マルチプロジェクションシステム
【課題】従来のマルチプロジェクションシステムは、貼合わせや重合わせる分割カラー画像の画面内の央部と周辺では色ムラや輝度ムラがあり、画面中央を基準に補正して繋ぎ合わせても繋ぎ目が目立ち、多原色カラー画像では色の忠実が悪くなる。
【解決手段】本発明は、それぞれのプロジェクタが投影する分割カラー画像の画面内を複数の小領域に分割し、該小領域の明るさと色に関する特性を測定してプロファイルとして測定位置を示唆する位置情報と共に保存して、各プロジェクタによる投影時に、出力する分割カラー画像の画面を任意数の小領域に分割して、これらの小領域の画面内位置に合った位置情報に基づき、プロファイルを選択して分割カラー画像に作用させて色変換を行い、明るさと色に関する画像補正を行って1つの合成画像を作成するマルチプロジェクションシステムである。
【解決手段】本発明は、それぞれのプロジェクタが投影する分割カラー画像の画面内を複数の小領域に分割し、該小領域の明るさと色に関する特性を測定してプロファイルとして測定位置を示唆する位置情報と共に保存して、各プロジェクタによる投影時に、出力する分割カラー画像の画面を任意数の小領域に分割して、これらの小領域の画面内位置に合った位置情報に基づき、プロファイルを選択して分割カラー画像に作用させて色変換を行い、明るさと色に関する画像補正を行って1つの合成画像を作成するマルチプロジェクションシステムである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数台のプロジェクタからスクリーン上に投影された各分割カラー画像を繋ぎ合わせて若しくは全部を重ねて1つの画像を作成するマルチプロジェクションシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、1台のプロジェクタを用いて1つのスクリーンにカラー画像を投影していたが、さらに高精細な大画面が要求されると、複数台のプロジェクタを用いて、1つの構図を複数に分割して分割カラー画像を作成し、これらの分割カラー画像をそれぞれのプロジェクタで1つのスクリーンに繋ぎ合わせるように投光して元の構図を再構築するマルチプロジェクションシステムが知られている。また、このマルチプロジェクションシステムは、異なる色特性を持つ複数台のプロジェクタでカラー画像を1つに重なるように投影することにより、原色数を増加させて色域を広げた多原色をカラー画像を作成することもできる。
【0003】このシステムにより大画面を成形するためには、図21(a)に示すように、1つの構図からなるカラー画像1を例えば、4台のプロジェクタ3a〜3dの台数分で分割し、それぞれの端部に重なり部分4を持たせた分割カラー画像1a〜1dを生成する。そして、それぞれの分割カラー画像の端部に重なり部分4を持たせておき、1つの大画面を成形する際には、互いに、この重なり部分4を張り合わせてようにしていた。
【0004】このマルチプロジェクションシステムは、複数台のプロジェクタを用いており、これらは同じ仕様で製造されていても、実際にスクリーン上に投影された画像には、色や明るさにばらつきがある。これは、各構成部品のばらつきや発光管の明るさのばらつき等が影響している。このため、貼り合わせにより大画面を得ようとする場合には、それぞれの分割カラー画像と分割カラー画像との色や明るさにばらつきから繋ぎ合わせ部分が目だったりしている。
【0005】そこで、従来のマルチプロジェクションシステムでは、各プロジェクタ毎に色の特性を示すプロファイル作成し、投影時にはこのプロファイルを参照して色補正を行っていた。
【0006】このようなマルチプロジェクションシステムは、画像読み込み部5と、投影位置と画像の分割を行う幾何補正部6と、明るさムラをなくすシェーディング補正部7と、各プロジェクタの色補正のためのプロファイル8a〜8nを予め測定して記憶するプロファイル保存部9と、1つの自然な画面になるようにプロファイル保存部9から読み出したそれぞれのプロファイルを各画像に作用させて、色の違いムラ等を補正するプロファイル作用部10と、各プロジェクタ3a〜3dへの画像信号を出力する画像出力部11とで構成され、カラー画像を同一スクリーン2上に投影する。
【0007】このプロファイル作用部10は、後述する色変換部12と、プロファイル保存部9からプロファイル8a〜8nを選択して読み出してファイル部19に設定し、色変換部12へ入力するプロファイル選択部13で構成される。色変換部12は、図21(b)に示すように、色の変換を行うマトリックス変換部14と、オフセット補正部15と、ガンマ特性の変換を行うガンマ変換部16と、シューティング補正部17とで構成され、プロファイルを参照して自然な繋がりや色合い、明るさを持つように、それぞれのプロジェクタ間の色合わせ、輝度合わせ、オフセット補正、シェーディング補正等の処理を行う。この色変換部で行なわれる計算は、本願出願人が提案する特開2001−54131号公報における画像データ変換装置で行われる処理と同等であり、ここでの説明は省略する。
【0008】また同様に、画像が暗かったりする場合や多原色画面にするためには、図22に示すように、プロファイル作用部10は、さらに多原色分解部18を備えており、図示するように2台のプロジェクタを用いる例では、例えば3色のR,G,Bならば、6色のR1,R2,G1,G2,B1,B2に分解する。そして、それぞれの画像をスクリーン2上で1つの画面になるように重ねて投影していた。例えば、多原色画面にするためには、発光特性が異なるプロジェクタを用いて、これらを1画面に投影して、色の再現範囲を広げることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、複数の投影画面を貼り合わせたり重ね合わせる場合には、プロファイルを参照して色の特性の補正を行っていたが、それぞれ図21(b)及び図22に示すように、1台のプロジェクタにおいては、通常、画面中央における1つのプロファイルが求められて記憶されており、このプロファイルにより補正を施していた。
【0010】しかし明るさや色の違いは、複数のプロジェクタの投影画像間だけでなく、実際には、1台のプロジェクタにより投影された画面内においても、中央部分と周辺部分では色ムラ、輝度やオフセットやγ特性のばらつきが発生している。これらを繋ぎ合わせて大画面を作成しようとする場合、それぞれの画面中央で補正を行ったものを繋ぎ合わせても、画像の周辺部分に差が出るため、繋ぎ目が目立ってしまう。また多原色画面を得ようとすると、画面中央では色を忠実に再現することができるが、画面周辺に行くに従い、正確な色ではなくなる可能性がある。
【0011】そこで本発明は、各プロジェクタ毎に投光する分割カラー画像の画面を複数の小領域に分割して、それぞれに適切な色変換処理を施し、画面内の明るさや色を補正して他のプロジェクタが投光する分割カラー画像との貼り合わせ合成を行い、繋ぎ目が目立たない高精細な貼り合わせ大画面を構築したり、また重ね合わせ合成を行い、全画面に亘って色が忠実に再現されるマルチプロジェクションシステムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、複数台のプロジェクタがそれぞれに投影する分割カラー画像に対して位置合わせを行い、合成画像を作成するマルチプロジェクションシステムにおいて、それぞれの上記プロジェクタが投影する分割カラー画像の画面内を複数の小領域に分割し、該小領域の明るさと色に関する特性を予め測定し、プロファイルとして、その画面内の測定位置を示唆する位置情報と共に保存するプロファイル保存部と、上記プロジェクタによる投影時に、出力する分割カラー画像の画面を任意数の小領域に分割して、これらの小領域の画面内位置に合った上記位置情報に基づき、上記プロファイル保存部からプロファイルを選択して読み出すプロファイル選択部と、読み出された上記プロファイルを、出力する上記分割カラー画像に対して作用させて色変換を行うプロファイル作用部とを備え、上記分割カラー画像の画面内及び全部の分割カラー画像に亘って、上記プロファイルにより明るさと色に関する画像補正を行って画像合成するマルチプロジェクションシステムを提供する。
【0013】さらに、上記マルチプロジェクションシステムは、読み出された上記プロファイルと上記位置情報から上記測定が行われなかった小領域において、上記プロファイルをデータとして用いた補間処理を行い、補間プロファイルを算出するプロファイルデータ補間部と、測定により得られた上記プロファイルと補間により求められた上記補間プロファイルを、出力する上記分割カラー画像に対して作用させて色変換を行うプロファイル作用部とを備え、上記分割カラー画像の画面内及び全部の分割カラー画像に亘って、上記プロファイルにより明るさと色に関する画像補正を行って画像合成する。また、上記マルチプロジェクションシステムの上記合成画像は、複数の分割カラー画像のそれぞれの端部部分が重なるように貼り合わせた大画面のカラー画像、若しくは、発光特性が異なる複数の分割カラー画像を重ね合わせて、原色数が増加され色域が広げられた多原色カラー画像のいずれかである。
【0014】以上のような構成のマルチプロジェクションシステムは、1台のプロジェクタが投影する分割カラー画像画面内を複数に分割した小領域にそれぞれ合ったプロファイルを適用して、分割カラー画像の明るさを均一にして、色に対する補正が施され、分割カラー画像と分割カラー画像とを貼り合わせた画像合成の際に、その繋ぎ目が目立たなくなり、明るさムラのない大画面カラー画像が作成される。また、分割カラー画像と分割カラー画像とを重ね合わせた画像合成の際に、重ね合わせたカラー画像の画面全体に亘って色が忠実に再現された多原色画面が作成される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1には、第1の実施形態として、明るさ補正及び色補正された高精細な大画面のカラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示し説明する。ここで、図1に示す構成例において、前述した図21(a),(b)に示したマルチプロジェクションシステムの構成部位と同等の部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略し、本実施形態の特徴となる部分について説明する。尚、以下の実施形態の説明において、複数台のプロジェクタにより作成される高精細な大画面カラー画像や原色数を増加させて色域を広げた多原色カラー画像を合成カラー画像として、各プロジェクタにより投影されたカラー画像を分割カラー画像と称している。
