説明

ミクロ流体製品およびその製造方法

【課題】例えばロール製品形態で商業規模の量で効果的に製造でき、分析機能をはじめとする種々の機能を果たすように選択的に調整できる、ポリマーベースのミクロ流体製品に対する必要性がある。
【解決手段】(a)成形可能材料(10)と成形面を有する開放成形型(16)とを互いに線接触させて、ミクロ流体処理構造パターンを成形可能材料(10)上に捺印することにより、成形品を形成することと、(b)成形品を成形面から分離することとを含む成形品を作製する方法。この発明は、ミクロ流体処理構造を有する種々のポリマー製品も特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミクロ流体製品および該製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的流体サンプルなどの流体サンプルを分析したり、その他のやり方で操作するのに使用する計器装備のサイズを縮小する流れがある。縮小されたサイズは、非常に少量のサンプルを分析する能力、分析速度の増大、より少ない量の試薬を使用する能力、および総経費の低下をはじめとするいくつかの利点を提供する。
【0003】
ミクロ流体適用のための様々な装置が提案されている。これらの装置は典型的に、ミクロ流体処理構造を形成する1つ以上の構造体を備えた平版式にパターン化され蝕刻された表面を有するガラスまたはシリコン基材を含む。ポリイミド、ポリエステル、およびポリカーボネートなどの可塑性基材も提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばロール製品形態で商業規模の量で効果的に製造でき、分析機能をはじめとする種々の機能を果たすように選択的に調整できる、ポリマーベースのミクロ流体製品に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって第1の態様では、本発明は、成形可能材料と開放成形型の表面とを互いに線接触させて、成形可能材料上にミクロ流体処理構造を捺印するステップを含む成形品作製方法を特徴とする。それにより得られる成形品は、次に型の成形面から分離される。
【0006】
「ミクロ流体処理構造」とは、独立した所定のパターンに配列された1つ以上の流体処理構造体を指す。好ましくは構造は、約1000μm以下の寸法を有する少なくとも1つの構造体を含む。さらに流体は、好ましくはz方向(すなわち構造の平面に垂直な方向)で構造に出入りする。この発明の目的のために適切なミクロ流体処理構造の例は、微細溝部、流体溜め部、サンプル操作領域、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される構造体を含む。
【0007】
「開放成形型」とは、例えば射出成形で使用されるタイプの密閉金型に見られる、密封キャビティを欠く成形型である。
【0008】
「線接触」とは、型が成形可能材料に接触する点が、型および成形可能材料の双方に関して移動する線によって画定されることを意味する。
【0009】
一実施形態では、成形可能材料はエンボス加工可能なポリマー基材である。ミクロ流体処理構造パターンがポリマー基材表面にエンボス加工されて、成形品が作り出される。
【0010】
別の実施形態では、成形可能材料は流動可能樹脂組成物である。このような組成物の一例は硬化性樹脂組成物であり、この場合方法は、成形品を成形面から分離する前に、組成物を熱放射または化学線に曝して組成物を硬化することを含む。ここでの用法では「硬化」および「硬化性樹脂組成物」は、既に重合した樹脂を架橋すること、並びにモノマーまたはオリゴマー組成物を重合することを含み、その生成物は架橋熱硬化樹脂であるとは限らない。好ましい硬化性樹脂組成物の例は、組成物を成形面に接触させながら化学線に暴露して硬化させる光重合性組成物である。
【0011】
流動可能樹脂組成物の別の例は、成形面に接触しながら冷却されて固化する溶融熱可塑性組成物である。
【0012】
成形可能材料が流動可能樹脂組成物である場合、2つの好ましい成形方法がある。1つの好ましい方法によれば、流動可能樹脂組成物はポリマー基材主表面の上に導入され、基材と成形型が互いに相対的に移動して、型と流動可能樹脂組成物とが互いに線接触する。最終結果は、ミクロ流体処理構造を有する層がポリマー基材に一体的に結合する二層構造体である。
【0013】
成形可能材料が流動可能樹脂組成物である場合の第2の好ましい成形方法は、流動可能樹脂組成物を成形型の成形面の上に導入することを伴う。別のポリマー基材を流動可能樹脂組成物に組み合わせて、ミクロ流体処理構造を有する基材がポリマー基材に一体的に結合する二層構造体を作り出しても良い。
【0014】
基材を成形品に結合して、ミクロ流体処理構造に重なるカバー層を形成しても良い。好ましくは基材は、ポリマー基材である。成形品は、1つ以上のミクロ電子要素、ミクロ光学要素、および/またはミクロ力学要素と共に提供されても良い。これらのミクロ要素は種々なやり方で組みこまれても良く、全体的な方法の柔軟性が例証される。例えば成形可能材料がエンボス加工可能なポリマー基材である場合、基材はミクロ要素を含んでも良い。成形可能材料が流動可能樹脂組成物であり、方法が成形中に樹脂組成物をポリマー基材と組み合わせることを伴う場合、ポリマー基材はミクロ要素を含んでも良い。ミクロ要素をカバー層内に含めることも可能である。ミクロ要素は、成形品に結合する別の基材(好ましくはポリマー基材)の形態で供給されても良い。
【0015】
方法は好ましくは、連続工程として操作されるようにデザインされる。したがって成形可能材料は、成形型によって画定される成形ゾーン内に連続的に導入され、成形型は連続的に成形可能材料と線接触させられ、複数のミクロ流体処理構造が作り出される。好ましくは連続工程からは、複数のミクロ流体処理構造を含むロール形態の製品が生じる。ロールはそのままで使用でき、あるいは引き続いて複数の個々の装置に分割できる。追加的なポリマー基材は、製品に連続的に結合できる。例としては、カバー層と、ミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素を有する層とが挙げられる。
【0016】
第2の態様では本発明は、(A)(上で定義したような)ミクロ流体処理構造を含む第1の主表面と、第2の主表面と、を有する第1の非弾性ポリマー基材、および(B)第1の基材の第2の主表面に一体的に結合する第2のポリマー基材を含む製品を特徴とする。第2の基材は、第1の基材なしに自立する自立基材を形成できる。それは第1の基材に機械的な支えを提供し、ミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素などの追加的特徴を製品に組み込む手段も提供することで、デザインの柔軟性を提供する。
【0017】
「非弾性」材料は、z方向に循環性に変動する力がかけられた場合、ポンプまたはバルブの機能を果たすには、z方向(すなわち基材平面に直角な方向)に不十分な弾性を有する材料である。
【0018】
「一体的に結合する」とは、接着剤などの介在する材料を通じた結合とは対照的に、2つの基材が互いに直接結合することを意味する。
【0019】
