説明

マスクブランク用基板の製造方法、およびマスクブランクの製造方法

【課題】マスクブランクの製造過程で発生する欠陥を容易かつ確実に検出することができるマスクブランク用基板の製造方法、およびマスクブランクの製造方法を提供すること。
【解決手段】マスクブランクの製造工程では、検査対象品に検査光を照射した際の反射光を光電変換装置59で受光して電気信号に変換し、電気信号を検査対象品表面における位置情報と対応付けてデータ記憶部に記憶する信号取得工程を行う。次に、第1基準値以上の欠陥の有無を判定して検査対象品の良品判定を行う第1判定工程を行い、良品と判定された検査対象品に対して、第1基準値よりも小さい第2基準値以上の微小欠陥の有無を判定する第2判定工程を行う。最後に、検出された微小欠陥同士の距離関係や位置関係から近接する微小欠陥集合体の有無を判定し、微小欠陥集合体として判定されたものが第1基準値以上であるかを基準に検査対象品の良品判定を行う第3判定工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク用基板の製造方法、および基板上に1層乃至複数層のパターン形成用薄膜が形成されたマスクブランクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体LSIなどの製造に用いられる露光マスクは、基板上に1層乃至複数層のパターン形成用薄膜が形成されたマスクブランクに対して電子線などで描画を行なうことにより製造される。従って、マスクブランクの段階で基板の主表面、あるいはパターン形成用薄膜の表面に凹部や凸部からなる欠陥が存在すると、露光精度の高い露光マスクを得ることができない。そこで、マスクブランクを製造するにあたっては、マスクブランク用基板の主表面、あるいはパターン形成用薄膜の表面に欠陥が存在するか否かの検査が行なわれる。
【0003】
かかる検査に用いられる装置としては、各種のものが提案されているが、位相シフト法を利用したものでは、光ビーム(検査光)を干渉光学系により互いに干渉性を有する2本のサブビームに変換し、検査対象品(マスクブランク用基板、マスクブランク等)の表面に向けて照射する。検査対象品の表面に欠陥が存在する場合、2本のサブビーム間には欠陥の高さに相当する位相差が導入される。従って、検査対象品の表面からの反射光を合成すれば、合成したビームには欠陥の高さに相当する位相差が含まれるので、合成した光を光電変換装置により電気信号に変換した後、この電気信号に信号処理を行なえば、基準値以上のサイズの欠陥があるか否かを検査することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−27611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、欠陥検査装置の場合、図3(a)に矢印で示すように、検査対象品の表面の第1方向に走査するステップを第1方向に直交する第2方向に向かって繰り返し行い、第1方向の1回分の走査により得られる電気信号に基づいて、基準値以上のサイズの欠陥の有無を検査するため、検査の精度が低いという問題点がある。すなわち、欠陥検査装置の場合、図3(b)に示すような点状の大きな欠陥110であれば確実に検出できるが、図3(c)に示すように、第2方向に向かって延在し、第1方向のサイズが小さい欠陥110の場合、良品判定になる場合が多い。また、図3(d)に示すような点状の欠陥120が第2方向に向かって点在し、欠陥一つ当たりのサイズが小さい微小欠陥である場合、良品判定になってしまう。このような微小欠陥が隣接して点在している場合、実際には連続した1つの欠陥であっても、検査精度が低いことに起因して微小欠陥が点在しているように検出されている可能性が高く、本来、良品判定とすべきではない。特に、図3(e)に示すように、点状の欠陥120が斜め方向(特に、第1方向と第2方向の中間の傾斜角である45度の方向)に向かって点在して延びている場合は、特に連続した1つの欠陥である可能性が高く、良品判定とすべきではない。
【0006】
一方、位相差を有する2つのサブビームを用いる位相シフト法による検査方法であることから、2つのサブビームが並列する方向(第1方向)には一度に検査光を照射することはできない。また、装置の構造上、コスト上等の理由から、第2方向に一度に検査光を照射するような欠陥検査装置を作ることは難しい。単一の照射装置で、第1方向を走査するステップと、検査光を第2方向に移動するステップを繰り返して、検査対象物の表面全体に検査光を照射した場合、ステップ毎の第2方向への移動を検査光が照射されない部分が生じないような移動量に設定しても、第1方向に比べて、第2方向の検査光の照射量に不均一が生じやすく、第2方向の検査感度が不均一になりやすいという問題があった。さらに、第2方向の検査光の照射量の不均一性を解消するために、第2方向に並列に検査光の照射装置を複数配置した場合であっても、照射装置間で検査光の照射量の不均一が生じる場合があり、問題となっていた。さらに、この場合であっても、構造上やコスト上の理由から、検査対象物の第2方向全体を一度に検査光が照射するように多数の照射装置を配置することは困難であることから、検査光の第2方向への移動ステップが発生してしまい、単一の照射装置の場合と同様の問題が生じる恐れがあった。
【0007】
これらの理由から照射装置の検査光の光量にばらつきが生じた場合、反射光量にばらつきが生じ、光電変換装置で変換される電気信号強度にもばらつきが生じてしまい、これらの結果、欠陥検出感度が変わってしまうという問題があった。
【0008】