【0016】このマルチプロジェクションシステムは、画像読み込み部5と、投影位置と画像の分割を行う幾何補正部6と、明るさムラをなくすシェーディング補正部7と、各プロジェクタの色補正のための後述するプロファイルを予め測定してテーブルに記憶するプロファイル保存部21と、プロファイル保存部21から読み出したプロファイルを各分割カラー画像に作用させて、色ムラ等を補正するプロファイル作用部22と、各プロジェクタ3a〜3dへの画像信号を出力する画像出力部11とで構成され、分割カラー画像(パッチ画像)をそれぞれスクリーン2上の投光面に投影して精細な大画面の合成カラー画像を作成している。
【0017】このプロファイル保存部21には、それぞれのプロジェクタ1台あたりに予め測定されたM個のプロファイルからなるプロファイル群25a〜25nがテーブルにファイリングされている。また、プロファイル作用部22は、後述する色変換部12と、プロジェクタに基づいてプロファイル保存部21内の該当するプロファイルを選択するプロファイル選択部24と、プロファイル選択部24により選択されたプロファイルを参照して自然な繋がりや色合い、明るさを持つように、それぞれのプロジェクタ間の色合わせ、輝度合わせ、オフセット補正、シェーディング補正等の処理が行われる。
【0018】この色変換部12は、色の変換を行うマトリックス変換部14と、オフセット補正部15と、ガンマ特性の変換を行うガンマ変換部16と、シューティング補正部17とで構成され、カラー画像に対して階調補正と輝度補正を施している。ガンマ変換部16による階調補正においては、カラー画像データR(x,y)、G(x,y)、B(x,y)は、
【数1】
【0019】により階調補正を行われ、表示用カラー画像データRout、Gout、Boutを各プロジェクタへ出力する。ここで、γc−1(d)(c=r,g,b)は、階調補正データであり、最大値を”1”に正規化した入力信号値dに対する出力輝度の逆関数を表している。この階調補正データγc−1(d)は、プロジェクタのRGB各原色の入力信号値について、0から最大値に対するプロジェクタの表示輝度を測定することにより得られ、ガンマ変換部16の内部に予め記憶されているものとする。また、階調補正データγc−1の取得には、分光計、色差計、輝度計、ディジタルカメラ等の画像撮影装置などを用いることができる。スポット測光を行う分光計や、色差計、輝度計で階調補正データを取得する方法は、精度はよいが測定に時間を要し、カメラ等でグラデーションパターンを撮影することによって短時間で階調補正データを取得することもできる。
【0020】次に図2には、本実施形態との比較のために従来におけるプロファイル測定を行うための構成例を示し、プロファイルの取得について説明する。ここでは、プロファイル測定機として分光計を用いて、2台のプロジェクタにおける例で説明する。まず、画像出力装置11から出力される所定のカラー画像データに基づいて、プロジェクタ3aは順次スクリーン2上にR(赤)、G(緑)、B(青)の各単色画像を投影させる。分割カラー画像の中心で、これら各単色画像の最大発光時のXYZ三刺激値を分光計31で測定し、得られた測定データをプロファイルとしてプロファイル保存部21に記憶させる。次にプロジェクタ3bにおいても同様に、分光計31により得られた測定データ(プロファイル)をプロファイル保存部21に記憶させる。
【0021】また、プロファイル測定機として分光計31の他にも、色差計、輝度計、ディジタルカメラを用いて行うこともできる。ディジタルカメラを用いた場合には、画像出力装置11の指示により投影された所定の単色カラー画像を撮影して光電変換により得られたカラー画像データに基づいて、これら各単色画像の最大発光時の画像信号に基づくプロファイルを得る。
【0022】次に図3には、本実施形態に用いられるプロファイル測定を行うための構成例を示し、プロファイルの取得について説明する。この構成においては、前述した構成にさらに、分光計31の向きを変えて、その測定方向を切り替える駆動機構32を備えており、カラー画像内の複数箇所のプロファイル測定を自動で行う。前述した構成例では、測定毎に分光計31の測定方向を手動で動かしていたが、本構成例では、水平方向及び垂直方向の直交する2軸方向に回動させることができる駆動機構32に分光計31を取り付ける。この例では、三脚33に駆動機構32が取り付けられた構成例である。
【0023】これらの分光計31及び駆動機構32は、プロファイル測定制御部34により制御されており、複数箇所のプロファイル測定を行う場合には、駆動機構32を駆動させて所定位置が測定できるように分光計31を移動させて設定し、分光計31による測定を行わせて得られた測定データ(若しくは算出されたプロファイルデータ)をプロファイル保存部21に記憶させる。この箇所の測定が終了した後に、次の箇所へ分光計31の測定方向を移動させて測定を行う。
【0024】図4を参照して、複数台のプロジェクタ(3a〜3n)におけるそれぞれの分割カラー画像内のプロファイル測定について説明する。ここでは、プロジェクタ3aのみを取り出して説明する。この構成において、プロファイル保存部21には、それぞれのプロジェクタ1台あたりに予め測定されたM個のプロファイルを記憶させるための記憶領域(テーブル)が設けられている。
【0025】まず、画像出力部11の指示により所定の分割カラー画像がスクリーン2に投影される。この際、投影画面内には、例えば9個のマーカー35a〜35i等を合わせて表示させる。これらのマーカー位置を測定することにより、測定位置と得られたプロファイルとの関係を合致させる。後述する投影された画面上の位置情報は、主としてこのようなマーカー位置を基準としているが、画素位置(投影装置側)を基準としてもよい。
【0026】図5(a)、(b)には、このようなマーカーの例を示す。図5(a)に示す例では、プロジェクタに投影されたRGBの各色で塗りつぶされた分割カラー画像36の画面内に、これらの色とは異なる色の枠線の9個のマーカー37a〜37iが表示される。このマーカーエリア内を測定して、プロファイルを得る。他にも図5(b)は、クロスマークから成るマーカー38a〜38iを表示した後、その交差点部分に測定位置を定めた後、プロジェクタから分割カラー画像36を投影して測定を行い、プロファイルを得る。
【0027】以上説明した例では、図6に示すように、プロファイル測定時に測定を行うプロジェクタのみから分割カラー画像を投影させ、これ以外のプロジェクタは信号値0を出力させる。従って、分割カラー画像同士の重なり部分4を含めた輝度の大きさは、図7(a)に示すようになる。輝度の大きさと画素位置の関係においては、プロジェクタが投影した分割カラー画像のエッジの重なり部分4の輝度量(バイアス)が加算されて大きくなった特性となる。しかし、測定するプロジェクタ以外では信号値0を出力させているため、プロジェクタ3aの投影領域においては、図7(b)に示すような測定データを得ることができる。
【0028】このような測定方法によれば、他のプロジェクタが投影した分割カラー画像による影響を受けたプロファイルが測定されるが、計算を工夫することにより、個々のプロジェクタのプロファイルを算出することができる。特に、測定を行う構成が簡単であり、短時間でプロファイルを得ることができる。
【0029】次に、別のプロファイル測定について説明する。図8には、各プロジェクタの前方を移動可能な遮光装置37を備えた構成例を示す。この構成によれば、例えば、プロジェクタ3aの測定時にプロジェクタ3bの前方に遮光装置を配置して、プロジェクタ3bからの分割カラー画像がスクリーン2に届かないように遮光することができる。これにより、図9(a)に示すようなプロジェクタ3a,3bの輝度の大きさが、図9(b)に示すようなプロジェクタ3aのみの輝度の大きさとなる。従って、プロファイル測定時に、測定するプロジェクタ以外のプロジェクタを遮光した状態で、測定することにより、精度が高められたプロファイルを得ることができる。尚、複数のプロジェクタが備えられたシステムの場合には、測定する1台のプロジェクタ以外の投影画像を遮光してプロファイル測定を行う。また、連動して動く複数の遮光装置(遮光マスク)を配置して、複数のプロジェクタ配置のうち1台おきに投影させた分割カラー画像即ち、画像のエッジに重なり部分が無い状態の画像を測定すれば、遮光装置の移動回数が少なくなるため、測定時間が短縮される。この構成にさらに複数の分光器を備えて、並列処理が可能な構成であれば、測定時間をさらに短縮することができる。
【0030】次に図10を参照して、一例として4つの画像を貼り合わせた大画面カラー画像における面内4点測定データ選択方式について説明する。このマルチプロジェクションシステムは、図10(a)に示すように、4台のプロジェクタにより投影されるそれぞれの分割カラー画像の画面内の4箇所のプロファイルを作用させる。つまり、1つの構図のカラー画像1の画面を2×2の4分割した分割カラー画像1a〜1dを作成する。例えば、分割カラー画像1aにおいては、さらに4つに分割した各小領域40a〜40dの中央4箇所をプロファイル測定して、得られた測定データ(プロファイル)41a〜41dを記憶させておく。
