説明

マクロ検査方法および検査システム、上記マクロ検査方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、並びに上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】処理装置によって基板上に成膜する処理を含む製造プロセスによって製造される又は製造された製造品について、上記基板上に異常が生じたか否かを検査するマクロ検査方法であって、マクロレベルの異常を客観的に検出することができるものを提供すること。
【解決手段】或る処理装置による処理を受けた後の製造品を撮像して検査対象マクロ画像を取得する一方、その製造品がその処理装置による処理を受ける以前に、その処理装置による処理を受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像の中から、比較の基準となる比較基準マクロ画像を用意する(S101,S102)。検査対象マクロ画像と比較基準マクロ画像との間で、互いに類似している程度を定量的に表す類似度を算出する(S103)。類似度が予め決められた管理範囲から外れたかどうかを判断する(S104)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板上に成膜する処理を含む製造プロセスによって製造される又は製造された製造品について、上記基板上に異常が生じたか否かを検査するマクロ検査方法および検査システムに関する。
【0002】
また、この発明は、上記マクロ検査方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【0003】
また、この発明は、上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0004】
半導体装置等を製造する製造プロセスでは、基板に対して洗浄、成膜、レジスト塗布、露光、現像、エッチングなどの工程を繰り返すことにより、所望の半導体装置を形成している。
【0005】
上記製造プロセスにおいて、基板の面内に処理ムラや異物付着などの異常が生じた場合、パターンの線幅不良やピンホールなどの不良が発生する原因となる。このため、一般に、上記製造プロセスにおいて、基板上に生じた異常の有無が検査される。この検査のうち、基板面内の処理ムラなど比較的広い面積に発生する異常(例えば、コントラストの相違や特定のテクスチャの存在)を検査対象とするものは「マクロ検査」と呼ばれ、半導体基板上のパターン異常などの微小な対象を検査するためのものは「ミクロ検査」と呼ばれる。
【0006】
ミクロ検査では、正常な回路パターンの画像と検査対象のパターンの画像を比較することで欠陥を検出する。
【0007】
例えば、特許文献1(特開2003−21605号公報、「パターン検査方法及び装置」、日立製作所)には、基板上の或るパターンの画像を、その基板上で同一パターンが期待される部位の画像と比較することで、パターンに異常がないかを検査する検査方法が開示されている。この方法を用いることにより、基板上に複数の同一パターンを有する製造品について、パターン異常を検査することが可能となる。
【0008】
また、特許文献2(特願2004−38885号公報、「画像特徴学習型欠陥検出方法、欠陥検出装置及び欠陥検出プログラム」、株式会社アドイン研究所)には、検査対象である製造品の画像を、良品と判定された製造品の画像からなる参照画像と比較することにより、検査対象である製造品の欠陥を検出する検査方法が開示されている。この方法を用いることにより、検査対象と参照画像との輝度差を用いて、製造品の異常を検査することが可能となる。
【0009】
このようなミクロ検査方法によれば、正常なパターンと異なっているパターンや、良品と判定される基板との輝度差が大きい基板を、異常として検出することが可能となる。
【0010】
ところが、マクロ検査では、1枚の基板画像からコントラストの異なる領域や特定のテクスチャを持つ領域を異常として検出することが多い。例えば、成膜工程では、処理装置(成膜炉)の機差や成膜条件の些細な違い、成膜炉内の温度・雰囲気など微妙な違いにより、コントラストなどの成膜結果(マクロ画像)が逐次変化する。また、共通部材の経時変化やオーバーホールなどによっても、マクロ画像が変化する。このため、こういうマクロ画像であれば正常である、または異常であるといった正常状態・異常状態を予め適切に決めることが難しい。このため、従来は、マクロレベルの異常を客観的に検出することが難しいという問題があった。この結果、処理装置のオーバーホール(またはメンテナンス。以下同様。)のタイミングを適切に設定できなかった。なお、オーバーホールには多大な労力を要するし、また、処理装置の稼働率を低下させることから、頻繁にオーバーホールを行うことは現実的でない。このため、処理装置のオーバーホールを行う回数は、必要最小限にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−21605号公報
【特許文献2】特開2004−38885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明の課題は、マクロレベルの異常を客観的に検出することができるマクロ検査方法および検査システムを提供することにある。
【0013】
また、この発明の課題は、そのようなマクロ検査方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
【0014】
また、この発明の課題は、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、この発明のマクロ検査方法は、
処理装置によって基板上に成膜する処理を含む製造プロセスによって製造される又は製造された製造品について、上記基板上に異常が生じたか否かを検査するマクロ検査方法であって、
或る処理装置による処理を受けた後の製造品を撮像して検査対象マクロ画像を取得するとともに、上記製造品が上記処理装置による処理を受ける以前に、上記処理装置による処理を受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像の中から、比較の基準となる比較基準マクロ画像を用意し、