製品は好ましくは、ミクロ流体処理構造に重なるカバー層を含む。第1の基材の第1の表面に結合しても良いカバー層は、好ましくはポリマー層である。
【0020】
製品は好ましくは、1つ以上のミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素を含む。ミクロ要素は、第1の基材、第2の基材、ポリマーカバー層、またはそれらの組み合わせに含まれても良い。
【0021】
第3の態様では本発明は、(上で定義したような)複数の離散したミクロ流体処理構造を含む第1の主表面と、第2の主表面と、を有する第1のポリマー基材を含むロール形態の製品を特徴とする。製品は好ましくは、第1の基材の第2の主表面に(上で定義したように)一体的に結合した第2のポリマー基材を含む。第2の基材は、第1の基材なしに自立基材を形成できる。
【0022】
製品は好ましくは、第1の基材の第1の主表面に結合したポリマーカバー層を含む。
【0023】
製品は好ましくは、1つ以上のミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素を含む。ミクロ要素は第1の基材、第2の基材、ポリマーカバー層、またはそれらの組み合わせに含まれても良い。
【0024】
第4の態様では本発明は、(A)(上で定義したように)ミクロ流体処理構造を含む第1の主表面と、第2の主表面と、を有する第1のポリマー基材、および(B)第2のポリマー基材を含む製品を特徴とする。第2の基材は、第1の基材の第2の主表面に(上で定義したように)一体的に結合した第1の主表面と、1つ以上のミクロ電子要素を含む第2の主表面と、第2の基材の第1および第2の主表面間に広がる通路とを有する。第2の基材は、第1の基材なしで自立基材を形成できる。
【0025】
第5の態様では本発明は、(上で定義したような)ミクロ流体処理構造を含む第1の主表面と、1つ以上のミクロ電子要素を含む第2の主表面と、基材の第1および第2の主表面間に伸びる通路とを有する第1のポリマー基材を含む製品を特徴とする。
【0026】
第6の態様では本発明は、(A)(上で定義したような)ミクロ流体処理構造を含む第1の主表面と、第2の主表面と、を有する第1のポリマー基材、および(B)ポリマーカバー層を含む製品を特徴とする。カバー層は基材の第1の主表面に重なる第1の主表面と、1つ以上のミクロ電子要素を含む第2の主表面と、カバー層の第1および第2の主表面間に伸びる通路とを含む。
【0027】
第7の態様では本発明は、(a)複数の離散したミクロ流体処理構造を含む第1の主表面、および第2の主表面を有する第1のポリマー基材を含むロール形態の製品を提供するステップと、(b)ミクロ流体サンプルをミクロ流体処理構造の1つに導入するステップと、(c)サンプルを(例えばサンプルを分析することで)処理するステップと、を含むミクロ流体サンプル処理のための方法を特徴とする。
【0028】
本発明は、ミクロ流体サンプルを(例えば分析)処理するのに有用な、容易に保存取り扱いできる都合の良いロール製品形態で、工業規模で連続的に製造できるポリマー製品を提供する。ロール製品は、例えば異なる流体を各ミクロ流体処理構造中に射出して、次に複数の操作を実施することを伴う巻き返し連続工程において、流体サンプルを処理するために直接使用できる。代案としてはロール製品は、製造に続いて複数の離散した装置に分離できる。
【0029】
製造方法は顕著なデザイン柔軟性を提供し、多くの処理ステップをインラインで実施することを可能にする。例えばミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素は、ミクロ流体処理構造を有する基材の一部として、カバー層の一部として、または基材に一体的に結合する第2のポリマー基材の一部として、種々の異なるやり方で製造中に製品に容易に組み込める。これらのミクロ要素を組み込む様々なデザインが可能である。多層製品も容易に作製できる。
【0030】
成形方法は十分に可変性であり、多くの異なるミクロ流体処理構造デザインが可能である。したがって製品は、例えば毛細管配列電気泳動、動力学的阻害アッセイ、競合的免疫測定法、酵素アッセイ、核酸雑種形成アッセイ、細胞選別、コンビナトリアルケミストリー、および通電クロマトグラフィーはじめとする多数の機能を果たすように製造できる。
【0031】
成形方法は、高い縦横比と可変の縦横比の特徴を有するミクロ流体処理構造の作製を可能にする。これによって、今度は改善された速度と分解能を示す構造体が提供される。例えば微細溝部の深さは、一定の微細溝部の幅を保ちながら変化できる。このような微細溝部は、圧電性弁なし拡散マイクロポンプのための垂直方向にテーパーした入口および出口拡散器を構築するのに使用でき、あるいは動電学的ゾーン制御または動電学的集束を提供するのに使用できる。同様に、高い縦横比の微細溝部幅も一定の深さでテーパーできる。得られる構造体もまた、動電学的ゾーン制御を提供するために有用である。
【0032】
微細溝部の深さと幅の双方をテーパーさせて、一定の断面積、あるいは代案としては一定の断面外周を提供することも可能である。一定の断面積または外周の結果、得られる構造体により、優勢に電気泳動的な流れまたは電気浸透的な流れのための溝部の長さ全体に、一定の電圧傾度が達成されるので、分解能を失うことなく単一分子検出のための光学的限局が提供される。この構造体は動電学的分解能を失うことなく、低縦横比および高縦横比構造体(例えば高縦横比射出ティー、低縦横比プローブ捕捉ゾーン、マイクロウェル反応器、または圧電ドライブ要素)間の移行を提供するのにも有用である。
【0033】
異なる深さを有する2つの交差する微細溝部を作製することも可能である。この特徴は、今度は、疎水性基材中にミクロ流体スイッチを作り出すのに利用することもできる。深さの違いのために、比較的浅い微細溝部の1つのアーム中の流体は、比較的深い方の微細溝部に緩衝液が導入されて交差点を橋わたししない限り、交差点を越えない。可変の深さの特徴は、免疫測定法または核酸アッセイにおいて、指示試薬と流体サンプルが自由に流れるのを許しながら、同時にプローブ捕捉ビーズ囲い込むための後配列を作製するのにも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ミクロ流体製品を作製するための連続的「キャストおよび硬化」方法の模式図である。
【図1a】図1に示す方法に従って作製されたミクロ流体製品の斜視図である。
【図2】ミクロ流体製品を作製するための連続的「押出しエンボス加工」方法の斜視図である。
【図2a】図2に示す方法に従って作製されたミクロ流体製品の斜視図である。
【図3】ミクロ流体製品を作製するための連続的「押出しエンボス加工」方法の第2の実施形態の斜視図である。
【図3a】図3に示す方法に従って作製されたミクロ流体製品の斜視図である。
【図4】ミクロ流体製品を作製するための連続的「押出しエンボス加工」方法の第3の実施形態斜視図である。
【図4a】図4に示す方法に従って作製されたミクロ流体製品の斜視図である。
【図5】ミクロ流体製品を作製するための連続的「押出しエンボス加工」方法の第5の実施形態の模式図である。
【図5a】図5に示す方法に従って作製されたミクロ流体製品の斜視図である。
【図6】ミクロ流体製品を作製するための連続的「基材エンボス加工」方法の斜視図である。
