説明

ミシン

【課題】手縫い風縫目を縫製対象物に良好に形成することができるミシンを提供すること。
【解決手段】糸調子調整手段と、移送手段とを備え、上糸とは異なる色の下糸を用いて、上糸と下糸とが交絡する縫目を縫製対象物に形成するミシンにおいて、糸調子調整手段及び移送手段が制御され、上糸と下糸との交絡点が縫製対象物の上面よりも下部にある縫目のみを含む第1縫目と、上糸の張力によって交絡点及び下糸が縫製対象物の上面に引き出された縫目を含み、下糸が第1方向に引き出された部分である第1部分と、下糸が第2方向に引き出され且つ少なくとも一部が第1部分と重なる部分である第2部分とが複数組含まれる縫目である第2縫目とが、縫製対象物に交互に配置される(S70,S80、S90)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫針に供給される上糸の張力を調整する糸調子調整手段と、縫製対象物を第1方向と、第1方向とは反対の方向である第2方向とに移送可能な移送手段とを備えるミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手縫い風縫目を形成する機能を備えたミシンが知られている(例えば、特許文献1参照)。手縫い風縫目とは、縫製対象物の一方の面に、色つき糸が見える縫目と、色つき糸が見えない縫目とが交互に形成された縫目である。手縫い風縫目が形成される場合、上糸に透明糸が用いられ、下糸に色付きの糸が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−47472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の色つき糸が見える縫目は、縫製対象物の送りピッチ(1針毎の送り量)を短くして、透明な上糸と色つきの下糸との結節部(交絡点)が縫製対象物の上面に現れるように、上糸の張力を制御して縫製される。色つき糸が見えない縫目は、透明糸である上糸だけが見えるように上糸の張力を制御して縫製する。このように縫製することで、色つきの下糸が所定の長さ、且つ所定の間隔で配置されているかのように見える。しかしながら、従来のミシンで縫製された手縫い風縫目は、何らかの原因によって、色つき糸の下糸が所定の長さ、且つ所定の間隔で配置されずに、手縫い風縫目に見えない場合がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、手縫い風縫目を縫製対象物に良好に形成することができるミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本態様のミシンは、縫針に供給される上糸の張力を調整する糸調子調整手段と、縫製対象物を第1方向と、前記第1方向とは反対の方向である第2方向とに移送可能な移送手段とを備え、前記上糸とは異なる色の下糸を用いて、前記上糸と前記下糸とが交絡する縫目を前記縫製対象物に形成するミシンにおいて、前記糸調子調整手段及び前記移送手段を制御して、前記上糸と前記下糸との交絡点が前記縫製対象物の上面よりも下部にある縫目のみを含む第1縫目と、前記上糸の張力によって前記交絡点及び前記下糸が前記縫製対象物の前記上面に引き出された縫目を含み、前記下糸が前記第1方向に引き出された部分である第1部分と、前記下糸が前記第2方向に引き出され且つ少なくとも一部が前記第1部分と重なる部分である第2部分とが複数組含まれる縫目である第2縫目とが、前記縫製対象物に交互に配置する制御手段を備える。本態様のミシンは、第1部分と、第2部分とを組み合わせることによって、第1縫目と、第2縫目とが交互に配置された手縫い風縫目を縫製対象物に良好に形成することができる。ミシンは、第2縫目に1組の第1部分と第2部分が含まれる場合に比べ、第1部分と、第2部分との少なくとも一部をより確実に重ならせることができる。さらにミシンは、第1部分と、第2部分との組数を調整することによって、第2縫目の太さを調整することが可能である。
【0007】
本態様のミシンにおいて、前記制御手段は、前記第1縫目を縫製するときには前記上糸の張力を第1所定値に設定し、前記第1部分及び前記第2部分を形成するための縫目を縫製するときには前記上糸の張力に、前記第1所定値よりも大きい値である第2所定値を設定し、設定した前記上糸の張力に従って、前記糸調子調整手段を制御してもよい。この場合のミシンは、糸調子調整手段を調整することによって、手縫い風縫目を縫製対象物に良好に形成することができる。
【0008】
本態様のミシンにおいて、前記縫製対象物の厚さを検出する厚さ検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記厚さ検出手段によって検出された前記縫製対象物の厚さに応じて、前記糸調子調整手段を制御してもよい。安定した手縫い風縫目が縫製されるためには、縫製対象物の厚さによらず、第1部分の長さと第2部分の長さとのそれぞれが一定の長さとなる必要がある。この場合のミシンは、上糸の張力を、縫製対象物の厚さに応じて設定し、設定した上糸の張力に従って調子調整手段を調整することによって、縫製対象物の厚さによらず、手縫い風縫目を縫製対象物に良好に形成することができる。
【0009】