上記検査対象マクロ画像と上記比較基準マクロ画像との間で、互いに類似している程度を定量的に表す類似度を算出し、
上記類似度が予め決められた管理範囲から外れたかどうかを判断することを特徴とする。
【0016】
本明細書で、「検査対象マクロ画像」、「比較基準マクロ画像」における「マクロ画像」とは、顕微鏡を通して観察されるミクロ画像とは対照的に、肉眼で観測され得る範囲を表す画像を意味する。
【0017】
この発明のマクロ検査方法では、まず、或る処理装置による処理を受けた後の製造品を撮像して検査対象マクロ画像を取得するとともに、上記製造品が上記処理装置による処理を受ける以前に、上記処理装置による処理を受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像の中から、比較の基準となる比較基準マクロ画像を用意する。次に、上記検査対象マクロ画像と上記比較基準マクロ画像との間で、互いに類似している程度を定量的に表す類似度を算出する。そして、上記類似度が予め決められた管理範囲から外れたかどうかを判断する。
【0018】
この発明のマクロ検査方法では、このように定量的な類似度に基づいて判断を行っているので、上記基板上に生じたマクロレベルの異常(例えば、処理ムラによるコントラストの相違や特定のテクスチャの存在)を客観的に検出することができる。この結果、この結果、処理装置のオーバーホールのタイミングを適切に設定でき、処理装置のオーバーホールを行う回数を必要最小限にすることができる。
【0019】
なお、「或る処理装置による処理を受けた後の製造品」とは、処理装置による処理を受けた直後には限られない意味である。さらに別の処理装置(別の工程)を経た後であっても、検査対象マクロ画像を取得して比較の対象とすることができる。
【0020】
一実施形態のマクロ検査方法では、上記比較基準マクロ画像として、上記処理装置についてのメンテナンスまたは処理条件変更があった直後に上記処理装置による処理を受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像を用いることを特徴とする。
【0021】
この一実施形態のマクロ検査方法では、上記比較基準マクロ画像として、実質的に上記処理装置の状態がリセットまたはセットされた直後に得られたマクロ画像を用いることになる。したがって、上記比較基準マクロ画像が比較基準として好ましいものとなり、この結果、上記類似度は、上記製造品の基板上に異常が生じたか否かを精度良く表すものとなる。また、上記処理装置によって、上記比較基準となった製造品(これを適宜「比較対象製造品」と呼ぶ。)が処理を受けた後、順次処理を受けた製造品の検査対象マクロ画像についての類似度を追跡することで、上記処理装置についてのメンテナンスまたは処理条件変更があった後、上記処理装置による処理結果がどのように変化するのかを逐次観察することができる。逐次観察を行えば、上記類似度が偶発的な要因により上記管理範囲を外れたものを除外して、処理装置のオーバーホールのタイミングをさらに適切に設定でき、処理装置のオーバーホールを行う回数を必要最小限にすることができる。また、上記処理装置による処理結果が変化する傾向を把握できるので、上記管理範囲を合理的な範囲に設定することができる。
【0022】
なお、本明細書で、「同種の製造品」とは、処理ムラや局所的な欠陥を除いたとき、実質的に同じマクロ画像を与えるものを指す。
【0023】
一実施形態のマクロ検査方法では、上記比較基準マクロ画像として、上記検査対象マクロ画像が取得された上記製造品が上記処理装置による処理を受けた直前に上記処理装置によって処理を受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像を用いることを特徴とする。
【0024】
この一実施形態のマクロ検査方法では、上記比較基準マクロ画像として、上記検査対象マクロ画像が取得された上記製造品(これを適宜「検査対象製造品」と呼ぶ。)が上記処理装置による処理を受けた直前に上記処理装置によって処理を受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像を用いる。したがって、上記比較基準製造品と上記検査対象製造品との間で、上記処理装置に何らかの異常が起こった場合、上記類似度はその異常を精度良く表すものとなる。
【0025】
一実施形態のマクロ検査方法では、上記類似度を算出する方法は、
上記比較基準マクロ画像と上記検査対象マクロ画像とをそれぞれ複数の部分領域に分割し、
上記比較基準マクロ画像と上記検査対象マクロ画像との間で、互いに位置が対応する各部分領域毎に画像マッチングを行い、上記各部分領域毎の画像マッチング結果のうち最小値、平均値または最大値を上記類似度として求めることを特徴とする。
【0026】
この一実施形態のマクロ検査方法では、上記比較基準マクロ画像と上記検査対象マクロ画像との間で、互いに位置が対応する各部分領域毎に画像マッチングを行うので、上記類似度は、上記検査対象マクロ画像が取得された製造品の基板上に異常が生じたか否かを精度良く表すものとなる。
【0027】
一実施形態のマクロ検査方法では、上記類似度を算出する方法は、
検出すべき処理ムラの一部あるいは全部を模式化した1つ以上の画像をテンプレート画像として準備し、上記テンプレート画像を用いて上記比較基準マクロ画像と上記検査対象マクロ画像とにそれぞれテンプレートマッチングを行い、
そのテンプレートマッチング結果の相関係数を上記類似度として求めることを特徴とする。
【0028】
この一実施形態のマクロ検査方法では、検出すべき処理ムラの一部あるいは全部を模式化した1つ以上の画像をテンプレート画像として用いるので、上記類似度は、上記検査対象マクロ画像が取得された製造品の基板上に異常が生じたか否かを精度良く表すものとなる。
【0029】
一実施形態のマクロ検査方法では、上記製造品毎に算出された上記類似度を、上記処理装置によって上記製造品が処理された処理日時順に並べてグラフ表示することを特徴とする。
【0030】