これらの問題の解決手段として、単純に欠陥検出感度を上げる方法、すなわち、良品判定の基準の欠陥サイズの閾値を小さくする方法が考えられるが、今度は、本来、マスクブランク用ガラス基板、マスクブランクとして使用するのには実用上問題ない程度の微小欠陥であっても不良品として判定されてしまい、歩留りが大幅に悪化してしまうという大きな問題が生じてしまう。さらに、欠陥検査装置での検査で良品と判定されたものを作業者が目視で再検査する方法が考えられるが、かかる目視検査を行なうには相当の熟練を必要とするとともに、かかる熟練を有するものであっても誤判定を避けることができないという問題点がある。
【0009】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、マスクブランクの製造過程で発生する欠陥を容易かつ確実に検出することができるマスクブランク用基板の製造方法、およびマスクブランクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、基板主表面の凹部または凸部からなる欠陥を検査する検査工程を有するマスクブランク用基板の製造方法において、前記検査工程は、前記基板主表面に検査光を照射した際の反射光を光電変換装置で受光して電気信号に変換し、該電気信号を前記基板主表面における位置情報と対応付けてデータ記憶部に記憶する信号取得工程と、前記電気信号に対する信号処理により、第1基準値以上のサイズである欠陥の有無を判定する第1判定工程と、前記電気信号に対する信号処理により、前記第1基準値よりも小さく第2基準値以上のサイズである微小欠陥の有無を判定する第2判定工程と、前記基板主表面で近接する複数の微小欠陥からなる微小欠陥集合体の有無を判定し、前記第1基準値以上のサイズである微小欠陥集合体の有無を判定する第3判定工程とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、基板上に形成されたパターン形成用薄膜の凹部または凸部からなる欠陥を検査する検査工程を有するマスクブランクの製造方法において、前記検査工程は、前記パターン形成用薄膜表面に検査光を照射した際の反射光を光電変換装置で受光して電気信号に変換し、該電気信号を前記パターン形成用薄膜表面における位置情報と対応付けてデータ記憶部に記憶する信号取得工程と、前記電気信号に対する信号処理により、第1基準値以上のサイズである欠陥の有無を判定する第1判定工程と、前記電気信号に対する信号処理により、前記第1基準値よりも小さく第2基準値以上のサイズである微小欠陥の有無を判定する第2判定工程と、前記パターン形成用薄膜表面で隣接する複数の微小欠陥からなる微小欠陥集合体の有無を判定し、前記第1基準値以上のサイズである微小欠陥集合体の有無を判定する第3判定工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明では、検査対象品(基板主表面、パターン形成用薄膜)の凹部または凸部からなる欠陥を検査する検査工程を有するマスクブランク用基板あるいはマスクブランクの製造方法において、その検査工程は、まず、検査対象品に検査光を照射した際の反射光を光電変換装置で受光して電気信号に変換し、該電気信号を検査対象品表面における位置情報と対応付けてデータ記憶部に記憶する信号取得工程を行う。次に、検査対象品を良否判定するための欠陥サイズの基準値を第1基準値とし、その第1基準値以上のサイズである欠陥の有無を判定し、検査対象品の良品判定を行う。さらに、良品と判定された検査対象品に対して、第1基準値よりも小さい第2基準値(例えば、欠陥検査装置の欠陥検出限界値等)以上の微小欠陥の有無を判定し、検出された微小欠陥同士の距離関係や位置関係から近接する微小欠陥集合体の有無を判定する。最後に、微小欠陥集合体として判定されたものが第1基準値以上であるかを基準に検査対象品の良品判定を行う。
【0013】
このような検査工程を行うことで、欠陥検査感度を上げることなく、目視検査に頼ることなく、検査光の照射量の不均一性に起因する欠陥検出感度のばらつきの影響を受けることなく、第1基準値以上の欠陥を有する不良品を確実に排除することができる。
【0014】
本発明では、前記第3判定工程において、信号取得工程でデータ記憶部に記憶した情報を基に、微小欠陥を含む所定範囲の検査対象品(基板主表面、パターン形成用薄膜)の拡大画像を作成し、その拡大画像から微小欠陥集合体の有無を判定することが好ましい。このように構成すると、作業員が目視では発見が困難であった微小欠陥集合体の有無を容易判定することができ、検査の熟練者でなくとも確実に判定が可能であり、検査の熟練者であればより確実に判定ができるようになる。また、コンピュータを用いた画像処理によって第1基準値以上のサイズの微小欠陥集合体の有無を自動的に検出することも可能となる。
【0015】
本発明において、前記信号取得工程では、前記検査対象品の表面で隣接する2個所に2種類の偏光光を前記検査光として照射し、当該2種類の偏光光の前記検査対象品からの反射光を微分干渉観察用の複屈折プリズムにより合成した光を前記光電変換装置により電気信号に変換することが好ましい。
【0016】
本発明において、前記第1判定工程では、例えば、前記検査対象品の表面の第1方向へ走査するステップを当該第1方向に直交する第2方向に向かって繰り返し行い、前記第1方向の1回分の走査により得られる電気信号に基づいて、前記第1基準値以上のサイズの欠陥の有無を検査する。このような構成の場合に対して、本発明は非常に有効に作用し、第2方向全体に検査光の照射・受光装置を並列に配置した大掛かりな欠陥検査装置を用いずとも、確実に第1基準値以上の欠陥を判定することができる。
【0017】
本発明において、前記検査対象品は、例えば、前記基板上に前記パターン形成用薄膜が形成されてなる。
【0018】