本態様のミシンにおいて、前記縫製対象物に形成された縫目を撮影して画像データを生成する撮影手段と、前記撮影手段によって生成された前記画像データに基づき、前記第1部分と、前記第2部分との重なりを検出する重なり検出手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記重なり検出手段が前記重なりを検出しなかった場合に、前記上糸の張力に前記第2所定値よりも大きい値を設定し、設定した前記上糸の張力に従って、前記糸調子調整手段を制御してもよい。この場合のミシンは、第1部分と、第2部分との重なりが検出されない場合に、第1部分と、第2部分とが少なくとも一部が重なるように、上糸の張力を設定する。したがってミシンは、第1部分と、第2部分とに重なる部分を有しない第2縫目の数を低減させることによって、手縫い風縫目を縫製対象物に良好に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ミシン1の斜視図である。
【図2】縫針16の近傍をミシン1の左側からみた図である。
【図3】ミシン1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】手縫い風縫目100を縫製するための縫製データ201の説明図である。
【図5】手縫い風縫目100の説明図である。
【図6】縫製処理のフローチャートである。
【図7】図6の縫製処理で実行される組数設定処理のフローチャートである。
【図8】上糸の太さ(mm)と、各第2縫目に含まれる第1部分と第2部分との組数(組)との関係を表すテーブル202である。
【図9】一針当たりの送り量(送りピッチ)(mm)と、各第2縫目に含まれる第1部分と第2部分との組数(組)との関係を表すテーブル203である。
【図10】各第2縫目に含まれる第1部分と第2部分との組数(組)が2である場合の、手縫い風縫目110を縫製するための縫製データ204の説明図である。
【図11】手縫い風縫目110の説明図である。
【図12】縫製対象物の厚さ(mm)と、上糸の張力(N)との関係を表すテーブル205である。
【図13】具体例の撮影画像140の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施の形態のミシン1について、図面を参照して順に説明する。参照する図面は、本開示が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載している装置の構成、及びフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0012】
図1及び図2を参照して、ミシン1の物理的構成について説明する。以下の説明では、図1の左斜め下側、右斜め上側、左斜め上側、右斜め下側をそれぞれ、ミシン1の左側、右側、後方、前方とする。
【0013】
図1に示すように、ミシン1は、ベッド部2と、脚柱部3と、アーム部4とを構成の主体とする。脚柱部3は、ベッド部2の右端部分にベッド部2から垂直方向に立設されている。アーム部4は、脚柱部3の上端部から左方向へベッド部2に対向して延びる。アーム部4の先端部は、頭部49である。
【0014】
ベッド部2には、針板11と、開閉可能な針板蓋12とが設けられている。針板11には、後述の送り歯57(図3参照)が出没可能な角穴34が形成されている。また、針板11の下部のベッド部2内には、釜機構(図示外)が設けられている。釜機構は、下糸が巻回されるボビン(図示外)を収容する内釜(図示外)を有する。内釜には、縫製中の下糸に所定の張力を付与する張力付与部材(図示外)が設けられている。また、針板11の下部のベッド部2内には、送り歯57と、送り機構58(図3参照)とが設けられている。送り歯57は、縫製対象物(例えば、加工布)を所定の移送量(送り量)でミシン1の前方及び後方のいずれかに移送する。送り機構58は、送り歯57を駆動する周知の機構である。送り機構58として、例えば、特開2006−346087号公報に記載の機構を採用することができる。送り量調整用モータ77(図3参照)は、送り歯57の移動量、すなわち縫製対象物の移送量を所定の値に調整するためのモータである。
【0015】
脚柱部3の下方には、ミシンモータ79(図3参照)が設けられている。ミシンモータ79の駆動力は、駆動ベルト(図示外)を介して主軸(図示外)に伝達される。主軸は、アーム部4内を左右方向へ伸びる。主軸の回転角度は、主軸角度センサ32(図3参照)によって検出される。主軸角度センサ32は公知であるため(例えば、特開2009−291416号公報参照)、詳しい説明は省略する。針棒8の上下方向の位置は、主軸角度センサ32によって検出された主軸の回転角度に基づき判別される。主軸が1回転すると、1つの縫目が形成される(一針縫われる)。したがって、ミシン1は、主軸角度センサ32によって、主軸の回転角度を継続して検出することにより、1つの縫目が形成されたことを検知することができる。ミシンモータ79の駆動力は、主軸の途中部に設けられた伝達機構(図示外)によって、下軸(図示外)にも伝達される。下軸は、ベッド部2内を左右方向に伸びる。このような構成により、後述の針棒8と、天秤機構(図示外)と、釜機構(図示外)と、送り機構58とを含む要素が同期駆動される。
【0016】