この一実施形態のマクロ検査方法では、上記製造プロセスで、たとえ複数の製造品が或る製造装置による処理を受けた順序とそれらの製造品についての検査対象マクロ画像が取得された順序とが異なっていたとしても、上記製造品毎に算出された上記類似度が、上記処理装置によって上記製造品が処理された処理日時順に並べてグラフ表示される。したがって、上記製造装置で処理された製造品についての処理結果が処理毎にどのような変化をしているのかを逐次、視覚を通して直感的に観察することができる。既述のように、逐次観察を行えば、上記類似度が偶発的な要因により上記管理範囲を外れたものを除外して、処理装置のオーバーホールのタイミングをさらに適切に設定でき、処理装置のオーバーホールを行う回数を必要最小限にすることができる。また、上記処理装置による処理結果が変化する傾向を、視覚を通して直感的に把握できるので、上記管理範囲を合理的な範囲に容易に設定することができる。
【0031】
この発明の検査システムは、
処理装置によって基板上に成膜する処理を含む製造プロセスによって製造される又は製造された製造品について、上記基板上に異常が生じたか否かを検査する検査システムであって、
或る処理装置による処理を受けた後の製造品を撮像して検査対象マクロ画像を取得する検査対象マクロ画像取得部と、
上記検査対象マクロ画像のための比較の基準となる比較基準マクロ画像を記憶する比較基準マクロ画像記憶部と、
上記検査対象マクロ画像と上記比較基準マクロ画像との間で、互いに類似している程度を定量的に表す類似度を算出する類似度算出部と、
上記類似度が予め決められた管理範囲から外れたかどうかを判断する管理判定部とを備えたことを特徴とする。
【0032】
この発明の検査システムでは、まず、検査対象マクロ画像取得部が、或る処理装置による処理を受けた後の製造品を撮像して検査対象マクロ画像を取得する。次に、類似度算出部が、上記検査対象マクロ画像のための比較の基準となる比較基準マクロ画像を比較基準マクロ画像記憶部から読み出して、上記検査対象マクロ画像と上記比較基準マクロ画像との間で、互いに類似している程度を定量的に表す類似度を算出する。そして、管理判定部は、上記類似度が予め決められた管理範囲から外れたかどうかを判断する。
【0033】
この発明の検査システムでは、このように定量的な類似度に基づいて判断を行っているので、上記基板上に生じたマクロレベルの異常(例えば、処理ムラによるコントラストの相違や特定のテクスチャの存在)を客観的に検出することができる。この結果、この結果、処理装置のオーバーホールのタイミングを適切に設定でき、処理装置のオーバーホールを行う回数を必要最小限にすることができる。
【0034】
一実施形態の検査システムは、上記類似度が上記管理範囲から外れたとき、警報を発する警報部を備えたことを特徴とする。
【0035】
この一実施形態の検査システムでは、上記類似度が上記管理範囲から外れたとき、警報部が警報を発する。したがって、ユーザ(上記製造プロセスの作業者またはメンテナンス担当者を含む。以下同様。)は、上記類似度が上記管理範囲から外れ、処理装置に異常が発生した可能性があることを迅速に知ることができる。したがって、ユーザは必要な対策を迅速にとることができる。例えば、上記類似度が上記管理範囲から外れたという情報を処理装置にフィードバックして、上記処理装置の製造条件を変更したり、上記処理装置の自動クリーニングを実施するなど、自動メンテナンス機能を動作させたりすることができる。この結果、製造プロセスの効率が改善される。
【0036】
また、この発明のプログラムは、上記マクロ検査方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0037】
この発明のプログラムをコンピュータに実行させれば、上記マクロ検査方法を実施することができる。
【0038】
また、この発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0039】
この発明のプログラムをコンピュータに読み取らせて実行させれば、上記マクロ検査方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0040】
以上より明らかなように、この発明によれば、マクロレベルの異常を客観的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の一実施形態のマクロ検査方法の処理フローを示す図である。
【図2】図1のマクロ検査方法を変形した変形例の処理フローを示す図である。
【図3】上記マクロ検査方法が適用されるべき半導体装置を製造品として製造する製造プロセスを例示する図である。
【図4】この発明の一実施形態の検査システムの概略構成を示す図である。
【図5】上記検査システムに含まれた半導体検査装置の基本構成を例示するブロック図である。
【図6】上記検査システムに含まれた半導体検査装置の追加された構成を例示するブロック図である。
【図7】(A)は上記マクロ検査方法で用いられる比較基準マクロ画像を例示する図である。(B)、(C)、(D)はそれぞれ異なる検査対象マクロ画像を例示する図である。
【図8】比較基準マクロ画像や検査対象マクロ画像に設定される部分領域を示す図である。
【図9】上記マクロ検査方法で用いられるテンプレート画像を例示する図である。
【図10】上記マクロ検査方法によって得られた分析結果をプロットして得られた管理図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
図3は、一実施形態のマクロ検査方法が適用されるべき製造品として半導体装置を製造する製造プロセス300を例示している。
【0044】
この製造プロセス300では、半導体装置が作り込まれるべきシリコン基板2は、まず、受け入れ洗浄/研磨S301の処理を受ける。次に、成膜S302、レジスト塗布S303、露光S304、現像S305、撮像S306、エッチングS307、レジスト除去S308の各処理を受ける。これらの成膜S302からレジスト除去S308までの処理は、シリコン基板2上に所望の半導体装置が作り込まれるまで、成膜される膜の種類を変えながら、必要に応じて繰り返される。シリコン基板2上に所望の半導体装置が作り込まれた後、その半導体装置が作り込まれたシリコン基板(ウエハ)2′は払い出しの処理を受ける。
【0045】
ここでは、主に成膜処理S302による膜ムラを管理することを意図しているが、成膜S302の直後に撮像処理S306を行うのではなく、一例として、撮像処理S306を現像処理S305の直後に行っている。撮像処理S306では、シリコン基板2上の肉眼で観測され得る範囲を撮像して検査対象マクロ画像を取得する。以下では、簡単のため、シリコン基板2から半導体装置が作り込まれたウエハ2′までの各状態を通して、適宜「製造品」と呼ぶ。各製造品には、固有の識別番号として製造品IDが付されている。
