説明

マスクブランク収納ケース及びマスクブランクの収納方法、並びにマスクブランク収納体

【課題】ケース内のマスクブランクを均一な固定荷重でしっかりと固定でき、しかもケースの気密性を向上させたマスクブランクの収納ケースを提供する。
【解決手段】上方が開口したケース本体5と、該ケース本体5に被せる蓋体6とを備えて、内部にマスクブランクを収納するマスクブランク収納ケースである。ここで、ケース本体5に蓋体6を被せたときの接合部の全周にわたって囲繞する固定用枠10と固定片11から構成される固定部材を係合させることにより、接合部の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように蓋体5とケース本体6とを固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの製造に使用されるフォトマスク等の製造に用いられるマスクブランクを収納する収納ケース及びその収納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子デバイス、特に半導体素子や液晶モニター用のカラーフィルター或いはTFT素子等は、IT技術の急速な発達に伴い、一層の微細化が要求されている。このような微細加工技術を支える技術の一つが、転写マスクと呼ばれるフォトマスクを用いたリソグラフィー技術である。このリソグラフィー技術においては、露光用光源の電磁波を転写マスクを通じてレジスト膜付きシリコンウエハー等に露光することにより、シリコンウエハー上に微細なパターンを形成している。この転写マスクは通常、透光性基板上に遮光性膜を形成したマスクブランクにリソグラフィー技術を用いて原版となるパターンを形成して製造される。ところで、マスクブランクの表面にパーティクル等の異物があると、形成されるパターンの欠陥の原因となるので、マスクブランクの表面には異物等が付着しないように清浄に保管される必要がある。
【0003】
このようなマスクブランクを収納保管し運搬するためのケースとしては、従来では例えば下記特許文献1に開示されているようなマスク運搬用ケースが知られている。すなわち、従来のマスクブランクを収納保管するケースは、キャリアなどと呼ばれている内ケースにマスクブランクを数枚乃至数十枚並べて保持させ、このマスクブランクを保持した内ケースを外箱(ケース本体)内に収容し、さらに外箱上に蓋を被せて、マスクブランクを収納する構造となっていた。
【0004】
図7乃至図9は、特許文献1に開示されたものと同様の構造の収納ケースを示すもので、図7は収納ケースの蓋を示す斜視図、図8はマスクブランクを中ケースに収納する状態を示す斜視図、図9は収納ケースのケース本体(外ケース)を示す斜視図である。
この収納ケースは、マスクブランク1を中ケース2に収納し、この中ケース2をケース本体3に収納し、このケース本体3の開口部側に蓋4を被せる構造である。
【0005】
上記中ケース2は、開口部側(上方)から底面側(下方)に向けて複数の溝21,22を一方の互いに対向する内側面に所定間隔をおいて一対をなして形成し、その溝21,22の底面側の底部と中ケース底面にはそれぞれ開口窓23,24と開口部27が設けられ、さらに中ケース底面側には基板支持部26が形成され、この基板支持部26でマスクブランク1の下方端面を支持している(図8)。そして、この中ケース2をケース本体3に収納して固定するための凹面部28,29がそれぞれ中ケースの他方の互いに対向する外側面に底面側から開口部側の途中まで形成されている。数枚のマスクブランク1を中ケース2の一対の溝21,22に沿って入れると、これらのマスクブランクは所定間隔をおいて互いに平行に林立する。
【0006】
上記ケース本体3は、上述した中ケース2の凹面部28,29と当接するに適合した突出部31,32を、互いに対向する内側面に形成し、その突出部31,32の底部はケース本体3底面とも接合している(図9)。また、一方の対向する外側面の開口部側には凸部33,34が形成されている。そして、ケース本体3の開口縁35のやや下方の位置に続く外周面36と上記凸部33,34の凸面とは略同一面に形成されている。
また上記蓋4は、その一方の対向する下方縁47(ケース本体へ差し込む開口部側の縁であって、図7では上方へ向いている)の中央から延びた係合片41,42に凹部43,44を形成している。これにより、蓋4をケース本体3に被せたときに、上記凹部43,44が前記ケース本体3の凸部33,34とそれぞれ嵌合することで、蓋4とケース本体3とが固定される構造となっている。また、中ケース2の開口部側上端面25と当接して中ケース2を垂直方向において支持固定するストッパー45,46を一方の内側面に互いに対向させて形成している。
【0007】
【特許文献1】特公平1−39653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の電子デバイスの高性能化に伴って、転写マスクに形成されるパターンも一段と微細化が要求されており、このような微細パターンを形成するためにもマスクブランクの清浄度は極めて高いものでないと許容できなくなってきている。従って、マスクブランクに異物等が付着するのを出来るだけ抑制することにより、特にマスクブランクの保管中は出来るだけ高い清浄度に維持する必要がある。
【0009】
従来構造の収納ケースは、上述したように、蓋4をケース本体3に被せると、前記蓋4の凹部43,44が前記ケース本体3の凸部33,34とそれぞれ嵌合するフック構造によって、蓋4とケース本体3とが固定されるようになっており、収納ケースの4辺のうちの2辺を固定していた。しかし、上記蓋4やケース本体3はポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック材料で形成されており多少の柔軟性を有しているため、上記フック構造による固定箇所以外では固定荷重が逃げてしまい、以下のような問題が生じる。
