マグネトインピーダンス素子およびマグネトインピーダンスセンサ
【課題】帰還回路を用いることなく直線性及び温度特性に優れたマグネトインピーダンス素子およびマグネトインピーダンスセンサを提供すること。
【解決手段】一様な磁界の計測に用いられるマグネトインピーダンス素子10であって、線状に形成され、外部から作用する磁界により電磁気特性が変化するとともに、一端1a側から他端1b側へパルス電流が流される感磁体1を備える。導電層3が、感磁体1の外面上に絶縁層2を介して設けられている。感磁体1の軸線方向における他端部1bに、感磁体1と導電層3とを電気的に接続する接続部4が設けられている。パルス電流が感磁体1に流れた際に、感磁体1に作用する外部磁界の強度に対応した誘起電圧を出力する検出コイル6が、導電層3の外周に巻き回されている。そして、感磁体1に流れるパルス電流の向きと、導電層3に流れるパルス電流の向きとが逆向きになる。
【解決手段】一様な磁界の計測に用いられるマグネトインピーダンス素子10であって、線状に形成され、外部から作用する磁界により電磁気特性が変化するとともに、一端1a側から他端1b側へパルス電流が流される感磁体1を備える。導電層3が、感磁体1の外面上に絶縁層2を介して設けられている。感磁体1の軸線方向における他端部1bに、感磁体1と導電層3とを電気的に接続する接続部4が設けられている。パルス電流が感磁体1に流れた際に、感磁体1に作用する外部磁界の強度に対応した誘起電圧を出力する検出コイル6が、導電層3の外周に巻き回されている。そして、感磁体1に流れるパルス電流の向きと、導電層3に流れるパルス電流の向きとが逆向きになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線性に優れたマグネトインピーダンス素子およびマグネトインピーダンスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マグネトインピーダンス素子(以下、MI素子とも記す。)を用いた磁気センサ(以下、MIセンサとも記す。)として、例えば、アモルファスワイヤの外周に検出コイルを巻き回したものが知られている。特許文献1には、アモルファスワイヤにパルス電流を通電し、検出コイルから出力される誘起電圧の第1パルスを測定することにより、外部磁界Hexを高感度に検出できるMIセンサが開示されている。MI素子は、ジャイアントマグネトインピーダンス素子、もしくはGMI素子とも呼ばれている。また、MIセンサは、ジャイアントマグネトインピーダンスセンサ、もしくはGMIセンサとも呼ばれている。
【0003】
ここで、MI素子による磁場検出の原理について、図10を用いて説明する。
図示するごとく、アモルファス磁性ワイヤ91にパルス電流Iを流すと、このパルス電流Iにより周回方向に磁界Hが発生する。そして、検出コイル95から誘起電圧(dH/dt)が出力される。次に、パルス電流Iを流している状態で外部磁場Hxが印加されたとすると、アモルファス磁性ワイヤ91の円周方向に配列されているスピンが共鳴してθ揺れる。このスピン共鳴θによる誘起電圧(dMθ/dt)が検出コイル95に加重出力される。すなわち、外部磁場Hxの印加状態下においては、誘起電圧(dH/dt + dMθ/dt)が出力される。
【0004】
図11はMI素子を用いたMIセンサの、パルス電流に対する誘起電圧の出力を示す波形図である。これは外部磁場Hxの印加状態下においてパルス電流Iを流したときの検出コイルにより出力される、減衰振動する誘起電圧の時間的変化を示す波形図101である。
次に、図12に、この波形図101のうち、最初のパルスのピーク特性について外部磁場Hxが印加されていないパルス電流Iのみによる時間的変化を示す波形図102、外部磁場Hxが印加(+Hxおよび−Hx)されている時間的変化を示す波形103、波形図104をそれぞれ示す。
図12からわかるように波形図102〜波形図104において最初のパルスが減衰して誘起電圧がゼロクロスする時間(t)が同一ではなく位相差を生じている。外部磁場が印加されていないパルス電流Iのみによるゼロクロスする時間t1に対して、外部磁界+Hxが印加されるとゼロクロスする時間はt1+Δtaとなって遅れ(Δta)を生じ、外部磁界−Hxが印加されるとゼロクロスする時間はt1−Δtbとなって速く(Δtb)なる。
【0005】
この結果、外部磁界が+Hxから−Hx(図12)に極性が変わるときに、ゼロクロス時間が変動するとともに、検出コイルの出力電圧のピークとなる時間も変動していることが分かる。本件発明者等はこの原因を鋭意検討したところ、以下のようになると考えた。
パルス電流に起因する成分であるdH/dtによる出力電圧の時間変化波形と、外部磁界に応じて変化する成分であるdMθ/dtによる出力電圧の時間変化波形のピーク時間には位相差がある。そのため、二つの波形の合成である検出コイルに発生する誘起電圧波形は、パルス電流に起因する成分であるdH/dtによる出力電圧のピーク時間に対する位相差を有する。また、外部磁界に応じて変化する成分であるdMθ/dtによる出力電圧の時間変化波形は、外部磁界の増大に伴いピーク電圧は上昇する。そのため、二つの波形の合成である検出コイルに発生する誘起電圧波形は、外部磁界の変化に伴い、dH/dtによる出力電圧のピーク時間に対する位相差は変化していると思われる。
【0006】
ところで、後述するように、公知のマグネトインピーダンスセンサ(以下、適宜MIセンサと記す。)は、マグネトインピーダンス素子(以下、適宜MI素子と記す)に使用される感磁体に平行な外部磁場に対する検出コイルの出力電圧のピーク値が比例関係をとることを利用したものである。
【0007】
現状のMI素子を使用したMIセンサでは、後述する図6に示すようにパルス電流の立ち上がった時間t1から、検出コイルに発生する誘起電圧波形においてピーク値を取ると思われる所定のタイミングt2でアナログスイッチを短時間オン−オフすることで、外部磁場に対応した検出コイルに発生した出力電圧のピーク値を検出している。ここで、サンプリング時間Δtは、所定の入力電流波形と、それに応じた出力電圧波形があるとき、出力電圧波形においてピーク値を取ると思われる所定のタイミングt2から、パルス電流の立ち上がった時間t1を引いたものとする。(Δt=t2−t1)
【0008】
通常、外部磁場が無いとき(図12では102)のサンプリング時間Δtを固定して外部磁場が印加されたときも測定している。
そのため、図12のように検出コイルの出力電圧のピークとなる時間が外部磁場によって変動すると、外部磁場が印加された場合は、そのときの出力電圧のピーク値を迎える時間とずれたところで電圧をサンプリングすることになり、出力電圧が低下するため感度が低下し、直線性も低下する。
【0009】
また、温度変化に伴う感磁体の電気抵抗等の材料特性の変化によって、感磁体に流れるパルス電流が変化する。パルス電流が変化すれば、当然、パルス電流による周回磁界Hは変動する。よって、温度変化によって感磁体の磁化(M)と関係ないパルス電流による周回磁界Hが変動し、それによっても直線性の低下や、センサの原点(この例の場合は、印加磁場無しでの出力電圧のピーク値)のドリフトを生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−258517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の磁気センサは、直線性を向上させるために、アモルファス磁性ワイヤ91に巻き回された帰還コイル(図示せず)と、該帰還コイルに電流を供給するための帰還回路(図示せず)とが必要であるという問題があった。その結果、回路構成が複雑となって大型化するおそれがあった。上記帰還回路を省略すると、充分な検出精度が得られない場合があった。また、帰還コイルおよび帰還回路を駆動するために、消費電力が増大するという問題があった。