【0046】
図4は、上記製造プロセス300に適用された一実施形態の検査システム100の概略構成を示している。
【0047】
この検査システム100は、各種データを格納し得るデータベース10と、製造プロセス300に組み込まれた処理装置20および撮像装置30と、後述の半導体検査装置40とを含んでいる。これらの処理装置20、撮像装置30および半導体検査装置40は、ネットワークを介して接続されており、各々データベース10にアクセスすることが可能となっている。なお、この図4中では、簡単のため、製造プロセス300における様々な処理装置20のうちの1台のみを代表して図示している。
【0048】
処理装置20は、この処理装置が処理を行う毎に処理日時、処理した製造品に固有の製造品ID、処理条件、メンテナンスが実施されてからの処理数などをデータベース10に記録する。
【0049】
撮像装置30は、この撮像装置が撮像処理306を行う毎に撮像日時、撮像した製造品に固有の製造品ID、撮像画像などをデータベース10に記録する。撮像装置30は、例えば固体撮像素子(イメージセンサ)を備えたカメラによって構成され得る。この撮像装置30は、製造品を撮像して検査対象マクロ画像を取得する検査対象マクロ画像取得部として働くとともに、検査対象マクロ画像のための比較の基準となる比較基準マクロ画像を取得する比較基準マクロ画像取得部としても働く。なお、「検査対象マクロ画像」、「比較基準マクロ画像」における「マクロ画像」とは、顕微鏡を通して観察されるミクロ画像とは対照的に、肉眼で観測され得る範囲を表す画像を意味する。
【0050】
データベース10では、処理装置20、撮像装置30によって記録された各種データは、製造品毎に、製造品IDを用いて関連付けて記憶されている。
【0051】
図5は、上記半導体検査装置40の基本構成を例示している。この半導体検査装置40は、撮像装置30からデータベース10を介して得られた比較基準マクロ画像を記憶する比較基準マクロ画像記憶部402と、検査対象マクロ画像と比較基準マクロ画像との間で、互いに類似している程度を定量的に表す類似度を算出する類似度算出部403と、上記類似度が予め決められた管理範囲から外れたかどうかを判断する管理判定部406とを備えている。
【0052】
ここで、比較基準マクロ画像記憶部402は、HDD(ハードディスクドライブ)または半導体メモリによって構成され得る。また、類似度算出部403および管理判定部406は、コンピュータプログラムによって動作するCPU(中央演算処理装置)によって構成され得る。この結果、半導体検査装置40は、パーソナルコンピュータによって構成され得る。
【0053】
図7(A)は、或る製造品について撮像装置30によって得られた比較基準マクロ画像0rを例示している。一方、図7(B)、図7(C)、図7(D)は、同種の製造品について撮像装置30によって順次得られた検査対象マクロ画像01、02、03を例示している。これらのマクロ画像0r、01、02、03のサイズは全て同じで、横768画素×縦512画素になっている。なお、「同種の製造品」とは、処理ムラや局所的な欠陥を除いたとき、実質的に同じマクロ画像を与えるものを指す。
【0054】
図5の半導体検査装置40を備えた検査システム100は、図1のフローにしたがって次のようにしてマクロ検査方法を実施する。
【0055】
まず、類似度算出部403がネットワークを介してデータベース10にアクセスして、検査対象製造品に関するデータを取得する。具体的には、処理装置20から記録された処理日時、処理した製造品に固有の製造品ID、処理条件、メンテナンスが実施されてからの処理数、撮像装置30によって得られた検査対象マクロ画像(図7(B)の検査対象マクロ画像01とする。)を取得する(S101)。
【0056】
次に、類似度算出部403が、検査対象マクロ画像のための比較の基準となる比較基準マクロ画像(図7(A)の比較基準マクロ画像0rとする。)を比較基準マクロ画像記憶部402から読み出して取得する(S102)。
【0057】
ここで、この例では、比較基準マクロ画像記憶部402には、予め、比較基準マクロ画像として、注目している処理装置20についてのメンテナンスまたは処理条件変更があった直後に上記処理装置20による処理を受けた同種の製造品(比較対象製造品)を撮像して得られたマクロ画像が記憶されているものとする。
【0058】
次に、類似度算出部403が、検査対象マクロ画像01と比較基準マクロ画像0rとの間で、互いに類似している程度を定量的に表す類似度(記号Dで表すものとする。)を算出する(S103。なお、類似度Dの具体的な算出方法については後述する。)。そして、管理判定部406は、上記類似度Dが予め決められた管理範囲(記号Uで表すものとする。)から外れたかどうかを判断する(S104)。
【0059】
このように定量的な類似度Dに基づいて判断を行うことによって、基板2上に生じたマクロレベルの異常(例えば、処理ムラによるコントラストの相違や特定のテクスチャの存在)を客観的に検出することができる。この結果、この結果、処理装置20のオーバーホールのタイミングを適切に設定でき、処理装置20のオーバーホールを行う回数を必要最小限にすることができる。
【0060】
また、上の例では、比較基準マクロ画像0rとして、注目している処理装置20についてのメンテナンスまたは処理条件変更があった直後に上記処理装置20による処理を受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像を用いている。したがって、比較基準マクロ画像0rとして、実質的に処理装置20の状態がリセットまたはセットされた直後に得られたマクロ画像を用いることになる。したがって、比較基準マクロ画像0rが比較基準として好ましいものとなり、この結果、類似度Dは、製造品の基板上に異常が生じたか否かを精度良く表すものとなる。
【0061】