【0031】ここでは、4個のプロファイルを測定した例であるが、M個の箇所のプロファイルを画面上の位置情報と共に予め測定して記憶させておき、投影されるカラー画像の構図や色彩等に応じてカラー画像の分割数を設定し、その分割数にあったプロファイルを選択してもよい。つまり、プロファイル選択部22は、出力されるプロジェクタと画面の位置情報から、適切なプロファイルを読み出せばよく、分割数は、3×3や5×5でも、それ以上であってもよい。また、この例では、分割された分割カラー画像の画面中央で測定したプロファイルを用いているが測定位置が限定されているものではない。
【0032】このように本実施形態によれば、1台のプロジェクタが投影する分割カラー画像画面内を複数に分割した小領域にそれぞれ合ったプロファイルを適用することにより、分割カラー画像の明るさを均一にして、色に対する補正を施すことができ、これをマルチプロジェクションシステムによる画像貼り合わせによる大画面カラー画像の作成に適用した場合には、分割カラー画像と分割カラー画像との繋ぎ目が目立たなくなり、明るさムラのない正しい色による高精細な大画面のカラー画像を作成することができる。
【0033】次に図11には、第2の実施形態として、原色数を増加させて色域を広げた多原色カラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示し説明する。なお、図11(a)、(b)に示す構成例において、前述した図1に示した構成部位と同等の部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略し、本実施形態の特徴となる部分について説明する。この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態におけるプロファイル作用部10にさらに多原色分解部18を備えた構成であり、発光特性が異なる例えば2台のプロジェクタにより1画面上に全画像が重なるように投影して、色の再現範囲を広げた多原色カラー画像を作成している。勿論、プロジェクタは2台に限定されているものではない。
【0034】図12には、一例として多原色カラー画像における面内4点測定データ選択方式を一例として説明する。ここでは、4箇所のプロファイルを作用させるために、測定時には1台のプロジェクタ3aから投影される分割カラー画像の画面を2×2の4分割し、分割された各小領域42a〜42dの画面中央を測定し、それぞれのプロファイル43a〜43dを作成し、プロファイル保存部27のテーブルに記憶させる。同様に得たプロジェクタ3bにおけるプロファイル44a〜44dも記憶させる。ここでは、4個のプロファイルを測定した例で説明したが、前述した第1の実施形態と同様にM個の箇所のプロファイルを予め測定して画面の位置情報と共に記憶させてておき、投影されるカラー画像の構図や色彩等に応じてカラー画像の分割数を設定し、その分割数にあったプロファイルを選択してもよい。分割数は、3×3や5×5でも、それ以上であってもよい。
【0035】これらのプロファイルを作用させて色変換処理を行う場合、プロファイル選択部24は、使用するプロジェクタ3a、3bと分割カラー画像の位置情報から適切なプロファイルを読み出して、プロファイル部23へ保持させる。保持されたプロファイルを適宜、色変換部12により作用させてカラー画像における明るさ補正や色補正を行う。この例では、分割カラー画像における各小領域の画面中央で測定したプロファイルを用いているが測定位置が限定されているものではない。また、投影によるカラー画像に発生する歪みは、幾何学補正により補正されている。
【0036】本実施形態によれば、各プロジェクタが投影する分割カラー画像の明るさを均一にして、色に対する補正を施すことができ、これをマルチプロジェクションシステムに適用した場合には、重ね合わせたカラー画像の画面全体に亘って色が忠実に再現された多原色画面を作成することができる。
【0037】次に図13には、第3の実施形態として、補間処理を利用して、高精細な大画面のカラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示し説明する。ここで、図13に示す構成例において、前述した図1に示した構成部位と同等の部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略し、本実施形態の特徴となる部分について説明する。
【0038】この第3の実施形態は、前述した第1の実施形態におけるプロファイル作用部22へ、さらにプロファイルデータ補間部28を設けて、マルチプロジェクションシステムに適用し、各プロジェクタの投影面内の位置情報に応じたプロファイルを選択して補間処理した後、色変換部12により作用させてカラー画像における明るさや色補正を行うものである。
【0039】その一例としては図14に示すように、例えば、分割カラー画像1aの画面内を例えば、7×5に分割した小領域を作成し、4隅の小領域に対して測定して、4個のプロファイルを得る。これらのプロファイルはプロファイル保存部21へ記憶させる。このプロファイルを作用させて明るさ補正や色補正を行う場合には、プロファイル選択部24は、出力されるプロジェクタと画像の位置情報から該当するプロファイルを読み出して、測定しなかった小領域における補間プロファイルを補間処理により生成して用いる。
【0040】図15及び図16を参照して、この第3の実施形態における補間処理を含む色変換処理について説明する。まず、幾何学補正処理として投影されるカラー画像が幾何補正部6により使用されるプロジェクタの台数分で分割され、分割カラー画像が生成される(S1)。この際に、画像に生じた歪み等が修正される。次に、プロジェクタの複数(p)台あるうちの色変換処理が行われるプロジェクタ(p=1)が決定される(S2)。この色変換処理は、1台分の分割カラー画像の処理が終了した後、残りのプロジェクタの画像に対しても同様な処理がそれぞれ行われる。
【0041】このプロジェクタにより投影された分割カラー画像の高さ方向の画素位置(最下位置の1画素目から最上位置の画素Yまで)をyとし、同様に画像の幅方向の画素位置(画面上で最左位置の1画素目から最右位置の画素Xまで)をxとする(S3,S4)。ここで、画素とは、プロジェクタの投光素子における画素を示唆している。これらのx,yは、位置情報となり、これで範囲を示すことにより、前述したマーカーのエリアを表すこともできる。
【0042】次に、図15に示すような分割カラー画像における四隅の4つのプロファイルの予め測定してあるプロファイルを取得する(S5)。この測定により得られたプロファイル(測定データ1〜4)は、測定データ1[s1=S(x1,y1)]、測定データ2[s2=S(x2,y2)]、測定データ3[s3=S(x3,y3)]、測定データ4[s4=S(x4,y4)]となる。
【0043】次に、補間パラメータを算出する(S6)。まず、測定データ1と測定データ3との中間位置における補間データSaのパラメータ、測定データ2と測定データ4との中間位置における補間データSbのパラメータ、補間データSaと補間データSbとの中間位置における補間データSnのパラメータを求める場合について説明する。
【0044】
a=(yn-y1)/(y3-y1)xa=(x3-x1)a+x1ya=yn補間データSbでは、Sb=(s4-s2)a+s2b=(yn-y2)/(y4-y2)xb=(x4-x2)b+x2yb=yn補間データSnでは、Sn=(Sb−Sa)n+San=(xn-xa)/(xb-xa)これらの補間パラメータを用いて測定により得られたプロファイルに補間処理を施して、補間プロファイルを作成する(S7)。これらのプロファイル(測定プロファイル及び補間プロファイル)を色変換部12で分割カラー画像に作用させて色補正を行う(S8)。次に分割カラー画像の画素位置をそれぞれインクリメントする(S9,S10)。さらに、分割カラー画像の明るさ補正や色補正が終了した場合には、補正処理を行っていないプロジェクタを選択して、前述したと同等にプロファイルを作用させて、色変換処理を施す(S11)。
【0045】図17は、測定データが正確な格子状に並んだ場合の補間処理を含む色変換処理について説明する。この場合の補間データSnでは、Sn=(s4-s3-s2+s1)an+(s2-s1)n+(s3-s1)a+s1a=(yn-y1)/(y3-y1)n=(xn-x1)/(x2-x1)これらの補間パラメータを用いて、前述したと同様に分割カラー画像に対して補正処理を行う。
【0046】この実施形態によれば、分割カラー画像の小領域全部を測定しなくとも、画面全域に亘って、プロファイルを求めることができるため、短時間でプロファイルを得ることができる。
【0047】また、前述した図17における測定は、分割カラー画像の四隅の4箇所で測定して他の小領域におけるプロファイルを補間により得たが、これに限定されるものではなく、図18に示すように、分割カラー画像の四隅及び中央の五箇所で測定を行い、また、図19に示すように分割カラー画像の四隅及びそれらの中間と、画面中央の9箇所の測定を行って、これら以外の小領域については、補間処理によりプロファイルが求められる。従って、4つの測定データから補間処理により求めたプロファイルよりも測定データに近い正確なプロファイルを得ることができる。分割カラー画像の面内分割は、縦横幾つかの小領域に分割してもよいし、画素群毎でもよい。
【0048】次に第4の実施形態として、補間処理を利用して、原色数を増加させて色域を広げた多原色カラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示し説明する。なお、本実施形態の構成は、前述した図11に示した構成例において、プロファイル作用部22のプロファイル選択部24とプロファイル部23との間に、新たにプロファイルデータ補間部28を設けた構成であり、プロファイル部23からプロファイル選択部24を介してプロファイルデータ補間部28へプロファイルが読み出される。
【0049】本実施形態は、図20に示すように、例えば、分割カラー画像の画面の4隅でプロファイルを測定する。分割カラー画像の画面を複数、例えば7×5の小領域に分割して、測定しなかった小領域については、測定データに基づき補間処理により、補間プロファイルを求める。これらのプロファイルを色変換処理に作用させる。