【図6a】図6に示す方法に従って作製されたミクロ流体製品の斜視図である。
【図7】図7は、ミクロ流体製品を作製するための「基材エンボス加工」方法の第2の実施形態の斜視図である。
【図7a】図7に示す方法に従って作製されたミクロ流体製品の斜視図である。
【図8】成形に続いてカバー層がミクロ流体構造を有する基材にラミネートされる、ミクロ流体製品を作製するための連続工程の模式図である。
【図9a】ミクロ電子要素と共に提供されるカバー層と組合わさった、ミクロ流体処理構造を有する基材を示す断面図である。
【図9b】ミクロ電子要素と共に提供されるカバー層と組合わさった、ミクロ流体処理構造を有する基材を示す断面図である。
【図10a】代表的なミクロ流体処理構造のデザインを示す模式図である。
【図10b】代表的なミクロ流体処理構造のデザインを示す模式図である。
【図11a】複数の導電性トレースおよび導体パッドを特徴とする可撓性ポリマー基材の上面図である。
【図11b】基材主表面上の複数のミクロ流体処理構造を特徴とする可撓性ポリマー基材の上面図である。
【図12】図11bに示す基材に見当合わせしてラミネートされた図11aに示す基材の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の他の特徴および利点は、以下の好適な実施形態の説明および請求の範囲から明らかになろう。
【0036】
本発明は、処理(例えば分析)のためのポリマーベースミクロ流体処理構造を有する製品、ミクロ流体サンプル、および製品を製造するための連続的巻き返し方法を特徴とする。(「連続的キャストおよび硬化」方法と称される)方法の一実施形態を図1に示す。図1に関して、流動可能で好ましくは本質的に無溶剤の光硬化性樹脂組成物10は、ダイ12から連続した可撓性の光学的に透明な基材14の表面に押出される。
【0037】
基材14のために適切な材料の例としては、ポリ(メチルメタクリレート)ポリカーボネート、ポリエステル、およびポリイミドが挙げられる。適切な光硬化性樹脂組成物の例としては、アルキルアクリレートおよびメタクリレート(例えばポリメチルメタクリレート)が挙げられる。組成物は光開始剤も含む。適切な光開始剤の例としては、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテルと、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−1−フェニルアセトフェノン、およびジメトキシヒドロキシアセトフェノンなどの置換アセトフェノンと、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α−ケトールと、2−ナフタレン塩化スルフォニルなどの芳香族塩化スルフォニルと、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシムとが挙げられる。組成物に組み込んでも良いその他の成分としては、モノヒドロキシおよびポリヒドロキシ化合物、チキソトロープ剤、可塑剤、強化剤、顔料、充填材、研磨性顆粒、安定剤、光安定剤、抗酸化剤、流れ剤、増粘剤、つや消し剤、着色剤、バインダー、発泡剤、殺黴剤、殺菌剤、界面活性剤、ガラスおよびセラミックビーズ、そして有機および無機繊維の織布および不織布ウェブなどの補強剤が挙げられる。
【0038】
樹脂10および基材14は、樹脂10の表面に所望のミクロ流体処理構造パターンを捺印するために、成形型16の成形面に接触させられる。図1に示すように成形型16は、時計方向に回転するロールまたはエンドレスのベルト形態である。しかしそれは、円筒型スリーブの形態をとっても良い。成形型は、レーザー削摩マスタリング、電子ビームフライス削り、写真平版、x線平版、機械フライス削り、および罫書きをはじめとする種々のマスタリング技術を使用して作製されても良い。これは所望のミクロ流体処理構造のパターンを有する。
【0039】
特定の構造デザインは、製品が機能することが意図される所望の操作に基づいて選択される。代表的なデザインを図10a、図10b、および図11bに示す。デザインは競合的アッセイチップ(図10a)、およびラダーチップ(図10b)、および電気泳動チップ(図11b)を含む。構造は微細溝部、流体溜め部、およびサンプル操作領域の様々な組み合わせを特徴とする。図10aおよびbに示す個々のマイクロアーキテクチャ構造体の寸法は、このようなチップに使用される典型的な寸法の代表である。あらゆる所定のチップの特定の寸法は異なっても良い。
【0040】
樹脂10は、成形型16の回転する表面に線接触させられる。線11は樹脂10の上流端によって画定され、型16の回転に従って型16および樹脂10の双方に対して移動する。基材14は、成形型16の表面に樹脂10が接触する際に、後者との接触を保つ。あらゆる過剰な樹脂は最小化され、その後、型16、基材14、および樹脂10は、好ましくは紫外線放射の形態である放射源18からの化学線に曝されて、樹脂組成物が型16の成形面との接触を保ちながら硬化する。暴露時間および用量レベルは、樹脂10の厚さをはじめとする個々の樹脂組成物の特徴に基づいて選択される。
【0041】
図1aに示すように、得られる生成物20は、基材14に一体的に結合した複数のミクロ流体処理構造24を有するポリマー基材22を特徴とする、二層シートの形態である。成形に続いてシートをロール(図示せず)に巻き取って、ロール形態の製品を製造しても良い。
【0042】
成形可能な樹脂組成物として熱硬化性樹脂組成物を使用して、キャストおよび硬化方法を実施することも可能であり、この場合化学線ではなく、熱放射源(例えば加熱ランプ)が用いられる。
【0043】
この方法の変法として、溶融熱可塑性樹脂が成形可能な樹脂組成物として使用される。型と樹脂の組み合わせは接触に続いて冷却され、樹脂が(硬化ではなく)固化される。
【0044】
ミクロ流体製品は、押出しエンボス加工方法に従って作製されても良い。この方法の様々な実施形態を図2〜5に示す。図2について述べると、流動可能樹脂組成物は、樹脂が成形型16の回転する表面に線接触するように、ダイ12から成形型16の回転する表面に直接押出される。適切な樹脂組成物の例としては、上述の光硬化性、熱硬化性、および熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。線は樹脂の上流端によって画定され、型16が回転するにつれて型16と樹脂の双方に対して移動する。図2aで示すように、得られる生成物は、複数のミクロ流体処理構造24を有するポリマー基材23を特徴とする、シート形態の単一製品26である。シートをロール(図示せず)に巻き取って、ロール形態の製品を製造しても良い。
【0045】
図3は、図2に示す押出しエンボス加工方法の別の変形例を図解する。図3に示すように、ポリマー基材28は型16によって画定される成形ゾーンに導入され、型16の回転する成形面に線接触させられる。基材28のための適切な材料としては、基材14について上述したものが挙げられる。光学的に透明でない基材を使用しても良い。(上述のように)流動可能樹脂組成物は、型16の成形面に線接触する基材28の表面と対向する基材28の表面に、ダイ12から押出される。成形型16は、基材28の表面に複数のミクロ流体処理構造をエンボス加工する。図3aに示すように得られる製品は、基材28上に押出された樹脂から形成したポリマー32に一体的に結合した、複数のミクロ流体処理構造24を有するポリマー基材28を特徴とする、二層シート30の形態の製品である。成形に続いてシートをロール(図示せず)に巻き取って、ロール形態の製品を製造しても良い。
