試薬および内部標準物質を試薬注入口から添加できるので、熱の局所的適用によって核酸を遊離させてμRT−PCRチャンバ353内へポンプで送り込むことができる。チャンバを取り囲んでいるバルブは、サーマルサイクリングのために閉鎖する。
【0053】
図32は、図31からのデザインを用いて6”マイクロチップのための48ユニットデザインの実施例である。一部の実施形態では、96以上のユニットを6”チップ上に放射状に配置できる。一部の実施形態では、384の分離チャネルを8”チップ上に配置できる。96チャネルマイクロチップは、これらのチャネルが約3回しか再使用されない場合は約30日間にわたり作動できる。一部の実施形態では、最終仕様の要件、試験される標的分析物の数、および多重化度に依存して、240ユニットを12”マイクロチップ上に放射状に配置することができる。
【0054】
一部の実施形態では、様々なチップは、例えばRT−PCRにおいて使用できる反応チャンバ(図29)としてバルブチャンバを形成する穿孔されたバイアホールを含むことができる。厚さ3mmの穿孔されたウエハおよび300μmのダイアドリルを用いることによって、(チャネルに対して横ではなく)長軸に沿って下方へ3mmの検出路長を備える212nLのチャンバを生成できる。一部の実施形態では、これらのチャンバは極めて優れた表面対容量比を有することができる。一部の実施形態では、より大きな容量はより優れた表面対容量比およびより長い路長を有することができる。一般に、チップ上の検出はチャネルに対して横断方向で実施でき、チャネル深さに等しい約30μmの路長を有する;同様に、キャピラリシステムでは、路長は約50〜200μmである。優れた容量対表面比およびほぼ100倍長い路長は、この単独デザインを用いるサンプル調製生化学(高い容量対表面比)および蛍光検出の両方に各々利点を与える。毒素を検出するためにも、同一検出デザインを使用できる。
【0055】
一部の実施形態では、様々なチップは、MOVルータを用いて、そして内部標準物質を含有するPCRマスターミックスなどの試薬を添加することによって、(達成される多重化度に依存して)適切な数の反応に投入サンプルを分配することができる。図33に示したように、法医学の記録および再検査のためのサンプルは投入用MOVルータを用いてアリコートに分けることができ、次に任意のリアルタイムPCR反応からの陽性サンプルをμCAEのために選択することができる。図33は、一部の実施形態では、μCAEチャネルは各バイオプロセッサユニットもしくは反応のために必要とされない。一部の実施形態では、完全6”マイクロチップ上の2〜4つのμCAEチャネルを使用できるが、それはそれらが確証のために使用でき、数十のリアルタイムPCRチャンバおよび他のタイプのアッセイチャンバへ接続するために深くネスティングできるためである。
【0056】
図25は、ディスポーザブルカートリッジとして設計されている生物兵器防衛用途のためのマイクロチップおよび病原体のサンプル調製のためにマイクロチップを作動させるプラットフォームの例を示している。チップは、MOVバルブ、ポンプ、および反応チャンバ、試薬注入のためのサンプルポート、ならびに上流での濃縮および下流での分析モジュールとインターフェースするための入口および出口ポートを含んでいる。図17は、放射状に配置された12ユニットのバイオプロセッサを備える円形基質を用いるマイクロチップを示している。一部の実施形態では、1度に1つのユニットを使用でき、使用間にマイクロチップを回転させることができる。または、様々な形状の基質および様々な流体レイアウトを備える実施形態を使用できる。
【0057】
本実施例ではマイクロチップ上で流体デバイスを含有するバイオプロセッサモジュールは、上流のSCPMからサンプルを受け入れ、記録および再検査のためのアリコートを作製し、オンチップでサンプルを溶解し、サンプルを調製および標識し、そして分析のために検出器へそれらを排出することができる。この実施例では、BPMは、流体デバイスを含有するマイクロチップカートリッジおよびカートリッジを作動させる機器を含んでいる。カートリッジは、「CD」フォーマットであってよく、そして単独サンプルもしくは複数サンプルのために使用される各ユニットを備えるセクタ内で1カートリッジ当たり12のバイオプロセッサユニットを有することができる(図17)。例えば、カートリッジは、1つのサンプルを処理し、次のサンプルを受け入れるために次に回転させることができる。カートリッジは、様々なサンプリング方式に適応させ、必要に応じて変化させることができる。一部の実施形態では、複数セットのカートリッジをCDチェンジャに似ている小型回転式トレイ内に保存できる。機器は、カートリッジを保存する、試薬を装填する、実行する、および取り替えるための機構を提供し、プロセスを制御することができる。
【0058】
一部の実施形態では、制御要素としてのオンカートリッジMOVバルブおよびポンプを備えるナノ流体デバイスを用いてサンプルを処理するために設計されたナノバイオプロセッサ・カートリッジを使用できる。MOVバルブは通常は閉鎖され、ギザギザが付けられ、容易に製造され、密なアレイで作動することができ、低死容量を有する可能性がある。このバルブは、Grover et al.(2003), Sensors and Actuators B89:315−323の設計にしたがってガラス層と変形可能な膜としてのポリジメチルシラン(PDMS)とを結合することによって作製できる。
【0059】
一部の実施形態では、自給式ポンプ(図10)は、図9に示したバルブの3つを結合することによって作製できる。中心ダイアフラムバルブは、流動方向を制御するために機能するフランキングバルブより大きくてよい。さらに、中心バルブは反応チャンバもしくはミキサとして機能できる:PDMSは、数百マイクロリットルのように多量または数十ナノリットルのように少量を含有できる反応チャンバを作製するために2mmまで変形させることができる(Grover et al. 2003. Sensors and Actuators B89:315−323)。これらのチャンバは、動的に拡張および縮小することができる。
【0060】
本開示においては、MOVバルブおよびポンプは、マイクロスケールおよびナノスケールサンプルを調製および処理するためにプロセッサ内へ結合することができる。
【0061】
本開示においては、バイアホールのサイズは、バイアホール内に反応チャンバを作製するために変動させることができる。バイアホールの幅およびそれをバイアホールが通過するウエハの厚さの変化を組み合わせることによって、広範囲のチャンバを構築できる。反応チャンバとして機能することに加えて、バイアホールを使用すると、光学的およびその他の検出のために増加した路長を提供することもできる。例えば、図29は、バイアホール231がリアルタイムPCRを実施するため、および検出セルとしての両方に使用されているマイクロチップ230を示している。検出は、バイアホールのコーティングまたはウエハ基質のために内部反射物質を使用することによって強化することもできる。
【0062】
6. 用途、機器、およびソフトウエア
一部の実施形態では、マイクロチップは、真空チャック上の固定位置で保持することができる。マイクロチップ・インターフェースデバイスは、外部空気源、サーマルサイクリング温度制御要素、温度制御、および試薬導入ラインを含む外部制御要素を提供するためにマイクロチップと連結することができる。
【0063】
図16は、反応チャンバとしても機能する大きな中心ダイアフラムバルブとともに、流動を制御するための外部作動MOVバルブおよびポンプを使用して設計されたマイクロチップカートリッジの実施形態を示している。このカートリッジは、バイオプロセッシング160〜162、貯蔵領域170、およびリザーバ180のための3つの主要チャネルを含有している。これらのチャネルの1つは、DNAに基づく分析のための処理、そして第2および第3チャネルは各々イムノアッセイ分析によって毒素および粒子の処理の専用にすることができる。図16に示したレイアウトは、多数の可能性のあるレイアウトの1つであり、生物兵器防衛用途のための下流の単分子検出器とインターフェースするように設計されている。
【0064】
一部の実施形態では、カートリッジは、以下のように機能できる。100μLサンプルは、内部コントロールの添加後にオフチップ・サンプル濃縮器によってカートリッジ上の注入口190内へ送達される。7つの未処理10μLアリコートは、リザーバから4℃で保持されたオンカートリッジ貯蔵チャンバ内へ「A」と表示されたルータ200によってポンプで送り出される。これらのアリコートの3つは再検査180用、および分析されたサンプルの試験結果が陽性の場合は可能な確証用である;追加の4つのアリコート170は、初回の陽性検出が再検査によって確証された場合には、後の回収および法医学分析のためである。全アリコートは、TEC製ペルチエ(Peltier)冷却装置などの外部冷却装置によってカートリッジ上で冷却して保存される;必要であれば、安定化試薬をこれらのリザーバ内に乾燥状態で保存できる。カートリッジの使用後、使用されたカートリッジは、冷蔵された小型回転式トレイ内に保存されるであろう。
【0065】
即時処理のためのアリコートは、次に形成および処理される。10μLの試験アリコートは、以下に記載するように毒素を検出するための免疫標識のために、ルータA 200によってバイオプロセッシングチャネル2 161からチャンバD 163へ移動させられる。第2の10μLの試験アリコートは、以下に記載するように無傷細菌もしくはウイルス粒子を検出するための免疫標識のために、ルータA 120によってバイオプロセッシングチャネル3 160からチャンバE 164へ移動させられる。注入口は、次に上方から蓋が被せられ、残りのサンプルはカートリッジの底部を通して結合されている外部超音波処理装置ホーンを用いて超音波処理される。生成した超音波は、増殖性細胞、胞子、およびウイルスを破壊し、さらにハイブリダイゼーション動力学および流動特性を改良する目的でDNAを剪断して粘度を減少させる。溶解したサンプルは、DNA分析のために標識したプローブを用いたハイブリダイゼーションのために、ルータA 200によってバイオプロセッシングチャネル1 162からチャンバC 165へ移動させられる。
【0066】
3つのチャネルのバイオプロセッシングは、同時に発生することができる。RNA、タンパク質、および脂質を分解するためのサンプル消化ステップは、DNAに基づく単分子検出のためにサンプルのバックグラウンドを減少させるため、そして下流検出器の要求を減少させるために望ましいことがある。このプロセッシングが(単分子検出のためなどに)実施される場合、DNA分析サンプルは、非DNA物質を分解させるために添加されたバッファ中のRNAse、プロテアーゼおよびリパーゼのカクテルを有する可能性がある。添加は、リザーバBからサンプルを備えるチャンバCへ物質をポンプで送り出すことによってでよい。必要であれば、サンプルおよび消化試薬は、混合するために隣接チャンバ間をポンプで往復させることができる。チャンバC内のアリコートは、リザーバFからのDNAプローブとのハイブリダイゼーションによってDNA分析のために標識することができる。ハイブリダイゼーションもしくは抗体プローブは、試薬カートリッジ内に低温で保存することができ、個別バイオプロセッサユニットを使用する直前に外部ポンプを用いてカートリッジへ添加することができる。プローブは、試薬を混合するためにオンカートリッジポンプを用いてチャンバ内へポンプへ送り込むことができる。同様にサンプルおよび試薬は、必要に応じて、さらに混合するためにプローブチャンバと反応チャンバCとの間をポンプで往復させることができる。取付具は、チャンバの下方で加熱要素を含有することができる。ハイブリダイゼーションのためには、フランキングバルブを閉鎖し、チャンバはDNAを変性させるために95℃へ加熱し、さらに存在する任意の標的へDNAプローブをハイブリダイズさせるためにハイブリダイゼーション最適条件へ冷却することができる。これらのバルブは、これらのチャンバ内でPCRを実施するために十分にシールするので、このため蒸発を実質的に減少させることができる。
【0067】
上述したBPMは、個別もしくは多重化PCR、可変数タンデムリピート(VNTR)、多座VNTR分析(MLVA)、または他のアッセイなどの任意のPCRに基づくアッセイに適用できる。ハイブリダイゼーションプローブは適切なPCRプライマと置換して、外部熱源をサイクリングすることができる。消化ステップは、増幅されたフラグメント長多形(AFLP)を実行するために制限消化に置換することができる。毒素検出のためには、チャンバD内のアリコートをリザーバGから毒素に対する抗体プローブと混合することができ、他方では粒子検出のために、チャンバE内のアリコートをリザーバHからの微生物による表面被覆に対する抗体プローブおよび37℃で保持されたサンプルと混合することができる。
【0068】
標識後、バイオプロセッシングしたサンプルは3つの外部リザーバ内へポンプで送り出すことができ、そこでそれらは検出器によって分析のために吸引によって取り上げることができる。または、修正バージョンのマイクロチップ上でキャピラリ電気泳動法もしくは光学的検出を実施することができる。
【0069】
検出器が内部コントロールしか検出しない場合は、カートリッジを回転させて、次のバイオプロセッサユニットを準備できる。サンプルの検査結果が陽性の場合は、バイオプロセッサユニットは回転させられず、その代わりに再検査フラッシュリザーバからフラッシュされて新鮮試薬が装填される。再検査のために保存された3つのサンプルはル−タによって、第1は毒性検出のために直接的にチャンバDへ、第2は粒子検出のためにチャンバCへ、そして第3は超音波処理およびDNA分析のために注入口へポンプで送り戻される。再検査サンプルは、上述したように処理して、可能性のある推定陽性検出事象として確証するために検出装置へ排出できる。
【0070】
マイクロチップを作動させるための機器は、外部機器であるマイクロチップインターフェースデバイス内に含有されてよい。マイクロチップは、真空チャックの上部に保持されたマイクロチップカートリッジ、ならびに空気圧、加熱および冷却、およびリザーバ内へ試薬を移動させるためのシリンジポンプを有するマイクロチップと連結するマイクロチップインターフェースデバイスを備えて開発することができる。コンピュータ制御マイクロチップインターフェースデバイスは、ソレノイドを制御して外部フルスケールバルブを開閉し、順にマイクロチップバルブを制御してマイクロチップ上へサンプルを移動させるためにポンプで送り出すことができる。
【0071】
マイクロチップインターフェースデバイスは、ニクロムなどの抵抗加熱器、ペルチエ加熱器、エア式加熱器、赤外線加熱器、または当業者によく知られている他の実施形態などの加熱器、および熱電対もしくは他の温度測定機器ならびにマイクロチップの領域の温度および加熱・冷却速度を制御するための関連制御回路およびソフトウエアを含むことができる。冷却は、放射冷却、ファンからの能動的冷却、ペルチエによる冷却、水または当業者によく知られている他の方法による冷却によってでよい。マイクロチップ全体の温度もまた、真空チャックを加熱することによって設定することができる。
【0072】
シリンジポンプを制御すると取り付けられたマイクロチップ上のリザーバへ試薬を送達することができる、または試薬を含有する加圧式チャンバがマイクロチップ上のリザーバ内へ試薬がチューブを通って貫流するのを可能にするために解放されるバルブを有することもできる。一部の実施形態では、重力流れを使用できる。一部の実施形態では、電気が試薬を強制的に移動させ、ビーズもしくは粒子に付着した試薬の磁気送達は本開示の範囲内に含まれる。上述したハードウエアおよびNanoPrepソフトウエアのすべては、Laboratory Rapid Automation Toolkitソフトウエアまたは他のソフトウエアを用いて制御できる。
【0073】
Laboratory Rapid Automation Toolkit(LabRAT(商標))ソフトウエアプラットフォーム500(図26)は、機器を駆動させてプロセスを自動化するための頑丈な商業用ソフトウエアプラットフォームの迅速な作製を可能にする機器ソフトウエア開発キットである。LabRATは、1セットの通信および指令プロトコル501〜503を規定し、市販で入手できるいずれよりも単純で、柔軟で、さらにより効率的な標準化された自動化構造およびフレームワークを有している。LabRATフレームワークは、多重オペレーティングシステム、開発言語、および通信媒体504に及ぶ一連の中核をなすテクノロジーに基づいている。
【0074】
LabRAT自動化構造の心臓部には、SOAP(シンプル・オブジェクト・アクセス・プロトコル)標準の中核であるXML−RPC(エクステンシビル・マークアップ・ランゲージ・リモート・プロシージャ・コール)に基づく機械通信および制御インターフェースプロトコルである。XML−RPCは、プロセス間通信のためのすばらしい機構である:単純、迅速、頑丈であり、ほぼあらゆる現代のソフトウエア開発システムのために広汎に利用可能な実装を有しており、TCP/IPおよびHTTPにわたって作動し、容易に実行できる。XML−RPCは、極めて高レベルの「メタ機構」として作動し、全く異なる構成要素を緊密に順序付けられた機械システムへつなぎ合わせることができる。中核の通信および指令プロトコルに加えて、実験用機器のために適合する1セットのインターフェースが、構成要素間の「実験サービス」の交換のために規定かつ実行されている。
【0075】
LabRATもしくは類似のソフトウエアは、マイクロチップインターフェースデバイスを制御するように適合させられてきた。現在あるLabRATソフトウエアは、個別構成要素のためのドライバが「ラップされる」と、全層に対して機能性を提供する。局所的サーマルサイクリングを制御するためのNanoPrepサーマルサイクラソフトウエアは、既にLabRAT内に組み込まれている。空気ソレノイド、シリンジポンプ、および検出器を含むその他の要素もまた、LabRATソフトウエアによって制御できる。さらに、様々なハードウエア構成要素の相互作用は、LabRATスクリプト指令を通して調整できる。
【0076】
一部の実施形態では、3つのハードウエアデバイスを制御できる:1)加熱およびサーマルサイクリング、2)オンチップバルブおよびポンプ(空気作動型)、および3)試薬を送達するためのシリンジポンプ。サーマルサイクリングは、反応チャンバのすぐ下に配置されたニクロム線加熱コイルを用いて遂行でき、現行のNanoPrepソフトウエアおよびハードウエアによって制御できる。MiniPrep Cartesianロボット(Tecan社)を使用すると、マイクロチップ上のミニロボットバルブおよびポンプを制御する32ttlまでの出力ライン、ならびにマイクロチップにサンプルを装填したり除去したりするために使用されるフルスケールロボットを作動させるために「Smart I/O」ボード(Tecan社)を駆動させることができる;LabRAT CANインターフェースもまた高精度シリンジポンプを作動させて流体をチップ内へ分注することができる。
【0077】
Smart I/Oボードは、Crydomソリッドステート継電器モジュールを駆動させることができる(各ラインに対して1つずつ、MODC−5 SSRモジュール、DigiKey #CC1226−NDおよびMS−4 4−Pos Mounting Board、DigiKey #CC1230−ND)これらは順に、24V DCソレノイドバルブ(ARO、P251SS−024−0)を作動させることができる)。これらのバルブは、共通ポートおよび各1つが通常は開放しているポートおよび通常は閉鎖しているポート(各々、真空ラインおよび加圧空気ラインへ接続されている)を備える三方直接駆動ユニットである。ソレノイドは、8つのマニホールド(マイクロチップ上のM1〜M8)を介して作動する8本のフルスケール真空および加圧ラインを制御するであろう。制御ソフトウエアは、チップ上のチャネル内で流体を駆動するポンピング作用を作り出せるような方法でこれらのソレノイドを連続的に作動させることができる。ロボット制御ソフトウエアは、順にLabRATの制御を受けるExpress Script Engine(Tecan社)によって実行されるASCIIコード化スクリプトの形状にあってよい。現行のLabRATソフトウエアは、高度XML−RPCに基づくフレームワークを用いて機器を作動させる完全な機能性を提供する。
【0078】
マイクロチップを作動させるためのハードウエアは、スタンドアロン型機器に開発できる、または現行機器と結合することができる。例えば、Tecan MiniPrep機器は、必要に応じてオンチップおよびオフチップへ溶液をピペッティングするために使用でき、Tecan Smart I/Oカードは、順にMOVバルブおよびポンプを制御するハードウエアを制御するために使用できる。
【0079】
図27は、マイクロチップを備えたMiniPrepロボットを用いるシステムの正面図の実施形態である。ステージの最前面(右)にあるのは、アルミニウム合金製真空チャックである。チャックは、チップの全体的加熱を可能にする「サンドイッチ型」構造に埋め込まれた抵抗加熱要素を有している。温度制御装置は、最も左の黒色パネルの上部に見ることができる。チャックの左側から、オンチップバルブおよびポンプを駆動させる8本の真空ラインはチューブによってTecan社製パネル(この写真では見えない)の1つの後方に据え付けられた真空マニホールドへ接続されている。ステージの左側にあるのは、チップへ「リザーバ」試薬を分注するためのシリンジポンプ(シリンジが取り付けられている)である。
【0080】
図28は、温度制御装置、8つの24V DCソレノイド、および継電器を含む多数の据付け構成要素を含有している(リアパネルを取り外した後の)MiniPrepの内側を示している。エアポンプおよびSmart I/OボードもまたMiniPrepの内側に取り付けられているが、見ることはできない。
【0081】
本明細書に記載したバイオプロセッサカートリッジは、制御要素としてのマイクロ流体オンカートリッジバルブおよびポンプを用いてサンプルを処理するように設計することができる。カートリッジは、反応チャンバとしても機能する大きな中心ダイアフラムバルブとともに、これらの外部作動バルブおよびポンプを使用して流動を制御できるように設計することができる。図15は、カートリッジ上の12の同一バイオプロセッサユニット200の1つを示している。各ユニットは1つのサンプルを投入し、バイオプロセッシングされた3つの排出サンプル201〜203を調製する:1)DNAハイブリダイゼーション標識を用いたDNA分析、2)免疫標識を用いた毒素分析、および3)免疫標識を用いた粒子分析。さらに、各ユニットは試薬添加のための領域204、混合および反応のための領域205、ならびに再検査用にサンプルを保存するための領域206を有することができる。
【0082】
一部の実施形態では、1mLサンプルは、内部コントロールの添加後にエアサンプラによってカートリッジ上の注入口207内へ送達できる。注入口は、チャネルを閉塞させる可能性がある「大きな粒子状物質」を除去するために組み込まれた目の粗いフィルタを有していてよい。未処理700μLアリコートは、注入口から「A」と表示されたチャンバ208内へ、次に4℃で保持されたオンカートリッジ貯蔵チャンバ206内へポンプで送り出すことができる。保管サンプルは、1)再検査のため、および分析されたサンプルの試験結果が陽性の場合は可能性のある確証のため、および2)初回の陽性検出が再検査によって確証された場合は後の回収および法医学分析のためであってよい。保管サンプルは、TEC ペルチエ冷却装置などの外部冷却装置によってカートリッジ上で冷却して保存できる;必要であれば、安定化試薬をこれらのリザーバ内に乾燥状態で保存できる。カートリッジの使用後、使用されたカートリッジは、冷蔵された小型回転式トレイ内に保存することができる。
【0083】
一部の実施形態では、DNA、毒素、および粒子を即時に処理するための3つのアリコートを形成して処理することができる。毒素を標識するための100μLの試験アリコートは、最初にチャンバA 208内へポンプで送り込み、そこへ免疫標識および毒素検出用の試薬をポンプで送り込むことができる。サンプルは、サンプルと試薬を混合する必要がある場合は、ポンプでチャンバBと往復させることができる。サンプルは、インキュベーションおよび検出装置へ移動させるために排出口201〜203へポンプで送り込むことができる。第2の100μL試験アリコートは、無傷細菌もしくはウイルス粒子を検出するための免疫標識のためにチャンバA 208内へ移動させることができる。微生物もしくはウイルス表面被覆に対する抗体プローブはチャンバA 208内へポンプで送り込むことができ、サンプルは37℃で保持できる。抗体プローブは、後に検出装置内で識別できる抗体の複合混合物であってよい。標識後、バイオプロセッシングした粒子サンプルは、検出器による分析のためにキャピラリ内へ吸引することによって取り上げることができるリザーバ内へポンプで送り出すことができる。
【0084】
DNAサンプル調製のためには、毒素および粒子検出のためにアリコートおよびサンプルを処理した後、注入口に上方から蓋を被せ、残りのサンプルはカートリッジの底部を通して結合された外部超音波処理装置ホーンを用いて超音波処理できる。生成された超音波は、増殖性細胞、胞子、およびウイルスを破壊し、さらにハイブリダイゼーション動力学および流動特性を改良する目的で粘度を減少させるためにDNAを剪断する。溶解したサンプルは、試薬投入領域204からDNA分析のために標識したプローブを用いてハイブリダイゼーションするためにチャンバA 208内へ移動させることができる。ハイブリダイゼーションのために、取付具は、チャンバA 208の下方で加熱要素を含有することができる。フランキングバルブは閉鎖し、チャンバを95℃へ加熱してDNAを変性させ、さらに存在する任意の標的へDNAプローブをハイブリダイズさせるための最適温度へ冷却させることができる。これらのバルブは、これらのチャンバ内でPCRを実施するために十分にシールするので、このため蒸発を実質的に減少させることができる。
【0085】
RNA、タンパク質、および脂質を分解するためのサンプル消化ステップは、DNAに基づく検出のためのサンプルのバックグラウンドを減少させるため、そして下流検出器上の要求を減少させるために望ましいことがある。これが所望であれば、DNA分析サンプルは、非DNA物質を分解させるために試薬注入口208から添加されたバッファ中のRNAse、プロテアーゼおよびリパーゼのカクテルを有する可能性がある。添加は、サンプルを備えるチャンバA 208へ物質をポンプで送り出すことによって行うことができる。必要であれば、サンプルおよび消化試薬は、混合するためにポンプで隣接チャンバA
208とB 209との間を往復させることができる。消化が望ましい場合は、チャンバA 208内の消化されたアリコートは、本明細書に記載するようにDNAプローブを用いたハイブリダイゼーションによってDNA分析のために標識できる。
【0086】
ハイブリダイゼーションもしくは抗体プローブは、試薬カートリッジ内で低温で保存することができ、個別バイオプロセッサユニットを使用する直前に外部ポンプを用いてカートリッジへ添加することができる。プローブは、試薬を混合するためにオンカートリッジポンプを用いてチャンバ内へ送り込むことができる。同様にサンプルおよび試薬は、必要であれば、さらに混合するためにポンプでチャンバAとチャンバBとの間を往復させることができる。その後の実行は、バイオプロセッサカートリッジ内に事前装填された試薬を有していてよい。
【0087】
一部の実施形態では、検出器が添加された内部コントロールしか検出しない場合は、カートリッジを回転させて、次のバイオプロセッサユニットを準備できる。サンプルの検査結果が陽性の場合は、バイオプロセッサユニットは回転させられず、その代わりに試薬注入口からバッファを用いてフラッシュ洗浄される。保存されていた100μLサンプルは、検査結果が陽性であったプロセスから始めて再検査するためにチャンバAへポンプで戻すことができる。再検査サンプルは、上述したように処理して、可能性のある推定陽性検出事象として確証するために検出装置へ排出できる。LabRAT(商標)ソフトウエアを使用してフルスケールソレノイドを制御すると、シリンジポンプ、チャンバAのためのサーマルサイクリング用加熱要素、およびオンチップバルブを作動させることができる。
【0088】
ハイブリダイゼーションおよび抗体結合についての化学は、フル容量もしくはマクロスケール容量の結果に基づいてカートリッジ内で個別に最適化できる。反応物質の濃度、反応時間、および温度は、カートリッジフォーマットに対して再最適化することができ、ある範囲の投入微生物が及ぼす影響はスパイクされたエアサンプルを用いて再構成実験において試験できる。試薬の貯蔵条件を決定することは、当業者の能力の範囲内に含まれる。全試薬は試薬カートリッジ内に4℃で保存できる;保管寿命を延ばすためには、浸透圧調節剤(トレハロース、グリシンベタイン)などの追加の安定剤または他の物質を添加することができる。
【0089】