また、上記処理装置20によって、比較基準製造品が処理を受けた後、順次処理を受けた製造品の検査対象マクロ画像01、02、03についての類似度Dを追跡することで、処理装置20についてのメンテナンスまたは処理条件変更があった後、処理装置20による処理結果がどのように変化するのかを逐次観察することができる。逐次観察を行えば、類似度Dが偶発的な要因により管理範囲Uを外れたものを除外して、処理装置20のオーバーホールのタイミングをさらに適切に設定でき、処理装置のオーバーホールを行う回数を必要最小限にすることができる。また、処理装置20による処理結果が変化する傾向を把握できるので、管理範囲Uを合理的な範囲に設定することができる。
【0062】
図6は、半導体検査装置40の追加された構成を示している(追加された構成を有する半導体検査装置を符号40Aで示す。)。この半導体検査装置40Aは、図5の半導体検査装置40の構成に加えて、類似度算出部403によって製造品毎に算出された類似度Dを順次記憶する類似度記憶部404と、この類似度記憶部404に記憶された類似度Dを製造品が処理された処理日時順に並べてプロットした画像を作成する類似度プロット部405と、類似度プロット部405によって作成された画像を表示する表示装置407とを備えている。
【0063】
類似度記憶部404は、HDDまたは半導体メモリによって構成され得る。また、類似度プロット部405は、コンピュータプログラムによって動作するCPUによって構成され得る。表示装置407は、例えばパーソナルコンピュータの一部として位置づけられる液晶ディスプレイ(LCD)によって構成され得る。この結果、半導体検査装置40Aは、半導体検査装置40と同様に、パーソナルコンピュータによって構成され得る。
【0064】
この半導体検査装置を符号40Aでは、類似度記憶部404は、類似度算出部403によって製造品毎に算出された類似度Dを順次記憶する。類似度プロット部405は、この類似度記憶部404に記憶された類似度Dを製造品が処理された処理日時順に並べてプロットした画像(例えばシューハート管理図)を作成する。表示装置407は、例えば図10中にグラフC1(またはグラフC2)で示すように、類似度プロット部405によって作成された画像を表示する。なお、図10では、横軸に沿って、検査対象マクロ画像01、02、03が、注目している処理装置20によって順次処理を受けた製造品の順番通りに並べられている。縦軸の類似度については、下限の閾値LL=0.3と上限+1.0との間が管理範囲Uになっている。
【0065】
このようにした場合、製造プロセスで、たとえ複数の製造品が或る製造装置20による処理を受けた順序とそれらの製造品についての検査対象マクロ画像01、02、03が取得された順序とが異なっていたとしても、製造品毎に算出された上記類似度が、処理装置20によって製造品が処理された処理日時順に並べてグラフ表示される。したがって、製造装置20で処理された製造品についての処理結果が処理毎にどのような変化をしているのかを逐次、視覚を通して直感的に観察することができる。既述のように、逐次観察を行えば、類似度Dが偶発的な要因により管理範囲Uを外れたものを除外して、処理装置20のオーバーホールのタイミングをさらに適切に設定でき、処理装置20のオーバーホールを行う回数を必要最小限にすることができる。また、処理装置20による処理結果が変化する傾向を、視覚を通して直感的に把握できるので、管理範囲Uを合理的な範囲に容易に設定することができる。
【0066】
なお、類似度Dが管理範囲Uから外れたとき、ユーザに対して警報を発する警報部を備えるのが望ましい。例えば図6の半導体検査装置を符号40Aでは、類似度プロット部405と表示装置407が警報部として働いて、類似度Dが管理範囲Uから外れたとき、表示装置407の画面に「類似度が管理範囲を外れました」などの警報を画像表示しても良い。または、アラームランプを別途備えて、類似度Dが管理範囲Uから外れたとき、アラームランプを点滅させても良い。または、警報音発生部を別途備えて、類似度Dが管理範囲Uから外れたとき、警報音発生部が警報音を発生しても良い。
【0067】
そのようにした場合、ユーザは、類似度Dが管理範囲Uから外れ、処理装置20に異常が発生した可能性があることを迅速に知ることができる。したがって、ユーザは必要な対策を迅速にとることができる。例えば、類似度Dが管理範囲Uから外れたという情報を処理装置20にフィードバックして、処理装置20の製造条件を変更したり、処理装置20の自動クリーニングを実施するなど、自動メンテナンス機能を動作させたりすることができる。この結果、製造プロセスの効率が改善される。
【0068】
次に、上記類似度Dの具体的な算出方法について、2つの例を挙げて説明する。
【0069】
第1例では、比較基準マクロ画像、検査対象マクロ画像をそれぞれ、図8に示すように画像領域90の全域を縦横にそれぞれ8区画して、8×8=64個の部分領域91,91,…を設定する。この例では、各部分領域91のサイズは、いずれも横96画素×縦64画素になっている。次に、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像との間で、互いに位置が対応する各部分領域91毎に正規化相互相関(ZNCC:Zero−mean Normalized Cross−Correlation)による公知の画像マッチングを行う。そして、各部分領域91毎のマッチング結果のうち最小値を類似度Dとして求める。なお、最小値に代えて、最大値または平均値などの統計量を類似度Dとしても良い。
【0070】
この第1例の算出方法では、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像との間で、互いに位置が対応する各部分領域91毎に画像マッチングを行うので、類似度Dは、検査対象マクロ画像が取得された製造品の基板上に異常が生じたか否かを精度良く表すものとなる。
【0071】
この第1例の算出方法によって、既述の比較基準マクロ画像0rと、検査対象マクロ画像01、02、03との間の類似度Dを算出したところ、次の表1のような結果が得られた。この結果は、図10中にグラフC1として図示されている。
【0072】
【表1】

【0073】