図1に示すように、脚柱部3には、縦長の液晶ディスプレイ(以下、単に「LCD」と言う。)10が設けられている。LCD10には、縫製模様の選択及び編集といった、縫製作業に必要な各種の機能を実行させる機能名及び各種のメッセージ等が表示される。LCD10の前面にはタッチパネル26が備えられている。ユーザがLCD10に表示された項目を指又はタッチペンで選択すると、タッチパネル26によってどの項目が選択されたかが感知される。このようにして、ユーザは、LCD10及びタッチパネル26を介して種々の指示を入力することができる。
【0017】
アーム部4の上部には、アーム部4の左右全長にわたって開閉カバー6が取り付けられている。開閉カバー6は、アーム部4の左右方向の軸回りに開閉するよう、アーム部4の上側背面部に軸支されている。図1に示すように開閉カバー6を開くと、アーム部4の上部には、収容部15が設けられている。収容部15は、上糸が巻回された糸駒21を収容する凹部である。収容部15の脚柱部3側の内壁面には、頭部49に向かって突出する糸立棒17が設けられている。糸駒21が備える挿入孔(図示せず)は、糸立棒17に挿入される。頭部49の下部には、針棒8が配設されている。針棒8の下端には、縫針16が装着可能である。図2のように、針棒8の後方には押え棒38が設けられている。押え棒38の高さ方向中間部には、押え棒抱き(図示外)が固着されている。押え棒抱きの左側には、厚さ検出器37(図3参照)が設けられている。厚さ検出器37は、押え棒抱きの高さを検出することによって、縫製対象物の厚みを検出する公知の検出器である(例えば、特開2009−291416号公報参照)。押え棒38の下端部には、押えホルダ29が取り付けられる。押えホルダ29には、押え足30が着脱可能である。頭部49内には、針棒上下動機構(図示外)と、針棒揺動機構(図示外)と、天秤機構(図示外)とが設けられている。針棒上下動機構は、縫針16が装着された針棒8を上下方向に駆動させる。針棒揺動機構は、針棒8を左方及び右方のいずれかに移動させるための周知の機構である。詳しくは図示しないが、針棒揺動機構は、針振り用モータ78(図3参照)を動力源として回動する偏心状の揺動カム(図示外)を駆動させることで、針棒台(図示外)を左右方向に揺動させる。針棒台(図示外)の左右方向の揺動によって、針棒8が左右方向に揺動する。
【0018】
アーム部4の内部には、糸調子調整機構40(図3参照)が設けられている。糸調子調整機構40は、糸調子調整用モータ76(図3参照)を駆動源として上糸の張力(糸調子)を調整する公知の機構である(例えば、特開2008−212433号公報参照)。アーム部4には、糸駒21から引き出される上糸を、糸調子調整機構40と、糸取りバネと、天秤(いずれも図示外)とを経由して、最終的に縫針16まで案内する糸案内溝7が設けられている。さらに、アーム部4の前面には、各種の縫製動作を指示するための複数の操作キー9が設けられている。操作キー9には、例えば、縫製開始・停止スイッチ91と、速度調整摘み94とが含まれる。縫製開始・停止スイッチ91は、縫製動作の開始及び停止を指示するためのスイッチである。縫製停止中に縫製開始・停止スイッチ91が押下されると、ミシン1は縫製動作を開始する。縫製中に、縫製開始・停止スイッチ91が押下されると、ミシン1は縫製動作を停止する。速度調整摘み94は、縫製速度(ミシンモータ79の回転速度)を指示するための操作部材である。
【0019】
頭部49における、針棒8の前方で且つ正面視にて針棒8のやや右方には、イメージセンサ90が、針板11の全体を撮影できるように取り付けられている。イメージセンサ90は、CMOSセンサ及び制御回路を備えており、CMOSセンサで撮影した画像を表す画像データを生成する。本実施形態では、図2に示すように、ミシン1の図示しないミシン機枠に支持フレーム99が取り付けられており、支持フレーム99にイメージセンサ90が固定されている。後述する縫製処理実行時には、イメージセンサ90は、手縫い風縫目が縫製された縫製対象物の表面(上面)を撮影した画像を表す画像データを生成する。
【0020】
次に、図3を参照して、ミシン1の電気的構成について説明する。図3に示すように、ミシン1は、制御部60を備える。制御部60は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、EEPROM64と、外部アクセスRAM68と、入出力インターフェイス(I/O)66とを備え、これらはバス67により相互に接続されている。入出力インターフェイス66には、縫製開始・停止スイッチ91と、速度調整摘み94と、タッチパネル26と、イメージセンサ90と、主軸角度センサ32と、厚さ検出器37と、駆動回路71から75とがそれぞれ電気的に接続されている。駆動回路71は、LCD10を駆動させる。駆動回路72は、ミシンモータ79を駆動させる。駆動回路73は、送り量調整用モータ77を駆動させる。駆動回路74は、針振り用モータ78を駆動させる。駆動回路75は、糸調子調整用モータ76を駆動させる。
【0021】