本発明は、前記検査対象品が、前記基板上に前記パターン形成用薄膜としてハーフトーン位相シフト膜が形成されてなる場合に適用すると特に効果的である。特にハーフトーン位相シフトマスクの場合は、露光光の波長の位相を所定量シフトさせる機能と、露光光を所定透過率で透過させる機能が膜面全体で均一である必要があるため、欠陥への良否判定基準が特に厳しい。特に露光光の波長が短波長化されるに伴って、欠陥に対して許容されるサイズが厳しくなっている。本発明に係る検査方法によれば、かかる厳しい要求にも十分対応できる検査を行なうことができる。また、ハーフトーン位相シフト膜は、透光性を備えているため、目視による検査が特に難しいが、本発明によって欠陥を確実に検査することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、検査対象品(基板主表面、パターン形成用薄膜)の凹部または凸部からなる欠陥を検査する検査工程を有するマスクブランク用基板あるいはマスクブランクの製造方法において、その検査工程は、まず、検査対象品に検査光を照射した際の反射光を光電変換装置で受光して電気信号に変換し、該電気信号を検査対象品における位置情報と対応付けてデータ記憶部に記憶する信号取得工程を行う。次に、検査対象品を良否判定するための欠陥サイズの基準値を第1基準値とし、その第1基準値以上のサイズである欠陥の有無を判定し、検査対象品の良品判定を行う。さらに、良品と判定された検査対象品に対して、第1基準値よりも小さい第2基準値(例えば、欠陥検査装置の欠陥検出限界値等)以上の微小欠陥の有無を判定し、検出された微小欠陥同士の距離関係や位置関係から近接する微小欠陥集合体の有無を判定する。最後に、微小欠陥集合体として判定されたものが第1基準値以上であるかを基準に検査対象品の良品判定を行う。このような検査工程を行うことで、欠陥検査感度を上げなくとも、第1基準値以上の欠陥を有する不良品を確実に排除することができ、欠陥検査感度を上げることによる歩留りの大幅な低下を回避することができる。また、作業員による検査対象品に対する直接の目視検査に頼る必要がない。さらに、検査光の照射量の不均一性に起因する欠陥検出感度のばらつきの影響を受けることなく、第1基準値以上の欠陥を有する不良品を確実に排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用したマスクブランクの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明を適用したマスクブランクの製造方法で行なう検査工程の説明図である。
【図3】(a)は、図2に示す検査工程において、観察対象品の表面を走査しながら表面全体を検査する様子を示す説明図であり、(b)〜(e)は、欠陥の各種形態を示す説明図である。
【図4】本発明を適用したマスクブランクの製造方法で行なう検査工程において、第2判定工程で表示装置に欠陥を画像表示した様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
[全体構成]
図1は、本発明を適用したマスクブランクの製造方法を示すフローチャートである。図1において、点線で分割された上中下の三段のうち、下段は工程の流れを示し、中段は各工程に対応した製造過程のマスクブランクを示し、上段は検査工程で生成される膜情報を示す。図1に示すように、本発明を適用したマスクブランクの製造方法では、ガラス基板(マスクブランク用基板)10に、パターン形成用薄膜として1次膜11および2次膜12を形成し、さらにレジスト膜17を形成してマスクブランク100を製造するとともに、製造したマスクブランク100を収納ケース20に収納して出荷する。かかる工程と並行して膜情報取得処理が行なわれ、ガラス基板10の状態、1次膜11、2次膜12およびレジスト膜17を各々形成する毎に表面の検査を行ってその結果に応じた基板情報、1次膜膜情報、2次膜膜情報、およびレジスト膜膜情報をホストコンピュータ80に登録する。ホストコンピュータ80は、これらの情報をまとめてマスクブランク膜情報を生成して蓄積し、外部からの要求に応じて蓄積したマスクブランク膜情報を紙・電子媒体・通信回線等に出力する。
【0023】
以下、下段の工程の流れに沿って説明する。なお、本発明は、各種のマスクブランク100の製造に適用できるが、以下の説明では、遮光帯形成用の遮光膜を上層に有するハーフトーン型位相シフトマスク用のマスクブランク100を製造する場合を例示する。
【0024】
(1)基板加工工程および基板検査工程ST21
まず、ノッチマーク1が形成された合成石英基板等のガラス基板10を準備する。ノッチマーク1は形状によって基板の硝種を示している。次に、ガラス基板10の表面を研削・研磨加工し、所望の表面粗さと平坦度に仕上げる。研磨工程で使用した研磨剤を除去するためにガラス基板10を洗浄した後、ガラス基板10の表面の欠陥を検査する欠陥検査装置に搬入し、ガラス基板10の表面に欠陥があるか否かの基板検査工程ST21を行なう。
【0025】
基板検査工程ST21において良品と判定されたガラス基板10については、IDタグがついた流通ケース(図示せず)に収納する。流通ケースにはノッチマーク1を基準にガラス基板10の方向を揃えて収納されている。なお、基板検査工程ST21で検出されたノッチマーク1を基準とした欠陥の位置情報、欠陥サイズ、欠陥の種類(凹部欠陥、凸部欠陥)については、管理番号毎にホストコンピュータ80に保存される。ここで取得した情報を基板情報と呼ぶ。
【0026】
(2)1次膜成膜工程
生産管理を行うホストコンピュータ80を使用し、流通ケースに添付したIDタグに、各基板を管理する管理番号を付与する。ホストコンピュータ80は、製造工程の順序、製造条件の設定、各製造工程の情報を収集して記録・保存する。流通ケース内に収納されたガラス基板10を枚葉式スパッタリング装置に搬入して、ノッチマーク1が形成されている側と反対側に、1次膜11であるMoSiN(モリブデンシリサイド窒化物)ハーフトーン膜を反応性スパッタリングにより成膜する。この時、基板保持具によりMoSiN膜が形成されない箇所に膜マーク3が形成される。そして、1次膜11付きのガラス基板10を別の流通ケースに収納する。これと共に、1次膜成膜終了の情報がホストコンピュータ80に保存される。流通ケースの添付のIDタグに管理番号が転送される。流通ケースにはノッチマーク1(又は膜マーク3)を基準にガラス基板10の方向を揃えて収納される。