【0050】この実施形態によれば、分割カラー画像の小領域全部を測定しなくとも、画面全域に亘って、プロファイルを求めることができるため、短時間でプロファイルを得ることができる。
【0051】また、前述した第3の実施形態と同様に、分割カラー画像の四隅及び中央の五箇所の測定や、分割カラー画像の四隅及びそれらの中間と、画面中央の9箇所の測定を行って、これら以外の小領域については、補間処理によりプロファイルが求めてもよい。分割カラー画像の面内分割は、縦横幾つかの小領域に分割してもよいし、画素群毎でもよい。
【0052】以上の実施形態について説明したが、本明細書には以下のような発明も含まれている。
【0053】(1)複数台のプロジェクタの画像に対し位置合わせを行い、重ね合わせて投影するマルチプロジェクションシステムにおいて、各プロジェクタの特性をあらかじめ測定し保存するプロファイル保存部と、各プロジェクタのプロファイルを出力画像に作用するプロファイル作用部と、で構成され、上記プロファイル保存部が各プロジェクタ内の複数箇所のプロファイルを保存でき、上記プロファイル作用部はプロファイル選択部を具備し、複数のプロファイルから各プロジェクタの画像内の位置に応じて異なるプロファイルを用いて色変換を行うことを特徴とするマルチプロジェクションシステム。
【0054】(2)上記プロファイル作用部はプロファイルデータ補間部を具備し、複数のプロファイルから各プロジェクタ内の位置に応じて異なるプロファイルの補間したものを用いて色変換を行うことを特徴とするマルチプロジェクションシステム。
【0055】(3)上記複数台プロジェクタをスクリーン上でずらして投影し、大画面を実現する上記(1),(2)項に記載のマルチプロジェクションシステム。
【0056】(4)上記複数台プロジェクタをスクリーン上で重ねて投影し、明るさを向上あるいは、異なる発光特性を持つプロジェクタを用いて色域を広げる上記(1),(2)項に記載のマルチプロジェクションシステム。
【0057】(5)上記複数のプロファイルを測定し、所定のメモリに保存するプロファイル測定機を具備する上記(1),(2)項に記載のマルチプロジェクションシステム。
【0058】(6)上記プロファイル測定機は、少なくとも分光計、色差計、輝度計、デジタルカメラのいずれかを有していることを特徴とする請求項5に記載のマルチプロジェクションシステム。
【0059】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、各プロジェクタ毎に投光する分割カラー画像の画面を複数の小領域に分割して、それぞれに適切な色変換処理を施し、画面内の明るさや色を補正して他のプロジェクタが投光する分割カラー画像との貼り合わせ合成を行い、繋ぎ目が目立たない高精細な貼り合わせ大画面を構築したり、また重ね合わせ合成を行い、全画面に亘って色が忠実に再現されるマルチプロジェクションシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の大画面のカラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示す図である。
【図2】従来のプロファイル測定を行うための構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に用いられるプロファイル測定を行うための構成例を示す図である。
【図4】分割カラー画像内のプロファイル測定について説明するための図である。
【図5】プロファイル測定に用いられるマーカーの例を示す図である。
【図6】分割カラー画像の重なり部分について説明するための図である。
【図7】分割カラー画像の重なり部分の画素位置と輝度の関係について示す図である。
【図8】遮光装置を備えたプロファイル測定について説明するための図である。
【図9】図8における分割カラー画像の重なり部分の画素位置と輝度の関係について示す図である。
【図10】大画面カラー画像における面内4点測定データ選択方式について説明するための図である。
【図11】第2の実施形態の多原色カラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示す図である。
【図12】多原色カラー画像における面内4点測定データ選択方式について説明するための図である。
【図13】第3の実施形態の補間を用いて大画面のカラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示す図である。
【図14】大画面カラー画像における面内4点測定データによる補間について説明するための図である。
【図15】第3の実施形態における補間処理を含む色変換処理のルーチンを示す図である。
【図16】4点測定データによる補間計算について説明するための図である。
【図17】格子状に配置された4点測定データによる補間計算について説明するための図である。
【図18】大画面カラー画像における面内5点測定データによる補間について説明するための図である。
【図19】大画面カラー画像における面内9点測定データによる補間について説明するための図である。
【図20】第4の実施形態の多原色カラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムについて説明するための図である。
【図21】従来のマルチプロジェクションシステムの一構成例を示す図である。
【図22】図21におけるプロファイル保存部及びプロファイル作用部の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1…合成カラー画像
1a〜1d…分割カラー画像
2…スクリーン
3a〜3d…プロジェクタ
4…重なり部分
5…画像読み込み部
6…幾何補正部
7…シェーディング補正部
8a〜8n…プロファイル
9…プロファイル保存部
10…プロファイル作用部
11…画像出力部
12…色変換部
13…プロファイル選択部
14…マトリックス変換部
15…オフセット補正部
16…ガンマ変換部
17…シューティング補正部
19…ファイル部
21…プロファイル保存部
22…プロファイル作用部
25a〜25n…プロファイル群
24…プロファイル選択部
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数台のプロジェクタからスクリーン上に投影された各分割カラー画像を繋ぎ合わせて若しくは全部を重ねて1つの画像を作成するマルチプロジェクションシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、1台のプロジェクタを用いて1つのスクリーンにカラー画像を投影していたが、さらに高精細な大画面が要求されると、複数台のプロジェクタを用いて、1つの構図を複数に分割して分割カラー画像を作成し、これらの分割カラー画像をそれぞれのプロジェクタで1つのスクリーンに繋ぎ合わせるように投光して元の構図を再構築するマルチプロジェクションシステムが知られている。また、このマルチプロジェクションシステムは、異なる色特性を持つ複数台のプロジェクタでカラー画像を1つに重なるように投影することにより、原色数を増加させて色域を広げた多原色をカラー画像を作成することもできる。
【0003】このシステムにより大画面を成形するためには、図21(a)に示すように、1つの構図からなるカラー画像1を例えば、4台のプロジェクタ3a〜3dの台数分で分割し、それぞれの端部に重なり部分4を持たせた分割カラー画像1a〜1dを生成する。そして、それぞれの分割カラー画像の端部に重なり部分4を持たせておき、1つの大画面を成形する際には、互いに、この重なり部分4を張り合わせてようにしていた。
【0004】このマルチプロジェクションシステムは、複数台のプロジェクタを用いており、これらは同じ仕様で製造されていても、実際にスクリーン上に投影された画像には、色や明るさにばらつきがある。これは、各構成部品のばらつきや発光管の明るさのばらつき等が影響している。このため、貼り合わせにより大画面を得ようとする場合には、それぞれの分割カラー画像と分割カラー画像との色や明るさにばらつきから繋ぎ合わせ部分が目だったりしている。
【0005】そこで、従来のマルチプロジェクションシステムでは、各プロジェクタ毎に色の特性を示すプロファイル作成し、投影時にはこのプロファイルを参照して色補正を行っていた。
【0006】このようなマルチプロジェクションシステムは、画像読み込み部5と、投影位置と画像の分割を行う幾何補正部6と、明るさムラをなくすシェーディング補正部7と、各プロジェクタの色補正のためのプロファイル8a〜8nを予め測定して記憶するプロファイル保存部9と、1つの自然な画面になるようにプロファイル保存部9から読み出したそれぞれのプロファイルを各画像に作用させて、色の違いムラ等を補正するプロファイル作用部10と、各プロジェクタ3a〜3dへの画像信号を出力する画像出力部11とで構成され、カラー画像を同一スクリーン2上に投影する。
【0007】このプロファイル作用部10は、後述する色変換部12と、プロファイル保存部9からプロファイル8a〜8nを選択して読み出してファイル部19に設定し、色変換部12へ入力するプロファイル選択部13で構成される。色変換部12は、図21(b)に示すように、色の変換を行うマトリックス変換部14と、オフセット補正部15と、ガンマ特性の変換を行うガンマ変換部16と、シューティング補正部17とで構成され、プロファイルを参照して自然な繋がりや色合い、明るさを持つように、それぞれのプロジェクタ間の色合わせ、輝度合わせ、オフセット補正、シェーディング補正等の処理を行う。この色変換部で行なわれる計算は、本願出願人が提案する特開2001−54131号公報における画像データ変換装置で行われる処理と同等であり、ここでの説明は省略する。