特に、携帯電話等に組み込まれる方位計測用の磁気センサとしては、直線性を向上することにより磁界を高精度に検出できる性能と、回路構成を簡略化することにより低消費電力を達成することの双方が求められている。
【0012】
本発明は、上記従来のマクネトインピーダンスセンサの問題点に鑑みてなされたものであり、帰還回路を用いることなく直線性及び温度特性に優れたマグネトインピーダンス素子およびマグネトインピーダンスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、一様な磁界の計測に用いられるマグネトインピーダンス素子であって、
線状に形成され、外部から作用する磁界により電磁気特性が変化するとともに、軸線方向における一端側から他端側へパルス電流が流される感磁体と、
上記感磁体の外面上に絶縁層を介して設けられた導電層と、
上記感磁体の上記軸線方向における他端部に設けられ、上記感磁体と上記導電層とを電気的に接続する接続部と、
上記導電層の外周に巻き回され、上記パルス電流が上記感磁体に流れた際に、該感磁体に作用する上記外部磁界の強度に対応した誘起電圧を出力する検出コイルと、
を備え、上記感磁体に流れる上記パルス電流の向きと、上記導電層に流れる該パルス電流の向きとが互いに逆向きになるように構成されていることを特徴とするマグネトインピーダンス素子にある。
【発明の効果】
【0014】
次に、本発明の効果つき説明する。
本発明では、感磁体の外周に導電層が形成されており、感磁体と導電層とが上記接続部で接続されている。これにより、感磁体に流れるパルス電流の向きと、導電層に流れるパルス電流の向きとが逆になる。そのため、感磁体を流れるパルス電流により発生する感磁体の外部の磁界と、導電層を流れるパルス電流により発生する導電層の外部の磁界とが打ち消し合う。これにより、検出コイルから出力される誘起電圧のうち、直線性等の低下の原因と思われるパルス電流に起因する成分であるdH/dtが弱められ、外部磁界に応じて変化する成分であるdMθ/dtのみを検出することが可能となる。
【0015】
そのため、外部磁界と誘起電圧との直線性を高めることが可能となる。また、帰還コイルや帰還回路を設ける必要が無くなるので、消費電力も少なくてすむ。
【0016】
以上説明したように、本発明によると、帰還回路を用いることなく直線性に優れたマグネトインピーダンス素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、マグネトインピーダンス素子の概略を示す図である。
【図2】実施例1における、マグネトインピーダンス素子の概略断面図である。
【図3】実施例1における、感磁体および導電層を流れるパルス電流の向きを表した概念図。
【図4】図3から感磁体のみを取り出した図。
【図5】図3から導電層のみを取り出した図。
【図6】実施例1における、感磁体に流れるパルス電流と、検出コイルに出力される誘起電圧との関係を表した図。
【図7】実施例1における、マグネトインピーダンスセンサの回路図。
【図8】実施例1における、パルス電流に対する検出コイルの出力特性を示す波形図。
【図9】実施例1における、マグネトインピーダンス素子の作製プロセスを示す図。
【図10】従来例における、マグネトインピーダンス素子の動作原理を示す図。
【図11】従来例における、パルス電流に対する検出コイルの出力特性を示す波形図。
【図12】従来例における、検出コイルから出力される第1パルスの波形図であって、外部磁界を+Hx、0、−Hx (G)にした場合の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記感磁体は断面円形に形成され、上記導電層は円筒形状に形成され、上記導電層は上記感磁体に対して同心的に設けられていることが好ましい。
この場合には、感磁体が断面非円形の場合や、感磁体と導電層とが同心的に設けられていない場合と比較して、導電層の外側に放射される、パルス電流に起因する磁界を殆ど0にすることができる。これにより、検出コイルに出力される誘起電圧のうち、dH/dtが殆ど無くなり、外部磁界によって変化する成分であるdMθ/dtのみを検出することが可能となる。
【0019】
また、上記感磁体はアモルファス磁性体からなることが好ましい。
アモルファス磁性体は、外部から作用する磁界の大きさにより電磁気特性が変化する性質(マグネトインピーダンス効果)を示すため、本発明の感磁体として好適に使用することができる。
【0020】
また、上記アモルファス磁性体としてはCoFeSiB系合金から構成されたものがある。
CoFeSiB系合金は、外部から作用する磁界の大きさにより磁気特性が大きく変化する軟磁性材料であり、低磁歪であるため、本発明の感磁体として好適に用いることができる。
なお、感磁体は上記の特性を有する公知の材料であればよく、CoMSiB系やFe−Si系等のアモルファス合金でもよい。
【0021】
さらに、上記導電層は、銅またはアルミニウムからなるメッキ膜またはスパッタ膜であることが好ましい。
この場合には、メッキ法やスパッタ法を用いることにより、薄い導電層を簡単に形成することができる。
【0022】
また、本発明のマグネトインピーダンス素子は、パルス電流が供給されるアモルファス磁性ワイヤと、アモルファス磁性ワイヤの外周に絶縁層を介して設けられた導電層と、上記アモルファス磁性ワイヤの一方の端面にて、アモルファス磁性ワイヤと導電層とを短絡する導電体からなる接続部とを備える。
本発明は、従来の、アモルファス磁性ワイヤの外周に検出コイルを巻く構造に対して、そのアモルファス磁性ワイヤの外周に絶縁層を介して導電層を設け、導体であるアモルファス磁性ワイヤと導電層を短絡して電気的に接続することにより、上記アモルファス磁性ワイヤに流れるパルス電流の向きと、上記導電層に流れるパルス電流の向きと互いに逆向きになるように構成されていることを特徴とする。それにより上述した(発明の効果)に記載の効果を奏するものである。
【0023】
また、本発明のマグネトインピーダンスセンサは、上記マグネトインピーダンス素子と、上記感磁体に入力される上記パルス電流を発生するパルス発生器と、上記検出コイルに接続され、上記パルス電流を流した時に上記検出コイルから出力される上記誘起電圧をサンプルして保持するサンプルホールド回路とを備えることを特徴とする。
この場合には、従来のマグネトインピーダンスセンサのように、外部磁界を打ち消すための帰還コイルおよび帰還回路が必要ないので、マグネトインピーダンスセンサの消費電力を少なくすることができる。
【0024】
本発明のジャイアントマグネットインピーダンス素子(マグネトインピーダンス素子)は、非磁性体からなる基板とパルス電流を印加するアモルファス磁性ワイヤ(感磁体)を軸とする同軸型コアと前記同軸型コアの外周に形成された検出コイルとからなることを特徴とする。
【0025】
非磁性体からなる基板としては、絶縁性のアルミナ系セラミックス、半導体のシリコンウェハ、導体の金属などを好適に使用できる。
【0026】
同軸型コアは、アモルファス磁性ワイヤ(感磁体)とアモルファス磁性ワイヤ(感磁体)の外周に絶縁体(絶縁層)を介して導電層が外周に形成され、かつ、同軸型コアの一方の端面にてアモルファス磁性ワイヤ(感磁体)と導電層とが導電体(接続部)によって短絡されているものである。
入力用の電極端子は、アモルファス磁性ワイヤ(感磁体)へ接続されている電極端子と導電層へ接続されている電極端子とからなる。
【0027】
この構成により、アモルファス磁性ワイヤ(感磁体)にパルス電流を通電するとアモルファス磁性ワイヤ(感磁体)に流れたパルス電流は同軸型コアの端面の導電体(接続部)に流れた後、アモルファス磁性ワイヤ(感磁体)の外周の導電層においてアモルファス磁性ワイヤ(感磁体)とは反対方向にパルス電流が導電層に流れることになる。