一部の実施形態では、混合するための戦略は、細くエッチング加工された寸法のチャネル内で一方が他方の上になるように混合すべき2つの流れを配置することにある。流れ間の短い経路が混合を強化する。また別の混合戦略は、ビーズを磁気により操作することによって層流を混乱させるために、反応チャンバ内での磁性ビーズなどのビーズの存在もしくはそれらの添加を活用できる。一部の実施形態では、これは一方の流れの中にある標的分析物を強制的に「他方の」流れの中に進入させることができ、これを使用すると処理反応または分析反応を開始させることができる。一部の実施形態では、必要に応じてビーズを捕捉するために堰を使用できる。一部の実施形態では、ビーズは使用後に廃棄物中へフラッシュできる。
【0090】
試薬安定化は、本明細書に開示したシステムの様々な実施形態、例えばフィールドデバイスにとって極めて重要な問題になることがある。このため、一部の実施形態では、試薬リザーバは、4℃へ冷却するためにペルチエを用いて制御された温度にあってよい。一部の実施形態では、試薬はReady−To−Go(商標)化学または、例えばトレハロースもしくはグリシンベタインなどの浸透圧調節剤を用いる他のフリーズドライ法を用いて安定化させ、その後に使用前に再水和することができる。再水和についての概念は、壊せるシールを備えるアンプル中に含まれる安定化試薬の1日アリコートまたは1週間アリコートであってよい。1日もしくは1週間有効ストックを提供するために安定化試薬を水和させるために機器内のアンプルへ水もしくはバッファをポンプで送り込むことができる。有効ストックは、安定性に依存して、シリンジポンプ内へ移動させる、またはバイオプロセッサ内へ直接的に装填することができる。
【0091】
a) マイクロビーズ集積化DNAシーケンシング(MINDS)システム
一部の実施形態では、MINDSシステムは、Sangerサンプルの無人自動化調製および分析を用いて超低消費コストでシーケンシングサンプルを調製および分析することができる。シーケンシングテンプレートは、単独DNAフラグメントから誘導された各々がDNAを運んでいるビーズとのバルクエマルジョンPCR反応において剪断された染色体もしくはBAC DNAから出発してビーズ上で調製できる。フラグメントを備えていないビーズを排除するための分類後、個別ビーズは、クリーンアップおよびμCAE分析と一緒に400チャネルマイクロチップ上に集積化された低容量(例、25nL)のサイクルシーケンシング反応チャンバへ送達できる。一部の実施形態では、ビーズは堰によって捕捉でき、サイクルシーケンシングは順方向および逆方向両方の対合末端(paired−end)読み込みのために実行でき、生成物は、順方向もしくは逆方向読み込みのどちらかのための親和性ゲル捕捉マトリックスを含有するデュアルサンプルクリーンアップチャンバ内へ電気泳動させることができる。親和性ゲルは、イオンおよび組み込まれていないヌクレオチドを除去するために洗浄できる。精製されたサイクルシーケンシングフラグメントは、温度を上昇させることによって親和性マトリックスから溶出させ、電気泳動法分析のために折り返しCEチャネル内へ注入できる。このアプローチは、一部には分子の数によって決定される基本的限度に近い規模でシーケンシングを実施できるので、試薬容量および費用を数桁分も減少させることができる。
【0092】
一部の実施形態では、集積化MINDSシステムは、ショットガンシーケンシング、指向性シーケンシング、および再シーケンシングのための全プロセスを自動化および超小型化することができる。MINDSシステムは、現行シーケンシング構造基盤を活用して、必要な操業コストを100分の1以下にするマイクロビーズに基づく蛍光DNA μCAEシーケンサを作り出すことができる。各システムは、フルスケールロボットに代えて小型ロボット式マイクロ流体デバイスを用いることで1週間までの無人操業を行なえる完全自動化シーケンシングを実施できる。
【0093】
MINDSシステムは、後で集積化されるモジュールで実行できる。一部の実施形態では、200nLのサイクルシーケンシング・マイクロチップに基づくモジュールを使用できる。高速回転式LIFスキャナに基づくDNA分析モジュールは、最新型マトリックスを用いて対の電気泳動チャネル内へ注入する前に、二重親和性捕捉チャンバを用いて対合末端読み込みサンプルをクリーンアップできるμCAEマイクロチップを備えるMINDSシステムのためのプラットフォームモジュールとして構築される。これらの5層マイクロチップは、「サービス」を行うマイクロ流体デバイスとともに、MOVバルブおよびポンプによって作動させることができる。サイクルシーケンシングモジュールは、100nLサイクルシーケンシング、サンプルクリーンアップ、および分離を集積化するコアMINDSチップを作製するためにオンチップで結合できる。一部の実施形態では、25nLサンプル調製チャンバを含む完全MINDSチップは、マイクロビーズライブラリを投入することができ、出力シーケンス情報が可能になる。
【0094】
b) サイクルシーケンシングモジュール
マイクロ流体サイクルシーケンシングモジュール(CSM)は、スタンドアロン機能として、およびMINDSシステムのためのマイクロチップに基づくサンプル調製におけるモジュールとして使用できる。CSMは、1)流れを制御するためのオンチップバルブおよびポンプを備えるサンプル調製マイクロ流体デバイスを含有するマイクロチップ、および2)オンチップバルブおよびポンプを通してマイクロチップを作動させるための外部インターフェースを含むことができる。サンプル調製CSMは、キャピラリ(CAE)およびマイクロチップ(μCAE)によるオフチップ分析を行なう200nLサイクルシーケンシング容量を備える16チャネルスケールであってよい。一部の実施形態では、外部流体インターフェース、加熱、および空気作動装置を備えるマイクロチップインターフェースデバイス(MID)は、400チャネル以上へ拡張できる。
【0095】
一部の実施形態では、オンチップバルブおよびポンプを備える16チャネルの200nLサイクルシーケンシングサンプル調製マイクロチップデバイスを使用できる。図14には、単純化されたマイクロチップカートリッジの2本のチャネルが略図で示されている。「投入」260および「排出」261と表示されたリザーバは、本質的には、マイクロ流体チャネルへ接続できるマイクロチップ262の上層内の穴である。本デバイスは、マイクロタイタープレートから投入DNAサンプル(PCR、プラスミド、または他のテンプレート)を取り出し、200nL容量でのサイクルシーケンシングを実施し、サンプルクリーンアップおよびCAE機器もしくはμCAE分析への注入の準備が整ったマイクロタイタープレート内へ蛍光標識サイクルシーケンシング生成物を排出することができる。マイクロチップは、順にLabRAT(商標)ソフトウエアによって駆動されるマイクロチップインターフェースデバイスによって作動させることができる。CSMマイクロチップインターフェースデバイスは、1)オンチップバルブを開放および閉鎖する、2)オンチップポンプを作動させる、3)貯蔵チャンバからマイクロチップ上へのサイクルシーケンシング試薬を計量する、4)サイクルシーケンシングを実施するための加熱および冷却を制御する、ならびに5)バッファ液および洗浄液を用いてチップを再生する、ための機構を提供できる。マイクロチップおよびMIDは、流体移動を実行できるTecan MiniPrep流体ハンドリングロボットの甲板上に取り付けることができる。
【0096】
一部の実施形態では、200nLのCSMマイクロチップは、以下のとおりに作動させることができる。サンプルは、Tecan MiniPrepロボットによってマイクロタイタープレート内から注入口260のウエル内へ装填できる。MOVオンチップポンプ264は、図9〜10に記載したように、オンチップポンプを駆動させる真空/加圧ラインの外部作動を用いるポンピングを制御することによって、反応チャンバ内へアリコートを移動させることができる。サイクルシーケンシングミックス265(CS Mix、図14)は、反応チャンバ263内へダイターミネータ法サイクルシーケンシングマスターミックスを分注するためにオンチップポンプによって送り込むことができる。コンピュータ制御下にあるMIDは、各反応チャンバ263を取り囲んでいる3つのバルブを密閉し、反応ミックスをサーマルサイクルさせる。完了後、200nLサンプルはオンカートリッジポンプによって、5μLの水を含有する排出口261内へ送り込むことができる。希釈サンプルは、その後のオフチップ後処理および分析のためにマイクロタイタープレート内の35μLのアルコール中へTecanによって移動させることができる。一部の実施形態では、サンプルはクリーンアップおよび分析のために二重親和性捕捉チャンバへ移動させることができる。CSMカートリッジは、残留DNAテンプレートを除去するためにバッファを用いてフラッシュすると新規サンプルを再装填することができ、プロセスが再び始まる。サイクルシーケンシングは、以前の反応由来のテンプレートによる5%を超える汚染を忍容できる:このため、反応チャンバをフラッシュするとマイクロチップを再生することができる。一部の実施形態では、各マイクロチップは数百回の反応に再使用できる。
【0097】
c) CSM機器
CSMを作動させるための機器の特徴は、1)CSMマイクロチップに基づくカートリッジ内の液体移動を制御するオンチップミニロボットの自動化外部作動、2)サーマルサイクリングのための外部加熱および冷却の制御、3)チップへサイクルシーケンシング試薬を送達するためのシリンジポンプの駆動、および4)サンプルをマイクロタイタープレートから注入口内へ移動させ、マイクロチップ排出口からマイクロタイタープレート内へ調製されたサイクルシーケンシングサンプルを取り出すためのTecan MiniPrepロボットの制御、を含むことができる。全4つの要素は、LabRATソフトウエアを通して制御できる。
【0098】
サーマルサイクリングは、マイクロチップの作製を単純化して作動コストを減少させるために外部源からの加熱および冷却を使用できる。一部の実施形態は、ファンからの冷却を備える抵抗加熱コイル群を使用する。一部の実施形態では、熱電対センサを備えるマイクロチップの上方に配置されたニクロム線加熱器を使用でき、30℃/秒を超えるランプ時間を有することができる。一部の実施形態では、加熱器は、再現性で、各チャネルを監視しなくても信頼できる400チャネルレベルで実行できる。一部の実施形態では、サンプル調製および分析が集積化された場合にマイクロチップの他の部分の温度を変化させることを防止するために冷却空気に対して囲壁を使用できる。一部の実施形態では、反応チャンバで温度を迅速にサイクルするために高性能ペルチエ効果加熱ポンプをストリップ状で使用できる。これらの様々な方法は、LabRAT(商標)制御下で現行NanoPrepサーマルサイクラソフトウエアを使用できる。
【0099】
ペルチエ加熱ポンプによって冷却状態に維持されたシリンジポンプを使用すると、マイクロチップ上のCSリザーバチャネルへサイクルシーケンシング試薬を送達し、オンチップポンプが試薬を分注するにつれてリザーバを補充できる。同様に、マイクロチップを再生するための水もしくはバッファを送達および制御することができる。一部の実施形態では、シリンジポンプは、1nLのフルステップサイズを有することができ、LabRAT(商標)ソフトウエアによって制御できる。一部の実施形態では、単純な重力流れを用いてリザーバに溶液を補充することが可能である;ソフトウエア制御下にあるミニバルブが流量を調節できる。
【0100】
一部の実施形態では、CSMは、Tecan MiniPrepの甲板上で実行できる。Tecanはサンプルをマイクロタイタープレートから注入口へ移動させ、最終サンプルを排出口から取り上げてそれらをマイクロタイタープレートへ移動させることができる。Tecanは、CAN制御下でX−Y−Z運動を行なうロボット上に取り付けられたチップを用いて単一シリンジポンプを作動させる能力を有する。上述したように、LabRATソフトウエアは、Microsoft WSH制御装置を用いてCANデバイスを制御できる。液体をマイクロタイタープレートへ、およびマイクロタイタープレートから移動させるスクリプト記述は単純である。手動によるピペッティングに代えてTecanを使用すると、CSMの完全自動化モードでの作動が可能になる。
【0101】
一部の実施形態では、CSMは、MegaBACE CAEおよびμCAEマイクロチップシステムの両方によるオンチップでのサイクルシーケンスのサンプリング、ならびにオフチップでの分析を含むことができる。ダイターミネータによるシーケンシング反応は、本質的には、DYEnamic(商標)ETターミネータシーケンシングキット(Amersham社)を用いて製造業者が規定したプロトコルによって実施できる。一部の実施形態では、試薬は95℃で25秒間、50℃で10秒間、および60℃で2分間を30回サイクリングさせることができる。サーマルサイクリング後、サンプルは、マイクロチップ排出口内へ移動させ、空気圧によって室温のマイクロタイタープレート内に含まれる40μLの80%エタノール中へ移すことができる。エタノールによる後処理後、サンプルは約2,800RCFで45分間にわたり遠心し、50RCFでの30秒間にわたる短時間の逆回転によってアルコールを除去できる。サンプルは、10μLの二重蒸留水中へ再懸濁させることができる。
【0102】
コントロールは、マイクロタイタープレート内で調製したフル容量サンプルおよびキャピラリ内で調製した500nLおよび200nLのNanoPrepサンプルを含むことができる。サンプルは、10kV、15秒間の注入を用いて96キャピラリMegaBACE機器内に注入し、120V/cmの磁界強度を用いて分離できる。4色電気泳動図は、Cimarron 3.12 basecallerならびに記載したようなPhredベースコーリングおよび品質スコア生成アプリケーションを含むSequence Analyzerベースコーリング・ソフトウエアパッケージ(Amersham Biosciences社)を用いて処理できる。全読み込み長さ(read length)は、99%の精度であるPhred20ウィンドウとして報告できる。
【0103】
増幅サイクルの数、反応時間、サイクリングプロファイル、および種々の反応物質、すなわちプライマ、ポリメラーゼ、dNTPs、ddNTPsなどの濃度は、必要に応じて個別に最適化することができ、当業者の能力の範囲内に含まれる。例えば、忍容されるDNA濃度の範囲を決定し、ある範囲のDNA対プライマ濃度の性能のマトリックスを測定できる。最初は、サンプルは精製されたPCR産物であってよい。CSMがPCRサンプルに対して最適化されると、問題のない、および問題のある配列の両方を代表する一連の実際のサンプルをCAEおよびμCAEの両方の分析のために試験し、CAE分析結果を備えるフル容量サンプル調製と比較することができる。容認基準は、フルサンプル調製結果と比較して同等のデータ品質、読み込み長さ、および成功率であってよい。コントロールは、フル容量反応およびNanoPrep(500nLおよび200nL容量)反応を含むであろう。
【0104】
一様性は、加熱器および冷却器のデザインならびにマイクロチップレイアウトにおける変化の両方によって対処できる。表面相互作用は、BSAもしくはPVAなどの添加物によって抑制できる。反応チャンバの表面化学は、改質LPA、PEG、または他のコーティング剤のいずれかを用いて抑制できる。ガラスについては、代替アプローチは、多数の部位がポリマーを遊離させるために加水分解されなければならないので表面固定化の寿命を延長させる、多数の表面部位へ同時にポリエステルおよび酸化多糖類などのポリマーのマルチポイント共有結合であってよい。
【0105】
d) 集積化MINDSシステム
一部の実施形態では、完全MINDSシステムは、3つのモジュールであるビーズライブライリーモジュール、サイクルシーケンシングモジュール、およびDNA分析モジュールを含むことができる。一部の実施形態では、完全MINDSシステムは、25nLの対合末端読み込みサイクルシーケンシング、対の親和性捕捉クリーンアップ、およびハイパーターンを備える折り返しマイクロチャネル上のμCAE分離を集積化している400チャネルのMINDSマイクロチップ上でビーズに基づくライブラリーを分析できる。MINDSシステムは、ビーズライブラリーの構造に依存して、ショットガンシーケンシングまたは再シーケンシングのための完全自動化システムであってよい。一部の実施形態では、サイクルシーケンシングモジュールおよびDNA分析モジュールは集積化することができ、PCRもしくは精製プラスミドなどの調製されたサンプルは投入サンプルとして使用できる。一部の実施形態では、PCRもしくは他の増幅反応は、マイクロチップ上で実施できる。
【0106】
DNA分析モジュールは、回転式スキャナ(図30)を含むことができ、マイクロチップ上での対合末端読み込みサンプルのクリーンアップを実行し、その後に順方向および逆方向シーケンシング反応の分離および検出のために2つの別個のμCAEチャネル内へサンプルを注入できる。検出装置は、488nmでの励起および4色検出を行なう回転式LIFスキャナであってよい。コアMINDSシステムを作製するためには、サイクルシーケンシングモジュールはDNA分析モジュール機器と集積化することができる。このコアシステムは、100nLのサイクルシーケンシング、対合親和性捕捉クリーンアップ、および同一マイクロチップ上での分離を集積化できる。FACS機器によって分類されているPCRフラグメントを含有するビーズは、マイクロチップへ送達することができ、個々のビーズは25nLサイクルシーケンシングチャンバ内へ送り込むことができる。
【0107】
i) DNA分析モジュール
DNA分析モジュールは、各対合末端読み込みから標識されたDNAフラグメントを分離および検出するために対合末端読み込みおよびμCAEのサンプルクリーンアップを実行できる。サイクルシーケンシングは、各々が、ベクター内に挿入された固有の親和性捕捉シーケンスを有している順方向および逆方向両方向にプライマを使用できる。フル容量、ナノスケール調製、またはCSMからの対のサイクルシーケンシングサンプルは、放射状デザインを備える分析用マイクロチップのリザーバ内へ装填できる。サンプルは、順方向もしくは逆方向読み込みのどちらかのための親和性捕捉オリゴヌクレオチドを含有する2つのサンプルクリーンアップチャンバ内へ導電学的に移動させることができる。サイクルシーケンシングサンプルは約20nLの容量へ濃縮できるが、他方イオン、組み込まれていない色素、テンプレート、ヌクレオチド、および酵素は廃棄物中へ通過する。濃縮およびクリーンアップされたサンプルは、温度を上昇させることによって遊離させ、分離マトリックスが充填されたマイクロチャネル内で分離のためにTwin Tインジェクタ内へ注入できる。放射状チャネルは環状検出領域に集束するので、そこでマイクロチャネルをスキャンして検出することができる。
【0108】
モジュール式ハードウエア構成要素は、1)多数の様々なマイクロチップのサイズおよびデザインに適応できるLIF回転式スキャナ、2)マイクロチップ、3)電気泳動法制御装置、4)温度制御装置、および5)マイクロチップ再生、を含んでいる。DNA分析モジュールは、完全集積化および自動化MINDSシステムの一部であってよい。
【0109】
一部の実施形態は、現行回転式スキャナと比較して10倍という高さに向上した検出性能を備える超感受性スキャンニングシステムを作り出す。10倍の向上は、スキャナ、マイクロチップのデザイン、および色素の化学的性質における小さな(1.5〜3倍)複合的向上を引き出すことによって入手できる。スキャナについては、最高品質PMT、2色性、およびミラーが光学的効率を向上させることができ、これらを高開口数レンズを備える高出力(200mW)コンパクトレーザと結合することができる。色素の化学的性質は、シアニン供与体を使用してより明るい色素を用いて向上させることができる。マイクロチップは、割増路長を用いて検出を向上させ、バンドを鮮鋭化することによって解像度を向上させるために検出領域内に極めて深いエッチングを有することができる。マイクロチップサンドイッチおよびマイクロ光学部内の反射表面は光線収集を強化できる。最後に、以下で記載する直接注入法は、完全サイクルシーケンシングサンプルを分離チャネル内に装填することを可能にできる。細心の注意を払って各要素を最適化することによって、堅固なシーケンシングのために必要とされる標識フラグメントの量が並行して減少するので、検出限界は、現行研究バージョンに比較して有意に向上させることができる。
【0110】
回転式スキャナおよび機器。一部の実施形態では、放射状μCAEデバイスにインテロゲートするために上方監視型(up−looking)の回転式共焦点レーザ誘導型蛍光スキャナを使用できる。回転式スキャナは、4色共焦点検出ユニットに結合された回転式対物ヘッドを含んでいる。回転式スキャニングは、高い位置精度および速度一様性とともに高スキャン速度を提供するという基本的長所を有している。回転式スキャニングは、1チャネルのような少数から384チャネル長にわたる10cm、30cm、またはそれ以上の直径のウエハを備える放射状ウエハデバイスと適合できる。このため、チップデザインは、様々な用途に、例えば新規シーケンシングのための長いレーン、および再シーケンシングのための短いレーンに合わせて作製することができる。
【0111】
回転式スキャナの実施例の略図は、図30に提示されている。200mW、488nmのレーザ(Sapphire(商標)OPSL、Coherent社、サンタクララ)は、2色ビームスプリッタおよびミラーによってステッピングモータの中空軸を通して反射される。シャフトの上部では、菱形のプリズムが光線を回転軸から1cm移動させ、高開口数(>0.7)対物レンズがマイクロチップの底面層を通してチャネル上に収束させる。蛍光は対物レンズによって収集され、光学系を通って返送され、そこでスペクトル的および空間的にフィルタに掛けられ、その後DAのための8チャネルを備えるMicrostar IDSCボードを備えるモジュラー式共焦点4色PMTユニット内で検出が行なわれる。ステッピングモータは、12ミクロンの空間解像度を備える5120のデータポイント/回転を生じさせる5Hzでランされ、典型的な100ミクロンチャネルを約8データポイントが越える。5番目のチャネルには、スキャナのシャフトに取り付けられているディスク内のスロットによってトリガーされる光ダイオードによって送られる;他の4本のチャネル内でのデータ獲得の開始は、5番目のチャネルにおける電圧上昇が関係付けられている。このデザインは、典型的には5Hzのスキャン速度で数pMのフルオレセインの検出限界を備えて感受性である。一部の実施形態では、データは、市販のベースコーラを用いて前もって処理し、分析することができる。
【0112】
一部の実施形態では、DNA分析モジュール機器は、さらにまた電気泳動法およびマイクロチップ再生を制御するためのマイクロチップインターフェースデバイスを有することができる。マイクロチップは、アラインメントツールを用いてポジショニングした後に加熱された真空チャックによって正位置に保持できる。一部の実施形態では、マイクロチップは、約600ランの寿命を有することができる。チャックは、共焦点検出器の平面に対して水平に維持するためにチップの上昇を調整するための3つのポイントを有することができる。電極リングは、マイクロチップの周囲でリザーバに適合できる;電極は、4つの高電圧電源装置(Stanford Research Systems社、Model
3101)によって制御できる。以下に記載するマイクロチップ再生は、使用されたマトリックスのフラッシングおよび再充填を提供するために中央に位置する「へその緒」を用いて適所で実施できるが、リザーバの清掃および再補充は、アウターチューブがバッファもしくは他の溶液を流れさせる間に物質を除去するインナーチューブを備えるチューブ・イン・チューブデザインから行なうことができる。
【0113】
マイクロチップおよび作動。一部の実施形態では、マイクロチップは、4層デバイス内に親和性サンプルクリーンアップおよび分離チャネルを組み込むことができる。オリゴヌクレオチド捕捉シーケンスを用いた親和性捕捉クリーンアップは、サンプルクリーンアップおよび濃縮のための堅固な解決策の可能性がある。注入時に希釈サンプルを濃縮できる導電学的注入とは対照的に、オンチップでの濃縮を使用せずに、Twin Tインジェクタは、それが装填するときに事前分離を実施し、その後に「ハートカット(heart−cut)」注入を実行するが、それらはどちらも希釈サンプルの検出に対して不利に働く。分離用マイクロチップ上に親和性捕捉を包含すると、親和性捕捉は組み込まれていないターミネータ、イオン、およびテンプレートを除去しながら希釈サンプルを再濃縮できるので、200nLのCSMサンプルを装填前にマイクロリットル容量へ希釈することを可能にする。このために、CSMおよびDNA分析モジュールは、個別に設計し、後に集積化することができる。
【0114】
一部の実施形態では、MINDSシステムは、放射状デザイン290(図34)、ハイパーターンおよび中央起点291を備える12”ウエハを使用できる。一部の実施形態では、用途に依存して、400チャネルおよび45cmまでの分離長(チャネルを折り返すことによって達成される)を有していてよい12”デザインと同一のチャネル密度および長を有する、8”ウエハ292を備える部分放射状デザインを使用できる。8”ウエハは、約108の分離チャネル293を有することができる。
【0115】
図21は、8”ウエハの1つの実施形態を例示している。様々な典型的実施形態では、この8”ウエハは短い読み込みに対しては直線状の14cm分離チャネルまたは長い読み込みに対しては約45cmまでの折り返しチャネルを有することができる。サンプルは、順に各々が分離チャネルに供給する2つの親和性捕捉チャンバへ接続している単独の装填リザーバ内へピペッティングできる。サンプルが装填された後、電極を備える電極リングを下降させ、各サイクルシーケンシングサンプルを、各々が捕捉すべきマトリックスを備える2つの親和性捕捉サンプルクリーンアップチャンバへ電気泳動にかけ、順方向もしくは逆方向読み込みのどちらかが濃縮され、その間にサイクルシーケンシング反応ミックスに含まれる望ましくない構成成分が除去される。順方向もしくは逆方向読み込みは、チャンバを65℃超へ加熱し、各読み込みを個別に分析するためにTwin Tインジェクタ内へ電気泳動させることによって遊離させることができる。そこで各装填リザーバは2つの分離チャネルに供給する。分離後、分離マトリックスは交換することができる。マトリックスは、マトリックスおよびフラッシュ液のためのチューブならびに中央共通陽極バッファリザーバのための電気配線を含有する中央の「へその緒」を通してポンプで送り出すことができる。400チャネルMINDSマイクロチップには多数の形状およびデザインを使用できる。分離は、多数のCAEマトリックス中で実施できる。
【0116】
一部の実施形態では、マイクロチップは、最適分離条件および必要に応じて、マトリックス操作のために温度を制御するためのペルチエ加熱器上の真空チャック上に保持できる。分離後、バッファは、使用済みマトリックスを置換するために「へその緒」を通してフラッシュできる。マイクロチップインターフェースデバイス内の手動チューブ・イン・チューブ真空吸引ユニットは、リザーバから使用済みバッファおよびマトリックスを除去できる。新鮮マトリックスは中央チャンバを通して添加できる;マトリックス廃棄物を最小限に抑えるためのフィードバックを提供するためには、マトリックスセンサを組み込むことができる。一部の実施形態では、マトリックスの交換は、カラム長よりほんのわずかに多いマトリックスしか交換しない精密ポンピングを用いて制御できる。いずれの方法も、10分の1までマトリックスの使用を減少させることができる。バッファは、チューブ・イン・チューブのアウターチューブによってリザーバ内へ再補充することができ、その間にマトリックスはインナーチューブによって真空除去される。親和性サンプルクリーンアップマトリックスもまた、必要に応じて本明細書に記載するようにサービスラインを用いて交換することができる。
【0117】
一部の実施形態では、マイクロチップは、正常サンプルを用いると600ランにわたり使用することができる。マイクロチップの性能は、性能が劣化するとLabRAT、e−メール、ページング、またはオンスクリーンディスプレイによって警告されたソフトウエアおよびオペレータによって監視できる。マイクロチップの交換は、オペレータが手動で実施できる。一部の実施形態では、使用済みマイクロチップの除去は、マイクロチップを取り外す前に、へその緒、電極リングならびにオンチップバルブおよびポンプのための作動バンドルを引き抜く工程を含むことがある。新規マイクロチップの取り付けは、マイクロチップを適正にポジショニングするためのアラインメントツールによって促進できる。アラインメントは、アラインメントマークの検出、ならびにソフトウエアの補助を受けた手動または完全自動化のいずれかによる光学系の焦点合わせによって検証できる。
【0118】
マイクロチップの製作。様々な典型的実施形態では、超微細加工プロセスは、Liu et al. 2000. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(10):5369−5374およびAnderson et al. 2000.