第2例では、検出すべき処理ムラの一部あるいは全部を模式化した1つ以上の画像をテンプレート画像として準備する。例えば、図9に示すように、中央が明るく、中央から径方向外向きに次第に暗くなる画像を、テンプレート画像80として1つだけ用意する。テンプレート画像80のサイズは、横128画素×縦128画素になっている。次に、テンプレート画像80を用いて、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像とにそれぞれ、縦横ともに走査間隔32画素で正規化相互相関(ZNCC:Zero−mean Normalized Cross−Correlation)によるテンプレートマッチングを行う。そして、そのテンプレートマッチング結果の相関係数を類似度Dとして求める。
【0074】
この第2例のマクロ検査方法では、検出すべき処理ムラの一部あるいは全部を模式化した1つ以上の画像をテンプレート画像として用いるので、類似度は、検査対象マクロ画像が取得された製造品の基板上に異常が生じたか否かを精度良く表すものとなる。
【0075】
この第2例の算出方法によって、既述の比較基準マクロ画像0rと、検査対象マクロ画像01、02、03との間の類似度Dを算出したところ、次の表2のような結果が得られた。この結果は、図10中にグラフC2として図示されている。
【0076】
【表2】

【0077】
なお、第2例の算出方法において、テンプレート画像を複数使用することもできる。その場合は、各テンプレート画像を用いて算出した類似度の代表値(最小値、最大値または平均値などの統計量)を類似度Dとする。
【0078】
図10によって良く分かるように、上述の第1例、第2例の算出方法では、相関係数を用いて類似度Dを算出しているので、撮像画像毎の平均輝度の差に左右されることがなく、したがって類似度の評価の精度を高めることができる。
【0079】
ただし、上述の第1例、第2例の算出方法では、求まる結果が少し異なる。第1例の算出方法は、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像をそれぞれ部分領域91に分割した上でマッチングを行うため、部分領域91の大きさより小さい領域での変化に対して類似度Dが敏感に反応する。第2例の算出方法は、テンプレート画像80として用意する画像、およびサイズを変更することにより、類似度Dの反応の仕方が変わる。このため、対象とするプロセスに適したテンプレート画像を設定する必要がある。第1例の算出方法は比較的小さい領域のムラを検出したい場合に適する一方、第2例の算出方法は、比較的大きく、空間的に低周波なムラを検出したい場合に適する。したがって、検出したい処理ムラに応じて両者を使い分ける又は併用するのが望ましい。
【0080】
なお、上述の第1例、第2例の算出方法では、類似度Dは相関係数を用いたものであるため、求められた類似度Dの値は「−1.0〜+1.0」の範囲で変動する。上限値である+1.0は、検査対象マクロ画像と比較基準マクロ画像とが完全に一致している場合に相当する。
【0081】
図2は、図5の半導体検査装置40、図6の半導体検査装置を符号40Aによってそれぞれ実施可能なマクロ検査方法の別のフローを示している。
【0082】
この図2のフローでは、まず、図1中のステップS101と同様に、類似度算出部403がネットワークを介してデータベース10にアクセスして、検査対象製造品に関するデータを取得する(S201)。具体的には、処理装置20から記録された処理日時、処理した製造品に固有の製造品ID、処理条件、メンテナンスが実施されてからの処理数、撮像装置30によって得られた検査対象マクロ画像(図7(B)の検査対象マクロ画像01とする。)を取得する。
【0083】
次に、類似度算出部403が、比較基準製造品を変更する必要があるか否かを判断する(S202)。具体的には、処理装置20によって比較基準製造品が処理を受けた後、検査対象製造品(検査対象マクロ画像01が得られた製造品)が処理を受けるまでの期間に、上記処理装置20についてメンテナンスまたは処理条件変更があったか否かを判断する。
【0084】
上記期間に上記処理装置20についてメンテナンスまたは処理条件変更があったときは(S202でYES)、比較基準製造品を変更する必要があると判断して、上記処理装置20についての最後のメンテナンスまたは処理条件変更があった直後に上記処理装置20による処理を受けた同種の製造品を、新たな比較基準製造品とする。そのために、類似度算出部403がネットワークを介してデータベース10にアクセスして、上記新たな比較基準製造品に関するデータを取得する。このデータには、処理装置20から記録された処理日時、処理した製造品に固有の製造品ID、処理条件、メンテナンスが実施されてからの処理数、撮像装置30によって得られたマクロ画像(これが新たな比較基準マクロ画像となる。)が含まれる。比較基準マクロ画像402では、以前の比較基準マクロ画像に代えて、この新たな比較基準マクロ画像が格納される。つまり、比較基準マクロ画像402に格納された比較基準マクロ画像の内容が更新される。したがって、比較基準マクロ画像402には毎回適切な比較基準マクロ画像が格納される。
【0085】
次に、類似度算出部403が、図1中のステップS103と同様に、検査対象マクロ画像01と比較基準マクロ画像0rとの間で、互いに類似している程度を定量的に表す類似度(記号Dで表すものとする。)を算出する(S205)。そして、管理判定部406は、上記類似度Dが予め決められた管理範囲(記号Uで表すものとする。)から外れたかどうかを判断する(S206)。
【0086】
一方、図2中のステップS202で、処理装置20によって比較基準製造品が処理を受けた後、検査対象製造品(検査対象マクロ画像01が得られた製造品)が処理を受けるまでの期間になかったときは(S202でNO)、比較基準製造品を変更する必要がないと判断して、比較基準マクロ画像記憶部402に予め記憶されている比較基準マクロ画像を読み出す(S204)。
【0087】
続いて、類似度算出部403が、図1中のステップS103と同様に、検査対象マクロ画像01と比較基準マクロ画像0rとの間で、互いに類似している程度を定量的に表す類似度(記号Dで表すものとする。)を算出する(S205)。そして、管理判定部406は、上記類似度Dが予め決められた管理範囲(記号Uで表すものとする。)から外れたかどうかを判断する(S206)。
【0088】