CPU61は、ミシン1の主制御を司り、ROM62に記憶されたプログラムに従って、各種演算及び処理を実行する。ROM62は、少なくとも、各種プログラム及び縫製データを記憶する。各種プログラムには、後述する縫製処理を実行するためのプログラムが含まれる。RAM63は、任意に読み書き可能な記憶素子であり、CPU61が演算処理した演算結果を収容する各種記憶領域が必要に応じて設けられる。EEPROM64は、少なくとも、各種設定を記憶する。外部アクセスRAM68には、カードスロット19が接続されている。カードスロット19は、メモリカード18と接続可能である。カードスロット19とメモリカード18とを接続すれば、ミシン1は、メモリカード18の情報の読み取り、及び書き込みを行うことができる。
【0022】
次に、手縫い風縫目を説明する。図5は、手縫い風縫目100の一例を示している。本実施形態の手縫い風縫目は、上糸に透明な糸を、下糸に色つきの糸をそれぞれ用いて縫製される縫目である。手縫い風縫目では、縫製時の縫製対象物の上面に、第1縫目と、第2縫目とが交互に配置される。縫製時の縫製対象物の上面は、手縫い風縫目を形成するために、縫製対象物をベッド部2に配置した状態の縫製対象物の上面である。以下、縫製時の縫製対象物の上面を、単に縫製対象物の上面とも言う。第1縫目は、上糸と下糸との交絡点が縫製対象物の上面よりも下部にある縫目である。即ち、第1縫目では、縫製対象物の上面には、透明な上糸のみが現出している。一方、第2縫目は、上糸の張力によって上糸と下糸との交絡点及び下糸が縫製対象物の上面に引き出された縫目を含む。より具体的には、第2縫目は、下糸が第1方向に引き出された部分である第1部分と、下糸が第2方向に引き出され且つ少なくとも一部が第1部分と重なる部分である第2部分とが複数組含まれる縫目である。本実施形態では、説明の都合上、1組の第1部分と第2部分とが含まれる縫目も、第2縫目と呼ぶ。第1方向及び第2方向は、ミシン1の送り方向である。より具体的には、第1方向は、ミシン1の前方から後方に向かう方向である。第2方向は、第1方向とは逆の方向であり、ミシン1の後方から前方に向かう方向である。本実施形態では、第1方向をプラスの送り方向とし、第2方向をマイナスの送り方向とする。
【0023】
図4の縫製データ201は、第2縫目に1組の第1部分と第2部分とが含まれる場合の縫製データである。縫製データ201には、縫製順序と、送り量と、フラグとが含まれる。送り量は、例えば、mm単位の数字で表される。本実施形態では、送り量がプラスの値である場合、縫製対象物は送り歯57によって、第1方向に移送される。送り量がマイナスの値である場合、縫製対象物は送り歯57によって、第2方向に移送される。フラグは、上糸の張力を第1所定値及び第2所定値のいずれかに調整する処理に用いられる。本実施形態では、ミシン1は、第2縫目に含まれる第1部分及び第2部分を形成するための縫目を縫製する場合(フラグ=1の場合)には、上糸の張力に第2所定値を設定する。ミシン1は、それ以外の縫目を縫製する場合(フラグ=0の場合)には、上糸の張力に第1所定値を設定する。本実施形態のそれ以外の縫目には、第1縫目と、第2縫目の第1部分及び第2部分ではない縫目とが含まれる。図12を参照して後述するように、第2所定値は第1所定値よりも大きい。縫製データ201に従って、手縫い風縫目100が形成される場合、1巡目の処理(縫製順序が1番目から5番目の針落ち点が形成される場合)では、縫製順序が0から4のそれぞれに対応するデータに従って縫目が形成される。2巡目以降の処理(縫製順序が6番目以降の針落ち点が形成される場合)では、縫製順序が0のデータが省略され、1から4のそれぞれに対応するデータに従って、縫目が形成される。
【0024】
図5の上側に示すグラフは、縫製データ201に従って形成される針落ち点108と縫製順序と、送り方向の相対位置と、図4の縫製データ201に基づき縫製対象物の上面に形成される縫目との関係を模式的に示している。図5のように、縫製対象物の上面に形成される縫目には、部分107と、交絡点109と、第1部分105と、第2部分106とが含まれる。白抜きで示す部分107は、縫製対象物の上面に上糸が現出している部分である。図4及び図5のように、フラグに1が設定されたデータに基づき形成される縫目では、上糸と下糸との交絡点109及び第1部分105,第2部分106が、縫製対象物の上面に現出する。網掛けで示す第1部分105は、上糸によって第2方向に引き出された下糸である。網掛けで示す第2部分106は、上糸によって第1方向に引き出された下糸である。一方、フラグに0が設定されたデータに基づき形成される縫目では、交絡点は縫製対象物の上面よりも下方にあり、縫製対象物の上面に現出しない。
【0025】
図5の下方に示す手縫い風縫目100に含まれる縫目101から104のうち、縫目101と縫目103とはそれぞれ第2縫目である。縫目102と縫目104とはそれぞれ第1縫目である。図5のように、第1縫目と第2縫目とは、送り方向において交互に配置されている。図5に示す例では、各第1縫目には、1つの縫目が含まれる。各第2縫目には、2つ又は3つの縫目が含まれる。本実施形態では、各第2縫目に含まれる縫目の数は、各第2縫目に含まれる第1部分と第2部分との組数に応じて変わる。上糸の張力が何らかの原因で適切に調整されなかった場合には、不良縫目が形成される場合がある。不良縫目は、同一の第2縫目において、第1部分と第2部分との間に隙間が生じ、下糸が現出する部分の長さが第2縫目の長さ以下となる縫目である。このような不良縫目の発生を抑制するため、本実施形態では、縫製条件を考慮して第2縫目に含まれる第1部分と第2部分との組数を設定している。