Nucleic Acids Res. 28:e60に記載されているとおりであってよい。一般に、Borofloatガラス製ウエハ(Schott社、ニューヨーク州ヨンカーズ)は、濃HFで予備エッチングし、次にCVDもしくはスパッタリングによってアモルファスシリコンマスクを沈着させることができる。一部の実施形態では、アモルファスシリコンの代わりにクロム−金を使用できる。HMDSの接着層をアモルファスシリコンの上部にコーティングし、ウエハにフォトレジスト(Shipley社、カリフォルニア州サンタクララ)の薄層をスピンコーティングし、ソフトベークすることができる。フォトレジストは、所望のチャネルパターンを有するマスクを通してUV光線を用いてパターン化できる。フォトレジストが現像された後、露出したアモルファスシリコンは除去し、チャネルパターンは濃塩酸を用いて、流体用ウエハ上のチャネルについては約40μmおよびマニホールドウエハについては約70μmの深さへガラスに化学エッチングすることができる。しかし、様々な構成成分の深さを決定することは、当業者の能力の範囲内に含まれる。残留しているフォトレジストおよびアモルファスシリコンは剥ぎ取ることができる。250μm以下のアクセスホールは、ダイアモンド製ドリルを備えるCNCミニミルを用いてBorofloatバイアウエハ内に穿孔できる。一部の実施形態では、より小さなホールは特注レーザを用いて穿孔できる。製造するために、超音波穿孔は全ホールを同時に穿孔できる。H2SO4/H2O2中での最終洗浄後、流体ウエハおよびバイアウエハは、バイアホールがチャネルギャップと適正にポジショニングされるようにアラインメントし、その後2層μCAEチップを製造するために約570℃の真空炉内でバイアウエハと加熱結合させることができる。5層マイクロチップについては、3枚のガラス製ウエハをアラインメントして最初に組み立てることができる;ガラス層のうちの2枚は薄いウエハであってよい。マニホールドウエハおよび厚さ254μmのPDMSメンブレン(Bisco Silicones社、イリノイ州エルクグローブ)は、UVオゾンクリーナ中で洗浄し、4もしくは5層のマイクロチップを組み立てることができる。UVオゾン処理は、不可逆性ガラス−PDMS結合を作り出すことができる。最終マイクロチップは、個別CSMマイクロチップを製造するためにダイスカットできる、またはMINDSマイクロチップのためにそのままで使用できる。
【0119】
一部の実施形態では、マイクロチップは、射出成形、ホットエンボス加工法、積層法などの方法、およびデザインを複製するためによく知られているその他の方法を用いてプラスチックや他の物質で作製できる。マイクロチップを製造するためのこれらの作製方法の適用は、本開示の範囲内に含まれる。
【0120】
DNA分析モジュールの特性付け。回転式スキャナを利用する実施形態では、検出限界は流動している色素溶液および内部標準物質として測定された水のRamanピーク(2つのピーク577.6nmおよび589.4nmから)を用いて測定できる。DNA分析モジュールを備えるサンプルクリーンアップおよび分離マイクロチップの性能は、その後に標準PCR産物の連続希釈が行なわれるフル容量PCR反応の標準物質を用いて特性付けすることができる。サンプルクリーンアップ(例、装填、洗浄、および溶出条件)ならびに注入および分離(時間、電圧、分離温度、バッファ濃度など)についてのパラメータは、当業者によく知られている方法を用いて最適化できる。品質値、成功率、および読み込み長さは、測定して試験サンプルおよび実質サンプルと比較できる。一部の実施形態では、読み込み長さは約600塩基以上であってよい。一部の実施形態では、親和性捕捉の再生を試験し、性能劣化前のラン数を測定できる。分離マトリックス中での尿素とDMSOとの部分的交換は、ラン時間を短縮させ、キャピラリ内の長い読み込み長さを生成できる。一部の実施形態では、マイクロチップは様々なマトリックスもしくはコーティングを用いてマイクロチップの寿命を決定するために標準サンプルを用いて繰返しランすることができる。例えば、8倍へのショットガンシーケンスに対しては、BACライブラリーは、約22ランの100チャネルDNA分析モジュールマイクロチップを要する可能性がある。
【0121】
ii) DNA分析モジュールとの集積化サイクルシーケンシングモジュール
CSMの機能をDNA分析モジュールと結合すると、コアMINDSシステムを作り出すことができる。上述および図14のCSMマイクロチップの基本ユニットデザインは、8” DNA分析モジュールマイクロチップへ移植することができる。これは100の対合末端読み込み親和性サンプルクリーンアップチャンバおよび分離マイクロチャネルと集積化された対合末端読み込みのための50個の100nLサイクルシーケンシングサンプル調製チャンバを備えたマイクロチップを作製することができる。本システムのサービスは、マイクロチップを作動および再生させるためにマイクロ流体およびミニロボット型オンチップ機能を使用できる。サンプルを装填するために外部オートメーションを含む実施形態では、コアMINDSシステムは、現行方法に比較して実質的に減少したコストで1日当たり7M塩基の高品質シーケンスを生成できる。
【0122】
機器。コアMINDSシステム機器のための基盤は、DNA分析モジュール機器であってよい。スキャナは、修飾せずに使用できる。上述したCSMマイクロチップインターフェースデバイスは、わずかな変更を加えるだけで、1)CSMマイクロチップに基づくカートリッジ内での液体の移動を制御するオンチップミニロボットの外部作動化を自動化する、2)サーマルサイクリングのための外部加熱および冷却を制御する、および3)チップへサイクルシーケンシング試薬を送達するためにシリンジポンプを駆動する、ために直接的に適応させることができる。一部の実施形態では、Tecan社製ロボットは必要とされない。1)のオンチップバルブの外部作動化のためには、各作動チャネルが、2本もしくは400本であっても、全チャネルのための1つの特定バルブの全部にサービスできるために、装置の適応は必要とされない。2)のためには、加熱および冷却はマイクロチップの外部であってよく、一連の抵抗加熱器またはペルチエのストリップであってよい。適応は、追加の長さおよび数の加熱器を備える形状を含む設計によって達成できる。熱の管理は、本システムにとって重要な検討事項である。3)のシリンジポンプのためには、追加のポンプは必要とされない。以下に記載するサービスチャネルの追加は、1つのシリンジポンプが全チャネルにサービスすることを可能にするはずである。そこで、装置の修正は、CSMマイクロチップインターフェースデバイスの構成要素とDNA分析モジュールマイクロチップインターフェースデバイスとを結合することであってよい。
【0123】
一部の実施形態では、マイクロチップインターフェースデバイスおよびマイクロチップの細部は、何らかの空間的もしくは温度の対立を排除するために設計できる。真空チャックは、サンプル調製およびクリーンアップチャンバのためにより低い温度のリングを有するように適応させることができる。結合CSMおよびDNA分析モジュールマイクロチップインターフェースデバイスのデザインは、以下で考察するオンチップマイクロロボットを用いてマイクロチップにサービスするというコンセプトによって大きく単純化できる。
【0124】
マイクロチップおよび作動。コアMINDSシステムは、CSMマイクロチップの機能性およびデザインを、DNA分析モジュールからのサンプルクリーンアップおよび分離と直接的に集積化できる。図22は、1つの典型的デザインにおける1対のチャネルを示している。マイクロチップ上の環状リング内にあるバルブおよびポンプのための作動ライン314に注目されたい。これらは図22では水平のラインに見えている。
【0125】
PCR産物もしくはPCR産物を備えるビーズであるサンプルは、注入口内へ装填できる。基本CSM反復ユニット(約200回反復できる)は、サンプルを、サイクルシーケンシングミックスを含む100nLサイクルシーケンシング反応チャンバ316内へポンプで送り出すことができ、4つの取り囲んでいるバルブは閉鎖し、サイクルシーケンシングが発生する。サイクルシーケンシング後、CSMにおけると同様に、サイクルシーケンシング産物および反応物質は、水を含有するリザーバ内へポンプで送り出すことができるが、ただし今回は、電極接続を有している。サンプルは、2つの対で読み込まれる親和性捕捉チャンバ317〜318へ電気泳動させることができる。不純物を除去し、生成された蛍光標識サイクルシーケンシングフラグメントはTwin Tインジェクタを通して2つの分離チャネル内へ注入することができる;このユニットは、例えば、400本の分離チャネルを生成するために、約200回繰り返すことができる。フラグメントは高性能ナノゲルもしくは他のマトリックス内で分離し、回転式スキャナによって中心近くで検出できる。一部の実施形態では、約400本の分離チャネルを有することができる12”ウエハの4分の1区画を模倣するために、約100本の分離チャネルを備える8”を使用できる。
【0126】
マイクロチップは45分間の分離サイクル時間、45分間のサイクルシーケンシングおよびクリーンアップサイクル時間を提供でき、対で読み込まれる1つのサイクルシーケンシング反応チャンバは、2つの分離チャネルに供給できる。これはデザインを単純化し、必要とされるバルブ、電極、およびチャネルの数を減少させる。分離は、分離とサイクル時間を共有するマイクロチップ再生および事前ランを用いてほぼ連続的であってよい。35分間の分離中、サンプル調製サイクルは、注入口内に装填されたサンプルを用いて再び開始できる。一部の実施形態では、サンプルは、分離チャネルの注入準備が整う時間までに調整して分離の準備を整えることができる。一部の実施形態では、必要に応じて単独分離チャネルに供給する複数のサイクルシーケンシングもしくはゲノタイピングチャンバを使用できる。マイクロチップは、共通中央陽極を有することに加えて、大きなバッファ容量を備えるマイクロチップの周囲を走る共通の環状開放陰極チャネルをさらに有することができる。このチャネルは、分離を劣化させるイオン枯渇を房すする特別なバッファ能力を有することができ、電極の数および交換を単純化し、バッファおよび過剰なマトリックスを除去せずに反復マトリックス装填を可能にできる。マイクロチップは、デザインおよび作動を大きく単純化するために他のチャネルに交差するサービスチャネル(すなわち、サイクルシーケンシングミックス、廃棄物、親和性ゲルポリマー、水)を可能にするために三次元をさらに使用できる。
【0127】
一部の実施形態では、結合CSMおよびDNA分析モジュールマイクロチップインターフェースデバイスは、両側にエッチングされた中央ウエハを備える三次元マイクロチップデザインを用いてオンチップミニロボットを備えるマイクロチップをサービスすることに依拠できる。サービスチャネルは、多層デザインにおいて様々な層を結合するバルブの能力を基礎としている。
【0128】
図12は、サンプルクリーンアップチャンバ321へ新鮮親和性捕捉マトリックスを提供しているサービスチャネル320の接続の実施形態を示している。図示したデザインでは、サービスチャネルの流体路はエッチングされたウエハ322の上部の左から分離チャネルを越え、PDMS層上のバルブ323の1つの開口部に入り、越え、そしてそのバルブの第2開口部を、サンプル調製、クリーンアップ、および分離チャネル321、324がエッチングされている二重エッチングされたウエハの底面層へ下っていく。サービスチャネル流体路は、次に親和性捕捉サンプルクリーンアップチャンバ(図の平面に垂直に走る)およびバルブを通過して、エッチングマイクロチップの上部へ再び結合する。これは、マイクロチップの上面上のサービスチャネルが、妨害されずにそれらの上方を通過することによってサンプル分離チャネルおよび他のチャネルに交差することを許容する。この同一原理は、サンプル調製チャネルに適用できるが、分析チャネルには適用できない。幅広で深くてよい個々のサービスチャネルは、サイクルシーケンシングミックスを送達し、2つの親和性捕捉マトリックスを2つのサンプルクリーンアップチャンバ内へ再充填し、サンプル調製チャンバを回復させるための洗浄を提供し、サンプル調製チャネル、サンプルクリーンアップチャネル、および分離チャネルの全部から廃棄物を収集するであろう。6本のサービスチャネルは、各々がマイクロチップ上で同心性リングを形成するであろう。それらは、シリンジポンプ、マクロスケールの流体ライン、もしくは真空ラインに接続されるであろう。二重エッチングされたウエハとPDMSとの間の「付加的」ウエハ層は、貫通穴しか含有していないであろう。エッチングされたチャネルはエッチングされたウエハの両側にあるので、貫通穴は、サイクルシーケンシングミックスのため以外は相当に大きくてよい。
【0129】
マイクロチップの再生は、以下のとおりに実行できる。分離後、中央のへその緒は新規マトリックスをチャネル内に押し込み、分離チャネルをぴったりに充填する。サイドチャネル上の相違する相違するチャネル幅は、マトリックスを陰極へ方向付けることができる。一部の実施形態では、2つのサンプルクリーンアップチャンバは、2つのサービスチャネルを用いて再生できる。サービスチャネルは、通常はバルブによって閉鎖できる。親和性マトリックスを交換するためには、バルブを開放させ、チャネルのためのシリンジポンプを作動させ、新規の親和性マトリックスが順方向チャンバ全部にポンプで送り込むことができる(例えば、親和性マトリックスの1回の装填に付き複数のランが可能なことがある)。他の親和性チャンバのためにも類似のシーケンスが発生する。サイクルシーケンシング反応チャンバは、洗浄サービスラインからチャンバを通って廃棄物リザーバ内へ洗浄液をポンプで送り出すことによって同様に洗浄できる。バッファリザーバは、一番上のウエハの上部にある大きな共通リザーバへ接続できる。より大きな容量は、蒸発およびバッファ枯渇の影響を最小限に抑えることができ、バッファ充填およびフラッシングを単純化できる。
【0130】
本開示の態様は、以下の実施例を参考にするとより明快に理解することができるが、実施例は決して本開示の範囲を限定するものであると解釈されてはならない。
【実施例】
【0131】
1. 大腸菌(E. coli)のビーズに基づく捕捉
磁性ビーズに結合したモノクローナルもしくはポリクローナル抗体を含む希釈溶液からのモデル標的微生物の捕捉を使用すると、BPMマイクロデバイス内へ導入するための濃縮精製物質を提供できる。ここでは、本発明者らは、大腸菌のO157菌株に対する抗体と結合したDYNAL(登録商標)ビーズの使用について記載する。本発明者らは、3シリーズの実験を実施した:(1)希釈ストックから大腸菌を捕捉する、(2)高度に過剰のバシラス菌の存在下で大腸菌を捕捉する、および(3)Baltimoreエアサンプラからのエアロゾルサンプルから大腸菌を捕捉する。
【0132】
本発明者らは、最初に食品サンプル中で大腸菌O157を検出するために使用されるDYNAL(登録商標)「スワブプロトコル(swab protocol)」を、適切な増殖培地へのビーズの直接平板培養と比較した。本発明者らは、非病原性菌株O157およびE.coli? ATCC strain 700728のトリプチケースソイ寒天(TSA)上への直接平板培養は約5倍以上のコロニーを産生する、このためスワブ法より捕捉微生物数のより良好な推定値を提供することを見いだした。このため、本発明者らは、その後の全実験において直接平板培養法を使用した。
【0133】
本発明者らは、DYNAL(登録商標)ビーズがPBS/Tweenバッファ中で105CFU/mL〜101CFU/mLの範囲内の細胞力価にわたり大腸菌に結合する能力を測定した。これらおよびその後の免疫磁気分離(IMS)実験では、プロトコルは、5μLのDYNAL(登録商標)ビーズの懸濁液を250μLのPBS/Tween中の大腸菌の適切な希釈液に添加することであった。細胞は、添加されたビーズとロッキングプラットフォーム上で10分間にわたりキャップをしたプラスチック製マイクロフュージチューブ内で混合した。ビーズはその後、強力な磁石を用いてチューブの側面に接触させて捕捉し、上清を除去し(しかし平板培養のために保存した)、ビーズをPBS/Tweenバッファで3回洗浄した。ビーズを再懸濁させ、ビーズの希釈液を平板培養した。数回の実験で、本発明者らはさらに洗浄液をプレートアウトした。一般に、洗浄液はほとんど標的微生物を含有していなかった;標的細胞はビーズ上に捕捉された、または結合せず、一次上清中で回収可能であった。
【0134】
図35は、捕捉を2×105、104、103、102、20、および2cells/mLの開始時細菌濃度について3回実施した、PBS/Tween中に希釈した大腸菌O157を捕捉した結果を示している。捕捉された細胞数の観察値は、105〜10cells/mLの範囲にわたり線形(R2=0.995)であり、105〜103cells/mLの範囲については捕捉効率はほぼ95%を超えていたが、100cells/mLについては87%へ、そして20cells/mLについては69%へ低下した。他の実験(データは示していない)は、一般に103〜105の大腸菌濃度についてはPBS/Tweenから85%を超える回収率を生じた。
【0135】
2. モノクローナル抗体を用いた大腸菌捕捉のダイナミックレンジ
捕捉化学は、最初はチューブ内で250μLの容量で試験し、バッファ中に分散させたモデル微生物を用いて捕捉および洗浄を最適化した。図36は、DYNAL(登録商標)ビーズに結合したモノクローナル抗体を用いた大腸菌の代表的な捕捉を示している。大腸菌O157は、250μLのPBS/Tween中の様々な濃度で含まれる抗大腸菌O157抗体と結合した5μLのビーズへ添加した。この混合物を回転式ミキサで10分間混合した。ビーズは、強力磁石を用いてチューブの側面に引き寄せ、上清を除去した。ビーズは、250μL PBS/Tween(PBST)を用いて3回洗浄した。洗浄したビー酢を250μLのPBST中に再懸濁させ、捕捉した大腸菌をTSA上で計数した。
【0136】
図36に示した結果は、ビーズの量とビーズが大腸菌を捕捉する能力との間には用量反応関係が見いだされることを証明している。図36は、約106cells/mLまでは捕捉が線形であり、約4×107cells/mLの最高値で飽和することを示している。106cells/mLを超えると、上清中で回収される細胞のパーセンテージが増加する。大腸菌で飽和したDYNAL(登録商標)ビーズの直接的顕微鏡検査によって、約5cells/ビーズが明らかになった。この捕捉法は、250μL中に含有される標的細胞の平均90%超を15分間未満に10μL未満の容量へ精製および濃縮する能力を証明した。
【0137】
3. モノクローナル抗体を用いた大腸菌の特異的捕捉
ビーズに基づく捕捉法の特異性を決定するために、本発明者らは、添加されたBacillus cereus(ATCC 11778)細胞が、抗体のコーティングされたビーズへの大腸菌の結合に及ぼす影響を標準アッセイ条件下で試験した。約104 E. coli/mLの懸濁液を様々な力価のB. cereusと混合し、上述したようにIMSを実施したが、ただし回収は選択的にB. cereusを阻害するレベルで添加されたテトラゾリウムを備えるTSA培地上で実施した。これは細胞混合物の直接平板培養を許容したが、複製してコロニー形成単位(CFU)として定量できたのは大腸菌だけであった。
【0138】
図37に示したように、B. cereusの添加は、2種の微生物が1/1の比率で存在した場合には大腸菌がビーズに結合する量を約20%減少させたが、100,000倍過剰のBacillus菌は大腸菌の結合をコントロールの56%までしか減少させなかった。これは、この抗体−細胞組み合わせについては、DYNAL(登録商標)ビーズが極めてすぐれた特異性を生み出せることを示唆している。
【0139】
4. モノクローナル抗体を用いたエアロゾルサンプルからの大腸菌の捕捉
本発明者らは細菌細胞を効率的に捕捉、精製、および回収できることを証明したので、Spector Industries社の御厚意により90%(v/v)のBaltimoreエアサンプラ由来液体(BASL)サンプルを含有する溶液から大腸菌O157を回収することに拡大したいと考えた。BASLは、潜在的に抗体媒介性結合および回収を妨害する可能性がある、極めて多種多様な競合する微生物、花粉、ならびにその他の化学物質および生物学的物質を含有している。
【0140】
本発明者らがBASL溶液から大腸菌O157を濃縮および回収する能力を試験するために、純粋培養中でこの菌株を増殖させ、90% BASL中、およびコントロールとしてのPBST中でも102、103、および104CFU/mLの力価を調製した。DYNAL(登録商標)ビーズ(抗O157抗体を含有する)の5μLの懸濁液を、90% BASLもしくはPBSTのどちらかの中に大腸菌を含有する250μLのサンプルに添加し、ロッキングプラットフォーム上で10分間インキュベートし、その後にビーズを捕捉法を実施した。上清を除去し、PBSTを用いてビーズを3回洗浄し、PBST中に再懸濁させた。CFUの数を決定するために、一次上清およびビーズを平板培養した。全プレート計数は、セフィキシムおよび亜テルル酸塩(CT−SMAC社)を添加したMacConkey−ソルビトール寒天を用いて決定した。CT−SMACは、大腸菌O157のための半選択的培地であり、BASL中に含有される極めて多数の微生物から非大腸菌CFUの総数を減少させるために役立ち、ソルビトールの発酵によってO157の比色指示を提供する。
【0141】
本発明者らの標準IMSプロトコルを用いて、90% BASLを含有する溶液から大腸菌O157の極めてすぐれた結合および回収が入手された(図38)。一般に、細胞がPBSTまたは90% BASLのどちらに分散していたかとは無関係に、90%を超える細胞がIMSビーズに結合して回収された。これは、試験した104、103、および102CFU/mLの細胞濃度範囲にわたって事実であった。
【0142】
図39は、特に104CFU/mLの力価についてのデータセットを示している。第1バーおよび第3のバーは、コントロールの力価を示している。第2のバーは、サンプルがコントロールとしてのPBST中でのみ実施された場合のビーズ分画および上清分画中で回収された細胞の比率を示している。第4のバーは、実験が90% BASL中でのみ実施された場合のビーズ分画および上清分画中で回収された細胞の比率を示している。この実験は、BASL中の構成成分が、少なくともこの抗体およびそのエピトープについては結合および回収を妨害しないことを示している。
【0143】
5. 固相抽出法(SPE)
本発明者らは、干渉化合物が貫流するのを許容しながら小さな表面上に分析物を結合させる、リットル量のサンプル容量まで処理できるオフチップ型のディスポーザブル式フロースルーデバイスについてSPEを評価した。最終的に、標的分析物は、マイクロチップに基づくバイオプロセッサによる下流処理のために濃縮形で回収できる、またはSPE物質自体をマイクロチップのためのフィードストックとすることができる。
【0144】
本発明者らは、シリカマトリックスを使用する大腸菌のSPE捕捉を評価した。基本スキームは、様々な力価の細菌に固相を通過させ、少量のバックフラッシュを用いて溶出し、次に細菌含量について上清および溶出液を分析することであった。以下の実験では、大腸菌のDH5α菌株(Invitrogen Technologies社)をPBS/Tween(PBST)中で104〜102cells/mLの範囲内の希釈率で調製した。全部の実験において、100mgの固体床を有するベアシリカExtract−Clean SPEカートリッジ(Alltech Associates社)を使用した。
【0145】
各カートリッジに対して:(1)18μLの細菌/酵素混合液に約5mL/分の流速でSPE床を通過させた;(2)上清を収集し、細菌力価について分析した;(3)2mLのバッファを用いてカートリッジをバックフラッシュし、溶出液中の細菌数を決定した。分析は、細菌の相対捕捉率および回収率を決定するために、上述したように37℃でTSA上の細菌増殖によって実施した。
【0146】
6. フロースルーモードでのSPE培地による細菌の保持
図40は、25,000もしくは45,000CFU/mLの相当に高濃度の細菌を含むサンプルを用いて、装填したサンプル中、ならびにSPE後上清(未結合)および溶出液中の細菌濃度の関数としての細菌アッセイの結果を示している。この範囲内では、80〜90%の大腸菌がSPEマトリックス中に保持されるが(図41)、少量の細菌は通過し、極めて少量(1%)は逆流洗浄によって回収される。そこで、シリカ上では強力な結合が示され、生育細胞の溶出は極めて少ない。125および250CFU/mLの極めて低い力価では、比例してより多くの細胞がカラムを通過し、約20%しか保持されない(データは示していない)。
【0147】
7. フロースルーモードでのSPEおよびアガロース「Big Bead」によるタンパク質(β−ガラクトシダーゼ)の保持
一部の実施形態は、生体材料を捕捉または精製するためにアガロースに基づく「Big
Bead」を使用する。市販で入手できるβ−ガラクトシダーゼ(Sigma社)を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)、1mMのMgCl2中に100および10ng/mLの2種の濃度で溶解させた。これらの2種の溶液は、50Åの孔径を備える100mgの50μmシリカ粒子を含有する「Extract−Clean」 SPEカートリッジ(Alltech社)、または500μmの硬化アガロースビーズを含む5mLの「Big Bead」カラムに通過させた。アガロースおよびシリカ由来培地の両方に対して、酵素溶液(20mL)に約5mL/分の流量でそれらの各SPE床を貫流させ、上清を収集し、カートリッジを2mLのバッファで約1mL/秒の流量でバックフラッシュした。上清および溶出液は、基質としてo−ニトロフェニル−β−ガラクトシド(ONPG)を用いて酵素活性について分析した。
【0148】
図42は、10および100ng/mLの両方の酵素濃度にある2種のマトリックスについて、「上清」、「溶出液」、および「保持された」分画中のβ−ガラクトシダーゼ活性のグラフを示している。「保持された」は、装填時、貫流中、および溶出液の間の差によって計算する。シリカに基づくSPE培地については、β−ガラクトシダーゼの約75%が貫流して、上清中で回収される。バックフラッシュした溶出液中では極めて少量の酵素(1〜2%)しか検出されない。このため、β−ガラクトシダーゼの約25%がカラム上に保持されている。「Big Bead」培地については、β−ガラクトシダーゼの85〜99%がカラムを貫流するが、溶出液中で回収されるのは5%未満である(図42)。これは、極めて少量の約0〜10%がマトリックス上に保持されることを意味する。このため、これらの培地は毒素などの標的分析物を保持された物質から分離するためのフロースルーモードにおいて有用な可能性がある。
【0149】
8. フロースルーモードでの捕捉培地としてのアガロース「Big Bead」による大腸菌の保持
本発明者らは、アガロースBig Beadカートリッジが大腸菌のDH5α菌株に選択的に結合して濃縮する能力を評価した。図43は、2,000または4,700CFU/mLの初期細胞濃度で実施されたBig Bead捕捉実験から入手した分画中の大腸菌DH5αの分布を示している。これらの実験は、104または103CFU/mLで20mLの細菌懸濁液を用いて、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)、1mMのMgCl2中で実施した。このアッセイは、TSAプレート上の増殖であった。低力価(2,000CFU/mL)では、>70%の細菌がフロースルー分画中で、バックフラッシュした溶出液中では1%未満が回収された。高力価(4,730CFU/mL)では、>80%の細菌がフロースルー分画中で、溶出液中では5%未満が回収された。したがって、Big Beadマトリックスに結合したままなのは25〜10%の細菌だけであった。
【0150】
9. NanoBioProcessor用マイクロチップ
マイクロ流体デバイスの超微細加工は、本質的にはLiu et al. 2000.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(10):5369−5374によって記載されたように実施した。手短には、Borofloatガラス製ウエハを洗浄し、アモルファスシリコン製マスクを沈着させ、その後にHMDS層およびフォトレジスト層を接着させた。フォトレジストは、マスクを通して紫外線を用いてパターニングし、チャネルパターンは濃HFを用いて、典型的には流体ウエハ上のチャネルについては40μm、およびマニホールドウエハについては70μmの深さへ化学エッチングした。フォトレジストおよびアモルファスシリコンは剥ぎ落とし、アクセスホールはダイアモンドドリルを備えるCNC−ミニミルを用いて穿孔した。これらの穴は、4層マイクロチップにおいて反応および検出チャンバとして使用できる。または、本発明者らは、全部の穴を同時に穿孔するためには超音波穿孔を使用するであろう。洗浄後、流体用ウエハおよびバイアウエアをアラインメントし、熱結合させた。4層マイクロチップを作製するために、マニホールドウエハおよびPDMSメンブレンを加えた。
【0151】
2つのNanoBioProcessor用マイクロチップが設計かつ構築された。第1のマイクロチップ、MBI−11 240(図19)は、様々なスケールで本質的なマイクロ流体処理オンチップ構成成分を単離および試験するために設計された。これは、(1)バルブのデザイン、(2)反応チャンバのデザイン、(3)連動反応、および(4)ルータのデザインの実施形態を示している。各要素の作動は、バルブ、ポンプ、およびルータを作動させる8チャネルのフルスケール空気圧システム241によって制御される。本発明者らは、3層および4層チップにおけるMOVバルブ、ポンプ、およびルータの作動について試験した。チップの各要素は、バルブ作動を促進するために8チャネルのフルスケール空気圧式バスを用いてインターフェースするように設計されている。
【0152】
第2のNanoBioProcessorマイクロチップであるMBI−12は、サイクルシーケンシングもしくはPCRのためのビーズからの両方のサンプル調製を試験するため、ならびに個別に、およびサンプル調製と結合した両方でμCAEを試験するために開発された。図20に示したマスクのデザインは、エッチングし、機能的な4層マイクロチップに組み立て、試験されている。MBI−12は、μCAEチャネルおよびそれらを上流サンプル調製デバイスへ接続する数種のデザインを有している。
【0153】
本発明者らは、MOVバルブ、ポンプ、およびルータを用いる、ならびにバイアなどの深いチャンバ内で良好に機能する表面弾性波(Surface Acoustic Wave:SAW)混合を用いる混合を例示した。SAWは、マイクロチップ内のチャンバ内で脈動内圧波を作り出し、溶液を均質化してそれらを混合する。
【0154】
10. 生物兵器防衛のためのサンプル調製を実施するNanoBioProcessor
このバイオプロセッサモジュールは、上流のエアサンプルコレクタもしくは他の投入デバイスからサンプルを受け入れ、保存および再検査のためのアリコートを作製し、サンプルを溶解し、サンプルを調製して標識し、さらにそれらを分析のために単分子蛍光相関検出器へ排出する。バイオプロセッサモジュールは、流体デバイスを含有するディスポーザブルのプラスチック製カートリッジおよびカートリッジを作動させる機器を含んでいる。
【0155】
分析前に、サンプルは分割され、アリコートに分配される。自動化マイクロ流体プロセッサは:1)検査のために核酸を調製する;2)検査のためにタンパク質を調製する;3)検出のために細胞を調製する;4)陽性サンプルの再検査および法医学分析のために保存することができる。
【0156】
カートリッジは、「CD」フォーマットにあり、そして単独サンプルのために使用された各ユニットを備えて、1セクタ内に1カートリッジ当たり12個のバイオプロセッサユニットを有する。カートリッジはバイオプロセッサユニット内で1つのサンプルを処理し、その後次のバイオプロセッサユニット内の次のサンプルを受け入れるために回転する。2時間のサンプリング処方のために、カートリッジは、CDチェンジャに類似するミニ回転トレイ内に保存された一連のカートリッジから自動的に毎日交換される。カートリッジおよび試薬を再供給するための手動介入は、約2週間毎に1回実施される。
【0157】
本機器は、カートリッジを保存する、試薬を装填する、実行する、および取り替えるための機構を提供する。本機器は、1)バルブおよびポンプを作動させるために圧力もしくは真空を送達するソレノイドを開閉する、2)カートリッジの領域を加熱および冷却する、3)ミニ回転式トレイへ、およびミニ回転式トレイからカートリッジを移動させる、4)微生物を超音波により破壊する、および5)必要に応じて他の機能を行なう機能性を有する。
【0158】
11. 生物兵器防衛のための遺伝分析を実施するNanoBioProcessor
サンプル濃縮モジュール。マクロスケールで開始され、標的微生物の表面エピトープに対する抗体を用いて修飾された磁性ビーズが、チャンバ内のミリリットル容量のエアコレクタ210の排出物(または他のマトリックスから生成したスラリ)へ加えられる(図8)。ビーズは、個別微生物、サブタイプ、種などに特異的な抗体を用いてコーティングされた数セットのビーズの混合物である。インテロゲートされる微生物の範囲は、追加の試薬混合物を用いて拡張できる。ビーズは標的微生物を捕捉し、その間に不純物は洗浄によって除去される−第一次元の選択性および特異性が提供される。標的微生物を含有するビーズは、SCPM211内で磁石によって収集される。