この図2のフローによれば、図1のフローによる場合と同様に、定量的な類似度Dに基づいて判断を行うことによって、基板2上に生じたマクロレベルの異常(例えば、処理ムラによるコントラストの相違や特定のテクスチャの存在)を客観的に検出することができる。この結果、この結果、処理装置20のオーバーホールのタイミングを適切に設定でき、処理装置20のオーバーホールを行う回数を必要最小限にすることができる。しかも、毎回適切な比較基準マクロ画像を用いて類似度Dを算出するので、製造品の基板上に異常が生じたか否かを精度良く判断することができる。
【0089】
製造プロセスの生産能力を高めるために、或る処理を行い得る複数の処理装置を並行して用いる場合がある(それらの複数の処理装置は、1号機、2号機、…などの識別番号で特定されるものとする。)。そのような場合、比較基準マクロ画像402には、比較基準マクロ画像を処理装置(1号機、2号機、…)毎に格納しておくのが望ましい。そして、それらの複数の処理装置のうち特定の処理装置(例えば2号機)についてメンテナンスまたは処理条件変更があったとき、その処理装置(この例では2号機)についての比較基準マクロ画像の内容を更新する。
【0090】
この場合において、検査対象製造品が上記処理をその処理装置(この例では2号機)で受けたとき、比較基準マクロ画像として、上記処理を上記処理装置(この例では2号機)で受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像を用いる。これにより、比較基準製造品と検査対象製造品との間で、上記処理を行った処理装置を同一(この例では2号機)にすることができる。したがって、上記類似度Dは、検査対象製造品の基板上に異常が生じたか否かを精度良く表すものとなる。
【0091】
なお、図2のフローに代えて、上記比較基準マクロ画像として、検査対象製造品が或る処理装置による処理を受けた直前にその処理装置によって処理を受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像を用いても良い。このようにした場合、比較基準製造品と検査対象製造品との間で、上記処理装置に何らかの異常が起こった場合、上記類似度はその異常を精度良く表すものとなる。
【0092】
当然ながら、比較基準マクロ画像を得るのに適切でない製造品がある場合には、その製造品からのマクロ画像を比較基準マクロ画像として用いないのが望ましい。比較基準マクロ画像を得るのに適切でない製造品とは、例えば、異物が混入するなどの外的な要因で予期せぬ処理結果となっている製造品や、処理装置の性質上特殊な処理結果となっている製造品である。
【0093】
これまでの例では、1個の比較基準製造品からの比較基準マクロ画像を用いるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、上記製造プロセスで、複数の製造品からなるロット単位で処理が行われるのであれば、1ロットの製造品からそれぞれ得られた複数の比較基準マクロ画像を用いても良い。その場合、各比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像との間でそれぞれ類似度を算出し、それらの類似度の統計値(最小値、最大値または平均値など)を用いて、異常発生有無を判断しても良い。または、1ロット分の複数の比較基準マクロ画像の平均を算出して平均的な比較基準マクロ画像をまず求め、その平均的な比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像との間で類似度を算出して、異常発生有無を判断しても良い。これらの場合、複数個の比較基準製造品からのマクロ画像を基準としているので、判断の精度が高まる。さらに、複数の比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像との間でマハラノビス距離を算出して、異常発生有無を判断しても良い。この場合、複数の比較基準マクロ画像内の分散も考慮した距離を算出することができ、さらに判断の精度が高まる。
【0094】
また、類似度の算出には、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像との間で、単に差分(例えば輝度差)をとっても良い。
【0095】
また、類似度の算出には、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像との間で、ユークリッド距離を算出しても良い。
【0096】
また、類似度の算出には、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像との主成分分析を行って、主成分を軸とする主成分空間における距離を算出しても良い。このようにした場合、変数間の共線性が強くて上記ユークリッド距離、マハラノビス距離では正確な判定ができない場合であっても、異常発生有無を精度良く判断することができる。
【0097】
また、類似度の算出には、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像との判別分析を行って、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像とを最も良く分離する軸での距離を算出しても良い。これにより、さらに判断の精度が高まる。
【0098】
また、類似度の算出には、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像とに対して階層的クラスタリングを行って、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像とが同一のグループに分類されるか否かという観点から、類似度を算出しても良い。なお、階層的クラスタリングとしては、最短距離法、最長距離法、群平均法、ウォード法などが知られているが、いずれの手法を用いても良い。また、クラスタリング手法にK−Means法を用いることにより、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像とが階層的クラスタリングに不適な外乱データを含んでいたとしても、適切にグループ分けすることが可能となる。上記クラスタリング手法には、対象とするデータの性質により、その他の一般に知られるクラスタリング手法を用いても良い。
【0099】