【0046】
図4は図2に示す押出しエンボス加工方法のさらに別の変形例を図解する。図4に示すように、(上述のような)流動可能樹脂組成物は、樹脂が成形型16の回転する表面に線接触するように、ダイ12から成形型16の回転する表面に押出される。図2に示す実施形態と同様に、線は樹脂の上流端によって画定され、型16が回転するにつれて型16と樹脂の双方に対して移動する。同時に、第2のポリマー基材34が樹脂に接触するように、型16によって画定される成形ゾーン内に導入される。基材34のための適切な材料としては、基材14の文脈で上述した材料が挙げられる。光学的に透明でない基材も使用できる。得られる製品は、ポリマー基材34に一体的に結合した複数のミクロ流体処理構造24を有するポリマー基材38を特徴とする、二層シート36の形態である。成形に続いてシートをロール(図示せず)に巻き取って、ロール形態の製品を製造しても良い。
【0047】
図5は、押出しエンボス加工方法のさらに別の実施形態を図示する。図5に示すように、(上述のような)流動可能樹脂組成物は、樹脂が成形型16の回転する表面に線接触するように、ダイ12から成形型16の回転する表面に押出される。図2に示す実施形態と同様、樹脂の上流端によって画定される線は、型16が回転するにつれて、型16と樹脂の双方に対して移動する。第2のダイ40からの追加的樹脂は、成形型16に接触する樹脂上に押出される。
【0048】
得られる生成物は、ダイ40から押出された樹脂から形成するポリマー基材46と一体的に結合する複数のミクロ流体処理構造24を有するポリマー基材44を特徴とする、シート形態の二層製品42である。成形に続いてシートをロール(図示せず)に巻き取って、ロール形態の製品を製造しても良い。追加的な押出しダイを組み込むことによって、追加的なポリマー層を形成することも可能である。代案としては、適切な送りブロックを装着した単一ダイを使用して、複数のポリマー層を同時押出ししても良い。
【0049】
さらに別の実施形態では、製品が基材エンボス加工によって作製されても良い。図6に図示するように、単一のエンボス加工可能な基材48が、成形型16と線接触させられて、ミクロ流体処理構造が基材表面に直接形成する。線11は(a)基材48の上流端と、(b)ローラー50および成形型16の回転する表面の間に形成するニップとの交差によって形成する。任意にローラー50は、ミクロ流体処理構造パターンを有する成形面を有することができる。得られる製品は、その主表面の双方に複数のミクロ流体処理構造を有する基材を特徴とする。
【0050】
図6aに示すように、得られる生成物は、複数のミクロ流体処理構造24を有するポリマー基材48を特徴とする、シート形態の単一の製品52である。シートをロール(図示せず)に巻き取って、ロール形態の製品を製造しても良い。
【0051】
図7は、図6に図示されるエンボス加工方法の変形例を図示する。図7に示すようにエンボス加工可能な基材48は、成形型16に線接触させられて、ミクロ流体処理構造が基材表面に直接形成する。線11は(a)基材48の上流端と、(b)ローラー50に加えて第2のポリマー基材54および成形型16の回転する表面の間に形成するニップとの交差によって形成する。基材54は、型16の成形面に接触する表面と対向する基材48の表面に、接触するように位置する。
【0052】
図7aに示す得られる製品は、ポリマー基材54に一体的に結合する複数のミクロ流体処理構造24を有するポリマー基材48を特徴とする、シート形態の二層製品56である。シートをロール(図示せず)に巻き取って、ロール形態の製品を製造しても良い。
【0053】
成形に続いて「素材板」の形態の製品は、ローラーに巻き取って保管できる。操作可能なミクロ流体処理装置を組み立てるために、素材板はミクロ流体処理構造を有する層に重なる別のカバー層と組み合わせられる。この形態で、装置はミクロ流体サンプルの処理(例えば分析)において有用である。
【0054】
カバー層のための材料は、ミクロ流体処理構造を有する基材と流体密シールを形成できる。さらにそれらは、サンプル分析のために典型的に使用される緩衝液などの試薬の存在下で劣化に抵抗し、好ましくは背景蛍光および吸収を最小化する。後者の特徴は、装置が蛍光ベースの分析技術と共に使用される際に特に有用である。
【0055】
カバー層は、基材のミクロ流体処理構造を有する表面に結合するポリマー基材の形態をとっても良い。適切なポリマー基材の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレン、およびポリプロピレンが挙げられる。結合は、感圧接着剤(例えばShellから商品名「Kraton」ゴムの下に市販されるスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体接着剤)、ホットメルト接着剤(例えばエチレン−酢酸ビニル接着剤)、型押し接着剤、またはヒートセット接着剤(例えばエポキシ接着剤)を使用してもたらされても良い。接着剤は、基材20上の離散した部位で結合が生じるように、パターンの形態で配置されても良い。結合は、ミクロ流体処理構造を有する基材に、カバー層を直接ラミネートまたは溶剤接着してもたらされても良い。
【0056】
ガラスカバー層などの硬質カバー層も使用できる。さらにカバー層は、製品がそれと共に使用されるようにデザインされた分析計器装備の一部でも良い。
【0057】
図8は、ミクロ流体処理構造を有する基材64に、カバー層をインラインで追加する好ましい方法を図示する。図8に示すように、製品64は、成形ゾーンの下流に位置するラミネート加工ゾーンに搬送される。ラミネート加工ゾーンは、ローラー66上の可撓性ポリマーカバー基材58を含む。ラミネート加工ゾーン内で、カバー基材58はローラー60と66の間で製品64にラミネートされる。
【0058】
上述の製品は全て、その主表面の片側または両側に複数のミクロ流体処理構造がある単一基材を特徴とするが、共に結合するこのような基材の層を特徴とする製品を作製することも可能である。このような多層製品を製造する一つの方法は、図8に示すカバー基材をミクロ流体処理構造を有する基材に代えることである。
【0059】
例えば微細溝部内面などのミクロ流体処理構造の部分に、薄膜無機コーティングを選択的に付着しても良い。付着は製造中にインラインで、または引き続く操作中のどちらに生じても良い。適切な付着技術の例としては、真空スパッタリング、電子ビームメッキ、溶液メッキ、化学蒸着が挙げられる。
【0060】
無機コーティングは、種々の機能を果たすことができる。例えばコーティングは、ミクロ流体処理構造の親水性を増大する、または高温特性を改善するのに使用できる。特定のコーティングの塗布は、サイジングゲルを電気泳動装置の微細溝部に吸上げることで容易にできる。導電性コーティングは、圧電または蠕動ポンピングのための電極またはダイヤフラムを形成するのに使用できる。コーティングは、ガスクロマトグラフィなどの用途でガス放出を防止するためのバリヤーフィルムとして使用できる。