【0159】
サンプル増幅および分析モジュール。今度はマイクロスケールに入り、ビーズは、NanoBioProcessor(NBP)用マイクロチップ213上で溶解バッファを含有するリザーバ212内へ装填され、その後の操作は全部がマイクロ流体スケールで発生する。NBPマイクロチップ200(図18)は、制御要素としてマイクロ流体オンチップバルブおよびポンプを用いて個別バイオプロセッサ内でサンプルを処理するように設計されている。ビーズは、それらが堰222によって捕捉されるまでリザーバ221からポンプで送り出され、そこで胞子および/または細胞を破壊してDNAを遊離するように超音波処理される。DNAは、反応チャンバ223へ移動させられ、そこではμRT−PCRのためのプローブを含有する特異的プライマを備えるPCR試薬がオンチップポンプによって添加され、多重化反応でμRT−PCRが実施される−第二次元の生化学的選択性および特異性が提供される。
【0160】
RT−PCRは分子診断学の強力なツールではあるが、蛍光がヌクレアーゼ、非特異的伸長、または他の機構によって消されないので、RT−PCRには高度の可変性バックグラウンドという難点がある。擬陽性を最小限に抑えるために、陽性と推定されるμRT−PCRサンプルは、それ以上の選択性および特異性を得るために、高速(<5分間)オンチップ・マイクロチャネルキャピラリアレイ電気泳動分離(224)によって分離される。バイオインフォーマティクスのプライマデザインによって様々なフラグメント長の産物が生成され、マイクロチャネル電気泳動分離および蛍光発光によって識別される−フラグメントのサイジングにより、真の陽性の確証および同定を伴うPCR反応の多重化の増加が可能になる。マイクロチップ225上には、少なくとも96個のバイオプロセッサユニットが放射状に配置される(図18)。96チャネルマイクロチップは、1時間に付き1つのチャネルを用いて4日間作動する。
【0161】
12. NanoBioProcessorで実施されるEXPAR反応
EXPARは、オリゴヌクレオチド配列、熱安定性ポリメラーゼ、およびニッキング酵素を用いる、60℃でDNAの短いセグメントを特異的に増幅させるための高速等温法である。生成物は、蛍光またはMSによって検出される。EXPAR反応は、NanoBioProcessorで遺伝子検査、遺伝子発現測定、分子診断学、生物兵器防衛およびその他の用途のために実施できる。
【0162】
反応ミックスは単独ステップでサンプルに添加され、熱安定性ポリメラーゼおよびニッキング酵素は、マイクロチャネル内で大多数の他のタンパク質と同様に機能する。EXPARは、わずかな改変を行なった後に図15もしくは20に示したマイクロチップ内で、または図13に示したマイクロチップ内で実施される。DNAもしくはRNAである核酸は、1つの標識されたIMS投入などのマイクロチャネル250内でMOVポンプ251を用いてチャンバ内へ移動させられ、次に試薬チャネル252の1つから単一反応ミックスが加えられる。流体回路を使用して複数の反応物質の1つが反応チャンバ253へ添加される。反応チャンバの温度は、任意で制御される。反応後、処理されたサンプルはMOVポンプを用いて、オフチップMSによる分析のためにリザーバもしくはチューブ254内へポンプで送り出される、または蛍光、化学発光もしくは他の検出方法によってオンマイクロチップで分析される。分析のための単一チャネルに加えて、サンプルはMOVルータを用いて多数のチャネル内に分割し、その後に多重EXPARを行うことができる。
【0163】
13. NanoBioProcessorで実施されるRiboMaker反応
RiboMaker検出システムは、人工プロモータ複合体(APC)およびRiboLog(商標)と呼ばれるヌクレオチドアナログを用いる、abscription(商標)と称するRNAポリメラーゼ(RNAP)転写の不稔開始に基づいている。APCは、50〜450個のトリヌクレオチド不稔生成物/分/部位を生成するためにRNAPポリメラーゼのための開始部位を提供する。検出は、MS分析、蛍光、化学発光、または当業者によく知られている他の方法によって行うことができる。DNAもしくはRNA分析のためには、APCは、標的部位プローブに対する特異性を提供するフランキング配列を有することができる。相違する質量単位を備えるRiboLogは、どの部位が結合しているかを同定できる。インテロゲートすべき配列の様々な部分へ複数のAPCを結合させることによって、RiboLogのフィンガープリントは、擬陽性および擬警報を排除するのに役立つ、生物兵器防衛のための追加の特異性情報を提供できる。タンパク質については、APCユニットは抗体に結合させることができる。RiboMaker検出は、高速で、線形であり、PCRに比較して阻害に対して低感受性であると主張されている。
【0164】
RiboMaker反応は、図13に示したマイクロチップなどのNanoBioProcessor用マイクロチップ上で遂行される。単一APC試薬、その後の単一反応ミックスの添加には2つの混合ステップを必要とする。RiboMakerサンプルがビーズ上に捕捉されると、ビーズはIMS注入口(図13)を通って、任意でビーズを捕捉するための堰もしくは磁石を有する反応チャンバへ移動させられる。APCは、試薬チャネルの1つを用いて添加される。RiboLogは、第2試薬チャネルから添加される。必要であれば、反応液はポンプAおよびBの間を往復させられる。
【0165】
14. マイクロチップCMSアレイのデザイン
16チャネルマイクロチップ270の実施形態は、図23に示されている。バルブおよびポンプのための作動ライン271は、垂直に走り、外部作動ラインを接続できるマイクロチップの底部上のバイアで終了するように図示されている。サイクルシーケンシング混合物は、シリンジポンプによって左側のチャネル272へ、そしてマイクロチップを再生させるための水もしくはバッファは右側のチャネル273に供給される。これらの「サービス」チャネルはどちらも、全16チャネルに供給するために多重化されており、流れを制御するために各々オンチップポンプもしくはバルブ274を有している。このマイクロチップは、ガラス製ウエハおよびPDMSメンブレンから4層デバイスとして構築されている。
【0166】
15. 完全MINDSシステム
完全MINDSシステムを作製するためには、コアMINDSシステムからの機器が修正される:1)ビーズサービスチャネルが加えられ、個々のビーズを送達するためのビーズ分類法とインターフェースされる;2)マイクロチップインターフェースデバイス上の抵抗加熱器デザインおよび電極リングがマイクロチップへ改造される;3)単独ビーズが繰り返し装填されたり取り除かれたりすることを保証するためのマイクロチップの修正。
【0167】
MINDSマイクロチップのデザインは、図24に示されている。このマイクロチップは、図22に示したコアMINDSマイクロチップに類似しているが、ただしビーズサービスチャネルは投入ラインに通じており(330)、サンプル容量は25nLへ4分の1に減少させられており、ビーズを捕捉するためにサイクルシーケンシングチャンバ内に堰が形成されている。単独ビーズは、投入チャネルを通して投入される。堰は2μmしかエッチングされていないので、追加のマスクおよび作製ステップを必要とする。
【0168】
単独ビーズは、電極に通じるチャネルだけを用いてサイクルシーケンシングチャンバ内へポンプで送り込まれ、親和性捕捉チャンバへ流動させられる。堰は、ビーズの移動を停止させる。ビーズが装填されると、順方向および逆方向両方の対合末端の読み込みのためのプライマを備える25nLのサイクルシーケンシング混合物が反応チャンバ内へオンチップポンプによって送り込まれる。チャンバに隣接するバルブが閉鎖され、温度がサイクリングされる。サイクリング後、サイクルシーケンシング混合物中のサイクルシーケンシング産物は電極リザーバ6内へポンプで送り込まれ、2つのサンプルクリーンアップチャンバ内へ電気泳動され、本質的には上述したように処理され、各対合末端読み込みが別個の分離チャネル内に注入される。廃棄物に通じるバルブが開放され、ビーズは、洗浄ラインによって廃棄物チャネル内へフラッシュされる。分離再生は、上述したように行われる。
【0169】
単独ビーズは、1)良好に分離しているマイクロ流体のビーズストリングを操作し、さらにそれらを連続的に、または並行して各チャネル内に移動させる、2)各チャネル内にビーズの「ビン」から供給し、それらを1度に1つずつサイクルシーケンシング反応装置内へ分注する、または3)個々のビーズを磁気操作する、もしくは「ピック・アンド・プレース」操作のためにキャピラリの末端へ取り上げることによって各チャネル内へ供給される。ビーズストリング・アプローチのためには、ビーズは、FluorInert(3M社)などの不混和性と思われる大量の液体によって次のビーズから空間的に明確に分離される。本発明者らは、以前にサイクルシーケンシングおよびPCR反応において大量のFluorInertを使用して成功している。ビーズストリングは、一緒に大まかな位置へ移動させられる。するとバルブが循環しているビーズサービスチャネルを閉鎖し、流れは、ビーズを装填チャネル内へ移動させるために十分に長い個別サイクルシーケンシングチャンバを通して迂回させられる。装填チャネル上のバルブが閉鎖され、ビーズサービスチャネル上のバルブが開放され、次のビーズが次のチャネル内に配置される。並列への変更もまた可能であり、装填時間を最小限に抑えることができる。光学ビーズセンサは、タイミングおよび供給流れを調節することにも役立つ可能性がある。
【0170】
MINDSシステムは、数ナノリットルのポンプ容量を減少させるために50μmのレーザ穿孔検査穴を備えるバルブおよびポンプを使用する。または、250μmの穴を備えるバルブは、各サイクル上の部分「ストローク」で部分的に開放される。チャンバを取り囲んでいるバルブは、チャンバ内のビーズを移動させるために脈動させられる、または外部超音波混合が適用される。表面相互作用は、必要に応じて適用された表面修飾を備える添加物によって改良される。
【0171】
直接注入のためには、サンプルクリーンアップマトリックスが分離チャネルと一列でポジショニングされる。図44に示したように、このデザインは、サンプルクリーンアップチャンバが分離チャネルの陰極側へ移動させられていること以外は、ビーズおよびサンプルクリーンアップのためのサイクルシーケンシングチャンバのよく知られている要素を有している。サイクルシーケンシングサンプルは、サンプルクリーンアップマトリックス上へ電気泳動させられ、不純物は必要に応じてフラッシュされる陰極チャンバ内へ移動させられる。清潔なサンプルはサンプルクリーンアップマトリックス上の研削されたバンド内にあり、チャンバを加熱することによって遊離させられ、分離が開始される。これは分離チャネル上へ容量測定的に鮮明なバンドを注入する。このため、Twin Tの装填が1サンプルの分画だけの分析しか許容しない典型的なTwin T注入において見いだされる「ハートカット」とは対照的に、各サンプルクリーンアップマトリックス上に収集されたサンプルの全部が分析される。
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2004年9月15日に提出された米国仮特許出願第60/609,970号の利益を主張する。この開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
本発明の態様は、国防総省によって授与されたプロジェクト番号W911SR−04−P−0047、NIHによって授与された助成金番号5R01HG003583−01、HSARPAによって授与された契約番号NBCHC050133、HSARPAによって授与された受付番号TTA−1−0014(協定番号W81XWH−04−9−0012)のうちの1つまたは複数の下で政府の資金提供を受けて実施された。連邦政府は、本発明に所定の権利を有する。
【0003】
過去10〜20年間に、多くはバイオ分析方法におけるサンプル所要量を減少させることを目標として、本質的に異なる、そしてしばしば不適合であるデザインの、広範囲のマイクロ流体デバイスが開発されてきた。外部寸法形態要素、上流および下流の外部インターフェースの性質、ならびに内部マイクロ流体経路の長さ、断面形状、および直径を制御する基準がないために、そのようなマイクロ流体デバイスは、相互に、そして現行の上流にある精製装置および下流にある分析装置と不適合であることがしばしば判明する。
【0004】
超微細加工の分野ではマイクロリットル、さらにナノリットルもしくはピコリットルさえのスケールでの分析を可能にする進歩が遂げられたにもかかわらず、多くの生物学的および環境的サンプルは、最初は現行のマイクロ流体分析装置のスケールよりはるかに大きな、そして不適合な容量で入手される。
【0005】
そこで当技術分野においては集積化流体システムの構成要素として使用でき、様々な外部寸法形状要素、外部インターフェース、および/または内部流体形状を有するマイクロ流体構成要素を効果的流体連絡へインターフェースでき、そして調製モジュールにインターフェースできるモジュラー式マイクロ流体構成要素、またはマイクロ流体調製用および/または分析用構成要素とともにより大きなスケールで作動する方法に対する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本発明は、当技術分野におけるこれらやその他の必要を解決する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
標的分析物を捕捉および精製するための手段および該標的分析物をマイクロ流体デバイス内へ導入するための手段を備える第1モジュールと、
該マイクロ流体デバイスを備える第2モジュールと、
を備え、ここで該マイクロ流体デバイスは該標的分析物を検出もしくは分析するために適合する、モジュラーシステム。
(項目2)
前記標的分析物が、細菌、ウイルス、胞子、真核細胞、または核酸からなる群から選択される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記細菌が炭疽菌(Bacillus anthracis)である、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記胞子が炭疽菌胞子である、項目2に記載のシステム。
(項目5)
前記細胞が癌細胞である、項目2に記載のシステム。
(項目6)
前記核酸がDNAである、項目2に記載のシステム。
(項目7)
前記分析が、前記DNAシーケンシングを含む、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前記分析が、前記DNAの増幅を含む、項目6に記載のシステム。
(項目9)
前記マイクロ流体デバイスが、項目32に記載のマイクロ流体デバイスである、項目1に記載のシステム。
(項目10)
回転式磁極片と、
フロースルーチューブと、
固定磁極片と、
を備え、
ここで、該回転式磁極片、該チューブおよび該固定磁極片は、該磁極片が回転すると該フロースルーチューブ内で磁気進行波を生じる様式で配列されており、そのために適合する材料を含む、磁気進行波フロースルー式デバイス。
(項目11)
前記磁極片の回転が少なくとも約100Hzである、項目10に記載のデバイス。
(項目13)
前記チューブのルーメン内に配置されたビーズをさらに備える、項目10に記載のデバイス。
(項目14)
前記ビーズが磁性ビーズである、項目10に記載のデバイス。
(項目15)
標的分析物が前記磁性ビーズに付着する、項目14に記載のデバイス。
(項目16)
前記標的分析物が前記磁性ビーズへ親和性捕捉される、項目15に記載のデバイス。
(項目17)
前記標的分析物が、細菌、胞子、ウイルス、真核細胞、および核酸からなる群から選択される、項目16に記載のデバイス。
(項目18)
前記フロースルーチューブがマイクロ流体デバイス内へ供給される、項目10に記載のデバイス。
(項目19)
標的分析物を溶解もしくは破壊する方法であって、該方法は、以下:
a)標的分析物および磁性ビーズを項目10に記載の磁気進行波デバイスのフロースルーチューブ内へ導入する工程、ならびに
b)該チューブ内で1つまたは複数の方向に該磁性ビーズを加速させるために適合する周波数で該デバイスの磁極片を回転させる工程、
を包含し、
それにより該ビーズが該標的分析物を溶解または破壊させる、方法。
(項目20)
前記標的分析物が、細菌、胞子、ウイルス、真核細胞、および核酸からなる群から選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記回転させる工程が、少なくとも約100Hzである、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記標的分析物が前記磁性ビーズへ付着させられる、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記標的分析物が前記磁性ビーズへ親和性捕捉される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記フロースルーチューブがマイクロ流体デバイスと流体連絡している、項目19に記載の方法。
(項目25)
前記標的分析物が核酸であり、前記マイクロ流体デバイスが前記核酸の配列を増幅させるために適合している、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記標的分析物が核酸であり、前記マイクロ流体デバイスが前記核酸をシーケンシングするために適合している、項目24に記載の方法。
(項目27)
エアロゾルを含有するために適合するチャンバと、
超音波処理装置プローブと、
を備え、
該チャンバがサンプル注入口およびサンプル排出口を備え、該プローブが、該サンプル注入口とサンプル排出口との間に配置されたサンプルを超音波処理するために適合する方法で前記チャンバ内に配置されている、フロースルー式超音波処理装置。
(項目28)
流体サンプルをさらに含み、前記サンプルが前記チャンバを通って流れる項目27に記載の超音波処理装置。
(項目29)
前記サンプル出口がマイクロ流体デバイスと流体連絡している、項目27に記載の超音波処理装置。
(項目30)
標的分析物を含むサンプルが前記超音波処理装置のチャンバ内に存在する間に項目27に記載のフロースルー式超音波処理装置のプローブを作動させるステップを含み、
これにより前記標的分析物が超音波処理される、標的分析物を溶解もしくは破壊させる方法。
(項目31)
前記標的分析物が、細菌、胞子、ウイルス、真核細胞、および核酸からなる群から選択される、項目30に記載の方法。
(項目32)
マイクロ流体デバイスであって、
2つの親和性捕捉チャンバと流体連絡している装填リザーバであって、前記捕捉チャンバが各々分離チャネルと流体連絡している装填リザーバと、
順方向および逆方向核酸シーケンシング産物を含むサンプルを該リザーバから該親和性捕捉チャンバへ電気泳動するために適合する電極であって、該捕捉チャンバが該順方向および逆方向核酸シーケンシング産物のどちらかを捕捉するために適合する親和性捕捉マトリックスを含む電極と、
該親和性捕捉チャンバの温度制御のための手段と、
を備える、マイクロ流体デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0007】
当業者は、以下に記載する図面が例示することだけを目的としており、決して本発明の開示の範囲を限定することが意図されていないことを理解するであろう。
【図1】サンプル捕捉および精製モジュール(SCPM)ならびにバイオプロセッサモジュール(BPM)のワークフローの実施形態の図である。
【図2】毒素アッセイのワークフローの実施形態の図である。
【図3】バイオプロセッサモジュール(BPM)と集積化されたサンプル捕捉および精製モジュール(SCPM)の実施形態の図である。
【図4】オフチップ・フロースルーカートリッジの実施形態の図である。
【図5】進行波フロースルー式ビーズビータの実施形態の図である。
【図6】プローブがコレクタ排出液中へ直接的に挿入されるフロースルー式超音波処理の実施形態の図である。
【図7】核酸精製モジュールの実施形態の図である。
【図8】エアサンプラ、サンプル濃縮モジュール、ならびにマイクロ流体サンプル増幅および分析モジュールを含む、生物兵器防衛用途のために使用できるナノバイオプロセッサモジュラーシステムの実施形態の図である。
【図9】MOV(商標)バルブの実施形態の図である。
【図10】超微細加工ポンプの実施形態の図である。
【図11】超微細加工ルータの実施形態の図である。
【図12】サンプルクリーンアップマトリックスを供給する三次元結合サービスチャネルの実施形態の断面図である。
【図13】反応チャンバへ1つまたは複数の反応物を添加するための流体回路の実施形態の図である。
【図14】サイクルシーケンシングモジュール(CSM)反復ユニットの実施形態の図である。
【図15】単一バイオプロセッサユニットの実施形態の図である。
【図16】外部作動MOVバルブおよびポンプを用いるマイクロチップカートリッジの実施形態の図である。
【図17】12ユニット式バイオプロセッサカートリッジの実施形態の図である。
【図18】ナノバイオプロセッサユニットおよびマイクロチップレイアウトの実施形態の図である。
【図19A】MBI−11のマイクロチップ実施形態の図である。パネルAは、流体層を青色、および作動層を赤色で示しているマスクデザインを示している。パネルBは、2つの各投入および排出口、反応チャンバおよび貯蔵チャンバ、ならびに三方ルータを有するサブアッセンブリを示している。バルブのための8つの空気圧式制御ラインは、空気圧源への標準コネクタで終了する。パネルCは、エッチング加工されたマイクロ流体ウエハを示している。パネルDは、大きさを示すために添えた実験用マーカとともに組立てられたMBI−11型3層マイクロチップを示している。
【図19B】MBI−11のマイクロチップ実施形態の図である。パネルAは、流体層を青色、および作動層を赤色で示しているマスクデザインを示している。パネルBは、2つの各投入および排出口、反応チャンバおよび貯蔵チャンバ、ならびに三方ルータを有するサブアッセンブリを示している。バルブのための8つの空気圧式制御ラインは、空気圧源への標準コネクタで終了する。パネルCは、エッチング加工されたマイクロ流体ウエハを示している。パネルDは、大きさを示すために添えた実験用マーカとともに組立てられたMBI−11型3層マイクロチップを示している。
【図19C】MBI−11のマイクロチップ実施形態の図である。パネルAは、流体層を青色、および作動層を赤色で示しているマスクデザインを示している。パネルBは、2つの各投入および排出口、反応チャンバおよび貯蔵チャンバ、ならびに三方ルータを有するサブアッセンブリを示している。バルブのための8つの空気圧式制御ラインは、空気圧源への標準コネクタで終了する。パネルCは、エッチング加工されたマイクロ流体ウエハを示している。パネルDは、大きさを示すために添えた実験用マーカとともに組立てられたMBI−11型3層マイクロチップを示している。
【図19D】MBI−11のマイクロチップ実施形態の図である。パネルAは、流体層を青色、および作動層を赤色で示しているマスクデザインを示している。パネルBは、2つの各投入および排出口、反応チャンバおよび貯蔵チャンバ、ならびに三方ルータを有するサブアッセンブリを示している。バルブのための8つの空気圧式制御ラインは、空気圧源への標準コネクタで終了する。パネルCは、エッチング加工されたマイクロ流体ウエハを示している。パネルDは、大きさを示すために添えた実験用マーカとともに組立てられたMBI−11型3層マイクロチップを示している。
【図20】サンプル調製と集積化されたマイクロキャピラリ電気泳動(μCAE)のためのナノ流体構造を備えるMBI−12のマイクロチップ実施形態の図である。流体チャネルは青色、MOV作動チャネルは赤色で示されている。
【図21】二重分析チャネルを備える二重対合末端読み込み親和性捕捉サンプルクリーンアップの実施形態の図である。暗色層はマイクロ流体、グレーのラインはサービス層である。バルブ作動層は図示されていない。薄い波線で囲んだ箱は、DNA分析反復ユニットを規定している。
【図22】集積化されたサンプル、調製、クリーンアップおよび分析用MINDSマイクロチップ反復ユニットの実施形態の図である。
【図23】16チャネルの200nLサイクルシーケンシングモジュールマイクロチップの実施形態の図である。
【図24】マイクロビーズ供給型集積化サンプル、調製、クリーンアップおよび分析用MINDSマイクロチップ反復ユニットの実施形態の図である。2本の親和性捕捉および分離チャネルを備える25nLサンプル調製チャンバが示されている。
【図25】充填済み試薬、核酸精製、および毒素モジュールを含んでいるディスポーザブルカートリッジとして設計されているマイクロチップの実施形態の図である。
【図26】マイクロチップインターフェースデバイスの機器制御の実施形態の図である。
【図27】MiniPrep機器に取り付けられたチューブを備えるマイクロチップ真空チャックの実施形態の図である。
【図28】MiniPrep機器の内側でバイオプロセッサ用マイクロチップを作動させるための関連ハードウエアの実施形態の図である。
【図29】増加した路長を備えるRT−PCRチャンバの実施形態の図である。
【図30】回転式スキャナの実施形態の図である。
【図31】核酸分析(RT−PCRおよびμCAE)のために使用できるバイオプロセッサモジュールのためのマスクデザインの実施形態の図である。
【図32】各々がRT−PCRおよびμCAE能力を備える6”ウエハ上に48個のユニットを備えるバイオプロセッサ用マイクロチップのためのウエハスケールデザインの実施形態の図である。
【図33】多重化バイオプロセッサ回路の実施形態の図である。MOVルータは、3つの多重化RT−PCR反応へサンプルを分割し、法医学および再検査サンプルを作製し、さらにμCAE確証のためのサンプルを選択できる。
【図34】8”ウエハを用いた12”ウエハのモデリングの図である。
【図35】ある濃度範囲にわたる、ビーズによる大腸菌(E. coli)の捕捉を示した図である。
【図36】大腸菌の免疫捕捉においてDYNAL(商標)1ビーズへ結合したモノクローナル抗体の滴定を示した図である。
【図37】大腸菌の免疫捕捉にB. cereusが及ぼす作用を示した図である。
【図38】スパイクエアサンプラ液からの免疫捕捉による大腸菌の回収を示した図である。
【図39】特に図38の104CFU/mLの力価に対するデータセットを示した図である。
【図40】100mgのシリカExtract−Clean SPE培地の床を通過させたサンプルの様々な分画について高力価大腸菌を濃縮させた結果を示した図である。
【図41】100mgのシリカExtract−Clean SPE培地床を通過させた後の様々な分画中に存在する高濃度大腸菌サンプル由来の全細菌のパーセンテージを示した図である。
【図42】シリカビーズ(左)およびBig Bead(右)を用いたβ−ガラクトシダーゼの回収を示した図である。
【図43】Big Beadを用いた大腸菌の回収を示した図である。
【図44】分離チャネル内へ直接的に注入する、サンプルクリーンアップを含む直接注入スキームの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(詳細な説明)
図面を含む上記の一般的な説明、および以下の詳細な説明は、どちらも例示かつ説明することだけを目的としており、本開示を制限するものではないことを理解されたい。本開示では、単数形の使用は、特別に記載しない限り、複数形を含んでいる。同様に「または」の使用は、他に特別に記載しない限り「および/または」を意味している。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「包含する(include)」、「包含する(includes)」、および「包含している(including)」は、限定することは意図されていない。「要素」もしくは「構成要素」などの用語は、他に特別に記載しない限り、1つのユニットを含む要素および構成要素ならびに2つ以上のユニットを含む要素もしくは構成要素の両方を包含している。本明細書で使用した章毎の見出しは構成上だけのためであり、本明細書に記載した主題を限定すると解釈してはならない。特許、特許出願、論文、書籍および専門書を含むがそれらに限定されない本明細書で言及した参考文献の全体および参考文献の部分は、これにより明示的にあらゆる目的のために全体として参照して本明細書に組み込まれる。万一1つまたは複数の組み込まれた参考文献が本開示と矛盾する場合は、本開示が優先される。
【0009】
本開示は、様々なサンプル由来の標的分析物を調製および分析するための補完的機能性を有する集積化モジュラーシステムを提供する。本明細書に開示するシステムは、分子(例、毒素、医薬品)、生体分子(例、核酸、ポリペプチド、脂質)、細胞(例、真核細胞および原核細胞(例、バシラス(Bacillus)、エシェリキア(Escherichia))、胞子(例、炭疽菌(B.anthracis))、ウイルス(例、インフルエンザ、疱瘡)、および当業者の裁量で選択できる他の物質を含むがそれらに限定されない様々な標的分析物の調製および分析に使用される。様々な典型的実施形態では、サンプルの調製および分析は、以下に記載するように、1つまたは複数のシステムモジュールによって実施できる。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に開示したシステムは、サンプルの捕捉もしくは精製(SCPM)のためのフロントエンドモジュールを含むが、典型的な実施形態では、これはさらに捕捉および/または精製されたサンプルをそれ以上の調製および/または分析のために、1つまたは複数のマイクロ流体デバイス(例、マイクロスケール、ナノスケール、またはピコスケールのデバイス)を含むことができるバイオプロセッサモジュール(BPM)内へ導入することができる。そこで、本明細書では、サンプルから標的分析物を捕捉する、濃縮する、もしくは精製するため、およびその後に前記標的分析物を1つまたは複数のマイクロ流体デバイス内へ導入するために使用するモジュラーシステムおよび方法が開示される。一部の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、オフチップ・プラットフォームへ供給することができる。
【0011】
様々な典型的実施形態では、SCPMは、溶解、乳化、超音波処理、遠心分離、クロマトグラフィ、固相抽出法(SPE)、免疫捕捉(例、免疫磁気分離(IMS))、ビーズに基づく捕捉法、およびそれらの組み合わせなどの様々な方法によって標的分析物を捕捉する、精製する、または濃縮することができる。一部の実施形態では、SCPMは、例えば1つまたは複数のマイクロ流体デバイス内へ導入するためにミリリットルをマイクロリットル以下の容量へ濃縮することによって、マクロスケールのサンプル液をマイクロスケールの容量へ減少させることができる。これらのSCPM実施形態は、より大きなスケールで作動する作業モジュールを含む流体デバイス内へマイクロスケールおよび/またはナノスケールのデバイスを集積化することを許容することで、モジュラースケールのインターフェースとして機能することができる。これらのSCPM実施形態は、有用にも様々な寸法形態の要素を有するモジュールが流体連絡しているシステム内へ集積化することを可能にする。一部の実施形態では、SCPMは、粗サンプル中に存在する可能性がある、そして下流での処理もしくは分析の阻害剤として作用する1つまたは複数の物質を除去することによってサンプルを精製できる。サンプル中の標的分析物を捕捉する、精製する、もしくは濃縮することによって、SCPMは、本明細書に開示したシステムの感度を従来型方法に比較して上昇させることができる。
【0012】
BPMは、典型的には1つまたは複数のマイクロ流体デバイスを含む。本明細書で使用する「マイクロ流体デバイス」は、マイクロリットル(μL)、ナノリットル(nL)、および/またはピコリットル(pL)容量などのミリリットル未満の量の流体を操作する、保存する、処理する、または分析するために適合するデバイスを意味する。様々な典型的実施形態では、マイクロ流体デバイスは、1つまたは複数のマイクロチップ(例、マイクロスケール、ナノスケール、ピコスケールのデバイス)、キャピラリ、およびそれらの組み合わせを含むことができる。本明細書に開示したマイクロチップは、当技術分野において知られている超微細加工技術によって製造することができ、バルブ、ポンプ、チャンバ、チャネル、リザーバなどを含むことができ、そして1つまたは複数の標的分析物を処理または分析するために適合する可能性がある。様々な典型的実施形態では、マイクロ流体デバイスは、マイクロチップに基づくカートリッジであってよく、そして非交換型/再使用型またはディスポーザブル型であってよい。本明細書に開示したマイクロチップは、任意の形状もしくは寸法を有していてよい。例えば、マイクロチップは、1つまたは複数の放射状サンプル調製もしくは分析ユニットを備える円形カートリッジであってよく、マイクロチップを作動させる機器と一緒に使用できる。一部の実施形態では、マイクロ流体デバイスは自動化できる。例えば、マイクロチップは「CDチェンジャ」内に保存し、1つまたは複数の機能を実行するために自動的に挿入、操作することができ、必要に応じてプログラマブル機器によって保存できる。そこで、機器は、同時または連続的に1つまたは複数のマイクロチップを作動させるために、マイクロチップの取り扱い、外部空気圧、温度制御装置、試薬溶液などを提供できる。
【0013】