上記のいずれかの方法、あるいはいくつかを組み合わせて、比較基準マクロ画像と検査対象マクロ画像との間の類似度を定量的に算出すれば良い。このように定量的に算出した類似度が予め決められた管理範囲から外れたかどうかを判断することによって、上記基板上に生じたマクロレベルの異常(例えば、処理ムラによるコントラストの相違や特定のテクスチャの存在)を客観的に検出することができる。
【0100】
なお、上述のマクロ検査方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして構築しても良い。
【0101】
また、そのようなプログラムを図4中に示すCD−ROM50などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して配布できるようにしても良い。上記プログラムを汎用コンピュータにインストールすることで、汎用コンピュータによって上記マクロ検査方法を実行することが可能である。
【0102】
以上の実施形態では、この発明を半導体装置を製造する製造プロセスに適用した例について説明した。特に、本発明は、上記製造プロセスにおける、蒸着による成膜装置の膜質検査、監視、異常検知などに適用することで、有益な効果を発揮する。
【0103】
しかしながら、本発明は、それに限られるものではなく、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのFPD(Flat Panel Display)、太陽電池などの製造プロセス、検査装置、プロセス監視装置、異常検知装置などに広く適用され得る。
【符号の説明】
【0104】
2 シリコン基板
2′ ウエハ
10 データベース
20 処理装置
30 撮像装置
40,40A 半導体検査装置
100 検査システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置によって基板上に成膜する処理を含む製造プロセスによって製造される又は製造された製造品について、上記基板上に異常が生じたか否かを検査するマクロ検査方法であって、
或る処理装置による処理を受けた後の製造品を撮像して検査対象マクロ画像を取得するとともに、上記製造品が上記処理装置による処理を受ける以前に、上記処理装置による処理を受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像の中から、比較の基準となる比較基準マクロ画像を用意し、
上記検査対象マクロ画像と上記比較基準マクロ画像との間で、互いに類似している程度を定量的に表す類似度を算出し、
上記類似度が予め決められた管理範囲から外れたかどうかを判断することを特徴とするマクロ検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載のマクロ検査方法において、
上記比較基準マクロ画像として、上記処理装置についてのメンテナンスまたは処理条件変更があった直後に上記処理装置による処理を受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像を用いることを特徴とするマクロ検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載のマクロ検査方法において、
上記比較基準マクロ画像として、上記検査対象マクロ画像が取得された上記製造品が上記処理装置による処理を受けた直前に上記処理装置によって処理を受けた同種の製造品を撮像して得られたマクロ画像を用いることを特徴とするマクロ検査方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載のマクロ検査方法において、
上記類似度を算出する方法は、
上記比較基準マクロ画像と上記検査対象マクロ画像とをそれぞれ複数の部分領域に分割し、
上記比較基準マクロ画像と上記検査対象マクロ画像との間で、互いに位置が対応する各部分領域毎に画像マッチングを行い、上記各部分領域毎の画像マッチング結果のうち最小値、平均値または最大値からなる統計量を上記類似度として求めることを特徴とするマクロ検査方法。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか一つに記載のマクロ検査方法において、
上記類似度を算出する方法は、
検出すべき処理ムラの一部あるいは全部を模式化した1つ以上の画像をテンプレート画像として準備し、上記テンプレート画像を用いて上記比較基準マクロ画像と上記検査対象マクロ画像とにそれぞれテンプレートマッチングを行い、
そのテンプレートマッチング結果の相関係数を上記類似度として求めることを特徴とするマクロ検査方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載のマクロ検査方法において、
上記製造品毎に算出された上記類似度を、上記処理装置によって上記製造品が処理された処理日時順に並べてグラフ表示することを特徴とするマクロ検査方法。
【請求項7】
処理装置によって基板上に成膜する処理を含む製造プロセスによって製造される又は製造された製造品について、上記基板上に異常が生じたか否かを検査する検査システムであって、
或る処理装置による処理を受けた後の製造品を撮像して検査対象マクロ画像を取得する検査対象マクロ画像取得部と、
上記検査対象マクロ画像のための比較の基準となる比較基準マクロ画像を記憶する比較基準マクロ画像記憶部と、
上記検査対象マクロ画像と上記比較基準マクロ画像との間で、互いに類似している程度を定量的に表す類似度を算出する類似度算出部と、
上記類似度が予め決められた管理範囲から外れたかどうかを判断する管理判定部とを備えたことを特徴とする検査システム。
【請求項8】
請求項7に記載の検査システムにおいて、
上記類似度が上記管理範囲から外れたとき、警報を発する警報部を備えたことを特徴とする検査システム。
【請求項9】
請求項1に記載のマクロ検査方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−13644(P2012−13644A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152849(P2010−152849)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】