【0061】
ミクロ流体処理構造の様々な部分に、試薬、生物学的プローブ、生体適合性コーティングなどを選択的に付着することも可能である。代案としてはこれらの材料をカバー層の表面に所定のパターンに付着して、ミクロ流体処理構造に接触させても良い。
【0062】
製品は、好ましくは1つ以上のミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素も含む。ミクロ電子要素の例としては、導電性トレース、電極、電極パッド、ミクロ加熱エレメント、静電気的駆動ポンプおよびバルブ、ミクロ電気機械的システム(MEMS)などが挙げられる。ミクロ光学要素の例としては、光学的導波管、導波管検出器、反射要素(例えばプリズム)、ビームスプリッター、レンズ要素、固体光源および検出器などが挙げられる。ミクロ力学要素の例としては、フィルター、バルブ、ポンプ、気圧および水圧ルーティングなどが挙げられる。ミクロ要素は、カバー層、ミクロ流体処理構造を有する基材のどちらかの面、ミクロ流体処理構造を有する基材に結合する追加的なポリマー基材、またはそれらの組み合わせに組み込まれても良い。
【0063】
ミクロ要素は種々の機能を果たす。例えばミクロ流体処理構造内の特定の点で流体に接触するミクロ電子要素は、構造を通じて動電学的に高度に制御しながら流体を送るようにデザインできる。このようなミクロ電子要素は、動電学的射出、毛細管電気泳動、および等電点電気泳動などの操作、並びに毛細管配列電気泳動やコンビナトリアルケミストリーなどの用途のために、正確な量の試薬を1つ以上のサンプル操作領域にデリバリするような、より複雑な操作を可能にする。
【0064】
流体に接触するミクロ電子要素は、細胞、核酸断片、および抗原などの荷電生物学的化学種の自由野電気泳動的選別のためのアドレス可能電子マトリックスを形成するようにデザインしても良い。特定の点で流体に接触するミクロ電子要素を使用して、化学種を電気化学的に検出しても良い。
【0065】
流体に接触しないミクロ要素をデザインすることも可能である。例えばミクロ電子要素は、それらを使用して流体サンプルを加熱冷却し、あるいはミクロ流体処理構造全体に異なる温度ゾーンを確立できるように、ミクロ流体処理構造のすぐ近くに位置するようにデザインできる。このようなゾーンは今度は、核酸のPCR増幅およびコンビナトリアルケミストリー実験などの用途に必要な熱サイクルをサポートするように使用できる。さらにミクロ流体処理構造のすぐ近くに位置するミクロ電子要素は、ミクロ流体分離システム中の分析物検出に有用な、ACインピーダンス変化を検出するアンテナを形成するようにデザインできる。
【0066】
ミクロ流体処理構造を有する製品中に、ミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素を組み込むいくつかの異なる方法がある。例えばミクロ要素をカバー層70中に組み込んで、次にそれを上述のように基材68に結合しても良い。ミクロ電子要素が関与するこのような配列を図9aおよび図9bに示す。カバー層70は、ミクロ流体処理構造を有する基材68の表面の1つに結合する。図9aおよび図9bに示すミクロ流体処理構造は、吸込口72、流体溜め部74、および微細溝部38を含む。カバー層70は、導電回路トレース78に終わる溜め部74に連絡する導電性通路76を特徴とする。トレース78は溜め部74に電圧をかけて、流体またはその中の構成成分をミクロ流体処理構造全体に送る電極の役目を果たす。図9bに示すように通路76を金属で満たして、溜め部74に連絡する導電性「バンプ」80を形成しても良い。
【0067】
製品中にミクロ電子要素を組み込む別の方法は、一連の導電性トレース(例えばニッケル、金、プラチナ、パラジウム、銅、導電性銀入りインク、または導電性炭素入りインクからできたトレース)を有する可撓性ポリマー基材を提供し、次にこの基材の表面にミクロ流体処理構造を形成することを伴う。適切な基材の例としては、KlunらのU.S.5,227,008号およびGerberらのU.S.5,601,678号で述べられたものが挙げられる。次に基材はミクロ流体処理構造を有する基材になる。
【0068】
ミクロ流体処理構造は、いくつかの方法で形成できる。例えば基材の導電性トレースを有する表面は、図6に述べるエンボス加工方法に続いて、所望のミクロ流体処理構造のパターンを有する成形面を有する成形型と接触させることができる。接触に続いて基材はエンボス加工されて、導電性トレースと同一表面にミクロ流体処理構造が形成する。トレースパターンおよび成形面は、導電性トレースがミクロ流体処理構造の適切な特徴に合致するようにデザインされる。
【0069】
同一成形型を使用して、導電性トレースを有する表面に対向する基材表面に、ミクロ流体処理構造をエンボスすることも可能である。この場合エンボス加工の前に、一連の導電性通路または貫通孔と共にトレースを有さない表面が提供されて、導電性トレースをミクロ流体処理構造の適切な構造体にリンクする。
【0070】
代案としては、例えば型押し接着剤を使用して、導電性トレースがミクロ流体処理構造の適切な特徴と合致するように、ミクロ流体処理構造を有するポリマー基材の表面にミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素を有する別個のポリマー基材を結合することも可能である。
【0071】
図1、図3、図4および図7で述べた製造工程に続いて、ミクロ流体処理構造を有する基材に結合する別個のポリマー基材中に、ミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素を導入することも可能である。この目的を達成するために、その1主表面に一連の導電性通路およびバンプを有する可撓性基材が、基材14、28、34または54として使用される。次に上述のように、基材の通路およびバンプを有する表面にミクロ流体処理構造が成形される。
【0072】
成形に引き続いて、ミクロ流体処理構造を有する基材にラミネートされた別個のポリマー基材中に、ミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素を導入することも可能である。
【0073】
製品にミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素を装備する別の方法は、ミクロ流体処理構造を1表面に有するポリマー基材に対して、対向する表面を通して導電性ポストまたはピンを挿入することを伴う。代案としては、z軸導電性接着剤(例えばミネソタ州セントポールの3M Companyから市販されるZ軸接着剤フィルム7303)を使用しても良い。次に製品を基板に加圧マウントできる。この方法の変法では、電気的接続を提供するために、ミクロ流体処理構造を有する基材に重なるカバー層を通して、導電性ポストまたはピンを挿入できる。
【0074】
製品にミクロ電子、ミクロ光学、および/またはミクロ力学要素を装備させるさらに別の方法は、従来の金属付着および光平版技術を使用して、1表面にミクロ流体処理構造を有するポリマー基材に対し、導電性パターン金属トレースを表面に直接付着することを伴う。