一部の実施形態では、SCPMは、1つまたは複数の付加された標的分析物を含むことのできる懸濁液、コロイド(例、エマルジョン)、もしくは捕捉用ビーズをBMP内へ、または様々なそのような実施形態では、BPMの1つまたは複数のマイクロ流体デバイス内へ導入することができる。そのような実施形態では、BPMの1つまたは複数のマイクロ流体デバイスは、ビーズなどの1つまたは複数のそのような固体を目詰まりを起こさずにデバイスのマイクロ流体経路に通して移動させるために適合する。
【0014】
SCPMからBPM内へのビーズもしくは他の固体の通過は、分析物含有サンプルの容量のダウンスケールを実行する、したがってマクロスケールモジュールからマイクロスケールデバイスへインターフェースするために役立つことができる。そこでそのようなSCPMおよびBPM実施形態は、マイクロスケールおよび/またはナノスケールのデバイスを、より大きなスケールで作動する作業モジュールを含むマイクロ流体デバイス内へ集積化することを許容するので、相違するスケールおよび/または寸法形態の要素を備えるデバイスをモジュラー式でインターフェースすることができる。
【0015】
ビーズに基づくマイクロ流体デバイスによる処理のために適合する様々な典型的実施形態では、ビーズは、流体回路内に挿入された堰もしくは他の物理的障害によって、磁場によって、ビーズの親和性捕捉によって、電気的捕捉もしくは他の機構によって、マイクロ流体通路もしくは回路の様々なポイントで可逆的に固定化できる。様々な実施形態では、ビーズは、マイクロ流体通路もしくは回路に通して移動させることができ、そして物理的もしくは化学的処理を受けさせることができる。ビーズへ付着性である、もしくは付加された、もしくは吸着された、もしくは吸収された、さもなければ結合された分析物は、引き続いていっそうのオンチップ(すなわち、マイクロ流体デバイス内での)処理もしくは分析のために下流反応チャンバ内へ移動させることができる。一部の実施形態では、標的分析物などの物質は、必要に応じてビーズから溶離させることができる。一部の実施形態では、相違する親和性を備える一連のビーズを、高い特異性および感受性を備えるより複雑な生体分子プロセスに連結させることができる。例えば、1つのステップは細胞をビーズに結合させることができ、次のステップは特異的DNA配列を反応前のクリーンアップのためにビーズ上に固定化することができ、そして第3のステップでは質量分析計などへ導入する前に精製のためにビーズを使用して反応生成物へ結合させることができる。一部の実施形態では、親和性捕捉試薬を備えるゲルもまた、当業者の裁量で選択された様々なステップで使用できる。
【0016】
一部の実施形態では、BPMは、スタンドアロン型サンプル調製システムとして使用できる。このため、様々な典型的実施形態では、BPMは、様々な上流サンプル収集デバイス(例、エアロゾルサンプラ)へ接続できる、または下流分析プラットフォームもしくは方法(例、質量分析法(MS)、核磁気共鳴(NMR)、キャピラリアレイ電気泳動法(CAE)、逆転写PCR(RT−PCR)、単分子検出システムなど)へ供給することができる。しかし、一部の実施形態では、1つまたは複数の分析方法をチャネル内、リザーバ内、反応チャンバ内など、またはそれらの組み合わせにおけるマイクロチップ上で実施できる。
【0017】
本明細書に開示したシステムは、生物兵器防衛監視、感染性疾患の診断、法医学、ゲノミクス、プロテオミクスおよびその他の分野において広汎な用途を有する。生物兵器防衛については、本テクノロジーは、例えば建築物、飛行機、または空港のための病原体監視デバイスとして機能する分野において配備できる、または検査需要の急増に対応するために研究室で使用できる、コンパクトなユニットを提供する。本システムは、空気、生体液、農業作物、またはその他の起源から標的病原体を検出するためにサンプルを調製および分析することができる。低消費コストと自動化された調製および分析との組み合わせは、分子診断学に重要な影響を及ぼす。臨床診断のためには、本テクノロジーは、所望に応じて追加の分析を構成するために継目なく集積化されるディスポーザブルデバイスを用いてPCR診断機器を製造するのに適合させることができる。本明細書に開示したシステムは、薬理遺伝学、ヒト遺伝医学、バイオメディカル研究、動物および植物の遺伝子型特定、ならびにヒトの同定に適用することもできる。
【0018】
本明細書に開示したシステムの追加の用途には、微生物の検出、生物の遺伝子型特定、シーケンシング、および法医学などの分子診断学;RT−PCR、再シーケンシング、およびタンパク質分析などの様々な方法のためのサンプル調製および分析用プラットフォームの作製;質量分析、キャピラリアレイ電気泳動、ディファレンシャル・ディスプレイ、および単分子検出などの大多数の分析用プラットフォームならびに生物兵器防衛用途のためのサンプル調製ステーションの作製が含まれる。
【0019】
本明細書に開示したシステムは、全体として、もしくは部分的に、例えばロボット工学によって自動化できる、そしてハンドヘルド型デバイスから現場モニタ、そして実験室用機器へ拡張することができる。
【0020】
1. 標的分析物の濃度
一部の実施形態では、サンプル中の標的分析物は、その後の処理もしくは分析のためにマイクロ流体デバイス内へ導入する前に濃縮することができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分析物は、マクロスケール容量(例、ミリリットルからリットル容量)を保持して1つまたは複数の標的分析物を小さな表面(例、マイクロビーズ)上へ濃縮できる、1つまたは複数のオフチップ・フロースルー式デバイスを用いて濃縮することができる。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的分析物は、マクロスケール容量を保持するオフチップ・リザーバによって供給できるオンチップ・フロースルー式デバイスを用いて濃縮できる。一部の実施形態では、オンチップおよびオフチップ・デバイスを組み合わせて使用できる。一部の実施形態では、捕捉された標的分析物は、下流での処理もしくは分析のために適合する容量へ選択的に溶離させることができる。図1に示したように、SCPM1は免疫捕捉2、溶解3、核酸精製4のためのモジュールを含むことができ、ナノバイオプロセッサ(nanobioprocessor)5と集積化することができる。一部の実施形態では、毒素などの分子を免疫捕捉して、ナノバイオプロセッサ5へ直接的に供給することができる(図2)。
【0021】
表面上へ標的分析物を捕捉するために適合する物質には、ビーズ、モノリス、改質ポリマーなどを含むことのできる様々なタイプの抽出マトリックス物質が含まれる。一部の実施形態では、抽出マトリックス物質は、様々な付加された官能基(例、C4、C18、カルボキシ基、およびアミノ基)、様々なビーズもしくは化学的物質の混合床、または親和性捕捉成分(例、抗体、レクチン、ハプテン、リガンド(例、ビオチン)、受容体、核酸など)を含むことができる。一部の実施形態では、核酸は、SPRIもしくは未改質シリカビーズなどのカルボキシ化ビーズを用いて捕捉でき、そして水などの適合する容量の極性溶媒中へ溶出させることができる。一部の実施形態では、チオシアン酸塩などのカオトロピック剤が核酸をキャピラリ表面へ押し進め、洗浄後に、濃縮かつ精製された核酸をその後の処理もしくは分析のためにバッファ中へ溶出させることのできる、シリカキャピラリを利用するナノスケール捕捉法を使用できる(例えば、米国特許第6,489,112号参照)。様々な標的分析物の固相捕捉の他の方法は、例えば、Weimer et al. 2001 Appl. Environ. Microbiology, 67:1300−1307に記載されている。
【0022】
a) オフチップ・フロースルー式デバイス
一部の実施形態では、標的分析物は、マクロスケールのサンプル容量を濃縮マトリックス140に通して流すオフチップ・フロースルー式デバイス130を用いて濃縮できる(図4)。一部の実施形態では、濃縮マトリックスが標的分析物を保持し、他方バルク溶液および干渉化合物はデバイスを通過する。一部の実施形態では、干渉化合物もしくは望ましくない化合物がマトリックス140上に保持され、標的分析物はデバイスを通過する。サンプルの形状(表面、水、土壌、エアロゾル、生体物質)に依存して、粗濾過(約、20μm)は、かさの高い不純物および微粒子を除去するために役立つことがある。一部の実施形態では、オフチップ・フロースルー式デバイスは、その中にマトリックスが装填されている底部にフリット製開口部150を含むことができ、溶出のための孔(≦1mm)ポートを含むことができる(図4)。濃縮マトリックスは、本明細書に記載するように、非親和性培地もしくは親和性捕捉培地を使用できる。BPMマイクロ流体デバイスと集積化されたオフチップ・フロースルー式デバイスの実施例は、図3に示されている。
【0023】
i) 非親和性捕捉
本明細書で使用する「非親和性捕捉」は、疎水性、親水性、もしくはイオン性相互作用による培地上での標的分析物の非特異的捕捉を意味する。
【0024】
一部の実施形態では、標的分析物の非親和性捕捉は、20μmポリエチレン製フリットを備える1揃いのSPE培地が前もって装填された1.5mL(または4mL)カラムを含むExtract−Clean(商標)固相抽出法(SPE)キット(Alltech社)を使用できる。培地は、その後の溶出のために標的分析物を捕捉できる、または望ましくない物質が培地上に保持されている間に標的分析物が通過するのを許容できる。例えば、1〜104CFU/mL、約102〜103PFU/mL、および0.1〜102ng/mLの範囲内の細胞溶解液中の細胞、ウイルス、もしくはタンパク質は、各々培地へ適用できる。サンプルは、手動もしくはロボット利用によって装填し、必要に応じて真空を適用して培地を貫流させることができる。一部の実施形態では、標的分析物は、洗浄できる充填物質へ結合させられ、標的分析物は培地からの溶出によって濃縮することができる。様々な典型的実施形態では、流動特性および保持特性のためにチャネリングを防止するシリカマイクロファイバディスクを備える3mLシリンジバレルSPEC(ANSYS
Technologies社)またはBig Beadを使用できる。所望の物質の濃縮もしくは精製を提供するためには、標準もしくは特殊クロマトグラフィ用培地もまた使用できる。任意の選択された培地に対して、床容量、相違する培地処方、洗浄、および溶出条件は、当業者であれば感受性を増強する目的で最大保持のために最大化できる。
【0025】
デバイスを貫流するサンプルを監視するためには、例えばAvalanche蛍光スキャナ(GE社)を使用する免疫タグ付けおよび蛍光検出、例えばMegaBACE 1000(GE社)を使用するキャピラリ電気泳動法、細胞についての増殖アッセイ、または当業者によく知られている他の方法などの様々な方法を使用できる。
【0026】
ii) 親和性捕捉
本明細書で使用する「親和性捕捉」は、標的分析物に対して実質的に特異的である分子(例、抗体、リガンド、受容体、レクチン、ハプテン、エピトープ、オリゴヌクレオチドなど)を含む培地を用いる標的分析物の捕捉を意味する。一部の実施形態では、標的分析物(例、細胞、微生物、胞子、または毒素)の表面エピトープに対するモノクローナル抗体を用いて修飾された磁性ビーズをサンプルへ添加することができる。一部の実施形態では、特異的微生物、細胞タイプ、サブタイプ、種、核酸、タンパク質などに対する抗体でコーティングされたビーズの混合物もしくは数セットのビーズを、サンプルへ連続的に、または当業者の裁量で選択された様々な組み合わせで適用できる。抗体がコーティングされたビーズは、標的分析物へ結合するのでそれにより溶液から標的分析物を捕捉できる。ビーズは、磁石によって収集でき、不純物および潜在的阻害剤は洗浄によって除去できる。
【0027】
様々な典型的実施形態では、収集および洗浄されたビーズは、フロースルー式デバイスもしくは別のデバイス内でさらに処理するために再懸濁させる、またはBPMのマイクロチップ上に移動させることができる。本明細書で記載するように、生物兵器防衛用途に関連する実施形態については、収集および洗浄されたビーズは、10μLのバッファ中に再懸濁させ、小型超音波ホーンに挿入できる。一部の実施形態では、図6に示したデバイスを用いるフロースルー型超音波処理を使用できる。超音波処理後、超音波処理された物質はフィルタに通して、BPMマイクロ流体デバイスへ通過させることができる。
【0028】
b) オンチップ・フロースルー式デバイス
一部の実施形態では、BPMマイクロ流体デバイスは、標的分析物を濃縮するために使用できる。一部の実施形態では、標的分析物のオンチップ濃縮は、モジュール集積化、超微細加工テクノロジーの使用、および同一チャンバ内でPCRなどの様々な方法を実行する能力を促進できる。一部の実施形態では、これは適切な流量を産生するために相当に大きな径のチャネルの使用を必要とすることがある。一部の実施形態では、免疫親和性捕捉は、病原性微生物もしくはウイルス、タンパク質、または他の標的分析物をサンプルから濃縮および精製するための迅速かつ特異的方法を提供する。例えば、標的分析物を濃縮するために、ビーズに基づくサンプル調製は、バッチプロセスからオンチッププロセスへ適応させることができる。例えば、抗体がコーティングされたビーズは、導電学的ビーズ床充填および堰式ビーズ捕獲法を用いて集積化かつ超微細加工された捕捉チャンバ内へ配置することができる(Oleschuk et al. 2000. Analytical Chemistry 72:585−5909)。
【0029】
一部の実施形態では、フロースルーモードにおける充填床内のカルボキシル化ビーズは、DNAシーケンシング混合物などのポリヌクレオチドを後処理するために超微細加工ガラスデバイス内で使用できる。ビーズを捕獲するためのダムを備えるガラスチップは、Borofloatガラスから超微細加工することができる。ダムの上部と反対側のチャネルとのダムの間隙は、カルボキシル化ビーズもしくはシリカビーズなどの他のタイプのビーズ、抗体、レクチン、もしくは核酸などを使用する親和性捕捉を備えるビーズのために設計できる。深いチャネルは、最初にHFを用いてエッチングし、次に特定のビーズおよび用途に依存して第2の浅いエッチングにより0.5μm以上までの高さにダムを規定できる。一部の実施形態では、ビーズは、圧力によって充填し、真空吸引によって除去することができる。一部の実施形態では、免疫官能化もしくはその他の磁性ビーズは堰を備えないチャンバ内へ導入できる。チャンバの平面に垂直な小さな磁場を適用すると、ビーズは約5mmの間隔を備える準規則的な一連の垂直柱へ自己集合する(Doyle et al. 2002. Science 295:2237)。
【0030】
様々な典型的実施形態では、クロマトグラフィ培地、付加された抗体もしくは他の親和性捕捉物質を備えるゲル、化学修飾を伴う、もしくは伴わないゲル、固相抽出媒体、モノリス、または当業者によく知られている他の分離もしくは結合マトリックスなどのマトリックスを使用できる。
【0031】
2. 溶解モジュール
一部の実施形態では、標的分析物は、オンチップもしくはオフチップで破壊および溶解することができる。破壊または溶解することができる標的分析物の非限定的例は、(例、原核細胞、真核細胞、古細菌)、胞子(例、細菌性(例、炭疽菌(B. anthracis)、クロストリジウム(Clostridium))もしくは真菌性(例、C.イミチス(C. immitis)))、細胞小器官(例、ミトコンドリア、核など)、核酸、染色体、プラスミド、リボソーム、プロテオソーム、ウイルス(疱瘡、インフルエンザ、ウエストナイル、ポリオ、肝炎、およびレトロウイルスなど)である。一部の実施形態では、標的分析物は超音波処理によって破壊または溶解することができる。一部の実施形態では、ビーズ上に捕捉された標的分析物は、マイクロチップ上に導入する前に超音波処理することができる。
【0032】
超音波による破壊は、ビーズ上に捕捉され、濃縮され、そして精製された粗標的分析物溶液もしくは標的分析物を含む溶液中に浸漬されるホーンを用いて実施できる。超音波処理装置は、コレクタ排出液中に直接的に浸漬できるプローブを有するフロースルー式超音波処理装置であってよい(図6)。チャンバもまたエアロゾルを含有もしくは捕獲するように設計することができ、本明細書に記載するように自動化できる。
【0033】
一部の実施形態では、破壊または溶解はビーズビーティング法によって達成できる。ビーズは、本明細書に記載するように、捕捉ビーズと同一であっても相違していてもよい。一部の実施形態では、磁気対非磁気、相違する密度などの溶解および/または捕捉のために使用されるビーズの相違する特性は、下流での処理もしくは分析を単純化するために様々なタイプのビーズを分離するために使用できる。一部の実施形態では、フロースルー式進行波ビーズビーティングデバイス10を使用できる(図5)。例えば、図5に示したように回転式磁極片20は、磁極片が回転するにつれてチューブ30を下方へ貫流する磁気波を作り出す。回転は約100Hzまでであってよく、チューブを貫流する胞子およびその他のタイプの標的分析物を破壊させるために隣接チューブを通過するビーズの十分な加速を作り出すことができる。一部の実施形態におけるビーズは、溶解を促進するために複数の形状を有する。
【0034】
破壊または溶解を評価するためには、生育性の消失対時間を使用して所望の出力設定、曝露時間、容量、および幾何学的形状を決定できる;そのようなパラメータの設定は、当業者の能力の範囲内に含まれる。一部の実施形態では、TaqManアッセイにおけるDNAもしくはRNAの遊離を試験するために選択されたサンプルを使用できる。破壊は、胞子に対して、および下流での処理もしくは分析のためにそれらを不適合にすることなく、高分子をより低いそれらの粘度および断面積へ剪断するために最適化できる。一部の実施形態では、溶解液は、マイクロ流体デバイスのマイクロチャネルを閉塞させる可能性がある凝塊を除去するために、少なくとも約10μm、さらに少なくとも約20μm、30μm、またはそれ以上さえの孔径を有するフィルタに通過させることができる。
【0035】
一部の実施形態では、破壊または溶解された物質は、オンチップもしくはオフチップのいずれかで、さらに精製するための供給原料として使用できる。例えば、核酸をアッセイするために、選択的オリゴヌクレオチドを備えるビーズ上での核酸ハイブリダイゼーションの精製ステップはバックグラウンドから標的配列を精製することができる。タンパク質については、疎水性、カルボキシル化、または他の化学物質などの固体表面上への捕捉は、あるクラスのタンパク質の非特異的精製を提供することができ、他方では親和性捕捉は必要な場合に強化された特異性を提供できる。同様に、必要に応じてオンチップおよびオフチップ、ならびにビーズに基づく、およびその他のマトリックスの種々雑多の組み合わせを用いて、複数の精製ステップを実施できる。
【0036】
一部の実施形態では、溶解は、マイクロチップ内へ導入後に実施できる。そのような実施形態では、マイクロチップは、溶解すべき細胞を備えるサンプルを受け入れる。
3. 核酸精製モジュール
一部の実施形態では、本発明のシステムは、核酸精製モジュール(NAPM)を含むことができる。NAPMは、溶液または1つもしくは複数のビーズ、コロイド、多相(不均質もしくは均質)溶液、または他の組成物などの他の物理的形態にあるサンプルを受け入れるように設計できる。一部の実施形態では、NAPは、溶解モジュールからの流入を受け入れるように設計できる。NAPMによって受け入れられる容量の範囲は、ミリリットルからピコリットル未満の容量に及ぶ可能性がある。一部の実施形態では、NPAからの排出は、その後の処理もしくは分析のためにBPMマイクロチップまたは他のマイクロ流体デバイスへ送達することができる。
【0037】
様々な化学物質は、NPAMによって使用するために適合させることができる。様々な典型的実施形態では、NAPMは、カオトロピック剤を用いる表面吸着/脱着による精製;例えばオリゴヌクレオチド含有ゲル上での電気泳動捕捉による選択的核酸精製;またはオリゴヌクレオチド含有ビーズ上へのハイブリダイゼーションによる選択的核酸精製などの様々な方法による全核酸精製を実施するように設計できる。NAPMの実施例は、図7に示されている。
【0038】
a) 全核酸精製
サンプル中の全核酸は、核酸を溶液から表面上へ推し進めるためにカオトロピック剤を使用する非特異的捕捉法を用いて精製できる。例えば、米国特許第6,489,112号は、シリカキャピラリの表面上へ核酸を推し進めるためにチオシアン酸塩もしくはグアニジニウムなどのカオトロピック剤を用いる定量的ナノスケール「テンプレート捕捉」法について記載している。洗浄後、濃縮かつ精製された核酸は、サイクルシーケンシングなどのナノスケールのサンプル処理もしくは分析のためにバッファ中へ溶出させることができる。本方法は、溶解液から核酸を精製するためにも使用できる。
【0039】
一部の実施形態では、投入サンプルは、ガラスビーズ、またはチャネルの壁などの他の適切な表面の存在下でカオトロピック剤と混合することができる。カオトロピック剤は、溶液から核酸を押し出し、それらがガラスビーズもしくは他の表面に吸着することを引き起こす。カオトロピック剤は、さらにサンプル中に存在する可能性がある、核酸分解を実質的に阻害するヌクレアーゼを不活性化する。インキュベーション期間後、細胞破片、変性タンパク質、およびカオトロピック剤中に溶解性の他の構成成分は、例えば、真空を用いて吸引によって除去し、廃棄物流中へ廃棄することができる。精製されたサンプルは、追加の不純物を除去するためにさらに洗浄でき、そして回収してマイクロチップもしくは他の流体システム内へ導入するために核酸をバッファ中へ溶出させることができる。
【0040】
一部の実施形態では、核酸精製のための条件は、5Mチオシアン酸ナトリウム、95℃で90秒間の変性、30℃で5分間の表面(例、ガラスビーズ)への結合および2秒間にわたる80% EtOHへの結合を含んでいる。一部の実施形態では、核酸は、数種の相違するカオトロピック剤および溶出回収化学を用いて、SPRIカルボキシル化ビーズなどの改質ビーズ上へ精製することができる。
【0041】
b) 選択的核酸精製
一部の実施形態では、標的核酸は、オリゴヌクレオチド捕捉配列へのオフチップ・ハイブリダイゼーションを用いて選択的に精製できる。
【0042】
一部の実施形態では、サンプルは、電気泳動法、流体力学的圧力、遠心分離、または他の力によって除去して、未改質ビーズ、改質ビーズ、交換式親和性捕捉ゲル、モノリス、コロイド、2相溶液、およびその他の物質から構成される固定もしくは可動マトリックス上に移動させることができる。様々な典型的実施形態では、マトリックスは未改質であってよく、物質の表面特性に基づいて標的核酸へ結合することができる、マトリックスはサンプルの構成成分の結合を強化もしくは遅延させるために改質することができる、またはマトリックスは標的配列、結合抗体、もしくは他の親和性捕捉物質に相補的な付加されたオリゴヌクレオチド配列を有することができる。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチド上のビオチンラベルは、標的DNAとハイブリダイズすることができる。ビーズ上のストレプトアビジン成分は、所望の標的核酸を精製するためにビオチンへ結合させることができる。
【0043】
例えば、標的核酸を含むサンプルは、標的核酸に対して相補的な結合オリゴヌクレオチド配列を含有するビーズへ適用することができる。結合標的核酸は、塩、不純物、および誤対合フラグメントを除去するために低イオン強度バッファ中で洗浄し、熱および電圧によってナノリットル容量で溶出できる。一部の実施形態では、親和性捕捉は、高効率(サイクルシーケンシング生成物に対して≧90%)で迅速な可能性がある(≦7分間)。このアプローチは、オフチップ構成へスケールを拡張できる。排出容量は、物理的構成に依存して約10nL〜約1mLで変動してよい。
【0044】
一部の実施形態では、上述した組成物および方法は、さらにタンパク質、脂質、炭水化物もしくは非同族核酸に対してアッセイできるサンプルから核酸を除去するためにも使用することができる。
【0045】
4. マイクロチップ内へのビーズもしくは溶液の導入
サンプルは、様々なマイクロ流体デバイスもしくは他の流体システム内へ直接的に、または例えば本明細書に記載したように捕捉および核酸精製による処理後に導入できる。一部の実施形態では、親和性捕捉ステップからのビーズは、マイクロリットルもしくはナノリットル容量などの小さな容量でマイクロチップ内へ導入することができる。ビーズは、シリンジポンプもしくはピペッティングデバイスを用いるなどでマイクロチップ上のリザーバ内へポンプで送り込むことができ、そしてオンマイクロチップポンプを使用してそこにビーズを捕獲もしくは保持できるマイクロチップの部分へビーズを移動させることができる。
【0046】
一部の実施形態では、単独ビーズは、DNAシーケンシング、単分子分析、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)スキャニングおよびペプチドフィンガプリンティングを含むタンパク質のMS分析などの処理もしくは分析のためにマイクロチップ上へ移動させることができる。単独ビーズは、例えば、フローサイトメトリー法の適用によって個々のチャンバへオンマイクロチップで送り込むことができる。または、単独ビーズは、平均するとチャンバ内には単独ビーズしか到着しないと予想される確率配分プロセスによってチャンバ内に配置することができる。
【0047】
一部の実施形態では、サンプルは、バッチモードなどの様々なタイプの流体システム、もしくはフロースルー式システム、またはそれらの組み合わせでさらに処理することができる。本システムは、マイクロチップ、キャピラリ、チューブ、ウエル、または他の容器およびマイクロ流体デバイスに基づいてよい。導入されたサンプルは、構成成分、タグ成分を生化学的もしくは化学的に分離するために処理できる、またはオンマイクロチップで分析できる、または下流での分析のために調製できる。
【0048】
5. BPM
BPMは、典型的には以下で記載するように機器およびプログラマブルソフトウエアによって任意に作動できる1つまたは複数のマイクロ流体デバイスを含んでいる。一部の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、SCPMからサンプルを投入し、流体回路と反応チャンバ間に液体を送り、試薬を添加し、核酸および毒素などの様々な標的分析物についてのアッセイを実行する、カートリッジ内に保持されたマイクロチップ、ナノチップ、もしくはピコチップであってよい。一部の実施形態では、様々なタイプのチップは、それにより反応時間および順序を制御するためのシステム制御要素としてのMOVバルブ、ポンプおよびルータを用いて、個別バイオプロセッサモジュール内でサンプルを処理できる。一部の実施形態では、本明細書に開示したチップはSCPMと集積化できる。
【0049】
a) マイクロロボット利用オンチップバルブおよびポンプ(MOV(商標))テクノロジー
MOVマイクロバルブ、マイクロポンプ、およびマイクロルータは、2つのガラス製マイクロ流体層を、バルブを開閉するポリジメチルシロキサン(PDMS)などの変形可能な膜層、および膜を変形させてバルブを作動させるための空気層と結合する。上部ガラス層(図9)内にエッチングされた流体チャネルは、不連続性で、バルブシートとして機能するバイアへ通じている。PDMS膜40はバルブシートに接して置かれており、通常は2つのバイア間の流体路を閉鎖する。PDMS膜40の反対側には、エッチングによって形成された空気置換チャンバがフルスケール真空源もしくは圧力源へ接続されている。超小型オフチップ・ソレノイドを制御することによって、真空もしくは圧力(ほぼ1/2気圧)をPDMS膜40へ適用すると、柔軟性膜の単純な変形によってバルブを開放したり(50)閉鎖したり(60)できる。
【0050】
自給式MOVポンプ(図10)は、3つのバルブ70、80、90の作動を調整することによって作り出すことができ、さらにいずれかの方向への流動を作り出せる。様々な流量は、作動順序のタイミング、ダイアフラムのサイズ、チャネル幅の変化、およびその他のオンチップ寸法によって達成できる。ルータ(図11)は、同様にこれらのバルブおよびポンプから形成できる。ルータは、中心ダイアフラムバルブ100へ接続する別個のチャネル110、120上に各3つ以上のバルブを用いて形成できる。適正な組み合わせのバルブを作動させることによって、1つのチャネルからの液体を中心ダイアフラムバルブ内へ引出し、その液体を様々なチャネル内に排出して送り出すことができる。バス構造もまた作り出すことができる。
【0051】
MOVバルブおよびポンプは、単一シートのPDMS膜を用いて1つの製造プロセス中に同時に作製できる。すなわちチップ上で5個のMOVポンプを作製するのに要する時間も500個のポンプを作製するのに要する時間も同じである。そこで、本明細書の開示は、チップ上で複雑なマイクロ、ナノ、およびピコ流体回路を作り出すための方法を提供し、チップ上への実質的に任意の反応もしくはアッセイの移植を可能にする。一般に、本テクノロジーは、溶液イオン強度および表面汚染における変動に対して少なくとも実質的に非感受性である可能性があり、さらに電場の適用を必要としない。
【0052】
b) マイクロ流体デバイス
図31は、核酸分析のために使用できる単一バイオプロセッサモジュールの実施例を示している。このデザインでは、IMSおよび核酸精製からの結合した精製核酸を備える捕捉されたビーズを下方チャネル350内へ投入できる。オンチップMOVポンプ351は、ビーズを堰352へ移動させ、そこではリアルタイムPCR試薬および内部標準物質を試薬注入口から添加できるので、熱の局所的適用によって核酸を遊離させてμRT−PCRチャンバ353内へポンプで送り込むことができる。チャンバを取り囲んでいるバルブは、サーマルサイクリングのために閉鎖する。
【0053】
図32は、図31からのデザインを用いて6”マイクロチップのための48ユニットデザインの実施例である。一部の実施形態では、96以上のユニットを6”チップ上に放射状に配置できる。一部の実施形態では、384の分離チャネルを8”チップ上に配置できる。96チャネルマイクロチップは、これらのチャネルが約3回しか再使用されない場合は約30日間にわたり作動できる。一部の実施形態では、最終仕様の要件、試験される標的分析物の数、および多重化度に依存して、240ユニットを12”マイクロチップ上に放射状に配置することができる。
【0054】
一部の実施形態では、様々なチップは、例えばRT−PCRにおいて使用できる反応チャンバ(図29)としてバルブチャンバを形成する穿孔されたバイアホールを含むことができる。厚さ3mmの穿孔されたウエハおよび300μmのダイアドリルを用いることによって、(チャネルに対して横ではなく)長軸に沿って下方へ3mmの検出路長を備える212nLのチャンバを生成できる。一部の実施形態では、これらのチャンバは極めて優れた表面対容量比を有することができる。一部の実施形態では、より大きな容量はより優れた表面対容量比およびより長い路長を有することができる。一般に、チップ上の検出はチャネルに対して横断方向で実施でき、チャネル深さに等しい約30μmの路長を有する;同様に、キャピラリシステムでは、路長は約50〜200μmである。優れた容量対表面比およびほぼ100倍長い路長は、この単独デザインを用いるサンプル調製生化学(高い容量対表面比)および蛍光検出の両方に各々利点を与える。毒素を検出するためにも、同一検出デザインを使用できる。
【0055】
一部の実施形態では、様々なチップは、MOVルータを用いて、そして内部標準物質を含有するPCRマスターミックスなどの試薬を添加することによって、(達成される多重化度に依存して)適切な数の反応に投入サンプルを分配することができる。図33に示したように、法医学の記録および再検査のためのサンプルは投入用MOVルータを用いてアリコートに分けることができ、次に任意のリアルタイムPCR反応からの陽性サンプルをμCAEのために選択することができる。図33は、一部の実施形態では、μCAEチャネルは各バイオプロセッサユニットもしくは反応のために必要とされない。一部の実施形態では、完全6”マイクロチップ上の2〜4つのμCAEチャネルを使用できるが、それはそれらが確証のために使用でき、数十のリアルタイムPCRチャンバおよび他のタイプのアッセイチャンバへ接続するために深くネスティングできるためである。
【0056】
図25は、ディスポーザブルカートリッジとして設計されている生物兵器防衛用途のためのマイクロチップおよび病原体のサンプル調製のためにマイクロチップを作動させるプラットフォームの例を示している。チップは、MOVバルブ、ポンプ、および反応チャンバ、試薬注入のためのサンプルポート、ならびに上流での濃縮および下流での分析モジュールとインターフェースするための入口および出口ポートを含んでいる。図17は、放射状に配置された12ユニットのバイオプロセッサを備える円形基質を用いるマイクロチップを示している。一部の実施形態では、1度に1つのユニットを使用でき、使用間にマイクロチップを回転させることができる。または、様々な形状の基質および様々な流体レイアウトを備える実施形態を使用できる。
【0057】