【0010】
(1)上記フック構造による固定箇所(2箇所)から離れた箇所でのマスクブランクに対する固定荷重は弱くなり、例えば輸送中の振動で収納ケース内のマスクブランクとそれを支持しているプラスチックパーツとの擦れによるパーティクルが発生し、マスクブランクに付着して異物欠陥となる。
【0011】
(2)例えば半導体デザインルールD-RAMハーフピッチ32nmノード以下の微細化パターンを形成するのに有利な化学増幅型レジストは、その反応メカニズム上、化学成分のコンタミによる影響を受けやすい。つまり、僅かな酸やアルカリの雰囲気にさらされることで性能が劣化してしまう性質を持っている。このため、化学増幅型レジスト膜が形成されたマスクブランクの場合は、単にパーティクル等の異物を排除するだけでは足りず、化学成分のコンタミの影響をも排除するため特に清浄な雰囲気で保管する必要があり、不安定な外気の進入を防ぐ意味で、ケースの気密性は非常に重要である。ところが、上記従来の収納ケースでは、気密性は不十分である。そこで、ケース本体に蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部にパッキン(弾性体)を介在させることにより、ケースの気密性を上げることが可能であるが、上記フック構造による固定箇所から離れた箇所では蓋体とケース本体との固定荷重は弱くなり、パッキンによる気密が不十分になりやすい。
【0012】
なお、従来の収納ケースでは、たとえば蓋体とケース本体との接合部を粘着テープで一応密封していたが、一般的に使用される粘着テープの場合、多少の通気性を有しているため、たとえばクリーンルームのような清浄雰囲気内でマスクブランクをケース内に収納梱包したとしても、その後の保管の雰囲気によっては、経時的に外気が進入し、その外気に含まれる何らかの成分により収納ケース内が汚染される場合がある。さらには、収納ケースの材質として何らかの化学成分等が放出され難いプラスチック等を用いたとしても、粘着テープの基材や粘着剤に使用されている化学成分が経時的にケース内に進入して汚染する場合がある。特に、前述の化学増幅型レジスト膜を形成したマスクブランクの場合は、化学成分等のコンタミによる汚染は致命的な欠陥となる。このように、ケースの接合部を粘着テープで封止するという方法では、外気の進入による汚染や、粘着テープの化学成分等による汚染を回避することは困難であった。
【0013】
従って、本発明は、上記従来の問題点を解消し、ケース内のマスクブランクを均一な固定荷重でしっかりと固定でき、しかもケースの気密性を向上させたマスクブランクの収納ケース及び収納方法を提供することを第1の目的とする。また、特に清浄な雰囲気で保管される必要がある化学増幅型レジスト膜を形成したマスクブランクに好適な収納ケース及び収納方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、収納ケースと係合させる固定部材によって、ケース本体と蓋体との接合部の全周にわたってほぼ均一に固定荷重がかかるように蓋体とケース本体とを固定することにより、ケース内のマスクブランクを均一な固定荷重で固定でき、かつケースの気密性を向上させることが可能になることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
(構成1)上方が開口したケース本体と、該ケース本体に被せる蓋体とを備えて、内部にマスクブランクを収納するマスクブランクの収納ケースであって、該収納ケースと係合させる固定部材によって、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部の全周にわたって均一又はほぼ均一に固定荷重がかかるように前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とするマスクブランク収納ケース。
構成1のマスクブランク収納ケースによれば、収納ケースと係合させる固定部材によって、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部の全周にわたって均一又はほぼ均一に固定荷重がかかるように前記蓋体と前記ケース本体とを固定するため、ケース内に収納されたマスクブランクを均一な固定荷重できちっと固定でき、例えば輸送、搬送中の振動によっても収納ケース内のマスクブランクとそれを支持しているプラスチックパーツとの擦れによるパーティクルの発生を抑制し、マスクブランクへのパーティクル付着を防止することができる。また、蓋体とケース本体との接合部の全周にわたって均一又はほぼ均一に固定荷重がかかるように固定できるため、ケースの気密性を向上させることができ、不安定な外気の進入を防ぐことができる。
【0016】
(構成2)前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部の全周にわたって囲繞する固定部材を係合させることにより、前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とする構成1に記載のマスクブランク収納ケース。
前記固定部材による蓋体とケース本体とをその接合部の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように固定する一態様としては、構成2にあるように、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部の全周にわたって囲繞する固定部材を係合させることである。
【0017】
(構成3)前記ケース本体に前記蓋体を被せたときの収納ケースの四方に固定部材を被せることにより、前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とする構成1に記載のマスクブランク収納ケース。