したがって、アモルファス磁性ワイヤ(感磁体)にパルス電流Iが流れることによって生成される周回方向の磁界+Hと、導電層に流れることによって生成される周回方向の磁界−Hとによってキャンセルされることとなる。その結果、検出コイル5ではパルス電流Iによる誘起電圧(dH/dt)は生じなくなる。
【0028】
同軸型コアの絶縁体は、アモルファス磁性ワイヤと導電層との絶縁を確保するためのものであるが、アモルファス磁性ワイヤを被覆するガラス皮膜、CVD法により形成されるSiO2膜など無機質材料、絶縁性を有するエポキシ樹脂などの有機質材料からなる。
【0029】
同軸型コアの導電層は、銅メッキやアルミニウムメッキなどのメッキ膜、銅などのスパッタ膜、PVD法、若しくは、CVD法による薄膜からなる。好ましくは、この導電層は、非磁性材で構成される。磁性を有していると、この導電層を通る電流の作る円周方向磁界により導電層自体が磁化され、ノイズを発生させ、センサの直線性の低下や、S/N比の低下を招く。
同軸型コアの一方の端面を短絡する接続部は、上記のメッキ膜やスパッタ膜の他、金などのボンディングでもよい。
【0030】
検出コイルは、基板の平坦面に配列された複数の下部導体膜からなる下コイルと、下コイルの表面に配設され、同軸型コアを内包するように形成された絶縁体の外表面に形成されるとともに下部導体膜と同じ方向に配列された複数の上部導体膜からなる上コイルとからなる。
そして、検出コイルの両端は出力用の電極端子に接続されている。
【0031】
下部導体膜および上部導体膜は、銅やアルミニウムなどの導電性金属のスパッタ膜、PVD法、若しくは、CVD法による薄膜やメッキ膜で形成される。
また、同軸型コアを内包する絶縁体はCVD法により形成されるSiO2膜など無機質材料、絶縁性を有するエポキシ樹脂などの有機質材料からなる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
次に、本発明の実施例にかかるマグネトインピーダンス素子およびマグネトインピーダンスセンサにつき、図1〜図9を用いて説明する。
【0033】
図1は、マグネトインピーダンス素子10の概略図であり、図2は断面図である。また、図3は、パルス電流Iが流れる方向を表した概略図である。
図1に示すごとく、本例のマグネトインピーダンス素子10は、線状に形成され、外部から作用する磁界により電磁気特性が変化するとともに、軸線方向における一端1a側から他端1b側へパルス電流Iが流される感磁体1を備える。
また、感磁体1の外面上に絶縁層2を介して導電層3が設けられている。
また、感磁体1の軸線方向における他端部1bに、感磁体1と導電層3とを電気的に接続する接続部4が設けられている。
さらに、パルス電流Iが感磁体1に流れた際に、感磁体1に作用する外部磁界の強度に対応した誘起電圧を出力する検出コイル6が、導電層3の外周に巻き回されている。
そして、図3に示すごとく、感磁体1に流れるパルス電流Iの向きと、導電層3に流れるパルス電流Iの向きとが互いに逆向きになるように構成されている。
【0034】
図1に示すごとく、マグネトインピーダンス素子10は、感磁体1の一端部1aに接続された第1電極7aと、導電層3に接続された第2電極7bを備える。これら第1電極7aと第2電極7bとの間にパルス電圧が印加される。そして、第2電極7bと導電層3との接触部7cと、上記接続部4との間に、検出コイル6が巻き回されている。
【0035】
図1は、ジャイアントマグネトインピーダンス素子10(マグネトインピーダンス素子10)の概略を示す図である。
非磁性のシリコンウェハからなる基板9の平坦面に、絶縁性を有するガラス皮膜2(絶縁層2)により被覆されているアモルファス磁性ワイヤ1(感磁体1)と、銅メッキにより形成された導電層3と、アモルファス磁性ワイヤ1(感磁体1)および導電層3を短絡している銅メッキにより形成されている導電体4(接続部4)からなる同軸型コア(20)と、同軸型コア(20)を内包するように形成しているエポキシ樹脂からなる絶縁体5(外側絶縁層5)と、基板9の平坦面から絶縁体5(外側絶縁層5)の外表面に渡って形成されている検出コイル6から構成される。
入力用電極端子は、アモルファス磁性ワイヤ1(感磁体1)へパルス電流(I)を供給する電極端子7Aおよび導電層3から戻ってくる電極端子7Bとからなる。
また、出力用電極端子8を有する。
【0036】
ここで、感磁体1(アモルファス磁性ワイヤ)の直径は7μm、長さは1.5mmであり、アモルファス磁性ワイヤの組成はCoFeSiB合金を使用し、ガラス皮膜からなる絶縁層2の厚さは1μmである。外側絶縁層5の厚さは2μmで、検出コイル6はエポキシ樹脂で被覆されている。導電層3および接続部4の厚さは2μmである。
検出コイル6の巻数は30ターンである。
なお、上述したように、感磁体1は直径7μm、長さ1.5mmの線状に形成されているが、図1では軸線方向長さを短くした概念図を表示している。
また、アモルファス磁性ワイヤ以外の部材は、導電層と同じ理由で、非磁性材であることが好ましい。
【0037】
次に、図2に示すごとく、感磁体1は断面円形に形成され、導電層3は円筒形状に形成され、導電層3は感磁体1に対して同心的に設けられている。
より詳しくは、感磁体1の外周面12を絶縁層2が被覆し、その絶縁層2をさらに導電層3が被覆している。また、導電層3は外側絶縁層5によって覆われ、その周りに検出コイル6が巻き回されている。
【0038】
このような構造にしている理由を、図4および図5を用いて説明する。図4は図3から感磁体1だけを取り出した図であり、図5は導電層3だけを取り出した図である。図4に示すごとく、感磁体1にパルス電流Iが流れることにより感磁体外部に磁界H1が発生する。感磁体1の中心から距離rの位置における、パルス電流Iによって生じる磁界H1の強さは、感磁体1の断面を円形とすることで、H1=μ0I/2πrと表すことができる。
【0039】
また、図5に示すごとく、導電層3を流れるパルス電流Iの大きさは、感磁体1を流れるパルス電流Iの大きさと同じであり、導電層3を流れるパルス電流Iの向きは、感磁体1を流れるパルス電流Iの向きに対して逆向きになっている。そのため、導電層3の中心から距離rの位置における、パルス電流Iによって生じる磁界H2は、導電層3を円筒形状で、かつ、感磁体1に対して同心的に設けることにより、H2=−μ0I/2πrと表すことができる。そのため、図3に示すごとく、導電層3の内側に感磁体1が存在すると、感磁体1を流れるパルス電流Iによって生じる、感磁体1の外側の磁界H1と、導電層3を流れるパルス電流Iによって生じる、導電層の外側の磁界H2とが打ち消し合って、H1+H2=0となる。
【0040】
また、図5に示すごとく、導電層3の内側では、パルス電流Iによって生じる磁界Hinは0になる。そのため図3に示すごとく、導電層3の内側に存在する感磁体1は、導電層3から発生する磁界の影響を受けない。
【0041】
すなわち、図3の構造にすることにより、感磁体1は導電層3による磁界の影響を受けず、導電層3の外側には、パルス電流Iにより発生した磁界が放射されなくなる。
【0042】
上述したように、感磁体1を流れるパルス電流Iによって生じた、感磁体1の外側の磁界H1は、導電層3を流れるパルス電流Iによって生じた、導電層3の外側の磁界H2によって打ち消される(図4、図5参照)。そのため、パルス電流Iによって生じた磁界H(=H1+H2)による成分dH/dtは検出コイル6から出力されず、スピンsによって生じた磁化Mθによる成分dMθ/dtのみが出力される。
【0043】
検出コイル6から出力される誘起電圧の波形例を図6に示す。このように、感磁体1にパルス電流Iを流した時に、磁化Mθが大きく変化するため、検出コイル6に誘起電圧dMθ/dtが図に示すごとく出力される。