本実施例ではマイクロチップ上で流体デバイスを含有するバイオプロセッサモジュールは、上流のSCPMからサンプルを受け入れ、記録および再検査のためのアリコートを作製し、オンチップでサンプルを溶解し、サンプルを調製および標識し、そして分析のために検出器へそれらを排出することができる。この実施例では、BPMは、流体デバイスを含有するマイクロチップカートリッジおよびカートリッジを作動させる機器を含んでいる。カートリッジは、「CD」フォーマットであってよく、そして単独サンプルもしくは複数サンプルのために使用される各ユニットを備えるセクタ内で1カートリッジ当たり12のバイオプロセッサユニットを有することができる(図17)。例えば、カートリッジは、1つのサンプルを処理し、次のサンプルを受け入れるために次に回転させることができる。カートリッジは、様々なサンプリング方式に適応させ、必要に応じて変化させることができる。一部の実施形態では、複数セットのカートリッジをCDチェンジャに似ている小型回転式トレイ内に保存できる。機器は、カートリッジを保存する、試薬を装填する、実行する、および取り替えるための機構を提供し、プロセスを制御することができる。
【0058】
一部の実施形態では、制御要素としてのオンカートリッジMOVバルブおよびポンプを備えるナノ流体デバイスを用いてサンプルを処理するために設計されたナノバイオプロセッサ・カートリッジを使用できる。MOVバルブは通常は閉鎖され、ギザギザが付けられ、容易に製造され、密なアレイで作動することができ、低死容量を有する可能性がある。このバルブは、Grover et al.(2003), Sensors and Actuators B89:315−323の設計にしたがってガラス層と変形可能な膜としてのポリジメチルシラン(PDMS)とを結合することによって作製できる。
【0059】
一部の実施形態では、自給式ポンプ(図10)は、図9に示したバルブの3つを結合することによって作製できる。中心ダイアフラムバルブは、流動方向を制御するために機能するフランキングバルブより大きくてよい。さらに、中心バルブは反応チャンバもしくはミキサとして機能できる:PDMSは、数百マイクロリットルのように多量または数十ナノリットルのように少量を含有できる反応チャンバを作製するために2mmまで変形させることができる(Grover et al. 2003. Sensors and Actuators B89:315−323)。これらのチャンバは、動的に拡張および縮小することができる。
【0060】
本開示においては、MOVバルブおよびポンプは、マイクロスケールおよびナノスケールサンプルを調製および処理するためにプロセッサ内へ結合することができる。
【0061】
本開示においては、バイアホールのサイズは、バイアホール内に反応チャンバを作製するために変動させることができる。バイアホールの幅およびそれをバイアホールが通過するウエハの厚さの変化を組み合わせることによって、広範囲のチャンバを構築できる。反応チャンバとして機能することに加えて、バイアホールを使用すると、光学的およびその他の検出のために増加した路長を提供することもできる。例えば、図29は、バイアホール231がリアルタイムPCRを実施するため、および検出セルとしての両方に使用されているマイクロチップ230を示している。検出は、バイアホールのコーティングまたはウエハ基質のために内部反射物質を使用することによって強化することもできる。
【0062】
6. 用途、機器、およびソフトウエア
一部の実施形態では、マイクロチップは、真空チャック上の固定位置で保持することができる。マイクロチップ・インターフェースデバイスは、外部空気源、サーマルサイクリング温度制御要素、温度制御、および試薬導入ラインを含む外部制御要素を提供するためにマイクロチップと連結することができる。
【0063】
図16は、反応チャンバとしても機能する大きな中心ダイアフラムバルブとともに、流動を制御するための外部作動MOVバルブおよびポンプを使用して設計されたマイクロチップカートリッジの実施形態を示している。このカートリッジは、バイオプロセッシング160〜162、貯蔵領域170、およびリザーバ180のための3つの主要チャネルを含有している。これらのチャネルの1つは、DNAに基づく分析のための処理、そして第2および第3チャネルは各々イムノアッセイ分析によって毒素および粒子の処理の専用にすることができる。図16に示したレイアウトは、多数の可能性のあるレイアウトの1つであり、生物兵器防衛用途のための下流の単分子検出器とインターフェースするように設計されている。
【0064】
一部の実施形態では、カートリッジは、以下のように機能できる。100μLサンプルは、内部コントロールの添加後にオフチップ・サンプル濃縮器によってカートリッジ上の注入口190内へ送達される。7つの未処理10μLアリコートは、リザーバから4℃で保持されたオンカートリッジ貯蔵チャンバ内へ「A」と表示されたルータ200によってポンプで送り出される。これらのアリコートの3つは再検査180用、および分析されたサンプルの試験結果が陽性の場合は可能な確証用である;追加の4つのアリコート170は、初回の陽性検出が再検査によって確証された場合には、後の回収および法医学分析のためである。全アリコートは、TEC製ペルチエ(Peltier)冷却装置などの外部冷却装置によってカートリッジ上で冷却して保存される;必要であれば、安定化試薬をこれらのリザーバ内に乾燥状態で保存できる。カートリッジの使用後、使用されたカートリッジは、冷蔵された小型回転式トレイ内に保存されるであろう。
【0065】
即時処理のためのアリコートは、次に形成および処理される。10μLの試験アリコートは、以下に記載するように毒素を検出するための免疫標識のために、ルータA 200によってバイオプロセッシングチャネル2 161からチャンバD 163へ移動させられる。第2の10μLの試験アリコートは、以下に記載するように無傷細菌もしくはウイルス粒子を検出するための免疫標識のために、ルータA 120によってバイオプロセッシングチャネル3 160からチャンバE 164へ移動させられる。注入口は、次に上方から蓋が被せられ、残りのサンプルはカートリッジの底部を通して結合されている外部超音波処理装置ホーンを用いて超音波処理される。生成した超音波は、増殖性細胞、胞子、およびウイルスを破壊し、さらにハイブリダイゼーション動力学および流動特性を改良する目的でDNAを剪断して粘度を減少させる。溶解したサンプルは、DNA分析のために標識したプローブを用いたハイブリダイゼーションのために、ルータA 200によってバイオプロセッシングチャネル1 162からチャンバC 165へ移動させられる。
【0066】
3つのチャネルのバイオプロセッシングは、同時に発生することができる。RNA、タンパク質、および脂質を分解するためのサンプル消化ステップは、DNAに基づく単分子検出のためにサンプルのバックグラウンドを減少させるため、そして下流検出器の要求を減少させるために望ましいことがある。このプロセッシングが(単分子検出のためなどに)実施される場合、DNA分析サンプルは、非DNA物質を分解させるために添加されたバッファ中のRNAse、プロテアーゼおよびリパーゼのカクテルを有する可能性がある。添加は、リザーバBからサンプルを備えるチャンバCへ物質をポンプで送り出すことによってでよい。必要であれば、サンプルおよび消化試薬は、混合するために隣接チャンバ間をポンプで往復させることができる。チャンバC内のアリコートは、リザーバFからのDNAプローブとのハイブリダイゼーションによってDNA分析のために標識することができる。ハイブリダイゼーションもしくは抗体プローブは、試薬カートリッジ内に低温で保存することができ、個別バイオプロセッサユニットを使用する直前に外部ポンプを用いてカートリッジへ添加することができる。プローブは、試薬を混合するためにオンカートリッジポンプを用いてチャンバ内へポンプへ送り込むことができる。同様にサンプルおよび試薬は、必要に応じて、さらに混合するためにプローブチャンバと反応チャンバCとの間をポンプで往復させることができる。取付具は、チャンバの下方で加熱要素を含有することができる。ハイブリダイゼーションのためには、フランキングバルブを閉鎖し、チャンバはDNAを変性させるために95℃へ加熱し、さらに存在する任意の標的へDNAプローブをハイブリダイズさせるためにハイブリダイゼーション最適条件へ冷却することができる。これらのバルブは、これらのチャンバ内でPCRを実施するために十分にシールするので、このため蒸発を実質的に減少させることができる。
【0067】
上述したBPMは、個別もしくは多重化PCR、可変数タンデムリピート(VNTR)、多座VNTR分析(MLVA)、または他のアッセイなどの任意のPCRに基づくアッセイに適用できる。ハイブリダイゼーションプローブは適切なPCRプライマと置換して、外部熱源をサイクリングすることができる。消化ステップは、増幅されたフラグメント長多形(AFLP)を実行するために制限消化に置換することができる。毒素検出のためには、チャンバD内のアリコートをリザーバGから毒素に対する抗体プローブと混合することができ、他方では粒子検出のために、チャンバE内のアリコートをリザーバHからの微生物による表面被覆に対する抗体プローブおよび37℃で保持されたサンプルと混合することができる。
【0068】
標識後、バイオプロセッシングしたサンプルは3つの外部リザーバ内へポンプで送り出すことができ、そこでそれらは検出器によって分析のために吸引によって取り上げることができる。または、修正バージョンのマイクロチップ上でキャピラリ電気泳動法もしくは光学的検出を実施することができる。
【0069】
検出器が内部コントロールしか検出しない場合は、カートリッジを回転させて、次のバイオプロセッサユニットを準備できる。サンプルの検査結果が陽性の場合は、バイオプロセッサユニットは回転させられず、その代わりに再検査フラッシュリザーバからフラッシュされて新鮮試薬が装填される。再検査のために保存された3つのサンプルはル−タによって、第1は毒性検出のために直接的にチャンバDへ、第2は粒子検出のためにチャンバCへ、そして第3は超音波処理およびDNA分析のために注入口へポンプで送り戻される。再検査サンプルは、上述したように処理して、可能性のある推定陽性検出事象として確証するために検出装置へ排出できる。
【0070】
マイクロチップを作動させるための機器は、外部機器であるマイクロチップインターフェースデバイス内に含有されてよい。マイクロチップは、真空チャックの上部に保持されたマイクロチップカートリッジ、ならびに空気圧、加熱および冷却、およびリザーバ内へ試薬を移動させるためのシリンジポンプを有するマイクロチップと連結するマイクロチップインターフェースデバイスを備えて開発することができる。コンピュータ制御マイクロチップインターフェースデバイスは、ソレノイドを制御して外部フルスケールバルブを開閉し、順にマイクロチップバルブを制御してマイクロチップ上へサンプルを移動させるためにポンプで送り出すことができる。
【0071】
マイクロチップインターフェースデバイスは、ニクロムなどの抵抗加熱器、ペルチエ加熱器、エア式加熱器、赤外線加熱器、または当業者によく知られている他の実施形態などの加熱器、および熱電対もしくは他の温度測定機器ならびにマイクロチップの領域の温度および加熱・冷却速度を制御するための関連制御回路およびソフトウエアを含むことができる。冷却は、放射冷却、ファンからの能動的冷却、ペルチエによる冷却、水または当業者によく知られている他の方法による冷却によってでよい。マイクロチップ全体の温度もまた、真空チャックを加熱することによって設定することができる。
【0072】
シリンジポンプを制御すると取り付けられたマイクロチップ上のリザーバへ試薬を送達することができる、または試薬を含有する加圧式チャンバがマイクロチップ上のリザーバ内へ試薬がチューブを通って貫流するのを可能にするために解放されるバルブを有することもできる。一部の実施形態では、重力流れを使用できる。一部の実施形態では、電気が試薬を強制的に移動させ、ビーズもしくは粒子に付着した試薬の磁気送達は本開示の範囲内に含まれる。上述したハードウエアおよびNanoPrepソフトウエアのすべては、Laboratory Rapid Automation Toolkitソフトウエアまたは他のソフトウエアを用いて制御できる。
【0073】
Laboratory Rapid Automation Toolkit(LabRAT(商標))ソフトウエアプラットフォーム500(図26)は、機器を駆動させてプロセスを自動化するための頑丈な商業用ソフトウエアプラットフォームの迅速な作製を可能にする機器ソフトウエア開発キットである。LabRATは、1セットの通信および指令プロトコル501〜503を規定し、市販で入手できるいずれよりも単純で、柔軟で、さらにより効率的な標準化された自動化構造およびフレームワークを有している。LabRATフレームワークは、多重オペレーティングシステム、開発言語、および通信媒体504に及ぶ一連の中核をなすテクノロジーに基づいている。
【0074】
LabRAT自動化構造の心臓部には、SOAP(シンプル・オブジェクト・アクセス・プロトコル)標準の中核であるXML−RPC(エクステンシビル・マークアップ・ランゲージ・リモート・プロシージャ・コール)に基づく機械通信および制御インターフェースプロトコルである。XML−RPCは、プロセス間通信のためのすばらしい機構である:単純、迅速、頑丈であり、ほぼあらゆる現代のソフトウエア開発システムのために広汎に利用可能な実装を有しており、TCP/IPおよびHTTPにわたって作動し、容易に実行できる。XML−RPCは、極めて高レベルの「メタ機構」として作動し、全く異なる構成要素を緊密に順序付けられた機械システムへつなぎ合わせることができる。中核の通信および指令プロトコルに加えて、実験用機器のために適合する1セットのインターフェースが、構成要素間の「実験サービス」の交換のために規定かつ実行されている。
【0075】
LabRATもしくは類似のソフトウエアは、マイクロチップインターフェースデバイスを制御するように適合させられてきた。現在あるLabRATソフトウエアは、個別構成要素のためのドライバが「ラップされる」と、全層に対して機能性を提供する。局所的サーマルサイクリングを制御するためのNanoPrepサーマルサイクラソフトウエアは、既にLabRAT内に組み込まれている。空気ソレノイド、シリンジポンプ、および検出器を含むその他の要素もまた、LabRATソフトウエアによって制御できる。さらに、様々なハードウエア構成要素の相互作用は、LabRATスクリプト指令を通して調整できる。
【0076】
一部の実施形態では、3つのハードウエアデバイスを制御できる:1)加熱およびサーマルサイクリング、2)オンチップバルブおよびポンプ(空気作動型)、および3)試薬を送達するためのシリンジポンプ。サーマルサイクリングは、反応チャンバのすぐ下に配置されたニクロム線加熱コイルを用いて遂行でき、現行のNanoPrepソフトウエアおよびハードウエアによって制御できる。MiniPrep Cartesianロボット(Tecan社)を使用すると、マイクロチップ上のミニロボットバルブおよびポンプを制御する32ttlまでの出力ライン、ならびにマイクロチップにサンプルを装填したり除去したりするために使用されるフルスケールロボットを作動させるために「Smart I/O」ボード(Tecan社)を駆動させることができる;LabRAT CANインターフェースもまた高精度シリンジポンプを作動させて流体をチップ内へ分注することができる。
【0077】
Smart I/Oボードは、Crydomソリッドステート継電器モジュールを駆動させることができる(各ラインに対して1つずつ、MODC−5 SSRモジュール、DigiKey #CC1226−NDおよびMS−4 4−Pos Mounting Board、DigiKey #CC1230−ND)これらは順に、24V DCソレノイドバルブ(ARO、P251SS−024−0)を作動させることができる)。これらのバルブは、共通ポートおよび各1つが通常は開放しているポートおよび通常は閉鎖しているポート(各々、真空ラインおよび加圧空気ラインへ接続されている)を備える三方直接駆動ユニットである。ソレノイドは、8つのマニホールド(マイクロチップ上のM1〜M8)を介して作動する8本のフルスケール真空および加圧ラインを制御するであろう。制御ソフトウエアは、チップ上のチャネル内で流体を駆動するポンピング作用を作り出せるような方法でこれらのソレノイドを連続的に作動させることができる。ロボット制御ソフトウエアは、順にLabRATの制御を受けるExpress Script Engine(Tecan社)によって実行されるASCIIコード化スクリプトの形状にあってよい。現行のLabRATソフトウエアは、高度XML−RPCに基づくフレームワークを用いて機器を作動させる完全な機能性を提供する。
【0078】
マイクロチップを作動させるためのハードウエアは、スタンドアロン型機器に開発できる、または現行機器と結合することができる。例えば、Tecan MiniPrep機器は、必要に応じてオンチップおよびオフチップへ溶液をピペッティングするために使用でき、Tecan Smart I/Oカードは、順にMOVバルブおよびポンプを制御するハードウエアを制御するために使用できる。
【0079】
図27は、マイクロチップを備えたMiniPrepロボットを用いるシステムの正面図の実施形態である。ステージの最前面(右)にあるのは、アルミニウム合金製真空チャックである。チャックは、チップの全体的加熱を可能にする「サンドイッチ型」構造に埋め込まれた抵抗加熱要素を有している。温度制御装置は、最も左の黒色パネルの上部に見ることができる。チャックの左側から、オンチップバルブおよびポンプを駆動させる8本の真空ラインはチューブによってTecan社製パネル(この写真では見えない)の1つの後方に据え付けられた真空マニホールドへ接続されている。ステージの左側にあるのは、チップへ「リザーバ」試薬を分注するためのシリンジポンプ(シリンジが取り付けられている)である。
【0080】
図28は、温度制御装置、8つの24V DCソレノイド、および継電器を含む多数の据付け構成要素を含有している(リアパネルを取り外した後の)MiniPrepの内側を示している。エアポンプおよびSmart I/OボードもまたMiniPrepの内側に取り付けられているが、見ることはできない。
【0081】
本明細書に記載したバイオプロセッサカートリッジは、制御要素としてのマイクロ流体オンカートリッジバルブおよびポンプを用いてサンプルを処理するように設計することができる。カートリッジは、反応チャンバとしても機能する大きな中心ダイアフラムバルブとともに、これらの外部作動バルブおよびポンプを使用して流動を制御できるように設計することができる。図15は、カートリッジ上の12の同一バイオプロセッサユニット200の1つを示している。各ユニットは1つのサンプルを投入し、バイオプロセッシングされた3つの排出サンプル201〜203を調製する:1)DNAハイブリダイゼーション標識を用いたDNA分析、2)免疫標識を用いた毒素分析、および3)免疫標識を用いた粒子分析。さらに、各ユニットは試薬添加のための領域204、混合および反応のための領域205、ならびに再検査用にサンプルを保存するための領域206を有することができる。
【0082】
一部の実施形態では、1mLサンプルは、内部コントロールの添加後にエアサンプラによってカートリッジ上の注入口207内へ送達できる。注入口は、チャネルを閉塞させる可能性がある「大きな粒子状物質」を除去するために組み込まれた目の粗いフィルタを有していてよい。未処理700μLアリコートは、注入口から「A」と表示されたチャンバ208内へ、次に4℃で保持されたオンカートリッジ貯蔵チャンバ206内へポンプで送り出すことができる。保管サンプルは、1)再検査のため、および分析されたサンプルの試験結果が陽性の場合は可能性のある確証のため、および2)初回の陽性検出が再検査によって確証された場合は後の回収および法医学分析のためであってよい。保管サンプルは、TEC ペルチエ冷却装置などの外部冷却装置によってカートリッジ上で冷却して保存できる;必要であれば、安定化試薬をこれらのリザーバ内に乾燥状態で保存できる。カートリッジの使用後、使用されたカートリッジは、冷蔵された小型回転式トレイ内に保存することができる。
【0083】
一部の実施形態では、DNA、毒素、および粒子を即時に処理するための3つのアリコートを形成して処理することができる。毒素を標識するための100μLの試験アリコートは、最初にチャンバA 208内へポンプで送り込み、そこへ免疫標識および毒素検出用の試薬をポンプで送り込むことができる。サンプルは、サンプルと試薬を混合する必要がある場合は、ポンプでチャンバBと往復させることができる。サンプルは、インキュベーションおよび検出装置へ移動させるために排出口201〜203へポンプで送り込むことができる。第2の100μL試験アリコートは、無傷細菌もしくはウイルス粒子を検出するための免疫標識のためにチャンバA 208内へ移動させることができる。微生物もしくはウイルス表面被覆に対する抗体プローブはチャンバA 208内へポンプで送り込むことができ、サンプルは37℃で保持できる。抗体プローブは、後に検出装置内で識別できる抗体の複合混合物であってよい。標識後、バイオプロセッシングした粒子サンプルは、検出器による分析のためにキャピラリ内へ吸引することによって取り上げることができるリザーバ内へポンプで送り出すことができる。
【0084】
DNAサンプル調製のためには、毒素および粒子検出のためにアリコートおよびサンプルを処理した後、注入口に上方から蓋を被せ、残りのサンプルはカートリッジの底部を通して結合された外部超音波処理装置ホーンを用いて超音波処理できる。生成された超音波は、増殖性細胞、胞子、およびウイルスを破壊し、さらにハイブリダイゼーション動力学および流動特性を改良する目的で粘度を減少させるためにDNAを剪断する。溶解したサンプルは、試薬投入領域204からDNA分析のために標識したプローブを用いてハイブリダイゼーションするためにチャンバA 208内へ移動させることができる。ハイブリダイゼーションのために、取付具は、チャンバA 208の下方で加熱要素を含有することができる。フランキングバルブは閉鎖し、チャンバを95℃へ加熱してDNAを変性させ、さらに存在する任意の標的へDNAプローブをハイブリダイズさせるための最適温度へ冷却させることができる。これらのバルブは、これらのチャンバ内でPCRを実施するために十分にシールするので、このため蒸発を実質的に減少させることができる。
【0085】
RNA、タンパク質、および脂質を分解するためのサンプル消化ステップは、DNAに基づく検出のためのサンプルのバックグラウンドを減少させるため、そして下流検出器上の要求を減少させるために望ましいことがある。これが所望であれば、DNA分析サンプルは、非DNA物質を分解させるために試薬注入口208から添加されたバッファ中のRNAse、プロテアーゼおよびリパーゼのカクテルを有する可能性がある。添加は、サンプルを備えるチャンバA 208へ物質をポンプで送り出すことによって行うことができる。必要であれば、サンプルおよび消化試薬は、混合するためにポンプで隣接チャンバA
208とB 209との間を往復させることができる。消化が望ましい場合は、チャンバA 208内の消化されたアリコートは、本明細書に記載するようにDNAプローブを用いたハイブリダイゼーションによってDNA分析のために標識できる。
【0086】
ハイブリダイゼーションもしくは抗体プローブは、試薬カートリッジ内で低温で保存することができ、個別バイオプロセッサユニットを使用する直前に外部ポンプを用いてカートリッジへ添加することができる。プローブは、試薬を混合するためにオンカートリッジポンプを用いてチャンバ内へ送り込むことができる。同様にサンプルおよび試薬は、必要であれば、さらに混合するためにポンプでチャンバAとチャンバBとの間を往復させることができる。その後の実行は、バイオプロセッサカートリッジ内に事前装填された試薬を有していてよい。
【0087】
一部の実施形態では、検出器が添加された内部コントロールしか検出しない場合は、カートリッジを回転させて、次のバイオプロセッサユニットを準備できる。サンプルの検査結果が陽性の場合は、バイオプロセッサユニットは回転させられず、その代わりに試薬注入口からバッファを用いてフラッシュ洗浄される。保存されていた100μLサンプルは、検査結果が陽性であったプロセスから始めて再検査するためにチャンバAへポンプで戻すことができる。再検査サンプルは、上述したように処理して、可能性のある推定陽性検出事象として確証するために検出装置へ排出できる。LabRAT(商標)ソフトウエアを使用してフルスケールソレノイドを制御すると、シリンジポンプ、チャンバAのためのサーマルサイクリング用加熱要素、およびオンチップバルブを作動させることができる。
【0088】
ハイブリダイゼーションおよび抗体結合についての化学は、フル容量もしくはマクロスケール容量の結果に基づいてカートリッジ内で個別に最適化できる。反応物質の濃度、反応時間、および温度は、カートリッジフォーマットに対して再最適化することができ、ある範囲の投入微生物が及ぼす影響はスパイクされたエアサンプルを用いて再構成実験において試験できる。試薬の貯蔵条件を決定することは、当業者の能力の範囲内に含まれる。全試薬は試薬カートリッジ内に4℃で保存できる;保管寿命を延ばすためには、浸透圧調節剤(トレハロース、グリシンベタイン)などの追加の安定剤または他の物質を添加することができる。
【0089】
一部の実施形態では、混合するための戦略は、細くエッチング加工された寸法のチャネル内で一方が他方の上になるように混合すべき2つの流れを配置することにある。流れ間の短い経路が混合を強化する。また別の混合戦略は、ビーズを磁気により操作することによって層流を混乱させるために、反応チャンバ内での磁性ビーズなどのビーズの存在もしくはそれらの添加を活用できる。一部の実施形態では、これは一方の流れの中にある標的分析物を強制的に「他方の」流れの中に進入させることができ、これを使用すると処理反応または分析反応を開始させることができる。一部の実施形態では、必要に応じてビーズを捕捉するために堰を使用できる。一部の実施形態では、ビーズは使用後に廃棄物中へフラッシュできる。
【0090】
試薬安定化は、本明細書に開示したシステムの様々な実施形態、例えばフィールドデバイスにとって極めて重要な問題になることがある。このため、一部の実施形態では、試薬リザーバは、4℃へ冷却するためにペルチエを用いて制御された温度にあってよい。一部の実施形態では、試薬はReady−To−Go(商標)化学または、例えばトレハロースもしくはグリシンベタインなどの浸透圧調節剤を用いる他のフリーズドライ法を用いて安定化させ、その後に使用前に再水和することができる。再水和についての概念は、壊せるシールを備えるアンプル中に含まれる安定化試薬の1日アリコートまたは1週間アリコートであってよい。1日もしくは1週間有効ストックを提供するために安定化試薬を水和させるために機器内のアンプルへ水もしくはバッファをポンプで送り込むことができる。有効ストックは、安定性に依存して、シリンジポンプ内へ移動させる、またはバイオプロセッサ内へ直接的に装填することができる。
【0091】
a) マイクロビーズ集積化DNAシーケンシング(MINDS)システム
一部の実施形態では、MINDSシステムは、Sangerサンプルの無人自動化調製および分析を用いて超低消費コストでシーケンシングサンプルを調製および分析することができる。シーケンシングテンプレートは、単独DNAフラグメントから誘導された各々がDNAを運んでいるビーズとのバルクエマルジョンPCR反応において剪断された染色体もしくはBAC DNAから出発してビーズ上で調製できる。フラグメントを備えていないビーズを排除するための分類後、個別ビーズは、クリーンアップおよびμCAE分析と一緒に400チャネルマイクロチップ上に集積化された低容量(例、25nL)のサイクルシーケンシング反応チャンバへ送達できる。一部の実施形態では、ビーズは堰によって捕捉でき、サイクルシーケンシングは順方向および逆方向両方の対合末端(paired−end)読み込みのために実行でき、生成物は、順方向もしくは逆方向読み込みのどちらかのための親和性ゲル捕捉マトリックスを含有するデュアルサンプルクリーンアップチャンバ内へ電気泳動させることができる。親和性ゲルは、イオンおよび組み込まれていないヌクレオチドを除去するために洗浄できる。精製されたサイクルシーケンシングフラグメントは、温度を上昇させることによって親和性マトリックスから溶出させ、電気泳動法分析のために折り返しCEチャネル内へ注入できる。このアプローチは、一部には分子の数によって決定される基本的限度に近い規模でシーケンシングを実施できるので、試薬容量および費用を数桁分も減少させることができる。
【0092】
一部の実施形態では、集積化MINDSシステムは、ショットガンシーケンシング、指向性シーケンシング、および再シーケンシングのための全プロセスを自動化および超小型化することができる。MINDSシステムは、現行シーケンシング構造基盤を活用して、必要な操業コストを100分の1以下にするマイクロビーズに基づく蛍光DNA μCAEシーケンサを作り出すことができる。各システムは、フルスケールロボットに代えて小型ロボット式マイクロ流体デバイスを用いることで1週間までの無人操業を行なえる完全自動化シーケンシングを実施できる。
【0093】
MINDSシステムは、後で集積化されるモジュールで実行できる。一部の実施形態では、200nLのサイクルシーケンシング・マイクロチップに基づくモジュールを使用できる。高速回転式LIFスキャナに基づくDNA分析モジュールは、最新型マトリックスを用いて対の電気泳動チャネル内へ注入する前に、二重親和性捕捉チャンバを用いて対合末端読み込みサンプルをクリーンアップできるμCAEマイクロチップを備えるMINDSシステムのためのプラットフォームモジュールとして構築される。これらの5層マイクロチップは、「サービス」を行うマイクロ流体デバイスとともに、MOVバルブおよびポンプによって作動させることができる。サイクルシーケンシングモジュールは、100nLサイクルシーケンシング、サンプルクリーンアップ、および分離を集積化するコアMINDSチップを作製するためにオンチップで結合できる。一部の実施形態では、25nLサンプル調製チャンバを含む完全MINDSチップは、マイクロビーズライブラリを投入することができ、出力シーケンス情報が可能になる。
【0094】
b) サイクルシーケンシングモジュール
マイクロ流体サイクルシーケンシングモジュール(CSM)は、スタンドアロン機能として、およびMINDSシステムのためのマイクロチップに基づくサンプル調製におけるモジュールとして使用できる。CSMは、1)流れを制御するためのオンチップバルブおよびポンプを備えるサンプル調製マイクロ流体デバイスを含有するマイクロチップ、および2)オンチップバルブおよびポンプを通してマイクロチップを作動させるための外部インターフェースを含むことができる。サンプル調製CSMは、キャピラリ(CAE)およびマイクロチップ(μCAE)によるオフチップ分析を行なう200nLサイクルシーケンシング容量を備える16チャネルスケールであってよい。一部の実施形態では、外部流体インターフェース、加熱、および空気作動装置を備えるマイクロチップインターフェースデバイス(MID)は、400チャネル以上へ拡張できる。
【0095】
一部の実施形態では、オンチップバルブおよびポンプを備える16チャネルの200nLサイクルシーケンシングサンプル調製マイクロチップデバイスを使用できる。図14には、単純化されたマイクロチップカートリッジの2本のチャネルが略図で示されている。「投入」260および「排出」261と表示されたリザーバは、本質的には、マイクロ流体チャネルへ接続できるマイクロチップ262の上層内の穴である。本デバイスは、マイクロタイタープレートから投入DNAサンプル(PCR、プラスミド、または他のテンプレート)を取り出し、200nL容量でのサイクルシーケンシングを実施し、サンプルクリーンアップおよびCAE機器もしくはμCAE分析への注入の準備が整ったマイクロタイタープレート内へ蛍光標識サイクルシーケンシング生成物を排出することができる。マイクロチップは、順にLabRAT(商標)ソフトウエアによって駆動されるマイクロチップインターフェースデバイスによって作動させることができる。CSMマイクロチップインターフェースデバイスは、1)オンチップバルブを開放および閉鎖する、2)オンチップポンプを作動させる、3)貯蔵チャンバからマイクロチップ上へのサイクルシーケンシング試薬を計量する、4)サイクルシーケンシングを実施するための加熱および冷却を制御する、ならびに5)バッファ液および洗浄液を用いてチップを再生する、ための機構を提供できる。マイクロチップおよびMIDは、流体移動を実行できるTecan MiniPrep流体ハンドリングロボットの甲板上に取り付けることができる。
【0096】
一部の実施形態では、200nLのCSMマイクロチップは、以下のとおりに作動させることができる。サンプルは、Tecan MiniPrepロボットによってマイクロタイタープレート内から注入口260のウエル内へ装填できる。MOVオンチップポンプ264は、図9〜10に記載したように、オンチップポンプを駆動させる真空/加圧ラインの外部作動を用いるポンピングを制御することによって、反応チャンバ内へアリコートを移動させることができる。サイクルシーケンシングミックス265(CS Mix、図14)は、反応チャンバ263内へダイターミネータ法サイクルシーケンシングマスターミックスを分注するためにオンチップポンプによって送り込むことができる。コンピュータ制御下にあるMIDは、各反応チャンバ263を取り囲んでいる3つのバルブを密閉し、反応ミックスをサーマルサイクルさせる。完了後、200nLサンプルはオンカートリッジポンプによって、5μLの水を含有する排出口261内へ送り込むことができる。希釈サンプルは、その後のオフチップ後処理および分析のためにマイクロタイタープレート内の35μLのアルコール中へTecanによって移動させることができる。一部の実施形態では、サンプルはクリーンアップおよび分析のために二重親和性捕捉チャンバへ移動させることができる。CSMカートリッジは、残留DNAテンプレートを除去するためにバッファを用いてフラッシュすると新規サンプルを再装填することができ、プロセスが再び始まる。サイクルシーケンシングは、以前の反応由来のテンプレートによる5%を超える汚染を忍容できる:このため、反応チャンバをフラッシュするとマイクロチップを再生することができる。一部の実施形態では、各マイクロチップは数百回の反応に再使用できる。