前記固定部材による蓋体とケース本体とをその接合部の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように固定する他の態様としては、構成3にあるように、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときの収納ケースの四方に固定部材を被せることである。
【0018】
(構成4)前記収納ケースの1辺あたり複数箇所に前記固定部材を被せることを特徴とする構成3に記載のマスクブランク収納ケース。
構成4にあるように、上記構成3において、収納ケースの1辺あたり複数箇所に前記固定部材を被せることにより、収納ケースの蓋体とケース本体の接合部の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように固定することが容易に行える。
【0019】
(構成5)前記ケース本体の開口縁部又は前記蓋体の下縁部の少なくとも一方に弾性体を周設し、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部に前記弾性体を介在させることを特徴とする構成1乃至4のいずれか一に記載のマスクブランク収納ケース。
構成5にあるように、固定部材によって蓋体とケース本体を固定する際、固定部材によって蓋体を押し付け、ケース本体との接合部に介在する弾性体をつぶして、ケース内を密閉状態とすることができる。本発明の収納ケースでは、蓋体とケース本体との接合部の全周にわたって均一又はほぼ均一に固定荷重がかかるように固定できるため、弾性体を用いてケースの気密性をより一層高めることができる。また、ケース内部に収納されたマスクブランクを輸送、搬送中でもきちっと固定し、パーティクル発生を抑えることができる。
【0020】
(構成6)構成1乃至5のいずれか一に記載のマスクブランク収納ケースに、レジスト膜を有するマスクブランクを収納することを特徴とするマスクブランクの収納方法。
構成1乃至5のいずれか一に記載のマスクブランク収納ケースに、レジスト膜を有するマスクブランクを収納することにより、マスクブランクを均一な固定荷重できちっと固定でき、例えば輸送、搬送中の振動によっても収納ケース内でのパーティクルの発生を抑制し、マスクブランクへのパーティクル付着を防止することができる。また、蓋体とケース本体との接合部の全周にわたって均一又はほぼ均一に固定荷重がかかるように固定でき、ケースの気密性が高いので、不安定な外気の進入を抑えることができる。
【0021】
(構成7)前記レジストは、化学増幅型レジストであることを特徴とする構成6に記載のマスクブランクの収納方法。
本発明のマスクブランクの収納方法によれば、ケース内部に収納されたマスクブランクを輸送、搬送中でもきちっと固定し、しかもケースの気密性が高く、不安定な外気の進入を抑えることができるので、単にパーティクル等の異物だけでなく、化学成分のコンタミの影響をも排除するために特に清浄な雰囲気で保管される必要がある化学増幅型レジスト膜を形成したマスクブランクの収納に好適である。
【0022】
(構成8)構成6又は7に記載の収納方法によりマスクブランクが収納されたことを特徴とするマスクブランク収納体。
構成8のマスクブランク収納体によれば、マスクブランクが均一な固定荷重できちっと固定されるため、例えば輸送、搬送中の振動によっても収納ケース内でのパーティクルの発生を抑制し、マスクブランクへのパーティクル付着を防止することができる。また、ケースの気密性が高いため、不安定な外気の進入を抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上方が開口したケース本体と該ケース本体に被せる蓋体とを備えたマスクブランクの収納ケースにおいて、該収納ケースと係合させる固定部材によって、前記蓋体と前記ケース本体との接合部の全周にわたって均一又はほぼ均一に固定荷重がかかるように前記蓋体と前記ケース本体とを固定することにより、ケース内に収納されたマスクブランクを均一な固定荷重できちっと固定でき、例えば輸送、搬送中の振動によっても収納ケース内でのパーティクルの発生を抑制し、マスクブランクへのパーティクル付着を防止することができる。また、蓋体とケース本体との接合部の全周にわたって均一又はほぼ均一に固定荷重がかかるように固定できるため、ケースの気密性を向上させることができ、不安定な外気の進入を抑えることが可能である。
従って、本発明は、単にパーティクル等の異物を排除するだけでは足りず、化学成分のコンタミの影響をも排除するために特に清浄な雰囲気で保管される必要がある化学増幅型レジスト膜を形成したマスクブランクの収納に特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
図1乃至図3は本発明の収納ケースの一実施の形態を示す。図1は本実施の形態で用いる固定部材を示すもので、(a)と(b)はそれぞれ固定用枠の平面図と側面図、(c)と(d)はそれぞれ固定片の平面図と側面図である。図2の(a)と(b)はそれぞれ上記固定部材で固定する前の状態の側面図、図3は上記固定部材で固定した状態の側面図である。
【0025】
本実施の形態に係るマスクブランクの収納ケースは、上方が開口したケース本体5と、該ケース本体5に被せる蓋体6とを備えて、内部にマスクブランクを収納するマスクブランクの収納ケースである。上記ケース本体5及び蓋体6は、その全体的な形状は、従来構造の収納ケースが前記蓋4の凹部43,44と前記ケース本体3の凸部33,34を備えている点を除いては、図7に示す蓋4及び図9に示すケース本体3と同様の形状を有している。また、図1には示していないが、前述の従来構造の収納ケースのようにマスクブランクを複数枚保持するための中ケース(図8参照)を用いる構成とすることができる。上記中ケースを使用せずに、マスクブランクをケース本体5に直接溝等を設けて収納する形態とすることもできるが、中ケースを使用すると、数枚乃至数十枚のマスクブランクをまとめて中ケース2に入れた状態で取り扱えるので便利である。