【0075】
製品を使用して、分析手順をはじめとする種々の手順を実施しても良い。連続的巻返し方法において、多くの離散したミクロ流体処理構造を含有するロールを直接使用しても良い。この方法では、ミクロ流体サンプルを各ミクロ流体処理構造の吸込口内に射出するミクロ流体サンプルディスペンサーに、ロールが連続的に供給される。次に得られたサンプルは、適宜処理(例えば分析)される。代案としては、ロールを細長く切って、バッチ操作で使用するのに適した多くの個々の装置を形成しても良い。
【0076】
ここで本発明を、以下の実施例によってさらに詳しく説明する。
【0077】
実施例
実施例1
エンドレスのベルトの形態であるミクロ構造ニッケル成形型を使用して、それぞれが多くのミクロ流体処理構造を含有する2つの別個のフィルムのロールを作製した。成形型の一方が図10aに示すミクロ流体処理構造パターンを有し、他方が図10bに示すパターンを有するようにデザインされた。成形型はポリイミド基材をエキシマーレーザー削摩して所望のパターンを生成し、次に型押し領域を電気メッキして、指示されたパターンを有するニッケル型を形成して製造された。次に成形型を連続的押出しエンボス加工で使用して、次のようにして製品を製造した。
【0078】
ペンシルベニア州ピッツバーグのMobay Corporationから入手できるMakrolonTM2407ポリカーボネートのペレットを、高さ50μmおよび名目幅64μmのリブを有する、加熱したミクロ構造ニッケル成形型表面にキャストした。これらのリブは最終成形品中の微細溝部に対応した。リブは図10aおよび図10bに示すように、高さ50μmおよび直径4mmのいくつかの溜め部に連絡するように配列されていた。ニッケル成形型の厚さは508μmで、成形型温度は210℃であった。温度282℃の溶融ポリカーボネートを型表面との接触線の形態でニッケル成形型にデリバリして、およそ1.66×107パスカルの圧力で0.7秒間、型表面にパターンを複製した。複製パターンの形成と同時に、厚さおよそ103.9μmを有する成形型の上に位置する連続的なポリマー基材に、追加的なポリカーボネートを付着した。次に成形型、基材、および溶融ポリカーボネートの組み合わせを温度およそ48.9℃で18秒間空冷して、ポリカーボネートを固化させた。次に得られた成形物を型表面から外した。
【0079】
実施例2
実施例1で使用した成形型を199〜207℃の温度に加熱した。ポリ(メチルメタクリレート)ペレット(ペンシルベニア州フィラデルフィアのRohm and Haas Co.からのプレキシガラスTMDR 101)をデリバリし、温度271℃、圧力1.1×107パスカルで0.7秒間ポリマーとニッケル成形型との線接触を提供した。複製パターンの形成と同時に、厚さおよそ212.1μmを有する成形型の上に位置する連続的なポリマー基材に、追加的なポリ(メチルメタクリレート)を付着した。成形型、ポリマー基材、および溶融ポリ(メチルメタクリレート)の組み合わせをおよそ48.9℃の温度で18秒間空冷して、ポリ(メチルメタクリレート)を固化させた。次に得られた成型物を型表面から外した。
【0080】
実施例3
59.5重量部のPhotomerTM316(ペンシルベニア州アンブラーのHenkel Corp.から市販されるエポキシジアクリレートオリゴマー)、39.5重量部のPhotomerTM4035(ペンシルベニア州アンブラーのHenkel Corp.から市販される2−フェノキシエチルアクリレートモノマー)、および1部のDarocurTM1173光開始剤(ニューヨーク州タリータウンのCiba Additives)の紫外線放射−硬化性配合物を作製した。次に66℃に加熱した実施例1で述べた型と厚さ0.5mmのポリカーボネートシート(マサチューセッツ州ピッツフィールドのGeneral Electric Corp.から商品名「Lexan」の下に入手できる)との間に、配合物をラミネートした。手動のインクローラーを使用して、樹脂の厚さを最小化した。得られた構造体をコンベヤベルトに載せて、600W/インチで作動する強力紫外線灯(メリーランド州ゲーサーズバーグのFusion UV Systems, Inc.から供給される「D」ランプ)の下を分速7.6mで通過させて、樹脂を硬化した。次に、ポリカーボネート基材に一体的に結合するミクロ流体処理構造を有するポリマー基材を特徴とする、硬化した製品を成形型から外した。
【0081】
実施例4
この実施例では、複数のミクロ流体処理構造を有するポリマー基材が、ミクロ電子要素を特徴とするポリマー基材に組み合わされることを特徴とするミクロ流体装置の作製について述べる。
【0082】
実施例1で述べた一般的方法に従って作製されたニッケル成形型を使用して、プレス中でポリ(メチルメタクリレート)フィルム(DRG−100、Rohm and Haas)を成形し、複数のクロスドッグボーンのミクロ流体処理構造116を有する図11bに示すポリマー基材114を作製した。型の大きさは16.5cm×19cm×厚さ0.5mmであり、図11aに示すように5つの異なるクロスドッグボーンミクロ流体処理構造116を含んだ。フィルムおよび成形型を温度199℃、圧力3.5×106パスカルで15秒間互いに接触させ、その後10分間、圧力を6.2×106パスカルに増大させた。その後15秒間、圧力を6.2×106パスカルに保ちながら温度を74℃に低下させた。得られた成形基材114は、それぞれが長さ9mmの短い溝部に交差する、長さ28.5mmの長い溝部を有する5個の異なるクロスドッグボーンのミクロ流体処理構造116を特徴とした。各溝部は、直径5mmの流体溜め部で終わった。溝部と溜め部のどちらも深さが50μmだった。5個の構造は溝部の幅が異なり、それぞれ64、32、16、8および4μmの幅を有した。次に直径1mmの吸込口を各溜め部の中央に穿孔した。
【0083】
図11bに示すような複数のミクロ電子回路素子を有する可撓性ポリマー基材100は、次のようにして作製した。ポリイミドシート(DuPontから商品名「Kapton E」の下に入手できる)を酸化クロムのつなぎ層で蒸気被覆し、次にそれを2μmの銅で蒸気被覆した。次に製造元の指示に従って、プリント回路基板転写レジスト(ニュージャージー州リンゴズのTechniks Inc.から商品名「Press−n−Peel」の下に入手できる)を使用して、ミクロ電子回路を銅被覆ポリイミド上に転写した。得られた基材100は、それぞれが4個の導電性銅トレース110を有する6個の同一のミクロ電子回路パターンを含んだ。トレース110のそれぞれは、導体パッド112に終わっていた。
【0084】
パターニングに続き銅蝕刻槽を使用して、露出した銅を除去した。次に酸化クロム蝕刻液を使用して酸化クロムのつなぎ層を蝕刻し、アセトン浴を使用して転写レジストを除去した。得られた銅トレースは幅500μmで、5mm平方の導体パッドを辺縁タブに有した。
【0085】