【0097】
c) CSM機器
CSMを作動させるための機器の特徴は、1)CSMマイクロチップに基づくカートリッジ内の液体移動を制御するオンチップミニロボットの自動化外部作動、2)サーマルサイクリングのための外部加熱および冷却の制御、3)チップへサイクルシーケンシング試薬を送達するためのシリンジポンプの駆動、および4)サンプルをマイクロタイタープレートから注入口内へ移動させ、マイクロチップ排出口からマイクロタイタープレート内へ調製されたサイクルシーケンシングサンプルを取り出すためのTecan MiniPrepロボットの制御、を含むことができる。全4つの要素は、LabRATソフトウエアを通して制御できる。
【0098】
サーマルサイクリングは、マイクロチップの作製を単純化して作動コストを減少させるために外部源からの加熱および冷却を使用できる。一部の実施形態は、ファンからの冷却を備える抵抗加熱コイル群を使用する。一部の実施形態では、熱電対センサを備えるマイクロチップの上方に配置されたニクロム線加熱器を使用でき、30℃/秒を超えるランプ時間を有することができる。一部の実施形態では、加熱器は、再現性で、各チャネルを監視しなくても信頼できる400チャネルレベルで実行できる。一部の実施形態では、サンプル調製および分析が集積化された場合にマイクロチップの他の部分の温度を変化させることを防止するために冷却空気に対して囲壁を使用できる。一部の実施形態では、反応チャンバで温度を迅速にサイクルするために高性能ペルチエ効果加熱ポンプをストリップ状で使用できる。これらの様々な方法は、LabRAT(商標)制御下で現行NanoPrepサーマルサイクラソフトウエアを使用できる。
【0099】
ペルチエ加熱ポンプによって冷却状態に維持されたシリンジポンプを使用すると、マイクロチップ上のCSリザーバチャネルへサイクルシーケンシング試薬を送達し、オンチップポンプが試薬を分注するにつれてリザーバを補充できる。同様に、マイクロチップを再生するための水もしくはバッファを送達および制御することができる。一部の実施形態では、シリンジポンプは、1nLのフルステップサイズを有することができ、LabRAT(商標)ソフトウエアによって制御できる。一部の実施形態では、単純な重力流れを用いてリザーバに溶液を補充することが可能である;ソフトウエア制御下にあるミニバルブが流量を調節できる。
【0100】
一部の実施形態では、CSMは、Tecan MiniPrepの甲板上で実行できる。Tecanはサンプルをマイクロタイタープレートから注入口へ移動させ、最終サンプルを排出口から取り上げてそれらをマイクロタイタープレートへ移動させることができる。Tecanは、CAN制御下でX−Y−Z運動を行なうロボット上に取り付けられたチップを用いて単一シリンジポンプを作動させる能力を有する。上述したように、LabRATソフトウエアは、Microsoft WSH制御装置を用いてCANデバイスを制御できる。液体をマイクロタイタープレートへ、およびマイクロタイタープレートから移動させるスクリプト記述は単純である。手動によるピペッティングに代えてTecanを使用すると、CSMの完全自動化モードでの作動が可能になる。
【0101】
一部の実施形態では、CSMは、MegaBACE CAEおよびμCAEマイクロチップシステムの両方によるオンチップでのサイクルシーケンスのサンプリング、ならびにオフチップでの分析を含むことができる。ダイターミネータによるシーケンシング反応は、本質的には、DYEnamic(商標)ETターミネータシーケンシングキット(Amersham社)を用いて製造業者が規定したプロトコルによって実施できる。一部の実施形態では、試薬は95℃で25秒間、50℃で10秒間、および60℃で2分間を30回サイクリングさせることができる。サーマルサイクリング後、サンプルは、マイクロチップ排出口内へ移動させ、空気圧によって室温のマイクロタイタープレート内に含まれる40μLの80%エタノール中へ移すことができる。エタノールによる後処理後、サンプルは約2,800RCFで45分間にわたり遠心し、50RCFでの30秒間にわたる短時間の逆回転によってアルコールを除去できる。サンプルは、10μLの二重蒸留水中へ再懸濁させることができる。
【0102】
コントロールは、マイクロタイタープレート内で調製したフル容量サンプルおよびキャピラリ内で調製した500nLおよび200nLのNanoPrepサンプルを含むことができる。サンプルは、10kV、15秒間の注入を用いて96キャピラリMegaBACE機器内に注入し、120V/cmの磁界強度を用いて分離できる。4色電気泳動図は、Cimarron 3.12 basecallerならびに記載したようなPhredベースコーリングおよび品質スコア生成アプリケーションを含むSequence Analyzerベースコーリング・ソフトウエアパッケージ(Amersham Biosciences社)を用いて処理できる。全読み込み長さ(read length)は、99%の精度であるPhred20ウィンドウとして報告できる。
【0103】
増幅サイクルの数、反応時間、サイクリングプロファイル、および種々の反応物質、すなわちプライマ、ポリメラーゼ、dNTPs、ddNTPsなどの濃度は、必要に応じて個別に最適化することができ、当業者の能力の範囲内に含まれる。例えば、忍容されるDNA濃度の範囲を決定し、ある範囲のDNA対プライマ濃度の性能のマトリックスを測定できる。最初は、サンプルは精製されたPCR産物であってよい。CSMがPCRサンプルに対して最適化されると、問題のない、および問題のある配列の両方を代表する一連の実際のサンプルをCAEおよびμCAEの両方の分析のために試験し、CAE分析結果を備えるフル容量サンプル調製と比較することができる。容認基準は、フルサンプル調製結果と比較して同等のデータ品質、読み込み長さ、および成功率であってよい。コントロールは、フル容量反応およびNanoPrep(500nLおよび200nL容量)反応を含むであろう。
【0104】
一様性は、加熱器および冷却器のデザインならびにマイクロチップレイアウトにおける変化の両方によって対処できる。表面相互作用は、BSAもしくはPVAなどの添加物によって抑制できる。反応チャンバの表面化学は、改質LPA、PEG、または他のコーティング剤のいずれかを用いて抑制できる。ガラスについては、代替アプローチは、多数の部位がポリマーを遊離させるために加水分解されなければならないので表面固定化の寿命を延長させる、多数の表面部位へ同時にポリエステルおよび酸化多糖類などのポリマーのマルチポイント共有結合であってよい。
【0105】
d) 集積化MINDSシステム
一部の実施形態では、完全MINDSシステムは、3つのモジュールであるビーズライブライリーモジュール、サイクルシーケンシングモジュール、およびDNA分析モジュールを含むことができる。一部の実施形態では、完全MINDSシステムは、25nLの対合末端読み込みサイクルシーケンシング、対の親和性捕捉クリーンアップ、およびハイパーターンを備える折り返しマイクロチャネル上のμCAE分離を集積化している400チャネルのMINDSマイクロチップ上でビーズに基づくライブラリーを分析できる。MINDSシステムは、ビーズライブラリーの構造に依存して、ショットガンシーケンシングまたは再シーケンシングのための完全自動化システムであってよい。一部の実施形態では、サイクルシーケンシングモジュールおよびDNA分析モジュールは集積化することができ、PCRもしくは精製プラスミドなどの調製されたサンプルは投入サンプルとして使用できる。一部の実施形態では、PCRもしくは他の増幅反応は、マイクロチップ上で実施できる。
【0106】
DNA分析モジュールは、回転式スキャナ(図30)を含むことができ、マイクロチップ上での対合末端読み込みサンプルのクリーンアップを実行し、その後に順方向および逆方向シーケンシング反応の分離および検出のために2つの別個のμCAEチャネル内へサンプルを注入できる。検出装置は、488nmでの励起および4色検出を行なう回転式LIFスキャナであってよい。コアMINDSシステムを作製するためには、サイクルシーケンシングモジュールはDNA分析モジュール機器と集積化することができる。このコアシステムは、100nLのサイクルシーケンシング、対合親和性捕捉クリーンアップ、および同一マイクロチップ上での分離を集積化できる。FACS機器によって分類されているPCRフラグメントを含有するビーズは、マイクロチップへ送達することができ、個々のビーズは25nLサイクルシーケンシングチャンバ内へ送り込むことができる。
【0107】
i) DNA分析モジュール
DNA分析モジュールは、各対合末端読み込みから標識されたDNAフラグメントを分離および検出するために対合末端読み込みおよびμCAEのサンプルクリーンアップを実行できる。サイクルシーケンシングは、各々が、ベクター内に挿入された固有の親和性捕捉シーケンスを有している順方向および逆方向両方向にプライマを使用できる。フル容量、ナノスケール調製、またはCSMからの対のサイクルシーケンシングサンプルは、放射状デザインを備える分析用マイクロチップのリザーバ内へ装填できる。サンプルは、順方向もしくは逆方向読み込みのどちらかのための親和性捕捉オリゴヌクレオチドを含有する2つのサンプルクリーンアップチャンバ内へ導電学的に移動させることができる。サイクルシーケンシングサンプルは約20nLの容量へ濃縮できるが、他方イオン、組み込まれていない色素、テンプレート、ヌクレオチド、および酵素は廃棄物中へ通過する。濃縮およびクリーンアップされたサンプルは、温度を上昇させることによって遊離させ、分離マトリックスが充填されたマイクロチャネル内で分離のためにTwin Tインジェクタ内へ注入できる。放射状チャネルは環状検出領域に集束するので、そこでマイクロチャネルをスキャンして検出することができる。
【0108】
モジュール式ハードウエア構成要素は、1)多数の様々なマイクロチップのサイズおよびデザインに適応できるLIF回転式スキャナ、2)マイクロチップ、3)電気泳動法制御装置、4)温度制御装置、および5)マイクロチップ再生、を含んでいる。DNA分析モジュールは、完全集積化および自動化MINDSシステムの一部であってよい。
【0109】
一部の実施形態は、現行回転式スキャナと比較して10倍という高さに向上した検出性能を備える超感受性スキャンニングシステムを作り出す。10倍の向上は、スキャナ、マイクロチップのデザイン、および色素の化学的性質における小さな(1.5〜3倍)複合的向上を引き出すことによって入手できる。スキャナについては、最高品質PMT、2色性、およびミラーが光学的効率を向上させることができ、これらを高開口数レンズを備える高出力(200mW)コンパクトレーザと結合することができる。色素の化学的性質は、シアニン供与体を使用してより明るい色素を用いて向上させることができる。マイクロチップは、割増路長を用いて検出を向上させ、バンドを鮮鋭化することによって解像度を向上させるために検出領域内に極めて深いエッチングを有することができる。マイクロチップサンドイッチおよびマイクロ光学部内の反射表面は光線収集を強化できる。最後に、以下で記載する直接注入法は、完全サイクルシーケンシングサンプルを分離チャネル内に装填することを可能にできる。細心の注意を払って各要素を最適化することによって、堅固なシーケンシングのために必要とされる標識フラグメントの量が並行して減少するので、検出限界は、現行研究バージョンに比較して有意に向上させることができる。
【0110】
回転式スキャナおよび機器。一部の実施形態では、放射状μCAEデバイスにインテロゲートするために上方監視型(up−looking)の回転式共焦点レーザ誘導型蛍光スキャナを使用できる。回転式スキャナは、4色共焦点検出ユニットに結合された回転式対物ヘッドを含んでいる。回転式スキャニングは、高い位置精度および速度一様性とともに高スキャン速度を提供するという基本的長所を有している。回転式スキャニングは、1チャネルのような少数から384チャネル長にわたる10cm、30cm、またはそれ以上の直径のウエハを備える放射状ウエハデバイスと適合できる。このため、チップデザインは、様々な用途に、例えば新規シーケンシングのための長いレーン、および再シーケンシングのための短いレーンに合わせて作製することができる。
【0111】
回転式スキャナの実施例の略図は、図30に提示されている。200mW、488nmのレーザ(Sapphire(商標)OPSL、Coherent社、サンタクララ)は、2色ビームスプリッタおよびミラーによってステッピングモータの中空軸を通して反射される。シャフトの上部では、菱形のプリズムが光線を回転軸から1cm移動させ、高開口数(>0.7)対物レンズがマイクロチップの底面層を通してチャネル上に収束させる。蛍光は対物レンズによって収集され、光学系を通って返送され、そこでスペクトル的および空間的にフィルタに掛けられ、その後DAのための8チャネルを備えるMicrostar IDSCボードを備えるモジュラー式共焦点4色PMTユニット内で検出が行なわれる。ステッピングモータは、12ミクロンの空間解像度を備える5120のデータポイント/回転を生じさせる5Hzでランされ、典型的な100ミクロンチャネルを約8データポイントが越える。5番目のチャネルには、スキャナのシャフトに取り付けられているディスク内のスロットによってトリガーされる光ダイオードによって送られる;他の4本のチャネル内でのデータ獲得の開始は、5番目のチャネルにおける電圧上昇が関係付けられている。このデザインは、典型的には5Hzのスキャン速度で数pMのフルオレセインの検出限界を備えて感受性である。一部の実施形態では、データは、市販のベースコーラを用いて前もって処理し、分析することができる。
【0112】
一部の実施形態では、DNA分析モジュール機器は、さらにまた電気泳動法およびマイクロチップ再生を制御するためのマイクロチップインターフェースデバイスを有することができる。マイクロチップは、アラインメントツールを用いてポジショニングした後に加熱された真空チャックによって正位置に保持できる。一部の実施形態では、マイクロチップは、約600ランの寿命を有することができる。チャックは、共焦点検出器の平面に対して水平に維持するためにチップの上昇を調整するための3つのポイントを有することができる。電極リングは、マイクロチップの周囲でリザーバに適合できる;電極は、4つの高電圧電源装置(Stanford Research Systems社、Model
3101)によって制御できる。以下に記載するマイクロチップ再生は、使用されたマトリックスのフラッシングおよび再充填を提供するために中央に位置する「へその緒」を用いて適所で実施できるが、リザーバの清掃および再補充は、アウターチューブがバッファもしくは他の溶液を流れさせる間に物質を除去するインナーチューブを備えるチューブ・イン・チューブデザインから行なうことができる。
【0113】
マイクロチップおよび作動。一部の実施形態では、マイクロチップは、4層デバイス内に親和性サンプルクリーンアップおよび分離チャネルを組み込むことができる。オリゴヌクレオチド捕捉シーケンスを用いた親和性捕捉クリーンアップは、サンプルクリーンアップおよび濃縮のための堅固な解決策の可能性がある。注入時に希釈サンプルを濃縮できる導電学的注入とは対照的に、オンチップでの濃縮を使用せずに、Twin Tインジェクタは、それが装填するときに事前分離を実施し、その後に「ハートカット(heart−cut)」注入を実行するが、それらはどちらも希釈サンプルの検出に対して不利に働く。分離用マイクロチップ上に親和性捕捉を包含すると、親和性捕捉は組み込まれていないターミネータ、イオン、およびテンプレートを除去しながら希釈サンプルを再濃縮できるので、200nLのCSMサンプルを装填前にマイクロリットル容量へ希釈することを可能にする。このために、CSMおよびDNA分析モジュールは、個別に設計し、後に集積化することができる。
【0114】
一部の実施形態では、MINDSシステムは、放射状デザイン290(図34)、ハイパーターンおよび中央起点291を備える12”ウエハを使用できる。一部の実施形態では、用途に依存して、400チャネルおよび45cmまでの分離長(チャネルを折り返すことによって達成される)を有していてよい12”デザインと同一のチャネル密度および長を有する、8”ウエハ292を備える部分放射状デザインを使用できる。8”ウエハは、約108の分離チャネル293を有することができる。
【0115】
図21は、8”ウエハの1つの実施形態を例示している。様々な典型的実施形態では、この8”ウエハは短い読み込みに対しては直線状の14cm分離チャネルまたは長い読み込みに対しては約45cmまでの折り返しチャネルを有することができる。サンプルは、順に各々が分離チャネルに供給する2つの親和性捕捉チャンバへ接続している単独の装填リザーバ内へピペッティングできる。サンプルが装填された後、電極を備える電極リングを下降させ、各サイクルシーケンシングサンプルを、各々が捕捉すべきマトリックスを備える2つの親和性捕捉サンプルクリーンアップチャンバへ電気泳動にかけ、順方向もしくは逆方向読み込みのどちらかが濃縮され、その間にサイクルシーケンシング反応ミックスに含まれる望ましくない構成成分が除去される。順方向もしくは逆方向読み込みは、チャンバを65℃超へ加熱し、各読み込みを個別に分析するためにTwin Tインジェクタ内へ電気泳動させることによって遊離させることができる。そこで各装填リザーバは2つの分離チャネルに供給する。分離後、分離マトリックスは交換することができる。マトリックスは、マトリックスおよびフラッシュ液のためのチューブならびに中央共通陽極バッファリザーバのための電気配線を含有する中央の「へその緒」を通してポンプで送り出すことができる。400チャネルMINDSマイクロチップには多数の形状およびデザインを使用できる。分離は、多数のCAEマトリックス中で実施できる。
【0116】
一部の実施形態では、マイクロチップは、最適分離条件および必要に応じて、マトリックス操作のために温度を制御するためのペルチエ加熱器上の真空チャック上に保持できる。分離後、バッファは、使用済みマトリックスを置換するために「へその緒」を通してフラッシュできる。マイクロチップインターフェースデバイス内の手動チューブ・イン・チューブ真空吸引ユニットは、リザーバから使用済みバッファおよびマトリックスを除去できる。新鮮マトリックスは中央チャンバを通して添加できる;マトリックス廃棄物を最小限に抑えるためのフィードバックを提供するためには、マトリックスセンサを組み込むことができる。一部の実施形態では、マトリックスの交換は、カラム長よりほんのわずかに多いマトリックスしか交換しない精密ポンピングを用いて制御できる。いずれの方法も、10分の1までマトリックスの使用を減少させることができる。バッファは、チューブ・イン・チューブのアウターチューブによってリザーバ内へ再補充することができ、その間にマトリックスはインナーチューブによって真空除去される。親和性サンプルクリーンアップマトリックスもまた、必要に応じて本明細書に記載するようにサービスラインを用いて交換することができる。
【0117】
一部の実施形態では、マイクロチップは、正常サンプルを用いると600ランにわたり使用することができる。マイクロチップの性能は、性能が劣化するとLabRAT、e−メール、ページング、またはオンスクリーンディスプレイによって警告されたソフトウエアおよびオペレータによって監視できる。マイクロチップの交換は、オペレータが手動で実施できる。一部の実施形態では、使用済みマイクロチップの除去は、マイクロチップを取り外す前に、へその緒、電極リングならびにオンチップバルブおよびポンプのための作動バンドルを引き抜く工程を含むことがある。新規マイクロチップの取り付けは、マイクロチップを適正にポジショニングするためのアラインメントツールによって促進できる。アラインメントは、アラインメントマークの検出、ならびにソフトウエアの補助を受けた手動または完全自動化のいずれかによる光学系の焦点合わせによって検証できる。
【0118】
マイクロチップの製作。様々な典型的実施形態では、超微細加工プロセスは、Liu et al. 2000. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(10):5369−5374およびAnderson et al. 2000.
Nucleic Acids Res. 28:e60に記載されているとおりであってよい。一般に、Borofloatガラス製ウエハ(Schott社、ニューヨーク州ヨンカーズ)は、濃HFで予備エッチングし、次にCVDもしくはスパッタリングによってアモルファスシリコンマスクを沈着させることができる。一部の実施形態では、アモルファスシリコンの代わりにクロム−金を使用できる。HMDSの接着層をアモルファスシリコンの上部にコーティングし、ウエハにフォトレジスト(Shipley社、カリフォルニア州サンタクララ)の薄層をスピンコーティングし、ソフトベークすることができる。フォトレジストは、所望のチャネルパターンを有するマスクを通してUV光線を用いてパターン化できる。フォトレジストが現像された後、露出したアモルファスシリコンは除去し、チャネルパターンは濃塩酸を用いて、流体用ウエハ上のチャネルについては約40μmおよびマニホールドウエハについては約70μmの深さへガラスに化学エッチングすることができる。しかし、様々な構成成分の深さを決定することは、当業者の能力の範囲内に含まれる。残留しているフォトレジストおよびアモルファスシリコンは剥ぎ取ることができる。250μm以下のアクセスホールは、ダイアモンド製ドリルを備えるCNCミニミルを用いてBorofloatバイアウエハ内に穿孔できる。一部の実施形態では、より小さなホールは特注レーザを用いて穿孔できる。製造するために、超音波穿孔は全ホールを同時に穿孔できる。H2SO4/H2O2中での最終洗浄後、流体ウエハおよびバイアウエハは、バイアホールがチャネルギャップと適正にポジショニングされるようにアラインメントし、その後2層μCAEチップを製造するために約570℃の真空炉内でバイアウエハと加熱結合させることができる。5層マイクロチップについては、3枚のガラス製ウエハをアラインメントして最初に組み立てることができる;ガラス層のうちの2枚は薄いウエハであってよい。マニホールドウエハおよび厚さ254μmのPDMSメンブレン(Bisco Silicones社、イリノイ州エルクグローブ)は、UVオゾンクリーナ中で洗浄し、4もしくは5層のマイクロチップを組み立てることができる。UVオゾン処理は、不可逆性ガラス−PDMS結合を作り出すことができる。最終マイクロチップは、個別CSMマイクロチップを製造するためにダイスカットできる、またはMINDSマイクロチップのためにそのままで使用できる。
【0119】
一部の実施形態では、マイクロチップは、射出成形、ホットエンボス加工法、積層法などの方法、およびデザインを複製するためによく知られているその他の方法を用いてプラスチックや他の物質で作製できる。マイクロチップを製造するためのこれらの作製方法の適用は、本開示の範囲内に含まれる。
【0120】
DNA分析モジュールの特性付け。回転式スキャナを利用する実施形態では、検出限界は流動している色素溶液および内部標準物質として測定された水のRamanピーク(2つのピーク577.6nmおよび589.4nmから)を用いて測定できる。DNA分析モジュールを備えるサンプルクリーンアップおよび分離マイクロチップの性能は、その後に標準PCR産物の連続希釈が行なわれるフル容量PCR反応の標準物質を用いて特性付けすることができる。サンプルクリーンアップ(例、装填、洗浄、および溶出条件)ならびに注入および分離(時間、電圧、分離温度、バッファ濃度など)についてのパラメータは、当業者によく知られている方法を用いて最適化できる。品質値、成功率、および読み込み長さは、測定して試験サンプルおよび実質サンプルと比較できる。一部の実施形態では、読み込み長さは約600塩基以上であってよい。一部の実施形態では、親和性捕捉の再生を試験し、性能劣化前のラン数を測定できる。分離マトリックス中での尿素とDMSOとの部分的交換は、ラン時間を短縮させ、キャピラリ内の長い読み込み長さを生成できる。一部の実施形態では、マイクロチップは様々なマトリックスもしくはコーティングを用いてマイクロチップの寿命を決定するために標準サンプルを用いて繰返しランすることができる。例えば、8倍へのショットガンシーケンスに対しては、BACライブラリーは、約22ランの100チャネルDNA分析モジュールマイクロチップを要する可能性がある。
【0121】
ii) DNA分析モジュールとの集積化サイクルシーケンシングモジュール
CSMの機能をDNA分析モジュールと結合すると、コアMINDSシステムを作り出すことができる。上述および図14のCSMマイクロチップの基本ユニットデザインは、8” DNA分析モジュールマイクロチップへ移植することができる。これは100の対合末端読み込み親和性サンプルクリーンアップチャンバおよび分離マイクロチャネルと集積化された対合末端読み込みのための50個の100nLサイクルシーケンシングサンプル調製チャンバを備えたマイクロチップを作製することができる。本システムのサービスは、マイクロチップを作動および再生させるためにマイクロ流体およびミニロボット型オンチップ機能を使用できる。サンプルを装填するために外部オートメーションを含む実施形態では、コアMINDSシステムは、現行方法に比較して実質的に減少したコストで1日当たり7M塩基の高品質シーケンスを生成できる。
【0122】
機器。コアMINDSシステム機器のための基盤は、DNA分析モジュール機器であってよい。スキャナは、修飾せずに使用できる。上述したCSMマイクロチップインターフェースデバイスは、わずかな変更を加えるだけで、1)CSMマイクロチップに基づくカートリッジ内での液体の移動を制御するオンチップミニロボットの外部作動化を自動化する、2)サーマルサイクリングのための外部加熱および冷却を制御する、および3)チップへサイクルシーケンシング試薬を送達するためにシリンジポンプを駆動する、ために直接的に適応させることができる。一部の実施形態では、Tecan社製ロボットは必要とされない。1)のオンチップバルブの外部作動化のためには、各作動チャネルが、2本もしくは400本であっても、全チャネルのための1つの特定バルブの全部にサービスできるために、装置の適応は必要とされない。2)のためには、加熱および冷却はマイクロチップの外部であってよく、一連の抵抗加熱器またはペルチエのストリップであってよい。適応は、追加の長さおよび数の加熱器を備える形状を含む設計によって達成できる。熱の管理は、本システムにとって重要な検討事項である。3)のシリンジポンプのためには、追加のポンプは必要とされない。以下に記載するサービスチャネルの追加は、1つのシリンジポンプが全チャネルにサービスすることを可能にするはずである。そこで、装置の修正は、CSMマイクロチップインターフェースデバイスの構成要素とDNA分析モジュールマイクロチップインターフェースデバイスとを結合することであってよい。
【0123】
一部の実施形態では、マイクロチップインターフェースデバイスおよびマイクロチップの細部は、何らかの空間的もしくは温度の対立を排除するために設計できる。真空チャックは、サンプル調製およびクリーンアップチャンバのためにより低い温度のリングを有するように適応させることができる。結合CSMおよびDNA分析モジュールマイクロチップインターフェースデバイスのデザインは、以下で考察するオンチップマイクロロボットを用いてマイクロチップにサービスするというコンセプトによって大きく単純化できる。
【0124】
マイクロチップおよび作動。コアMINDSシステムは、CSMマイクロチップの機能性およびデザインを、DNA分析モジュールからのサンプルクリーンアップおよび分離と直接的に集積化できる。図22は、1つの典型的デザインにおける1対のチャネルを示している。マイクロチップ上の環状リング内にあるバルブおよびポンプのための作動ライン314に注目されたい。これらは図22では水平のラインに見えている。
【0125】
PCR産物もしくはPCR産物を備えるビーズであるサンプルは、注入口内へ装填できる。基本CSM反復ユニット(約200回反復できる)は、サンプルを、サイクルシーケンシングミックスを含む100nLサイクルシーケンシング反応チャンバ316内へポンプで送り出すことができ、4つの取り囲んでいるバルブは閉鎖し、サイクルシーケンシングが発生する。サイクルシーケンシング後、CSMにおけると同様に、サイクルシーケンシング産物および反応物質は、水を含有するリザーバ内へポンプで送り出すことができるが、ただし今回は、電極接続を有している。サンプルは、2つの対で読み込まれる親和性捕捉チャンバ317〜318へ電気泳動させることができる。不純物を除去し、生成された蛍光標識サイクルシーケンシングフラグメントはTwin Tインジェクタを通して2つの分離チャネル内へ注入することができる;このユニットは、例えば、400本の分離チャネルを生成するために、約200回繰り返すことができる。フラグメントは高性能ナノゲルもしくは他のマトリックス内で分離し、回転式スキャナによって中心近くで検出できる。一部の実施形態では、約400本の分離チャネルを有することができる12”ウエハの4分の1区画を模倣するために、約100本の分離チャネルを備える8”を使用できる。
【0126】
マイクロチップは45分間の分離サイクル時間、45分間のサイクルシーケンシングおよびクリーンアップサイクル時間を提供でき、対で読み込まれる1つのサイクルシーケンシング反応チャンバは、2つの分離チャネルに供給できる。これはデザインを単純化し、必要とされるバルブ、電極、およびチャネルの数を減少させる。分離は、分離とサイクル時間を共有するマイクロチップ再生および事前ランを用いてほぼ連続的であってよい。35分間の分離中、サンプル調製サイクルは、注入口内に装填されたサンプルを用いて再び開始できる。一部の実施形態では、サンプルは、分離チャネルの注入準備が整う時間までに調整して分離の準備を整えることができる。一部の実施形態では、必要に応じて単独分離チャネルに供給する複数のサイクルシーケンシングもしくはゲノタイピングチャンバを使用できる。マイクロチップは、共通中央陽極を有することに加えて、大きなバッファ容量を備えるマイクロチップの周囲を走る共通の環状開放陰極チャネルをさらに有することができる。このチャネルは、分離を劣化させるイオン枯渇を房すする特別なバッファ能力を有することができ、電極の数および交換を単純化し、バッファおよび過剰なマトリックスを除去せずに反復マトリックス装填を可能にできる。マイクロチップは、デザインおよび作動を大きく単純化するために他のチャネルに交差するサービスチャネル(すなわち、サイクルシーケンシングミックス、廃棄物、親和性ゲルポリマー、水)を可能にするために三次元をさらに使用できる。
【0127】
一部の実施形態では、結合CSMおよびDNA分析モジュールマイクロチップインターフェースデバイスは、両側にエッチングされた中央ウエハを備える三次元マイクロチップデザインを用いてオンチップミニロボットを備えるマイクロチップをサービスすることに依拠できる。サービスチャネルは、多層デザインにおいて様々な層を結合するバルブの能力を基礎としている。
【0128】
図12は、サンプルクリーンアップチャンバ321へ新鮮親和性捕捉マトリックスを提供しているサービスチャネル320の接続の実施形態を示している。図示したデザインでは、サービスチャネルの流体路はエッチングされたウエハ322の上部の左から分離チャネルを越え、PDMS層上のバルブ323の1つの開口部に入り、越え、そしてそのバルブの第2開口部を、サンプル調製、クリーンアップ、および分離チャネル321、324がエッチングされている二重エッチングされたウエハの底面層へ下っていく。サービスチャネル流体路は、次に親和性捕捉サンプルクリーンアップチャンバ(図の平面に垂直に走る)およびバルブを通過して、エッチングマイクロチップの上部へ再び結合する。これは、マイクロチップの上面上のサービスチャネルが、妨害されずにそれらの上方を通過することによってサンプル分離チャネルおよび他のチャネルに交差することを許容する。この同一原理は、サンプル調製チャネルに適用できるが、分析チャネルには適用できない。幅広で深くてよい個々のサービスチャネルは、サイクルシーケンシングミックスを送達し、2つの親和性捕捉マトリックスを2つのサンプルクリーンアップチャンバ内へ再充填し、サンプル調製チャンバを回復させるための洗浄を提供し、サンプル調製チャネル、サンプルクリーンアップチャネル、および分離チャネルの全部から廃棄物を収集するであろう。6本のサービスチャネルは、各々がマイクロチップ上で同心性リングを形成するであろう。それらは、シリンジポンプ、マクロスケールの流体ライン、もしくは真空ラインに接続されるであろう。二重エッチングされたウエハとPDMSとの間の「付加的」ウエハ層は、貫通穴しか含有していないであろう。エッチングされたチャネルはエッチングされたウエハの両側にあるので、貫通穴は、サイクルシーケンシングミックスのため以外は相当に大きくてよい。
【0129】