【0027】
本形態では、1次膜11(ハーフトーン材料膜)として、単層のMoSiN膜を用いたが、MoSiNに代えて、モリブデンシリサイド酸化窒化物膜(MoSiON)や、モリブデンシリサイド酸化窒化炭化物膜(MoSiONC)、モリブデンシリサイド酸化炭化膜(MoSiOC)を用いてもよい。
【0028】
また、1次膜11については二層の膜で形成する場合もある。この場合、下層は、露光光に対して主に透過率を低下させる機能を有する透過率調整層であり、上層は、露光光に対して主に位相角(位相シフト量)を調整する機能を有する位相調整層である。透過率調整層としては、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ランタン、タンタル、タングステン、シリコン、ハフニウムの単体膜、合金膜、またはそれらの窒化物などを用いることができる。位相調整層としては、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素など、珪素(シリコン)を母体とした薄膜などが用いられる。
【0029】
(3)1次膜検査工程ST22
1次膜検査工程ST22では、1次膜11付きのガラス基板10を、1次膜11表面の欠陥を検査するための欠陥検査装置に搬入し、欠陥検査を行って膜情報を取得する。膜情報(膜の表面情報)として、欠陥の位置情報、欠陥のサイズ(大きさをランク別で表示)、欠陥の種類(ピンホール、パーティクル、その他)が、管理番号毎にホストコンピュータ80に保存される。ここで取得した膜情報を1次膜膜情報と呼ぶ。1次膜検査工程ST22で良品と判定された1次膜11付きのガラス基板10については、別の流通ケースに収納する。これと共に、流通ケースのIDタグに管理番号が転送される。流通ケースに、ノッチマーク1(又は膜マーク3)を基準に基板が方向を揃えて収納される。
【0030】
(4)2次膜成膜工程
1次膜11付きのガラス基板10をインライン型スパッタリング装置に搬入して、1次膜11上に2次膜12であるCr(クロム)遮光膜を反応性スパッタリングにより成膜する。この時、基板保持部によりCr膜が形成されない箇所に膜マーク6が形成される。そして、2次膜12付きのガラス基板10を別の流通ケースに収納する。これと共に、2次膜成膜終了の情報がホストコンピュータ80に保存される。流通ケースに添付のIDタグに管理番号が転送される。流通ケースには、ノッチマーク1(又は膜マーク3、6)を基準にガラス基板10の方向を揃えて収納する。
【0031】
本形態では、2次膜12としてCr遮光膜を用いたが、クロムに酸素、窒素、炭素等を含むクロム化合物、その他のクロム化合物等からなる単層または多層構造の遮光膜を用いてもよい。また、特に、DRAM hp45nm世代以降の微細パターン形成用のハーフトーン型マスクブランクを製造する場合には、Cr遮光膜についても薄膜化が必要であり、表面反射防止層、遮光層、裏面反射防止層の3層の界面が明確な積層構造を形成することが望ましいが、インライン型スパッタリング装置では3層の界面が連続的になりやすい。このような場合においては、Cr遮光膜の成膜に、積層構造の界面が明確に分けることができる枚葉型スパッタリング装置で3層を順番に成膜するとよい。この場合のCr遮光膜としては、表面反射防止層にCrOCN、遮光層にCrON、裏面反射防止層にCrOCNとすることが好ましい。各層の組成を調整することで光学特性を、表面反射光と表面反射防止層と遮光層との界面で反射する反射光との間での干渉効果、裏面反射光と裏面反射防止層と遮光層との界面で反射する反射光との間での干渉効果をともに発揮されやすいようにするとよい。
【0032】
(5)2次膜検査工程ST23
2次膜検査工程ST23では、2次膜12付きのガラス基板10を、2次膜12の欠陥を検査するための欠陥検査装置に搬入し、欠陥検査を行って膜情報(膜の表面情報)を取得する。膜情報は、欠陥の位置情報、欠陥のサイズ(大きさをランク別で表示)、欠陥の種類(ピンホール、パーティクル、その他)が、管理番号毎にホストコンピュータ80に保存される。ここで取得した膜情報を2次膜膜情報と呼ぶ。そして、2次膜検査工程ST23で良品と判定された2次膜12付きのガラス基板10については、別の流通ケースに収納する。これと共に、流通ケースに添付のIDタグに管理番号が転送される。流通ケースには、ノッチマーク1(又は膜マーク3、6)を基準にガラス基板10が方向を揃えて収納される。
【0033】
(6)レジスト成膜工程
流通ケース内に収納された2次膜12付きのガラス基板10を回転塗布装置に搬入して、2次膜12上にレジストを回転塗布法により塗布し、ベーク、冷却を経てレジスト膜17を形成する。そして、レジスト膜17付きのガラス基板10(マスクブランク100)を別の流通ケースに収納する。これと共に、レジスト膜成膜終了の情報がホストコンピュータ80に保存される。流通ケースに添付のIDタグに管理番号が転送される。流通ケースには、ノッチマーク1(又は膜マーク3、6)を基準にマスクブランクの方向を揃えて収納される。
【0034】
(7)レジスト膜検査工程ST24