【0026】
次に、図6から図13を参照して、ミシン1において実行される縫製処理について説明する。図6の縫製処理は、ユーザが縫製条件を適宜入力後、手縫い風縫目の縫製を開始する指示を入力した場合に実行される。手縫い風縫目の縫製を開始する指示は、例えば、縫製開始・停止スイッチ91が選択された場合に入力される。図6の縫製処理を実行するためのプログラムは、図3のROM62に記憶されており、CPU61が実行する。以下の説明において、イメージセンサ90によって生成された画像データによって表される画像を、撮影画像と言う。
【0027】
図6のように、縫製処理ではまず、組数設定処理が実行される(S10)。組数設定処理では、各第2縫目に含まれる第1部分と第2部分との組数が設定される。図7を参照して、組数設定処理の詳細を説明する。図7のように、まず、組数がユーザによって設定されたか否かが判断される(S22)。縫製処理開始前に、ユーザが縫製条件として組数を指定した場合(S22:YES)、ユーザが指定した条件に従って、組数が設定され、設定された組数はRAM63に記憶される(S24)。本実施形態では、ユーザは組数として2以上の自然数を指定可能である。組数がユーザによって指定されていない場合(S22:NO)、第2縫目の太さが指定されたか否かが判断される(S26)。本実施形態では、第2縫目の太さを、第2縫目に含まれる下糸の長さのうち、縫製対象物の上面での送り方向と直交する方向の最大値とする。縫製処理開始前に、ユーザが縫製条件として第2縫目の太さを設定した場合には(S26:YES)、設定された第2縫目の太さと、図8に例示するテーブル202とに基づき組数が設定され、設定された組数はRAM63に記憶される(S28)。第2縫目の太さ(mm)と組数との関係は、上糸の太さに応じて、テーブル202に例示するように予め定められており、EEPROM64に予め記憶されている。ステップS28では、上糸の太さに応じたテーブルが読み出され、設定された第2縫目の太さに応じた組数が設定される。
【0028】
第2縫目の太さが設定されていない場合には(S26:NO)、一針当たりの送り量(送りピッチ)が設定されているか否かが判断される(S30)。送りピッチが設定されている場合(S30:YES)、設定された送りピッチと図9に例示するテーブル203とに基づき組数が設定され、設定された組数はRAM63に記憶される(S32)。送りピッチ(mm)と組数との関係は、テーブル203に例示するように予め定められており、EEPROM64に記憶されている。本実施形態では、送りピッチを、1.0から4.0mmの範囲で設定可能である。ステップS32では、設定された送りピッチに応じた組数が設定される。送りピッチが設定されていない場合(S30:NO)、組数にデフォルト値が設定され、設定された組数はRAM63に記憶される(S34)。本実施形態では、組数のデフォルト値は2である。ステップS24と、ステップS28と、ステップS32と、ステップS34とのいずれかの次に、組数設定処理は終了し、処理は図6の縫製処理に戻る。
【0029】
図6のステップS10の次に、設定された送りピッチとステップS10で設定された組数とに基づき縫製データが生成され、生成された縫製データはRAM63に記憶される(S40)。送りピッチは、ユーザが設定した値又はデフォルト値である。本実施形態では、送りピッチのデフォルト値は2.0mmである。送りピッチが2.0mmであり、組数が2である場合、ステップS40では、図10に例示する縫製データ204が生成される。縫製データ204は、図4の縫製データ201と同様に、縫製順序と、送り量と、フラグとを含む。縫製データ204に従って縫製が実行された場合、縫製対象物の上面には、図11に例示する手縫い風縫目110が形成される。手縫い風縫目110は、縫目111から114を含む。縫目111と縫目113とのそれぞれは第2縫目である。縫目113と縫目114とのそれぞれは第1縫目である。縫目111と縫目113とのそれぞれには、2組の第1部分115と第2部分116とが含まれる。ステップS40では、カウンタ変数mに0が設定され、設定されたカウンタ変数mはRAM63に記憶される。カウンタ変数mは、ステップS40で生成された縫製データに含まれるデータを縫製順序に従って読み出すための変数である。
【0030】
次に、ステップS40で生成された縫製データに含まれるm番目のデータが読み出される(S50)。次に、厚さ検出器37の出力に基づき、縫製対象物の厚さが検出され、検出された厚さはRAM63に記憶される(S60)。次に、駆動回路75に制御信号が出力され、上糸の張力が調整される(S70)。制御信号は、ステップS50で読み出されたデータのフラグと、ステップS60で検出された厚さと、図12に例示するテーブル205とに基づき設定される。本実施形態では、下糸には、内釜の張力付与部材によって所定の張力(例えば、0.1N)が付与される。図12のテーブル205は、予め設定されEEPROM64に記憶されている。テーブル205のように、m番目のデータのフラグに1が設定されている場合には、縫製対象物の厚さに応じて、異なる上糸の張力が設定される。m番目のデータのフラグに0が設定されている場合には、縫製対象物の厚さによらず、上糸の張力は一定(例えば、0.35N)である。ステップS60で検出された厚さが1.5mmである場合、上糸の張力には、2.8Nが設定される。上糸の張力は、駆動回路75(図3参照)に出力された制御信号に従って、糸調子調整用モータ76(図3参照)が駆動され、糸調子調整機構40(図3参照)が作動することによって調整される。