マイクロチップの再生は、以下のとおりに実行できる。分離後、中央のへその緒は新規マトリックスをチャネル内に押し込み、分離チャネルをぴったりに充填する。サイドチャネル上の相違する相違するチャネル幅は、マトリックスを陰極へ方向付けることができる。一部の実施形態では、2つのサンプルクリーンアップチャンバは、2つのサービスチャネルを用いて再生できる。サービスチャネルは、通常はバルブによって閉鎖できる。親和性マトリックスを交換するためには、バルブを開放させ、チャネルのためのシリンジポンプを作動させ、新規の親和性マトリックスが順方向チャンバ全部にポンプで送り込むことができる(例えば、親和性マトリックスの1回の装填に付き複数のランが可能なことがある)。他の親和性チャンバのためにも類似のシーケンスが発生する。サイクルシーケンシング反応チャンバは、洗浄サービスラインからチャンバを通って廃棄物リザーバ内へ洗浄液をポンプで送り出すことによって同様に洗浄できる。バッファリザーバは、一番上のウエハの上部にある大きな共通リザーバへ接続できる。より大きな容量は、蒸発およびバッファ枯渇の影響を最小限に抑えることができ、バッファ充填およびフラッシングを単純化できる。
【0130】
本開示の態様は、以下の実施例を参考にするとより明快に理解することができるが、実施例は決して本開示の範囲を限定するものであると解釈されてはならない。
【実施例】
【0131】
1. 大腸菌(E. coli)のビーズに基づく捕捉
磁性ビーズに結合したモノクローナルもしくはポリクローナル抗体を含む希釈溶液からのモデル標的微生物の捕捉を使用すると、BPMマイクロデバイス内へ導入するための濃縮精製物質を提供できる。ここでは、本発明者らは、大腸菌のO157菌株に対する抗体と結合したDYNAL(登録商標)ビーズの使用について記載する。本発明者らは、3シリーズの実験を実施した:(1)希釈ストックから大腸菌を捕捉する、(2)高度に過剰のバシラス菌の存在下で大腸菌を捕捉する、および(3)Baltimoreエアサンプラからのエアロゾルサンプルから大腸菌を捕捉する。
【0132】
本発明者らは、最初に食品サンプル中で大腸菌O157を検出するために使用されるDYNAL(登録商標)「スワブプロトコル(swab protocol)」を、適切な増殖培地へのビーズの直接平板培養と比較した。本発明者らは、非病原性菌株O157およびE.coli? ATCC strain 700728のトリプチケースソイ寒天(TSA)上への直接平板培養は約5倍以上のコロニーを産生する、このためスワブ法より捕捉微生物数のより良好な推定値を提供することを見いだした。このため、本発明者らは、その後の全実験において直接平板培養法を使用した。
【0133】
本発明者らは、DYNAL(登録商標)ビーズがPBS/Tweenバッファ中で105CFU/mL〜101CFU/mLの範囲内の細胞力価にわたり大腸菌に結合する能力を測定した。これらおよびその後の免疫磁気分離(IMS)実験では、プロトコルは、5μLのDYNAL(登録商標)ビーズの懸濁液を250μLのPBS/Tween中の大腸菌の適切な希釈液に添加することであった。細胞は、添加されたビーズとロッキングプラットフォーム上で10分間にわたりキャップをしたプラスチック製マイクロフュージチューブ内で混合した。ビーズはその後、強力な磁石を用いてチューブの側面に接触させて捕捉し、上清を除去し(しかし平板培養のために保存した)、ビーズをPBS/Tweenバッファで3回洗浄した。ビーズを再懸濁させ、ビーズの希釈液を平板培養した。数回の実験で、本発明者らはさらに洗浄液をプレートアウトした。一般に、洗浄液はほとんど標的微生物を含有していなかった;標的細胞はビーズ上に捕捉された、または結合せず、一次上清中で回収可能であった。
【0134】
図35は、捕捉を2×105、104、103、102、20、および2cells/mLの開始時細菌濃度について3回実施した、PBS/Tween中に希釈した大腸菌O157を捕捉した結果を示している。捕捉された細胞数の観察値は、105〜10cells/mLの範囲にわたり線形(R2=0.995)であり、105〜103cells/mLの範囲については捕捉効率はほぼ95%を超えていたが、100cells/mLについては87%へ、そして20cells/mLについては69%へ低下した。他の実験(データは示していない)は、一般に103〜105の大腸菌濃度についてはPBS/Tweenから85%を超える回収率を生じた。
【0135】
2. モノクローナル抗体を用いた大腸菌捕捉のダイナミックレンジ
捕捉化学は、最初はチューブ内で250μLの容量で試験し、バッファ中に分散させたモデル微生物を用いて捕捉および洗浄を最適化した。図36は、DYNAL(登録商標)ビーズに結合したモノクローナル抗体を用いた大腸菌の代表的な捕捉を示している。大腸菌O157は、250μLのPBS/Tween中の様々な濃度で含まれる抗大腸菌O157抗体と結合した5μLのビーズへ添加した。この混合物を回転式ミキサで10分間混合した。ビーズは、強力磁石を用いてチューブの側面に引き寄せ、上清を除去した。ビーズは、250μL PBS/Tween(PBST)を用いて3回洗浄した。洗浄したビー酢を250μLのPBST中に再懸濁させ、捕捉した大腸菌をTSA上で計数した。
【0136】
図36に示した結果は、ビーズの量とビーズが大腸菌を捕捉する能力との間には用量反応関係が見いだされることを証明している。図36は、約106cells/mLまでは捕捉が線形であり、約4×107cells/mLの最高値で飽和することを示している。106cells/mLを超えると、上清中で回収される細胞のパーセンテージが増加する。大腸菌で飽和したDYNAL(登録商標)ビーズの直接的顕微鏡検査によって、約5cells/ビーズが明らかになった。この捕捉法は、250μL中に含有される標的細胞の平均90%超を15分間未満に10μL未満の容量へ精製および濃縮する能力を証明した。
【0137】
3. モノクローナル抗体を用いた大腸菌の特異的捕捉
ビーズに基づく捕捉法の特異性を決定するために、本発明者らは、添加されたBacillus cereus(ATCC 11778)細胞が、抗体のコーティングされたビーズへの大腸菌の結合に及ぼす影響を標準アッセイ条件下で試験した。約104 E. coli/mLの懸濁液を様々な力価のB. cereusと混合し、上述したようにIMSを実施したが、ただし回収は選択的にB. cereusを阻害するレベルで添加されたテトラゾリウムを備えるTSA培地上で実施した。これは細胞混合物の直接平板培養を許容したが、複製してコロニー形成単位(CFU)として定量できたのは大腸菌だけであった。
【0138】
図37に示したように、B. cereusの添加は、2種の微生物が1/1の比率で存在した場合には大腸菌がビーズに結合する量を約20%減少させたが、100,000倍過剰のBacillus菌は大腸菌の結合をコントロールの56%までしか減少させなかった。これは、この抗体−細胞組み合わせについては、DYNAL(登録商標)ビーズが極めてすぐれた特異性を生み出せることを示唆している。
【0139】
4. モノクローナル抗体を用いたエアロゾルサンプルからの大腸菌の捕捉
本発明者らは細菌細胞を効率的に捕捉、精製、および回収できることを証明したので、Spector Industries社の御厚意により90%(v/v)のBaltimoreエアサンプラ由来液体(BASL)サンプルを含有する溶液から大腸菌O157を回収することに拡大したいと考えた。BASLは、潜在的に抗体媒介性結合および回収を妨害する可能性がある、極めて多種多様な競合する微生物、花粉、ならびにその他の化学物質および生物学的物質を含有している。
【0140】
本発明者らがBASL溶液から大腸菌O157を濃縮および回収する能力を試験するために、純粋培養中でこの菌株を増殖させ、90% BASL中、およびコントロールとしてのPBST中でも102、103、および104CFU/mLの力価を調製した。DYNAL(登録商標)ビーズ(抗O157抗体を含有する)の5μLの懸濁液を、90% BASLもしくはPBSTのどちらかの中に大腸菌を含有する250μLのサンプルに添加し、ロッキングプラットフォーム上で10分間インキュベートし、その後にビーズを捕捉法を実施した。上清を除去し、PBSTを用いてビーズを3回洗浄し、PBST中に再懸濁させた。CFUの数を決定するために、一次上清およびビーズを平板培養した。全プレート計数は、セフィキシムおよび亜テルル酸塩(CT−SMAC社)を添加したMacConkey−ソルビトール寒天を用いて決定した。CT−SMACは、大腸菌O157のための半選択的培地であり、BASL中に含有される極めて多数の微生物から非大腸菌CFUの総数を減少させるために役立ち、ソルビトールの発酵によってO157の比色指示を提供する。
【0141】
本発明者らの標準IMSプロトコルを用いて、90% BASLを含有する溶液から大腸菌O157の極めてすぐれた結合および回収が入手された(図38)。一般に、細胞がPBSTまたは90% BASLのどちらに分散していたかとは無関係に、90%を超える細胞がIMSビーズに結合して回収された。これは、試験した104、103、および102CFU/mLの細胞濃度範囲にわたって事実であった。
【0142】
図39は、特に104CFU/mLの力価についてのデータセットを示している。第1バーおよび第3のバーは、コントロールの力価を示している。第2のバーは、サンプルがコントロールとしてのPBST中でのみ実施された場合のビーズ分画および上清分画中で回収された細胞の比率を示している。第4のバーは、実験が90% BASL中でのみ実施された場合のビーズ分画および上清分画中で回収された細胞の比率を示している。この実験は、BASL中の構成成分が、少なくともこの抗体およびそのエピトープについては結合および回収を妨害しないことを示している。
【0143】
5. 固相抽出法(SPE)
本発明者らは、干渉化合物が貫流するのを許容しながら小さな表面上に分析物を結合させる、リットル量のサンプル容量まで処理できるオフチップ型のディスポーザブル式フロースルーデバイスについてSPEを評価した。最終的に、標的分析物は、マイクロチップに基づくバイオプロセッサによる下流処理のために濃縮形で回収できる、またはSPE物質自体をマイクロチップのためのフィードストックとすることができる。
【0144】
本発明者らは、シリカマトリックスを使用する大腸菌のSPE捕捉を評価した。基本スキームは、様々な力価の細菌に固相を通過させ、少量のバックフラッシュを用いて溶出し、次に細菌含量について上清および溶出液を分析することであった。以下の実験では、大腸菌のDH5α菌株(Invitrogen Technologies社)をPBS/Tween(PBST)中で104〜102cells/mLの範囲内の希釈率で調製した。全部の実験において、100mgの固体床を有するベアシリカExtract−Clean SPEカートリッジ(Alltech Associates社)を使用した。
【0145】
各カートリッジに対して:(1)18μLの細菌/酵素混合液に約5mL/分の流速でSPE床を通過させた;(2)上清を収集し、細菌力価について分析した;(3)2mLのバッファを用いてカートリッジをバックフラッシュし、溶出液中の細菌数を決定した。分析は、細菌の相対捕捉率および回収率を決定するために、上述したように37℃でTSA上の細菌増殖によって実施した。
【0146】
6. フロースルーモードでのSPE培地による細菌の保持
図40は、25,000もしくは45,000CFU/mLの相当に高濃度の細菌を含むサンプルを用いて、装填したサンプル中、ならびにSPE後上清(未結合)および溶出液中の細菌濃度の関数としての細菌アッセイの結果を示している。この範囲内では、80〜90%の大腸菌がSPEマトリックス中に保持されるが(図41)、少量の細菌は通過し、極めて少量(1%)は逆流洗浄によって回収される。そこで、シリカ上では強力な結合が示され、生育細胞の溶出は極めて少ない。125および250CFU/mLの極めて低い力価では、比例してより多くの細胞がカラムを通過し、約20%しか保持されない(データは示していない)。
【0147】
7. フロースルーモードでのSPEおよびアガロース「Big Bead」によるタンパク質(β−ガラクトシダーゼ)の保持
一部の実施形態は、生体材料を捕捉または精製するためにアガロースに基づく「Big
Bead」を使用する。市販で入手できるβ−ガラクトシダーゼ(Sigma社)を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)、1mMのMgCl2中に100および10ng/mLの2種の濃度で溶解させた。これらの2種の溶液は、50Åの孔径を備える100mgの50μmシリカ粒子を含有する「Extract−Clean」 SPEカートリッジ(Alltech社)、または500μmの硬化アガロースビーズを含む5mLの「Big Bead」カラムに通過させた。アガロースおよびシリカ由来培地の両方に対して、酵素溶液(20mL)に約5mL/分の流量でそれらの各SPE床を貫流させ、上清を収集し、カートリッジを2mLのバッファで約1mL/秒の流量でバックフラッシュした。上清および溶出液は、基質としてo−ニトロフェニル−β−ガラクトシド(ONPG)を用いて酵素活性について分析した。
【0148】
図42は、10および100ng/mLの両方の酵素濃度にある2種のマトリックスについて、「上清」、「溶出液」、および「保持された」分画中のβ−ガラクトシダーゼ活性のグラフを示している。「保持された」は、装填時、貫流中、および溶出液の間の差によって計算する。シリカに基づくSPE培地については、β−ガラクトシダーゼの約75%が貫流して、上清中で回収される。バックフラッシュした溶出液中では極めて少量の酵素(1〜2%)しか検出されない。このため、β−ガラクトシダーゼの約25%がカラム上に保持されている。「Big Bead」培地については、β−ガラクトシダーゼの85〜99%がカラムを貫流するが、溶出液中で回収されるのは5%未満である(図42)。これは、極めて少量の約0〜10%がマトリックス上に保持されることを意味する。このため、これらの培地は毒素などの標的分析物を保持された物質から分離するためのフロースルーモードにおいて有用な可能性がある。
【0149】
8. フロースルーモードでの捕捉培地としてのアガロース「Big Bead」による大腸菌の保持
本発明者らは、アガロースBig Beadカートリッジが大腸菌のDH5α菌株に選択的に結合して濃縮する能力を評価した。図43は、2,000または4,700CFU/mLの初期細胞濃度で実施されたBig Bead捕捉実験から入手した分画中の大腸菌DH5αの分布を示している。これらの実験は、104または103CFU/mLで20mLの細菌懸濁液を用いて、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)、1mMのMgCl2中で実施した。このアッセイは、TSAプレート上の増殖であった。低力価(2,000CFU/mL)では、>70%の細菌がフロースルー分画中で、バックフラッシュした溶出液中では1%未満が回収された。高力価(4,730CFU/mL)では、>80%の細菌がフロースルー分画中で、溶出液中では5%未満が回収された。したがって、Big Beadマトリックスに結合したままなのは25〜10%の細菌だけであった。
【0150】
9. NanoBioProcessor用マイクロチップ
マイクロ流体デバイスの超微細加工は、本質的にはLiu et al. 2000.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(10):5369−5374によって記載されたように実施した。手短には、Borofloatガラス製ウエハを洗浄し、アモルファスシリコン製マスクを沈着させ、その後にHMDS層およびフォトレジスト層を接着させた。フォトレジストは、マスクを通して紫外線を用いてパターニングし、チャネルパターンは濃HFを用いて、典型的には流体ウエハ上のチャネルについては40μm、およびマニホールドウエハについては70μmの深さへ化学エッチングした。フォトレジストおよびアモルファスシリコンは剥ぎ落とし、アクセスホールはダイアモンドドリルを備えるCNC−ミニミルを用いて穿孔した。これらの穴は、4層マイクロチップにおいて反応および検出チャンバとして使用できる。または、本発明者らは、全部の穴を同時に穿孔するためには超音波穿孔を使用するであろう。洗浄後、流体用ウエハおよびバイアウエアをアラインメントし、熱結合させた。4層マイクロチップを作製するために、マニホールドウエハおよびPDMSメンブレンを加えた。
【0151】
2つのNanoBioProcessor用マイクロチップが設計かつ構築された。第1のマイクロチップ、MBI−11 240(図19)は、様々なスケールで本質的なマイクロ流体処理オンチップ構成成分を単離および試験するために設計された。これは、(1)バルブのデザイン、(2)反応チャンバのデザイン、(3)連動反応、および(4)ルータのデザインの実施形態を示している。各要素の作動は、バルブ、ポンプ、およびルータを作動させる8チャネルのフルスケール空気圧システム241によって制御される。本発明者らは、3層および4層チップにおけるMOVバルブ、ポンプ、およびルータの作動について試験した。チップの各要素は、バルブ作動を促進するために8チャネルのフルスケール空気圧式バスを用いてインターフェースするように設計されている。
【0152】
第2のNanoBioProcessorマイクロチップであるMBI−12は、サイクルシーケンシングもしくはPCRのためのビーズからの両方のサンプル調製を試験するため、ならびに個別に、およびサンプル調製と結合した両方でμCAEを試験するために開発された。図20に示したマスクのデザインは、エッチングし、機能的な4層マイクロチップに組み立て、試験されている。MBI−12は、μCAEチャネルおよびそれらを上流サンプル調製デバイスへ接続する数種のデザインを有している。
【0153】
本発明者らは、MOVバルブ、ポンプ、およびルータを用いる、ならびにバイアなどの深いチャンバ内で良好に機能する表面弾性波(Surface Acoustic Wave:SAW)混合を用いる混合を例示した。SAWは、マイクロチップ内のチャンバ内で脈動内圧波を作り出し、溶液を均質化してそれらを混合する。
【0154】
10. 生物兵器防衛のためのサンプル調製を実施するNanoBioProcessor
このバイオプロセッサモジュールは、上流のエアサンプルコレクタもしくは他の投入デバイスからサンプルを受け入れ、保存および再検査のためのアリコートを作製し、サンプルを溶解し、サンプルを調製して標識し、さらにそれらを分析のために単分子蛍光相関検出器へ排出する。バイオプロセッサモジュールは、流体デバイスを含有するディスポーザブルのプラスチック製カートリッジおよびカートリッジを作動させる機器を含んでいる。
【0155】
分析前に、サンプルは分割され、アリコートに分配される。自動化マイクロ流体プロセッサは:1)検査のために核酸を調製する;2)検査のためにタンパク質を調製する;3)検出のために細胞を調製する;4)陽性サンプルの再検査および法医学分析のために保存することができる。
【0156】
カートリッジは、「CD」フォーマットにあり、そして単独サンプルのために使用された各ユニットを備えて、1セクタ内に1カートリッジ当たり12個のバイオプロセッサユニットを有する。カートリッジはバイオプロセッサユニット内で1つのサンプルを処理し、その後次のバイオプロセッサユニット内の次のサンプルを受け入れるために回転する。2時間のサンプリング処方のために、カートリッジは、CDチェンジャに類似するミニ回転トレイ内に保存された一連のカートリッジから自動的に毎日交換される。カートリッジおよび試薬を再供給するための手動介入は、約2週間毎に1回実施される。
【0157】
本機器は、カートリッジを保存する、試薬を装填する、実行する、および取り替えるための機構を提供する。本機器は、1)バルブおよびポンプを作動させるために圧力もしくは真空を送達するソレノイドを開閉する、2)カートリッジの領域を加熱および冷却する、3)ミニ回転式トレイへ、およびミニ回転式トレイからカートリッジを移動させる、4)微生物を超音波により破壊する、および5)必要に応じて他の機能を行なう機能性を有する。
【0158】
11. 生物兵器防衛のための遺伝分析を実施するNanoBioProcessor
サンプル濃縮モジュール。マクロスケールで開始され、標的微生物の表面エピトープに対する抗体を用いて修飾された磁性ビーズが、チャンバ内のミリリットル容量のエアコレクタ210の排出物(または他のマトリックスから生成したスラリ)へ加えられる(図8)。ビーズは、個別微生物、サブタイプ、種などに特異的な抗体を用いてコーティングされた数セットのビーズの混合物である。インテロゲートされる微生物の範囲は、追加の試薬混合物を用いて拡張できる。ビーズは標的微生物を捕捉し、その間に不純物は洗浄によって除去される−第一次元の選択性および特異性が提供される。標的微生物を含有するビーズは、SCPM211内で磁石によって収集される。
【0159】
サンプル増幅および分析モジュール。今度はマイクロスケールに入り、ビーズは、NanoBioProcessor(NBP)用マイクロチップ213上で溶解バッファを含有するリザーバ212内へ装填され、その後の操作は全部がマイクロ流体スケールで発生する。NBPマイクロチップ200(図18)は、制御要素としてマイクロ流体オンチップバルブおよびポンプを用いて個別バイオプロセッサ内でサンプルを処理するように設計されている。ビーズは、それらが堰222によって捕捉されるまでリザーバ221からポンプで送り出され、そこで胞子および/または細胞を破壊してDNAを遊離するように超音波処理される。DNAは、反応チャンバ223へ移動させられ、そこではμRT−PCRのためのプローブを含有する特異的プライマを備えるPCR試薬がオンチップポンプによって添加され、多重化反応でμRT−PCRが実施される−第二次元の生化学的選択性および特異性が提供される。
【0160】
RT−PCRは分子診断学の強力なツールではあるが、蛍光がヌクレアーゼ、非特異的伸長、または他の機構によって消されないので、RT−PCRには高度の可変性バックグラウンドという難点がある。擬陽性を最小限に抑えるために、陽性と推定されるμRT−PCRサンプルは、それ以上の選択性および特異性を得るために、高速(<5分間)オンチップ・マイクロチャネルキャピラリアレイ電気泳動分離(224)によって分離される。バイオインフォーマティクスのプライマデザインによって様々なフラグメント長の産物が生成され、マイクロチャネル電気泳動分離および蛍光発光によって識別される−フラグメントのサイジングにより、真の陽性の確証および同定を伴うPCR反応の多重化の増加が可能になる。マイクロチップ225上には、少なくとも96個のバイオプロセッサユニットが放射状に配置される(図18)。96チャネルマイクロチップは、1時間に付き1つのチャネルを用いて4日間作動する。
【0161】
12. NanoBioProcessorで実施されるEXPAR反応
EXPARは、オリゴヌクレオチド配列、熱安定性ポリメラーゼ、およびニッキング酵素を用いる、60℃でDNAの短いセグメントを特異的に増幅させるための高速等温法である。生成物は、蛍光またはMSによって検出される。EXPAR反応は、NanoBioProcessorで遺伝子検査、遺伝子発現測定、分子診断学、生物兵器防衛およびその他の用途のために実施できる。
【0162】
反応ミックスは単独ステップでサンプルに添加され、熱安定性ポリメラーゼおよびニッキング酵素は、マイクロチャネル内で大多数の他のタンパク質と同様に機能する。EXPARは、わずかな改変を行なった後に図15もしくは20に示したマイクロチップ内で、または図13に示したマイクロチップ内で実施される。DNAもしくはRNAである核酸は、1つの標識されたIMS投入などのマイクロチャネル250内でMOVポンプ251を用いてチャンバ内へ移動させられ、次に試薬チャネル252の1つから単一反応ミックスが加えられる。流体回路を使用して複数の反応物質の1つが反応チャンバ253へ添加される。反応チャンバの温度は、任意で制御される。反応後、処理されたサンプルはMOVポンプを用いて、オフチップMSによる分析のためにリザーバもしくはチューブ254内へポンプで送り出される、または蛍光、化学発光もしくは他の検出方法によってオンマイクロチップで分析される。分析のための単一チャネルに加えて、サンプルはMOVルータを用いて多数のチャネル内に分割し、その後に多重EXPARを行うことができる。
【0163】
13. NanoBioProcessorで実施されるRiboMaker反応
RiboMaker検出システムは、人工プロモータ複合体(APC)およびRiboLog(商標)と呼ばれるヌクレオチドアナログを用いる、abscription(商標)と称するRNAポリメラーゼ(RNAP)転写の不稔開始に基づいている。APCは、50〜450個のトリヌクレオチド不稔生成物/分/部位を生成するためにRNAPポリメラーゼのための開始部位を提供する。検出は、MS分析、蛍光、化学発光、または当業者によく知られている他の方法によって行うことができる。DNAもしくはRNA分析のためには、APCは、標的部位プローブに対する特異性を提供するフランキング配列を有することができる。相違する質量単位を備えるRiboLogは、どの部位が結合しているかを同定できる。インテロゲートすべき配列の様々な部分へ複数のAPCを結合させることによって、RiboLogのフィンガープリントは、擬陽性および擬警報を排除するのに役立つ、生物兵器防衛のための追加の特異性情報を提供できる。タンパク質については、APCユニットは抗体に結合させることができる。RiboMaker検出は、高速で、線形であり、PCRに比較して阻害に対して低感受性であると主張されている。
【0164】
RiboMaker反応は、図13に示したマイクロチップなどのNanoBioProcessor用マイクロチップ上で遂行される。単一APC試薬、その後の単一反応ミックスの添加には2つの混合ステップを必要とする。RiboMakerサンプルがビーズ上に捕捉されると、ビーズはIMS注入口(図13)を通って、任意でビーズを捕捉するための堰もしくは磁石を有する反応チャンバへ移動させられる。APCは、試薬チャネルの1つを用いて添加される。RiboLogは、第2試薬チャネルから添加される。必要であれば、反応液はポンプAおよびBの間を往復させられる。
【0165】
14. マイクロチップCMSアレイのデザイン
16チャネルマイクロチップ270の実施形態は、図23に示されている。バルブおよびポンプのための作動ライン271は、垂直に走り、外部作動ラインを接続できるマイクロチップの底部上のバイアで終了するように図示されている。サイクルシーケンシング混合物は、シリンジポンプによって左側のチャネル272へ、そしてマイクロチップを再生させるための水もしくはバッファは右側のチャネル273に供給される。これらの「サービス」チャネルはどちらも、全16チャネルに供給するために多重化されており、流れを制御するために各々オンチップポンプもしくはバルブ274を有している。このマイクロチップは、ガラス製ウエハおよびPDMSメンブレンから4層デバイスとして構築されている。
【0166】
15. 完全MINDSシステム
完全MINDSシステムを作製するためには、コアMINDSシステムからの機器が修正される:1)ビーズサービスチャネルが加えられ、個々のビーズを送達するためのビーズ分類法とインターフェースされる;2)マイクロチップインターフェースデバイス上の抵抗加熱器デザインおよび電極リングがマイクロチップへ改造される;3)単独ビーズが繰り返し装填されたり取り除かれたりすることを保証するためのマイクロチップの修正。
【0167】
MINDSマイクロチップのデザインは、図24に示されている。このマイクロチップは、図22に示したコアMINDSマイクロチップに類似しているが、ただしビーズサービスチャネルは投入ラインに通じており(330)、サンプル容量は25nLへ4分の1に減少させられており、ビーズを捕捉するためにサイクルシーケンシングチャンバ内に堰が形成されている。単独ビーズは、投入チャネルを通して投入される。堰は2μmしかエッチングされていないので、追加のマスクおよび作製ステップを必要とする。
【0168】
単独ビーズは、電極に通じるチャネルだけを用いてサイクルシーケンシングチャンバ内へポンプで送り込まれ、親和性捕捉チャンバへ流動させられる。堰は、ビーズの移動を停止させる。ビーズが装填されると、順方向および逆方向両方の対合末端の読み込みのためのプライマを備える25nLのサイクルシーケンシング混合物が反応チャンバ内へオンチップポンプによって送り込まれる。チャンバに隣接するバルブが閉鎖され、温度がサイクリングされる。サイクリング後、サイクルシーケンシング混合物中のサイクルシーケンシング産物は電極リザーバ6内へポンプで送り込まれ、2つのサンプルクリーンアップチャンバ内へ電気泳動され、本質的には上述したように処理され、各対合末端読み込みが別個の分離チャネル内に注入される。廃棄物に通じるバルブが開放され、ビーズは、洗浄ラインによって廃棄物チャネル内へフラッシュされる。分離再生は、上述したように行われる。
【0169】
単独ビーズは、1)良好に分離しているマイクロ流体のビーズストリングを操作し、さらにそれらを連続的に、または並行して各チャネル内に移動させる、2)各チャネル内にビーズの「ビン」から供給し、それらを1度に1つずつサイクルシーケンシング反応装置内へ分注する、または3)個々のビーズを磁気操作する、もしくは「ピック・アンド・プレース」操作のためにキャピラリの末端へ取り上げることによって各チャネル内へ供給される。ビーズストリング・アプローチのためには、ビーズは、FluorInert(3M社)などの不混和性と思われる大量の液体によって次のビーズから空間的に明確に分離される。本発明者らは、以前にサイクルシーケンシングおよびPCR反応において大量のFluorInertを使用して成功している。ビーズストリングは、一緒に大まかな位置へ移動させられる。するとバルブが循環しているビーズサービスチャネルを閉鎖し、流れは、ビーズを装填チャネル内へ移動させるために十分に長い個別サイクルシーケンシングチャンバを通して迂回させられる。装填チャネル上のバルブが閉鎖され、ビーズサービスチャネル上のバルブが開放され、次のビーズが次のチャネル内に配置される。並列への変更もまた可能であり、装填時間を最小限に抑えることができる。光学ビーズセンサは、タイミングおよび供給流れを調節することにも役立つ可能性がある。
【0170】
MINDSシステムは、数ナノリットルのポンプ容量を減少させるために50μmのレーザ穿孔検査穴を備えるバルブおよびポンプを使用する。または、250μmの穴を備えるバルブは、各サイクル上の部分「ストローク」で部分的に開放される。チャンバを取り囲んでいるバルブは、チャンバ内のビーズを移動させるために脈動させられる、または外部超音波混合が適用される。表面相互作用は、必要に応じて適用された表面修飾を備える添加物によって改良される。
【0171】
直接注入のためには、サンプルクリーンアップマトリックスが分離チャネルと一列でポジショニングされる。図44に示したように、このデザインは、サンプルクリーンアップチャンバが分離チャネルの陰極側へ移動させられていること以外は、ビーズおよびサンプルクリーンアップのためのサイクルシーケンシングチャンバのよく知られている要素を有している。サイクルシーケンシングサンプルは、サンプルクリーンアップマトリックス上へ電気泳動させられ、不純物は必要に応じてフラッシュされる陰極チャンバ内へ移動させられる。清潔なサンプルはサンプルクリーンアップマトリックス上の研削されたバンド内にあり、チャンバを加熱することによって遊離させられ、分離が開始される。これは分離チャネル上へ容量測定的に鮮明なバンドを注入する。このため、Twin Tの装填が1サンプルの分画だけの分析しか許容しない典型的なTwin T注入において見いだされる「ハートカット」とは対照的に、各サンプルクリーンアップマトリックス上に収集されたサンプルの全部が分析される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
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【図31】
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【図35】
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【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【公開番号】特開2012−189615(P2012−189615A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−148699(P2012−148699)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【分割の表示】特願2007−532553(P2007−532553)の分割
【原出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(507082471)インテジェニックス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−148699(P2012−148699)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【分割の表示】特願2007−532553(P2007−532553)の分割
【原出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(507082471)インテジェニックス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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