【0026】
本実施形態の収納ケースは、主表面が正方形のガラス基板の一主表面上にクロム膜等の遮光性薄膜を成膜し、その上にレジスト膜を形成したマスクブランクをたとえば中ケース(図示せず)に収納し、この中ケースをケース本体5に収納し、このケース本体5の開口部側に蓋体6を被せる構造である(図2(b)参照)。ケース本体5の上から蓋体6を被せると、蓋体6の下方縁に続く外周面61とケース本体5の開口縁部51とが前後に重なり合うと同時に、蓋体6の下方縁の外周面61とケース本体5の開口縁部51の下方の外周面52とが同一面上に重なり合って蓋体6とケース本体5とが接合される。
【0027】
なお、本実施形態では、蓋体6を閉じた収納ケースの密閉性をより高めるために、ケース本体5の開口縁部51に沿って適当な大きさの環状の弾性体7を嵌め込んでいる(図2(b))。弾性体7としては、雰囲気の温度、気圧等の変動があっても化学成分ガスの放出が少ない材料が好ましく、例えば、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマーが挙げられる。
【0028】
本実施の形態による収納ケースは、上述のように内部にマスクブランクを収納して、ケース本体5に蓋体6を被せた状態でケース本体5と蓋体6とを固定するため、ケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5の開口縁部と蓋体6の下縁部との接合部の全周にわたって囲繞する固定部材を使用する。この固定部材は、好ましくは、ケース本体5と蓋体6とを固定する際、多少変形可能な程度の柔軟性を有し、所定の幅を有する帯状部材であり、なお且つ収納ケースの接合部の外形形状に合わせて略コの字状に形成された固定用枠10(図1(a)、(b)参照)と、該固定用枠10の両端部を連結する固定片11(図1(c)、(d)参照)とから構成されている。上記固定用枠10は、拡開可能なようにヒンジ部10cを有し、両端部には、内方に折れ曲がった部分にそれぞれ係合凸部10a,10bを備えている。また、上記固定片11は、その両端部に、上記固定用枠10の係合凸部10a,10bとそれぞれ係合する係合凹部11a,11bを有している。ケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5の開口縁部と蓋体6の下縁部との接合部、すなわち蓋体6の下方縁の外周面61とケース本体5の開口縁部51の下方の外周面52とが同一面上に重なり合った部分に上記固定用枠10を嵌め合わせ、該固定用枠10の両端部を接近する方向へやや引っ張り気味に、上記固定片11の係合凹部11a,11bをそれぞれ上記固定用枠10の係合凸部10a,10bと係合させて、上記接合部を締め付ける。上記接合部において、蓋体6の外周面61とケース本体5の外周面52のそれぞれのテーパ部(図2(a)中の矢印Aで示す)では、上記固定用枠10と固定片11の締め付けによる固定荷重が内方にかかり、上記接合部をより強固に固定できる。本実施の形態では、こうしてケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5と蓋体6との接合部の全周にわたって囲繞する固定部材を係合させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定する(図3参照)。
【0029】
このような本実施の形態のマスクブランク収納ケースによれば、内部にマスクブランクを収納して、ケース本体5に蓋体6を被せた状態で、ケース本体5と蓋体6との接合部の全周にわたって囲繞する上記固定部材を係合させることにより、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部を締め付け、その全周にわたって均一に固定荷重がかかるように前記蓋体と前記ケース本体とを固定することができるため、ケース内に収納されたマスクブランクを均一な固定荷重できちっと固定でき、例えば輸送、搬送中の振動によっても収納ケース内のマスクブランクとそれを支持しているプラスチックパーツとの擦れによるパーティクルの発生を抑制し、マスクブランクへのパーティクル付着を防止することができる。また、蓋体とケース本体との接合部の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように固定できるため、ケースの気密性を向上させることができ、不安定な外気の進入を防ぐことができる。
【0030】
また、本実施の形態では、上記固定部材によって蓋体6とケース本体5を固定する際、固定部材によって蓋体6の外周面61を押し付け、内部の前記弾性体7をつぶして、ケース内の密閉状態をより高めることができる。この場合、本実施の形態の収納ケースでは、蓋体6とケース本体5との接合部の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように固定できるため、前記弾性体7を用いてケースの気密性をより一層高めることができる。また、ケース内部に収納されたマスクブランクを輸送、搬送中でもきちっと固定し、パーティクル発生を抑えることができる。
したがって、本実施の形態は、単にパーティクル等の異物を排除するだけでは足りず、化学成分のコンタミの影響をも排除するために特に清浄な雰囲気で保管される必要がある化学増幅型レジスト膜を形成したマスクブランクの収納に特に好適である。
【0031】