【0031】
次に、ステップS50で読み出されたデータの送り量に従って、駆動回路73(図3参照)に制御信号が出力され、送り量調整用モータ77(図3参照)が駆動される(S80)。次に、駆動回路72(図3参照)に制御信号が出力され、主軸(図示外)の回転が開始又は継続される(S90)。次に、撮影のタイミングであるか否かが判断される(S100)。本実施形態では、ステップS40で生成された縫製データのうち、縫製順序が最も大きいデータがステップS50で読み出された場合を、撮影のタイミングであると判断する。ステップS10で設定された組数が2である場合、図10のように、縫製順序が最も大きいデータの縫製順序は6である。撮影のタイミングではない場合(S100:NO)、後述するステップS170の処理が実行される。撮影のタイミングである場合(S100:YES)、CPU61は、縫製対象物の移動が停止するまで待機する(S110)。ステップS110は、縫製対象物が停止中に、歪みの少ない画像を表す画像データを取得するための処理である。ステップS110は、例えば、主軸角度センサ32から出力される信号に基づき、縫製対象物が移動中か否かを判断する。次に、イメージセンサ90から出力される画像データが取得され、取得された画像データはRAM63に記憶される(S120)。ステップS120において、図13の撮影画像140を表す画像データが取得された具体例を想定する。説明を簡単にするため、撮影画像140には、押え足30等の部材は含まれないものとする。撮影画像140には、縫目151から153が写っている。
【0032】
次に、ステップS120で取得された画像データに基づき、各第2縫目について、第1部分と第2部分とに重なる部分があるか否かが判断される(S130)。ステップS130では、例えば、次のような判断処理によって、各第2縫目について、第1部分と第2部分とに重なる部分があるか否かが判断される。ステップS120で取得された画像データに基づき、撮影画像中の下糸の領域を抽出し、送り方向において下糸の領域が連続する長さ(画素数)を算出する処理が実行される。下糸に赤色の糸を用いた場合を例に、具体的に説明する。まず、取得した画像データによって表される画素毎に、RGBの夫々について0〜255の範囲の値が付与される。次に、下糸(赤色)画素数カウンタiに、0がセットされる。次に、画素毎に、注目した画素が赤色か否かが判断される。例えば、Rの値が100以上で且つ、B,Gの値が共に99以下のときに、注目した画素が赤色であると判断される。
【0033】
画素が、赤色であると判断されたときには、下糸(赤色)画素数カウンタiが1だけ増加される。全ての画素について、赤色であるか否かが判断され、赤色であると判断される画素が送り方向に連続する最大長さが求められる。具体例では、送り方向は、画像データによって表される画像の長手方向と直交する方向と対応付けられている。具体例では、赤色が送り方向に連続する最大長さとして、矢印161で示す長さと、矢印162で示す長さと、矢印163で示す長さとが求められる。次に、矢印161で示す長さと、矢印162で示す長さと、矢印163で示す長さのそれぞれが、送りピッチのプラスマイナス5%の範囲に入っているかが判断される。全ての長さが送りピッチのプラスマイナス5%の範囲に入っている場合に、重なりがあると判断される(S130:YES)。この場合には、後述するステップS150の処理が実行される。
【0034】
複数求められた長さのうち、いずれか1つでも送りピッチのプラスマイナス5%の範囲に入っていない場合(S130:NO)には、具体例の縫目153のように、第1部分と第2部分とが重なっていない第2縫目を含む場合である。このような場合には、図12に例示するテーブル205の、フラグが1である場合の上糸の張力を補正し、補正したテーブル205は、RAM63に記憶される(S140)。ステップS140では、例えば、テーブル205に記憶されているフラグが1である場合の上糸の張力が、一律に0.05N増加される。
【0035】
次に、ステップS120で取得された画像データに基づき、第2縫目の太さが設定値のプラスマイナス30%の範囲に入るか否かが判断される(S150)。本実施形態では、縫製処理開始前にユーザによって第2縫目の太さが設定されていない場合には、上糸の太さと組数とに応じた値が、第2縫目の太さとして設定される。第2縫目の太さは、例えば、矢印171で示す長さであり、ステップS120で取得された画像データに基づき、各第2縫目の長さを算出する処理と同様の処理によって求められる。上述の例では、第2縫目の太さは、赤色であると判断される画素が送り方向と垂直な方向に連続する最大長さである。
【0036】