【0044】
なお、本例の感磁体1は、CoFeSiB系合金からなるアモルファス磁性体から構成されている。
【0045】
次に、本例のマグネトインピーダンス素子10を用いたマグネトインピーダンスセンサ11について説明する。
図7に示すごとく、マグネトインピーダンスセンサ11は、マグネトインピーダンス素子10と、感磁体1に入力されるパルス電流Iを発生するパルス発生器200と、検出コイル6に接続され、パルス電流Iを流した時に検出コイル6から出力される誘起電圧dMθ/dtをサンプルして保持するサンプルホールド回路400とを備える。なお、検出タイミングは、パルス電流Iの立上がり時又は立下り時に応じた、図6中の電圧波形P1、P1’中の時間t2、t5とすることができる。その時間において、電圧V1、V1’として検出できる。
また、マグネトインピーダンス素子中のR11は、感磁体1の抵抗分を等価抵抗として表示している。
【0046】
図8は、本例に係るマグネトインピーダンスセンサ11を使って、上記第1パルスP1を測定した時の波形図である。マグネトインピーダンスセンサ11に作用する外部磁界Hexが+2Gの時の波形が112であり、0Gの時の波形が111である。また、Hexが−2Gの時の波形が113である。なお、測定時におけるパルス電流は180mAであり、パルス幅時間は50nsである。立上がり時間及び立下り時間は5nsである。
【0047】
図8から分かるように外部磁界Hex=0のとき、波形図111に示すように検出コイル6の出力電圧はほぼ0mVで推移する。このことより、感磁体1へ通電するパルス電流Iが形成する周回磁界Hによるノイズ電圧が完全に消失していることがわかる。
外部磁界Hex=+2Gの波形図112と外部磁界Hex=−2Gの波形図113は対称波形となり、ゼロクロスする時間(t)も同一となる。この結果、外部磁界に対して優れた出力電圧の直線性が得られる。
【0048】
次に、図9を用いてマグネトインピーダンス素子10の作製プロセスを説明する。
図9は図1に示すマグネトインピーダンス素子10の製造工程図であって、長手方向からみた断面図である。
まず、アルミナ系セラミックスからなる基板9の平坦面に2μm程度の下部導体膜からなる下コイル61を銅メッキにより形成する。
下コイル61と同軸型コア20の導電層3とを絶縁するためにCVD法によりSiO2膜層からなる絶縁層51を形成する。次に、エポキシ樹脂からなる絶縁層52を塗布形成する。
【0049】
そして、感磁体1(アモルファス磁性ワイヤ)、絶縁層2(ガラス皮膜)、導電層3(銅メッキ)からなる同軸型コア20を絶縁層52の上に定着する。
次に、同軸型コア20の端面において感磁体1(アモルファス磁性ワイヤ)と導電層3とを短絡するため、銅スパッタ膜により接続部4を形成し、さらにCVD法によりSiO2膜層の絶縁層53を形成する。
【0050】
同軸型コア20の上部には、CVD法によりSiO2膜層の絶縁層54を形成し、さらに2μm程度の上部導体膜からなる上コイル62を銅メッキにより形成して、下コイル61と上コイル62とにより螺旋状の検出コイル6を形成する。
上コイル62はCVD法によるSiO2膜の絶縁層55により被覆される。
【0051】
次に、本例のマグネトインピーダンス素子10およびマグネトインピーダンスセンサ11の作用効果について説明する。
本例では、図1に示すごとく、感磁体1の外周に導電層3が形成されており、感磁体1と導電層3とが接続部4で接続されている。これにより、感磁体1に流れるパルス電流と同じ大きさのパルス電流であって、感磁体1に流れるパルス電流の向きと逆向きのパルス電流が導電層3に流れる。そのため、感磁体1を流れるパルス電流により発生する、感磁体1の外側の磁界と、導電層3を流れるパルス電流により発生する、導電層3の外側の磁界とが、導電層3の外側において打ち消し合い、感磁体内部では、磁界が保持される。これにより、検出コイルから出力される誘起電圧のうち、パルス電流に起因する成分であるdH/dtが弱められ、外部磁界によって変化する成分であるdMθ/dtのみを主として検出することが可能となる。
【0052】
そのため、外部磁界と誘起電圧との直線性及び温度特性を高めることが可能となる。また、帰還コイルや帰還回路を設ける必要が無くなるので、消費電力も少なくてすむ。
【0053】
また、図2に示すごとく、感磁体1は断面円形に形成され、導電層3は円筒形状に形成され、導電層3は感磁体1に対して同心的に設けられている。
この場合には、感磁体1が断面非円形の場合や、感磁体1と導電層3とが同心的に設けられていない場合と比較して、導電層3の外側に放射される、パルス電流Iに起因する磁界Hを殆ど0にすることができる。これにより、検出コイル6に出力される誘起電圧のうち、dH/dtが殆ど無くなり、外部磁界によって変化する成分であるdMθ/dtのみを検出することが可能となる。
【0054】
さらに、導電層3は、銅またはアルミニウムからなるメッキ膜またはスパッタ膜である。
この場合には、メッキ法やスパッタ法を用いることにより、薄い導電層3を簡単に形成することができる。
【0055】
また、本例のマグネトインピーダンスセンサは、図7に示すごとく、上記マグネトインピーダンス素子10と、パルス発生器200と、サンプルホールド回路400とを備える。
この場合には、従来のマグネトインピーダンスセンサのように、外部磁界を打ち消すための帰還コイルおよび帰還回路が必要ないので、マグネトインピーダンスセンサの消費電力を少なくすることができる。
ここで、マグネト・インピーダンス素子という表記は、MI素子と表記される。また、同じ構成に基づくものが、ジャイアントマグネトインピーダンス素子、もしくはGMI素子とも呼ばれている。
マグネト・インピーダンスセンサという表記も、MIセンサ、ジャイアント・マグネト・インピーダンスセンサ、GMIセンサとも呼ばれている。
【符号の説明】
【0056】
1 感磁体
1a (感磁体の)一端
1b (感磁体の)他端
2 絶縁層
3 導電層
4 接続部
6 検出コイル
10 マグネトインピーダンス素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線性に優れたマグネトインピーダンス素子およびマグネトインピーダンスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マグネトインピーダンス素子(以下、MI素子とも記す。)を用いた磁気センサ(以下、MIセンサとも記す。)として、例えば、アモルファスワイヤの外周に検出コイルを巻き回したものが知られている。特許文献1には、アモルファスワイヤにパルス電流を通電し、検出コイルから出力される誘起電圧の第1パルスを測定することにより、外部磁界Hexを高感度に検出できるMIセンサが開示されている。MI素子は、ジャイアントマグネトインピーダンス素子、もしくはGMI素子とも呼ばれている。また、MIセンサは、ジャイアントマグネトインピーダンスセンサ、もしくはGMIセンサとも呼ばれている。
【0003】
ここで、MI素子による磁場検出の原理について、図10を用いて説明する。
図示するごとく、アモルファス磁性ワイヤ91にパルス電流Iを流すと、このパルス電流Iにより周回方向に磁界Hが発生する。そして、検出コイル95から誘起電圧(dH/dt)が出力される。次に、パルス電流Iを流している状態で外部磁場Hxが印加されたとすると、アモルファス磁性ワイヤ91の円周方向に配列されているスピンが共鳴してθ揺れる。このスピン共鳴θによる誘起電圧(dMθ/dt)が検出コイル95に加重出力される。すなわち、外部磁場Hxの印加状態下においては、誘起電圧(dH/dt + dMθ/dt)が出力される。
【0004】