なお、上述のケース本体5及び蓋体6の材質は、例えばポリプロピレン、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチルサルファイト、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)等の樹脂から適宜選択されることが好ましい。これらの中でも、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。なお、マスクブランクの保管中にチャージが溜まると、マスク製造過程において放電破壊を起こし、パターン欠陥となる場合があるので、たとえばケース本体5の構成樹脂にカーボン等を混ぜ込んで導電性を付与するようにしてもよい。
また、上述の固定部材(固定用枠10及び固定片11)の材質は、例えばポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)等の樹脂や、ステンレス、アルミニウム等の金属から適宜選択されることが好ましい。
【0032】
[第2の実施の形態]
図4は本発明の収納ケースの第2の実施の形態を示す、(a)固定部材で固定した状態の平面図、(b)固定部材で固定する前の状態の側面図、(c)固定部材で固定した状態の側面図である。なお、前述の図2、図3と同等の箇所には同一符号を付している。
【0033】
本実施の形態による収納ケースは、上述のように内部にマスクブランクを収納して、ケース本体5に蓋体6を被せた状態でケース本体5と蓋体6とを固定するため、蓋体6の上部から被せる2つの固定部材8A,8Bを使用して、収納ケースの四方に被せる。この固定部材8A,8Bは、好ましくは、ケース本体5と蓋体6とを固定する際、蓋体6上部からケース本体5にかけて被せることができるように多少変形可能な程度の柔軟性を有し、所定の幅を有する帯状部材であり、なお且つ収納ケースの外形形状に合わせて略コの字状に形成されている(図4(b)参照)。すなわち、固定部材8A,8Bはそれぞれ、蓋体6を閉じた状態の収納ケースの高さに略相当する長さを有する部分81と83、及び、蓋体6を閉じた状態の収納ケースの横幅に略相当する長さを有する部分82を有する略コの字状に形成されている。そして、固定部材8A,8Bの両端部はそれぞれ、ケース本体5の底部に係合させるのに都合が良いように、内方に折れ曲がった部分8a,8bを有している。
【0034】
上記固定部材8A,8Bの幅は、特に制約される必要はないが、本発明による作用効果をより良く発揮させる観点から、固定部材8A,8Bの幅L1を、ケースの一辺の長さL2(図4(a)参照)の1/5以上とすることが好ましく、より好ましくは1/3以上である。また、固定部材8Aと8Bのそれぞれの幅は必ずしも一致していなくてもよい。
上述の固定部材8A,8Bの材質は、例えばポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)等の樹脂や、ステンレス、アルミニウム等の金属から適宜選択されることが好ましい。
【0035】
このような本実施の形態のマスクブランク収納ケースによれば、内部にマスクブランクを収納して、ケース本体5に蓋体6を被せた状態で、固定部材8Aと8Bをそれぞれ交差させて蓋体6の上部から四方に被せて、当該固定部材8A,8Bの両端部8a,8bをそれぞれケース本体5の底部に係合させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定する。これによって、ケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5と蓋体6との接合部(合わせ部)の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように前記蓋体と前記ケース本体とを固定することができるため、ケース内に収納されたマスクブランクを均一な固定荷重できちっと固定でき、例えば輸送、搬送中の振動によっても収納ケース内のマスクブランクとそれを支持しているプラスチックパーツとの擦れによるパーティクルの発生を抑制し、マスクブランクへのパーティクル付着を防止することができる。また、蓋体とケース本体との接合部の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように固定できるため、ケースの気密性を向上させることができ、不安定な外気の進入を防ぐことができる。
【0036】
また、本実施の形態においても、上記固定部材8A,8Bによって蓋体6とケース本体5を固定する際、固定部材8A,8Bによって蓋体6の外周面61を押し付け、内部の前記弾性体7をつぶして、ケース内の密閉状態をより高めることができる。この場合、本実施の形態の収納ケースでは、蓋体6とケース本体5との接合部の全周にわたってほぼ均一に固定荷重がかかるように固定できるため、前記弾性体7を用いてケースの気密性をより一層高めることができる。
したがって、本実施の形態においても、特に清浄な雰囲気で保管される必要がある化学増幅型レジスト膜を形成したマスクブランクの収納に好適である。
また、本実施の形態において、2つの固定部材を使用して収納ケースの四方を固定するのを、固定部材の幅L1を大きくして1つの固定部材のみで収納ケースの二方を固定しても、ケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5と蓋体6との接合部の全周にわたってほぼ均一に固定荷重がかかるように蓋体とケース本体とを固定することができる。
【0037】
[第3の実施の形態]
図5は本発明の収納ケースの第3の実施の形態を示す、(a)固定部材で固定した状態の平面図、(b)固定部材で固定する前の状態の正面図、(c)固定部材で固定した状態の側面図である。なお、図4と同等の箇所には同一符号を付している。
【0038】