次のようにして基材100を基材114にラミネートし、図12に示すミクロ流体製品118を作り出した。基材100および基材114の双方を等分割して個々の装置を製造した。クロスドッグボーンのミクロ流体処理構造116中の流体溜め部に対応するように、1片の両面接着テープ(ミネソタ州セントポールの3M Companyから入手できる9443テープ)に孔を開けた。次に基材100の回路を有する面が基材114のミクロ流体処理構造面に合致して、銅トレース110とミクロ流体処理構造の流体溜め部とが接触するように、各ミクロ流体処理構造116を基材100上の回路にラミネートした。ラミネートは、ニップローラーを使用して、2つの基材の線接触ラミネートを提供してもたらされた。次に得られたミクロ流体製品118を使用して、次のようにして動電学的射出および電気泳動的分離を例証した。
【0086】
ミクロ流体処理構造116を4mMのNa247緩衝液(pH=9.0)でフラッドした。次に分析物溜め部を同一緩衝液に溶解した20μモルのフルオレセイン指示染料で満たした。導体パッド112をコンピュータ制御された電圧制御回路に接続して、4個の溜め部に電圧をかけた。CCDカメラ(Panasonic CL 354、ニュージャージー州セコーカスのPanasonic Industrial Co.)を装着したLeica DMRXエピ蛍光顕微鏡(イリノイ州ディアフィールドのLeica Inc.)を使用して、流体溝部内の蛍光指示染料の動きをモニターした。ピンチサンプル射出のために、分析物サンプルおよび廃棄溜め部から分析物廃棄溜め部に向けて電圧傾度が提供されように、4個の溜め部における電圧を設定した。これによってフルオレセイン指示染料が、分析物溜め部から射出ティー全体に、そして分析物廃棄溜め部に良好に流れるようになった。分離溝部から、そして緩衝液溜め部からの緩衝液の緩慢な流れは、射出ティーにおいて約180pLのフルオレセイン溶液の台形プラグを生成した。流れが主に緩衝液溜め部から分離溝部を下り廃棄溜め部に向かうように電圧を切り換えることで、このプラグの分離溝部への射出がもたらされた。フルオレセイン染料の密接ボーラスは、分離溝部を下ることが観察された。
【0087】
フルオレセインとカルセインの混合物を使用して実施例を反復した。この場合、分離溝部を下る混合ボーラスの射出は、2つの材料の急速な電気泳動的分離に帰結した。
【符号の説明】
【0088】
10 成形可能材料
11 線
12 ダイ
14 基材
16 開放成形型
18 放射源
20 生成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成形可能材料と成形面を有する開放成形型とを互いに線接触させて、ミクロ流体処理構造パターンを前記成形可能材料上に捺印することにより成形品を形成し、
(b)前記成形品を前記成形面から分離する、成形品を作製するための方法。
【請求項2】
前記成形可能材料が、エンボス加工可能なポリマー基材を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エンボス加工可能なポリマー基材が、ミクロ電子要素をさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エンボス加工可能なポリマー基材が、ミクロ光学要素をさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記エンボス加工可能なポリマー基材が、ミクロ力学要素をさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記成形可能材料が、流動性樹脂組成物を含む請求項1〜5に記載の方法。
【請求項7】
前記流動性樹脂組成物が硬化性樹脂組成物を含み、前記方法は、前記成形品を前記成形面から分離する前に、前記組成物を熱放射または化学線に曝して前記組成物を硬化させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記硬化性樹脂組成物が光重合性組成物を含み、前記方法は、前記成形品を前記成形面から分離する前に、前記組成物を化学線に曝して前記組成物を硬化させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記流動性樹脂組成物が溶融熱可塑性組成物を含み、前記方法は、前記成形品を前記成形面から分離する前に、前記組成物を冷却することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記流動性樹脂組成物をポリマー基材の主表面に導入することと、前記ポリマー基材および前記成形型を相対的に移動させ、前記型と前記流動性樹脂組成物とを互いに線接触させることとを含む請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー基材が、ミクロ電子要素をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー基材が、ミクロ光学要素をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー基材が、ミクロ力学要素をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記流動性樹脂組成物を前記成形面に導入することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
前記流動性樹脂組成物をポリマー基材に結合することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー基材が、ミクロ電子要素を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー基材が、ミクロ光学要素を含む請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー基材が、ミクロ力学要素を含む請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ミクロ電子要素を含むポリマー基材を前記成形品に結合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
ミクロ光学要素を含むポリマー基材を前記成形品に結合することをさらに含む、請求項1または19に記載の方法。
【請求項21】
ミクロ力学要素を含むポリマー基材を前記成形品に結合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
基材を前記成形品に結合して、前記ミクロ流体処理構造に重なるカバー層を形成することをさらに含む、請求項1および19〜21に記載の方法。
【請求項23】
前記基材がポリマー基材を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記基材がミクロ電子要素をさらに含む、請求項22〜23に記載の方法。
【請求項25】
前記基材がポリマー基材を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記基材がミクロ光学要素をさらに含む、請求項22〜24に記載の方法。
【請求項27】
前記基材がミクロ力学要素をさらに含む、請求項22〜24または26に記載の方法。
【請求項28】