【0008】また同様に、画像が暗かったりする場合や多原色画面にするためには、図22に示すように、プロファイル作用部10は、さらに多原色分解部18を備えており、図示するように2台のプロジェクタを用いる例では、例えば3色のR,G,Bならば、6色のR1,R2,G1,G2,B1,B2に分解する。そして、それぞれの画像をスクリーン2上で1つの画面になるように重ねて投影していた。例えば、多原色画面にするためには、発光特性が異なるプロジェクタを用いて、これらを1画面に投影して、色の再現範囲を広げることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、複数の投影画面を貼り合わせたり重ね合わせる場合には、プロファイルを参照して色の特性の補正を行っていたが、それぞれ図21(b)及び図22に示すように、1台のプロジェクタにおいては、通常、画面中央における1つのプロファイルが求められて記憶されており、このプロファイルにより補正を施していた。
【0010】しかし明るさや色の違いは、複数のプロジェクタの投影画像間だけでなく、実際には、1台のプロジェクタにより投影された画面内においても、中央部分と周辺部分では色ムラ、輝度やオフセットやγ特性のばらつきが発生している。これらを繋ぎ合わせて大画面を作成しようとする場合、それぞれの画面中央で補正を行ったものを繋ぎ合わせても、画像の周辺部分に差が出るため、繋ぎ目が目立ってしまう。また多原色画面を得ようとすると、画面中央では色を忠実に再現することができるが、画面周辺に行くに従い、正確な色ではなくなる可能性がある。
【0011】そこで本発明は、各プロジェクタ毎に投光する分割カラー画像の画面を複数の小領域に分割して、それぞれに適切な色変換処理を施し、画面内の明るさや色を補正して他のプロジェクタが投光する分割カラー画像との貼り合わせ合成を行い、繋ぎ目が目立たない高精細な貼り合わせ大画面を構築したり、また重ね合わせ合成を行い、全画面に亘って色が忠実に再現されるマルチプロジェクションシステムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、複数台のプロジェクタがそれぞれに投影する分割カラー画像に対して位置合わせを行い、合成画像を作成するマルチプロジェクションシステムにおいて、それぞれの上記プロジェクタが投影する分割カラー画像の画面内を複数の小領域に分割し、該小領域の明るさと色に関する特性を予め測定し、プロファイルとして、その画面内の測定位置を示唆する位置情報と共に保存するプロファイル保存部と、上記プロジェクタによる投影時に、出力する分割カラー画像の画面を任意数の小領域に分割して、これらの小領域の画面内位置に合った上記位置情報に基づき、上記プロファイル保存部からプロファイルを選択して読み出すプロファイル選択部と、読み出された上記プロファイルを、出力する上記分割カラー画像に対して作用させて色変換を行うプロファイル作用部とを備え、上記分割カラー画像の画面内及び全部の分割カラー画像に亘って、上記プロファイルにより明るさと色に関する画像補正を行って画像合成するマルチプロジェクションシステムを提供する。
【0013】さらに、上記マルチプロジェクションシステムは、読み出された上記プロファイルと上記位置情報から上記測定が行われなかった小領域において、上記プロファイルをデータとして用いた補間処理を行い、補間プロファイルを算出するプロファイルデータ補間部と、測定により得られた上記プロファイルと補間により求められた上記補間プロファイルを、出力する上記分割カラー画像に対して作用させて色変換を行うプロファイル作用部とを備え、上記分割カラー画像の画面内及び全部の分割カラー画像に亘って、上記プロファイルにより明るさと色に関する画像補正を行って画像合成する。また、上記マルチプロジェクションシステムの上記合成画像は、複数の分割カラー画像のそれぞれの端部部分が重なるように貼り合わせた大画面のカラー画像、若しくは、発光特性が異なる複数の分割カラー画像を重ね合わせて、原色数が増加され色域が広げられた多原色カラー画像のいずれかである。
【0014】以上のような構成のマルチプロジェクションシステムは、1台のプロジェクタが投影する分割カラー画像画面内を複数に分割した小領域にそれぞれ合ったプロファイルを適用して、分割カラー画像の明るさを均一にして、色に対する補正が施され、分割カラー画像と分割カラー画像とを貼り合わせた画像合成の際に、その繋ぎ目が目立たなくなり、明るさムラのない大画面カラー画像が作成される。また、分割カラー画像と分割カラー画像とを重ね合わせた画像合成の際に、重ね合わせたカラー画像の画面全体に亘って色が忠実に再現された多原色画面が作成される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1には、第1の実施形態として、明るさ補正及び色補正された高精細な大画面のカラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示し説明する。ここで、図1に示す構成例において、前述した図21(a),(b)に示したマルチプロジェクションシステムの構成部位と同等の部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略し、本実施形態の特徴となる部分について説明する。尚、以下の実施形態の説明において、複数台のプロジェクタにより作成される高精細な大画面カラー画像や原色数を増加させて色域を広げた多原色カラー画像を合成カラー画像として、各プロジェクタにより投影されたカラー画像を分割カラー画像と称している。
【0016】このマルチプロジェクションシステムは、画像読み込み部5と、投影位置と画像の分割を行う幾何補正部6と、明るさムラをなくすシェーディング補正部7と、各プロジェクタの色補正のための後述するプロファイルを予め測定してテーブルに記憶するプロファイル保存部21と、プロファイル保存部21から読み出したプロファイルを各分割カラー画像に作用させて、色ムラ等を補正するプロファイル作用部22と、各プロジェクタ3a〜3dへの画像信号を出力する画像出力部11とで構成され、分割カラー画像(パッチ画像)をそれぞれスクリーン2上の投光面に投影して精細な大画面の合成カラー画像を作成している。
【0017】このプロファイル保存部21には、それぞれのプロジェクタ1台あたりに予め測定されたM個のプロファイルからなるプロファイル群25a〜25nがテーブルにファイリングされている。また、プロファイル作用部22は、後述する色変換部12と、プロジェクタに基づいてプロファイル保存部21内の該当するプロファイルを選択するプロファイル選択部24と、プロファイル選択部24により選択されたプロファイルを参照して自然な繋がりや色合い、明るさを持つように、それぞれのプロジェクタ間の色合わせ、輝度合わせ、オフセット補正、シェーディング補正等の処理が行われる。
【0018】この色変換部12は、色の変換を行うマトリックス変換部14と、オフセット補正部15と、ガンマ特性の変換を行うガンマ変換部16と、シューティング補正部17とで構成され、カラー画像に対して階調補正と輝度補正を施している。ガンマ変換部16による階調補正においては、カラー画像データR(x,y)、G(x,y)、B(x,y)は、
【数1】
【0019】により階調補正を行われ、表示用カラー画像データRout、Gout、Boutを各プロジェクタへ出力する。ここで、γc−1(d)(c=r,g,b)は、階調補正データであり、最大値を”1”に正規化した入力信号値dに対する出力輝度の逆関数を表している。この階調補正データγc−1(d)は、プロジェクタのRGB各原色の入力信号値について、0から最大値に対するプロジェクタの表示輝度を測定することにより得られ、ガンマ変換部16の内部に予め記憶されているものとする。また、階調補正データγc−1の取得には、分光計、色差計、輝度計、ディジタルカメラ等の画像撮影装置などを用いることができる。スポット測光を行う分光計や、色差計、輝度計で階調補正データを取得する方法は、精度はよいが測定に時間を要し、カメラ等でグラデーションパターンを撮影することによって短時間で階調補正データを取得することもできる。
【0020】次に図2には、本実施形態との比較のために従来におけるプロファイル測定を行うための構成例を示し、プロファイルの取得について説明する。ここでは、プロファイル測定機として分光計を用いて、2台のプロジェクタにおける例で説明する。まず、画像出力装置11から出力される所定のカラー画像データに基づいて、プロジェクタ3aは順次スクリーン2上にR(赤)、G(緑)、B(青)の各単色画像を投影させる。分割カラー画像の中心で、これら各単色画像の最大発光時のXYZ三刺激値を分光計31で測定し、得られた測定データをプロファイルとしてプロファイル保存部21に記憶させる。次にプロジェクタ3bにおいても同様に、分光計31により得られた測定データ(プロファイル)をプロファイル保存部21に記憶させる。
【0021】また、プロファイル測定機として分光計31の他にも、色差計、輝度計、ディジタルカメラを用いて行うこともできる。ディジタルカメラを用いた場合には、画像出力装置11の指示により投影された所定の単色カラー画像を撮影して光電変換により得られたカラー画像データに基づいて、これら各単色画像の最大発光時の画像信号に基づくプロファイルを得る。
【0022】次に図3には、本実施形態に用いられるプロファイル測定を行うための構成例を示し、プロファイルの取得について説明する。この構成においては、前述した構成にさらに、分光計31の向きを変えて、その測定方向を切り替える駆動機構32を備えており、カラー画像内の複数箇所のプロファイル測定を自動で行う。前述した構成例では、測定毎に分光計31の測定方向を手動で動かしていたが、本構成例では、水平方向及び垂直方向の直交する2軸方向に回動させることができる駆動機構32に分光計31を取り付ける。この例では、三脚33に駆動機構32が取り付けられた構成例である。