レジスト膜検査工程ST24では、レジスト膜17付きのガラス基板10(マスクブランク100)を、欠陥検査装置に搬入し、欠陥検査を行って膜情報を取得する。膜情報として、欠陥の位置情報、欠陥のサイズ(大きさをランク別で表示)、欠陥の種類(ピンホール、パーティクル、その他)が管理番号毎にホストコンピュータ80に保存される。ここで取得した膜情報をレジスト膜膜情報と呼ぶ。レジスト膜検査工程ST24で良品と判定されたガラス基板10については、別の流通ケースに収納する。これと共に、流通ケースに添付のIDタグに管理番号が転送される。流通ケースには、ノッチマーク1(又は膜マーク3、6)を基準にマスクブランク100の方向を揃えて収納する。
【0035】
(8)膜情報の照合工程
基板情報、1次膜膜情報、2次膜膜情報、レジスト膜膜情報を互いに照合することにより、膜情報同士の間で方向が一致しているか確認する。具体的には、位置変化しない欠陥を基準に各膜の欠陥情報データを照合する。これは、最下層の膜である1次膜11に欠陥がある場合、1次膜11より上層の膜である2次膜12、レジスト膜17にも欠陥が生じることを利用して、1次膜膜情報を基準として他の膜情報の方向の正否を判定する。これにより、マスクブランク100の製造過程(1)〜(9)における基板の向きを一定に保ち、基板の向きと膜情報の向きとの不一致を避けると共に、膜情報同士間の向きを一致させることができ、基板の向きと全ての膜情報の向きとを一致させることができる。また、膜情報同士の一致を確認するので、仮に製造過程で基板の向きを間違って流通ケースや収納ケースに収めたとしても、それを検出することが可能である。なお、この実施の形態では、欠陥位置情報の基準点としてノッチマークや膜マークを用いたが、基板のパターン転写に影響を与えない部分の主表面に基準点マークをレーザー掘込、ダイヤモンド針による打刻、エッチング等より形成することにより、欠陥位置情報の精度が大幅に向上する。また、この実施の形態では、流通ケースにIDタグを付けることで、マスクブランク用ガラス基板の基板情報やマスクブランクの1次膜膜情報、2次膜膜情報、レジスト膜膜情報を関連付けしたが、これに代えて、基板の端面や、パターン転写に影響を与えない部分の主表面に2次元コード等の識別マークを打刻し、この識別マークと関連付けするようにしてもよい。このようにすると、より確実に関連付けができる。
【0036】
(9)ブランク梱包工程
マスクブランク100を収納ケース20に収納して梱包し、マスクメーカーに配送する。
【0037】
[検査方法]
図2は、本発明を適用したマスクブランクの製造方法で行なう検査工程の説明図である。図2(a)は、欠陥検査装置全体構成を示す説明図であり、図2(b)、(f)は欠陥の説明図、図2(c)、(g)は、欠陥を観察した際の画像の説明図、図2(d)、(h)は、欠陥を観察した際に得られる電気信号の説明図、図2(e)、(i)は、電気信号を微分した後の説明図である。図3(a)は、図2に示す検査工程において、観察対象品の表面を走査しながら表面全体を検査する様子を示す説明図であり、図3(b)〜(e)は、欠陥の各種形態を示す説明図である。図4は、本発明を適用したマスクブランクの製造方法で行なう検査工程において、第2判定工程で表示装置に欠陥を画像表示した様子を示す説明図である。
【0038】
図1を参照して説明したように、本形態では、マスクブランク100を製造するにあたって、ガラス基板10からなる検査対象品の表面、あるいはガラス基板10にパターン形成用薄膜(1次膜11、2次膜12、レジスト膜17)を形成した検査対象品の表面の欠陥を検査する検査工程ST21、ST22、ST23、ST24を行なう。本形態では、かかる検査工程ST21、ST22、ST23、ST24のうち、検査工程ST22、ST23、ST24では、図2(a)を参照して以下に説明する欠陥検査装置を利用して、信号取得工程、第1判定工程、第2判定工程および第3判定工程を行う。以下、ガラス基板10に1次膜11を形成したものを検査対象品とする検査工程ST22を例に説明する。
【0039】
(信号取得工程)
図2(a)に示す欠陥検査装置は、光学系50と処理装置60とを備えており、光学系50は、光源51から、検査対象である1次膜11付きのガラス基板10(検査対象品)の表面に向かう往路上に、偏光ビームスプリッタ52、偏光子53、ウォランストン・プリズムからなる複屈折プリズム54(微分干渉観察用の複屈折プリズム)、1/4波長板55および対物レンズ56が配置されている。複屈折プリズム54は、入射光の偏光方向に対して45°で交差する光学軸を有している。1次膜11付きのガラス基板10の表面から光電変換装置59に向かう復路は、対物レンズ56から偏光ビームスプリッタ52までを往路との共通光路としており、偏光ビームスプリッタ52から光電変換装置59の間にはコリメートレンズ57、およびファイバーアレイ58を備えている。このため、光源51から出射された光のうち、p偏光の光が偏光ビームスプリッタ52および偏光子53を通過した後、複屈折プリズム54に到達し、複屈折プリズム54からは、p偏光の光とs偏光の光が、互いずれた2つの光路をもって出射される。かかるp偏光の光とs偏光の光は、1/4波長板55によって逆向きの円偏光の光に変換された後、1次膜11付きのガラス基板10の表面に到達する。ここで、1次膜11の表面に欠陥110(凹部111あるいは凸部112)があると、経路長の差異から位相差が生じる。
【0040】
そして、1次膜11の表面で反射した光が再び、対物レンズ56および1/4波長板55を通過した後、複屈折プリズム54で合成され、その後、偏光子53、偏光ビームスプリッタ52、コリメートレンズ57、およびファイバーアレイ58を経由して、光電変換装置59に入射すると、光電変換装置59では、反射光が電気信号に変換される。かかる電気信号は、処理装置60に出力される。
【0041】
処理装置60は、装置本体、表示装置64、およびキーボードなどの入力装置などを備えており、予め、プログラム記憶部に格納されているプログラムに基づいて動作する。処理装置60において、装置本体には、光電変換装置59から出力された電気信号の信号処理を行なうデータ処理部63、光電変換装置59から出力された電気信号を記憶しておくデータ記憶部62、および表示装置64での表示動作を制御する表示制御部61などが構成されている。