第2縫目の太さが設定値のプラスマイナス30%の範囲に入らないと判断された場合(S150:NO)、組数が補正され、補正された組数に基づき縫製データが補正される(S160)。補正された組数及び縫製データはRAM63に記憶される。第2縫目の太さが設定値のプラス30%である場合には、例えば、組数が1減少される。第2縫目の太さが設定値のマイナス30%である場合には、例えば、組数が1増加される。縫製データの補正は、組数の補正に応じて実行される。第2縫目の太さが設定値のプラスマイナス30%の範囲に入ると判断された場合(S150:YES)、又はステップS160に続いて、縫製終了の指示が入力されたか否かが判断される(S170)。縫製終了の指示は、例えば、縫製開始・停止スイッチ91によって入力される。縫製終了の指示が入力されていない場合(S170:NO)、カウンタ変数mが更新され、更新されたカウンタ変数mはRAM63に記憶される(S180)。ステップS180では、カウンタ変数mが6未満の場合、カウンタ変数mはインクリメントされる。カウンタ変数mが6の場合、カウンタ変数mに1が設定される。次に、処理はステップS50に戻る。縫製終了の指示が入力された場合には(S170:YES)、縫製処理は終了する。
【0037】
ミシン1において、糸調子調整用モータ76と、糸調子調整機構40とは、本発明の「糸調子調整手段」に相当する。送り歯57と、送り機構58とは、本発明の「移送手段」に相当する。ミシン1の前方から後方に向かう方向は、本発明の「第1方向」に相当する。ミシン1の後方から前方に向かう方向は、本発明の「第2方向」に相当する。図6のステップS70と、ステップS80と、ステップS90と、ステップS140とを実行するCPU61は、本発明の「制御手段」として機能する。厚さ検出器37は、本発明の「厚さ検出手段」に相当する。イメージセンサ90は、本発明の「撮影手段」に相当する。ステップS130の処理を実行するCPU61は、本発明の「重なり検出手段」として機能する。
【0038】
ミシン1は、糸調子調整機構40によって上糸の張力を調整することによって、手縫い風縫目を縫製対象物に良好に形成することができる。ミシン1は、縫製条件を考慮して、第2縫目に含まれる第1部分と第2部分との組数を設定する。より具体的には、ミシン1は、ユーザが組数を設定した場合、図8のように第2縫目の太さに0.3以上の値が設定された場合、送りピッチに1.5mm以上に設定された場合、及びステップS34で組数が設定される場合、のいずれかの場合に、第2縫目に含まれる第1部分と第2部分との組数を複数にする。図示しないが、各第2縫目に含まれる第1部分と第2部分とが複数組である場合、第1部分と第2部分との組数が1組である場合に比べ、ミシン1は、不良縫目の発生をより確実に抑制することができる。またミシン1は、図8のように、第1部分と、第2部分との組数を調整することによって、第2縫目の太さを調整することができる。
【0039】
上糸の張力が一定の条件のもとで、厚さが異なる縫製対象物が縫製される場合、第2縫目に含まれる第1部分と第2部分との長さは、一般的に、縫製対象物の厚さに応じて異なる。これに対し、ミシン1は、縫製対象物の厚さに応じてフラグが1の場合の上糸の張力を調整しているので、縫製対象物の厚さによらず、手縫い風縫目を縫製対象物に良好に形成することができる。ミシン1は、各第2縫目において、第1部分と、第2部分との重なりが検出されない場合に(S130:NO)、第1部分と、第2部分とが少なくとも一部が重なるように上糸の張力を設定する(S140)。従って、ミシン1は、不良縫目が形成されるのを抑制することができ、手縫い風縫目を縫製対象物に良好に形成することができる。縫製対象物の厚さ及びイメージセンサ90から取得された画像データに基づき、上糸の張力を調整することによって得られる効果は、第2縫目に含まれる第1部分及び第2部分の組数が複数である場合に限らず、組数が1組の場合にも得られる。
【0040】
本発明のミシンは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の(A)から(C)までの変形が適宜加えられてもよい。
【0041】
(A)ミシン1の構成は必要に応じて適宜変更されてもよい。例えば、本発明は、工業用ミシン及び多針ミシンに適用されてもよい。他の例では、イメージセンサ90の種類と、配置とは適宜変更してもよい。例えば、イメージセンサ90は、CCDカメラ等、CMOSイメージセンサ以外の撮影素子であってもよい。他の例では、ステップS60の処理が省略される場合には、ミシン1は厚さ検出器37を備えなくてもよい。他の例では、ステップS100からステップS160の処理が省略される場合には、ミシン1はイメージセンサ90を備えなくてもよい。
【0042】
(B)手縫い風縫目の縫製に用いられる糸の色は、上糸の色と下糸の色とが異なっていればよい。例えば、上糸に縫製対象物の色と同じ又は類似する設定し、下糸に上糸の糸とは異なる色が設定されてもよい。
【0043】
(C)図6の縫製処理は、適宜変更されてもよい。例えば、本発明の特徴部分が適宜組み合わされた処理が実行されてもよい。より具体的には、以下の(C−1)から(C−6)のいずれかの変形が加えられてもよい。
【0044】
(C−1)ステップS10の組数設定処理は、適宜変更されてよい。より具体的には、図7のステップS22のステップS34の一部が省略されてもよい。本実施形態では、組数として2以上の自然数を設定可能としていたが、1以上の自然数を設定可能としてもよい。