【0023】これらの分光計31及び駆動機構32は、プロファイル測定制御部34により制御されており、複数箇所のプロファイル測定を行う場合には、駆動機構32を駆動させて所定位置が測定できるように分光計31を移動させて設定し、分光計31による測定を行わせて得られた測定データ(若しくは算出されたプロファイルデータ)をプロファイル保存部21に記憶させる。この箇所の測定が終了した後に、次の箇所へ分光計31の測定方向を移動させて測定を行う。
【0024】図4を参照して、複数台のプロジェクタ(3a〜3n)におけるそれぞれの分割カラー画像内のプロファイル測定について説明する。ここでは、プロジェクタ3aのみを取り出して説明する。この構成において、プロファイル保存部21には、それぞれのプロジェクタ1台あたりに予め測定されたM個のプロファイルを記憶させるための記憶領域(テーブル)が設けられている。
【0025】まず、画像出力部11の指示により所定の分割カラー画像がスクリーン2に投影される。この際、投影画面内には、例えば9個のマーカー35a〜35i等を合わせて表示させる。これらのマーカー位置を測定することにより、測定位置と得られたプロファイルとの関係を合致させる。後述する投影された画面上の位置情報は、主としてこのようなマーカー位置を基準としているが、画素位置(投影装置側)を基準としてもよい。
【0026】図5(a)、(b)には、このようなマーカーの例を示す。図5(a)に示す例では、プロジェクタに投影されたRGBの各色で塗りつぶされた分割カラー画像36の画面内に、これらの色とは異なる色の枠線の9個のマーカー37a〜37iが表示される。このマーカーエリア内を測定して、プロファイルを得る。他にも図5(b)は、クロスマークから成るマーカー38a〜38iを表示した後、その交差点部分に測定位置を定めた後、プロジェクタから分割カラー画像36を投影して測定を行い、プロファイルを得る。
【0027】以上説明した例では、図6に示すように、プロファイル測定時に測定を行うプロジェクタのみから分割カラー画像を投影させ、これ以外のプロジェクタは信号値0を出力させる。従って、分割カラー画像同士の重なり部分4を含めた輝度の大きさは、図7(a)に示すようになる。輝度の大きさと画素位置の関係においては、プロジェクタが投影した分割カラー画像のエッジの重なり部分4の輝度量(バイアス)が加算されて大きくなった特性となる。しかし、測定するプロジェクタ以外では信号値0を出力させているため、プロジェクタ3aの投影領域においては、図7(b)に示すような測定データを得ることができる。
【0028】このような測定方法によれば、他のプロジェクタが投影した分割カラー画像による影響を受けたプロファイルが測定されるが、計算を工夫することにより、個々のプロジェクタのプロファイルを算出することができる。特に、測定を行う構成が簡単であり、短時間でプロファイルを得ることができる。
【0029】次に、別のプロファイル測定について説明する。図8には、各プロジェクタの前方を移動可能な遮光装置37を備えた構成例を示す。この構成によれば、例えば、プロジェクタ3aの測定時にプロジェクタ3bの前方に遮光装置を配置して、プロジェクタ3bからの分割カラー画像がスクリーン2に届かないように遮光することができる。これにより、図9(a)に示すようなプロジェクタ3a,3bの輝度の大きさが、図9(b)に示すようなプロジェクタ3aのみの輝度の大きさとなる。従って、プロファイル測定時に、測定するプロジェクタ以外のプロジェクタを遮光した状態で、測定することにより、精度が高められたプロファイルを得ることができる。尚、複数のプロジェクタが備えられたシステムの場合には、測定する1台のプロジェクタ以外の投影画像を遮光してプロファイル測定を行う。また、連動して動く複数の遮光装置(遮光マスク)を配置して、複数のプロジェクタ配置のうち1台おきに投影させた分割カラー画像即ち、画像のエッジに重なり部分が無い状態の画像を測定すれば、遮光装置の移動回数が少なくなるため、測定時間が短縮される。この構成にさらに複数の分光器を備えて、並列処理が可能な構成であれば、測定時間をさらに短縮することができる。
【0030】次に図10を参照して、一例として4つの画像を貼り合わせた大画面カラー画像における面内4点測定データ選択方式について説明する。このマルチプロジェクションシステムは、図10(a)に示すように、4台のプロジェクタにより投影されるそれぞれの分割カラー画像の画面内の4箇所のプロファイルを作用させる。つまり、1つの構図のカラー画像1の画面を2×2の4分割した分割カラー画像1a〜1dを作成する。例えば、分割カラー画像1aにおいては、さらに4つに分割した各小領域40a〜40dの中央4箇所をプロファイル測定して、得られた測定データ(プロファイル)41a〜41dを記憶させておく。
【0031】ここでは、4個のプロファイルを測定した例であるが、M個の箇所のプロファイルを画面上の位置情報と共に予め測定して記憶させておき、投影されるカラー画像の構図や色彩等に応じてカラー画像の分割数を設定し、その分割数にあったプロファイルを選択してもよい。つまり、プロファイル選択部22は、出力されるプロジェクタと画面の位置情報から、適切なプロファイルを読み出せばよく、分割数は、3×3や5×5でも、それ以上であってもよい。また、この例では、分割された分割カラー画像の画面中央で測定したプロファイルを用いているが測定位置が限定されているものではない。
【0032】このように本実施形態によれば、1台のプロジェクタが投影する分割カラー画像画面内を複数に分割した小領域にそれぞれ合ったプロファイルを適用することにより、分割カラー画像の明るさを均一にして、色に対する補正を施すことができ、これをマルチプロジェクションシステムによる画像貼り合わせによる大画面カラー画像の作成に適用した場合には、分割カラー画像と分割カラー画像との繋ぎ目が目立たなくなり、明るさムラのない正しい色による高精細な大画面のカラー画像を作成することができる。
【0033】次に図11には、第2の実施形態として、原色数を増加させて色域を広げた多原色カラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示し説明する。なお、図11(a)、(b)に示す構成例において、前述した図1に示した構成部位と同等の部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略し、本実施形態の特徴となる部分について説明する。この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態におけるプロファイル作用部10にさらに多原色分解部18を備えた構成であり、発光特性が異なる例えば2台のプロジェクタにより1画面上に全画像が重なるように投影して、色の再現範囲を広げた多原色カラー画像を作成している。勿論、プロジェクタは2台に限定されているものではない。
【0034】図12には、一例として多原色カラー画像における面内4点測定データ選択方式を一例として説明する。ここでは、4箇所のプロファイルを作用させるために、測定時には1台のプロジェクタ3aから投影される分割カラー画像の画面を2×2の4分割し、分割された各小領域42a〜42dの画面中央を測定し、それぞれのプロファイル43a〜43dを作成し、プロファイル保存部27のテーブルに記憶させる。同様に得たプロジェクタ3bにおけるプロファイル44a〜44dも記憶させる。ここでは、4個のプロファイルを測定した例で説明したが、前述した第1の実施形態と同様にM個の箇所のプロファイルを予め測定して画面の位置情報と共に記憶させてておき、投影されるカラー画像の構図や色彩等に応じてカラー画像の分割数を設定し、その分割数にあったプロファイルを選択してもよい。分割数は、3×3や5×5でも、それ以上であってもよい。
【0035】これらのプロファイルを作用させて色変換処理を行う場合、プロファイル選択部24は、使用するプロジェクタ3a、3bと分割カラー画像の位置情報から適切なプロファイルを読み出して、プロファイル部23へ保持させる。保持されたプロファイルを適宜、色変換部12により作用させてカラー画像における明るさ補正や色補正を行う。この例では、分割カラー画像における各小領域の画面中央で測定したプロファイルを用いているが測定位置が限定されているものではない。また、投影によるカラー画像に発生する歪みは、幾何学補正により補正されている。
【0036】本実施形態によれば、各プロジェクタが投影する分割カラー画像の明るさを均一にして、色に対する補正を施すことができ、これをマルチプロジェクションシステムに適用した場合には、重ね合わせたカラー画像の画面全体に亘って色が忠実に再現された多原色画面を作成することができる。
【0037】次に図13には、第3の実施形態として、補間処理を利用して、高精細な大画面のカラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示し説明する。ここで、図13に示す構成例において、前述した図1に示した構成部位と同等の部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略し、本実施形態の特徴となる部分について説明する。
【0038】この第3の実施形態は、前述した第1の実施形態におけるプロファイル作用部22へ、さらにプロファイルデータ補間部28を設けて、マルチプロジェクションシステムに適用し、各プロジェクタの投影面内の位置情報に応じたプロファイルを選択して補間処理した後、色変換部12により作用させてカラー画像における明るさや色補正を行うものである。
【0039】その一例としては図14に示すように、例えば、分割カラー画像1aの画面内を例えば、7×5に分割した小領域を作成し、4隅の小領域に対して測定して、4個のプロファイルを得る。これらのプロファイルはプロファイル保存部21へ記憶させる。このプロファイルを作用させて明るさ補正や色補正を行う場合には、プロファイル選択部24は、出力されるプロジェクタと画像の位置情報から該当するプロファイルを読み出して、測定しなかった小領域における補間プロファイルを補間処理により生成して用いる。