【0042】
このように構成した欠陥検査装置において、1次膜11の表面で反射した光が複屈折プリズム54で合成されると、干渉が起こる。その際、増加的干渉が起こった部分は明るく、逆に減殺的干渉が生じた部分は暗く落ち込む。また、検査対象品の表面全体の検査は、図3(a)に示すように、第1方向への走査を第1方向に直交する第2方向に向かって繰り返し行う。このため、欠陥110が、図2(b)で示す凹部111である場合、光電変換装置59に届く反射光は、欠陥110(凹部111)を、図2(c)に示すように、例えば、右側が明るく左側が暗い画像で形成する。その際、光電変換装置59において、反射光を電気信号に変換すると、電気信号Vsは、図2(d)に示す波形となる。これに対して、欠陥110が、図2(f)で示す凸部112である場合、光電変換装置59に届く反射光は、欠陥110(凸部112)を、図2(g)に示すように、例えば、右側が暗く左側が明るい画像で形成する。その際、光電変換装置59において、反射光を電気信号に変換すると、電気信号Vsは、図2(h)に示す波形となる。
【0043】
このような構成の欠陥検査装置を用いて、検査対象品であるマスクブランクの1次膜11の表面に対して検査光を照射し、1次膜11で反射された反射光を光電変換装置59で受光して電気信号Vsに変換し、その電気信号Vsを1次膜表面における位置情報(ここでは、これに代えて、位置情報に変換可能である検査開始からの時間情報を用いている。)とともにデータ記憶部62に記憶する。この反射光の電気信号Vsの取得および1次膜表面における位置情報とともにデータ記憶部62に記憶する一連の工程を、図3(a)に示すように、第1方向に対して走査しながら行い、そのステップを第2方向に向かって、検査しない部分が生じないような所定ピッチで繰り返し行う。これにより、検査対象品の検査すべき領域全体の反射光の電気信号Vsをその1次膜表面における位置情報とともにデータ記憶部62に記憶することができる。
【0044】
(第1判定工程)
第1判定工程では、データ記憶部62に記憶した反射光の電気信号Vsのデータを基に、データ処理部63において信号処理を行い、第1基準値以上のサイズの欠陥の有無について判定を行う。
【0045】
データ処理部63が第1判定工程を行なう際の処理は以下の通りである。まず、データ処理部63は、図2(d)、(h)に示す波形の電気信号Vsに微分処理を行い、図2(e)、(i)に示す波形の信号Vtを得た後、この波形に含まれる3つパルスの2つのパルスVpの間隔Sを計測する。かかるパルスVpの間隔は、欠陥110(凹部111および凸部112)の第1方向のサイズに相当する。次に、データ処理部63は、今回検査した検査対象品に、サイズが第1基準値、例えば、サイズが0.5μmよりも大きい欠陥110があるか否かを判定する。ここで、データ処理部63は、上記の欠陥110があると判定した場合、今回検査した検査対象品を不具合品と判定し、後工程への搬送を禁止する。また、データ処理部63が検査すべき領域に第1基準値以上の欠陥110がないと判定した場合、第2判定工程が行われる。
【0046】
(第2判定工程)
第2判定工程では、第1判定工程で行われた電気信号Vsに対する信号処理の結果をもとに、データ処理部63が検査対象品の検査すべき領域に対し、第1方向におけるサイズが第2基準値以上の微小欠陥120の有無を判定する。ここでの第2基準値は、欠陥検査装置の欠陥検出限界値としている。これは、欠陥検出限界値未満の場合、ノイズ等の電気信号エラーである場合は非常に高いことや、欠陥検出限界値未満の微小欠陥120が実際にあったとしても、良品と判定しても製品上問題がないためである。
【0047】
この第2判定工程において、データ処理部63が検査すべき領域に、第2基準値以上のサイズの微小欠陥120がない検査対象品は良品として後工程に搬送される。また、データ処理部63が、第2基準値以上のサイズの微小欠陥120を検出した場合、その全ての微小欠陥120のサイズおよび位置を、電気信号Vsとともに、データ記憶部62に記憶した後、次の第3判定工程を実施する。
【0048】
(第3判定工程)
第3判定工程では、第2判定工程で検出された微小欠陥120が、近接する他の微小欠陥120とともに微小欠陥集合体130を形成していないかを判定し、微小欠陥集合体がある場合は、そのサイズが第1基準値よりも大きいものがあるかを判定する。
【0049】
最初に、図3(c)に示すような第2方向に連続する第1基準値(0.5μm)よりも大きいサイズの欠陥110の有無を判定する。データ処理部では、ある微小欠陥120について、その位置から第2方向で直近する位置について微小欠陥120の有無を判定し、その位置に微小欠陥120が検出されている場合には、その微小欠陥120から第2方向に直近する位置で微小欠陥120の有無を判定する。このような判定を繰り返すことで、これらの微小欠陥120が第2方向に分割されて微小欠陥として判定されていた第2方向に連続する欠陥110(微小欠陥集合体でもある)であることを判定できる。そして、この欠陥110のサイズが第1基準値よりも大きい場合においては、今回検査した検査対象品を不具合品と判定し、後工程への搬送を禁止する。
【0050】