図11はMI素子を用いたMIセンサの、パルス電流に対する誘起電圧の出力を示す波形図である。これは外部磁場Hxの印加状態下においてパルス電流Iを流したときの検出コイルにより出力される、減衰振動する誘起電圧の時間的変化を示す波形図101である。
次に、図12に、この波形図101のうち、最初のパルスのピーク特性について外部磁場Hxが印加されていないパルス電流Iのみによる時間的変化を示す波形図102、外部磁場Hxが印加(+Hxおよび−Hx)されている時間的変化を示す波形103、波形図104をそれぞれ示す。
図12からわかるように波形図102〜波形図104において最初のパルスが減衰して誘起電圧がゼロクロスする時間(t)が同一ではなく位相差を生じている。外部磁場が印加されていないパルス電流Iのみによるゼロクロスする時間t1に対して、外部磁界+Hxが印加されるとゼロクロスする時間はt1+Δtaとなって遅れ(Δta)を生じ、外部磁界−Hxが印加されるとゼロクロスする時間はt1−Δtbとなって速く(Δtb)なる。
【0005】
この結果、外部磁界が+Hxから−Hx(図12)に極性が変わるときに、ゼロクロス時間が変動するとともに、検出コイルの出力電圧のピークとなる時間も変動していることが分かる。本件発明者等はこの原因を鋭意検討したところ、以下のようになると考えた。
パルス電流に起因する成分であるdH/dtによる出力電圧の時間変化波形と、外部磁界に応じて変化する成分であるdMθ/dtによる出力電圧の時間変化波形のピーク時間には位相差がある。そのため、二つの波形の合成である検出コイルに発生する誘起電圧波形は、パルス電流に起因する成分であるdH/dtによる出力電圧のピーク時間に対する位相差を有する。また、外部磁界に応じて変化する成分であるdMθ/dtによる出力電圧の時間変化波形は、外部磁界の増大に伴いピーク電圧は上昇する。そのため、二つの波形の合成である検出コイルに発生する誘起電圧波形は、外部磁界の変化に伴い、dH/dtによる出力電圧のピーク時間に対する位相差は変化していると思われる。
【0006】
ところで、後述するように、公知のマグネトインピーダンスセンサ(以下、適宜MIセンサと記す。)は、マグネトインピーダンス素子(以下、適宜MI素子と記す)に使用される感磁体に平行な外部磁場に対する検出コイルの出力電圧のピーク値が比例関係をとることを利用したものである。
【0007】
現状のMI素子を使用したMIセンサでは、後述する図6に示すようにパルス電流の立ち上がった時間t1から、検出コイルに発生する誘起電圧波形においてピーク値を取ると思われる所定のタイミングt2でアナログスイッチを短時間オン−オフすることで、外部磁場に対応した検出コイルに発生した出力電圧のピーク値を検出している。ここで、サンプリング時間Δtは、所定の入力電流波形と、それに応じた出力電圧波形があるとき、出力電圧波形においてピーク値を取ると思われる所定のタイミングt2から、パルス電流の立ち上がった時間t1を引いたものとする。(Δt=t2−t1)
【0008】
通常、外部磁場が無いとき(図12では102)のサンプリング時間Δtを固定して外部磁場が印加されたときも測定している。
そのため、図12のように検出コイルの出力電圧のピークとなる時間が外部磁場によって変動すると、外部磁場が印加された場合は、そのときの出力電圧のピーク値を迎える時間とずれたところで電圧をサンプリングすることになり、出力電圧が低下するため感度が低下し、直線性も低下する。
【0009】
また、温度変化に伴う感磁体の電気抵抗等の材料特性の変化によって、感磁体に流れるパルス電流が変化する。パルス電流が変化すれば、当然、パルス電流による周回磁界Hは変動する。よって、温度変化によって感磁体の磁化(M)と関係ないパルス電流による周回磁界Hが変動し、それによっても直線性の低下や、センサの原点(この例の場合は、印加磁場無しでの出力電圧のピーク値)のドリフトを生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−258517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の磁気センサは、直線性を向上させるために、アモルファス磁性ワイヤ91に巻き回された帰還コイル(図示せず)と、該帰還コイルに電流を供給するための帰還回路(図示せず)とが必要であるという問題があった。その結果、回路構成が複雑となって大型化するおそれがあった。上記帰還回路を省略すると、充分な検出精度が得られない場合があった。また、帰還コイルおよび帰還回路を駆動するために、消費電力が増大するという問題があった。
特に、携帯電話等に組み込まれる方位計測用の磁気センサとしては、直線性を向上することにより磁界を高精度に検出できる性能と、回路構成を簡略化することにより低消費電力を達成することの双方が求められている。
【0012】
本発明は、上記従来のマクネトインピーダンスセンサの問題点に鑑みてなされたものであり、帰還回路を用いることなく直線性及び温度特性に優れたマグネトインピーダンス素子およびマグネトインピーダンスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、一様な磁界の計測に用いられるマグネトインピーダンス素子であって、
線状に形成され、外部から作用する磁界により電磁気特性が変化するとともに、軸線方向における一端側から他端側へパルス電流が流される感磁体と、
上記感磁体の外面上に絶縁層を介して設けられた導電層と、
上記感磁体の上記軸線方向における他端部に設けられ、上記感磁体と上記導電層とを電気的に接続する接続部と、
上記導電層の外周に巻き回され、上記パルス電流が上記感磁体に流れた際に、該感磁体に作用する上記外部磁界の強度に対応した誘起電圧を出力する検出コイルと、
を備え、上記感磁体に流れる上記パルス電流の向きと、上記導電層に流れる該パルス電流の向きとが互いに逆向きになるように構成されていることを特徴とするマグネトインピーダンス素子にある。
【発明の効果】
【0014】
次に、本発明の効果つき説明する。
本発明では、感磁体の外周に導電層が形成されており、感磁体と導電層とが上記接続部で接続されている。これにより、感磁体に流れるパルス電流の向きと、導電層に流れるパルス電流の向きとが逆になる。そのため、感磁体を流れるパルス電流により発生する感磁体の外部の磁界と、導電層を流れるパルス電流により発生する導電層の外部の磁界とが打ち消し合う。これにより、検出コイルから出力される誘起電圧のうち、直線性等の低下の原因と思われるパルス電流に起因する成分であるdH/dtが弱められ、外部磁界に応じて変化する成分であるdMθ/dtのみを検出することが可能となる。
【0015】
そのため、外部磁界と誘起電圧との直線性を高めることが可能となる。また、帰還コイルや帰還回路を設ける必要が無くなるので、消費電力も少なくてすむ。
【0016】
以上説明したように、本発明によると、帰還回路を用いることなく直線性に優れたマグネトインピーダンス素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、マグネトインピーダンス素子の概略を示す図である。
【図2】実施例1における、マグネトインピーダンス素子の概略断面図である。
【図3】実施例1における、感磁体および導電層を流れるパルス電流の向きを表した概念図。
【図4】図3から感磁体のみを取り出した図。
【図5】図3から導電層のみを取り出した図。
【図6】実施例1における、感磁体に流れるパルス電流と、検出コイルに出力される誘起電圧との関係を表した図。
【図7】実施例1における、マグネトインピーダンスセンサの回路図。
【図8】実施例1における、パルス電流に対する検出コイルの出力特性を示す波形図。
【図9】実施例1における、マグネトインピーダンス素子の作製プロセスを示す図。
【図10】従来例における、マグネトインピーダンス素子の動作原理を示す図。
【図11】従来例における、パルス電流に対する検出コイルの出力特性を示す波形図。