本実施の形態の収納ケースにおいては、ケース本体5における各側壁外側面にあって開口側の外周面52より下方の位置にそれぞれ係合凸部53〜56(なお56は図示されていない)を備え、蓋体6の上部から被せる2つの固定部材9A,9Bの両端部9a,9bをそれぞれ、蓋体6をケース本体5に被せたときのケース本体5の前記係合凸部53と56、及び54と55に係合させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定するように構成されている。上記固定部材9A,9Bについても、好ましくは、ケース本体5と蓋体6とを固定する際、蓋体上部からケース本体にかけて被せることができるように多少変形可能な柔軟性を有し、所定の幅を有する帯状部材であり、なお且つ収納ケースの外形形状に合わせて略コの字状に形成されている(図5(b)参照)。上述の固定部材9A,9Bの材質は、第2の実施の形態に使用する固定部材8A,8Bと同様である。
【0039】
上記固定部材9A,9Bの幅は、特に制約される必要はないが、本発明による作用効果をより良く発揮させる観点から、ケースの一辺の長さL2(図4(a)参照)の1/5以上とすることが好ましく、より好ましくは1/3以上である。
【0040】
すなわち、本実施の形態のマスクブランク収納ケースによれば、内部にマスクブランクを収納して、ケース本体5に蓋体6を被せた状態で、固定部材9Aと9Bをそれぞれ交差させて蓋体6の上部から四方に被せて、当該固定部材9A,9Bの両端部9a,9bをそれぞれケース本体5の前記係合凸部53〜56に係合させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定する。これによって、ケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5と蓋体6との接合部(合わせ部)の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように前記蓋体と前記ケース本体とを固定することができるため、ケース内に収納されたマスクブランクを均一な固定荷重できちっと固定でき、例えば輸送、搬送中の振動によっても収納ケース内のマスクブランクとそれを支持しているプラスチックパーツとの擦れによるパーティクルの発生を抑制し、マスクブランクへのパーティクル付着を防止することができる。また、蓋体とケース本体との接合部の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように固定できるため、ケースの気密性を向上させることができ、不安定な外気の進入を防ぐことができる。
【0041】
また、本実施の形態においても、上記固定部材9A,9Bによって蓋体6とケース本体5を固定する際、固定部材9A,9Bによって蓋体6の外周面61を押し付け、内部の前記弾性体7をつぶして、ケース内の密閉状態をより高めることができる。この場合、本実施の形態の収納ケースでは、蓋体6とケース本体5との接合部の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように固定できるため、前記弾性体7を用いてケースの気密性をより一層高めることができる。
【0042】
したがって、本実施の形態においても、特に清浄な雰囲気で保管される必要がある化学増幅型レジスト膜を形成したマスクブランクの収納に好適である。
なお、上記固定部材9A,9Bの両端部にそれぞれ、ケース本体5の係合凸部53〜56と嵌合できるような例えば凹部を設けておき、当該固定部材9A,9Bの両端部をそれぞれケース本体5の係合凸部53〜56に係合させるようにしてもよい。
また、本実施の形態において、2つの固定部材を使用して収納ケースの四方を固定するのを、固定部材の幅L1を大きくして1つの固定部材のみで収納ケースの二方を固定しても、ケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5と蓋体6との接合部の全周にわたってほぼ均一に固定荷重がかかるように蓋体とケース本体とを固定することができる。
【0043】
[第4の実施の形態]
図6は本発明の収納ケースの第4の実施の形態を示す、(a)固定部材で固定した状態の平面図、(b)固定部材で固定した状態の側面図である。
本実施の形態による収納ケースは、収納ケースの1辺あたり複数箇所に固定部材を被せることにより、収納ケースの蓋体とケース本体の接合部の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように固定する。すなわち、例えば前述の第2の実施の形態に使用した固定部材8A,8Bと同様の形状であって、これよりも幅の狭い、例えばケースの一辺の長さの1/10〜1/5程度の幅を有する固定部材12A,12B,12C,12Dを使用し、このうちの固定部材12Aと12Bをケースの一方側の左右に、固定部材12Cと12Dをケースの他方側の左右に、それぞれ交差させて蓋体6の上部から四方に被せることにより、蓋体6とケース本体5とを固定する。このような本実施の形態においても、ケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5と蓋体6との接合部(合わせ部)の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように前記蓋体と前記ケース本体とを固定することができるため、ケース内に収納されたマスクブランクを均一な固定荷重できちっと固定でき、例えば輸送、搬送中の振動によっても収納ケース内のマスクブランクとそれを支持しているプラスチックパーツとの擦れによるパーティクルの発生を抑制し、マスクブランクへのパーティクル付着を防止することができる。また、蓋体とケース本体との接合部の全周にわたって均一に固定荷重がかかるように固定できるため、ケースの気密性を向上させることができ、不安定な外気の進入を防ぐことができる。