次に、図3(d)および(e)に示すような、不連続であるが第1基準値(0.5μm)よりも大きいサイズの微小欠陥集合体130の有無を判定する。ここでは、検査対象品の表面の画像を、データ記憶部62に記憶されている電気信号Vsに基づいて表示し、この画像に基づいて、第1基準値以上の微小欠陥集合体130の有無を判定する。図2(c)、(d)を参照して説明したように、信号取得工程における信号取得時に、検出された微小欠陥120が凹部121(図2の凹部111に該当)か凸部122(図2の凸部112に該当)かが分るので、図4に示すように、表示装置64の左側領域に微小欠陥120の分布を簡易表示するようになっている。微小欠陥120が凹部121であれば、例えば、▽のマークで示し、微小欠陥120が凸部122であれば、例えば、△のマークで示すなど、凹部121と凸部122とを異なるマークで表示する。
【0051】
ここで、第3判定工程を行う作業者が、表示装置64を見て▽のマークを選択する(例えば、左側領域の右上の丸で囲った部分)と、その凹部121を含む所定範囲の詳細な微分干渉画像である拡大画像が表示装置64の右側領域に表示される。作業者は、その拡大画像に凹部121に近接した別の凹部がないか、また凹部121がある場合には、その位置関係から、これらの複数の凹部121が微小欠陥集合体130を形成しているか(図3(d)や(e)のような凹部121の位置関係に1つの欠陥が検査精度等の問題から別々の微小欠陥120として検出されていないかどうか)を判定する。そして、拡大画像に表示されている複数の凹部121が微小欠陥集合体130と判定した場合であって、その微小欠陥集合体130のサイズが、第1基準値である0.5μmよりも大きい場合には、今回検査した検査対象品を不具合品と判定し、後工程への搬送を禁止する。また、全ての▽のマークの拡大画像を見て、微小欠陥集合体130がないと判定された場合、あるいは微小欠陥集合体130があってもサイズが第1基準値以下であると判定された場合には、良品として、次工程(2次膜成膜工程)に搬送することを許可する。以上のデータの全てあるいは一部は、1次膜膜情報として、図1を参照して説明したホストコンピュータ80に保存される。
【0052】
なお、この実施の形態の第3判定工程では、微分干渉画像の拡大画像を作業者が目視で判定したが、これに限らず、拡大画像をコンピュータで画像処理を行い、微小欠陥120の位置関係を認識させ、ファジー理論やニューラルネットワーク理論等を利用して、微小欠陥集合体130の有無を自動的に検出させ、その微小欠陥集合体130のサイズが第1基準値よりも大きいか否かを判定させるようにしてもよい。
【0053】
(他の検査工程への適用)
上記説明は、1次膜11付きのマスクブランク用のガラス基板10を検査対象品とし、1次膜11の表面の検査工程ST22において、信号取得工程、第1判定工程、第2判定工程および第3判定工程を行なった例であるが、マスクブランク用のガラス基板10の表面に対する検査工程ST21、2次膜12付きのマスクブランク用のガラス基板10を検査対象品とする検査工程ST23、レジスト膜17付きのガラス基板10を検査対象品とする検査工程ST24において、信号取得工程、第1判定工程、第2判定工程および第3判定工程を行なってもよい。
【0054】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のマスクブランク100の製造工程では、検査対象品に検査光を照射した際の反射光を光電変換装置59で受光して電気信号に変換し、該電気信号を基板主表面における位置情報と対応付けてデータ記憶部に記憶する信号取得工程を行い、次に検査対象品を良否判定するための欠陥サイズの基準値である第1基準値以上のサイズである欠陥の有無を判定して検査対象品の良品判定を行う第1判定工程を行い、続いて、良品と判定された検査対象品に対して、第1基準値よりも小さい第2基準値(例えば、欠陥検査装置の欠陥検出限界値等)以上の微小欠陥の有無を判定する第2判定工程を行い、最後に、検出された微小欠陥同士の距離関係や位置関係から近接する微小欠陥集合体の有無を判定し、微小欠陥集合体として判定されたものが第1基準値以上であるかを基準に検査対象品の良品判定を行う第3判定工程を行う。このため、従来では検出が難しかった図3(c)に示すような、第1方向のサイズが第1基準値以下であって、第2方向に向かって第1基準値よりも大きいサイズの欠陥110や、従来では検出が困難であった図3(d)に示すように、第2方向に向かって、第1基準値以下の微小欠陥120が延在する微小欠陥集合体130であって、第1基準値よりも大きいサイズの微小欠陥集合体130や、図3(e)に示すように斜め方向(第1方向と第2方向に向かって延びる方向)に第1基準値以下の微小欠陥120が延在する微小欠陥集合体130であって、第1基準値よりも大きいサイズの微小欠陥集合体130等をより確実に検出することができる。
【0055】
しかも、再検査する方法と違って、熟練を有しない作業者であっても、短時間のうちに正確な判定を行なうことができ、生産性が向上する。
【0056】
特に、本形態は、ガラス基板10上にパターン形成用薄膜としてハーフトーン位相シフト膜(1次膜11)が形成されている場合に適用したため、特に効果的である。すなわち、ハーフトーン型位相シフトマスクの場合、露光光の波長が短波長化されるに伴って、欠陥110に対して許容されるサイズが厳しいが、本形態に係る検査方法によれば、かかる厳しい要求にも十分対応できる検査を行なうことができる。また、ハーフトーン位相シフト膜は、透光性を備えているため、目視による検査が特に難しいが、本形態では、凹凸を微分干渉観察による画像として表示するため、欠陥を確実に検査することができる。
【0057】
また、第1判定工程で良品と判定されたものだけに対して第2判定工程を行なうため、第2判定工程以降の対象が少ないので、検査工程を効率よく行なうことができる。しかも、第3判定工程で表示する画像は、第1判定工程で記憶されたものであるため、第2判定工程で改めて撮像する必要がないので、検査工程を効率よく行なうことができる。
【0058】
(その他の実施の形態)