【0045】
(C−2)ステップS40で生成される縫製データに含まれるデータは、必要に応じて変更されてもよい。例えば、縫製データには、フラグに代えて上糸の張力が含まれてもよい。縫製データに含まれる縫製順序が最後の縫目のフラグには、0が設定されていたが、1が設定されてもよい。
【0046】
(C−3)フラグが1である場合の上糸の張力は、縫製対象物の厚みによらず同じ値であってもよい。この場合の上糸の張力は、デフォルト値であってもよいし、ユーザによって指定された値であってもよい。フラグが0である場合の上糸の張力は、縫製対象物の厚みに応じて異なっていてもよい。
【0047】
(C−4)ステップS100の判断基準は適宜変更されてよい。例えば、所定長さの縫目が形成されたと判断される場合に、撮影のタイミングであると判断されてもよい。また、上記実施形態では、説明を簡単にするための撮影画像中に押え足30等の部材が含まれない場合について説明したが、撮影画像中に押え足30等の部材が含まれてもよい。
【0048】
(C−5)ステップS100からステップS160の一部又は全部は、必要に応じて変更、省略されてもよい。例えば、ステップS140で設定する値は、ユーザが設定した値であってもよい。他の例では、ステップS140では、上糸の張力を補正する処理に代えて、第2縫目に含まれる第1部分と第2部分との組数を増加させる処理が実行されてもよい。他の例では、ステップS130と、ステップS140とのそれぞれは、省略されてもよい。他の例では、第2縫目の太さがユーザによって設定されていない場合等には、ステップS150と、ステップS160との処理は省略されてもよい。
【0049】
(C−6)縫製処理において参照されるテーブル及び設定値は、適宜変更されてよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ミシン
8 針棒
32 主軸角度センサ
37 厚さ検出器
40 糸調子調整機構
57 送り歯
58 送り機構
61 CPU
62 ROM
63 RAM
64 EEPROM
76 糸調子調整用モータ76
77 送り量調整用モータ
79 ミシンモータ
90 イメージセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫針に供給される上糸の張力を調整する糸調子調整手段と、
縫製対象物を第1方向と、前記第1方向とは反対の方向である第2方向とに移送可能な移送手段とを備え、
前記上糸とは異なる色の下糸を用いて、前記上糸と前記下糸とが交絡する縫目を前記縫製対象物に形成するミシンにおいて、
前記糸調子調整手段及び前記移送手段を制御して、
前記上糸と前記下糸との交絡点が前記縫製対象物の上面よりも下部にある縫目のみを含む第1縫目と、
前記上糸の張力によって前記交絡点及び前記下糸が前記縫製対象物の前記上面に引き出された縫目を含み、前記下糸が前記第1方向に引き出された部分である第1部分と、前記下糸が前記第2方向に引き出され且つ少なくとも一部が前記第1部分と重なる部分である第2部分とが複数組含まれる縫目である第2縫目とが、
前記縫製対象物に交互に配置する制御手段を備えることを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1縫目を縫製するときには前記上糸の張力を第1所定値に設定し、前記第1部分及び前記第2部分を形成するための縫目を縫製するときには前記上糸の張力に、前記第1所定値よりも大きい値である第2所定値を設定し、設定した前記上糸の張力に従って、前記糸調子調整手段を制御することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記縫製対象物の厚さを検出する厚さ検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記厚さ検出手段によって検出された前記縫製対象物の厚さに応じて、前記糸調子調整手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。
【請求項4】
前記縫製対象物に形成された縫目を撮影して画像データを生成する撮影手段と、
前記撮影手段によって生成された前記画像データに基づき、前記第1部分と、前記第2部分との重なりを検出する重なり検出手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記重なり検出手段が前記重なりを検出しなかった場合に、前記上糸の張力に前記第2所定値よりも大きい値を設定し、設定した前記上糸の張力に従って、前記糸調子調整手段を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のミシン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−65855(P2012−65855A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213246(P2010−213246)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】