【0044】
なお、上記固定部材12A〜12Dは、前述の第3の実施の形態に使用した固定部材9A,9Bと同様の形状であって、同様のケース本体との係合方法としてもよい。また、図6には、収納ケースの1辺あたり2箇所に固定部材を被せる態様を示したが、収納ケースのサイズによっては、収納ケースの1辺あたり2箇所より多い複数箇所に幅狭の固定部材を被せるようにしてもよい。
【0045】
また、上述した第2乃至第4の実施の形態においては、いずれも蓋体6の上部から被せる固定部材をケース本体5と係合させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定するようにしているが、これに限らず、たとえば蓋体6の上方側から被せる上部固定部材と、ケース本体5の下方側から被せる下部固定部材同士を係合(あるいは嵌合)させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定するようにしてもよい。また、蓋体6と、ケース本体5の下部から被せる固定部材とを係合させることにより、蓋体6とケース本体5とを固定するようにしてもよい。また、このような実施の形態においても、2つの固定部材を使用して収納ケースの四方を固定するのを、固定部材の幅を大きくして1つの固定部材のみで収納ケースの二方を固定しても、ケース本体5に蓋体6を被せたときのケース本体5と蓋体6との接合部の全周にわたってほぼ均一に固定荷重がかかるように蓋体とケース本体とを固定することができる。
【0046】
以下、具体的な実施例により本発明を説明する。
(実施例1)
合成石英基板(6インチ×6インチの大きさ)上にスパッタ法で、表層に反射防止機能を有するクロム膜(遮光膜)を形成し、その上にスピンコート法でポジ型の化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜を形成してレジスト膜付きマスクブランクを製造した。
このようにして製造した25枚のマスクブランクを、1ケースに5枚収納し、計5ケースを用意した。収納ケースとして、前述の図1乃至図3に示す第1の実施の形態に係る収納ケースを用いた。なお、蓋体の材質は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ケース本体の材質はポリプリピレン、中ケースの材質はポリプロピレンを用いた。また、固定部材である固定用枠及び固定片の材質はポリエチレンを用いた。収納作業はクリーンルーム内で行った。
【0047】
このマスクブランクを収納した収納ケース(マスクブランク収納体)をさらにダンボールで梱包し、以下の振動試験を行った。
すなわち、梱包した収納ケースを、まず輸送(自家用車で一般道を約40km走行)した後、室内で、米軍規格MIL(Military Specifications and Military Standards)のMIL-STD-810Dに準拠した振動加速処理を行った。この際の振動条件は一般車両環境を想定して設定した。その後、再び上記と同様の輸送を行った。
【0048】
そして、振動試験後、同じくクリーンルーム内で収納ケースを開封し、収納ケースからマスクブランクを取り出し、欠陥検査装置(レーザーテック社製:M2350)を用いて、マスクブランク主表面上の付着異物による欠陥(90μm以上の大きさの欠陥)個数を測定した。なお、評価は、収納ケースに収納する前の欠陥個数を予め上記と同様に測定しておき、これに対する振動試験後の欠陥個数の増加個数で行った。その結果、本実施例では、増加欠陥個数は、収納ケースのほぼ中央の位置に収納したマスクブランクでは平均して1.8個、収納ケースの端の位置に収納したマスクブランクでは平均して1.2個であり、ケース内部に収納されたマスクブランクを輸送、搬送中でもきちっと固定し、パーティクル発生を抑えることが可能である。
【0049】
また、上記の振動試験後の収納ケースから取り出したマスクブランクに所定の電子線描画を行い、続いて所定の現像、エッチングを行って、転写マスクを作製した。形成した遮光膜のパターンのCDエラー(設計線幅に対する実測線幅のずれ)は5nm以下と小さく、化学増幅型レジストを用いて、高精度の微細パターンを形成できた。
【0050】
(実施例2)
本実施例では、実施例1と同様に製造したマスクブランクを収納するケースとして、前述の図4に示す第2の実施の形態に係る収納ケースを用いたこと以外は実施例1と同様にしてマスクブランクの収納を行った。なお、固定部材の材質はポリエチレンを用いた。
【0051】
このマスクブランクを収納した収納ケース(マスクブランク収納体)を梱包して、実施例1と同様の振動試験を行った。
そして、実施例1と同様に、収納ケースに収納する前の欠陥個数に対する振動試験後の欠陥個数の増加個数を測定した。その結果、本実施例では、増加欠陥個数は、収納ケースのほぼ中央の位置に収納したマスクブランクでは平均して1.8個、収納ケースの端の位置に収納したマスクブランクでは平均して1.2個であり、ケース内部に収納されたマスクブランクを輸送、搬送中でもきちっと固定し、パーティクル発生を抑えることが可能である。
【0052】
また、上記の振動試験後の収納ケースから取り出したマスクブランクを用いて、実施例1と同様に転写マスクを作製した。形成した遮光膜のパターンのCDエラー(設計線幅に対する実測線幅のずれ)は5nm以下と小さく、化学増幅型レジストを用いて、高精度の微細パターンを形成できた。
【0053】
(比較例)
実施例1と同様に製造したマスクブランクを収納するケースとして、前述の図7乃至図9に示す従来構造の収納ケースを用いたこと以外は実施例1と同様にしてマスクブランクの収納を行った。なお、収納ケースの蓋、中ケース、ケース本体の各材質は、実施例1の収納ケースと同様のものを用いた。