上記形態では、ハーフトーン型位相シフトマスク用のマスクブランクの製造に本発明を適用した例を示したが、クロムを主成分とする3層構造の薄膜をパターン形成用薄膜として形成したバイナリーマスク用のマスクブランクや、シリコンとモリブデンとの多層反射膜上にバッファ層や吸収体層を形成した反射型EUVマスク用のマスクブランクの製造に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10・・マスクブランク用のガラス基板
11・・1次膜
12・・2次膜
17・・レジスト膜
50・・欠陥検査装置の光学系
60・・欠陥検査装置の処理装置
100・・マスクブランク
110・・欠陥
120・・微小欠陥
130・・・微小欠陥集合体
ST21、ST22、ST23、ST24・・検査工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板主表面の凹部または凸部からなる欠陥を検査する検査工程を有するマスクブランク用基板の製造方法において、
前記検査工程は、
前記基板主表面に検査光を照射した際の反射光を光電変換装置で受光して電気信号に変換し、該電気信号を前記基板主表面における位置情報と対応付けてデータ記憶部に記憶する信号取得工程と、
前記電気信号に対する信号処理により、第1基準値以上のサイズである欠陥の有無を判定する第1判定工程と、
前記電気信号に対する信号処理により、前記第1基準値よりも小さく第2基準値以上のサイズである微小欠陥の有無を判定する第2判定工程と、
前記基板主表面で近接する複数の微小欠陥からなる微小欠陥集合体の有無を判定し、前記第1基準値以上のサイズである微小欠陥集合体の有無を判定する第3判定工程と
を有することを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項2】
前記第3判定工程は、前記データ記憶部の情報を基に、微小欠陥を含む所定範囲の基板主表面の拡大画像を作成し、該拡大画像から前記微小欠陥集合体の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項3】
前記基板主表面に対する検査光の照射は、前記基板主表面の第1方向に対して走査を行うステップを、該第1方向に直交する第2方向に向かって繰り返し行うことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項4】
前記信号取得工程は、前記基板主表面で隣接する2個所に2種類の偏光光を前記検査光として照射し、当該2種類の偏光光の前記基板主表面からの反射光を微分干渉観察用の複屈折プリズムにより合成した光を前記光電変換装置により電気信号に変換することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項5】
前記第3判定工程は、前記拡大画像を微分干渉像として画像化することを特徴とする請求項4に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項6】
基板上に形成されたパターン形成用薄膜の凹部または凸部からなる欠陥を検査する検査工程を有するマスクブランクの製造方法において、
前記検査工程は、
前記パターン形成用薄膜表面に検査光を照射した際の反射光を光電変換装置で受光して電気信号に変換し、該電気信号を前記パターン形成用薄膜表面における位置情報と対応付けてデータ記憶部に記憶する信号取得工程と、
前記電気信号に対する信号処理により、前記第1基準値以上のサイズである欠陥の有無を判定する第1判定工程と、
前記電気信号に対する信号処理により、前記第1基準値よりも小さく前記第2基準値以上のサイズである微小欠陥の有無を判定する第2判定工程と、
前記パターン形成用薄膜表面で隣接する複数の微小欠陥からなる微小欠陥集合体の有無を判定し、前記第1基準値以上のサイズである微小欠陥集合体の有無を判定する第3判定工程と
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項7】
前記第3判定工程は、前記データ記憶部の情報を基に、微小欠陥を含む所定範囲の前記パターン形成用薄膜表面の拡大画像を作成し、該拡大画像から前記微小欠陥集合体の有無を判定することを特徴とする請求項6に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項8】
前記薄膜表面に対する検査光の照射は、前記パターン形成用薄膜表面の第1方向に対して走査を行うステップを、該第1方向に直交する第2方向に向かって繰り返し行うことを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
前記信号取得工程は、前記パターン形成用薄膜表面で隣接する2個所に2種類の偏光光を前記検査光として照射し、当該2種類の偏光光の前記薄膜表面からの反射光を微分干渉観察用の複屈折プリズムにより合成した光を前記光電変換装置により電気信号に変換することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項10】
前記第3判定工程は、前記拡大画像を微分干渉像として画像化することを特徴とする請求項9に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項11】
前記検査対象品は、前記基板上に前記パターン形成用薄膜としてハーフトーン位相シフト膜が形成されていることを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−175660(P2010−175660A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16099(P2009−16099)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】