【0040】図15及び図16を参照して、この第3の実施形態における補間処理を含む色変換処理について説明する。まず、幾何学補正処理として投影されるカラー画像が幾何補正部6により使用されるプロジェクタの台数分で分割され、分割カラー画像が生成される(S1)。この際に、画像に生じた歪み等が修正される。次に、プロジェクタの複数(p)台あるうちの色変換処理が行われるプロジェクタ(p=1)が決定される(S2)。この色変換処理は、1台分の分割カラー画像の処理が終了した後、残りのプロジェクタの画像に対しても同様な処理がそれぞれ行われる。
【0041】このプロジェクタにより投影された分割カラー画像の高さ方向の画素位置(最下位置の1画素目から最上位置の画素Yまで)をyとし、同様に画像の幅方向の画素位置(画面上で最左位置の1画素目から最右位置の画素Xまで)をxとする(S3,S4)。ここで、画素とは、プロジェクタの投光素子における画素を示唆している。これらのx,yは、位置情報となり、これで範囲を示すことにより、前述したマーカーのエリアを表すこともできる。
【0042】次に、図15に示すような分割カラー画像における四隅の4つのプロファイルの予め測定してあるプロファイルを取得する(S5)。この測定により得られたプロファイル(測定データ1〜4)は、測定データ1[s1=S(x1,y1)]、測定データ2[s2=S(x2,y2)]、測定データ3[s3=S(x3,y3)]、測定データ4[s4=S(x4,y4)]となる。
【0043】次に、補間パラメータを算出する(S6)。まず、測定データ1と測定データ3との中間位置における補間データSaのパラメータ、測定データ2と測定データ4との中間位置における補間データSbのパラメータ、補間データSaと補間データSbとの中間位置における補間データSnのパラメータを求める場合について説明する。
【0044】
a=(yn-y1)/(y3-y1)xa=(x3-x1)a+x1ya=yn補間データSbでは、Sb=(s4-s2)a+s2b=(yn-y2)/(y4-y2)xb=(x4-x2)b+x2yb=yn補間データSnでは、Sn=(Sb−Sa)n+San=(xn-xa)/(xb-xa)これらの補間パラメータを用いて測定により得られたプロファイルに補間処理を施して、補間プロファイルを作成する(S7)。これらのプロファイル(測定プロファイル及び補間プロファイル)を色変換部12で分割カラー画像に作用させて色補正を行う(S8)。次に分割カラー画像の画素位置をそれぞれインクリメントする(S9,S10)。さらに、分割カラー画像の明るさ補正や色補正が終了した場合には、補正処理を行っていないプロジェクタを選択して、前述したと同等にプロファイルを作用させて、色変換処理を施す(S11)。
【0045】図17は、測定データが正確な格子状に並んだ場合の補間処理を含む色変換処理について説明する。この場合の補間データSnでは、Sn=(s4-s3-s2+s1)an+(s2-s1)n+(s3-s1)a+s1a=(yn-y1)/(y3-y1)n=(xn-x1)/(x2-x1)これらの補間パラメータを用いて、前述したと同様に分割カラー画像に対して補正処理を行う。
【0046】この実施形態によれば、分割カラー画像の小領域全部を測定しなくとも、画面全域に亘って、プロファイルを求めることができるため、短時間でプロファイルを得ることができる。
【0047】また、前述した図17における測定は、分割カラー画像の四隅の4箇所で測定して他の小領域におけるプロファイルを補間により得たが、これに限定されるものではなく、図18に示すように、分割カラー画像の四隅及び中央の五箇所で測定を行い、また、図19に示すように分割カラー画像の四隅及びそれらの中間と、画面中央の9箇所の測定を行って、これら以外の小領域については、補間処理によりプロファイルが求められる。従って、4つの測定データから補間処理により求めたプロファイルよりも測定データに近い正確なプロファイルを得ることができる。分割カラー画像の面内分割は、縦横幾つかの小領域に分割してもよいし、画素群毎でもよい。
【0048】次に第4の実施形態として、補間処理を利用して、原色数を増加させて色域を広げた多原色カラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示し説明する。なお、本実施形態の構成は、前述した図11に示した構成例において、プロファイル作用部22のプロファイル選択部24とプロファイル部23との間に、新たにプロファイルデータ補間部28を設けた構成であり、プロファイル部23からプロファイル選択部24を介してプロファイルデータ補間部28へプロファイルが読み出される。
【0049】本実施形態は、図20に示すように、例えば、分割カラー画像の画面の4隅でプロファイルを測定する。分割カラー画像の画面を複数、例えば7×5の小領域に分割して、測定しなかった小領域については、測定データに基づき補間処理により、補間プロファイルを求める。これらのプロファイルを色変換処理に作用させる。
【0050】この実施形態によれば、分割カラー画像の小領域全部を測定しなくとも、画面全域に亘って、プロファイルを求めることができるため、短時間でプロファイルを得ることができる。
【0051】また、前述した第3の実施形態と同様に、分割カラー画像の四隅及び中央の五箇所の測定や、分割カラー画像の四隅及びそれらの中間と、画面中央の9箇所の測定を行って、これら以外の小領域については、補間処理によりプロファイルが求めてもよい。分割カラー画像の面内分割は、縦横幾つかの小領域に分割してもよいし、画素群毎でもよい。
【0052】以上の実施形態について説明したが、本明細書には以下のような発明も含まれている。
【0053】(1)複数台のプロジェクタの画像に対し位置合わせを行い、重ね合わせて投影するマルチプロジェクションシステムにおいて、各プロジェクタの特性をあらかじめ測定し保存するプロファイル保存部と、各プロジェクタのプロファイルを出力画像に作用するプロファイル作用部と、で構成され、上記プロファイル保存部が各プロジェクタ内の複数箇所のプロファイルを保存でき、上記プロファイル作用部はプロファイル選択部を具備し、複数のプロファイルから各プロジェクタの画像内の位置に応じて異なるプロファイルを用いて色変換を行うことを特徴とするマルチプロジェクションシステム。
【0054】(2)上記プロファイル作用部はプロファイルデータ補間部を具備し、複数のプロファイルから各プロジェクタ内の位置に応じて異なるプロファイルの補間したものを用いて色変換を行うことを特徴とするマルチプロジェクションシステム。
【0055】(3)上記複数台プロジェクタをスクリーン上でずらして投影し、大画面を実現する上記(1),(2)項に記載のマルチプロジェクションシステム。
【0056】(4)上記複数台プロジェクタをスクリーン上で重ねて投影し、明るさを向上あるいは、異なる発光特性を持つプロジェクタを用いて色域を広げる上記(1),(2)項に記載のマルチプロジェクションシステム。
【0057】(5)上記複数のプロファイルを測定し、所定のメモリに保存するプロファイル測定機を具備する上記(1),(2)項に記載のマルチプロジェクションシステム。
【0058】(6)上記プロファイル測定機は、少なくとも分光計、色差計、輝度計、デジタルカメラのいずれかを有していることを特徴とする請求項5に記載のマルチプロジェクションシステム。
【0059】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、各プロジェクタ毎に投光する分割カラー画像の画面を複数の小領域に分割して、それぞれに適切な色変換処理を施し、画面内の明るさや色を補正して他のプロジェクタが投光する分割カラー画像との貼り合わせ合成を行い、繋ぎ目が目立たない高精細な貼り合わせ大画面を構築したり、また重ね合わせ合成を行い、全画面に亘って色が忠実に再現されるマルチプロジェクションシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の大画面のカラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示す図である。
【図2】従来のプロファイル測定を行うための構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に用いられるプロファイル測定を行うための構成例を示す図である。
【図4】分割カラー画像内のプロファイル測定について説明するための図である。
【図5】プロファイル測定に用いられるマーカーの例を示す図である。
【図6】分割カラー画像の重なり部分について説明するための図である。
【図7】分割カラー画像の重なり部分の画素位置と輝度の関係について示す図である。
【図8】遮光装置を備えたプロファイル測定について説明するための図である。
【図9】図8における分割カラー画像の重なり部分の画素位置と輝度の関係について示す図である。
【図10】大画面カラー画像における面内4点測定データ選択方式について説明するための図である。
【図11】第2の実施形態の多原色カラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示す図である。
【図12】多原色カラー画像における面内4点測定データ選択方式について説明するための図である。
【図13】第3の実施形態の補間を用いて大画面のカラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムの構成例を示す図である。
【図14】大画面カラー画像における面内4点測定データによる補間について説明するための図である。
【図15】第3の実施形態における補間処理を含む色変換処理のルーチンを示す図である。
【図16】4点測定データによる補間計算について説明するための図である。