【0054】
このマスクブランクを収納した収納ケース(マスクブランク収納体)を梱包して、実施例1と同様の振動試験を行った。
そして、実施例1と同様に、収納ケースに収納する前の欠陥個数に対する振動試験後の欠陥個数の増加個数を測定した。その結果、本比較例では、増加欠陥個数は、収納ケースのほぼ中央の位置に収納したマスクブランクでは平均して2.0個、収納ケースの端の位置に収納したマスクブランクでは平均して11.2個であり、特に収納ケースの端の位置に収納したマスクブランクの欠陥個数が非常に多かった。これは、従来構造の収納ケースの場合、フック構造による固定位置から離れたケースの端の箇所ではマスクブランクに対する固定荷重が弱くなり、擦れによるパーティクル発生が要因であると考えられる。
【0055】
また、上記の振動試験後、収納ケースの中央の位置から取り出したマスクブランクを用いて、実施例1と同様に転写マスクを作製した。形成した遮光膜のパターンのCDエラー(設計線幅に対する実測線幅のずれ)は10nmと大きかった。これは、従来構造の収納ケースの場合、気密性が不十分で、輸送中に外気が収納ケースの接合部からケース内に進入し、何らかの化学成分等によって化学増幅型レジストが汚染されたことが原因であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る収納ケースの第1の実施の形態で用いる固定部材を示すもので、(a)と(b)はそれぞれ固定用枠の平面図と側面図、(c)と(d)はそれぞれ固定片の平面図と側面図である。
【図2】(a)と(b)はそれぞれ上記固定部材で固定する前の状態の収納ケースの側面図である。
【図3】上記固定部材で固定した状態の収納ケースの側面図である。
【図4】本発明の収納ケースの第2の実施の形態を示す、(a)固定部材で固定した状態の平面図、(b)固定部材で固定する前の状態の側面図、(c)固定部材で固定した状態の側面図である。
【図5】本発明の収納ケースの第3の実施の形態を示す、(a)固定部材で固定した状態の平面図、(b)固定部材で固定する前の状態の側面図、(c)固定部材で固定した状態の側面図である。
【図6】本発明の収納ケースの第4の実施の形態を示す、(a)固定部材で固定した状態の平面図、(b)固定部材で固定した状態の側面図である。
【図7】従来構造の収納ケースの蓋を示す斜視図である。
【図8】マスクブランクを中ケースに収納する状態を示す斜視図である。
【図9】従来構造の収納ケースのケース本体(外ケース)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 マスクブランク
2 中ケース
3 ケース本体
4 蓋
5 ケース本体
6 蓋体
7 弾性体
8A,8B,9A,9B 固定部材
10 固定用枠
11 固定片
12A,12B,12C,12D 固定部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口したケース本体と、該ケース本体に被せる蓋体とを備えて、内部にマスクブランクを収納するマスクブランクの収納ケースであって、該収納ケースと係合させる固定部材によって、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部の全周にわたって均一又はほぼ均一に固定荷重がかかるように前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とするマスクブランク収納ケース。
【請求項2】
前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部の全周にわたって囲繞する固定部材を係合させることにより、前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク収納ケース。
【請求項3】
前記ケース本体に前記蓋体を被せたときの収納ケースの四方に固定部材を被せることにより、前記蓋体と前記ケース本体とを固定することを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク収納ケース。
【請求項4】
前記収納ケースの1辺あたり複数箇所に前記固定部材を被せることを特徴とする請求項3に記載のマスクブランク収納ケース。
【請求項5】
前記ケース本体の開口縁部又は前記蓋体の下縁部の少なくとも一方に弾性体を周設し、前記ケース本体に前記蓋体を被せたときのケース本体の開口縁部と蓋体の下縁部との接合部に前記弾性体を介在させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のマスクブランク収納ケース。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一に記載のマスクブランク収納ケースに、レジスト膜を有するマスクブランクを収納することを特徴とするマスクブランクの収納方法。
【請求項7】
前記レジストは、化学増幅型レジストであることを特徴とする請求項6に記載のマスクブランクの収納方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の収納方法によりマスクブランクが収納されたことを特徴とするマスクブランク収納体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−161216(P2009−161216A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341532(P2007−341532)
【出願日】平成19年12月29日(2007.12.29)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】