【図12】従来例における、検出コイルから出力される第1パルスの波形図であって、外部磁界を+Hx、0、−Hx (G)にした場合の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記感磁体は断面円形に形成され、上記導電層は円筒形状に形成され、上記導電層は上記感磁体に対して同心的に設けられていることが好ましい。
この場合には、感磁体が断面非円形の場合や、感磁体と導電層とが同心的に設けられていない場合と比較して、導電層の外側に放射される、パルス電流に起因する磁界を殆ど0にすることができる。これにより、検出コイルに出力される誘起電圧のうち、dH/dtが殆ど無くなり、外部磁界によって変化する成分であるdMθ/dtのみを検出することが可能となる。
【0019】
また、上記感磁体はアモルファス磁性体からなることが好ましい。
アモルファス磁性体は、外部から作用する磁界の大きさにより電磁気特性が変化する性質(マグネトインピーダンス効果)を示すため、本発明の感磁体として好適に使用することができる。
【0020】
また、上記アモルファス磁性体としてはCoFeSiB系合金から構成されたものがある。
CoFeSiB系合金は、外部から作用する磁界の大きさにより磁気特性が大きく変化する軟磁性材料であり、低磁歪であるため、本発明の感磁体として好適に用いることができる。
なお、感磁体は上記の特性を有する公知の材料であればよく、CoMSiB系やFe−Si系等のアモルファス合金でもよい。
【0021】
さらに、上記導電層は、銅またはアルミニウムからなるメッキ膜またはスパッタ膜であることが好ましい。
この場合には、メッキ法やスパッタ法を用いることにより、薄い導電層を簡単に形成することができる。
【0022】
また、本発明のマグネトインピーダンス素子は、パルス電流が供給されるアモルファス磁性ワイヤと、アモルファス磁性ワイヤの外周に絶縁層を介して設けられた導電層と、上記アモルファス磁性ワイヤの一方の端面にて、アモルファス磁性ワイヤと導電層とを短絡する導電体からなる接続部とを備える。
本発明は、従来の、アモルファス磁性ワイヤの外周に検出コイルを巻く構造に対して、そのアモルファス磁性ワイヤの外周に絶縁層を介して導電層を設け、導体であるアモルファス磁性ワイヤと導電層を短絡して電気的に接続することにより、上記アモルファス磁性ワイヤに流れるパルス電流の向きと、上記導電層に流れるパルス電流の向きと互いに逆向きになるように構成されていることを特徴とする。それにより上述した(発明の効果)に記載の効果を奏するものである。
【0023】
また、本発明のマグネトインピーダンスセンサは、上記マグネトインピーダンス素子と、上記感磁体に入力される上記パルス電流を発生するパルス発生器と、上記検出コイルに接続され、上記パルス電流を流した時に上記検出コイルから出力される上記誘起電圧をサンプルして保持するサンプルホールド回路とを備えることを特徴とする。
この場合には、従来のマグネトインピーダンスセンサのように、外部磁界を打ち消すための帰還コイルおよび帰還回路が必要ないので、マグネトインピーダンスセンサの消費電力を少なくすることができる。
【0024】
本発明のジャイアントマグネットインピーダンス素子(マグネトインピーダンス素子)は、非磁性体からなる基板とパルス電流を印加するアモルファス磁性ワイヤ(感磁体)を軸とする同軸型コアと前記同軸型コアの外周に形成された検出コイルとからなることを特徴とする。
【0025】
非磁性体からなる基板としては、絶縁性のアルミナ系セラミックス、半導体のシリコンウェハ、導体の金属などを好適に使用できる。
【0026】
同軸型コアは、アモルファス磁性ワイヤ(感磁体)とアモルファス磁性ワイヤ(感磁体)の外周に絶縁体(絶縁層)を介して導電層が外周に形成され、かつ、同軸型コアの一方の端面にてアモルファス磁性ワイヤ(感磁体)と導電層とが導電体(接続部)によって短絡されているものである。
入力用の電極端子は、アモルファス磁性ワイヤ(感磁体)へ接続されている電極端子と導電層へ接続されている電極端子とからなる。
【0027】
この構成により、アモルファス磁性ワイヤ(感磁体)にパルス電流を通電するとアモルファス磁性ワイヤ(感磁体)に流れたパルス電流は同軸型コアの端面の導電体(接続部)に流れた後、アモルファス磁性ワイヤ(感磁体)の外周の導電層においてアモルファス磁性ワイヤ(感磁体)とは反対方向にパルス電流が導電層に流れることになる。
したがって、アモルファス磁性ワイヤ(感磁体)にパルス電流Iが流れることによって生成される周回方向の磁界+Hと、導電層に流れることによって生成される周回方向の磁界−Hとによってキャンセルされることとなる。その結果、検出コイル5ではパルス電流Iによる誘起電圧(dH/dt)は生じなくなる。
【0028】
同軸型コアの絶縁体は、アモルファス磁性ワイヤと導電層との絶縁を確保するためのものであるが、アモルファス磁性ワイヤを被覆するガラス皮膜、CVD法により形成されるSiO2膜など無機質材料、絶縁性を有するエポキシ樹脂などの有機質材料からなる。
【0029】
同軸型コアの導電層は、銅メッキやアルミニウムメッキなどのメッキ膜、銅などのスパッタ膜、PVD法、若しくは、CVD法による薄膜からなる。好ましくは、この導電層は、非磁性材で構成される。磁性を有していると、この導電層を通る電流の作る円周方向磁界により導電層自体が磁化され、ノイズを発生させ、センサの直線性の低下や、S/N比の低下を招く。
同軸型コアの一方の端面を短絡する接続部は、上記のメッキ膜やスパッタ膜の他、金などのボンディングでもよい。
【0030】
検出コイルは、基板の平坦面に配列された複数の下部導体膜からなる下コイルと、下コイルの表面に配設され、同軸型コアを内包するように形成された絶縁体の外表面に形成されるとともに下部導体膜と同じ方向に配列された複数の上部導体膜からなる上コイルとからなる。
そして、検出コイルの両端は出力用の電極端子に接続されている。
【0031】
下部導体膜および上部導体膜は、銅やアルミニウムなどの導電性金属のスパッタ膜、PVD法、若しくは、CVD法による薄膜やメッキ膜で形成される。
また、同軸型コアを内包する絶縁体はCVD法により形成されるSiO2膜など無機質材料、絶縁性を有するエポキシ樹脂などの有機質材料からなる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
次に、本発明の実施例にかかるマグネトインピーダンス素子およびマグネトインピーダンスセンサにつき、図1〜図9を用いて説明する。
【0033】
図1は、マグネトインピーダンス素子10の概略図であり、図2は断面図である。また、図3は、パルス電流Iが流れる方向を表した概略図である。
図1に示すごとく、本例のマグネトインピーダンス素子10は、線状に形成され、外部から作用する磁界により電磁気特性が変化するとともに、軸線方向における一端1a側から他端1b側へパルス電流Iが流される感磁体1を備える。
また、感磁体1の外面上に絶縁層2を介して導電層3が設けられている。
また、感磁体1の軸線方向における他端部1bに、感磁体1と導電層3とを電気的に接続する接続部4が設けられている。
さらに、パルス電流Iが感磁体1に流れた際に、感磁体1に作用する外部磁界の強度に対応した誘起電圧を出力する検出コイル6が、導電層3の外周に巻き回されている。
そして、図3に示すごとく、感磁体1に流れるパルス電流Iの向きと、導電層3に流れるパルス電流Iの向きとが互いに逆向きになるように構成されている。
【0034】
図1に示すごとく、マグネトインピーダンス素子10は、感磁体1の一端部1aに接続された第1電極7aと、導電層3に接続された第2電極7bを備える。これら第1電極7aと第2電極7bとの間にパルス電圧が印加される。そして、第2電極7bと導電層3との接触部7cと、上記接続部4との間に、検出コイル6が巻き回されている。