成形可能材料を前記成形型によって画定される成形ゾーンに連続的に導入することと、前記成形型を前記成形可能材料に連続的に線接触させて複数のミクロ流体処理構造を作り出すステップと、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記製品を、複数のミクロ流体処理構造を含むロールの形態で製造することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ミクロ電子要素を含むポリマー基材を前記成形品に連続的に結合することをさらに含む、請求項28〜29に記載の方法。
【請求項31】
ミクロ光学要素を含むポリマー基材を前記成形品に連続的に結合することをさらに含む、請求項28〜30に記載の方法。
【請求項32】
ミクロ力学要素を含むポリマー基材を前記成形品に連続的に結合することをさらに含む、請求項28〜31に記載の方法。
【請求項33】
ポリマー基材を前記成形品に連続的に結合して、前記ミクロ流体処理構造に重なるカバー層を形成することをさらに含む、請求項28〜32に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリマー基材が、ミクロ電子要素をさらに含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリマー基材が、ミクロ光学要素をさらに含む請求項33〜34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマー基材が、ミクロ力学要素をさらに含む請求項33〜35に記載の方法。
【請求項37】
(a)(i)ミクロ流体処理構造を有する第1の主表面と、(ii)第2の主表面とを備える第1の非弾性ポリマー基材と、
(b)前記第1の基材の前記第2の主表面に一体的に結合する第2のポリマー基材とを具備する製品であって、前記第2の基材が前記第1の基材なしで自立基材を形成できる製品。
【請求項38】
(i)複数のミクロ流体処理構造を有する第1の主表面と、(ii)第2の主表面とを備える第1のポリマー基材を具備する製品であって、前記製品がロール形態である製品。
【請求項39】
(a)(i)ミクロ流体処理構造を有する第1の主表面と、(ii)第2の主表面とを備える第1のポリマー基材と、
(b)(i)前記第1の基材の前記第2の主表面に一体的に結合する第1の主表面と、(ii)第2の主表面とを備える第2のポリマー基材とを具備し、該第2の基材の該第2の主表面が、ミクロ電子要素並びに該第2の基材の該第1および第2の主表面間に伸びる通路を有する製品であって、前記第2の基材が前記第1の基材なしで自立基材を形成できる製品。
【請求項40】
(i)ミクロ流体処理構造を有する第1の主表面と、(ii)第2の主表面とを備える第1のポリマー基材を具備し、該第2の主表面が、ミクロ電子要素並びに該基材の該第1および第2の主表面間に伸びる通路を有する製品。
【請求項41】
(a)(i)ミクロ流体処理構造を有する第1の主表面と、(ii)第2の主表面とを備える第1のポリマー基材と、
(b)(i)前記ミクロ流体処理構造に重なる第1の主表面と、(ii)第2の主表面とを備えるポリマーカバー層とを具備し、該カバー層の該第2の主表面が、ミクロ電子要素並びに該カバー層の該第1および第2の主表面間に伸びる通路を有する製品。
【請求項42】
前記ミクロ流体処理構造に重なるカバー層をさらに具備する、請求項37〜40に記載の製品。
【請求項43】
前記カバー層がポリマーカバー層を具備する、請求項42に記載の製品。
【請求項44】
前記カバー層が前記第1の基材の前記第1の主表面に結合される、請求項42に記載の製品。
【請求項45】
前記ミクロ流体処理構造が、微細溝部、流体溜め部、サンプル操作領域、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される構造を有する請求項37〜41に記載の製品。
【請求項46】
前記製品が、ミクロ電子要素をさらに具備する請求項37〜38に記載の製品。
【請求項47】
前記製品が、ミクロ光学要素をさらに具備する請求項37〜41に記載の製品。
【請求項48】
前記製品が、ミクロ力学要素をさらに具備する請求項37〜41に記載の製品。
【請求項49】
前記製品が、前記第1の基材の前記第2の主要面に一体的に結合される第2のポリマー基材をさらに具備し、 前記第2の基材が前記第1の基材なしに自立基材を形成できる請求項38に記載の製品。
【請求項50】
前記第1の基材の第1の主要面に結合されるポリマーカバー層をさらに具備する、請求項38に記載の製品。
【請求項51】
前記ミクロ流体処理構造が、微細溝部、流体溜め部、サンプル操作領域、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される構造を有する、請求項38に記載の製品。
【請求項52】
前記製品がミクロ電子要素をさらに具備する、請求項38に記載の製品。
【請求項53】
前記製品がミクロ光学要素をさらに具備する、請求項38に記載の製品。
【請求項54】
前記製品がミクロ力学要素をさらに具備する、請求項38に記載の製品。
【請求項55】
(a)(i)複数のミクロ流体処理構造を有する第1の主表面と、(ii)第2の主表面とを備える第1のポリマー基材を具備するロール形態で製品を提供し、
(b)ミクロ流体サンプルを前記ミクロ流体処理構造の1つに導入し、
(c)前記サンプルを処理する、ミクロ流体サンプルを処理する方法。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図3a】
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【図4】
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【図4a】
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【図5】
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【図5a】
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【図6】
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【図6a】
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【図7】
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【図7a】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−111129(P2010−111129A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−23193(P2010−23193)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【分割の表示】特願2000−554525(P2000−554525)の分割
【原出願日】平成11年5月18日(1999.5.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】