【図17】格子状に配置された4点測定データによる補間計算について説明するための図である。
【図18】大画面カラー画像における面内5点測定データによる補間について説明するための図である。
【図19】大画面カラー画像における面内9点測定データによる補間について説明するための図である。
【図20】第4の実施形態の多原色カラー画像を作成するマルチプロジェクションシステムについて説明するための図である。
【図21】従来のマルチプロジェクションシステムの一構成例を示す図である。
【図22】図21におけるプロファイル保存部及びプロファイル作用部の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1…合成カラー画像
1a〜1d…分割カラー画像
2…スクリーン
3a〜3d…プロジェクタ
4…重なり部分
5…画像読み込み部
6…幾何補正部
7…シェーディング補正部
8a〜8n…プロファイル
9…プロファイル保存部
10…プロファイル作用部
11…画像出力部
12…色変換部
13…プロファイル選択部
14…マトリックス変換部
15…オフセット補正部
16…ガンマ変換部
17…シューティング補正部
19…ファイル部
21…プロファイル保存部
22…プロファイル作用部
25a〜25n…プロファイル群
24…プロファイル選択部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数台のプロジェクタがそれぞれに投影する分割カラー画像に対して位置合わせを行い、合成画像を作成するマルチプロジェクションシステムにおいて、それぞれの上記プロジェクタが投影する分割カラー画像の画面内を複数の小領域に分割し、該小領域の明るさと色に関する特性を予め測定し、プロファイルとして、その画面内の測定位置を示唆する位置情報と共に保存するプロファイル保存部と、上記プロジェクタによる投影時に、出力する分割カラー画像の画面を任意数の小領域に分割して、これらの小領域の画面内位置に合った上記位置情報に基づき、上記プロファイル保存部からプロファイルを選択して読み出すプロファイル選択部と、読み出された上記プロファイルを、出力する上記分割カラー画像に対して作用させて色変換を行うプロファイル作用部と、を具備し、上記分割カラー画像の画面内及び全部の分割カラー画像に亘って、上記プロファイルにより明るさと色に関する画像補正を行って画像合成することを特徴とするマルチプロジェクションシステム。
【請求項2】 複数台のプロジェクタがそれぞれに投影する分割カラー画像に対して位置合わせを行い、合成画像を作成するマルチプロジェクションシステムにおいて、それぞれの上記プロジェクタが投影する分割カラー画像の画面内を複数の小領域に分割し、任意の小領域の明るさと色に関する特性を予め測定し、プロファイルとして、その画面内の測定位置を示唆する位置情報と共に保存するプロファイル保存部と、上記プロジェクタによる投影時に、出力する分割カラー画像の画面を任意数の小領域に分割して、これらの小領域の画面内位置に合った上記位置情報に基づき、上記プロファイル保存部からプロファイルを選択して読み出すプロファイル選択部と、読み出された上記プロファイルと上記位置情報から上記測定が行われなかった小領域において、上記プロファイルをデータとして用いた補間処理を行い、補間プロファイルを算出するプロファイルデータ補間部と、測定により得られた上記プロファイルと補間により求められた上記補間プロファイルを、出力する上記分割カラー画像に対して作用させて色変換を行うプロファイル作用部と、を具備し、上記分割カラー画像の画面内及び全部の分割カラー画像に亘って、上記プロファイルにより明るさと色に関する画像補正を行って画像合成することを特徴とするマルチプロジェクションシステム。
【請求項3】 上記マルチプロジェクションシステムにおいて、上記合成画像は、複数の分割カラー画像のそれぞれの端部部分が重なるように貼り合わせた大画面のカラー画像、若しくは、発光特性が異なる複数の分割カラー画像を重ね合わせて、原色数が増加され色域が広げられた多原色カラー画像のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項4】 上記マルチプロジェクションシステムにおいて、上記プロジェクタが投影する分割カラー画像の画面内を複数の小領域に分割し、任意の小領域の明るさと色に関する特性を測定し、得られた測定データをプロファイルとして出力するプロファイル測定機を、さらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項5】 上記プロファイル測定機は、少なくとも分光計、色差計、輝度計、デジタルカメラのいずれかを有していることを特徴とする請求項4に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項6】 上記プロファイル測定機は、プロファイルを測定する測定位置をエリアとして上記分割カラー画像の画面内に表示することをを特徴とする請求項4に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項1】 複数台のプロジェクタがそれぞれに投影する分割カラー画像に対して位置合わせを行い、合成画像を作成するマルチプロジェクションシステムにおいて、それぞれの上記プロジェクタが投影する分割カラー画像の画面内を複数の小領域に分割し、該小領域の明るさと色に関する特性を予め測定し、プロファイルとして、その画面内の測定位置を示唆する位置情報と共に保存するプロファイル保存部と、上記プロジェクタによる投影時に、出力する分割カラー画像の画面を任意数の小領域に分割して、これらの小領域の画面内位置に合った上記位置情報に基づき、上記プロファイル保存部からプロファイルを選択して読み出すプロファイル選択部と、読み出された上記プロファイルを、出力する上記分割カラー画像に対して作用させて色変換を行うプロファイル作用部と、を具備し、上記分割カラー画像の画面内及び全部の分割カラー画像に亘って、上記プロファイルにより明るさと色に関する画像補正を行って画像合成することを特徴とするマルチプロジェクションシステム。
【請求項2】 複数台のプロジェクタがそれぞれに投影する分割カラー画像に対して位置合わせを行い、合成画像を作成するマルチプロジェクションシステムにおいて、それぞれの上記プロジェクタが投影する分割カラー画像の画面内を複数の小領域に分割し、任意の小領域の明るさと色に関する特性を予め測定し、プロファイルとして、その画面内の測定位置を示唆する位置情報と共に保存するプロファイル保存部と、上記プロジェクタによる投影時に、出力する分割カラー画像の画面を任意数の小領域に分割して、これらの小領域の画面内位置に合った上記位置情報に基づき、上記プロファイル保存部からプロファイルを選択して読み出すプロファイル選択部と、読み出された上記プロファイルと上記位置情報から上記測定が行われなかった小領域において、上記プロファイルをデータとして用いた補間処理を行い、補間プロファイルを算出するプロファイルデータ補間部と、測定により得られた上記プロファイルと補間により求められた上記補間プロファイルを、出力する上記分割カラー画像に対して作用させて色変換を行うプロファイル作用部と、を具備し、上記分割カラー画像の画面内及び全部の分割カラー画像に亘って、上記プロファイルにより明るさと色に関する画像補正を行って画像合成することを特徴とするマルチプロジェクションシステム。
【請求項3】 上記マルチプロジェクションシステムにおいて、上記合成画像は、複数の分割カラー画像のそれぞれの端部部分が重なるように貼り合わせた大画面のカラー画像、若しくは、発光特性が異なる複数の分割カラー画像を重ね合わせて、原色数が増加され色域が広げられた多原色カラー画像のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項4】 上記マルチプロジェクションシステムにおいて、上記プロジェクタが投影する分割カラー画像の画面内を複数の小領域に分割し、任意の小領域の明るさと色に関する特性を測定し、得られた測定データをプロファイルとして出力するプロファイル測定機を、さらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項5】 上記プロファイル測定機は、少なくとも分光計、色差計、輝度計、デジタルカメラのいずれかを有していることを特徴とする請求項4に記載のマルチプロジェクションシステム。
【請求項6】 上記プロファイル測定機は、プロファイルを測定する測定位置をエリアとして上記分割カラー画像の画面内に表示することをを特徴とする請求項4に記載のマルチプロジェクションシステム。
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図1】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図11】
【図13】
【図16】
【図17】
【図14】
【図15】
【図18】
【図20】
【図19】
【図21】
【図22】
【図3】
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【図10】
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【図14】
【図15】
【図18】
【図20】
【図19】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2003−46751(P2003−46751A)
【公開日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−228484(P2001−228484)
【出願日】平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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