【0035】
図1は、ジャイアントマグネトインピーダンス素子10(マグネトインピーダンス素子10)の概略を示す図である。
非磁性のシリコンウェハからなる基板9の平坦面に、絶縁性を有するガラス皮膜2(絶縁層2)により被覆されているアモルファス磁性ワイヤ1(感磁体1)と、銅メッキにより形成された導電層3と、アモルファス磁性ワイヤ1(感磁体1)および導電層3を短絡している銅メッキにより形成されている導電体4(接続部4)からなる同軸型コア(20)と、同軸型コア(20)を内包するように形成しているエポキシ樹脂からなる絶縁体5(外側絶縁層5)と、基板9の平坦面から絶縁体5(外側絶縁層5)の外表面に渡って形成されている検出コイル6から構成される。
入力用電極端子は、アモルファス磁性ワイヤ1(感磁体1)へパルス電流(I)を供給する電極端子7Aおよび導電層3から戻ってくる電極端子7Bとからなる。
また、出力用電極端子8を有する。
【0036】
ここで、感磁体1(アモルファス磁性ワイヤ)の直径は7μm、長さは1.5mmであり、アモルファス磁性ワイヤの組成はCoFeSiB合金を使用し、ガラス皮膜からなる絶縁層2の厚さは1μmである。外側絶縁層5の厚さは2μmで、検出コイル6はエポキシ樹脂で被覆されている。導電層3および接続部4の厚さは2μmである。
検出コイル6の巻数は30ターンである。
なお、上述したように、感磁体1は直径7μm、長さ1.5mmの線状に形成されているが、図1では軸線方向長さを短くした概念図を表示している。
また、アモルファス磁性ワイヤ以外の部材は、導電層と同じ理由で、非磁性材であることが好ましい。
【0037】
次に、図2に示すごとく、感磁体1は断面円形に形成され、導電層3は円筒形状に形成され、導電層3は感磁体1に対して同心的に設けられている。
より詳しくは、感磁体1の外周面12を絶縁層2が被覆し、その絶縁層2をさらに導電層3が被覆している。また、導電層3は外側絶縁層5によって覆われ、その周りに検出コイル6が巻き回されている。
【0038】
このような構造にしている理由を、図4および図5を用いて説明する。図4は図3から感磁体1だけを取り出した図であり、図5は導電層3だけを取り出した図である。図4に示すごとく、感磁体1にパルス電流Iが流れることにより感磁体外部に磁界H1が発生する。感磁体1の中心から距離rの位置における、パルス電流Iによって生じる磁界H1の強さは、感磁体1の断面を円形とすることで、H1=μ0I/2πrと表すことができる。
【0039】
また、図5に示すごとく、導電層3を流れるパルス電流Iの大きさは、感磁体1を流れるパルス電流Iの大きさと同じであり、導電層3を流れるパルス電流Iの向きは、感磁体1を流れるパルス電流Iの向きに対して逆向きになっている。そのため、導電層3の中心から距離rの位置における、パルス電流Iによって生じる磁界H2は、導電層3を円筒形状で、かつ、感磁体1に対して同心的に設けることにより、H2=−μ0I/2πrと表すことができる。そのため、図3に示すごとく、導電層3の内側に感磁体1が存在すると、感磁体1を流れるパルス電流Iによって生じる、感磁体1の外側の磁界H1と、導電層3を流れるパルス電流Iによって生じる、導電層の外側の磁界H2とが打ち消し合って、H1+H2=0となる。
【0040】
また、図5に示すごとく、導電層3の内側では、パルス電流Iによって生じる磁界Hinは0になる。そのため図3に示すごとく、導電層3の内側に存在する感磁体1は、導電層3から発生する磁界の影響を受けない。
【0041】
すなわち、図3の構造にすることにより、感磁体1は導電層3による磁界の影響を受けず、導電層3の外側には、パルス電流Iにより発生した磁界が放射されなくなる。
【0042】
上述したように、感磁体1を流れるパルス電流Iによって生じた、感磁体1の外側の磁界H1は、導電層3を流れるパルス電流Iによって生じた、導電層3の外側の磁界H2によって打ち消される(図4、図5参照)。そのため、パルス電流Iによって生じた磁界H(=H1+H2)による成分dH/dtは検出コイル6から出力されず、スピンsによって生じた磁化Mθによる成分dMθ/dtのみが出力される。
【0043】
検出コイル6から出力される誘起電圧の波形例を図6に示す。このように、感磁体1にパルス電流Iを流した時に、磁化Mθが大きく変化するため、検出コイル6に誘起電圧dMθ/dtが図に示すごとく出力される。
【0044】
なお、本例の感磁体1は、CoFeSiB系合金からなるアモルファス磁性体から構成されている。
【0045】
次に、本例のマグネトインピーダンス素子10を用いたマグネトインピーダンスセンサ11について説明する。
図7に示すごとく、マグネトインピーダンスセンサ11は、マグネトインピーダンス素子10と、感磁体1に入力されるパルス電流Iを発生するパルス発生器200と、検出コイル6に接続され、パルス電流Iを流した時に検出コイル6から出力される誘起電圧dMθ/dtをサンプルして保持するサンプルホールド回路400とを備える。なお、検出タイミングは、パルス電流Iの立上がり時又は立下り時に応じた、図6中の電圧波形P1、P1’中の時間t2、t5とすることができる。その時間において、電圧V1、V1’として検出できる。
また、マグネトインピーダンス素子中のR11は、感磁体1の抵抗分を等価抵抗として表示している。
【0046】
図8は、本例に係るマグネトインピーダンスセンサ11を使って、上記第1パルスP1を測定した時の波形図である。マグネトインピーダンスセンサ11に作用する外部磁界Hexが+2Gの時の波形が112であり、0Gの時の波形が111である。また、Hexが−2Gの時の波形が113である。なお、測定時におけるパルス電流は180mAであり、パルス幅時間は50nsである。立上がり時間及び立下り時間は5nsである。
【0047】
図8から分かるように外部磁界Hex=0のとき、波形図111に示すように検出コイル6の出力電圧はほぼ0mVで推移する。このことより、感磁体1へ通電するパルス電流Iが形成する周回磁界Hによるノイズ電圧が完全に消失していることがわかる。
外部磁界Hex=+2Gの波形図112と外部磁界Hex=−2Gの波形図113は対称波形となり、ゼロクロスする時間(t)も同一となる。この結果、外部磁界に対して優れた出力電圧の直線性が得られる。
【0048】
次に、図9を用いてマグネトインピーダンス素子10の作製プロセスを説明する。
図9は図1に示すマグネトインピーダンス素子10の製造工程図であって、長手方向からみた断面図である。
まず、アルミナ系セラミックスからなる基板9の平坦面に2μm程度の下部導体膜からなる下コイル61を銅メッキにより形成する。
下コイル61と同軸型コア20の導電層3とを絶縁するためにCVD法によりSiO2膜層からなる絶縁層51を形成する。次に、エポキシ樹脂からなる絶縁層52を塗布形成する。
【0049】
そして、感磁体1(アモルファス磁性ワイヤ)、絶縁層2(ガラス皮膜)、導電層3(銅メッキ)からなる同軸型コア20を絶縁層52の上に定着する。
次に、同軸型コア20の端面において感磁体1(アモルファス磁性ワイヤ)と導電層3とを短絡するため、銅スパッタ膜により接続部4を形成し、さらにCVD法によりSiO2膜層の絶縁層53を形成する。
【0050】
同軸型コア20の上部には、CVD法によりSiO2膜層の絶縁層54を形成し、さらに2μm程度の上部導体膜からなる上コイル62を銅メッキにより形成して、下コイル61と上コイル62とにより螺旋状の検出コイル6を形成する。
上コイル62はCVD法によるSiO2膜の絶縁層55により被覆される。
【0051】
次に、本例のマグネトインピーダンス素子10およびマグネトインピーダンスセンサ11の作用効果について説明する。
本例では、図1に示すごとく、感磁体1の外周に導電層3が形成されており、感磁体1と導電層3とが接続部4で接続されている。これにより、感磁体1に流れるパルス電流と同じ大きさのパルス電流であって、感磁体1に流れるパルス電流の向きと逆向きのパルス電流が導電層3に流れる。そのため、感磁体1を流れるパルス電流により発生する、感磁体1の外側の磁界と、導電層3を流れるパルス電流により発生する、導電層3の外側の磁界とが、導電層3の外側において打ち消し合い、感磁体内部では、磁界が保持される。これにより、検出コイルから出力される誘起電圧のうち、パルス電流に起因する成分であるdH/dtが弱められ、外部磁界によって変化する成分であるdMθ/dtのみを主として検出することが可能となる。
【0052】
そのため、外部磁界と誘起電圧との直線性及び温度特性を高めることが可能となる。また、帰還コイルや帰還回路を設ける必要が無くなるので、消費電力も少なくてすむ。
【0053】
また、図2に示すごとく、感磁体1は断面円形に形成され、導電層3は円筒形状に形成され、導電層3は感磁体1に対して同心的に設けられている。
この場合には、感磁体1が断面非円形の場合や、感磁体1と導電層3とが同心的に設けられていない場合と比較して、導電層3の外側に放射される、パルス電流Iに起因する磁界Hを殆ど0にすることができる。これにより、検出コイル6に出力される誘起電圧のうち、dH/dtが殆ど無くなり、外部磁界によって変化する成分であるdMθ/dtのみを検出することが可能となる。
【0054】
さらに、導電層3は、銅またはアルミニウムからなるメッキ膜またはスパッタ膜である。
この場合には、メッキ法やスパッタ法を用いることにより、薄い導電層3を簡単に形成することができる。
【0055】
また、本例のマグネトインピーダンスセンサは、図7に示すごとく、上記マグネトインピーダンス素子10と、パルス発生器200と、サンプルホールド回路400とを備える。
この場合には、従来のマグネトインピーダンスセンサのように、外部磁界を打ち消すための帰還コイルおよび帰還回路が必要ないので、マグネトインピーダンスセンサの消費電力を少なくすることができる。
ここで、マグネト・インピーダンス素子という表記は、MI素子と表記される。また、同じ構成に基づくものが、ジャイアントマグネトインピーダンス素子、もしくはGMI素子とも呼ばれている。
マグネト・インピーダンスセンサという表記も、MIセンサ、ジャイアント・マグネト・インピーダンスセンサ、GMIセンサとも呼ばれている。
【符号の説明】
【0056】
1 感磁体
1a (感磁体の)一端
1b (感磁体の)他端
2 絶縁層
3 導電層
4 接続部
6 検出コイル
10 マグネトインピーダンス素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一様な磁界の計測に用いられるマグネトインピーダンス素子であって、
線状に形成され、外部から作用する磁界により電磁気特性が変化するとともに、軸線方向における一端側から他端側へパルス電流が流される感磁体と、
上記感磁体の外面上に絶縁層を介して設けられた導電層と、
上記感磁体の上記軸線方向における他端部に設けられ、上記感磁体と上記導電層とを電気的に接続する接続部と、
上記導電層の外周に巻き回され、上記パルス電流が上記感磁体に流れた際に、該感磁体に作用する上記外部磁界の強度に対応した誘起電圧を出力する検出コイルと、
を備え、上記感磁体に流れる上記パルス電流の向きと、上記導電層に流れる該パルス電流の向きとが互いに逆向きになるように構成されていることを特徴とするマグネトインピーダンス素子。
【請求項2】
請求項1において、上記感磁体は断面円形に形成され、上記導電層は円筒形状に形成され、上記導電層は上記感磁体に対して同心的に設けられていることを特徴とするマグネトインピーダンス素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、上記感磁体はアモルファス磁性体からなることを特徴とするマグネトインピーダンス素子。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、上記導電層は、銅またはアルミニウムからなるメッキ膜またはスパッタ膜であることを特徴とするマグネトインピーダンス素子。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のマグネトインピーダンス素子と、上記感磁体に入力される上記パルス電流を発生するパルス発生器と、上記検出コイルに接続され、上記パルス電流が流れた時に上記検出コイルから出力される上記誘起電圧をサンプルして保持するサンプルホールド回路とを備えることを特徴とするマグネトインピーダンスセンサ。
【請求項1】
一様な磁界の計測に用いられるマグネトインピーダンス素子であって、
線状に形成され、外部から作用する磁界により電磁気特性が変化するとともに、軸線方向における一端側から他端側へパルス電流が流される感磁体と、
上記感磁体の外面上に絶縁層を介して設けられた導電層と、
上記感磁体の上記軸線方向における他端部に設けられ、上記感磁体と上記導電層とを電気的に接続する接続部と、
上記導電層の外周に巻き回され、上記パルス電流が上記感磁体に流れた際に、該感磁体に作用する上記外部磁界の強度に対応した誘起電圧を出力する検出コイルと、
を備え、上記感磁体に流れる上記パルス電流の向きと、上記導電層に流れる該パルス電流の向きとが互いに逆向きになるように構成されていることを特徴とするマグネトインピーダンス素子。
【請求項2】
請求項1において、上記感磁体は断面円形に形成され、上記導電層は円筒形状に形成され、上記導電層は上記感磁体に対して同心的に設けられていることを特徴とするマグネトインピーダンス素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、上記感磁体はアモルファス磁性体からなることを特徴とするマグネトインピーダンス素子。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、上記導電層は、銅またはアルミニウムからなるメッキ膜またはスパッタ膜であることを特徴とするマグネトインピーダンス素子。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のマグネトインピーダンス素子と、上記感磁体に入力される上記パルス電流を発生するパルス発生器と、上記検出コイルに接続され、上記パルス電流が流れた時に上記検出コイルから出力される上記誘起電圧をサンプルして保持するサンプルホールド回路とを備えることを特徴とするマグネトインピーダンスセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−281828(P2010−281828A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167692(P2010−167692)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【分割の表示】特願2009−536085(P2009−536085)の分割
【原出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000116655)愛知製鋼株式会社 (141)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【分割の表示】特願2009−536085(P2009−536085)の分割
【原出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000116655)愛知製鋼株式会社 (141)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]